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特許7042285光学応用のための装置、分光計システム、及び、光学応用のための装置を製造するための方法
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  • 特許-光学応用のための装置、分光計システム、及び、光学応用のための装置を製造するための方法 図1A
  • 特許-光学応用のための装置、分光計システム、及び、光学応用のための装置を製造するための方法 図1B
  • 特許-光学応用のための装置、分光計システム、及び、光学応用のための装置を製造するための方法 図2
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  • 特許-光学応用のための装置、分光計システム、及び、光学応用のための装置を製造するための方法 図4
  • 特許-光学応用のための装置、分光計システム、及び、光学応用のための装置を製造するための方法 図5a)
  • 特許-光学応用のための装置、分光計システム、及び、光学応用のための装置を製造するための方法 図5b)
  • 特許-光学応用のための装置、分光計システム、及び、光学応用のための装置を製造するための方法 図6
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  • 特許-光学応用のための装置、分光計システム、及び、光学応用のための装置を製造するための方法 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】光学応用のための装置、分光計システム、及び、光学応用のための装置を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20220317BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20220317BHJP
   G01J 3/02 20060101ALI20220317BHJP
   G01J 3/18 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
G02B6/02 411
G02B6/42
G02B6/02 416
G01J3/02 S
G01J3/18
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019565980
(86)(22)【出願日】2018-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 EP2018054170
(87)【国際公開番号】W WO2018153868
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】102017202760.6
(32)【優先日】2017-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519302763
【氏名又は名称】ファイセンス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルターマン,クリスティアン
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06321001(US,B1)
【文献】特開平06-310751(JP,A)
【文献】特開平04-298703(JP,A)
【文献】米国特許第06016375(US,A)
【文献】特表2010-522330(JP,A)
【文献】特表2001-516468(JP,A)
【文献】特開2010-192929(JP,A)
【文献】特開平07-140311(JP,A)
【文献】特開2011-200341(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0014529(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02-6/036
6/10
6/12-6/14
6/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学用途の装置であって、
光伝搬軸に沿って光を導くように構成され、前記光伝搬軸に沿って第1屈折率を有する光学導波路であって、前記第1屈折率は第2屈折率を有する複数の部分によって中断され、各部分は前記光伝搬軸に実質的に垂直な長軸と、前記光伝搬軸及び前記長軸に実質的に垂直な短軸とを有する、光学導波路と、
前記光学導波路の側部に配置された受信器ユニットと、を有し、
前記受信器ユニットは、散乱面にある散乱方向において前記複数の部分から散乱する光を受信するように配置されており
前記各部分は、楕円体状の形状を有し、
前記楕円体の長軸は、前記光学導波路内を導かれる光の波長の2倍よりも長く、前記楕円体の短軸は、前記光の前記波長のオーダーにあるかそれよりも小さい、
装置。
【請求項2】
光学用途のための装置であって、
光伝搬軸に沿って光を導くように構成され、前記光伝搬軸に沿って第1屈折率を有する光学導波路であって、前記第1屈折率は第2屈折率を有する複数の部分によって中断され、各部分は前記光伝搬軸に実質的に垂直な長軸と、前記光伝搬軸及び前記長軸に実質的に垂直な短軸とを有する、光学伝搬路と、
前記光学導波路の側部に配置された送信器ユニットと、を有し、
前記送信器ユニットは、散乱面にある散乱方向において前記複数の部分へ光を送信するように配置されており、
前記各部分は、楕円体状の形状を有し、
