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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】吊りボルト用振止めボルト取付け金具
(51)【国際特許分類】
   F16B 7/04 20060101AFI20220318BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20220318BHJP
   E04B 9/18 20060101ALI20220318BHJP
   F16B 1/00 20060101ALI20220318BHJP
   F16B 2/06 20060101ALI20220318BHJP
   F16M 13/02 20060101ALI20220318BHJP
   F24F 13/32 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
F16B7/04 301H
E04B9/00 K
E04B9/18 E
F16B1/00 A
F16B2/06 A
F16M13/02 M
F24F13/32
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020220094
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000157197
【氏名又は名称】丸井産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橘川 邦彦
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特許第6009710(JP,B1)
【文献】特開2018-179021(JP,A)
【文献】特開2019-210981(JP,A)
【文献】特開2019-044861(JP,A)
【文献】特開2019-095072(JP,A)
【文献】特開2017-072166(JP,A)
【文献】特開2018-179280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 7/04
F16B 1/00
F16B 2/06
E04B 9/00
E04B 9/18
F16M 13/02
F24F 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊りボルトに一対の振止めボルトを連結するための取付け金具であって、
吊りボルトの後方に配置され、吊りボルトの軸方向に沿って当接する当接面と、該当接面の両端から互いに直交する方向へ延びる2つの固定面と、を有する固定部材と、
前記固定面に対向し、吊りボルトの前方に配置される隣接面を側面に有する2つの挟持板と、
前記挟持板との間に振止めボルトを挟み込む2つの連結部材と、
前記固定面、前記挟持板および前記連結部材を貫通し、端部に備えた固定ナットの締め付けにより、該固定面へ該挟持板および該連結部材を取り付ける2本のボルト軸と、を備え、
2つの前記挟持板は、前記隣接面が互いに隣接可能に配置されるとともに、それぞれ吊りボルトの軸方向に対して揺動可能であり、揺動により、前記隣接面を互いに隣接させた状態では、2つの該隣接面と前記当接面とが吊りボルトを収容する収容空間が閉塞され、前記隣接面を互いに離間させた状態では、吊りボルトを受け入れ可能に該収容空間が開放されることを特徴とする吊りボルト用振止めボルト取付け金具。
【請求項3】
前記挟持板は、前記隣接面と対向する側面に前記固定面の端部よりも長く延出する延出部を有し、2つの前記延出部を互いに近付ける方向へ押圧することにより前記挟持板を揺動可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の吊りボルト用振止めボルト取付け金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の天井面から設備機器等を懸垂する吊りボルトに、地震等による振動を抑制するための振止めボルトを取付けるための取付け金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井面から吊設する設備機器の一例として、エアコンの室内機では天井から懸垂する吊りボルトを室内機の4隅に固定して吊設する際、長尺の全ネジを振止めボルトとして用い、隣接する吊りボルト間に筋交い状に配置していた。
