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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】内部抵抗検出装置及び電源装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/02 20060101AFI20220318BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220318BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220318BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
G01R27/02 R
H02J7/00 Q
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018155223
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2020030085
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉沢 佑樹
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-68081(JP,A)
【文献】特開2011-43460(JP,A)
【文献】特開平8-136629(JP,A)
【文献】特開2012-202687(JP,A)
【文献】特開2012-247339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/02
G01R 27/08
G01R 31/3842
G01R 31/387
G01R 31/389
H01M 10/48
H01M 10/44
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部と、前記電源部からの電力に基づいて充電される蓄電部と、を備えた車載用電源システムにおいて、前記蓄電部の内部抵抗を検出する内部抵抗検出装置であって、
前記電源部から前記蓄電部へ電力を供給する経路である所定の導電路を流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電源部からの電力を変換して、前記蓄電部に充電電流を供給する充電回路部と、
前記蓄電部の内部抵抗を検出する内部抵抗検出部と、
を有し、
前記充電回路部は、前記充電電流を目標充電電流で出力する定電流動作を行うことで、出力電圧を目標電圧へと上昇させるとともに、前記出力電圧が前記目標電圧に到達したら、前記出力電圧を前記目標電圧に固定する定電圧動作を行うことで、前記充電電流を下降させるように電力制御するものであり、
前記内部抵抗検出部は、前記目標充電電流と、前記定電圧動作の開始時点から前記充電電流が所定の電流値に下降した時点までの経過時間である下降時間と、前記蓄電部の容量と、に基づいて、前記蓄電部の内部抵抗を検出し、
前記内部抵抗検出部は、前記目標充電電流をIchg、前記下降時間をΔt2、前記蓄電部の容量をC、前記蓄電部の内部抵抗をRとしたときに、前記下降時間が経過した時点で前記電流検出部によって検出される電流の式であるI=Ichg×exp(-Δt2/RC)を用いて前記蓄電部の内部抵抗を検出する内部抵抗検出装置。
【請求項2】
電源部と、前記電源部からの電力に基づいて充電される蓄電部と、を備えた車載用電源システムにおいて、前記蓄電部の内部抵抗を検出する内部抵抗検出装置であって、
前記電源部から前記蓄電部へ電力を供給する経路である所定の導電路を流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電源部からの電力を変換して、前記蓄電部に充電電流を供給する充電回路部と、
前記蓄電部の内部抵抗を検出する内部抵抗検出部と、
を有し、
前記充電回路部は、前記充電電流を目標充電電流で出力する定電流動作を行うことで、出力電圧を目標電圧へと上昇させるとともに、前記出力電圧が前記目標電圧に到達したら、前記出力電圧を前記目標電圧に固定する定電圧動作を行うことで、前記充電電流を下降させるように電力制御するものであり、
