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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】機械式脚用水栓
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/042 20060101AFI20220318BHJP
   F16K 31/60 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
E03C1/042 C
F16K31/60 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2017201741
(22)【出願日】2017-10-18
(65)【公開番号】P2019073934
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】517365072
【氏名又は名称】株式会社フジ商設備サービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】特許業務法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】江藤 充彦
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3155514(JP,U)
【文献】実公昭46-030549(JP,Y1)
【文献】特表2002-541361(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0060095(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00- 1/10
F16K 31/44-31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水口と、
吐水口と、
前記給水口と前記吐水口とを連通する主水路と、
前記主水路を開閉する主弁と、
前記主弁の開閉栓操作を行う操作レバーと、を具備し、
前記操作レバーの上方部が前記主弁に接続され、下方部が前記吐水口より下方に配置され、
前記主弁が本体部と軸部により構成されており、
前記本体部が、前記主水路を内部に備え、
前記軸部が、前記本体部内に嵌合し、
前記本体部と前記軸部との回転及び/又は上下位置の調整により、前記主水路を連通又は非連通状態に変更可能であり、
前記操作レバーが、
所定の長さを有し、略鉛直に配置される首部と、
所定の長さを有し、略水平に配置される前記上方部と、
面を有する前記下方部と、から構成され、
前記上方部の一方の端部が、前記首部の上方に接続され、
前記下方部が、前記面を前記上方部の長さ方向に対して略平行に配置しつつ前記首部の下方に接続され、
前記操作レバーが、
所定の長さを有し、略水平に配置される補助部を具備し、
前記上方部と略平行かつ鉛直方向に所定の離間距離を設けて、前記補助部の一方の端部が前記首部に接続され、
接続部材により、前記軸部と前記上方部と前記補助部とが鉛直に接続されること、
を特徴とする機械式脚用水栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い衛生管理状態を所望される、調理場等に最適化した水栓に関し、使用者が脚を用いて出水及び止水に係る操作を実行することができる械式脚用水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キッチン、洗面所等に設置されて上水道の出水及び止水に係る操作を行うための水栓は、熱湯や水等が通過する際の水圧やウォーターハンマー現象による破損を防止するため一般には金属から構成され、さらに錆や腐蝕を防止するため金属表面にメッキ等を施したものが使用されている(例えば、特許文献1特開2000-226869号参照)。
【0003】
また、当該水栓の構造は、概ね上水の川上側の配管が接続された給水口から吐水口に連通する主水路と、当該主水路を開閉する弁と、当該弁の操作を行う操作ハンドルと、から構成されており、使用者は手を用いて操作ハンドルを動作させ、弁を操作することによって吐水口から出水又は止水を行っていた。
【0004】
更に、大量の食品を加工する現場等では、手が食材以外に触れてしまうと雑菌が付着してしまうため、上記のように手を用いて操作を行う操作ハンドルを備えた水栓は敬遠される。このため、電気式のフットペダルスイッチを足先で踏むことにより出水又は止水操作を実行可能な電気式水栓が存在する(例えば、特許文献2特開2004-28259号参照)。
