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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】空気調和機の室内ユニット
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0047 20190101AFI20220317BHJP
   F24F 1/0029 20190101ALI20220317BHJP
   F24F 13/22 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
F24F1/0047
F24F1/0029
F24F1/0007 361D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020516184
(86)(22)【出願日】2019-04-05
(86)【国際出願番号】 JP2019015126
(87)【国際公開番号】W WO2019208171
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】P 2018085639
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 敦氏
(72)【発明者】
【氏名】小見山 嘉浩
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特許第4766169(JP,B2)
【文献】特開2017-155973(JP,A)
【文献】特開2013-210144(JP,A)
【文献】特開2008-157547(JP,A)
【文献】特開平11-044432(JP,A)
【文献】実開昭56-065314(JP,U)
【文献】実開昭52-024760(JP,U)
【文献】実開昭62-072510(JP,U)
【文献】国際公開第2008/126230(WO,A1)
【文献】特開2009-168323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0047
F24F 1/0029
F24F 13/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井よりも低い位置で前記天井に固定され、前記天井から全体が剥き出しの状態で配置される底面視で円形状を成す筐体と、
前記筐体の外周側面の全周に亘って開口され、周囲から空気を吸い込む吸込口と、
前記筐体の下面の中央部に開口され、空気を下向きに吹き出す吹出口と、
前記筐体の内周面に沿って、かつ前記吸込口に対応する位置に設けられ、底面視で環状を成す熱交換器と、
前記熱交換器で囲まれ、かつ前記吹出口に対応する位置に設けられ、回転軸が垂直方向に延び、前記吸込口から吸い込まれた空気を前記吹出口から吹き出させるプロペラファンと、
前記熱交換器の下方に設けられ、前記熱交換器で生じる結露水を受けるドレンパンと、
を備え、
前記プロペラファンの直径と前記プロペラファンの回転により生じる風速と前記熱交換器の表面の水の接触角と前記結露水の飛翔距離との関係が予め解析され、この解析の結果に基づいて、
前記熱交換器は、前記表面の水の前記接触角が50°以下となるように表面処理が施され、
前記熱交換器と前記プロペラファンとの水平方向の離間距離をLとし、前記プロペラファンの直径をDとしたときに、0.05≦L/D<0.19の関係式が成り立つように前記熱交換器と前記プロペラファンとを配置し
前記ドレンパンが前記熱交換器の下方位置から前記吹出口の縁辺まで延び、かつ少なくとも前記離間距離に相当する範囲に亘って設けられ、
前記結露水の前記飛翔距離が前記離間距離に収まるように前記プロペラファンの回転により生じる前記風速が設定されている
空気調和機の室内ユニット。
【請求項2】
ファンモータと前記ドレンパンとを互いに連結する連結部材を備える、
請求項に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項3】
前記筐体の上面板から内側に下方に突出され、ファンモータを支持するとともに、前記熱交換器を水平方向に通過した空気を下方に向けて案内する案内面が形成されたガイド部を備える、
請求項1または請求項に記載の空気調和機の室内ユニット。
