(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】濾過装置及び濾過方法
(51)【国際特許分類】
B01D 24/02 20060101AFI20220318BHJP
B01D 29/27 20060101ALI20220318BHJP
B01D 36/02 20060101ALI20220318BHJP
C02F 1/52 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
B01D23/10 A
B01D23/04
B01D36/02
C02F1/52 K
(21)【出願番号】P 2018032739
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2017078623
(32)【優先日】2017-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年11月25日、日植総合研究圃場において開催された、簡易吹付法枠協会近畿支部20周年記念行事で発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年12月20日 土讃線坪尻・箸蔵間 32k760mのり面改良工事における、性能の検証のための試験施行
(73)【特許権者】
【識別番号】000231431
【氏名又は名称】日本植生株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】大倉 卓雄
(72)【発明者】
【氏名】藤嶋 泰良
(72)【発明者】
【氏名】糸永 寛
【審査官】瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-074115(JP,A)
【文献】特開2009-195772(JP,A)
【文献】特開2002-292382(JP,A)
【文献】特開2006-305468(JP,A)
【文献】特開2018-176062(JP,A)
【文献】特開2001-048173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/01、24/00-39/20
C02F 1/52-1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混和剤を含む流体から混和剤を除去するための濾過装置であって、
第1濾過槽と、該第1濾過槽を通過した流体を濾過するための第2濾過槽とを具備し、
前記第1濾過槽は、凝集剤層と細骨材層とを上流側からこの順に収容保持し、下流部に透水孔を有する収容保持体によって構成され、
前記第2濾過槽は、複数枚重ねた布製フィルターを有
し、
積み重ね可能なメッシュボックスパレットを上中下の3段に積み重ね、上段のメッシュボックスパレット内には前記第1濾過槽を載置し、中段のメッシュボックスパレットはその内側に前記布製フィルターを設置して前記第2濾過槽とし、下段のメッシュボックスパレットはその内壁に沿って非透水性シートを設置して流体を溜められる中和槽としてあり、前記メッシュボックスパレットは積み重ねたときに下側にあるメッシュボックスパレットの上縁に係止可能に構成されている四つの脚部を備えることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記メッシュボックスパレットは折り畳み可能である請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
混和剤を含む流体から混和剤を除去するための濾過方法であって、
請求項1又は2に記載の濾過装置を用いて、混和剤を含む流体を濾過する工程と、
前記細骨材層上で固化した濾過残渣を除去する工程とを具備することを特徴とする濾過方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、混和剤を含むセメント汚水等の流体(具体的には、セメント洗い水(スラッジ水)、コンクリート工場からの排水など)から混和剤を除去するための濾過装置及び濾過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントを使用する工事現場では、工具の洗浄等に伴ってセメント汚水(セメントを含有する汚水)が発生する。このセメント汚水をそのまま排水溝等に流すと詰まりの原因となる。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に開示されている濾布を用いた濾過器をセメント汚水の浄化に用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、セメント汚水は減水剤などの混和剤を含むことが多く、現在市販されている混和剤(コンクリート用化学混和剤)の殆どは界面活性剤を主成分としていることもあり、この場合、上記濾過器では、セメント粒子に吸着したりセメント汚水中に分散したりする混和剤によって濾布がすぐに目詰まりしてしまい、濾過することができるセメント汚水は少量に限られ、濾過効率が悪いという問題がある。また、混和剤の分散効果により、着色粒子が汚水中に分散し、濾布による濾過を困難化するとも考えられる。