【0005】
また、上記電気式水栓はイニシャルコスト及びメンテナンスコストから導入障壁が高くなるため、より容易に導入可能な機械式の脚操作水栓も一部で提案されている(例えば、特許文献3特開2001-295337号参照)。当該発明は、フットペダルに接続したワイヤの先端に球状部品を固定し、当該フットペダルの操作によって押し引き操作可能な球状部品を主水路内部から吐水口に当接させて構成されている。使用者の人力がフットペダル及びワイヤを通じて球状部品を動作させ、吐水口からの出水及び止水操作を実行するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-226869号公報
【文献】特開2004-28259号公報
【文献】特開2001-295337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の水栓は、上述のとおり手を用いて出水及び止水操作を行うものが主流であり、一部に足を用いて操作を行うものが提供されているが、高コストとなる電気式や、機械式であっても主水路の開閉構造が単純で出水量を任意にコントロールできるものではなかった。特に大量の食品加工を行う調理現場では、工程や状況に応じて水の出水量コントロールが非常に重要視されるが、従来の水栓ではこれに対応することができなかった。
【0008】
従来の水栓、特に既に提供されている足を用いて出水及び止水操作を行う機械式水栓の構造に着目すると、球状部品による吐水口の閉栓状態を変化させるものであって、使用者が容易に出水量をコントロールすることができないことは明らかであって、未だ改善の余地があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みて創作されたものであり、使用者が脚を用いて出水又は止水操作を行え、出水量を容易かつ確実にコントロールすることができる安価な機械式脚用水栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決すべく、本発明は、
給水口と、
吐水口と、
前記給水口と前記吐水口とを連通する主水路と、
前記主水路を開閉する主弁と、
前記主弁の開閉栓操作を行う操作レバーと、を具備し、
前記操作レバーの上方部が前記主弁に接続され、下方部が前記吐水口より下方に配置されること、
を特徴とする機械式脚用水栓を提供する。
【0011】
このような構成を有する本発明の機械式脚用水栓では、給水口から吐水口に連通する主水路を開閉可能な主弁が配設され、当該主弁に接続された操作レバーの下方部が吐水口より下方に配置されるため、使用者は脚を用いて当該操作レバーの操作を実行することができる。
【0012】
また、本発明の機械式脚用水栓については、
前記主弁が本体部と軸部により構成されており、
前記本体部が、前記主水路を内部に備え、
前記軸部が、前記本体部内に嵌合し、
前記本体部と前記軸部との回転及び/又は上下位置の調整により、前記主水路を連通又は非連通状態に変更可能であることが望ましい。
【0013】
また、本発明の機械式脚用水栓については、
前記本体部は、内部に底面側に開口された前記主水路を有し、天面から前記主水路に連通する第一通水孔を具備し、
前記本体部の前記主水路内に前記軸部が嵌合され、
前記本体部と前記軸部とを回転調整することにより、前記第一通水孔と前記第二通水孔とを連通又は非連通状態に変更可能であることが望ましい。
【0014】
このような構成を有する本発明の機械式脚用水栓では、主水路を開閉する主弁が本体部と軸部とから構成され、当該本体部の内部で軸部が回転及び/又は上下位置調整可能に嵌合されている。また、本体部は天面から軸部を嵌合させる主水路に連通した第一通水孔を具備し、軸部は天面から底面に連通した第二通水孔を具備しているため、当該本体部と軸部との嵌合状態を回転調整することにより、第一通水孔と第二通水孔とが連通し、給水口から侵入した水を出水口に通水することができる。また、通水状態においては当該本体部と軸部との嵌合状態を回転調整することにより、第一通水孔と第二通水孔とが非連通となり、給水口から侵入した水を堰き止めることができる。
【0015】
また、本発明の機械式脚用水栓については、
前記第一通水孔と前記第二通水孔とが連通状態となる開口率が、前記本体部と前記軸部との螺子嵌合を回転調整することにより、変更可能であることが望ましい。
前記開口率が、多段階に変更可能であることが望ましい。
【0016】