【請求項4】
前記ドレンパンが前記筐体の下面板と一体化される、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の空気調和機の室内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気調和機の室内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室内の天井に設置される空気調和機の室内ユニットとしては、筐体の下面中央に正方形の吸込口とその周囲の4辺に細長い吹出口が設けられている、いわゆる4方向天井カセットタイプの室内ユニットがある。このような室内ユニットの筐体内部には、その中央にターボファンおよびこのターボファンの周囲を囲む略4角形状の熱交換器が設置される。ターボファンは、中央の吸込口から室内空気を吸い込み、吸い込んだ空気を、熱交換器を通して温度調整を行い、そして、この空調空気を吹出口から室内に吹き出すようにしている。
【0003】
この方式の室内ユニットにおける空気の流れは、真下から吸い込んで空気を真横方向に吹き出して熱交換器を通し、その後、導風路にて真下方向に風向を変更している。このように風向を筐体内で360°変更していることから、通風抵抗が大きく、風量を大きくできないという問題がある。そこで、特許文献1のように、送風機としてプロペラファンを用い、プロペラファンによって上方空間の空気を筐体の側面の吸込口から吸い込んで、筐体の下面の吹出口から吹き出させる室内ユニットが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4766169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プロペラファンを用いて、筐体の側方から空気を吸い込み、下方に吹出すように室内ユニットを構成した場合には、大風量で低騒音の室内ユニットが期待できるが、熱交換器の表面で生じる結露水が筐体の下面の吹出口から落ちないようにするために、熱交換器と吹出口との間に充分な離間距離を確保しなければならず、吹出口の直径を小さくしなければならない。そのため、折角、風量が大きく取れるプロペラファンを採用しても、直径の大きなファンを設けることができず、風量を向上させることができないという課題がある。
【0006】
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたもので、吹出口から結露水が落下してしまうことを防止しつつ、プロペラファンの大型化を図り、風量を向上させることができる空気調和機の室内ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る空気調和機の室内ユニットは、天井よりも低い位置で前記天井に固定され、前記天井から全体が剥き出しの状態で配置される底面視で円形状を成す筐体と、前記筐体の外周側面の全周に亘って開口され、周囲から空気を吸い込む吸込口と、前記筐体の下面の中央部に開口され、空気を下向きに吹き出す吹出口と、前記筐体の内周面に沿って、かつ前記吸込口に対応する位置に設けられ、底面視で環状を成す熱交換器と、前記熱交換器で囲まれ、かつ前記吹出口に対応する位置に設けられ、回転軸が垂直方向に延び、前記吸込口から吸い込まれた空気を前記吹出口から吹き出させるプロペラファンと、前記熱交換器の下方に設けられ、前記熱交換器で生じる結露水を受けるドレンパンと、を備え、前記プロペラファンの直径と前記プロペラファンの回転により生じる風速と前記熱交換器の表面の水の接触角と前記結露水の飛翔距離との関係が予め解析され、この解析の結果に基づいて、前記熱交換器は、前記表面の水の前記接触角が50°以下となるように表面処理が施され、前記熱交換器と前記プロペラファンとの水平方向の離間距離をLとし、前記プロペラファンの直径をDとしたときに、0.05≦L/D<0.19の関係式が成り立つように前記熱交換器と前記プロペラファンとを配置し、前記ドレンパンが前記熱交換器の下方位置から前記吹出口の縁辺まで延び、かつ少なくとも前記離間距離に相当する範囲に亘って設けられ、前記結露水の前記飛翔距離が前記離間距離に収まるように前記プロペラファンの回転により生じる前記風速が設定されている
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の室内ユニットが設けられた建物の内部を示す図。
