(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】カルボキシ官能性、ポリエーテル系反応生成物、及びその反応生成物を含む水性ベースコート材料
(51)【国際特許分類】
C09D 167/00 20060101AFI20220317BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20220317BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20220317BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20220317BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20220317BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20220317BHJP
C08G 63/123 20060101ALI20220317BHJP
C08G 63/668 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
C09D167/00
C09D5/00 D
C09D5/02
B05D7/24 302R
B05D7/24 302T
B05D7/24 302V
C09D175/04
B05D1/36 B
C08G63/123
C08G63/668
(21)【出願番号】P 2018537440
(86)(22)【出願日】2017-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2017050235
(87)【国際公開番号】W WO2017121683
(87)【国際公開日】2017-07-20
【審査請求日】2019-12-27
(32)【優先日】2016-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】シュタインメッツ,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ロイター,ハルディ
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-165860(JP,A)
【文献】特表平10-507791(JP,A)
【文献】特開2013-181080(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1009743(KR,B1)
【文献】特開2005-34807(JP,A)
【文献】米国特許第3362922(US,A)
【文献】米国特許第3542711(US,A)
【文献】特開2014-159509(JP,A)
【文献】特開平9-100439(JP,A)
【文献】特開平11-207252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00- 10/00
101/00-201/10
B05D 1/00- 7/26
C08G 63/00- 64/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色水性ベースコート材料であって、
(a)2個の無水物基を架橋する脂肪族、芳香族、又は芳香脂肪族基Xを有する少なくとも1種の環式テトラカルボン酸二無水物と、
(b)一般構造式(II)
【化1】
の少なくとも1種のポリエーテルであり、
式中、Rは、C
3~C
6アルキレン基であり、且つnは、前記ポリエーテル(b)が、500~5000g/molの数平均分子量を有するように適切に選択されるポリエーテルとの反応によって調製できるポリエーテル系反応生成物を含み、
前記成分(a)及び(b)が、0.7/2.3~1.6/1.7のモル比で、前記反応に使用され、前記結果として得られる反応生成物が、5~80mgKOH/gの酸価を有する着色水性ベースコート材料。
【請求項2】
前記ポリエーテル(b)が、650~4000g/molの数平均分子量を有する請求項1に記載のベースコート材料。
【請求項3】
前記一般構造式(II)における前記基Rが、テトラメチレン基を含む請求項1又は2に記載のベースコート材料。
【請求項4】
前記成分(a)及び(b)が、0.45/1~0.55/1のモル比で使用される請求項1~3のいずれか1項に記載のベースコート材料。
【請求項5】
前記ポリエーテル系反応生成物が、1500~15000g/molの数平均分子量を有する請求項1~4のいずれか1項に記載のベースコート材料。
【請求項6】
8~60mgKOH/gの酸価を有する請求項1~5のいずれか1項に記載のベースコート材料。
【請求項7】
前記着色水性ベースコート材料の総質量に基づいて、全てのポリエーテル系反応生成物の質量パーセント画分の合計が、0.1~20質量%である請求項1~6のいずれか1項に記載の着色水性ベースコート材料。
【請求項8】
メラミン樹脂
と、オレフィン性不飽和モノマーによってグラフト化され、さらにヒドロキシル基を含むポリウレタン樹脂
と、を含む請求項1~7のいずれか1項に記載の着色水性ベースコート材料。
【請求項9】
前記テトラカルボン酸二無水物(a)が、ピロメリット酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロオクテンテトラカルボン酸二無水物、及び/又はジフェニルスルホニルテトラカルボン酸二無水物である請求項1~8のいずれか1項に記載のベースコート材料。
【請求項10】
(a1)一般構造式(I)
【化2】
[式中、X
1は、結合、又は脂肪族、芳香族、芳香脂肪族基である]
の少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物と、
(b)一般構造式(II)
【化3】
の少なくとも1種のポリエーテルであり、
式中、Rは、C
3~C
6アルキレン基であり、且つnは、前記ポリエーテル(b)が、500~5000g/molの数平均分子量を有するように適切に選択されるポリエーテルとの反応によって調製できるポリエーテル系反応生成物を含み、
前記成分(a)及び(b)が、0.7/2.3~1.6/1.7のモル比で、前記反応に使用され、前記結果として得られる反応生成物が、5~80mgKOH/gの酸価を有する請求項1~8のいずれか1項に記載のベースコート材料。
【請求項11】
前記テトラカルボン酸二無水物(a1)が、4,4’-オキシジフタル酸無水物、又は4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)である請求項10に記載のベースコート材料。
【請求項12】
(a1)一般構造式(I)
【化4】
[式中、X
1は、結合、又は脂肪族、芳香族、芳香脂肪族基である]
の少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物と、
(b)一般構造式(II)
【化5】
の少なくとも1種のポリエーテルであり、
式中、Rは、C
3~C
6アルキレン基であり、且つnは、前記ポリエーテル(b)が、500~5000g/molの数平均分子量を有するように適切に選択されるポリエーテルとの反応によって調製できるポリエーテル系反応生成物であって、
前記成分(a)及び(b)が、0.7/2.3~1.6/1.7のモル比で、前記反応に使用され、前記結果として得られる反応生成物が、5~80mgKOH/gの酸価を有するポリエーテル系反応生成物。
【請求項13】
前記一般構造式(I)に従う基X
1が、1~30個の炭素原子、又は1~16個の炭素原子を含む基である請求項12に記載のポリエーテル系反応生成物。
【請求項14】
X
1が、結合であり、したがって、4,4’-オキシジフタル酸無水物に相当するか、又はX
1が、
【化6】
であり、したがって、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)に相当する請求項12に記載のポリエーテル系反応生成物。
【請求項15】
前記ベースコート材料を使用して製造される塗装系のストーンチップ耐性を改善するための、請求項1~11のいずれか1項に記載の着色水性ベースコート材料の使用方法
。
【請求項16】
前記ベースコート材料を使用して製造される塗装系のストーンチップ耐性を改善するための、請求項12~14のいずれか1項に記載の反応生成物の使用方法。
【請求項17】
(1)着色水性ベースコート材料を基板に塗布する工程、
(2)段階(1)で塗布した前記コーティング材料からポリマー膜を形成する工程、
(3)クリアコート材料を結果として得られるベースコートに塗布する工程、続いて、
(4)前記クリアコートと一緒に、前記ベースコートを硬化する工程、
による多層塗装系の製造方法であって、
工程(1)において、請求項1~11のいずれか1項に記載の着色水性ベースコート材料を用いる多層塗装系の製造方法。
【請求項18】
(1)着色水性ベースコート材料を基板に塗布する工程、
(2)段階(1)で塗布した前記コーティング材料からポリマー膜を形成する工程、
(3)クリアコート材料を結果として得られるベースコートに塗布する工程、続いて、
(4)前記クリアコートと一緒に、前記ベースコートを硬化する工程、
による多層塗装系の製造方法であって、
工程(1)において、請求項12~14のいずれか1項に記載の反応生成物を含む着色水性ベースコート材料を用いる多層塗装系の製造方法。
【請求項19】
段階(1)からの前記基板が、硬化した電気塗装でコーティングされた金属基板であり、前記電気塗装に塗布した全てのコーティングを一緒に硬化する請求項
17または18に記載の方法。
【請求項20】
段階(1)からの前記基板が、金属又はプラスチック基板である請求項
17または18に記載の方法。
【請求項21】
請求項
17~
20のいずれか1項に記載の方法によって製造できる多層塗装系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラカルボン酸二無水物を使用して調製されたカルボキシ官能性、ポリエーテル系反応生成物(polyether-based reaction product)を含む革新的な水性ベースコート材料(aqueous basecoat material)に関連する。 さらに、本発明は、特定のテトラカルボン酸二無水物を使用して調製された革新的なカルボキシ官能性反応生成物、及び前記反応生成物の水性ベースコート材料における使用方法に関連する。 さらに、本発明は、水性ベースコート材料を使用する多層塗装系(multicoat paint system)の製造方法、及び前記方法によって製造できる多層塗装系に関連する。
【背景技術】
【0002】
多層着色(color)及び/又は効果(effect)塗装系(多層仕上げ(multicoat finish)とも称する)を製造する非常に多数の公知の方法が存在する。先行技術(例えば、ドイツ特許出願DE19948004A1第17頁第37行~第19頁第22行、又はドイツ特許DE10043405C1第3欄段落[0018]、及び第6欄段落[0039]~第8欄段落[0050]と併せて第8欄段落[0052]、第9欄段落[0057]を対照とする)は、例えば、以下の
(1)着色水性ベースコート材料(pigmented aqueous basecoat material) を基板に塗布する工程、
(2)段階(1)で塗布した前記コーティング材料からポリマー膜を形成する工程、
(3)クリアコート材料を結果として得られるベースコートに塗布する工程、続いて、
(4)前記クリアコートと一緒に、前記ベースコートを硬化する工程、
を伴う方法を開示する。
【0003】
この方法は、例えば、自動車の最初の仕上げ(original finish)(OEM)のため、並びに車両中又は車両上への設置用の金属及びプラスチック部品の塗装のため等に広く使用される。このような用途における塗装系(コーティング)の技術的品質に対する現代の要件は非常に重い。
【0004】
常に繰り返し生じる問題、及び先行技術によって未だに完全に満足するまで解決されていない問題は、製造される多層系の、特にストーンチップ(stonechip)効果に関する、機械的耐性である。
【0005】
これに関連して特に重要である前記ベースコート材料、及びそれから製造されるコーティングの品質は、特に、前記ベースコート材料中に存在する、バインダー及び添加剤、例えば、特定の反応生成物によって決定される。
【0006】
さらなる要因は、今日、環境適合性に対する増大する要求を満たすために、有機溶媒に基づくコーティング組成物の、水性コーティング組成物による置き換えが、これまで以上に重要になっていることである。
【0007】
