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特許7042308経年劣化の点で有効性が改善した触媒モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】経年劣化の点で有効性が改善した触媒モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20220317BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20220317BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20220317BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220317BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20220317BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
B01J23/63 A ZAB
B01J37/02 301P
B01J37/02 101Z
B01J37/08
B01D53/94 245
B01D53/94 222
B01D53/94 280
F01N3/10 A
F01N3/28 Q
F01N3/28 301P
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020125466
(22)【出願日】2020-07-22
(62)【分割の表示】P 2017515946の分割
【原出願日】2015-09-22
(65)【公開番号】P2020192528
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2020-08-14
(31)【優先権主張番号】1459025
(32)【優先日】2014-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドネト,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】アングラード,クリステル
(72)【発明者】
【氏名】クレブス,ティエリー
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1445014(CN,A)
【文献】特表2010-526650(JP,A)
【文献】特表2008-525635(JP,A)
【文献】特表2006-523530(JP,A)
【文献】特表2010-534279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/86;53/94
F01N 3/10 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒モジュールであって、
-固体担体(2)と、
-固体担体から出発する以下の順序で配置された少なくとも以下の層:
-CeOを含有する化学蒸着層である第1の多孔性層(6)、
-白金、パラジウムおよびロジウムの中の1種もしくは複数の貴金属および/またはPt、Pd、Rhの間の1種もしくは複数の金属の合金を含有する第1の触媒層(8)であって、化学蒸着層である第1の触媒層(8)
を含むスタックと
-固体担体(2)とCeO を含有する第1の多孔性層(6)との間に、「ウォッシュコート」と呼ばれるバッファー層(4)と
を含み、
CeOを含有する第1の多孔性層(6)がまた、ジルコニアも含
バッファー層(4)が1種または数種の金属酸化物を含有する、
触媒モジュール。
【請求項2】
CeOを含有する第1の層が不連続であり、島を含む、請求項1に記載の触媒モジュール。
【請求項3】
島の大きさが数nmから100nmの間である、請求項2に記載の触媒モジュール。
【請求項4】
第1の触媒層上に形成されたCeOを含有する第2の多孔性層(10)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の触媒モジュール。
【請求項5】
CeOを含有する第2の多孔性層がまた、ジルコニアも含む、請求項4に記載の触媒モジュール。
【請求項6】
CeOを含有する第2の多孔性層(10)上に形成された第2の触媒層(12)を含む、請求項4または5に記載の触媒モジュール
【請求項7】
ッファー層が、種々の性質の金属酸化物の1種または数種の金属酸化物の混合酸化物を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の触媒モジュール。
【請求項8】
金属酸化物が、Al、CeO-ZrO、BaO、ゼオライトまたはTiO/Vである、請求項に記載の触媒モジュール。
【請求項9】
CeOを含有する第1のおよび/または第2の多孔性層が、主にCeOを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の触媒モジュール。
