(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】液滴堆積装置およびその試験回路
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20220317BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220317BHJP
G01R 31/50 20200101ALI20220317BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20220317BHJP
G01R 31/54 20200101ALI20220317BHJP
G01R 31/58 20200101ALI20220317BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/01 207
G01R31/50
G01R31/52
G01R31/54
G01R31/58
(21)【出願番号】P 2018567584
(86)(22)【出願日】2017-06-29
(86)【国際出願番号】 GB2017051911
(87)【国際公開番号】W WO2018002634
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-25
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516154934
【氏名又は名称】ザール テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】XAAR TECHNOLOGY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】バード ニール クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】イスラム ムジャヒドゥル
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-063033(JP,A)
【文献】特開2010-076329(JP,A)
【文献】特開平06-242159(JP,A)
【文献】特開2007-326237(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0136859(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
G01R 31/50-31/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチュエータ素子アレイ中のアクチュエータ素子の静電容量を決定する試験回路であって、前記試験回路は、
コントローラと、
試験入力を生成する電源と、
前記試験回路と前記アクチュエータ素子との間の試験経路での1つ以上の試験値を測定するように構成された測定回路と、を備え、
前記コントローラは、試験期間中、
前記アクチュエータ素子に関連する第1のスイッチを制御して前記アクチュエータ素子を前記試験経路に接続し、
前記電源を制御して第1の試験入力を生成し、
前記第1の試験入力に応じて生成される第1の試験値から全静電容量を決定し、前記全静電容量は、アクチュエータ素子の容量とアクチュエータ素子に関連する寄生容量を含み、
前記全静電容量から前記アクチュエータ素子の前記静電容量を決定する、ように構成される、試験回路。
【請求項2】
前記コントローラは、前記試験期間中、
さらなるアクチュエータ素子に関連する第2のスイッチを制御して、前記試験経路と前記さらなるアクチュエータ素子との間の短絡が存在するとき、前記さらなるアクチュエータ素子を前記試験経路に接続するようにさらに構成される、請求項1に記載の試験回路。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記試験値と決定された前記静電容量とのうちの1つ以上に応じて前記アクチュエータ素子に関連する不具合を検出するようにさらに構成され、
前記不具合は、
断線と、前記アクチュエータ素子の両端間の短絡と、前記試験経路と前記さらなるアクチュエータ素子との間の短絡と、の1つ以上を含む、請求項1または2に記載の試験回路。
【請求項4】
前記コントローラは、第1の較正期間中、
前記アクチュエータ素子に関連する前記第1のスイッチを制御して前記アクチュエータ素子を前記試験経路から絶縁し、
前記試験経路での第2の試験入力を制御して前記アクチュエータ素子に関連する寄生容量を充電し、
前記第2の試験入力に応じて生成される第2の試験値から前記関連する寄生容量を決定する、ようにさらに構成され、
前記関連する寄生容量は前記全静電容量から前記アクチュエータ素子の前記静電容量を決定するのに用いられる、請求項1~3のいずれかに記載の試験回路。
【請求項5】
前記第1の試験値は前記第1の試験入力と寄生電流とに応じてさらに生成され、
前記コントローラは、第1の較正期間中、
前記電源を制御して前記寄生電流にバイアスをかけて前記アクチュエータ素子から離し、
前記アクチュエータ素子に関連する前記第1のスイッチを制御して前記アクチュエータ素子を前記試験経路から電気的に絶縁し、
前記電源を制御して前記アクチュエータ素子に関連する寄生容量を前記寄生電流で充電し、
前記関連する寄生容量を前記寄生電流で充電するのに応じて第2の試験値を生成する、ようにさらに構成される、請求項1~3に記載の試験回路。
【請求項6】
前記コントローラは、第2の較正期間中、
前記電源を制御して前記寄生電流にバイアスをかけて前記アクチュエータ素子から離し、
前記アクチュエータ素子に関連する前記第1のスイッチを制御して前記アクチュエータ素子を前記試験経路から電気的に絶縁し、
前記関連する寄生容量を前記寄生電流と第2の試験入力とで充電するように前記電源を制御し、
前記関連する寄生容量を前記寄生電流と前記第2の試験入力とで充電するのに応じて第3の試験値を生成するようにさらに構成され、
前記第2の試験値と前記第3の試験値とが前記全静電容量から前記アクチュエータ素子の前記静電容量を決定するのに用いられる、請求項5に記載の試験回路。
【請求項7】
前記測定回路は、各々が前記試験経路での1つ以上の前記試験値と設定されたレベルの入力を受けるように配置される1つ以上のコンパレータと、
前記1つ以上のコンパレータから出力を受けるように配置されるタイマを備える、請求項1~6のいずれかに記載の試験回路。
【請求項8】
前記試験回路は、前記試験経路から前記試験回路を電気的に絶縁するよう配置される試験スイッチをさらに備える、請求項1~7のいずれかに記載の試験回路。
【請求項9】
前記試験回路は前記試験経路を放電する放電スイッチをさらに備える、請求項1~8のいずれかに記載の試験回路。
【請求項10】
前記電源は定電流源を備え、前記第1の試験入力は定電流を備える、請求項1~9のいずれかに記載の試験回路。
【請求項11】
1つ以上のアクチュエータ素子を備えるアクチュエータ素子アセンブリと、
前記1つ以上のアクチュエータ素子のうちのアクチュエータ素子を試験経路または駆動経路に選択的に接続する複数のスイッチを備えるスイッチ回路と、
前記試験経路に接続されるときに全静電容量から前記アクチュエータ素子の静電容量を決定するように構成された試験回路と、を備え、
前記全静電容量は、前記アクチュエータ素子の前記静電容量と前記アクチュエータ素子に関連する寄生容量を含む、液滴堆積ヘッド回路。
【請求項12】
前記試験回路は、
コントローラと、
前記試験経路についての試験入力を生成する電源と、
前記試験入力に応じて生成される前記試験経路での1つ以上の試験値を測定する測定回路と、を備える、請求項11に記載の液滴堆積ヘッド回路。
【請求項13】
前記試験経路は、前記試験回路と前記1つ以上のアクチュエータ素子との間にある第1の試験バスを備え、
前記駆動経路は、駆動回路と前記1つ以上のアクチュエータ素子との間にある前記第1の試験バスを備える、請求項11または12に記載の液滴堆積ヘッド回路。
【請求項14】
前記駆動経路は、駆動回路と前記1つ以上のアクチュエータ素子との間にある第2の試験バスを備える、請求項13に記載の液滴堆積ヘッド回路。
【請求項15】
前記試験経路は、前記駆動経路から前記試験回路を電気的に絶縁する試験スイッチを備える、請求項11~13に記載の液滴堆積ヘッド回路。
【請求項16】
前記複数のスイッチのうちのあるスイッチは、直列に配置されている第1
のスイッチ素子および第2のスイッチ素子を備え、前記第1の試験バスは前記第1
のスイッチ素子および第2のスイッチ素子間に接続され、前記第1のスイッチ素子は、前記駆動経路から前記試験回路を電気的に絶縁するように構成される、
請求項13又は14に記載の液滴堆積ヘッド回路。
【請求項17】
プリントヘッド回路中のアクチュエータ素子の静電容量を決定する方法であって、
前記アクチュエータ素子を試験経路に接続することと、
前記試験経路についての第1の
試験入力を試験回路で生成することと、
前記
第1の試験入力に応じて生成される前記試験経路での第1の試験値を前記試験回路で測定することと、
全静電容量を前記第1の試験値に応じて決定することであって、前記全静電容量は前記アクチュエータ素子の前記静電容量と前記アクチュエータ素子に関連する寄生容量とを含むことと、
前記全静電容量から前記アクチュエータ素子の前記静電容量を決定することと、を含む、方法。
【請求項18】
請求項1~10のいずれかに記載の試験回路を有する液滴堆積装置。
【請求項19】
請求項1~10のいずれかに記載の試験回路を備える試験モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試験回路に関する。これは、特に、液滴堆積装置のアクチュエータ、センサまたはエナジハーベスタなどの圧電素子を利用する装置に有効に応用することができる。
【背景技術】
【0002】