【0006】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、混和剤を含む流体を効率良く濾過することのできる濾過装置及び濾過方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る濾過装置は、混和剤を含む流体から混和剤を除去するための濾過装置であって、第1濾過槽と、該第1濾過槽を通過した流体を濾過するための第2濾過槽とを具備し、前記第1濾過槽は、凝集剤層と細骨材層とを上流側からこの順に収容保持し、下流部に透水孔を有する収容保持体によって構成され、前記第2濾過槽は、複数枚重ねた布製フィルターを有し、積み重ね可能なメッシュボックスパレットを上中下の3段に積み重ね、上段のメッシュボックスパレット内には前記第1濾過槽を載置し、中段のメッシュボックスパレットはその内側に前記布製フィルターを設置して前記第2濾過槽とし、下段のメッシュボックスパレットはその内壁に沿って非透水性シートを設置して流体を溜められる中和槽としてあり、前記メッシュボックスパレットは積み重ねたときに下側にあるメッシュボックスパレットの上縁に係止可能に構成されている四つの脚部を備える(請求項1)。
【0008】
上記濾過装置において、前記メッシュボックスパレットは折り畳み可能であってもよい(請求項2)。
【0009】
一方、上記目的を達成するために、本発明に係る濾過方法は、混和剤を含む流体から混和剤を除去するための濾過方法であって、請求項1又は2に記載の濾過装置を用いて、混和剤を含む流体を濾過する工程と、前記細骨材層上で固化した濾過残渣を除去する工程とを具備する(請求項3)。
【発明の効果】
【0010】
本願発明では、混和剤を含む流体を効率良く濾過することのできる濾過装置及び濾過方法が得られる。
【0011】
すなわち、仮に、セメント汚水中の混和剤を凝集沈殿により除去しようとすると、セメント汚水に凝集剤を添加した後に撹拌する作業員が必要となり、それだけ労力が掛かることになるが、本願の各請求項に係る発明の濾過装置及び濾過方法では、凝集剤層を有する濾過槽を用いることにより、混和剤を含む流体を効率良く濾過することができ、作業の簡便化にも資する。
【0012】
また、凝集剤層の凝集剤は、濾過後に細骨材層表面に留まったセメントペーストとともに硬化し、板状になって細骨材層から容易に分離することができる。このように分離した板状の濾過残渣は、砕いて体積を減らし産業廃棄物として処理すればよく、その処理が簡単である。一方、濾過に伴い、細骨材層の中にセメント分が増えてくれば、これをモルタル・コンクリート吹付工に再利用することができるので、産業廃棄物を減らすことができる。
【0013】
請求項1に係る発明の濾過装置では、混和剤によって第2濾過槽の布製フィルターが目詰まりし難いため、布製フィルターを交換することなく長期間使用することができ、濾過効率の向上を図ることができる。また、布製フィルターが徐々に目詰まりして濾過スピードが遅くなってきた場合には、布製フィルターを乾燥させた状態で裏返しにして叩くなどして、目詰まり分を除去すれば、再び布製フィルターとして利用でき、使い捨てする場合に比べ、省資源となる上、高価な布製フィルターを使用しても長期間の使用により経済的合理性が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る濾過方法に用いる濾過装置の構成を概略的に示す説明図、(B)は前記濾過装置の要部の構成を概略的に示す縦断面図である。
【
図2】前記濾過装置の第2濾過槽の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図3】(A)は本発明の変形例に係る濾過装置に用いるメッシュボックスパレットの構成を概略的に示す斜視図、(B)は前記変形例の構成を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0016】
本実施の形態に係る濾過方法は、
図1(A)に示す濾過装置を用いて行うものであり、濾過装置は、第1濾過槽1と、第1濾過槽1を通過した流体を濾過するための第2濾過槽2とを具備している。