【請求項10】
CeOを含有する第1のおよび/または第2の多孔性層がまた、イットリア化ジルコニアも含む、請求項1からのいずれか一項に記載の触媒モジュール。
【請求項11】
固体担体が、マクロ孔質担体であり、固体担体が、セラミックまたは金属からできている、請求項1からのいずれか一項に記載の触媒モジュール。
【請求項12】
マクロ孔質担体が発泡体またはハニカム構造である、請求項11に記載の触媒モジュール。
【請求項13】
セラミックがムライトまたはコーディエライトである、請求項11または12に記載の触媒モジュール。
【請求項14】
固体担体:
a)化学蒸着によって形成されたCeOを含有する第1の多孔性層、
b)化学蒸着によって形成された第1の触媒層
を形成するステップを含
ステップa)に先立って、1種または数種の金属酸化物を含有するバッファー層が形成されるステップを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の触媒モジュールを製造する製造方法。
【請求項15】
ステップa)および/またはb)が、MOCVDによって行われる、請求項14に記載の製造方法
【請求項16】
ッファー層が液体含浸によって形成される、請求項14または15に記載の製造方法。
【請求項17】
CeOを含有する第2の層が、第1の触媒層上に形成されるステップc)を含む、請求項14から16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
第2の触媒層が、CeOを含有する第2の層上に形成されるステップd)を含む、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
セリアと貴金属間の強力な結合の発生につながるステップb)の後の熱処理ステップを含む、請求項14から18のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経年劣化の点で有効性が改善した触媒モジュールに関する。
【0002】
自動車産業では、窒素酸化物NOxを還元するために、金属触媒、例えば、ロジウムが、またCOおよび炭化水素の酸化のために白金およびパラジウムが使用される。これらの触媒は、例えば、ハニカム状に作成され、その後、排気ラインに取り付けられる構造上に担持される。
【0003】
例えば、セラミックで作成された構造は、増大した比表面を与えるように、普通「ウォッシュコート」と呼ばれるバッファー層で覆われ、これは、その後、Pt、PdおよびRhなどの貴重な材料で覆われる。
【0004】
触媒モジュールは、排気ライン中の場所であり、極めて高い温度、例えば、600℃超に付され、この高温は、触媒の活性表面積を低減する傾向があり、その性能が低下する。高温は、焼結によってウォッシュコートおよび触媒対の分散を低減する傾向がある。非特許文献1に記載されるように、癒合現象による触媒粒子の大きさの増大が観察される。
【0005】
さらに、触媒モジュールは、貴金属を使用し、その結果、それらは高価である。例えば、貴金属は、含浸によってウォッシュコートと同時に担持され、その結果、貴金属の量が多い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】D.Dou、O.H.Bailey、SAE Technical Papers Series 第982594号(1998年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
結果として、本発明の一目的は、既存のモジュールよりも経年劣化の際により良好な有効性を有する高性能触媒モジュールを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、製造において使用される貴金属の量が、最新技術に従うモジュールにおいてより少ないが、有効性が同様であるモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、担体と、セリアを含有する少なくとも1つの層であって、化学蒸着(CVD)によって蒸着されている層と、触媒を形成する貴金属(単数または複数)の少なくとも1つの層であって、CVDによって蒸着されている触媒層とを含む触媒モジュールを使用することによって達成される。
【0010】
本発明者らは、CVDによってセリアを含有する層を、およびCVDによって触媒層を蒸着することによって、セリアと貴金属の粒子間に強力な結合が生じ、これが、高温での癒合を低減する効果を有することおよびこの癒合の低減において、触媒層の反応面積が高いままであり、モジュールの有効性が経年劣化後でさえ良好のままであることを発見した。
【0011】
モジュールの有効性は、新規モジュールおよび経年劣化したモジュールの両方について、処理されるべき汚染物質(例えば、CO)の半分が消失したモジュールの温度を測定することによって決定される。
【0012】
