(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】多段変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 3/66 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
F16H3/66 A
(21)【出願番号】P 2019517296
(86)(22)【出願日】2017-09-29
(86)【国際出願番号】 US2017054353
(87)【国際公開番号】W WO2018064505
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-09-29
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518392026
【氏名又は名称】リナマー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】セフシック,マイケル・シー
(72)【発明者】
【氏名】ディア,ジョー
(72)【発明者】
【氏名】コガー,レイ
【審査官】前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-081944(JP,A)
【文献】特開2011-102639(JP,A)
【文献】特開昭63-111346(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機入力部と、
変速機出力部と、
前記変速機入力部として構成された第1の太陽歯車、基礎にしっかりと取り付けられた第1のリング歯車、ならびに、前記第1の太陽歯車および前記第1のリング歯車と噛み合う相互連結された複数の
第1ピニオン歯車を伴う第1の遊星キャリアを備える主減速歯車セットと、
第2の太陽歯車、第3の太陽歯車、基礎にしっかりと取り付けられた第2のリング歯車、ならびに、前記第2の太陽歯車、前記第3の太陽歯車、および前記第2のリング歯車と噛み合う相互連結された複数の
第2ピニオン
歯車を伴う、前記変速機出力部として構成された第2の遊星キャリアを有するステップピニオン遊星歯車セットを備える歯車組立体と、
前記変速機入力部に駆動可能に連結され
、前記第2の太陽歯車および前記第3の太陽歯車のそれぞれに駆動可能に連結され、前記第2の太陽歯車および前記第3の太陽歯車のいずれかを選択的に活性化する第1の入力クラッチおよび第2の入力クラッチと
を備え、
前記第1の遊星キャリアは前記第1の入力クラッチおよび前記第2の入力クラッチを駆動し、それにより前記第1の入力クラッチおよび前記第2の入力クラッチは、前記変速機入力部に駆動可能に連結され、前記主減速歯車セットを介して駆動され、
前記変速機入力部として構成された前記第1の太陽歯車と、前記変速機出力部として構成された前記第2の遊星キャリアとは、同じ長手方向軸に沿って相互に離間される、多段変速機。
【請求項2】
前記第1の入力クラッチおよび前記第2の入力クラッチに動作可能に連結され、前記第1の入力クラッチおよび前記第2の入力クラッチに動作可能に連結された係合ハブを用いて前記第1の入力クラッチ
または前記第2の入力クラッチ
から前記第2の太陽歯車または前記第3の太陽歯車へと動力を伝達するように構成された同期クラッチ組立体をさらに備える、請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
前記変速機は、前記
同期クラッチ組立体が
、前記第1の入力クラッチまたは前記第2の入力クラッチのいずれかにより、前記第2の太陽歯車または前記第3の太陽歯車の一方の係合リングと選択的に係合することによって、高歯車比と低歯車比との間で選択的に切り替わるように構成される、請求項2に記載の変速機。
【請求項4】
前記変速機についての長手方向軸において、前記主減速歯車セットは、前記変速機入力部により近い前記同期クラッチ組立体の側に全体として配置される、請求項2
または3に記載の変速機。
【請求項5】
変速機入力部と、
変速機出力部と、
前記変速機入力部として構成された第1の太陽歯車または第2の太陽歯車を有する単一のステップピニオン遊星歯車セット、基礎にしっかりと取り付けられた第1のリング歯車、前記変速機出力部として構成された第2のリング歯車、ならびに、前記第1の太陽歯車、前記第2の太陽歯車、前記第1のリング歯車、および前記第2のリング歯車と噛み合う相互連結された複数のピニオンを伴うキャリアを備える歯車システムと、
前記変速機入力部に駆動可能に連結された第1の入力クラッチおよび第2の入力クラッチと
を備え、
前記変速機入力部として構成された前記第1の太陽歯車または前記第2の太陽歯車と、
前記変速機出力部として構成された前記第2のリング歯車とは、同じ長手方向軸に沿って相互に離間される、多段変速機。
【請求項6】
前記第1の入力クラッチおよび前記第2の入力クラッチに動作可能に連結され、前記第1の入力クラッチおよび前記第2の入力クラッチに動作可能に連結された係合ハブを用いて前記第1の入力クラッチ
または前記第2の入力クラッチ
から前記第1の太陽歯車または前記第2の太陽歯車へと動力を伝達するように構成された同期クラッチ組立体をさらに備える、請求項
5に記載の変速機。
【請求項7】
前記変速機は、前記クラッチ組立体が前記第1の太陽歯車または前記第2の太陽歯車の一方の係合リングと選択的に係合することによって、高歯車比と低歯車比との間で選択的に切り替わるように構成される、請求項
6に記載の変速機。
【請求項8】
前記低歯車比は24:1であり、前記高歯車比は
14:1である、請求項
7に記載の変速機。
【請求項9】
前記変速機についての長手方向軸において、前記歯車システムは、前記変速機出力部により近い前記同期クラッチ組立体の側に全体として配置される、請求項
8に記載の変速機。
【請求項10】
前記変速機入力部が前記変速機出力部から結合解除されるニュートラル状態と、前記変速機入力部が前記変速機出力部に動作可能に結合される機能状態との間で動作可能である、請求項1から
9のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項11】
車両のための歯車箱組立体であって、
少なくとも1つの多段変速機と、
前記歯車箱組立体を通じて動力を送るために前記変速機に動作可能に結合された電気駆動モータと、
前記少なくとも1つの変速機に動作可能に結合され、前記少なくとも1つの多段変速機と関連付けられた少なくとも1つの歯車と選択的に係合することで高歯車比と低歯車比との間で選択的に切り替わるように構成された歯車切替機構と、
前記駆動モータに動力供給するためのインバータと
、
前記車両の移動を防止するために、前記少なくとも1つの変速機の各々と別々に係合するように構成された駐車歯車ホイールと
を備える歯車箱組立体。
【請求項12】
前記変速機は、
入力シャフトと、
