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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】デングウイルスワクチン組成物の製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/12 20060101AFI20220317BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220317BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220317BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220317BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220317BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220317BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220317BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20220317BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
A61K39/12
A61K39/39
A61K47/02
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/38
A61K47/18
A61K9/19
A61P31/14
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020530648
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2018063541
(87)【国際公開番号】W WO2019112921
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】62/595,842
(32)【優先日】2017-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596129215
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Merck Sharp & Dohme Corp.
【住所又は居所原語表記】126 East Lincoln Avenue,Rahway,New Jersey 07065-0907 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ライアン,マイケル・エス
(72)【発明者】
【氏名】マルティン,シェリー-アン・ピー
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,モリーサ
(72)【発明者】
【氏名】スタンブロ,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】バムバニ,アキレシュ
(72)【発明者】
【氏名】ブルー,ジェフリー・トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ピクスリー,ハイディ・ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】グリーン-トレクスラー,エリン・ジェー
(72)【発明者】
【氏名】イソピ,リン・アン
【審査官】吉川 阿佳里
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0296616(US,A1)
【文献】国際公開第2017/056101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00-39/44
A61P 1/00-43/00
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
600~20000pfu/mlの少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルス(LACV)を含む弱毒化生デングワクチンと、
pH7.08.05~300mMのリン酸カリウム緩衝液と、
60~120mg/mlのトレハロースもしくはスクロース、またはこれらの組み合わせと
3~7mg/mlのプロピレングリコールまたはグリセロールと、
3~7mg/mlの平均分子量90000のカルボキシメチルセルロースナトリウム
場合により30~90mMのNaClと、
場合により10~75mMのLeu、LysもしくはGlu、またはこれらの組み合わせ
を含む製剤。
【請求項2】
00~20000pfu/mlの少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルス(LACV)を含む弱毒化生デングワクチンと、
pH.0~8.0の1mMのリン酸カリウム緩衝液と、
0mg/mlのスクロースと、
mg/mlのプロピレングリコールまたはグリセロールと、
mg/mlの平均分子量0000のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、
5mMのNaClと
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
00~20000pfu/mlの少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルス(LACV)を含む弱毒化生デングワクチンと、
pH.0~8.0の1mMのリン酸カリウム緩衝液と、
0mg/mlのスクロースと、
mg/mlのプロピレングリコールと、
mg/mlの平均分子量0000のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、
0mMのNaClと、
5mMのLeuと
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
00~20000pfu/mlの少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルス(LACV)を含む弱毒化生デングワクチンと、
pH.5の1mMのリン酸カリウム緩衝液と、
0mg/mlのスクロースと、
mg/mlのプロピレングリコールと、
mg/mlの平均分子量約90000のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、
0mMのNaClと
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
00~20000pfu/mlの少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルス(LACV)を含む弱毒化生デングワクチンと、
pH.5~8の1mMのリン酸カリウム緩衝液と、
0mg/mlのスクロースと、
10mg/mlのトレハロースと、
mg/mlのプロピレングリコールと、
mg/mlの平均分子量0000のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、
0mMのNaClと、
5mMのLeuと
を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
.0001~5%w/vのポロキサマー188およびポロキサマー407から選択される界面活性剤をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
00~20000pfu/mlの少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルス(LACV)を含む弱毒化生デングワクチンと、
pH.0~8.0の~20mMのリン酸カリウムと、
5mg/mlのスクロースと、
75mg/mlのトレハロースと、
mg/mlの平均分子量0000のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、
0mMのNaCl
アミノ酸Glu
を含む、剤。
【請求項8】
00~20000pfu/mlの少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルス(LACV)を含む弱毒化生デングワクチンと、
pH.0~8.0の~20mMのリン酸カリウムと、
5mg/mlのスクロースと、
75mg/mlのトレハロースと、
5mg/mlのゼラチンと、
0mMのNaClと
アミノ酸Glu
を含む、剤。
【請求項9】
.0001~5%w/vのポロキサマー188およびポロキサマー407から選択される界面活性剤をさらに含む、請求項7または8に記載の製剤。
【請求項10】
アルミニウムアジュバントをさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
凍結または凍結乾燥されている、請求項に記載の製剤。
【請求項12】
溶液中で再構成される、請求項から10のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
凍結乾燥またはマイクロ波真空乾燥前に水溶液である、請求項から10のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
前記再構成が、.5~1.0mlの生理食塩水、水または注射用静菌水(BWFI)、および場合によりアルミニウムアジュバントを含む希釈剤で実施される、請求項12に記載の製剤。
【請求項15】
前記弱毒化生デングワクチンが四価である、請求項1から14のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項16】
前記LAVまたは前記LACVが、3’非翻訳(UTR)領域のTL-2ステムループ構造に相当する約30ヌクレオチドの欠失を含むウイルスゲノムを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項17】
前記弱毒化生デングウイルス(LAV)が、3’非翻訳(UTR)領域のTL-2ステムループ構造に相当する約30ヌクレオチドの欠失を含むウイルスゲノムを含み、デング血清型3に対して免疫原性であり、
前記LAVのウイルスゲノムが、前記3’UTRのTL-3構造に相当するΔ30欠失から上流にヌクレオチドの欠失をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項18】
前記ワクチンが弱毒化生デングウイルス(LAV)を少なくとも4つ含み、
当該弱毒化生デングウイルス(LAV)が、rDEN1Δ30、rDEN2/4Δ30、rDEN3Δ30/31およびrDEN4Δ30である、請求項1から14のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項19】
前記ワクチンが弱毒化生デングウイルス(LAV)を少なくとも4つ含み、
当該弱毒化生デングウイルス(LAV)が、rDEN1Δ30-1545、rDEN2/4Δ30(ME)-1495,7163、rDEN3Δ30/31-7164およびrDEN4Δ30-7132,7163,8308である、請求項1から14のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項20】
約200~20000pfu/mlの少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルス(LACV)を含む弱毒化生デングワクチンと、
pH約6.5~8.5の約5~300mMのリン酸カリウム緩衝液と、
約60~120mg/mlのトレハロースもしくはスクロース、またはこれらの組み合わせと、
約3~7mg/mlのプロピレングリコールまたはグリセロールと、
約3~7mg/mlの高粘度、中粘度または低粘度のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、
場合により約30~90mMのNaClと、
場合により約10~75mMのLeu、LysもしくはGlu、またはこれらの組み合わせと
を含み、
約は、10%の変動を意味する、製剤。
【請求項21】
200~20000pfu/mlの少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルス(LACV)を含む弱毒化生デングワクチンと、
pH6.5~8.5の5~300mMのリン酸カリウム緩衝液と、
60~120mg/mlのトレハロースもしくはスクロース、またはこれらの組み合わせと、
3~7mg/mlのプロピレングリコールまたはグリセロールと、
3~7mg/mlの高粘度、中粘度または低粘度のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、
場合により30~90mMのNaClと、
場合により10~75mMのLeu、LysもしくはGlu、またはこれらの組み合わせと
を含む、製剤。
【請求項22】
約600~20000pfu/mlの少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルス(LACV)を含む弱毒化生デングワクチンと、
pH約7.0~8.0の約5~300mMのリン酸カリウム緩衝液と、
約60~120mg/mlのトレハロースもしくはスクロース、またはこれらの組み合わせと、
約3~7mg/mlのプロピレングリコールまたはグリセロールと、
約3~7mg/mlの平均分子量約90000のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、
場合により約30~90mMのNaClと、
場合により約10~75mMのLeu、LysもしくはGlu、またはこれらの組み合わせと
を含み、
約は、10%の変動を意味する、製剤。
【請求項23】
約600~20000pfu/mlの弱毒化生デングワクチンと、
pH7.0~8.0の約11mMのリン酸カリウム緩衝液と、
約90mg/mlのスクロースと、
約5mg/mlのプロピレングリコールと、
約5mg/mlの平均分子量約90000のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、
約50mMのNaClと、
約25mMのLeuと
を含み、
約は、10%の変動を意味する、請求項1に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの弱毒化生デングウイルスまたは弱毒化生キメラフラビウイルスを含むデングウイルスワクチンと、緩衝液と、糖と、セルロース誘導体と、糖アルコールまたはグリコールと、場合によりアミノ酸と、アルカリまたはアルカリ塩との製剤;および少なくとも1つの弱毒化生デングウイルスまたは弱毒化生キメラフラビウイルスを含むデングウイルスワクチンと、緩衝液と、少なくとも150mg/mlの糖と、担体と、場合によりアルカリまたはアルカリ塩、または、アルカリまたはアルカリ塩と、アミノ酸との製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フラビウイルス科(Flaviviridae)には、プロトタイプの黄熱病ウイルス(YF)、デングウイルスの4つの血清型(DENV-1、DENV-2、DENV-3およびDENV-4)、日本脳炎ウイルス(JE)、ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBE)、ウエストナイルウイルス(WN)、セントルイス脳炎ウイルス(SLE)、および約70種の他の疾患の原因となるウイルスが含まれる。フラビウイルスは、一本鎖プラス鎖RNAゲノムを含む小さなエンベロープウイルスである。10個の遺伝子産物が単一のオープンリーディングフレームによってコードされ、カプシド(C)、「プレメンブレン(preMembrane)」(prM、これは細胞からのビリオン放出直前に「膜」(M)にプロセシングされる)、「エンベロープ」(E)、引き続いて非構造(NS)タンパク質NS1、NS2a、NS2b、NS3、NS4a、NS4bおよびNS5の順で組織化されたポリタンパク質として翻訳される(Chambers,T.J.et al.,Annual Rev Microbiol(1990)44:649-688;Henchal,E.A.and Putnak,J.R.,Clin Microbiol Rev.(1990)3:376-396に概説されている)。次いで、個々のフラビウイルスタンパク質が、宿主ならびにウイルスがコードするプロテアーゼによって媒介される正確なプロセシングイベントを通して産生される。
【0003】