本発明のモジュールの温度は、その製造の際に実質的により少ない量の貴金属を使用しながら、最新技術に従うモジュールにおける温度と同様である。これは、セリアを含有するCVDによって形成される層を、CVDによって同様に形成される貴金属(単数または複数)の層の担体として使用することによって可能にされる。
【0013】
1つの有利な実施例では、「ウォッシュコート」とも呼ばれるバッファー層が、担体と樹脂を含有する層の間に形成され、このウォッシュコートは、触媒層の反応表面積を増大する効果を有する。
【0014】
1つの特に有利な実施形態では、セリアを含有する層が、したがって、液体含浸によってではなく化学蒸着によって蒸着されるウォッシュコートを形成する。その結果、層の数が低減される。さらに、すべての層が、CVDによって製造され、モジュールの製造複雑性を低減する。
【0015】
セリアを含有する層はまた、ウォッシュコートの熱遮蔽を形成するという利点を有するジルコニアまたはイットリア化ジルコニアを含み得る。
【0016】
有利なことに、触媒を封入する触媒層上に、セリアを含有するさらなる層が形成され得る。
【0017】
極めて有利なことに、構造は、化学蒸着によって少なくとも部分的に製造され、これは、使用される原材料の量、特に、貴金属の量を低減することを可能にする。その結果、同等の効率を提供しながら、製造費用が低減される。
【0018】
その結果、本発明の主題は、固体担体を含む触媒モジュールと、固体担体から出発する順序で配置された少なくとも以下の層:化学蒸着によって蒸着されたCeOを含有する第1の多孔性層、1種もしくは複数の金属を含有する第1の触媒層および/またはPt、Pd、Rhの間の1種もしくは複数の金属の合金とを含むスタックである。
【0019】
CeOを含有する第1の層は、不連続であり、好ましくは数nmから100nmの間の大きさを有する島を含む。
【0020】
触媒モジュールは、第1の触媒層上に形成されたCeOを含有する第2の多孔性層を含み得る。この触媒モジュールは、有利なことに、CeOを含有する第2の多孔性層上に形成される第2の触媒層を含み得る。
【0021】
別の特徴によれば、触媒モジュールは、固体担体と、CeOを含有する第1の多孔性層の間に「ウォッシュコート」と呼ばれる1種または数種の金属酸化物を含有するバッファー層を含み得る。
【0022】
例えば、バッファー層は、Al、CeO-ZrO、BaO、ゼオライト、TiO/Vなどの種々の性質の1種または数種の混合酸化物を含む。
【0023】
1つの例示的実施形態では、CeOを含有する第1の多孔性層は、ウォッシュコートを形成し得る。
【0024】
1つの例示的実施形態では、CeOを含有する第1のおよび/または第2の多孔性層は、主にCeOを含む。
【0025】
別の例示的実施形態では、CeOを含有する第1のおよび/または第2の多孔性層はまた、ジルコニアを含む。
【0026】
別の例示的実施形態では、CeOを含有する第1のおよび/または第2の多孔性層はまた、イットリア化ジルコニアを含む。
【0027】
固体担体は、マクロ孔質担体、例えば、発泡体またはハニカム構造であり得、固体担体は、例えば、セラミックで、例えば、ムライトまたはコーディエライトからできているか、または金属である場合もある。
【0028】
本発明の別の主題は、固体担体上に
a)化学蒸着によって形成されたCeOを含有する第1の多孔性層と、
b)化学蒸着によって形成された第1の触媒層と
を形成するステップを含む、本発明の触媒モジュールを製造する方法であり、
ステップa)および/またはb)は、好ましくはMOCVDによって行われる。
【0029】
本方法は、ステップa)に先立って、例えば、液体含浸によって、1種または数種の金属酸化物を含有するバッファー層が形成されるステップを含み得る。
【0030】
別の特徴によれば、本方法は、CeOを含有する第2の層が、第1の触媒層上に形成されるステップc)を含み得る。
【0031】
別の特徴によれば、本方法は、第2の触媒層が、CeOを含有する第2の層上に形成されるステップd)を含み得る。
【0032】
別の特徴によれば、本方法は、CeOと貴金属間の強力な結合の発生につながる、ステップb)の後の熱処理ステップを含む。
【0033】
本発明は、以下の説明および添付の図面を読み取った後により良好に理解される:
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】触媒モジュールの第1の実施形態の図表的断面図を示す図である。
図2】触媒モジュールの第2の実施形態の第1の例の図表的断面図を示す図である。
図3】触媒モジュールの第2の実施形態の第2の例の図表的断面図を示す図である。
図4】触媒モジュールの第2の実施形態の第3の例の図表的断面図を示す図である。
図5図2に示される新鮮な触媒モジュールおよび経年劣化した触媒モジュールの、ならびに最新技術に従う新鮮な触媒モジュールおよび経年劣化した触媒モジュールの温度の関数としての処理されるべきガス混合物中のCO(ppmで)の含量の変動を示すグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明の触媒モジュールの第1の実施形態の領域の図表的断面図を示す。