【0017】
このうち、第1濾過槽1は、凝集剤層3と細骨材層4とを上側(上流側)からこの順に収容保持し、底部(下流部)に透水孔5を有する収容保持体6によって構成され、適宜の手段により、第2濾過槽2の上方に保持されている。
【0018】
ここで、細骨材層4は、現場にある砂等を細骨材として収容保持体6の底部から充填してなる層であり、凝集剤層3は、凝集剤を収容保持体6内において細骨材層4の上側(上流側)に充填してなる層であり、凝集剤としては、セピオライトやベントナイトなどの粘土鉱物、PAC(ポリ塩化アルミニウム)、ミョウバン等を用いることができる。そして、凝集剤は細骨材よりも少量でよく、例えば細骨材として砂を300L用いる場合、凝集剤に電解質として働くミョウバンを用いるのであればその使用量は300~500g程度とすることができる。
【0019】
ところで、図示例のように凝集剤層3を上側、細骨材層4を下側に配置する場合であって、凝集剤層3の凝集剤(例えばミョウバン)より粒径の小さな細骨材(例えば砂)を用いて細骨材層4を構成すれば、ブラジルナッツ効果(異なる大きさからなる粉粒体を振ると、最も大きな粒子が表面に浮き上がってくる現象)により、凝集剤層3と細骨材層4の間に仕切り網等を配置しなくても、凝集剤は細骨材層4内に沈み込むことはなく、凝集剤層3と細骨材層4とを分けた状態で保つことができる。
【0020】
ただし、凝集剤層3と細骨材層4の間に、両層3,4が混合するのを防止するための仕切りを設けてあってもよい。この場合、仕切りは、水は通し、凝集剤及び細骨材は通さないように構成されているものとすることができ、濾過後に細骨材層4表面に留まったセメントペーストとともに固化した凝集剤層3によって構成される濾過残渣から容易に分離・除去することができるような仕切り(例えば合成樹脂製や金属製の穴あき板材)を用いれば、濾過残渣のリサイクルの容易化・確実化を図れる。また、水は通し、凝集剤は通さない仕切りを、凝集剤層3の上側(上流側)に設けてあってもよく、この仕切りにある程度の強度を持たせてあれば、凝集剤層4に対する原水の流入衝撃を緩和して、凝集剤層4の一部に比較的大きな窪みができるといったことが防止されるのであり、こうした流入衝撃構造を仕切りとしてではなく、凝集剤層3の上方に別途設けるようにしてもよい。
【0021】
一方、収容保持体6としては、例えば軽量で折り畳みが容易なフレキシブルコンテナバッグ(容量350L)の内側に不透水性のシート(ビニールシート等)を敷いたものや、樹脂製の樽等を用いることができ、底部には流体を流出させ、細骨材層4の細骨材は流出させない透水孔5を複数設ける。すなわち、フレキシブルコンテナバッグとシートによって収容保持体6を構成する場合は、例えば、この両者にわたって貫通孔を設け、この貫通孔を透水孔5とすればよく、樹脂製の樽を用いる場合は、その底壁に設けた貫通孔を透水孔5とすればよい。その他、透水孔5を有する底板を収容保持体6の底壁の上側に敷き、収容保持体6の底壁には透水孔5よりも大きな貫通孔を設けておくようにしてもよい。
【0022】
第2濾過槽2は、第1濾過槽1の下方に配置されており、
図1(A)及び
図2に示す例では、一般にメッシュボックスパレットと呼ばれる底面1m×1mの金属製(本例では鉄製)の網籠(透水孔を有する収容槽の一例)7の内側に(内壁に沿うように)相互に分離可能に複数枚(本例では3枚)重ねた布製フィルター8(本例では高密度ポリエステル素材織物を使用)を設置してある。なお、布製フィルター8の設置は、網籠7の内側に載置するだけでもよいし、留め具等の適宜の手段により布製フィルター8を網籠7に取り付けるようにしてもよい。また、布製フィルター8の目合いは、濾過しようとする粒子の大きさに応じたものとすればよい。そして、複数枚の布製フィルター8は、同一の構成を有し、例えば不織布を用いて構成されていてもよいし、不織布を用いずに構成されていてもよい。さらに、網籠7の網の目(透水孔)の形状は、矩形状(正方形状)、菱形状、多角形状など、種々のものが考えられる。
【0023】
そして、第2濾過槽2は、台9の上に載置された状態で中和槽10内に収容され、第2濾過槽2の下面は中和槽10の底面から上方に離間している。なお、台9は、専用のものでもよいし、レンガブロック等の適宜のものであってもよく、また、中和槽10の底面あるいは網籠7の下面に設けて(一体化して)あってもよい。また、中和槽10としては、例えば金属製又は樹脂製で容量が200L程度の器等からなるものを用いることが考えられる。
【0024】
