(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】賦形シートおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 1/54 20120101AFI20220317BHJP
【FI】
D04H1/54
(21)【出願番号】P 2019504477
(86)(22)【出願日】2018-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2018006908
(87)【国際公開番号】W WO2018163879
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】P 2017042909
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591040708
【氏名又は名称】株式会社瑞光
(74)【代理人】
【識別番号】110001265
【氏名又は名称】特許業務法人山村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 大介
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2001/011130(WO,A1)
【文献】特開2004-113489(JP,A)
【文献】国際公開第2008/146594(WO,A1)
【文献】国際公開第2001/047697(WO,A1)
【文献】特開昭59-088959(JP,A)
【文献】国際公開第2008/129138(WO,A1)
【文献】米国特許第04333979(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向Dおよび前記第1方向Dに交差する第2方向Fに各々複数列の凸部21が不織布シート1に形成された賦形シート2であって、
この賦形シート2は使い捨て着用物品の
透液性および通気性を有するトップシートであって、
前記賦形シート2は前記第2方向Fに比べ前記第1方向Dに伸長し易く、
前記賦形シート2は単層の不織布シート1で形成され、
前記賦形シート2における前記各凸部21の周囲の一部または全部において、前記第1方向Dに断続的または連続的に延び、融着構造により前記凸部21に比べ厚さの薄い融着部22が設けられている、賦形シート。
【請求項2】
請求項1において、前記融着部22は前記凸部21の周囲において第1方向Dに沿って間欠的かつ断続的に設けられ、かつ、前記融着部22は第2方向Fについても間欠的かつ断続的に設けられている、賦形シート。
【請求項3】
請求項1において、前記融着部22は凸部21に比べ透明度が高く、半透明である、賦形シート。
【請求項4】
請求項1において、前記融着部22は前記凸部21の周囲において第1方向Dに沿って間欠的かつ断続的に設けられ、かつ、融着部22は第2方向Fについても間欠的かつ断続的に設けられ、
更に、前記融着部22は凸部21に比べ透明度が高く、半透明である、賦形シート。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれか1項において、前記融着部22は前記単層の不織布シート1を構成する繊維11同士が互いに融着された前記融着構造により形成されている、賦形シート。
【請求項6】
請求項
5において、前記融着部22は賦形シート2の第1方向Dの伸長を抑制する前記融着構造により形成されている、賦形シート。
【請求項7】
請求項
1~4のいずれか1項において、前記融着部22は前記第1方向Dにおける互いに隣り合う凸部21同士の間の中央部23を含み、前記融着部22は前記中央部23から少なくとも前記第1方向Dの一方に延びる、賦形シート。
【請求項8】
請求項
1~4のいずれか1項において、構成繊維の繊維密度に関し、前記融着部22の方が前記凸部21よりも高い、賦形シート。
【請求項9】
請求項
1~4のいずれか1項において、前記第1方向Dに前記賦形シートを引っ張った際の伸び率に関し、前記融着部22の方が前記凸部21よりも小さい、賦形シート。
【請求項10】
第1方向Dおよび前記第1方向Dに交差する第2方向Fに各々複数列の凸部21が不織布シート1に形成された賦形シート2の製造方法であって、