このような構成を有する本発明の機械式脚用水栓では、主弁を構成する本体部と軸部との嵌合が螺子嵌合であり、当該螺子嵌合を調整することにより、第一通水孔と第二通水孔とを連通状態とした際の開口率を任意に変更することができる。また、例えば本体部と軸部とにおける回転方向の接触部に等間隔の低いリブ等を互いに設け、所定の応力を加えることで双方が段階的に回転するよう構成することにより、上記開口率の調整時にクリック感等の手応えを使用者に提供し、出水量の調整をより確実かつ容易に行うことができる。
【0017】
また、本発明の機械式脚用水栓については、
前記操作レバーの前記上方部が前記軸部に直接又は間接に接続され、
前記操作レバーの前記下方部を操作することにより前記軸部が水平方向に回転し、前記本体部と前記軸部とを回転調整可能であることが望ましい。
【0018】
このような構成を有する本発明の機械式脚用水栓では、主弁の軸部に直接又は間接に操作レバーの上方部を接続することで、当該操作レバーの下方部を押圧又は回転等することで、軸部が水平方向に回転し、本体部と軸部との螺子嵌合を回転調整させることができる。
【0019】
また、本発明の機械式脚用水栓については、
前記操作レバーが、
所定の長さを有し、略鉛直に配置される首部と、
所定の長さを有し、略水平に配置される前記上方部と、
面を有する前記下方部と、から構成され、
前記上方部の一方の端部が、前記首部の上方に接続され、
前記下方部が、前記面を前記上方部の長さ方向に対して略平行に配置しつつ前記首部の下方に接続されることが望ましい。
【0020】
また、本発明の機械式脚用水栓については、
前記操作レバーが、
所定の長さを有し、略水平に配置される補助部を具備し、
前記上方部と略平行かつ鉛直方向に所定の離間距離を設けて、前記補助部の一方の端部が前記首部に接続され、
接続部材により、前記軸部と前記上方部と前記補助部とが鉛直に接続されることが望ましい。
【0021】
このような構成を有する本発明の機械式脚用水栓では、操作レバーが、略鉛直に配設される首部と、当該首部の上方に一方の端部を接続し他方の端部を首部に対して略垂直に張り出させて略片持ち梁の状態となる上方部と、当該上方部と略平行かつ鉛直方向に所定の離間距離を設けて一方の端部が前記首部に接続され他方の端部を首部に対して略垂直に張り出させて略片持ち梁の状態となる補助部と、所定の面積の面を有し上方部と略平行な状態で首部の下方に接続された下方部とから構成され、接続部材等を用いて軸部と上方部の他方の端部と補助部の他方の端部とを鉛直に接続することで、操作レバーの首部を軸部の中心を軸に回動させて、出水量を用意にコントロールすることができる。
【0022】
また、本発明の機械式脚用水栓については、更に
前記本体部と前記軸部との回転調整範囲が60度~150度であることが望ましい。
【0023】
このような構成を有する本発明の機械式脚用水栓では、操作レバーの回転調整範囲を60度~150度とすることで、使用者は脚を用いて容易に操作レバーを操作し、出水及び止水に係る開閉栓を容易かつ確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、使用者が脚を用いて出水又は止水操作を行え、出水量を容易かつ確実にコントロール可能な安価な機械式脚用水栓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態における機械式脚用水栓1の概要を説明する概要図である。
図2】筐体3の構造示す図であって、図2(a)は、筐体3の正面図であり、図2(b)は、筐体3を右側面視した断面図であり、図2(c)は、筐体3の背面図である。
図3図2(a)に示す矢視における筐体3の断面図である。
図4】キャップ11の構造を示す図であって、図4(a)は、キャップ11の一部を断面視した側面図であり、図4(b)は、キャップ11の平面図である。
図5】操作レバー5の構造を示す図であって、図5(a)は、操作レバー5の右側面図であり、図5(b)は、操作レバー5の正面図である。
図6】上方部5B及び補助部5Cの形状を示す図であって、図6(a)は、図5(a)に示す矢視Bの断面図であり、図6(b)は、図5(a)に示す矢視Cの断面図である。
図7】本実施形態における機械式脚用水栓1の構造を示す断面図である。
図8】開閉栓操作における操作レバー5の回動範囲を示す断面図である。
図9】主弁7の構造を示す図であって、図9(a)は、主弁7の側面図であり、図9(b)は、主弁7の一部を断面視した部分断面図であり、図9(c)は、主弁7の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1~9を参照しながら、本発明の機械式脚用水栓1における代表的な実施形態を詳細に説明する。但し、本発明は図示されるものに限られるものではなく、各図面は本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて比や数を誇張又は簡略化して表している場合もある。更に、以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略することもある。
