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特許7042490マイクロ波処理装置、および炭素繊維の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】マイクロ波処理装置、および炭素繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/64 20060101AFI20220318BHJP
   H05B 6/74 20060101ALI20220318BHJP
   H05B 6/80 20060101ALI20220318BHJP
   D06B 19/00 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
H05B6/64 D
H05B6/74 A
H05B6/80 Z
D06B19/00 B
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018220391
(22)【出願日】2018-11-26
(62)【分割の表示】P 2018006744の分割
【原出願日】2018-01-18
(65)【公開番号】P2019125573
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2021-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】508067736
【氏名又は名称】マイクロ波化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】塚原 保徳
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 久夫
(72)【発明者】
【氏名】金城 隆平
(72)【発明者】
【氏名】衣川 千佳
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6151844(JP,B1)
【文献】国際公開第2013/145932(WO,A1)
【文献】特開2013-002767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/46-6/80
D06B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を処理対象物が移動する容器と、当該容器内にマイクロ波を照射する照射部を備えたマイクロ波照射手段と、前記容器内に前記処理対象物の移動経路に沿って該処理対象物を覆うように設けられると共に前記マイクロ波照射手段から照射されるマイクロ波を吸収して発熱する発熱部材と、を備えたマイクロ波処理装置であって、
前記照射部が照射するマイクロ波の強度が前記発熱部材において強くなる第一のマイクロ波照射位置と、前記照射部が照射するマイクロ波の強度が前記処理対象物において強くなる第二のマイクロ波照射位置とが前記処理対象物の移動経路に沿って設けられているマイクロ波処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波を用いて加熱処理等の処理を行なうマイクロ波処理装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波を用いて処理を行なう従来の技術として、マイクロ波遮蔽材からなる加熱炉本体と、前記加熱炉本体にマイクロ波電力を導入するマイクロ波手段と、マイクロ波遮蔽機能を有する熱伝導材で形成し、前記加熱炉本体の一方側に設けた入口部と他方側に設けた出口部との間に直線的に配設した加熱筒体と、前記加熱筒体の外周側に設けて前記加熱筒体に熱伝達するマイクロ波発熱体と、前記加熱炉本体の入口部及び出口部の近くに設けて、前記加熱筒体の端部周囲に配設してマイクロ波電力の漏洩を防ぐフィルタと、前記入口部から供給したワークを、前記加熱筒体内を通し、前記出口部より排出し、前記加熱筒体内で加熱する構成としたものが知られていた。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5877448号公報(第1頁、第1図等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術においては、マイクロ波を用いて処理対象物を適切に処理することができない、という課題があった。
【0005】
例えば、従来の技術においては、マイクロ波を用いて加熱したマイクロ波発熱体の輻射熱で加熱を行なうため、ワーク等の処理対象物を、外部からしか加熱できず、均一な加熱等の所望の加熱を行なうことが困難であった。
【0006】
また、処理対象物にマイクロ波が直接照射されないため、処理対象物が、マイクロ波によって直接加熱できないため、加熱効率が悪いという問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解消するためになされたものであり、処理対象物を、マイクロ波を用いて適切に処理することができるマイクロ波処理装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のマイクロ波処理装置は、内部を処理対象物が移動する容器と、当該容器内にマイクロ波を照射する照射部を備えたマイクロ波照射手段と、前記容器内に前記処理対象物の移動経路に沿って該処理対象物を覆うように設けられると共に前記マイクロ波照射手段から照射されるマイクロ波を吸収して発熱する発熱部材と、を備えたマイクロ波処理装置であって、前記照射部が照射するマイクロ波の強度が前記発熱部材において強くなる第一のマイクロ波照射位置と、前記照射部が照射するマイクロ波の強度が前記処理対象物において強くなる第二のマイクロ波照射位置とが前記処理対象物の移動経路に沿って設けられているマイクロ波処理装置である。
【0009】
また、本発明のマイクロ波処理装置は、上記マイクロ波処理装置において、前記照射部は、前記処理対象物の移動経路に沿って複数設けられ、前記各照射部の照射するマイクロ波の位相を制御することにより前記各照射位置のマイクロ波強度を制御するようになっているようにしてもよい。
【0010】
また、本発明のマイクロ波処理装置は、上記マイクロ波処理装置において、前記処理対象物の移動経路に沿って複数設けられ、前記処理対象物及び/または前記発熱部材の性質(材質・厚み)に応じて前記各照射部の照射するマイクロ波の周波数を制御することにより前記各照射位置のマイクロ波の吸収度を制御するようになっているようにしてもよい。
【0011】
また、本発明のマイクロ波処理装置は、上記マイクロ波処理装置において、前記発熱部材は、前記処理対象物の容器内の搬送を補助する部材であって、前記処理対象物に接触する部分にマイクロ波を吸収して発熱する加熱媒体を有するようにしてもよい。
【0012】
また、本発明のマイクロ波処理装置は、上記マイクロ波処理装置において、前記処理対象物は、炭素繊維の前駆体繊維であり、前記マイクロ波処理装置は、前記前駆体繊維の耐炎化処理に用いられるようにしてもよい。
【0013】
また、本発明のマイクロ波処理装置は、上記マイクロ波処理装置において、前記発熱部材の、第一のマイクロ波照射位置の温度の情報を取得する第一のセンサと、前記処理対象物の、第二のマイクロ波照射位置の温度の情報を取得する第二のセンサと、前記第一のセンサが取得する温度の情報を用いて、前記各マイクロ波照射に用いられるマイクロ波の出力をフィードバック制御する制御手段と、を更に備えたマイクロ波処理装置であってもよい。
【0014】
本発明の炭素繊維の製造方法は、マイクロ波を吸収して発熱する発熱部材を内部に備えた容器内に、マイクロ波を照射して、前記発熱部材に沿って移動する炭素繊維の前駆体繊維を加熱する工程を含む炭素繊維の製造方法であって、前記加熱する工程において、前記発熱部材の第一のマイクロ波照射位置においてマイクロ波の強度が強くなるようマイクロ波を照射し、前記処理対象物の第二のマイクロ波照射位置においてマイクロ波の強度が強くなるようマイクロ波を照射する炭素繊維の製造方法である。
【0015】
本発明のマイクロ波処理装置は、内部に処理対象物が配置される容器と、容器内に、マイクロ波を照射するマイクロ波照射手段と、前記容器内に設けられ、マイクロ波照射手段から照射されるマイクロ波を吸収して発熱する発熱部材と、を備え、マイクロ波照射手段は、発熱部材を加熱する第一のマイクロ波照射と、処理対象物を加熱する第二のマイクロ波照射とを行なうマイクロ波処理装置である。
【0016】
かかる構成により、処理対象物を、マイクロ波を用いて適切に処理することができる。例えば、マイクロ波の照射による発熱部材からの加熱と、処理対象物の内部からの加熱とを組み合わせて、処理対象物を適切に加熱することができる。