前記入力シャフトと関連付けられた第1の歯車セットおよび第2の歯車セットであって、
少なくとも1つの高領域ピニオン歯車および1つの高領域ホイール歯車、ならびに、
少なくとも1つの低領域ピニオン歯車および1つの低領域ホイール歯車
を各々備える第1の歯車セットおよび第2の歯車セットと、
遊星太陽歯車、遊星リング歯車、および、前記太陽歯車および前記リング歯車と噛み合う複数の遊星ピニオン歯車を伴う遊星キャリアを有する遊星歯車セットと、
前記歯車切替機構に動作可能に結合され、前記高領域ピニオン歯車または前記低領域ピニオン歯車の一方に係合することで高歯車比と低歯車比との間で選択的に切り替わるように構成された同期装置と
を備え、
前記
複数のピニオン
歯車と前記
複数のホイール歯車とは平行な
複数の長手方向軸に沿って相互に離間される、請求項
11に記載の歯車箱組立体。
【請求項13】
前記少なくとも1つの変速機は、約18:1の低歯車比と約8.8:1の高歯車比との間で選択的に切り替わるように構成される、請求項
11または12に記載の歯車箱組立体。
【請求項14】
前記遊星ピニオン歯車は前記
低領域ホイール歯車内に全体で配置される、請求項
12に記載の歯車箱組立体。
【請求項15】
請求項
11から
14のいずれか一項に記載の少なくとも1つの歯車箱組立体を備える車両。
【請求項16】
前記少なくとも1つの歯車箱組立体は、前記電気駆動モータを収容するための中心モータハウジングを備える、請求項
15に記載の車両。
【請求項17】
前記歯車箱組立体は、請求項
12に記載の変速機を2つ備える、請求項
16に記載の車両。
【請求項18】
前記2つの変速機は、前記中心モータハウジングについての長手方向軸において相互に並べられて離間される、請求項
17に記載の車両。
【請求項19】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の変速機を備える歯車箱組立体。
【請求項20】
請求項
19に記載の歯車箱組立体を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
[0001]本出願は、本明細書において参照により組み込まれている2016年9月30日に出願された米国仮特許出願第62/402,411号に基づく優先権を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、多段変速機を組み込んでいる歯車箱組立体の分野に関する。より詳細には、本発明は、標準的な遊星歯車またはステップピニオン遊星歯車のセットを有する多段変速機を組み込んでいる歯車箱に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]電気商用車両のための二段変速機が益々一般的になっており、概して、標準的な走行速度のための高領域と、典型的にはエンジン速度が同じままで車両速度が低下されるため、車輪へのトルクを増加させる低領域との間で選択を必要とする。このような変速機も、概して他の構成部品と共に歯車箱組立体の内部に組み込まれる。最小限の直径および小さい軸方向の断面を伴う変速機が車両の要求を満たすために必要であるため、軸方向または径方向にコンパクトである変速機と、結果生じる歯車箱組立体とを製作することは、しばしば用途に依存した目的である。十分に大きい比率が実現され得ることを確保することも目的である。このような変速機は、1つまたは複数のステップピニオン遊星歯車セット、遊星歯車セット、またはホイール歯車セットを含む歯車組立体の組み合わせによって作り出され得る。
【0004】
[0004]典型的なステップピニオン歯車セットは、遊星キャリア出力部を伴う単一の太陽歯車を有する。単一のステップピニオン遊星歯車セットを備える歯車組立体は十分に大きい比率を提供できるが、これらの比率は満足できる大きさではない可能性がある。追加の太陽歯車を典型的なステップピニオン遊星歯車セットに加えることで第2の比率を提供できるが、必要な比率をなおも達成しない可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]1つの大まかな態様において、変速機は、変速機入力部と変速機出力部とを備える多段変速機を備える。変速機は、変速機入力部として構成された第1の太陽歯車、基礎にしっかりと取り付けられた第1のリング歯車、ならびに、第1の太陽歯車および第1のリング歯車と噛み合う相互連結された複数のピニオン歯車を伴う第1の遊星キャリアを備える主減速歯車セットも備える。変速機は、第2の太陽歯車、第3の太陽歯車、基礎にしっかりと取り付けられた第2のリング歯車、ならびに、第2の太陽歯車、第3の太陽歯車、および第2のリング歯車と噛み合う相互連結された複数のピニオンを伴う、変速機出力部として構成された第2の遊星キャリアを有するステップピニオン遊星歯車セットを備える歯車組立体と、変速機入力部に駆動可能に連結された第1の入力クラッチおよび第2の入力クラッチとを同じく備える。変速機入力部として構成された第1の太陽歯車と、変速機出力部として構成された第2の遊星キャリアとは、同じ長手方向軸に沿って相互に離間される。
【0006】
[0006]一部の実施形態では、変速機は、第1の入力クラッチおよび第2の入力クラッチに動作可能に連結され、第1の入力クラッチおよび第2の入力クラッチに動作可能に連結された係合ハブを用いて第1の入力クラッチから第2の入力クラッチへと動力を伝達するように構成された同期クラッチ組立体をさらに備える。
【0007】
[0007]一部の実施形態では、変速機は、クラッチ組立体が第2の太陽歯車または第3の太陽歯車の一方の係合リングと選択的に係合することによって、約14:1の高歯車比と約4.66:1の低歯車比との間で選択的に切り替わるように構成される。
【0008】
[0008]一部の実施形態では、主減速歯車セットは、変速機入力部により近い同期クラッチ組立体の側に全体として配置される。
[0009]別の大まかな態様では、多段変速機は、変速機入力部と、変速機出力部と、変速機入力部として構成された第1の太陽歯車または第2の太陽歯車を有する単一のステップピニオン遊星歯車セット、基礎にしっかりと取り付けられた第1のリング歯車、変速機出力部として構成された第2のリング歯車、ならびに、第1の太陽歯車、第2の太陽歯車、第1のリング歯車、および第2のリング歯車と噛み合う相互連結された複数のピニオンを伴うキャリアを備える歯車システムと、変速機入力部に駆動可能に連結された第1の入力クラッチおよび第2の入力クラッチとを備え、変速機入力部として構成された第1の太陽歯車または第2の太陽歯車と、変速機出力部として構成された第2のリング歯車とは、同じ長手方向軸に沿って相互に離間される。
【0009】
[0010]一部の実施形態では、変速機は、第1の入力クラッチおよび第2の入力クラッチに動作可能に連結され、第1の入力クラッチおよび第2の入力クラッチに動作可能に連結された係合ハブを用いて第1の入力クラッチから第2の入力クラッチへと動力を伝達するように構成された同期クラッチ組立体を備えることをさらに含む。
