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特許7042467単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20220318BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220318BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20220318BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220318BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220318BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220318BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220318BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220318BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220318BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220318BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220318BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220318BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220318BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220318BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220318BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220318BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20220318BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220318BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220318BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220318BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
C07K16/46
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K19/00
A61K35/76
A61K48/00
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/06
A61P33/00
A61P31/12
A61P31/00
A61P29/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018560557
(86)(22)【出願日】2017-05-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-29
(86)【国際出願番号】 US2017033673
(87)【国際公開番号】W WO2017201493
(87)【国際公開日】2017-11-23
【審査請求日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】62/339,685
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517403846
【氏名又は名称】ハープーン セラピューティクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ドゥブリッジ,ロバート ビー.
(72)【発明者】
【氏名】セト,プイ
(72)【発明者】
【氏名】オースティン,リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】イブニン,ルーク
(72)【発明者】
【氏名】ゲノ,ジャンマリー
(72)【発明者】
【氏名】レモン,ブライアン ディー.
【審査官】西垣 歩美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0004121(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0017058(US,A1)
【文献】国際公開第2015/146437(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
C12P 1/00-41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO.8、またはSEQ ID NO.9のアミノ酸配列を含む、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質。
【請求項2】
請求項1の単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項2のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項4】
請求項3のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項5】
(i)請求項1の単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質、請求項2のポリヌクレオチド、請求項3のベクター、または請求項4の宿主細胞、および、(ii)薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物。
【請求項6】
請求項1の単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質の産生のためのプロセスであって、
前記プロセスは、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質の発現を可能にする条件下で、請求項1の単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターで形質転換されたまたはトランスフェクトされた宿主を培養すること、および、培養物から生成されたタンパク質を回収および精製することを含む、プロセス。
【請求項7】
請求項1の単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む、多特異性の結合タンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年5月20日に出願された米国仮出願第62/339,685号の利益を主張するものであり、この文献は参照によって全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照により全体として本明細書に組み込まれる配列表を含んでいる。2017年5月19日に作成された上記のASCIIのコピーは、47517-704_601_SEQ.TXTのファイル名であり、66,042バイトのサイズである。
【0003】
引用による組み込み
本明細書で言及される公開物、特許、および特許出願はすべて、あたかも個々の公開物、特許あるいは特許出願がそれぞれ参照により組み込まれるべく具体的かつ個々に指示されるかのように、および、その全体にわたって、同程度まで参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
CD3は、T細胞受容体複合体(TCR)と共にT細胞上で発現したホモ二量体またはヘテロ二量体の抗原であり、T細胞活性化に必要とされている。抗CD3抗体にはT細胞の活性化を含む治療目的がある。本開示は、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む多特異性の抗体を含む、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を提供する。
【発明の概要】
【0005】
1つの実施形態では、可変重鎖領域(VH)、可変軽鎖領域(VL)、およびリンカーを含む単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質が開示され、ここで、VHは相補性決定領域HC CDR1、HC CDR2、およびHC CDR3を含み、ここで、VLは相補性決定領域LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3を含み、ここで、(a)HC CDR1のアミノ酸配列はGXNXYXN(SEQ ID NO.2)に記載される通りであり、Xはフェニルアラニンまたはアスパラギンであり、Xはトレオニン、グルタミン酸、またはメチオニンであり、Xはフェニルアラニンまたはチロシンであり、Xはリジン、トレオニン、グリシン、アスパラギン、またはグルタミン酸であり、Xはアラニンまたはプロリンであり、Xはメチオニン、ロイシン、バリン、またはイソロイシンであり;(b)HC CDR2のアミノ酸配列はRIRSXNXYX10TX11YX12DX13VK(SEQ ID NO.3)で記載される通りであり、Xはリジンまたはグリシンであり、Xはチロシンまたはセリンであり、Xはアスパラギンまたはリジンであり、X10はアラニンまたはグルタミン酸であり、X11はチロシンまたはグルタミン酸であり、X12はアラニンまたはリジンであり、X13はセリン、グルタミン酸、アスパラギン酸、アラニン、またはグルタミンであり;(c)HC CDR3のアミノ酸配列はHX14NFX1516SX17ISYWAX18(SEQ ID NO.4)で記載される通りであり、X14はグリシン、アラニン、またはトレオニンであり、X15はグリシンまたはアスパラギンであり、X16はアスパラギンまたはアスパラギン酸であり、X17はチロシン、ヒスチジン、プロリン、グルタミン、ロイシン、またはグリシンであり、X18はチロシンまたはトレオニンであり;(d)LC CDR1のアミノ酸配列はX19202122GX23VX2425GX26YPN(SEQ ID NO.5)に記載される通りであり、X19はグリシンまたはアラニンであり、X20はセリンまたはグルタミン酸であり、X21はセリンまたはチロシンであり、X22はトレオニン、フェニルアラニン、リジン、またはセリンであり、X23はアラニンまたはチロシンであり、X24はトレオニンまたはバリンであり、X25はセリン、アスパラギン酸、リジン、ヒスチジン、またはバリンであり、X26はアスパラギンまたはチロシンであり;(e)LC CDR2のアミノ酸配列はGX2728293031P(SEQ ID NO.6)で記載される通りであり、X27はトレオニンまたはイソロイシンであり、X28はリジン、グルタミン酸、チロシン、アスパラギン、またはセリンであり、X29はフェニルアラニン、ロイシン、グルタミン酸、イソロイシン、メチオニン、またはバリンであり、X30はロイシン、アスパラギン、またはグリシンであり、X31はアラニンまたはバリンであり;および、(f)LC CDR3のアミノ酸配列はX32LWYX33NX34WX35(SEQ ID NO.7)で記載される通りであり、X32はバリン、トレオニン、またはアラニンであり、X33はセリン、アスパラギン酸、またはアラニンであり、X34はアルギニンまたはセリンであり、X35はバリン、イソロイシン、またはアラニンであり、ここで、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19、X20、X21、X22、X23、X24、X25、X26、X27、X28、X29、X30、X31、X3233、X34、およびX35は、同時に、それぞれフェニルアラニン、トレオニン、フェニルアラニン、リジン、アラニン、メチオニン、リジン、チロシン、アスパラギン、アラニン、チロシン、アラニン、セリン、グリシン、グリシン、アスパラギン、チロシン、チロシン、グリシン、セリン、セリン、トレオニン、アラニン、トレオニン、セリン、アスパラギン、トレオニン、リジン、フェニルアラニン、ロイシン、アラニン、バリン、セリン、アルギニン、およびバリンではない。
【0006】
いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、以下の式:f1-r1-f2-r2-f3-r3-f4-r4-f5-r5-f6-r6-f7を含み、式中、r1はSEQ ID NO:2であり;r2はSEQ ID NO:3であり;r3はSEQ ID NO:4であり;r4はSEQ ID NO:5であり;r5はSEQ ID NO:6であり;および、r6はSEQ ID NO:7であり;ここで、f、f、f、f、およびfは、上記のタンパク質がSEQ ID NO:22で記載されるアミノ酸配列に少なくとも80パーセント同一であるように、選択されたフレームワーク残基である。
【0007】
いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1は、SEQ ID NO.29、SEQ ID NO.30、SEQ ID NO.31、SEQ ID NO.32、SEQ ID NO.33、SEQ ID NO.34、SEQ ID NO.35、SEQ ID NO.36、SEQ ID NO.37、SEQ ID NO.38、SEQ ID NO.39、またはSEQ ID NO.40を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r2は、SEQ ID NO.41、SEQ ID NO.42、SEQ ID NO.43、SEQ ID NO.44、SEQ ID NO.45、SEQ ID NO.46、SEQ ID NO.47、SEQ ID NO.48、SEQ ID NO.49、またはSEQ ID NO.50を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r3は、SEQ ID NO.51、SEQ ID NO.52、SEQ ID NO.53、SEQ ID NO.54、SEQ ID NO.55、SEQ ID NO.56、SEQ ID NO.57、SEQ ID NO.58、SEQ ID NO.50、またはSEQ ID NO.60を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r4は、SEQ ID NO.61、SEQ ID NO.62、SEQ ID NO.63、SEQ ID NO.64、SEQ ID NO.65、SEQ ID NO.66、SEQ ID NO.67、SEQ ID NO.68、SEQ ID NO.69、SEQ ID NO.70、SEQ ID NO.71、SEQ ID NO.72、またはSEQ ID NO.73を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r5は、SEQ ID NO.74、SEQ ID NO.75、SEQ ID NO.76、SEQ ID NO.77、SEQ ID NO.78、SEQ ID NO.79、SEQ ID NO.80、SEQ ID NO.81、SEQ ID NO.82、SEQ ID NO.83、SEQ ID NO.84、SEQ ID NO.85、またはSEQ ID NO.86を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r6は、SEQ ID NO.87、SEQ ID NO.88、SEQ ID NO.89、SEQ ID NO.90、SEQ ID NO.91、SEQ ID NO.92、またはSEQ ID NO.93を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1はSEQ ID NO.39であり、r2はSEQ ID NO.49であり、r3はSEQ ID NO.51であり、r4はSEQ ID NO.61であり、r5はSEQ ID NO.86であり、および、r6はSEQ ID NO.87である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1はSEQ ID NO.30であり、r2はSEQ ID NO.43であり、r4はSEQ ID NO.64であり、および、r6はSEQ ID NO.89である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r3はSEQ ID NO.55であり、r4はSEQ ID NO.67であり、r5はSEQ ID NO.77であり、および、r6はSEQ ID NO.92である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1はSEQ ID NO.31であり、r2はSEQ ID NO.42であり、r3はSEQ ID NO.60であり、r4はSEQ ID NO.64であり、r5はSEQ ID NO.79であり、および、r6はSEQ ID NO.91である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1はSEQ ID NO.35であり、r2はSEQ ID NO.46であり、r3はSEQ ID NO.56であり、r4はSEQ ID NO.68であり、および、r5はSEQ ID NO.75である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1はSEQ ID NO.32であり、r2はSEQ ID NO.47であり、r3はSEQ ID NO.56であり、r4はSEQ ID NO.65であり、r5はSEQ ID NO.80であり、および、r6はSEQ ID NO.87である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1はSEQ ID NO.29であり、r2はSEQ ID NO.44であり、r3はSEQ ID NO.52であり、r4はSEQ ID NO.73であり、および、r5はSEQ ID NO.76である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1はSEQ ID NO.33であり、r2はSEQ ID NO.48であり、r3はSEQ ID NO.57であり、r4はSEQ ID NO.69であり、および、r5はSEQ ID NO.74である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1はSEQ ID NO.38であり、r4はSEQ ID NO.62であり、および、r5はSEQ ID NO.81である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1はSEQ ID NO.37であり、r3はSEQ ID NO.53であり、r4はSEQ ID NO.70であり、r5はSEQ ID NO.82であり、および、r6はSEQ ID NO.88である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1はSEQ ID NO.34であり、r2はSEQ ID NO.47であり、r3はSEQ ID NO.56であり、r4はSEQ ID NO.68であり、r5はSEQ ID NO.75である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1はSEQ ID NO.29であり、r3はSEQ ID NO.54であり、r4はSEQ ID NO.71であり、および、r5はSEQ ID NO.83である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1はSEQ ID NO.33であり、r2はSEQ ID NO.41であり、r4はSEQ ID NO.63であり、r5はSEQ ID NO.84であり、および、r6はSEQ ID NO.90である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1はSEQ ID NO.30であり、r2はSEQ ID NO.44であり、r3はSEQ ID NO.58であり、r4はSEQ ID NO.66であり、および、r5はSEQ ID NO.85である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1はSEQ ID NO.40であり、r2はSEQ ID NO.45であり、r3はSEQ ID NO.56であり、r5はSEQ ID NO.78であり、および、r6はSEQ ID NO.93である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、アミノ酸配列を含み、式中、r1はSEQ ID NO.36であり、r2はSEQ ID NO.50であり、r3はSEQ ID NO.59であり、r4はSEQ ID NO.72であり、および、r5はSEQ ID NO.75である。
