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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】蒸気発生システム
(51)【国際特許分類】
   F22B 1/00 20060101AFI20220318BHJP
   F25B 17/08 20060101ALI20220318BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
F22B1/00
F25B17/08 A
F28D20/00 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018048951
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019158299
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】可貴 裕和
(72)【発明者】
【氏名】出口 洋成
(72)【発明者】
【氏名】西川 公人
(72)【発明者】
【氏名】緒方 潔
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬幸
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-118379(JP,A)
【文献】特開平3-148568(JP,A)
【文献】特開2002-174493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/00
F25B 17/08
F28D 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケミカルヒートポンプとボイラとを備える蒸気発生システムであって、
前記ケミカルヒートポンプは、
脱水反応により蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が収容される反応器と、
前記化学蓄熱材の脱水反応により生じた蒸気を回収する回収部と、
前記化学蓄熱材の水和反応に用いる蒸気を生成する蒸発部と、
前記蒸発部で生成した蒸気を前記反応器に供給するエゼクタと、を備え、
前記蒸気発生システムは、
前記ボイラで発生する蒸気の一部を前記エゼクタに駆動蒸気として供給する駆動蒸気流路と、
前記化学蓄熱材の前記水和反応により生じる熱を前記ボイラに熱輸送する熱輸送部と、を備えることを特徴とする蒸気発生システム。
【請求項2】
前記ケミカルヒートポンプとして、第1ケミカルヒートポンプと第2ケミカルヒートポンプとを備え、
前記熱輸送部は、ヒートパイプであり、
前記ヒートパイプは、前記第1ケミカルヒートポンプの前記反応器から前記ボイラへ熱輸送する第1熱輸送状態と、前記第2ケミカルヒートポンプの前記反応器から前記ボイラへ熱輸送する第2熱輸送状態とを選択的に切替可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の蒸気発生システム。
【請求項3】
前記第1ケミカルヒートポンプの前記回収部及び前記蒸発部、並びに前記第2ケミカルヒートポンプの前記回収部及び前記蒸発部は、互いに独立した回収器と蒸発器とから構成され、
各回収器には、それぞれ対応する反応器内の前記化学蓄熱材の脱水反応で生じた蒸気と水和反応させることが可能であり、かつ前記ボイラの蒸気温度よりも低い温度の排熱を利用して脱水反応させることが可能な回収材が収容されることを特徴とする請求項2に記載の蒸気発生システム。
【請求項4】
前記第1ケミカルヒートポンプの前記回収材の脱水反応により発生させた蒸気を前記第1ケミカルヒートポンプの前記回収器から前記第2ケミカルヒートポンプの前記蒸発器へ供給する第1蒸気供給流路と、
前記第2ケミカルヒートポンプの前記回収材の脱水反応により発生させた蒸気を前記第2ケミカルヒートポンプの前記回収器から前記第1ケミカルヒートポンプの前記蒸発器へ供給する第2蒸気供給流路と、を備え、