前記楕円体の長軸は、前記光学導波路内を導かれる光の波長の2倍よりも長く、前記楕円体の短軸は、前記光の前記波長のオーダーにあるかそれよりも小さく、
前記散乱方向は、前記光伝搬軸に対する散乱角度を有する、
装置。
【請求項3】
前記受信器ユニットは、前記散乱方向において前記複数の部分から散乱する光を検出するために一列に配置された検出器要素を有する、
請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記検出器要素の列は、前記光伝搬軸に対して実質的に平行であり、前記主散乱面にある、
請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記複数の部分は、前記光伝搬軸の方向に格子を形成し、
前記部分の間の距離は、前記複数の部分で散乱する光の干渉によって、前記主散乱面においてレンズ機能が得られるように選択されるか、又は
前記光伝搬軸は、屈曲される前記光伝搬軸に沿って配置される前記複数の部分で散乱する光の干渉によって、前記主散乱面においてレンズ機能が得られるように屈曲される、
請求項1乃至4いずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記レンズ機能は、前記複数の部分で散乱する光を集光する集光レンズに対応する、
請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記光学導波路は、回折光を提供するように、前記光伝搬軸に沿った光学ブラッグ格子をさらに有する、
請求項1乃至いずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記複数の部分は、前記光伝搬軸の伝搬方向に伝搬する光の主散乱面での前記散乱方向が、前記伝搬方向の反対方向に伝搬する光の主散乱面での他の散乱方向と異なるように適合されている、
請求項1乃至いずれか1項記載の装置。
【請求項9】
光源及び請求項3乃至9いずれか1項記載の装置を有する分光計システムであって、
前記光源の光は、前記光を前記光伝搬軸に沿って導くように、入力ポートにおいて前記光学導波路に結合されている、
分光計システム。
【請求項10】
前記光伝搬軸に沿って伝搬する光を受信するように、前記光学導波路の出力ポートに結合された光学ブラッグ格子センサをさらに有する、
請求項記載の分光計システム。
【請求項11】
前記光学導波路は、相互に実質的に平行な少なくとも2つの光伝搬軸を有する、
請求項又は10記載の分光計システム。
【請求項12】
前記分光計システムは、前記光伝搬軸の方向において順次配置される、請求項3乃至9いずれか1項記載の少なくとも2つの装置を有する、
請求項乃至11いずれか1項記載の分光計システム。
【請求項13】
光学用の装置を製造するための方法であって、
光伝搬軸に沿って光を導くように構成され、前記光伝搬軸に沿って第1屈折率を有する光学導波路を提供するステップと、
第2屈折率を有する複数の部分を生成するために、前記光伝搬軸上に短レーザパルスを集光するステップであって、各部分は光伝搬軸に対して実質的に垂直な長軸と、前記光伝搬軸及び前記長軸に対して実質的に垂直な短軸とを有する、ステップと、
光学導波路の側部に受信器ユニット又は送信器ユニットを配置するステップであって、散乱面にある散乱方向において、前記複数の部分からの光又は前記複数の部分への光の受信又は送信を可能にする、ステップと、
を含み、
前記各部分は、楕円体状の形状を有し、
前記楕円体の長軸は、前記光学導波路内を導かれる光の波長の2倍よりも長く、前記楕円体の短軸は、前記光の前記波長のオーダーにあるかそれよりも小さい、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用途のための装置、分光計システム、及び、光学用途のための装置を製造するための方法に関し、特に、第2屈折率を有する複数の部分によって中断される光伝搬軸に沿った第1の屈折率を有する光学導波路を含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバブラッグ格子(FBG)などの光学ブラッグ格子はよく知られている。FBGは、光の選択された波長を反射し、他の波長を透過する光ファイバ内の分散ブラッグ反射器の一種である。ブラッグ格子は、選択された干渉により波長固有の誘電体ミラーを生成するファイバコアの屈折率の周期的変動によって構成される。したがって、FBGは特定の波長を中断し/反射する光学フィルターとして機能する。ファイバ内に形成されたブラッグ格子は、通常、1ミリメートルから数センチメートルの範囲の長さを持つファイバの小さなセグメントを占有する。
【0003】
光学ブラッグ格子は、導波路から特定の波長の光を分離するために使用されることもできる。かかる格子では、導波路、例えば光ファイバの、光軸に沿った屈折率の変化は、ファイバの幅にわたって均一ではないが、屈折率の変化は光軸とそれに垂直な軸との間の角度にある。したがって、かかる格子は、傾斜ファイバブラッグ格子と呼ばれる。傾斜角は、ブラッグ条件を満たす波長の光が導波路から逃げることができるように、十分に大きく選択されなければならない。さらに、反射は偏光依存性であり、その結果、格子面で直線偏光された光のみが反射される。したがって、かかる格子は波長及び偏光選択性がある。
【0004】
格子上での光の分散散乱も知られているが、導波路を通過する光の減衰につながるので、通常は不所望なものである。回折散乱による特に強い損失は、いずれもガラスの損傷閾値を超えて動作する高輝度紫外レーザ又はフェムト秒レーザによって書き込まれるタイプII格子について観察されることができる。例えば、フェムト秒レーザは、約0.1μJ以上のパルスエネルギーと約100fsのパルス持続時間で、1点ずつ格子を書き込むために用いられることがある。発明者は、格子の散乱をより詳細に研究することにより、必要に応じて格子を設計することで通常は不所望な散乱効果を光学用途に使用でき、それにより光学装置の簡単化と小型化を実現できるとの結論に達した。
