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特許7042405ワイヤハーネスユニットおよびワイヤハーネスの取付構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスユニットおよびワイヤハーネスの取付構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20220318BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20220318BHJP
   F16B 2/10 20060101ALI20220318BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
H02G3/04 087
H02G3/30
F16B2/10 Z
B60R16/02 623V
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019039789
(22)【出願日】2019-03-05
(65)【公開番号】P2020145823
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 悟司
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-154653(JP,A)
【文献】特開2015-186284(JP,A)
【文献】特開2009-27770(JP,A)
【文献】特開2007-104828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H02G 3/30
F16B 2/10
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材に取り付けられるワイヤハーネスユニットであって、
シート状のベース基材に少なくとも1本の電線が固定されたワイヤハーネスと、
前記ベース基材において前記電線が固定された部分とは異なる余地部を挟んで保持する一対の挟持部と、前記被取付部材に設けられた被嵌合部に対して前記電線の延び方向と交差する方向に嵌合して前記被嵌合部と前記電線の延び方向に係止する嵌合部とを有するプロテクタと、を備えたワイヤハーネスユニット。
【請求項2】
前記一対の挟持部は、前記余地部に向かって突出する複数の突部を有しており、
前記一対の挟持部のうちの一方の前記挟持部における前記複数の突部と、前記一対の挟持部のうちの他方の前記挟持部における前記複数の突部とは、互い違いに配置されており、
前記余地部は、互い違いに配置された前記複数の突部の間を蛇行して配置されている請求項1に記載のワイヤハーネスユニット。
【請求項3】
前記プロテクタは、前記一対の挟持部と連なり前記ワイヤハーネスに沿って配置される一対の壁体をさらに有しており、
前記一対の壁体の一端側には、それぞれを互いに繋ぐヒンジが設けられ、
前記一対の壁体の他端側には、前記一対の挟持部によって前記余地部を挟んだ状態に保持するロック機構が前記一対の壁体に亘って設けられている請求項1または請求項2に記載のワイヤハーネスユニット。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のワイヤハーネスユニットと、
前記ワイヤハーネスユニットが取り付けられる前記被取付部材と、を備えたワイヤハーネスの取付構造であって、
前記嵌合部は、前記一対の挟持部と連なり前記ワイヤハーネスに沿って配置される一対の壁体から突出して形成されており、
前記被取付部材は、前記一対の挟持部によって前記余地部を挟んだ状態で前記プロテクタを収容する収容部を有しており、
前記収容部の内壁には、前記嵌合部の突出寸法に対応して凹んだ前記被嵌合部が形成されているワイヤハーネスの取付構造。
【請求項5】
前記プロテクタは、前記収容部に設けられた被抜止部と前記電線の延び方向と交差する方向に凹凸嵌合することにより、前記プロテクタが前記収容部から離脱する方向に前記被抜止部と係止する抜止部をさらに有している請求項4に記載のワイヤハーネスの取付構造。
【請求項6】
