(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】炭素及びエラストマーの融合
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220317BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220317BHJP
C08K 3/10 20180101ALI20220317BHJP
C08K 3/18 20060101ALI20220317BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20220317BHJP
C08K 5/435 20060101ALI20220317BHJP
C01B 32/194 20170101ALI20220317BHJP
C01B 32/15 20170101ALI20220317BHJP
C01B 32/184 20170101ALI20220317BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/04
C08K3/10
C08K3/18
C08K3/36
C08K5/435
C01B32/194
C01B32/15
C01B32/184
(21)【出願番号】P 2019550632
(86)(22)【出願日】2018-03-12
(86)【国際出願番号】 US2018022072
(87)【国際公開番号】W WO2018169889
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-03-10
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519124844
【氏名又は名称】ライテン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LYTEN, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンゼルモ,ブライス・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】クック,ダニエル
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-501873(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103102514(CN,A)
【文献】国際公開第2016/002261(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105504345(CN,A)
【文献】特表2015-517583(JP,A)
【文献】特開2015-143298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー材料と、
充填材と、
少なくとも1種の添加剤と、
少なくとも1種の促進剤とを含み、
前記充填材は、グラフェン系炭素材料を含み、
前記グラフェン系炭素材料は、炭素粒子と、ナノ混合添加剤の粒子とを含み、
前記炭素粒子は、最大15の層を含むグラフェンを含み、
前記ナノ混合添加剤の粒子は、粒子レベルで前記炭素粒子と化学的に結合または物理的に結合することによって、前記ナノ混合添加剤の粒子と前記炭素粒子とが一緒に凝集体を形成し、
前記凝集体のメジアン径は、1~50ミクロンであ
り、
前記ナノ混合添加剤の粒子は、Si、Na、K、B、Cr、Ca、Sr、Mg、Zn、Ga、Rb、Cs、Mn、シリカ、酸化亜鉛、および二酸化チタンからなる群から選択された少なくとも1つの粒子である、コンパウンド。
【請求項2】
前記グラフェン系炭素材料が圧縮時に500S/mを超える電気伝導率を含み、被吸着物質として窒素を用いるブルナウアー・エメット・テラー(BET)法によって測定した場合に少なくとも50m
2/gの上記炭素凝集体の表面積とを含む、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項3】
前記グラフェン系炭素材料は、前記グラフェン以外の少なくとも1つの炭素同素体をさらに含み、前記グラフェンと前記グラフェン以外の前記炭素同素体との比は1:100~10:1である、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項4】
前記グラフェン以外の前記炭素同素体は、多層球状フラーレンを含む、請求項3に記載のコンパウンド。
【請求項5】
前記充填材がシリカを更に含み、前記シリカと前記グラフェン系炭素材料との比が10:1~1:1である、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項6】
前記エラストマー材料が天然ゴム及び合成ゴムからなる群より選択される、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項7】
前記添加剤が、シランカップリング剤、油分、酸化亜鉛材、ステアリン酸材、ワックス材、可塑剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、硫黄架橋剤からなる群より選択される物質を更に含む、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項8】
前記促進剤がN-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルホンアミドを更に含む、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項9】
前記促進剤がN-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルホンアミド及びジフェニルグアニジンを更に含み、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルホンアミドの濃度がジフェニルグアニジンの濃度よりも高い、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項10】
前記グラフェン系炭素材料が官能化グラフェン系炭素材料である、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項11】
前記官能化グラフェン系炭素材料が、H、O、S、N、Si、芳香族炭化水素、Sr、F、I、Na、K、Mg、Ca、Cl、Br、Mn、Cr、Zn、B、Ga、Rb、及びCsからなる群より選択される種を含む、請求項10に記載のコンパウンド。
【請求項12】
前記コンパウンドのPhillips分散評価が6~10である、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項13】
ASTM D5992-96(2011)によって測定される前記コンパウンドの-20℃におけるG’貯蔵弾性率が5MPa~12MPaである、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項14】
ASTM D5992-96(2011)によって測定される前記コンパウンドの-10℃におけるタンデルタが0.35~1.0である、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項15】
ASTM D5992-96(2011)によって測定される前記コンパウンドの0℃におけるタンデルタが0.3~0.6である、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項16】
ASTM D5992-96(2011)によって測定される前記コンパウンドの30℃におけるタンデルタが0.1~0.3である、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項17】
ASTM D5992-96(2011)によって測定される前記コンパウンドの30℃におけるG’貯蔵弾性率が1MPa~6MPaである、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項18】
ASTM D5992-96(2011)によって測定される前記コンパウンドの30℃におけるJ’’損失コンプライアンスが4E-8 l/Pa~1E-7 l/Paである、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項19】
ASTM D5992-96(2011)によって測定される前記コンパウンドの60℃におけるG’貯蔵弾性率が1MPa~4MPaである、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項20】
前記ナノ混合添加剤の粒子、有機材料および無機材
料を含む、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項21】
前記ナノ混合添加剤の粒子が、金属を含む、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項22】
前記ナノ混合添加剤の粒子および前記炭素粒子が、100nm未満の平均径を有する、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項23】
前記グラフェン系炭素材料は、炭化水素分解プロセスを用いて製造され、
前記ナノ混合添加剤の粒子は、前記炭化水素分解プロセス中に導入され、
前記ナノ混合添加剤の粒子は、前記グラフェン系材料が製造されるときに前記炭素粒子と融合される、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項24】
前記グラフェン系炭素材料は、炭化水素分解プロセスを用いて製造され、
前記ナノ混合添加
剤は、前記炭化水素分解プロセス中に導入され、
前記ナノ混合添加剤は、前記ナノ混合添加剤の粒子を形成し、
前記ナノ混合添加剤の粒子は、前記グラフェン系炭素材料が製造されるときに前記炭素粒子と融合される、請求項1に記載のコンパウンド。
【請求項25】
前記ナノ混合添加剤は、気体、液体、またはコロイド分散液として前記炭化水素分解プロセスに導入される、請求項
24に記載のコンパウンド。
【請求項26】
エラストマー材料と、
充填材と、
少なくとも1種の添加剤と、
少なくとも1種の促進剤と
を含むコンパウンドであって、
前記充填材がシリカ及びグラフェン系炭素材料を含み、前記グラフェン系炭素材料が、
最大15の層を含むグラフェンを含む炭素粒子と、
ナノ混合添加剤の粒子と、を含み、
前記ナノ混合添加剤の粒子は、粒子レベルで前記炭素粒子と化学的に結合または物理的に結合することによって、前記ナノ混合添加剤の粒子と前記炭素粒子とが一緒に凝集体を形成し、
前記凝集体のメジアン径は、1~50ミクロンであり、
ASTM D5992-96(2011)によって測定される前記コンパウンドの-20℃におけるG’貯蔵弾性率が9MPa未満であり、
ASTM D5992-96(2011)によって測定される前記コンパウンドの-10℃におけるタンデルタが0.8を超え、
ASTM D5992-96(2011)によって測定される前記コンパウンドの0℃におけるタンデルタが0.5を超え、
ASTM D5992-96(2011)によって測定される前記コンパウンドの30℃におけるタンデルタが0.25未満であり、
ASTM D5992-96(2011)によって測定される前記コンパウンドの30℃におけるG’貯蔵弾性率が1.5MPaを超え、
ASTM D5992-96(2011)によって測定される前記コンパウンドの30℃におけるJ’’損失コンプライアンスが9E-8 l/Paを超え、
ASTM D5992-96(2011)によって測定される前記コンパウンドの60℃におけるタンデルタが0.15未満であり、
ASTM D5992-96(2011)によって測定される前記コンパウンドの60℃におけるG’貯蔵弾性率が1.5MPaを超
え、
前記ナノ混合添加剤の粒子は、Si、Na、K、B、Cr、Ca、Sr、Mg、Zn、Ga、Rb、Cs、Mn、シリカ、酸化亜鉛、および二酸化チタンからなる群から選択された少なくとも1つの粒子である、コンパウンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年3月12日に出願され、「炭素及びエラストマーの融合」との名称の通常の米国特許出願第15/918,422号の優先権を主張し、該出願は、1)2017年3月16日に出願され、「炭素及びエラストマーの融合」との名称の米国仮特許出願第62/472,058号、2)2017年11月3日に出願され、「炭素及びエラストマーの融合」との名称の米国仮特許出願第62/581,533号、及び3)2018年2月13日に出願され、「炭素及びエラストマーの融合」との名称の米国仮特許出願第62/630、179号の優先権を主張し、これらの全ての出願は、本記載によりあらゆる目的のために参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品であるタイヤ及び封止材は、カーボンブラック及びシリカなどの充填材をゴム中に配合または混合し、次いでこれを加硫することによって製造される。ゴム製品は一般的に、強化充填材として20~30重量%のカーボンブラックを含み、カーボンブラックの割合及び種類、使用するゴムの種類(例えば、天然、合成)、ならびに追加の添加剤及び化学薬品を変えて、最終製品の特性をカスタマイズする。車両用タイヤの場合、コードを埋め込むことにより、またトレッド、サイドウォール、及びインナーライナーに異なる種類のエラストマーコンパウンドを用いることにより、更に構造的特性が導入される。カーボンブラックは、業界では、例えば、アセチレンブラック及びファーネスブラックとしても知られる、ある種の非晶性炭素であり、石油を燃焼させることにより製造される。タイヤ製造業者などの製造業者は、一般的に、様々な供給元からその原料(例えば、ゴム、カーボンブラックなど)を受け入れる。カーボンブラックは軽量で扱い難い材料であり、このことにより、タイヤ業界は、カーボンをより容易に取り扱うことができるように、カーボンの高密度化、すなわちペレット化を求めることを余儀なくされている。ペレット化することにより、エラストマーコンパウンドに添加する際に、カーボンブラックの混合が容易にもなる。カーボンをペレット化するためには、通常、添加剤が必要となり、これはカーボンを汚染することになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
いくつかの実施形態において、コンパウンドは、エラストマー材料と、充填材と、少なくとも1種の添加剤と、少なくとも1種の促進剤とを含む。上記充填材はグラフェン系炭素材料を含む。上記グラフェン系炭素材料は、最大15の層を含むグラフェンと、メジアン径が1~50ミクロンの炭素凝集体と、被吸着物質として窒素を用いるブルナウアー・エメット・テラー(BET)法によって測定した場合に少なくとも50m2/gの上記炭素凝集体の表面積とを含み、且つシード粒子を含まない。
【0004】
いくつかの実施形態において、上記グラフェン系炭素材料はナノ混合グラフェン系炭素材料である。いくつかの実施形態において、上記グラフェン系炭素材料は官能化グラフェン系炭素材料である。
【0005】
いくつかの実施形態において、ASTM D5992-96(2011)によって測定される上記コンパウンドの-20℃におけるG’貯蔵弾性率は9MPa未満であり、ASTM D5992-96(2011)によって測定される上記コンパウンドの-10℃におけるタンデルタは0.8を超え、ASTM D5992-96(2011)によって測定される上記コンパウンドの0℃におけるタンデルタは0.5を超え、ASTM D5992-96(2011)によって測定される上記コンパウンドの30℃におけるタンデルタは0.25未満であり、ASTM D5992-96(2011)によって測定される上記コンパウンドの30℃におけるG’貯蔵弾性率は1.5MPaを超え、ASTM D5992-96(2011)によって測定される上記コンパウンドの30℃におけるJ’’損失コンプライアンスは9E-8 l/Paを超え、ASTM D5992-96(2011)によって測定される上記コンパウンドの60℃におけるタンデルタは0.15未満であり、ASTM D5992-96(2011)によって測定される上記コンパウンドの60℃におけるG’貯蔵弾性率は1.5MPaを超える。
【0006】