【発明の概要】
【0005】
従って、導波路を用いた光学応用のための新規な装置、及び、その製造のための方法を提供することは、目的である。
【0006】
一実施態様によれば、光学応用のための装置は、光伝搬軸に沿って光を導くように構成され、第2屈折率を有する複数の部分によって中断される光伝搬軸に沿って第1屈折率を有する光学導波路を備え、各部分は、光伝搬軸に実質的に垂直な長軸と、光伝搬軸及び長軸に実質的に垂直な短軸とを有する。さらに、装置は、光学導波路の側部に配置される受信器ユニットを有する。受信器ユニットは、長軸と光伝搬軸とによって画定される主散乱面にある散乱方向において複数の部分からの散乱光を受信するように配置されている。したがって、光学導波路から光を効率的に分離でき、導波路の光伝搬軸に対する特定の角度において導波路の側部で光を受信できる装置が提供されることができる。
【0007】
他の実施態様によれば、光学応用のための装置は、光伝搬軸に沿って光を導くように構成され、第2屈折率を有する複数の部分によって中断される光伝搬軸に沿って第1屈折率を有する光学導波路を有し、各部分は、光伝搬軸に実質的に垂直な長軸と、光伝搬軸及び長軸に実質的に垂直な短軸とを有する。さらに、装置は、光学導波路の側部に配置される送信器ユニットを有する。送信器ユニットは、長軸及び光伝搬軸によって画定される主散乱面にある散乱方向において複数の部分への光を送信するように配置されており、散乱方向は、光伝搬軸に対する散乱角度を有する。したがって、導波路の光伝搬軸に対する特定の角度で、光を導波路上に、特に第2屈折率を有する複数の部分を含むセグメント上に送信することにより、光学導波路に光を結合することができる装置が提供されることができる。
【0008】
有利な実施例によれば、装置の受信器ユニットは、複数の部分から散乱方向に散乱する光を検出するために、一列に配列された検出器要素を含む検出器であってもよい。特に、異なる波長の光は、異なる散乱方向を有することがあり、したがって導波路の光伝搬軸に対して異なる角度を有することがあるので、異なる検出器要素が異なる波長の光を検出する。したがって、光を検出する検出器要素に依存して波長が特定されることができる。
【0009】
別の有利な実施形態において、検出器要素の列は、光伝搬軸に対して実質的に平行であり、主散乱面にある。したがって、光学導波路の複数の散乱部分からの散乱光は、光学導波路外で、高効率で検出されることができる。
【0010】
他の有利な実施形態によれば、複数の部分は、光伝搬軸の方向に回折格子を形成する。一実施例では、部分間の距離は、複数の部分で散乱する光の干渉によって、主散乱面においてレンズ機能が得られるように選択される。代替的又は付加的な実施例では、導波路の光伝搬軸は屈曲され、その結果、屈曲される光伝搬軸に沿って配列される複数の部分で散乱する光の干渉によって、主散乱面においてレンズ機能が得られる。
【0011】
したがって、格子を形成する複数の部分を有するセグメントは周期的に配置される部分に限られず、部分間の距離は、部分での散乱又は回折が光学レンズ機能に相応する干渉効果につながるような方法で、選択され、設計されることができる。
【0012】
一つの実施例において、レンズ機能は、複数の部分で散乱する光を受信ユニットに集光する集光レンズ、又は、複数の部分で散乱することにより送信ユニットからの光を光学導波路に集光する集光レンズに対応する。したがって、分光計などの光学用途の装置をシンプルにするために、追加の光学系又は導波部外部の光学系は省かれることができる。
【0013】
他の有利な実施例によれば、第2屈折率を有する光学導波路の各部分は、楕円体状の形状を有し、楕円体の長軸は、光学導波路内を導かれる光の波長の2倍よりも長く、楕円体の短軸は、その光の波長のオーダーにあるかそれよりも小さい。したがって、短軸と光伝搬軸とで画定される副散乱面よりも長軸と光伝搬軸とで画定される主散乱面ではるかに多くの光が散乱し、例えば、主散乱面で光が検出されるときの効率が向上する。
【0014】
他の有利な実施形態によれば、光学導波路は、回折光を提供するように、光伝搬軸に沿った光学ブラッグ格子をさらに有する。したがって、(通常の)ブラッグ格子は、例えば光伝搬軸の方向において後方反射される特定の波長の光である、回折基準光を提供する導波路に含まれることができる。
【0015】
別の有利な実施形態によれば、複数の部分は、光伝搬軸の一の伝搬方向に伝搬する光の主散乱面での散乱方向が、伝搬方向の反対方向に伝搬する光の主散乱面での他の散乱方向と異なるように適合されている。したがって、異なる、例えば反対の、伝搬方向の光は、異なる散乱方向に分離され、その結果、異なる伝搬方向からの光を導波路の外部で空間的に分離するのが簡単になる。
【0016】
他の実施態様によれば、光源と上述の装置とを含む分光計システムが提供され、光源の光は、光伝搬軸に沿って光を導くように、導波路の前面の入力ポートで光学導波路に結合される。したがって、小さいサイズ有する分光計が実現されることができる。
【0017】
他の有利な実施例によれば、分光計システムは、光伝搬軸に沿って伝搬する光を受光するように、光学導波路の出力ポートに結合された光学ブラッグ格子センサをさらに備える。したがって、ブラッグ格子センサに影響される光は、シンプルで小型の分光計システムによって容易に分析されることができる。
【0018】