前記抜止部は、前記嵌合部の突出端部にさらに突出して形成されており、
前記被抜止部は、前記被嵌合部の内面にさらに凹んで形成されている請求項5に記載のワイヤハーネスの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、ワイヤハーネスユニットおよびワイヤハーネスの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複数の電線が束ねられた幹線部を有するワイヤハーネスをシートに取り付けるワイヤハーネスの取付構造として、特開2012-51494号公報(下記特許文献1)に記載のものが知られている。
【0003】
ワイヤハーネスの幹線部には、幹線部の外周に巻き付けられる結束バンドが取り付けられている。結束バンドは、係止部が連なって形成されており、係止部とシートの下面に設けられたスリットの縁部とが係止することによってシートの下面にワイヤハーネスが取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-51494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようにワイヤハーネスの外周に結束バンドが巻き付けられている場合、例えば、ワイヤハーネスが強く引っ張られると、ワイヤハーネスの電線に結束バンドが食い込み、電線が損傷することが懸念される。
【0006】
本明細書では、ワイヤハーネスの電線が他の部材によって損傷することを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示される技術は、被取付部材に取り付けられるワイヤハーネスユニットであって、シート状のベース基材に少なくとも1本の電線が固定されたワイヤハーネスと、前記ベース基材において前記電線が固定された部分とは異なる余地部を挟んで保持する一対の挟持部と、前記被取付部材に設けられた被嵌合部に対して前記電線の延び方向と交差する方向に嵌合して前記被嵌合部と前記電線の延び方向に係止する嵌合部とを有するプロテクタと、を備える構成とした。
【0008】
このような構成のワイヤハーネスユニットによると、電線が固定された部分とは異なる余地部が一対の挟持部に挟まれて保持される。また、嵌合部が被取付部材の被嵌合部と嵌合してワイヤハーネスユニットが被取付部材に取り付けられる。 したがって、例えば、ワイヤハーネスが強く引っ張れる場合には、ワイヤハーネスのベース基材に引っ張り力が作用する。つまり、電線に対して他の部材が食い込むことがないから、電線が他の部材によって損傷することを防ぐことができる。
【0009】
本明細書によって開示されるワイヤハーネスユニットは、以下の構成としてもよい。
前記一対の挟持部は、前記余地部に向かって突出する複数の突部を有しており、前記一対の挟持部のうちの一方の前記挟持部における前記複数の突部と、前記一対の挟持部のうちの他方の前記挟持部における前記複数の突部とは、互い違いに配置されており、
前記余地部は、互い違いに配置された前記複数の突部の間を蛇行して配置されている構成としてもよい。
【0010】
このような構成によると、一対の挟持部における複数の突部の間を余地部が蛇行して配置されているから、ワイヤハーネスが引っ張れる場合に、突部がベース基材に食い込んだ状態となり、ワイヤハーネスがプロテクタから抜け落ちることを抑制することができる。また、プロテクタにおけるワイヤハーネスの保持力を高めることができる。
【0011】
前記プロテクタは、前記一対の挟持部と連なり前記ワイヤハーネスに沿って配置される一対の壁体をさらに有しており、前記一対の壁体の一端側には、それぞれを互いに繋ぐヒンジが設けられ、前記一対の壁体の他端側には、前記一対の挟持部によって前記余地部を挟んだ状態に保持するロック機構が前記一対の壁体に亘って設けられている構成としてもよい。
【0012】
このような構成によると、ロック機構によって余地部が一対の挟持部に挟まれた状態に保持されるから、ワイヤハーネスからプロテクタが不用意に脱落することを抑制することができる。
【0013】