【0008】
いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、SEQ ID NO.14、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.16、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.18、SEQ ID NO.19、SEQ ID NO.20、SEQ ID NO.21、SEQ ID NO.94、およびSEQ ID NO.95から選択されたアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.8として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.9として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.14として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.19として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.94として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.10として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.11として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.12として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.13として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.15として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.16として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.17として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.18として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.20として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.21として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.25として記載されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、リンカーを含むアミノ酸配列を含み、ここで、上記リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(SEQ ID NO:1)で記載される通りのアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、ヒトCD3とカニクイザルCD3から選択されたCD3に結合する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、同等の結合親和性(Kd)を有するヒトCD3とカニクイザルCD3に結合する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、約1nM~約200nM間のヒトKd(hKd)を有するヒトCD3に結合し、約1nM~約300nM間のカニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザルCD3に結合する。いくつかの実施形態において、hKdとcKdは、約3nM~約5nM、約6nM~約10nM、約11nM~約20nM、約25nM~約40nM、約40nM~約60nM、約70nM~約90nM、約100nM~約120nM、約125nM~約140nM、約145nM~約160nM、約170nM~約200nM、約210nM~約250nM、約260nM~約300nMである。
【0009】
いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、ヒトKd(hKd)を有するヒトCD3に結合し、カニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザルCD3に結合し、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性とほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、ヒトKd(hKd)を有するヒトCD3に結合し、カニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザルCD3に結合し、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約1.5倍~約2倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、ヒトKd(hKd)を有するヒトCD3に結合し、カニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザルCD3に結合し、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、ヒトKd(hKd)を有するヒトCD3に結合し、カニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザルCD3に結合し、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約6倍~約15倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、ヒトKd(hKd)を有するヒトCD3に結合し、カニクイザルKd(cKd)を有するカニクイザルCD3に結合し、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約20倍~約50倍高い。
【0010】
いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.8として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性とほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.8として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約3nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.9として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性とほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.9として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約3nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.10として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性とほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.10として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約3nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.11として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性とほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.11として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約3nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.12として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約1.5倍~約2倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.12として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約6nMと約10nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.13として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約1.5倍~約2倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.13として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約6nMと約10nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.14として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.14として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約11nMと約20nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.15として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約6倍~約15倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.15として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約25nMと約40nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.16として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.16として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約11nMと約20nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.17として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約6倍~約15倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.17として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約40nMと約60nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.18として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.18として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約11nMと約20nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.19として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約6倍~約15倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.19として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約40nMと約60nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.20として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.20として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約11nMと約20nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.21として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約20倍~約50倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.21として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約125nMと約140nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.94として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約20倍~約50倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.94として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約100nMと約120nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.95として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約20倍~約50倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.95として記載されるアミノ酸配列を有し、および、hKdとcKdは約100nMと約120nMの間である。別の実施形態では、SEQ ID NO.22(wt抗CD3)として記載される配列を含む単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質が本明細書で提供され、ここで、アミノ酸位置27、28、29、31、33、34、54、55、57、59、61、63、65、102、105、106、108、114、163、164、165、166、168、170、171、173、193、194、195、196、197、231、235、237、および239から選択された1つ以上のアミノ酸残基が置換され、ここで、アミノ酸位置27はアスパラギンで置換され、アミノ酸位置28はグルタミン酸またはメチオニンで置換され、アミノ酸位置29はチロシンで置換され、アミノ酸位置31はアスパラギン、グリシン、グルタミン酸、またはトレオニンで置換され、アミノ酸位置33はプロリンで置換され、アミノ酸位置34はバリン、ロイシン、またはイソロイシンで置換され、アミノ酸位置54はグリシンで置換され、アミノ酸位置55はセリンで置換され、アミノ酸位置57はリジンで置換され、アミノ酸位置59はグルタミン酸で置換され、アミノ酸位置61はグルタミン酸で置換され、アミノ酸位置63はリジンで置換され、アミノ酸位置65はアスパラギン酸、グルタミン酸、アラニン、またはグルタミンで置換され、アミノ酸位置102はアラニンまたはトレオニンで置換され、アミノ酸位置105はアスパラギンで置換され、アミノ酸位置106はアスパラギン酸で置換され、アミノ酸位置108はヒスチジン、プロリン、グルタミン、グリシン、またはロイシンで置換され、アミノ酸位置114はトレオニンで置換され、アミノ酸位置163はアラニンで置換され、アミノ酸位置164はグルタミン酸で置換され、アミノ酸位置165はチロシンで置換され、アミノ酸位置166はフェニルアラニン、リジン、またはセリンで置換され、アミノ酸位置168はチロシンで置換され、アミノ酸位置170はバリンで置換され、アミノ酸位置171はアスパラギン酸、リジン、バリン、またはヒスチジンで置換され、アミノ酸位置173はチロシンで置換され、アミノ酸位置193はイソロイシンで置換され、アミノ酸位置194はグルタミン酸、チロシン、アスパラギン、またはセリンで置換され、アミノ酸位置195はロイシン、グルタミン酸、イソロイシン、メチオニン、またはバリンで置換され、アミノ酸位置196はアスパラギンまたはグリシンで置換され、アミノ酸位置197はバリンで置換され、アミノ酸位置231はトレオニンまたはアラニンで置換され、アミノ酸位置235はアスパラギン酸またはアラニンで置換され、アミノ酸位置237はセリンで置換され、およびアミノ酸位置239はアラニンまたはイソロイシンで置換される。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置27、28、29、31、33、34、54、55、57、59、61、63、65、102、105、106、108、114、163、164、165、166、168、170、171、17