フラビウイルスのエンベロープは宿主細胞膜に由来し、ウイルスがコードする膜を固定する膜(M)およびエンベロープ(E)糖タンパク質を含有する。E糖タンパク質は、最大のウイルス構造タンパク質であり、細胞表面付着およびエンドソーム内融合活性を担う機能的ドメインを含む。これはまた、防御免疫に関連する、ウイルス中和抗体の産生を誘導する宿主免疫系の主要な標的でもある。
【0004】
デングウイルスは、ヤブカ属(Aedes)の蚊、主にネッタイシマカ(A.aegypti)およびヒトスジシマカ(A.albopictus)によってヒトに伝染する。デングウイルスによる感染は、不顕性または軽度の熱病から古典的なデング熱(DF)を経てデング出血熱/デングショック症候群(DHF/DSS)まで及ぶ多様な臨床像をもたらす。デング熱は、高熱、頭痛、関節および筋肉の痛み、発疹、リンパ節腫脹および白血球減少を特徴とする(Gibbons,R.V.and D.W.Vaughn,British Medical Journal(2002)324:1563-1566)。DHF/DSSは、小児においてより一般的な、より重篤な感染症形態であって、点状出血および斑状出血の存在から特発性の重篤な出血および重度のショックまで及ぶ血管透過および/または重篤な出血性徴候により特徴付けられる。診断および迅速な医学的介入がなければ、DHF/DSSの突然の発症および急速な進行は処置されないと致命的となり得る。
【0005】
デングウイルスは、世界的な罹患率および死亡率の点で最も重要な節足動物伝染性ウイルスのグループであり、少なくとも3600万のデング熱症例および250000~500000のDHF/DSS症例を含む推測1億のデング感染症が毎年発生している(Gubler,D.J.,Clin.Microbiol.Rev.(1998)11:480-496;Gibbons、上記)。人口の世界的な増加、特に熱帯全体にわたる人口の都会化、および持続的な蚊防除手段の欠如によって、デングの蚊ベクターはその分布を熱帯、亜熱帯およびいくつかの温帯地域にわたって拡大しており、世界人口の半分超にデング感染のリスクをもたらしている。現代のジェット機旅行およびヒトの移動がデング血清型の世界的分布を容易にし、結果として今や多くの地域で複数のデング血清型が地域流行している。ここ20年以上で、デング流行の頻度およびDHF/DSSの発生率は増加している。例えば、東南アジアでは、DHF/DSSは小児の間で入院および死亡の主要な原因である(Gubler、上記;Gibbons and Vaughn、上記)。
【0006】
これまでに、フラビウイルスワクチンの開発は、様々な成功を収めてきた。フラビウイルスによって引き起こされる疾患から保護するためのワクチン候補を製造する試みにおいて、4つの基本的なアプローチ:弱毒化生ワクチン、不活化全粒子ワクチン、組換えサブユニットタンパク質ワクチン、およびDNAベースのワクチンが実行されている。黄熱病ウイルスに対する弱毒化生ワクチンは数十年にわたって利用可能であり、より近年は日本脳炎に対する弱毒化生ワクチンが世界中の様々な国で登録されている。不活化全粒子ワクチンの使用は、いくつかの利用可能な登録製品でTBEウイルスおよびJEウイルスについて実証されている。Heinz et al.Flavivirus and flavivirus vaccines.Vaccine 30:4301-06(2012)。
【0007】
上で強調したYFワクチン、JEワクチンおよびTBEワクチンの成功にもかかわらず、デングウイルスに対するワクチンを開発するための弱毒化生ウイルスおよび不活化ウイルスの方法の使用は、重要な課題に直面している。デングウイルスには4つの血清型(DENV1、DENV2、DENV3およびDENV4)があり、各血清型の株は世界のデング流行地域全体にわたって巡回していることが分かっている。自然感染は感染した血清型への長期持続性の免疫を付与するが、他のデング血清型への免疫は付与しない。疾患のより重篤な形態(DHF/DSS)は、ほとんどの場合は、1つの血清型のデングウイルスの感染に別の血清型の第2の感染が続いた場合に、第2のデング感染の後に生じる。DHFおよびDSSと第2のデング感染のより高頻度の関連性は、第2のデングウイルス型の感染力を増強する、1つのウイルス型の感染によって誘導される非中和抗体によると仮定されている(抗体依存性増強-ADE)。
【0008】
これまでに、臨床で試験されたワクチンの大部分は弱毒化生ワクチンである。非複製ワクチン候補の使用もまた探求されている。例えば、Ivyら(米国特許第6432411号明細書)は、DEN1~4 80% E(DENV-2エンベロープポリペプチドのアミノ酸1~395に相当するDEN1~4のペプチド領域)タンパク質を含む四価のサブユニットワクチンを開示している。Ivyら、上記はまた、DENV1~4 80% EおよびISCOMATRIX(登録商標)アジュバントを含む組成物も報告している。Collerら(国際公開第2012/154202号)は、DEN1~4のDEN1~4 80% Eを含む四価の製剤を開示している。不活化ウイルスも潜在的なワクチン候補として、または有効なワクチンの成分として使用され得る(Putnak et al.Vaccine 23:4442-4452(2005)、米国特許第6190859号明細書、米国特許第6254873号明細書およびSternerらの国際公開第2007/002470号)。弱毒化生デングウイルスワクチンおよび非複製デングワクチンを含む組成物は、国際特許出願番号PCT/US14/042625(国際公開第2014/204892号)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第6432411号明細書
【文献】国際公開第2012/154202号
【文献】米国特許第6190859号明細書
【文献】米国特許第6254873号明細書
【文献】国際公開第2007/002470号
【文献】国際公開第2014/204892号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Chambers,T.J.et al.,Annual Rev Microbiol(1990)44:649-688
【文献】Henchal,E.A.and Putnak,J.R.,Clin Microbiol Rev.(1990)3:376-396
【文献】Gibbons,R.V. and D.W.Vaughn,British Medical Journal(2002)324:1563-1566
【文献】Gubler,D.J.,Clin.Microbiol.Rev.(1998)11:480-496
【文献】Heinz et al.Flavivirus and flavivirus vaccines.Vaccine 30:4301-06(2012)
【文献】Putnak et al.Vaccine 23:4442-4452(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ウイルスの全体は、液性免疫応答および細胞免疫応答を生成する能力のために、いくつかのワクチン製品で一般的に使用される抗原の1つである。ウイルス全体を含有するワクチン製品は、熱、凍結/解凍および他の処理ストレスに敏感で、著しい効力損失につながるので、安定性を維持するのが困難である。これらの製品は、典型的には、凍結して(-20℃未満)または乾燥粉末として保存される。凍結された製品は、効力損失を防ぐために厳しいコールドチェーン要件を必要とするため、保存および流通が容易ではない。ウイルス全体、特にエンベロープウイルスを乾燥させると、乾燥プロセス中に発生する凍結および乾燥ストレスのために、効力が大幅に失われることがよくある。したがって、デングウイルスの安定な製剤を製造することが当技術分野で必要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、弱毒化生デングワクチンの安定な製剤を提供する。セルロース誘導体および糖アルコールまたはグリコールの添加によって、乾燥後の安定性および/または収率が改善された。あるいは、少なくとも150mg/mlの糖を添加すると、マイクロ波乾燥後の安定性および/または収率が改善された。
【0013】
一態様では、本発明は、少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルス(LACV)を含む弱毒化生デングワクチンと、pH約6.5~8.5の緩衝液と、糖、グリコールまたは糖アルコールと、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、2-ヒドロキシエチルセルロース(2-HEC)、クロスカルメロースおよびメチルセルロース、またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択されるセルロース誘導体と;場合によりアルカリまたはアルカリ塩と、場合によりAla、Asp、His、Leu、Lys、Gln、ProまたはGlu、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸とを含む製剤を提供する。
【0014】
一実施形態では、緩衝液が、コハク酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、TRIS、Bis-Tris、MES、MOPS、HEPES、酢酸塩およびクエン酸塩、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、アルカリまたはアルカリ塩が、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムまたはこれらの組み合わせである。さらなる実施形態では、糖がトレハロースまたはスクロースである。一実施形態では、セルロース誘導体がカルボキシメチルセルロースの薬学的に許容される塩である。別の実施形態では、グリコールが、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリエチレングリコールモノメチルエーテルからなる群から選択される。さらなる実施形態では、糖アルコールがグリセロールである。
【0015】
別の態様では、製剤が、約100~10000000pfu/mlの少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルスを含む弱毒化生デングワクチンと、pH約6.5~8.5の緩衝液と、約50~300mg/mlの糖と、約2.5~10.0mg/mlのプロピレングリコール(PG)またはグリセロールと、約0.3~10mg/mlのカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCナトリウム)と、場合により約10~150mMのNaClと、場合により約10~100mMのAla、Asp、His、Leu、Lys、Gln、ProまたはGlu、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸と;約100~100000pfu/mlの弱毒化生デングワクチンと、pH約7.0~8.0の約5~300mMのヒスチジン、TRIS、Bis-Trisまたはリン酸塩緩衝液、またはこれらの組み合わせと、約50~300mg/mlの糖と、約3~10mg/mlのプロピレングリコールまたはグリセロールと、約3~10mg/mlのカルボキシメチルセルロースナトリウムと、場合により約15~75mMのNaClと、場合により約10~75mMのAla、Asp、His、Leu、Lys、Gln、ProまたはGlu、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸と;約600~20000pfu/mlの弱毒化生デングワクチンと、pH約7.0~8.0の約5~300mMのリン酸カリウム緩衝液と、約60~120mg/mlのスクロースまたはトレハロースまたはこれらの組み合わせと、約3~7mg/mlのプロピレングリコールまたはグリセロールと、約3~7mg/mlの平均分子量約90000のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、および約30~90mMのNaClと、場合により約10~75mMのアミノ酸Leu、LysまたはGlu、またはこれらの組み合わせと;約600~20000pfu/mlの弱毒化生デングワクチンと、pH約7.0~8.0の約11mMのリン酸カリウム緩衝液と、約90mg/mlのスクロースと、約5mg/mlのプロピレングリコールまたはグリセロールと、約5mg/mlの平均分子量約90000のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、約75mMのNaClと;約600~20000pfu/mlの弱毒化生デングワクチンと、pH約7.0~8.0の約11mMのリン酸カリウム緩衝液と、約90mg/mlのスクロースと、約5mg/mlのプロピレングリコールと、約5mg/mlの平均分子量約90000のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、約50mMのNaClと、約25mMのLeuと;約600~20000pfu/mlの弱毒化生デングワクチンと、pH約7.5の約11mMのリン酸カリウム緩衝液と、約90mg/mlのスクロースと、約5mg/mlのプロピレングリコールと、約5mg/mlの平均分子量約90000のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、約30mMのNaClとを含む。前記実施形態の一態様では、製剤が、約90~200mg/mlのトレハロースをさらに含む。
【0016】
本発明の好ましい実施形態では、製剤が、約600~20000pfu/mlの少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルスを含む弱毒化生デングワクチンと、pH約7.5~8の約11mMのリン酸カリウム緩衝液と、約90mg/mlのスクロースと、約110mg/mlのトレハロースと、約5mg/mlのプロピレングリコールと、約5mg/mlの平均分子量約90000のカルボキシメチルセルロースナトリウムと、約50mMのNaClと、約25mMのLeuとを含む。前記実施形態の一態様では、製剤が、約0.0001~5%w/vのポロキサマー188およびポロキサマー407から選択される界面活性剤をさらに含む。
【0017】
本発明はまた、約100~10000000pfu/mlの少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルスを含む弱毒化生デングワクチンと、pH約6.5~8.5の緩衝液と、約150~300mg/mlの糖と、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、2-ヒドロキシエチルセルロース(2-HEC)、クロスカルメロース、メチルセルロースまたはその薬学的に許容される塩、ヒト血清アルブミン(HSA)およびゼラチンからなる群から選択される担体と;場合により約5~100mMのアルカリ塩またはアルカリ塩と;場合によりアミノ酸Gln、ProまたはGlu、またはこれらの組み合わせとを含む製剤を提供する。
【0018】
一実施形態では、緩衝液が、コハク酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、TRIS、Bis-Tris、MES、MOPS、HEPES、酢酸塩およびクエン酸塩、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、アルカリまたはアルカリ塩が、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムまたはこれらの組み合わせである。さらなる実施形態では、糖がトレハロースまたはスクロース、またはこれらの組み合わせである。一実施形態では、スクロースとトレハロースの比が、1:1~1:4の間である。別の実施形態では、担体が、カルボキシメチルセルロースナトリウム、HPMC、HSAまたはゼラチンである。
【0019】
さらなる態様では、本発明は、約200~100000pfu/ml少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルスを含む弱毒化生デングワクチンと、pH約6.5~8.0の緩衝液と、約150~300mg/mlのスクロースとトレハロースの組み合わせとしての糖と、約0.3~40mg/mlのCMCナトリウム、HSA、HPMCまたはゼラチンと、場合により約10~100mMのアルカリまたはアルカリ塩と、場合により約5~25mMグルタミン酸との製剤;約600~20000pfu/mlの弱毒化生デングワクチンと、pH約7.0~8.0の約5~300mMのヒスチジン、TRISまたはリン酸塩緩衝液、またはこれらの組み合わせと、約50~100mg/mlのスクロースと、約90~200mg/mlのトレハロースと、約0.3~10mg/mlのCMCナトリウムまたは約10~40mg/mlゼラチンと、約30~90mMのアルカリまたはアルカリ塩との製剤;約600~20000pfu/mlの弱毒化生デングワクチンと、pH約7~8の約5~20mMのリン酸カリウムと、約75mg/mlのスクロースと、約175mg/mlのトレハロースと、約5mg/mlの平均分子量約90000のCMCナトリウムと、約30mMのNaClとの製剤;約600~20000pfu/mlの弱毒化生デングワクチンと、pH約7.0~8.0の約5~20mMのリン酸カリウムと、約75mg/mlのスクロースと、約175mg/mlのトレハロースと、約25mg/mlのゼラチンと、約30mMのNaClとの製剤;約600~20000pfu/mlの弱毒化生デングワクチンと、pH約7.0~8.0の約5~20mMのリン酸カリウムと、約250mg/mlのスクロースと、約50mg/mlのPVP K12との製剤を提供する。前記実施形態の一態様では、製剤が、約0.0001~5%w/vのポロキサマー188およびポロキサマー407から選択される界面活性剤をさらに含む。