図2】第1実施形態の室内ユニットの概略横断面図。
図3】第1実施形態の室内ユニットの概略縦断面図。
図4】風量と結露水の飛翔距離を示す説明図。
図5】熱交換器の接触角と結露水の飛翔距離との関係を示すグラフ。
図6】熱交換器の接触角とL/Dとの関係を示すグラフ。
図7】風量とL/Dとの関係を示すグラフ。
図8】第2実施形態の室内ユニットの概略縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本実施形態を添付図面に基づいて説明する。まず、第1実施形態の空気調和機の室内ユニットについて図1から図7を用いて説明する。図1の符号1は、空気調和機の室内ユニットである。空気調和機は、室外に設置される室外ユニット(図示略)と室内に設置される室内ユニット1とで構成される。室外ユニットと室内ユニット1とは、冷媒を循環させる冷媒配管を介して接続されている。そして、室外ユニットと室内ユニット1との間で冷媒を循環させることで冷凍サイクルが構成される。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の空気調和機の室内ユニット1は、建物の内部の室内空間の空気を調和するために用いられる。この室内空間は、床2と壁3と天井4に囲まれた閉鎖された空間である。なお、天井4には、本実施形態の室内ユニット1が設けられる。
【0011】
図2および図3に示すように、室内ユニット1は、底面視で円形状を成す筐体5と、筐体5の外周側面に開口されて周囲から空気Kを吸い込む吸込口6と、筐体5の下面の中央部に開口されて空気Kを下向きに吹き出す吹出口7と、筐体5の内部に設けられて底面視で環状を成す熱交換器8と、吹出口7に対応する位置に設けられるプロペラファン9と、プロペラファン9を回転させるファンモータ10と、熱交換器8の下方に設けられて熱交換器8の表面で生じる結露水を受けるドレンパン11とを備える。筐体5の上面は、上面板12によって閉塞されている。
【0012】
天井4に固定されて床面方向に延びた金属棒状の吊り下げ部材17に筐体5の上面板12が固定される。これにより筐体5は、天井面から吊り下げられて、天井4よりも低い位置に設けられる。このようにすれば、空調対象となる室内空間の空気Kを側面から取り込んで、筐体5の下面の吹出口7から吹き出させることができるので、室内空間の空気を効率よく循環させることができる。つまり、天井4近くに沿って流れる空気Kを、室内ユニット1から下方に向けて流すことができる。さらに、室内ユニット1から床2に到達した空気Kは、壁3に沿って流れて再び天井4に到達する。なお、室内ユニット1は、空調対象の部屋の中央部に設けられると良い。
【0013】
なお、第1実施形態では、筐体5の上面板12が天井4から所定距離だけ離れた状態で固定されている。しかしながら、天井4が低い部屋においては、天井4と筐体5の天面(上面板12の上面)が略一致するように固定して設置しても良い。また、筐体5は、底面視で円形状を成しているが、その他の形状でも良い。例えば、筐体5が、底面視で五角形以上の多角形状であっても良い。つまり、筐体5が、底面視で六角形状、八角形状または十角形状を成しても良い。なお、筐体を五角形とした場合、各辺がほぼ同じ長さとすることが望ましい。
【0014】
このように、本実施形態の室内ユニット1は、筐体5が天井4から剥き出しの状態で配置される剥き出し式のユニットとなっている。さらに、室内ユニット1の筐体5が円形状を成していることで、意匠性を向上させることができる。さらに、筐体5に角部が無いことで、室内ユニット1の下方に居る人に圧迫感を感じさせないようにできる。
【0015】
室内ユニット1内に収納される熱交換器8は、図2に示すように底面視で環状を成し、図3の縦断側面視で縦長の長方形状を成している。また、吹出口7は、底面視で円形状を成す。なお、底面視において、熱交換器8の中心と、プロペラファン9の中心と、吹出口7の中心とが一致している。
【0016】
なお、吹出口7の直径は、プロペラファン9の直径Dよりもわずかに大きい寸法となっている。以下、符号Dは、吹出口7およびプロペラファン9の直径として説明する。
【0017】
