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特許7042281放射性同位体を製造および回収するためのシステムとプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】放射性同位体を製造および回収するためのシステムとプロセス
(51)【国際特許分類】
   G21G 1/02 20060101AFI20220317BHJP
   G21C 5/00 20060101ALI20220317BHJP
   G21C 23/00 20060101ALI20220317BHJP
   G21C 19/20 20060101ALI20220317BHJP
   G21C 17/108 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
G21G1/02
G21C5/00 A
G21C23/00 130
G21C23/00 140
G21C19/20
G21C17/108
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019547575
(86)(22)【出願日】2017-10-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-23
(86)【国際出願番号】 US2017058414
(87)【国際公開番号】W WO2018136125
(87)【国際公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-09-24
(31)【優先権主張番号】15/341,478
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ヘイベル、マイケル、ディー
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-047937(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0051874(US,A1)
【文献】特開2010-249815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21G 1/00
G21C 5/00
G21C17/108
G21C23/00
G21C19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子燃料集合体中性子束シンブル挿入体(34)であって、
伸長方向の軸、閉じた前端部(38)、蓋(42)を被せた後端部(40)および当該両端部間に形成された標的試料チェンバ(45)を有し、原子燃料集合体の計装シンブル(50)内を摺動できる大きさであり、当該後端部(40)が既存の可動型炉内検出器システムの駆動ケーブル(48)によって駆動される構成の細長い管状ハウジング(36)と、
前方と後方の軸方向位置決め端栓(46)の間に捕捉された細長い標的試料(44)であって、当該軸方向位置決め端栓は当該細長い管状ハウジング(36)の内壁に当接して当該標的試料(44)を当該細長い管状ハウジング内の事前に選んだ軸方向位置に保持する構成を有する細長い標的試料(44)と
から成る原子燃料集合体中性子束シンブル挿入体(34)。
【請求項2】
前記標的試料(44)はCo-60、W-188、Ni-63、Bi-213およびAc-225のうちの1つ以上から成る、請求項1の原子燃料集合体中性子束シンブル挿入体(34)。
【請求項3】
前記細長い管状ハウジング(36)は中性子捕獲断面積が小さい物質から成る、請求項1の原子燃料集合体中性子束シンブル挿入体(34)。
【請求項4】
前記細長い管状ハウジング(36)はジルコニウムまたはジルコニウム合金から成る、請求項3の原子燃料集合体中性子束シンブル挿入体(34)。
【請求項5】
前記軸方向位置決め端栓(46)は、前記細長い管状ハウジング(36)の内壁との間の接触表面の摩擦によって軸方向位置を維持することを特徴とする、請求項1の原子燃料集合体中性子束シンブル挿入体(34)。
【請求項6】
前記軸方向位置決め端栓(46)は、前記細長い管状ハウジング(36)の内壁の浅い窪み(52)との嵌合によって軸方向位置を維持することを特徴とする、請求項1の原子燃料集合体中性子束シンブル挿入体(34)。
【請求項7】