【0027】
1.機械式脚用水栓1の概要
図1を用いて、本実施形態の機械式脚用水栓1の概要について説明する。図1は、本実施形態における機械式脚用水栓1の概要を説明する概要図である。図1に示すとおり、本実施形態における機械式脚用水栓1は、上水道を導水するフレキシブル管等に接続されて開栓又は閉栓操作を行う水栓であって、高い衛生状態の維持を求められる調理現場等において、手で直接触れることなく脚により当該開栓又は閉栓操作を実行可能とするものである。
【0028】
なお、説明の便宜上、図面上の座標軸を次のように定める。つまり、Z軸の正方向を略鉛直上向きとし、X軸方向を、Z軸に直交するとともに操作レバー5が概ね可動する方向(厳密には矢印Aで示す方向)とする。Y軸方向をX軸とZ軸とに直交する方向とする。したがって、以下の説明において「上」乃至は「上方」とはZ軸の正方向を指し、「下」乃至は「下方」とはZ軸の負方向を指す。
【0029】
2.機械式脚用水栓1の構造
<部品構成>
また、図1に示すとおり、本実施形態における機械式脚用水栓1は、概ね主水路51を形成する筐体3と、開栓又は閉栓操作を行うための操作レバー5と、筐体3内部に配設されて、主水路51の開閉を行う主弁7と、当該主弁7と操作レバー5とを接続する接続部材9と、筐体3の下方に接続されるキャップ11と、から構成されている。
【0030】
<筐体3の構造>
次に、図2(a)(b)(c)を用いて筐体3の構造について詳細に説明する。図2(a)(b)(c)は、筐体3の構造示す図であって、図2(a)は、筐体3の正面図であり、図2(b)は、筐体3を図1に示す矢印Xの反対方向からみた(右側面視した)断面図であり、図2(c)は、筐体3の背面図である。図2(a)(b)(c)に示すとおり、筐体3は内部に中空層13を備えた略円筒状の部品であって、例えばステンレス等の耐蝕性を備えた金属材料や樹脂材料を用いて形成されることが望ましい。
【0031】
本実施形態の機械式脚用水栓1に用いる筐体3は、内部に中空層13を備えて底面が開口され、天面(上方)に給水口53を備え、更に、給水口53よりも下方において側面に吐水口55を備えている。図2(b)に示すとおり、給水口53及び吐水口55は、筐体3外部と内部の中空層13とを連通しており、双方は中空層13を介して内部で連通している。吐出口55は筐体3の側面において上方に位置している。
【0032】
なお、給水口53及び吐水口55は、接続対象となるフレキシブル管等との嵌合のため、筐体3から外部に突起したフレキ管接続部15を有しているが、このフレキ管接続部15は、筐体3と一体的に形成されてもよく、別途用意した鋼管等を接続して形成してもよい。
【0033】
また、筐体3は、側面において下方に外部と内部の中空層13とを連通するスリット17が設けられており、後述する操作レバー5を中空層13内に接続するために配置されている。スリット17について、より具体的には、所定の長さで形成された略水平(XY平面)方向の長孔であって、幅は後述する操作レバー5が備える上方部5Bの厚さ寸法より大きいことが望ましい。
【0034】
図3図2(a)の矢視における筐体3の断面図を示す。図3に示すとおりスリット17は筐体3の正面側に配置され、前後に通る中心線から、左側角度T1が20度~70度、より好ましくは40度~55度の範囲に形成することが望ましい。また、右側角度T2を60度~110度、より好ましくは80度~95度とすることが望ましい。
【0035】
スリット17を当該角度範囲で設けることにより、後述する操作レバー5の操作時の回動範囲が限定され、使用者が本実施形態における機械式脚用水栓1の開閉栓操作を行う際、操作レバー5における閉栓時の配置位置は最右側となり、筐体3の中心位置から前方に対して操作レバー5が最も広角に配置され、筐体3の前方に対する操作レバー5の突出量が小さくなる。
【0036】
上記スリット17及び操作レバー5に配置により、使用者が本実施形態における機械式脚用水栓1の前方近距離を移動等しても、操作レバー5に干渉しにくく、誤操作を好適に抑制することができる。また、開栓時には操作レバー5が筐体3前方に多く突出するため、脚を用いた出水量のコントロールがより容易となり、操作性の向上にも寄与している。
【0037】