【0036】
モジュールは、固体担体構造2を含む。
【0037】
担体構造は、有利には、マクロ孔質である。
【0038】
「マクロ孔質担体構造」とは、例えば、数ppiから数十ppi(インチあたりの孔)の多孔度を有する発泡セラミックなどの発泡体および/または数cpsi(平方インチあたりのチャネル(channels per square inch))から数百cpsiのハニカム構造担体を意味する。固体担体は、セラミック、例えば、コーディエライトまたはムライト;鋼またはFeCrAlなどの金属および金属合金;ポリマー;ゼオライト;シリコン;ガラス;織物;および上記の材料のうちいくつかを含有する複合材料の中から選択される材料から構成され得る。
【0039】
代表する実施形態では、有利には、モジュールはまた、セリアを含有する少なくとも1つの層6および触媒の層8を含む。
【0040】
層6は、セリア、例えば、50/50または50/80の割合の、セリアおよびジルコニア、セリアおよびイットリア化ジルコニアから形成され得る。層6は、多孔性である。イットリア化ジルコニアは、例えば、5%から30%の間にドープされ得る。
【0041】
セリアを含有する層6は、化学蒸着によって、好ましくは、「有機金属化学蒸着」(OMCVD)によって担体構造上に形成される。例えば、セリア層は、当業者に周知の技術に従って、オルト-キシレンで希釈されたCe(AcAc)2前駆体を使用するDLI-MOCVDによって得られる。このように形成されたセリア層は、連続である場合も、不連続である場合もあり、セリア層は薄く、例えば、50nmから100nm厚の間であり得、その上に形成される担体層の表面状態の影響を受ける。担体層が不均一である場合には、セリア層は、不連続であり得る。
【0042】
不連続であるCVDによって蒸着されたセリア層は、分散された島を形成し、その上に、例えば、白金、パラジウムまたはロジウムおよび/またはこれらの金属の組合せの中の貴金属(単数または複数)が蒸着される。これらのセリア島の大きさは、数nmから100nmの間であることが有利である。
【0043】
CVD蒸着によって、マクロ孔質である担体構造の効率的な含浸が可能になり、不均一な厚みおよび構造を有する層の蒸着につながる。
【0044】
触媒層8は、例えば、白金、パラジウムまたはロジウムおよび/またはこれらの金属の組合せの中の1種または数種の貴金属を含む。
【0045】
触媒層の組成は、必要な適用に応じて変わる。
【0046】
例えば、一酸化炭素COおよび未燃炭化水素を含有するディーゼルエンジンからの排気ガスの汚染除去への適用の場合には、触媒層は、PtPdM型(ここで、Mは、Sr、Cu、Feなどの中から選択される)のものである。
【0047】
一酸化炭素CO、未燃炭化水素およびNOxを含有するガソリンエンジンからの排気ガスの酸化還元による汚染除去への適用の場合には、触媒層は、PtRhM型(ここで、Mは、Sr、Cu、Feなどの中から選択される)のものである。
【0048】
NOxの還元による汚染除去への適用の場合には、触媒層は、PtPdRhM型(ここで、Mは、Sr、Cu、Feなどの中から選択される)のものである。
【0049】
触媒層は、化学蒸着によって、有利には、有機金属化学蒸着によって形成される。
【0050】
最も頻繁に使用される前駆体は、β-ジケトンである。したがって、Pt(acac)は、例えば、トルエンに溶解され、Pd(acac)は、例えば、トルエンに溶解され、Rh(acac)は、例えば、トルエンに溶解される。
【0051】
触媒層は、島の形態の不連続層を形成するセリア層6上に分布している粒子から形成され、大きな反応表面積を有する多孔性である。
【0052】
本発明者らは、CVDによって蒸着された層6、特に、セリアが、CVDによって蒸着された貴金属(単数または複数)の粒子と強力な結合を形成することを観察した。これらの強力な結合は、貴金属粒子の癒合を制限するか、またはさらには防ぎ、触媒モジュールの有効性の低減を制限する。これらの結合は、強力金属担体相互作用(Strong Metal Support Interactions)(SMSI)として知られている。
【0053】
有利なことに、層6は、ウォッシュコートを形成し得、例えば、それは混合酸化物化合物CeZr1-x、例えば、CeO-ZrOから構成され得る。
【0054】
したがって、層6は、ウォッシュコートとして作用し得、また、大きな比表面を提供し、触媒層の反応表面積を増大する。
【0055】
図2に示される別の実施形態では、モジュールは、そのパーツの比表面を増大するように、例えば、Al、混合酸化物化合物CeZr1-x、例えば、CeO-ZrO、BaO、ゼオライト、TiO/V...などの種々の性質の1種または複数の酸化物を含み得る別個のウォッシュコート4を含む。例えば、ウォッシュコート4は、液体含浸によって製造され得る。
【0056】
図2では、セリアを含有する層6は、CVDによってウォッシュコート上に蒸着される。