前記軸方向位置決め端栓(46)は前記軸と実質的に直交する方向へ延びる上面および下面と、当該上面と当該下面との間を延びる実質的に円形の外壁とを有し、当該実質的に円形の外壁の軸方向寸法は前記窪み(52)のうちの1つに嵌合するような大きさであることを特徴とする、請求項6の原子燃料集合体中性子束シンブル挿入体(34)。
【請求項8】
前記上面および前記下面が前記実質的に円形の外壁と接する面は鋭角に傾斜しているため、前記軸方向位置決め端栓(46)の前記窪み(52)への嵌合および取り外しが容易であることを特徴とする、請求項7の原子燃料集合体中性子束シンブル挿入体(34)。
【請求項9】
原子炉(16)内における少なくとも1燃料サイクルにわたる照射を必要とする標的試料(44)に中性子を照射して少なくとも1つの放射性同位体製造する方法であって、
伸長方向の軸、閉じた前端部(38)、蓋(42)を被せた後端部(40)および当該両端部間に形成された標的試料チェンバ(45)を有し、原子燃料集合体の計装シンブル(50)内で摺動できる大きさであり、当該後端部(40)が既存の可動型炉内検出器システムの駆動ケーブル(48)によって駆動される構成の細長い管状ハウジング(36)内に当該標的試料(44)を封入するステップと、
当該標的試料(44)を当該細長い管状ハウジング(36)内の事前に選んだ軸方向位置に配置するステップとを含み
当該標的試料(44)は前方と後方の軸方向位置決め端栓(46)の間に捕捉され、当該軸方向位置決め端栓は当該細長い管状ハウジング(36)の内壁に当接して当該標的試料(44)を当該細長い管状ハウジング内の事前に選んだ軸方向位置に保持する構成を有しており、
当該方法はさらに、
当該後端部(40)を当該駆動ケーブル(48)に取り付けるステップと、
当該細長い管状ハウジング(36)内の当該標的試料(44)を、原子炉(16)の炉心(14)内の選択した原子燃料集合体の計装シンブル(50)内へ少なくとも部分的に送り込むステップと、
当該標的試料(44)を、当該炉心(14)の燃料サイクルの残存期間にわたって当該計装シンブル(50)内に滞留させるステップと、
当該燃料サイクルの終了時に当該細長い管状ハウジング(36)を当該炉心(14)から引き抜くステップと、
選択した燃料集合体を当該炉心(14)から取り出すステップと、
当該細長い管状ハウジング(36)を少なくとも部分的に当該炉心(14)に再挿入するステップと、
当該標的試料(44)を含む当該細長い管状ハウジング(36)の少なくとも一部分を当該駆動ケーブル(48)から離脱させて取り出すステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記離脱させるステップにおいて前記細長い管状ハウジング(36)を円周沿いに切断する、請求項9の方法。
【請求項11】
前記一部分を水中で使用済燃料プール(64)へ移送するステップをさらに含む、請求項10の方法。
【請求項12】
前記使用済燃料プール(64)を収容する建屋内で前記一部分を遮蔽された輸送容器に梱包するステップをさらに含む、請求項11の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して放射性同位体を炉心に挿入したり炉心から取り出したりするための方法および装置に関し、具体的には、放射性同位体の炉心への挿入および少なくとも炉心挿入後の運転サイクルの残存期間の間炉心内に滞留させたかかる放射性同位体の炉心からの取り出しに関する。
【背景技術】
【0002】
稼働中の多くの原子炉において、炉心内の軸方向および半径方向の出力分布を定期的に測定するために、米国特許第3,932,211号に記載されたような可動型炉内検出器システムが使用されている。可動型検出器システムは概して、プラントの大きさ(2、3または4ループ)に応じて4つ、5つまたは6つの検出器/駆動アセンブリから成り、それらのアセンブリは、炉内中性子束シンブルのさまざまな組み合わせの評価を可能にする態様で相互接続されている。シンブルの相互接続が可能なように、各検出器は、5通路および10通路の回転式機械移送装置と協働する。炉心マップは、移送装置が検出器が内部で駆動される特定のシンブルを選択することにより作成される。マッピング時間が最小になるように、各検出器は、後退位置から炉心直下の位置まで高速(毎分72フィート)で移動可能である。検出器は、後者の位置で速度を毎分12フィートに減少させた後、炉心最上部へ移動し、そこで方向反転して、炉心最下部へ移動し、再び速度を毎分72フィートに上昇させて、後退位置へ戻る。その後、移送装置の回転により新しい中性子束シンブルが選択され、上記の手順を繰り返すことにより、マッピングが行われる。