また、本明細書によって開示される技術は、前記ワイヤハーネスユニットと、前記ワイヤハーネスユニットが取り付けられる前記被取付部材と、を備えたワイヤハーネスの取付構造であって、前記嵌合部は、前記一対の壁体から突出して形成されており、前記被取付部材は、前記一対の挟持部によって前記余地部を挟んだ状態で前記プロテクタを収容する収容部を有しており、前記収容部の内壁には、前記嵌合部の突出寸法に対応して凹んだ前記被嵌合部が形成されている。
【0014】
このような構成によると、ワイヤハーネスユニットのプロテクタを収容部に収容することによって被嵌合部と嵌合部とを嵌合させ、プロテクタを被取付部材に取り付けることができる。また、プロテクタが収容部に収容されることにより、余地部が一対の挟持部に挟まれた状態に保持されるから、一対の挟持部から余地部が外れることをさらに抑制することができる。
【0015】
前記プロテクタは、前記収容部に設けられた被抜止部と前記電線の延び方向と交差する方向に凹凸嵌合することにより、前記プロテクタが前記収容部から離脱する方向に前記被抜止部と係止する抜止部をさらに有している構成としてもよい。
また、前記抜止部は、前記嵌合部の突出端部にさらに突出して形成されており、前記被抜止部は、前記被嵌合部の内面にさらに凹んで形成されている構成としてもよい。
【0016】
このような構成によると、抜止部と被抜止部とが係止することにより一対の壁体が収容部から離脱することを防ぐことができる。これにより、被取付部材からワイヤハーネスユニットが脱落することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本明細書によって開示される技術によれば、ワイヤハーネスの電線が他の部材によって損傷することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態1にかかるワイヤハーネスの取付構造であって、ワイヤハーネスユニットがケースのプロテクタ収容部に取り付けられた状態を示す斜視図
図2】ワイヤハーネスユニットがケースのプロテクタ収容部に取り付けられた状態を示す正面図
図3】ワイヤハーネスユニットがケースのプロテクタ収容部に取り付けられた状態を示す平面図
図4】ワイヤハーネスユニットがケースのプロテクタ収容部に取り付けられた状態を示す側面図
図5図3のA-A線断面図
図6図5のB-B線断面図
図7】ワイヤハーネスユニットの斜視図
図8】ワイヤハーネスユニットの正面図
図9】ワイヤハーネスユニットの側面図
図10】ワイヤハーネスユニットの底面図
図11図8のC-C線断面図
図12図8のD-D線断面図
図13】ワイヤハーネスにプロテクタを組み付ける前の状態を示す斜視図
図14】ワイヤハーネスユニットをケースのプロテクタ収容部に取り付ける前の状態を示す斜視図
図15】プロテクタの斜視図
図16】プロテクタの正面図
図17】プロテクタの底面図
図18】実施形態2にかかるワイヤハーネスユニットの斜視図
図19】ワイヤハーネスユニットの正面図
図20】プロテクタの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
本明細書に開示された技術における一実施形態について図1から図17を参照して説明する。
本実施形態は、車両に搭載される図示しない機器同士を接続するワイヤハーネスユニット10が機器のケース60に取り付けられたワイヤハーネス30の取付構造Sを例示している。なお、以下の説明において、F側を前側、B側を後側、L側を左側、R側を右側とし、U側を上側、D側を下側として説明する。
【0020】
ワイヤハーネスユニット10は、複数の電線を有するワイヤハーネス30と、ワイヤハーネス30に組み付けられるプロテクタ40とを備えている。
【0021】
ワイヤハーネス30は、図2および図8に示すように、複数本の被覆電線11と、複数の被覆電線11を両側から挟んで固定する一対のベース基材20とを有している。本実施形態におけるワイヤハーネス30は、6本の被覆電線11が一対のベース基材20に両側から挟まれて構成されている。
【0022】
各被覆電線11は、芯線を絶縁被覆によって覆って形成されている。
【0023】