EP0546375B1は、有機ポリイソシアネート、及びジヒドロキシ化合のテトラカルボン酸二無水物との反応によって調製される、分子中に少なくとも2個のカルボン酸又はカルボキシレート基を有するジヒドロキシ化合物を含む成分から合成されるポリウレタンを含む水性分散系(aqueous dispersion)、並びにコーティングを製造するためのこれらの分散系の使用方法、及び前記親水性修飾ポリウレタン(hydrophilically modified polyurethane)が低減された水膨潤性(water swellability)を示す、これらの分散系でコーティングされた製品を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】DE19948004A1
【文献】DE10043405C1
【文献】EP0546375B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明によって解決される課題は、先行技術において、上記で言及された不利な点をもはや有さないコーティングを製造するために使用され得る反応生成物、又はベースコート材料を提供することであった。さらに具体的には、新たな反応生成物、及び水性ベースコート材料におけるその使用方法は、非常に良好なストーンチップ耐性を示し、同時に、水性ベースコート材料を正確に使用することを通じて、環境に優しい方法で製造され得るコーティングの提供の機会を創出すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題は、カルボキシ官能性、ポリエーテル系反応生成物を含む着色水性ベースコート材料であって、
(a)2個の無水物基を架橋する脂肪族、芳香族、又は芳香脂肪族基Xを有する少なくとも1種の環式テトラカルボン酸二無水物と、
(b)一般構造式(II)
【0011】
【化1】
の少なくとも1種のポリエーテルであり、
式中、Rは、C
3~C
6アルキレン基であり、且つnは、前記ポリエーテル(b)が、500~5000g/molの数平均分子量を有するように適切に選択されるポリエーテルとの反応によって調製できるポリエーテル系反応生成物を含み、
前記成分(a)及び(b)が、0.7/2.3~1.6/1.7のモル比で、前記反応に使用され、前記結果として得られる反応生成物が、5~80mgKOH/gの酸価を有する着色水性ベースコート材料によって解決される。
【0012】
前記ポリエーテルが500~5000g/molの数平均分子量を有するように、nが選択される条件は、以下のように説明され得る。例えば、Rがテトラメチレン基であり、前記数平均分子量が1000g/molである場合、nは平均で13~14である。記載された指示から、当業者は相当する反応生成物を調製、又は選択する方法をよく知っている。これとは別に、以下の記載、特に実施例は、さらなる情報を、さらに提供する。したがって、パラメーターnは、数平均分子量と同様に、統計的平均値として理解される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
前記新たなベースコート材料は、以下、本発明のベースコート材料とも称される。本発明のベースコート材料の好ましい実施形態は、以下の記載、及び従属請求項から明らかである。
【0014】
同様に、
(a1)一般構造式(I)
【化2】
[式中、X
1は、結合、又は脂肪族、芳香族、芳香脂肪族基である]
の少なくとも1種のテトラカルボン酸二無水物と、
(b)一般構造式(II)
【化3】
の少なくとも1種のポリエーテルであり、
式中、Rは、C
3~C
6アルキレン基であり、且つnは、前記ポリエーテル(b)が、500~5000g/molの数平均分子量を有するように適切に選択されるポリエーテルとの反応によって調製できるポリエーテル系反応生成物であって、
前記成分(a1)及び(b)が、0.7/2.3~1.6/1.7のモル比で、前記反応に使用され、前記結果として得られる反応生成物が、5~80mgKOH/gの酸価を有するポリエーテル系反応生成物が、本発明によって提供される。
【0015】
同様に、ストーンチップ耐性を改善するための、本発明の水性ベースコート材料、又は水性(waterbone)ベースコート材料における、前記反応生成物の使用方法が、本発明によって提供される。
本発明の反応生成物の使用方法によって、コーティング、特に多層塗装系の製造との関連で、その使用方法が非常に良好なストーンチップ耐性を導くベースコート材料が得られる。本発明のベースコート材料、及びベースコート材料における本発明の反応生成物の使用方法は、特に自動車産業部門における最初の仕上げの分野、及び自動車補修(automotive refinish)の分野において使用され得る。
【0016】
[成分(a)]
本発明に従う水性ベースコート材料に使用するための前記反応生成物は、2個の無水物基を架橋する脂肪族、芳香族、芳香脂肪族基Xを有する環式テトラカルボン酸二無水物を使用して調製され得る。
【0017】
環式テトラカルボン酸二無水物は、公知のように、2個のカルボン酸無水物基を含む有機分子であり、前記2個のカルボン酸無水物基は、それぞれ前記分子の環式基の一部である。したがって、前記分子は、少なくとも2個の環式基を有し、いずれの場合にも、それぞれ無水物基を有する2個の環式基が存在する。無水物基の配置のこの形態は、無水物基と、例えばヒドロキシル基との開環反応が、前記分子の2個の分子への分解を引き起こさず、その代わりに開環後でさえ、1個の分子のみ存在することを自動的に意味する。対応する無水物基を有する典型的で、且つ容易に入手可能で公知の有機化合物は、5員脂肪族環の形態でこれらの無水物基を含む場合が多い(脂肪族の定義に関しては、以下参照)。したがって、前記2個の無水物基が5員脂肪族環中に存在する環式テトラカルボン酸二無水物は、本発明との関連で、一貫して好ましい。挙げられる例としては、ピロメリット酸の二無水物であるピロメリット酸二無水物である。
【0018】
前記無水物基を架橋する基Xは、本質的に脂肪族、芳香族、又は芳香脂肪族(混合芳香族-脂肪族)であり得る。それは、それぞれ環式基に存在する前記2個のカルボン酸無水物基を架橋し、その結果として4価の基である。前記基Xは、好ましくは4~40個の炭素原子、さらに好ましくは4~27個の炭素原子を含有する。
【0019】
脂肪族化合物は、芳香族ではなく、芳香脂肪族ではない、飽和又は不飽和の有機(すなわち、炭素及び水素を含有する)化合物である。脂肪族化合物は、例えば、専ら炭素及び水素からなり得、又は炭素及び水素に加えて、以下で示す、架橋、又は末端官能基、又は分子部分の形態でヘテロ原子を含み得る。したがって、用語「脂肪族化合物」は、さらに環式及び非環式脂肪族化合物の両方を含み、本発明との関連でも同様の一般的用語と考えられる。
【0020】
非環式脂肪族化合物は直鎖(straight-chain )(直鎖(linear))又は分岐であり得る。これに関連して、直鎖は、問題となる化合物が、炭素鎖の観点から分岐を有さず、その代わり、前記炭素原子が、鎖中において専ら直鎖配列で配置されていることを意味する。したがって、分岐又は非直鎖は、本発明との関連で、問題となる特定の化合物が、炭素鎖中において分岐を有すること、言い換えると、直鎖状化合物と対照的に、問題となる前記化合物中の少なくとも1個の炭素原子が、三級又は四級炭素原子であることを意味する。環式脂肪族化合物、又は脂環式化合物(cyclo-aliphatic compound)は、分子中に存在する少なくとも数個の炭素原子が、1個以上の環を形成するように結合されている化合物である。当然、前記環又は複数の環に加えて、脂環式化合物中に存在する他の非環式直鎖若しくは分岐脂肪族基、又は分子部分が存在し得る。
【0021】
本発明の目的のため、官能基又は分子部分は、例えば、酸素及び/又は硫黄等のヘテロ原子を含むか、ヘテロ原子からなる基である。これらの官能基は、架橋基(bridging group)、すなわち、例えば、エーテル基、エステル基、ケト基、又はスルホニル基等であり得、又は例えば、ヒドロキシル基又はカルボキシル基等の末端基であり得る。架橋及び末端官能基が、脂肪族化合物中に同時に存在することも可能である。
【0022】
したがって、脂肪族基は、脂肪族化合物について上述した規定を満たす基であるが、分子の一部にすぎない。
【0023】
脂肪族化合物及び脂肪族基の区別は、以下の理由から、より理解し易くするため、且つより明確な定義のために使用される。
【0024】
上述の環式テトラカルボン酸二無水物(a)の基Xとして、脂肪族基が選択される場合、前記成分(a)は、上記の定義に従って、明らかに脂肪族化合物である。しかしながら、この種の成分(a)は、同様に、環構造中にそれぞれ配置される2個の無水物基と、さらに前記無水物基の間に配置される脂肪族基とからなる化合物と見なされる可能性がある。第二の形態の観点は、いずれの場合にも必然的に存在する前記基、この場合、環構造中に配置される2個の無水物基が、明確に命名され得るという利点を有する。この理由から、この形態の観点及び命名も、成分(a)の定義との関連で選択されている。
【0025】
芳香族化合物は、公知の通り、少なくとも1個の芳香族系を有する環式の平面有機化合物であり、Hueckelの芳香族性基準(aromaticity criteria)に従って、完全に共役したπ系を有する少なくとも1個の環系が存在することを意味する。前記化合物は、例えば、純粋な炭化水素化合物(例えば、ベンゼン)であり得る。また、特定のヘテロ原子が、環構造中に組み込まれる可能性もある(例えば、ピリジン)。芳香族化合物において、前記1個以上の芳香族環系に加えて、完全に共役したπ系の一部を形成していれば、前記芳香族化合物の一部として、さらに直鎖及び/又は分岐炭化水素基、さらには架橋及び/又は末端官能基が存在し得る。例えば、ケト基によって、又はエーテル基によって結合した2個のフェニル環も同様に芳香族化合物である。
【0026】
したがって、芳香族基は、本発明の意味において、芳香族化合物について上述した規定を満たす基であるが、分子の一部にすぎない。例えば、成分(a)の芳香族基Xが参照され得る。
【0027】
芳香脂肪族化合物は、芳香族及び脂肪族の分子部分を含む有機化合物である。したがって、この種の混合芳香族-脂肪族化合物は、芳香族基だけでなく、脂肪族基も含む必要がある。
【0028】
したがって、芳香脂肪族基は、本発明の意味において、芳香脂肪族化合物について上述した条件を見たす基であるが、分子の一部にすぎない。例として、成分(a)の芳香脂肪族基Xが参照され得る。
【0029】
前記成分(a)の前記基Xは、5個以下の、さらに好ましくは3個以下の、特に2個以下の架橋官能基、例えば、エーテル基、エステル基、ケト基、又はスルホニル基等を含むことが好ましい。
【0030】
同様に、成分(a)の前記基Xは、環式カルボン酸無水物の開環を引き起こし得る末端官能基を含まないことが好ましい。したがって、前記成分(a)の前記基Xは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基からなる群から選択される末端官能基を含まないことが好ましく、さらに好ましくは末端官能基を一切含まない。
【0031】
成分(a)の特に好ましい基Xは、2個以下の架橋官能基を含み、且つ末端官能基を含まない。
【0032】
本発明に従って使用するための前記環式テトラカルボン酸二無水物は、好ましくはピロメリット酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロオクテンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホニルテトラカルボン酸二無水物である。
【0033】
[成分(a1)]
本発明の反応生成物は、一般構造式(I)
【化4】
[式中、X
1は、結合であるか、又は脂肪族、芳香族、芳香脂肪族基である]
のテトラカルボン酸二無水物を用いて調製され得る。
【0034】
前記基X1が結合であるという記載は、その場合、前記エーテル基の酸素が2個の芳香族環に直接両側で結合されることを意味する。
【0035】
前記基X1が、脂肪族、芳香族、又は芳香脂肪族基である場合は、以下のことが適用される。
【0036】
上記の注釈に従って、前記脂肪族、芳香族、又は芳香脂肪族基X1は、同様にさらなる官能基を含み得る。成分(a1)の前記基X1は、3個以下の、さらに好ましくは2個以下の、特に1個以下の架橋官能基、例えば、エーテル基、エステル基、ケト基、又はスルホニル基等を含むことが好ましい。
【0037】
同様に、成分(a1)の前記基X1は、環式カルボン酸無水物の開環を引き起こし得る末端官能基を含まないことが好ましい。したがって、成分(a1)の前記基X1は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基からなる群から選択される末端官能基を含まないことが好ましく、さらに好ましくは末端官能基を一切含まない。