【0010】
[0011]一部の実施形態では、開示されている変速機は、変速機入力部が変速機出力部から結合解除されるニュートラル状態と、変速機入力部が変速機出力部に動作可能に結合される機能状態との間で動作可能である。
【0011】
[0012]別の大まかな態様では、少なくとも1つの多段変速機と、歯車箱組立体を通じて動力を送るために変速機に動作可能に結合された電気駆動モータと、少なくとも1つの変速機に動作可能に結合され、少なくとも1つの多段変速機と関連付けられた少なくとも1つの歯車と選択的に係合することで高歯車比と低歯車比との間で選択的に切り替わるように構成された歯車切替機構と、駆動モータに動力供給するためのインバータとを備える、車両のための歯車箱組立体が開示されている。
【0012】
[0013]一部の実施形態では、歯車箱組立体の変速機は、入力シャフトと、入力シャフトと関連付けられた第1の歯車セットおよび第2の歯車セットであって、少なくとも1つの高領域ピニオン歯車および1つの高領域ホイール歯車、ならびに、少なくとも1つの低領域ピニオン歯車および1つの低領域ホイール歯車を各々備える第1の歯車セットおよび第2の歯車セットと、遊星太陽歯車、遊星リング歯車、および、太陽歯車およびリング歯車と噛み合う複数の遊星ピニオン歯車を伴う遊星キャリアを有する遊星歯車セットと、歯車切替機構に動作可能に結合され、高領域ピニオン歯車または低領域ピニオン歯車の一方に係合することで高歯車比と低歯車比との間で選択的に切り替わるように構成された同期装置とを備える。ピニオンとホイール歯車とは平行な長手方向軸に沿って相互に離間される。
【0013】
[0014]1つまたは複数の変速機と歯車箱とは車両に組み込まれてもよい。
[0015]本開示の利点は、添付の図面との関連で検討されるとき、以下の詳細な記載を参照することでより良く理解されることになるため、容易に評価されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】[0016]本発明の実施形態による変速機を備える車両駆動系組立体を示す図である。
【
図2】[0017]ステップピニオン変速機についての構成の概略図である。
【
図3】[0018]本発明の実施形態による変速機の断面図である。
【
図4】[0019]低領域位置における
図3の変速機の断面図である。
【
図5A】[0020]第1の太陽歯車を通る変速機の動力の流れを示す高領域位置における
図3の変速機の断面図である。
【
図5B】[0021]第2の太陽歯車を通る変速機の動力の流れを示す低領域位置における
図3の変速機の断面図である。
【
図6】[0022]高領域位置おける
図3の変速機の断面図である。
【
図7A】[0023]第2の太陽歯車を通る変速機の動力の流れを示す低領域位置における
図3の変速機の断面図である。
【
図7B】[0024]第1の太陽歯車を通る変速機の動力の流れを示す高領域位置における
図3の変速機の断面図である。
【
図8A】[0025]ニュートラル位置における本発明の別の実施形態による変速機の断面図である。
【
図8B】[0026]低領域位置における
図8Aの変速機の断面図である。
【
図8C】[0027]高領域位置における
図8Aの変速機の断面図である。
【
図8D】[0028]変速機の動力の流れを示す低領域位置における
図8Aの変速機の断面図である。
【
図8E】[0029]変速機の動力の流れを示す高領域位置における
図8Aの変速機の断面図である。
【
図9A】[0031]変速機の動力の流れを示す低領域位置における
図8Aの変速機の断面図である。
【
図9B】[0032]変速機の動力の流れを示す高領域位置における
図8Aの変速機の断面図である。
【
図10】[0033]本発明の実施形態による歯車箱組立体および変速機の斜視図である。
【
図11】[0034]
図10の歯車箱組立体および変速機の一部分の斜視図である。
【
図12】[0035]
図10の歯車箱組立体および変速機の一部分の斜視図である。
【
図13】[0036]ニュートラル位置における
図10の変速機の断面図である。
【
図14】[0037]低歯車状態における動力の流れを示す
図13の変速機の断面図である。
【
図15】[0038]高歯車状態における動力の流れを示す
図13の変速機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0039]同様の符号が、同様の構成部品を示すために様々な図において使用されている可能性がある。
[0040]
図1を参照すると、
図1は、車両の車輪12の第1または主要なセットと、車輪14の第2または二次的なセットとにトルクを伝達するための例示の車両駆動系組立体10を示している。駆動系組立体10は、主要または前の駆動ライン16と、二次的または後ろの駆動ライン18とを備える。前の駆動ライン16は、数ある構成部品の中でも、エンジン20と、本開示による変速機22と、動力取出装置24(PTU)とを備える。PTU24は、トルクを、プロペラシャフト28を通じて、二次的な駆動ユニット、明確には、後輪14を駆動するための後駆動ユニット30(RDU)へと伝達するために、出力部26を備える。制御装置(図示せず)が、前の駆動ライン16および後の駆動ライン18における構成部品と通信でき、車両全体に位置付けられた1つまたは複数のセンサと通信していてもよい。
【0016】
[0041]図を参照すると、特定の用途では、低領域における24:1および高領域における14:1の領域での大きいトルク増大比(歯車比)を伴う変速機が必要とされ得る。他の用途は、低領域における17.9:1および高領域における8.8:1の領域での最終歯車比を必要とする可能性がある。一部の実施形態では、変速歯車セットとして構成された遊星歯車セットが、全体の比の要件を低領域における8:1および高領域における4.66:1の範囲に低下させるためにステップピニオン遊星歯車セットと結合され得る。一部の実施形態では、変速機の入力および出力を定める歯車は、同じ軸にあってもよく、または、互いに対して、互いに関して平行な軸にあってもよい(つまり、平行な中心線を有してもよい)。
【0017】
[0042]
図2は、ステップピニオン変速機30についての要素の理想的な構成の概略を示している。
図2に示しているように、変速機は、動力が変速機へと入るのに通る入力部32と、動力を変速機から例えば車輪12または14へと伝える出力部34とを備える。入力部および出力部は、互い(シャフト)に固定的に連結される1つまたは複数の回転要素からなり得る。変速機は、回転要素と、回転要素同士の間に特定の歯車比を与えるように構成され、スプライン連結または他の手段を用いて一体として回転するように構成された切替要素とを備える1つまたは複数の歯車組立体44を同じく備える。歯車組立体は、1つまたは複数の太陽歯車42と、1つまたは複数のリング歯車44と、1つまたは複数のピニオン歯車46との組み合わせを備え得る。変速機は、これらの回転要素のうちの2つ以上を互いに選択的に結合する1つまたは複数のクラッチ48も備え得る。