別の有利な実施形態によれば、光学導波路は、相互に実質的に平行な少なくとも2つの光伝搬軸を有する。したがって、光学導波路に結合される光は、分析されることができ、また、その光伝搬軸に応じて異なって処理されることができる。
【0019】
他の有利な実施例によれば、分光計システムは、光伝搬軸の方向に順次配置される(arranged one after the other)上述の装置の少なくとも2つを含む。したがって、光学導波路に結合する光は、光学導波路を通って伝搬し、第1装置及び後続の第2装置を通過するとき、分析され、又は順次処理されることができる。
【0020】
他の実施態様によれば、光用途の装置を製造するための方法は、光を光伝搬軸に沿って導くように構成され、光伝搬軸に沿って第1屈折率を有する光学導波路を提供するステップを含む。方法はさらに、第2屈折率を有する複数の部分を生成するために、光伝搬軸上に短レーザパルスを集光するステップであって、各部分は光伝搬軸に対して実質的に垂直な長軸と、光伝搬軸及記長軸に対して実質的に垂直な短軸とを有する、ステップを含む。したがって、方法は、長軸及び光伝搬軸によって画定される主散乱面にある散乱方向において、複数の部分からの光の受信を可能にするように、光学導波路の側部に受信器ユニットを配置するステップを含む。あるいは、方法は、長軸及び光伝搬軸によって画定される主散乱面にある散乱方向において、複数の部分への光の送信を可能にするように、光学導波路の側部に送信器ユニットを配置するステップを含む。したがって、光学導波路からの/への光の効率的な分離/結合(couple out/in)を可能にし、光学導波路の光伝搬軸に対する特定の角度において、導波路の側部での/からの光の受信/送信を可能にする装置が提供される。
【0021】
さらに有利な本発明の特徴は、請求項において開示される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】本発明の実施形態による光学用途の装置の要素を示す図である。
図1B】本発明の別の実施形態による光学用途の装置の要素を示す図である。
図2図1A及び図1Bの装置に使用可能な例示的導波路の横断面を示す図である。
図3】本発明の別の実施形態による光学集光機能を有する特定の装置の要素を示す図である。
図4】本発明の別の実施形態による導波路を屈曲することによる光学集光機能を有する特定の装置の要素を示す図である。
図5】一実施形態及び従来技術による分光計の性能を定性的に示す図である。
図6】一方の伝搬方向の光に対する光学集光機能を有する特定の装置の要素を示す図である。
図7】異なる波長に対する図6の装置の効果を定性的に示す図である。
図8】2つの光伝搬軸を有する特定の装置の要素を示す図である。
図9】一実施形態による分光計システムを示す図である。
図10】別の実施形態によるマルチコア質問器システムを示す図である。
図11】幾何光学の原理を使用した球面波によるシミュレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
好ましい実施例は、図面を参照して説明される。
【0024】
以下の説明は例を含むだけであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。以下では、類似の又は同一の参照符号は、類似の又は同一の要素又は操作を示す。
【0025】
実施態様は、概ね、分光計又は光学的質問法等の光学用途に関し、光伝搬軸に沿って光を導くように構成され、光学導波路のセグメントにわたって分布する第2屈折率を有する複数の散乱部分によって中断される(interrupted)光伝搬軸に沿って第1屈折率を有する光学導波路を有する。各散乱部分は、光伝搬軸と実質的に垂直な長軸と、光伝搬軸及び長軸と実質的に垂直な短軸とを有する。受信器ユニット又は送信器ユニットは、光学導波路の側部に配置され、長軸は実質的に垂直、すなわち受信器ユニット又は送信器ユニットが配置されるこの側部の平面に垂直である。
【0026】
受信器ユニットは、長軸及び光伝搬軸によって画定される主散乱面にある散乱方向において複数の部分からの散乱光を受信するように配置されている。代替的な送信器の場合では、送信器ユニットは、長軸及び光伝搬軸によって画定される主散乱面にある散乱方向において複数の部分へ光を送信するように配置されている。
【0027】
即ち、実施態様では、屈折率が変化する部分を有する格子状構造が導波路のセグメントに導入される。部分は、その間に別の屈折率を有する材料を順次配置され、したがって、光は、部分の屈折率と光学導波路の光導波構造の屈折率との間の屈折率の差により散乱し、散乱光は、光学導波路の光伝搬軸に対して特定の角度で強めあうように(constructively)干渉する。したがって、光は、散乱部分において導波路から分離され、同様にそれらの部分において導波路に結合される。
【0028】
図1Aは、本発明の実施形態による装置100の要素を示す図であり、例えば、第1層110、第2層120、及び第3層115、並びに、例えば検出器などの受信器ユニット140、からなる光学導波路を含む。受信器ユニット140は、検出器に限定されず、他の例では、受信器ユニット140は、光を受信してさらに導く、他の又は同一の導波路の別の複数の部分であってもよい。
【0029】
例えば、ガラスファイバ、ポリマーファイバ等の光学ファイバ、又は導波路を有するバルクガラス基板、導波路構造を有するポリマーなどの光学導波路のいくつかの例が知られているが、本発明は特定の導波路に限定されない。例えば、光学導波路は、屈折率が異なる3つの誘電体層を有する誘電スラップ導波路であることができ、屈折率は、第2(中間)誘電体層内で光を導くように選択される。以下において純粋に例示的な例として言及される一般的な例は、層120がクラッド層110、115によって囲まれたコアと見なされる光ファイバである。したがって、実質的に円筒形の光ファイバの例では、層110と115は同じクラッドに属する同じものである。例示的な光導波炉としてのファイバの好ましい実施例は、図2に関して後でより詳細に説明される。