3、193、194、195、196、197、231、235、237、および239以外のアミノ酸位置において1つ以上の追加の置換基を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置27における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置28における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置29における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置31における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置33における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置34における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置54における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置55における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置57における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置59における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置61における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置63における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置65における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置102における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置105における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置106における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置108における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置114における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置163における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置164における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置165における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置166における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置168における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置170における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置171における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置173における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置193における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置194における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置195における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置196における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置197における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置231における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置235における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置237における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置239における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置34、65、102、163、197、および231における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置28、57、166、および235における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置108、168、194、および239における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置28、55、114、166、195、および237における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置31、63、108、170、および194における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置29、65、108、166、195、および231における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置27、59、102、173、および194における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置31、65、108、171および193における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置34、164、および195における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置33、105、171、195、および231における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置31、65、108、170、および194における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置27、106、171、および195における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置31、54、165、196、および235における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置28、59、108、166、および196における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置34、61、108、194、および239における置換を含む。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、位置31、65、108、171、および194における置換を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置34、65、102、163、197、および231が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性とほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置34、65、102、163、197、および231が置換され、および、hKdとcKdは約3nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置28、57、166、および235が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性とほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置28、57、166、および235が置換され、および、hKdとcKdは約3nMと約5nMの間である。
【0012】
いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置108、168、194、および239が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性とほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置108、168、194、および239が置換され、および、hKdとcKdは約3nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置28、55、114、166、195、および237が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性とほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置28、55、114、166、195、および237が置換され、および、hKdとcKdは約3nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置31、63、108、170、および194が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約1.5倍~約2倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置31、63、108、170、および194が置換され、および、hKdとcKdは約6nMと約10nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置29、65、108、166、195、および231が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約1.5倍~約2倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置29、65、108、166、195、および231が置換され、および、hKdとcKdは約6nMと約10nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置27、59、102、173、および194が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置27、59、102、173、および194が置換され、および、hKdとcKdは約11nMと約20nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置31、65、108、171、および193が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約6倍~約15倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置31、65、108、171、および193が置換され、および、hKdとcKdは約25nMと約40nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置34、164、および195が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置34、164、および195が置換され、および、hKdとcKdは約11nMと約20nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置33、105、171、195、および231が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約6倍~約15倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置33、105、171、195、および231が置換され、および、hKdとcKdは約40nMと約60nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置31、65、108、170、および194が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置31、65、108、170、および194が置換され、および、hKdとcKdは約11nMと約20nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置27、106、171、および195が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約6倍~約15倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置27、106、171、および195が置換され、および、hKdとcKdは約40nMと約60nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置31、54、165、196、および235が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置31、54、165、196、および235が置換され(10B2)、および、hKdとcKdは約11nMと約20nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置28、59、108、166、および196が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約25倍~約50倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置28、59、108、166、および196が置換され、および、hKdとcKdは約125nMと約140nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置34、61、108、194、および239が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約20倍~約50倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置34、61、108、194、および239が置換され、および、hKdとcKdは約100nMと約120nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置31、65、108、171、および194が置換され、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約20倍~約50倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置31、65、108、171、および194が置換され、および、hKdとcKdは約100nMと約120nMの間である。
【0013】
さらなる実施形態において、可変重鎖領域(VH)、可変軽鎖領域(VL)、GGGGSGGGGSGGGGS(SEQ ID NO:1)で記載される通りのアミノ酸配列を含むリンカーを含む、wt抗CD3(SEQ ID NO:22)で記載される通りのアミノ酸配列を含む単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質が本明細書で提供され、ここで、VHは相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3を含み、ここで、VLは、VHのCDR1、CDR2、またはCDR3中に、および、VLのLC CDR1、LC CDR2、またはLC CDR3中に少なくとも1つの突然変異を含む、相補性決定領域LC CDR1、LC CDR2、およびLC CDR3を含み、ここで、少なくとも1つの突然変異は、アミノ酸位置26、30、32、35、50、51、52、53、56、58、60、62、64、66、67、101、103、104、107、109、110、111、112、113、167、169、172、174、175、176、192、198、232、233、234、236、または238にはない。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、27、28、29、31、33、34、54、55、57、59、61、63、65、102、105、106、108、114、163、164、165、166、168、170、171、173、193、194、195、196、197、231、235、237、および239から選択されたアミノ酸位置に少なくとも1つの突然変異を含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置34はイソロイシンに突然変異し、位置65はグルタミンに突然変異し、位置102はアラニンに突然変異し、位置163はアラニンに突然変異し、位置197はバリンに突然変異し、および位置231はトレオニンに突然変異する。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置28はグルタミン酸に突然変異し、位置57はリジンに突然変異し、位置166はフェニルアラニンに突然変異し、および、位置235はアスパラギン酸に突然変異する。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置108はヒスチジンに突然変異し、位置168はチロシンに突然変異し、位置194はセリンに突然変異し、および、位置239はイソロイシンに突然変異する。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置28はメチオニンに突然変異し、位置55はセリンに突然変異し、位置114はトレオニンに突然変異し、位置166はフェニルアラニンに突然変異し、位置195はロイシンに突然変異し、および、位置237はセリンに突然変異する。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置31はトレオニンに突然変異し、位置63はリジンに突然変異し、位置108はプロリンに突然変異し、位置170はバリンに突然変異し、および、位置194はグルタミン酸に突然変異する。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置29はチロシンに突然変異し、位置65はグルタミン酸に突然変異し、位置108はプロリンに突然変異し、位置166はリジンに突然変異し、位置195はグルタミン酸に突然変異し、および、位置231はトレオニンに突然変異する。