前記内部抵抗検出部は、前記目標充電電流と、前記定電圧動作の開始時点から前記充電電流が所定の電流値に下降した時点までの経過時間である下降時間と、前記蓄電部の容量と、に基づいて、前記蓄電部の内部抵抗を検出し、
前記出力電圧を検出する電圧検出部と、
前記充電回路部が前記定電流動作を行なっているときの所定の容量検出時間の経過により前記電圧検出部によって検出される前記出力電圧の変化と、前記容量検出時間が経過する間に前記電流検出部によって検出される前記充電電流と、に基づいて前記蓄電部の容量を検出する容量検出部と、
を有し、
前記内部抵抗検出部は、前記目標充電電流と、前記下降時間と、前記容量検出部によって検出される前記蓄電部の容量と、に基づいて、前記蓄電部の内部抵抗を検出する内部抵抗検出装置。
【請求項3】
前記蓄電部と、請求項1又は請求項2に記載の内部抵抗検出装置と、を備えた電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部抵抗検出装置及び電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の電源システムとして、鉛蓄電池などによって構成される主電源と、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどによって構成される補助電源と、を備える構成が知られている。そして、主電源が失陥したときに、補助電源から電気負荷へ必要な電力を供給することで、運転時の安全性を確保している。キャパシタは、経年劣化するため、定期的に劣化状態を検出して、補助電源として機能し得るか否か点検する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1に開示される内部抵抗測定装置は、電気二重層キャパシタに直列に外部抵抗を接続し、直列に接続された電気二重層キャパシタと外部抵抗の両端の電圧を測定する構成である。この内部抵抗測定装置は、キャパシタの内部抵抗を測定するために、キャパシタの両端の電圧が所定の充電電圧に達した後、定電流放電に切替えることで電圧降下を生じさせる。そして、内部抵抗測定装置は、キャパシタの両端電圧の電圧降下と、キャパシタを流れる放電電流と、に基づいて内部抵抗を算出する。
【0004】
【文献】特開2008-64700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の内部抵抗測定装置は、キャパシタの充電制御中に電圧降下を生じさせて内部抵抗の算出処理を行なう構成である。このように充電制御中に一旦電圧降下を生じさせることで、キャパシタを充電目標電圧に到達させるための充電時間が長くなってしまうことになる。一方で、キャパシタの充電制御前の電源システムの初期化時に、毎回内部抵抗の算出処理を行う構成も考えられるが、この構成でも、充電制御等の通常動作を開始するまでの時間が長くなってしまう。そのため、キャパシタを充電目標電圧に到達させるまでの時間が長くなってしまう。
【0006】
本発明は上述した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、蓄電部の内部抵抗を効率的に精度良く検出し得る構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様である内部抵抗検出装置は、
電源部と、前記電源部からの電力に基づいて充電される蓄電部と、を備えた車載用電源システムにおいて、前記蓄電部の内部抵抗を検出する内部抵抗検出装置であって、
前記電源部から前記蓄電部へ電力を供給する経路である所定の導電路を流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電源部からの電力を変換して、前記蓄電部に充電電流を供給する充電回路部と、
前記蓄電部の内部抵抗を検出する内部抵抗検出部と、
を有し、
前記充電回路部は、前記充電電流を目標充電電流で出力する定電流動作を行うことで、出力電圧を目標電圧へと上昇させるとともに、前記出力電圧が目標電圧に到達したら、前記出力電圧を前記目標電圧に固定する定電圧動作を行うことで、前記充電電流を下降させるように電力制御するものであり、