【0020】
前記実施形態の一定の態様では、製剤が、アルミニウムアジュバントをさらに含む。上記製剤は、凍結もしくは凍結乾燥することができる、または溶液中で再構成することができる。一実施形態では、再構成が、約0.5~1.0mlの生理食塩水、水または注射用静菌水(BWFI)、および場合によりアルミニウムアジュバントを含む希釈剤で実施される。別の実施形態では、製剤が、凍結乾燥またはマイクロ波真空乾燥前に水溶液である。
【0021】
一実施形態では、弱毒化生デングワクチンが、四価の弱毒化生デングウイルスまたは弱毒化生キメラフラビウイルスを含む。別の実施形態では、LAVまたはLACVが、ウイルスの複製能を低下させる、3’非翻訳(UTR)領域のTL-2ステムループ構造に相当する約30ヌクレオチドの欠失を含むウイルスゲノムを含む。さらなる実施形態では、弱毒化生デングウイルスが、3’非翻訳(UTR)領域のTL-2ステムループ構造に相当する約30ヌクレオチドの欠失を含むウイルスゲノムを含み、デング血清型3に対して免疫原性であり、LAVのウイルスゲノムが、3’UTRのTL-3構造に相当するΔ30欠失から上流にヌクレオチドの欠失をさらに含むLAVである。
【0022】
本発明の好ましい実施形態では、弱毒化生デングワクチンが、DEN1Δ30ウイルス、DEN2/4Δ30ウイルス(DEN4骨格上のDEN2Δ30LACV)、DEN3Δ30ウイルスおよびDEN4Δ30ウイルスを含む四価の弱毒化生ワクチンである。別の好ましい実施形態では、弱毒化生デングウイルスが、rDEN1Δ30-1545、rDEN2/4Δ30(ME)-1495,7163、rDEN3Δ30/31-7164およびrDEN4Δ30-7132,7163,8308を含むLAVである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】DEN4製剤についてのDENV4凍結乾燥収率に対するCMCナトリウム、PG、アミノ酸の効果を示す図である。
図2】DEN4製剤についてのDENV4安定性に対するCMCナトリウム、PG、アミノ酸の効果を示す図である。製剤26(*)は、25℃での保存後にケークが崩壊したため、試験しなかった。
図3】DEN4製剤についてのDENV4凍結乾燥収率に対する糖アルコールの効果を示す図である。
図4】DEN4製剤についてのDENV4安定性に対する糖アルコールの効果を示す図である。
図5】DEN4製剤についてのDENV4凍結乾燥収率に対するpHの効果を示す図である。
図6】DEN4製剤についてのDENV4安定性に対するpHの効果を示す図である。
図7】DEN4製剤についてのDENV4凍結乾燥収率に対する緩衝液の効果を示す図である。
図8】DEN4製剤についてのDENV4安定性に対する緩衝液の効果を示す図である。
図9】DEN4製剤についてのDENV4凍結乾燥収率に対するNaCl濃度の効果を示す図である。
図10】DEN4製剤についてのDENV4安定性に対するNaCl濃度の効果を示す図である。
図11】デング血清型の凍結乾燥収率に対するプロピレングリコールおよびグリセロールの効果を示す図である。
図12】デング血清型の安定性に対するプロピレングリコールおよびグリセロールの効果を示す図である。
図13】凍結、マイクロ波乾燥(MVD)および凍結乾燥(lyo)DEN1製剤についての相対効力に対するL-15濃度の効果を示す図である。
図14】凍結、マイクロ波乾燥(MVD)および凍結乾燥(lyo)DEN2製剤についての相対効力に対するL-15濃度の効果を示す図である。
図15】凍結、マイクロ波乾燥(MVD)および凍結乾燥(lyo)DEN3製剤についての相対効力に対するL-15濃度の効果を示す図である。
図16】凍結、マイクロ波乾燥(MVD)および凍結乾燥(lyo)DEN4製剤についての相対効力に対するL-15濃度の効果を示す図である。
図17】凍結、マイクロ波乾燥(MVD)および凍結乾燥(lyo)DEN1製剤についての相対効力を示す図である。
図18A】37℃で1週間後の四価の製剤の安定性を示す図である。
図18B】25℃で1ヶ月後の四価の製剤の安定性を示す図である。
図19A】2~8℃で3ヶ月毎に最大18ヶ月まで試験した四価の製剤(DEN1)の安定性を示す図である。
図19B】2~8℃で3ヶ月毎に最大18ヶ月まで試験した四価の製剤(DEN2)の安定性を示す図である。
図19C】2~8℃で3ヶ月毎に最大18ヶ月まで試験した四価の製剤(DEN3)の安定性を示す図である。
図19D】2~8℃で3ヶ月毎に最大18ヶ月まで試験した四価の製剤(DEN4)の安定性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書を通しておよび添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上別段の意味を有することが明らかな場合を除き、複数指示対象を含む。
【0025】
「または」への言及は、文脈が示される可能性の1つを明確に指示しない限り、いずれかまたは両方の可能性を示す。場合によっては、いずれかまたは両方の可能性を強調するために「および/または」を使用した。
【0026】
「約」という用語は、物質または組成物の量(例えば、mMまたはM)、製剤成分の割合(v/vまたはw/v)、溶液/製剤のpH、または方法のステップを特徴付けるパラメータの値などを修飾する場合、例えば、これらの手順の器差を通した;組成物の製造もしくは使用、または手順の実施に使用される成分の製造、供給源もしくは純度の違いなどを通した、物質または組成物の調製、特性評価、および/または使用に関与する典型的な測定、取り扱い、およびサンプリング手順を通して生じ得る数量の変動を指す。一定の実施形態では、「約」が、±0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%または10%の変動を意味し得る。
【0027】
「増量剤」という用語は、凍結乾燥製品の構造を提供する薬剤を含む。増量剤に使用される一般的な例としては、マンニトール、グリシンおよびラクトースが挙げられる。薬学的にエレガントなケークを提供することに加えて、増量剤は、崩壊温度の修正、凍結-融解保護の提供、および長期保存にわたるタンパク質安定性の増強に関して有用な品質を付与することもできる。これらの薬剤はまた、張度調整剤としても役立ち得る。
【0028】
「デングウイルス参照試料」は、デングウイルス製剤試験試料と同じデングウイルス製剤成分および比を有し、デングウイルス製剤試験試料と同じ条件(すなわち、凍結乾燥、マイクロ波乾燥、リオスフェア(lyosphere)乾燥)下でデングウイルス製剤を乾燥させた直後の固体組成物、またはデングウイルスの感染力損失がないもしくは最小限である条件下で保存された前記乾燥固体組成物(すなわち、-70℃以下で保存);または-70℃で凍結した固体デングウイルス製剤を指す。
【0029】
「グリコール」は、2つのヒドロキシル基を有する化合物を指す。
【0030】
「感染力損失」は、当技術分野で知られている方法を使用して、デングウイルス試験試料のウイルス複製の損失をデングウイルス参照試料と比較することを指す。一実施形態では、感染力損失が、デング相対感染力アッセイを使用して測定される。別の実施形態では、感染力損失が、プラークアッセイを使用して測定される。
【0031】
「凍結乾燥(lyophilization)」、「凍結乾燥した(lyophilized)」、および「凍結乾燥した(freeze-dried)」という用語は、乾燥される材料が最初に凍結され、次いで、氷または凍結溶媒が真空環境での昇華によって除去されるプロセスを指す。保存時の凍結乾燥製品の安定性を高めるために、賦形剤を凍結乾燥前製剤に含めることができる。
【0032】
本明細書で使用される「リオスフェア」は、実質的に球形または卵形の治療活性剤を含む乾燥した凍結単一体を指す。いくつかの実施形態では、リオスフェアの直径が、約2~約12mm、好ましくは2~8mm、例えば2.5~6mmまたは2.5~5mmである。いくつかの実施形態では、リオスフェアの体積が、約20~550μL、好ましくは20~100μL、例えば20~50μLである。リオスフェアが実質的に球形ではない実施形態では、リオスフェアのサイズが、より長い寸法とより短い寸法の比であるそのアスペクト比に関して記載され得る。リオスフェアのアスペクト比は、0.5~2.5、好ましくは0.75~2、例えば1~1.5であり得る。
【0033】
本明細書で使用される「マイクロ波真空乾燥」は、昇華を通してワクチン製剤の乾燥ワクチン製品(好ましくは水分6%未満)を形成するためにマイクロ波放射(放射エネルギーまたは非電離放射としても知られる)を利用する乾燥方法を指す。一定の実施形態では、マイクロ波乾燥が、米国特許出願公開第2016/0228532号明細書に記載されるように実施される。一実施形態では、マイクロ波放射が進行波形式である。
【0034】
「再構成された溶液」は、ウイルスが、再構成された溶液中に分散されるように、固体形態(凍結乾燥ケークなど)の乾燥したウイルスを希釈剤に溶解することによって調製されたものである。再構成された溶液は、投与(例えば、筋肉内投与)に適しており、皮下投与に適していてもよい。
【0035】
本明細書で使用される「(1又は複数の)塩」は、無機および/または有機酸によって形成される酸性塩、ならびに無機および/または有機塩基によって形成される塩基性塩を表す。他の塩も有用であるが、薬学的に許容される(すなわち、非毒性で生理学的に許容される)塩が好ましい。代表的な塩基性塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(ナトリウム、リチウムおよびカリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(カルシウムおよびマグネシウム塩、亜鉛塩など)、有機塩基(例えば、有機アミン)による塩(N-Me-D-グルカミン、コリン、トロメタミン、ジシクロヘキシルアミン、t-ブチルアミンなど)、およびアミノ酸(アルギニン、リジンなど)による塩などが含まれる。
【0036】
「糖アルコール」は、糖に由来するポリオールを指し、一般式HOCH(CHOH)CHOH、n=1、2、3、4、5、6、7、8、9または10を有する。例としては、それだけに限らないが、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトールおよびグリセロールが挙げられる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「x%(w/v)」は、xg/100mlと同等である(例えば、5%w/vは、50mg/mlに等しい)。
【0038】
「弱毒化生デングウイルス」という用語は、本明細書中で「LAV」とも呼ばれ、デングウイルスが疾患を引き起こす能力が、野生型デングウイルスと比較して低下していることを意味する。当業者であれば、ウイルスが培養、継代または伝播されると突然変異を受け得ることを理解するだろう。LAVは、クローニングの目的で導入された突然変異に加えて、これらの自然発生の突然変異を含み得る。LAVは、これらの突然変異がまったくない、または1つもしくは複数ある、同種または異種集団であり得る。
【0039】
「弱毒化生キメラウイルス」(あるいは「弱毒化生キメラフラビウイルス」)または「LACV」という用語は、ウイルスゲノムが第1のフラビウイルスの骨格(C、NS1、NS2A、NS2B、NS3、NS4A、NS4BおよびNS5遺伝子を含む)ならびに第2のフラビウイルスのプレメンブレン(prM)およびエンベロープ(E)遺伝子を含み、第2のフラビウイルスがDENV1、DENV2、DENV3またはDENV4から選択される、弱毒化生キメラウイルスを指す。第1のフラビウイルスは、異なるデング血清型であることができる、または別のフラビウイルス、例えば黄熱病ウイルスであることもできる。
【0040】
「Δ30 LAV」という用語は、ウイルスの複製能力を低下させるヌクレオチド(nt)143付近~nt172付近の3’非翻訳(UTR)領域のTL2ステムループ構造に相当する約30ntの欠失を含むウイルスゲノムを含む、弱毒化生DEN1、DEN2、DEN3またはDEN4ウイルスを指す(国際公開第03/092592号およびWhiteheadらの米国特許第8337860号明細書参照)。
【0041】
「Δ30 LACV」という用語は、ウイルスの複製能力を低下させるnt143付近~nt172付近の3’UTR領域のTL2ステムループ構造に相当する約30ntの欠失を含むウイルスゲノムを含む、DENV1~4の弱毒化生キメラフラビウイルス(LACV)を指す(国際公開第03/092592号およびWhiteheadらの米国特許第8337860号明細書参照)。
【0042】
「Δ30/Δ31 LAV」という用語は、ウイルスゲノムが3’UTRのTL2ステムループ構造の約30ntの欠失を含み、欠失がデング3’UTRのTL-3相同構造の5’境界まで広がるようにTL-3相同構造までのおよびこれを含む配列を除去する3’UTRのnt258~228の約31ntの別の非隣接上流欠失をさらに含む、弱毒化生DEN1、DEN2、DEN3またはDEN4を指す。Whiteheadらの米国特許第8337860号明細書を参照されたい。本発明の好ましい実施形態では、DEN3 LAVがΔ30/Δ31突然変異を含む。
【0043】
「Δ30/Δ31 LACV」という用語は、キメラウイルスのウイルスゲノムが3’UTRのTL2ステムループ構造の30ntの欠失を含み、上記のTL-3構造を欠失させる3’UTRの別の非隣接上流31nt欠失をさらに含む、上記の弱毒化生キメラDEN1、DEN2、DEN3またはDEN4を指す。
【0044】
「LATV」または「四価の弱毒化生デングワクチン」または「LATVワクチン」という用語は、有効量のDEN1 LAVまたはLACV、DEN2 LAVまたはLACV、DEN3 LAVまたはLACVおよびDEN4 LAVまたはLACVを含むワクチンを指す。一実施形態では、デングLAVまたはLACVのうちの少なくとも1つが、上および国際公開第03/092592号に記載されるように、3’UTR中のTL-2構造のΔ30突然変異を含む。いくつかの好ましい実施形態では、LATVが次の特徴を含む:(1)DENV1ウイルスゲノムが3’UTR中のTL2ステムループ構造に相当する30nt欠失を含むDENV1 LAVである、rDEN1Δ30;(2)DENV4骨格上にDENV2 prMおよびE遺伝子を含むDENV2 LACVであって、DEN4骨格が3’UTR中のTL2ステムループ構造に相当する30nt欠失を含む、rDEN2/4Δ30;(3)DENV3ウイルスゲノムが3’UTR中のTL2ステムループ構造に相当する30nt欠失および3’UTRのTL-3構造に相当する別の非隣接上流31nt欠失を含むDENV3 LAVである、rDEN3Δ30/Δ31;ならびに(4)DENV4ウイルスゲノムが3’UTR中のTL2ステムループ構造に相当する30nt欠失を含むDENV4 LAVである、rDEN4Δ30(国際公開第2016106107号の図1参照)。
【0045】
「非複製ワクチン」は、組換えサブユニットワクチン、不活化ワクチン、コンジュゲートワクチンまたはDNAワクチンから選択される、デングウイルス感染またはその臨床症状を予防または処置するためのデングウイルスワクチンを指す。
【0046】
「不活化ワクチン」は、有効量の死滅したまたは不活性な全粒子デングウイルスと、薬学的に許容される担体とを含むワクチンであって、ウイルスが化学物質、熱または放射線を含む任意の手段によって不活化されているワクチンを指す。不活化ワクチンの不活化の後の残存感染力は低く、例えば不活化後は5プラーク形成単位(PFU)/mL未満である。好ましい実施形態では、不活化の後の残存感染力が非常に低く、例えば4PFU/mL以下、3PFU/mL以下または2PFU/mL以下、1PFU/mL未満、0.5PFU/mL以下または0.1PFU/mL以下である。特定のワクチンのPFUは、例えば、プラークアッセイ、免疫染色アッセイまたはウイルス感染力を検出することが当技術分野で知られている他の方法を使用することによって決定され得る。
【0047】
「コンジュゲートワクチン」は、担体タンパク質に共有結合したデング抗原を含むワクチンを指す。
【0048】