液滴堆積ヘッドからの液滴の吐出の制御を実現し、このような液滴の配置を制御して受容媒体(receiving medium)または印刷媒体にドットを生成することを実現するインクジェットプリンタなどの液滴堆積装置が公知である。
【0003】
インクジェットプリントヘッドなどの液滴堆積ヘッドは一般的にはアクチュエータ素子によって実現される吐出機構を備える。
【0004】
アクチュエータ素子および関連駆動回路に対して診断試験を実行することは、例えば、プリントヘッドに組み込む前またはプリントヘッドに組み込んだ後のアクチュエータ素子の不具合を特定して、意図しない印刷不良を生じ得るあらゆる不具合を特定するのにも重要である。
【0005】
試験される不具合は、例えば、熱損傷、ハンドリング時の損傷やヒートショック、製造欠陥や組み立て欠陥によって生じる場合があるアクチュエータ素子の両端間の断線や短絡を含む。
【0006】
試験アクチュエータ素子について様々な診断試験技術が存在する。
【0007】
例えば、アクチュエータ素子の両端間の短絡について試験する場合、電流を、プローブを介してアクチュエータ素子によって引き込み、対応する電圧を測定したり、印加された電圧と生じた電流とを測定したりする。しかし、プリントヘッドまたはプリンタに組み込まれた場合にはプローブでアクチュエータ素子にアクセスすることは困難である。プリントヘッドの特徴寸法が減少すると、これはますます困難になるか、実現できなくなる。したがって、この方法を用いた断線試験は困難である。
【0008】
これの代わりに、アクチュエータ素子の両端間の断線の試験に光学的技術を用いられる場合がある。これを用いて、アクチュエータ素子を所定の波形で駆動して、アクチュエータ素子の充電および放電に起因する熱を赤外線(IR)カメラで撮影する。ヒートスポットにより断線の有無が確かめられる。
【0009】
しかし、ヒートスポットを撮影するのに必要な装置は、複雑かつ高価であり、一般的にプリントヘッド内のハードウェアによりIRカメラの視線が遮られるので、アクチュエータ素子がプリントヘッドに組み込まれた後は特に適さない。
【0010】
さらに、短絡によって駆動時にアクチュエータ素子から熱が発生するので、光学的技術は単独で行なわれる場合には不正確である場合があり、短絡の存在を除外するために光学的技術とともにさらなる試験を行なうことが必要であり、したがって、このような試験は遅滞する場合がある。
【0011】
したがって、アクチュエータ素子を試験する既存の試験技術は遅滞するものであり、複雑であり、高価でありかつ/または不正確である。
【発明の概要】
【0012】
一態様に係れば、アクチュエータ素子アレイ中のアクチュエータ素子の静電容量(CACT)を決定する試験回路であって、試験回路は、コントローラと、試験入力を生成する電源と、試験回路とアクチュエータ素子との間の試験経路での1つ以上の試験値を測定する測定回路とを備えており、コントローラは、試験期間中、アクチュエータ素子を試験経路に接続するように、アクチュエータ素子に関連する第1のスイッチを制御し、第1の試験入力を生成するように電源を制御し、第1の試験入力に応じて生成される第1の試験値からアクチュエータ素子の全静電容量(CPAR+CACT)を決定し、全静電容量(CPAR+CACT)からアクチュエータ素子の静電容量(CACT)を決定するように構成されている、試験回路が提供される。
【0013】
好ましくは、コントローラは、第1の期間中、試験経路とさらなるアクチュエータ素子との間の短絡が存在するとき、さらなるアクチュエータ素子を試験経路に接続するように、さらなるアクチュエータ素子に関連する第2のスイッチを制御するようにさらに構成されている。
【0014】
好ましくは、コントローラは、試験値と決定された静電容量との1つ以上に応じてアクチュエータ素子に関連する不具合を検出するようにさらに構成されており、不具合は、断線と、アクチュエータの両端間の短絡と、試験経路とさらなるアクチュエータ素子との間の短絡との1つ以上を備える。
【0015】
好ましくは、不具合は、決定された静電容量が静電容量閾値未満であることを備える。
【0016】
好ましくは、コントローラは、第1の較正期間中、アクチュエータ素子を試験経路から絶縁するように、アクチュエータ素子に関連する第1のスイッチを制御し、アクチュエータ素子に関連する寄生容量(CPAR)を充電するように試験経路での第2の試験入力を制御し、第2の試験入力に応じて生成される第2の試験値から関連する寄生容量(CPAR)を決定するようにさらに構成されており、アクチュエータ素子についての関連する寄生容量(CPAR)は全静電容量(CPAR+CACT)からアクチュエータ素子の静電容量(CACT)を決定するのに用いられる。
【0017】
好ましくはさらに、第1の試験値は第1の試験入力と寄生電流とに応じてさらに生成され、コントローラは、第1の較正期間中、寄生電流にバイアスをかけてアクチュエータ素子から離すように電源を制御し、アクチュエータ素子を試験経路から電気的に絶縁するように、アクチュエータ素子に関連する第1のスイッチを制御し、アクチュエータ素子に関連する寄生容量を寄生電流で充電するように電源を制御し、関連する寄生容量を寄生電流で充電するのに応じて第2の試験値を生成するようにさらに構成されている。
【0018】
好ましくは、コントローラは、第2の較正期間中、寄生電流にバイアスをかけてアクチュエータ素子から離すように電源を制御し、アクチュエータ素子を試験経路から電気的に絶縁するように、アクチュエータ素子に関連する第1のスイッチを制御し、関連する寄生容量を寄生電流と第2の試験入力とで充電するように電源を制御し、関連する寄生容量を寄生電流と第2の試験入力とで充電するのに応じて第3の試験値を生成するようにさらに構成されている。
【0019】
好ましくは、第2の試験値と第3の試験値とが全静電容量(CPAR+CACT)からアクチュエータ素子の静電容量(CACT)を決定するのに用いられる。
【0020】
好ましくは、測定回路は、各々が試験経路での1つ以上の試験値を受けるように配置されている1つ以上のコンパレータを備えており、コンパレータの各々は設定されたレベルの入力を受けるように配置されており、および/または設定されたレベルの入力は電圧レベルと電流レベルとのうちの1つを備える。
【0021】
好ましくは、測定回路は、1つ以上のコンパレータから出力を受けるように配置されているタイマを備えており、タイマは、第1の設定レベルから第2の設定レベルへの第1の試験値の遷移時間と、第3の設定レベルから第4の設定レベルへの第2の試験値の遷移時間と、第5の設定レベルから第6の設定レベルへの第3の試験値の遷移時間とのうちの1つ以上を測定するように構成されている。
【0022】
好ましくは、第1、第3および第5の設定レベルのうちの1つ以上は実質的に等しく、および/または第2、第4および第6の設定レベルのうちの1つ以上は実質的に等しい。
【0023】
好ましくは、試験回路は、試験経路から試験回路を電気的に絶縁するよう配置されている試験スイッチをさらに備える。
【0024】
好ましくは、試験回路は、1つ以上の試験入力をさらなる測定回路に選択的に提供する精度回路をさらに備える。
【0025】
好ましくは、試験回路は試験経路を放電する放電スイッチをさらに備える。
【0026】
好ましくは、電源は定電流源を備えており、第1の試験入力は定電流を備える。
【0027】
さらなる態様に係れば、アクチュエータ素子アレイでの不具合を検出する試験回路であって、試験回路は、コントローラと、試験入力を生成する電源と、試験経路での1つ以上の試験値を測定する測定回路とを備えており、コントローラは、第1の期間中、第1のアクチュエータ素子を試験経路に接続するように、アレイの第1のアクチュエータ素子に関連する第1のスイッチを制御し、第1の試験入力を生成するように電源を制御し、第1の試験入力に応じて生成される第1の試験値から不具合を検出するように構成されている、試験回路が提供される。
【0028】
好ましくは、コントローラは、アレイ中の第2のアクチュエータ素子に関連する第2のスイッチを、第2のアクチュエータ素子を放電するように制御するようにさらに構成されている。
【0029】
好ましくは、不具合は、第1のアクチュエータ素子の両端間の短絡を備えており、および/または不具合は試験経路と第2のアクチュエータ素子との間の短絡を備える。
【0030】
さらなる態様に係れば、1つ以上のアクチュエータ素子を備えるアクチュエータ素子アセンブリと、1つ以上のアクチュエータ素子のうちのアクチュエータ素子を試験経路または駆動経路に選択的に接続する複数のスイッチを備えるスイッチ回路と、試験経路に接続されるときにアクチュエータ素子の静電容量を決定する、および/またはアクチュエータ素子アセンブリの不具合を検出するように構成されている試験回路と、を備える液滴堆積ヘッド回路が提供される。
【0031】
好ましくは、試験回路は、コントローラと、試験経路についての試験入力を生成する電源と、試験入力に応じて生成される試験経路での1つ以上の試験値を測定する測定回路とを備える。
【0032】
好ましくは、試験経路は、試験経路での静電容量を放電するように構成されている放電スイッチを備える。
【0033】
好ましくは、試験経路は、試験回路と1つ以上のアクチュエータ素子との間にある第1の試験バスを備えており、駆動経路は、駆動回路と1つ以上のアクチュエータ素子との間にある第1の試験バスを備える。
【0034】
好ましくは、駆動経路は、駆動回路と1つ以上のアクチュエータ素子との間にある第2の試験バスを備える。
【0035】
好ましくは、試験経路は、駆動経路から試験回路を電気的に絶縁する試験スイッチを備える。
【0036】
好ましくは、複数のスイッチのうちのスイッチは、直列に配置されている第1および第2のスイッチ素子を備える。
【0037】
好ましくは、スイッチは、第1および第2のスイッチ素子と並列に配置されている第3のスイッチ素子をさらに備えており、第1および第2のスイッチ素子のON抵抗は第3のスイッチ素子のON抵抗よりも低い。
【0038】