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置27はアスパラギンに突然変異し、位置59はグルタミン酸に突然変異し、位置102はトレオニンに突然変異し、位置173はチロシンに突然変異し、および、位置194はチロシンに突然変異する。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置31はアスパラギンに突然変異し、位置65はアラニンに突然変異し、位置108はグルタミンに突然変異し、位置171はアスパラギン酸に突然変異し、および、位置193はイソロイシンに突然変異する。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置34はバリンに突然変異し、位置164はグルタミン酸に突然変異し、および、位置195はイソロイシンに突然変異する。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置33はプロリンに突然変異し、位置105はアスパラギンに突然変異し、位置171はリジンに突然変異し、位置195はメチオニンに突然変異し、および、位置231はアラニンに突然変異する。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置31はグリシンに突然変異し、位置65はグルタミン酸に突然変異し、位置108はプロリンに突然変異し、位置170はバリンに突然変異し、および、位置194はグルタミン酸に突然変異する。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置27はアスパラギンに突然変異し、位置106はアスパラギン酸に突然変異し、位置171はヒスチジンに突然変異し、および、位置195はバリンに突然変異する。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置31はアスパラギンに突然変異し、位置54はグリシンに突然変異し、位置165はチロシンに突然変異し、位置196はアスパラギンに突然変異し、および、位置235はアラニンに突然変異する。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置28はグルタミン酸に突然変異し、位置59はグルタミン酸に突然変異し、位置108はロイシンに突然変異し、位置166はセリンに突然変異し、および、位置196はグリシンに突然変異する。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置34はロイシンで置換され、アミノ酸位置61はグルタミン酸で置換され、アミノ酸位置108はプロリンで置換され、アミノ酸位置194はアスパラギンで置換され、および、アミノ酸位置239はアラニンで置換される。いくつかの実施形態において、アミノ酸位置31はグルタミン酸で置換され、アミノ酸位置65はアスパラギン酸で置換され、アミノ酸位置108はグリシンで置換され、アミノ酸位置171はバリンで置換され、および、アミノ酸位置194はグルタミン酸で置換される。
【0014】
いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、配列を含み、ここで、アミノ酸位置34はイソロイシンに突然変異し、位置65はグルタミンに突然変異し、位置102はアラニンに突然変異し、位置163はアラニンに突然変異し、位置197はバリンに突然変異し、および位置231はトレオニンに突然変異し、および、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性とほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置34はイソロイシンに突然変異し、位置65はグルタミンに突然変異し、位置102はアラニンに突然変異し、位置163はアラニンに突然変異し、位置197はバリンに突然変異し、および、位置231はトレオニンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは約3nMと5nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置28はグルタミン酸に突然変異し、位置57はリジンに突然変異し、位置166はフェニルアラニンに突然変異し、および、位置235はアスパラギン酸に突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性とほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置28はグルタミン酸に突然変異し、位置57はリジンに突然変異し、位置166はフェニルアラニンに突然変異し、および、位置235はアスパラギン酸に突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは約3nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置108はヒスチジンに突然変異し、位置168はチロシンに突然変異し、位置194はセリンに突然変異し、および、位置239はイソロイシンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdはwt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性とほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置108はヒスチジンに突然変異し、位置168はチロシンに突然変異し、位置194はセリンに突然変異し、および、位置239はイソロイシンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは約3nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置28はメチオニンに突然変異し、位置55はセリンに突然変異し、位置114はトレオニンに突然変異し、位置166はフェニルアラニンに突然変異し、位置195はロイシンに突然変異し、および、位置237はセリンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性とほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置28はメチオニンに突然変異し、位置55はセリンに突然変異し、位置114はトレオニンに突然変異し、位置166はフェニルアラニンに突然変異し、位置195はロイシンに突然変異し、および、位置237はセリンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは約3nMと約5nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はトレオニンに突然変異し、位置63はリジンに突然変異し、位置108はプロリンに突然変異し、位置170はバリンに突然変異し、および、位置194はグルタミン酸に突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約1.5倍~約2倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はトレオニンに突然変異し、位置63はリジンに突然変異し、位置108はプロリンに突然変異し、位置170はバリンに突然変異し、および、位置194はグルタミン酸に突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは約6nMと約10nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置29はチロシンに突然変異し、位置65はグルタミン酸に突然変異し、位置108はプロリンに突然変異し、位置166はリジンに突然変異し、位置195はグルタミン酸に突然変異し、および、位置231はトレオニンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約1.5倍~約2倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置29はチロシンに突然変異し、位置65はグルタミン酸に突然変異し、位置108はプロリンに突然変異し、位置166はリジンに突然変異し、位置195はグルタミン酸に突然変異し、および、位置231はトレオニンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは約6nMと約10nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置27はアスパラギンに突然変異し、位置59はグルタミン酸に突然変異し、位置102はトレオニンに突然変異し、位置173はチロシンに突然変異し、および、位置194はチロシンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置27はアスパラギンに突然変異し、位置59はグルタミン酸に突然変異し、位置102はトレオニンに突然変異し、位置173はチロシンに突然変異し、および、位置194はチロシンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは約11nMと20nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はアスパラギンに突然変異し、位置65はアラニンに突然変異し、位置108はグルタミンに突然変異し、位置171はアスパラギン酸に突然変異し、および、位置193はイソロイシンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約6倍~約15倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はアスパラギンに突然変異し、位置65はアラニンに突然変異し、位置108はグルタミンに突然変異し、位置171はアスパラギン酸に突然変異し、および、位置193はイソロイシンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは約25nMと約40nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置34はバリンに突然変異し、位置164はグルタミン酸に突然変異し、および、位置195はイソロイシンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置34はバリンに突然変異し、位置164はグルタミン酸に突然変異し、および、位置195はイソロイシンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、約11nMと20nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置33はプロリンに突然変異し、位置90はアスパラギンに突然変異し、位置105はアスパラギンに突然変異し、位置171はリジンに突然変異し、位置195はメチオニンに突然変異し、および、位置231はアラニンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約6倍~約15倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置33はプロリンに突然変異し、位置90はアスパラギンに突然変異し、位置105はアスパラギンに突然変異し、位置171はリジンに突然変異し、位置195はメチオニンに突然変異し、および、位置231はアラニンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、約40nMと60nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はグリシンに突然変異し、位置65はグルタミン酸に突然変異し、位置108はプロリンに突然変異し、位置170はバリンに突然変異し、および、位置194はグルタミン酸に突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はグリシンに突然変異し、位置65はグルタミン酸に突然変異し、位置108はプロリンに突然変異し、位置170はバリンに突然変異し、および、位置194はグルタミン酸に突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、約11nMと20nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置27はアスパラギンに突然変異し、位置106はアスパラギン酸に突然変異し、位置171はヒスチジンに突然変異し、および、位置195はバリンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約6倍~約15倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置27はアスパラギンに突然変異し、位置106はアスパラギン酸に突然変異し、位置171はヒスチジンに突然変異し、および、位置195はバリンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、約40nMと60nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はアスパラギンに突然変異し、位置54はグリシンに突然変異し、位置165はチロシンに突然変異し、位置196はアスパラギンに突然変異し、および、位置235はアラニンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はアスパラギンに突然変異し、位置54はグリシンに突然変異し、位置165はチロシンに突然変異し、位置196はアスパラギンに突然変異し、および、位置235はアラニンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、約11nMと約20nM
の間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、アミノ酸位置28はグルタミン酸に突然変異し、位置59はグルタミン酸に突然変異し、位置108はロイシンに突然変異し、位置166はセリンに突然変異し、および、位置196はグリシンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約20倍~約50倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置28はグルタミン酸に突然変異し、位置59はグルタミン酸に突然変異し、位置108はロイシンに突然変異し、位置166はセリンに突然変異し、および、位置196はグリシンに突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは約125nMと約140nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置34はロイシンに突然変異し、アミノ酸位置61はグルタミン酸に突然変異し、アミノ酸位置108はプロリンに突然変異し、アミノ酸位置194はアスパラギンに突然変異し、アミノ酸位置239はアラニンに突然変異し、および、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約20倍~約50倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置34はロイシンに突然変異し、アミノ酸位置61はグルタミン酸に突然変異し、アミノ酸位置108はプロリンに突然変異し、アミノ酸位置194はアスパラギンに突然変異し、アミノ酸位置239はアラニンに突然変異し、ここで、hKdとcKdは、約100nMと約120nMの間である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はグルタミン酸に突然変異し、アミノ酸位置65はアスパラギン酸に突然変異し、アミノ酸位置108はグリシンに突然変異し、アミノ酸位置171はバリンに突然変異し、および、アミノ酸位置194はグルタミン酸に突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対する結合親和性よりも約20倍~約50倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は配列を含み、ここで、アミノ酸位置31はグルタミン酸に突然変異し、アミノ酸位置65はアスパラギン酸に突然変異し、アミノ酸位置108はグリシンに突然変異し、アミノ酸位置171はバリンに突然変異し、および、アミノ酸位置194はグルタミン酸に突然変異し、ならびに、ここで、hKdとcKdは約100nMと約120nMの間である。
【0015】
いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質はマウスCD3には結合しない。
【0016】
1つの実施形態では、本開示に従って単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが提供される。1つの実施形態では、本明細書に記載されたポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。1つの実施形態では、本明細書に記載されたベクターで形質転換された宿主細胞が提供される。さらなる実施形態では、(i)本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質、本開示に係るポリヌクレオチド、本開示に係るベクター、または本開示に係る宿主細胞、および、(ii)薬学的に許容可能な担体を含む、医薬組成物が提供される。
【0017】
別の実施形態では、本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質の産生のためのプロセスが提供され、上記プロセスは、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質の発現を可能にする条件下で、本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターで形質転換されたまたはトランスフェクトされた宿主を培養すること、および、培養物から生成されたタンパク質を回収および精製することを含む。
【0018】
別の実施形態では、本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質の被験体への投与を含む、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫学的障害、自己免疫性疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫性反応、移植片対宿主病、または宿主対移植片病の処置または改善のための方法が提供される。いくつかの実施形態では、被験体はヒトである。いくつかの実施形態において、方法はさらに、本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質と組み合わせた薬剤の投与を含む。
【0019】