【0017】
また、本発明のマイクロ波処理装置は、前記マイクロ波処理装置において、処理対象物は、容器内を移動し、発熱部材は、処理対象物の移動経路に沿って部分的に設けられており、マイクロ波照射手段は、移動経路の発熱部材が設けられている部分に対するマイクロ波の照射である第一のマイクロ波照射を行う1以上の第一照射部と、移動経路の発熱部材が設けられていない部分に対するマイクロ波の照射である第二のマイクロ波照射を行う1以上の第二照射部とを備えたマイクロ波処理装置である。
【0018】
かかる構成により、第一のマイクロ波照射を第一照射部で行い、第二のマイクロ波照射を第二照射部で行うことにより、第一のマイクロ波照射の出力と、第二のマイクロ波照射の出力を個別に容易に制御することが可能となり、処理対象物に対して、効率よく処理を行うことができるとともに、高品質な処理結果を得ることができる。
【0019】
また、本発明のマイクロ波処理装置は、前記マイクロ波処理装置において、マイクロ波照射手段は、異なる位置からマイクロ波を照射する2以上の照射部を備え、2以上の照射部が照射するマイクロ波の位相を制御して、2以上の照射部が照射するマイクロ波が発熱部材において強めあう第一のマイクロ波照射と、2以上の照射部が照射するマイクロ波が処理対象物において強めあう第二のマイクロ波照射とを行なうマイクロ波処理装置である。
【0020】
かかる構成により、処理対象物をマイクロ波で適切に加熱できる。また、位相を制御することで第一のマイクロ波照射で加熱する位置と、第二のマイクロ波照射で加熱する位置を容易に移動させることができる。
【0021】
また、本発明のマイクロ波処理装置は、前記マイクロ波処理装置において、マイクロ波照射手段は、発熱部材の発熱が、処理対象物の発熱よりも大きくなる周波数のマイクロ波を照射する第一のマイクロ波照射と、処理対象物の発熱が、発熱部材の発熱よりも大きくなる周波数のマイクロ波を照射する前記第二のマイクロ波照射と、を行うマイクロ波処理装置である。
【0022】
また、本発明のマイクロ波処理装置は、前記マイクロ波処理装置において、発熱部材で吸収されたマイクロ波が、発熱部材を透過したマイクロ波よりも大きくなる周波数のマイクロ波を照射する第一のマイクロ波照射と、発熱部材で吸収されたマイクロ波が、発熱部材を透過したマイクロ波よりも小さくなる周波数のマイクロ波を照射する第二のマイクロ波照射と、を行なうマイクロ波処理装置である。
【0023】
かかる構成により、照射するマイクロ波の周波数の切り替えや組合せにより、処理対象物を適切に加熱することができる。
【0024】
また、本発明のマイクロ波処理装置は、前記マイクロ波処理装置において、発熱部材は筒形状を有しており、発熱部材の内側に、所定のガスを供給するガス供給手段をさらに備えたマイクロ波処理装置である。
【0025】
かかる構成により、発熱部材内の所定のガスの量を制御して、適切な処理を行なうことができる。
【0026】
また、本発明のマイクロ波処理装置は、前記マイクロ波処理装置において、処理対象物は、容器内を移動し、発熱部材の処理対象部側の一部に、マイクロ波を透過させない非透過部が設けられているマイクロ波処理装置である。
【0027】
かかる構成により、処理対象物にマイクロ波を直接照射しない部分を設けることができ、マイクロ波の照射の制御の幅が広がる。
【0028】
また、本発明のマイクロ波処理装置は、前記マイクロ波処理装置において、発熱部材は、処理対象物の容器内の搬送を補助する部材であって、処理対象物に接触する部分にマイクロ波を吸収して発熱する加熱媒体を有するマイクロ波処理装置である。
【0029】
かかる構成により、発熱部材からの加熱を、接触したか熱媒体からの熱伝導により行なうことができ、熱効率を向上させることができる。
【0030】
また、本発明のマイクロ波処理装置は、前記マイクロ波処理装置において、処理対象物は、炭素繊維の前駆体繊維であり、マイクロ波処理装置は、前駆体繊維の耐炎化処理に用いられるマイクロ波処理装置である。
【0031】
かかる構成により、耐炎化処理済の高品質な炭素繊維の前駆体繊維を得ることができる。
【0032】
また、本発明のマイクロ波処理装置は、前記マイクロ波処理装置において、発熱部材の、第一のマイクロ波照射が行なわれる部分の温度の情報を取得する第一のセンサと、処理対象物の、第二のマイクロ波照射が行なわれる部分の温度の情報を取得する第二のセンサと、第一のセンサが取得する温度の情報を用いて、第一のマイクロ波照射に用いられるマイクロ波の出力をフィードバック制御し、第二のセンサが取得する温度の情報を用いて、第二のマイクロ波照射に用いられるマイクロ波の出力をフィードバック制御する制御手段と、を更に備えたマイクロ波処理装置である。
【0033】
かかる構成により、第一のマイクロ波照射による発熱部材の加熱と、第二のマイクロ波照射による処理対象物の加熱とを適切に制御することができる。
【0034】
本発明の炭素繊維の製造方法は、マイクロ波を吸収して発熱する発熱部材を内部に備えた容器内に、マイクロ波を照射して、発熱部材に沿って配置された炭素繊維の前駆体繊維を加熱する工程を含む炭素繊維の製造方法であって、加熱する工程において、発熱部材を加熱する第一のマイクロ波照射と、前駆体繊維を加熱する第二のマイクロ波照射とを行なうようにした炭素繊維の製造方法である。
【0035】
かかる構成により、炭素繊維の前駆体繊維を外側から加熱および直接加熱して、品質のよい炭素繊維を得ることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、マイクロ波を用いて処理対象物を適切に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の実施の形態1におけるマイクロ波処理装置の断面図
図2】同マイクロ波処理装置の発熱部材を示す図(図2(a))、およびその変形例を示す図(図2(b)~図2(d))
図3】同マイクロ波処理装置の変形例を示す断面図
図4】同マイクロ波処理装置の変形例を示す断面図(図4(a)~図4(b))
図5】本発明の実施の形態2におけるマイクロ波処理装置の断面図(図5(a))および断面模式図(図5(b)~図5(c))
図6】本発明の実施の形態3におけるマイクロ波処理装置の断面図(図6(a))および断面模式図(図6(b)~図6(d))
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、マイクロ波処理装置等の実施形態について図面を参照して説明する。なお、実施の形態において同じ符号を付した構成要素は同様の動作を行うので、再度の説明を省略する場合がある。
【0039】
(実施の形態1)
以下、マイクロ波処理装置を、炭素繊維の製造に用いられる前駆体繊維に対して耐炎化処理を行なう装置を例に挙げて説明する。
【0040】
まず、炭素繊維の製造工程の一例について説明する。ポリアクリルニトリル(PAN)等の前駆体繊維を200~300℃の加熱空気中で60~120分間加熱することによって前駆体繊維の酸化処理を行なう。この処理は、耐炎化処理と呼ばれる。この処理では、前駆体繊維の環化反応を生じさせ、酸素結合により耐炎化繊維が得られる。その後、得られた耐炎化繊維を窒素雰囲気下で1000℃から1500℃まで数分間加熱することで、繊維が炭素化され炭素繊維を得ることができる。
【0041】
図1は、本実施の形態におけるマイクロ波処理装置を説明するための、処理対象物の移動方向に平行な断面図である。
【0042】
マイクロ波処理装置1は、容器10と、マイクロ波照射手段20と、発熱部材30と、1または2以上のセンサ40と、制御手段50と、搬送手段60とを備えている。
【0043】
容器10は、ステンレス等のマイクロ波反射性を有する材質で構成されている。容器10は、中空であって、横長の箱形状を有している。容器10内には、処理対象物2が配置される。ここでは、処理対象物2は、例えば、PAN系の前駆体繊維であるとする。処理対象物2である前駆体繊維は、例えば、一本の前駆体繊維であってもよく、複数の前駆体繊維がまとめられて、糸状や紐状になったものであってもよい。容器10内に配置される処理対象物2は、単数であってもよく、複数であってもよい。ここでは、容器10内に配置される処理対象物2が、容器10を移動する例について説明する。なお、ここでの移動は、連続的な移動であってもよく、移動と停止とを組み合わせた非連続な移動であってもよい。例えば、容器10内でマイクロ波の照射が行なわれている間は、処理対象物2の移動を停止し、マイクロ波の照射が行なわれていない間に処理対象物2を移動させてもよい。また、ここでの移動は、移動速度が一定の移動であってもよく、移動速度が連続的や非連続に変化する移動であってもよい。かかることは、他の実施の形態においても同様である。なお、以下においては、一例として、処理対象物2が連続的に移動している場合について説明する。