前記第1ケミカルヒートポンプの前記蒸発器内、及び前記第2ケミカルヒートポンプの前記蒸発器内において蒸気を凝縮させることを特徴とする請求項3に記載の蒸気発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケミカルヒートポンプとボイラとを備える蒸気発生システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されるように、工場等で発生する排熱の再利用に用いることのできる装置として、ケミカルヒートポンプが知られている。一方、工場等では、蒸気を発生するボイラが用いられている。特許文献2には、排熱を利用して得られた低圧蒸気から中圧蒸気を得る蒸気発生システムが開示されている。この蒸気発生システムは、ボイラで発生させた高圧蒸気をエゼクタの駆動蒸気として利用し、エゼクタに低圧蒸気を吸引させることで、中圧蒸気を得るシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭61-149048号公報
【文献】特開2010-203730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ケミカルヒートポンプを用いてボイラを効率的に加熱する蒸気発生システムを見出すことでなされたものである。
本発明の目的は、ケミカルヒートポンプを用いてボイラを加熱する際の外部電力を削減することを可能にした蒸気発生システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する蒸気発生システムは、ケミカルヒートポンプとボイラとを備える蒸気発生システムであって、前記ケミカルヒートポンプは、脱水反応により蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材が収容される反応器と、前記化学蓄熱材の脱水反応により生じた蒸気を回収する回収部と、前記化学蓄熱材の水和反応に用いる蒸気を生成する蒸発部と、前記蒸発部で生成した蒸気を前記反応器に供給するエゼクタと、を備え、前記蒸気発生システムは、前記ボイラで発生する蒸気の一部を前記エゼクタに駆動蒸気として供給する駆動蒸気流路と、前記化学蓄熱材の前記水和反応により生じる熱を前記ボイラに熱輸送する熱輸送部と、を備える。
【0006】
この構成によれば、蒸発器で生成する蒸気は、エゼクタで圧縮されるため、蒸発器で生成する蒸気よりも高圧の蒸気を反応器に供給することができる。反応器内では、エゼクタにより圧力が高められた蒸気によって化学蓄熱材の水和反応を効率的に行うことができる。このとき、エゼクタの駆動蒸気として、ボイラで発生する蒸気の一部を用いるため、例えば、外部電力で動作する圧縮機を用いずに、蒸発器で生成する蒸気を圧縮することができる。化学蓄熱材の水和反応により生じた熱は、熱輸送部によりボイラに熱輸送されることで、ボイラを加熱することができる。
【0007】
上記蒸気発生システムにおいて、前記ケミカルヒートポンプとして、第1ケミカルヒートポンプと第2ケミカルヒートポンプとを備え、前記熱輸送部は、ヒートパイプであり、前記ヒートパイプは、前記第1ケミカルヒートポンプの前記反応器から前記ボイラへ熱輸送する第1熱輸送状態と、前記第2ケミカルヒートポンプの前記反応器から前記ボイラへ熱輸送する第2熱輸送状態とを選択的に切替可能に構成されていることが好ましい。
【0008】
この構成によれば、第1ケミカルヒートポンプと第2ケミカルヒートポンプとを交互に放熱動作させることができる。こうした第1ケミカルヒートポンプの放熱動作と第2ケミカルヒートポンプの放熱動作に連動してヒートパイプを第1熱輸送状態と第2熱輸送状態とに切り替えることで、ボイラを連続的に加熱することができる。したがって、ボイラの蒸気をより安定して発生させることができる。また、第1熱輸送部及び第2熱輸送部をヒートパイプから構成することで、例えば、ポンプ等の動力を用いずに熱輸送することができる。
【0009】
上記蒸気発生システムにおいて、前記第1ケミカルヒートポンプの前記回収部及び前記蒸発部、並びに前記第2ケミカルヒートポンプの前記回収部及び前記蒸発部は、互いに独立した回収器と蒸発器とから構成され、各回収器には、それぞれ対応する反応器内の前記化学蓄熱材の脱水反応で生じた蒸気と水和反応させることが可能であり、かつ前記ボイラの蒸気温度よりも低い温度の排熱を利用して脱水反応させることが可能な回収材が収容されることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、第1ケミカルヒートポンプにおいて、反応器内において化学蓄熱材の脱水反応で生じた蒸気を回収器で回収することで、化学蓄熱材の脱水反応を容易に進行させることができる。また、第2ケミカルヒートポンプにおいて、反応器内において化学蓄熱材の脱水反応で生じた蒸気を回収器で回収することで、化学蓄熱材の脱水反応を容易に進行させることができる。