【0057】
層6は、図1に関して記載されるものと同一組成を有し得る。この実施形態では、ジルコニアまたはイットリア化ジルコニアを含有する層6は、層6がウォッシュコートの熱遮蔽を形成し、その結果、大きな比表面を維持し得るので特に有利である。例えば、各層は、10nmから100nmの間の厚みであり得る。
【0058】
例えば、担体構造は、1000μm厚であり得、ウォッシュコートは、10μm厚であり得、層6は、50nm厚であり得、触媒層は、10nm厚であり得る。
【0059】
触媒層は、ウォッシュコートの比表面のために増大された、大きな反応表面を有する不連続層を形成する結合層6上に分布している粒子から形成される。
【0060】
図3には、図2における構造ではない、触媒層8上にセリアを含有する層10を含むヘテロ構造を含む触媒モジュールの別の例示的実施形態がある。この層は、貴金属の封入層を形成する。この層10は、CVDによって製造されることが好ましい。
【0061】
層10の組成は、層6と同一であり得るか、または異なる組成を有し得る。層10は、処理されるべきガスが触媒層を通過し得るように多孔性である。層10中のジルコニアまたはイットリア化ジルコニアの存在は、層10が熱遮蔽を形成することを可能にする。その結果、触媒は、より安定になり、熱に対してより良好な抵抗性を有する。
【0062】
例えば、層2、4、6、8の厚みは、図1におけるモジュールにおける層の厚みと同様であり、例えば、層10は、50nmの厚みであり得る。
【0063】
図4は、セリアを含有する層10上に第2の触媒層12を含むヘテロ構造を含む、触媒モジュールの別の特に有利な例示的実施形態を示す。この場合には、層10および層12は、好ましくは、両方ともCVDによって製造され、次いで、層10および12間に強力な結合が生じる。この配置によって、所与の担体構造の貴金属の密度が増大し得る。この例示的実施形態は、メタンを排除するための天然ガスで動くエンジンの汚染除去のための適用において特に極めて有利である。
【0064】
第2の触媒層12の組成は、触媒層6の組成と同一である場合も、異なる場合もある。
【0065】
例えば、層2、4、6、8、10の厚みは、図1におけるモジュールの層の厚みと同一であり、例えば、触媒層12は、10nm厚であり得る。
【0066】
所与の実施例では、2つの層6、10は、同一の厚みを有し、触媒層8、12は、同一の厚みを有するが、これは、決して制限的ではない。
【0067】
セリアを含有する層の数および触媒層の数は、2に制限されないことは理解されよう。
【0068】
YSZの層は、5~30質量%の、キシレン中のZr(acac)と混合されたY(acac)を含有する化学溶液から出発するMOCVDによって蒸着され得る。
【0069】
さらに、多孔性構造と、CVDによってかまたは液相含浸によって製造されたウォッシュコートの間に1つまたは数個の層を含むスタックが、本発明の範囲内にある。
【0070】
本発明者らは、以下、図2に従う触媒モジュールを作製する方法を記載する。
【0071】
第1のステップの間に、担体構造が、当業者によって使用される通常の技術に従って、セラミックペーストの押出、次いで、成形によって製造される。
【0072】
次のステップでは、ウォッシュコート4が、例えば、液体形態の前駆体がそのパーツを流れるようにされる含浸技術を使用して、担体構造上に形成される。
【0073】
あるいは、ウォッシュコートは、「有機金属化学蒸着」(OMCVD)によって製造され得る。上記のように、ウォッシュコートは、例えば、Al、CeO-ZrO、BaO、ゼオライト、TiO/Vなどの種々の性質の1種または数種の混合酸化物を含み得る。
【0074】
次のステップでは、セリアを含有する層が、例えば、CVDによって、極めて有利には、直接液体注入金属有機化学蒸着(Direct Liquid Injection Metal Organic Chemical Vapour Deposition)(DLI-MOCVD)によって製造される。
【0075】
次のステップでは、触媒層は、CVDによって、有利には、金属有機化学蒸着によって形成される。
【0076】
表面のパーツが、排気ガスの処理のために1種または数種の触媒で覆われるパーツを製造するために最も頻繁に使用される前駆体は、β-ジケトンである。したがって、Pt(acac)、Pd(acac)およびRh(acac)が、例えば、トルエンに溶解される。
【0077】
MがSr、Cu、Fe...の中から選択されるPtPdM型触媒層の場合には、Sr、Cu、Feは、例えば、触媒を有する溶液における、Sr、CuまたはFeのβ-ジケトネートとの共溶出において導入される。
【0078】
液体形態の前駆体(単数または複数)は、蒸発され、MOCVDチャンバー中に注入され、ここで、担体構造が、ウォッシュコートおよびセリアを含有する層によって覆われる。
【0079】
次いで、有利には、セリアと貴金属間の強力な結合の発生を促進するために熱処理が適用される。例えば、熱処理は、500℃から800℃の間で1~4時間、例えば、2時間空気下で行われる。