【0044】
容器10の長手方向の両端の一方には、処理対象物2の入口101aが設けられ、他方には出口101bが設けられている。処理対象物2は、入口101aから容器10内部に入り、容器10の内部を移動し、出口101bから外部に出る。ここでは、一例として、処理対象物2が、容器10の内部を略水平に移動する場合を例に挙げて説明する。ただし、処理対象物の容器10の内外における移動方向や移動経路は問わない。例えば、ローラ等により、処理対象物の移動方向が途中で変更されていてもよく、例えば、前駆体繊維の移動方向はローラ等により1回以上折りかえされていてもよい。容器10は、通常、長手方向が水平となるように配置されるが、容器10は、傾斜して配置されてもよい。入口101aおよび出口101bには、容器10内に照射されるマイクロ波の外部への漏洩を防ぐためのフィルタ(図示せず)が設けられている。フィルタとしては、例えば、マイクロ波の波長の性質を利用したチョーク構造等を有しており、非接触でマイクロ波電力の通過を防止するものが用いられる。入口101aおよび出口101bは、フィルタ以外のマイクロ波の漏洩を防止する構造を有していても良い。容器10のサイズや、容器10の外壁等の厚さは問わない。容器10の外壁には断熱材(図示せず)等が設けられていてもよい。容器10のサイズ等は、例えば、処理対象や、処理時間等に応じて決定される。
【0045】
なお、上記のような容器10の形状は一例であり、容器10は、上記以外のどのような形状としても良い。例えば、容器10は、横方向に伸びる円筒形状であっても良く、多角形柱形状であっても良く、これらの形状の組合せ等であっても良い。また、縦長の形状であってもよい。また、処理対象物2の移動経路2aを、図示しないローラ等を用いて、水平方向において処理対象物2の移動方向が交互に反転するよう折り畳まれた経路となるようにし、容器10を、この移動経路2aの少なくとも処理対象物2が平行に移動する部分を覆うような形状としてもよい。なお、ここでは、説明の便宜上、移動経路2aを処理対象物2と重ねて示している。また、移動経路2aにおいて、処理対象物2の移動方向は矢印の向きで示している。かかることは、以下においても同様である。
【0046】
容器10の形状や、大きさ等は、例えば、容器10に照射されるマイクロ波の分布等に応じて決定される。例えば、容器10の形状や大きさは、容器10内におけるマイクロ波のモードがマルチモードとなるように、形状や大きさが設定されていることが好ましい。マイクロ波のマルチモードとは、例えば、容器10内でマイクロ波の定在波が発生しないモードである。
【0047】
容器10の、入口101aおよび出口101bが設けられている位置は問わない。例えば、入口101aおよび出口101bが容器10の同じ端部や側面等に設けられていてもよい。また、容器10は、複数の入口101aと出口101bとを有していても良く、例えば、処理対象物2の移動方向を図示しないローラ等で変更して、処理対象物2を複数の入口101aと出口101bとから容器10の内外に出し入れしてもよい。
【0048】
なお、容器10は、処理対象物2の入口101aや、出口101bや、後述する開口部102等の、開口が必要な部分以外は、マイクロ波が漏洩しないように閉じられた構造であることが好ましい。
【0049】
なお、容器10の外周には、図示していないが、容器1の温度を調整するための温水ジャケットや、冷水ジャケット、ヒータ等が設けられていても良い。また、容器10には、図示しない内部を観察するための観察窓や、給排気等を行なう通風口やファン等が設けられていてもよい。
【0050】
図2は、本実施の形態のマイクロ波処理装置1の発熱部材30を模式的に示す斜視図(図2(a))、および発熱部材30の変形例を模式的に示す斜視図(図2(b)~図2(c))、および図2(a)に示した発熱部材30の変形例を説明するための、処理対象物2の移動経路2aに沿った断面図(図2(d))である。容器10内には、マイクロ波照射手段20から照射されるマイクロ波を吸収して発熱する発熱部材30が設けられている。発熱部材30は、例えば、マイクロ波照射手段20から照射されるマイクロ波の一部を吸収して発熱し、一部を透過するものであることが好ましい。発熱部材30は、容器10内に配置される処理対象物2に沿って配置されている。処理対象物2に沿って配置される、ということは、例えば、処理対象物2の外周に沿って配置されることと考えてもよく、処理対象物2の周りに配置されることと考えてもよい。なお、発熱部材30と処理対象物2との間隔は、処理対象物2の長手方向や移動方向において一定であってもよく、異なっていてもよく、いずれの場合も、発熱部材30が処理対象物に沿って配置されていると考えてもよい。また、発熱部材30の、処理対象物2を介して対向する部分と、発熱部材30との間隔も、一定であってもよく、異なっていてもよく、いずれの場合も、発熱部材30が処理対象物に沿って配置されていると考えてもよい。ここでは、処理対象物2が容器10内を移動するため、発熱部材30は、処理対象物2の移動経路2aに沿って配置されている。例えば、発熱部材30の形状は、処理対象物2を覆う形状であればどのような形状であってもよい、発熱部材30の形状は、図2(a)に示すように、処理対象物2の外周を囲むように設けられた円筒形状であることが好ましいが、例えば、円筒以外の筒形状であってもよく、環状の形状であってもよく、図2(b)に示すように、処理対象物2の移動方向に対して垂直な断面がコの字となる形状であってもよい。また、発熱部材30は、図2(c)に示すように、処理対象物2を挟むよう配置された二つの板形状の部材であってもよい。また、発熱部材30は、部分的に膨らんだ筒形状や、部分的に凹んだ筒形状や、部分的に湾曲した筒形状等を有していても良い。
【0051】
発熱部材30は、図2(a)~図2(c)に示すように、照射されたマイクロ波を吸収して発熱する加熱媒体301と、加熱媒体301を支持する支持体302とを有している。加熱媒体301は、通常、支持体302の、処理対象物2に対向しない側面に設けられている。ここでの側面は、例えば、処理対象物2の移動方向に平行な面である。加熱媒体301は、例えば、カーボン、SiC、炭素繊維複合材料、珪素化モリブデン、珪素化タングステン等の金属珪素化物等の発熱体や、これらの発熱体の粉末等を含有するセラミック材料等で形成されている。加熱媒体301としては、例えば、発熱部材30に照射されるマイクロ波の一部を吸収して発熱し、照射されるマイクロ波の一部を透過可能な材料や厚さを有するものが用いられる。加熱媒体301としては、例えば、発熱部材30に照射されるマイクロ波の一部を透過可能な材料や厚さを有するものが用いられる。なお、加熱媒体として、マイクロ波を部分的に透過可能な厚さの金属層、例えば、厚さ数μmの金属層を用いてもよい。支持体302は、セラミックやガラス等のマイクロ波の透過性が高い材料で構成されている。加熱媒体301は、例えば、加熱媒体301の材料を支持体302の表面に塗布したり貼り付けたりすることで設けられる。なお、加熱媒体301が発熱体を含むセラミック等である場合のように、加熱媒体301だけで十分な強度等を有している場合、支持体302は省略してもよい。加熱媒体301としては、例えば、発熱部材30に照射されるマイクロ波の一部を透過可能な材料や厚さを有するものが用いられる。また、支持体302が、加熱媒体301の補強や、加熱媒体301の形を保つために用いられているものである場合、加熱媒体301だけを発熱部材30と考えてもよい。発熱部材30は、例えば、この発熱部材30に対するマイクロ波照射による発熱が、この発熱部材30を透過したマイクロ波による処理対象物2の発熱よりも大きくなるようなものであることが好ましく、発熱部材30は、例えば、この発熱部材30に対するマイクロ波照射による発熱が、この発熱部材30を透過したマイクロ波による処理対象物2の発熱よりも大きくなるような材質および厚さを有することが好ましい。この場合の発熱部材30の材質および厚さは、加熱媒体301の材質および厚さと考えてもよい。例えば、処理対象物2が、1本の前駆体繊維であるとした場合、円筒形の発熱部材30の内径は9-12mm、11-14mm程度であり、発熱部材30の厚さや、2-5mm程度である。ただし、これ以外のサイズとしてもよい。
【0052】