一対のベース基材20は、シート状をなす不織布によって前後に長い帯状に形成されている。不織布は、繊維を絡ませたり接着したりして形成された布であって、例えば、繊維シート、ウェブ(繊維だけで構成された薄い膜状のシート)またはバット(毛布状の繊維)などが挙げられる。本実施形態では、ベース基材20は、繊維シートによって構成されている。また、ベース基材20は、天然繊維もしくは合成繊維を織って作った織布であってもよい。
【0024】
ベース基材20の上下方向略中央部には、図2および図8に示すように、6本の被覆電線11が上下方向に平らに並んで固定されている。
ワイヤハーネス30において6本の被覆電線11が一対のベース基材20に挟まれて固定された部分は電線固定部32とされ、電線固定部32の上下方向両側は、ベース基材20同士を互いに固定した余地部34とされている。
【0025】
ベース基材20に対する被覆電線11の固定は、ベース基材20に、超音波溶着や熱溶着によって被覆電線11を接合したり、粘着剤や接着剤によって被覆電線11を固定したり、被覆電線11をベース基材20に縫い付けたりするなど、公知の固定方法によって固定されている。ベース基材20同士の固定は、超音波溶着や熱溶着によってベース基材20同士を接合したり、粘着剤や接着剤によってベース基材20同士を固定したりするなど、公知の固定方法によって固定されている。
【0026】
ワイヤハーネス30の両端部は、図7および図9に示すように、一対のベース基材20から複数の被覆電線11が引き出されており、一対のベース基材20から引き出された複数の被覆電線11は、車両に搭載された図示しない各種電装品に接続されている。
【0027】
プロテクタ40は、合成樹脂によって形成されている。プロテクタ40は、図7図9から図12に示すように、ワイヤハーネス30の電線固定部32の前端部に取り付けられている。したがって、ワイヤハーネスユニット10において、プロテクタ40の後端部はワイヤハーネス30の電線固定部32を後方に向かって引き出しており、プロテクタ40の前端部は複数の被覆電線11を引き出している。
【0028】
プロテクタ40は、図5に示すように、ワイヤハーネス30の左右方向両側に沿って配される一対の壁体42と、一対の壁体42を互いに繋ぐ一対のヒンジ43と、一対の壁体42に亘って設けられたロック機構46と、ワイヤハーネス30を左右方向両側から挟持する2組の一対の挟持部50と、を備えている。
【0029】
一対の壁体42は、図7および図9に示すように、それぞれが略矩形の平板状に形成されている。一対の壁体42の一端部である上端部42Uには、一対の壁体42を互いに繋ぐ一対のヒンジ43が前後方向に並んで形成されている。一対のヒンジ43は、屈曲可能に板厚が壁体42よりも薄く形成されている。
【0030】
一対の壁体42は、プロテクタ40がワイヤハーネス30に組み付けられる前は、図13図15から図17に示すように、一対のヒンジ43が真っ直ぐ延びて、各壁体42におけるワイヤハーネス30側に配置される内側面42Aが下方に臨む状態となっている。また、一対の壁体42は、プロテクタ40がワイヤハーネス30に組み付けられると、図1から図5図7から図9に示すように、一対のヒンジ43が二つ折りに屈曲されることによって、ワイヤハーネス30の左右方向両側に沿って配置される。
【0031】
一対の壁体42の内側面42Aには、図7および図8に示すように、ワイヤハーネス30の電線固定部32に接触する複数の支持突部41が形成されている。
【0032】
複数の支持突部41は、プロテクタ40がワイヤハーネス30に組み付けられる前の状態では、図15および図17に示すように、前後方向に間隔を空けて左右方向に3列に並んで形成されている。左右方向に3列に並んだ支持突部41は、隣り合う列の支持突部41が前後方向にずれて配置されている。つまり、複数の支持突部41は、壁体42の内側面42Aにおいて前後左右に千鳥配置に形成されている。
【0033】
また、一対の壁体42における支持突部41は、図15および図17に示すように、一対の壁体42において前後左右に互い違いとなるように配置されている。したがって、プロテクタ40がワイヤハーネス30に組み付けられると、図6および図12に示すように、一対の壁体42における複数の支持突部41が、電線固定部32に対して左右方向両側から前後方向に互い違いに接触して、電線固定部32を左右方向両側から支持するようになっている。