【0030】
以下の議論を簡単にするために光ファイバを構成すると考えられる図1Aの光学導波路110、115、120は、光伝搬軸に沿って光を導くように構成され、光伝搬軸は、第1屈折率を有するコア120と、異なる屈折率を有し、コアを同軸的に取り囲むクラッド110(115に同じ)とによって達成される。コア120は通常、光強度の最大部分を導き、したがって光ファイバのコアの中心が光伝播軸の方向を基本的に特定すると考えられる。
【0031】
装置100において、コア120は、第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する複数の部分によって数回中断され、その部分で光が回折/散乱する。部分130は、例えば、部分から散乱し強めあうように干渉する光の特定の光学機能を達成するために、互いにすべて同じ距離を有するように周期的に配置されるか、又は部分間の距離は変化する。本明細書において光という用語が言及される場合、光は可視光に限定されず、本明細書に記載される技術は、紫外(UV)及び赤外(IR)光にも適用可能である。
【0032】
散乱部分130は、光伝搬軸に実質的に垂直な長軸と、光伝搬軸及び長軸に実質的に垂直な短軸とを有する。例えば、散乱部130は、楕円体の形状を有することができる。散乱部分の長軸と短軸の寸法の違いは、散乱光の強度に大きな違いをもたらす。つまり、短軸と光伝搬によって定義される副散乱面にある散乱方向よりも、長軸と光伝搬軸によって定義される主散乱面にある散乱方向に、導波路からより多くの光が放出される。
【0033】
たとえば、図1Aの主散乱面で光学導波路から強い散乱/回折を行うには、長軸が光学導波路で導かれる光の波長の2倍より大きく、短軸が光の波長のオーダーにあるか(in the order of)、光の波長よりより小さい。好ましくは、部分間の距離及び部分の寸法は、ほとんどの光が、光伝搬軸から30度と150度との間の角度を有する主散乱面の光散乱方向に放射されるように選択される。例えば、光散乱方向は、回折次数(a diffraction order)、好ましくは一次回折次数と重複してもよい。
【0034】
図1Aでは、装置100は、この例では検出器として実現された受信器ユニット140を備えている。この検出器は、散乱部分130から散乱する光を検出する。散乱光を検出するために、受信器ユニットは、散乱光の大部分を受信するように、すなわち主散乱面の側で受信するように、光学導波路の側に配置される。長軸は、受信器ユニットが配置される側の平面に実質的に垂直、すなわち垂線である。
【0035】
図1Aに見られるように、主散乱面(ここでは紙面)内の3つの異なる光散乱方向が異なる波長について示す;破線は青色光を表し、点線は緑色光を表し、実線は赤色光を表す。
【0036】
一実施形態では、装置100の検出器140は、(複数の)散乱方向に複数の部分から散乱する光を検出するために一列に配置された検出器要素を含む。検出器要素は、後述する図3の検出器340に示されている。例えば、図1Aでは、図1Aの検出器の右側の検出器要素が青色光を検出し、中央の検出器要素が緑色光を検出し、左側の検出器要素が赤色光を検出することができる。検出器素子を有する検出器の例は、CCDチップ、線形ダイオードアレイ又は類似物である。
【0037】
図1Aの例では、検出器要素の列は、光伝搬軸に対して実質的に平行であり、主散乱面にある。特に、光の伝播方向が紙面の左側から右側に考慮される場合、検出器140はファイバコアから右側に配置される。
【0038】
検出器は、同じく、同一平面内のファイバコア(矢印で示される光伝搬方向で見た場合)から左側にも配置できることを理解されたい。ただし、部分130で散乱及び回折された光は、円錐の対称軸がファイバコアである対称円錐形状で放出されるが、検出器を(紙面の)上又は下に配置すると不利になる場合がある。そうすると、短軸及び光伝搬軸によって画定される副散乱面において散乱する光しか受信できないからである。
【0039】
図1Bでは、装置100と同じ光学導波路を含むが、受信器ユニット140が送信器ユニット150に置き換えられているという違いを有する装置100’が示される。前述したように、光学導波路110、120は、ファイバコア120とクラッド110を有する光ファイバとすることができる。部分130は、また光を散乱及び回折するが、図1Bでは、光ファイバのコア120に結合される。光が導波路の外側の送信器ユニットから来るからである。単一の波長は、破線によって示されており、送信器ユニット150の一例であるレーザによって放出される。
【0040】
送信器ユニット150も、光導波路の側部に配置される。特に、送信器ユニット150は、光学導波路の外部からの光を、長軸と光伝搬軸とで画定される主散乱面にある散乱方向における複数の部分に送信するように配置される。図1Bに見られるように、散乱方向は、光伝搬軸に関して約60°の散乱角を有する。
【0041】
装置100及び100’において、光は、散乱部分によって導かれる屈折率変化で局所的に散乱する。幾何光学によれば、散乱部分によって生成された球面波の重ね合わせにより、光の伝搬方向に関して特定の角度において方向性及び波長依存性の強めあう干渉が観測される場合がある(図11参照)。基本的に格子の「線」に対応する部分間の距離を操作することにより、干渉の光学特性を設計できる。