発熱部材30は、例えば、容器10内において、処理対象物2の長手方向や移動方向において、部分的に設けられていてもよく、容器10内における処理対象物2の長手方向や移動方向の全体にわたって設けられていてもよい。例えば、複数の発熱部材30が、処理対象物2の長手方向や移動方向に向かって、所望の間隔を隔てて配置されていてもよい。ここでは、図2(a)に示すような円筒形状の発熱部材30が、処理対象物2の移動経路2aに沿って部分的に配置されている場合について説明する。具体的には、図1に示すように、3つの円筒形状の発熱部材30が、それぞれの内部を処理対象物2が移動するよう、間隔を隔てて配置されている。なお、ここでは、3つの発熱部材30を、容器10の入口101a側から順番に、発熱部材30a~30cと表している。ただし、これらを区別する必要がない場合は、単に発熱部材30と呼ぶ。かかることは、他の照射部201や、照射部202、センサ40等についても同様である。各発熱部材30の処理対象物2の移動方向の長さ(以下、発熱部材30の長さと称す)、すなわち円筒形状の長手方向の長さは同じであってもよく、異なっていてもよく、それぞれの長さは問わない。例えば、処理対象物2が容器10内を移動している場合、発熱部材30の長さは、発熱部材30を利用した加熱時間に対応するものと考えてもよい。また、発熱部材30間の間隔は、等間隔であってもよく、等間隔でなくてもよく、それぞれの距離は問わない。例えば、処理対象物2が容器10内を移動している場合、この移動方向における発熱部材30間の間隔、最も入口101a側の発熱部材30と入口101aの距離、および最も出口101b側の発熱部材30と出口101bとの距離(以下、発熱部材が設けられていない部分の長さと称す)は、発熱部材30を利用しない加熱時間に対応するものと考えてもよい。また、発熱部材30と容器10の入口101aとの距離や、発熱部材30と容器10の出口101bとの距離は、等距離であってもよく、等距離でなくてもよく、その距離は問わない。また、ここでの円筒形状の発熱部材30の直径等は問わない。また、各発熱部材30の直径は同じであってもよく、異なっていてもよい。ここでは、発熱部材30は、処理対象物2と接しないが、発熱部材30の少なくとも一部が処理対象物と接するようにしてもよい。発熱部材30の側面は、容器10と接しないよう配置されている。
【0053】
なお、ここでは、説明の便宜上、3つの発熱部材30が設けられている場合について説明したが、発熱部材30の数は、1以上であればよい。例えば、容器10内を移動する炭素繊維の前駆体繊維の耐炎化処理にマイクロ波処理装置1を用いる場合には、発熱部材30を用いた加熱が必要な回数だけ、発熱部材を設けるようにすればよい。また、この場合、各発熱部材30の長さは、例えば、発熱部材30を用いた加熱に必要な時間に対応する長さとすればよく、発熱部材30が設けられていない部分の長さは、発熱部材30を用いない加熱に必要な時間に対応する長さとすればよい。また、処理対象物2の移動経路2aが、折れ曲がったりしている場合等において、折れ曲がる前の部分と折れ曲がった後の部分の両方に1以上の発熱部材30が配置されていてもよく、この場合、発熱部材30は、同一直線状に配置されていなくてもよい。
【0054】
マイクロ波照射手段20は、容器10内にマイクロ波を照射する。マイクロ波照射手段20は、例えば、容器10に対して取付けられている。マイクロ波照射手段20は、発熱部材30を加熱する第一のマイクロ波照射と、処理対象物2を加熱する第二のマイクロ波照射とを行なう。なお、発熱部材30を加熱する、とは、例えば、発熱部材30のみを加熱することであってもよく、発熱部材30を処理対象物2よりも強く加熱することであってもよい。また、処理対象物2を加熱する、とは、例えば、処理対象物2のみを加熱することであってもよく、処理対象物2を発熱部材30よりも強く加熱することであってもよい。ただし、第一のマイクロ波照射は、処理対象物2の加熱も行なう加熱であることが好ましい。
【0055】
第一のマイクロ波照射とは、例えば、マイクロ波照射による発熱部材30の発熱が、処理対象物2の発熱よりも大きくなるマイクロ波照射である。第一のマイクロ波照射は、発熱部材30の発熱が支配的となるマイクロ波照射と考えてもよい。ここでの発熱は、例えば、発熱量と考えてもよい。また、ここでの発熱部材30の発熱は、処理対象物2が、マイクロ波によって発熱した発熱部材30から受取る熱量と考えてもよい。
【0056】
第二のマイクロ波照射とは、例えば、マイクロ波照射による処理対象物2の発熱が、発熱部材30の発熱よりも大きくなるマイクロ波の照射である。第二のマイクロ波照射は、処理対象物2の発熱が支配的となるマイクロ波の照射と考えてもよい。ここでの発熱は、処理対象物2が、マイクロ波によって直接受取る熱量や加熱量と考えてもよい。
【0057】
本実施の形態においては、マイクロ波照射手段20が、第一のマイクロ波照射を行なう1または2以上の第一照射部201と、第二のマイクロ波照射を行なう1または2以上の第二照射部202とを有している場合について説明する。
【0058】
第一照射部201は、処理対象物2の移動経路2aの、発熱部材30が設けられている部分に対してマイクロ波を照射することで、発熱部材30を加熱する第一のマイクロ波照射を行なう。つまり、第一照射部201が行なう第一のマイクロ波照射は、処理対象物2の移動経路2aの、発熱部材30が設けられている部分に対するマイクロ波の照射である。なお、第一のマイクロ波照射においては、処理対象物2においても発熱も起こるようにすることが好ましい。例えば、第一照射部201が行なう第一のマイクロ波照射は、照射されたマイクロ波の一部の吸収による発熱部材30の発熱と、発熱部材30を透過したマイクロ波の一部の吸収による処理対象物2の発熱とが起こるマイクロ波照射であって、発熱部材30の発熱が、処理対象物2の発熱よりも大きくなるマイクロ波照射である。第一のマイクロ波照射は、発熱部材30の発熱による処理対象物2に対する外側からの加熱が、発熱部材30を透過したマイクロ波による処理対象物の直接加熱よりも高くなるような発熱部材30に対するマイクロ波の照射である。例えば、発熱部材30の材質や厚さ等は、発熱部材30で吸収されたマイクロ波および発熱部材30を透過したマイクロ波によって、処理対象物2等が上記のように加熱されるように設定することが好ましい。
【0059】
また、第二照射部202は、処理対象物2の移動経路2aの、発熱部材30が設けられていない部分に対してマイクロ波を照射することで、処理対象物2を加熱する第二のマイクロ波照射を行なう。つまり、第二照射部202が行なう第二のマイクロ波照射は、処理対象物2の移動経路2aの、発熱部材30が設けられていない部分に対するマイクロ波の照射である。第二照射部202が行なう第二のマイクロ波照射においては、マイクロ波を照射する位置に発熱部材30が設けられていないため、発熱部材30等の発熱によって、処理対象物2が外側から加熱されることがない。これにより、マイクロ波照射による処理対象物2の直接加熱が、マイクロ波照射された発熱部材30等による処理対象物2の外側からの加熱よりも高くなる。
【0060】
なお、以下、本実施の形態においては、一例として、図1に示すように、マイクロ波処理装置1が、3つの第一照射部201と3つの第二照射部202とを有している場合を例に挙げて示しているが、それぞれの数は問わない。ここでは、説明の便宜上、3つの第一照射部201を、容器10の入口101a側から順番に、第一照射部201a~201cと表し、3つの第二照射部202を、容器10の入口101a側から順番に、第二照射部202a~202cと表している。マイクロ波照射手段20が有する1または2以上の第一照射部201と1または2以上の第二照射部202は、マイクロ波の出力(例えば、ワット数等)を個別に変更可能なものであることが好ましい。例えば、第一照射部201および第二照射部202は、後述する制御手段50からの制御信号等に応じて出力が制御される。なお、図1に示すように、複数の発熱部材30が配列されているマイクロ波処理装置1においては、第一照射部201は、各発熱部材30にマイクロ波を直接照射可能な位置に1以上ずつ設けることが好ましく、第二照射部202は、例えば、各発熱部材30間の領域、最も入口101a側の発熱部材30と入口101aとの間の領域、および最も出口101b側の発熱部材30と出口101bとの間の領域のうちの少なくとも1以上の領域のそれぞれに対して、マイクロ波を直接照射可能な位置に1以上ずつ設けることが好ましい。
【0061】
各第一照射部201および第二照射部202は、例えば、マイクロ波発振器2001と、マイクロ波発振器2001が発生するマイクロ波を伝送して容器10内にマイクロ波を照射する伝送部2002とを備えている。マイクロ波発振器2001は、どのようなマイクロ波発振器2001であってもよく、例えば、マイクロトロンや、クライストロン、ジャイロトロン等であってもよく、半導体型発振器等であってもよい。各マイクロ波発振器2001が出射するマイクロ波の周波数や強度等は問わない。各マイクロ波発振器2001が出射するマイクロ波の周波数は、例えば、915MHzであっても良く、2.45GHzであってもよく、5.8GHzであってもよく、その他の300MHzから300GHzの範囲内の周波数であっても良く、その周波数は問わない。伝送部2002は、例えば、導波管や、マイクロ波を伝送する同軸ケーブル等である。