【0034】
一対の壁体42の内側面42Aにおける上端縁部および下端縁部には、図2図5および図8に示すように、一対の挟持部50がそれぞれ形成されている。それぞれの挟持部50は、壁体42からワイヤハーネス30の余地部34側に向かって突出する厚肉部52と、厚肉部52から余地部34側に向かって更に突出する複数の突部54とを備えている。
【0035】
厚肉部52は、前後方向に壁体42の全長に亘って形成されている。厚肉部52の壁体42からの突出寸法は、電線固定部32の外面32Aと余地部34の外面34Aと間の距離とほぼ同じに設定されている。
【0036】
複数の突部54は、図15および図17に示すように、前後方向に間隔を空けて1列に並んで形成されている。複数の突部54も、支持突部41と同様に、一対の壁体42において前後左右に互い違いとなるように配置されている。突部54の厚肉部52からの突出寸法は、支持突部41の突出寸法よりも僅かに大きく設定されている。
【0037】
したがって、プロテクタ40がワイヤハーネス30に組み付けられると、一対の壁体42における複数の突部54が、図11に示すように、余地部34を左右方向両側から前後方向に互い違いに押圧し、余地部34が一対の挟持部50間を左右方向に蛇行するように配置される。
【0038】
ロック機構46は、図5に示すように、一対の壁体42の他端側である下端部側の一対の挟持部50に形成されている。
ロック機構46は、一方の挟持部50である右側の挟持部50の厚肉部52に形成されたロック受部47と、他方の挟持部50である左側の挟持部50の厚肉部52に弾性変位可能に形成されたロック片48とを備えている。
【0039】
ロック受部47は、厚肉部52の下面52Uから上方に向かって凹んだ形態をなしている。ロック受部47におけるワイヤハーネス30側の内側縁部47Aの上下方向の高さ寸法は、外側縁部47Bに比べて低くなっている。
【0040】
ロック片48は、厚肉部52の下端縁における前後方向略中央部からワイヤハーネス30側に向かって片持ち状に延びた形態とされている。ロック片48の延出端部には、上方に向かって突出するロック突起48Aが形成されている。
【0041】
ロック片48は、プロテクタ40をワイヤハーネス30に組み付ける際に、ロック突起48Aがロック受部47の内側縁部47Aに乗り上げることにより下方に向かって弾性変形する。プロテクタ40がワイヤハーネス30に組み付けられ、一対の壁体42がワイヤハーネス30に対して沿って配置されると、ロック突起48Aが内側縁部47Aを乗り越えてロック片48が弾性復帰する。ロック片48が弾性復帰すると、図5に示すように、ロック突起48Aとロック受部47の内側縁部47Aとが左右方向に係止し、一対の壁体42がワイヤハーネス30に対して沿って配置された状態に保持されるようになっている。
【0042】
また、一対の壁体42の外側面42Bには、図3図6および図7に示すように、外方に向かって突出する複数の嵌合部49が形成されている。本実施形態は、それぞれの壁体42において前後方向に間隔を空けてそれぞれ2つずつ形成されている。それぞれの嵌合部49は、上下方向に壁体42の全長に亘って延びる平面視略矩形のリブ状に形成されている。
【0043】
また、左側の壁体42におけるそれぞれの嵌合部49には、嵌合部49から外方に向かってさらに突出する抜止部44が形成されている。
抜止部44は、図9に示すように、嵌合部49の上下方向略中央部に側面視略矩形状に形成されている。抜止部44の下部は、図8に示すように、下方に向かうほど嵌合部49側に傾斜する案内面44Aとされている。
【0044】
機器のケース60は、合成樹脂によって形成されている。ケース60は、図3に示すように、平面視略矩形の箱形状に形成されている。ケース60の一側壁61には、ハーネス配索路62が形成されている。
【0045】
ハーネス配索路62は、図1図3および図14に示すように、ケース60の一側壁61から外方に向かって延出する平板状の底壁63と、底壁63の上面から一側壁61と同じ高さまで上方に向かって延びる立設壁64とを備えている。
【0046】