プロペラファン9は、環状を成す熱交換器8で囲まれる位置、つまり、底面視で筐体5の中央位置に設けられる。また、プロペラファン9の回転軸は、垂直方向、つまり上方向に延びる。そして、この回転軸にファンモータ10が接続される。ファンモータ10は、筐体5の上面板12に固定される。このファンモータ10によりプロペラファン9が回転されると、吸込口6から吸い込まれた空気Kが、吹出口7から下方に吹き出すようになっている。
【0018】
吸込口6は、筐体5の外周側面の全周に亘って設けられる。また、熱交換器8は、筐体5の内周面であって、吸込口6に対応する位置に設けられる。なお、熱交換器8は、筐体5の上面板12に固定部材14を用いて固定される。
【0019】
冷房運転時において、冷媒は、室外ユニットの圧縮機から高温高圧のガス状となって吐出され、室外側の熱交換器に流れる。この冷媒は、室外側の熱交換器で室外の空気と熱交換されて凝縮され、液状となって冷媒配管19(図1)に流れる。そして、室内ユニット1において、液状の冷媒が冷媒配管19から膨張装置である電動膨張弁を介して低温のガス冷媒となって室内側の熱交換器8に流れ込む。この室内側の熱交換器8で低温の冷媒が空調対象の部屋の空気と熱交換されることで蒸発してガス化される。この際、室内は室内ユニット1から吹出される低温空気によって冷房される。
【0020】
暖房運転時において、冷媒は、室外ユニットの圧縮機から高温高圧のガス状となって吐出され、冷媒配管19に流れる。そして、室内ユニット1において、高温のガス状の冷媒が室内側の熱交換器8に流れ込む。この室内側の熱交換器8でガス状の冷媒が空調対象の部屋の空気と熱交換されることで凝縮して液化される。この際、室内は室内ユニット1から吹出される高温空気によって暖房される。
【0021】
ドレン受け部であるドレンパン11は、熱交換器8の下方位置に設けられる。熱交換器8が蒸発器として機能する冷房運転時には、熱交換器8を通過する空気Kに含まれる水分が熱交換器8表面で結露し、結露水として熱交換器8に付着して滴り落ちる。この熱交換器8から落ちる結露水を受けるために、ドレンパン11が設けられている。
【0022】
このドレンパン11は、縦断側面視で略U字状を成し、プロペラファン9を囲むように設けられた部材である。このドレンパン11は、熱交換器8の下方位置から吹出口7の縁辺まで延びる。このようにすれば、プロペラファン9の端縁が近接される吹出口7の縁辺までドレンパン11とすることができる。つまり、プロペラファン9の端縁と吹出口7の縁辺との隙間を小さくすることができる。そのため、この隙間から結露水が落下されること防ぐことができる。なお、ドレンパン11で貯留された結露水は、筐体5内に内蔵されたドレンポンプによって揚水されて所定の排水管(図示略)を介して、室内ユニット1の外部に排水される。
【0023】
また、ドレンパン11が筐体5の下面板13と一体となっている。このようにすれば、筐体5の下面板13をドレンパン11として兼用できるので、室内ユニット1の部品点数が減り、製造コストを低減させることができる。なお、第1実施形態の筐体5は、上面板12と下面板13とが側面部を介してネジ等によって固定されて一体化されている。
【0024】
室内ユニット1は、筐体5の上面板12から内側に下方に突出されるガイド部15を備える。このガイド部15は、下方にゆくに従って窄まる擂り鉢形状を成す。ガイド部15には、熱交換器8を水平方向に通過した空気Kを下方に向けて案内する案内面16が形成される。案内面16は、側面視で滑らかに湾曲された面である。この案内面16に沿って空気Kをスムーズに下方に導くことができる。また、ガイド部15の下端には、ファンモータ10が固定されている。このようにすれば、送風特性を向上させつつ、ファンモータ10を支持するための構造的強度を向上させることができる。
【0025】
熱交換器8の表面には、熱交換器8の表面の水の接触角が50°以下となるように、表面処理としての親水性処理が施されている。この親水性処理では、熱交換器8の表面に、樹脂系または水ガラス系等のコーティングが施される。この親水性処理が施されることで、熱交換器8の表面に生じた結露水が、この表面に沿ってスムーズに下方に落下される。そのため、結露水が空気Kの流れに引っ張られて、熱交換器8から離れた位置まで飛翔されることを防止できる。その結果、プロペラファン9の直径Dを大きくして、風量を増大させることができる。
【0026】
本実施形態では、熱交換器8の内側の表面(端面)とプロペラファン9の端縁(先端のなす軌跡の端部)との水平方向の離間距離をLとする。なお、この離間距離Lは、熱交換器8の内側の表面と吹出口7の縁辺との水平方向の離間距離とほぼ同一である。