前記内部抵抗検出部は、前記目標充電電流と、前記定電圧動作の開始時点から前記充電電流が所定の電流値に下降した時点までの経過時間である下降時間と、前記蓄電部の容量と、に基づいて、前記蓄電部の内部抵抗を検出する。
【0008】
本発明の第2態様である電源装置は、蓄電部と、上記内部抵抗検出装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
上述の内部抵抗検出装置は、内部抵抗検出部が、充電回路部による定電流動作時の目標充電電流と、定電圧動作の開始時点から充電電流が所定の電流値に下降した時点までの経過時間である下降時間と、蓄電部の容量と、に基づいて、蓄電部の内部抵抗を検出する構成である。そのため、充電回路部による定電流動作時の目標充電電流と、定電圧動作の開始時点から充電電流が所定の電流値に下降した時点までの経過時間である下降時間と、蓄電部の容量と、を反映して蓄電部の内部抵抗を精度良く検出することができる。
また、内部抵抗検出部は、充電回路部によって定電圧動作が開始された後に検出される電流や下降時間に基づいて蓄電部の内部抵抗を検出するため、充電回路部によって行われる定電圧動作の時間を利用して、蓄電部の内部抵抗を検出することができる。そのため、蓄電部を充電する前や蓄電部の充電中の段階で、蓄電部の内部抵抗を検出する制御を行う必要がなく、このような制御を行う時間を別途確保する必要がない。これにより、充電回路部に定電流動作及び定電圧動作を行なわせて蓄電部の充電を完了させるまでに必要となる時間を短くすることができる。
したがって、内部抵抗検出装置は、蓄電部の内部抵抗を効率的に精度良く検出することができる。
【0010】
第2態様の電源装置によれば、第1態様の内部抵抗検出装と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の車載用電源システムの構成を概略的に例示するブロック図である。
図2】実施例1の車載用電源システムにおけるDCDCコンバータの出力電圧、及び蓄電部に供給される充電電流の経時変化を例示するグラフである。
図3】従来例の車載用電源システムにおけるDCDCコンバータの出力電圧、及び蓄電部に供給される充電電流の経時変化を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本発明の望ましい例を示す。但し、本発明は以下の例に限定されない。
【0013】
内部抵抗検出部は、目標充電電流をIchg、下降時間をΔt2、蓄電部の容量をC、蓄電部の内部抵抗をRとしたときに、下降時間が経過した時点で電流検出部によって検出される電流の式であるI=Ichg×exp(-Δt2/RC)を用いて蓄電部の内部抵抗を検出するように構成されてもよい。
このようにすれば、蓄電部の内部抵抗の検出において、充電回路部が定電圧動作を開始してから所定時間が経過した時点で電流検出部によって検出される電流の式であるI=Ichg×exp(-Δt2/RC)を用いることで、より一層精度良く蓄電部の内部抵抗を検出することができる。
【0014】
内部抵抗検出装置は、充電回路部の出力電圧を検出する電圧検出部を有する構成であってもよい。内部抵抗検出装置は、充電回路部が定電流動作を行なっているときの所定の容量検出時間の経過により電圧検出部によって検出される出力電圧の変化と、容量検出時間が経過する間に電流検出部によって検出される充電電流と、に基づいて蓄電部の容量を検出する容量検出部を有する構成であってもよい。内部抵抗検出部は、目標充電電流と、下降時間と、容量検出部によって検出される蓄電部の容量と、に基づいて、蓄電部の内部抵抗を検出してもよい。
このようにすれば、充電回路部による定電圧動作前の定電流動作中において、容量検出部によって、電圧検出部によって検出される出力電圧の変化と、電流検出部によって検出される充電電流と、に基づいて蓄電部の容量を検出することができる。そのため、内部抵抗の検出の直前における蓄電部の状態を反映した、精度の高い容量検出を行うことができる。そして、正確に検出される容量を用いることで、蓄電部の内部抵抗をより一層精度良く検出することができる。
【0015】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1について説明する。