いくつかの実施形態において、エラストマーコンパウンドの製造方法は、反応器を用意することと、上記反応器中に炭化水素プロセスガスを供給することと、上記反応器中で上記炭化水素プロセスガスの炭化水素分解を実行して、グラフェン系炭素材料を生成させることと、エラストマー材料を少なくとも1種の充填材、少なくとも1種の添加剤、及び少なくとも1種の促進剤と混合することとを含む。上記充填材は上記グラフェン系炭素材料を含む。上記グラフェン系炭素材料は、最大15の層を有するグラフェンと、メジアン径が1~50ミクロンの炭素凝集体と、被吸着物質として窒素を用いるブルナウアー・エメット・テラー(BET)法によって測定した場合に少なくとも50m2/gの上記炭素凝集体の表面積とを含み、且つシード粒子を含まない。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記反応器は熱反応器またはマイクロ波反応器である。いくつかの実施形態において、上記グラフェン系炭素材料は官能化グラフェン系炭素材料またはナノ混合グラフェン系炭素材料であり、反応器中での上記炭化水素分解は、上記反応器中に第2の物質を供給することを更に含む。
【0008】
上記方法のいくつかの実施形態において、上記炭化水素分解プロセスと、上記エラストマー材料を少なくとも1種の充填材、少なくとも1種の添加剤、及び少なくとも1種の促進剤と混合するプロセスとが同一の場所において実施される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】Aは従来の炭素材料生産チェーンを示す簡略図である。Bはいくつかの実施形態に係る炭素材料生産チェーンを示す例示的な簡略図である。
【
図2】先行技術のいくつかのカーボンブラック材料のASTM分類を示す図である。
【
図3】ラジアルタイヤ構造を示す断面図であり、丸で囲んだ構成要素は、いくつかの実施形態に係る本グラフェン系炭素融合材料を用いることができる領域を示す。
【
図4】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料の、従来のカーボンブラック材料と比較した分析試験結果を示す図である。
【
図5】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料の、ある範囲の従来のカーボンブラック材料と比較したヨウ素吸着量に対する吸油量を示すグラフである。
【
図6】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した配合処方を示す表である。
【
図7】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した物理的特性を示す図である。
【
図8】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した物理的特性を示す図である。
【
図9】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した配合処方を示す表である。
【
図10】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した、混合中に測定したいくつかの重要なパラメータを示す表である。
【
図11】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した物理的特性を示す表である。
【
図12】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した熱老化後の物理的特性を示す表である。
【
図13】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した動的粘弾性特性を示す表である。
【
図14】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドに規格化した動的粘弾性特性を示す表である。
【
図15】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドに規格化した動的粘弾性特性を示すレーダーチャートである。
【
図16】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した配合処方を示す表である。
【
図17】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した混合パラメータ及び混合時の観察事項を示す表である。
【
図18】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した、混合中に測定したいくつかの重要なパラメータを示す表である。
【
図19】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した物理的特性を示す表である。
【
図20】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した配合処方を示す表である。
【
図21】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した混合パラメータ及び混合時の観察事項を示す表である。
【
図22】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した、混合中に測定したいくつかの重要なパラメータを示す表である。
【
図23】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した、混合中のトルクを示すグラフである。
【
図24】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した物理的特性を示す表である。
【
図25】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した動的粘弾性特性を示す表である。
【
図26】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンド及び従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドに規格化した動的粘弾性特性を示す表である。
【
図27】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンド及び従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドに規格化した動的粘弾性特性を示すレーダーチャートである。
【
図28】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した配合処方を示す表である。
【
図29】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した、混合中に測定したいくつかの重要なパラメータを示す表である。
【
図30】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した、混合中のトルクを示すグラフである。
【
図31】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した物理的特性を示す表である。
【
図32】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した熱老化後の物理的特性を示す表である。
【
図33】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドと比較した動的粘弾性特性を示す表である。
【
図34】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドに規格化した動的粘弾性特性を示す表である。
【
図35】いくつかの実施形態に係るグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの、従来のカーボンブラック材料を含有するエラストマーコンパウンドに規格化した動的粘弾性特性を示すレーダーチャートである。
【
図36】いくつかの実施形態に係るエラストマーコンパウンドの製造の実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書においてはグラフェン系炭素材料について説明するが、この材料は、エラストマーコンパウンドの強化充填材として用いることができる。いくつかの実施形態において、上記グラフェン系炭素材料は、該炭素材料の表面に他の物質種(例えば、原子または化合物)を結合すること、または他の物質を上記炭素材料と緊密に混合することのいずれかにより、他の材料を含む。上記グラフェン系炭素材料の製造条件、及び任意選択で、粒子に含まれる他の物質の組成によって、本炭素材料の特性を変化させることができる。本炭素材料の特性は、これらの材料を含有するエラストマーの加工及び/または特性に影響を与える可能性があることから、本炭素材料によって強化エラストマーの特性の調整が可能になる。
【0011】
従来の混合技術の工業用混合機における、ゴム(天然ゴム及び合成ゴムの両方)を種々の材料(シリカ、カーボンブラック、硫黄など)と融合させる能力は限られている。この従来のマクロ混合技術は、シランを用いてシリカ/カーボンをエラストマーに結合させるなど、種々の化学物質を使用して材料を結合させる。更に、カーボンブラック材料の輸送には大きなコストを要する場合がある。
【0012】
対照的に、本発明の材料及び方法は、いくつかの実施形態において、上記炭素材料を変更する必要なしに、グラフェン系炭素材料をエラストマーの製造に直接組み込むことを含む。例えば、本発明の材料は、輸送用に当該材料を高密度化するために、ペレット化または圧縮成型する必要がない。但しいくつかの実施形態において、上記材料をペレット化してもよい。本発明のグラフェン系炭素材料は、動的及び静的システム用のゴム材料などのエラストマーコンパウンドの製造において、該炭素材料を従来のカーボンブラックの代替品として用いることができるだけの特性を有している。いくつかの実施形態において、上記グラフェン系炭素材料は、種々の物質(例えば、ケイ素、水素ガス、アンモニア、硫化水素、金属、ハロゲン)の添加を伴ってまたは伴わずに反応器中で製造され、エラストマー配合物中に融合される。いくつかの実施形態において、上記グラフェン系炭素材料は上記反応器中で炭化水素分解により製造され、上記反応器の実施形態としては、熱反応器及びマイクロ波プラズマ反応器が挙げられる。これらの形式の反応器は一般的にカーボンブラック製造プラントよりも大幅に小さい個別の装置であるため、上記実施形態により、構内での炭素材料の製造が可能になる。したがって、いくつかの実施形態において、上記グラフェン系炭素材料は、該材料が使用される場所と同一の場所、例えば、エラストマー製造設備において製造される。
【0013】
構内での混合により、炭素原材料をエラストマー製造サイトに輸送する必要性が軽減され、その結果、上記の輸送の目的で炭素をペレット化する必要がなくなる。炭素をペレット化する必要がないため、添加剤を使用して炭素ペレットを形成するための添加剤を使用する必要がない。本明細書で後述するように、本材料は、最終的なエラストマーの所望の物理的特性を与えるように調整することができる。また、炭素製造プロセスにおいて必要とされる水及びエネルギーの量を低減するなどの、炭素をペレット化しないことの環境上の利点もある。
【0014】
図1のAは
図1のBと比較した、従来の炭素材料の生産チェーンの簡略図を示し、
図1のBは本実施形態の炭素材料の生産チェーンの一例である。
図1のAに示す従来の技術では、カーボンブラック101、シリカ102、及び他の化学物質103などの原料が製造施設120に輸送110され、そこでエラストマーコンパウンドに配合され、次いでタイヤ130などの最終製品へと加工される。従来のタイヤの供給には、原料(ゴムベール、炭素充填材、テキスタイル、スチール、及びその他の添加剤など)の準備、タイヤ構成要素の構築(エラストマーコンパウンドをトレッド及びサイドウォールに押出成形することを含む)、次いでタイヤ130を構築すること(タイヤの硬化、完成したタイヤの検査など)が含まれる。
図1のBに示す本発明の材料及び方法のいくつかの実施形態において、炭素粒子の製造、エラストマーコンパウンドの混合、及び任意選択で最終製品(例えば自動車用タイヤ)の構築は構内で行ってもよい。いくつかの実施形態において、材料のナノ混合も構内で行われる。
図1のBに示す特定の例において、炭化水素151及びシリカ152が、製造施設170の反応器160中において、構内で混合(すなわち互いに融合)され、次いでエラストマー原料(例えばゴム)と融合されてエラストマーコンパウンドを生成し、次いで、タイヤ180などの最終製品へと加工される。
図1のAとBとの違いにより、取り扱いが困難なカーボンブラック材料を輸送する必要性が排除されること、及び炭素製造プロセスの間に材料を互いに融合することによりエネルギー消費を低減することなどの、上述の本技術のいくつかの可能性のある利点が例示される。他の実施形態において、
図1のAに示す従来のサプライチェーンは、本グラフェン系炭素材料と共に使用することができる。かかる実施形態においては、上記炭素材料は1つの場所で製造され、次いで該炭素材料及び他の構成成分の材料が製造施設に輸送され、そこでこれらがエラストマーコンパウンドに配合され、次いでタイヤなどの最終製品に加工される。
【0015】
本グラフェン系炭素材料を使用する別の利点は、カーボンブラックと比較して純度が向上していることである。いくつかの場合において、カーボンブラック中の不純物(例えば残留する油分)により、カーボンに発がん性の表示をする必要がある。いくつかの実施形態において、本グラフェン系炭素材料が有する揮発性有機化合物(VOC)はカーボンブラックよりも少なく、その結果、製造されたエラストマー材料の表面上に残留する油分が生じない。他の場合において、本グラフェン系炭素材料の残留炭化水素(例えば多環芳香族炭化水素)の濃度はカーボンブラックと比較して低く、その結果、製造されたエラストマー材料の表面上の残留する油分がより少なくなる。本明細書に記載される炭素材料はまた、従来の方法で処理されたカーボンブラックまたはグラフェンと比較して、含有する汚染物質(例えば、灰分、金属、及び他の元素汚染物質)の濃度が低い。また、製造時の副生成物としてのCO2、NOx、及びSOxの排出は最小限である。これらの全ての利点の結果、本炭素材料は、エラストマーに使用されている従来のカーボンブラックよりも取り扱いが安全であり、環境に優しい。
【0016】
本グラフェン系炭素材料の不純物濃度がカーボンブラックと比較して低いことは、該炭素材料の加工(例えば、炭素の後処理、及びエラストマーのコンパウンド化)にとっても利点である。例えば、従来のカーボンブラックの加工装置は、有毒なカーボンブラック粒子を加工するための特別なシステムが必要となる場合がある。対照的に、非毒性または低毒性の本材料を処理するための特別なシステムは必要ない。いくつかの場合において、従来のカーボンブラックは加工装置を汚染し、一部の施設では加工することができない。いくつかの実施形態において、不純物の濃度がより低い本材料は、汚染されていない加工装置によって加工することに対する制限を受けない。
【0017】
グラフェン系炭素材料
特定の炭素材料のエラストマーを強化する能力に影響を与える3種類の特性、すなわち、表面積、構造、及び表面活性がある。更に、コークス、灰分、及び水分などの不純物が、エラストマー中の炭素材料充填材の有効性にとって重要となる場合がある。表面積とは、エラストマーとの相互作用に利用できるものを始めとする、炭素材料表面の総面積をいう。粒子径及び形状が上記表面積に影響を与える可能性がある。より小さな炭素粒子(例えば、平均径が100nm未満)は一般的に、互いに融合してより大きな凝集体(例えば、平均径が1~10ミクロン)を形成する。構造とは凝集体の形状を記述する。上記構造は、互いに融合した粒子の数及び凝集体内の粒子の構成によって影響を受ける可能性がある。例えば、より多数の粒子を含む凝集体は、大きな空隙容量が生じた複雑な形状を有する場合がある。上記構造は、炭素とポリマーとの混合の程度に影響を与える場合があり(例えば、ポリマーによって空隙が充填される場合がある)、エラストマー/炭素コンパウンドの特性に影響を与える場合がある。表面活性とは、炭素充填材料とポリマー間の表面相互作用の強さをいう。表面活性は、エラストマー内の炭素材料の分散特性に影響を与える場合がある。引張強度、引裂強度、及び耐摩耗性などのコンパウンドの機械的特性は、炭素充填材の表面積によって影響を受ける場合がある。粘度、収縮、及び弾性率などの他のコンパウンドの機械的特性は、炭素充填材の構造によって影響を受ける場合がある。表面積はまた、ヒステリシスなどの一部のコンパウンドの機械的特性にも影響を与える場合がある。構造はまた、強化エラストマーコンパウンドの屈曲疲労及び耐摩耗性にも影響を与える場合がある。表面活性は、弾性率、ヒステリシス、及び耐摩耗性などのコンパウンドの機械的特性にも影響を与える場合がある。
【0018】
いくつかの試験を用いてカーボンブラックの表面積及び構造を測定することができる。最も一般的な測定方法はヨウ素吸着(例えばASTM D1510を使用)及び吸油量(例えばASTM 2414、B法を使用)である。得られる指標は、炭素材料の表面積の尺度であるヨウ素吸着量、及び炭素材料の構造の尺度であるフタル酸ジブチル吸収(DBP)量である。