好ましくは、第1の試験バスは第1および第2のスイッチ素子間に接続され、第1のスイッチ素子は、駆動経路から試験回路を電気的に絶縁するように構成されている。
【0039】
好ましくは、スイッチは、第1のスイッチ素子と並列に配置されている第3のスイッチ素子をさらに備えており、第1の試験バスは第2および第3のスイッチ素子間に接続され、試験スイッチは試験バスに設けられている。
【0040】
好ましくは、液滴堆積ヘッド回路は、不具合が検出されるときに不具合対応を開始するようにさらに構成されている。
【0041】
好ましくは、不具合は、断線と、短絡と、静電容量が閾値に達することとのうちの1つを備える。
【0042】
さらなる態様に係れば、プリントヘッド回路中のアクチュエータ素子の静電容量(CACT)を決定する方法であって、アクチュエータ素子を試験経路に接続する工程と、試験経路についての第1の入力を試験回路で生成する工程と、試験入力に応じて生成される試験経路での第1の試験値を試験回路で測定する工程と、第1の試験値からアクチュエータ素子の全静電容量(CPAR+CACT)を第1の試験値に応じて決定する工程と、全静電容量(CPAR+CACT)からアクチュエータ素子の静電容量(CACT)を決定する工程とを備える方法が提供される。
【0043】
好ましくは、方法は、第1の試験値に応じて不具合を検出する工程と、不具合が検出されるときにプリントヘッド回路に対して不具合対応を開始する工程とをさらに備える。
【図面の簡単な説明】
【0044】
以降、以下に示す添付の図面を参照して実施形態を説明する。
【
図1a】
図1aは、公知の液滴堆積ヘッドの一部の断面を概略的に示す。
【
図1b】
図1bは、実施形態に係る
図1の複数のアクチュエータ素子を駆動する公知の回路の例を概略的に示す。
【
図2a】
図2aは、実施形態に係るアクチュエータ素子の試験回路を概略的に示す。
【
図2b】
図2bは、
図2aの試験回路を用いて得られる測定値をグラフで示す。
【
図2c】
図2cは、
図2aの試験回路を用いて得られるさらなる測定値をグラフで示す。
【
図3a】
図3aは、実施形態に係るスイッチ例を概略的に示す。
【
図3b】
図3bは、実施形態に係る駆動波形例を概略的に示す。
【
図4a】
図4aは、アクチュエータ素子が実施形態に係る
図3aのスイッチによって駆動される場合の
図2aの試験回路の例を概略的に示す。
【
図4b】
図4bは、
図4aの試験回路を用いて得られる測定値をグラフで示す。
【
図5a】
図5aは、実施形態に係る試験回路を有する回路を概略的に示す。
【
図5b】
図5bは、
図5aの回路中のアクチュエータ素子の両端間の短絡を概略的に示す。
【
図5c】
図5cは、
図5aの回路中のアクチュエータ素子間の短絡を概略的に示す。
【
図6】
図6は、実施形態に係る試験回路を有する回路を概略的に示す。
【
図7a】
図7aは、さらなる実施形態に係る試験回路を有する回路を概略的に示す。
【
図7b】
図7bは、実施形態に係る駆動波形例を概略的に示す。
【
図7c】
図7cは、さらなる実施形態に係る試験回路を有する回路を概略的に示す。
【
図7d】
図7dは、さらなる駆動波形例を概略的に示す。
【
図8】
図8は、専用の回路として実施される試験回路を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1aは、公知の液滴堆積ヘッド(以下「プリントヘッド」)の一部の断面を概略的に示す。プリントヘッドは公知の液滴堆積装置(以下「プリンタ」)の一部であってもよい。
【0046】
本例では、プリントヘッド1は少なくとも1つの圧力室2を備え、圧力室2は、アクチュエータ素子4が付された膜3を有し、アクチュエータ素子4は膜3上に設けられ、ニュートラル位置としてここで示されている第1の位置(P1と示されている)との間で、圧力室内に向かって内部に第2の位置(P2と示されている)まで膜3の動きを実現する。P1から、P2の方向とは反対の方向に膜を撓ませる(すなわち圧力室の外部)ようにアクチュエータ素子4を配置することもできることも分かる。
【0047】
圧力室2は、圧力室2と流体連通する状態で配置されるリザーバ16から液を受ける液流入ポート14を備える。
【0048】
リザーバ16は図示のために圧力室2に隣接した状態でしか描かれていない。ただし、さらに上流に設けたり、出入りする液の流れを調整する一連のポンプ/バルブを適宜用いてプリントヘッドから離したりしてもよい。
【0049】
本例では、アクチュエータ素子4は、アクチュエータ素子4の両端間に電界を印加することでアクチュエータ素子4が充電され、これにより、アクチュエータ素子4に歪みが生じて変形するように、圧電材料6を第1の電極8と第2の電極10との間に設ける圧電アクチュエータ素子4として示されている。アクチュエータ素子を圧電アクチュエータ素子とすることには限定されず、電気容量応答を示す任意の適当なアクチュエータ素子4を適宜用いてもよいことが分かる。
【0050】
図1の概略例では、圧力室2は、一般的に「ルーフ様式(roof mode)」構成と呼ばれるもので構成され、これにより、膜3が撓むと、容積が変化し、したがって、圧力室2内で圧力が変化する。膜3に適当な撓み手順を適用することによって、十分な正圧が圧力室2内で発生して1つ以上の液滴が圧力室2から吐出される。
【0051】
下部電極10を接地電位などの基準電位に維持しつつ、電圧波形で形成される1つ以上の駆動パルスを関連アクチュエータ素子4に(例えば第1の電極8に)印加することによってノズル12からのこのような液滴吐出を実現してもよい。駆動波形をきめ細かく設計することによって、ノズル12からの予測可能で均一な液滴吐出を実現することができる。
【0052】
実施形態では、プリントヘッド1は、プリントヘッド1に1つ以上の配列で配置される複数のアクチュエータ素子および関連する複数のノズルを備えてもよい。
【0053】
実施形態では、1つ以上の駆動パルスの列を備える共通駆動波形を駆動回路によって生成して、複数のアクチュエータ素子に関連するノズルから液滴を吐出するための駆動波形として複数のアクチュエータ素子に選択的に印加してもよい。
【0054】
これの代わりに、1つ以上の駆動パルスの列を備える駆動波形をアクチュエータ素子毎に生成してもよい。このような駆動波形は、例えば、プリントヘッド上の駆動回路によって生成したり、プリントヘッドと通信する駆動回路によって生成したりしてもよい。
【0055】
ピクセルとして定義される受容媒体の所定のエリア内に(必要な場合には、受容媒体の動きを調整しつつ)正確に着弾するように液滴の吐出のタイミング合わせを行なってもよいことは、当業者であれば理解するであろう。
【0056】
これらのピクセルは、印刷データから得られる印刷予定の画像のラスタ化に基づいており、受容媒体上の得られるドットの所望の位置を決定するのに用いられる。
【0057】
単純な二値表現の場合は、各ピクセルに1つの液滴が入れられるか、液滴が入れられないかである。
【0058】
より複雑な表現では、各ピクセルに2つ以上の液滴を印刷して得られるピクセルの知覚色濃度を変えることによってグレースケールレベルを付加することができる。
【0059】
1つの圧力室2しか
図1aに示されていないが、複数の圧力室をプリントヘッド1に適当な構成で配置してもよいと解される。
【0060】
プリントヘッド1と、その関連特徴(例えば、1つ以上のノズル、1つ以上のアクチュエータ素子、1つ以上の膜、1つ以上の液ポートなど)とを、微小電気機械システム(micro-electrical-mechanical systems)(MEMS)プロセスやバルク製造プロセス(bulk manufacturing processes)などの任意の適当な作製プロセスまたは技術を用いて作製してもよい。
【0061】
ここに記載されている技術はルーフ様式構成で動作するプリントヘッドに限定されず、共有壁構成などの他の構成を持つプリントヘッドに同様に適用されると解される。
【0062】
図1bは、上述の通り複数のアクチュエータ素子4を有するアクチュエータ素子アレイ105を備えるプリントヘッド回路100の例を概略的に示す。
【0063】
プリントヘッド回路100は駆動回路102と電気接続する状態で設けられ、この状態で、駆動回路102は例えばアンプ(図示せず)を用いて駆動波形を生成する。
【0064】
駆動回路102はスイッチ回路104と電気接続する状態で配置され、この状態で、スイッチ回路104は、アクチュエータ素子アレイ105の複数のアクチュエータ素子4に駆動波形を選択的に印加する複数のスイッチ106を備える。
【0065】
本例では、スイッチ106は、電線108と、すべてのスイッチ106に共通のバス107とを介して駆動回路102に接続されている。代替例では、スイッチ106を各々、個々の電線を介して駆動回路102に接続してもよい。各スイッチ106は、関連するアクチュエータ素子4に、両者の間の個々のアクチュエータ線109を介して接続されている。
【0066】
スイッチ回路104は集積回路であってもよく、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)を備えてもよい。例えば、オンにして(例えば、閉じて)、対応するアクチュエータ素子が駆動回路と電気接続することを実現するように特定のスイッチを制御することで、駆動波形をアクチュエータ素子4に印加することができたり、例えば、オフにして(例えば、開いて)、駆動回路102からアクチュエータ素子を電気的に絶縁するように特定のスイッチを制御することができたりする点で、スイッチ回路104はマルチプレクサに機能的に類似する。単純にするために、駆動回路とアクチュエータ素子4との間の電気径路を「駆動経路」と呼ぶ。
【0067】
本例では、アクチュエータ素子4は圧電アクチュエータ素子であり、このため、各アクチュエータ素子4の電気的挙動はコンデンサと同様であり、したがって、各アクチュエータ素子4は関連する静電容量CACTを持つ。CACTは、アクチュエータ素子4に関連する回路(例えばコンポネント/ロジック/機能)の静電容量、例えば、そのアクチュエータ線109の静電容量や、アクチュエータ素子をアクチュエータ線109に接続する物理的接続部の静電容量も含んでもよいと解される。