【0011】
上記蒸気発生システムにおいて、前記第1ケミカルヒートポンプの前記回収材の脱水反応により発生させた蒸気を前記第1ケミカルヒートポンプの前記回収器から前記第2ケミカルヒートポンプの前記蒸発器へ供給する第1蒸気供給流路と、前記第2ケミカルヒートポンプの前記回収材の脱水反応により発生させた蒸気を前記第2ケミカルヒートポンプの前記回収器から前記第1ケミカルヒートポンプの前記蒸発器へ供給する第2蒸気供給流路と、を備え、前記第1ケミカルヒートポンプの前記蒸発器内、及び前記第2ケミカルヒートポンプの前記蒸発器内において蒸気を凝縮させることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第1ケミカルヒートポンプの蒸発器内、及び第2ケミカルヒートポンプの蒸発器内に蓄えられた水は、それぞれ第1ケミカルヒートポンプの放熱動作時の蒸気の発生、及び第2ケミカルヒートポンプの放熱動作時の蒸気の発生に用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ケミカルヒートポンプを用いてボイラを加熱する際の外部電力を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態における蒸気発生システムを示す概略図である。
図2】第1ケミカルヒートポンプが蓄熱動作し、第2ケミカルヒートポンプが放熱動作している状態を示す概略図である。
図3】第1ケミカルヒートポンプが放熱動作し、第2ケミカルヒートポンプが蓄熱動作している状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、蒸気発生システムの実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、蒸気発生システム11は、第1ケミカルヒートポンプ12と、第2ケミカルヒートポンプ13と、ボイラ14とを備えている。
【0016】
第1ケミカルヒートポンプ12は、外部から供給される排熱を蓄熱する蓄熱動作と、蓄熱された熱を外部に放出する放熱動作とを交互に繰り返す装置である。第1ケミカルヒートポンプ12は、水和反応により放熱する化学蓄熱材HMが収容される第1反応器21と、化学蓄熱材HMの脱水反応により生じた蒸気を回収する第1回収器22とを備えている。第1ケミカルヒートポンプ12は、化学蓄熱材HMの水和反応に用いる蒸気を生成する第1蒸発器23と、第1蒸発器23で生成した蒸気を第1反応器21に供給する第1エゼクタ24とをさらに備えている。
【0017】
第1反応器21内には、外部からの排温水又は冷水が流入される熱交換器が設けられている。化学蓄熱材HMは、熱交換器により加熱又は冷却されるように第1反応器21内に配置されている。
【0018】
第1反応器21に収容される化学蓄熱材HMは、第1ケミカルヒートポンプ12の蓄熱動作時に脱水反応し、第1ケミカルヒートポンプ12の放熱動作時に水和反応する材料である。化学蓄熱材HMとしては、周知の固体材料を用いることができる。化学蓄熱材HMは、化学蓄熱物質のみから構成してもよいし、粒子状の化学蓄熱物質を水蒸気透過性樹脂等の水蒸気透過性のバインダーで結合した材料であってもよい。化学蓄熱物質としては、例えば、塩化カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。化学蓄熱材HMは、一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。化学蓄熱材HMは、200℃以上の耐熱性を有していることが好ましい。
【0019】
第1反応器21と第1回収器22とは、蓄熱動作時に第1反応器21内で発生した蒸気を第1回収器22に送る流路により連結されている。第1回収器22内には、外部からの排温水又は冷水が流入される熱交換器が設けられている。回収材LMは、熱交換器により加熱又は冷却されるように第1回収器22内に配置されている。
【0020】