【0019】
図2は、本明細書に記載のいくつかのグラフェン系材料の範囲内にある特性を有するいくつかの従来のカーボンブラック材料のASTM分類を示す。以下に(及び本開示全体を通じて)説明するように、本発明のグラフェン系炭素材料中に導入される物質及び該炭素材料の処理条件を変えて、生成する粒子の物理的特性を調整することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系材料のヨウ素吸着量は20~160、吸油量は50~180である。例えば、本明細書に記載のグラフェン系材料のヨウ素吸着量は110、吸油量は92であり、これらは、従来のN125、N219、及びN299と同様の表面積及び構造である(値は
図2中に記載)。別の例として、本明細書に記載のグラフェン系材料のヨウ素吸着量は46、吸油量は75であり、これらは、従来のN660、N762、N772、及びN774と同様の表面積及び構造である(
図2)。これらの結果は、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料が、いくつかのグレードの従来のカーボンブラックの好適な代替物となり得ることを示唆している。
【0020】
本明細書に記載の炭素材料(例えばグラフェン系炭素材料)の表面積、構造、及び表面活性を調整するために用いることができる多くの方法及び物質がある。
【0021】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の炭素材料の表面積、構造、及び表面活性は、当該炭素材料を官能化することによって調整される。上記炭素材料の官能化とは、当該炭素材料に元素、官能基、または分子を添加することをいう。いくつかの実施形態において、上記元素、官能基、または分子は、上記炭素材料の炭素原子に共有結合される。いくつかの実施形態において、上記元素、官能基、または分子は、上記炭素粒子及び/または凝集体の炭素多孔性中に物理吸着される。上記官能化反応は、イン・シチュウで(すなわち、反応器中で炭化水素分解により当該炭素材料が生成している際に)生起させてもよく、または1もしくは複数の後処理ステップにおいて生起させてもよく、またはイン・シチュウと後処理ステップとの組み合わせにおいて生起させてもよい。本明細書に記載の官能化炭素材料を配合したエラストマーコンパウンドは、より速い硬化速度、弾性率の向上、耐摩耗性の向上、及び電気伝導率の向上による恩恵を得ることができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の炭素材料の表面積、構造、及び表面活性は、当該炭素材料内の炭素粒子を他の物質の粒子とナノ混合することによって調整される。いくつかの実施形態において、ナノ混合添加剤の粒子は粒子レベルで上記グラフェン系炭素の粒子と有利に融合することができ、本開示においてはこれをナノ混合と呼ぶ。上記ナノ混合物中のナノ混合添加剤及びグラフェン系炭素材料の粒子の平均径は、1nm~1ミクロン、または1nm~500nm、または1nm~100nmであってよく、または0.1nm程度に小さくてもよい。いくつかの実施形態において、上記ナノ混合添加剤及びグラフェン系炭素材料は、ナノ混合物中で互いに化学的に結合しているか、または物理的に結合している。上記ナノ混合は、従来の方法(例えば、上述のマクロ混合)における後段のプロセスにおいて炭素原料を添加剤と配合するのではなく、上記グラフェン系炭素材料が生成する際に、該炭素材料中に上記ナノ混合添加剤が融合するように、炭化水素分解プロセスの間に上記ナノ混合添加剤を導入することを含む。例えば、得られる本実施形態のナノ混合炭素材料は、シリカ、ZnO、及び/または金属の粒子を含有してもよい。上記ナノ混合添加剤は、気体、液体、またはコロイド分散液として反応器中に投入してもよい。例として、炭化水素プロセスガス(もしく液体アルコールなどの他の炭素含有プロセス物質)と共にシリカまたはケイ素を反応器中に投入して、炭素材料と結合したシリカならびに/あるいはグラフェン、グラフェン系炭素材料、及び/もしくは他の炭素同素体で包まれたまたは被覆されたケイ素を生成させてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、エラストマーコンパウンドは、エラストマー材料と充填材を含み、上記充填材はグラフェン系炭素材料とシリカとを含有する。いくつかの実施形態において、上記充填材の過半を占めるのはグラフェン系炭素材料またはシリカのいずれかである。いくつかの実施形態において、本エラストマーコンパウンド中のシリカとグラフェン系炭素材料との比は、10:1~1:1、または20:1~1:1、または100:1~1:1である。かかる実施形態におけるナノ混合材料の例としては、有機材料で被覆された固体無機材料(例えばグラフェンで被覆されたケイ素)、及び有機/無機材料の中間層を有する複合材料(例えば、シリカまたはケイ素のコア/該ケイ素を封入する炭素の層/更に無機層の被覆)が挙げられる。炭化水素分解プロセスの間に上記ナノ混合添加剤を導入することにより、シリカと炭素とを結合するカップリング剤を必要とせずに、上記材料がナノスケールで融合される。本ナノ混合炭素材料は、ゴムまたは他のエラストマーの製造のエネルギー消費量の削減を可能にする。一部の材料は融合されていることから、材料を混合するのに必要なエネルギーは少なくなる。いくつかの実施形態において、ナノ混合炭素材料中の炭素粒子及びナノ混合添加剤粒子の平均径は、1ミクロン未満、または100nm未満、または10nm未満である。本明細書に記載のナノ混合炭素材料を配合したエラストマーコンパウンドは、より速い硬化速度、弾性率の向上、耐摩耗性の向上、及び電気伝導率の向上による恩恵を得ることができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、粒子状、液体、及び/または気体物質を炭化水素プロセスガス(もしく液体アルコールなどの他の炭素含有プロセス物質)と共に反応器中に投入して、他の材料とナノ混合された炭素材料及び/または官能化炭素材料を生成させることができる。生成した混合炭素材料及び/または官能化炭素材料は、異なる実施形態において、グラフェン系炭素材料及び/または他の炭素同素体を含有していてもよい。
【0025】
例えば、Sを含有する液体または気体、Si、水素、硫化水素、シランガス、及び/またはアンモニアガスもしくは液体を含有する液体または気体を炭化水素プロセスガスと共に反応器中に導入するならびに/あるいは添加することにより、反応器システムは、官能化炭素材料であって、上記炭素材料中にH、S、Si、及び/またはNが導入された上記炭素材料を生成させることができる。本明細書に記載の官能化炭素材料を配合したエラストマーコンパウンド(例えば、構造が改善され、H、S、及び/またはNを含む)は、より速い硬化速度、弾性率の向上、耐摩耗性の向上、及び電気伝導率の向上による恩恵を得ることができる。炭化水素分解炭素粒子生成プロセスの間に、Sを含有する液体または気体、Si、H2ガス、H2Sガス、シランガス、及び/またはアンモニアガスもしくは液体を含有する液体または気体を導入することにより、表面積、構造、及び/または表面活性が改善された炭素粒子を生成させることができる。
【0026】
別の例において、炭化水素プロセスガスと共に芳香族化合物を反応器中に添加することにより、官能化炭素材料であって、芳香族化合物が上記炭素材料中に導入された上記炭素材料を生成させることができる。芳香族化合物のいくつかの例としては、ベンゼン及びベンゼンの誘導体、ナフタレン、及びアズレンなどの、ベンゼン環、ピリジン環、フラン環、チオフェン環、及び/またはピロール環を含む化合物がある。いくつかの実施形態において、上記芳香族化合物は、炭化水素分解炭素粒子生成プロセスの間に、分解(break down)、分解(decompose)、及び/または分解(crack)もしくは部分的に分解(crack)して、反応生成物を生成することができる。いくつかの場合において、これらの反応生成物は、生成している炭素材料を官能化または該炭素材料とナノ混合することができる。例えば、上記芳香族化合物は高沸点の他の炭化水素を生成する場合があり、これらの高沸点炭化水素は粒子表面上に凝縮して、表面活性に影響を与える場合がある。別の例において、これらの反応生成物は、上記粒子及び凝集体が生成している間に炭素表面に結合した状態となる場合があり、得られる官能化炭素材料の表面積、構造、及び表面活性に影響を及ぼす場合がある。炭化水素分解炭素粒子生成プロセスの間に芳香族化合物を導入することにより、表面積、構造、及び/または表面活性が改善された炭素粒子を生成させることができる。
【0027】
別の例において、炭化水素プロセスガスと共に1種または複数種の油分を反応器中に添加することにより、上記油分が炭素材料中に導入された官能化炭素材料が生成する。前の段落の例と同様に、上記油分は部分的または完全に分解する場合があり、その生成物は生成した炭素材料中に導入され、及び/または上記炭素材料の表面上に凝縮する場合がある。
【0028】
別の例において、S、Si、Na、K、B、Cr、Ca、Sr、Mg、Zn、Ga、Rb、Cs、B、Mn、アルカリ金属、及びその他の金属を含有する粒子、気体、または液体などの金属を、炭化水素プロセスガスと共に反応器中に添加することにより、官能化及び/またはナノ混合炭素材料であって、上記炭素材料中に金属が導入された上記炭素材料を生成させることができる。炭化水素分解炭素粒子生成プロセスの間に金属を導入することにより、表面積、構造、及び/または表面活性が改善された炭素粒子を生成させることができる。いくつかの実施形態において、アルカリ金属を官能化グラフェン系炭素材料中に導入してもよく、アルカリ金属はカップリング剤として機能して、コンパウンド中の炭素材料とエラストマー材料との間の接着を改善する。
【0029】
別の例において、F、Cl、Br、I、及びその他のハロゲンを含有する粒子、気体、または液体などのハロゲンを炭化水素プロセスガスと共に反応器中に添加することにより、官能化炭素材料であって、上記炭素材料中にハロゲンが導入された上記炭素材料を生成させることができる。炭化水素分解炭素粒子生成プロセスの間にハロゲンを導入することにより、表面積、構造、及び/または表面活性が改善された炭素粒子を生成させることができる。
【0030】
別の例において、酸化物(例えば、シリカ、酸化亜鉛、二酸化チタン)または金属などの粒子を炭化水素プロセスガスと共に反応器中に添加することにより、互いに凝集体を形成するナノ混合添加剤の粒子及び炭素材料の粒子を含むナノ混合炭素材料を生成させることができる。炭化水素分解炭素粒子生成プロセスの間にナノ混合添加剤粒子を導入することにより、表面積、構造、及び/または表面活性が改善されたナノ混合炭素粒子を生成させることができる。
【0031】
別の例において、炭化水素プロセスガスと共に酸素含有反応剤または酸化性反応剤を反応器中に添加することにより、官能化炭素材料であって、上記炭素材料中に酸素が導入された上記炭素材料を生成させることができる。酸素含有反応剤または酸化性反応剤のいくつかの例としては、オゾン、過酸化水素、水酸化カリウム、塩化カリウム、塩酸、硝酸、クロム酸、過マンガン酸塩、及びジアゾニウム塩がある。上記酸素含有物質または酸化性物質は、5ppm~100ppm、または5ppm~30ppm、または5ppmを超える、または15ppmを超える、炭化水素プロセスガス中の炭素に対する該酸素含有物質または酸化性物質中の反応種(例えば、O、K、Cl)の濃度で反応器に添加してもよい。炭化水素分解炭素粒子生成プロセスの間に上記酸素含有反応剤または酸化性反応剤を導入することにより、表面積、構造、及び/または表面活性が改善された炭素粒子を生成させることができる。酸化を受けた炭素材料は強化エラストマーの硬化時間を遅くする傾向がある。したがって、酸化を受けた炭素材料を強化エラストマーコンパウンドに配合することにより硬化時間の調整が可能になり、それにより硬化コンパウンドの得られる機械的特性が向上する。
【0032】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の炭素材料(例えばグラフェン系炭素材料)は、優先的に露出した結晶面、グラファイト端、及び/または結晶子端(crystallite edges)などの加工された(engineered)表面を含む。いくつかの実施形態において、これらの加工された表面は、反応器内の粒子合成条件、粒子生成もしくは後処理の間に粒子を官能化する及び/または粒子とナノ混合する、反応器に添加される添加剤の結果である。
【0033】
いくつかの実施形態において、上記充填材に用いられる上記炭素材料は、「炭素同素体を含むシードを用いない粒子」との名称の米国特許出願第15/711,620号に記載されており、上記出願は本出願と同一の譲受人に譲渡され、全ての目的に対してその全てが本明細書に記載されるのと同様に、参照により本明細書に援用される。いくつかの実施形態において、本コンパウンドは、複数の炭素凝集体を含むグラフェン系炭素材料を含有し、各炭素凝集体は複数の炭素ナノ粒子を有し、各炭素ナノ粒子はグラフェンを含み、シード(すなわち、核生成またはコア)粒子を含まない。上記グラフェン系炭素材料中のグラフェンは最大15の層を有する。上記炭素凝集体中の水素を除く他の元素に対する炭素の割合は99%を超える。上記炭素凝集体のメジアン径は1~50ミクロンである。上記炭素凝集体の表面積は、被吸着物質として窒素を使用するブルナウアー・エメット・テラー(BET)法を用いて測定した場合、少なくとも50m2/gである。上記炭素凝集体の圧縮成型した場合の電気伝導率は500S/mを超え、例えば、最大20,000S/m、または最大90,000S/mである。
【0034】
いくつかの実施形態において、コンパウンドは、複数の炭素凝集体を含むグラフェン系炭素材料を含有し、各炭素凝集体は複数の炭素ナノ粒子を有し、各炭素ナノ粒子はグラフェン及び多層球状フラーレンを含み、シード粒子を含まない。上記グラフェン系炭素材料中のグラフェンは最大15の層を有する。上記多層球状フラーレンを含む上記グラフェン系炭素材料の、532nmの入射光を用いたラマンスペクトルは、Dモードピーク、Gモードピークを示し、D/G強度比は1.2未満である。上記炭素凝集体中の水素を除く他の元素に対する炭素の割合は99%を超える。上記炭素凝集体のメジアン径は1~100ミクロンである。上記炭素凝集体の表面積は、被吸着物質として窒素を使用するBET法を用いて測定した場合、少なくとも10m2/gである。上記炭素凝集体の圧縮成型した場合の電気伝導率は500S/mを超え、例えば、最大20,000S/m、または最大90,000S/mである。
【0035】
いくつかの実施形態において、コンパウンドは、複数の炭素凝集体を含むグラフェン系炭素材料を含有し、各炭素凝集体は複数の炭素ナノ粒子を有し、各炭素ナノ粒子はグラフェンと少なくとも1種の他の炭素同素体の混合物を含み、シード(すなわち、核生成またはコア)粒子を含まない。上記グラフェン系炭素材料中のグラフェンは最大15の層を有する。上記炭素凝集体中の水素を除く他の元素に対する炭素の割合は99%を超える。上記炭素凝集体のメジアン径は1~100ミクロンである。上記炭素凝集体の表面積は、被吸着物質として窒素を使用するBET法を用いて測定した場合、少なくとも10m2/gである。上記炭素凝集体の圧縮成型した場合の電気伝導率は100S/mを超え、または500S/mを超え、例えば、最大20,000S/m、または最大90,000S/mである。
【0036】
いくつかの実施形態において、上記充填材に用いられる上記炭素材料は、「マイクロ波化学処理」との名称の米国特許第9,812,295号、または「マイクロ波化学処理反応器」との名称の米国特許第9,767,992号に記載される任意且つ適宜のマイクロ波反応器及び/または方法などのマイクロ波プラズマ反応器及び方法を用いて製造され、上記特許は本出願と同一の譲受人に譲渡され、全ての目的に対してその全てが本明細書に記載されるのと同様に、参照により本明細書に援用される。
【0037】
いくつかの実施形態において、上記充填材に用いられる上記炭素材料は、「カーボン同素体」との名称の米国特許第9,862,606号に記載され、上記特許は本出願と同一の譲受人に譲渡され、全ての目的に対してその全てが本明細書に記載されるのと同様に、参照により本明細書に援用される。
【0038】
いくつかの実施形態において、上記充填材に用いられる上記炭素材料は、「プロセスガスの分解」との名称の米国特許第9,862,602号に記載される任意且つ適宜の熱装置及び/または方法などの熱分解装置及び方法を用いて製造され、上記特許は本出願と同一の譲受人に譲渡され、全ての目的に対してその全てが本明細書に記載されるのと同様に、参照により本明細書に援用される。
【0039】
いくつかの実施形態において、上記充填材に用いられる上記炭素材料の水素を除く他の元素に対する炭素材料の割合は99%を超える、または99.5%を超える、または99.7%を超える、または99.9%を超える、または99.95%を超える。