【0068】
プリントヘッド回路100の別の回路/構成要素も関連する静電容量を持つことになる。本出願では、アクチュエータ素子に関連する静電容量CACT以外の静電容量を「寄生容量」と考える。
【0069】
図1b中、プリントヘッド回路100のすべての寄生容量をC
PARと示し、これは、電線108の寄生容量(C
path)と、すべてのスイッチ106の複合寄生容量(C
allswitches)(個々のスイッチ106の寄生容量(C
switch))と、他の寄生容量(C
other)(駆動回路102と、プリントヘッド回路100の構成要素間の接続部とに関連する寄生容量など)とを含む。このような構成要素は、駆動回路102と電線108との間またはスイッチ回路104と電線108との間の物理的結合部を含んでもよい。このような結合部は異方性導電フィルム結合部を含んでもよい。
【0070】
上記で詳述されているように、1つ以上の診断試験を行なう、例えば、製造後およびプリントヘッドに組み込む前後でアクチュエータ素子の静電容量の定量、および/またはアクチュエータ素子アレイ105中の断線または短絡の検出を行なうことは有用である。いくつかの例では、定量静電容量で断線や短絡を表わす場合がある。例えば、所定の閾値静電容量未満の定量静電容量で断線を表わす場合がある。
【0071】
しかし、このような試験は、例えば、プリントヘッドのアクチュエータ素子アレイの配置が原因で行なうのが困難であったり、このような試験は、例えば、試験結果に影響する寄生容量が原因で不正確であったりする場合がある。
【0072】
図2aは、実施形態に係るプリントヘッド回路100のアクチュエータ素子4に診断試験を行なう試験回路200の例を概略的に示す。同様の特徴を記述するのに同様の符号付けを全体にわたって用いる。
【0073】
試験回路200は、電線108と、スイッチロジック104の対応するスイッチ106とを介して1つ以上のアクチュエータ素子4と電気接続する状態で配置される(1つのアクチュエータ素子4のみを
図2aに示す)。
【0074】
単純にするために、試験回路200とアクチュエータアレイ105との間の電気径路を「試験経路」と考え、このように考えると、適宜、1つ以上のアクチュエータ素子を試験経路に電気的に接続したり、絶縁させたりするようにスイッチ106を制御することができる。
【0075】
図2a中、試験回路200は、例えば、プリンタまたはプリントヘッドのインタフェースを介してプリントヘッド回路100と電気接続するように示されている。他の例では、プリントヘッド回路100の一部として試験回路200を組み込んでもよい。
【0076】
試験回路200は、コントローラ202、電源204および測定回路205を備える。
【0077】
コントローラ202は、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、マイクロコントローラまたは他の適当な回路(例えば、コンポネント、ロジック、機能)を備えてもよい。
【0078】
コントローラ202は、プリントヘッド回路100、駆動回路(
図2aには示されていない)および/またはプリンタ上の他の回路(図示せず)などの、試験回路200中の様々な回路および構成要素と接続される。例えば、コントローラ202がスイッチ106を制御することで、診断試験を行なう試験回路200に1つ以上のアクチュエータ素子4を適時に接続することができる。
【0079】
以下の例では、電源204は定電流(iM)を生成する電流源であり、そのレベルはコントローラ202によって定められる。明確になるように、アクチュエータ素子を線形的に充電して静電容量測定の正確度を改善するために、電流源204は好ましくは高い出力インピーダンスを持つ。
【0080】
測定回路205は、診断試験中、試験経路上で感知すなわち測定を行なって1つ以上の値を処理するように構成されている。
【0081】
本例では、測定回路205は、電源208、209、コンパレータ210、211およびタイマ212を備える。
【0082】
リセットスイッチ206は試験経路を放電するように設けられ、試験経路を基準電圧(例えばグランド)に接続する任意の適当なスイッチ素子(例えばNMOSトランジスタ)であってもよい。リセットスイッチ206はコントローラ202によって制御可能である。
【0083】
電源208、209は、以下の例では、デジタル・アナログコンバータ(DAC)として示されており、各々は所定の電圧レベル(DAC208によるVHIGH、およびDAC209によるVLOWとして示されている)を生成する。DAC208、209が生成する電圧レベルをコントローラ202からの信号(図示せず)に応じて定めてもよい。
【0084】
コンパレータ210、211は各々、DAC208、209によって定められる第1の入力としての電圧レベルと、試験経路からの第2の入力としての電圧V
Xとのうちの1つを用いる。
図2a中、コンパレータ210への第1の入力がDAC208からのV
HIGHである一方で、コンパレータ211への第1の入力はDAC209からのV
LOWである。
【0085】
タイマ212はコンパレータ210、211の出力を受けて、VLOWからVHIGHへのVX の遷移の時間を測定する。タイマ212はクロック周波数FCLKで動作し、クロック周波数FCLK,は任意の適当な周波数(例えば~10MHz)で動作する任意の適当な周波数源によって生成される。クロック周波数を高くすることによってそれによる測定の正確度を改善することができることが分かる。タイマ212をFPGAまたはマイクロコントローラで実施してもよいし、専用集積回路(IC)として実施してもよい。代替例では、タイマ212をコントローラ202に組み込んでもよい。
【0086】
試験回路200を用いてアクチュエータ素子4の静電容量C
ACTを決定することができ、
図2bは、その場合の実施形態に係るC
ACTの決定の際に試験回路200を用いて得られる測定値をグラフで示す。
【0087】
一例として、第1の試験期間P
1に、コントローラ202は、リセットスイッチ206を閉じて寄生容量C
PAR(いくつかの例では、静電容量C
ACT)を放電することにより試験経路中の静電容量をリセットした状態で、スイッチ106を閉じ、リセットスイッチ206を開くことで、電流i
Mを備える試験入力により複合静電容量C
PAR+C
ACTが充電され、これにより、
図2bに示されているように、電圧V
Xは式(1)によって与えられる比率で時間(T)とともに上昇する。
【0088】
【0089】
VXはコンパレータ210、211への入力であり、VXが上昇すると、タイマ212はVLOWコンパレータ211の切り替わり(すなわち、VXがVLOWを通過する)とVHIGHコンパレータ210の切り替わり(すなわち、VXがVHIGHを通過する)との間の遷移時間(t1)を測定する。
【0090】
測定された遷移時間(t
1)は式(2)および式(3)から得られる。
【数2】
【数3】
【0091】
したがって、全静電容量は(4)から決定される。
【数4】
【0092】
したがって、C
ACTは(5)から計算することができる。
【数5】
【0093】
しかし、CPARは未知であるので、(C(PAR)+C(ACT))を用いてもCACTの正確な決定が実現されず、したがって、CACTを用いても断線の有無が最終的に示されない場合がある。
【0094】
寄生容量CPAR,について推定値を考えることができるが、すべての回路についてのバッチ処理とバッチ処理との間の変動が寄生容量とアクチュエータ静電容量との両方に影響する場合があるため、この変動により寄生容量を正確に推定する困難が増す場合がある。
【0095】
したがって、より正確にC
ACTを決定するために、試験回路により2つの期間P
1’およびP
2’にわたって2回の測定を行ない、
図2cは、その場合のさらなる実施形態に係るC
ACTの決定の際に試験回路200を用いて得られる測定値をグラフで示す。
【0096】
較正期間であると考えることができる第1の期間P
1’に、コントローラ202は、試験経路中の静電容量をリセットした状態で、スイッチ106を開き、リセットスイッチ206を開くことで、試験入力電流i
MによりP
1’
,中に寄生容量C
PARが充電され、これにより、
図2cに示されているように、電圧V
Xは(6)によって与えられる比率で時間とともに上昇する。
【0097】
【0098】
VXが上昇すると、タイマ212はVLOWコンパレータ211の切り替わりとVHIGHコンパレータ210の切り替わりとの間の遷移時間(t1)を測定する。
【0099】
測定された遷移時間(t
1)は(7)から得られる。
【数7】
【0100】
したがって、寄生容量は(8)から決定される。
【数8】
【0101】
試験期間であると考えることができる第2の期間P
2’に、コントローラ202はリセットスイッチ206を閉じて試験経路中の静電容量をリセットした後、スイッチ106を閉じ、リセットスイッチ206を開くことで、試験入力電流i
Mにより複合静電容量C
PAR+C
ACTが充電され、これにより、
図2cに示されているように、電圧V
Xは(9)によって与えられる比率で時間とともに上昇する。
【0102】
【0103】
V
Xが上昇すると、タイマ212はV
LOWコンパレータ211の切り替わりとV
HIGHコンパレータ210の切り替わりとの間の遷移時間t
2を測定し、これは(10a)によって与えられる。
【数10】
【0104】
したがって、全静電容量を10bにより決定することができる。
【数11】
(8)
のC
PARに代入してC
ACTを決定することができる。
【数12】
【0105】
したがって、較正期間を用いて最初にCPARを決定する場合、CPARを推定することと比較してより正確にCACTを決定することができる。したがって、CACTに基づいて、またはそれに応じて断線の有無をより正確に検出することもまた可能である。