【0042】
部分130は格子の線と同様に作用するが、部分は線ではなく、楕円体などの楕円構造であることが好ましく、楕円体は、楕円の長軸と光伝搬軸の平面でより顕著な散乱をもたらす。異なる偏光状態に対しては、迷光の強度の変化が観察される場合があるのに対して、球状部分に対しては、散乱は偏光に依存しないように見える。興味深いことに、上記の効果は、図1A及び1Bに示すように、特定の散乱方向に光を結合又は分離するために使用できる。
【0043】
図2は、コア220及びクラッド210を含む例示的な導波路200の断面図を示す。上記で説明したように、光伝搬方向において、例えば1.460の第1の屈折率を有するコアは、例えば1.462の第2の屈折率を有する部分によって中断される。図2に示される断面は、コアを中断する部分230を示し、即ち、コアに伝搬する光が屈折率の変化を経験するようにコアに配置され、特に図中の水平軸に対応する短軸においてよりも、図中の垂直軸に対応する長軸においてより大きな効果が生じる。
【0044】
図2では、複数の部分の1つである部分230は、3次元で楕円体に近似する形状を有し(楕円体は2次元で図2に示されている)、好ましくは楕円体の長軸は光学導波路内を導かれる光の波長の2倍より大きく、楕円体の短軸はその光の波長のオーダー(即ち、1×波長+/-0.5波長)か、又は、その光の波長よりも小さい。1つの好ましい例によれば、長軸は波長の3倍以上であり得、短軸は波長の1.5倍以下であり得る。
【0045】
図3では、装置100及び100’と基本的に同じ光学導波路を含む装置300が示されているが、複数の部分を含む導波路のセグメントは、光学機能を組み込むように特別に設計されている。より詳細には、部分間の距離は、矢印で示される左側の導波路に入射し、光伝搬軸に沿って伝搬する光は散乱点において散乱するように選択され、従って特定の波長の光は、導波路の側部の実際の位置に、好ましくは検出器340等の検出器に、集光される。
【0046】
異なる波長は、異なるように散乱し、異なる散乱方向(及び散乱角度)を有し、それらは強め合うように干渉し、異なる波長が検出器340の異なる部分に集光されることができる。特に、青色光を表す実線は検出器の右側に集光し、緑色光を表す破線は検出器の中央に集光し、赤色光を表す点線は検出器の左側に集光する。
【0047】
図3の実施例では、複数の部分は光伝搬軸の方向において導波路のコア120に回折格子を形成する。特に、本実施形態では、格子は、光を集光することによって結像光学系(imaging optics)としても作用する。確かに、特定の距離の選択によって複数の部分にコード化された光学機能は、集束レンズ機能に限定されない。
【0048】
換言すれば、部分間の距離は、主散乱面で複数の部分330で散乱した光の干渉によってレンズ機能が得られるように選択され、一例では、レンズ機能は、複数の部分で散乱する光を集光する集光レンズに相応する。したがって、検出器上での光の直接結像が可能である。格子部分同士の間の特定の距離によって非球面結像機能を導波路に組み込むことができるからである。
【0049】
図3のような導波路を製造するときに、部分間の特定の距離を選択する代わりに、散乱部分が周期的に配置された光ファイバを曲げることにより、同様の効果を達成し得る。このことは基本的に、光伝搬軸を曲げることに相当し、屈曲される光伝搬軸に沿って配置された複数の部分で散乱する光の干渉によって主散乱面においてレンズ機能が得られる。集光レンズの光学機能を提供する為の一例を図4に示す。
【0050】
図4では、装置400は、屈曲導波路(a bend waveguide)を備え、湾曲(the curvature)は、図3と同様に強めあう干渉をもたらし、異なる波長を検出器に集光する効果を得る。
【0051】
一実施形態では、装置300及び400は、特別なスリット、格子又は結像光学系が必要ない分光計として使用され得る。 導波路及びその光導波セクションがスリットとして作用し、複数の散乱部分が回折格子として作用するからである。このことは、分光計の構造を大幅に簡単化する(simplifies)。
【0052】
一実施形態によれば、光源と、上述の装置100、100’、300、又は400のうちの1つと、を備える分光計システムが提供され、光源の光は、光伝搬軸に沿って光を導くように、入力ポートで光学導波路に結合される。光源は、好ましくは、スーパールミネッセントダイオード(S-LED)又は、ハロゲンランプ若しくはタングステンランプからの白色光などの広い波長範囲の光源であり得る。
【0053】
上記の結果として、分光計を得るためには、2つの部品だけ、すなわち上記の導波路と検出器を、製造し、相互配置するだけでよい。さらに重要なことに、分光計の、分析されるべき焦点距離、サイズ、波長範囲を自由に選択でき、複雑な集光光学系と高価なライン格子を必要とする従来技術よりもはるかにシンプルで小型の分光計になる。
【0054】
先行技術における集光光学系とライン格子との間の位置関係は決定的(crucial)であるため、ここで提案される、集光光学系が格子に組み込まれている分光計は、よりリジットであり、ミスアライメントはほとんど起こらない。波長の大きなスペクトル分離及び導波路内の光学部品の統合の可能性により、本明細書に記載の分光計は、同じ特性を有するが、光学系が自由空間に配置された既存の分光計よりも5倍以上小さくなり得る。さらに、本明細書に記載の分光計は、光伝搬軸に沿って多数の部分(10000を超える)を有することができ、それによりスペクトル分解能を容易に高めることができる。
【0055】
図5は、一実施形態及び従来技術による分光計の性能を定性的に示す。