【0040】
いくつかの実施形態において、上記充填材に用いられる上記炭素材料の表面積は、被吸着物質として窒素を使用するブルナウアー・エメット・テラー(BET)法(すなわち、「窒素を使用するBET法」もしくは「窒素BET法」)または密度汎関数理論(DFT)法を用いて測定した場合、50~1500m2/g、または50~1000m2/g、または50~550m2/g、または50~450m2/g、または50~300m2/g、または100~300m2/g、または50~200m2/g、または50~150m2/g、または60~110m2/g、または50~100m2/g、または70~100m2/gである。
【0041】
いくつかの実施形態において、上記充填材に用いられる上記炭素材料の、(例えば、ディスク、ペレットなどに)圧縮成形し、任意選択でアニールした場合の電気伝導率は、500S/mを超える、または1000S/mを超える、または2000S/mを超える、または500S/m~20,000S/m、または500S/m~10,000S/m、または500S/m~5000S/m、または500S/m~4000S/m、または500S/m~3000S/m、または2000S/m~5000S/m、または2000S/m~4000S/m、または1000S/m~5000S/m、または1000S/m~3000S/mである。
【0042】
いくつかの実施形態において、上記充填材に用いられる上記炭素材料の、(例えば、ディスク、ペレットなどに)圧縮成形し、任意選択でアニールした場合の熱伝導率は、10W/(m・K)~5000W/(m・K)、または10W/(m・K)~1500W/(m・K)、または10W/(m・K)~100W/(m・K)、または1W/(m・K)~1000W/(m・K)である。
【0043】
本明細書に記載の炭素材料(例えば、官能化及び/もしくはナノ混合を伴うまたは伴わないグラフェン系炭素材料)の表面積、構造、ならびに/あるいは表面活性は、炭素粒子の製造の間にパラメータを変更することにより調整することができる。例えば、反応器への投入物質(すなわち反応剤)は生成する炭素材料の表面積、構造、及び/または表面活性に影響を与える場合がある。投入物質のいくつかの例としては、メタンなどの気体炭化水素、及びイソプロピルアルコールなどの液体アルコールがある。別の例において、反応器内の滞留時間は、生成する炭素の同素体、ならびに粒子の径、生成する凝集体の径及び形状(すなわち構造)に影響を与える場合がある。いくつかの実施形態において、上記滞留時間は、反応器中への投入物質の流速によって影響を受ける。上記炭素材料の表面積に影響を与える可能性のあるプロセスパラメータのその他の例としては、反応温度、ガス速度、及び反応器圧力がある。更に、反応器内の流動力学(すなわち、層流または乱流)は生成する炭素材料の構造に影響を与える可能性がある。上記において参照により援用された特許及び特許出願は、望ましい表面積及び構造を有する炭素材料(例えばグラフェン系炭素材料)の例、ならびに本グラフェン系炭素材料の製造システム及び製造方法を提供する。
【0044】
図2に戻って、この図は、従来の炭素材料の一覧の一部、及びASTM基準に準拠した、これらの材料をキャラクタライズするいくつかの特性を示す。本明細書に記載のグラフェン系炭素材料の特性は、
図2に示すグレードを含む、但しこれに限定されない、タイヤ用のASTM炭素分類の全てのグレードの直接の代替品となり得るように調整することができる。より詳細には、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料(官能化炭素材料及びナノ混合炭素材料を含む)は、N339~N110の全体のタイヤ用のASTM炭素分類の直接の代替品となり得るように調整することができる。例えば、マイクロ波反応器を使用して製造されるグラフェン系炭素材料の場合、マイクロ波処理パラメータを変更して、いずれの炭素同素体が生成するか、及びそれぞれの炭素同素体の生成速度に影響を与えることができ、これらは、上記グラフェン系炭素材料の特性及びそれらの材料を配合したコンパウンドの特性に影響を与える。変更して、生成するグラフェン系炭素材料の特性に影響を与えることができるマイクロ波処理パラメータのいくつかの非限定的な例としては、前駆体物質の流量、マイクロ波パラメータ(例えば、エネルギー、出力、パルス繰り返し数)、チャンバの形状、反応温度、フィラメントの有無、ならびに利用する前駆体及び供給ガスの種がある。本明細書に記載のグラフェン系炭素材料は、タイヤにおける炭素材料の直接の代替品となることに加えて、他のエラストマーコンパウンドにおける炭素充填材の直接の代替品にもなり得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、生成する炭素粒子を機能化するまたは上記粒子とナノ混合するために反応器中に添加される種は、上記炭素粒子及び/または凝集体が生成している帯域で反応器中に投入されるか、または上記炭素粒子及び/または凝集体が生成している帯域の下流で反応器中に投入される。例えば、H2Sなどの官能化ガスは、上記炭素粒子及び/または凝集体が生成している反応器の帯域に投入してもよく、Sなどの官能化ガスの構成成分が、炭素粒子が生成している際に該炭素粒子中に導入される。その場合、上記官能化ガスは、炭素粒子が生成している際に各グラファイト層中に導入されることにより、該炭素粒子の表面積、構造、及び表面活性に影響を与える場合がある。別の例において、オゾンなどの官能化ガスは、上記炭素粒子及び/または凝集体が生成している帯域の下流で反応器中に投入してもよい。その場合、上記官能化ガスは、炭素粒子及び/または凝集体に対して、それらが生成した後に影響を与えることにより、炭素粒子の表面積、構造、及び表面活性に影響を与える場合がある。オゾンの場合、これは、生成した炭素粒子及び/または凝集体の表面をエッチング及び/または孔食することによって行われ、それによりそれらの表面積を増加させる。
【0046】
いくつかの実施形態において、上記充填材に用いられる上記炭素材料は、複数の反応チャンバを備える反応器を使用して製造される。いくつかの実施形態において、1基または複数基の上記反応チャンバは熱反応チャンバであり、且つ1基または複数基の上記反応チャンバはマイクロ波プラズマ反応チャンバである。異なる実施形態において、上記複数の反応チャンバは、互いに平行に、互いに直列に、または互いに平行及び直列の組み合わせで構成してもよい。いくつかの実施形態において、1基のチャンバは特定の特性を有するグラフェン系炭素粒子を生成するように構成され、それらの粒子は第2のチャンバに移送され、第2のチャンバは上記粒子上及び/または上記粒子の周囲に異なる特性をもつグラフェン系炭素材料を生成するように構成される。他の実施形態において、第1のチャンバは特定の特性を有するグラフェン系炭素粒子を生成するように構成され、第2のチャンバは異なる特性を有するグラフェン系炭素粒子を生成するように構成され、上記2基のチャンバの出口が接続され(例えば「T字型」の接続)、その結果第1の組の粒子と第2の組の粒子が別個に生成し、次いで生成後に互いに混合される。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記充填材に用いられる上記炭素材料は、複数の反応器チャンバを備える反応器を使用して製造され、1基のチャンバを用いてナノ混合添加剤を処理する(例えば、投入されたプロセスガスまたは液体からナノ混合添加剤粒子を生成させる)。次いで、処理されたナノ混合添加剤は、プロセス物質(例えば炭化水素ガス)が分解してナノ混合グラフェン系炭素材料を生成する後続のチャンバに移送されてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態において、上記充填材に用いられる上記炭素材料は、複数の反応チャンバを備える反応器を使用して製造され、1基または複数基の反応チャンバを用いて、上記グラフェン系炭素材料、ナノ混合添加剤、及び/またはナノ混合グラフェン系炭素材料を官能化する。例えば、反応器は3基のチャンバを有していてもよい。この例における第1のチャンバはナノ混合材料粒子を生成させてもよい(例えば、シランガスを分解することによりシリカ粒子を生成する)。この例における第2のチャンバは、(例えば、上記シリカ粒子上にカップリング剤分子を添加することにより)上記ナノ混合材料粒子を官能化してもよい。この例における第3のチャンバは、(例えば、炭化水素プロセスガスを分解することにより)官能化シリカ粒子がナノ混合されたグラフェン系炭素を生成させてもよい。別の例において、前出の例の3基のチャンバシステムに第4のチャンバを追加してもよい。この場合、第4のチャンバは、(例えば、ナノ混合粒子の露出したグラフェン系炭素材料表面に第2のカップリング剤分子を添加することにより)ナノ混合グラフェン系炭素材料を更に官能化する。
【0049】
本明細書に記載の炭素材料及び/または凝集体の表面積、構造、及び表面活性を、後処理を用いて調整してもよい。いくつかの実施形態において、上記炭素材料(例えば、グラフェン系炭素材料)の他の種による官能化または他の種との混合は、反応器内のプロセスよりもむしろ後処理を用いて行われる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の炭素材料及び/または凝集体(例えば、グラフェンを含有する)を生成させ且つ収集し、後処理は行わない。他の実施形態において、本明細書に記載の炭素材料及び/または凝集体を生成させ且つ収集し、何らかの後処理を行う。後処理のいくつかの例としては、ボールミリング、粉砕、摩擦、マイクロ流動化、ジェットミリング、及び中に含まれる炭素同素体を損傷することなく粒子径を低減するためのその他の技法などの機械的処理が挙げられる。後処理のいくつかの例としては、とりわけ、せん断混合、化学的エッチング、酸化(例えばハマー法)、熱アニーリング、アニーリング中の間に元素(例えば、S及びN)を添加することによるドーピング、水蒸気処理、ろ過、及び凍結乾燥(lypolizing)などの剥離プロセスが挙げられる。後処理のいくつかの例としては、SPS(放電プラズマ焼結、すなわち直流焼結)、マイクロ波、及びUV(紫外線)などの焼結プロセスが挙げられ、これらは不活性ガス中で高圧及び高温で実施してもよい。いくつかの実施形態において、複数の後処理方法を同時にまたは逐次的に用いてもよい。いくつかの実施形態において、上記後処理により、本明細書に記載の官能化炭素ナノ粒子または凝集体が生成することとなる。
【0050】
いくつかの実施形態において、上記後処理(例えば、機械的粉砕、摩砕、または剥離による)後の炭素凝集体の表面積は、窒素ブルナウアー・エメット・テラー(BET)法(すなわち、被吸着物質として窒素を使用するBET法)または密度汎関数理論(DFT)法を用いて測定した場合、50~1500m2/g、または50~1000m2/g、または50~550m2/g、または50~450m2/g、または50~300m2/g、または100~300m2/g、または50~200m2/g、または50~150m2/g、または60~110m2/g、または50~100m2/g、または70~100m2/gである。
【0051】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の炭素材料及び/または凝集体が生成し且つ収集され、その後、更なる元素または化合物が添加され、それにより表面積、構造、及び/または表面活性が変化する。例えば、後工程において硫黄を添加して、炭素層を強制的に分離することにより、上記炭素材料及び/または凝集体の表面積を増加させることができる。例えば、硫黄を添加することにより、硫黄を含まない材料と比較して表面積が2~3倍増加する。表面積を増加させる別の方法は酸化後処理によるものである。例えば硫黄を用いる本明細書に記載の方法により、導電性の高表面積を有する粒子を生成させることができる。
【0052】
いくつかの実施形態において、更なる元素(例えば硫黄)を添加する後段での後処理後の上記炭素材料及び/または凝集体の表面積は、窒素ブルナウアー・エメット・テラー(BET)法または密度汎関数理論(DFT)法を使用して測定した場合、50~1500m2/g、または50~1000m2/g、または50~550m2/g、または50~450m2/g、または50~300m2/g、または100~300m2/g、または50~200m2/g、または50~150m2/g、または60~110m2/g、または50~100m2/g、または70~100m2/gである。
【0053】
グラフェン系炭素材料を含有するエラストマー
実施形態は、タイヤ製造における用途について記載されることとなるが、これらの実施形態は、エラストマーコンパウンドの製造に関連するまたは伴う任意の製造プロセスに利用することができる。実施形態は、エラストマー原料(またはエラストマー材料)及び充填材からなるエラストマーコンパウンドを含み、上記充填材は炭素材料(例えば、グラフェン系炭素材料、カーボンブラックなど)、シリカ、及び他の強化充填材を含む。いくつかの実施形態において、グラフェン系炭素材料は上記充填材の大部分を構成する。エラストマー材料の例としては、合成ゴム、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、標準マレーシアゴムグレードL(SMRL)、ニトリルゴム、シリコーンゴム、及びフッ素エラストマーがある。上記グラフェン系炭素材料は、少なくとも5%のグラフェン、または少なくとも10%のグラフェンなどのグラフェンを含む。いくつかの実施形態において、上記グラフェン系炭素材料は、グラフェン及び該グラフェン以外の少なくとも1種の炭素同素体を含有し、上記グラフェンとグラフェン以外の上記炭素同素体との比は、1:100~10:1、1:20~10:1、または1:10~10:1である。いくつかの実施形態において、上記更なる炭素同素体は、非晶性炭素、カーボンブラック、多層球状フラーレン、カーボンナノチューブ、またはグラファイトである。いくつかの実施形態において、上記グラフェン系炭素材料は、少なくとも5%のグラフェン、または少なくとも10%のグラフェンなどのグラフェンを含み、多層球状フラーレンを含んでいてもよい。上記グラフェン系炭素材料は、従来のカーボンブラックの代替品であり、その結果、本実施形態の充填材が含有するカーボンブラックは、従来のエラストマーコンパウンドよりも少ない。例えば、カーボンブラックは上記充填材の10%未満であってよい。実施形態はエラストマーコンパウンドの製造方法も含み、該方法においては、反応器中で炭化水素分解が行われて、グラフェン系炭素材料が生成する。いくつかの実施形態において、上記グラフェン系材料は、グラフェン、及び/または多層球状フラーレン、及び/または非晶性炭素を含有する。エラストマー原料(またはエラストマー材料)は充填材と混合され、上記グラフェン系炭素材料がエラストマーコンパウンド用の充填材の大部分を占める。
【0054】
いくつかの実施形態において、エラストマーコンパウンドには複数の種類の充填材が含まれる。例えば、炭素充填材と非炭素充填材(例えばシリカ)をエラストマーコンパウンドに混合してもよい。別の例として、複数の種類の本発明のグラフェン系炭素材料、及び従来のカーボンブラックと混合された本発明のグラフェン系炭素材料などの、複数の種類の炭素充填材を用いてもよい。いくつかの実施形態において、複数の種類の充填材を混合して、それぞれの種類の充填材の利点を得ることが有利である。例えば、(例えばDBP吸収量で測定して)高い構造の充填材は当該コンパウンドの硬化時間を短縮でき、高表面積の充填材は当該コンパウンドの引き裂き強度を向上させることができる。
【0055】
いくつかの実施形態において、本発明のグラフェン系炭素材料のグラフェンの割合は、少なくとも5%、または少なくとも10%、または少なくとも20%、または最大で100%のグラフェンであってよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、エラストマー配合物は、エラストマーと炭素材料を含有する充填材とを含有する。上記エラストマー配合物は、粘度調整剤または硫黄架橋剤を含んでいてもよい。更に、上記エラストマーコンパウンドには他の添加剤が含まれていてもよい。エラストマーに添加してもよいその他の添加剤の非限定的な例としては、TDAE油、酸化亜鉛、ステアリン酸、6PPDなどの酸化防止剤またはオゾン劣化防止剤、Nochek(登録商標)4729Aワックスなどのワックス材、TMQ、及び硫黄がある。更に、エラストマーは多くの場合、促進剤(例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルホンアミドまたはN-tert-ブチルベンゾチアゾールスルホンアミドとしても知られるTBBS)を含み、該促進剤は上記構成成分からのエラストマーコンパウンドの形成を促進する。いくつかの実施形態において、全ての上記添加剤が、1段階で、または複数の段階で上記エラストマーコンパウンドに混合される。