第1回収器22には、回収材LMが収容されている。回収材LMは、第1反応器21内の化学蓄熱材HMの脱水反応により生じた蒸気(水)と水和反応させることが可能であり、かつボイラ14の蒸気温度よりも低い温度の排熱(排温水)で脱水反応させることが可能な材料である。第1回収器22内の回収材LMが水和反応することで、第1回収器22内の圧力を低下させることができる。これにより、第1反応器21内の化学蓄熱材HMから発生する蒸気が比較的低圧(低温)であったとしても、その低圧の蒸気と水和反応可能な回収材LMを用いることで、化学蓄熱材HMの脱水反応を好適に進行させることができる。
【0021】
回収材LMとしては、周知の固体材料を用いることができる。回収材LMは、水和反応及び脱水反応し得る回収用物質のみから構成してもよいし、粒子状の回収用物質を水蒸気透過性樹脂等の水蒸気透過性のバインダーで結合した材料であってもよい。
【0022】
回収材LM(回収用物質)としては、例えば、大気圧未満の圧力条件において蒸気が凝縮する温度よりも高い温度で水和反応する物質を好適に用いることができる。これにより、第1ケミカルヒートポンプ12の操作条件を大気圧未満(減圧下)とし、蒸気を凝縮させることが可能な温度よりも高い温度の冷水を第1回収器22の熱交換器に供給したとしても、第1回収器22内で蒸気を回収することが可能となる。なお、第1ケミカルヒートポンプ12の系内の操作条件を大気圧未満(減圧下)にすることで、第1ケミカルヒートポンプ12の安全対策費用を削減することが可能となる。
【0023】
ここで、本明細書でいう回収材LMの水和反応は、回収材LMとしての多孔質材料を用いた蒸気(水分)の吸着も含まれる。すなわち、回収材LMの脱水反応は、回収材LMとしての多孔質材料を用いた蒸気(水分)の脱着も含まれる。回収用物質としては、例えば、ゼオライト、水酸化リチウム、硫酸マグネシウム、シュウ化ストロンチウム、活性炭、多孔性金属錯体(MOF)等が挙げられる。回収材LMは、一種を用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。回収材LMは、200℃以上の耐熱性を有していることが好ましい。
【0024】
第1蒸発器23内には、外部からの排温水又は冷水が流入される熱交換器が設けられている。第1蒸発器23と第1エゼクタ24とは、放熱動作時に第1蒸発器23内で発生した蒸気を第1エゼクタ24の吸引口に送る流路により連結されている。
【0025】
第2ケミカルヒートポンプ13についても、第1ケミカルヒートポンプ12と同様の構成を有している。すなわち、第2ケミカルヒートポンプ13は、第1反応器21と同様の構成の第2反応器31、第1回収器22と同様の構成の第2回収器32、第1蒸発器23と同様の構成の第2蒸発器33、及び第1エゼクタ24と同様の構成の第2エゼクタ34を備えている。
【0026】
蒸気発生システム11は、ボイラ14で発生する蒸気の一部を第1エゼクタ24に駆動蒸気として供給する第1駆動蒸気流路L1と、第1反応器21内における化学蓄熱材HMの水和反応により生じる熱をボイラ14に熱輸送する第1熱輸送部H1とを備えている。
【0027】
また、蒸気発生システム11は、ボイラ14で発生する蒸気の一部を第2エゼクタ34に駆動蒸気として供給する第2駆動蒸気流路L2と、第2反応器31内の化学蓄熱材HMの水和反応により生じる熱をボイラ14に熱輸送する第2熱輸送部H2とを備えている。
【0028】
第1駆動蒸気流路L1と第2駆動蒸気流路L2とはボイラ14からの蒸気を交互に流通可能であり、第1エゼクタ24と第2エゼクタ34とは交互に駆動される。
本実施形態の第1熱輸送部H1及び第2熱輸送部H2は、ヒートパイプから構成されている。ヒートパイプは、第1反応器21からボイラ14へ熱輸送する第1熱輸送状態と、第2反応器31からボイラ14へ熱輸送する第2熱輸送状態とを選択的に切替可能に構成されている。ヒートパイプとしては、作動液の循環を利用した周知のものを用いることができる。
【0029】
ヒートパイプは、例えば、第1反応器21内から延在する第1ヒートパイプ部と、第2反応器31内から延在する第2ヒートパイプ部と、ボイラ14内から延在する第3ヒートパイプ部とを備えている。第1ヒートパイプ部は、図1に矢印で示すように、往復動することで、第3ヒートパイプ部への熱輸送が可能な状態と、第3ヒートパイプ部への熱輸送が切断された状態とに切替可能に構成されている。第2ヒートパイプ部についても、図1に矢印で示すように、往復動することで、第3ヒートパイプ部への熱輸送が可能な状態と、第3ヒートパイプ部への熱輸送が切断された状態とに切替可能に構成されている。