長手方向よりも幅方向に伸長し易い単層の不織布シート1を前記長手方向に搬送する工程と、
前記搬送中の不織布シート1に前記複数列の凸部21を賦形する賦形工程と、
前記単層の不織布シート1又は賦形シート2における前記各凸部21の周囲の一部または全部に前記単層の不織布シート1を構成する繊維11同士が互いに融着された融着部22を形成する融着工程とを備え
、
ここにおいて、前記賦形工程は第1ロールR1と第2ロールR2とが噛み合うことで前記不織布シート1の賦形が実行され、
前記賦形工程において前記第1および/または第2ロールR1,R2が前記不織布シート1を形成する前記繊維11の融点よりも低い温度の範囲に加熱され、
前記融着工程は第2ロールR2に加熱装置R3が前記不織布シート1の前記融着部22を介して接することで実行される、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単層の不織布シートを賦形した賦形シートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2004-174234Aに開示された先行技術では、不織布シートに複数の凸部を賦形した賦形シートと平坦なシートとを凸部の周囲で間欠的に接合することで、賦形された凸部の形状を保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】JP2004-174234A(フロントページ)
【文献】WO2016/199543A1(フロントページ)
【発明の概要】
【0004】
しかし、このような賦形シートでは、2層のシートを必要とするため、コストが高くなるという問題がある。
また、かかる2層の賦形シートは例えば使い捨てオムツや生理用品などの着用物品が嵩高くなる要因となる。
【0005】
したがって、本発明の目的は、賦形シートのコストが安く、嵩高くなるのを抑制し、かつ、凸部の形状を保持することができる賦形シートおよびその製造方法を提供することである。
【0006】
本発明の賦形シートは、第1方向Dおよび前記第1方向Dに交差する第2方向Fに各々複数列の凸部21が不織布シート1に形成された賦形シート2であって、
前記賦形シート2は前記第2方向Fに比べ前記第1方向Dに伸長し易く、
前記賦形シート2は単層の不織布シート1で形成され、
前記賦形シート2における前記各凸部21の周囲の一部または全部において、前記第1方向Dに断続的または連続的に延び、融着構造により前記凸部21に比べ厚さの薄い融着部22が設けられている。
【0007】
本発明の賦形シートの製造方法は、第1方向Dおよび前記第1方向Dに交差する第2方向Fに各々複数列の凸部21が不織布シート1に形成された賦形シート2の製造方法であって、
長手方向よりも幅方向に伸長し易い単層の不織布シート1を前記長手方向に搬送する工程と、
前記搬送中の不織布シート1に前記複数列の凸部21を賦形する賦形工程と、
前記単層の不織布シート1又は賦形シート2における前記各凸部21の周囲の一部または全部に前記単層の不織布シート1を構成する繊維11同士が互いに融着された融着部22を形成する融着工程とを備える。
【0008】
本発明によれば、長手方向よりも幅方向に伸長し易い単層の不織布シート1を構成する繊維11同士が互いに融着されて融着部22が形成される。前記融着部22は賦形シート2の凸部21に比べ厚さが薄い融着構造により形成される。かかる融着部22は凸部21に比べ硬く剛性が大きい。
【0009】
そのため、融着部22は凸部の周囲において賦形シート2が伸長し易い第1方向Dの賦形シート2の伸長を阻害するであろう。したがって、凸部は潰れにくくなり、単層のシートであっても凸部の形状が保持される。その結果、低コストの賦形不織布シートを得ることができる。また、賦形シートが嵩高くなるのを抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本発明の賦形シートの一部を約10倍に拡大して示す実施例1の超拡大斜視図である。
図1において凸部には凸形状を把握し易くするために稜線が記入されている。
【
図3】
図3は同賦形シートの一部を裏面から見た超拡大平面図である。
【
図4】
図4Aおよび