図1で示す車載用電源システム10(以下、システム10ともいう)は、車載用負荷12(以下、負荷12ともいう)への電力供給を行う電源システムとして構成されている。システム10は、図1に示すように、電源部11、補助電源装置20、導電路13、及びスイッチ14を備えている。電源部11は、負荷12に対する主たる電力供給源である。補助電源装置20は、電源部11とは異なる電力供給源である。導電路13は、電源部11から負荷12に電力を供給する経路である。スイッチ14は、導電路13に介在している。
【0016】
システム10は、例えば、電源部11からの電力供給が正常状態のときには、電源部11から負荷12及び補助電源装置20に対して電力供給を行い、電源部11からの電力供給が異常状態となったときには、補助電源装置20から負荷12及び電源部11に対して電力供給を行う。
【0017】
電源部11は、例えば、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、その他の蓄電部など、公知の蓄電手段によって構成されている。電源部11は、高電位側の端子が導電路13に電気的に接続され、導電路13に対して所定値(例えば12V)の出力電圧を印加する。電源部11の低電位側の端子は、車両に設けられたグラウンド部に電気的に接続されている。また、電源部11は、図示しない発電機に電気的に接続されており、この発電機からの電力によって充電され得る。
【0018】
補助電源装置20は、電源装置の一例に相当し、蓄電部21、導電路22、及び内部抵抗検出装置30を有している。蓄電部21は、例えば、電気二重層キャパシタ、及びリチウムイオンキャパシタなどの公知のキャパシタによって構成されている。蓄電部21は、電源部11からの電力に基づいて充電される構成である。蓄電部21は、高電位側の端子が導電路22に電気的に接続されている。蓄電部21の低電位側の端子は、車両に設けられたグラウンド部に電気的に接続されている。導電路22は、一端が導電路13に接続され、電源部11から蓄電部21に電力を供給する経路である。導電路22は、導電路22A,22Bによって構成されている。導電路22Aは、一端が導電路13に接続され、他端が後述するDCDCコンバータ31に接続されている。導電路22Bは、一端が後述するDCDCコンバータ31に接続され、他端が蓄電部21に接続されている。
【0019】
内部抵抗検出装置30は、蓄電部21の内部抵抗を検出するように機能する。内部抵抗検出装置30は、車載用のDCDCコンバータ31(以下、DCDCコンバータ31ともいう)、電流検出部32、電圧検出部33、及び制御部34を具備している。DCDCコンバータ31は、充電回路部の一例に相当し、公知のDCDCコンバータとして構成されている。DCDCコンバータ31は、導電路22に設けられている。DCDCコンバータ31は、導電路22A及び導電路22Bのいずれか一方を入力側導電路とし、他方を出力側導電路とし、入力側導電路に印加された直流電圧を昇圧又は降圧して出力側導電路に出力する構成をなすものである。実施例1では、DCDCコンバータ31は、電源部11からの電力を変換して、蓄電部21に充電電流を供給するように機能する。具体的には、DCDCコンバータ31は、充電電流を目標充電電流で出力する定電流動作を行うことで、出力電圧を目標電圧へと上昇させるとともに、出力電圧が目標電圧に到達したら、出力電圧を目標電圧に固定する定電圧動作を行うことで、充電電流を下降させるように電力制御する構成である。
【0020】
電流検出部32は、公知の電流検出回路として構成されている。電流検出部32は、導電路22Bを流れる電流(蓄電部21に供給される充電電流)を検出する電流検出回路であり、例えば、導電路22Bに設けられたシャント抵抗と、シャント抵抗の両端電圧を増幅して出力する差動増幅器とによって構成されている。制御部34は、電流検出部32から入力された値(電流検出部32の検出値)に基づいて導電路22Bを流れる電流の値を特定する。

【0021】