【0018】
[0043]しかしながら、変速機の直径の制約は、太陽歯車が小さなサイズを保つことを要求する。このことおよび遊星歯車のサイズの制約は、概して、太陽歯車42(S1)のサイズにより変速機シャフト(図示せず)が変速機の内径部を通ることが可能とされなくなるため、
図2に示した構成を不可能にする可能性がある。また、概して、ステップピニオン遊星歯車セットは、単一の歯車比を提供する遊星キャリア出力部を伴う単一の太陽歯車を有する。追加の太陽歯車を典型的なステップピニオン遊星歯車セットに加えることで第2の歯車比を提供できるが、これは、必要な大きい範囲の歯車比および小さい歯車比を達成するのに十分ではない可能性がある。
【0019】
[0044]2つの太陽歯車および2つのリング歯車を伴うステップピニオン遊星歯車組立体を使用することによって典型的なステップピニオン歯車セットを再構成することで、要求される比を達成することが可能とでき、その場合、リング歯車のうちの一方が、それを変速機システムのハウジングまたはカバーにしっかりと固定することで「据え付けられ(grounded)」、第2のリング歯車が変速機出力部として使用され、太陽歯車のうちの一方が変速機入力部として構成される、このような構成は、歯車比を要求される比で生成することを可能にする。
【0020】
[0045]ここで
図3を参照すると、
図3は、本発明の実施形態による例の変速機300を開示している。変速機は、第1の太陽歯車302および第2の太陽歯車304と第1のリング歯車306および第2のリング歯車308とを備える1つのステップピニオン遊星歯車セットを備える歯車組立体を備え、第1の太陽歯車302と第2のリング歯車308とは同じ軸で長手方向において離間されている。歯車組立体が複数のステップピニオン歯車セットを備える場合、これは、追加のステップピニオン歯車セットの要素には要求されない。
図3に示した設計は、ピニオン歯車セットが歯車の歯の2つ以上のセットを有し、および歯数が等しくないため、ステップピニオン歯車セットと称される。本明細書に示した開示では、本明細書に記載したステップピニオン歯車セットの歯車の歯の各々のセットはピニオンと呼ばれてもよい。
【0021】
[0046]
図3に示した構成では、リング歯車308は、変速機の外側に位置決めされている(つまり、変速機出力部として構成される)。他の歯車に対する太陽歯車302の小さなサイズにも拘らず、シャフトは太陽歯車302を通過するように構成され得る。太陽歯車304は、太陽歯車304がより大きい歯車であるため(比のため)、太陽歯車302の内側にある。太陽歯車304のより大きい内径は、歯車選択を可能とするために、軸受およびハブの実装(packaging)をより容易に可能にする。また、組み立ての目的のためには、最小直径の歯車の内径が一方の境界値とならなければならない(must be on one end)。結果として、この実施形態では、太陽歯車304は、変速機300のハウジングにしっかりと固定することで据え付けられているリング歯車306の内側に配置される。遊星の要求される動作を第1の太陽歯車304から第2のリング歯車308まで伝達するために、ピニオン歯車312を通じてピニオン歯車310を延在させることが必要である。通常の遊星歯車セットでは、これは可能ではない。しかしながら、ステップピニオン遊星歯車セットでは、ピニオン歯車は
図2においてよりはっきりと見られるように、相互連結されている。低領域から高領域への切り替えは、動力を第1のクラッチ314から第2のクラッチ316へと伝達することで達成される。
図3に示した実施形態では、クラッチ組立体は、例えばHOERBIGER(商標)同期装置などの同期クラッチ組立体である。しかしながら、任意の適切な同期装置またはクラッチ組立体が使用されてもよい。
【0022】
[0047]ここで
図4を参照すると、2速の単一の歯車セット変速機300が、約24:1の歯車比における低領域動作で示されている。変速機300は、第1の太陽歯車302および第2の太陽歯車304とリング歯車306、308を各々有する2つのピニオン歯車310、312を備える。この実施形態では、太陽歯車302は変速機の入力部として動作し、一方、リング歯車308は、変速機の出力部として動作し、これらは同じ長手方向軸において相互に離間されている。この実施形態では、モータ、電気駆動モータ、または他の動力発生装置(図示せず)からの動力が、一部の実施形態ではエンジンの駆動シャフトであり得る駆動シャフト318を通じて変速機に入る。当該技術で知られている様々なモータが使用され得る。モータの動作速度は、変速機の要求およびその動作モードに依存して変化させられ得る。
【0023】
[0048]駆動シャフト318からの動力は、例えばHOERBIGER(商標)同期装置などの同期クラッチ組立体330へと伝達される。様々な他の同期装置組立体が、当該技術で知られ得るように使用されてもよい。動力が、駆動ハブ334へと動力を伝達する動力伝達ユニット332を用いて、クラッチ組立体を通じて伝達される。駆動ハブ334は係合リング336に連結される。駆動ハブ334は同期装置330の支持手段である。同期装置組立体330のいずれかの側のリング(図示せず)が、太陽歯車302、304およびリング歯車306、308から成る第1の歯車セットへと動力を伝達する。摩擦吸収装置338が、動力伝達ユニット332と駆動ハブ334との間の速度差を吸収または低減するのを助けるために、動力伝達ユニット332と駆動ハブ334との間に配置されている。
【0024】
[0049]動作中、駆動シャフト318からの動力は係合リング336を通って流れ、太陽歯車302を通ってステップピニオン歯車セットへと流れる。この歯車セットはピニオン歯車310を含む。ピニオン歯車310は、ピニオン歯車セットの太陽歯車302およびリング歯車306と絶えず噛み合っている。太陽歯車302とピニオン歯車310との間の噛み合いにおいて発生させられる力は、ピニオン歯車310をピニオンピン340の周りで回転させる。リング歯車306は、他の歯車構成部品の周りに自由に回転しないように、歯車ケース、ハウジング、カバー、または他の筐体にリング歯車306をしっかりとスプライン結合することで、先に記載されているように据え付けられる。したがってリング歯車306が不動であるため、ピニオンピン340の周りでのピニオン歯車310の回転動作は、遊星キャリア342を変速機軸の周りに回転させる。この実施形態では、ピニオン歯車310と312とは、スプラインまたは他の取付手段を用いてしっかりと一体的に取り付けられる。ピニオン歯車310のように、ピニオン歯車312は、同様に、対応する太陽歯車304およびリング歯車308と絶えず噛み合っている。リング歯車308は、歯車組立体の内歯車であり、変速機300の出力部として作用もする。したがって、変速機の動力は、入力の太陽歯車302から進み、リング歯車308を通じて車両の車輪12または14へと出力される。この実施形態では、2つのピニオン歯車310および312は一体的に固定して結合され、それらピニオン歯車の回転は、リング歯車308を所望の比で回転させる。所望の比は異なってもよいが、この実施形態では、変速機は約24:1の歯車比で回転する。