従来の分光計からのスペクトルを本発明の概念による分光計と比較するために、2×2ファイバカプラが使用され、カプラの上部入力ポートはS-LEDに、上部出力ポートは15のピークを生じているFBGセンサファイバに接続された。センサの後方反射信号は、(a)ではOCEAN光学フレーム分光計を用いて、(b)ではそれは、検出器として、2cm焦点距離の市販のWebCamモジュールとMSWindowsの標準ドライバとを有する装置300に置き換えられてファイバカップラの下部出力ポートで測定された。
【0056】
図5のスペクトルは、Y軸に任意単位、X軸に波長を示す。質的に波長を分離する能力は、図5の左側のスペクトルa)をもたらす高価な先行技術の分光計と、右側のスペクトルb)をもたらす本実施形態の低コスト分光計とで、基本的に同じであることがわかる。
【0057】
分光計ベースのブラッグ格子を有する既知の質問器システムの問題の1つは、かかるシステムが、光をFBGセンサから検出器に反射して戻すために少なくとも1つの光サーキュレータ又はカプラを必要とすることである。低光レベルのシステムの場合、例えばLEDを使用するファイバ内でFBGを分析する場合、ファイバに結合され2×2カプラを通過する光源の強度損失が大きいため、その低減が重要である。さらに、システムのサイズにさらに寄与する結合要素が必要となるため、コストが高くなる。上述のように、導波路と、複数の特別に配置された部分と、を有する装置は、これらの問題のいくつかを軽減する可能性がある。
【0058】
図6は、図3の装置300に類似する散乱部分630によって実現される一の伝搬方向における光(実線参照)に対する光学集光機能を有し、他の方向における拡散散乱(破線参照)を有する特別な装置600の要素を示す。従って、拡散散乱光は、光トラップ650によってトラップされることができる。すなわち、光散乱の角度が、2つの伝搬方向に対して大きく異なり、従って、散乱光は大きく異なる方向及び位置において検出されることができる。本実施形態において、複数の部分は、光伝搬軸の一の伝搬方向に伝搬する光の主散乱面での散乱方向が、伝搬方向の反対方向に伝搬する光の主散乱面での他の散乱方向と異なるように適合されている。
【0059】
散乱方向が異なるため、一方の伝搬方向の光は検出器340に集光された状態で入射し、反対の伝搬方向の光はそうならない。本質的に、格子周期の変更により、対称性が破られ、上記の効果が達成され得る。
【0060】
さらに、導波路内の光の一部は、格子効率に従って格子で散乱し、プロセスパラメータによって特定されることができる別の部分は、FBGセンサに到達するために単に送信され、そこで反射される(例えば図9及び10)。次いで、反射光は、帰路で検出器340に集光されることができる。
【0061】
例えば、導波路に組み込まれた結像機能を備えた上述の回折格子を使用することにより、分光計ベースのブラッグ格子を有する既知の質問器システムを大幅に簡単化することができる。従って、より費用効率が高くより小さな質問器システムを実現でき、それは光源と、光学導波路と、カメラ、線形ダイオードアレイ又は個別のフォトダイオードなどの検出器と、のみを必要とする。ほとんどの機能は、例えばファイバの、導波路で実現されることができ、したがって他の光学系やファイバの巻き取りに必要とされる大きなスペースはない。かかる質問器は、限られた空間を有する測定装置内に直接統合される(directly integrated)ことができる。
【0062】
図7は、異なる波長に対する図6の装置600の効果を定性的に示す。左から右への第1方向において、赤(r)、緑(g)及び青(b)の光がどのようにファイバセグメント内の部分でどのように散乱し、ライン710に集光されるかをシミュレートされる。右から左への反対方向において、図7のシミュレーションは、集光効果がないことを示しており、光は第1方向の光と完全に異なる方向に散乱する。
【0063】
図9は、一実施形態による分光計システム900を示す。分光計システム900は基本的に質問器システムであり、検出器640及び拡散散乱光用の光トラップ650を含む装置600を備える。分光計システム900は、対象物980での温度などの物理的パラメータを感知するセンサとして機能する光学ブラッグ格子を含む。光学ブラッグセンサは、光伝搬軸に沿って伝搬する光を受光するように、光学導波路の出力ポートに結合される。あるいは、光学ブラッグ格子センサは、装置600の光学導波路又はファイバに一体的に組み込まれる(integrally incorporated)。
【0064】
動作中、例えばS-LEDなどの、光源からの、左から右へ伝搬する光は複数の部分で散乱し、散乱光は光トラップ650で受信される。光の非散乱部分は、測定されるべきファイバブラッグ格子にさらに伝送され、その後、FBGで後方反射され、複数の部分で再び散乱する。ここで、右から左への散乱光は今や、検出器640に集光される。したがって、システム900は3つの要素のみを備え、光サーキュレータ又はカプラを備えるシステムよりもはるかに高い光効率を有する。
【0065】
本発明の概念の別の応用は、マルチコアファイバである。従来、マルチコアファイバを使用する場合、伝搬する光を分析する必要がある場合、マルチコアファイバの各コアを個別のシングルコアファイバに結合する必要があった。これを行うために、製造が複雑で高価であり、位置合わせが難しい、いわゆるファンアウトデバイス(fan-out device)が知られている。上記の原理を使用して、複数の散乱部分によってファイバ内を伝搬する光を出力/入力する場合、個々のファイバをマルチコアファイバに結合することは必要ではない。
【0066】