【0057】
いくつかの実施形態において、いくつかの添加剤は、上記の炭素官能化手法またはナノ混合手法のいずれかによって炭素材料に導入してもよい。添加剤を上記炭素材料に融合させることには、当該添加剤の上記炭素材料とのより良好な混合を達成すること、炭素粒子生成の間に上記添加剤を導入することによってより望ましい表面活性を達成すること、及び必要なプロセスステップの総数を低減することを含むいくつかの利点がある。
【0058】
上記の例に加えて、強化エラストマーコンパウンドに含まれていてもよいいくつかの他の種類の添加剤及び充填材がある。強化エラストマーコンパウンドに含まれていてもよい充填材の非限定的な例としては、分解物(例えば粉砕炭酸カルシウム及び粉炭)、希釈剤(例えば沈降炭酸カルシウム及び軟質クレー)、半強化充填材(例えば二酸化チタン及び酸化亜鉛)、ならびに強化充填材(例えば、炭素材料、シリカ、酸化マグネシウム、及び熱硬化性樹脂)がある。強化エラストマーコンパウンドに含まれていてもよい可塑剤のいくつかの非限定的な例としては、石油系可塑剤(例えば、パラフィン油、ナフテン油、または芳香族油)、ならびに非石油系可塑剤(例えばグルタル酸エステル及びアジピン酸エステル)がある。強化エラストマーコンパウンドに含まれていてもよい、エラストマーの表面またはエラストマーのバルクのいずれかにおいて潤滑性を付与する加工助剤のいくつかの非限定的な例としては、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、有機シリコーン及びワックスがある。強化エラストマーコンパウンドに含まれていてもよい劣化防止剤の非限定的な例としては、酸化防止剤(例えばアミン及びフェノール)、オゾン劣化防止剤(アミン及びキノリン)、熱安定剤、フレックス剤、光安定剤、金属イオン剤、及び非ゲル剤がある。
【0059】
本明細書に記載のグラフェン系炭素材料の表面積、構造、及び表面活性に起因して、これらの材料を含有するエラストマーでは、いくつかの実施形態において、従来のエラストマーコンパウンドよりも使用する促進剤を少なくすることができる。換言すれば、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドは、より少ない促進剤を使用するか、または促進剤(例えば、TBBS、またはDPG(ジフェニルグアニジン))の使用量を最小限に抑え、従来の炭素材料を含有するコンパウンドと同様の硬化時間を達成できる。このことは、促進剤として用いられる種々の化学品、すなわち、その使用をめぐって厳しく規制がなされるDPGの毒性を始めとする、多くの理由で有利である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンド(シリカを含有するこれらのコンパウンド及びシリカを含まないこれらのコンパウンドを包含する)中のDPGの濃度は、2PHR(ゴム100部当りの部)未満、または1PHR未満、または0.5PHR未満、または約ゼロである。
【0060】
エラストマーを加硫し、炭素粒子などの強化材と混合すると、加硫の進行をキャラクタライズすることができる。加硫の進行をキャラクタライズするためのかかる方法の1つに、レオメータに基づく測定(例えばASTM D5289-12)の使用がある。加硫が進むとエラストマーの硬さ(及び粘度)が上昇し、硬さは(例えばレオメータを用いて)イン・シチュで測定することができる。かかる測定において得られる指標のいくつかは、レオメータの最大及び最小トルク(すなわち粘度の尺度)、硬化時間、及びスコーチ時間である。最大トルクは硬化したエラストマーコンパウンドの硬さの尺度であり、最小トルクは未硬化のエラストマーコンパウンドの硬さの尺度である。使用するエラストマーの種類、全ての強化充填材の特性及び濃度、使用する促進剤の種類及び濃度などの、いくつかの因子が最大トルク及び最小トルクに寄与する場合がある。いくつかの測定において、記録されるトルクが平衡値または最大値のいずれかに達したところで試験は完了する。次いで、硬化時間が測定したトルクの示された変化によってキャラクタライズされる。例えば、50%の硬化が生じる時間(例えば、t50またはtc50)は、トルクが平衡値または最大値のいずれかの50%に達した時間から決定することができる。同様に、90%の硬化が生じる時間(例えば、t90、またはtc90)は、トルクが平衡値または最大値のいずれかの90%に達した時間から決定することができる。スコーチ時間は、加硫が開始するのに要する時間、例えば、トルクが最小トルク値の2単位上まで上昇する時間(例えば、ts2)に関連する指標である。
【0061】
グラフェン系炭素充填材を含むエラストマーの特性
本明細書に記載のグラフェン系炭素材料をコンパウンド中に配合して、低転がり抵抗(転がり抵抗は燃費に関係する)、高燃費(high mileage)、高い冬季トラクション、高い氷上トラクション、高いウェットトラクション、高燃費(high fuel economy)、高いドライハンドリング、高いドライトラクション、高いドライハンドリング、長いトレッド寿命、及び/または高い静電気放電性を含む、但しこれらに限定されない有利な特性を有するタイヤを製造することができる。いくつかの場合において、上記グラフェン系炭素材料の物理的特性(例えば、表面積、構造、表面活性、粒径)及び/または電気的特性(例えば電気伝導率)は、当該炭素材料を含有するコンパウンドの特性の向上の要因となる。例えば、上記グラフェン系炭素材料の高表面積は、該炭素材料を含有するコンパウンドの高いタンデルタ値(低温時)の要因となり、この高いタンデルタ値からは良好な氷上トラクション及びウェットトラクションを有するタイヤが予測される。次の例として、上記グラフェン系炭素材料の高い電気伝導率は、該炭素材料を含有するコンパウンド(及び該コンパウンドから製造されるタイヤ)の高い静電気放電性の要因となる。
【0062】
タイヤ用途向けに製造されるエラストマーは、一般的に、加工されるエラストマー材料の能力、エラストマーの物理的特性、及びタイヤ用途における予測される性能をキャラクタライズするために一連の試験を受ける。
【0063】
エラストマーコンパウンド中の粒子状充填材(例えば炭素強化充填材)の分散の程度は、試料の画像を一連の標準試料と比較する光学顕微鏡法を用いてキャラクタライズすることができる。かかる測定の1つが、Phillips分散評価である。この測定では、(例えば、カミソリの刃で切断することにより)試料を調製し、特定の照明条件下で撮像し、標準品の尺度と比較する。視認可能な不均一性(例えば、粒子のマクロスケールの凝集体)が多く見られるほど、分散はより悪く、Phillips分散評価はより低くなる。Phillips分散評価は10点の等級を用い、10は観測される不均一性の数が最も少ない(すなわち最良の分散)であり、評価1は、観測される不均一性の数が最も多い(すなわち最悪の分散)に相当する。
【0064】
エラストマーコンパウンドの物理的特性(例えば、デュロメータ硬さ、引張強さ、破断点伸び、及び異なる伸びにおける弾性率)も、例えばASTM D412-16及びASTM D2240-15を用いて測定することができる。加速老化(例えば熱老化)時の物理的特性の変化も、例えばASTM D573-04(2015)を用いて測定することができる。引裂強さは、例えばASTM D624-00(2012)を用いて測定することができる別の物理的特性である。エラストマーコンパウンドの物理的特性(例えば、デュロメータ硬さ、引張強さ、破断点伸び、異なる伸びにおける弾性率、及び引裂強さ)は、使用するエラストマーの種類、ならびに全ての強化充填材の特性及び濃度などの多くの因子によって影響を受ける場合がある。
【0065】
エラストマーの耐摩耗性は、多くの用途における別の重要な特性である。摩耗量は、例えばDIN 53 516及びASTM D5963-04(2015)試験規格を用いて測定することができる。これらの試験は、一般に、研磨シートを有する回転ドラムの表面に、正確に規定された力を用いてエラストマーの試料を押し付けることを含む。エラストマーコンパウンドの耐摩耗性は、使用するエラストマーの種類、ならびに全ての強化充填材の特性及び濃度を含む、多くの因子の影響を受ける場合がある。
【0066】
エラストマーの圧縮永久ひずみは、印加された力が取り除かれた後に残る永久変形の尺度である。圧縮永久ひずみは、例えば、ASTM D395-16e1、方法B試験規格を用印いて測定することができる。これらの試験は一般に、圧縮応力の長時間の印加、応力の除去、及び試料の変形の測定が含まれる。エラストマーコンパウンドの圧縮永久ひずみ特性は、使用するエラストマーの種類、ならびに全ての強化充填材の特性及び濃度を含む、多くの因子の影響を受ける場合がある。
【0067】
強化エラストマーの動的粘弾性特性は、タイヤ用途における当該エラストマーの性能を予測するために一般に用いられる。例えば、動的粘弾性特性は、ASTM D5992-96試験規格を用いて測定することができる。用いられるいくつかの一般的な指標は、種々の温度におけるG’貯蔵弾性率、タンデルタ、及びJ’’損失コンプライアンスである。それぞれの指標は異なるタイヤの性能特性に関係する。例えば、30℃及び60℃などのより高い温度におけるタンデルタは転がり抵抗の良好な予測因子である。より高いタンデルタ値はより高いヒステリシス、延いてはより高い転がり抵抗及び燃費の悪化を示す。-20℃などの低温におけるG’貯蔵弾性率は冬季トラクションの良好な予測因子であり、30℃などの高温におけるG’はドライハンドリングの良好な予測因子である。タイヤがカーブを曲がっているときにはトレッドコンパウンドがより硬くなるため、剛性がより高いコンパウンドはより高いドライハンドリングを与える。一方、ドライトラクションは、ドライハンドリングとは大きく異なる。より柔らかく、より柔軟なコンパウンドは路面により追従し、より大きな接触面積を与えるため、より良好なドライトラクションを与える。より高いタンデルタ(より高いヒステリシス)を有するコンパウンドはドライトラクションに望ましい傾向がある。30℃におけるJ’’損失コンプライアンスがより高いことも、ドライトラクションがより高いことの良好な予測因子である。氷上トラクション及びウェットトラクション性能は、-10℃(氷上)及び0°C(ウェット)の低温でのより高いタンデルタ(より高いヒステリシス)によって予測される。というのも、より低温はトラクションで見られる高周波数と等価であるからである。
【0068】
強化エラストマーをキャラクタライズするのに用いられる他の2種の動的材料特性はマリンス効果及びペイン効果である。マリンス効果及びペイン効果は、例えばASTM 5992-96(2011)を用いて測定することができ、これにより、1回目の掃引において試料の動的ひずみに対する弾性率が測定され、次いで2回目の掃引で繰り返される。マリンス効果は、1回目の掃引における0.001%のひずみでのG’貯蔵弾性率と2回目の掃引における0.001%のひずみでのG’との間の差の尺度である。マリンス効果は、1回目と2回目のひずみ掃引の間で観測される動的応力軟化に関係し、これは、1回目のひずみ掃引の間にポリマー-充填材マトリクスが引き離され、再形成する時間がないことに起因する可能性がある。ペイン効果は、1回目の掃引における0.001%のひずみでのG’貯蔵弾性率と2回目の掃引における0.05%のひずみでのG’との差の尺度である。より低いペイン効果は充填材の分散がより良好であることを示す可能性があり、これは、充填材粒子がより微細であり、ポリマー全体により均一に分布し、再凝集する可能性が低くなることによる。ペイン効果は一般的に、充填ゴムコンパウンドにおいて見られ、ガムコンパウンドでは見られない。
【0069】
(例えば、上記試験を用いて測定した)本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を配合したエラストマーコンパウンドの特性は、当該コンパウンドから製造される車両用タイヤの性能の予測因子として用いることができる。例えば、混合時のレオメータの最大トルクが高いことが、デュロメータ硬さ値が高いこと及び弾性率値が高いことと組み合わさることにより、当該グラフェン系炭素材料が望ましい強化特性を有し、該特性はタイヤのトレッドグレードの炭素に有利であることが予測される(該グラフェン系炭素材料はN234及びNl10などの、より小さな番号のASTM N分類のタイヤ充填材炭素材料を置き換えることができる)。例えばモノレール用タイヤに用いるための、高い硬さを有する、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を配合したエラストマーコンパウンドを製造することもできる。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D2240-15により測定したメジアンショアAデュロメータ硬さは、70~80、または55~80である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D412-16により測定したメジアン引張強さは、10MPa~30MPa、または15MPa~20MPa、または20MPa~35MPaである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D412-16により測定したメジアン破断点伸びは、400%~500%、または300%~400%、または200%~525%である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D412-16により測定したメジアン50%弾性率は、1.5MPa~2.5MPa、または1.0MPa~2.0MPaである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D412-16により測定したメジアン100%弾性率は、2MPa~4MPa、または1.75MPa~4MPaである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D412-16により測定したメジアン200%弾性率は、7MPa~9MPa、または5MPa~9MPaである。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D412-16により測定したメジアン300%弾性率は、13MPa~16MPa、または10MPa~17MPaである。
【0071】
上記グラフェン系炭素材料を配合したコンパウンドの特性を組み合わせることによって、上記コンパウンドから製造した自動車用タイヤの性能の予測因子となり得る。例えば、混合時のレオメータの最大トルクが高いことが、ショア硬さ値が高いこと及び弾性率値が高いことと組み合わさることにより、当該グラフェン系炭素材料が望ましい強化特性を有し、該特性はタイヤのトレッドグレードの炭素に有利であることが予測される(該グラフェン系炭素材料はN234及びNl10などの、より小さな番号のASTM N分類のタイヤ充填材炭素材料を置き換えることができる)。
【0072】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D624-00(2012)により測定したメジアン引裂強さは、60kN/m~70kN/m、または60kN/m~110kN/mである。本発明のグラフェン系材料の高表面積は、本発明のコンパウンドの引裂強さが従来の炭素充填材を用いたコンパウンドの引裂強さと同等またはそれ以上になることの要因となる場合がある。官能化グラフェン系材料が用いられる場合、この官能化によって、本発明のコンパウンドの引裂強度が、従来の炭素充填材を用いたコンパウンドの引裂強さと比較して向上する場合もある。
【0073】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D412-16により測定したメジアン摩耗量は、70mm3~100mm3または80mm3~90mm3である。本発明のグラフェン系材料の構造(例えば高アスペクト比の幾何学)、または従来のカーボンブラック材料と比較して本発明のグラフェン系材料の粒子径が小さいことは、本発明のコンパウンドの耐摩耗性が従来の炭素充填材を用いたコンパウンドの耐摩耗性と同等またはそれ以上であることの要因となる場合がある。
【0074】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドのPhillips分散評価は6~10、または8~10である。本発明のグラフェン系材料の粒子径がより小さいことは、本発明のコンパウンド中の粒子の分散が、エラストマーコンパウンド中の従来の炭素充填材の分散と同等またはより良好であることの要因となる場合がある。官能化グラフェン系材料が用いられる場合、この官能化によって、本発明のコンパウンド中の粒子の分散が、エラストマーコンパウンド中の従来の炭素充填材の分散と比較して向上する場合もある。