図4Bは、それぞれ、融着部のパターンを示す拡大平面図である。
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、それぞれ、融着部の別のパターンを示す拡大平面図である。
【0011】
図1~
図5Bにおいて、融着部にはグレーの着色が施されている。
図2Aの各凸部および
図3の各凹部について、それぞれ、左斜め上から光が当たっているように影付けされている。
【0012】
【
図6】
図6は製造装置の一例を示すレイアウト図である。
【
図7】
図7Aは第1ロールおよび第2ロールの一部を示す拡大断面図、
図7Bは第2ロールおよび第3ロールの一部を示す拡大断面図である。
【
図9】
図9Aは縁部に不織布シートの部分を有する賦形シートの一部をデジタル写真で示す拡大平面図、
図9Bは賦形シートの一部を表面から撮像したデジタル写真で示す拡大斜視図、
図9Cは賦形シートの一部を裏面から撮像したデジタル写真で示す拡大斜視図である。
【
図10】
図10Aは賦形シートの一部を表面から撮像したデジタル写真で示す超拡大平面図、
図10Bはスライスした同賦形シートを側面から撮像した超拡大断面図、
図10Cは賦形シートの一部を裏面から撮像したデジタル写真で示す超拡大裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましい実施例において、前記賦形シートの前記融着部22は前記単層の不織布シート1を構成する繊維11同士が互いに融着された前記融着構造により形成されている。
単層の不織布シート1の繊維11同士が互いに融着されているとは、融着部22が他の不織布に本質的に融着されてないことを意味する。また、これは2重に折り畳んだ不織布シート1の2重の部分を互いに融着されたものでないことを意味する。
【0014】
かかる融着部は凸部などの非融着部に比べ、硬さや剛性が大きくなる。そのため、凸部の周囲において賦形シート2が前記第1方向に伸長するのを阻害できる。
【0015】
なお、1つの融着部の大きさは極めて小さく、したがって、硬さや剛性を客観的に測定しにくいと考えられ、そのため、融着部を厚さで定義した。
厚さの測定方法としては、JIS L1913に準じた方法で測定してもよいが、一般に、デジタルカメラやマイクロスコープなどで賦形シートの切断面を拡大して融着部の厚さと凸部の厚さとの違いを容易に確認できるだろう。
【0016】
好ましい実施例において、前記賦形シートの前記融着部22は前記第1方向Dにおける互いに隣り合う凸部21同士の間の中央部23を含み、前記融着部22は前記中央部23から少なくとも前記第1方向Dの一方に延びる。
前記中央部は隣り合う凸部同士が互いに接近しており、そのため、最も伸び易い部位になり易い。これに対し、前記融着部が当該中央部を含み、かつ、前記第1方向に延びていることで、賦形シート2が前記第1方向に伸長しにくくなる。
【0017】
好ましい実施例において賦形シートは、構成繊維の繊維密度に関し、前記融着部22の構成繊維の繊維密度の方が前記凸部21の構成繊維の繊維密度よりも高い。
繊維密度とは、賦形シートの単位体積当たりの繊維の質量のことである。繊維密度が高いとは、シートの単位体積当たりに存在する繊維の量が多いことを意味する。繊維密度が低いとは、シートの単位体積当たりに存在する繊維の量が少ないことを意味する。
繊維密度の測定方法としては、シートの切断面を、走査電子顕微鏡を用いて拡大観察し、一定面積当たり(0.5mm2程度)の前記切断面によって切断されている繊維の断面数を数えてもよい。
かかる融着部22は凸部21に比べ硬く剛性が大きい。そのため、融着部22は凸部の周囲において賦形シート2が伸長し易い第1方向の伸長を阻害するであろう。
なお、融着部22が透明に近い程度までフィルム化した賦形シートでは、融着部22に繊維の存在を明確に確認できず、融着部22の繊維密度が凸部21のそれよりも小さくなる場合があるかもしれない。
【0018】
好ましい実施例において賦形シートは、前記第1方向Dに前記賦形シートを引っ張った際の伸び率に関し、前記融着部22の前記伸び率の方が前記凸部21の前記伸び率よりも小さい。