図8は、2つの光伝搬軸を有する特定の装置800の要素を示す。特に、光は、同じ導波路内の第2コア125に平行な第1のコア120内を伝播する。両方のコアにおいて、光を検出器140に集光する複数の散乱部分830及び835がそれぞれ設けられている。本質的には、2つの装置300又は600が使用される。
【0067】
図10は、別の実施形態によるマルチコア質問器システム1000を示す。本実施形態では、光学導波路は、例えばマルチコアファイバ内の少なくとも2つのファイバコアなどの、互いに実質的に平行な少なくとも2つの光伝搬軸を含む。図10に示すように、長い検出器又は複数の検出器に光を出力することにより、異なるコアの異なる光伝搬軸の光をコアごとに分析できる。より詳細には、マルチコア質問機システム1000は、光源としてのSーLEDと、対象物1080におけるセンサとしてのFBGとを備える。さらに、4つのコア、詳しくは、コア1、コア2、コア3、コア4が含まれる。各コアとその関連する検出器及び光トラップとは、基本的に装置600を構成する。したがって、マルチコア質問器システムは、結合要素(a coupling element)又は追加の光機械コンポーネントを使用することなく実現される。
【0068】
さらに、分光器ベースのFBG質問器システムは、しばしば、ウォームアップ段階で温度依存の信号ドリフトを示す。分光計がウォームアップするとき、例えば光学系や格子の拡張など、光路の変化が発生する場合があり、検出される波長の変更が生じる場合がある。複雑な温度調整方法を提供する代わりに、図9のシステム900などの双方向光ファイバ分光計を提供してもよい。すなわち、従来のブラッグ格子を光ファイバ分光計に追加するか、光ファイバ分光計に組み込むことができる。このブラッグ格子は、容易な温度補償のための基準光源として機能する。
【0069】
さらにまた、上記の散乱効果を使用することにより、異なる長さの弱反射及び/又は均一なブラッグ格子を導波路に組み込んで、導波路から分離された光を、例えば導波路を識別するために、従来のバーコードリーダで読み取ることができる。(複数の)回折格子の反射が弱い場合、センサ信号にはほとんど影響がない。このようにして、例えば製造の場所及び日付を特定することによって、ファイバの明白な関連性(an unambiguous association)は、実現されることができる。
【0070】
図11は、球面波及び幾何光学の原理を使用して上記実施形態で説明された散乱効果のシミュレーションを示す。幾何光学によれば、図11に星印(*)として示されている散乱部分によって生成された球面波の重ね合わせは、光伝搬軸に対して特定の角度で観測される方向性及び波長依存性の強めあう干渉を招く可能性がある(図11の横軸)。
【0071】
一般に、回折散乱は格子の長さにわたって発生し、特定の回折角を有する少なくとも1つの回折次数が観察され得、これは回折のためのブラッグ方程式で近似できる。
したがって、円筒対称の光ファイバなどの導波路では、光は、回折角に対応する開口角(図11においては約80°)を有する、対称軸としてのファイバの光伝搬軸周りの円錐の形で放射される。
【0072】
例えば、格子を形成する散乱部分は、ガラスの損傷閾値を超えて動作する、高強度フェムト秒レーザによって書き込まれた上記のタイプII格子のように生成されてもよい。例えば、フェムト秒レーザを使用して、約0.1μJ以上のパルスエネルギーと500fs以下のパルス持続時間で格子を1点ずつ書き込むことができる。
【0073】
タイプII格子で観察される散乱及び/又は回折パターンは、このように説明できる。フェムト秒レーザで回折格子の散乱部分を生成する場合、この部分は均質ではなく、回折格子の散乱部分の異なるサイズのいくつかの微視的構造が異なる散乱及び回折効果をもたらす。したがって、散乱部分の屈折率は、導波路のコアの均質な構造を破壊するパルスレーザーのパルスに起因するいくつかの異なる微視的欠陥に起因する平均屈折率として考えられる。
【0074】
別の実施形態によれば、光学用途の装置を製造するための方法は、光を光伝搬軸に沿って導くように構成され、光伝搬軸に沿って第1屈折率を有する光学導波路を提供するステップと、第2屈折率を有する複数の部分を生成するために光伝搬軸上で短いレーザパルスを集光することにより、各部分が、光伝搬軸に実質的に垂直な長軸と、光伝搬軸及び長軸に実質的に垂直な短軸とを有する、ステップとを含む。さらに、本方法は、長軸及び光伝搬軸によって画定される主散乱面にある散乱方向において、複数の部分から又は複数の部分への、光の受信又は送信を可能にするように、光学導波路の側部に受信器ユニット又は送信器ユニットを配置するステップを含む。
【0075】
上述のように、本発明の実施形態及び実施例は、光を結合及び分離することを可能にする。したがって、簡単で小型の光結合装置を提供することができる。
【0076】
本発明の範囲又は思想から逸脱することなく、記載された装置、システム及び方法、並びに本発明の構成において、様々な修正及び変更を行うことができることが理解されるであろう。
【0077】
本発明は、すべての態様において限定的ではなく例示的であることが意図されている、特定の実施形態及び実施例に関して説明されてきた。
【0078】
さらに、本明細書を検討し、本明細書に開示された本発明を実施することにより、本発明の他の実装が当業者に明らかになるであろう。仕様及び実施例は例示としてのみ考慮されることを意図している。この目的で、本発明の態様は、前述の開示された実装又は構成のすべての特徴よりも少ないものにあることを理解されたい。したがって、本発明の真の範囲及び思想は、添付の特許請求の範囲によって示される。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5a)】
図5b)】
図6
図7
図8
図9
図10
図11