立設壁64におけるケース60とは反対側の外面64Aには、複数の補強部65が形成されている。複数の補強部65は、前後方向に間隔を空けるように並んで形成されている。それぞれの補強部65は、立設壁64の上端から底壁63に向かうほど立設壁64から離れる方向に傾斜する板状に形成されている。したがって、立設壁64は、ケース60側から外方に向かって弾性変位することが抑制することができるようになっている。
【0047】
ハーネス配索路62の前端部には、図1図3および図6に示すように、ワイヤハーネスユニット10のプロテクタ40を収容可能なプロテクタ収容部66が形成されている。
プロテクタ収容部66は、ケース60の一側壁61における前端部が厚肉に形成されることによって形成されている。
【0048】
プロテクタ収容部66は、前後および上方に開口した形態とされており、上方からプロテクタ40を収容可能とされている。
【0049】
プロテクタ収容部66の前後方向の長さ寸法は、プロテクタ40の前後方向の長さ寸法とほぼ同一とされている。したがって、ワイヤハーネスユニット10のプロテクタ40がプロテクタ収容部66に収容されると、プロテクタ40から後方に引き出されたワイヤハーネス30は、ハーネス配索路62内に配索され、プロテクタ40から前方に引きされた複数の被覆電線11は、ハーネス配索路62から前方に引き出された状態となる。
【0050】
プロテクタ収容部66内の左右方向の幅寸法は、図2図3図5および図6に示すように、ワイヤハーネス30に取り付けられたプロテクタ40の幅寸法と実質的に同一とされている。ここで、実質的に同一とは、プロテクタ収容部66内の左右方向の幅寸法とプロテクタ40の幅寸法とが同一の場合と、プロテクタ収容部66内の左右方向の幅寸法とプロテクタ40の幅寸法とが同一でない場合でも、実質的に同一とみなしうる場合を含む。
【0051】
したがって、プロテクタ収容部66内にプロテクタ40が上方から収容されると、ロック機構46によって保持された一対の壁体42がプロテクタ収容部66内において2重に保持されるようになっている。
【0052】
プロテクタ収容部66の左右方向両側の内壁66Aには、プロテクタ40がプロテクタ収容部66内に収容される際に、プロテクタ40の嵌合部49が上方から収容される複数の被嵌合部67が上下方向に全長に亘って形成されている。本実施形態では、プロテクタ収容部66のそれぞれの内壁66Aに、図3および図6に示すように、プロテクタ40の嵌合部49と対応する2つの被嵌合部67が前後方向に間隔を空けて形成されている。被嵌合部67は、プロテクタ収容部66の内壁66Aに平面視略矩形状に凹んで形成されている。
【0053】
したがって、被嵌合部67内にプロテクタ40の嵌合部49が上方から嵌合されると、被嵌合部67と嵌合部49とがワイヤハーネス30の延び方向と交差する方向である左右方向に凹凸嵌合した状態となる。また、被嵌合部67と嵌合部49とが凹凸嵌合すると、被嵌合部67と嵌合部49とが前後方向に係止することにより、ワイヤハーネス30の延び方向にワイヤハーネスユニット10がプロテクタ収容部66から脱落しないように保持される。
【0054】
また、プロテクタ収容部66の左側の内壁66Aにおける被嵌合部67には、図5および図6に示すように、立設壁64を左右方向に貫通する抜止孔68が略矩形状に開口して形成されている。
【0055】
抜止孔68は、プロテクタ40の嵌合部49における抜止部44に対応するように、被嵌合部67の上下方向略中央部に形成されている。したがって、プロテクタ収容部66内にプロテクタ40が上方から収容され、プロテクタ40が正規の組み付け位置に至ると、抜止孔68内にプロテクタ40の抜止部44が嵌合する。また、抜止孔68内に抜止部44が嵌合すると、抜止部44の上面44Uと抜止孔68の上縁部68Uとが上下方向に係止することによりプロテクタ収容部66からワイヤハーネスユニット10のプロテクタ40が上方に外れないようになっている。
【0056】
本実施形態は、以上のような構成であって、続いて、機器のケースに取り付けられたワイヤハーネスユニット10の作用および効果について説明する。