図2(a)及び(c)に示すとおり、筐体3の正面及び背面には、例えばシンクを構成する鋼材部品等における被固定部21に対して本実施形態における機械式脚用水栓1の固定を行うための平面部19が備わっている。平面部19は、筐体3の側面に対して例えばフライス盤等の加工機械を用いて形成したものであって、筐体3及び被固定部21のサイズに応じて面積及び位置を決定することが望ましい。
【0038】
また、上記平面部19には本実施形態の機械式脚用水栓1と被固定部21との固定に用いる固定ボルト23を挿通するためのボルト用孔25が備わっている。本実施形態では、ボルト用孔25を4つ設け、筐体3の正面側に配設した平面部19から背面側に配設した平面部19に貫通している。
【0039】
上述したとおり、筐体3は略円筒状で内部に中空層13を備え、底面が開口して中空層13が当該底面を介して外部と連通している。当該底面の開口から後述する主弁7が中空層13内に挿入配設され、更にこの底面の開口には後述するキャップ11が固定される。このため、中空層13の下方端部近傍には、キャップ11を固定するためのキャップ固定用タップ27が設けられている。
【0040】
<キャップ11の構造>
次に、図4(a)及び(b)を用いてキャップ11の構造を詳細に説明する。図4(a)及び(b)は、キャップ11の構造を示す図であって、図4(a)は、キャップ11の一部を断面視した側面図であり、図4(b)は、キャップ11の平面図である。図4(a)及び(b)に示すとおり、キャップ11は略円環状の部品であって、より具体的には中心孔29を備えた略円環状の鍔部11Aと、円筒状の立ち上がり部11Bと、から構成されている。
【0041】
上記鍔部11Aと立ち上がり部11Bとは、双方を同軸にしつつ鍔部11Aの面上に立ち上がり部11Bを立設接続している。なお、鍔部11Aの外周には、フラット面31を対向して設け、筐体3との螺子嵌合時に工具等で把持容易にしている。また、立ち上がり部11Bの側面には、上述した筐体3が備えるキャップ固定用タップ27に嵌合するキャップ固定用螺子山33が備えられている。
【0042】
<操作レバー5の構造>
続いて、図5(a)及び(b)と、図6(a)及び(b)を用いて操作レバー5の構造を詳細に説明する。図5(a)及び(b)は、操作レバー5の構造を示す図であって、図5(a)は、操作レバー5の右側面図であり、図5(b)は、操作レバー5の正面図である。また、図6(a)及び(b)は、上方部5B及び補助部5Cの形状を示す図であって、図6(a)は、図5(a)に示す矢視Bの断面図であり、図6(b)は、図5(a)に示す矢視Cの断面図である。
【0043】
図5(a)及び(b)に示すとおり、操作レバー5は、概ね鉛直方向に延びるように配設されて各部を繋げる首部5Aと、首部5Aの最上部に配設される上方部5Bと、上方部5Bの下に配設される補助部5Cと、首部5Aの最下部に配設される下方部5Dと、から構成されている。本実施形態では、一枚の鋼板を用い、複数個所を折り曲げて一体的に構成しているが、例えば各部を独立して構成し、溶接等によって接続したものであってもよい。
【0044】
首部5Aは上述のとおり各部を繋げる部位であるが、操作レバー5の縦方向の略全長を決定する部位でもある。首部5Aの高さ寸法H1は、80mm~1500mmの範囲、より好ましくは90mm~1000mmの範囲とすることが望ましい。首部5Aの高さ寸法H1を当該範囲とすることで、例えばエプロン等を装着した使用者が膝下のみを用いて操作を行うことができるように、操作レバー5を長尺に設定することができる。また、本機械式脚用水栓1を低い位置に設定する場合でも、操作レバー5を短尺に設定し、足先で操作可能とすることができる。なお、図1に示すように、この首部5Aの長さ方向に略垂直な方向(矢印Aの方向、即ち、XY平面に平行な方向)に回動させることにより、操作レバー5を操作する。
【0045】
図6(a)に示すとおり、上方部5Bは所定の形状を有した板状で、一方の端部を首部5Aの上方の端部に接続し、他方の端部が首部5Aに対して略垂直に張り出して略片持ち梁の状態となっている。また、上記他方の端部近傍には、主弁5Aに接続されるギアボルト41と嵌合させるための嵌合孔35が設けられている。なお、本実施形態では、嵌合孔35近傍の面積を広くし、開閉栓操作時の負荷に対する剛性を担保している。
【0046】
図6(b)に示すとおり、補助部5Cは所定の形状を有した板状で、一方の端部を首部5Aの上方かつ上方部5Bの下方に接続し、他方の端部が首部5Aに対して略垂直に張り出して略片持ち梁の状態となっている。このため、補助部5Cは上方部5Bと略同様の形状及び配置となっており、更に上方部5B及び補助部5C双方の長手方向が略平行となるよう配置されている。
【0047】