【0038】
成分(a)の特に好ましい基X1は、1個以下の架橋官能基を含み、且つ末端官能基を含まない。さらに好ましくは、成分(a1)の特に好ましい基X1は、正確に1個の架橋エーテル基を含み、且つ末端官能基を含まない。
【0039】
前記脂肪族、芳香族、又は芳香脂肪族基X1は、好ましくは1~30個の炭素原子、さらに好ましくは1~16個の炭素原子を含有する。
【0040】
非常に特に好ましくは、本発明に従って使用するための前記一般構造式(I)のテトラカルボン酸二無水物は、4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)、又は4,4’-オキシジフタル酸無水物である。
【0041】
[成分(b)]
本発明の反応生成物は、一般構造式(II)
【化5】
の少なくとも1種のポリエーテルであり、式中、Rは、C
3~C
6アルキレン基であるポリエーテルを使用して調製され得る。前記指数nは、いずれの場合にも前記ポリエーテルが、500~5000g/molの数平均分子量を有するように選択されるべきである。好ましくは、それは、650~4000g/mol、さらに好ましくは1000~3500g/mol、非常に好ましくは1500~3200g/molの数平均分子量を有する。前記数平均分子量は、例えば、1000g/mol、2000g/mol、又は3000g/molであり得る。
【0042】
本発明の目的のため、特に指示がない限り、前記数平均分子量は、蒸気圧浸透圧(vapor pressure osmosis)によって測定される。本発明の目的のための測定は、蒸気圧浸透圧計(model10.00(Knauer))を用いて、使用される装置の実験較正定数を測定するための較正物質としてベンゾフェノンを有するトルエン中50℃での分析する成分の濃度系列で実施した(E.Schroeder、G.Mueller、K.-F.Arndt、「Leitfaden der Polymercharakterisierung」[ポリマーの特性評価の原理(Principles of polymer characterization)]、Akademie-Verlag、Berlin、第47頁-第54頁、1982年に従う(ここで使用された較正物質はベンジルであった))。
【0043】
公知の通り、先に既に解明されている通り、前記数平均分子量は、常に統計的平均値である。したがって、式(II)における前記パラメーターnについても、同様なことが必然的に当てはまる。成分(b)のために選択され、これに関連して解明が必要である名称「ポリエーテル」は、以下のように:例えば、ポリマー、ポリエーテル(b)等のために、前記化合物は、常に異なる大きさの分子の混合物であると理解される。これらの分子の少なくともいくつか、又は全ては、同一又は異なるモノマー単位(モノマーの反応した形態として)の配列によって識別される。したがって、前記ポリマー又は前記分子混合物は、原則として複数の(言い換えれば、少なくとも2個の)同一又は異なるモノマー単位を含む。混合物の一部は、当然に、前記モノマーそれ自体、言い換えればそれらの未反応形態を含み得る。これは、公知の通り、単に調製反応、すなわち、モノマーの重合の結果であり、一般に分子の均一性で進行しない。特定のモノマーは別個の分子量と見なされ得るが、ポリマーは、常に、分子量において異なる分子の混合物である。その結果として、別個の分子量でポリマーを記載することは不可能であり、その代わりに、公知の通り、それは常に平均分子量が割り当てられ、例としては、上記の数平均分子量である。
【0044】
本発明に従って使用するための前記ポリエーテルにおいて、全てのn個の基Rは、同一であり得る。しかしながら、異なる種類の基Rが存在することも可能である。好ましくは、全ての前記基Rが同一である。Rは、好ましくはC4アルキレン基である。さらに好ましくは、それはテトラメチレン基である。
【0045】
非常に特に好ましくは、本発明に従って使用するための前記ポリエーテルは、平均してジオールである直鎖ポリテトラヒドロフランである。
【0046】
[反応生成物]
使用される反応生成物の調製に独特なものはない。成分(a)及び(b)が、ヒドロキシル基と、無水物基との周知の反応を解して互いに結合される。反応は、例えば、典型的な有機溶媒を用いて、バルクで、又は溶液中で、例えば100℃~300℃の温度で、好ましくは100℃~180℃の温度で、さらに好ましくは100℃~160℃の温度で行われ得る。硫酸、スルホン酸、及び/又はチタン酸テトラアルキル、亜鉛及び/又はスズアルコキシレート、ジ-n-ブチルスズ酸化物等のジアルキルスズ酸化物、又はジアルキルスズ酸化物の有機塩等の典型的な触媒も、当然に使用され得る。当然、カルボキシ官能性反応生成物が形成されることに留意が必要である。成分(b)が過剰に使用されるので、結果として得られる生成物中に、カルボキシル基の特定の所望の量が確実に残存するように留意する必要がある。好ましくは、形成されるか、又は無水物の開環後に残存する前記カルボキシル基は、前記組成物中に保持され、さらに反応されない。このことは、進行中の反応の停止をもたらすために温度を変化させることによって、当業者に容易に達成され得る。反応の経過中に、対応する測定によって酸価を監視することは、所望の酸価に到達した後、例えば、反応がもはや行われ得ない温度まで冷却することによって、反応の制御された停止を可能にする。
【0047】
ここで、前記成分(a)及び(b)は、0.7/2.3~1.6/1.7、好ましくは0.8/2.2~1.6/1.8、非常に好ましくは0.9/2.1~1・5/1.8のモル比で使用される。さらに特に好ましい比の範囲は、0.45/1~0.55/1である。
【0048】
前記反応生成物は、カルボキシ官能性である。反応生成物の酸価は、5~80mgKOH/g、好ましくは8~60mgKOH/g、特に好ましくは10~45mgKOH/g、非常に好ましくは12~30mgKOH/gである。前記酸価は、DIN53402に従って測定され、当然、いずれの場合にも生成物それ自体に関連している(存在する溶媒中の生成物の任意の溶液又は分散液の酸価には関連しない)。本発明との関連で、公式基準が参照される場合、当然、前記基準の出願時に適用できるバージョンが参照され、その時点で適用できるバージョンがない場合、最後の適用可能なバージョンが参照される。
【0049】
結果として得られる反応生成物は、好ましくは1500~15000g/mol、好ましくは2000~10000g/mol、非常に好ましくは2200~6000g/molの数平均分子量を有する。
【0050】
本発明の、又は本発明に従って使用される反応生成物は、一般に、ヒドロキシ官能性であり、好ましくは平均ジヒドロキシ官能性(average dihydroxy-functional)である。したがって、好ましくは、それはヒドロキシル官能性だけでなく、カルボキシル官能性も有する。
【0051】
特に好ましい反応生成物のために、それらは、(a)2個の無水物基を架橋する脂肪族、芳香族、芳香脂肪族基Xを有する少なくとも1種の環式テトラカルボン酸二無水物と、(b)650~4000g/molの数平均分子量を有するジオール性直鎖ポリテトラヒドロフランとの反応であり、前記成分(a)及び(b)が0.45/1~0.55/1のモル比で使用され、前記反応生成物が8~60mgKOH/gの酸価、及び2000~10000g/molの数平均分子量を有する、反応によって調製できることは事実である。
【0052】
必要に応じて、本発明の反応生成物の全てから、水性コーティング製剤にそれを添加するため、予め溶融したポリマーに、N,N-ジメチルエタノールアミン(BASF SE)及び水を、30℃で徐々に添加することにより、微細に分離した水性分散液が調製され得る。
【0053】
[着色水性ベースコート材料]
本発明は、さらに、本発明の少なくとも1種の反応生成物を含む着色水性ベースコート材料に関連する。前記反応生成物に関する上記の好ましい実施形態の全ては、当然、前記反応生成物を含む前記ベースコート材料にも適応される。
【0054】
ベースコート材料は、自動車仕上げ、及び一般工業塗装に使用される色付与(color-imparting)中間コーティング材料であると理解される。このベースコート材料は、一般に、焼成した(完全に硬化した)サーフェーサー、又はプライマー・サーフェーサーで前処理されている金属又はプラスチック基板に塗布されるか、或いは前記プラスチック基板に直接塗布される場合もある。使用される基板はまた、任意に同様に(例えば研磨することによって)前処理が必要となり得る、既存の塗装系も含み得る。現在、複数のベースコート膜を塗布することは、完全に慣例となっている。したがって、そのような場合、第一のベースコート膜は、第二のベースコート膜のための基板を構成する。これに関連して、焼成したサーフェーサーのコーティングへの塗布の代わりに、第一のベースコート材料を、硬化した電気塗装(electrocoat)を備える金属基板に直接塗装し、第二のベースコート材料を、第一のベースコート膜に、後者を個別に硬化することなしに、直接塗布することが、特に可能性がある。ベースコート膜、又は最上層のベースコート膜を、特に環境効果から保護するため、少なくとも更なるクリアコート膜がその上に塗布される。これは、一般に、ウェット-オン-ウェット(wet-on-wet)プロセスで行なわれ、すなわち、前記クリアコート材料は、前記ベースコート膜(複数可)を硬化することなく、塗布される。その後、最終的に硬化が一緒に行なわれる。硬化した電気塗装膜上に1層のみベースコート膜を製造し、次いでクリアコート材料を塗布し、その後これらの2層の膜を一緒に硬化することもまた、現在、広く行き渡った手法である。本発明との関連で、後者が好ましい。何故なら、本発明の反応生成物を使用する場合、1層のみのベースコートの製造、したがって、結果として生じる操作の著しい単純化にもかかわらず、前記結果として、優秀なストーンチップ耐性が得られる。
【0055】
前記着色水性ベースコート材料の総質量に基づいて、本発明の、又は本発明にしたがって使用される、全ての反応生成物の質量パーセント画分の合計は、好ましくは0.1~20質量%、さらに好ましくは0.5~15質量%、非常に好ましくは1.0~10質量%、或いは1.5~5質量%である。
【0056】
本発明の反応生成物の量が0.1質量%未満である場合、接着及びストーンチップ耐性におけるさらなる改善が、達成されない可能性があり得る。前記量が20質量%より多い場合は、特定の状況下では、例えば、前記ベースコート材料における前記反応生成物の非相溶性等の不利な点があり得る。そのような非相溶性は、不均一な平滑化において、さらには浮遊物又は沈殿において明示され得る。
【0057】
特定の比率の範囲内で好ましい反応生成物を含むベースコート材料への可能性のある特定化については、以下が適用される。前記好ましい群に該当しない前記反応生成物も、当然、まだ前記ベースコート材料中に存在し得る。その場合、前記特定の比率の範囲は、反応生成物の前記好ましい群にのみ適用される。それにもかかわらず、前記好ましい群の反応生成物からなる反応生成物、及び好ましい群の一部ではない反応生成物の全比率が、同様に特定の比率の範囲の対象となることが好ましい。
【0058】
したがって、0.5~15質量%の比率の範囲、及び反応生成物の好ましい群への制限の場合、この比率の範囲は、明らかに、当初は反応生成物の前記好ましい群にのみ適用される。しかしながら、その場合、好ましい群からの反応生成物、及び好ましい群の一部を形成しない反応生成物からなる全ての当初包含される反応生成物の合計で0.5~15質量%であることが好ましい。したがって、5質量%の前記好ましい群の反応生成物が使用される場合、10質量%以下の前記好ましい群ではない前記反応生成物が使用され得る。
【0059】
記載された原理は、本発明の目的のため、前記ベースコート材料の全ての記載された成分、及びそれらの比率の範囲のため、例えば、前記顔料、バインダーとしての前記ポリウレタン樹脂、或いはメラミン樹脂等の前記架橋剤のために有効である。
【0060】
本発明に従って使用されるベースコート材料は、着色顔料及び/又は効果顔料を含む。そのような着色顔料及び効果顔料は、当業者に公知であり、例えば、Roempp-Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York,1998年,176、及び451頁に記載される。前記顔料の割合は、前記着色水性ベースコート材料の総質量に基づいて、例えば1~40質量%、好ましくは2~30質量%、さらに好ましくは3~25質量%の範囲であり得る。本発明との関連で、好ましいベースコート材料は、バインダーとして、物理的に、熱的に、又は熱的、及び化学線による両方で硬化性のポリマーを含むものである。本発明との関連で、且つ関連のあるDIN EN ISO4618に従う「バインダー」は、顔料及び充填剤(filler)ではない、コーティング組成物の不揮発性成分である。したがって、前記表現が、主として以下の物理的に、熱的に、又は熱的、及び化学線(actinic radiation)による両方で硬化性の特定のポリマー、例えば特定のポリウレタン樹脂に関して使用されるとしても、特定のバインダーは、例えば、典型的なコーティング添加剤、本発明の反応生成物、又は以下に後述する典型的な架橋剤を含む。