「DNAワクチン」は、デングタンパク質、デングタンパク質断片およびデング融合タンパク質、ならびにこれらの変異体を含むデングタンパク質抗原をコードするヌクレオチドの配列を含むワクチンである。DNAワクチンは、プロモーターと作動可能に連結された目的の抗原をコードするヌクレオチドの配列を含むプラスミド(例えば、DNAまたはウイルスプラスミド)を含む。
【0049】
「サブユニットワクチン」は、完全なデングウイルスではないが1つまたは複数のデング抗原成分、例えばデング免疫原性エピトープ、デングタンパク質、異なるデング血清型抗原の融合体を含むデング抗原融合タンパク質またはデングタンパク質断片を含むワクチンを指す。本明細書で使用されるサブユニットワクチンは、一価(単一のデング抗原を含む)であることができる、または多価(2つ以上の抗原成分を含む)であることができる。好ましい実施形態では、サブユニットワクチンが四価である。
【0050】
「プライム-ブースト」という用語は、(1)(a)少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または弱毒化生キメラフラビウイルス(LACV)と、(b)薬学的に許容される担体とを含む第1のデングウイルスワクチン組成物を、それを必要とする患者に投与することと;(2)所定の時間が経過するのを待つことと;(3)第2のデングウイルスワクチン組成物または非複製デングワクチンを患者に投与することとを含む治療レジメンを指す。第2のデングウイルスワクチン組成物は、第1のデングウイルスワクチン組成物と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態では、第2のデングウイルスワクチンが、弱毒化生デングワクチンまたは組換えデングサブユニットワクチンである。本発明の組成物に使用されるデングウイルスワクチンは、ヒト患者において相同デングウイルスに対するウイルス中和抗体応答を誘導するのに有用である。
【0051】
「処置」という用語は、治療的処置と予防的(prophylactic)または予防的(preventative)手段の両方を指す。処置「を必要とする」個体または患者は、いずれかの臨床症状が顕在化しているかどうかかにかかわらず既にデング感染しているもの、ならびにデングに感染するリスクがあるものを含む。本発明のデングワクチン組成物による患者の処置は、以下のうちの1つまたは複数を含む:患者のデングに対する免疫応答を誘導する/増加させること、1つまたは複数のデングウイルスに対するウイルス中和抗体応答を誘導すること、デングに感染している患者のデングの臨床症状の可能性を予防する、改善する、抑止するまたは減少させること、デング熱、DHFもしくはDSSおよび/またはデング感染に関連する他の疾患もしくは合併症を発症する可能性を予防するまたは減少させること、デング感染および/またはデングに関連する他の疾患もしくは合併症の臨床症状の重症度または持続期間を減少させること、ならびにデング感染の可能性を予防するまたは減少させること。
【0052】
「薬学的有効量」または「有効量」という用語は、それだけに限らないが、患者のデングに対する免疫応答を誘導する/増加させること、患者のデングに対するウイルス中和抗体応答を誘導する/増加させること、デング感染の可能性を予防するもしくは減少させること、デング再発性感染の可能性を予防するもしくは減少させること、デングに感染している患者のデング感染の臨床症状を予防する、改善するもしくは抑止すること、デング熱、DHFおよび/もしくはDSSを予防すること、またはデングに関連する疾患の重症度もしくは持続期間を減少させることを含む、所望の効果をもたらすために十分なワクチン組成物が患者に導入されることを意味する。当業者は、このレベルが変化し得ることを認識する。
【0053】
「免疫応答」という用語は、細胞媒介(T細胞)免疫応答および/または抗体(B細胞)応答を指す。
【0054】
「患者」という用語は、免疫適格性個体と免疫不全個体の両方の個体を含む、本明細書に記載されるデングワクチン組成物を受けることになる、デングウイルス、例えばDEN1、DEN2、DEN3またはDEN4に感染することが可能な哺乳動物を指す。好ましい実施形態では、患者がヒトである。本明細書で定義される場合、「患者」は、自然感染もしくはワクチン接種を通して既にデングに感染しているもの、またはその後に曝露され得るものを含む。
【0055】
「ISCOM様アジュバント」は、その機能に寄与する独特な球状のケージ様構造を有する、特徴的なケージ様粒子を共に形成するサポニン、コレステロールおよびリン脂質から構成される免疫刺激複合体(ISCOM)を含むアジュバントである(概説については、Barr and Mitchell,Immunology and Cell Biology 74:8-25(1996)参照)。この用語は、抗原を使用して製造され、ISCOM(商標)粒子内に抗原を含むISCOM(商標)アジュバントと抗原を使用しないで製造される中空のISCOM型アジュバントであるISCOM(商標)マトリックスアジュバントの両方を含む。本明細書で提供される組成物および方法の好ましい実施形態では、ISCOM型アジュバントが、ISCOM(商標)マトリックス粒子アジュバント、例えば抗原を使用しないで製造されるISCOMATRIX(商標)である(ISCOM(商標)およびISCOMATRIX(商標)はCSL Limited、Parkville、オーストラリアの登録商標である)。
【0056】
「rDEN1Δ30-1545」という名称は、ウイルスゲノムが(1)3’UTRのTL2ステムループ構造の30nt欠失および(2)Vero細胞における増殖にウイルスが適応した後に生じた1545位ヌクレオチドにおけるGへの置換を含む、組換えデング1ウイルスを指す。
【0057】
「rDEN2/4 Δ30(ME)-1495,7163」という名称は、ウイルスゲノムが:(1)(i)3’UTRのTL2ステムループ構造の30nt欠失ならびに(ii)Vero細胞における増殖にウイルスが適応した後に生じた1495位ヌクレオチドにおけるUへの置換および7163位ヌクレオチドにおけるCへの置換を含むデング4の骨格(C、NS1、NS2A、NS2B、NS3、NS4A、NS4B、NS5遺伝子)ならびに(2)デング2のprおよび遺伝子を含む、組換えキメラデング2/4ウイルスを指す。
【0058】
「rDEN3Δ30/31-7164」という名称は、ウイルスゲノムが:(1)3’UTRのTL2ステムループ構造の30nt欠失、(2)TL-3構造を欠失させる、Δ30突然変異の上流の3’UTR中の別の31nt欠失、および(3)Vero細胞における増殖にウイルスが適応した後に生じた7164位ヌクレオチドにおけるCへの置換を含む、組換えデング3ウイルスを指す。
【0059】
「rDEN4Δ 30-7132,7163,8308」という名称は、ウイルスゲノムが:(1)3’UTRのTL2ステムループ構造の30nt欠失ならびに(2)Vero細胞における増殖にウイルスが適応した後に生じた7132位ヌクレオチドにおけるUへの置換、7163位ヌクレオチドにおけるCへの置換および8308位ヌクレオチドにおけるGへの置換を含む、組換えデング4ウイルスを指す。
【0060】
「V180」は、4つのデングウイルス血清型(DENV1、DENV2、DENV3およびDENV4)の各々由来の切断型エンベロープ糖タンパク質(DEN-80E)から構成される四価のサブユニットワクチンを指し、Eタンパク質が、宿主細胞内で組換え発現したときに前記Eタンパク質が増殖培地中に分泌可能であるように、各々がそのN末端のアミノ酸残基1から始まる野生型Eの長さのおよそ80%を構成する。Collerらの国際公開第2012/154202号を参照されたい。
【0061】
以下の略語が本明細書で使用され、以下の意味を有する:Cはデングカプシド遺伝子であり、DEN(あるいはDENV)はデングウイルスであり、DFはデング熱であり、DHFはデング出血熱であり、DSSはデングショック症候群であり、hは時間であり、GMTは幾何平均力価であり、IMは筋肉内であり、IMXはIscomatrix(商標)であり、JEは日本脳炎であり、LAVは弱毒化生ウイルスであり、NS(NS1~NS5に使用される)は非構造であり、ntはヌクレオチドであり、PFUはプラーク形成単位であり、prMはデングプレメンブレン遺伝子であり、SCは皮下であり、TBEはダニ媒介性脳炎であり、UTRは非翻訳領域であり、WN(あるいはWNV)はウエストナイルウイルスであり、YF(あるいはYFV)は黄熱病ウイルスであり、wtは野生型である。
【0062】
弱毒化生デングウイルスワクチン
上記のように、本発明のデングウイルスワクチン組成物は、少なくとも1つのデングウイルス1型(DEN1)、デングウイルス2型(DEN2)、デングウイルス3型(DEN3)およびデングウイルス4型(DEN4)からなる群から選択されるLAV、またはLACVを含む弱毒化生デングワクチンを含む。一実施形態では、LAVまたはLACVが、3’UTR中のTL-2 Δ30改変を含むウイルスゲノムを含み、LAVまたはLACVが、デングに対する免疫応答を誘導する、デングに対するウイルス中和抗体応答を誘導する、感染の可能性から保護するもしくはこれを減少させる、またはその臨床症状の重症度もしくは持続期間を減少させる。本発明の実施形態では、弱毒化生デングワクチンが、一価、二価、三価または四価である、すなわち、DEN血清型1~4ののうちそれぞれ1つ、2つ、3つまたは4つに対する免疫応答を誘導するまたはこれらから保護する。本発明の好ましい実施形態では、弱毒化生デングワクチンが四価である、すなわち、DEN血清型1~4に対する免疫応答を誘導するまたはこれらから保護し、DEN1、DEN2、DEN3およびDEN4成分を含み、各成分がLAVまたはLACVのいずれかである。
【0063】
本発明の追加の実施形態では、弱毒化生デングワクチンが、四価のLAVまたは「LATV」である(すなわち、本明細書で定義される、DENV1~4由来の弱毒化生デングウイルス、またはDENV1~4由来の弱毒化生キメラフラビウイルス、またはこれらの組み合わせを含み、LAVまたはLACVの少なくとも1つがΔ30LAVまたはΔ30LACVである)。本発明の追加の実施形態では、弱毒化生デングワクチンが四価であり、少なくとも1つのキメラフラビウイルスを含み;キメラフラビウイルスが、単一デングウイルス血清型のprMおよびEタンパク質をコードするヌクレオチド配列ならびに異なるフラビウイルスのカプシドおよび非構造タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含むウイルスゲノムを含み、キメラフラビウイルスが弱毒化されている。本発明のいくつかの実施形態では、キメラフラビウイルスのカプシドおよび非構造タンパク質が、prMおよびEタンパク質とは異なるデング血清型に由来する。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明のLATVの各LAVまたはLACV成分が、独立にウイルスゲノムの3’UTR中のTL-2 Δ30改変を含む弱毒化キメラフラビウイルスまたは弱毒化デングウイルスのいずれかである、弱毒化生ウイルスを含む。デングウイルスの弱毒化は、TL-2 Δ30改変を通して達成される。しかしながら、それだけに限らないが、1495位、1545位、7132位、7163位、7164位および8308位の突然変異を含む、付加的な弱毒化突然変異がワクチンの1つまたは複数の成分に含まれてもよい。弱毒化変異は、当技術分野で公知の方法を含む様々な技術によって、例えば組織培養の連続継代を通して、またはより定義されている遺伝子操作を通して、達成することができる。デングウイルスおよびキメラデングウイルスを弱毒化するのに有用な突然変異は、当技術分野で公知である。例えば、国際公開第02/095075号、国際公開第2006/44857号、米国特許第7189403号明細書、米国特許第8337860号明細書、国際公開第2003/103571号、国際公開第2000/014245号および国際公開第2008/022196号を参照されたい。国際公開第06/134433号、国際公開第2006/134443号、国際公開第2007/141259号、国際公開第96/40933号、国際公開第2000/057907号、国際公開第2000/057908号、国際公開第2000/057909号、国際公開第2000/057910号および国際公開第2007/015783号に記載されている株などの、公知の弱毒化デング株も本明細書の組成物に使用することができる。
【0065】
本発明の組成物の好ましい実施形態は、四価の弱毒化生デングワクチン(LATV)を含む。このような四価の弱毒化生ワクチンは、4つの弱毒化デングウイルス(LAV)、3つのLAVと1つの弱毒化キメラフラビウイルス株(LACV)、2つのデングLAVと2つのLACV、1つのデングLAVと3つのLACV、または4つのLACVを含むことができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、LATVが次の特徴を含む:(1)DENV1ウイルスゲノムが3’UTR中のTL2ステムループ構造に相当する30nt欠失を含むDENV1 LAVである、rDEN1Δ30;(2)DENV4骨格上にDENV2 prMおよびE遺伝子を含むDENV2 LACVであって、DEN4骨格が3’UTR中のTL2ステムループ構造に相当する30nt欠失を含む、rDEN2/4Δ30;(3)DENV3ウイルスゲノムが3’UTR中のTL2ステムループ構造に相当する30nt欠失および3’UTRのTL-3構造に相当する別の非隣接上流31nt欠失を含むDENV3 LAVである、rDEN3Δ30/Δ31;ならびに(4)DENV4ウイルスゲノムが3’UTR中のTL2ステムループ構造に相当する30nt欠失を含むDENV4 LAVである、rDEN4Δ30。
【0067】
キメラフラビウイルスを含む本発明の実施形態では、各キメラフラビウイルスが、単一デングウイルス血清型のprMおよびEタンパク質をコードするヌクレオチド配列ならびに異なるフラビウイルスのカプシドおよび非構造タンパク質(すなわち、「骨格」)をコードするヌクレオチド配列を含むウイルスゲノムを含み、キメラフラビウイルスの各々が弱毒化されている。組換え弱毒化生フラビウイルス株を構築する方法は、ベースとしての公知の弱毒化株の使用を含んでよく、この方法は、目的の関連ウイルスからの適切な遺伝子(prMおよびE)でベースウイルスの等価の遺伝子を置換することを含む。例えば、このアプローチは、キメラウイルスがWNVのprMおよびE遺伝子を含む弱毒化DEN-4株をベースとした内部型キメラであるWNVのために使用されている(Bray,M.et al.,J.Virol.(1996)70:4162-4166;Chen,W.,et al.,J.Virol.(1995)69:5186-5190;Bray,M.and Lai,C.-J.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1991)88:10342-10346;Lai,C.J.et al.,Clin.Diagn.Virol.(1998)10:173-179)。
【0068】
別のアプローチは、組換えキメラワクチンを開発するためのベースとしてのYF 17D弱毒化黄熱病株の使用であり、これは以前にJEウイルス、DENウイルスおよびWNウイルスのために使用された。キメラ黄熱病ワクチンは、任意の黄熱病株、例えばYFV 17D由来のprMおよびEタンパク質をコードする遺伝子を、デング血清型のもので置き換えることによって黄熱病骨格を含んで構築することができる。DNAクローニング後、RNAを転写し、Vero細胞にトランスフェクトして、YFV 17D複製機構および関連デングウイルスの外被を有するキメラウイルスが得られる。Guirakhoo et al.,Journal of Virology,74(12):5477-5485(2000);Guy et al.,Vaccine 28:632-649(2010);Monath T.P.Adv Virus Res(2003)61:469-509;Monath et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2006)103:6694;および国際公開第98/37911号を参照されたい。よって、本発明のいくつかの実施形態では、弱毒化生デングワクチンが、(1)単一デング血清型のprMおよびEタンパク質ならびに黄熱病骨格を含む少なくとも1のキメラフラビウイルス、ならびに(2)3’UTRのTL-2ステムループ構造の30ヌクレオチド欠失を含むウイルスゲノムを含む少なくとも1のLAVまたはLACVを含む。
【0069】
本発明の組成物で有用なキメラ弱毒化生フラビウイルスはまた、ウイルスゲノムが単一デングウイルス血清型のprMおよびE遺伝子ならびに異なるデングウイルス血清型のカプシドおよび非構造遺伝子を含むデングキメラウイルスを含み得る。キメラウイルスが第2のデング血清型由来の骨格を含む実施形態では、デング骨格が、TL-2ステムループ構造に相当する3’UTRの約30ヌクレオチドの欠失を含み、付加的な弱毒化突然変異を含んでもよい。任意の弱毒化デングウイルスまたは野生型デングウイルスを、弱毒化デング骨格または野生型デングウイルス骨格へのTL-2ステムループ構造の30ヌクレオチド欠失の導入によって、キメラウイルスの骨格として使用することができる。デングウイルス骨格の弱毒化は、連続継代を通して、定義されている遺伝子突然変異の導入を通して、または公知の弱毒化デング株の使用を通して達成することができる。デングキメラワクチンは、例えば、Whiteheadらの国際公開第03/092592号に記載されている。本発明のいくつかの実施形態では、弱毒化生ワクチンが、カプシドおよび非構造タンパク質がprMおよびEタンパク質とは異なるデング血清型に由来する、キメラフラビウイルスを含む。