一般に、複数の被覆電線からなるワイヤハーネスは、複数の被覆電線の外周に結束バンドを巻き付けて束ねることにより構成されている。このように電線の外周に結束バンドなど結束部材が巻き付けられている場合、例えば、ワイヤハーネスが強く引っ張られると、被覆電線に結束部材が食い込み、被覆電線が損傷することが懸念される。
【0057】
そこで、本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意検討を行った結果、本実施形態の構成を見出した。すなわち、本実施形態は、ケース(被取付部材)60に取り付けられるワイヤハーネスユニット10であって、シート状のベース基材20に少なくとも1本の被覆電線11が固定されたワイヤハーネス30と、ベース基材20において被覆電線11が固定された部分とは異なる余地部34を挟んで保持する一対の挟持部50と、ケース60に設けられた被嵌合部67に対して左右方向(被覆電線11の延び方向と交差する方向)に嵌合して被嵌合部67と前後方向(被覆電線11の延び方向)に係止する嵌合部49とを有するプロテクタ40と、を備える構成としている。
【0058】
すなわち、本実施形態によると、図11に示すように、被覆電線11が固定された部分とは異なる余地部34が一対の挟持部50に挟まれて保持される。また、図3および図6に示すように、嵌合部49がケース60の被嵌合部67と嵌合してワイヤハーネスユニット10がケース60に取り付けられる。これにより、例えば、ワイヤハーネス30が強く引っ張れる場合には、ワイヤハーネス30のベース基材20に引っ張り力が作用し、従来のように、被覆電線に締付部材などが食い込まないから、ワイヤハーネス30の被覆電線11が他の部材によって損傷することを防ぐことができる。
【0059】
また、本実施形態の一対の挟持部50は、余地部34に向かって突出する複数の突部54を有しており、一対の挟持部50のうちの一方の挟持部50における複数の突部54と、一対の挟持部50のうちの他方の挟持部50における複数の突部54とは、互い違いに配置され、余地部34は、互い違いに配置された複数の突部54の間を蛇行して配置されている。
【0060】
つまり、一対の挟持部50における複数の突部54の間を余地部34が蛇行して配置されているから、ワイヤハーネス30が引っ張れる場合に、突部54が余地部34のベース基材20に食い込んだ状態となり、ワイヤハーネス30がプロテクタ40から抜け落ちることを抑制することができる。また、プロテクタ40におけるワイヤハーネス30の保持力を高めることができる。
【0061】
さらに、プロテクタ40は、図5に示すように、一対の挟持部50と連なり、ワイヤハーネス30に沿って配置される一対の壁体42をさらに有しており、一対の壁体42の上端側(一端側)には、それぞれを互いに繋ぐヒンジ43が設けられ、一対の壁体42の下端側(他端側)には、一対の挟持部50によって余地部34を挟んだ状態に保持するロック機構46が一対の壁体42に亘って設けられている。
【0062】
このような構成によると、ロック機構46によって余地部34が一対の挟持部50に挟まれた状態に保持されるから、ワイヤハーネス30からプロテクタ40が脱落することを抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態によると、嵌合部49は、図3および図6に示すように、一対の壁体42から突出して形成されており、ケース60は、一対の挟持部50によって余地部34を挟んだ状態でプロテクタ40を収容するプロテクタ収容部(収容部)66を有しており、プロテクタ収容部66の内壁66Aには、嵌合部49の突出寸法に対応して凹んだ被嵌合部67が形成されている。
【0064】
したがって、プロテクタ40をプロテクタ収容部66内に収容することによって被嵌合部67と嵌合部49とを嵌合させて、プロテクタ40をケース60に取り付けることができる。また、一対の壁体42がプロテクタ収容部66内に収容されることにより、余地部34が一対の挟持部50に挟まれた状態に保持されるから、一対の挟持部50から余地部34が外れることを、ロック機構46と共に、2重に抑制することができる。
【0065】