【0025】
[0050]ここで
図7Aおよび
図5Bを参照すると、歯車比が約24:1であるときの低領域動作の間に
図4で示した変速機の動力の流れが示されている。
図7Aおよび
図5Bにおいて分かるように、低領域動作では、動力は、電気駆動モータ318などの動力手段から伝達される。動力は、入力シャフト350を通じて、変速機入力部として作用する太陽歯車302へと伝達される。
図7Aと
図5Bとの両方において、動力は、変速機入力部として作用する太陽歯車302を通じて流れる。クラッチ組立体330が、例えば、動力が太陽歯車302に達して通じるように伝達され、その後にピニオン歯車310を通じて進み、リング歯車308を通じて車輪12または14の駆動部へと出力されることを確保するために、太陽歯車302と選択的に係合する。
【0026】
[0051]動力が太陽歯車302を通じて入力されるか太陽歯車304を通じて入力されるかに拘らず、両方の太陽歯車は常に同時に噛み合って回転する。しかしながら、速度比は、太陽歯車302または太陽歯車304のどちらがそれを通じて動力入力を受け、その後に他方の動きを駆動するかを決定することになる。一方の太陽歯車302または304が係合されるとき、他方の太陽歯車302または402は係合解除され、相補的な太陽歯車の動きによって単独で回転させられる。
【0027】
[0052]ここで
図6を参照すると、
図3の2速の単一の歯車セット変速機300が、約8:1の歯車比における高領域動作で示されている。しかしながら、比変化を得るために要求される要素は異なっている。高領域では、変速機300は低領域と同様に動作する。高領域動作では、相対する太陽歯車(この場合、太陽歯車302)は、同期装置および入力シャフトから係合解除され、太陽歯車304を用いて動かされる。
【0028】
[0053]低領域動作のように、高領域では、モータまたは他の発生装置からの動力は、駆動シャフト318において変速機に入る。駆動シャフト318からの動力は、例えばHOERBIGER(商標)同期装置などの同期クラッチ組立体330へと、同期クラッチ組立体330が同期装置を入力シャフトと係合させるために右側へと移動させられることで、伝達される。一部の実施形態では、同期装置330は、入力シャフトにスプライン結合され、他の連結手段によって係合させられ得る。低領域動作と同様に、動力は、駆動ハブ334へと動力を伝達する動力伝達ユニット332を用いて、クラッチ組立体を通じて伝達される。駆動ハブ334は係合リング336に連結される。駆動ハブ334は同期装置330の支持手段である。同期装置組立体330のいずれかの側のリング(図示せず)が、同期装置330から、太陽歯車302、304およびリング歯車306、308から成る第1の歯車セットに、動力を伝達する。摩擦吸収装置338が、動力伝達ユニット332と駆動ハブ334との間の速度差を吸収または低減するのを助けるために、動力伝達ユニットと駆動ハブ334との間に同じく配置されている。動力は、変速機入力部として作用する太陽歯車304へと流れる。そのため、太陽歯車302は係合解除され、その太陽歯車304との関連を通じてのみ回転する。低領域動作のように、ピニオン歯車312は、太陽歯車304およびリング歯車308と絶えず噛み合っている。しかしながら、高領域動作では、ピニオン歯車312は変速機のための駆動力である。
【0029】
[0054]ピニオン歯車312と太陽歯車304との間の噛み合いにおいて発生させられる力は、ピニオン歯車312をピニオンピン340の周りで回転させる。この実施形態では、ピニオン歯車310はピニオン歯車312に同様にしっかりと取り付けられる。同様に、リング歯車306は、自由に回転しないように、歯車ケース、ハウジング、カバー、または他の筐体(図示せず)にリング歯車306をしっかりとスプライン結合することで据え付けられ、リング歯車308は出力部として作用する。リング歯車306が不動であるため、ピニオンピン334の周りでのピニオン歯車312の回転動作は、遊星キャリア342を変速機軸の周りに回転させる。この実施形態では、ピニオン歯車312は太陽歯車304およびリング歯車308と絶えず噛み合っており、リング歯車308は、遊星歯車組立体の内歯車であり、変速機の出力部としても作用する。動作中、2つのピニオン歯車312および312は一体的に回転させられ、キャリア334は変速機軸の周りで回転し、これは内歯車308を所望の比で回転させもする。
【0030】
[0055]ここで
図5Aおよび
図7Bを参照すると、歯車比が約8:1であるときの高領域動作の間の変速機の動力の流れが示されている。
図5Aおよび
図Bにおいて分かるように、高領域動作では、動力は、電気駆動モータシャフト318などの動力手段から伝達される。動力は、入力シャフト350を通じて太陽歯車304へと伝達される。
図5Aおよび
図7Aに示した実施形態では、動力は、変速機入力部として作用する太陽歯車304を通じて流れる。クラッチ組立体330は、動力が太陽歯車304へと伝達されることを確保するために、太陽歯車304と選択的に係合する。そのため、動力は関連付けられたピニオン歯車310を通じて進み、例えば、リング歯車308を通じて車輪12または14へと出力される。
【0031】
[0056]
図8A~
図8Fを参照すると、主減速歯車セットが、
図3~
図7に示した実施形態に、軸方向においてクラッチ組立体の前で追加されている第2の例の2速の変速機400が示されている。この実施形態では、ステップピニオン遊星歯車組立体は単一のリング歯車を備える。主減速歯車セットは、トルクを(例えば、3倍で)増大させるために使用される遊星歯車セットとでき、動力は変速歯車セットとして機能する遊星歯車セットへと進む。動作中、これは、速度歯車セットの全体の比の要件を、低領域では24:1から8:1へと低減し、高領域では14:1から4.66:1へと低減する。これらの新たな比は、通常のステップピニオン歯車セットにとってより合理的である。歯車セットおよびクラッチの様々な組み合わせは、特定の歯車比を選択的に与えることができる。
【0032】