【0030】
蒸気発生システム11は、第1ケミカルヒートポンプ12における回収材LMの脱水反応により発生させた蒸気を第1回収器22から第2蒸発器33へ供給する第1蒸気供給流路R1をさらに備えている。蒸気発生システム11は、第2ケミカルヒートポンプ13の回収材LMの脱水反応により発生させた蒸気を第2回収器32から第1蒸発器23へ供給する第2蒸気供給流路R2をさらに備えている。第1蒸発器23内及び第2蒸発器33内では、熱交換器に供給される冷水によって蒸気を凝縮させることができる。
【0031】
蒸気発生システム11の排温水の流路、冷水の流路、及び蒸気の流路には、開閉弁又は流量調整弁等の制御弁が設けられている。第1ケミカルヒートポンプ12の蓄熱動作と放熱動作、及び第2ケミカルヒートポンプ13の放熱動作と蓄熱動作は、制御弁の開閉により切り替えることができる。また、蒸気発生システム11は、配管や容器内の温度や圧力を計測するセンサの検出値に基づいて、流量調整弁の開度を調整してもよい。
【0032】
次に、蒸気発生システム11の動作について説明する。
図2には、第1ケミカルヒートポンプ12が蓄熱動作している状態であり、かつ第2ケミカルヒートポンプ13が放熱動作している状態を簡略化して示している。第1ケミカルヒートポンプ12の蓄熱動作時には、第1反応器21内の熱交換器に排温水が供給されることで、化学蓄熱材HMの脱水反応が行われる。化学蓄熱材HMの脱水反応で発生した蒸気は、第1反応器21から第1回収器22へ供給される。また、第1ケミカルヒートポンプ12の蓄熱動作時には、第1回収器22内の熱交換器に冷水が供給されることで、回収材LMが冷却される。回収材LMは、第1反応器21から供給された蒸気と水和反応することで、第1反応器21内で発生した蒸気を回収する。これにより、第1反応器21内における化学蓄熱材HMの脱水反応が継続される。
【0033】
第1ケミカルヒートポンプ12の蓄熱動作時の第1熱輸送部H1は、切断された状態であり、第2熱輸送部H2がボイラ14に接続された第2熱輸送状態とされている。
図3には、第1ケミカルヒートポンプ12が放熱動作している状態であり、かつ第2ケミカルヒートポンプ13が蓄熱動作している状態を簡略化して示している。第1ケミカルヒートポンプ12の放熱動作時には、ボイラ14で発生する蒸気の一部が第1駆動蒸気流路L1を通じて第1エゼクタ24に駆動蒸気として供給される。このとき、第1蒸発器23内の熱交換器に排温水が供給されることで発生した蒸気は、第1エゼクタ24に吸引される。第1エゼクタ24からは、ボイラ14で発生する蒸気よりも圧力が低く、第1蒸発器23内で発生した蒸気よりも圧力の高い蒸気が吐出され、この蒸気が第1反応器21内に供給される。第1反応器21内では、化学蓄熱材HMの水和反応が行われる。化学蓄熱材HMの水和反応で発生した熱は、第1熱輸送状態の第1熱輸送部H1(ヒートパイプ)によりボイラ14へ熱輸送される。
【0034】
また、第1ケミカルヒートポンプ12の放熱動作時には、第1回収器22内の熱交換器に排温水が供給されることで、回収材LMの脱水反応が行われる。これにより、回収材LMは、水和反応可能な状態に再生される。回収材LMの脱水反応で発生した蒸気は、第1蒸気供給流路R1を通じて第2蒸発器33へ供給される。このとき、第2蒸発器33内の熱交換器に冷水を供給することで、第2蒸発器33内に供給された蒸気を凝縮することができる。これにより、第2蒸発器33内に蓄えられた水は、第2ケミカルヒートポンプ13の放熱動作時の蒸気の発生に用いることができる。
【0035】
第2ケミカルヒートポンプ13についても、第1ケミカルヒートポンプ12と同様に図2に示す放熱動作及び図3に示す蓄熱動作を行うことができる。すなわち、蒸気発生システム11では、第1ケミカルヒートポンプ12が蓄熱動作している間に、第2ケミカルヒートポンプ13を放熱動作させることができる。また、蒸気発生システム11では、第2ケミカルヒートポンプ13が蓄熱動作している間に、第1ケミカルヒートポンプ12を放熱動作させることができる。
【0036】
図2に示すように、第2ケミカルヒートポンプ13の放熱動作時において、回収材LMの脱水反応で発生した蒸気は、第2蒸気供給流路R2を通じて第1蒸発器23へ供給される。このとき、第1蒸発器23内の熱交換器に冷水を供給することで、第1蒸発器23内に供給された蒸気を凝縮することができる。これにより、第1蒸発器23内に蓄えられた水は、第1ケミカルヒートポンプ12の放熱動作時の蒸気の発生に用いることができる。