1つの実施形態では、本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む多特異性の結合タンパク質が本明細書で提供される。1つの実施形態は、本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む抗体を記載している。さらなる実施形態は、本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む、多特異性抗体、二重特異性抗体、単一ドメイン抗体、可変重鎖ドメイン、ペプチド、またはリガンドを提供する。1つの実施形態では、本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む抗体が本明細書に記載され、上記抗体はscFv抗体である。別の実施形態は、本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質と血清アルブミン結合ドメインとを含む多特異性結合タンパク質または抗体を記載している。
【0020】
本発明の新しい特徴は、添付の請求項の特殊性をもって説明される。本発明の特徴および利点のより良い理解は、本発明の原理が用いられる実施形態を説明する以下の詳細な説明と、以下の添付図面とを引用することによって得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】ビオチンCD3εとビオチン-HSA上でのファージ滴定を例証する。
図2】ヒトCD3結合タンパク質のアミノ酸配列(SEQ ID NO:22)を例証する。HC CDR1は第1の陰影を付けた配列(GFTFNKYAMN(SEQ ID NO:23))で示され、HC CDR2は第2の陰影を付けた配列(RIRSKYNNYATYYADSVK(SEQ ID NO:24))で示され、HC CDR3は第3の陰影を付けた配列(HGNFGNSYISYWAY(SEQ ID NO:25))で示され、LC CDR1は第4の陰影を付けた配列(GSSTGAVTSGNYPN(SEQ ID NO:26))で示され、LC CDR2は第5の陰影を付けた配列(GTKFLAP(SEQ ID NO:27))で示され、および、CDR3は第6の陰影を付けた配列(VLWYSNRWV(SEQ ID NO:28))で示される。
図3】より正確なKd決定のために選択された16のクローンのプロフィールを例証する。
図4】複数の抗huCD3ε scFv変異体のための疎水性の曝露(Th°C)の温度を例証する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の好ましい実施形態が本明細書で示され記載されているが、こうした実施形態がほんの一例として提供されているに過ぎないということは当業者にとって明白である。多くの変更、変化および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者の心に思い浮かぶであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用されることもあることを理解されたい。以下の請求項は本発明の範囲を定義するものであり、この請求項とその均等物の範囲内の方法および構造体がそれによって包含されるものであるということが意図されている。
【0023】
特定の定義
本明細書で使用される用語は、特別のケースだけを記載することを目的としており、本発明を制限することを意図していない。本明細書で使用されるように、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、文脈上他の意味を明白に示すものでない限り、同様に複数形を含むことを意図している。さらに、用語「含んでいる(including)」、「含む(includes)」、「有している(having)」、「有する(has)」、「含んだ(with)」、または、その変異形が発明を実施するための形態および/または請求項のいずれかで使用される程度には、上記のような用語は「含んでいる(comprising)」との用語に類似する手法で包括的であることを意図している。
【0024】
用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、当業者によって決定されるような特定の値の許容可能な誤差範囲内であることを意味し、これは、その値がどのように測定または決定されるか、例えば、測定システムの制限に部分的に依存している。例えば、「約」とは、任意の値での実践につき1または1を超える標準偏差を意味し得る。特定の値が本出願と請求項に記載されている場合、特段の定めのない限り、「約」との用語は、特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味するものであると仮定されなければならない。
【0025】
用語「個体」、「患者」、または「被験体」は交換可能に使用される。いかなる用語も、医療従事者(例えば、医者、正看護師、臨床看護師、医師助手、看護助手、あるいはホスピスの職員)の監督(例えば、常時または断続的)を特徴とする状況を必要とせず、かつ、該状況に限定されない。
【0026】
本明細書で使用されるように、「消失半減期」は、Goodman and Gillman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics 21-25 (Alfred Goodman Gilman, Louis S. Goodman, and Alfred Gilman, eds., 6th ed. 1980)に記載されるように、通常の意味で使用される。簡潔に言えば、この用語は、薬物排泄の時間的経過の定量的測度を包含することを目的としている。薬物濃度が消失プロセスの飽和に必要とされる濃度には通常接近しないので、ほとんどの医薬品の消失は指数関数的である(つまり、一次速度論に従う)。指数関数的なプロセスの速度は、1単位時間当たりの僅かな変化を表現するその速度定数kによって、あるいは、そのプロセスの50%の完成のために必要とされる時間であるその半減時間t1/2によって、表現されることがある。これらの2つの定数の単位はそれぞれtime-1とtimeである。反応の一次速度定数と半減時間は、単純に関連づけられ(k×t1/2=0.693)、これに応じて交換されることがある。一次消失動力学は一定の比率の薬物が単位時間ごとに失われるように指令を出すため、薬物濃度対時間の対数のプロットは、初回の分布相の後(つまり、薬物の吸収と分布が完了している後)は常に線形である。薬物排泄のための半減時間はこうしたグラフから正確に決定することができる。
【0027】
本明細書で使用されるように、配列に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」との用語は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して最大のパーセント配列同一性を達成した後に、かつ、配列同一性の一部としてのいかなる保存的置換を考慮せずに、特定の配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のための整列は、当該技術分野内の様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されている利用可能なコンピューター・ソフトウェアを用いて達成可能である。当業者は、比較されている配列の完全長にわたって最大限の整列を達成するために必要とされるあらゆるアルゴリズムを含む、配列を測定するための適切なパラメータを決定することができる。
【0028】
用語「フレームワーク」または「FR」残基(または領域)は、本明細書に定義されるようなCDRまたは超可変領域の残基以外の可変ドメイン残基を指す。「ヒト・コンセンサス・フレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択の際に最も一般に生じるアミノ酸残基を表すフレームワークである。
【0029】
本明細書で使用されるように、「可変領域」または「可変ドメイン」とは、可変ドメインの特定の部分が抗体中の配列で大きく異なり、その特定の抗原について各々の特定の抗体の結合と特異性で使用されるという事実を指す。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメイン全体に均一に分布していない。それは、軽鎖と重鎖の両方の可変ドメイン中の相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク(FR)と呼ばれる。天然の重鎖と軽鎖の可変ドメインは各々、β-シート構造を接続する、場合によってはβ-シート構造の一部を形成するループを形成する、3つのCDRにより接続された、β-シート構造を採用している4つのFR領域を含む。各鎖のCDRはFR領域によって極めて接近して一緒に保持され、他の鎖からのCDRとともに、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md.(1991)を参照)。定常ドメインは抗体を抗原に結合することに直接関与しないが、抗体依存性の細胞毒性における抗体の関与などの様々なエフェクター機能を示す。「Kabatでのような可変ドメイン残基の番号付け」あるいは「Kabatでのようなアミノ酸位置の番号付け」、およびその変更形態は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service, National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)における抗体の編集物の重鎖可変ドメインあるいは軽鎖可変ドメインのために使用された番号づけ方式を参照する。この番号付け方式を使用して、実際の線形のアミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはCDRの短縮または可変ドメインのFRまたはCDRへの挿入に対応するより少ないまたは追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(Kabatに係る残基52a)を、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに係る残基82a、82b、および82cなど)を含むことがある。残基のKabatの番号付けは、「標準的な」Kabatの番号付けされた配列を有する抗体の配列の相同領域での整列によって任意の抗体について決定されることがある。本開示のCDRはKabatの番号付けの慣習に必ず対応するということを意図するものではない。
【0030】
本明細書で使用されるように、用語「結合親和性」は、それらの結合標的に対する本開示に記載されたタンパク質の親和性を指し、「Kd」値を数的に使用して発現される。2つ以上のタンパク質が、それらの結合標的に対して同等の結合親和性を有すると示されている場合、その結合標的に対するそれぞれのタンパク質の結合に関するKd値は、互いの±2倍以内である。2つ以上のタンパク質が単一の結合標的に対して同等の結合親和性を有すると示されている場合、上記の単一結合標的に対するそれぞれのタンパク質の結合に関するKd値は、互いの±2倍以内である。タンパク質が同等の結合親和性で2つ以上の標的に結合すると示されている場合、2つ以上の標的に対する上記タンパク質の結合に関するKd値は、互いの±2倍以内である。一般に、高いKd値は弱い結合に相当する。いくつかの実施形態では、「Kd」は、放射標識された抗原結合アッセイ(RIA)、または、BIAcore(商標)-2000あるいはBIAcore(商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,N.J.)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイによって測定される。ある実施形態では、「on-rate」あるいは「会合速度(rate of associationまたはassociation rate)」あるいは「kon」、および「off-rate」あるいは「解離速度(rate of dissociation)または(dissociation rate)」、または「koff」もBIAcore(商標)-2000あるいはBIAcore(商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,N.J.)を使用する表面プラズモン共鳴技術で決定される。追加の実施形態では、「Kd」、「kon」、および「koff」は、Octet(登録商標)システムズ(Pall Life Sciences)を使用して測定される。
【0031】
単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質、医薬組成物、同様に、そのような単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を作るための核酸、組み換え発現ベクター、および宿主細胞が本明細書に記載されている。さらに、疾患、疾病、および障害の予防および/または処置において、開示された単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を使用する方法も提供される。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、CD3ドメインへ、同様に、標的抗原と、ヒト血清アルブミン(HSA)に対する単一ドメイン結合抗体などの半減期延長ドメインと特異的に結合することができる。
【0032】
CD3結合ドメイン
T細胞の応答の特異性は、T細胞受容体複合体によって抗原(主要組織適合複合体、MHCの文脈で表示される)の認識によって媒介される。T細胞受容体複合体の一部として、CD3は、細胞表面に存在する、CD3γ(ガンマ)鎖、CD3δ(デルタ)鎖、および2つのCD3ε(イプシロン)鎖を含むタンパク質複合体である。T細胞受容体複合体を含むために、CD3は、CD3ζ(ゼータ)と同様に、T細胞受容体複合体のα(アルファ)とβ(ベータ)鎖と会合する。固定された抗CD3抗体によるなどしてT細胞上にCD3をクラスター形成することで、T細胞受容体の結合に似ているがそのクローンに典型的な特異性とは無関係のT細胞活性化を引き起こす。
【0033】
1つの態様において、本明細書に記載される単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、CD3に特異的に結合するドメインを含む。1つの態様において、本明細書に記載される単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、ヒトCD3に特異的に結合するドメインを含む。1つの態様において、本明細書に記載される単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、カニクイザルCD3に特異的に結合するドメインを含む。1つの態様では、本明細書に記載された単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、ヒトCD3とカニクイザルCD3とに結合するドメインを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、CD3γに特異的に結合するドメインを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、CD3δに特異的に結合するドメインを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、CD3εに特異的に結合するドメインを含む。
【0034】
別の態様では、本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む多特異性の結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態において、本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む多特異性のタンパク質は、T細胞受容体(TCR)に特異的に結合する。ある例では、本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む多特異性のタンパク質は、TCRのα鎖と結合する。ある例では、本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む多特異性のタンパク質は、TCRのβ鎖と結合する。
【0035】
ある実施形態において、本明細書に記載される単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のCD3結合ドメインは、ヒトCD3との有力なCD3結合親和性を呈するだけではなく、それぞれのカニクイザルCD3タンパク質との優れた交差反応性も示す。例によっては、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のCD3結合ドメインは、カニクイザルからのCD3と交差反応性である。ある例では、ヒトCD3(hKd)と結合するためのKdは、カニクイザルCD3(cKd)と結合するためのKdとほぼ同じである。ある例では、hKdとcKdの間の比率(hKd:cKd)は、約20:1~約1:2である。
【0036】
いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のCD3結合ドメインは、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体からのドメインを含む、CD3に結合するあらゆるドメインであり得る。例によっては、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質が最終的に使用される同じ種に由来することがCD3結合ドメインにとっては有益である。例えば、ヒトで使用するためには、抗体または抗体フラグメントの抗原結合ドメインからのヒトまたはヒト化残基を含めることが、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のCD3結合ドメインには有益なことがある。
【0037】
したがって、1つの態様では、抗原結合ドメインは、ヒト化抗体またはヒト抗体または抗体フラグメント、あるいはマウスの抗体または抗体フラグメントを含む。1つの実施形態では、ヒト化またはヒト抗CD3結合ドメインは、本明細書に記載されるヒト化またはヒト抗CD3結合ドメインの1つ以上(例えば、3つすべて)の軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)、および軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)、ならびに/あるいは、本明細書に記載されるヒト化またはヒト抗CD3結合ドメインの1つ以上(例えば、3つすべて)の重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)、および重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)、例えば、1つ以上、例えば、3つすべてのLC CDRと1つ以上、例えば、3つすべてのHC CDRを含むヒト化またはヒト抗CD3結合ドメインを含んでいる。
【0038】