電圧検出部33は、DCDCコンバータ31の出力電圧を検出するように機能する。電圧検出部33は、公知の電圧検出回路として構成されている。電圧検出部33は、導電路22Bに設けられ、導電路22Bに印加される電圧を検出する。電圧検出部33は、導電路22Bの電圧を示す値(例えば導電路22Bの電圧値、又は導電路22Bの電圧値を分圧回路によって分圧した値等)を検出値として制御部34に入力する。制御部34は、電圧検出部33から入力された値(電圧検出部33の検出値)に基づいて導電路22Bの電圧値を特定することができる。
【0022】
制御部34は、DCDCコンバータ31などの動作を制御する部分である。制御部34は、例えばマイクロコンピュータとして構成され、CPU等の演算装置、ROM又はRAM等のメモリ等を有する。制御部34は、電源部11、又は蓄電部21から供給される電力を用いて動作する。具体的には、制御部34は、DCDCコンバータ31に充電電流を目標充電電流で出力する定電流動作を行わせることで、出力電圧を目標電圧へと上昇させるとともに、出力電圧が目標電圧に到達したら、DCDCコンバータ31に出力電圧を目標電圧に固定する定電圧動作を行わせることで、充電電流を下降させるように電力制御させる。
【0023】
制御部34は、容量検出部34A、及び内部抵抗検出部34Bとして機能する。容量検出部34A、及び内部抵抗検出部34Bは、情報処理装置を用いたソフトウェア処理によって実現されてもよく、ハードウェア回路によって実現されてもよい。容量検出部34Aは、蓄電部21の容量を検出する。具体的には、容量検出部34Aは、DCDCコンバータ31が定電流動作を行っているときの所定の容量検出時間の経過により電圧検出部33によって検出される出力電圧の変化と、容量検出時間が経過する間に電流検出部32によって検出される充電電流と、に基づいて蓄電部21の容量を検出する。
【0024】
内部抵抗検出部34Bは、DCDCコンバータ31の定電流動作時の目標充電電流と、定電圧動作の開始時点から充電電流が所定の電流値に下降した時点までの経過時間である下降時間と、容量検出部34Aによって検出される蓄電部21の容量と、に基づいて、蓄電部21の内部抵抗を検出する。
【0025】
次に、内部抵抗検出装置30による蓄電部21の内部抵抗検出動作について図2を用いて説明する。
制御部34は、所定の充電条件の成立に応じて、スリープ状態から起動状態となり、DCDCコンバータ31に定電流動作(充電電流を目標充電電流で出力する定電流動作)を行なわせる。「所定の充電条件の成立」は、例えば、「車両の始動スイッチ(イグニッションスイッチ等)がオフ状態からオン状態に切り替わったこと」である。所定の充電条件の成立時には、スイッチ14も連動してオフ状態からオン状態に切り替わることで、電源部11から負荷12及び蓄電部21に電力が供給される。図2の例では、定電流動作前のDCDCコンバータ31の出力電圧は、目標電圧よりも低くなっており、電圧検出部33によって蓄電部21の充電電圧に応じた値が検出される。また、定電流動作前のDCDCコンバータ31の充電電流は、目標充電電流よりも低くなっている。図2に示すように、時間T1で所定の充電条件が成立し、DCDCコンバータ31の定電流動作が開始されると、DCDCコンバータ31は、目標充電電流Ichgで出力する定電流動作を行うことで、出力電圧を目標電圧へと上昇させる。
【0026】
図2に示すように、DCDCコンバータ31の出力電圧は、時間T1から目標電圧に到達するT5まで上昇し続ける。そして、制御部34は、時間T1から時間T4の間において、蓄電部21の容量の検出制御を行う。具体的には、制御部34は、時間T2(時間T1から僅かに時間が経過した時)から時間T3までの時間(所定の容量検出時間Δt1)において、DCDCコンバータ31の出力電圧の変化、及び蓄電部21に供給される充電電流に基づいて蓄電部21の容量Cを検出する。容量検出時間Δt1が経過する間、充電電流はIchg(規定充電電流)のままであり、容量検出時間Δt1の経過で蓄電部21に蓄えられる電荷量Qは、充電電流Ichgを時間T2から時間T3の範囲で積分計算することで算出される。容量検出時間Δt1の経過で増加した出力電圧はΔVであるため、蓄電部21の容量Cは、QをΔVで除することで算出される。
【0027】