【0061】
本発明の反応生成物に加えて、本発明の着色水性ベースコート材料は、さらに好ましくは、前記反応生成物とは異なる、少なくとも1種のさらなるポリマー、さらに具体的には、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート及び/又は前記ポリマーのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマー、特に好ましくは、いずれにしても必ずしも専らではないが、少なくとも1種のポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートをバインダーとして含む。
【0062】
本発明との関連で、用語「物理的硬化」は、ポリマー溶液またはポリマー分散液からの溶媒の減少による膜の形成を意味する。典型的には、架橋剤は、この硬化には必要ではない。
【0063】
本発明との関連で、用語「熱硬化」は、別個の架橋剤、或いは自己架橋バインダーのいずれかが親コーティング材料中に使用される、コーティング膜の熱開始架橋を意味する。前記架橋剤は、前記バインダーに存在する反応性官能基に相補的な反応性官能基を含む。これは、一般に、当技術分野では、外部架橋と称される。相補的反応性官能基、又は自己反応性官能基、すなわち、同種の基と反応する基がバインダー分子中に既に存在する場合、前記存在するバインダーは、自己架橋性である。適切な相補的反応性官能基、及び自己反応性官能基の例は、ドイツ特許出願DE19930 665A1、第7頁第28行~第9頁第24行から公知である。
【0064】
本発明の目的のため、化学線は、近赤外線(NIR)、UV放射等の電磁放射線、さらに具体的にはUV放射、及び電子放射線等の微粒子放射線(particulate radiation)を意味する。UV放射による硬化が、一般的にラジカル又はカチオン光開始剤によって開始される。
【0065】
熱硬化、及び化学光(actinic light)による硬化が、一緒に使用される場合、用語「二重硬化(dual cure)」も使用される。
【0066】
本発明においては、物理的硬化されるベースコート材料、及び熱硬化されるベースコート材料の両方が好ましい。熱硬化されるベースコート材料の場合、当然に、常に物理的硬化の割合もある。しかしながら、特に理解の容易さの理由から、これらのコーティング材料は、熱硬化性と称される。
【0067】
好ましい熱硬化性ベースコート材料は、バインダーとしてポリウレタン樹脂及び/又はポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレート、好ましくはヒドロキシル含有ポリウレタン樹脂及び/又はポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレート、並びに架橋剤としてアミノプラスト樹脂、又はブロック化、若しくは非ブロック化ポリイソシアネート、好ましくはアミノプラスト樹脂を含むものである。アミノプラスト樹脂の中で、メラミン樹脂が特に好ましい。
【0068】
前記着色水性ベースコート材料の総質量に基づいて、全ての架橋剤、好ましくはアミノプラスト樹脂、及び/又はブロック化、及び/又は非ブロック化ポリイソシアネート、さらに特に好ましくはメラミン樹脂の質量パーセント画分の合計は、好ましくは1~20質量%、さらに好ましくは1.5~17.5質量%、非常に好ましくは2~15質量%、或いは2.5~10質量%である。
【0069】
好ましくは存在する前記ポリウレタン樹脂は、イオン的、及び/又は非イオン的に親水的に安定化され得る。
【0070】
本発明の好ましい実施形態において、前記ポリウレタン樹脂は、イオン的に親水的に安定化される。前記好ましいポリウレタン樹脂は、直鎖であるか、又は分岐の例も含む。さらに好ましくは、前記ポリウレタン樹脂は、その存在下で、オレフィン性不飽和モノマーが重合されているものである。このポリウレタン樹脂は、前記オレフィン性不飽和モノマーの重合に由来するポリマーと、これらのポリマーが互いに共有結合することなしに、一緒に存在し得る。しかしながら、同様に、前記ポリウレタン樹脂は、前記オレフィン性不飽和モノマーの重合に由来するポリマーと、共有結合していてもよい。その結果、前記樹脂の両方の群は、オレフィン性不飽和モノマーとして、(メタ)アクリレート基含有モノマーの使用の場合、ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレート(上記も参照のこと)とも称され得るコポリマーである。この種のポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレート、さらに具体的にはヒドロキシ官能性ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートの使用は、本発明との関連で、特に好ましい。したがって、前記オレフィン性不飽和モノマーは、好ましくはアクリレート及び/又はメタクリレート基を含むモノマーである。前記アクリレート、及び/又はメタクリレート基を含むモノマーが、アクリレート、及び/又はメタクリレート基を含まない他のオレフィン性不飽和化合物と組み合わせて使用されることも同様に好ましい。前記ポリウレタン樹脂に共有結合されるオレフィン性不飽和モノマーは、さらに好ましくは、アクリレート基、又はメタクリレート基を含むモノマーである。ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートのこの形態がさらに好ましい。
【0071】
適切な飽和又は不飽和ポリウレタン樹脂、及び/又はポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートは、例えば、
・ドイツ特許出願DE19914896A1、第1欄、第29~49行、 及び第4欄、第23行~第11欄第5行、
・ドイツ特許出願DE19948004A1、第4頁第19行~ 第13頁第48行、
・ヨーロッパ特許出願EP0228003A1、 第3頁第24行~第5頁第40行、
・ヨーロッパ特許出願EP0634431A1、 第3頁第38行~第8頁第9行、又は
・国際特許出願WO92/15405第2頁第35行~第10頁第32行、
・ドイツ特許出願DE4437535A1
に記載される。
【0072】
前記ポリウレタン樹脂は、好ましくは、当業者に公知である脂肪族、脂環式、脂肪族-脂環式、芳香族、脂肪族-芳香族、及び/又は脂環式-芳香族ポリイソシアネートを使用して調製される。
【0073】
前記ポリウレタン樹脂を調製するためのアルコール成分として、当業者に公知である比較的高分子量及び低分子量の、飽和及び不飽和ポリオール、並びに任意に少量のモノアルコールを使用することが好ましい。使用される低分子量のポリオールは、さらに具体的には、ジオール、及び分岐の例を導入するための少量のトリオールである。比較的高分子量の適切なポリオールの例は、飽和、又はオレフィン性不飽和ポリエステルポリオール、及び/又はポリエーテルポリオールである。比較的高分子量のポリオールは、さらに具体的には、ポリエステルポリオール、特に400~5000g/molの数平均分子量を有するものである。
【0074】
親水的安定化のため、及び/又は水性溶媒中での分散性を向上させるため、好ましく存在する前記ポリウレタン樹脂は、特定のイオン性基、及び/又はイオン性基に変換され得る基(潜在的イオン性基)を含み得る。この種のポリウレタン樹脂は、本発明との関連で、イオン的に親水的に安定化されたポリウレタン樹脂と称される。同様に、非イオン的親水的に修飾する基も存在し得る。しかしながら、イオン的に親水的に安定化されたポリウレタンが好ましい。さらに正確には、前記修飾基は、或いは
・中和剤、及び/又は四級化剤、及び/又はカチオン性基によってカチオンに変換され得る官能基(カチオン性修飾)、
又は
・中和剤、及び/又はアニオン性基によってアニオンに変換され得る官能基(アニオン性修飾)、
及び/又は
・非イオン性親水性基(非イオン性修飾)
でもある。
【0075】
当業者が知っているように、前記カチオン性修飾のための官能基は、例えば、第1級、第2級、及び/又は第3級アミノ基、第2級スルフィド基、及び/又は第3級ホスフィン基、さらに具体的には第3級アミノ基、及び第2級スルフィド基(中和剤、及び/又は四級化剤によってカチオン基に変換され得る官能基)である。
前記カチオン性基-第1級、第2級、第3級、及び/又は第4級アンモニウム基、第3級スルホニウム基、及び/又は第4級ホスホニウム基、さらに具体的には第4級アンモニウム基、及び第3級スルホニウム基等の当業者に公知の中和剤、及び/又は四級化剤を使用して上記の官能基から調製される基についても言及されるべきである。
【0076】
周知の通り、前記アニオン性修飾のための官能基は、例えば、カルボン酸、スルホン酸、及び/又はホスホン酸基、さらに具体的にはカルボン酸基(中和剤によってアニオン基に変換され得る官能基)、並びにアニオン性基-カルボキシレート、スルホネート、及び/又はホスホネート基等の当業者に公知の中和剤を使用して上記の官能基から調製される基である。非イオン性修飾のための前記官能基は、好ましくはポリ(オキシアルキレン)基、さらに具体的にはポリ(オキシエチレン)基である。
【0077】
前記イオン性親水性修飾は、前記(潜在的に)イオン性基を含むモノマーを介して、ポリウレタン樹脂中に導入され得る。前記非イオン性修飾は、例えば、ポリウレタン分子中の側基、又は末端基としてのポリ(エチレン)オキシドポリマーの組み込みを介して導入される。前記親水性修飾は、例えば、イソシアネート基に対して反応性である少なくとも1個の基、好ましくは少なくとも1個のヒドロキシル基を含む化合物を介して導入される。前記イオン性修飾は、前記修飾基と同様に、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むモノマーを使用して導入され得る。前記非イオン性修飾を導入するため、当業者に公知の、前記ポリエーテルジオール、及び/又はアルコキシポリ(オキシアルキレン)アルコールを使用することが好ましい。
【0078】
既に上記した通り、前記ポリウレタン樹脂は、好ましくはオレフィン性不飽和モノマーによるグラフトポリマーであり得る。その結果、この場合、前記ポリウレタンは、例えば、オレフィン性不飽和モノマーに基づく側基、及び/又は側鎖でグラフト化される。これらは、さらに具体的にはポリ(メタ)アクリレートに基づく側鎖であり、その結果、問題となる系は、既に上記したポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートである。本発明の目的のためのポリ(メタ)アクリレートは、アクリレート、及び/又はメタクリレート基を含むモノマーを含み、好ましくは、アクリレート基、及び/又はメタクリレート基を含むモノマーからなるポリマー、又はポリマー性基(polymeric radical)である。ポリ(メタ)アクリレートに基づく側鎖は、(メタ)アクリレート基を含むモノマーを使用して、グラフト重合中に構成される側鎖を意味するものと理解される。ここで、前記グラフト重合において、前記グラフト重合に使用されるモノマーの総量に基づいて、50mol%より多い、さらに具体的には75mol%より多い、特に100mol%の(メタ)アクリレート基を含むモノマーを使用することが好ましい。
【0079】
記載された側鎖は、好ましくは第一のポリウレタン樹脂分散液の調製の後に、前記ポリマー中に導入される(先の記載も参照のこと)。この場合、前記第一の分散液に存在する前記ポリウレタン樹脂は、その後、それを介して、前記オレフィン性不飽和化合物とのグラフト重合が進行する、オレフィン性不飽和側基、及び/又は末端基を含み得る。したがって、グラフト化のための前記ポリウレタン樹脂は、不飽和ポリウレタン樹脂であり得る。その場合、前記グラフト重合は、オレフィン性不飽和反応物のラジカル重合である。例えば、前記グラフト重合に使用されるオレフィン性不飽和化合物が、少なくとも1個のヒドロキシル基を含むことも可能である。その場合、まず、前記ポリウレタン樹脂の遊離イソシアネート基との反応によって、これらのヒドロキシル基を介して、オレフィン性不飽和化合物を結合させることも可能である。この結合は、前記オレフィン性不飽和化合物と、前記ポリウレタン樹脂に任意に存在する前記オレフィン性不飽和側基及び/又は末端基とのラジカル反応の代わりに、又はそれに加えて行われる。この後に続いて、先に記載した通り、ラジカル重合を介する前記グラフト重合が再度行なわれる。いずれの場合にも、結果として、オレフィン性不飽和化合物、好ましくはオレフィン性不飽和モノマーでグラフト化されたポリウレタン樹脂が得られる。