【0003】
図1は、小型の可動型検出器を挿入するための基本的なシステムを示す。小型検出器12が内部で駆動される引き抜き自在のシンブル10は、概ね図示のような経路をとる。シンブルは、原子炉容器16の底部からコンクリート遮蔽領域18を通って上方へシンブルシール台20まで延びる導管を介して、原子炉の炉心14に挿入される。可動型検出器のシンブルは先端(原子炉側)が閉じているので、内部は乾燥状態にある。したがって、シンブルは、原子炉の水圧(設計値2,500psig)と大気圧との間の圧力障壁として機能する。引き抜き自在のシンブルと導管との間のメカニカルシールがシール台20に設けられている。導管22は本質的に原子炉容器16の延長部であり、シンブルにより小型の可動型炉内計装検出器の挿入が可能になる。シンブル10は、運転中は不動状態にあり、引き抜きは燃料交換時または保守作業時の減圧条件下でのみ行われる。容器内の構造物について作業が必要な場合は、シンブルを原子炉容器の底部まで引き抜くことが可能である。
【0004】
小型検出器を挿入するための駆動装置は、図示のように基本的に、駆動装置24、リミットスイッチ集合体26、回転式5通路移送装置28、回転式10通路移送装置30、隔離弁32から成る。各駆動装置は、先端に小型検出器を取り付けた中空の螺旋ラップ駆動ケーブルを炉心内へ押し込む。当該検出器の出力を伝達する小径同軸ケーブルが、当該螺旋ラップ駆動ケーブルの中空内部の中心を後端まで延びている。
【0005】
医療処置に使用される同位体のような中性子の照射が望ましい放射化および核変換生成物の製造を、可動型炉内検出器システムの中性子束シンブル10を用いて行うには、炉心14に設置された中性子束シンブルへ照射対象物質を挿入したりシンブルから取り出したりする手段が必要である。ここで使用する手段は、製造過程で作業員が放射線に被曝する可能性とともに製造過程で発生する放射性廃棄物の量を最小限に抑えることが好ましい。適切な量の放射化または核変換生成物が製造されるように標的物質が受ける中性子照射量を正確に監視するには、標的物質周辺の中性子束を継続的に測定できる装置が必要である。ここで使用する手段は、商用原子炉の炉心にセンサを挿入したり炉心から引き抜いたりするための現用のシステムに適合するのが理想的である。同時係属中の2016年7月14日出願の「Irradiation Target Handling Device」と題する米国特許出願第15/210,231号は、1燃料サイクルに満たない期間にわたる炉心での照射を必要とする医療用同位体の製造を目的とする、上述したすべての重要な考慮事項を満たす同位体製造ケーブルアセンブリを説明している。
【0006】
中性子核変換によって製造される商業的価値のあるその他の放射性同位体のなかには、複数の中性子誘導核変換反応が起きなければ所望の放射性同位体が生成されないものや、Co-60、W-188、Ni-63、Bi-213およびAc-225のような中性子相互作用断面積が非常に小さい物質から抽出される放射性同位体がある。これらの同位体を製造するには、1燃料サイクル以上の炉心内滞留期間が必要である。商用発電炉は、発電に使用する原子炉の熱出力に有意に寄与しない大量の中性子を有する。本願で説明する発明は、商用原子炉内の中性子環境を利用して商業的価値のある量の放射性同位体を製造するにあたり、長期の中性子照射を必要とするが原子炉の運転および運転コストへの影響を最小限に抑えるプロセスおよび関連のハードウェアに関する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、燃料サイクル中の長い期間にわたって標的物質に中性子を照射し、照射済み標的物質を当該燃料サイクル終了時に回収するための原子燃料集合体標的中性子束シンブル挿入体を提供する。当該中性子束シンブル挿入体は、伸長方向の軸を有する細長い管状ハウジングを含む。当該細長い管状ハウジングは、閉じた前端部、蓋を被せた後端部および内部の当該両端部間に形成された標的試料チェンバを有する。当該細長い管状ハウジングは炉心内に置かれた原子燃料集合体の計装シンブル内を摺動できる大きさであり、当該後端部または終端部が既存の可動型炉内検出器システムの駆動ケーブルによって駆動される構成である。当該細長い管状ハウジング内の前方と後方の軸方向位置決め端栓の間には細長い標的試料が捕捉されるが、当該軸方向位置決め端栓は当該細長い管状ハウジングの内壁に当接して当該標的試料を当該細長い管状ハウジング内の事前に選んだ軸方向位置に保持するように構成されている。