伸び率の測定方法としては、JIS L1913に準じた方法で測定してもよい。賦形シートを前記第1方向Dに低速度で引っ張った場合、凸部21が伸び、融着部22が殆ど伸びないことをマイクロスコープなどで観察することができるかもしれない。また、その場合、凸部21と融着部22との境界が破断することがあるだろう。
かかる融着部22は凸部21に比べ硬く剛性が大きい。そのため、融着部22は凸部の周囲において賦形シート2が伸長し易い第1方向Dの賦形シート2の伸長を阻害するであろう。
【0019】
前記賦形シート2の各融着部22において繊維が融着された結果、前記各融着部22は前記第1方向Dおよび第2方向Fに同等に伸び難くなるであろう。一方、融着されていない各凸部21は前記第1方向Dに伸び易い。そのため、前記賦形シート2全体として前記第2方向Fよりも前記第1方向Dに伸び易く、この場合、「前記賦形シート2は前記第2方向Fに比べ前記第1方向Dに伸長し易」いと云える。
したがって、「賦形シート2が前記第2方向Fよりも前記第1方向Dに伸長し易い」とは、たとえば、多数の前記凸部21および前記融着部22を含む大きさの賦形シート2において、当該賦形シート2全体を前記第1方向Dに引っ張った場合と前記第2方向Fに引っ張った場合とを比べると、前記賦形シート2は前記第2方向Fに比べ前記第1方向Dに伸長し易いことを意味する。
【0020】
本発明において、個々の各凸部21および各融着部22の大きさは極めて小さく、個々の各凸部21および各融着部22について前記第1方向Dに伸長し易いことを測定することは困難で、そのため、凸部21および融着部22を含む賦形シート2の前記伸長のし易さで定義した。
すなわち、「賦形シート2が前記第2方向Fよりも前記第1方向Dに伸長し易い」か否かを測定する方法としては、前記JIS L1913に準じた方法で測定してもよい。
【0021】
好ましい製造方法において、前記賦形工程は第1ロールR1と第2ロールR2とが噛み合うことで前記不織布シート1の賦形が実行され
前記賦形工程において前記第1および/または第2ロールR1,R2が前記不織布シート1を形成する前記繊維11の融点よりも低い温度の範囲に加熱され、
前記融着工程は第2ロールR2に加熱装置R3が前記不織布シート1の前記融着部22を介して接することで実行される。
この場合、不織布シート1に凸部21が賦形され易くなると共に、融着部22において賦形シートに貫通孔が生じるのを抑制し得る。
なお、加熱装置は加熱ロールを採用するのが好ましいが、超音波加熱装置を採用することも可能である。
【0022】
1つの前記各実施態様または下記の実施例に関連して説明および/または図示した特徴は、1つまたはそれ以上の他の実施態様または他の実施例において同一または類似な形で、および/または他の実施態様または実施例の特徴と組み合わせて、または、その代わりに利用することができる。
【実施例】
【0023】
本発明は、添付の図面を参考にした以下の好適な実施例の説明からより明瞭に理解されるであろう。しかし、実施例および図面は単なる図示および説明のためのものであり、本発明の範囲を定めるために利用されるべきものではない。本発明の範囲は請求の範囲によってのみ定まる。添付図面において、複数の図面における同一の部品番号は、同一または相当部分を示す。
【0024】
以下、本発明の実施例が図面にしたがって説明される。
【0025】
図1に示すように、賦形シート2は単層の不織布シート1で構成され、例えば、使い捨て着用物品の吸液部のトップシートとして用いられる。したがって、前記賦形シート2は所期の透液性および通気性を有する。
【0026】
図1に示すように、賦形シート2は不織布シート1の第1方向Dに複数列の凸部21が形成され、かつ、前記第1方向Dに交差する第2方向Fに複数列の凸部21が不織布シート1に形成されている。
なお、前記不織布シート1の全幅にわたって多数の凸部21が形成されていてもよいし、あるいは、
図9Aに示すように、前記不織布シート1の側縁部については加工せずに凸部が形成されていない元の不織布のままであってもよい。
【0027】
本例の場合、前記第1方向Dは
図8Aの連続不織布シート1の幅方向に一致しているが、第1方向Dは幅方向に対し若干斜めであってもよい。本例の不織布シート1の各繊維は第1方向Dに比べ第2方向Fに長く、そのため、前記賦形シート2は前記第2方向Fに比べ前記第1方向Dに伸長し易い。
【0028】
図2A~