【0080】
前記ポリウレタン樹脂が、好ましくグラフト化される、オレフィン性不飽和化合物として、これらの目的のために当業者が利用可能である、実質的に全てのラジカル重合性、オレフィン性不飽和、及び有機モノマーを使用することが可能である。多数の好ましいモノマー種類(monomer class)が、例として:
・(メタ)アクリル酸、又は他のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、
・アルキル基中に20個以下の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸アルキル及び/又はシクロアルキルエステル、
・少なくとも1個の酸基、さらに具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸等の、正確に1個のカルボン酸基を含むエチレン性不飽和モノマー、
・α-位で分岐し、5~18個の炭素原子を有するモノカルボン酸のビニルエステル、
・(メタ)アクリル酸と、α-位で分岐し、5~18個の炭素原子を有するモノカルボン酸のグリシジルエステルとの反応生成物、
・オレフィン(例えばエチレン)、(メタ)アクリルアミド、ビニル芳香族炭化水素(例えばスチレン)、塩化ビニル等のビニル化合物、及び/又はエチルビニルエーテル等のビニルエーテル等のさらなるエチレン性不飽和モノマー、
によって特定され得る。
【0081】
好ましくは、(メタ)アクリレート基を含むモノマーが使用され、そこで、グラフト化によって結合する前記側鎖が、ポリ(メタ)アクリレート系側鎖である。
【0082】
それを介して前記オレフィン性不飽和化合物との前記グラフト重合が進行し得る、前記ポリウレタン樹脂中のオレフィン性不飽和側基、及び/又は末端基は、前記ポリウレタン樹脂中に、好ましくは特定のモノマーを介して導入される。これらの特定のモノマーは、オレフィン性不飽和基に加えて、例えば、イソシアネート基に対して反応性である少なくとも1個の基も含む。ヒドロキシル基、さらには第1級、及び第2級アミノ基が好ましい。ヒドロキシル基が特に好ましい。
【0083】
それを介して前記オレフィン性不飽和側基、及び/又は末端基が、前記ポリウレタン樹脂中に導入され得る、前記モノマーも、当然、前記ポリウレタン樹脂が、その後、オレフィン性不飽和化合物で、さらにグラフト化されることなく使用されてもよい。しかしながら、前記ポリウレタン樹脂は、オレフィン性不飽和化合物でグラフト化されることが好ましい。
【0084】
好ましく存在する前記ポリウレタン樹脂は、自己架橋性、及び/又は外部架橋性バインダーであり得る。前記ポリウレタン樹脂は、好ましくは、それを介して外部架橋が可能である、反応性官能基を含む。その場合、好ましくは、前記着色水性ベースコート材料中に、少なくとも1種の架橋剤が存在する。それを介して外部架橋が可能である、前記反応性官能基は、さらに具体的にはヒドロキシル基である。特に有利には、本発明の方法の目的のため、ポリヒドロキシ官能性ポリウレタン樹脂を使用することが可能である。これは、前記ポリウレタン樹脂が、平均で分子当たり1個より多いヒドロキシル基を含むことを意味する。
【0085】
前記ポリウレタン樹脂は、ポリマー化学の慣例的な方法によって調製される。これは、例えば、ポリイソシアネート及びポリオールの、ポリウレタンへの重合、並びに好ましくは、その後、オレフィン性不飽和化合物で続く、グラフト重合を意味する。これらの方法は、当業者に公知であり、個々に適応され得る。例となる調製方法、及び反応条件は、ヨーロッパ特許EP0521928B1、第2頁第57行~第8頁第16行に見出され得る。
【0086】
好ましく存在する前記ポリウレタン樹脂は、例えば、0~250mgKOH/g、ただしさらに具体的には20~150mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。前記ポリウレタン樹脂の酸価は、好ましくは5~200mgKOH/g、さらに具体的には10~40mgKOH/gである。本発明との関連で、前記ヒドロキシル価はDIN53240に従って測定される。
前記ポリウレタン樹脂の含有量は、いずれの場合にも前記ベースコート材料の膜形成固形分(film-forming solid)に基づいて、好ましくは5~80質量%、さらに好ましくは8~70質量%、さらに好ましくは10~60質量%である。
【0087】
本発明との関連で、ポリウレタン(ポリウレタン樹脂とも称される)及びポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートの両方についての時折の言及に関わらず、一般用語としての表現「ポリウレタン」は、ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートを包含する。したがって、特定の一節において、前記2種類のポリマーが区別されず、その代わりに、表現「ポリウレタン」又は「ポリウレタン樹脂」のみが記載されている場合、両方のポリマーの種類が包含される。
【0088】
最終的にバインダー画分に相当する膜形成固形分は、顔料、及び適切な場合には、充填剤を除いて、前記ベースコート材料の不揮発性質量画分を意味する。前記膜形成固形分は、以下のように測定され得る。前記着色水性ベースコート材料の試料(約1g9を50~100倍量のテトラヒドロフランと混合し、約10分間撹拌する。次いで、不溶性顔料及び任意の充填剤をろ過によって除去し、前記残渣を少量のTHFで洗浄し、結果として得られたろ液から、前記THFをロータリーエバポレーターで除去する。前記ろ液の残渣を120℃で2時間乾燥し、秤量することによって、結果として得られた膜形成固形分を得る。
【0089】
前記着色水性ベースコート材料の総質量に基づいて、全てのポリウレタン樹脂の質量パーセント画分の合計は、好ましくは2~40質量%、さらに好ましくは2.5~30質量%、特に好ましくは3~20質量%である。
【0090】
好ましくは増粘剤も存在する。適切な増粘剤は、フィロケイ酸塩の群からの無機増粘剤である。しかしながら、前記無機増粘剤と同様に、1種以上の有機増粘剤を使用することも可能である。これらは、好ましくは、例えば、市販製品Rheovis AS130(BASF)等の(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤、及び例えば、市販製品Rheovis PU 1250(BASF)等のポリウレタン増粘剤からなる群から選択される。前記使用される増粘剤は、使用されるバインダーとは異なる。
【0091】
また、前記着色水性ベースコート材料は、少なくとも1種の補助剤(adjuvant)をさらに含み得る。そのような補助剤の例は、残渣無しに、又は実質的に残渣無しに熱的に分解され得る塩、物理的、熱的、及び/又は化学線で硬化可能であり、上記のポリマーと異なるバインダーとしての樹脂、さらなる架橋剤、有機溶媒、反応性希釈剤、透明顔料、充填剤、分子分散可溶性染料(molecularly dispersely soluble dye)、ナノ粒子、光安定剤、酸化防止剤、脱気剤、乳化剤、スリップ添加剤、重合禁止剤、ラジカル重合の開始剤、接着促進剤、流れ制御剤、膜形成補助剤、垂れ制御剤(sag control agent)(SCAs)、難燃剤、腐食防止剤、ワックス、乾燥剤、殺生物剤、及び艶消し剤(matting agent)である。フィロケイ酸塩、又は前記使用されるバインダーとは異なる(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤、或いはポリウレタン増粘剤等の有機増粘剤から成る群からの有機増粘剤等の増粘剤も含まれ得る。
【0092】
前述の適切な補助剤は、例えば、
・ドイツ特許出願DE19948004A1、第14頁第4行~第17頁第5行、
・ドイツ特許DE10043405C1、第5欄、段落[0031]~[0033]
から公知である。それらは、慣例的な、且つ公知の量で使用される。
【0093】
本発明のベースコート材料の固形分は、手掛ける事例の要求に従って変化し得る。
【0094】
前記固形分は、塗布、さらに具体的にはスプレー塗布に要求される粘度によって、主に導かれるので、当業者により、任意に数回の予備的な試験の助けを受け、一般的な技術知識に基づいて調整され得る。
【0095】
前記ベースコート材料の固形分は、好ましくは5~70質量%、さらに好ましくは8~60質量%、特に好ましくは12~55質量%である。
【0096】
固形分(不揮発性画分)は、特定条件下で蒸発時の残渣として残存する質量分率を意味する。本出願において、前記固形分は、他に明確に指示がない限り、前記固形分は、DIN EN ISO3251に従って測定される。これは、前記ベースコート材料を130℃で60分間蒸発させることによって行なわれる。
【0097】
他に指示がない限り、この試験方法は、例えば、前記ベースコート材料の総質量の比率としての、前記ベースコート材料の種々の成分の画分を測定するために同様に使用される。したがって、例えば、前記ベースコート材料に添加されるポリウレタン樹脂の分散液の固形分は、全ての組成物の比率として、このポリウレタン樹脂の画分を確定するために、相応に測定され得る。
【0098】
本発明のベースコート材料は水性である。表現「水性」は、これに関連して当業者に公知である。前記語句は、原則として、専ら有機溶媒にのみに基づくのではなく、すなわち、その溶媒として専ら有機系溶媒のみを含有するのではなく、それどころか対照的に、溶媒としてかなりの割合の水を含むベースコート材料のことを称する。本発明の目的のため、「水性」は、好ましくは、問題となる前記コーティング組成物、さらに具体的には前記ベースコート材料が、いずれの場合にも存在する前記溶媒の総量(すなわち、水、及び有機溶媒)に基づいて、少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも50質量%、非常に好ましくは60質量%の水の割合を有することを意味するものと理解される。次いで、好ましくは、前記水の割合は、いずれの場合にも存在する前記溶媒の総量に基づいて40~90質量%、さらに具体的には50~80質量%、非常に好ましくは60~75質量%である。
【0099】
本発明に従って使用される前記ベースコート材料は、ベースコート材料を製造するための慣例的で公知である混合部品(mixing assembly)、及び混合技術を使用して製造され得る。
【0100】
[本発明の方法、及び本発明の多層塗装系]
本発明のさらなる態様は、
(1)着色水性ベースコート材料を基板に塗布する工程、
(2)段階(1)で塗布した前記コーティング材料からポリマー膜を形成する工程、
(3)クリアコート材料を結果として得られるベースコートに塗布する工程、続いて、
(4)前記クリアコートと一緒に、前記ベースコートを硬化する工程、
による多層塗装系の製造方法であって、
工程(1)において、本発明のベースコート材料、又は本発明の少なくとも1種の反応生成物を含むベースコート材料を使用する製造方法である。本発明の反応生成物、及び本発明の着色水性ベースコート材料に関して上記の観察の全ては、本発明の方法についても有効である。これは、さらに具体的には、全ての好ましい、非常に好ましい、特に好ましい特徴についても当てはまる。
【0101】
前記方法は、好ましくは、多層着色塗装系、効果塗装系、並びに着色及び効果塗装系を製造するために使用される。
【0102】
本発明に従って使用される着色水性ベースコート材料は、一般に、サーフェーサー又はプライマー・サーフェーサーで前処理されている金属又はプラスチック基板に塗布される。前記ベースコート材料は、任意に前記プラスチック基板に直接塗布されてもよい。
【0103】
金属基板がコーティングされる場合、サーフェーサー又はプライマー・サーフェーサーが塗布される前に、好ましくは電気塗装系でさらにコーティングされる。
【0104】
プラスチック基板がコーティングされる場合、それはまた、サーフェーサー、又はプライマー・サーフェーサーが塗布される前に、好ましくは前処理される。そのような前処理のために最も高い頻度で使用される技術は、火炎、プラズマ処理、及びコロナ放電のものである。好ましくは、火炎処理が使用される。
【0105】
本発明の着色水性ベースコート材料の、上記の通り、硬化した電気塗装系及び/又はサーフェーサーで既にコーティングされた金属基板への塗布は、例えば5~100μm、好ましくは5~60μmの範囲の、自動車産業における慣例的な膜厚で行われてもよい。これは、スプレー塗布法、例えば、圧縮空気噴霧(compressed air spraying)、エアレス噴霧(airless spraying)、高速回転(high-speed rotation)、静電スプレー塗布(electrostatic spray application)(ESTA)を単独で、又は例えば熱風噴霧(hot air spraying)等のホットスプレー塗布と共に使用して行われる。