その際、吊りボルトに振止めボルトを取り付けるための金具として、これまで種々研究・開発され存在している(例えば、特許文献1及び特許文献2など)。
【0003】
特許文献1には、外側挟着体と内側挟着体からなる挟着体と吊りボルトを挟んだ外側挟着体と内側挟着体との左右両端部を貫通して挟着体を固定する一対の連結ボルトからなる構成とし、吊りボルトへの取付け方法として、一方の連結ボルトを一旦取り外し、吊りボルトを両挟着体の間隙に挿入し、再度、連結ボルトを取付ける金具が開示されている。このように特許文献1の取付け金具では、吊りボルトの両側から連結ボルトの締付けにより両挟着体で挟むため、強固な固定力が得られるものの、連結ボルトを着脱する作業手間が生じると共に、高所での作業となるため、取り外した連結ボルトを誤って落下させる恐れがあった。
【0004】
特許文献2には、吊りボルトを挟む第一ベース部材と第二ベース部からなるベース部材とからなり、ベース部材には一対の連結ボルトが取付けられているが、前記第一ベース部材は一方の連結ボルトの締付けにより吊りボルトの片側から押さえて固定できるため、連結ボルトを着脱する作業手間は解消されるものの、吊りボルトを第一ベース部材の片側で押さえた状態で固定しているために、吊りボルトが抜け出す方向と連結ボルトを締結して方向では固定力に差が生じるため、より確実で安定した固定力を有すると共に、取付けが容易な取付け金具が要望されていた。
【先行技術文献】
【0005】
【文献】特開2017-072166号公報
【文献】特開2018-179020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みなされたもので、その目的は、設備機器を懸垂する吊りボルトに一対の振止めボルトを手間なく容易に取付けできると共に、振動を確実に抑制できる固定力を有する吊りボルト用振止めボルト取付け金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
その手段として、本発明の請求項1は、吊りボルトに一対の振止めボルトを連結するための取付け金具であって、吊りボルトの後方に配置され、吊りボルトの軸方向に沿って当接する当接面と、該当接面の両端から互いに直交する方向へ延びる2つの固定面と、を有する固定部材と、前記固定面に対向し、吊りボルトの前方に配置される隣接面を側面に有する2つの挟持板と、前記挟持板との間に振止めボルトを挟み込む2つの連結部材と、前記固定面、前記挟持板および前記連結部材を貫通し、端部に備えた固定ナットの締め付けにより、該固定面へ該挟持板および該連結部材を取り付ける2本のボルト軸と、を備え、2つの前記挟持板は、前記隣接面が互いに隣接可能に配置されるとともに、それぞれ吊りボルトの軸方向に対して揺動可能であり、揺動により、前記隣接面を互いに隣接させた状態では、2つの該隣接面と前記当接面とが吊りボルトを収容する収容空間が閉塞され、前記隣接面を互いに離間させた状態では、吊りボルトを受け入れ可能に該収容空間が開放されることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2は、請求項1において、前記ボルト軸には、前記挟持板と前記連結部材との間にバネ材が外挿され、該バネ材は、該挟持板が吊りボルトを押圧する方向へ付勢することを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3は、請求項1又は2において、前記挟持板は、前記隣接面と対向する側面に前記固定面の端部よりも長く延出する延出部を有し、2つの前記延出部を互いに近付ける方向へ押圧することにより前記挟持板を揺動可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1によれば、吊りボルトの軸方向に対して挟持板を揺動して隣接面を互いに離間させ、2つの該隣接面と固定部材の当接面とで形成される収容空間に吊りボルトを収容した後、前記隣接面を互いに隣接して閉塞させ、ボルト軸の端部に備えた固定ナットを締め付けることで吊りボルトへの取付けができるため、ボルト軸の着脱手間もなく一体化状態のまま容易に取り付けることができる。
2つの挟持板をそれぞれの固定ナットで締め付けて固定しているため、吊りボルトに均等に加圧され、抜け出す方向に対して互いに補強した状態となるため、確実で安定した固定力を得ることができる。
【0011】