【0008】
一実施態様において、当該標的試料はCo-60、W-188、Ni-63、Bi-213およびAc-225のうちの1つ以上から成る。当該細長い管状ハウジングは、例えばジルコニウムやジルコニウム合金などの中性子捕獲断面積が小さい物質から成るのが好ましい。
【0009】
別の実施態様において、当該軸方向位置決め端栓は、当該細長い管状ハウジングの内壁との間の接触表面の摩擦によって軸方向位置を維持する。代替策として、当該軸方向位置決め端栓は当該細長い管状ハウジングの内壁の浅い窪みとの嵌合によって軸方向位置を維持することができる。あるいは、両方の設計を組み合わせてもよい。当該軸方向位置決め端栓を窪みに嵌合させる実施態様では、当該軸と実質的に直交する方向に延びる当該軸方向位置決め端栓の上面と下面との間に実質的に円形の外壁が延びるが、当該実質的に円形の外壁の寸法は当該窪みのうちの1つに嵌合する大きさであるのが好ましい。後者の実施態様において、当該上面および当該下面が当該実質的に円形の外壁と接する面は鋭角に傾斜し、当該軸方向位置決め端栓の当該窪みへの嵌合および離脱が容易であるのが好ましい。
【0010】
本発明はまた、原子炉内における少なくとも1燃料サイクルにわたる長期的照射を必要とする同位体に中性子を照射して所期の標的製品を得る方法を企図する。この方法は、伸長方向の軸を有する細長い管状ハウジング内に同位体を封入するステップから成る。当該細長い管状ハウジングは、閉じた前端部、蓋を被せた後端部および内部の当該両端部間に形成された標的試料チェンバを有する。当該細長い管状ハウジングは、原子燃料集合体の計装シンブル内を摺動できる大きさであり、当該後端部は既存の可動型炉内検出器システムの駆動ケーブルによって駆動される構成である。次いで、当該同位体を当該細長い管状ハウジング内の事前に選んだ軸方向位置に配置し、当該ハウジングの後端部を当該駆動ケーブルに取り付ける。次に、当該細長い管状ハウジング内の当該同位体を、原子炉の炉心内の選択した原子燃料集合体の計装シンブル内へ少なくとも部分的に送り込み、燃料サイクルの残存期間にわたって炉心内に滞留させる。燃料サイクルの終了時に当該細長い管状ハウジングを炉心から取り出し、さらに当該選択された燃料集合体を炉心から取り出す。次いで、当該細長い管状ハウジングを炉心内の場所に再挿入し、当該細長い管状ハウジングのうち当該同位体を含む部分を当該駆動ケーブルから取り外す。一実施態様において、当該細長い管状ハウジングのうちの当該取り外した部分を水中で使用済燃料プールへ移送するが、そこで輸送のための梱包を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0012】
図1】本発明に適用できる先行技術の可動型炉内検出器構造を示す斜視図である。
【0013】
図2】本発明の標的中性子束シンブルの一実施態様を示す概略断面図である。
【0014】
図3】本発明の標的中性子束シンブルの挿入位置および引き抜き位置を示す、原子炉容器および可動型炉内検出器駆動システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の放射性同位体製造プロセスの好ましい一実施態様では、原子炉の出力分布を定期的に測定するために既存の可動型炉内検出器核分裂電離箱を燃料集合体の計装シンブルへアクセスさせる導管として働く中性子束シンブルが、所望の放射性同位体に変換される標的物質を燃料集合体計装シンブルに挿入する目的で使用される。図2に略示の標的物質を内包する中性子束シンブル(以下、「標的中性子束シンブル」34と呼ぶ)は、図1に示す小型検出器12の代わりに燃料集合体計装シンブル50に挿入される。小型検出器12に代えて駆動ケーブル48に取り付けられる標的中性子束シンブル34の外筒部36は、好ましくは丸みのあるまたは面取りした密閉先端部38と、外筒部36のチェンバ45内に試料または標的同位体カプセル44を装填したあと蓋42で密閉される後端部40とを有する。標的物質カプセル44が独自の外筒(図示せず)を具備することもあるが、標的物質が自立した固形の場合は軸方向の両端部を軸方向位置決め端栓46で蓋をして標的物質カプセル44が標的中性子束シンブル34内の所望の軸方向位置に配置されるようにしてもよい。