【0106】
着色ベースコート材料の塗布の後に、それは、公知の方法で乾燥され得る。例えば、好ましい(1-成分)ベースコート材料は、室温で1~60分間フラッシングされ、続いて、好ましくは任意に、30~90℃の僅かに高い温度で乾燥され得る。本発明との関連で、フラッシング及び乾燥は、有機溶媒、及び/又は水の蒸発を意味し、その結果として、前記塗装は、より乾燥しているが、まだ硬化していないか、又はまだ完全に架橋したコーティング膜を形成していない。
【0107】
その後、市販のクリアコート材料が、同様に一般的な方法で塗布され、この場合も、前記膜厚は慣例的な範囲、例えば5~100μmの範囲である。
前記クリアコート材料が塗布された後、それは、例えば1~60分間室温でフラッシングされ得、任意に乾燥され得る。その後、前記クリアコート材料は、前記塗布された着色ベースコート材料とともに硬化される。この手順の過程で、例えば、基板上に本発明の多層着色、及び/又は効果塗装系を製造するために、架橋反応が生じる。硬化は、好ましくは60~200℃の温度で、熱的に行なわれる。熱硬化性ベースコート材料は、好ましくは、さらなるバインダーとして、ポリウレタン樹脂、及び架橋剤としてアミノプラスト樹脂、又はブロック化、又は非ブロック化ポリイソシアネート、好ましくはアミノプラスト樹脂を含むものである。アミノプラスト樹脂の中では、メラミン樹脂が好ましい。
【0108】
具体的な一実施形態において、前記多層塗装系を製造する方法は、以下の工程:
前記基板への電気塗装材料の電気泳動塗布(electrophoretic application)、及びそれに続く前記電気塗装材料の硬化によって、前記金属基板上に硬化した電気塗装膜を生成する工程、
(i)前記電気塗装膜への水性ベースコート材料の直接塗布、又は(ii)前記電気塗装膜への2種以上のベースコート材料の連続的な直接塗布によって、前記硬化した電気塗装膜上に直接連続的に(i)ベースコート膜、又は(ii)複数のベースコート膜を生成する工程、
(i)1層のベースコート膜、又は(ii)前記最上層のベースコート膜へのクリアコート材料の直接塗布によって、(i)前記ベースコート膜、又は(ii)前記最上層のベースコート膜上に直接クリアコート膜を生成する工程、
を含み、
(i)1種のベースコート材料、又は(ii)前記ベースコート材料の少なくとも1種が、本発明のベースコート材料であり、
前記ベースコート膜(i)、又は前記ベースコート膜(複数)(ii)、さらには前記クリアコート膜を一緒に硬化する。
【0109】
その結果、後者の実施形態においては、上記の標準的方法と比較して、通常のサーフェーサーの塗布及び別個の硬化がない。その代わり、前記電気塗装膜に塗布された全ての膜が、一緒に硬化され、それにより、全体的な操作がさらに経済的になる。それにもかかわらず、このような方法で、特に本発明の反応生成物を含む本発明のベースコート材料の使用によって、優れた機械的安定性、及び接着性を有し、この理由で、技術的に優れた多層塗装系が構成される。
【0110】
基板への、又は予め生成されたコーティング膜へのコーティング材料の直接塗布は、以下の通り理解される。前記それぞれのコーティング材料は、それから生成される前記コーティング膜が、前記基板上に(前記他のコーティング膜上に)配置され、前記基板と(前記他のコーティング膜と)直接接触するような方法で塗布される。したがって、コーティング膜及び基板(他のコーティング膜)の間には、特に他の層(coat)はない。細目「直接」がない場合は、前記塗布されたコーティング膜は、前記基板(前記他のコーティング膜)上に配置されていても、直接接触して存在する必要はない。さらに具体的には、さらなるコーティングがそれらの間に配置され得る。したがって、本発明との関連で、「直接」に関して、特定化のない場合は、明らかに「直接」への制限はない。
【0111】
プラスチック基板は、基本的に金属基板と同様な方法でコーティングされる。しかしながら、ここで、一般に、硬化は30~90℃のかなり低温で行なわれる。したがて、二成分クリアコート材料の使用が好ましい。これに関連して、バインダーとしてポリウレタン樹脂を含み、架橋剤を含まないベースコート材料を使用することも好ましい。
【0112】
本発明の方法は、金属、及び非金属基板、さらに具体的にはプラスチック基板、好ましくは自動車車体、又はそれらの部品を塗装するために使用され得る。
【0113】
本発明の方法は、さらに、OEM仕上げにおける二重仕上げのために使用され得る。これは、本発明の方法によってコーティングされている基板が、二度目に本発明の方法によって、同様に塗装されることを意味する。
【0114】
本発明は、さらに、上記の方法によって製造される多層塗装系に関連する。これらの多層塗装系は、以下、本発明の多層塗装系と称される。
【0115】
本発明の反応生成物、及び前記着色水性ベースコート材料に関連する上記の観察の全てはまた、前記多層塗装系、及び本発明の方法についても有効である。これは、特に、全ての好ましい、さらに好ましい、及び最も好ましい特徴についても当てはまる。
【0116】
本発明の多層塗装系は、好ましくは多層着色塗装系、効果塗装系、及び着色及び効果塗装系である。
【0117】
本発明のさらなる態様は、段階(1)からの前記基板が、欠陥(defect)を有する多層塗装系である、本発明の方法に関連する。したがって、欠陥を有するこの基板/多層塗装系は、修復されるか、又は完全に再コーティングされる、最初の仕上げである。
【0118】
したがって、本発明の方法は、多層塗装系上の欠陥を修復するために適切である。膜の欠陥は、一般に、それらの形状またはそれらの外観に従って、通常名付けられる前記コーティング上、及びコーティング中の不良(fault)である。当業者は、そのような膜の欠陥の可能性のある種類のホスト(host)を知っている。それらは、例えば、Roempp-Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York,1998年、第235頁、「膜の欠陥(Film defects)」に記載される。
【0119】
本発明の方法によって製造される前記多層塗装系は、同様にそのような欠陥を有し得る。したがって、本発明の方法の好ましい一実施形態において、段階(1)からの前記基板は、欠陥を示す本発明の多層塗装系である。
【0120】
これらの多層塗装系は、好ましくは自動車の車体、又はそれらの部品上に、自動車OEM仕上げとの関連で、上記で特定される本発明の方法によって製造される。そのような欠陥が、OEM仕上げが行なわれた直後に生じる場合、それらは直ちに修復される。したがって、用語「OEM自動車補修」も使用される。小さな欠陥のみが修復を必要とする場合、「スポット(spot)」のみが修復され、車体全体は完全に再コーティング(二重コーティング(dual coating))されない。前者のプロセスは、「スポット修復」と称される。したがって、OEM自動車補修における本発明の多層塗装系(最初の仕上げ)上の欠陥を修復するための本発明の方法の使用が、特に好ましい。
【0121】
本発明との関連で、自動車補修の部分(segment)に言及する場合、言い換えれば、欠陥の修復が主題であり、特定の基板が欠陥を有する多層塗装系である場合、これは、当然、この欠陥を有する基板/多層塗装系(最初の仕上げ)が、一般に、上記のようにプラスチック基板上、又は金属基板上に位置していることを意味する。
【0122】
前記修復部位が、最初の仕上げの残りの部分との色差を有さないようにするため、欠陥を修復するために、本発明の方法の段階(1)で使用される前記水性ベースコート材料は、前記欠陥を有する基板/多層塗装系(最初の仕上げ)を製造するために使用されたものと同じであることが好ましい。
【0123】
したがって、本発明の反応生成物、及び前記水性着色ベースコート材料に関連する上記の観察はまた、話題に上がっている、多層塗装系上の欠陥を修復するための本発明の方法の使用についても有効である。これは、特に、全ての記載された好ましい、非常に好ましい、及び特に好ましい特徴についても当てはまる。さらに、修復される本発明の多層塗装系は、多層着色塗装系、効果塗装系、及び着色及び効果塗装系であることが好ましい。
【0124】
上記の本発明の多層塗装系上の欠陥は、上記の本発明の方法によって修復され得る。この目的のため、前記多層塗装系上の修復される表面は、最初に研磨(abrade)され得る。好ましくは、前記研磨は、最初の仕上げから、前記ベースコート及び前記クリアコートのみ、部分的に研磨する(sand)、又は研磨除去する(sand off)ことで行なわれるが、一般にそれらの真下に位置しているプライマー層、及びサーフェーサー層は研磨除去しない。このような方法で、補修中、特殊なプライマー、及びプライマー・サーフェーサーの新たな塗布は特に必要がない。ここで、一般的に言えば、作業場(workshop)における補修と対照的に、欠陥が、前記ベースコート、及び/又はクリアコート領域でのみ生じ、特に下層のサーフェーサー及びプライマー層の領域には生じないので、この研磨の形態は、特にOEM自動車補修の部分において確立されている。後者のコーティングにおける欠陥は、前記作業場の補修部門で遭遇する可能性が高い。例としては、例えば機械的影響によって生じ、前記基板表面(金属又はプラスチック基板)まで下方に広がる場合が多い、引っ掻き傷(scratch)等の塗装損傷(paint damage)を含む。
【0125】
前記研磨手順の後、前記着色水性ベースコート材料は、最初の仕上げにおける前記欠陥部位に、空気霧化(pneumatic atomization)によって塗布される。前記着色水性ベースコート材料が塗布された後、公知の方法で乾燥され得る。例えば、前記ベースコート材料は、室温で1~60分間乾燥され、続いて、任意に30~80℃の僅かに高い温度で乾燥され得る。本発明の目的のため、フラッシング及び乾燥は、有機溶媒、及び/又は水の蒸発を意味し、それによって、前記コーティング材料は、まだ完全に硬化していない。本発明の目的のため、前記ベースコート材料は、バインダーとしてポリウレタン樹脂、及び架橋剤としてアミノプラスト樹脂、好ましくはメラミン樹脂を含むことが好ましい。
【0126】
続いて、市販のクリアコート材料が、同様に通常である技術によって、塗布される。前記クリアコート材料の塗布に続いて、それは、例えば、室温で1~60分間フラッシングされ、任意に乾燥され得る。その後、前記クリアコート材料は、前記塗布された着色ベースコート材料とともに硬化される。
【0127】
いわゆる、低温焼成(low-temperature baking)の場合、好ましくは、硬化は、20~90℃の温度で行なわれる。ここで、二成分クリアコート材料を使用することが好ましい。上記のように、ポリウレタン樹脂がさらなるバインダーとして使用され、且つアミノプラスト樹脂が、架橋剤として使用される場合、これらの温度では、前記ベースコート膜におけるアミノプラスト樹脂によって、僅かに架橋するだけである。ここで、その硬化剤としての機能に加えて、前記アミノプラスト樹脂は、可塑化にも役立ち、且つ顔料湿潤の役に立ち得る。前記アミノプラストの他に、非ブロック化イソシアネートも使用され得る。使用される前記イソシアネートの特質にもよるが、それらは、20℃程度の低い温度で架橋する。
高温焼成と称される場合、好ましくは、硬化は、130~150℃の温度で達成される。ここでは、一成分、及び二成分クリアコート材料の両方が使用される。上記のように、ポリウレタン樹脂がさらなるバインダーとして使用され、且つアミノプラスト樹脂が、架橋剤として使用される場合、これらの温度で、前記ベースコート膜における前記アミノプラスト樹脂による架橋が生じる。
【0128】
多層塗装系上の欠陥を修復の一環として、言い換えれば、前記基板が欠陥を含む最初の仕上げ、好ましくは、欠陥を含む本発明の多層塗装系である場合、低温焼成が使用されることが好ましい。
【0129】
本発明のさらなる態様は、機械的安定性、特にストーンチップ耐性を改善するための着色水性ベースコート材料中での、本発明の反応生成物の使用方法である。
【0130】
前記ストーンチップ耐性の品質は、DIN55966-1ストーンチップ試験を用いて測定され得る。一般に、多層塗装系は、ベースコート材料及びクリアコート材料の塗布、並びにその後の硬化によって、電着コーティングされた鋼製パネル(electrodeposition-coated steel panel)上に製造される。その後、DIN EN ISO20567-1に従って、評価が行なわれる(低い数値ほど、良好なストーンチップ耐性を表す)。