【0062】
各第一照射部201および第二照射部202は、例えば、容器10に取付けられ、容器10内にマイクロ波を照射する。例えば、各第一照射部201および第二照射部202は、伝送部2002のマイクロ波発振器2001が取付けられていない端部が、容器10の壁面等に設けられた開口部102に取付けられ、この開口部102を通じて、マイクロ波発振器2001が出射して、伝送部2002を伝送されたマイクロ波が、容器10内に照射される。伝送部2002の開口部102に取付けられる端部には、さらに、伝送部2002を伝送されたマイクロ波を照射するためのアンテナ(図示せず)等を設けるようにしてもよい。また、開口部102は、マイクロ波透過性の高いPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素化ポリマー、ガラス、ゴム、およびナイロン等の材料の板等で塞がれていてもよい。第一照射部201および第二照射部202は、マイクロ波を容器10内に照射可能なものであれば、上記以外のものであっても良い。
【0063】
各第一照射部201は、容器10内の、処理対象物2の移動経路2aの各発熱部材30が配置されている部分に対してマイクロ波が照射されるよう、容器10に取付けられている。ここでの部分とは領域と考えてもよい。例えば、各第一照射部201の伝送部2002の端部が、容器10の壁面の、移動経路2aの各発熱部材30が配置されている部分に対面する位置に設けられた開口部102にそれぞれ取付けられている。ここでは、一の発熱部材30が配置されている部分について設けられた一の開口部102に、一つの第一照射部201が設けられている例を示しているが、複数の第一照射部201が、一の発熱部材30が配置されている部分について設けられた複数の開口部102にそれぞれ取付けられていてもよい。
【0064】
各第二照射部202は、容器10内の、処理対象物2の移動経路2aの各発熱部材30が配置されてない部分に対してマイクロ波が照射されるよう、容器10に取付けられている。具体的には、複数の各第二照射部202は、発熱部材30同士の間の部分と、移動経路2aの最も後方に配置された発熱部材30と容器10の出口101bとの間の部分とに対してそれぞれマイクロ波が照射されるよう取付けられている。例えば、各第二照射部202の伝送部2002の端部が、容器10の壁面の、移動経路2aの発熱部材30が設けられていない部分に対面する位置に設けられた開口部102にそれぞれ取付けられている。ここでは、発熱部材30が設けられていない一の部分に対して設けられた一の開口部102に、1つの第一照射部201が設けられている例を示しているが、複数の第一照射部201が、発熱部材30が設けられていない一の部分について設けられた複数の開口部102にそれぞれ取付けられていてもよい。
【0065】
ここでは、各第一照射部201および第二照射部202が照射するマイクロ波は、同じ周波数のマイクロ波であるとする。ただし、複数の第一照射部201および複数の第二照射部202のうちの1以上が、他と異なる周波数のマイクロ波を照射するようにしてもよい。
【0066】
容器10内には、処理対象物の状況や、容器内の状況等の情報を取得する1以上のセンサ40が設けられている。センサ40は、どのような状況の情報を取得するセンサであってもよい。例えば、容器内の温度の情報を取得する温度センサであってもよく、容器内の湿度の情報等を取得する湿度センサ等であってもよい。あるいはマイクロ波による内部での放電を検知するセンサ等であってもよい。
【0067】
ここでは、センサ40が放射温度計であり、容器10内に、6つのセンサ40が設置されている場合を例に挙げて説明する。ここでは、説明の便宜上、6つのセンサ40を、容器10の入口101a側から順番に、センサ40a~40fと表している。放射温度計とは、物体から放射される赤外線や可視光線の強度を測定することで物体の温度を測定する温度計である。ここでは、放射温度計であるセンサ40a~40cは、各発熱部材30が設けられている領域から出る直前の処理対象物2の温度を測定するために、移動経路2aの発熱部材30が設けられている領域内の、出口101b側の近傍となる位置に設置されている。具体的には、センサ40a~40cは、それぞれ、水平方向の位置が発熱部材30a~30cの出口101b側近傍となるよう容器10に取付けられている。なお、ここでは、図示していないが、一例として、発熱部材30a~30cの、センサ40a~40cと、処理対象物2との間となる部分には、処理対象物2の温度を検出できるようにするための水平方向に伸びるスリット等の開口部が設けられているものとする。また、残りの放射温度計であるセンサ40d~40fは、各発熱部材30が設けられていない領域から出る直前の処理対象物2の温度を測定するために、移動経路2aの発熱部材30が設けられていない領域内の、出口101b側の近傍となる位置に設置されている。具体的には、センサ40d~40eは、それぞれ、容器10の、水平方向の位置が、各発熱部材30b~30cよりも処理対象物2の移動方向において手前となる位置に取付けられており、センサ40fは、出口101bの手前となる位置に取付けられている。ここではセンサ40は、例えば、処理対象物2から、移動経路2aに対して直交する方向に放射される赤外線等の強度を測定して、温度の情報を取得する。ただし、センサ40が取付けられている位置は、他の位置であってもよい。センサ40は、例えば、容器10の壁面に設けられた開口部等に取付けられている。なお、前駆体繊維は、例えば、何千本の繊維が撚られて厚さが1mm程度の一本の繊維となっているため、処理対象物2が前駆体繊維である場合、その表面温度は、前駆体繊維の内部の温度と同じとみなしてもよい。
【0068】
制御手段50は、マイクロ波照射手段20が照射するマイクロ波を制御する。例えば、制御手段50は、マイクロ波照射手段20が照射するマイクロ波の出力を制御する。例えば、制御手段50は、センサ40が取得する情報に応じてマイクロ波照射手段20が照射するマイクロ波の出力を制御する。
【0069】
ここでは、具体的には、制御手段50は、各発熱部材30が配置されている領域の出口101b側に配置されているセンサ40が取得する温度の情報を用いて、移動経路2aの各発熱部材30が配置されている領域に対してマイクロ波を照射する第一照射部201が照射するマイクロ波の出力をフィードバック制御する。また、制御手段50は、各発熱部材30が配置されていない領域の出口101b側に配置されているセンサ40が取得する温度の情報を用いて、移動経路2aの各発熱部材30が配置されていない領域に対してマイクロ波を照射する第二照射部202が照射するマイクロ波の出力をフィードバック制御する。ここでの発熱部材30が配置されている領域や発熱部材30が配置されていない領域とは、例えば、移動経路2aに対して垂直な仮想の面で区切られた領域である。例えば、センサ40aが取得する温度が、第一の閾値よりも高い場合、制御手段50は、対応する第二照射部202aが照射するマイクロ波の出力を下げ、第二の閾値よりも低い場合は、照射するマイクロ波の出力を上げる。ここでの第一閾値は、第二の閾値よりも高い値であるとする。
【0070】
なお、制御手段50が行なう制御は、フィードバック制御以外の制御であってもよい。また、制御手段50が、どのセンサ40が取得する情報に応じて、どの照射部の出力を制御するかは問わない。例えば、制御手段50は、複数のセンサ40の出力に応じて、1以上の照射部の出力を制御してもよい。また、制御手段50は、1のセンサ40の出力に応じて、複数の照射部の出力を制御してもよい。
【0071】
また、1以上のセンサ40により、1以上の発熱部材30や、一の発熱部材30の異なる位置における温度等の、発熱部材30の状況を示す情報を取得し、この状況を示す情報を用いて、制御部50が、1以上の照射部の出力を制御(例えば、フィードバック制御等)してもよい。例えば、各発熱部材30の温度の情報を取得する各センサ40が取得した各発熱部材30の温度の情報を用いて、各発熱部材30に対してそれぞれ行なわれる第一のマイクロ波照射に用いられるマイクロ波の出力をフィードバック制御してもよい。
【0072】