DCDCコンバータ31による定電流動作中に、出力電圧が時間T5で目標電圧に到達すると、制御部34は、DCDCコンバータ31に定電圧動作を行わせる。すなわち、DCDCコンバータ31は、出力電圧が目標電圧に到達した場合に、出力電圧を目標電圧に固定する定電圧動作を行うことで、充電電流を下降させるように電力制御する。これにより、蓄電部21の充電電流は、時間T5から減少する。制御部34は、DCDCコンバータ31が定電圧動作を開始した時点で、蓄電部21の内部抵抗の検出制御を行う。まず、制御部34は、DCDCコンバータ31の定電圧動作の開始時点(T5)から充電電流が所定の電流値に下降した時点までの経過時間である下降時間Δt2を計測する。ここで、所定の電流値とは、目標充電電流よりも低い値の電流値であり、例えば予め設定されてメモリ等に記憶されている電流値である。そして、制御部34は、目標充電電流Ichgと、下降時間Δt2と、定電流動作時に算出した蓄電部21の容量Cと、に基づいて、蓄電部21の内部抵抗Rを算出する。具体的には、制御部34は、所定の電流値Iを表す式I=Ichg×exp(-Δt2/RC)を用いて、予め設定されている所定の電流値Iと、目標充電電流Ichgと、下降時間Δt2と、定電流動作時に算出した蓄電部21の容量Cと、に基づいて、内部抵抗Rを算出する。このように、予め定めた所定の電流値Iが検出される下降時間Δt2を測定することで、上記Iの式から内部抵抗Rを精度良く算出することができる。
【0028】
制御部34は、内部抵抗Rの検出後、時間T6で蓄電部21の充電が完了すると、時間T6以降、スタンバイ状態となる。
【0029】
図3は、従来例の車載用電源システムにおけるDCDCコンバータ31の出力電圧及び充電電流の経時変化を例示するグラフである。従来例では、例えば、蓄電部に一定の充電電流が供給される定電流動作時に、内部抵抗の検出処理が行われる。すなわち、出力電圧の増加時(図3では時間T25)に充電電流の供給が停止され、その時に生じる出力電圧の減少値ΔVdと、充電電流の減少値ΔIと、に基づいて蓄電部の内部抵抗が算出される。具体的には、ΔVdをΔIで除することで内部抵抗の値を算出する。そして、時間T5から所定の時間が経過した後(時間T26になった時)に、蓄電部の充電が再開されることになる。
【0030】
このように、従来例の車載用電源システムでは、DCDCコンバータ31の出力電圧が目標電圧に到達する前に内部抵抗の検出処理が行われることで、蓄電部の定電流動作が中断するとともに、出力電圧が低下することになる。そのため、出力電圧が目標電圧に到達するまでの時間が、内部抵抗の検出処理を行う分長くなってしまう。一方で、実施例1のシステム10では、DCDCコンバータ31によって定電圧動作が開始された後に、定電圧動作を行いつつ内部抵抗の検出処理(所定の電流値Iを表す式を用いた算出処理)を行う構成となっている。そのため、DCDCコンバータ31によって行われる定電圧動作の時間を利用して、蓄電部21の内部抵抗を検出することができる。これにより、従来例のシステムのように、DCDCコンバータ31の定電流動作中の段階で蓄電部の内部抵抗を検出する制御を行う必要がなく、このような制御を行う時間を別途確保する必要がない。したがって、DCDCコンバータ31に定電流動作及び定電圧動作を行なわせて蓄電部21の充電が完了するまでに必要となる時間を短くすることができる。
【0031】
また、制御部34は、内部抵抗の検出処理において、DCDCコンバータ31による定電圧動作前の定電流動作中において、蓄電部21の容量を検出する構成である。そのため、内部抵抗の検出の直前における蓄電部21の状態(温度特性など)を反映した、精度の高い容量検出を行うことができる。そして、正確に検出される容量を用いることで、蓄電部21の内部抵抗をより一層精度良く検出することができる。
【0032】
次に、本構成の効果を例示する。
上述の内部抵抗検出装置30は、制御部34が、DCDCコンバータ31による定電流動作時の目標充電電流Ichgと、定電圧動作の開始時点から充電電流が所定の電流値に下降した時点までの経過時間である下降時間Δt2と、蓄電部の容量Cと、に基づいて、蓄電部21の内部抵抗Rを検出する構成である。そのため、DCDCコンバータ31による定電流動作時の目標充電電流Ichgと、定電圧動作の開始時点から充電電流が所定の電流値に下降した時点までの経過時間である下降時間Δt2と、蓄電部の容量Cと、を反映して蓄電部21の内部抵抗Rを精度良く検出することができる。