いくつかの実施形態において、ヒト化またはヒト抗CD3結合ドメインは、CD3に特異的なヒト化またはヒト軽鎖可変領域を含み、CD3に特異的な軽鎖可変領域はヒト軽鎖フレームワーク領域中のヒトあるいはヒト以外の軽鎖CDRを含む。ある例では、軽鎖フレームワーク領域はλ(ラムダ)軽鎖フレームワークである。他の例では、軽鎖フレームワーク領域はκ(カッパ)軽鎖フレームワークである。
【0039】
いくつかの実施形態において、ヒト化またはヒト抗CD3結合ドメインは、CD3に特異的なヒト化またはヒト重鎖可変領域を含み、CD3に特異的な重鎖可変領域は、ヒト重鎖フレームワーク領域中のヒトまたはヒト以外の重鎖CDRを含む。
【0040】
ある例において、重鎖および/または軽鎖の相補性決定領域は、例えば、ムロモナブ-CD3(OKT3)、オテリキシズマブ(TRX)、テプリズマブ(MGA031)、ビジリズマブ(Nuvion)、SP34、TR-66、またはX35-3、VIT3、BMA030(BW264/56)、CLB-T3/3、CRIS7、YTH12.5、F111-409、CLB-T3.4.2、TR-66、WT32、SPv-T3b、11D8、XIII-141、XIII-46、XIII-87、12F6、T3/RW2-8C8、T3/RW2-4B6、OKT3D、M-T301、SMC2、F101.01、UCHT-1、およびWT-31などの既知の抗CD3抗体に由来する。
【0041】
1つの実施形態では、抗CD3結合ドメインは、本明細書で提供されるアミノ酸配列の軽鎖と重鎖を含む単鎖可変フラグメント(scFv)である。本明細書で使用されるように、「単鎖可変フラグメント」あるいは「scFv」とは、軽鎖の可変領域を含む抗体フラグメントと、重鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体フラグメントを指し、軽鎖と重鎖の可変領域は、短い柔軟なポリペプチドリンカーによって連続的に結合され、単一のポリペプチド鎖として発現可能であり、およびscFvはそれが由来する無傷の抗体の特異性を保持する。実施形態では、抗CD3結合ドメインは以下を含む:本明細書で提供される軽鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つ、あるいは3つの修飾(例えば置換)を有するが、せいぜい30、20、あるいは10の修飾(例えば置換)を有するアミノ酸配列、あるいは本明細書で提供されるアミノ酸配列に95-99%の同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域;および/または、本明細書で提供される重鎖可変領域のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つ、あるいは3つの修飾(例えば置換)を有するが、せいぜい30、20、あるいは10の修飾(例えば置換)を有するアミノ酸配列、あるいは本明細書で提供されるアミノ酸配列に95-99%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域。1つの実施形態では、ヒト化またはヒト抗CD3結合ドメインはscFvであり、本明細書に記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域は、scFvリンカーによって本明細書に記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域に結合される。scFvの軽鎖可変領域と重鎖可変領域は、例えば、以下の配向のいずれかであり得る:軽鎖可変領域-scFvリンカー-重鎖可変領域、あるいは重鎖可変領域-scFvリンカー-軽鎖可変領域。
【0042】
いくつかの例では、CD3に結合するscFvsは既知の方法に従って調製される。例えば、scFv分子は、柔軟なポリペプチドリンカーを使用して、VHとVLの領域を一緒に結合することにより、生成可能である。scFv分子は、最適化された長さおよび/またはアミノ酸組成物を備えるscFvリンカー(例えばSer-Glyリンカー)を含む。これに応じて、いくつかの実施形態では、scFvリンカーの長さは、CD3結合部位を形成するために、VHまたはVLのドメインが他の可変ドメインと分子間で結合することができるような長さである。ある実施形態において、こうしたscFvリンカーは「短い」、つまり、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11あるいは12のアミノ酸残基からなる。したがって、ある例では、scFvリンカーは約12以下のアミノ酸残基からなる。0のアミノ酸残基の場合、scFvリンカーはペプチド結合である。いくつかの実施形態において、これらのscFvリンカーは、約3から約15、例えば8、10、または15の連続的なアミノ酸残基からなる。scFvリンカーのアミノ酸組成物に関して、柔軟性を与え、可変ドメインに干渉せず、同様に、機能的なCD3結合部位を形成するために2つの可変ドメインを接合する鎖間フォールディングを許可しないペプチドが選択される。例えば、グリシンとセリンの残基を含むscFvリンカーは一般にプロテアーゼ抵抗性を与える。いくつかの実施形態において、scFv中のリンカーはグリシンとセリンの残基を含む。scFvリンカーのアミノ酸配列は、例えば、CD3結合とscFvの産生収率を改善するファージディスプレー方法によって最適化可能である。scFv中の可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインを結合するのに適切なペプチドscFvリンカーの例としては、限定されないが、(GS)(SEQ ID NO:96)、(GGS)(SEQ ID NO:97)、(GGGS)(SEQ ID NO:98)、(GGSG)(SEQ ID NO:99)、(GGSGG)(SEQ ID NO:100)、(GGGGS)(SEQ ID NO:101)、(GGGGG)(SEQ ID NO:102)、または(GGG)(SEQ ID NO:103)が挙げられ、ここで、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、あるいは10である。1つの実施形態では、scFvリンカーは、(GGGGS)(SEQ ID NO:104)、または(GGGGS)(SEQ ID NO:1)であり得る。リンカー長さの変動は活性を保持あるいは増強し、活性研究で優れた有効性をもたらすこともある。
【0043】
いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のCD3結合ドメインは、1000nM以下、500nM以下、200nM以下、100nM以下、80nM以下、50nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM以下、または0.5nM以下のKdを有するCD3発現細胞上のCD3に対する親和性を有する。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のCD3結合ドメインは、1000nM以下、500nM以下、200nM以下、100nM以下、80nM以下、50nM以下、20nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM以下、あるいは0.5nM以下のKdを有する、CD3ε、γ、あるいはδに対する親和性を有する。さらなる実施形態では、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のCD3結合ドメインはCD3に対する低い親和性(つまり、約100nM以上)を有する。
【0044】
ある実施形態では、本明細書に記載された単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、ヒトKd(hKd)を有するヒトCD3に、および、カニクイザル(cyno)のKd(cKd)を有するカニクイザルCD3に結合する。いくつかの実施形態において、hKdとcKdは、約1nM~約2nM、約3nM~約5nM、約6nM~約10nM、約11nM~約20nM、約25nM~約40nM、約40nM~約60nM、約70nM~約90nM、約100nM~約120nM、約125nM~約140nM、約145nM~約160nM、約170nM~約200nM、約210nM~約250nM、約260nM~約300nMである。
【0045】
いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のhKdとcKdは、SEQ ID NO.22で記載される通りの配列を有するCD3結合タンパク質のKdとほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のhKdとcKdは、SEQ ID NO.22で記載される通りの配列を有するCD3結合タンパク質のKdの約1.1倍~約1.5倍である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のhKdとcKdは、SEQ ID NO.22で記載される通りの配列を有するCD3結合タンパク質のKdの約1.5倍~約2倍である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のhKdとcKdは、SEQ ID NO.22で記載される通りの配列を有するCD3結合タンパク質のKdの約2.5倍~約3倍である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のhKdとcKdは、SEQ ID NO.22で記載される通りの配列を有するCD3結合タンパク質のKdの約3倍~約5倍である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のhKdとcKdは、SEQ ID NO.22で記載される通りの配列を有するCD3結合タンパク質のKdの約6倍~約15倍である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のhKdとcKdは、SEQ ID NO.22で記載される通りの配列を有するCD3結合タンパク質のKdの約15倍~約20倍である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のhKdとcKdは、SEQ ID NO.22で記載される通りの配列を有するCD3結合タンパク質のKdの約20倍~約50倍である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のhKdとcKdは、SEQ ID NO.22で記載される通りの配列を有するCD3結合タンパク質のKdの約55倍~約70倍である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のhKdとcKdは、SEQ ID NO.22で記載される通りの配列を有するCD3結合タンパク質のKdの約75倍~約100倍である。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のhKdとcKdは、SEQ ID NO.22で記載される通りの配列を有するCD3結合タンパク質のKdの約120倍~約200倍である。
【0046】
いくつかの実施形態において、hKdとcKd間の比率(hKd:cKd)は約20:1~約1:2に及ぶ。CD3に結合する親和性は、例えば、アッセイプレート上にコーティングされた;微生物細胞表面に表示された;溶液中などの;CD3に結合するという単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質自体またはそのCD3結合ドメイン自体の能力によって、決定することができる。CD3に対する本開示の単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質の結合活性またはそのCD3結合ドメインは、ビーズ、基質、細胞などに対して、リガンド(例えば、CD3)または単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質自体、あるいはそのCD3結合ドメインを固定することにより分析可能である。薬剤は、所定の温度で一定の期間インキュベートされた適切な緩衝液と結合パートナーに加えることができる。未結合材料を取り除くために洗浄した後、結合タンパク質を、例えば、SDS、高いまたは低いpHの緩衝液などで放出可能であり、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)によって分析可能である。
【0047】
いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.8、SEQ ID NO.9、SEQ ID NO.10、SEQ ID NO.11、SEQ ID NO.12、SEQ ID NO.13、SEQ ID NO.14、SEQ ID NO.15、SEQ ID NO.16、SEQ ID NO.17、SEQ ID NO.18、SEQ ID NO.19、SEQ ID NO.20、SEQ ID NO.21、SEQ ID NO.94、およびSEQ ID NO.95から選択されたアミノ酸配列を有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.8として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約3.8nMであり、cKdは約3.5nMである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.9として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約4.1nMであり、cKdは約3.4nMである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.10として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約4.3nMであり、cKdは約4.2nMである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.11として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約4.7nMであり、cKdは約4.9nMである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.12として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約6.4nMであり、cKdは約6.6nMである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.13として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約8nMであり、cKdは約6.6nMである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.14として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約20nMであり、cKdは約17nMである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.15として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約37nMであり、cKdは約30nMである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.16として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約14nMであり、cKdは約13nMである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.17として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約50nMであり、cKdは約47nMである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.18として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約16nMであり、cKdは約16nMである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.19として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約46nMであり、cKdは約43nMである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.20として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約18nMであり、cKdは約17nMである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.21として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約133nMであり、cKdは約134nMである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.94として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約117nMであり、cKdは約115nMである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.95として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdは約109nMであり、cKdは約103nMである。
【0049】
いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.8として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdとほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.9として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdとほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.10として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdとほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.11として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdとほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.12として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdとほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.13として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdとほぼ同じである。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.14として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdよりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.15として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdよりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.16として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdよりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.17として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdよりも約6倍~約15倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.18として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdよりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質はSEQ ID NO.19(2A4)として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdよりも約6倍~約15倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.20として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdよりも約3倍~約5倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.21として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdよりも約20倍~約50倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.94として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdよりも約20倍~約50倍高い。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、SEQ ID NO.95として記載されるアミノ酸配列を有し、ここで、hKdとcKdは、wt抗CD3で記載される通りの配列(SEQ ID NO.22)を有するタンパク質のCD3に対するKdよりも約20倍~約50倍高い。
【0050】
半減期延長ドメイン
ヒト血清アルブミン(HSA)(分子量~67kDa)は、血漿中の最も豊富なタンパク質であり、約50mg/ml(600μM)で存在し、ヒトでは約20日の半減期を有する。HSAは、血漿pHを維持する役目を果たし、コロイド状の血圧に貢献し、多くの代謝産物と脂肪酸の担体として機能し、および、血漿中の主要な薬物輸送タンパク質として役立つ。
【0051】
アルブミンとの非共有会合は、短命のタンパク質の消失半減期を延長する。例えば、FAbフラグメントに対するアルブミン結合ドメインの組み換え融合は、FAbフラグメントのみの投与と比較して、マウスとウサギの静脈内にそれぞれ投与されたとき、25倍と58倍のインビトロクリアランスの減少、および、26倍と37倍の半減期延長を引き起こした。別の例において、インスリンがアルブミンとの会合を促進するために脂肪酸でアシル化されるとき、ウサギまたはブタに皮下注射された時に長期的な効果が観察された。合わせて、これらの研究は、アルブミン結合と持続的な作用との間の関連性を実証するものである。
【0052】
1つの態様では、本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含み、さらに半減期延長ドメイン、例えば、血清アルブミンに特異的に結合するドメインを含む、多特異性結合タンパク質が提供される。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質の血清アルブミン結合ドメインは、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体からのドメインを含む、血清アルブミンに結合するあらゆるドメインであり得る。いくつかの実施形態において、血清アルブミン結合ドメインは、血清アルブミンに特異的な単鎖可変フラグメント(scFv)、ラクダ科由来のsdAbの重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、および可変ドメイン(VHH)などの単一ドメイン抗体、あるいはFab、Fab’、F(ab)2、およびFvフラグメントなどのHSA結合抗体の抗原結合フラグメント、1つ以上のCDRで構成されたフラグメント、単鎖抗体(例えば、単鎖Fvフラグメント(scFv))、ジスルフィド安定化(dsFv)Fvフラグメント、ヘテロ共役抗体(例えば、二重特異性抗体)、pFvフラグメント、重鎖単量体または二量体、軽鎖単量体または二量体、および1つの重鎖と1つの軽鎖からなる二量体、ペプチド、リガンド、または小分子実体である。ある実施形態では、HSA結合ドメインは単一ドメイン抗体である。他の実施形態では、血清アルブミン結合ドメインはペプチドである。さらなる実施形態では、血清アルブミン結合ドメインは小分子である。単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む多特異性結合タンパク質の血清アルブミン結合ドメインはかなり小さく、いくつかの実施形態では、せいぜい25kD、せいぜい20kD、せいぜい15kD、または、せいぜい10kDであることが企図される。ある例では、血清アルブミン結合がペプチドまたは小分子実体であれば、血清アルブミン結合は5kD以下である。
【0053】
単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む多特異性結合タンパク質の半減期延長ドメインは、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質自体の変更された薬動力学と薬物動態学をもたらす。上記のように、半減期延長ドメインは消失半減期を延長する。半減期延長ドメインはさらに、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質の組織分布、浸透、および拡散の変質を含む薬力学的な特性を変更する。いくつかの実施形態において、半減期延長ドメインは、半減期延長ドメインのないタンパク質と比較して、改善された組織(腫瘍を含む)標的化、組織分布、組織浸透、組織内での拡散、増強した有効性をもたらす。1つの実施形態では、治療方法は、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む量を減少させた多特異性結合タンパク質を有効かつ効率的に利用し、非腫瘍細胞の細胞毒性の減少などの副作用の減少を引き起こす。
【0054】
さらに、半減期延長ドメインの結合親和性は、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む特定の多特異性結合タンパク質中の特定の消失半減期を標的とするように選択可能である。したがって、いくつかの実施形態では、半減期延長ドメインは高い結合親和性を有する。他の実施形態では、半減期延長ドメインは中程度の結合親和性を有する。さらに他の実施形態では、半減期延長ドメインは低いまたはわずかな結合親和性を有する。典型的な結合親和性は、10nM以下(高い)の、10nM~100nMの間(中程度)の、および100nMを超える(低い)Kdを含む。上記のように、血清アルブミンへの結合親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)などの既知の方法によって決定される。
【0055】
標的抗原結合ドメイン
記載されたCD3と半減期延長ドメインに加えて、ある実施形態では、本明細書に記載された多特異性結合タンパク質は、標的抗原に結合するドメインをさらに含む。標的抗原は疾患、障害、または疾病に関与する、おより/または関連している。特に、標的抗原は、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫学的障害、自己免疫性疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫性反応、移植片対宿主疾患、または宿主対移植片疾患に関連する。いくつかの実施形態において、標的抗原は腫瘍細胞上で発現された腫瘍抗原である。代替的に、いくつかの実施形態では、標的抗原はウイルスまたは細菌などの病原体に関連する。
【0056】
いくつかの実施形態において、標的抗原はタンパク質、脂質、または多糖類などの細胞表面分子である。いくつかの実施形態において、標的抗原は、腫瘍細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、損傷を受けた赤血球、動脈のプラーク細胞、または繊維性の組織細胞である。
【0057】
本明細書に記載された単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む多特異性結合タンパク質のデザインは、標的抗原に対する結合ドメインが、限定されないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組み換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体からのドメインを含む任意のタイプの結合ドメインであり得るという点で、結合ドメインを標的抗原に対して柔軟なものとする。いくつかの実施形態において、標的抗原に対する結合ドメインは、単鎖可変フラグメント(scFv)、ラクダ科由来のsdAbの重鎖可変ドメイン(VH)、軽鎖可変ドメイン(VL)、および可変ドメイン(VHH)などの単一ドメイン抗体である。他の実施形態では、標的抗原に対する結合ドメインは、非Ig結合ドメイン、つまり、アンチカリン(anticalins)、アフィリン(affilins)、アフィボディ(affibody)分子、アフィマー(affimers)、アフィチン(affitins)、アルファボディ(alphabodies)、アヴィマー(avimers)、DARPins、フィノマー(fynomers)、クニッツドメインペプチドおよびモノボディなどの抗体模倣薬である。さらなる実施形態では、標的抗原に対する結合ドメインは、標的抗原に結合または会合するリガンドまたはペプチドである。またさらなる実施形態では、標的抗原に対する結合ドメインはノッチンである。またさらなる実施形態では、標的抗原に対する結合ドメインは小分子実体である。
【0058】
単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質修飾
本明細書に記載された単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、(i)アミノ酸が遺伝子コードによってコードされるものではないアミノ酸残基で置換され、(ii)成熟ポリペプチドがポリエチレングリコールなどの別の化合物で融合され、または、(iii)リーダー配列または分泌配列、あるいは、免疫原ドメインを遮断するための、および/または、タンパク質の精製のための配列などの追加のアミノ酸がタンパク質に融合される、誘導体またはアナログを包含する。
【0059】
典型的な修飾としては、限定されないが、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドあるいはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、アルギニル化などのアミノ酸のタンパク質への転移RNA媒介性の添加、およびユビキチン化が挙げられる。
【0060】
修飾は、CD3結合タンパク質が、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノまたはカルボキシル終端を含む、本明細書に記載された単鎖可変フラグメントのいかなる場所でも行われる。単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質の修飾に役立つ特定の共通したペプチド修飾は、共有結合修飾とADPリボシル化による、グルタミン酸残基のグリコシル化、脂質結合、硫酸化、ガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化、ポリペプチド中のアミノ基またはカルボキシル基の遮断、またはその両方を含む。
【0061】
単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド
いくつかの実施形態において、本開示に係る単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質、または単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む多特異性結合タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子も提供される。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチド分子はDNA構築物として提供される。他の実施形態では、ポリヌクレオチド分子はメッセンジャーRNA転写物として提供される。
【0062】
ポリヌクレオチド分子は、ペプチドリンカーによって分離されるか、または、他の実施形態ではペプチド結合によって直接結合される3つの結合ドメインをコードする遺伝子を組み合わせて、適切なプロモーター、および随意に適切な転写ターミネーターに動作可能に連結された単一の遺伝子構築物にして、および、細菌または例えば、CHO細胞などの他の適切な発現系でそれを発現するなどの既知の方法によって構築される。標的抗原結合ドメインが小分子である実施形態では、ポリヌクレオチドは、CD3結合ドメインと半減期延長ドメインをコードする遺伝子を含んでいる。半減期延長ドメインが小分子である実施形態では、ポリヌクレオチドは、CD3と標的抗原とに結合するドメインをコードする遺伝子を含んでいる。利用されるベクター系と宿主に依存して、任意の数の適切な転写、および構成的で誘導可能なプロモーターを含む翻訳要素が使用されてもよい。プロモーターはそれぞれの宿主細胞でポリヌクレオチドの発現を駆り立てるように選択される。
【0063】
いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、さらなる実施形態を表すベクター、好ましくは発現ベクターに挿入される。この組換えベクターは既知の方法によって構築可能である。特定の所望のベクターは、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルスなど)、およびコスミドを含んでいる。
【0064】
様々な発現ベクター/宿主系は、記載された単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、かつ発現するために利用されてもよい。E.coli中での発現のための発現ベクターの例は、pSKK(Le Gall et al.,J Immunol Methods.(2004)285(1):111-27)、または哺乳動物細胞、PICHIAPINK(商標)酵母発現系(Invitrogen)、BACUVANCE(商標)バキュロウィルス発現系(GenScript)中の発現用のpcDNA5(Invitrogen)である。
【0065】
したがって、本明細書に記載されているような単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、いくつかの実施形態では、上記のようなタンパク質をコードするベクターを宿主細胞へ導入し、および、タンパク質ドメインが発現し、単離することもあり、随意にさらに精製されることもある条件下で上記宿主細胞を培養することにより、生成される。
【0066】
単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質の生成
いくつかの実施形態では、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質の産生のプロセスが本明細書に開示される。いくつかの実施形態において、上記プロセスは、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質をコードする核酸配列を含むベクターで形質転換されるかトランスフェクトされた宿主を、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質の発現を可能にする条件下で培養すること、および、培養物から生成されたタンパク質を回収ならびに精製することを含む。
【0067】
追加の実施形態では、基準の結合化合物と比較して、本明細書に記載されるような単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質、および/または単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む多特異性の結合タンパク質の1つ以上の特性、例えば、親和性、安定性、耐熱性、交差反応性などを改善することを目的としたプロセスが提供される。いくつかの実施形態において、異なるドメイン、あるいは単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質または基準結合化合物のアミノ酸セグメントに各々対応する複数の単一置換ライブラリーが提供され、これは、単一置換ライブラリーの各メンバーがその対応するドメインまたはアミノ酸セグメントの単一のアミノ酸変化のみをコードするような複数の単一置換ライブラリーである。(これにより、大きなタンパク質またはタンパク結合部位の起こりうるすべての置換を、少数の小さなライブラリーで調査することが可能となる。)いくつかの実施形態において、複数のドメインは、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質または基準結合化合物のアミノ酸のコンティグ配列を形成するか網羅する。様々な単一置換ライブラリーのヌクレオチド配列は、少なくとも1つの他の単一置換ライブラリーのヌクレオチド配列と重複する。いくつかの実施形態において、すべてのメンバーが隣接するドメインをコードするそれぞれの単一置換ライブラリーのすべてのメンバーに重複するように、複数の単一置換ライブラリーは設計される。
【0068】