図2Cに示すように、本例の場合、第2方向Fは第1方向Dに対し直交するように交差しているが、第2方向Fは第1方向Dに対し斜めに交差していてもよい。
【0029】
図1の賦形シート2には融着部22が設けられている。前記融着部22は融着構造により凸部21に比べ
図2Bの厚さTが薄い。すなわち、
図2Bおよび
図2Cに示すように、単層の賦形シート2において、凸部21と前記凸部21よりも厚さTの薄い融着部22とが前記第1方向Dおよび前記第2方向Fに交互に配置されている。
また、
図2Bおよび
図2Cに示すように、構成繊維の繊維密度に関し、前記融着部22の方が前記凸部21よりも高くてもよい。更に、前記第1方向Dに前記賦形シートを引っ張った際の伸び率に関し、前記融着部22の方が前記凸部21よりも小さくてもよい。
【0030】
本例の場合、
図1の融着部22は前記賦形シート2における前記各凸部21の周囲の一部に設けられている。融着部22が一部に設けられている場合、融着部22は前記第1方向Dに断続的に延びる。
【0031】
図4Aに示すように、融着部22は前記賦形シート2における前記各凸部21の周囲の全部に設けられていてもよい。融着部22が全部に設けられている場合、融着部22は前記第1方向Dおよび第2方向Fに連続的に延び、ループ状になる。
【0032】
図8B、
図8Cおよび
図10Bに示すように、前記融着構造により形成された前記融着部22は前記単層の不織布シート1を構成する繊維11同士が互いに融着されている。前記融着構造により形成された
図1の前記融着部22は賦形シート2の第1方向Dの伸長を抑制する。
【0033】
前記繊維11が融着された融着部22は、
図9Aに明示するように、凸部21に比べ透明度が高く、半透明である。一般に、透明度は目視によって確認できる。
【0034】
ここで、透明度(transparency)とは、物質または材料の透明性を表す尺度で、例えば透明性の度合いは光線透過率で表示されてもよい。
透明度の測定方法としては、ヘーズメータなどを用いて測定することができる。具体的には、試験片を切り出し、JIS K 7136(プラスチック―透明材料のヘーズの求め方)を参考に測定することができる。
【0035】
前記賦形シート2は単層の不織布シート1で形成されている。
前記不織布シート1としては、エアスルー不織布(サーマルボンド不織布)や水流交絡ウォータパンチ不織布により形成された不織布が用いられてもよい。これらの不織布を形成する繊維11同士が互いに融着されて、前記融着部22の融着構造が形成される。
【0036】
前記不織布シート1の坪量は25~50g/m2程度が好ましい。坪量が25g/m2
よりも小さいと、単層の不織布シート1では凸部21の保形が難しくなるであろう。一方、坪量が50g/m2よりも大きいと、単層の不織布シート1であっても、コストアップや風合いが低下する要因となる。より好ましくは前記坪量は30~40g/m2程度である。
【0037】
図1において、前記融着部22は前記第1方向Dにおける互いに隣り合う凸部21同士の間の中央部23を含み、前記融着部22は前記中央部23から少なくとも前記第1方向Dの一方に延びていてもよい。
図1において、前記融着部22は前記第2方向Fよりも前記第1方向Dに長くなるように形成されている。また、前記融着部22は前記中央部23において括れている形状(ボーン形状、砂時計形状)であってもよい。
【0038】
図1、
図4B、
図5Aおよび
図5Bのように、前記融着部22は前記凸部21の周囲において第1方向Dに沿って、間欠的かつ断続的に設けられていてもよい。これらの場合、融着部22は第2方向Fについても間欠的かつ断続的に設けられる。
【0039】
図4Aおよび
図5Aのように、前記融着部22は前記凸部21の前記第1方向Dの全幅にわたって設けられていてもよい。
図5Aの場合、融着部22は第2方向Fに間欠的かつ断続的に設けられている。
【0040】
図2Aに示すように、融着部22は第1方向Dにおいて、凸部21の幅21Dの60%以上の領域に亘って形成されていてもよい。
【0041】
【0042】
図1の各凸部21の表面には凸面が形成されている。前記各凸部21の裏面には、
図2B、
図2Cおよび
図3に示すように、凹面が形成されている。