本発明の請求項2によれば、ボルト軸の挟持板と連結部材との間にバネ材を外挿し、該バネ材は該挟持板が吊りボルトを押圧する方向へ付勢することにより、通常時は挟持板が固定面に当接して、互いの隣接面が閉塞した状態となるが、挟持板を手動で揺動させて隣接面を開放した状態で吊りボルトを収容空間に収容後、バネ材の反力により挟持板を元の位置に揺動させて隣接面を閉塞することで、吊りボルトに仮止めが可能になり作業性が向上する。
【0012】
本発明の請求項3によれば、挟持板は隣接面と対向する側面に固定面の端部よりも長く延出する延出部を有し、2つの前記延出部を互いに近付ける方向へ押圧することにより前記挟持板を揺動可能に構成したことにより、前記挟持板の隣接面の開閉が容易になり、吊りボルトへの取付けの作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態1を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態1を示す平面図である。
図3図1の分解説明図である。
図4】本発明の実施形態1の連結部材を示す斜視図である。
図5】本発明の実施形態1の連結部材の別の実施例を示す図である。
図6】本発明の実施形態1の挟持板の開閉状態を示す図である。
図7】本発明の実施形態1のボルト軸の別の実施例を示す図である。
図8】本発明の実施形態2を示す平面図である。
図9】本発明の実施形態2の挟持板の開閉状態を示す図である。
図10】本発明の実施形態1の使用状態を示す図1である。
図11】本発明の実施形態1の使用状態を示す図2である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態1)
本発明の実施形態1を図1図3にしたがって説明する。
以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
図1及び図3より、固定部材10は、吊りボルトAに当接する当接面11と、当接面11の両端から互いに直交する方向へ延びる2つの固定面12、12とから形成する。固定面12、12には透孔13、13を設け、ボルト軸20、20として用いる六角ボルトを固定面12、12の裏面側から挿通して、先端には固定ナット21、21を螺着する。当接面11は、吊りボルトAへの取付時において、吊りボルトAの後方に配置される。
30は挟持板であり、前記固定面12に対向して配置するが、挟持板30のほぼ中央に設けた透孔31にボルト軸20を遊挿することで、それぞれ吊りボルトAの軸方向に対して揺動可能とする。挟持板30は略矩形の平板状部材であり、左右一方の側面は、一部が延出して隣接面32を形成している。隣接面32は、吊りボルトAへの取付時において、吊りボルトAの前方に配置される。
2つの挟持板30、30は、互いに異なる位置に隣接面32を有している。隣接面32が対向して互いに隣接可能となるよう2つの挟持板30、30が配置されると、互い違いに延出する2つの隣接面32、32が上下に重なり、2つの挟持板30、30間の隙間を閉塞する。また、2つの隣接面32、32は互いに直交状態となり、当接面11とで略三角形状の空間を構成し、その空間を吊りボルトAの収容空間Cとする。
隣接面32、32の上下端の角部にそれぞれ面取りを行い、双方の合わせる部分に略V字状となる吊りボルトAの案内溝33を設ける。
34、34は上下端を裏側へ屈曲して形成した係合片であり、固定面12の上下端に係合して挟持板30の回転を防止すると共に、剛性を高めることができる。
【0015】
40は連結部材であり、前記ボルト軸20が挿通する透孔41を設けた支持面42と、該支持面42の両端から裏側へ屈曲して延びる屈曲面43を設け、該屈曲面43には、振止めボルトBの外周に係合する半円状の係止部44を設ける。(図4参照)
連結部材40は前記ボルト軸20に透孔41を挿通して取り付け、挟持板30の前方に配置される。
連結部材40の別の形態として、長辺45の先端及び短辺46に透孔47、48をそれぞれ設けたL字形とすることもできる。
長辺45の透孔47に前記ボルト軸20に挿通して回動自在に連結すると共に、短辺46の透孔48には振止めボルトBを挿通して両側のナット49、49で挟み込むことで取り付けができる。(図5参照)
【0016】