上記構成からなる濾過装置では、第1濾過槽1に流体を注入することにより、この流体は第1濾過槽1(凝集剤層3及び細骨材層4)及び第2濾過槽2(布製フィルター8)を経て濾過される。例えば、工事現場で発生することのある混和剤(例えば減水剤などの界面活性剤、凍結防止剤等)及び着色剤を含むセメント汚水を第1濾過槽1に注入すると、第1濾過槽1では、このセメント汚水から、混和剤が大幅に取り除かれ、セメント及び着色剤もある程度除去される。さらに、第2濾過槽2では、残りのセメント及び着色剤も除去され、第1濾過槽1及び第2濾過槽2を経た濾過水には、セメント、着色剤及び混和剤がほとんど含まれない。このような濾過が行われるのは、仮にセメント汚水が混和剤(例えば減水剤)を含んだ状態で第2濾過槽2(布製フィルター8)を通過した場合には、混和剤が布製フィルター8の目詰まりの原因になると同時に着色剤を分散させて布製フィルター8による着色剤の捕捉を困難化するが、本実施形態では、第2濾過槽2を通過する前に第1濾過槽1によって混和剤を除去しておくことにより、布製フィルター8の目詰まりが防止されるだけでなく、着色剤の分散性が低下し、凝集した着色剤を布製フィルター8によって捕捉可能になるからと考えられる。なお、濾過対象とする流体に粗い骨材等が含まれているような場合は、例えば粗目の金網や適宜の大きさの穴をあけたフレキシブルコンテナバッグにその流体を通すなどして予め粗い骨材等を除去するようにしてもよい。
【0025】
そして、第1濾過槽1の凝集剤層3の凝集剤は、濾過後に細骨材層4表面に留まったセメントペーストとともに硬化し、板状になって細骨材層4から容易に分離・除去することができる。このように分離・除去した板状の濾過残渣は、砕いて体積を減らし産業廃棄物として処理すればよい。
【0026】
また、濾過に伴い、第1濾過槽1の細骨材層4の中にセメント分が増えてくれば、これをモルタル・コンクリート吹付工に再利用することができ、産業廃棄物を減らすことができる。
【0027】
本実施形態の濾過装置では、混和剤によって第2濾過槽2の布製フィルター8が目詰まりし難いため、布製フィルター8を交換することなく長期間使用することができ、濾過効率の向上を図ることができる。また、布製フィルター8が徐々に目詰まりして濾過スピードが遅くなってきた場合には、例えば布製フィルター8を乾燥させた状態で裏返しにして叩くなどして、目詰まり分を除去し、再生させれば、再び濾過スピードを上げることができ、布製フィルター8を使い捨てする場合に比べ、省資源となる上、高価な布製フィルターを使用しても長期間の使用により経済的合理性が得られることになり、経済性の向上を図ることもできる。
【0028】
しかも、布製フィルター8の乾燥から目詰まり分の除去までの再生工程は、例えば、複数枚重ねてあるうちの最も内側の布製フィルター8(最も目詰まりしている布製フィルター8)のみ(すなわち一部の布製フィルター8のみ)を取り外して行うことにより、その再生工程の間も他の布製フィルター8によって濾過(臨時濾過工程)を行えるようにしてあることが好ましい。このようにすることで、濾過の停滞を無くし、濾過性能及び濾過効率を良好とすることができる。そして、上記再生工程を経た布製フィルター8は、例えば他の布製フィルター8の最も外側に重ねればよい。このような使用方法から考えれば、布製フィルター8は、通常は3枚以上重ねて用いるようにするのが好ましい。特に、布製フィルター8を4枚以上重ねて用いる場合には、上記再生工程により、一度に2枚以上の布製フィルター8を再生させることも考えられる。この場合も、目詰まりが比較的激しいと思われる内側の布製フィルター8を再生工程に送っている間、残り(外側)の布製フィルター8で濾過(臨時濾過工程)を行えるようにしてあるのが好ましい。なお、布製フィルター8の再生方法は上記に限らず、例えばブラシ等の適宜の道具を用いて行うようにしてもよい。
【0029】
仮に、第1濾過槽1を省略し、セメント汚水中の混和剤を凝集沈殿により除去しようとすると、セメント汚水に凝集剤を添加した後に撹拌する作業員が必要となり、それだけ労力が掛かることになるが、本実施形態では、第1濾過槽1を用いることにより、セメント汚水撹拌の手間を省き、作業の簡便化を図ることもできる。そして、基本的には、中和槽10を設置する空きスペースがあればよく、工事現場のような限られたスペースにおける濾過が可能になるという点でも本実施形態の濾過装置は有用である。
【0030】
一方、第1濾過槽1及び第2濾過槽2を経て濾過された流体は中和槽10内に溜まり、この中和槽10に中和剤を投入して流体を中和することにより、環境対策を行うことができるのであって、中和後の流体は中和槽10から排出して適宜に処理すればよい。そして、この排出を容易にするために、例えば中和槽10の下部に図外の開閉弁を設け、排出時にはこの開閉弁を開いて排出することができるようにしてもよい。