【0131】
本発明は、以下に、実施例を用いて説明される。
【実施例】
【0132】
[数平均分子量の測定:]
数平均分子量は、蒸気圧浸透圧によって測定した。使用される装置の実験較正定数を測定するための較正物質としてベンゾフェノンを有するトルエン中50℃での分析する成分の濃度系列で実施した(E.Schroeder、G.Mueller、K.-F.Arndt、「Leitfaden der Polymercharakterisierung」[ポリマーの特性評価の原理(Principles of polymer characterization)]、Akademie-Verlag、Berlin、第47頁-第54頁、1982年に従う(ここで使用された較正物質はベンジルであった))。
【0133】
[本発明の反応生成物(IR)、さらには比較のために使用される反応生成物(CR)の製造:]
[IR1:]
アンカースターラー、温度計、凝縮器、頭上温度測定(overhead temperature measurement)のための温度計を備えた4Lステンレス鋼製反応器中で、128.1gのピロメリット酸二無水物(CAS No.89-32-7(Lomza))(0.5873mol)及び2349.9gの直鎖ポリTHF2000(BASF SE)(56.1mgKOH/gのOH価(DIN53240に従って測定されたOH価)を有する)(1.1750mol)、及び50.0gのシクロヘキサンを、2.0gのジ-n-ブチルスズ酸化物(Axion(登録商標)CS2455(Chemtura))の存在下で、130℃の生成物温度まで加熱し、この温度を維持した。
【0134】
約3時間後、前記反応混合物は透明であり、初めて酸価を測定した。前記バッチを、前記酸価が26.3mgKOH/g(理論:26.6mgKOH/g)になるまで130℃で3時間以上保持した。
【0135】
130℃で撹拌しながら減圧下でシクロヘキサンを蒸留除去した。ガスクロマトグラフィーで、シクロヘキサン含有量が0.15質量%未満であることが分かった。
【0136】
最初に室温で液体であるポリマーは、3日後に結晶化し始める。前記固体のポリマーは、80℃の温度で容易に溶融し、室温でも少なくとも2時間は液体のままであり、そのため、この状態でコーティング製剤に容易に添加し得る。
【0137】
固形分(130℃、60分、1g):99.9%
酸価:26.3mgKOH/g
数平均分子量(蒸気圧浸透圧):4100g/mol
粘度(樹脂:ブチルグリコール(BASF SE)=2:1):3100mPa・s(Brookfield CAP2000+回転粘度計を用いて、スピンドル3、せん断速度:2500s-1、23℃で測定した)
【0138】
[IR2:]
アンカースターラー、温度計、凝縮器、頭上温度測定のための温度計を備えた4Lステンレス鋼製反応器中で89.8gのピロメリット酸二無水物(CAS No.89-32-7(Lomza))(0.4117mol)及び2388.2gの直鎖ポリTHF2900(Terathane(登録商標)(Invista)))(38.7mgKOH/gのOH価(DIN53240に従って測定されたOH価)を有する)(0.8235mol)、及び20.0gのシクロヘキサンを、2.0gのジ-n-ブチルスズ酸化物(Axion(登録商標)CS2455(Chemtura))の存在下で、130℃の生成物温度まで加熱し、この温度を維持した。
【0139】
約4時間後、前記反応混合物は透明であり、初めて酸価を測定した。前記バッチを、前記酸価が19.0mgKOH/g(理論:18.6mgKOH/g)になるまで130℃で3時間以上保持した。
【0140】
130℃で撹拌しながら減圧下でシクロヘキサンを蒸留除去した。ガスクロマトグラフィーで、シクロヘキサン含有量が0.1質量%未満であることが分かった。
【0141】
最初に室温で液体であるポリマーは、2日後に結晶化し始める。前記固体のポリマーは、80℃の温度で容易に溶融し、室温でも少なくとも2時間は液体のままであり、そのため、この状態でコーティング製剤に容易に添加し得る。
【0142】
固形分(130℃、60分、1g):100.0%
酸価:19.0mgKOH/g
数平均分子量(蒸気圧浸透圧):5800g/mol
粘度(樹脂:ブチルグリコール(BASF SE)=2:1):7500mPa・s(Brookfield CAP2000+回転粘度計を用いて、スピンドル3、せん断速度:1250s-1、23℃で測定した)
【0143】
[IR3:]
アンカースターラー、温度計、凝縮器、頭上温度測定のための温度計を備えた4Lステンレス鋼製反応器中で285.3gの4,4’-(4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)(CAS No.38103-06-9(Changzhou Sunlight Pharmaceutical Co.))(0.5481mol)及び2192.7gの直鎖ポリTHF2000(BASF SE)(56.1mgKOH/gのOH価(DIN53240に従って測定されたOH価)を有する)(1.0963mol)、及び20.0gのシクロヘキサンを、2.0gのジ-n-ブチルスズ酸化物(Axion(登録商標)CS2455(Chemtura))の存在下で、130℃の生成物温度まで加熱し、この温度を維持した。
【0144】
約4時間後、前記反応混合物は透明であり、初めて酸価を測定した。前記バッチを、前記酸価が24.6mgKOH/g(理論:24.8mgKOH/g)になるまで130℃で3時間以上保持した。
【0145】
130℃で撹拌しながら減圧下でシクロヘキサンを蒸留除去した。ガスクロマトグラフィーで、シクロヘキサン含有量が0.15質量%未満であることが分かった。
【0146】
最初に室温で液体であるポリマーは、数時間後に結晶化し始める。前記固体のポリマーは、80℃の温度で容易に溶融し、室温でも少なくとも2時間は液体のままであり、そのため、この状態でコーティング製剤に容易に添加し得る。
【0147】
固形分(130℃、60分、1g):99.9%
酸価:24.6mgKOH/g
数平均分子量(蒸気圧浸透圧):4300g/mol
粘度(樹脂:ブチルグリコール(BASF SE)=2:1):135mPa・s(Brookfield CAP2000+回転粘度計を用いて、スピンドル3、せん断速度:10000s-1、23℃で測定した)
【0148】
[IR4:]
アンカースターラー、温度計、凝縮器、頭上温度測定のための温度計を備えた4Lステンレス鋼製反応器中で178.3gの4,4’-オキシジフタル酸無水物(CAS No.1823-59-2(Changzhou Sunlight Pharmaceutical Co.))(0.5748mol)及び2299.7gの直鎖ポリTHF2000(BASF SE)(56.1mgKOH/gのOH価(DIN53240に従って測定されたOH価)を有する)(1.1498mol)、及び20.0gのシクロヘキサンを、2.0gのジ-n-ブチルスズ酸化物(Axion(登録商標)CS2455(Chemtura))の存在下で、130℃の生成物温度まで加熱し、この温度を維持した。
【0149】
約4時間後、前記反応混合物は透明であり、初めて酸価を測定した。前記バッチを、前記酸価が26.2mgKOH/g(理論:26.0mgKOH/g)になるまで130℃で3時間以上保持した。
【0150】
130℃で撹拌しながら減圧下でシクロヘキサンを蒸留除去した。ガスクロマトグラフィーで、シクロヘキサン含有量が0.1質量%未満であることが分かった。
【0151】
最初に室温で液体であるポリマーは、1日後に結晶化し始める。前記固体のポリマーは、80℃の温度で容易に溶融し、室温でも少なくとも2時間は液体のままであり、そのため、この状態でコーティング製剤に容易に添加し得る。
【0152】
固形分(130℃、60分、1g):100.0%
酸価:26.2mgKOH/g
数平均分子量(蒸気圧浸透圧):4100g/mol
粘度(樹脂:ブチルグリコール(BASF SE)=2:1):5200mPa・s(Brookfield CAP2000+回転粘度計を用いて、スピンドル3、せん断速度:1250s-1、23℃で測定した)
【0153】
[IR5:]
アンカースターラー、温度計、凝縮器、頭上温度測定のための温度計を備えた4Lステンレス鋼製反応器中で115.8gの1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CAS No.4415-87-6(Synthon Chemicals))(0.5905mol)及び2362.2gの直鎖ポリTHF2000(BASF SE)(56.1mgKOH/gのOH価(DIN53240に従って測定されたOH価)を有する)(1.1811mol)、及び20.0gのシクロヘキサンを、2.0gのジ-n-ブチルスズ酸化物(Axion(登録商標)CS2455(Chemtura))の存在下で、130℃の生成物温度まで加熱し、この温度を維持した。
【0154】
約3時間後、前記反応混合物は透明であり、初めて酸価を測定した。前記バッチを、前記酸価が26.4mgKOH/g(理論:26.7mgKOH/g)になるまで130℃で3時間以上保持した。
【0155】
130℃で撹拌しながら減圧下でシクロヘキサンを蒸留除去した。ガスクロマトグラフィーで、シクロヘキサン含有量が0.15質量%未満であることが分かった。
【0156】
最初に室温で液体であるポリマーは、1日後に結晶化し始める。前記固体のポリマーは、80℃の温度で容易に溶融し、室温でも少なくとも2時間は液体のままであり、そのため、この状態でコーティング製剤に容易に添加し得る。
【0157】
固形分(130℃、60分、1g):99.9%
酸価:26.4mgKOH/g
数平均分子量(蒸気圧浸透圧):4100g/mol
粘度(樹脂:ブチルグリコール(BASF SE)=2:1):3300mPa・s(Brookfield CAP2000+回転粘度計を用いて、スピンドル3、せん断速度:2500s-1、23℃で測定した)
【0158】
[IR6:]
アンカースターラー、温度計、凝縮器、頭上温度測定のための温度計を備えた4Lステンレス鋼製反応器中で141.5gのビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物(CAS No.1719-83-1(SigmaAldrich))(0.57mol)及び2280.0gの直鎖ポリTHF2000(BASF SE)(56.1mgKOH/gのOH価(DIN53240に従って測定されたOH価)を有する)(1.14mol)、及び20.0gのシクロヘキサンを、2.0gのジ-n-ブチルスズ酸化物(Axion(登録商標)CS2455(Chemtura))の存在下で、130℃の生成物温度まで加熱し、この温度を維持した。
約3時間後、前記反応混合物は透明であり、初めて酸価を測定した。前記バッチを、前記酸価が25.9mgKOH/g(理論:26.4mgKOH/g)になるまで130℃で3時間以上保持した。
【0159】
130℃で撹拌しながら減圧下でシクロヘキサンを蒸留除去した。ガスクロマトグラフィーで、シクロヘキサン含有量が0.15質量%未満であることが分かった。
【0160】
最初に室温で液体であるポリマーは、1日後に結晶化し始める。前記固体のポリマーは、80℃の温度で容易に溶融し、室温でも少なくとも2時間は液体のままであり、そのため、この状態でコーティング製剤に容易に添加し得る。
【0161】
固形分(130℃、60分、1g):99.9%
酸価:25.9mgKOH/g
数平均分子量(蒸気圧浸透圧):4000g/mol
粘度(樹脂:ブチルグリコール(BASF SE)=2:1):3700mPa・s(Brookfield CAP2000+回転粘度計を用いて、スピンドル3、せん断速度:2500s-1、23℃で測定した)
【0162】
[IR7:]
アンカースターラー、温度計、凝縮器、頭上温度測定のための温度計を備えた4Lステンレス鋼製反応器中で180.8gのベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(CAS No.2421-28-5(SigmaAldrich))(0.561mol)及び2244.0gの直鎖ポリTHF2000(BASF SE)(56.1mgKOH/gのOH価(DIN53240に従って測定されたOH価)を有する)(1.112mol)、及び20.0gのシクロヘキサンを、2.0gのジ-n-ブチルスズ酸化物(Axion(登録商標)CS2455(Chemtura))の存在下で、130℃の生成物温度まで加熱し、この温度を維持した。
【0163】
約3時間後、前記反応混合物は透明であり、初めて酸価を測定した。前記バッチを、前記酸価が25.7mgKOH/g(理論:26.0mgKOH/g)になるまで130℃で3時間以上保持した。
【0164】