【0075】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D395-16e1、方法Bにより測定した圧縮永久ひずみは、20%~30%、または25%~30%である。本発明のグラフェン系材料の高表面積及び/または構造は、本発明のコンパウンドの圧縮永久ひずみが従来の炭素充填材を用いたコンパウンドの引裂圧縮永久ひずみと同等またはそれ以上であることの要因となる場合がある。官能化グラフェン系材料を用いる場合、この官能化により、従来の炭素充填材を用いたコンパウンドの圧縮永久ひずみと比較して、本発明のコンパウンドの圧縮永久ひずみも向上する場合がある。
【0076】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D257-14により測定した電気抵抗率は、1×1013Ω・cm~5×1014Ω・cm、または5×1013Ω・cm~5×l014Ω・cm、または1×l014Ω・cm~1×l015Ω・cmである。上記電気抵抗率の改善は、本発明のグラフェン系炭素充填材のより高い電気伝導率に直接起因する場合がある。
【0077】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの熱伝導率は、0.1W/(m・K)~10W/(m・K)、または0.1W/(m・K)~5W/(m・K)、または0.1W/(m・K)~1W/(m・K)、または0.1W/(m・K)~0.5W/(m・K)である。熱伝導率の向上は、本発明のグラフェン系炭素充填材の熱伝導率がより高いことに直接起因する場合がある。
【0078】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D5992-96(2011)により測定した-20℃におけるG’貯蔵弾性率は、5MPa~12MPa、または8MPa~9MPa、または9MPa未満である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D5992-96(2011)により測定した-10℃におけるタンデルタは、0.35~0.40、または0.35~1.0、または0.8~0.9、または0.8を超える。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D5992-96(2011)により測定した0℃におけるタンデルタは、0.3~0.35、または0.3~0.6、または0.5~0.6、または0.5を超える。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D5992-96(2011)により測定した30℃におけるタンデルタは、0.1~0.3、または0.15~0.25、または0.25未満である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D5992-96(2011)により測定した30℃におけるG’貯蔵弾性率は、1MPa~6MPa、または5MPa~6MPa、または1.5MPa~2.5MPa、または1.5MPaを超える。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D5992-96(2011)により測定した30℃におけるJ’’損失コンプライアンスは、4E-8 1/Pa~1E-7 1/Pa、または9E-8 1/Pa~1E-7 l/Pa、または9E-8 1/Paを超える。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D5992-96(2011)により測定した60℃におけるタンデルタは、0.1~0.3、または0.10~0.15、または0.15未満である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM D5992-96(2011)により測定した60℃におけるG’貯蔵弾性率は、1MPa~4MPa、または3MPa~4MPa、または1MPa~2MPa、または1.5MPaを超える。この段落において説明する全ての特性は炭素の構造に由来すると考えられる。
【0079】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM 5992-96(2011)により測定したマリンス効果は、1×104~1×106、または5×104~5×105である。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、ASTM 5992-96(2011)により測定したペイン効果は、1×105~1×107、または1×105~5×106である。本発明のグラフェン系材料のエネルギー(例えば熱)を放散する能力は、本発明のコンパウンドのマリンス効果及び/またはペイン効果が、従来の炭素充填材を用いたコンパウンドのマリンス効果及び/またはペイン効果と同等またはそれ以上であることの要因となる場合がある。
【0080】
本明細書に記載のグラフェン系炭素材料及びエラストマーの特性は、本発明のグラフェン系炭素材料が多くの従来の炭素タイヤ充填材の直接の代替品として使用できることを示している。いくつかの実施形態において、本発明のグラフェン系炭素材料は、多くの従来の炭素タイヤ充填材よりも補強性が高く、環境面で有害な促進剤(例えば、TBBS及びDPG)の必要性を低減することができ、及び/またはエラストマーコンパウンド中のシリカと適合性がある(例えば、「生タイヤ」での使用に対して)。
【0081】
図3は従来のラジアルタイヤ構造の断面図であり、丸で囲んだ構成要素は、本発明のグラフェン系炭素融合材料を用いることができる領域を示す。領域の例としては、サイドウォール、トレッド、ライナー、カーカスが挙げられるが、これらに限定はされない。一般的に異なる領域には異なる種類のゴムコンパウンドが用いられ、トレッドはタイヤの他の領域よりも高いグレードの材料(すなわち、Nの数字が小さく、耐摩耗性などの特性がより高い)を必要とする。異なる配合処方の本発明のエラストマーコンパウンドを、トレッド、サイドウォール、及びカーカスなどの、但しこれらに限定されない領域に用いることができる。
【0082】
本明細書に記載のグラフェン系炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドの特性により、これらのコンパウンドは、自動車、航空宇宙、他の航空機、乗用車、オフロード機器、土木作業型車両、レース用、及びタイヤを使用するその他全て/類似の産業用途のタイヤなどの、種々の産業用のタイヤに使用することができる。
【0083】
更に、グラフェン系炭素を含む本発明のエラストマーコンパウンドは、タイヤ以外の様々な用途に使用することができる。例えば、フッ素エラストマー(FKM)は、航空宇宙用途及びその他の極度の高温または低温環境向けなどの、本発明のグラフェン系炭素材料の別の可能性のある用途である。上記グラフェン系炭素は製造時に硫黄をほとんど含まないことから、FKMに用いられる従来の炭素の魅力的な代替品である。水素化ニトリルブタジエンゴム(HNBR)は別の用途の領域であり、本発明のグラフェン系炭素は、油田用途及びその他の摩耗環境向けなどの標準的なカーボンブラックの直接の代替品となり得る。本発明の強化エラストマーコンパウンドは、ドアシール、ガスケット、防振用途、エネルギー減衰用途、ホース、コンベヤーベルト、エンジンベルト、及び他の多くの用途などの用途にも使用できる。
【実施例】
【0084】
本発明の実施形態は、エラストマー材料と、充填材と、少なくとも1種の添加剤と、少なくとも1種の促進剤とを含むコンパウンドを含む。上記充填材はグラフェン系炭素材料を含む。上記グラフェン系炭素材料は、最大15の層を含むグラフェンと、メジアン径が1~50ミクロンの炭素凝集体と、被吸着物質として窒素を用いるブルナウアー・エメット・テラー(BET)法によって測定した場合に少なくとも50m2/gの上記炭素凝集体の表面積とを含み、且つシード粒子を含まない。
【0085】
上記添加剤は、例えば、シランカップリング剤、油分、酸化亜鉛材料、ステアリン酸材料、ワックス材、可塑剤、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、及び硫黄架橋剤からなる群より選択される物質であってよい。上記促進剤は、例えば、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルホンアミドを含んでいてもよい。他の実施形態において、上記促進剤は、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルホンアミド及びジフェニルグアニジンを含んでいてもよく、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルホンアミドの濃度はジフェニルグアニジンの濃度よりも高い。
【0086】
いくつかの実施形態において、上記グラフェン系炭素材料はナノ混合グラフェン系炭素材料であり、該ナノ混合グラフェン系炭素材料は、シリカ、酸化亜鉛、及び二酸化チタンからなる群より選択される種を含む。いくつかの実施形態において、上記グラフェン系炭素材料は官能化グラフェン系炭素材料であり、該官能化グラフェン系炭素材料は、H、O、S、N、Si、芳香族炭化水素、Sr、F、I、Na、K、Mg、Ca、Cl、Br、Mn、Cr、Zn、B、Ga、Rb、及びCsからなる群より選択される種を含む。
【0087】
本発明の実施形態はエラストマーコンパウンドの製造方法も含む。
図36は、ステップ3610において反応器を用意することと、ステップ3620において炭化水素プロセスガスを上記反応器に供給することとを含む実施形態のフローチャート3600である。ステップ3630は、上記反応器中の炭化水素プロセスガスの炭化水素分解を実施して、グラフェン系炭素材料を生成させることを含む。ステップ3640は、エラストマー材料を少なくとも1種の充填材、少なくとも1種の添加剤、及び少なくとも1種の促進剤と混合することを含む。上記充填材は上記グラフェン系炭素材料を含む。上記グラフェン系炭素材料は、最大15の層を含むグラフェンと、メジアン径が1~50ミクロンの炭素凝集体と、被吸着物質として窒素を用いるブルナウアー・エメット・テラー(BET)法によって測定した場合に少なくとも50m
2/gの上記炭素凝集体の表面積とを含み、且つシード粒子を含まない。上記反応器は熱反応器またはマイクロ波反応器であってよい。
【0088】
上記方法のいくつかの実施形態において、上記グラフェン系炭素材料はナノ混合グラフェン系炭素材料であり、上記反応器中での上記炭化水素分解は、上記反応器中に第2の物質を供給することを更に含む。異なる実施形態において、上記反応器中に供給される第2の物質は、Sを含む液体または気体、Siを含む液体または気体、H2ガス、H2Sガス、シランガス、アンモニアガス、芳香族炭化水素化合物、Na、K、B、Cr、Ca、Sr、Mg、Zn、Rb、Cs、Ga、及びMnを含有する粒子、気体、または液体、F、Cl、Br、I、及びその他のハロゲンを含有する粒子、気体、または液体、ならびに酸素含有反応剤、酸化性反応剤、オゾン、過酸化水素、水酸化カリウム、塩化カリウム、塩酸、硝酸、クロム酸、過マンガン酸塩、及びジアゾニウム塩からなる群より選択される。
【0089】
上記方法のいくつかの実施形態において、上記グラフェン系炭素材料は官能化されたグラフェン系炭素材料であり、上記反応器中での上記炭化水素分解は、炭化水素物質を上記反応器中に挿入することを更に含む。上記方法は、上記反応器中に第2の物質を挿入することも含み、第2の物質は、H2ガス、H2Sガス、シランガス、アンモニアガス、芳香族炭化水素化合物、Na、K、B、Cr、Ca、Sr、Mg、Zn、Ga、及びMnを含有する粒子、気体、または液体、F、Cl、Br、I、及びその他のハロゲンを含有する粒子、気体、または液体、ならびに酸素含有反応剤、酸化性反応剤、オゾン、過酸化水素、水酸化カリウム、塩化カリウム、塩酸、硝酸、クロム酸、過マンガン酸塩、及びジアゾニウム塩からなる群より選択される。
【0090】
上記方法のいくつかの実施形態において、上記炭化水素分解プロセスと、エラストマー材料と少なくとも1種の充填材、少なくとも1種の添加剤、及び少なくとも1種の促進剤とを混合するプロセスとが同一の場所で実施される。
【0091】
以下の実施例は本開示のいくつかの実施形態を表す。
実施例1:グラフェン系材料を含むエラストマーコンパウンド
本実施例において、熱反応器を用いてグラフェン系炭素粒子を生成させた。上記グラフェン系カーボン粒子を用いてエラストマーコンパウンドも製造した。
【0092】
本明細書に記載されるように、熱分解炭素(TC)材料は熱反応器中で生成させた。本実施例において、TCは多層球状フラーレン(MWSF)及び約30%のグラフェンからなる材料であった。
【0093】
図4はTC材料の分析試験結果を示し、従来のカーボンブラック材料(グレードN115、N330、650、N110、N770、及びN339)の値も比較のために示す。「ヨウ素吸着量」測定は、ASTM D1510試験規格を用いて実施し、「吸油量」(すなわち、DBP吸収量)測定は、ASTM 2414、方法Bを用いて実施した。上記TC試料はいくつかの標準物質と類似のヨウ素吸着及び吸油特性を示した。したがって、データは、本発明のグラフェン系炭素材料がゴム配合物中のカーボンブラックの実施可能な代替品であることを示している。(「BM炭素」は以下の実施例2を参照して記載していることに留意されたい。)
図5は、本実施例のTC試料の、様々な従来のカーボンブラック材料と比較したヨウ素吸着量に対する吸油量のグラフである。図から判るように、TCはN787、N762、N660に類似している。このグラフは、上記グラフェン系材料をカスタマイズすることによるなど、上記グラフェン系炭素を調整することによって得ることができた特性を備えたカーボンブラックグレード(例えば、N234、N339、N220、及びN110)の更なる例も示している。(例えば、炭素粒子の処理条件、官能化、ナノ混合、及び/またはMWSFなどの他の炭素同素体に対するグラフェンの割合の調整)。
【0094】
図6は、本実施例におけるエラストマーと炭素材料とを含有するコンパウンドの配合処方を記載する。「対照」試料は業界標準ブラック第8番(IRB#8)充填材を含有し、「タイヤブラック試料」は、本実施例のTC炭素充填材を含有していた。エラストマーはSBR1500であり、約100PHR(ゴム100部当りの部)で配合した。上記炭素材料を両方の試料において約50PHRで配合した。
図6に示すように、添加剤も添加し(例えば、酸化亜鉛、硫黄、及びステアリン酸)、且つ添加剤の種類と濃度は、2種の試料間で一定に維持した。両方の試料に関して、TBBSが促進剤であり、上記構成成分からのエラストマーコンパウンドの形成を促進した。
【0095】
図7は、本実施例の「対照」及び「タイヤブラック試料」の物理的特性を示す。試験した物理的特性としては、ASTM D412-06a及びD2240試験規格を用いた伸び、曲げ弾性率、引張強さ、及びデュロメータ硬さが挙げられる。これらの試験においては、ASTM金型Cのダンベルを20インチ/分のクロスヘッド速度で試験し、ダンベルは硬化後且つ試験前に23℃で24時間休ませ、デュロメータ値は瞬時の読み取りで得た。標準的な乗用車用タイヤの引張強さは3200~3900psiである。IRB#8は高品質のカーボンブラック材料であるため、本発明のグラフェン系炭素材料を含む「タイヤブラック試料」実施形態は、対照よりも低い引張強さを示したが、該試験試料の引張強さは、いくつかの標準的なカーボンブラック材料(例えばN774グレード)の範囲内にあることに留意されたい。
【0096】
図8は、本実施例の「対照」及び「タイヤブラック試料」の発熱の試験結果を示す。ASTM D623、方法Aに準拠し、175インチのストローク及び180cpmの速度でGoodrichフレキソメータを用いた。発熱条件の負荷は143psiであった。「タイヤブラック試料」(「タイヤブラック(1-110G)」)を「対照」試料と比較した。試験結果は、タイヤブラック(1-110G)は発熱量が従来の材料よりも少ないことを示し、温度上昇は、対照の51°Fに対して試験試料では42°Fであった。一般に、約50°Fの温度上昇によりカーボンの特性が劣化し始め、約200°Fの実温に達するとタイヤが破裂することとなる。
図8は、本発明の材料で作製したタイヤによって熱の放散がより良好になり、その結果タイヤが破裂する可能性が低くなることを示す。
【0097】
本実施例の「対照」及び「タイヤブラック試料」のDIN摩耗も試験した。上記試験は、DIN 53516試験規格を用い、40rpmの条件及び10Nの負荷で実施した。「対照」試料の摩耗量は86mm3であり、「タイヤブラック試料」に関しては131mm3であった。「対照」試料の比重は1.142であり、「タイヤブラック試料」に関しては1.148であった。IRB#8は高品質のカーボンブラック材料であるため、本発明のグラフェン系炭素材料を含む「タイヤブラック試料」実施形態は、対照よりも高い摩耗量を示したが、該試験試料の摩耗量は、いくつかの標準的なカーボンブラック材料(例えばN774グレード)の範囲内にあることに留意されたい。