【0031】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0032】
上記実施の形態の濾過装置では、濾過対象とする流体(セメント汚水)を、基本的に上から下に向かって流すように構成されているが、これに限らず、流体を流す方向は適宜に変更可能であり、例えば、流体が横向きに流れる部分を設けてあってもよい。また、
図1(A)に示す例では、第1濾過槽1を第2濾過槽2の上方に離間させているが、これに限らず、例えば第1濾過槽1の下部が第2濾過槽2内に幾らか入り、第2濾過槽2が第1濾過槽1の底部(下流部)を覆うように配置されていてもよい。
【0033】
上記実施の形態の濾過装置では、収容保持体6の中に、凝集剤層3と細骨材層4とを各々1層ずつ設けているが、何れか一方又は両方を、2層以上設けてもよい。
【0034】
また、上記実施の形態の濾過装置では、第1濾過槽1及び第2濾過槽2を一つずつ設けているが、何れか一方又は両方を二つ以上設けてもよい。例えば、第1濾過槽1を二つ設け、流体が二つの第1濾過槽1を経た後に第2濾過槽2に向かうようにしてもよい。
【0035】
上記実施の形態の濾過装置では、第2濾過槽2に網籠7を用いているが、これに限らず、網籠7に代えて、例えば収容保持体6と同様の構成を有するものやこれより一回り以上大きいものを用いてもよい。但し、例えば網籠7を用いる場合に、その網の目の隙間(透水孔)の縦横の大きさd(
図1(B)参照)を5~15cm、好ましくは10~15cm(10cm以上15cm以下)とすることにより、網籠7の内側に配した布製フィルター8が、濾過の際にその内部に流入した流体の水圧によって適宜に網の目の外側にはらみ出して布製フィルター8の目合いが広がるため、濾過スピードを上げることができる。上記隙間の縦横の大きさdが5cm未満では布製フィルター8の目合いが広がらず濾過スピードが低下し、逆に15cm超では目合いが広がり過ぎてセメント(粉)等の捕捉効率が低下する恐れがある。従って、網籠7に代えて例えば透水孔5を有する収容保持体6と同様の構成を有するものを用いる場合にも、透水孔5に相当する穴の縦横の大きさdを10~15cmにすることが好ましい。そして、この場合の透水孔5に相当する穴の形状としても、矩形状(正方形状)、菱形状、多角形状の他、円形状、楕円形状等種々のものが考えられる。
【0036】
セメント汚水には六価クロムが含まれていることがあり、これが環境基準を下回らないと放水できない。そこで、第1濾過槽1、第2濾過槽2又は中和槽10の少なくとも何れか一つに、六価クロムを吸着する吸着剤を投入しておき、セメント汚水から六価クロムを吸着除去するようにしてもよい。この吸着剤としては、例えば特開2009-11900号公報に記載の環境浄化材等を用いることが考えられる。
【0037】
濾過対象とする流体はセメント汚水に限らず、例えば泥水であってもよく、本実施形態の濾過装置は、例えばアンカー削孔の際に発生する濁水処理にも利用可能である。
【0038】
図3(A)に示す積み重ね可能なタイプのメッシュボックスパレット11を用いて本発明の濾過装置を構成するようにしてもよい。すなわち、このメッシュボックスパレット11の四つの脚部12は、積み重ねたときに下側にあるメッシュボックスパレット11の上縁に係止可能に構成されている。そして、
図3(B)に示すように、メッシュボックスパレット11を上中下の3段に積み重ねるに際し、上段のメッシュボックスパレット11内には第1濾過槽1を載置し、中段のメッシュボックスパレット11はその内側に布製フィルター8を設置して第2濾過槽2とし、下段のメッシュボックスパレット11はその内壁に沿って非透水性シート(例えばブルーシート)13を設置して流体を溜められる中和槽10とすればよい。なお、下段のメッシュボックスパレット11を中和槽10に用いる際、例えば、非透水性シート13の周縁をメッシュボックスパレット11の外側にはみ出すようにし、このはみ出した部分を適宜の部材でメッシュボックスパレット11に固定しておいてもよい。
【0039】
そして、
図3(B)に示すように濾過装置を構成する場合、メッシュボックスパレット11が折り畳み可能であれば、現場までの濾過装置の運搬性が飛躍的に向上し、不使用時にはコンパクトに保管しておくことも可能となる。
【0040】
なお、本明細書で挙げた変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0041】
1 第1濾過槽
2 第2濾過槽
3 凝集剤層
4 細骨材層
5 透水孔
6 収容保持体
7 網籠
8 布製フィルター
9 台
10 中和槽
11 メッシュボックスパレット
12 脚部
13 非透水性シート
d 透水孔の縦横の大きさ