凸部の大きさは特に限定されないが、たとえばオムツのトップシートとして用いられる場合、一般的には6mm
2~30mm
2程度に設定される場合が多く、凸部の高さは1mm~5mm程度が一般的であろう。
【0043】
つぎに、製造装置について簡単に説明する。
図6に示すように、製造装置は、第1~第3ロールR1~R3を備える。
【0044】
図6の第1および第2ロールR1,R2は互いに噛み合い、導入ロールR0から導入された不織布シート1を賦形する。
図7Aに示すように、第1ロールR1には多数の賦形用凸部51が設けられている。一方、第2ロールR2には多数の凹所52が設けられている。前記凸部51と凹所52とは互いに噛み合って不織布シート1に凸部21を形成する。
【0045】
図7Aの前記第2ロールR2の凹所52には不織布シート1を吸着するためのマニホールド54が連通している。前記凹所52において賦形された不織布シート1を吸着して凸部21が保形される。
【0046】
図7Aの前記第1および/または第2ロールR1,R2は図示しない第1加熱器を有していてもよい。第1加熱器は第1および/または第2ロールR1,R2に内蔵されたヒータおよび/または温風器であってもよい。前記加熱器は前記第1および/または第2ロールR1,R2を前記不織布シート1を形成する前記繊維11の融点よりも低い温度の範囲に加熱する。
【0047】
図7Bの第2および第3ロールR2,R3は、前記賦形された不織布シート1を介して互いに接する。前記第2ロールR2には前記凹所52と凹所52との間に多数の融着用凸部55を有する。前記凸部55は第3ロールR3の表面53との間で不織布シート1を挟む。
【0048】
前記第3ロール(加熱装置)R3は図示しないヒータにより前記繊維11の軟化点または融点よりも高い温度の範囲に加熱されている。したがって、第3ロールR3の温度は第1および第2ロールR1,R2の温度よりも高い。
【0049】
なお、第3ロールR3に代えて、超音波加熱装置を用いることも可能である。
【0050】
つぎに、賦形シート2の製造方法が説明される。
【0051】
図8Aの長手方向Fよりも幅方向Dに伸長し易い単層の不織布シート1を
図6の各ロールR0~R3により前記長手方向Fに搬送する。前記
図7Aの第1および第2ロールR1,R2により、前記搬送中の不織布シート1に凸部21を賦形する。
【0052】
この際、
図9A~
図10Cのように前記凸部21は第1方向Dおよび第2方向Fに各々複数列に形成される。
図7Aに示すように、前記賦形工程は第1ロールR1の凸部51と第2ロールR2の凹所52とが噛み合うことで前記第1ロールR1と前記第2ロールR2との間に導入された前記不織布シート1の賦形が実行される。
【0053】
前記賦形工程において前記第1および/または第2ロールR1,R2は前記不織布シート1を形成する前記繊維11の融点よりも低い温度の範囲に加熱されるのが好ましい。
【0054】
前記賦形工程の後、
図7Bに示すように、前記第2ロールR2の融着用凸部55と前記第3ロールR3の表面53との間に前記賦形された不織布シート1の一部が挟まれて融着されることにより、
図8Bの不織布シート1に融着部22(
図8C)が形成され、
図8Cの賦形シート2が得られる融着工程が実行される。すなわち、前記単層の賦形シート2における前記各凸部21の周囲の一部(たとえば
図1)または全部(
図4)に前記不織布シート1を構成する繊維11同士が互いに融着された融着部22が形成される。
図8Cに示すように、単層の賦形シート2において前記融着部22の厚さは前記凸部21の厚さよりも小さい。
【0055】
なお、前記融着工程において、第3ロールR3は前記繊維11を構成する熱可塑性樹脂の軟化点よりも高く、かつ、融点程度の温度範囲に加熱されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は使い捨て着用物品のトップシートの他に、紙ナプキンなど種々の賦形シートに用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
1:不織布シート 11:繊維
2:賦形シート 20:凹面 21:凸部
22:融着部 23:中央部
D:第1方向(幅方向) F:第2方向(長手方向) V:法線方向
R1,R2,R3:第1~第3ロール