また、制御部34は、DCDCコンバータ31によって定電圧動作が開始された後に検出される電流や下降時間Δt2に基づいて蓄電部21の内部抵抗Rを検出するため、DCDCコンバータ31によって行われる定電圧動作の時間を利用して、蓄電部21の内部抵抗Rを検出することができる。そのため、蓄電部21を充電する前や蓄電部21の充電中の段階で、蓄電部21の内部抵抗Rを検出する制御を行う必要がなく、このような制御を行う時間を別途確保する必要がない。これにより、DCDCコンバータ31に定電流動作及び定電圧動作を行なわせて蓄電部21の充電を完了させるまでに必要となる時間を短くすることができる。
したがって、内部抵抗検出装置30は、蓄電部21の内部抵抗を効率的に精度良く検出することができる。
【0033】
また、制御部34は、目標充電電流をIchg、下降時間をΔt2、蓄電部の容量をC、蓄電部の内部抵抗をRとしたときに、下降時間が経過した時点で電流検出部32によって検出される電流の式であるI=Ichg×exp(-Δt2/RC)を用いて蓄電部21の内部抵抗Rを検出する。
これにより、蓄電部21の内部抵抗Rの検出において、DCDCコンバータ31が定電圧動作を開始してから下降時間Δt2が経過した時点で電流検出部32によって検出される電流の式であるI=Ichg×exp(-Δt2/RC)を用いることで、より一層精度良く蓄電部21の内部抵抗を検出することができる。
【0034】
また、内部抵抗検出装置30は、DCDCコンバータ31の出力電圧を検出する電圧検出部33を有する構成である。内部抵抗検出装置30は、DCDCコンバータ31が定電流動作を行なっているときの所定の容量検出時間の経過により電圧検出部33によって検出される出力電圧の変化と、容量検出時間が経過する間に電流検出部32によって検出される充電電流と、に基づいて蓄電部21の容量を検出する制御部34を有する構成である。制御部34は、目標充電電流Ichgと、下降時間Δt2と、算出した蓄電部21の容量Cと、に基づいて、蓄電部21の内部抵抗Rを検出する。
これにより、DCDCコンバータ31による定電圧動作前の定電流動作中において、制御部34によって、電圧検出部33によって検出される出力電圧の変化と、電流検出部32によって検出される電流とに基づいて蓄電部21の容量を検出することができる。そのため、内部抵抗の検出の直前における蓄電部21の状態を反映した、精度の高い容量検出を行うことができる。そして、正確に検出される容量を用いることで、蓄電部21の内部抵抗をより一層精度良く検出することができる。
【0035】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0036】
実施例1では、制御部34は、内部抵抗Rの検出時において、DCDCコンバータ31の定電流動作時に算出した蓄電部21の容量を用いる構成であったが、前回の内部抵抗の検出時に算出した容量を用いてもよく、予め設定されてメモリ等に記憶されている容量の値を用いてもよい。
【0037】
実施例1では、車両の始動スイッチ(イグニッションスイッチ等)がオフ状態からオン状態に切り替わったことを、「所定の充電開始条件の成立」としたが、例えば、蓄電部21の充電部電圧が所定充電電圧以下に低下したことを「所定の充電開始条件の成立」としてもよい。
【0038】
実施例1では、スイッチ14は、車両の始動スイッチに連動してオンオフ動作するスイッチであったが、車両の始動スイッチ(イグニッションスイッチ等)自体であってもよい。
【0039】
実施例1では、制御部34が、DCDCコンバータ31による充電動作時に、蓄電部21に一定の電流値の充電電流が供給される状態で、蓄電部21の容量を検出する制御を行った。しかしながら、蓄電部21の容量検出制御時に、一定ではない電流値の充電電流が供給される構成であってもよい。このような構成であっても、蓄電部21に蓄えられる電荷量Qは、充電電流を所定の時間範囲で積分計算することで算出される。
【符号の説明】
【0040】
10…車載用電源システム
11…電源部
20…補助電源装置(電源装置)
21…蓄電部
22…導電路
30…内部抵抗検出装置
31…DCDCコンバータ(充電回路部)
32…電流検出部
33…電圧検出部
34…制御部
34A…容量検出部
34B…内部抵抗検出部
図1
図2
図3