【0037】
なお、図2に示すように、本実施形態の蒸気発生システム11では、排温水を第1反応器21、第2回収器32、及び第2蒸発器33の順に直列的に供給しているが、これに限定されず、排温水を分岐流路により並列的に供給してもよい。また、本実施形態の蒸気発生システム11では、冷水を第1回収器22、及び第2蒸発器33の順に直列的に供給しているが、これに限定されず、冷水を分岐流路により並列的に供給してもよい。このような排温水及び冷水の供給経路は、図3に示す蒸気発生システム11においても同様に変更することができる。
【0038】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)蒸気発生システム11は、第1ケミカルヒートポンプ12とボイラ14とを備えている。第1ケミカルヒートポンプ12は、脱水反応により蓄熱し、水和反応により放熱する化学蓄熱材HMが収容される第1反応器21と、化学蓄熱材HMの脱水反応により生じた蒸気を回収する第1回収器22とを備えている。第1ケミカルヒートポンプ12は、化学蓄熱材HMの水和反応に用いる蒸気を生成する第1蒸発器23と、第1蒸発器23で生成した蒸気を第1反応器21に供給する第1エゼクタ24とを備えている。蒸気発生システム11は、ボイラ14で発生する蒸気の一部を第1エゼクタ24に駆動蒸気として供給する第1駆動蒸気流路L1と、化学蓄熱材HMの水和反応により生じる熱をボイラ14に熱輸送する第1熱輸送部H1とを備えている。
【0039】
この構成によれば、第1蒸発器23で生成する蒸気は、第1エゼクタ24で圧縮されるため、第1蒸発器23で生成する蒸気よりも高圧の蒸気を第1反応器21に供給することができる。第1反応器21内では、第1エゼクタ24により圧力が高められた蒸気によって化学蓄熱材HMの水和反応を効率的に行うことができる。このとき、第1エゼクタ24の駆動蒸気として、ボイラ14で発生する蒸気の一部を用いるため、例えば、外部電力で動作する圧縮機を用いずに、第1蒸発器23で生成する蒸気を圧縮することができる。化学蓄熱材HMの水和反応により生じた熱は、第1熱輸送部H1によりボイラ14に熱輸送されることで、ボイラ14を加熱することができる。
【0040】
以上のように、圧縮機(第1エゼクタ24)の動作について外部電力を使用しないため、第1ケミカルヒートポンプ12を用いてボイラ14を加熱する際の外部電力を削減することが可能となる。
【0041】
ここで、例えば、100℃以下の排温水を用いて第1蒸発器23で蒸気を生成する場合、比較的低圧な蒸気となる。上記構成によれば、比較的低圧な蒸気であっても、第1エゼクタ24で圧縮された蒸気として第1反応器21内に供給することができる。このように圧力が高められた蒸気を化学蓄熱材HMと水和反応させることで、第1反応器21内で発生する熱の温度を容易に高めることができる。第1反応器21内では、ボイラ14の熱源として適した160℃以上、好ましくは170℃以上の熱を発生させることができる。したがって、第1反応器21内で発生した熱は、ボイラ14の熱源として有効に利用することができる。このような蒸気発生システム11は、一般的な工場の設備としての利用価値が極めて高い。
【0042】
なお、本実施形態では、第2ケミカルヒートポンプ13とボイラ14との動作についても同様の作用及び効果が得られる。
(2)蒸気発生システム11は、第1ケミカルヒートポンプ12と第2ケミカルヒートポンプ13とを備えている。第1熱輸送部H1及び第2熱輸送部H2は、ヒートパイプから構成され、第1ケミカルヒートポンプ12の反応器からボイラ14へ熱輸送する第1熱輸送状態と、第2ケミカルヒートポンプ13の反応器からボイラ14へ熱輸送する第2熱輸送状態とを選択的に切替可能に構成されている。
【0043】
この場合、第1ケミカルヒートポンプ12と第2ケミカルヒートポンプ13とを交互に放熱動作させることができる。こうした第1ケミカルヒートポンプ12の放熱動作と第2ケミカルヒートポンプ13の放熱動作に連動してヒートパイプを第1熱輸送状態と第2熱輸送状態とに切り替えることで、ボイラ14を連続的に加熱することができる。したがって、ボイラ14の蒸気をより安定して発生させることができる。また、第1熱輸送部H1及び第2熱輸送部H2をヒートパイプから構成することで、例えば、ポンプ等の動力を用いずに熱輸送することができる。これにより、蒸気発生装置の電力使用量を削減することができる。