また、上記他方の端部近傍には、主弁7に接続される接続部材9を挿通するための挿通穴37が設けられており、この挿通穴37は上方部5Bが具備する嵌合孔35と略同軸に配置されている。なお、本実施形態では、挿通孔37近傍の面積を広くし、開閉栓操作時の負荷に対する剛性を担保している。
【0048】
下方部5Dは、首部5Aの最下部に設けられた所定の面積を備えた部位であって、開閉栓の操作時に使用者が下方部5Dを押圧することにより、操作をより容易に行うことができる。本実施形態では、首部7Aの最下部の面積を広げて形成されている。下方部5Dの面積は、100mm2~10000mm2の範囲、より好ましくは200mm2~5000mm2の範囲とすることが望ましい。下方部5D面積を当該範囲とすることで、使用者が操作レバー5を脚にて確実かつ容易に操作することができる。
【0049】
<主弁7の構造>
続いて、図9(a)(b)(c)を用いて主弁7の構造について詳細に説明する。図9(a)(b)(c)は、主弁7の構造を示す図であって、図9(a)は、主弁7の側面図であり、図9(b)は、主弁7の一部を断面視した部分断面図であり、図9(c)は、主弁7の上面図である。図9(a)(b)(c)に示すとおり、本実施形態に用いる主弁7は、概ね本体部7Aと、本体部7A内部に嵌合される軸部7Bと、から構成されている。なお、本体部5Aの表面には、筐体3と嵌合した際に水の移動を意図して防止するゴムパッキン39が備わっている。
【0050】
本体部7Aは、天面が閉鎖状態の略円筒状部品であって、内部に中空の主水路51を有している。また天面には水を給水口53から主水路51内に通水させるための第一通水孔57が備わっており、側面には主水路51内の水を吐水口55に通水させるための導水孔61が備わっている。なお、図9(b)に示すとおり、本体部7A内部における導水孔61より下方は中空である必要がなく、水の侵入を抑制するために例えば樹脂等を充填することが望ましい。
【0051】
軸部7Bは、軸と略円盤状の天板とから構成された部品であって、天板の底面中心で該天板に対して略垂直に軸が接続されて一体的に構成されている。また、天板には第二通水口59が備わっており、上記第一通水口57と主水路51との連通及び非連通状態の変更を行う役割を有する。なお、本体部7Aの天面に配設された第一通水口57と軸部7Bの天板に配設された第二通水口59とにおける双方の平面上の配置位置は、略同様とすることが望ましい。
【0052】
上記本体部7Aと軸部7Bとは、本体部7Aの内部(主水路51)に軸部7Bを挿入し、主水路51内で軸部7Bが回転自在に嵌合されている。双方の嵌合についてより具体的には、本体部7A内の主水路51に軸部7Bの天板側が挿入され、本体部7Aの天面の裏面に直接軸部7Bの天板が当接している。本体部7A内で軸部7Bが回転することにより、本体部7Aの天面と軸部7Bの天板とが回転摺動し、双方に配設された第一通水口57と第二通水工口59とを重複又は非重複状態に変更することができる(図9(c)参照)。
【0053】
軸部7Bの軸は、天板を接続した端部とは反対側となる他方の端部が本体部7Aの底面が外部に突出し、ギアボルト41を接続している。なお、本体部7Aの底面は閉鎖され、ギアボルト41は操作レバー5の上方部5Bに嵌合される。
【0054】
3.各部品により組み立てられた機械式脚用水栓1
次に、図7を用いて組み立てた状態における本実施形態の機械式脚用水栓1について詳細に説明する。図7は、本実施形態における機械式脚用水栓1の構造を示す断面図である。図7に示すとおり、本実施形態の機械式脚用水栓1は、上述した各部品を所定の配置で組み立てることにより構成されている。
【0055】
本実施形態の機械式脚用水栓1は、筐体3を主部品として構成されており、この筐体3に対して他の各部品を装着することにより成るものである。筐体3内部の中空層13に主弁7を所定の方向に合わせて挿入し、螺子嵌合又は耐水性を有する接着剤等で双方を固定している。また、筐体3の内壁と主弁7との間は、ゴムパッキン39により給水口53から吐水口55に移送される水が中空層13下方に漏水することを防止している。
【0056】
主弁7の軸部7Bに、先端近傍側面に所定の凹凸を具備した長尺のギアボルト41を接続し、当該状態で筐体3底面の開口にキャップ11を螺子嵌合させ、筐体3側面下方のスリット17から中空層13内部に操作レバー5の上方部5Bを挿入し、上方部5Bが具備する嵌合孔35に上記ギアボルト41を嵌合させる。
【0057】
更に、上記状態を保持したまま、接続部材9をキャップ11の中心孔29を介して中空層13に挿入し、ギアボルト41と同軸に双方を螺子嵌合させている。なお、ギアボルト41は、略棒状の部品であって、一方の端部側面に軸部7Bと嵌合する螺子山を備え、他方の端部の端面に接続部材9と嵌合するための螺子穴が備わっている。また、接続部材9も略同様に、略棒状の部品であって、一方の端部側面にギアボルト41と嵌合するための螺子山が備わっており、他方の端部の端面に補助部5Cと接続部材9との接続を固定する固定ビス43を嵌合する固定ビス用螺子穴が備わっている。