【0070】
本発明のデングウイルスワクチン組成物は、有効量の弱毒化生ウイルスワクチンを含む。本発明のいくつかの実施形態では、弱毒化生デングワクチンの効力が、10~約1×10プラーク形成単位(PFU)である。代替実施形態では、弱毒化生デングワクチンの効力が、約1×10~約1×10PFUである。他の実施形態では、弱毒化生デングワクチンの効力が、約1×10~約1×10PFUである。
【0071】
ウイルスプラークアッセイは、ウイルス試料中のプラーク形成単位(pfu)の数を決定する。手短に言えば、デング免疫プラークアッセイでは、宿主細胞(例えば、Vero細胞)のコンフルエントな単層を様々な希釈度のデングウイルスに感染させ、メチルセルロースを含有する半固体オーバーレイ培地で覆って、ウイルス感染が無差別に広がるのを防ぐ。(1又は複数の)ウイルス感染細胞は溶解し、隣接細胞に感染を広げ、感染から溶解のサイクルが繰り返される。感染細胞はプラーク(非感染細胞に囲まれた感染Vero細胞の群)を形成し、これは固定および抗デング血清型特異的モノクローナル抗体(mAb)を使用した免疫染色後、視覚的に見ることができる。プラークをカウントし、希釈係数と組み合わせた結果を使用して、試料中の1mL当たりのプラーク形成単位数(pfu/mL)を計算する。デング効力の結果(pfu/mL)は、試料内の感染性粒子の数を表し、形成された各プラークが1つの感染性ウイルス粒子を表すという仮定に基づく。
【0072】
デングサブユニットワクチン
本発明のいくつかの実施形態では、製剤が、1つまたは複数のデング抗原タンパク質を含む組換えデングサブユニットワクチンを含む。本発明のこの態様の好ましい実施形態では、組換えデングサブユニットワクチンが、1つまたは複数のデングタンパク質、融合タンパク質、またはその1つもしくは複数の断片を含む。さらに好ましい実施形態では、組換えデングサブユニットワクチンが、デングエンベロープまたはEタンパク質、またはこれらの断片を含む。
【0073】
さらに好ましい実施形態では、組換えデングサブユニットワクチンが四価である、すなわち、4つ全てのデング血清型に対する免疫応答を標的とする。組換えデングサブユニットワクチンは、4つの組換えデングタンパク質または4つ未満、例えば組換えDEN1タンパク質、組換えDEN2タンパク質および組換えDEN3/4融合タンパク質を含むことができる。いくつかの実施形態では、組換えデングサブユニットワクチンが、組換え発現系を使用して産生および分泌されるDEN1~4のデングウイルスエンベロープ糖タンパク質またはその断片(例えば、DEN1-80E、DEN2-80E、DEN3-80E、DEN4-80EまたはDEN4-80EZip)を含む。前記サブユニットワクチンは、以下により完全に記載されるように、アジュバントを含んでもよい。
【0074】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態では、組換えデングサブユニットワクチンが、1つまたは複数の精製されたデングウイルスエンベロープ(「E」)タンパク質、薬学的に許容される賦形剤を含み、Eタンパク質が、宿主細胞内で組換え発現したときに前記Eタンパク質が増殖培地中に分泌可能であるように、各々がそのN末端のアミノ酸残基1から始まる野生型Eの長さのおよそ80%を構成し、組成物がヒト対象で中和抗体の産生を誘導する。本発明のいくつかの実施形態では、組換えデングサブユニットワクチンが、有効量のアジュバントをさらに含む。本発明のいくつかの実施形態では、DEN-4 Eタンパク質が、米国特許第6749857号明細書および国際公開第2012/154202号に記載されるように、二量体(「DEN4-80EZip」)である。
【0075】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態では、上記組成物中のEタンパク質が、昆虫宿主細胞内で組換え産生および発現される。さらに好ましい実施形態では、Eタンパク質が、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)のSchneider 2(S2)宿主細胞内で組換え産生および発現される。
【0076】
組換えデングウイルスEタンパク質は、ショウジョウバエのSchneider 2(S2)細胞を使用する細胞培養発現系によって産生することができる。この系は、天然様構造を維持した組換えデングエンベロープタンパク質を産生することが実証されている(Cuzzubbo et al.,Clin.Diagn.Lab.Immunol.(2001)8:1150-55;Modis et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(2003)100:6986-91;Modis et al.,Nature(2004)427:313-9;Zhang et al.,Structure(2004)12(9):1607-18)。この発現系はまた、ウエストナイルウイルス、日本脳炎ウイルス、C型肝炎ウイルスおよびダニ媒介性脳炎ウイルスなどの他のフラビウイルス由来の他の組換えエンベロープタンパク質を発現することも示されている。組換えデングエンベロープタンパク質は、天然エンベロープタンパク質の80%を残して、C末端で切断され得る(「80E」)。よって、80Eは、そのN末端のアミノ酸1で始まるEタンパク質の連続アミノ酸のおよそ最初の80%として定義される。
【0077】
上記のように、本発明のこの態様のいくつかの実施形態は、そのN末端のアミノ酸残基1から始まる野生型Eの長さのおよそ80%からなる切断型80Eタンパク質を含む。本発明のいくつかの実施形態に使用されるEタンパク質は、そのタンパク質の膜アンカー部分(カルボキシ末端のEのおよそ最後の10%)を欠失している。換言すれば、本発明の具体的な実施形態に使用される切断型80Eタンパク質は、そのN末端のアミノ酸1で始まるEの連続アミノ酸の最大で最初の90%からなり、よって細胞外培地中に分泌されることが可能になり、回収が容易になる。切断は、80E部分を膜アンカー部分と連結するEタンパク質の「ステム」部分をさらに欠失させ得る;ステム部分は注目すべき抗原性エピトープを含まないので、好ましい抗原であるDEN1-80E、DEN2-80E、DEN3-80E、DEN4-80EまたはDEN4-80EZipに含まれない。Eタンパク質の90%超であるが100%未満をクローニングし、分泌することができる、すなわちこのタンパク質は90%+の長さのカルボキシ切断型であることができ、切断型Eタンパク質が分泌可能である限り、膜貫通ドメインの一部を含むことができる。「分泌可能」は、発現系中の形質転換細胞から分泌されることが可能であり、典型的には分泌されることを意味する。よって、当業者であれば、本発明の組成物および方法に有用なデングEタンパク質が、このタンパク質が分泌可能である限り、本明細書に例示される80%から変動し得ることを認識するだろう。本発明の各態様の好ましい実施形態では、DEN Eタンパク質が、エンベロープタンパク質のN末端アミノ酸から始まって393番目から401番目のアミノ酸の範囲内のアミノ酸で終わる約80%の長さであり、例えばデングウイルス2型のアミノ酸1~アミノ酸395である。本発明の各態様の代替実施形態では、デングEタンパク質が、そのN末端のアミノ酸1で始まるEの連続アミノ酸の約75%、約85%、約90%、約95%または約98%であり得る。本明細書中の発明の態様の例示的な実施形態では、DEN Eタンパク質が、そのN末端のアミノ酸1で始まるEタンパク質の連続アミノ酸のおよそ80%であり;例えば、配列番号1に示されるDEN1-80E、配列番号2に示されるDEN2-80E、配列番号3に示されるDEN3-80Eおよび配列番号4に示されるDEN4-80Eである。
【0078】
分泌されるEタンパク質は、組換えタンパク質の免疫原性がさらに増強されるように、DEN4-80EZipタンパク質などの中の二量体化を促進するドメインをさらに含み得る。例示的なDEN4-80EZipタンパク質は、配列番号5に示されるアミノ酸配列を含む。本発明のこの態様のいくつかの実施形態では、組成物に含まれるDEN1、DEN2およびDEN3の80E抗原が単量体であり、DEN4 80E抗原が二量体である。
【0079】
本発明のこの態様の代替実施形態では、組成物中のDEN1-80E、DEN2-80E、DEN3-80EおよびDEN4-80Eタンパク質が、単量体である。このような実施形態では、DEN4成分が、DEN1、DEN2およびDEN3タンパク質の個々の量の約1.5倍~約3倍、好ましくはDEN1、DEN2およびDEN3成分(タンパク質)の量の約2倍の量で存在する。本発明のこの態様の好ましい実施形態では、組成物中のDEN1:DEN2:DEN3:DEN4抗原の比が、およそ1:1:1:2である。
【0080】
デングEタンパク質を含む本発明の実施形態では、組成物中の各Eタンパク質の量が、約0.5μg~約500μgである。代替実施形態では、各Eタンパク質の量が、約0.5μg~約450μg、0.5μg~約400μg、0.5μg~約350μg、0.5μg~約300μg、0.5μg~約250μg、0.5μg~約200μg、0.5μg~約150μg、0.5μg~約100μg、0.5μg~約50μg、5.0μg~約500μg、5.0μg~約450μg、5.0μg~約400μg、5.0μg~約350μg、5.0μg~約300μg、5.0μg~約250μg、5.0μg~約200μg、5.0μg~約150μg、5.0μg~約100μg、5.0μg~約50μg、10μg~約500μg、10μg~約450μg、10μg~約400μg、10μg~約350μg、10μg~約300μg、10μg~約250μg、10μg~約200μg、10μg~約150μg、10μg~約100μg、10μg~約50μg、25μg~約500μg、25μg~約450μg、25μg~約400μg、25μg~約350μg、25μg~約300μg、25μg~約250μg、25μg~約200μg、25μg~約150μg、25μg~約100μgまたは25μg~約50μgである。さらに好ましい実施形態では、組成物中の各Eタンパク質の量が、約1.0μg~約100μgである。なおさらなる実施形態では、組成物中の各Eタンパク質の量が、およそ10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450または500μgから選択される。
【0081】
不活化デングワクチン
本明細書における不活化デングワクチンは、1つもしくは複数の全粒子不活化デングウイルスおよび/または1つもしくは複数の不活化デングキメラウイルスを含む。本発明のこの態様のいくつかの実施形態では、不活化デングワクチンが四価であり、全粒子不活化DEN1、DEN2、DEN3およびDEN4を含む。別の実施形態では、不活化ワクチンが4つの不活化キメラデングウイルスを含む。さらに他の実施形態では、不活化ワクチンが四価であり、1つまたは複数の全粒子不活化デングウイルスおよび1つまたは複数の不活化デングキメラウイルス、例えば不活化全粒子DEN1ウイルス、不活化全粒子DEN2ウイルス、不活化DEN3キメラウイルスおよび不活化DEN4キメラウイルスを含む。当業者であれば、ワクチン組成物が4つ全てのデング血清型を標的とする限り、不活化全粒子またはキメラDENウイルスの任意の組み合わせが本発明の四価の組成物および方法に使用され得ることを理解する。
【0082】
本発明の組成物および方法に有用な不活化デングワクチンは、Putnak et al.Vaccine 23:4442-4452(2005)、米国特許第6190859号明細書、米国特許第6254873号明細書およびSternerらの国際公開第2007/002470号に記載されている。あるいは、デングウイルス株およびキメラデング株/キメラフラビウイルス株は、当技術分野で公知の方法、例えば化学物質、熱または放射線を通して、組成物に使用するために不活化することができる。
【0083】
したがって、本発明はまた、有効量の弱毒化生デングワクチンおよび非複製デングワクチンを含む上記製剤であって、弱毒化生デングワクチンは、少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルス(LACV)を含み、LAVまたはLACVは、3’UTRのTL-2ステムループ構造の30ヌクレオチドの欠失を含むウイルスゲノムを含む、製剤に関する。本発明のいくつかの実施形態では、本発明のデングウイルスワクチン組成物の非複製デングワクチンが、組換えデングサブユニットワクチンまたは不活化デングワクチンから選択される。一実施形態では、製剤が、凍結乾燥、凍結、マイクロ波乾燥される、または有効量の弱毒化生デングワクチンおよび非複製デングワクチンを含むリオスフェアを有する。別の実施形態では、弱毒化生デングワクチンの製剤が、非複製デングワクチン、例えばV180を含む液体溶液で再構成される。
【0084】
本発明の好ましい実施形態では、弱毒化生ワクチンおよび非複製デングワクチンが四価である(すなわち、DEN1、DEN2、DEN3およびDEN4成分を含む、またはDEN1、DEN2、DEN3およびDEN4に対する免疫応答を誘導する)。
【0085】
アジュバント
ワクチンと、アジュバントとして知られる、目的の抗原に対する免疫応答を増強することができる化合物の共投与は、広範に研究されている。目的の抗原に対する免疫応答を増加させることに加えて、いくつかのアジュバントは、所望の免疫応答を誘発するために必要とされる抗原の量を減少させるために、または持続的免疫応答を誘導して疾患からの保護を提供するための臨床レジメンにおいて必要な注射の回数を減少させるために使用され得る。
【0086】
そのために、本発明のデングウイルスワクチン製剤は、アジュバントを使用し得る。本明細書に記載される製剤のアジュバントは、上記の所望の機能を果たし、組成物のLAVまたはLACVを不活化せず、またその力価に有意に影響を及ぼさない任意のアジュバントであることができる。
【0087】
アルミニウム系化合物は、60年以上前にアジュバント活性を有することが決定された(概説については、Lindblad,E.B.Immunol.and Cell Biol.82:497-505(2004);Baylor et al.Vaccine 20:S18-S23(2002)参照)。アルミニウムアジュバントは、適切な投与量で使用された場合、安全であると一般に考えられている。多くのものが、世界中の規制当局によってヒトへの投与について承認されている。
【0088】
したがって、アルミニウム系化合物、例えば水酸化アルミニウム(Al(OH))、アルミニウムヒドロキシホスフェート(AlPO)、非晶質アルミニウムヒドロキシホスフェート硫酸塩(AAHS)またはいわゆる「アルム(alum)」(KAl(SO)・12HO)(Klein et al.,Analysis of aluminum hydroxyphosphate vaccine adjuvants by Al MAS NMR.,J.Pharm.Sci.89(3):311-21(2000)参照)が、本明細書で提供される組成物と組み合わされ得る。本明細書で提供される本発明の例示的な実施形態では、アルミニウムアジュバントが、アルミニウムヒドロキシホスフェートまたはAAHSである。代替実施形態では、アルミニウムアジュバントが、本明細書で「APA」と呼ばれるリン酸アルミニウムアジュバントである。他の実施形態では、アジュバントが水酸化アルミニウムである。
【0089】
当業者であれば、安全であると同時に標的デングウイルスへの免疫応答を増加させることに有効であるアルミニウムアジュバントの最適投与量を決定することができるだろう。アルミニウムの安全性プロファイル、ならびにFDA認可ワクチンに含まれるアルミニウムの量の議論については、Baylor et al.,Vaccine 20:S18-S23(2002)を参照されたい。一般に、アルミニウムアジュバントの有効かつ安全な用量は、1用量当たり50μg~1.25mgのアルミニウム元素(100μg/mL~2.5mg/mLの濃度)で変動する。
【0090】