[0057]動作中、動力は、駆動シャフト402を用いて、電気モータまたは任意の他の発生装置から流れる。次に、動力は主減速歯車セットへと伝達される。歯車セットは、太陽歯車404と、先に記載したように、歯車ケースカバーまたはハウジング(図示せず)へとスプライン結合することで基礎にしっかりと取り付けられるリング歯車410と、複数の遊星ピニオン406を伴う遊星キャリア408とから成る。太陽歯車404が回るとき、太陽歯車404は遊星ピニオン406を不動のリング歯車410の周りで回転させるように駆動する。主減速比は、太陽歯車における歯の数(S)を、太陽歯車およびリング歯車における歯の数の合計(S+R)によって除算した値に等しい(つまり、S/(R+S))。主減速歯車セットの出力部は遊星キャリア408である。主減速歯車セットからの動力は、スプライン422を介して、HOERBIGER(商標)同期装置または他の適切な同期装置であり得る選択可能な同期クラッチ組立体420へと伝達される。スライド切替カラー(駆動ハブ)424がスプライン422に連結され、スプライン422とスライド切替カラー424とは、物理的に連結され、係合ハブ426において一体に保持される。摩擦吸収装置428および430は、係合ハブ426とクラッチ係合リング432または434との間の速度差を吸収または低減するのを助けるために、係合ハブ426とクラッチ係合リング432または434との間に配置される。ニュートラル状態では(
図8A)、係合ハブ426は、係合リング432と434との間におけるおおよそ中間に配置され、同期装置組立体420を通じて動力を伝達させることはできない。
【0033】
[0058]低領域状態では(
図8B)、動力は主減速歯車セットから同期装置組立体420の駆動ハブ424へと伝達される。スプライン422、駆動ハブ424、および係合ハブ426は、一体的に固定して結合され、一体として動く。これらの構成部品による駆動シャフト402に向かう動きは、変速機を低領域にさせる(
図8B)。駆動シャフト1から離れる移動は、変速機を高領域にさせることになる(
図8C)。
【0034】
[0059]低領域状態では、モータから主減速歯車セットを通る動力は、遊星ピニオン歯車セットの太陽歯車436を駆動させる係合リング432へと伝達される。太陽歯車436は、遊星ピニオン歯車438を押して、遊星キャリア442の一部であるピニオンピン440の周りで回転させる。
図3~
図7で示した実施形態のように、遊星歯車組立体のピニオン歯車438およびピニオン歯車444は、スプラインまたは他の手段によって恒久的に固定または結合され、両方でピニオンピン440の周りを自由に回転する。
図3~
図7で示した実施形態のように、ピニオン歯車444は、太陽歯車446およびリング歯車448と絶えず噛み合っており、リング歯車448は、本明細書において記載しているように、基礎に恒久的に固定される。リング歯車448が固定されて回転することができないため、ピニオン歯車438の動きはピニオン歯車444を回転させ、歯車438および444はピニオンピン440の周りで回転させられる。そのため、ピニオン歯車438および444の回転動作は遊星キャリア442へと伝達され、遊星キャリア442は変速機軸の周りで回転する。
【0035】
[0060]ここで
図8Dを参照すると、
図8Bにおける実施形態の低領域状態における動力の流れが示されている。前述したように、低領域状態では、係合ハブ426は係合リング432に係合される。動力は、駆動シャフト402および係合リング432を通り、太陽歯車436およびピニオン歯車438を介して流れる。そのため、ピニオン歯車438および448の回転はキャリア442へと伝達される。
【0036】
[0061]高領域状態(
図8C)では、係合ハブ426は、これが係合リング434と係合し、次いで係合リング434が太陽歯車446と係合させられるように、位置決めさせられる。ピニオン歯車438は、太陽歯車446およびリング歯車448の両方と絶えず噛み合い、リング歯車448は基礎にしっかりと固定されている。高領域状態では、太陽歯車446はピニオン歯車444を押し、ピニオン歯車444を、遊星キャリア442の一部であるピニオンピン440の周りに回転させる。リング歯車448が固定されるため、ピニオン歯車448および438の動きが、変速機軸の周りで回転する遊星キャリア442へと伝達される。
【0037】
[0062]
図8Eを参照すると、
図8Cにおける実施形態の高領域状態における動力の流れが示されている。前述したように、高領域状態では、係合ハブ426は係合リング434に係合される。動力は、駆動シャフト402を通り、係合リング434へと、太陽歯車446およびピニオン歯車444を介して流れる。そのため、ピニオン歯車444および438の回転はキャリア442へと伝達される。
【0038】
[0063]
図8Fは、変速機400の要素の組み合わせを示している
図8A~
図8Eに示した実施形態の概略を示している。主減速歯車セットは、ピニオン歯車P1、リング歯車R1、および太陽歯車S1をそれぞれ備える。ステップピニオン歯車セットは、一体にスプライン結合されるピニオン歯車P2およびP3を備える。ステップピニオン歯車セットは、単一のリング歯車R3と、2つの太陽歯車S2およびS3とを備える。太陽歯車S2またはS3の一方に選択的に係合するためのクラッチはCL1およびCL2によって表される。
【0039】
[0064]
図8A~
図8Fに示した変速機の動作の異なるモードを纏めた様々なパラメータが、以下の表1に示されている。
【0040】
【0041】
[0065]ニュートラルモードでは両方のクラッチ組立体が係合解除され、一方、低領域および高領域では、クラッチ1およびクラッチ2は選択的に係合される。この実施形態では、主減速歯車セットの太陽歯車は、すべての動作のモードにおける変速機入力部であり、リング歯車は固定されている。代替で、低領域または高領域において、ステップピニオン遊星歯車セットの太陽歯車1または太陽歯車2は、変速機を通じて動力を送るために選択的に係合され得る。
【0042】
[0066]数々の変形が本開示の範囲内において検討されている。例えば、歯車セット、クラッチ、およびシャフトの様々な組み合わせおよび構成は、
図9Aおよび
図9Bに示したように特定の速度関係および動力の流れを選択的に与えることができる。
図9Aおよび
図9Bにおいて分かるように、変速機の構成は、変速機の回転軸を中心付けるために切り替えでき、変速機は、変速機400と実質的に同じ部品を備え得る。リングR1およびR2の各々は、本明細書に記載されているように据え付けられることが可能であり、ピニオン歯車P2~P3は、ステップピニオン変速機構成で配置され得る。また、高領域または低領域において、S2またはS3はそれぞれ入力部であり得る。
【0043】
[0067]
図10~
図16を参照すると、一部の実施形態において、径方向においてコンパクトな変速機が要求される
図4および
図8Aに示した2速の変速機と、軸方向においてコンパクトな変速機が要求される後でさらに記載されている変速機とを備える2速の変速機を備える歯車箱組立体500が開示されている。
【0044】
[0068]一部の用途では、例えば約17.9および8.8の最終歯車比を伴う2速の変速機が必要とされ得る。このような用途は、歯車比に対応する複数の歯車セットの間で選択するために、同期した切り替えのためのシステムを必要とする可能性があり、2つの異なる歯車セット同士の間により滑らかな切り替えを可能にするために、歯車およびシャフトを同じ速度にする摩擦材料を必要とする可能性もある。
【0045】
[0069]