【0058】
上記のとおり、筐体3と主弁7と操作レバー5とギアボルト41と接続部材9とをそれぞれ嵌合させた後、接続部材9の底面に固定ビス43を螺子嵌合することで操作レバー5が筐体3及び主弁7と一体的に固定される。
【0059】
筐体3は裏面側の平面部19を、シンクを構成する鋼材部品等における被固定部21に当接し、当該状態を維持しつつ筐体3の正面側から固定ボルト23をボルト用孔25に挿入し、あらかじめ用意した被固定部21側の螺子穴に接続することで本実施形態の機械式脚用水栓1と被固定部21とを固定する。
【0060】
上記により、本実施形態の機械式脚用水栓1の組み立て及び固定等の準備を完了することができ、更に給水口53及び吐水口55にフレキシブル管等を固定することで上水道の水栓として使用することができる。
【0061】
4.機械式脚用水栓1の使用方法
続いて、図8を用いて本実施柄形態における機械式脚用水栓1の使用方法について詳細に説明する。図8は、開閉栓操作における操作レバー5の回動範囲を示す断面図である。本機械式脚用水栓1は、上述したとおり、使用者が脚を用いて開閉栓操作を行うための水栓である。使用者は本機械式脚用水栓1の正面側に移動し、操作レバー5の下方部5D近傍に膝先や足先を当接させ、閉栓状態となる最右側位置から左側位置に押圧しつつ回動させることで開栓状態となる。また、閉栓状態に戻す場合は、左側から最右側位置に押圧して回動することにより行うことができる。
【0062】
図8に示すとおり、操作レバー5の回動範囲(回転調整範囲)T3は、上述した筐体3のスリット17の範囲に限定される。スリット17の開口範囲を60度~150度の範囲とすることが好ましい。操作レバー5の回動範囲T3を上記範囲とすることで、使用者は脚を用いて容易に操作レバー5を操作することができる。
【0063】
操作レバー5を操作して開栓状態とすることで、給水口53から侵入した水が主弁7の第一通水孔57及び第二通水孔59を通過して主水路51に移送され、更に導水孔61を介して吐水口55に到着し、外部に出水される。また、閉栓状態とすることで、水が第一通水孔57及び第二通水孔59により堰き止められ、主水路51への移送が停止されて出水が停止する。
【0064】
なお、操作レバー5の回転位置によって主弁7の第一通水孔57と第二通水孔59との重複状態が調整されて開口率を任意に変更できるため、使用者は出水状況を確認しつつ出水量を段階的に変化させることができる。また、本実施形態では備えていないが、例えば本体部7Aと軸部7Bの天板とにおける回転方向の接触部に、等間隔の低いリブ等を互いに設け、所定の応力を加えることで双方が段階的に回転するよう構成すれば、上記開口率の調整時にクリック感等の手応えを使用者に提供し、出水量の調整をより確実かつ容易に行うことができる。また、上記クリック感が回動範囲を例えば5~10等分に区切って設定すれば、出水量をより定量的にコントロールすることができる。
【0065】
以上、本実施形態における機械式脚用水栓1の代表的な実施形態について図面を参照しつつ説明してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の精神及び教示を逸脱しない範囲でその他の変形例や改良例が存在し、これらは全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本実施形態における機械式脚用水栓1は、使用者が脚を用いて出水又は止水操作を行え、出水量を容易かつ確実にコントロールすることができるものである。
【符号の説明】
【0067】
1 機械式脚用水栓
3 筐体
5 操作レバー
5A 首部
5B 上方部
5C 補助部
5D 下方部
7 主弁
7A 本体部
7B 軸部
9 接続部材
11 キャップ
11A 鍔部
11B 立ち上がり部
15 フレキ管接続部
17 スリット
19 平面部
21 被固定部
23 固定ボルト
25 ボルト用孔
27 キャップ固定用タップ
29 中心孔
31 フラット面
33 キャップ固定用螺子山
35 嵌合孔
37 挿通穴
39 ゴムパッキン
41 ギアボルト
43 固定ビス
51 主水路
53 給水口
55 吐水口
57 第一通水孔
59 第二通水孔
61 導水孔
T1 左側角度
T2 右側角度
T3 回動範囲
H1 高さ寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9