さらに、プロテクタ40は、図5に示すように、プロテクタ収容部66に設けられた抜止孔(被抜止部)68と前後方向(被覆電線11の延び方向と交差する方向)に凹凸嵌合することによりプロテクタ40がプロテクタ収容部66から離脱する方向に抜止孔68の上縁部68Uと係止する抜止部44をさらに有している。
【0066】
また、抜止部44は、嵌合部49の突出端部にさらに突出して形成されており、抜止孔68は、被嵌合部67の内面にさらに凹んで立設壁64を貫通して形成されている。
つまり、抜止孔68の上縁部68Uと抜止部44とが上下方向に係止することにより一対の壁体42がプロテクタ収容部66から離脱することを防ぐことができる。これにより、ケース60のプロテクタ収容部66からワイヤハーネスユニット10が脱落することを抑制することができる。
【0067】
<実施形態2>
次に、実施形態2について図18から図20を参照して説明する。
実施形態2のワイヤハーネスユニット110は、実施形態1におけるワイヤハーネスユニット10におけるプロテクタ40の形状を変更したものであって、実施形態1と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。
【0068】
実施形態2のプロテクタ140は、図18から図20に示すように、実施形態1における一対の壁体42の内側面42Aの支持突部41が形成されていない構成となっている。言い換えると、プロテクタ140は、一対の壁体142の内側面142Aにおける一対の挟持部50の間が平らな構成となっている。
【0069】
したがって、ワイヤハーネス30に対してプロテクタ140が組み付けられると、ワイヤハーネス30は、一対の挟持部50によって余地部34が挟持されるものの、一対の壁体142と電線固定部32とが左右方向に離れて配置される。
【0070】
つまり、例えば、ワイヤハーネス30が後方に引っ張れた場合でも、ワイヤハーネス30の電線固定部32とプロテクタ40とが互いに作用しないから、ワイヤハーネス30の被覆電線11が他の部材によって損傷することをさらに抑制することができるようになっている。
【0071】
<他の実施形態>
本明細書で開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような種々の態様も含まれる。
(1)上記実施形態では、ワイヤハーネス30は、6本の被覆電線11を有する構成にした。しかしながら、これに限らず、ワイヤハーネスは、被覆電線の本数を5本以下や7本以上に構成してもよく、被覆電線の電線径を任意で変更してもよい。
【0072】
(2)上記実施形態では、ワイヤハーネス30は、複数の被覆電線11が一対のベース基材20に挟まれた構成にした。しかしながら、これに限らず、ワイヤハーネスは、複数の被覆電線が1枚のベース基材の片面に固定される構成にしてもよい。
【0073】
(3)上記実施形態では、プロテクタ40がケース60のプロテクタ収容部66に収容されることにより、ワイヤハーネスユニット10がケース60に固定される構成にした。しかしながら、これに限らず、プロテクタの外側面にクリップ所の嵌合部を形成し、ケースに設けられた丸孔状の被嵌合部に嵌合部を嵌合させることによりワイヤハーネスユニットがケースに固定される構成にしてもよい。
【0074】
(4)上記実施形態では、プロテクタ40における下側の一対の挟持部50にロック機構46が形成された構成にした。しかしながら、これに限らず、ロック機構は、プロテクタの前側部や後側部に形成してもよい。また、作業者がワイヤハーネスに組み付けられたプロテクタを保持しつつ、ワイヤハーネスユニットをケースに組み付ける場合には、一対の壁体にロック機構を形成しなくてもよい。
【符号の説明】
【0075】
10:ワイヤハーネスユニット
11:被覆電線(「電線」の一例)
20:ベース基材
30:ワイヤハーネス
34:余地部
40:プロテクタ
42:壁体
43:ヒンジ
44:抜止部
46:ロック機構
49:嵌合部
50:挟持部
54:突部
60:ケース(「被取付部材」の一例)
66:プロテクタ収容部(「収容部」の一例)
66A:内壁
67:被嵌合部
68:抜止孔(「被抜止部」の一例)
図1
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