したがって、本発明の具体的な実施形態は、弱毒化生デングウイルスワクチンを含み、アルミニウムアジュバントをさらに含む組成物を含む。本発明の実施形態では、デング組成物が、ワクチンの1用量当たり約50μg~約1.25mgのアルミニウム元素を含むアジュバントを含む。他の実施形態では、ワクチン組成物の1用量当たりのアルミニウムアジュバントが、約100μg~約1.0mg、約100μg~約900μg、約100μg~約850μg、約100μg~約800μg、約100μg~約700μg、約100μg~約600μg、約100μg~約500μg、約100μg~約400μg、約100μg~約300μg、約100~約250μg、約200μg~約1.25mg、約200μg~約1.0mg、約200μg~約900μg、約200μg~約850μg、約200μg~約800μg、約200μg~約700μg、約200μg~約600μg、約200μg~約500μg、約200μg~約400μg、約200μg~約300μg、約300μg~約1.25mg、約300μg~約1.0mg、約300μg~約900μg、約300μg~約850μg、約300μg~約800μg、約300μg~約700μg、約300μg~約600μg、約300μg~約500μg、約300μg~約400μg、約400μg~約1.25mg、約400μg~約1.0mg、約400μg~約900μg、約400μg~約850μg、約400μg~約800μg、約400μg~約700μg、約400μg~約600μg、約400μg~約500μg、約500μg~約1.25mg、約500μg~約1.0mg、約500μg~約900μg、約500μg~約850μg、約500μg~約800μg、約500μg~約700μg、約500μg~約600μg、約600μg~約1.25mg、約600μg~約1.0mg、約600μg~約900μg、約600μg~約850μg、約600μg~約800μgまたは約600μg~約700μgに及ぶ量のアルミニウム元素を含む。
【0091】
本発明のデングウイルスワクチン組成物と一緒に使用され得る他のアジュバントとしては、それだけに限らないが、CpGオリゴヌクレオチド、またはリポ多糖、モノホスホリルリピドAおよびアミノアルキルグルコサミニド4-リン酸を含む、TLR4およびTLR9などのtoll様受容体に対して作用する他の分子を含有するアジュバントが挙げられる(概説については、Daubenberger,C.A.,Curr.Opin.Mol.Ther.9(1):45-52(2007);Duthie et al.,Immunological Reviews 239(1):178-196(2011);Hedayat et al.,Medicinal Research Reviews 32(2):294-325(2012)参照)。本発明の組成物中に有用な付加的なアジュバントとしては、免疫賦活性オリゴヌクレオチド(IMO;例えば、米国特許第7713535号明細書および米国特許第7470674号明細書参照);Tヘルパーエピトープ、リピドAおよびその誘導体または変異体、リポソーム、リン酸カルシウム、サイトカイン(例えば、顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)IL-2、IFN-α、Flt-3L)、CD40、CD28、CD70、IL-12、ヒートショックタンパク質(HSP)90、CD134(OX40)、CD137、CoVaccine HT、非イオン性ブロックコポリマー、不完全フロイントアジュバント、ケモカイン、コレラ毒素;大腸菌(E.coli)熱不安定性エンテロトキシン;百日咳毒素;ムラミルジペプチド、ムラミルペプチド類似体、MF59、SAF、免疫賦活複合体、生分解性マイクロスフェア、ポリホスファゼン;合成ポリヌクレオチドが挙げられる。
【0092】
本明細書に記載される組成物と使用するための付加的なアジュバントは、サポニン(例えば、QS21)を単独で、またはISCOM(「免疫刺激複合体」、概説については、Barr and Mitchell,Immunology and Cell Biology 74:8-25(1996);およびSkene and Sutton,Methods 40:53-59(2006)参照)の特徴的形態でコレステロールおよびリン脂質と組み合わせて含有するアジュバントである。このようなアジュバントは、本明細書で「サポニン系アジュバント」と呼ばれる。本明細書中の組成物の具体的な実施形態では、突然変異体毒素および/または毒素タンパク質が、ISCOMマトリックス粒子アジュバントであるISCOM型アジュバントまたは「ISCOM」、例えば抗原を使用しないで製造されるISCOMATRIX(商標)と組み合わされる(ISCOM(商標)およびISCOMATRIX(商標)はCSL Limited、Parkville、オーストラリアの登録商標である)。
【0093】
製剤
本発明の製剤または組成物は、少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルス(LACV)を含む弱毒化生デングワクチンと、pH約6.5~8.5の緩衝液と、糖、グリコールまたは糖アルコールと、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、2-ヒドロキシエチルセルロース(2-HEC)、クロスカルメロースおよびメチルセルロース、またはその薬学的に許容される塩からなる群から選択されるセルロース誘導体と;場合によりアルカリまたはアルカリ塩と、場合によりAla、Asp、His、Leu、Lys、Gln、ProまたはGlu、またはこれらの組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸とを含む。
【0094】
本発明の別の態様では、製剤が、約20~20000000pfu/mlの少なくとも1つの弱毒化生デングウイルス(LAV)または少なくとも1つの弱毒化生キメラフラビウイルスを含む弱毒化生デングワクチンと、pH約6.5~8.5の緩衝液と、約150~300mg/mlの糖と、ポリビニルピロリドン(PVP)、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、2-ヒドロキシエチルセルロース(2-HEC)、クロスカルメロース、メチルセルロースまたはその薬学的に許容される塩、ヒト血清アルブミン(HSA)およびゼラチンからなる群から選択される担体と;場合により約5~100mMのアルカリ塩またはアルカリ塩と;場合によりアミノ酸Gln、ProまたはGlu、またはこれらの組み合わせとを含む。
【0095】
一実施形態では、弱毒化生デングワクチンが、製剤中100~10000000pfu/ml、100~100000pfu/mlまたは600~20000pfu/mlの濃度である。別の実施形態では、弱毒化生デングワクチンが、製剤中200~200000pfu/ml、600~200000pfu/mlまたは600~100000pfu/mlの濃度である。
【0096】
好ましい実施形態では、セルロース誘導体がアニオン性であり、弱毒化生デングワクチン製剤中約0.3~10mg/ml、1~10mg/ml、3~7mg/mlまたは5mg/mlの塩、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウムまたはカリウムを形成する。カルボキシメチルセルロース塩は、平均分子量約700000の高粘度型;平均分子量約250000の中粘度型;および平均分子量約90000の低粘度型で利用可能である。一実施形態では、セルロース誘導体が、弱毒化生デングワクチン製剤中約0.3~1.5mg/mlの平均分子量約700000のカルボキシメチルセルロース塩である。別の実施形態では、セルロース誘導体が、約1~4mg/mlの平均分子量約250000のカルボキシメチルセルロース塩である。さらなる実施形態では、セルロース誘導体が、約3~7または3~10mg/mlの平均分子量約90000のカルボキシメチルセルロース塩である。なおさらなる実施形態では、セルロース誘導体が、約0.3~10mg/mlの平均分子量約50000~1000000のカルボキシメチルセルロース塩である。
【0097】
一実施形態では、緩衝液が、約5~300mM、5~20mM、10~12mMまたは11mMのリン酸塩、
コハク酸塩、ヒスチジン、TRIS、MES、MOPS、HEPES、酢酸塩およびクエン酸塩からなる群から選択される。
【0098】
アルカリまたはアルカリ塩は、安定化効果を提供することができ、約10~150mM、10~100mM、15~75mM、30~90mM、75mM、50mMまたは30mMの塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムまたはこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0099】
アミノ酸は、10~100、10~75、10~50、20~30または25mMのVal、Ile、Ala、Asp、His、Leu、Lys、Gln、ProまたはGlu、またはこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。別の実施形態では、アミノ酸が、アミノ酸は、10~100、10~75、10~50、20~30または25mMのAla、Asp、His、Leu、Lys、Gln、ProまたはGlu、またはこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。一実施形態では、アミノ酸がLys、LeuまたはGluである。別の実施形態では、アミノ酸がLeuおよびGluである。別の実施形態では、アミノ酸がLeu、Lys、GluまたはAlaである。別の実施形態では、アミノ酸がLeuである。
【0100】
糖およびグリコールまたは糖アルコールは、抗凍結剤または安定化賦形剤として作用することができる。一実施形態では、糖が50~300mg/mlの濃度である。別の実施形態では、糖が、約60~120mg/ml、90~110mg/mlまたは80~100mg/mlのトレハロースまたはスクロースまたはこれらの組み合わせである。一実施形態では、スクロースとトレハロースの比が、1:1~1:4の間である。別の実施形態では、スクロースが90mg/mlであり、トレハロースが90~200mg/ml、好ましくは110mg/mlである。別の実施形態では、グリコールがプロピレングリコールであり、糖アルコールが約2.5~7.5mg/ml、3~7mg/mlまたは5mg/mlのグリセロールまたはソルビトールである。
【0101】
本発明の組成物は、非経口、経粘膜、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、鼻腔内、皮下、腹腔内などの当業者に知られている1つまたは複数の方法によって対象に投与することができ、それに応じて製剤化することができる。
【0102】
一実施形態では、本発明の組成物が、液体調製物の表皮注射、筋肉内注射、静脈内注射、動脈内注射、皮下注射または呼吸器内粘膜注射を介して投与される。注射用の液体製剤には、溶液などが含まれる。本発明の組成物は、単回用量バイアル、複数回用量バイアルまたはプレフィルドシリンジとして製剤化され得る。
【0103】
別の実施形態では、本発明の組成物が経口投与され、したがって、経口投与に適した形態に、すなわち、固体または液体調製物として製剤化される。固体経口製剤には、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆剤、ペレットなどが含まれる。液体経口製剤には、液剤、懸濁剤、分散剤、乳剤、油などが含まれる。
【0104】
本発明の一態様では、製剤が、凍結乾燥、凍結、マイクロ波乾燥から、またはリオスフェアの生成を通して調製された固体乾燥製剤である。一実施形態では、固体乾燥製剤が、実施例7に記載されるマイクロ波乾燥法によって得ることができる、または製造される。製剤は、-70℃、-20℃、2~8℃または室温(25もしくは37℃)で保存することができる。乾燥製剤は、単位用量バイアルの成分の重量に関して表すことができるが、これは、用量やバイアルサイズによって異なる。あるいは、本発明の乾燥製剤は、同じ試料(例えば、バイアル)中の原体(DS)の重量と比較した成分の重量の比としての成分の量で表すことができる。この比は百分率として表すことができる。このような比は、バイアルサイズ、投与および再構成プロトコルにかかわらず、本発明の乾燥製剤の固有の特性を反映している。他の実施形態では、製剤がリオスフェアにある。
【0105】
本発明の別の態様では、製剤が再構成された溶液である。乾燥固形製剤は、投与または投薬経路などの臨床因子に応じて、様々な濃度で再構成することができる。例えば、乾燥製剤は、皮下投与に必要な場合、高濃度で(すなわち、少量で)再構成することができる。特定の対象に高用量が必要な場合、特に注射量を最小限にしなければならない場合に皮下投与する場合、高濃度が必要になる場合もある。その後の水または等張緩衝液による希釈を、製剤をより低濃度に希釈するために容易に使用することができる。より低い製剤濃度で等張性が望まれる場合、乾燥粉末を標準的な少量の水で再構成し、次いで、0.9%塩化ナトリウムなどの等張希釈剤でさらに希釈することができる。
【0106】
完全な水和を確実にするために、一般的に再構成は約25℃の温度で行われるが、所望であれば他の温度を使用することもできる。再構成に必要な時間は、例えば、希釈剤の種類、(1又は複数の)賦形剤の量およびウイルスまたはタンパク質に依存する。例示的な希釈剤には、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンゲル液またはデキストロース溶液が含まれる。再構成体積は、約0.5~1.0ml、好ましくは0.5mlまたは0.7mlであり得る。一実施形態では、単回用量が、0.5mlの体積を有する。別の態様では、本発明は、液体製剤を調製する方法であって、本発明の製剤を上記の希釈剤で再構成するステップを含む方法を提供する。
【0107】
本発明の別の実施形態では、製剤が、凍結乾燥、凍結、マイクロ波乾燥またはリオスフェアの生成の前に調製される水溶液である。
【0108】
リオスフェアを調製する方法
リオスフェアを調製する方法は、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開第20140294872号明細書に開示されている。この方法は、実質的に球形状を有する少なくとも1つの液滴を固体および平坦な表面(すなわち、いずれの試料ウェルもキャビティもない)上に分配し、液滴を低温物質と接触させずに表面上の液滴を凍結し、凍結した液滴を凍結乾燥して、形状が実質的に球形の乾燥ペレットを製造することを含む。その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9119794号明細書も、リオスフェアを形成する方法を開示している。水性媒体混合物を含有する単一体積を、キャビティを含有する固体要素上に形成する。固体要素を、混合物の凍結温度未満に冷却し、キャビティを混合物で充填し、混合物を、キャビティ内に存在する間に固化して、単一形態を形成する。単一形態を真空中で乾燥させて、リオスフェアを得る。
【0109】
他の実施形態では、リオスフェアが、実質的に球形態で形成され、平坦な固体表面、特に、キャビティを有さない表面上で、所望の生物学的材料の液体組成物の液滴を凍結し、引き続いて単一形態を凍結乾燥することによって調製される。その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2014/0294872号明細書は、リオスフェアを形成する同様の方法を開示している。
【0110】
手短に言えば、いくつかの実施形態では、方法が、実質的に球形状を有する少なくとも1つの液滴を固体および平坦な表面(すなわち、いずれの試料ウェルもキャビティもない)上に分配し、液滴を低温物質と接触させずに表面上の液滴を凍結し、凍結した液滴を凍結乾燥して、形状が実質的に球形の乾燥ペレットを製造することを含む。この方法をハイスループットモードで使用して、固体の平坦な表面上に所望の数の液滴を同時に分配し、液滴を凍結し、凍結した液滴を凍結乾燥することによって、複数の乾燥ペレットを調製することができる。この方法によって液体製剤から調製されたペレットは、高濃度の生物学的物質(タンパク質治療薬など)を有することができ、乾燥ペレットのセットに組み合わせることができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、固体の平坦な表面が、金属板の上面を-90℃以下の温度に維持するように適合されたヒートシンクと物理的に接触する底面を備える金属板の上面である。金属板の上面は液体製剤の凝固点よりかなり下にあるので、液滴は本質的に瞬時に凍結し、液滴の底面は金属板の上面に接触する。
【0112】
他の実施形態では、固体の平坦な表面が疎水性であり、分配ステップ中に0℃より上に維持される薄膜の上面を含む。薄膜を製剤の凍結温度未満の温度に冷却することによって、分配された液滴を凍結する。
【0113】
凍結乾燥方法