【0044】
(3)第1ケミカルヒートポンプ12は、互いに独立した第1回収器22及び第1蒸発器23を備えている。第2ケミカルヒートポンプ13は、互いに独立した第2回収器32及び第2蒸発器33を備えている。第1回収器22内及び第2回収器32内には、回収材LMが収容されている。回収材LMは、化学蓄熱材HMの脱水反応で生じた蒸気と水和反応させることが可能であり、かつボイラ14の蒸気温度よりも低い温度の排熱を利用して脱水反応させることが可能な材料である。
【0045】
この場合、第1反応器21内において化学蓄熱材HMの脱水反応で生じた蒸気を第1回収器22で回収することで、化学蓄熱材HMの脱水反応を容易に進行させることができる。また、第2反応器31内において化学蓄熱材HMの脱水反応で生じた蒸気を第2回収器32で回収することで、化学蓄熱材HMの脱水反応を容易に進行させることができる。したがって、蓄熱動作を効率的に行うことができる。
【0046】
(4)蒸気発生システム11は、第1ケミカルヒートポンプ12における回収材LMの脱水反応により発生させた蒸気を第1回収器22から第2蒸発器33へ供給する第1蒸気供給流路R1を備えている。また、蒸気発生システム11は、第2ケミカルヒートポンプ13における回収材LMの脱水反応により発生させた蒸気を第2回収器32から第1蒸発器23へ供給する第2蒸気供給流路R2を備えている。蒸気発生システム11は、第1蒸発器23内、及び第2蒸発器33内で蒸気を凝縮させる構成を有している。
【0047】
この場合、第1蒸発器23内、及び第2蒸発器33内に蓄えられた水は、それぞれ第1ケミカルヒートポンプ12の放熱動作時の蒸気の発生、及び第2ケミカルヒートポンプ13の放熱動作時の蒸気の発生に用いることができる。
【0048】
(変更例)
上記実施形態を次のように変更してもよい。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0049】
・第1蒸気供給流路R1及び第2蒸気供給流路R2の少なくとも一方を省略してもよい。すなわち、第1蒸発器23及び第2蒸発器33の少なくとも一方は、回収材LMの脱水反応で発生した蒸気以外の水を用いて蒸気を発生させてもよい。
【0050】
・第1ケミカルヒートポンプ12における回収材LMを省略するとともに、第1回収器22と第1蒸発器23とを一つの回収蒸発器に変更してもよい。このような回収蒸発器は、蒸気を凝縮させることで回収する回収部と、この回収で得られた水を蒸発させる蒸発部と含む。なお、第2ケミカルヒートポンプ13の第2回収器32と第2蒸発器33についても、一つの回収蒸発器に変更することもできる。
【0051】
・第1熱輸送部H1及び第2熱輸送部H2の少なくとも一方をヒートパイプ以外の熱輸送部に変更することもできる。ヒートパイプ以外の熱輸送部としては、例えば、熱媒体をポンプで循環させる熱輸送部等が挙げられる。
【0052】
・第1ケミカルヒートポンプ12及び第2ケミカルヒートポンプ13のいずれか一方を省略してもよい。
・蒸気発生システム11は、第3ケミカルヒートポンプをさらに備えていてもよい。
【0053】
・第1エゼクタ24及び第2エゼクタ34のいずれか一方を外部電力で作動する圧縮機に変更することもできる。
・第1ケミカルヒートポンプ12で用いる化学蓄熱材HMと、第2ケミカルヒートポンプ13で用いる化学蓄熱材HMとは互いに異なる種類であってもよい。
【0054】
・第1ケミカルヒートポンプ12で用いる回収材LMと、第2ケミカルヒートポンプ13で用いる回収材LMとは互いに異なる種類であってもよい。
・ボイラ14は、ガス、電気、又は上記排温水以外の排熱により補助的に加熱するための加熱部を備えていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
11…蒸気発生システム、12…第1ケミカルヒートポンプ、13…第2ケミカルヒートポンプ、14…ボイラ、21…第1反応器、22…第1回収器、23…第1蒸発器、24…第1エゼクタ、31…第2反応器、32…第2回収器、33…第2蒸発器、34…第2エゼクタ、HM…化学蓄熱材、LM…回収材、L1…第1駆動蒸気流路、L2…第2駆動蒸気流路、H1…第1熱輸送部、H2…第2熱輸送部、R1…第1蒸気供給流路、R2…第2蒸気供給流路。
図1
図2
図3