また、センサ40の一部を、発熱部材30の、第一のマイクロ波照射が行なわれる部分の温度の情報を取得する第一のセンサとして設け、センサ40の一部を、処理対象物2の、第二のマイクロ波照射が行なわれる部分の温度の情報を取得する第二のセンサとして設け、制御手段50が、第一のセンサが取得する温度の情報を用いて、第一のマイクロ波照射に用いられるマイクロ波の出力をフィードバック制御し、第二のセンサが取得する温度の情報を用いて、第二のマイクロ波照射に用いられるマイクロ波の出力をフィードバック制御するようにしてもよい。例えば、発熱部材30a~30cの、センサ40a~40cと処理対象物2との間となる部分にスリット等を設けないようにして、第一のセンサであるセンサ40a~40cが発熱部材30a~30cの温度の情報を取得するようにし、制御手段50が、センサ40a~40cがそれぞれ取得した発熱部材30a~30cの温度の情報を用いて、第一照射部201a~201cがそれぞれ照射するマイクロ波の出力をフィードバック制御するとともに、第二のセンサ40d~40fがそれぞれ取得した発熱部材30が設けられていない領域の処理対象物2の温度の情報を用いて、第二照射部202a~202cが照射するマイクロ波の出力をフィードバック制御するようにしてもよい。このようにすることで、第一のマイクロ波照射による発熱部材30の加熱と、第二のマイクロ波照射による処理対象物2の加熱とを適切に制御することが可能となる。
【0073】
搬送手段60は、容器10内において処理対象物2を搬送する手段である。搬送手段60は、容器10内に設けられていてもよく、容器10外に設けられていてもよい。ここでは、一例として、搬送手段60が、容器10の入口101a側において、処理対象物2である前駆体繊維が巻付けられたリール61を回転可能に保持する保持部62と、処理対象物2の移動方向を変更して、処理対象物2を入口101aから容器10内に送り込むローラ63と、容器10の出口101bから出てくる処理対象物2の移動方向を変更するローラ64と、ローラ64で移動方向が変更された処理対象物2を巻き取る巻き取り部65とを備えている場合を示している。ただし、搬送手段60としてどのような搬送手段を用いてもよい。また、複数の処理対象物2を、容器10内に移動させる場合、複数の搬送手段60を有していても良い。
【0074】
次に、本実施の形態のマイクロ波処理装置1の動作について具体例を挙げて説明する。ここでは、マイクロ波処理装置1を用いて、処理対象物2であるPAN系前駆体繊維の耐炎化処理を行なう場合を例に挙げて説明する。なお、ここでは説明を簡略化するために、図1に示したマイクロ波処理装置1を用いて説明を行なう。処理対象物2は、例えば、幅5~10mm程度、厚さ1mm~2mm程度の前駆体繊維である。照射するマイクロ波としては、例えば、周波数が、915MHzまたは2.45GHzであり、出力が6~20KWのものが用いられる。
【0075】
まず、処理対象物2であるPAN系前駆体繊維を、その一端側が、入口101aから容器10内に入り、円筒形状の発熱部材30a~30cのそれぞれの内側を通って、出口101bから容器10の外にでるよう、搬送手段60にセットする。そして、搬送手段60により、処理対象物2を容器10内で移動させる。搬送手段60の搬送速度は、例えば、予め決められた速度に制御する。また、第一照射部201a~201cおよび第二照射部202a~202cからマイクロ波の照射を開始する。なお、ここでは、第一照射部201a~201cおよび第二照射部202a~202cが照射するマイクロ波の周波数は同じ周波数(例えば、2.45GHz)であるとする。搬送手段60の搬送速度は、例えば、制御手段50や図示しない制御手段等により、予め決められた速度に制御する。制御手段50は、各第一照射部201a~201cおよび第二照射部202a~202cが照射するマイクロ波が、予め個別に決められた出力のマイクロ波を照射するよう、各第一照射部201a~201cおよび第二照射部202a~202cを制御する。
【0076】
処理対象物2の入口101aから容器10内に入り、発熱部材30の内側に入った部分は、第一照射部201が照射するマイクロ波の一部を吸収することによって発熱する発熱部材30からの輻射熱によって外側から加熱されるとともに、第一照射部201から照射されたマイクロ波のうちの発熱部材30で吸収されずに透過したマイクロ波によって直接加熱される。ここでは、例えば、第一照射部201a~201cが照射するマイクロ波を、発熱部材30a~30cが吸収することによって起こる発熱量が、発熱部材30を透過したマイクロ波による処理対象物2の発熱量よりも十分大きくなるような材質や厚さに設定しているとすると、この発熱部材30の内側の領域においては、処理対象物2に対する加熱は、発熱部材30を透過したマイクロ波による直接加熱よりも、発熱部材30による外部からの加熱の方が強くなる。なお、第一照射部201a~201cから照射されるマイクロ波の出力は、センサ40a~40cがそれぞれ取得する処理対象物2の温度に応じてフィードバック制御され、処理対象物2が所望の範囲の温度となるよう制御される。
【0077】
処理対象物2の発熱部材30の内側に入っていた部分が外側に出ると、発熱部材30の直後の発熱部材30が設けられていない領域に入り、発熱部材30を介さずに第二照射部202からマイクロ波の照射を受け、マイクロ波によって発熱する。すなわち、マイクロ波で直接加熱される。この発熱部材30が設けられていない領域においては、発熱部材30の発熱による処理対象物の加熱が行われないため、マイクロ波による直接加熱が、発熱部材30等による外部からの加熱よりも強くなる。なお、第二照射部202a~202cから照射されるマイクロ波の出力は、センサ40d~40fがそれぞれ取得する処理対象物2の温度に応じてフィードバック制御され、処理対象物2が所望の範囲の温度となるよう制御される。
【0078】
このようにして、第一照射部201および第二照射部202により、容器10内を移動する処理対象物2に対して、発熱部材30からの加熱が強い加熱と、マイクロ波照射による直接加熱が強い加熱とを適宜切り替えて行うことができる。これにより、例えば、処理対象物2に対する外側からの加熱と、処理対象物2への直接加熱とを適宜切り替えて、処理対象物2を外側からの加熱や直接加熱とが偏らないよう均等に加熱すること等が可能となる。
【0079】
特に、耐炎化処理が行なわれていないPAN系前駆体繊維においては、マイクロ波が吸収されにくいため、第一照射部201によって発熱部材30をマイクロ波照射によって加熱している際にも、発熱部材30を透過したマイクロ波によって、処理対象物2を直接加熱することで、第二照射部202によって処理対象物2を加熱する時間を削減することができる。
【0080】
また、加熱によって処理対象物2がある温度に達すると、処理対象物2の発熱がピークに達し、処理対象物2が急激に発熱して、処理対象物2が炭化したりして、所望の処理が行えなくなる場合がある。例えば、加熱によって処理対象物2である前駆体繊維がある温度に達すると、酸化によって前駆体繊維の発熱がピークに達して、前駆体繊維が炭化してしまう場合がある。特に、第二のマイクロ波照射によって処理対象物2を直接加熱によって強く加熱する場合、熱効率がよく、また発熱箇所が一箇所に集中したりすることにより、発熱のピークの直前の温度から短時間で発熱のピークとなる温度まで加熱されるため、発熱のピークの前後における加熱のコントロールが困難となる。このため、第二のマイクロ波照射を行なって処理対象物を加熱している場合において、処理対象物2の温度が発熱のピークとなる温度の手前の温度になった時点で、第二のマイクロ波照射から第一のマイクロ波照射に切替わるように発熱部材30を配置することで、処理対象物2の加熱を、発熱部材30からの輻射熱による加熱として、急速な加熱を抑えて、炭化等を抑えることが可能となる。
【0081】
例えば、図1に示すようなマイクロ波処理装置1のように、処理対象物2を容器10内において移動させて加熱する場合、移動速度と、第一照射部201および第二照射部202の数や、配置、出力等により、処理対象物2がどの位置に達した時点で、発熱のピークとなるかを予め知ることができる。この位置は実験等で検出してもよい。このため、例えば、処理対象物2の移動経路2aの、処理対象物2の温度が、発熱のピークとなる位置や、この位置およびその前後を覆う位置に発熱部材30を配置し、この発熱部材30に対して第一照射部201からマイクロ波を照射することにより、処理対象物2が発熱のピークに達した場合の急激な加熱を避けて、処理対象物2を適切に処理することが可能となる。また、この発熱のピークとなる位置を含まない位置においては、適宜、発熱部材30を配置したり、配置しなかったりすることで、移動する処理対象物2に対する第一のマイクロ波照射と、第二のマイクロ波照射との切替えを行なって、処理対象物2に対して均等な加熱や、所望の加熱を行なうことができる。なお、処理対象物の発熱のピークとなる温度は、例えば、TG-TDA測定(熱重量・示差熱測定)等により測定可能である。