130℃で撹拌しながら減圧下でシクロヘキサンを蒸留除去した。ガスクロマトグラフィーで、シクロヘキサン含有量が0.15質量%未満であることが分かった。
【0165】
最初に室温で液体であるポリマーは、1日後に結晶化し始める。前記固体のポリマーは、80℃の温度で容易に溶融し、室温でも少なくとも2時間は液体のままであり、そのため、この状態でコーティング製剤に容易に添加し得る。
【0166】
固形分(130℃、60分、1g):99.9%
酸価:25.7mgKOH/g
数平均分子量(蒸気圧浸透圧):4100g/mol
粘度(樹脂:ブチルグリコール(BASF SE)=2:1):4200mPa・s(Brookfield CAP2000+回転粘度計を用いて、スピンドル3、せん断速度:2500s-1、23℃で測定した)
【0167】
[CR1:]
DE4009858A、第16欄、第37行~第59行の実施例Dの通り調製されたポリエステルは、比較のために使用される反応生成物としての役割を果たした(ブタノールの代わりにブチルグリコールを有機溶媒として使用し、すなわち、ブチルグリコール及び水が、溶媒として存在する)。前記ポリエステルの対応する分散液は、60質量%の固形分を有する。
【0168】
[水性ベースコート材料の調製]
以下の表に示したように、製剤成分及びその量に関して、以下のことを考慮する必要がある。市販製品、又は他の場所に記載されている調製手順(protocol)を参照する場合、前記参照は、問題となる成分のために選択される主要な指定とは無関係に、正確にこの市販製品、又は正確にその参照された手順で調製された製品である。
【0169】
したがって、製剤成分が、主要な指定「メラミン-ホルムアルデヒド樹脂」を有し、市販製品がこの成分に適応される場合、前記メラミン-ホルムアルデヒド樹脂は、正確にこの市販製品の形態で使用される。したがって、(前記メラミン-ホルムアルデヒド樹脂の)前記活性物質の量について結論を出す場合、溶媒等の前記市販製品中に存在する任意のさらなる成分を考慮する必要がある。
【0170】
したがって、製剤成分のための調製手順が参照され、そのような調製が、例えば、既定された固形分を有するポリマー分散液をもたらす場合、正確にこの分散液が使用される。最重要の要因は、選択されている主要な指定が、用語「ポリマー分散液」であるか、例えば「ポリマー」、「ポリエステル」または「ポリウレタン修飾ポリアクリレート」等の単に前記活性物質であるかどうかではない。(前記ポリマーの)前記活性物質の量について結論を出す場合、このことを考慮する必要がある。
【0171】
表中に示される全ての比率は質量部である。
【0172】
[カソード電気塗装系(cathodic electrocoat system)(CES)に着色コーティングとして直接塗布し得る本発明でない水性ベースコート材料C1の調製]
表Aで「水相」の下に列挙した成分を、記載した順序で一緒に撹拌し、水性混合物を形成させた。次の工程において、「有機相」の下に列挙した成分から有機混合物を調製した。前記有機混合物を前記水性混合物に添加した。その後、前記混合した混合物を10分間撹拌し、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを使用して、pH8、及びスプレー粘度58mPa・s(回転粘度計(Rheomat RM180機器(Mettler-Toledo))を使用して、せん断荷重1000s-1、23℃で測定した)に調整した。
【0173】
【0174】
[青色ペーストの調製:]
前記青色ペーストを、69.8質量部のアクリル化ポリウレタン分散液(国際特許出願WO91/15528、バインダー分散液Aの通り調製した)、12.5質量部のPaliogen(登録商標)Blue L6482、1.5質量部のジメチルエタノールアミン(10%濃度(DI水中))、1.2質量部の市販のポリエーテル(Pluriol(登録商標)P900(BASF SE))、及び15質量部の脱イオン水から調製した。
【0175】
[カーボンブラックペーストの調製:]
前記カーボンブラックペーストを、25質量部のアクリル化ポリウレタン分散液(国際特許出願WO91/15528、バインダー分散液Aの通り調製した)、10質量部のカーボンブラック、0.1質量部のメチルイソブチルケトン、1.36質量部のジメチルエタノールアミン(10%濃度(DI水中))、2質量部の市販のポリエーテル(Pluriol(登録商標)P900(BASF SE))、及び61.45質量部の脱イオン水から調製した。
【0176】
[マイカスラリーの調製:]
前記マイカスラリーを、1.5質量部のポリウレタン系グラフトコポリマー(DE19948004A1(第27頁、実施例2)と同様に調製した)、及び1.3質量部の市販のMica Mearlin Ext.Fine Violet 539V(Merck)を混合するために撹拌要素を使用して得た。
【0177】
[カソード電気塗装系(CES)に着色コーティングとして直接塗布し得る本発明の水性ベースコート材料I1~I7の調製]
前記水性ベースコート材料I1~I7を、表Aと同様に、ただし、CR1の代わりに、反応生成物IR1(水性ベースコート材料I1)、反応生成物IR2(水性ベースコート材料I2)、反応生成物IR3(水性ベースコート材料I3)、反応生成物IR4(水性ベースコート材料I4)、反応生成物IR5(水性ベースコート材料I5)、反応生成物IR6(水性ベースコート材料I6)、反応生成物IR7(水性ベースコート材料I7)を使用して調製した。前記反応生成物IR1又はIR2~IR7の使用される比率は、溶媒の量の補償によって、及び/又は添加される成分の固形分の考慮によって、いずれの場合にも同じであった。
【0178】
【0179】
[水性ベースコート材料C1とI1~I7との比較]
[ストーンチップ耐性]
ストーンチップ耐性の測定のため、前記多層塗装系を以下の一般手順に従って製造した:
使用する基板は、カソードe-塗装(カソード電気塗装)でコーティングした10×20cmの寸法を有する鋼製パネルであった。
【0180】
まず第一に、このパネルに、各ベースコート材料(表B)を塗布した(目標膜厚(乾燥膜厚)20μmで、空気圧によって塗布した)。前記ベースコートを室温で1分間フラッシングした後、それは強制空気オーブン中で、70℃で10分間中間乾燥を行なった。前記中間乾燥した水性ベースコートの上に、慣例の二成分クリアコート材料(Progloss(登録商標)372(BASF Coatings GmbH))を、目標膜厚(乾燥膜厚)40μmで塗布した。結果として得られたクリアコートを室温で20分間フラッシングした。続いて、前記水性ベースコート及び前記クリアコートを、160℃の強制空気オーブン中で30分間硬化させた。
【0181】
結果として得られた多層塗装系について、それらのストーンチップ耐性を試験した。これは、DIN 55966-1のストーンチップ試験を用いて行った。前記ストーンチップ耐性の結果は、DIN EN ISO20567-1に従って評価した。低い数値ほど、良好なストーンチップ耐性を表す。
【0182】
前記結果を表1に示す。前記水性ベースコート材料(WBM)の詳細は、どのWBMが、具体的な多層塗装系に使用されたかを示す。
【0183】
【0184】
前記結果は、本発明の反応生成物のベースコート材料における使用が、水性ベースコート材料1と比較して、前記ストーンチップ耐性を有意に向上させることを強調する。
【0185】
[カソード電気塗装系(CES)への非着色コーティングとして直接塗布し得る本発明ではない水性ベースコート材料C2の調製]
表Cで「水相」の下に列挙した成分を、記載した順序で一緒に撹拌し、水性混合物を形成させた。その後、前記混合した混合物を10分間撹拌し、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを使用して、pH8、及びスプレー粘度58mPa・s(回転粘度計(Rheomat RM180機器(Mettler-Toledo))を使用して、せん断荷重1000s-1、23℃で測定した)に調整した。
【0186】
【0187】
[カーボンブラックペーストの調製:]
前記カーボンブラックペーストを、25質量部のアクリル化ポリウレタン分散液(国際特許出願WO91/15528、バインダー分散液Aの通り調製した)、10質量部のカーボンブラック、0.1質量部のメチルイソブチルケトン、1.36質量部のジメチルエタノールアミン(10%濃度(DI水中))、2質量部の市販のポリエーテル(Pluriol(登録商標)P900(BASF SE))、及び61.45質量部の脱イオン水から調製した。
【0188】
[白色ペーストの調製:]
前記白色ペーストを、43質量部のアクリル化ポリウレタン分散液(国際特許出願WO91/15528、バインダー分散液Aの通り調製した)、50質量部のチタンルチル2310(titanium rutile 2310)、3質量部の1-プロポキシ-2-プロパノール、及び4質量部の脱イオン水から調製した。
【0189】
[カソード電気塗装系(CES)に非着色コーティングとして直接塗布し得る本発明の水性ベースコート材料I8~I14の調製]
前記水性ベースコート材料I8~I14を、表Cと同様に、ただし、CR1の代わりに、反応生成物IR1(水性ベースコート材料I8)、反応生成物IR2(水性ベースコート材料I9)、反応生成物IR3(水性ベースコート材料I10)、反応生成物IR4(水性ベースコート材料I11)、反応生成物IR5(水性ベースコート材料I12)、反応生成物IR6(水性ベースコート材料I13)、反応生成物IR7(水性ベースコート材料I14)を使用して調製した。前記反応生成物IR1又はIR2~IR7の使用される比率は、溶媒の量の補償によって、及び/又は添加される成分の固形分の考慮によって、いずれの場合にも同じであった。
【0190】
【0191】
[水性ベースコート材料C2及びI8~I14に着色コーティングとして直接塗布し得る本発明ではない水性ベースコート材料C3の調製]
表Eで「水相」の下に列挙した成分を、記載した順序で一緒に撹拌し、水性混合物を形成させた。次の工程において、「有機相」の下に列挙した成分から有機混合物を調製した。前記有機混合物を前記水性混合物に添加した。その後、前記混合した混合物を10分間撹拌し、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを使用して、pH8、及びスプレー粘度58mPa・s(回転粘度計(Rheomat RM180機器(Mettler-Toledo))を使用して、せん断荷重1000s-1、23℃で測定した)に調整した。
【0192】
【0193】
[青色ペーストの調製:]
前記青色ペーストを、69.8質量部のアクリル化ポリウレタン分散液(国際特許出願WO91/15528、バインダー分散液Aの通り調製した)、12.5質量部のPaliogen(登録商標)Blue L6482、1.5質量部のジメチルエタノールアミン(10%濃度(DI水中))、1.2質量部の市販のポリエーテル(Pluriol(登録商標)P900(BASF SE))、及び15質量部の脱イオン水から調製した。
【0194】
[水性ベースコート材料C2とI8~I14との比較]
ストーンチップ耐性の測定のため、前記多層塗装系を以下の一般手順に従って製造した:
使用する基板は、カソードe-塗装でコーティングした10×20cmの寸法を有する鋼製パネルであった。
【0195】
まず第一に、このパネルに、各ベースコート材料(表D)を目標膜厚(乾燥膜厚)15μmで、空気圧によって塗布した。前記ベースコートを室温で4分間フラッシングした後、前記水性ベースコート材料C3を目標膜厚(乾燥膜厚)15μmで、空気圧によって塗布した。その後、室温で4分間フラッシングし、強制空気オーブン中で、70℃で10分間中間乾燥を行なった。前記中間乾燥した水性ベースコートの上に、慣例の二成分クリアコート材料(Progloss(登録商標)372(BASF Coatings GmbH))を、目標膜厚(乾燥膜厚)40μmで塗布した。結果として得られたクリアコートを室温で20分間フラッシングした。続いて、前記水性ベースコート及び前記クリアコートを、160℃の強制空気オーブン中で30分間硬化させた。
【0196】
結果として得られた多層塗装系について、それらのストーンチップ耐性を試験した。この目的のため、DIN 55966-1のストーンチップ試験を実施した。前記ストーンチップ耐性の結果は、DIN EN ISO20567-1に従って評価した。低い数値ほど、良好なストーンチップ耐性を表す。
【0197】
前記結果を表2に示す。前記水性ベースコート材料(WBM)の仕様は、いずれの場合にも、どのWBMが、各多層塗装系に使用されたかを示す。
【0198】
【0199】
前記結果は、本発明の反応生成物のベースコート材料における使用が、本発明ではない系と比較して、前記ストーンチップ耐性を有意に向上させることを再度強調する。