【0106】
図3aは、スイッチ106の例と、実施形態に係るスイッチ制御回路300とを概略的に示し、
図3bは1つ以上のアクチュエータ素子を駆動するのに用いる駆動波形310の例を示す。
【0107】
本例では、スイッチ106は2つのスイッチ素子を備え、例えばパスゲート構成で直列に配置されているトランジスタ302、304として示されている。このような配置により印刷中に高電圧・大電流動作が実現される。スイッチ106のスイッチ素子はトランジスタとして示されているが、スイッチ素子をトランジスタにすることに限定されず、また、スイッチ素子の数を2にすることに限定されない。
【0108】
スイッチ106のON抵抗を最小にすることで、プリントヘッド回路での電力散逸を(例えば、コンダクタ(I2R)損失を低減することによって)最小にし、駆動波形310の形状(例えば、エッジおよびスルーレート)を最適化することで、所望の液滴速度および液滴容積を得ることが有効である。
【0109】
本例では、トランジスタ302、304は共通のソースを共有する。トランジスタ302のドレインは端子306を介して駆動回路/試験回路(図示せず)と電気接続する状態で配置され、トランジスタ304のドレインは端子308を介してアクチュエータ素子(図示せず)と電気接続する状態で配置されている。また、各トランジスタ302、304は、電流がソースからドレインに(矢印で示されているように)流れるように、各トランジスタ302、304のソースとドレインとの間に配置されているそれぞれのダイオード316、318を有する。ダイオード316、318各々は、トランジスタ302、304に内蔵されたダイオードであってもよい。
【0110】
スイッチ106をオンにするために(すなわち、スイッチを閉じるために)、約5Vの電位差を各トランジスタ302、304のソースとゲートとの間に印加する。
【0111】
0V~20Vで遷移する
図3bに示されている駆動波形310のような駆動波形が異なる電圧の間で遷移する際、要求時にトランジスタ302、304がオンに維持されるために、共通のソースの電圧がこれらの異なる電圧に応答することが必要である。
【0112】
このような制御は、駆動波形310が異なる電圧の間で遷移する際に共通のソース電圧の上にある可変電圧を生成して必要な電位差を提供するように構成されているレベルシフタ301を備えるスイッチ制御回路300によって実現される。
【0113】
レベルシフタ301が端子312を介して電力供給される一方で、端子314を介して例えば駆動回路から受けるレベル信号に応じて可変電圧を生成してもよい。
【0114】
レベルシフタ301によって寄生電流ipが生成され、この状態で、ipはスイッチ106が閉じられるときに共通のソースを流れ、スイッチ106が開かれるときにも共通のソースを流れる。
【0115】
他の実施形態では寄生電流ipをレベルシフタ以外の構成要素/回路で生成してもよいことは当業者であれば理解するであろう。
【0116】
スイッチ106が開かれると、ipはダイオード316を介して端子306に流れることができ、このとき、ipは(例えば駆動回路中のアンプによって)シンクされる。これに加えて、または、これの代わりに、電流ipはダイオード318を介して端子308に流れることができ、これにより、電流ipにより端子308と電気接続されるアクチュエータ素子が充電される。したがって、スイッチ106が開かれると、ipは寄生電流であるように見える。
【0117】
スイッチ106がオフであるときにi
pが流れる方向を制御するために、スイッチ106の両側(例えば端子306、308)の電圧を試験回路200によって、例えばさらなるDAC(
図3に示されていない)を用いて設定して、端子306、308(または、これと接続されているアクチュエータ素子などの回路)にバイアスをかけてもよい。したがって、試験回路200は端子306、308にバイアスをかけて、スイッチ106が開かれるときに確実にi
pがダイオード318を流れないようにすることができる。
【0118】
図4aは実施形態に係るプリントヘッド回路100のアクチュエータ素子4に診断試験を行なう試験回路200の例を概略的に示し、本図によれば、アクチュエータ素子4は関連するスイッチ制御遠回り300を有するスイッチ106に接続されており、これにより、上述のように寄生電流i
pによってアクチュエータ素子4が充電される。
【0119】
図4bはさらなる実施形態に係るC
ACTの決定の際に
図4aの試験回路200を用いて得られる測定値をグラフで示す。
【0120】
上記のように、アクチュエータ素子4の静電容量C
ACTを決定することは有用である場合がある。しかし、
図4aに示されている回路には複数の未知の値がある。例えば、アクチュエータ静電容量(C
ACT)、寄生容量(C
PAR)および寄生電流(i
p)が未知である。
【0121】
したがって、より正確にCACTを決定するために、試験回路202は、3つの期間P1’’、P2’’およびP3’’にわたって3回の測定を行なう。
【0122】
第1の較正期間であると考えることができる第1の期間P1’’に、コントローラはリセットスイッチ206を開き、スイッチ106を閉じ、iMを生成してスイッチ106および/またはアクチュエータ素子4の端子にバイアスをかけるように電流源204を制御してipの方向を制御することで、ipを備える試験入力により寄生容量CPARが充電されることになる。
【0123】
アクチュエータ素子4にバイアスがかけられると、コントローラ202はスイッチ106を開いて試験経路からアクチュエータ素子4を電気的に絶縁し、リセットスイッチ206を閉じ、電流源204を制御してiMが流れないようにすることで、試験経路中のCPARが放電する。
【0124】
コントローラ202はリセットスイッチ206を開き、スイッチ106を開き、iMが流れないように電流源204を制御する。
【0125】
図4bに示されているように、電圧V
Xは以下によって与えられるスルーレートSR
1でi
pに応じてP
1’’中に時間とともに上昇する。
【数13】
【0126】
第2の較正期間を表わすと考えることができる第2の期間P2’’に、コントローラ202はスイッチ106を閉じ、リセットスイッチ206を開き、iMを生成してスイッチ106および/またはアクチュエータ素子4の端子にバイアスをかけるように電流源204を制御してipの方向を制御することで、ipを備える試験入力により寄生容量CPARが充電されることになる。
【0127】
その後、コントローラ202はスイッチ106を開いて試験経路からアクチュエータ素子4を電気的に絶縁し、リセットスイッチ206を閉じ、iMが流れないように電流源204を制御することで、試験経路中のCPARが放電する。
【0128】
コントローラ202はリセットスイッチ206を開き、スイッチ106を開き、iMを生成するように電流源204を制御することで、(ip+iM)を備える試験入力により第2の較正期間P2’’中に寄生容量CPARが充電される。
【0129】
図4bに示されているように、以下によって与えられるスルーレートSR
2でP
2’’中に電圧V
Xは上昇する。
【数14】
【0130】
したがって、(12)および(13)から
【数15】
【0131】
試験期間を表わすと考えることができる第3の期間P3’’に、コントローラ202は、アクチュエータ素子4を試験経路に電気的に接続するようにスイッチ106を閉じ、リセットスイッチ206を閉じ、iMが流れないようにするように電流源204を制御することで、試験経路中のCPARが放電する。
【0132】
コントローラ202はリセットスイッチ206を開き、スイッチ106を閉じ、iMを生成するように電流源204を制御することで、(ip+iM)を備える試験入力により、P3’’中に複合した寄生コンデンサとアクチュエータコンデンサとが全静電容量(CPAR+CACT)まで充電される。
【0133】
図4bに示されているように、以下によって与えられるスルーレートSR
3でP
3’’中に電圧V
Xは上昇する。
【数16】
【0134】
所定の遷移期間z中のスルーレートは以下によって与えられる。
【数17】
【0135】
したがって、(14)を書き換えることで以下が得られる。
【数18】
【0136】
したがって
【数19】
さらに、(15)を書き換えてSR
3に代入することで以下が得られる。
【数20】
(12)および(16)から
【数21】
【0137】
i
pおよび(20)のC
PARを(19)に代入することで以下が得られる。
【数22】
【0138】
【0139】
(18)を(22)に代入することで以下が得られる。
【数24】
【0140】
【0141】
(24)から、制御した電流iM、および設定したVHIGHとVLOWとの差とともに、3つの測定した遷移時間t1、t2およびt3からCACTを決定することができる。
【0142】
上述の実施形態では、個々の期間(例えば較正/試験期間)のVHIGHおよびVLOWの値は実質的に等しい。しかし、代替実施形態では、VHIGHおよびVLOWのそれぞれの値を所定の期間中に修正してCACTを決定する正確度を高くしてもよい。
【0143】
スイッチ106が開かれている間にi
pが流れないようにするように
図3aのレベルシフタを制御することができるが、レベルシフタの制御に無関係にスイッチ106が閉じられるとi
pは流れる。しかし、スイッチが開かれている間にi
pを測定しない限り、ipを決定することができず、したがって、決定されたC
ACTの正確度はipにより下がる。
【0144】
図5aはさらなる実施形態に係るプリントヘッド回路400を概略的に示し、本図によれば、試験回路402はプリントヘッド回路400のスイッチ回路404に組み込まれ、この状態で、プリントヘッド回路400は上述のようにアクチュエータ素子アレイ105も含む。
【0145】