【0080】
CVDによる種々の層の製造は、モジュールのすべての層が同一MOCVDチャンバー中で製造され得るという利点を有する。
【0081】
さらに、化学蒸着の使用は、COの点火曲線、すなわち、触媒モジュールの温度の関数としての処理されるべきガス混合物中のCOの含量(ppmで)の変動を表す図5における曲線において示されるように、事実上同一の有効性を維持しながら、製造プロセスにおいて使用される貴金属の質量の大幅な低減につながり得る。
【0082】
さらに、DLI-MOCVDによるセリアを含有する層の蒸着は、固有応力および界面での応力の低減を引き起こす。
【0083】
したがって、結晶学的に指向される複数層の製造のために、メッシュパラメータおよび膨張係数を適合させることによってヘテロ構造内の応力が低減され得、その結果、メッシュおよび熱膨張パラメータを対応させることによってスタックのより良好な高密度化が可能である。
【0084】
蒸着プロセスのパラメータを制御することで、粒子の形態、蒸着される材料の結晶学的構造およびその分散を調節することが可能になる。
【0085】
曲線IおよびIIは、製造の際に0.92g/l(26g/ft)の貴金属を使用する図2における新規および経年劣化したM2モジュールに当てはまる。
【0086】
曲線I’およびII’は、ウォッシュコートおよび貴金属の粒子を含み、その製造のために、貴金属の粒子が、3g/l(85g/ft)の貴金属を使用する含浸によって浸漬され、担持される、それぞれ、新規および経年劣化状態の最新技術に従う触媒モジュールM1に対応している。
【0087】
新規モジュールについては、モジュールM2について155℃およびモジュールM1について158℃の温度について、ガス混合物中に最初に含有されるCOの含量の50%低減が達成され、一方で、経年劣化したモジュールを用いた場合のこの低減は、モジュールM2について171℃でおよびモジュールM1について168℃で達成される。したがって、精度は、+/-3℃であるので、2種のモジュールの有効性は極めて類似していることがわかる。本発明およびセリアを含有する層の使用のために、本方法において使用される貴金属の量は極めて大幅に低減されるが、有効性はほとんど変更されないままである。したがって、貴金属の量は、有効性に影響を及ぼすことなく約3倍低減され得る。
【0088】
以下の表は、新規モジュールのおよび経年劣化したモジュールのCOの50%を排除するのに必要な温度を示す。
【0089】
【表1】
【0090】
M3は、図2中のモジュール、80%のセリアおよび20%のジルコニアを含有する層6ならびにPtおよびPdを含有する層8に対応する。
【0091】
M4は、図2中のモジュール、50%のセリアおよび50%のジルコニアを含有する層6ならびにPtおよびPdを含有する層8に対応する。
【0092】
M5は、図3中のモジュール、セリアである層6および10ならびにPtおよびPdを含有する層8に対応する。
【0093】
M7は、図3中のモジュール、80%のセリアおよび20%のジルコニアを含有する層6および10ならびにPtおよびPdを含有する層8に対応する。
【0094】
M6は、図4中のモジュール、セリアである層6および10ならびにPtおよびPdである触媒層8および12に対応する。
【0095】
M7は、1.25g/l(35g/ft)の貴金属を含有するCVDによって製造される図2中のモジュールに対応する。
【0096】
M1の温度から10℃以下の相違が許容されると考えられる。
【0097】
一般に、本発明の経年劣化したモデルのCOの50%の温度は、M1のものよりも10℃程度高いことがわかる。しかし、本発明のモジュールは、0.92g/l(26g/ft)の貴金属を用いて製作され、最新技術に従うモジュールは、3g/l(85g/ft)の貴金属を用いて製作され、温度は同様である。経年劣化したモジュールは、許容される180℃程度の温度を有する。セリアを含有するコートの存在は、癒合を低減し、最新技術においてよりも少量の貴金属を使用しながら、モジュールの有効性を長期間維持することを可能にする。
【0098】
モジュールM2についてよりも多量の、モジュールM7について製造プロセスの際に使用される貴金属(0.92g/l(26g/ft)の代わりに1.23g/l 35g/ft)が、新規モデルの温度を155℃の代わりに141℃に低下させることを可能にすることがわかる。
【0099】
さらに、新規モジュールM5、M6およびM7は、COの50%の排除のために、最新技術に従うモジュールM1よりも低い温度を有し、これは、モジュールの有効性を維持するために、また汚染除去の迅速な開始のために極めて良好であることがわかる。
【0100】
本発明のモジュールは、CO、NOxおよび煤煙の排除のための自動車の汚染除去モジュールの製造のために、空気処理モジュールのために、例えば、VOCおよびNOxの処理のために、改質による水素の生成のためのモジュールの製造のために、および水素貯蔵モジュールの製造のために特に良好に適応している。
図1
図2
図3
図4
図5