こうした単一置換のライブラリーから発現された結合化合物は各ライブラリー中で変異体の部分集合を得るために別々に選択され、該変異体は、基準結合化合物と少なくとも同じぐらい優れた特性を有し、かつ、結果として生じたライブラリーはサイズが減少している。(すなわち、結合化合物の選択されたセットをコードする核酸の数は、元々の単一置換ライブラリーのメンバーをコードする核酸の数よりも少ない。)こうした特性としては、限定されないが、標的化合物への親和性、熱、高いまたは低いpH、酵素分解、他のタンパク質に対する交差反応性など様々な条件に対する安定性が挙げられる。それぞれの単一置換ライブラリーからの選択された化合物は、「前候補化合物」または「前候補タンパク質」と本明細書では交換可能に呼ばれている。別々の単一置換ライブラリーからの前候補化合物をコードする核酸配列は、PCRベースの遺伝子シャッフリング技術を使用してPCRでシャッフルされることで、シャッフルされたライブラリーが生成される。
【0069】
スクリーニングプロセスの典型的なワークフローが本明細書に記載される。前候補化合物のライブラリーは単一置換ライブラリーから生成され、標的タンパク質への結合のために選択され、その後、前候補ライブラリーはシャッフルされることで候補化合物をコードする核酸のライブラリーが精製され、これはファージミド発現系などの便利な発現ベクターへとクローン化される。その後、ファージ発現候補化合物は、標的分子への結合親和性などの所望の特性を改善するために1ラウンド以上の選択を経験する。標的分子は吸着されることもあれば、さもなければウェルまたは他の反応容器の表面へ付けられることもあり、あるいは、標的分子はビオチンなどの結合部分で誘導対化されてもよく、これは、候補結合化合物でのインキュベーション後に、洗浄のために、磁気ビーズなどのビーズに結合されたストレプトアビジンなどの相補的な部分で捕えられることもある。典型的な選択レジメンでは、標的分子からの非常に低い解離速度の候補化合物だけが選択されるように、候補結合化合物は長期間の洗浄工程を経験する。こうした実施形態のための典型的な洗浄時間は少なくとも8時間であり;あるいは、他の実施形態では、少なくとも24時間であり;あるいは、他の実施形態では、少なくとも48時間であり;あるいは、他の実施形態では、少なくとも72時間である。選択後の単離されたクローンは増幅され、選択の追加サイクルにさらされるか、あるいは、例えば、配列決定によって、および、例えば、ELISA、表面プラズモン共鳴結合、バイオ層干渉法(例えば、Octet system, ForteBio, Menlo Park, CA)などにより結合親和性の比較測定を行うことによって、分析される。
【0070】
いくつかの実施形態において、プロセスは、SEQ ID NO.22のアミノ酸配列を有するタンパク質などの基準CD3結合タンパク質と比較して、改善された熱安定性、結合標的の選択されたセットに対する改善された交差反応性を有する、1つ以上の単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質、および/または単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を含む多特異性の結合タンパク質を識別するために実施される。単一置換ライブラリーは、フレームワーク領域とCDR中の両方コドンを含む基準CD3結合タンパク質のVHとVLの領域中のコドンを変えることにより調製され;別の実施形態では、コドンが変えられる位置は、基準CD3結合タンパク質の重鎖と軽鎖のCDR、あるいは単独でCDR1、単独でCDR2、単独でCDR3、またはそのついなどのこうしたCDRのサブセットを含む。別の実施形態で、コドンが変えられる位置はもっぱらフレームワーク領域で生じる。いくつかの実施形態において、ライブラリーは10~250までの範囲で番号付けられるVHとVLの両方のフレームワーク領域だけの基準CD3結合タンパク質から単一のコドン変化のみを含む。別の実施形態では、コドンが変えられる位置は、基準CD3結合タンパク質の重鎖と軽鎖のCDR3、あるいはこうしたCDR3のサブセットを含む。別の実施形態では、VHとVLのコード領域のコドンが変えられる位置の数は、最大で100の位置がフレームワーク領域にあるように、10~250までの範囲にある。単一置換ライブラリーの調製後に、上に概説されるように、以下の工程が行われる:(a)前候補タンパク質として個々の単一置換ライブラリーの各メンバーを別々に発現する工程;(b)元々の結合標的[例えば、所望の交差反応標的]とは異なる結合パートナーに結合する前候補タンパク質をコードする個々の単一置換ライブラリーのメンバーを選択する工程;(c)シャッフルされたコンビナトリアルライブラリーを生成するためにPCRで選択されたライブラリーのメンバーをシャッフルする工程;(d)候補CD3結合タンパク質としてシャッフルされたライブラリーのメンバーを発現する工程;および、(e)元々の結合パートナーと結合する候補CD3結合タンパク質についてシャッフルされたライブラリーのメンバーを1回以上選択する工程、および、(f)所望の交差反応標的と結合するためにさらなる候補タンパク質を選択する工程であって、それによって、元々のリガンドに対する親和性を失うことなく基準CD3結合タンパク質に対する1つ以上の物質の交差反応性を強化した核酸でコードされたCD3結合タンパク質を提供する工程。追加の実施形態では、方法は、工程(f)を以下の工程:望ましくない交差反応性の化合物に結合する候補単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のサブセットから、候補結合化合物を1回以上枯渇させる工程に置き換えることにより、選択された交差反応性物質または化合物またはエピトープに対する反応性が減少した単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を得るために実施されることがある。
【0071】
医薬組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に記載された単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクター、または、このベクターによって形質転換された宿主細胞、および少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物も提供される。用語「薬学的に許容可能な担体」としては、限定されないが、成分の生物学的活性の有効性に干渉せず、かつ、投与される患者にとって毒性ではない任意の担体が挙げられる。適切な医薬担体の例は当該技術分野で周知であり、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルジョンなどのエマルジョン、様々なタイプの湿潤剤、無菌液などを含んでいる。こうした担体は、従来の方法によって製剤することができ、適切な投与量で被験体に投与可能である。好ましくは、組成物は無菌である。これらの組成物は、保存剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントをさらに含むことがある。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤の包含によって保証され得る。
【0072】
医薬組成物のいくつかの実施形態において、本明細書に記載された単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、ナノ粒子でカプセル化される。いくつかの実施形態において、ナノ粒子は、フラーレン、液晶、リポソーム、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、デンドリマー、またはナノロッドである。医薬組成物の他の実施形態では、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質はリポソームに結合する。いくつかの例では、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質はリポソームの表面へ共役する。いくつかの例では、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、リポソームのシェル内にカプセル化される。いくつかの例では、リポソームはカチオン性リポソームである。
【0073】
本明細書に記載された単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、薬物としての使用のために企図されている。投与は様々な方法によって、例えば、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、局所的、または皮内の投与によって達成される。いくつかの実施形態において、投与経路は、治療の種類と、医薬組成物に含まれる化合物の種類に依存する。投与レジメンは主治医と他の臨床因子によって決定される。任意の1人の患者のための投与量は、患者の背格好、体表面積、年齢、性別、投与される特定の化合物、投与時間と投与経路、治療の種類、健康状態、および同時に投与されている他の医薬品を含む多くの因子に依存する。「有効量」は、こうした病状の減少または緩解をもたらす、疾患の経過と重症度に影響するのに十分な有効成分の量を指し、既知の方法を使用して決定されることもある。
【0074】
処置の方法
さらに、いくつかの実施形態では、本明細書に記載された単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質の投与を含む、個体の免疫系を刺激するための方法と使用が本明細書で提供される。いくつかの例では、本明細書に記載された単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質の投与は、標的抗原を発現する細胞に対する細胞毒性を誘発および/または保持する。いくつかの例では、細胞は癌細胞、ウイルス感染細胞、細菌感染細胞、自己反応性のTまたはB細胞、損傷を受けた赤血球、動脈プラーク、あるいは繊維症の組織である。
【0075】
さらに、本明細書に記載された単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質を個体に投与することを含む、標的抗原に関連する疾患、障害、または疾病の処置のための方法と使用も本明細書で提供される。標的抗原に関連する疾患、障害、または疾病としては、限定されないが、ウイルス感染、細菌感染、自己免疫性疾患、移植拒絶反応、アテローム性動脈硬化症、または線維症が挙げられる。他の実施形態では、標的抗原に関連する疾患、障害、または疾病は、増殖性疾患、腫瘍性疾患、炎症性疾患、免疫学的障害、自己免疫性疾患、感染症、ウイルス性疾患、アレルギー反応、寄生虫性反応、移植片対宿主疾患、または宿主対移植片疾患である。1つの実施形態では、標的抗原に関連する疾患、障害、または疾病は癌である。1つの例では、癌は血液の癌である。別の例では、癌は固形腫瘍癌である。
【0076】
本明細書で使用されるように、いくつかの実施形態では、「処置」あるいは「処置すること」あるいは「処置された」とは、望ましくない生理的な疾病、障害、または疾患を遅らせる(減らす)こと、あるいは、有益なまたは望ましい臨床結果を得ることを目的とする治療的処置を指す。本明細書に記載される目的のために、有益な、または望ましい臨床結果としては、限定されないが、症状の緩和;疾病、障害、あるいは疾患の程度の減少;疾病、障害、あるいは疾患の状態の安定化(つまり、悪化しないこと);疾病、障害、あるいは疾患の発症を遅らせること、または進行を遅らせること;疾病、障害、あるいは疾患状態の改善;および、検出可能であれ検出不可能であれ、または疾病、障害、あるいは疾患の亢進であれ改善であれ、緩解(部分的でも全体でも)。処置は過剰なレベルの副作用のない臨床的に有意な反応を誘発することを含む。処置はさらに、処置を受けない場合の予想される生存時間と比較して、生存時間を延ばすことを含む。他の実施形態では、「処置」あるいは「処置すること」あるいは「処置された」とは、予防的な処置を指し、その目的は、例えば、疾患の素因のある人(例えば、乳癌などの疾患のための遺伝子マーカーをつけた個体)など、望ましくない生理的な疾病、障害、あるいは疾患の発症を遅らせるか、あるいはその重症度を低下させることである。
【0077】
本明細書に記載された方法のいくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、特定の疾患、障害、または疾病の処置のための薬剤と組み合わせて投与される。薬剤としては、限定されないが、抗体、小分子(例えば、化学療法剤)、ホルモン(ステロイド、ペプチドなど)、放射線療法(γ線、X線、および/または、放射性同位体、マイクロ波、UV放射などの指示された送達)、遺伝子治療(例えば、アンチセンス、レトロウイルス治療など)、および他の免疫療法に関する治療が挙げられる。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は、下痢止め薬、制吐剤、鎮痛剤、オピオイド、および/または、非ステロイド性抗炎症薬と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、単鎖可変フラグメントCD3結合タンパク質は手術の前、最中、後に投与される。
【実施例
【0078】
実施例1:ヒトCD3εへの親和性の異なる抗CD3 scFv変異体の同定親の抗CD3εファージの特徴づけ
【0079】
親の抗CD3εはビオチンCD3εに対して良好な結合を示し、ビオチン-HSAに対して低い結合を示した(図1)。
【0080】
抗CD3ε scFvファージライブラリー
単一置換ライブラリーは、重鎖CDR1、重鎖CDR2、重鎖CDR3、軽鎖CDR1、軽鎖CDR2、および軽鎖CDR3のドメインに提供された。各ドメイン中で変動したアミノ酸残基は、図2の強調された領域で例証されている。残基は、NNN突然変異誘発を介して一度に一つずつ変化した。
【0081】
クローンの選択と結合親和性の決定
単一置換ライブラリーをビオチン化したhuCD3εに結合させ、洗浄し、溶出させ、数を数えた。ビオチン化されたカニクイザルCD3は、ラウンド1の選択標的として使用され、2つの独立したライブラリー(~2x選択)からのコンビナトリアルファージ結合後に4時間洗浄された。ビオチン化されたhu-CD3は、ラウンド2の選択標的として使用され、両方のライブラリー(<2x選択)の結合後に3時間洗浄した。第2ラウンドの選択からのPCRed挿入物は、pcDNA3.4 His6発現ベクター(SEQ ID NO:105として開示された「His6」)へサブクローン化された。180のクローンが選ばれ、DNAが精製され、配列決定され、Expi293へトランスフェクトされた。ヒトCD3εに対する様々な親和性を有する16のクローンのパネルが、より正確なKd決定のために選択された(図3)。
【0082】
実施例2:細胞毒性アッセイ
実施例1で同定された抗CD3 scFv変異体を含む、CD20とCD3を対象とする二重特異性抗体は、CD20標的細胞へのT細胞依存性の細胞毒性の媒介でインビトロにおいて評価される。
【0083】
蛍光標識されたCD20+REC-1細胞(マントル細胞リンパ腫細胞株、ATCC CRL-3004)は、実施例1で同定された抗CD3 scFv変異体を含むCD20-CD3二重特異性抗体の存在下でエフェクター細胞として無作為のドナーまたはCB15 T細胞(標準化されたT細胞株)の単離したPBMCでインキュベートされる。加湿したインキュベータ中での37°Cで4時間のインキュベーション後、標的細胞からの蛍光染料の上清への放出は分光蛍光計で判定される。実施例1で同定された抗CD3 scFv変異体を含むCD20-CD3二重特異性抗体なしでインキュベートされた標的細胞と、インキュベーションの最後にサポニンを添加することで完全に溶解した標的細胞はそれぞれ、陰性対照と陽性対照として役立つ。
【0084】
測定された残りの生存している標的細胞に基づいて、特定細胞の溶解の割合は以下の式によって計算される:[1-(生きている標的(サンプル)の数)/生きている標的の数(自発的)]×100%。S字結腸の用量-反応曲線とEC50値は、GraphPad Softwareを使用して、非線形回帰/4パラメータロジスティックスフィット(4-parameter logistic fit)によって計算される。所定の変異体濃度について得られた溶解値は、Prismソフトウェアを使用して、4パラメータロジスティックフィット(4-parameter logistic fit)分析によってS字結腸の用量-反応曲線を計算するために使用される。
【0085】
実施例3:ヒトCD3εへの親和性の異なる抗CD3 scFv変異体の熱安定性
タンパク質の疎水的曝露の温度(T)は、ピーク染料蛍光の変曲点の導関数に相当し、タンパク質安定性の尺度である融解温度(T)と相関することが知られている。この研究の目的はいくつかの抗ヒトCD3εscFv変異体のTを評価することであった。
【0086】
タンパク質産生
抗ヒトCD3εscFv結合ドメインの配列を、リーダー配列が前にあり、かつ、6xヒスチジンタグ(SEQ ID NO:105)が後ろにある、pcDNA3.4(Invitrogen)にクローン化した。Expi293F細胞(Life Technologies A14527)は、Expi 293培地中の0.2~8×1e6細胞/mL間でOptimum Growth Flasks(Thomson)の懸濁液中で維持された。精製されたプラスミドDNAは、Expi293発現系キット(Life Technologies, A14635)プロトコルに合わせてExpi293F細胞へトランスフェクトされ、トランスフェクション後4-6日間、維持される。調整培地は、親和性と脱塩クロマトグラフィーによって部分的に精製された。抗ヒトCD3εscFvタンパク質はAmicon Ultra遠心濾過ユニット(EMD Millipore)で濃縮され、Superdex 200サイズ排除培地(GE Healthcare)に適用され、賦形剤を含む中性の緩衝液中で分解させた。画分貯留と最終的な純度は、SDS-PAGEと分析的なSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)によって評価された。精製されたタンパク質溶液の吸光度は、SpectraMax M2(Molecular Devices)を使用して280nmで決定され、UV透過性の96ウェルプレート(Corning 3635)とその濃度はモル吸光係数から計算された。
【0087】
示差走査型蛍光定量法
精製された抗ヒトCD3εscFvタンパク質は、賦形剤を含む中性の緩衝液中の0.15%のDMSO終濃度中で5xのSYPROのオレンジ色染料(Life Technologies S6651)とともに、0.2~0.25mg/mLの範囲の濃度に、MicroAmp EnduraPlate光学マイクロプレートと接着剤フィルム(Applied Biosystems 4483485 and 4311971)へと希釈化された。希釈されたタンパク質と染料混合物を含むプレートは、ABI 7500 Fast リアルタイムPCR機器(Applied Biosytems)に充填され、25°C~95°Cの複数工程の温度勾配にさらされた。温度勾配は各1つの摂氏度工程における2分間の保持で構成され、このとき500nmでの励起を用い、放射をROXフィルターで集める。摂氏度のT図4においていくつかの精製された抗ヒトCD3εscFvタンパク質変異体について提示される。
【0088】
【表1-1】
【0089】
【表1-2】
【0090】
【表1-3】
【0091】
【表1-4】
【0092】
【表1-5】
【0093】
【表1-6】
図1
図2
図3
図4
【配列表】
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