【0082】
なお、この具体例における発熱部材30の数や、第一照射部201および第二照射部202の数や配置等は一例であり、発熱部材30の数や、第一照射部201および第二照射部202の数や配置等は問わない。
【0083】
以上、本実施の形態においては、容器内において、発熱部材を加熱する第一のマイクロ波照射と、処理対象物を加熱する第二のマイクロ波照射とを行なうようにしたので、マイクロ波を用いて処理対象物を適切に処理することができる。例えば、マイクロ波によって発熱させた発熱部材による処理対象物の外側からの加熱と、マイクロ波によって処理対象物を発熱させることによる直接加熱との組み合わせや比率を制御して、適切な加熱を行なうことができる。
【0084】
また、第一のマイクロ波照射を第一照射部201で行い、第二のマイクロ波照射を第二照射部202で行うことにより、第一のマイクロ波照射の出力と、第二のマイクロ波照射の出力を個別に制御することが可能となり、処理対象物に対する加熱を細かく制御することができ、高品質な処理結果を得ることができる。
【0085】
なお、図2(d)に示すように、発熱部材30の処理対象物2側の少なくとも一部に、マイクロ波を透過させない非透過部303を設けるようにしてもよい。図2(d)は、図2(a)で示した筒状の発熱部材30の内側に、非透過部303を設けた発熱部材30の例を示すための、処理対象物2の移動方向に沿った断面図である。発熱部材30の処理対象物2側の少なくとも一部は、発熱部材30の処理対象物2側の一部であることが好ましいが、発熱部材30の処理対象物2側の全てであってもよい。発熱部材30の処理対象物2側の少なくとも一部は、例えば、図2(d)に示すように、円筒形状の発熱部材30の内側の一部である。複数の発熱部材30が容器10内に設けられている場合、ここでの発熱部材30の処理対象物2側の一部は、複数の発熱部材30のうちの一以上の処理対象物側の全面であってもよい。非透過部303は、マイクロ波を透過させないとともに、熱伝導性のよい材質で構成することが好ましい。このような非透過部303の材質としては、例えば、グラファイトや金属等が利用可能である。なお、支持体302の一部の代わりに、非透過部303を用いてもよく、この場合も、発熱部材30の処理対象物2側に非透過部303が設けられていると考えてもよい。このような非透過部303を設けることにより、非透過部303を設けた部分においては処理対象物2に対してマイクロ波が照射されないようにして、処理対象物2の直接加熱を行わないようにできるとともに、発熱部材30の発熱により、処理対象物2を外側から加熱することができる。なお、他の実施の形態においても同様に発熱部材30の少なくとも一部に非透過部を設けてもよい。
【0086】
なお、上記において、発熱部材30の厚さは均等な厚さであってもよく、均等な厚さでなくてもよい。発熱部材30の厚さが均等な厚さでないということは、異なる厚さの部分が混在していることも含む概念である。発熱部材30の厚さは、発熱部材30の加熱媒体301の厚さと考えてもよい。例えば、発熱部材30の厚さは、発熱部材30の長手方向や、処理対象物2の移動方向において均等な厚さであってもよく、均等な厚さでなくてもよい。例えば、容器10内に複数の発熱部材30が配置される場合、複数の発熱部材30のうちの1以上(ただし、全部を除く)の厚さが、他の発熱部材30とは異なる厚さであってもよい。この場合、複数の発熱部材30のそれぞれの厚さは、長手方向や処理対象物2の移動方向において均一な厚さであってもよい。かかることは、以下においても同様である。
【0087】
例えば、上記の図1に示したようなマイクロ波処理装置において、処理対象物2の移動経路2aの、発熱部材30が設けられていない部分に対して行なうマイクロ波照射を第二のマイクロ波照射とする代わりに、発熱部材30が設けられていない1以上の部分に、発熱部材30よりも厚さの薄い第二の発熱部材(図示せず)を設け、この第二の発熱部材に対して第二照射部202から行なうマイクロ波照射を、第二のマイクロ波照射としてもよい。第二の発熱部材の厚さを薄くすることで、照射されるマイクロ波の浸透深さが変化するため、第二の発熱部材の厚さを調節することで、第二の発熱部材に照射されるマイクロ波の第二の発熱部材による吸収を低減して、第二の発熱部材を透過するマイクロ波を増加させて、処理対象物2を第二の発熱部材よりも強く加熱することができる。また、この場合、第二の発熱部材の発熱によって、処理対象物2を外側からも加熱できる。
【0088】
なお、複数の発熱部材30について、その1以上の厚さを他の発熱部材30とは異なる厚さとしてもよい。これにより、発熱部材30で吸収されるマイクロ波を、発熱部材30の厚さによって変更して、第一のマイクロ波照射による、発熱部材30の加熱と、発熱部材30の加熱との割合を変更することが可能となる。かかることは、第二の発熱部材30を用いた第二のマイクロ波照射においても同様である。また、かかることは、以下においても同様である。
【0089】
また、上記において、発熱部材30の材質を、発熱部材30の長手方向や、処理対象物2の移動方向において同じ材質としてもよく、異なる材質としてもよい。異なる材質とは、組成や成分、材料比等が異なる材質であってもよい。発熱部材30が異なる材質であるということは、異なる材質の部分が混在していることも含む概念である。ここでの発熱部材30の材質は、発熱部材30の加熱媒体301の材質と考えてもよい。例えば、容器10内に複数の発熱部材30が配置される場合、複数の発熱部材30のうちの1以上の材質(ただし、全部を除く)が、他の発熱部材30とは異なる材質であってもよい。また、3以上の発熱部材30が、3以上の異なる材質の発熱部材30で構成されていてもよい。この場合、複数の発熱部材30のそれぞれの材質は、均一な材質であってもよい。かかることは、以下においても同様である。
【0090】
例えば、上記の図1に示したようなマイクロ波処理装置において、処理対象物2の移動経路2aの、発熱部材30が設けられていない部分に対して行なうマイクロ波照射を第二のマイクロ波照射とする代わりに、発熱部材30が設けられていない1以上の部分に、発熱部材30とは材質が異なる第二の発熱部材(図示せず)を設け、この第二の発熱部材に対して第二照射部202から行なうマイクロ波照射を、第二のマイクロ波照射としてもよい。第二の発熱部材の組成を変えることで、照射されるマイクロ波の浸透深さ等が変化するため、第二の発熱部材の組成を選択することで、第二の発熱部材に照射されるマイクロ波の第二の発熱部材による吸収を低減して、第二の発熱部材を透過するマイクロ波を増加させて、処理対象物2を第二の発熱部材よりも強く加熱することができる。また、この場合、第二の発熱部材の発熱によって、処理対象物2を外側からも加熱できる。
【0091】
なお、複数の発熱部材30について、その1以上の材質を他の発熱部材30とは異なる材質としてもよい。これにより、発熱部材30で吸収されるマイクロ波を、発熱部材30の材質によって変更して、第一のマイクロ波照射による、発熱部材30の加熱と、発熱部材30の加熱との割合を変更することが可能となる。かかることは、第二の発熱部材30を用いた第二のマイクロ波照射においても同様である。また、かかることは、以下においても同様である。
【0092】
なお、発熱部材30や第二の発熱部材の材質および厚さの組合せを変えてもよいことはいうまでもない。
【0093】
また、上記においては、処理対象部2が移動する例について説明したが、処理対象部2が容器10内を移動しないようにし、処理対象物2を、容器10内に静置できるようにしてもよい。かかることは、他の実施の形態においても同様である。なお、移動が不要な場合、搬送手段60は省略してもよい。
【0094】
(第一の変形例)
図3は、本実施の形態のマイクロ波処理装置1の第一の変形例を示す図である。この第一の変形例のマイクロ波処理装置1は、発熱部材30が筒形状を有するマイクロ波処理装置1において、発熱部材30の内側に酸素を供給するためのガス供給手段70をさらに設けたものである。ガス供給手段70は、酸素ボンベや、酸素発生器等の酸素を供給する供給部701と、例えば、一端が発熱部材30の内側に開口するよう発熱部材30と取り付けられ、他端が供給部701と接続された酸素を供給する管702と、この管702の経路に挿入された酸素の供給量を調節するバルブ703とを備えている。管702の一端が発熱部材30に取り付けられる位置は問わない。このバルブ703は、例えば、制御手段50等によって制御されてもよく、ユーザの操作等に応じて制御されるようにしても良い。ここでの酸素を供給する、ということは、例えば、容器10内の空気等の気体よりも酸素濃度が高い気体(例えば、空気に酸素を加えた気体)等を供給することも含む概念である。なお、複数のガス供給手段70が、一の供給部701を共用してもよい。また、供給部701の代わりに外部の供給部(図示せず)等を用いる場合等においては、ガス供給手段70は、供給部701を有していなくても良い。