上記のように、アクチュエータ素子アレイ105は、バス107を介して駆動回路102と電気接続する状態で配置されている複数のアクチュエータ素子4a~4dを備え、したがって、スイッチ106は必要に応じて関連するアクチュエータ素子を駆動経路に選択的に接続する。
【0146】
試験回路402は複数のアクチュエータ素子4a~4dと電気接続する状態で配置され、したがって、試験スイッチ414は試験回路402をバス107に選択的に接続する。試験スイッチ414は、任意の適当な形態をとってもよく、例えば、1つ以上のトランジスタを備えてもよい。
【0147】
また、試験されるアクチュエータ素子4はバス107および試験回路(スイッチ414が閉じられる場合)に、関連するスイッチ106a~dをオンにすることによって接続される。
【0148】
通常、試験回路402が約5Vの電圧で動作する一方で、駆動回路102は>5Vの波形を生成する。したがって、例えば、駆動回路102がアクチュエータ素子の1つ以上を駆動しているときに、駆動電流/電圧によって試験回路402が損傷するのを避けるように、試験スイッチ414により試験回路402を駆動経路から電気的に絶縁してもよい。
【0149】
コントローラ416を用いて(例えば、駆動回路または他の回路からの信号に応じて)試験スイッチ414を制御してもよい。
【0150】
試験回路402は
図2aおよび
図4aで説明されている試験回路と同様であり、したがって、本例では、試験回路402は、V
HIGHおよびV
LOWを生成するDAC418、419と、コンパレータ420、421と、定電流i
Mを生成する電流源422とを備える。タイマは、コントローラ402に組み込まれるものとして示されている。
【0151】
試験回路402はVSETを生成するDAC423をさらに備え、バイアススイッチ425が閉じられると、DAC423は、例えば、寄生電流ipの流れの方向を制御するように、試験経路上の回路にバイアスをかけることができる。
【0152】
試験回路402を用いてアクチュエータ素子4の1つ以上の静電容量を決定することにより、上述のようにアクチュエータ素子の1つ以上の両端間の断線を検出してもよい。アクチュエータ素子4の両端間の断線は、アクチュエータ素子に関連する電線109などの電線の両端間の断線を含むものとも考えられる。
【0153】
試験回路402は、アクチュエータ素子の両端間の短絡などの他の不具合を検出するのにも用いてもよい。
【0154】
図5bは、アクチュエータ素子4bの両端間の短絡430の検出を概略的に示す。スイッチ106bおよび414が閉じられることで、アクチュエータ素子4bが試験経路を介して試験回路402と電気接続される。
【0155】
電流源422(
図5aに示されている)がオンにされ、アクチュエータ素子の両端間に短絡430があると、アクチュエータ素子4bは充電されない。その両端間に短絡がない場合、アクチュエータ素子4bが充電され、その後のアクチュエータ素子の放電が試験経路からV
Xとしてコンパレータに入力される。この構成によれば、本例では、V
X≦V
LOWがアクチュエータ素子4bの両端間の短絡を示す一方で、V
LOW≦V
X≦V
HIGHは短絡がないことを示す。
【0156】
しかし、試験回路402は、特定のアクチュエータ素子からの放電を測定してその両端間の短絡を検出する(または短絡がないことを検出する)ものに限定されず、代替例では、このような短絡を示すのに異なる測定を考えてもよい。例として、指定期間内に閾値レベルに達しないVXによりアクチュエータ素子の両端間の短絡を示してもよい。
【0157】
本実施形態では、各アクチュエータ素子4は関連する放電スイッチ424にも接続され、放電スイッチ424を用いて、例えば、閉じられてグランドに接続されるときにその関連するアクチュエータ素子4を(例えばグランドに)放電することができる。
【0158】
放電スイッチ424はトランジスタを備えてもよく、コントローラ416によって制御されるスイッチロジック404中に設けてもよい。放電スイッチを適切に制御することによって、アクチュエータ素子アレイ105中のアクチュエータ素子間(例えば隣接するアクチュエータ素子間)の短絡(アクチュエータ素子の電線109間の短絡も含んでもよい)を検出するのにも試験回路402を用いることができる。
【0159】
図5cはアクチュエータ素子4bおよび4c間の短絡(短絡432と示されている)の検出を概略的に示し、本図によれば、スイッチ106bおよび414が閉じられることで、アクチュエータ素子4bが試験経路を介して試験回路402と電気接続する。放電スイッチ424cも閉じられて、アクチュエータ素子4cを放電する経路が設けられる。
【0160】
電流源422(
図5aに示されている)がオンにされ、隣接するアクチュエータ素子4bおよび4c間に短絡432が存在すると、放電スイッチ424cにより放電経路が設けられることになり、アクチュエータ素子4bは充電されないことになる。短絡がない場合、アクチュエータ素子4bが充電され、その後の放電が試験経路からV
Xとしてコンパレータに入力される。この構成によれば、本例については、V
X≦V
LOWがアクチュエータ素子4bおよび4cの両端間の短絡を示す一方で、V
LOW≦V
X≦V
HIGHは短絡がないことを示す。このような試験は隣接するアクチュエータ素子に限定されず、アクチュエータ素子アレイ105中の任意の数のアクチュエータ素子間の試験を含んでもよいと解される。
【0161】
しかし、試験回路402は、特定のアクチュエータ素子からの放電を測定してアクチュエータ素子間の短絡を検出する(または短絡がないことを検出する)ものに限定されず、代替例では、このような短絡を検出するのに異なる測定を考えてもよい。例えば、指定期間内に閾値レベルに達しないVXによりアクチュエータ素子間の短絡を示してもよい。
【0162】
図6はさらなる実施形態に係るプリントヘッド回路500を概略的に示し、本図によれば、試験回路502はプリントヘッド回路500のスイッチ回路504に組み込まれ、この状態で、プリントヘッド回路500は上述のようにアクチュエータ素子アレイ105も含む。
【0163】
上記のように、アクチュエータ素子アレイ105は、バス107を介して駆動回路102と電気接続する状態で配置されている複数のアクチュエータ素子4a~4dを備え、したがって、スイッチ106は関連するアクチュエータ素子をバス107に選択的に接続する。
【0164】
試験回路502は
図5aで説明されている試験回路と同様であり、したがって、本例では、試験回路502は、V
HIGHおよびV
LOWを生成するDAC518、519と、コンパレータ520、521と、定電流i
Mを生成する電流源522と、V
SETを生成するDAC523と、バイアススイッチ525とを備える。
【0165】
したがって、試験回路502は、アクチュエータ素子4のうちの1つ以上の静電容量を決定し、アクチュエータ素子の両端間の断線を検出し、および/またはアクチュエータ素子の両端間/アクチュエータ素子間の閉路を検出するのに用いることができることが分かる。
【0166】
本実施形態では、アクチュエータ素子4a~4dは専用の試験バス509を介して試験回路502と電気接続する状態で配置され、したがって、試験スイッチ511は、必要に応じて、関連するアクチュエータ素子を試験バス509に選択的に接続する。試験スイッチ511は任意の適当な形態をとってもよく、例えば、1つ以上のトランジスタを備えてもよい。試験スイッチ511はコントローラ516によって制御可能であり、および/または他の回路によって制御してもよい。
【0167】
理解されるであろうが、試験バス509は関連する静電容量513を持つことになり、これは、アクチュエータ素子の静電容量を測定して断線を検出するための寄生容量であると考えられる。
【0168】
本実施形態では、試験回路502は、試験バス509と電気接続されて、必要に応じて寄生容量513を放電する放電スイッチ517を含む。
【0169】
試験バス509構成により、試験バス509と駆動回路102との間の強い電気絶縁が実現される。これは、試験回路502がアクチュエータ素子に診断試験を行なうときに、駆動回路102が試験回路502から電気的に絶縁されることを確実とするようにスイッチ106を(例えば、試験回路中のコントローラ、駆動回路中のコントローラまたは他の適当な制御回路によって)制御することができるからである。
【0170】
さらに、上述のように、スイッチ106のON抵抗を最小にすることが有効である場合がある。しかし、スイッチのON抵抗を最小にすると、その寄生容量が増大する。
【0171】
試験スイッチ511を用いてアクチュエータ素子4を試験バス509に接続し、駆動回路102がアクチュエータ素子4を駆動する間に開くように試験スイッチ511を制御すると、試験スイッチ511は駆動波形にほぼ影響しない。したがって、試験スイッチ511のON抵抗をスイッチ106と比較して高くすることができ、試験スイッチ511の寄生容量をスイッチ106と比較して低減することができる。
【0172】
したがって、
図5aで説明されているバス107を介する試験経路の寄生容量と比較して、試験バス509を介する試験経路の寄生容量を低減することができる。この結果、専用の試験バス509を介する試験経路についての診断試験の感度と、特に特定のアクチュエータ素子のC
ACTの決定の正確度とが改善される場合がある。
【0173】
図7aはさらなる実施形態に係るプリントヘッド回路600に概略的に示し、本図によれば、試験回路602はプリントヘッド回路600のスイッチ回路604に組み込まれ、この状態で、プリントヘッド回路600は上述のようにアクチュエータ素子アレイ105も含む。
【0174】
図7bは、共通駆動波形650と、スイッチ606を用いて得られる切り欠かれた波形652との例を概略的に示す。
【0175】
試験回路602は
図6で説明されている試験回路と同様であり、したがって、本例では、試験回路602は、V
HIGHおよびV
LOWを生成するDAC618、619と、コンパレータ620、621と、定電流i
Mを生成する電流源622と、V