軸方向位置決め端栓は、摩擦によって、または標的中性子束シンブルの外筒部36の内面の浅い窪み52との嵌合によって定位置に保持することができる。後者の場合、当該軸方向位置決め端栓の接触面を面取りして、当該端栓を標的中性子束シンブルの外筒部36内に装着するとき当該窪みに収まり易くするのが好ましい。標的中性子束シンブル34は、燃料集合体計装シンブル50内に据え付けると、その後の原子炉運転サイクルの残存期間にわたって燃料集合体計装シンブル内の定位置に滞留する。原子炉の燃料を交換するときは、燃料交換プロセスの一環として、すべての中性子束シンブルを引き抜いて原子炉容器内の下部炉心板の下方へ移動させ、燃料集合体の配置変更および/または容器からの取り出しができるようにする。標的中性子束シンブル内の所望の放射性同位体の量が十分になったと予想される場合、当該標的中性子束シンブルを、燃料集合体が取り出されたあとの原子炉容器内の空の場所に再挿入すると、標的中性子束シンブルのうち燃料集合体計装シンブル内に置かれていた照射済み標的物質を含む部分を、中性子束シンブル取出し操作専用の既存の治工具を用いて当該中性子束シンブルから切断することができる。
【0016】
図3は、照射時、燃料交換時、および製品回収時の標的中性子束シンブルの配置を説明するものである。いくつかの図面中に使用する同じ参照符号は、対応する構成要素を表す。参照符号22は、シール台20を起点として標的中性子束シンブル34が内部を移動する案内導管を示す。案内導管22の各々は対応する計装列56に整列し、当該計装列は、炉心内の燃料集合体のうちの1体の対応する計装シンブルに整列する。参照符号54は、標的物質カプセルが照射される、炉心内の対応する燃料集合体中の標的中性子束シンブルの完全挿入位置を示す。参照符号58は標的中性子束シンブルの完全引き抜き位置を示すが、この位置は標的物質の回収に先立って対応する燃料集合体を炉心から引き抜くことを可能にする。参照符号68、70はそれぞれ、シール台20における完全引き抜き位置と完全挿入位置の違いを示す。炉心から燃料集合体を引き抜いたあと、標的中性子束シンブル34を炉心領域に再挿入し、参照符号60の位置で切断して原子炉容器から取り出すことができる。次に、照射済み標的物質を容器62に挿入するが、当該容器の使用により標的中性子束シンブルのうち標的物質を含む部分を燃料移送システム66を介して使用済燃料プール64へ移送し、そこで当該部分を遮蔽された輸送容器72に梱包して処理施設へ輸送することが可能になる。照射の影響を受けた標的中性子束シンブルの残りの部分は、標準的な保守手順によって取り出され、新しい標的中性子束シンブルと交換される。このプロセスは、中性子束シンブルを受け入れる燃料集合体内の場所のうち少なくとも75%が運転サイクルの全期間にわたって利用可能になるように慎重に設定した数の炉心場所において同時に、また所望の回数繰り返すことができる。
【0017】
商業的価値のある放射性同位体を製造できるが、商用原子炉内での長期照射を必要とする典型的な先行技術の方法では、標的物質を含む1本以上の燃料ピン構造体を1体以上の燃料集合体に挿入する。本発明のプロセスによると、認可済み燃料集合体の設計を新設計の燃料ピン構造体に適合するように変更する過程で必要となる非常に厳密で時間と費用のかかる解析が不要になる。可動型炉内検出器の核分裂電離箱が中性子束シンブルを介してアクセスする燃料集合体計装シンブルについては、設計変更は不要である。本願で説明する方法では、燃料集合体の設計変更は不要なので、本プロセスの実施に由来する追加費用はほとんど発生しない。
【0018】
商業的価値のある放射性同位体を製造する最初のステップは、所望の放射性同位体を製造するための標的物質の照射である。したがって、寿命が長めの放射性同位体を製造する市場全体が潜在的な事業対象である。本発明の製造プロセスにとって好適で特に望ましい(高価な)放射性同位体のうちで注目すべきもののなかには、Co-60、W-188、Ni-63、Bi-213およびAc-225がある。可動型炉内検出器に備わっている構造的特徴が照射前における標的物質の遮蔽を可能にするため、本願で説明するプロセスは放射性標的物質の使用にうってつけである。
【0019】
本発明の特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示した特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物を包含する。
図1
図2
図3