挟持板30と連結部材40との間のボルト軸20に外挿するバネ材はコイル状の圧縮バネ材を用い、圧縮コイルバネ22の付勢により通常時は挟持板30が固定面12に当接して、互いの隣接面32、32が閉塞した状態とし、挟持板30を揺動させることにより隣接面32、32を開放した状態となり、吊りボルトAを収容空間Cに収容する。挟持板30、30は圧縮コイルバネ22の反力により元の位置に揺動し、隣接面32、32を閉塞して吊りボルトAを仮止めすることができる。(図6参照)圧縮コイルバネ22は、吊りボルトAへの取付時において、挟持板30が吊りボルトAを押圧する方向へ付勢する。
ここではバネ材を圧縮コイルバネとしたが、板バネでもよい。(図示省略)
【0017】
ボルト軸20の別の形態として、六角ボルトを用いて、その頭部を連結部材40に配し、固定ナット21を固定部材10の固定面12の裏面側に配してもよい。(図7参照)その場合、固定ナット21は溶着等により固定面12に固定されることが望ましい。また、固定ナット21に代えて固定面12にネジ孔を設けてもよい。(図示省略)
【0018】
(実施形態2)
次に本発明の実施形態2を図8及び図9にしたがって説明する。
実施形態2では、実施形態1と異なる部分のみの説明し、共通部分の説明を省略する。実施形態2が実施形態1と異なるのは、挟持板30の形態である。
挟持板30の隣接面32と対向する側面に固定面12の端部よりも長く延出する延出部35、35を形成することで、2つの延出部35、35を互いに近付ける方向へ押圧することにより、固定面12の端縁を支点として、互いの隣接面32、32が開放方向に揺動可能となり、吊りボルトAを収容空間Cへ容易に収容できる。
【0019】
続いて、実施形態1の使用例について説明する。
図10は、エアコンの室内機を吊りボルトで天井から4点懸垂する場合の振止めボルトの取付け状態を示し、図11は本発明の取付け金具の取付け状態を示す拡大図である。
本発明の取付け金具はエアコンの室内機Dを懸垂する4本の吊りボルトAの上下端に取り付け、振止めボルトBを筋交い状に交差して取り付けることができる。
室内機D側の吊りボルトAに向かって、両挟持板30、30の隣接面32、32に設けた案内溝33を押し当てて隣接面32、32を開放方向に揺動させ、その間隙から吊りボルトAを収容空間Cへ収容する。
実施例2では、延出部35、35を互いに近付ける方向へ押圧することにより、固定面12の端縁を支点として、隣接面32、32が開放方向に揺動し、その間隙から吊りボルトAを収容空間Cへ収容する。
ボルト軸20に外装した圧縮コイルバネ22の反力により挟持板30、30を元の位置に揺動させて隣接面32、32が閉塞され、取付け金具は吊りボルトAに仮止めされる。
同様にして吊りボルトAの天井側、及び別の吊りボルトにも本発明の取付け金具を取付ける。
次に、振止めボルトBの適宜位置を挟持板30と連結部材40の間に配置し、該連結部材40の係止部44に係止した状態で固定ナット21を締め込んで固定する。
固定ナット21の締込みにより連結部材40が振止めボルトBを介して挟持板30を吊りボルトAも同時に固定することができる。
他方の振止めボルトBも同様にして連結部材40に連結し、更に別の取付け金具にも同様にして振止めボルトの固定をする。
【符号の説明】
【0020】
10 固定部材
11 当接面
12 固定面
13 透孔
20 ボルト軸
21 固定ナット
22 圧縮コイルバネ
30 挟持板
31 透孔
32 隣接面
33 案内溝
34 係合片
35 延出部
40 連結部材
41 透孔
42 支持面
43 屈曲面
44 係止部
A 吊りボルト
B 振止めボルト
C 収容空間
D 室内機
【要約】      (修正有)
【課題】設備機器を懸垂する吊りボルトに一対の振止めボルトを容易に取付けでき、振動を抑制できる吊りボルト用振止めボルト取付け金具を提供する。
【解決手段】吊りボルトAの後方に配置され、吊りボルトに当接する当接面11と、当接面の両端から互いに直交する方向の2つの固定面を有する固定部材10と、固定面に対向し、吊りボルトの前方の隣接面32を有する2つの挟持板30と、挟持板との間に振止めボルトを挟み込む2つの連結部材40と、固定ナット21の締め付けにより、固定面へ挟持板および該連結部材を取り付ける2本のボルト軸20を備え、2つの挟持板は、隣接面が隣接可能に配置され、それぞれ吊りボルトの軸方向に対して揺動可能であり、揺動により、隣接面を隣接させた状態では、2つの隣接面と当接面とが吊りボルトを収容する収容空間Cが閉塞され、隣接面を互いに離間させた状態では、吊りボルトを受け入れ可能に収容空間が開放される。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11