SET;を生成するDAC623と、バイアススイッチ625とを備える。
【0176】
したがって、試験回路602は、アクチュエータ素子4のうちの1つ以上の静電容量を決定し、アクチュエータ素子の両端間の断線を検出し、および/またはアクチュエータ素子の両端間/アクチュエータ素子間の閉路を検出するのに用いることができることが分かる。
【0177】
いくつかの実施形態では、駆動波形の形状を修正して、すなわち、「切り欠いて(trim)」、例えば、液滴速度および/または液滴の容積を調節する必要がある場合がある。
【0178】
このような切り欠きを実現するために、駆動回路102は、すべてのアクチュエータ素子に印加される共通駆動波形を修正してもよい。しかし、いくつかの印加については、駆動波形をアクチュエータ素子毎に修正することが必要である。
【0179】
図7aの例では、スイッチ素子660および662はパスゲート構成でスイッチ素子664と並列に配置され、この状態で、スイッチ素子660および662はスイッチ素子664と比較して高いON抵抗を持つ。
【0180】
スイッチ素子660、662および664を試験回路602中のコントローラ616、駆動回路中のコントローラ(図示せず)または他の適当な制御回路によって制御してもよい。
【0181】
スイッチ素子660、662および664は、駆動回路102から対応するアクチュエータ素子4まで共通駆動波形650を選択的に通過させるように構成されている。スイッチ素子664のON抵抗を最小にすることで、所望の波形形状(例えば、所定の前端/後端およびスルーレートを持つ波形形状)を得てもよい。
【0182】
プリントヘッド動作中、低ON抵抗スイッチ素子664が閉じられ、高ON抵抗スイッチ素子660、662が開かれることで、共通駆動波形がスイッチ素子664を通過して、関連するアクチュエータ素子4に印加される。
【0183】
共通駆動波形を切り欠くために、共通駆動波形がスイッチ素子を通過する間に、低ON抵抗スイッチ素子664が開かれ、高ON抵抗スイッチ素子660、662が閉じられる。
【0184】
共通駆動波形650が高ON抵抗スイッチ素子660、662を通過すると、高ON抵抗スイッチ素子660、662は共通駆動波形650を修正する(
図7bのステップ654を形成するように示されている)。所望の切り欠きが完了すると、スイッチ素子664が閉じられ、スイッチ素子660、662が開かれ、これにより、共通駆動波形650の残りが低ON抵抗スイッチ素子664を通過して、スイッチ素子664を介してアクチュエータ素子に印加される。
【0185】
本例では、専用の試験バス609が、各スイッチ606の高ON抵抗スイッチ素子660および662間の共通の接続部617に接続されている。
【0186】
特定のアクチュエータ素子4を試験経路に接続するために、対応するスイッチ606の高ON抵抗スイッチング素子662が閉じられるように制御される一方で、対応するスイッチの他のスイッチング素子660および664は開かれるように制御される。
【0187】
したがって、高ON抵抗スイッチング素子662は専用の試験スイッチ素子または専用の駆動スイッチ素子ではないが、アクチュエータ素子を駆動経路および試験経路に接続するのに用いられることが分かる。
【0188】
試験回路602は駆動回路102から電気的に絶縁されるので、低ON抵抗スイッチ素子664が駆動波形を通過させる間に、駆動電圧/電流による損害を受けない。
【0189】
本例では、関連するアクチュエータ素子4についての駆動波形を切り欠くとき、高ON抵抗スイッチング素子660および662の両方が閉じられ、したがって、駆動回路102と、関連するアクチュエータ素子4との間の抵抗は、同時に切り欠かれているアクチュエータ素子の数に無関係である。
【0190】
高ON抵抗スイッチング素子660a~660dの1つ以上をともに統合して単一のスイッチ素子を設けてもよいが、このような構成では、このような単一のスイッチング素子の有効抵抗は、適時に(すなわち、1つ以上のアクチュエータ素子の駆動波形が切り欠かれているとき)閉じられる高ON抵抗スイッチングスイッチ素子662の数に、統合されたスイッチ素子660の数を加えたものの関数であることが分かる。
【0191】
図7cはさらなる実施形態に係るプリントヘッド回路600を概略的に示し、本図によれば、試験回路602はプリントヘッド回路600のスイッチ回路604に組み込まれ、この状態で、プリントヘッド回路600は上述のようにアクチュエータ素子アレイ105も含む。
【0192】
図7dは、共通駆動波形(common drive waveform)650と、スイッチ606を用いて得られる切り欠かれた波形652との例を概略的に示す。
【0193】
図7cの例では、各スイッチ606は、複合パスゲート構成で配置されるスイッチ素子660’、スイッチ素子662’およびスイッチ素子664’を備え、この状態で、スイッチ素子662’はスイッチ素子664’と並列に配置されている。
【0194】
本例では、スイッチ素子660’および662’はスイッチ素子664’と比較して低いON抵抗を持つ。上記のように、スイッチ素子660’、662’および664’を試験回路602中のコントローラ616、駆動回路中のコントローラ(図示せず)または他の適当な制御回路によって制御してもよい。
【0195】
CDW650のスルー制御ステップ型切り欠きスキーム(slew controlled step-based trimming scheme)の基本的な実施のためのタイミング図を示す
図7dに関して、駆動波形652でアクチュエータ素子を駆動するためのスイッチ606の動作を説明する。
【0196】
CDW650は、任意の形状を持ち得るパルスを備える。結果駆動波形652もパルスを有する。
【0197】
本例では、ステップ654はCDW650のパルスの前端にあり、ステップの電圧は電圧VHOLDである。
【0198】
駆動波形652を取得するためのスイッチ素子660’、662’、664’のタイミングは2つの横棒線656、658に示されており、上の棒線656はスイッチ素子660’および664’の状態を示し、下の棒線658はスイッチ素子662’の状態を示す。
【0199】
CDW650中のパルスの前端のためにスイッチ素子660’、662’、664’が閉じられることが、横棒線656および658の両方によって示されている。これは、パスゲートのON抵抗がスイッチ素子660’およびスイッチ素子662’によって決定されることを意味する。
【0200】
ステップ654の平坦部分の始点の後(井桁(hashing)で示されている)、アクチュエータ素子4が駆動経路から切り離されている間、スイッチ素子が開かれるので、駆動波形652のパルス中のステップは制御が行なわれている期間TTRIMだけ延び、CDW650中のステップ654の終点を踏襲しない。
【0201】
制御が行なわれている期間TTRIMの後にアクチュエータ素子4を駆動経路に再接続することで、駆動波形652中のステップ650の終点が生じ、駆動波形652の電圧がVHOLDから降下してCDW650中のパルスの底の電圧VLOWを辿る。パスゲートの半分だけ、すなわち、スイッチ素子660’およびスイッチ素子664’をオンにすることによってVHOLDからVLOWへの遷移を可能にする。
【0202】
スイッチ素子664’はスイッチ素子660’と比較して高いON抵抗を持つので、この遷移のためのパスゲートのON抵抗は大きくなる。これにより、V
HIGHからV
HOLDへの遷移を悪化させることなくV
HOLDからV
LOWへの遷移を遅くすることができる。ステップ期間T
TRIMのタイミングはスイッチ素子660’および664’がオンになるタイミング(
図7dの丸によって強調されている遷移)によって決まり、したがって、切り欠きの量もこれによって決まる。
【0203】
専用の試験バス609は各スイッチ606のスイッチ素子662’および664’に接続されている。
【0204】
特定のアクチュエータ素子4を試験経路に接続させるために、対応するスイッチ606のスイッチ素子660’が開かれるように制御される一方で、スイッチ素子662’および664’は必要な立ち上がり/測定時間に応じてアクチュエータ素子4を試験経路に接続させるように制御される。さらに、本例では、試験スイッチ610が試験回路602を試験バス609に選択的に接続するように配置されている。試験スイッチ414は、任意の適当な形態をとってもよく、例えば、1つ以上のトランジスタを備えてもよい。
【0205】
例えば、スイッチ素子662’および664’のそれぞれのRON抵抗により、スイッチ素子662’を開いてスイッチ素子664’を閉じると、最長の立ち上がり/測定時間が得られ、その一方で、スイッチ素子662’を閉じてスイッチ素子664’を開くと、短い立ち上がり/測定時間が得られ、その一方で、スイッチ素子662’および664’の両方を閉じると、最短の立ち上がり/測定時間が得られる。
【0206】
したがって、スイッチ素子662’および664’は専用の試験スイッチ素子でも専用の駆動スイッチ素子でもなく、アクチュエータ素子4を駆動経路と試験経路との両方に接続するのに用いられる一方で、スイッチ素子662’および664’を制御すると、立ち上がり/測定時間の変化が得られることが分かる。
【0207】
図7aおよび
図7cの概略例については、スイッチ素子660’、662’および664’は図示のために限って単純なスイッチロジックとして示されており、実際には、これらはMOSデバイスまたは任意の適当なデバイスとして実施してもよい点に留意する。
【0208】
図8は、プリント回路基板(PCB)上などにある専用の回路として実施される試験回路702を概略的に示す。PCBをプリンタ(プリントヘッド)に挿入してもよいし、例えば、プリンタ/プリントヘッドに接続される別体の試験モジュールの一部として用いてもよい。
【0209】
試験回路702は、構成および機能の点で、