図10を参照すると、一部の実施形態では、平行な中心線を有するピニオンおよびホイール歯車によって定められたピニオン歯車セットおよび螺旋ホイール歯車を備える、平行な軸の歯車セットを備える変速機600が使用され得る(つまり、変速機の入力部と出力部とが互いに対して平行な軸で互いに離間されている)。この実施形態では、歯車は、互いと平行に延びる様々なシャフト上にある。このような平行な軸のシステムは、同期装置組立体の前ではなく後に位置付けられ、所望の比を達成するように構成された最終遊星歯車減速と、対にさせられる。そのため、この設計は、大きなトルク容量と同期された2速のシステムとを維持する一方で、より小さい軸方向の実装を可能にする。変速機は、ここでは駐車ロックシステムと記載されている平行な軸の変速機600と、歯車切替機構800と、電気駆動モータ900と、組み込まれた駆動モータインバータ950とを備える完全な駆動ユニットへと組み込むことができる。
【0046】
[0070]
図11および
図12においてよりはっきりと見られるように、2速の同期変速機600は、電気的に作動される歯車切替機構800と、速度選択のために、複数の歯車を伴い、歯車歯860を有する2つの螺旋歯車セット850と、切替バレル870と、螺旋歯車セット850のうちの一方の高領域ピニオン歯車または低領域ピニオン歯車のいずれかと選択的に係合することで達成される約18.0および8.8の最終歯車比を伴う、追加の減速のための遊星歯車セット850とを備える。変速機は、
図12においてよりはっきりと見られる、各々の変速機600のための別の独立した駐車ロックシステム700も備える。各々の駐車ロックシステム700は、全体の車両負荷を支持することができ、歯車セットが係合される前に車両の進行を減速する遊星減速歯車セット870の軸方向における前に配置された駐車歯車ホイール(図示せず)も備える。
【0047】
[0071]
図13を参照すると、変速機600(ニュートラル状態における)は、モータシャフト604にスプライン結合されており、このモータシャフト604が入力シャフト606にさらにスプライン結合されている、電気駆動モータ602を備える。入力シャフトは同期装置612のハブにスプライン結合されている。同期装置612は、これが歯車切替システム614を用いて切り替えられるときに螺旋歯車セットの低切替ピニオン歯車608または高切替ピニオン歯車610のいずれかに連結するスライド切替カラー(図示せず)に位置する。同期装置612に連結されるときの複数のピニオン歯車608および610は、ピニオン歯車608または610からホイール歯車616または618へと遊星ピニオン歯車構成を通じて動力を伝達する。同期装置612は、望まれる比に依存して、歯車切替機構614を用いて、低歯車ピニオン610または高歯車ピニオン608のいずれかに連結され得る。歯車箱組立体の追加の構成部品は、変速機の構成部品を保護するために、または、変速機の歯車のうちの1つまたは複数を1つまたは複数の歯車箱ハウジング632またはカバー634にスプライン結合することでその歯車を固定するかまたは据え付けるために、該1つまたは複数の歯車箱ハウジング632またはカバー634を備え得る。電気駆動モータ602は、モータ構成部品を保護するためにモータハウジング630を備えてもよい。
【0048】
[0072]低歯車状態(
図14)(約17.9の比)では、動力は、モータ1において発生させられ、モータシャフト604を通じて入力シャフト606へとスプラインインターフェス(図示せず)を介して伝達される。次に、動力は、スプライン(図示せず)によって、入力シャフト606から同期装置612へと運ばれる。低歯車(約17.9の比)では、同期装置612は、モータ602から歯車歯860(
図11に示したものなど)を通じて低領域ホイール歯車618へと動力を伝達する低領域ピニオン歯車610に連結される。低領域ホイール歯車618は、太陽歯車622を回転させることで動力を遊星キャリア628へと伝達するために、複数の遊星ピニオン歯車624と、固定または据え付けられた遊星リング歯車626とを利用する遊星歯車組立体の太陽歯車622にスプライン結合される。太陽歯車622の回転は、遊星キャリア628によって保持され、変速機動力が出力されるのに通る遊星ピニオン歯車624のピン(図示せず)を通じて捕らえられる。
【0049】
[0073]
図15に示した高歯車状態(8.8の比)では、同期装置612は、歯車歯860(
図11に示したものなど)を通じて高領域ホイール歯車616へと動力を伝達する高領域ピニオン歯車608に連結される。高領域ホイール歯車616は、動力を遊星キャリア628へと伝達するために、複数の遊星ピニオン歯車624と、固定または据え付けられた遊星リング歯車626とを利用する太陽歯車622にスプライン結合される。ホイール歯車616は、ホイール歯車618と駐車歯車ホイール620とがスプライン結合される副軸(図示せず)と一体品の歯車である。駐車歯車ホイール620は動力を変速機に伝達しないが、駐車ロックシステム700が係合されるときに車両の動作を防止するために使用される。この実施形態では、ホイール歯車616および618は、比較的、遊星ピニオン歯車624より大きい。これは、リング歯車626をホイール歯車616および618内に配置させることができることで、変速機600と、変速機600を組み込む歯車箱組立体500とに必要とされる軸方向空間を縮小する。
【0050】
[0074]一部の実施形態では(図示せず)、歯車箱組立体500は、第1および第2の歯車箱組立体を組み込むことができ、本明細書に記載されている種類の2速の変速機を備えもし得る駆動系へと組み込まれ得る。駆動系は、動力を変速機へと送り得る種類の2つの別々のモータを収容する中心モータハウジングと、中心モータハウジングのいずれかの側方に配置される本明細書に記載した種類の2速の変速機と、駆動モータに動力供給するためのインバータとをさらに備え得る。動作中、動力は、モータを通じて変速機へと送られ、次に、各々の変速機についての出力部を通じて、例えば車輪12または14などの車輪または車輪シャフトを制御するために車軸へと送られ得る。
【0051】
[0075]各々の変速機は、独立して動作させられるように構成されている。これは、変速機が取り付けられる車輪を制御することにより大きな柔軟性を可能にする。そのため、動作中、各々の車輪のトルクおよび速度を独立して(トルクベクトルを)制御することで、車両のより大きな操縦性を許容することが可能となり得る。
【0052】
[0076]本発明は例示的な手法で記載されており、使用されている専門用語が限定ではなく記載の言葉の本質においてあるように意図されることは、理解されている。本発明の多くの変更および変化が上記の教示を考慮して可能である。そのため、添付の請求項の範囲内で、本発明が明確に記載されている以外で実施できることは、理解されるものである。本明細書および列記した請求項において記載されている主題は、技術的にすべての適切な
変化を網羅および包含するように意図している。