【0027】
本実施形態では、親水性処理(表面処理)が施されることで、熱交換器8の表面の水の接触角が50°以下となっている。さらに、熱交換器8とプロペラファン9との水平方向の離間距離をLとし、プロペラファン9の直径をDとしたときに、0.05≦L/D<0.19の関係式が成り立つ位置に配置されている。なお、この関係式を書き換えると、0.05D≦L<0.19Dとなる。例えば、プロペラファン9の直径Dを800mmとした場合に、熱交換器8とプロペラファン9との水平方向の離間距離Lが40mm~152mmとなる。また、プロペラファン9の直径Dを900mmとした場合には、直径が拡大した分だけ風速が増加するため、熱交換器8とプロペラファン9との水平方向の離間距離Lが、プロペラファン9の直径Dを800mmに比べて大きい、45mm~171mmとなる。
【0028】
図4および図5に示すように、熱交換器8に対して水平方向に空気Kが通過すると、その表面から結露水が飛翔される。例えば、熱交換器8の上下方向の寸法を一般的なサイズである300mmとし、プロペラファン9の直径Dを800mmとし、風速を1.5m/sとし、熱交換器8の表面の水の接触角を50°以下とした場合に、結露水の飛翔距離L’は、約40mmとなる。この結果から、熱交換器8とプロペラファン9との離間距離Lは、40mm以上あれば良いことが分かる。プロペラファン9による風速は直径に比例することから、ここで、L/D=40/800=0.05となる。図6に示すように、熱交換器8の表面の水の接触角が50°以下であるときに、L/Dの値が0.05となる。したがって、0.05D≦Lを満たしていれば、熱交換器8から飛翔した結露水がプロペラファン9にまで到達して室内に飛散することはなく、ドレンパン11上に落下して、排水処理される。
【0029】
プロペラファン9の回転による風量は、直径Dが大きいほど大きくなる。その傾向はプロペラファン9も従来のターボファンもほぼ同等である。ここで、従来の4方向天井カセットタイプの室内ユニットにおける風量とL/Dの値の関係をパラメータにすると図7中の曲線Aの特性を示す。L/Dの値が大きくなればなるほどファン径が小さくなり、風量は低下する。なお、この場合のLは、ターボファンの端部と最も近接する熱交換器の端面との水平距離を、Dはターボファンの直径を意味している。
【0030】
続いて、この4方向天井カセットタイプの室内ユニットと同一外形サイズの筐体を用いて、吸込口を下面中央から側方に変更すると同時にファンをターボファンから同径Dのプロペラファン9に変更した場合を、曲線Bに示す。この比較において、同図から分かる通り、L/D=0、すなわちプロペラファン9と熱交換器8との隙間を“0”にできれば、約30%の風量アップとなる。これは、プロペラファン9の方がターボファンよりも、その特性として風量が大きくなることおよび筐体の構造により通風路における風向変更が少ないことによる。すなわち、従来の室内ユニットでは、吸込みから吹出しまで風向を360°変更しているが、本実施形態の場合、風向は90°しか曲がっていない点があげられる。但し、プロペラファン9を用いる場合には、前述の通り、結露水飛翔防止の観点から0.05L/Dを満たす必要がある。このため、図7中の曲線B上で0.05=L/Dの点Xを見ると、ファン風量は約111%となり、同じ筐体寸法の4方向天井カセットタイプの室内ユニットに対して風量のアップを得ることができる。
【0031】
さらに、従来の4方向天井カセットタイプの室内ユニットでは、吹出口が筐体の下面の側方に設けられている。本実施形態の室内ユニット構造においては、吹出口7は筐体5の下面の中央に設けられるため、筐体5の下面の側方に吹出口を設ける必要がない。そこで、この部分のデッドスペース分だけ、内部の構造物である熱交換器またはファンを大きくすることができる。すなわち、同じ筐体の外形サイズでファンの直径を拡大することができる。
【0032】