【0098】
実施例2:後処理したグラフェン系材料を含むエラストマーコンパウンド
本実施例において、熱反応器を用いてグラフェン系炭素粒子を生成させ、続いて機械的粉砕により後処理した。この機械的粉砕はボールミルを用いて実施し、これにより粒子の平均径を低減し、平均粒子表面積を増加させた。上記後処理したグラフェン系炭素粒子を用いてエラストマーコンパウンドも製造した。
【0099】
上記ボールミル処理した炭素材料の表面積及び構造を定量化するために、ASTM D1510試験規格を用いてヨウ素吸着量の測定を実施し、且つASTM 2414、方法Bを用いて吸油量(DBP)の測定を実施した。ヨウ素吸着量は110.05g/kg、吸油量(DBP)は91.7cm3/100gであった。これらの結果は、後処理していないTC材料(例えば、実施例1で測定した熱分解炭素)に対して表面積及び構造が有意に増加したことを示している。
【0100】
図5を参照し直すと、本実施例の「BM炭素」試料のヨウ素吸着量に対する吸油量を様々な従来のカーボンブラック材料と比較している。「BM炭素」試料は本実施例の後処理した(ボールミル処理した)炭素を含有していた。図から判るように、BM炭素はN330、N219、及びN125に類似する。
【0101】
図9には本実施例におけるエラストマー及び炭素材料を含有するコンパウンドの配合処方が記載される。「N339カーボンブラック」試料は対照試料であり、従来のカーボンブラックN339を含有していた。両方の試料に用いたエラストマーは、70PHRのBuna 4525-0 S-SBRと30PHRのBudene 1207または1208BRの混合物であった。両方の試料に上記炭素充填材を約55PHRで配合した。添加剤もこれらのコンパウンドに配合し(例えば、TDAE油、酸化亜鉛、ステアリン酸、6PPD、Nochek 4729Aワックス、TMQ、及び硫黄)、添加剤の種類及び濃度をこれら2種の試料間で一定に維持した。両方の試料におけるTBBS及びDPGは促進剤であり、記載の構成成分からのエラストマーコンパウンドの形成を促進した。
【0102】
図10は、ASTM D5289-12に記載される方法を用いて、「N339カーボンブラック」対照試料及び本実施例における「BM炭素」試料コンパウンドの混合の間に測定したいくつかの主要パラメータを示す。これらの試験に用いた装置及び条件は、Tech Pro rheoTECH MDR、温度160℃(320°F)及び0.5°arcであった。
図10に、混合中の最大及び最小トルクの履歴、「硬化時間、t
50」(硬化の50%が進行した時間)、「硬化時間、t
90」(硬化の90%が進行した時間)、及び「スコーチ時間、t
s2」(粘度が最小トルク値の2単位上まで上昇するスコーチ時間)をまとめる。上記「BM炭素」試料では、本実施例における対照試料よりも最大トルクが低く、硬化時間がわずかに長かった。N339グレードのカーボンブラック材料は、本実施例における後処理した炭素材料よりも幾分高い構造を有することに留意されたい(
図5を参照)。「N339カーボンブラック」対照試料の硬化時間及びスコーチ時間が、「BM炭素」試料コンパウンドと比較してわずかに短いことは、N339カーボンブラックの構造がより高次であることにより説明することができる。
【0103】
図11は、本実施例における「N339カーボンブラック」対照試料及び「BM炭素」試料コンパウンドの製造時(すなわち熱老化前)の物理的特性のいくつかの例を示す。本実施例の試験は、ASTM D412-16及びASTM D2240-15に記載の方法を使用して実施した。本実施例の金型Cのダンベルを20インチ/分で試験した。「N339カーボンブラック」対照試料のショアAデュロメータ硬さ及び引張強さは、「BM炭素」試料と比較して高く、このことは、本実施例の後処理した炭素がN339カーボンブラックよりも補強性が低いことを示している。「N339カーボンブラック」対照試料のピークひずみ(伸び)ならびに異なるひずみ(すなわち、50%、100%、200%、及び300%ひずみ)における弾性率も、本実施例の「BM炭素」試料と比較して高かった。
【0104】
図12は、本実施例における「N339カーボンブラック」対照試料及び「BM炭素」試料コンパウンドの、空気中、70℃で168時間熱老化させた後の、
図11に示したものと同一の物理的特性を示す。「BM炭素」材料においては、対照試料と比較してデュロメータ硬さ、引張強さ、及び伸びの大幅な変化が生じ、このことは、「BM炭素」材料が熱老化の間に対照よりも不安定であったことを示している。
【0105】
本実施例における「N339カーボンブラック」対照試料と「BM炭素」試料コンパウンドの引裂抵抗も、ASTM D624-00(2012)試験規格を用い、20インチ/分の速度で測定した。それぞれについて3の試料を測定した。3の「BM炭素」試料の平均引裂強さは、対照試料の平均値76.96kN/m(標準偏差2.73kN/m)と比較して29.67kN/m(標準偏差2.60kN/m)であった。
【0106】
本実施例における「N339カーボンブラック」対照試料及び「BM炭素」試料コンパウンドのDIN摩耗も、DIN 53 516(2014年に廃止)及びASTM D5963-04(2015)試験規格を用い、コントロール研磨グレード184、40rpm、及び10Nの負荷条件で測定した。それぞれ3の試料を測定した。3の「BM炭素」試料の平均摩耗量は、対照試料の平均値73mm3(標準偏差2mm3)と比較して153mm3(標準偏差4mm3)であった。
【0107】
本実施例における「N339カーボンブラック」対照試料及び「BM炭素」試料コンパウンドのPhillips分散評価も測定した。これらの測定において、カミソリの刃で切断することで試験用の試料を調製し、PaxCam ARCデジタルカメラ及びHewlett Packard Laser Jetカラープリンターをインターフェースで接続したOlympus SZ60 Zoom Stereo Microscopeを用いて、30倍の倍率で写真を撮影した。次いで、上記試料の写真を、1(不良)~10(優れた)の範囲の基準をもつPhillips標準分散評価チャートと比較した。「BM炭素」試料のPhillips分散評価は、対照試料の7の値と比較して8であった。
【0108】
図13は、ASTM D5992-96(2011)を用いて測定した、本実施例における「N339カーボンブラック」対照試料及び「BM炭素」試料コンパウンドの動的粘弾性特性を示す。これらの測定は、-20℃~+70℃の温度範囲、5%のひずみ、10Hzの周波数で実施した。本実施例における対照試料は、-20℃~+70℃の温度掃引全体にわたって、より高いG’弾性率の値により示されるように、「BM炭素」試料コンパウンドよりも剛直な/硬いコンパウンドであった。この測定値はデュロメータレベルがより高いこととも相関している。上記の剛性レベルが高いことにより、雪上トラクション(-20℃でのG’)及びドライハンドリング(30℃及び60℃でのG’)などのタイヤ予測因子は、「BM炭素」試料よりも上記対照試料の方が高くなる。
図14及び
図15は、
図13と同一ではあるが、対照試料に関して正規化されたデータを示す。予測因子は、「BM炭素」試料が、ドライトラクション、氷上トラクション、及びウェットトラクション、ドライハンドリング、ならびにトレッド寿命では劣ることとなるが、従来のN339炭素材料を含む対照コンパウンドと比較して、冬季トラクション及び燃費(転がり抵抗)で優れることとなることを示している。
【0109】
本実施例における「BM炭素」試料の物理的特性(例えば、引張強さ、弾性率、引裂抵抗、デュロメータ硬さ)及び動的特性は、本実施例における後処理したグラフェン系材料は、ゴム中の充填材として使用はできるが、トレッドグレードのカーボンブラックとして、及び現在の形態で使用するには補強性が十分ではないことを示している。動的粘弾性試験はまた、「BM炭素」試料コンパウンドのペイン効果及びマリンス効果が低く、これらの効果がガムコンパウンドの上記効果と類似することも示している。
【0110】
実施例3:グラフェン系材料を含むエラストマーコンパウンド
本実施例において、グラフェン系炭素粒子は、本明細書に記載のマイクロ波反応器システムを用いて生成させた。上記マイクロ波反応器によって生成した粒子を、サイクロンフィルタ及びそれに続くバックパルスフィルタを含む気固分離システムを用いて収集した。上記サイクロンフィルタ及びバックパルスフィルタ内の温度を制御し、それにより、収集した粒子の表面に凝縮した炭化水素の量を制御した。本実施例においては、上記マイクロ波反応器を用いて、3種の異なるグラフェン系炭素材料を生成させた。すなわち、「LF CYC」は、サイクロンフィルタ中、より高温(例えば>300℃)を用いて収集した粒子であり、「LF CYC C6+」は、粒子の表面上に多環芳香族炭化水素(PAH)を意図的に凝縮させるためにより低温(例えば<300℃)を用いたサイクロンフィルタ中で収集した粒子であり、「LF FIL」は、バックパルスフィルタ中で収集した粒子であった。「LF FIL」粒子は、「LF CYC」及び「LF CYC C6+」粒子の両方よりもやや構造が高次であり、且つ粒子径が小さかった。「LF CYC C6+」粒子上に凝縮したPAHは、「LF CYC」粒子と比較して当該粒子の表面活性を変化させることを意図していた。上記グラフェン系炭素粒子を用いて、エラストマーコンパウンドも製造した。
【0111】
図16には、エラストマーと本実施例における炭素材料を含むコンパウンドの配合処方が記載される。試料Aは対照試料であり、従来のカーボンブラックN339を含有していた。試料B、C、及びDは本実施例のマイクロ波反応器によって生成した炭素を含有し、試料Bは「LF FIL」粒子を含有し、試料Cは「LF CYC」粒子を含有し、試料Dは「LP CYC C6+」粒子を含有していた。全ての試料のエラストマーはSBR 1500であり、100PHRで配合した。上記炭素充填材料は全ての試料中に約50PHRで配合した。添加剤もこれらのコンパウンド中に配合し(例えば、酸化亜鉛、硫黄、ステアリン酸)、添加剤の種類及び濃度は上記2種の試料間で一定に維持した。TBBSは全ての試料における促進剤であり、当該構成成分からのエラストマーコンパウンドの形成を促進した。
【0112】
図17には、本実施例におけるコンパウンドの混合パラメータ、及び混合から観察された事項が記載される。本実施例の4種のコンパウンド全てに対して同様の混合手順を用いた。混合速度は全てのコンパウンドに対して60rpmであった。注目すべき観察事項の1つは、本実施例のグラフェン系炭素材料(LF FIL、LF CYC、及びLF CYC C6+)は全て良好に分散したが、対照コンパウンドAにおいて使用したN339カーボンブラックよりも分散させるに時間を要したことであった。
【0113】
図18には、ASTM D5289-12に記載の方法を用いた本実施例におけるコンパウンドの混合の間に測定したいくつかの重要なパラメータが記載される。これらの試験に用いた装置及び条件は、Tech Pro rheoTECH MDR、温度160℃(320°F)及び0.5°arcであった。
図18に、混合中の最大及び最小トルクの履歴、「硬化時間、t
50」、「硬化時間、t
90」、及び「スコーチ時間、t
s2」をまとめる。それぞれLF FIL、LF CYC、及びLF CYC C6+材料を含む実験コンパウンドB、C、及びDの全てで、対照試料Aよりも最大トルク及び最小トルクが高かったが、本実施例における対照試料よりも硬化時間及びスコーチ時間が短かった。
【0114】
図19には、本実施例における対照試料A(「N339」)及び実験試料コンパウンド(B「LF FIL」、C「LF CYC」、及びD「LF CYC C6+」)の製造時(すなわち熱老化前)の物理的特性のいくつかの例を示す。本実施例における試験はASTM D412-16及びASTM D2240-15に記載の方法を用いて実施した。ショアAデュロメータ硬さは全ての実験試料で対照試料よりも高かった。引張強さは対照試料の方が実験試料よりも高かった。但し、LF FIL材料を含有する実験試料Bの引張強さは対照試料の引張強さよりもごくわずか低かった。ピークひずみ(すなわち伸び)も対照コンパウンドAと実験コンパウンドBで類似していた。但し、実験コンパウンドC及びDのピークひずみは対照コンパウンドよりも低かった。実験コンパウンドB、C、及びDの異なるひずみ(すなわち、50%、100%、200%、及び300%ひずみ)における弾性率も、対照コンパウンドAと比較して類似しているかまたは高かった。
【0115】
「LF FIL」材料を含有する実験コンパウンドBの混合における観察事項及び物理的特性(例えば、引張強さ、弾性率、引裂抵抗、デュロメータ硬さ)は、「LF FIL」材料が、本形態で、トレッドグレードカーボンブラックの代替品として使用するのに十分な補強性を有することを示唆している。しかし、「LF CYC」及び「LF CYC C6+」は、「LF FIL」材料と同様の性能は示さなかった。理論に拘束されるものではないが、「LF CYC」及び「LF CYC C6+」と比較して、「LF FIL」炭素材料の構造が高次であること及び/または粒子径が小さいことが、本実施例における「LF FIL」コンパウンドの性能の向上を説明できる可能性がある。
【0116】
実施例4:グラフェン系材料を含むエラストマーコンパウンド
本実施例においては、実施例3由来のLF FILグラフェン系炭素粒子を用いてエラストマーコンパウンドを製造した。
【0117】
図20には、エラストマーと炭素材料を含有するコンパウンドのいくつかの配合処方を記載する。このエラストマーはSBR 1500であり、約100PHR(ゴム100部当りの部)で配合される。「B LF FIL」コンパウンド(すなわち、「Bコンパウンド」)に配合される炭素充填材は実施例3由来のグラフェン系炭素材料である。他の試料(「A N339」、「E N234」、及び「F N110」)に配合される炭素充填材は、ASTM規格に準拠した異なる種類の従来の炭素材料である。上記「A N339」試料(すなわち「Aコンパウンド」)はN339炭素を含有し、上記「E N234」試料(すなわち「Eコンパウンド」)はN234炭素を含有し、「F N110」試料(すなわち「Fコンパウンド」)はN110炭素を含有する。上記炭素材料は全て約50PHRで配合される。
図20に示すように、添加剤も配合し(例えば、酸化亜鉛、硫黄、及びステアリン酸)、添加剤の種類及び濃度は4種の試料間で一定に維持した。TBBSは全ての試料における促進剤であり、構成成分からのエラストマーコンパウンドの形成を促進した。
【0118】
図21には、Aコンパウンド及びBコンパウンドの混合パラメータ、ならびに混合から観察された事項が記載される。Aコンパウンドに対するものと同様の混合手順をEコンパウンド及びFコンパウンドにも用いた。Bコンパウンドの混合パラメータも非常に類似していた。混合速度は全てのコンパウンドで60rpmであった。実施例3におけるコンパウンドと同様に、LF FIL材料は良好に分散したが、対照コンパウンドAに用いたN339カーボンブラックよりも分散させるのに時間を要した。
【0119】
図22及び23には、ASTM D5289-12に記載の方法を用いて、混合の間に測定した重要なパラメータのいくつかの例が記載される。これらの試験に用いた装置及び条件は、Tech Pro rheoTECH MDR、温度160℃(320°F)及び0.5°arcであった。レオメータのデータを
図22にまとめ、混合の間の時間に対するN・mで表したトルクを
図23に示す。最大トルクと最小トルクは、試験した全ての試料で類似していたが、LF FIL材料を含有するコンパウンドBの硬化時間及びスコーチ時間は、対照試料A、E、及びFの硬化時間よりも有意に短かった。この短いTc90硬化時間は、LF FIL(及び本明細書に記載の他のグラフェン系炭素材料)が、これらの炭素材料を含有するエラストマーコンパウンドにおいて促進剤の使用量をより少なくできる可能性があることを示している。
【0120】
図24は、ASTM D412-16及びASTM D2240-15を用いて測定した、A、B、E、及びFコンパウンドの物理的特性の例を示す。LF FIL材料を含有するコンパウンドBのショアAデュロメータ硬さは、従来のN339、N234、及びN110炭素コンパウンドを含有するコンパウンドよりも高い。上記グラフェン系炭素を含むコンパウンドBの引張強さは、従来のN339、N234、及びN110炭素コンパウンドよりもごくわずか低かったが、N234コンパウンドの標準偏差の範囲内であった。上記グラフェン系炭素を含むコンパウンドBの伸びは従来のN339及びN234炭素材料を含有するコンパウンドと類似していた。上記グラフェン系炭素を含むコンパウンドBの弾性率値は、従来のN339及びN234炭素材料を含有するコンパウンドと類似しており、従来のN110炭素コンパウンドを含有するコンパウンドより高かった。
【0121】