本発明の凍結乾燥製剤は、凍結乾燥前溶液の凍結乾燥(lyophilization)(凍結乾燥(freeze-drying))によって形成される。凍結乾燥は、製剤を凍結し、その後、一次乾燥に適した温度で水を昇華させることによって達成される。この条件下では、製品温度が共晶点または製剤の崩壊温度未満である。典型的には、一次乾燥の棚温度が、典型的には約30~250ミリトルに及ぶ適切な圧力で、約-50~25℃に及ぶ(製品が一次乾燥中に凍結したままである限り)。製剤、試料を保持する容器(例えば、ガラスバイアル)のサイズおよび種類ならびに液体の体積によって、乾燥に必要な時間が決まり、これは数時間~数日(例えば、40~60時間)に及び得る。二次乾燥段階は、主に容器の種類およびサイズ、ならびに使用するタンパク質の種類に応じて、約0~40℃で行うことができる。二次乾燥時間は、製品中の所望の残留水分レベルによって決まり、典型的には少なくとも約5時間かかる。典型的には、凍結乾燥製剤の含水量は、約5%未満、好ましくは約3%未満である。圧力は、一次乾燥ステップ中に使用される圧力と同じであってもよい。凍結乾燥条件は、製剤、バイアルサイズおよび凍結乾燥トレイに応じて変化し得る。
【0114】
場合によっては、移動ステップを回避するために、再構成が行われる容器中の製剤を凍結乾燥またはマイクロ波乾燥することが望ましい場合がある。この場合の容器は、例えば、2、3、5、10または20mlのバイアルであり得る。
【0115】
使用方法
本発明の実施形態はまた、(a)治療(例えば、ヒトの体の);(b)医薬品;(c)DEN1、DEN2、DEN3および/またはDEN4を含むデングウイルス複製の阻害;(d)DEN1、DEN2、DEN3および/またはDEN4のうちの1つまたは複数に対する免疫応答または防御免疫応答の誘導;(e)デングの1つまたは複数の型に対するウイルス中和抗体応答の誘導;(f)デングウイルスによる感染の処置または予防;(g)デングウイルス感染の再発の予防;(h)デングウイルス感染に関連する病理症状の進行、発症または重症度の減少ならびに/あるいはデングウイルス感染の可能性の減少、あるいは(i)それだけに限らないが、デング熱、デング出血熱およびデングショック症候群を含む、(1又は複数の)デング関連疾患の発症、重症度または進行の処置、予防または遅延(i)に使用するため、(ii)のための医薬品または組成物として使用するため、または(iii)のための医薬品の調製に使用するための本明細書に記載されるデングワクチン組成物または製剤の1つまたは複数も含む。これらの使用では、デングワクチン組成物を、1つまたは複数のアジュバント(例えば、本明細書に記載される、AAHS、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、例えばAlhydrogel(登録商標)、または他のアルミニウム塩アジュバント、サポニン系アジュバント、例えばISCOMATRIX(商標)(CSL,Ltd.)、TLRアゴニストまたは脂質ナノ粒子)と組み合わせて使用してもよい。
【0116】
予防的処置は、本明細書に記載される本発明のデングウイルスワクチン組成物を使用して実施することができる。本発明の組成物は、一般集団に、またはデング感染のリスクが増加している人、例えばヤブカ属(Aedes)の蚊が蔓延している世界の地域に住んでいるまたは旅行する予定がある人に投与することができる。
【0117】
「処置を必要とする」ものには、既にデング感染を有するもの(例えば、DEN1、DEN2、DEN3またはDEN4のうちの1つまたは複数に感染したもの)、ならびに感染しやすいもの、または感染の可能性の減少が望まれるあらゆる人が含まれる。
【0118】
本発明のデングウイルスワクチン組成物は、当技術分野で周知の技術を使用して、製剤化し、患者に投与することができる。一般的な医薬投与のためのガイドラインは、例えば、Vaccines Eds.Plotkin and Orenstein,W.B.Sanders Company,1999;Remington’s Pharmaceutical Sciences 20th Edition,Ed.Gennaro,Mack Publishing,2000;およびModern Pharmaceutics 2nd Edition,Eds.Banker and Rhodes,Marcel Dekker,Inc.,1990に提供されている。
【0119】
したがって、本発明は、デング感染に対する患者の防御免疫応答を誘導する方法であって、免疫学的有効量の本明細書に記載されるデングウイルスワクチン組成物のうちのいずれかを患者に投与するステップを含む方法を提供する。一実施形態では、デングウイルスワクチン組成物が、ジカ、麻疹、流行性耳下腺炎および風疹、または水痘等の疾患を処置または予防するための他のワクチンと組み合わせて共投与される。
【0120】
また、本発明によって提供されるのは、デング感染を処置するまたはデング感染に関連する任意の病態を処置する方法であり、このような処置は、感染の予防および臨床症状の重症度の減少、疾患の進行の遅延もしくは予防および/または感染もしくはその臨床症状の可能性の減少を含み;この方法は、免疫学的有効量の本明細書に記載されるワクチン組成物のうちのいずれかを患者に投与するステップを含む。
【0121】
本発明の付加的な実施形態は、プライム/ブースト体制における、本発明の2つ以上の組成物の患者への投与を含む。したがって、本発明は、それを必要とする患者のデング感染を予防するまたはデング感染の可能性を減少させる方法であって、
(a)本発明の第1のデングウイルスワクチン組成物を患者に投与するステップと;
(b)ステップ(a)の後に所定の時間が経過するのを待つステップと;
(c)本発明の第2のデングウイルスワクチン組成物を患者に投与するステップと;
(d)場合により、ステップ(b)および(c)を繰り返すステップと
を含み、
それによって、患者においてデング感染が予防されるまたはデングに感染する可能性が低下する、方法に関する。
【0122】
上記方法の実施形態では、本発明のデングウイルスワクチン組成物が、凍結液体の形態である。別の実施形態では、デングウイルスワクチン組成物が、凍結乾燥される、またはマイクロ波乾燥され、患者への投与の前に滅菌希釈剤で再構成される。
【0123】
本発明のデングウイルスワクチン組成物の第1の用量および本発明のデングウイルスワクチン組成物の第2の用量、またはその後の任意の用量の間の時間は、約2週間~約2年間である。本発明の好ましい実施形態では、複数の投与の間で2ヶ月~12ヶ月の時間を経過させることが可能である。本発明のこの態様の代替実施形態では、ワクチン組成物の各用量の各投与の間の時間が、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、13ヶ月、14ヶ月、15ヶ月、16ヶ月、17ヶ月、18ヶ月、19ヶ月、20ヶ月、21ヶ月、22ヶ月、23ヶ月および24ヶ月よりなる群から独立に選択される。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態では、第1および第2のデングウイルスワクチン組成物が同じである。代替実施形態では、第1および第2のデングウイルスワクチン組成物が同じでない。
【0125】
本発明のデングウイルスワクチン組成物は、異なる経路によって投与することができる。本発明の好ましい実施形態では、本発明の組成物が、非経口的に、すなわち皮内、皮下または筋肉内注射によって投与される。皮下および筋肉内投与は、例えば針またはジェット式注射器を使用して実施することができる。
【0126】
本明細書に記載される組成物は、投与製剤に適合した様式で、デング感染を処置するおよび/またはデング感染の可能性を減少させるために免疫学的に有効であるような量で投与され得る。本発明の文脈において、患者に投与される用量は、時間と共に患者において有益な応答、例えばデングウイルスのレベルの低下に影響を及ぼすために、またはデングによる感染の可能性を減少させるために十分であるべきである。投与されるデングウイルスワクチンの量は、その年齢、性別、体重および全身健康状態を含めて、処置される対象に依存し得る。これに関して、投与されることが必要となるワクチンの正確な量は、専門家の判断に依存するだろう。デング感染に対する処置または予防で投与されるワクチンの有効量を決定する際、医師は、循環血漿レベル、疾患の進行および抗デング抗体の産生を評価し得る。いずれにしても、本発明の免疫原性組成物の適切な投与量は、当業者によって容易に決定され得る。
【0127】
適切な投与レジメンは、好ましくは、患者の年齢、体重、性別および医学的状態;投与経路;所望の効果;ならびに使用される具体的な組成物を含む当技術分野で周知の因子を考慮に入れて決定される。投与のタイミングは当技術分野で周知の因子に応じ、2週間~24ヶ月に及ぶことができる。最初の投与の後、抗体価を維持および/またはブーストするため、1回または複数回の追加の用量が投与され得る。
【0128】
本発明はまた、デング感染を予防する、またはその症状を予防もしくは改善する方法であって、デングウイルスワクチンの組成物を、デング感染またはその症状が予防または改善されるべき患者に投与するステップを含む方法に関する。本発明のこの態様のさらなる実施形態は、デングウイルスワクチン組成物の投与後に所定の時間を経過させるステップと、デングウイルスワクチン組成物の第2の用量を投与するステップとを含む。
【0129】
上記方法では、第1のデングワクチンが好ましくは四価であり、DEN1、DEN2、DEN3およびDEN4成分を含み、各成分が、本明細書に記載される弱毒化生デングウイルスまたは弱毒化生キメラフラビウイルスのいずれかを含む。例示的な実施形態では、弱毒化生デングワクチンが4つのキメラフラビウイルスを含み;キメラフラビウイルスの各々が単一デングウイルス血清型のprMおよびEタンパク質ならびに異なるフラビウイルスのカプシドおよび非構造タンパク質を含み、キメラフラビウイルスの各々が弱毒化されている。一定の実施形態では、4つのキメラフラビウイルスのカプシドおよび非構造タンパク質が、黄熱病ウイルスに由来する。代替実施形態では、4つのキメラフラビウイルスの各々のカプシドおよび非構造タンパク質が、prMおよびEタンパク質とは異なるデング血清型に由来する。
【0130】
本発明のこの態様のいくつかの実施形態では、第2のデングワクチンが、DEN1、DEN2、DEN3およびDEN4由来のデングEタンパク質またはその断片を含む四価の組換えデングサブユニットワクチンである。本発明のこの方法に有用なサブユニットワクチンは、本明細書に記載されている。好ましい実施形態では、Eタンパク質の各々がそのN末端のアミノ酸残基1から始まるDEN1、DEN2、DEN3およびDEN4の野生型Eの長さの約80%を構成する。
【0131】
[実施例]
これらの試験で使用される弱毒化生デングウイルス配列の例は、rDEN1-rDEN1Δ30-1545 PMVS(配列番号6);rDEN2-rDEN2/4Δ30(ME)-1495,7163 PMVS(配列番号7);rDEN3-rDEN3Δ30/31-7164 PMVS(配列番号8);およびrDEN4-rDEN4Δ30-7132,7163,8308 PMVS(配列番号9)である。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0132】
上記の表のDENV1、2、3および4の野生型および元のcDNAクローンは、Whitehead,S.S.et al.,J Virol 77:1653-1657(2003);Blaney,J.E.et al.The American journal of tropical medicine and hygiene 71:811-821(2004);Blaney,J.E.,Jr.et al.,BMC Infect Dis 4:39(2004);Durbin,A.P.et al.,The American journal of tropical medicine and hygiene 65:405-413(2001)に記載されるデングウイルス血清型に相当する。
【0133】
弱毒化生デングウイルスの上記バージョンを、以下の実施例では、DENV1またはDEN1、DENV2またはDEN2、DENV3またはDEN3およびDENV4またはDEN4と呼ぶ。実施例1~6では、製剤が、2×10pfu/mlのDENV1、DENV2、DENV3またはDENV4のそれぞれの効力を有した。実施例7~10では、製剤が、1.5×10pfu/mlのDEN1、DEN2、DEN3またはDEN4のそれぞれの効力を有した。
【0134】
[実施例1]
DENV4に対するCMC、PGおよびアミノ酸の効果(Dengvaxia(登録商標)製剤と比較)
DENV4の凍結乾燥収率および安定性に対する種々の賦形剤の効果を調査するために、3つの別個の試験を実施した。製剤を表5に列挙する。
【表5】
【0135】
試験1:DENV4を、11mMリン酸カリウム、90mg/mLスクロースおよび75mM NaCl(製剤3)で製剤化し、5mg/mLカルボキシメチルセルロースナトリウム(ナトリウムCMC)(製剤4)または5mg/mL CMCナトリウムと5mg/mLプロピレングリコール(製剤5)を添加した。
【0136】
試験2:製剤5を、25mMロイシン(製剤20)または25mMプロリン(製剤21)、ならびに11mMリン酸カリウム、90mg/mLスクロース、50mM NaCl、5mg/mL CMCナトリウムおよび5mg/mLプロピレングリコールを含有する同等の製剤に対して試験した。
【0137】
試験3:製剤20を、11mMリン酸カリウム、90mg/mLスクロース、50mM NaCl、5mg/mL CMCナトリウムおよび5mg/mLプロピレングリコールならびに25mMグルタミン酸(製剤19)およびDengvaxia(登録商標)製剤(製剤26)(37.5mg/mLソルビトール、75mg/mLスクロース、55mg/mLトレハロース、25mg/mL尿素、6mM TRIS、15mg/mLのアミノ酸混合物からなる)を含有する同等の製剤に対して試験した。
【0138】
全ての試験で、試料を凍結し、一部を凍結液体対照として-70℃で保存し、一部を凍結乾燥した。凍結乾燥後、いくつかの試料を対照として-70℃で保存し、残りを25℃で1週間置いた。インキュベーション後、25℃の試料を凍結し、凍結液体対照および凍結凍結乾燥対照と共にデング相対感染力アッセイ(DRIA)で試験した。各試料の2つの個別のバイアルを試験した。
【0139】
DRIAは、エンベロープタンパク質の発現に基づいてデングウイルス製剤試料の感染力を測定するために使用される、細胞ベースの相対感染力アッセイである。Vero細胞を96ウェルマイクロタイタープレートに蒔き、24時間インキュベートし、次いで、DEN1、DEN2、DEN3および/またはDEN4参照標準の段階希釈液ならびに試験物に加えて試験する血清型に特異的な陽性対照に感染させた。感染細胞を48時間インキュベートし、引き続いて希釈ホルムアルデヒド溶液で細胞を固定した。次いで、固定した細胞を透過処理した後、一次抗体(ウサギ抗DEN血清型特異的MAb)をプレートに添加し、一晩インキュベートした。プレートを洗浄した後、二次抗体(Donkey NL637コンジュゲート抗ウサギIgG、R&D Systems)をウェルに添加し、室温で2時間超インキュベートした。プレートを洗浄した後、MiniMaxイメージングリーダー(Molecular Devices)を使用した画像分析の準備で、PBSをウェルに添加した。減少した4パラメータロジスティック曲線フィットを使用して、SoftMAX Proソフトウェア(Molecular Devices)を使用して、試料の相対効力(%RP)(参照標準に対する)を計算した。
【0140】
凍結乾燥した感染力の結果を凍結液体対照の感染力の結果で割ることによって凍結乾燥収率を計算した。25℃で1週間保存した後の対数損失を計算するために、感染力値を対数スケールに変換し、各製剤についての-70℃凍結乾燥対照結果から1週間25℃対数結果を差し引いた。
【0141】
CMCナトリウムとプロピレングリコールの組み合わせで相乗効果が観察され、凍結乾燥収率および安定性が改善した。ロイシンの添加により、収率および安定性がさらに改善された。CMCナトリウム、プロピレングリコールおよびロイシンまたはグルタミン酸を含有する製剤は、Dengvaxia製剤よりも改善された凍結乾燥収率を提供した。図1図2を参照されたい。製剤26についての1週間25℃安定性時点は、25℃での保存後にケークが崩壊したため、試験しなかった。
【0142】
[実施例2]
DENV4に対する糖アルコールの効果:
DENV4を、11mMリン酸カリウム、90mg/mLスクロース、75mM NaClおよび5mg/mL CMCナトリウム pH7.5のベース製剤と糖アルコールとしての5mg/mLプロピレングリコール(製剤5)、5mg/mLグリセロール(製剤22)または25mg/mLソルビトール(製剤13)で製剤化した。
【0143】
試料を凍結し、一部を凍結液体対照として-70℃で保存し、一部を凍結乾燥した。凍結乾燥後、いくつかの試料を-70℃で保存し、残りを25℃で1週間置いた。インキュベーション後、25℃の試料を凍結し、凍結液体対照および凍結凍結乾燥対照と共にデング相対感染力アッセイで試験した。各試料の2つの個別のバイアルを試験した。
【0144】
凍結乾燥した感染力の結果を凍結液体対照の感染力の結果で割ることによって凍結乾燥収率を計算した。25℃で1週間保存した後の対数損失を計算するために、感染力値を対数スケールに変換し、各製剤についての-70℃凍結乾燥対照結果から1週間25℃対数結果を差し引いた。
【0145】