一般に、吹出口の幅は少なくとも3cmは必要であり、左右合わせて6cm分だけ熱交換器またはファン寸法が拡大できる。なお、この拡大寸法は、概ね0.07×(2L+D)に相当する。そこで、この余裕分だけプロペラファンの直径Dを拡大した場合の風量特性が図7中の曲線Cとなる。そして、この曲線C上において、0.05=L/Dの点Yでは、従来の4方向天井カセットタイプの室内ユニットに比して約144%の風量を得ることができる。そして、同曲線CからL/D=0.19の点Zにおいて、従来の4方向天井カセットタイプの室内ユニットと同じ100%の風量となる。実際には、従来の4方向天井カセットタイプの室内ユニットのターボファンにおいても、熱交換器との間に若干の隙間は必要になるので、全く隙間を0にすることはできない。
【0033】
したがって、L/D<0.19であれば、同一サイズの従来の4方向天井カセットタイプの室内ユニットよりも確実に大風量を得ることができるようになる。なお、この際、側方の吹出口の削除によって熱交換器の寸法も大きくすることができるため、空調能力の増大を図ることもできる。
【0034】
このような観点から、本実施形態においては、熱交換器8とプロペラファン9との水平方向の離間距離をLとし、プロペラファン9の直径をDとしたときに、0.05≦L/D<0.19の関係式が成り立つようなプロペラファン9の直径を設定している。
【0035】
以上の通り、本実施形態では、熱交換器8とプロペラファン9との水平方向の離間距離をLとし、プロペラファン9の直径をDとしたときに、0.05≦L/D<0.19の関係式が成り立つように、室内ユニット1を形成することで、吹出口7から結露水が落下してしまうことを防止しつつ、プロペラファン9の大型化を図り、風量を向上させることができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の空気調和機の室内ユニット1Aについて図8を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0037】
図8に示すように、第2実施形態では、筐体5Aが、直接天井4に固定されている。つまり、筐体5Aの上面板12Aが天井4に接触した状態となっている。さらに、第1実施形態においては、筐体5内部の中央に設けられた擂り鉢形状を成すガイド部15の下端に、ファンモータ10を固定したが、第2実施形態では、単に四角形状の取り付け部15Aを上面板12に設け、この取り付け部15Aにファンモータ10を固定している。なお、筐体5Aは、上面板12Aと下面板13Aとが別部材で構成される。そして、ドレンパン11と一体となっている下面板13Aは、連結部材18と介してファンモータ10の基部もしくは取り付け部15Aに連結されている。この連結部材18は、ファンモータ10の基部から放射状に延びる棒状の部材である。
【0038】
第2実施形態では、室内ユニット1Aが、ファンモータ10とドレンパン11とを互いに連結する連結部材18を備えることで、プロペラファン9とドレンパン11との水平方向の離間距離Lを一定に保ち、互いの衝突を防止しつつ、プロペラファン9とドレンパン11との隙間を小さく形成することができる。
【0039】
本実施形態に係る空気調和機の室内ユニットを第1実施形態から第2実施形態に基づいて説明したが、いずれか1の実施形態において適用された構成を他の実施形態に適用しても良いし、各実施形態において適用された構成を組み合わせても良い。
【0040】
なお、本実施形態では、熱交換器8が底面視で環状を成すが、その他の形状でも良い。例えば、熱交換器8が底面視で多角形状であっても良い。例えば、熱交換器8が、プロペラファン9の周囲を囲むように、四角形状を成していても良い。この場合の寸法設定は、プロペラファン9の端部と、このプロペラファン9に最も近い位置にある熱交換器8の端面との水平方向の離間距離をLとする。
【0041】
以上説明した実施形態によれば、吹出口から結露水が落下してしまうことを防止しつつ、プロペラファンの大型化を図り、風量を向上させることができる。
【0042】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
1(1A)…室内ユニット、2…床、3…壁、4…天井、5(5A)…筐体、6…吸込口、7…吹出口、8…熱交換器、9…プロペラファン、10…ファンモータ、11…ドレンパン、12(12A)…上面板、13(13A)…下面板、14…固定部材、15…ガイド部、15A…取り付け部、16…案内面、17…吊り下げ部材、18…連結部材、19…冷媒配管、D…(プロペラファンの)直径、L…離間距離、L’…飛翔距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8