図7aで説明されている試験回路と同様であり、これを踏まえて、本例では、試験回路702は、端子728を介してプリントヘッド回路(図示せず)上のアクチュエータ素子と電気接続する状態で設けることができる電線708を備える。
【0210】
試験回路702は、上記のように試験回路702の回路を制御するコントローラ716を備える。コントローラ702は、コントローラ702の1つ以上の外部回路または構成要素を制御するのに用いられる信号も生成する。例えば、プリントヘッド回路上のスイッチ回路中の個々のスイッチを、端子730を介して制御するのに用いられる信号も生成する。
【0211】
試験回路702は、VHIGHおよびVLOW(コントローラ716によって決定される)を生成するDAC718、719を含む測定回路705と、測定値VXをそれぞれのDAC出力と比較するコンパレータ720、721と、VLOWからVHIGHへのVXの遷移の時間を測定して、結果をコントローラ716に提供するタイマ712とを備える。上記のように、タイマ712はFPGAで実施してもよいし、専用のICであってもよい。
【0212】
試験回路702は、例えばコントローラ716によって決定される定電流iMを生成するプログラム可能な電流源722をさらに備える。上記のように、実施形態では、アクチュエータ素子を線形的に充電して静電容量測定の正確度を改善するために、電流源722は高い出力インピーダンスを持つ。
【0213】
試験回路702は、上述されているようなVSETを生成するDAC723とバイアススイッチ725とをさらに備える。
【0214】
電源727は電流源722に適当な電圧を供給する。電源727は端子729を介してプリントヘッド回路などの外部遠回りにも電圧を供給してもよい。電源727によって供給されるこのような電圧は、与えられた印加に依存してもよく、例えば、1.8V~40Vであってもよい。
【0215】
コントローラ716は、通信回路732および端子734を介してさらなる外部回路(例えばコンピュータ端末)と通信してもよい。回路は、シリアルリンクを備える通信インタフェース(例えばユニバーサルシリアルバス(USB)からシリアルリンクへ)を備えてもよい。理解されるであろうが、必要に応じて、例えば、特定の通信プロトコルに必要な際に、信号の送信/受信/生成を行なうここでは説明されていないさらなる遠回り/端子が必要である場合がある。例として、I2Cプロトコルでは、試験回路702によってクロック信号が生成されることが必要である場合がある。
【0216】
試験回路702を用いて診断試験を行なって、アクチュエータ素子の静電容量CACTを決定し、および/または、アクチュエータ素子の両端間の断線、もしくはアクチュエータ素子の両端間/アクチュエータ素子間の閉路などの不具合を検出してもよいことが分かる。添付の例中のアクチュエータ素子の数は4に限定されず、任意の数の作動要素に同様にして適用してもよい。
【0217】
試験回路702中に精度回路736を設けてもよく、この場合、試験回路702中で生成される電流および電圧を測定することができる外部測定回路またはデバイスと電気接続する状態で精度回路を配置してもよく、このようにせずに試験回路自体の固有の正確度で達成されるよりも、正確に測定することができる。
【0218】
本例では、精度回路736は電流源722および各DAC718、719の出力部を端子740に選択的に接続するのに用いる精度スイッチアレイ738を備えることで、デジタル電圧計(digital voltmeter)(DVM)(例えば、プリントヘッド回路中のものまたはプリンタから離れた場所にあるもの)などの外部測定回路/デバイスを端子740に接続して、接続しない場合に電流源722およびDAC720、721の固有の正確度で達成されるよりも正確にiM,VHIGHおよびVLOWを測定してもよい。その際、DVMがコントローラ716と通信して、測定値に応じて電流源722、DAC720および/またはDAC721からの出力を調節してもよい。
【0219】
本例では、精度スイッチ744が例えばコントローラ716によって閉じられるときの精度レジスタ構成742での電圧低下からi
Mは測定される。このような精度回路は
図2a~
図7aで上述されている他の試験回路に含まれてもよいことも分かる。
【0220】
上記の実施形態では、時間測定に基づいて、すなわち時間測定に応じて静電容量を決定したり、不具合を検出したりすることが開示されているが、本発明は時間測定に限定されない。
【0221】
例えば、試験回路中のコンパレータをアナログ・デジタルコンバーター(ADC)と置換してもよい。
図2aの試験回路を例として考えると、コンパレータをADCと置換すれば、電圧V
XはADCに対するアナログ入力である。この場合、コントローラが所定の時間だけ定電源を制御することで、静電容量(C
PARおよび/またはC
ACT)がそれに応じて充電される。時間遷移を測定する代わりに、コントローラは測定電圧の変化に応じたADCからのデジタル信号を測定する。しかし、理解されるであろうが、このような測定の正確度はADCのビット数に依存することになる。
【0222】
上記において実施形態で説明されている試験回路により、診断試験を行なってアクチュエータ素子の静電容量CACTを決定し、および/または、アクチュエータ素子の両端間(関連する電線の両端間を含む)の断線、もしくはアクチュエータ素子の両端間/アクチュエータ素子間の閉路などの不具合を検出してもよい。
【0223】
実施形態では、上述のこのような試験回路をプリンタから離れた場所に配置して、プリントヘッド回路中のアクチュエータ素子を試験するように構成してもよく、これにより、プリントヘッド回路をプリンタに組み込む前でも後でも静電容量が決定され、/任意の不具合が検出される。
【0224】
他の実施形態では、試験回路をプリンタに組み込んでもよく(例えば
図5a、
図6および
図7aに示されているプリントヘッド回路の一部として組み込む)、これにより、印刷する前でも後でも診断試験を行なうことができる(例えば、初期化、スタンバイ、シャットダウンルーチンの一部として診断試験を行なう、および/または印刷実行と印刷実行との間に診断試験を行なう)。
【0225】
実施形態では、アクチュエータ素子での不具合を検出すると、試験回路(またはプリンタ上の他の回路)は不具合対応を行なってもよい。
【0226】
このような不具合対応はユーザに対する警報の生成を含んでもよい。このような警報は、ユーザ画面に不具合特定の通知を行なうことであってもよい。他の実施形態では、不具合対応は、ユーザが例えばプリントヘッド回路を交換することによって不具合に対処するまでプリンタが限られた機能で動作することを含んでもよい。
【0227】
他の実施形態では、不具合対応は、特定のアクチュエータ素子が駆動回路によって駆動されるのを試験回路(またはプリンタ上の他の回路)が避ける(例えば、関連するスイッチを適切に制御することによって避ける)ことを備えてもよい。
【0228】
不具合対応は、駆動回路が任意の適当な技術を用いて、任意の検出された不具合を、例えば、隣接する1つ以上のノズルから吐出される液滴容積を増やすことによって適宜補償することも含んでもよい。
【0229】
さらに、アクチュエータ素子が経年劣化することにより、達成可能な落下速度は、アクチュエータ素子が作動しなくなるまで、設定された駆動電圧に応じて低下する。実際には、駆動電圧を増加させて、低下した落下速度を補償することができる。しかし、駆動電圧を増加させると、アクチュエータ素子の寿命が短くなる。
【0230】
アクチュエータ素子の静電容量も時間とともに低下し(例えば、経年劣化および消耗のため)、一般的には落下速度に追従する。したがって、静電容量を経時記録することによって、アクチュエータ素子が作動しなくなるまでにどの程度迫っているかを決定および/または予測することが可能である。
【0231】
作動しなくなることを予測する1つの方法としては、定期的にアクチュエータ素子の静電容量を決定すること、決定された静電容量値を(例えば、試験回路またはプリントヘッド回路上の)記憶回路に静電容量履歴データ(例えば、時間の関数としてのデータ)として記憶すること、および静電容量閾値を設定することである。閾値に達する際に、不具合とみなし、これに応じて適切な不具合対応を開始してもよい。
【0232】
したがって、実施形態では、アクチュエータ素子の決定された静電容量履歴データを用いて、アクチュエータ素子の動作を経時的に追跡し、アクチュエータ素子が将来に作動しなくなるのを予測することができる。
【0233】
記憶された静電容量履歴データの解析に基づいてアクチュエータ素子の機能を修正してもよく、したがって、静電容量履歴に応じて駆動波形に調節/切り欠きを行なってもよいことが分かる。このような解析は、プリントヘッド回路、試験回路または他の任意の適当な回路によって行なってもよい。
【0234】
上記のように、例えば、初期化、スタンバイまたはシャットダウンルーチンの一部として、静電容量を定期的に決定して静電容量履歴データを記憶してもよい。これの代わりに、アクチュエータ素子が駆動回路に接続されていない状態で、静電容量を印刷実行と印刷実行との間に決定してもよい。
【0235】
用語「備える(comprising)」が本説明および請求項において用いられている場合、他の要素または工程を除外せず、以降に挙げられる手段に限定されると解釈するべきではない。
【0236】
単数名詞に言及するときに不定冠詞または定冠詞が用いられる場合(例えば「a」または「an」、「the」)、別段の記載が特にない限り、これはその名詞の複数形を含む。
【0237】
別の代替例では、本技術の好ましい実施形態を、それ自体に機能データを有するデータキャリアの形態で実現してもよい。前記機能データは、コンピュータシステムまたはネットワークにロードされて、これによる作用を受けるときに、前記コンピュータシステムが方法のすべての工程を実行するのを可能にする機能的コンピュータデータ構造を備える。
【0238】
本技術の範囲を逸脱しない限りにおいて多くの改善及び修正を前述の例示的な実施形態に行なうことができることは当業者には明らかである。