この実施例は、プロピレングリコールとグリセロールの両方が、ソルビトールと比較してDENV4の凍結乾燥収率および安定性を改善したことを実証している(図3および図4参照)。
【0146】
[実施例3]
DENV4に対するpHの効果:
DENV4を、製剤22(11mMリン酸カリウム、90mg/mLスクロース、75mM NaCl、5mg/mL CMCナトリウム、5mg/mLグリセロール、pH7.0、7.5または8.0)で製剤化した。
【0147】
試料を凍結し、一部を凍結液体対照として-70℃で保存し、一部を凍結乾燥した。凍結乾燥後、いくつかの試料を-70℃で保存し、残りを25℃で1週間置いた。インキュベーション後、25℃の試料を凍結し、凍結液体対照および凍結凍結乾燥対照と共にデング相対感染力アッセイで試験した。各試料の2つの個別のバイアルを試験した。
【0148】
凍結乾燥した感染力の結果を凍結液体対照の感染力の結果で割ることによって凍結乾燥収率を計算した。25℃で1週間保存した後の対数損失を計算するために、感染力値を対数スケールに変換し、各製剤についての-70℃凍結乾燥対照結果から1週間25℃対数結果を差し引いた。
【0149】
図5および図6は、DENV4をpH7.0~pH8.0で製剤22で製剤化することができることを実証している。
【0150】
[実施例4]
DENV4に対する緩衝液の効果:
試験1では、DENV4を、90mg/mLスクロース、75mM NaCl、5mg/mL CMCナトリウムおよび5mg/mLグリセロールのベース製剤とpH7.5に調整された代替緩衝系で製剤化した。製剤22は、ベース製剤に加えて11mMリン酸カリウムを含有し、製剤25は、ベース製剤に加えて11mM TRISを含有していた。
【0151】
試験2では、DENV4を、90mg/mLスクロース、75mM NaCl、5mg/mL CMCナトリウムおよび5mg/mLプロピレングリコールのベース製剤とpH7.5に調整された代替緩衝系で製剤化した。製剤5は、ベース製剤に加えて11mMリン酸カリウムを含有し、製剤57はベース製剤に加えて、5.5mMヒスチジンと5.5mM TRISの組み合わせを含有していた。
【0152】
試料を凍結し、一部を凍結液体対照として-70℃で保存し、一部を凍結乾燥した。凍結乾燥後、いくつかの試料を-70℃で保存し、残りを25℃で1週間置いた。インキュベーション後、25℃の試料を凍結し、凍結液体対照および凍結凍結乾燥対照と共にデング相対感染力アッセイで試験した。各試料の2つの個別のバイアルを試験した。
【0153】
凍結乾燥した感染力の結果を凍結液体対照の感染力の結果で割ることによって凍結乾燥収率を計算した。25℃で1週間保存した後の対数損失を計算するために、感染力値を対数スケールに変換し、各製剤についての-70℃凍結乾燥対照結果から1週間25℃対数結果を差し引いた。
【0154】
図7および図8は、DENV4をリン酸カリウム、TRISまたはヒスチジンとTRISの組み合わせを含む、pH7.5の種々の緩衝系で製剤化することができることを実証している。
【0155】
[実施例5]
DENV4に対するNaClの効果:
DENV4を、11mMリン酸カリウム、90mg/mLスクロース、5mg/mL CMCナトリウムおよび5mg/mLプロピレングリコールのベース製剤と15~75mMの濃度範囲のNaClで製剤化した。
【0156】
試料を凍結し、一部を凍結液体対照として-70℃で保存し、一部を凍結乾燥した。凍結乾燥後、いくつかの試料を-70℃で保存し、残りを25℃で1週間置いた。インキュベーション後、25℃の試料を凍結し、凍結液体対照および凍結凍結乾燥対照と共にデング相対感染力アッセイで試験した。各試料の2つの個別のバイアルを試験した。
【0157】
凍結乾燥した感染力の結果を凍結液体対照の感染力の結果で割ることによって凍結乾燥収率を計算した。25℃で1週間保存した後の対数損失を計算するために、感染力値を対数スケールに変換し、各製剤についての-70℃凍結乾燥対照結果から1週間25℃対数結果を差し引いた。
【0158】
図9および図10は、NaCl濃度が15~75mMに及ぶ場合に、DENV4の凍結乾燥収率および25℃での1週間の安定性が類似であったことを示している。
【0159】
[実施例6]
全てのデング血清型に対するプロピレングリコールおよびグリセロールの効果:
DENV1、DENV2、DENV3およびDENV4を、pH7.5で、製剤5(11mMリン酸カリウム、90mg/mLスクロース、75mM NaCl、5mg/mL CMC、5mg/mLプロピレングリコール)、製剤20(11mMリン酸カリウム、90mg/mLスクロース、50mM NaCl、5mg/mL CMC、5mg/mLプロピレングリコールおよび25mMロイシン)および製剤22(11mMリン酸カリウム、90mg/mLスクロース、75mM NaCl、5mg/mL CMC、5mg/mLグリセロール)で一価製剤として調製した。
【0160】
試料を凍結し、一部を凍結液体対照として-70℃で保存し、一部を凍結乾燥した。凍結乾燥後、いくつかの試料を-70℃で保存し、残りを25℃で1週間置いた。インキュベーション後、25℃の試料を凍結し、凍結液体対照および凍結凍結乾燥対照と共にデング相対感染力アッセイで試験した。各試料の2つの個別のバイアルを試験した。
【0161】
凍結乾燥した感染力の結果を凍結液体対照の感染力の結果で割ることによって凍結乾燥収率を計算した。25℃で1週間保存した後の対数損失を計算するために、感染力値を対数スケールに変換し、各製剤についての-70℃凍結乾燥対照結果から1週間25℃対数結果を差し引いた。
【0162】
図11および図12は、プロピレングリコールおよびグリセロールが、スクロース、NaClおよびCMCナトリウムと組み合わせて4つの血清型全てを安定化することを示している。
【0163】
[実施例7]
SPG(スクロース、リン酸カリウム、グルタミン酸)を、表6に示される以下の濃度の10X溶液として作製した。
【表6】
【0164】
以下の他の溶液も作製した:650mg/mLスクロース、650mg/mLトレハロース、二水和物、200mg/mLゼラチン、150mg/mLアルギニンおよび20mg/mLヒト血清アルブミン(HSA)。
【0165】
SPG、スクロース、トレハロース、ゼラチン、アルギニンおよびHSAを、PES 0.22μm Stericupフィルタで濾過した。溶液であるLeibovitzのL-15とDEN1を合わせて、以下に示される最終的な製剤を得た:
【表7】
【0166】
製剤を0.5mLの充填量で2Rガラスバイアルに充填し、-115℃で15分間凍結した。いったん凍結したら、バイアルをマイクロ波真空乾燥機(MVD)で乾燥させた。いったん乾燥したら、いくつかのバイアルを25℃で1週間安定させた。次いで、バイアルを、デング相対感染力アッセイ(DRIA)を使用した効力試験に供した。
【0167】
マイクロ波乾燥法
マイクロ波真空乾燥機(MVD)で乾燥する材料を、急速冷凍し、直ちに乾燥室に入れた。室内の真空を急速に100ミリトル未満に引き下げた。いったん真空設定値に達したら、マグネトロン(つまり、マグネトロンの数および出力)を選択して、材料の乾燥を開始した。マイクロ波(放射を進行波形式で適用)を、均一な出力分布のために、選択されたマグネトロン(例えば、4つの合計マグネトロンのうち2つのマグネトロンなど)を30秒毎にオン/オフでサイクルするアルゴリズムで走査モードで操作した。さらに、ユニットの上部の水負荷により、試料にマイクロ波を1回通過させることができ、反射したマイクロ波による干渉を最小限に抑え、昇華を制御できる。乾燥サイクル全体で出力を上げて、最終的な平衡温度30~45℃を達成した。いったん乾燥したら、質内の真空を解除し、材料を密封した。
【表8】
【0168】
全ての製剤について、凍結/解凍(F/T)収率、乾燥収率および25℃で1週間の対数損失を決定した。報告された相対効力を-70℃での凍結対照の予想相対効力で割ることによって、凍結/解凍(F/T)収率を計算した。乾燥材料の相対効力を凍結対照の相対効力で割ることによって、乾燥収率を計算した。乾燥材料のT0時点と1週間25℃安定性材料の相対効力をLog10計算によって対数に変換することによって、対数損失を計算した。いったん数値を対数に変換したら、T0時点から安定性時点を差し引いて、25℃で1週間の対数損失を決定した。
【0169】
製剤2、4、5および12が、F/T収率、乾燥収率および25℃で1週間の対数損失の最良の組み合わせを示した。これらの4つの製剤は全て、25%以上の二糖(スクロースおよび/またはトレハロース)を含有していた。
【表9】
【0170】
[実施例8]
SPG(スクロース、リン酸カリウム、グルタミン酸)を、実施例7に従って作製した。
【0171】
以下の他の溶液も作製した:650mg/mLスクロース、650mg/mLトレハロース、5M塩化ナトリウム(NaCl)および10mg/mLカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMCナトリウム)。
【0172】
全ての溶液をPES 0.22μm Stericupフィルタで濾過した。溶液とデングウイルスDEN1またはDEN4を合わせて、結果の表に示される最終的な製剤を得た。
【0173】
製剤を0.5mLの充填量で2Rガラスバイアルに充填し、-115℃で15分間凍結した。いったん凍結したら、バイアルをマイクロ波真空乾燥機(MVD)で乾燥させた。いったん乾燥したら、いくつかのバイアルを25℃で1週間安定させた。次いで、バイアルを、デング相対感染力アッセイ(DRIA)を使用した効力試験に供した。
【表10】
【0174】
乾燥材料のT0時点と1週間25℃安定性材料の相対効力をLog10計算によって対数に変換することによって、対数損失を計算した。いったん数値を対数に変換したら、T0時点から安定性時点を差し引いて、25℃で1週間の対数損失を決定した。
【0175】
結果は、25%以上の二糖を含有するDEN1製剤について、最も低い25℃で1週間の対数損失が観察されることを示した。15%以上の二糖および30mMの塩を含むDEN4製剤が、最も低い25℃で1週間の対数損失を有した。15%以上の二糖および塩を含む製剤については、CMCナトリウムの添加が残留水分の減少に役立った。
【表11】
【0176】
[実施例9]
製剤は、1xSPG(11mMリン酸カリウム、6mM L-グルタミン酸、0.22Mスクロース)と様々な量のL-15(90%、45%および25%)およびDEN1、DEN2、DEN3またはDEN4とした。LeibovitzのL-15の主成分はNaCl(137.39mM)である。したがって、90%L-15は123.65mM NaClに相当し、45%L-15は61.83mM NaClに相当し、25%L-15は34.35mM NaClに相当する。
【0177】
製剤を0.5mLの充填量で2Rガラスバイアルに充填し、-115℃で15分間凍結した。いったん凍結したら、バイアルをマイクロ波真空乾燥機(MVD)で乾燥させた。次いで、バイアルを、デング相対感染力アッセイ(DRIA)を使用した効力試験に供した。
【0178】
MVDで速く乾燥した製剤は、凍結乾燥でゆっくり乾燥した製剤よりも安定であった(図13図16参照)。上記製剤では、塩濃度が61.83mM以上のNaClであると、他の3つの型(DEN1、DEN2、およびDEN3)では観察されない、乾燥中のDEN4の安定性が改善するようである。
【0179】
[実施例10]
以下の溶液も作製した:500mg/mLスクロース、250mg/mLトレハロース、1M塩化ナトリウム(NaCl)および10mg/mLナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMCナトリウム)、100mg/mLポリビニルピロリドン(PVP)、100mMリン酸カリウム、500mg/mLプロピレングリコールおよび滅菌水。
【0180】
全ての溶液をPES 0.22μm Stericupフィルタで濾過した。溶液とデングウイルス(DEN1)を合わせて、以下の製剤を得た:11mMリン酸カリウム、90mg/mLスクロース、5mg/mL CMCナトリウム、5mg/ml PG;11mMリン酸カリウム、200mg/mLスクロース、50mg/ml PVP K12;11mMリン酸カリウム、75mg/mLスクロース、175mg/mlトレハロース、30mM NaCl、5mg/ml CMC。
【0181】
製剤を0.5mLの充填量で2Rガラスバイアルに充填し、-115℃で15分間凍結した。いったん凍結したら、バイアルをマイクロ波真空乾燥機(MVD)または凍結乾燥器(Lyo)のいずれかで乾燥させた。次いで、バイアルを、デング相対感染力アッセイ(DRIA)を使用した効力試験に供した。
【0182】
図17は、マイクロ波真空乾燥機で乾燥した製剤のバイアルの相対効力が、凍結乾燥機で乾燥したもの以上であることを示している。
【表12】
【0183】
[実施例11]
DENV1、DENV2、DENV3およびDENV4の四価の製剤(製剤20)を凍結乾燥し、37℃で1週間(図18A)、25℃で1ヶ月(図18B)、および2~8℃で18ヶ月保存した(図19A図19D)。各時点でプラークアッセイ(本文で前に記載される)によって効力を分析した。-70℃で保存した対照試料を、各安定性時点と同じアッセイ実行でプラークアッセイによって試験した。-70℃対照試料から安定性試料の対数結果を差し引くことによって、各時点の対数損失を計算した。図18A図18Bおよび図19A図19Dは、四価の製剤20における各血清型の経時的な対数損失を示している。エラーバーは、各時点で計算された対数損失の平均の2つの標準誤差を示す。製剤20は、1週間、1ヶ月および18ヶ月でそれぞれ観察された最小の効力損失によって証明されるように、37℃、25℃および2~8℃で、四価のワクチンの4つ全てのデング血清型に熱安定性を提供する。
【0184】
[実施例12]
ハイスループットプラークアッセイ
ハイスループットプラークアッセイ「マイクロプラーク(uP)」アッセイは、96ウェルマイクロプレートで実行される自動化されたミニチュア化デングプラークアッセイである。手短に言えば、Vero細胞を、1ウェル当たり40000個細胞で、2%L-グルタミンを含むOptiPro SFMの黒色壁の透明底組織培養プレートに播種する。細胞を37℃、5%pCO、90%超rHで一晩付着させる。ウイルスをOptiMEM還元血清培地で事前希釈し、超低付着プレートの培地でさらに1:2に段階希釈する。穏やかな吸引を使用して植物培地を細胞プレートから除去し、25μL/ウェルの接種材料を段階希釈プレートから細胞プレートに移す。ウイルス吸着は、37℃、5%pCO、90%超rHで4時間進行する。吸着インキュベーション後、175μL/ウェルのオーバーレイ培地を全てのウェルに添加して、ウイルスの分泌および拡散を阻害する。血清型に応じて、感染は前記インキュベーション条件で2または3日間進行する。
【0185】
感染インキュベーション後、オーバーレイ培地を除去し、細胞をPBS中3.7%ホルムアルデヒドで固定する。プレートをPBS中0.5%Triton X-100で透過処理し、次いで、PBS中1%BSAでブロッキングする。型特異的ウサギモノクローナル抗体、引き続いて抗ウサギAlexaFluor488を使用して、ウイルスプラークを蛍光染色する。プレートを、Perkin Elmer EnSightを使用して画像化し、蛍光プラークを自動カウントアルゴリズムによってカウントする。以下の式を使用して、カウント基準(型に依存)内にある有効なオブジェクト数を含有するウェルから力価を決定する。
【数1】
【0186】
DENV1、DENV2、DENV3およびDENV4の四価の製剤を表13に詳述される製剤で凍結乾燥し、25℃で1週間保存した2つの試験を実行した。各製剤は、9%スクロース、11mMリン酸カリウム、50mM NaCl、25mM Leu(pH7.5)および様々な量のCMCまたはPGを含有している。各時点で上記のハイスループットプラークアッセイによって、効力を分析した。-70℃で保存した対照試料もアッセイで試験した。-70℃対照試料から安定性試料の対数結果を差し引くことによって、各時点の対数損失を計算した。表14aおよび表14bは、様々な四価の製剤における各血清型の経時的な対数損失を示している。種々の組み合わせの0.2%~1%濃度のCMCまたはPGは、互いに同様の安定性および組み合わせのない製剤よりも増加した安定性を示す。
【表13】
【表14】
【表15】
【0187】
本明細書で言及される全ての刊行物は、本発明に関連して使用され得る方法論および材料を説明および開示する目的で参照により組み込まれる。
【0188】
添付の図面を参照して本明細書で本発明の様々な実施形態を説明してきたが、本発明はこれらの正確な実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲または精神から逸脱することなく、種々の変更および修正が当業者によってそこで行われ得ることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図19D
【配列表】
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