1.本発明の第1の態様によれば、多段変速機は、変速機入力部と、変速機出力部と、前記変速機入力部として構成された第1の太陽歯車、基礎にしっかりと取り付けられた第1のリング歯車、ならびに、前記第1の太陽歯車および前記第1のリング歯車と噛み合う相互連結された複数のピニオン歯車を伴う第1の遊星キャリアを備える主減速歯車セットと、第2の太陽歯車、第3の太陽歯車、基礎にしっかりと取り付けられた第2のリング歯車、ならびに、前記第2の太陽歯車、前記第3の太陽歯車、および前記第2のリング歯車と噛み合う相互連結された複数のピニオンを伴う、前記変速機出力部として構成された第2の遊星キャリアを有するステップピニオン遊星歯車セットを備える歯車組立体と、前記変速機入力部に駆動可能に連結された第1の入力クラッチおよび第2の入力クラッチとを備え、前記変速機入力部として構成された前記第1の太陽歯車と、前記変速機出力部として構成された前記第2の遊星キャリアとは、同じ長手方向軸に沿って相互に離間される。
2.本発明の第2の態様によれば、第1の態様において、前記第1の入力クラッチおよび前記第2の入力クラッチに動作可能に連結され、前記第1の入力クラッチおよび前記第2の入力クラッチに動作可能に連結された係合ハブを用いて前記第1の入力クラッチから前記第2の入力クラッチへと動力を伝達するように構成された同期クラッチ組立体をさらに備える。
3.本発明の第3の態様によれば、第2の態様において、前記変速機は、前記クラッチ組立体が前記第2の太陽歯車または前記第3の太陽歯車の一方の係合リングと選択的に係合することによって、高歯車比と低歯車比との間で選択的に切り替わるように構成される。
4.本発明の第4の態様によれば、第3の態様において、前記低歯車比は約14:1であり、前記高歯車比は4.66:1である。
5.本発明の第5の態様によれば、第2から第4のいずれかの態様において、前記変速機についての長手方向軸において、前記主減速歯車セットは、前記変速機入力部により近い前記同期クラッチ組立体の側に全体として配置される。
6.本発明の第6の態様によれば、多段変速機は、変速機入力部と、変速機出力部と、前記変速機入力部として構成された第1の太陽歯車または第2の太陽歯車を有する単一のステップピニオン遊星歯車セット、基礎にしっかりと取り付けられた第1のリング歯車、前記変速機出力部として構成された第2のリング歯車、ならびに、前記第1の太陽歯車、前記第2の太陽歯車、前記第1のリング歯車、および前記第2のリング歯車と噛み合う相互連結された複数のピニオンを伴うキャリアを備える歯車システムと、前記変速機入力部に駆動可能に連結された第1の入力クラッチおよび第2の入力クラッチとを備え、前記変速機入力部として構成された前記第1の太陽歯車または前記第2の太陽歯車と、前記変速機出力部として構成された前記第2のリング歯車とは、同じ長手方向軸に沿って相互に離間される。
7.本発明の第7の態様によれば、第6の態様において、前記第1の入力クラッチおよび前記第2の入力クラッチに動作可能に連結され、前記第1の入力クラッチおよび前記第2の入力クラッチに動作可能に連結された係合ハブを用いて前記第1の入力クラッチから前記第2の入力クラッチへと動力を伝達するように構成された同期クラッチ組立体をさらに備える。
8.本発明の第8の態様によれば、第7の態様において、前記変速機は、前記クラッチ組立体が前記第1の太陽歯車または前記第2の太陽歯車の一方の係合リングと選択的に係合することによって、高歯車比と低歯車比との間で選択的に切り替わるように構成される。
9.本発明の第9の態様によれば、第8の態様において、前記低歯車比は24:1であり、前記高歯車比は8:1である。
10.本発明の第10の態様によれば、第9の態様において、前記変速機についての長手方向軸において、前記歯車システムは、前記変速機出力部により近い前記同期クラッチ組立体の側に全体として配置される。
11.本発明の第11の態様によれば、第1から第10のいずれかの態様において、前記変速機入力部が前記変速機出力部から結合解除されるニュートラル状態と、前記変速機入力部が前記変速機出力部に動作可能に結合される機能状態との間で動作可能である。
12.本発明の第12の態様によれば、歯車箱組立体は、車両のための歯車箱組立体であって、少なくとも1つの多段変速機と、前記歯車箱組立体を通じて動力を送るために前記変速機に動作可能に結合された電気駆動モータと、前記少なくとも1つの変速機に動作可能に結合され、前記少なくとも1つの多段変速機と関連付けられた少なくとも1つの歯車と選択的に係合することで高歯車比と低歯車比との間で選択的に切り替わるように構成された歯車切替機構と、前記駆動モータに動力供給するためのインバータとを備える。
13.本発明の第13の態様によれば、第12の態様において、前記車両の移動を防止するために、前記少なくとも1つの変速機の各々と別々に係合するように構成された駐車歯車ホイールをさらに備える。
14.本発明の第14の態様によれば、第12または13の態様において、前記変速機は、入力シャフトと、前記入力シャフトと関連付けられた第1の歯車セットおよび第2の歯車セットであって、少なくとも1つの高領域ピニオン歯車および1つの高領域ホイール歯車、ならびに、少なくとも1つの低領域ピニオン歯車および1つの低領域ホイール歯車を各々備える第1の歯車セットおよび第2の歯車セットと、遊星太陽歯車、遊星リング歯車、および、前記太陽歯車および前記リング歯車と噛み合う複数の遊星ピニオン歯車を伴う遊星キャリアを有する遊星歯車セットと、前記歯車切替機構に動作可能に結合され、前記高領域ピニオン歯車または前記低領域ピニオン歯車の一方に係合することで高歯車比と低歯車比との間で選択的に切り替わるように構成された同期装置とを備え、前記ピニオンと前記ホイール歯車とは平行な長手方向軸に沿って相互に離間される。
15.本発明の第15の態様によれば、第12から14のいずれかの態様において、前記少なくとも1つの変速機は、約18:1の低歯車比と約8.8:1の高歯車比との間で選択的に切り替わるように構成される。
16.本発明の第16の態様によれば、第14または15の態様において、前記遊星ピニオン歯車は前記ホイール歯車内に全体で配置される。
17.本発明の第17の態様によれば、車両は、第12から16のいずれかの態様の少なくとも1つの歯車箱組立体を備える。
18.本発明の第18の態様によれば、第17の態様において、前記少なくとも1つの歯車箱組立体は、前記電気駆動モータを収容するための中心モータハウジングを備える。
19.本発明の第19の態様によれば、第18の態様において、前記歯車箱組立体は、第14の態様に記載の変速機を2つ備える。
20.本発明の第20の態様によれば、第19の態様において、前記2つの変速機は、前記中心モータハウジングについての長手方向軸において相互に並べられて離間される。
21.本発明の第21の態様によれば、歯車箱組立体は、第1から第11のいずれかの態様の変速機を備える。
22.本発明の第22の態様によれば、車両は、第21の態様の歯車箱組立体を備える。