本実施例におけるLF FIL材料を含むコンパウンドB及び対照コンパウンドの引裂抵抗を、ASTM D624-00(2012)試験規格を用い、20インチ/分の速度で測定した。それぞれ3の試料を測定した。コンパウンドBの3の試料の平均引裂強さは、対照試料の平均値74.55kN/m~77.00kN/m(標準偏差0.44~1.74kN/m)と比較して、65.10kN/m(標準偏差0.24kN/m)であった。
【0122】
本実施例におけるLF FIL材料を含有するコンパウンドB及び対照コンパウンドのDIN摩耗を、DIN 53 516(2014年に廃止)及びASTM D5963-04(2015)試験規格を用い、コントロール研磨グレード191、40rpm、及び10Nの負荷条件で測定した。それぞれ3の試料を測定した。3のコンパウンドB試料の平均摩耗量は、対照試料の平均値78mm3~84mm3(標準偏差2.5mm3~9.9mm3)と比較して87mm3(標準偏差2.6mm3)であった。
【0123】
本実施例におけるLF FIL材料を含有するコンパウンドB及び対照コンパウンドのPhillips分散評価も測定した。これらの測定において、カミソリの刃で切断することで試験用の試料を調製し、PaxCam ARCデジタルカメラ及びHewlett Packard Laser Jetカラープリンターをインターフェースで接続したOlympus SZ60 Zoom Stereo Microscopeを用いて、30倍の倍率で写真を撮影した。次いで、上記試料の写真を、1(不良)~10(優れた)の範囲の基準をもつPhillips標準分散評価チャートと比較した。コンパウンドB試料のPhillips分散評価は、対照試料の6~7の値と比較して9であった。上記グラフェン系LF FIL炭素材料を含むコンパウンドBは、従来の炭素材料を含有するN339、N234、及びN110コンパウンドより良好な分散を示した。このことは、コンパウンドBに用いたLF FIL材料が粉末形態であり、コンパウンドBを比較する対象のコンパウンド中の従来の炭素材料(N330、N234、及びN110)のようにペレット化されていないことを考慮すると、予想外の結果であった。
【0124】
図25は、本実施例におけるLF FIL材料を含有するコンパウンドB及び対照コンパウンドの、ASTM D5992-96(2011)を用いて測定した、動的粘弾性特性を示す。これらの測定は、-20℃~+70℃Cの温度範囲で5%のひずみ、及び10Hzの周波数で実施した。
【0125】
グラフェン系炭素材料を含むコンパウンドBは、-20℃~+70℃の温度掃引全体にわたって、より高いG’弾性率の値により示されるように、対照コンパウンド(A、E、及びF)よりも剛直な/硬いコンパウンドであった。この測定値は、本実施例における対照コンパウンドと比較して、コンパウンドBのデュロメータ硬さが高いこととも相関している。上記の剛性レベルが高いことにより、雪上トラクション(-20℃でのG’)及びドライハンドリング(30℃及び60℃でのG’)などのタイヤ予測因子は、従来の炭素材料を含む対照コンパウンドよりも高い。上記予測因子は、LF FIL材料を含むコンパウンドBが、従来のN339、N234、及びN110炭素材料を含むコンパウンドよりも、雪上トラクションに関しては悪化するが、ドライハンドリングに関しては良好または同等となることも示している。
【0126】
LF FIL材料を含むコンパウンドBの低温タンデルタ値は、従来のN234及びN110炭素材料を含むコンパウンドと同様であり、このことから類似の氷上トラクション及びウェットトラクションが予測されることとなる。従来のN339炭素材料を用いたコンパウンドAは、ヒステリシスが小さく、且つ低温タンデルタ値が低く、このことからトラクションが低いことが予測される。
【0127】
グラフェン系炭素材料を含むコンパウンドBは、J’’がより低い、より剛直で硬いコンパウンドである。このことから、従来のN339、N234、及びN110炭素材料を含有するコンパウンドよりもドライトラクションが低いことが予測される。
【0128】
LF FIL材料を含むコンパウンドBのタンデルタ値は従来のN234炭素材料を含むコンパウンドと類似し、このことは類似の燃費が予測されることを示した。従来のN339炭素材料を含むコンパウンドのタンデルタ値は低く、最高の燃費が予測される。従来のN110炭素材料を含むコンパウンドのタンデルタ値は最も高く、最低の燃費が予測される。
【0129】
図26及び
図27は、
図25と同一ではあるが、N339カーボンブラック材料を含有する対照コンパウンドAに関して正規化したデータを示す。予測因子は、コンパウンドAと比較して、LF FILを含むコンパウンドB試料は、冬季トラクション、ドライトラクション、及びトレッド寿命では劣るが、氷上トラクション、ウェットトラクション、燃費、及びドライハンドリングでは同等または良好であることを示している。
【0130】
以下は、グラフェン系LF FIL炭素材料を含有するコンパウンドBと、従来のN234炭素材料を含有するコンパウンドAとの間の比較である。
【0131】
a.コンパウンドBは、より短いtc90硬化時間と共により短いts2スコーチ時間を有していた。一般に、短いts2スコーチ時間は、ゴム工場における加工に関わる問題となる場合がある。但し、ts2時間は硬化温度(この場合は160°C)での測定値であり、この温度は一般的なゴム加工温度(125°C)よりも大幅に高い。上記の短いtc90硬化時間は、より低濃度の促進剤を用いることができることを示すため、有利である。
【0132】
b.コンパウンドBの未老化での物理的特性(引張強さ、伸び、弾性率、引裂強さ)は従来のN234炭素材料を含有するコンパウンドと類似していたが、ショア硬さが4ポイント高かった。
【0133】
c.コンパウンドBのDIN摩耗量に有意な差はなかった。
d.コンパウンドBの分散はより良好であった。
【0134】
e.コンパウンドBのショア硬さはより高く、このことは、動的粘弾性試験においてG’弾性率と剛性がより高いことと一致する。上記の高い剛性、-20℃における高いG’のために、上記グラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドから製造されたタイヤの雪上トラクションは低い可能性がある。同様に、高い剛性は、ドライトラクション予測因子(J’’損失コンプライアンス)に影響を与え、これはドライトラクションが悪化する可能性を示した。コンパウンドBの転がり抵抗、氷上トラクション及びウェットトラクションの予測因子(タンデルタ値)は、従来のN234炭素材料を含有するコンパウンドと類似していた。最後に、上記グラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドのより高い剛性はドライハンドリングにとって利点であり、上記グラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドは、従来のN234炭素材料を含有するコンパウンドよりもドライハンドリングに優れると予測された。
【0135】
コンパウンドBの物理的特性(例えば、引張強さ、弾性率、引裂抵抗、デュロメータ硬さ)及び動的特性は、本実施例において用いたグラフェン系LF FIL材料が、本形態で、トレッドグレードカーボンブラックの代替品として使用するのに十分な補強性を有することを示している。本実施例においては、配合成分及び比率、ならびに混合パラメータは、上記グラフェン系炭素材料に関して最適化されてはいなかったことに留意されたい。したがって、上記グラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、剛性及びタイヤ性能予測因子などの得られた特性は、当該コンパウンドの組成及び加工条件を最適化することで改善及び/または調整できる可能性がある。
【0136】
実施例5:グラフェン系材料及びシリカ強化充填材を含むエラストマーコンパウンド
本実施例において、実施例3由来のLF FILグラフェン系炭素粒子及びシリカ強化充填材を用いてエラストマーコンパウンドを製造した。
【0137】
図28には、それぞれエラストマー、炭素充填材、シリカ充填材、ならびに種々の量の添加剤及び促進剤を含む、製造した3種のコンパウンドの配合処方が記載される。
図28の表中の値は全てPHRで表されている。全てのコンパウンドに関して、エラストマーは、約103PHRで配合したTDAE油伸展S-SBRであるBuna VSL 4526-2、及び約25PHRで配合したS-BRであるBudene 1207である。「1 N234 TBBS 1.7 DPG2.0」コンパウンド(「コンパウンド1」)に配合される炭素充填材は従来のN234炭素材料である。その他の2種のコンパウンド「2 LF FIL TBBS 1.7 DPG 2.0」(「コンパウンド2」)及び「6 LF FIL TBBS 2.0 DPG 1.5」(「コンパウンド6」)に配合される炭素充填材は実施例3のLF FILグラフェン系炭素材料であり、マイクロ波反応器中で製造された。
図28に示す3種のコンパウンド全ての炭素充填材は約15PHRで配合される。3種全てのコンパウンドは、約65PHRで配合されるシリカ充填材粒子(Ultasil 7000 GRシリカ)も含有する。
図28に示すように、添加剤も添加し(例えば、Si 69シランカップリング剤、TDAE油、酸化亜鉛硬化活性剤、ステアリン酸活性剤、Nochek 4729Aワックス、6PPDオゾン劣化防止剤、TMQ、Struktol ZB49、及び硫黄架橋剤)、4種全ての試料間で一定に維持した。但し、上記TBBS及びDPG促進剤は、3種の試料間で異なっていた。上記TBBS促進剤は、コンパウンド1及び2に関しては1.7PHR、コンパウンド6に関しては2PHRで配合した。上記DPG促進剤は、コンパウンド1及び2については2PHR、コンパウンド6については1.5PHRで配合される。3種全てのコンパウンドに関して、第1の工程の後に添加剤の一部が配合され、総PHRが約222PHRであり、第2の工程の後に第2の組の添加剤が配合され、総PHRが約234PHRであり、最終の工程の後に全ての添加剤と促進剤が配合され、最終的な総PHRが約239PHRであったように、
図28に示すとおりに、数回の工程で添加剤を添加した。本実施例において、コンパウンド6は、コンパウンド1及び2よりも少ないDPG促進剤を用いた。このことは、その使用を取り巻く厳しい規制があるDPGの毒性を含む、多くの理由で有利であった。
【0138】
図29及び30には、ASTM D5289-12に記載の方法を用いて、混合の間に測定した重要なパラメータのいくつかの例が記載される。これらの試験に用いた装置及び条件は、Tech Pro rheoTECH MDR、温度160℃(320°F)及び0.5°arcであった。レオメータのデータを
図29にまとめ、混合の間の時間に対するN・mで表したトルクを
図30に示す。最大トルクと最小トルクは、試験した全ての試料で類似していた。硬化時間及びスコーチ時間も、コンパウンド1と2の間で非常に類似しており、コンパウンド6に関してはごくわずかに長かった。コンパウンド6で用いたDPG促進剤の濃度が低かったことを考慮すると、この硬化時間の結果は注目に値する。
【0139】
図31は、ASTM D412-16及びASTM D2240-15を用いて測定した、本実施例の1、2、及び6コンパウンドの物理的特性の例を示す。コンパウンド2の引張強さがコンパウンド1及び6の引張強さよりもわずかに良好であったという1つの例外を除き、3種の試料間の物理的特性は全て類似していた。
【0140】
図32は、本実施例におけるコンパウンド1、2、及び6の、空気中、70℃で168時間熱老化後の、
図31に示したものと同一の物理的特性を示している。コンパウンド2及び6は、熱老化時に類似のデュロメータ硬さの変化を示した。熱老化時の引張強さの変化は、コンパウンド1及び6と比較してコンパウンド2がわずかに劣ったが、コンパウンド2の熱老化後の引張強さの値は、コンパウンド1の引張強さの値と非常に類似していた。熱老化時の破断点伸びの変化も、コンパウンド1及び6と比較してコンパウンド2がわずかに劣ったが、コンパウンド2の熱老化後の破断点伸びの値は、コンパウンド1の熱老化後の破断点伸びの値と非常に類似していた。熱老化時の弾性率の変化も、本実施例における3種の試料のそれぞれに関して類似していた。
【0141】
本実施例におけるコンパウンドの引裂抵抗を、ASTM D624-00(2012)試験規格を用い、20インチ/分の速度で測定した。コンパウンド1の平均引裂強さは53kN/m(標準偏差8kN/m)であり、これは53kN/m(標準偏差2kN/m)のコンパウンド2の平均引裂強さと非常に類似していた。コンパウンド6の平均引裂強さは48kN/m(標準偏差4kN/m)で、わずかに低かった。
【0142】
本実施例におけるコンパウンドの圧縮永久ひずみを、ASTM D395-16e1、方法Bを用いて測定した。これらの試験の条件は、25%のたわみを用いて70℃で72時間ボタン試験片をエージングすること、及び0.5時間の回復時間を含んでいた。3種のコンパウンド全ての平均圧縮永久ひずみは非常に類似しており、25.5%~26.4%(標準偏差1.1%~3.5%)であった。
【0143】
本実施例におけるコンパウンドのDIN摩耗を、DIN 53 516(2014年に廃止)及びASTM D5963-04(2015)試験規格を用い、コントロール研磨グレード177、ならびに40rpm及び10Nの負荷条件で測定した。それぞれ3の試料を測定した。3のコンパウンド1試料の平均摩耗量は83.3mm3(標準偏差6.8mm3)であった。2種の実験コンパウンドの摩耗量は、対照のコンパウンド1に比較してわずかに高かった。コンパウンド2の平均摩耗量は93.7mm3(標準偏差8.7mm3)であり、コンパウンド6の平均摩耗量は97.7mm3(標準偏差0.6mm3)であった。
【0144】
図33は、ASTM D5992-96(2011)を用いて測定した、本実施例におけるコンパウンドの動的粘弾性特性を示す。これらの測定は、-20℃~+70℃の温度範囲、5%のひずみ、10Hzの周波数で実施した。
図34及び
図35は、
図33と同一であるが、N234カーボンブラック材料を含有する対照コンパウンド1に関して正規化したデータを示す。本実施例における2種の実験コンパウンド2及び6は、対照コンパウンド1と比較して、同等または良好なタイヤ性能予測因子を有していたことは意義深い。
【0145】
更に、せん断モードにおいて、30℃でのひずみ掃引を用い、10Hzの周波数で、本実施例におけるコンパウンドのペイン効果及びマリンス効果を測定した。ペイン効果は、3種のコンパウンド全てについて類似しており、1.44×106~1.71×106であった。マリンス効果も、コンパウンド1(2.49×105)とコンパウンド2(2.64×105)の間では類似していた。コンパウンド6のマリンス効果はより高かった(4.48×105)。理論に拘束されるものではないが、本実施例における3種の試料の類似したペイン効果は、充填材の分散がこれら3種の試料間で類似していることを示している可能性がある。理論に拘束されるものではないが、本実施例における対照コンパウンド1と実験コンパウンド2との間の類似したマリン効果は、ポリマーと充填剤マトリクスとの間の相互作用の強さが、これら2種のコンパウンド間で類似していることを示している可能性がある。
【0146】
コンパウンド2及び6の物理的特性(例えば、引張強さ、弾性率、引裂抵抗、デュロメータ硬さ)及び動的特性は、本実施例において用いたグラフェン系LF FIL材料が、本形態で、シリカ強化充填剤と併用される場合、トレッドグレードカーボンブラック代替品として使用するのに十分な補強性を有することを示している。配合成分及び比率、ならびに混合パラメータは、本実施例におけるグラフェン系炭素材料に関して最適化されてはいなかったことに留意されたい。したがって、上記グラフェン系炭素材料を含有するコンパウンドの、剛性及びタイヤ性能予測因子などの得られた特性は、当該コンパウンドの組成及び加工条件を最適化することで改善及び/または調整できる可能性がある。
【0147】
開示された発明の実施形態を詳細に参照してきたが、それらの1または複数の例が添付の図面に示されている。各例は、本技術の限定としてではなく、本技術の説明として提示されている。実際、本明細書は本発明の特定の実施形態に関して詳細に説明されているが、当業者であれば、上記を理解した際には、これらの実施形態に対する代替物、それらの変化形、及びそれらの均等物を容易に想起し得ることを理解されたい。例えば、一実施形態の一部として例示または説明される特徴を別の実施形態と共に用いて、更に別の実施形態を生み出し得る。したがって、本主題は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内の全てのかかる改変及び変化形を包含することが意図される。本発明に対するこれら及び他の改変及び変化形は、添付の特許請求の範囲により詳細に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって実施され得る。更に、当業者であれば、上述の説明が単に例示に過ぎず、本発明を限定することを意図しないことを理解しよう。