【0095】
なお、発熱部材30の内側に供給された酸素が、発熱部材30の外側に逃げにくくするために、発熱部材30の処理対象物2が出入りする両端は、処理対象物2を出入り可能とするための開口部を除いて塞ぐようにしても良い。
【0096】
また、ここでは、ガス供給手段70を、複数の発熱部材30の全てに対して個別に設けた場合について説明したが、ガス供給手段70を、複数の発熱部材30の一部にだけ設けるようにしても良い。
【0097】
このように、ガス供給手段70によって、発熱部材30内に酸素を供給することで、酸素濃度を制御して、マイクロ波処理装置1において行われる処理を適切に制御することが可能となる。例えば、処理対象物に応じて酸素を供給することで、処理時間の短縮や処理の均一化を促進することが可能となる。
【0098】
なお、かかるガス供給手段70を設けてもよいことは、他の実施の形態の筒形状の発熱部材等を有するマイクロ波処理装置においても同様である。
【0099】
また、上記において、ガス供給手段70は、酸素以外の所定のガスを供給するようにしてもよい。例えば、所定のガスは、窒素ガスや、アルゴンガス等の希ガスや、水素ガスや、これらの1以上の組合せである。ここでの所定のガスを供給する、ということは、例えば、容器10内の空気等の気体よりも所定のガスの濃度が高い気体(例えば、空気に所定のガスを加えた気体)等を供給することも含む概念である。ガス供給手段70の構成は、例えば、供給部701が供給するガスが所定のガスである点を除けば上記と同様である。なお、容器10内が空気以外のガスで満たされている場合、ガス供給手段70が供給するガスは空気であってもよい。また、異なる発熱部材30に接続されているガス供給手段70がそれぞれ供給するガスは、同じガスであってもよく、異なるガスであってもよい。また、異なる発熱部材30に接続されているガス供給手段70がそれぞれ供給するガスは所定の濃度が異なるガスであってもよく、組成比が異なるガスであってもよい。
【0100】
(第二の変形例)
図4(a)および図4(b)は、本実施の形態のマイクロ波処理装置1の第二の変形例を示す図である。この第二の変形例のマイクロ波処理装置1は、図4(a)および図4(b)に示すように、発熱部材として、発熱部材30の代わりに、処理対象物2の容器内における搬送を補助する部材であって、処理対象物2に接触する部分を有しており、この処理対象物2に接触する部分にマイクロ波を吸収して発熱する加熱媒体を有するローラやベルト等の部材を用いるようにしたものである。なお、図4(a)および図4(b)においては、容器10aおよび容器10bは、容器10に相当する容器である。なお、ここでは説明を省略しているが、図4(a)および図4(b)に示したマイクロ波処理装置1の変形例も、図1に示した制御手段50と同様の制御手段やセンサ40と同様のセンサを有していても良く、センサの出力に応じて、マイクロ波の出力のフィードバック制御等を行なうようにしてもよい。
【0101】
例えば、図4(a)においては、移動経路2aが容器10aの外側に設けられた複数のローラ11で多層状に折り返された経路となっており、容器10aは、この移動経路2aの折り返しの部分以外の部分を覆う形状を有しており、移動経路2aの折り返しの部分近傍に、それぞれ、処理対象物2が出し入れするための複数の入口101aと、出口101bとが設けられている。ローラ11のサイズ等は問わない。また、図4においては、容器10aは、移動経路2aを複数の領域に区切るように設けられた2つのキャビティ110aおよび110bを有しており、複数の入口101aおよび出口101bは、それぞれの各キャビティ110aおよび110bの処理対象物2が出入りする開口部として設けられている。
【0102】
キャビティ110a内には、上述したような加熱媒体を表面に有する発熱部材である複数のベルト32aが、移動経路2aを移動する処理対象物2を上下等から挟み込んで接触するよう、ローラ33に架け渡されている。ベルト32aの材質は、例えば、マイクロ波を一部透過可能な材質であるとする。そして、上述した第一照射部201が、移動経路2aのベルト32aに挟み込まれた部分に対してマイクロ波を照射するように設けられている。ベルト32は、例えば、ローラ33がモータ等によって回転することで、隣接する移動経路2aの移動方向に移動する。なお、ベルト32aとして、全体が、マイクロ波によって発熱するベルトを用いてもよい。例えば、上述したような加熱媒体等を含む材料をベルト32aの材料として用いてもよい。ベルト32aの素材としては、耐熱性樹脂や、グラファイト繊維等が利用可能である。ベルト32a表面の加熱媒体としてはカーボン、SiC、炭素繊維複合材料、珪素化モリブデン、珪素化タングステン等の金属珪素化物等の発熱体や、これらの発熱体の粉末等を含有するセラミック材料等が利用可能である。
【0103】
また、キャビティ110b内には、複数のベルト32bが、移動経路2aを移動する処理対象物2を上下等から挟み込んで接触するよう、ローラ33に架け渡されている。このベルト32bの材質は、マイクロ波透過性が高い材質である。また、このベルト32bは、表面に、上述したような加熱媒体を有していないものとする。そして、上述した第二照射部202が、移動経路2aのベルト32bに挟み込まれた部分に対してマイクロ波を照射するように設けられている。ベルト32bは、例えば、ローラ33がモータ等によって回転することで、隣接する移動経路2aの移動方向に移動する。
【0104】
なお、ベルト32aおよび32bの、処理対象物2を挟み込んでいる部分は、ローラ33の近傍部分以外が処理対象物2に接触するよう設けられている。ただし、部分的には接触していない箇所があってもよい。
【0105】
ベルト32aは、処理対象物2に接することによって搬送を補助して、処理対象物2に処理中にたるみが生じて、処理対象物2が切れたり、加熱が不均一になったりすることを防止する。また、キャビティ110a内においては、マイクロ波の照射によってベルト32aの表面が発熱して、発熱により発生する輻射熱で、ベルト32近傍の処理対象物を加熱されることで、第一照射部201によって上述したような第一のマイクロ波照射が行なわれるとともに、処理対象物2のベルト32が接触する部分を熱伝導により効率よく加熱することができる。
【0106】
また、ベルト32bは、ベルト32aと同様に、処理対象物2に接することによって搬送を補助して、処理対象物2に処理中にたるみが生じて、処理対象物2が切れたり、加熱が不均一になったりすることを防止する。また、キャビティ110b内のベルト32bの表面は、マイクロ波の照射によりほとんど発熱せず、ベルト32bを透過したマイクロ波で処理対象物2が直接加熱されることとなるため、第二照射部202により上述したような第二のマイクロ波照射を行なうことができる。
【0107】
なお、ベルト32bを用いる代わりに、ベルト32bを省略して、このベルト32bが省略された部分にマイクロ波を照射することで、第二のマイクロ波照射を行なうようにしても良い。
【0108】
また、ここでは、容器10が二つのキャビティ110aおよび110bを有している場合について説明したが、容器10が有するキャビティ数は、1または2以上であればよく、その数は問わない。また、各キャビティのサイズ等は問わない。また、第一照射部201によりマイクロ波を照射するキャビティと、第二照射部202によりマイクロ波を照射するキャビティとの数や、その移動経路2aに沿った配置順序等は問わない。また、容器10が有する複数のキャビティ同士は、接続されて配置されていてもよく、分離して配置されていてもよい。例えば、同じ処理対象物2に対して上記のような処理を行なうために接続して配置された複数のキャビティや、分離して配置された複数のキャビティを、一の容器10と考えてもよい。また、一のキャビティから外部に移動した処理対象物2を、再度、同じキャビティ内に戻すようにしてもよい。なお、容器10が、2以上のキャビティを有していても良いことは、図4(a)に示したマイクロ波処理装置以外のマイクロ波処理装置についても同様である。
【0109】
また、図4(a)に示したマイクロ波処理装置1において、容器10として、複数のキャビティに区切られていない容器を用いるようにし、この容器10内において、上記のような1以上のベルト32aおよび32bを設け、ベルト32aに1以上の第一照射部201から第一のマイクロ波照射を行ない、ベルト32bに1以上の第二照射部202から第二のマイクロ波照射を行なうようにしても良い。
【0110】
なお、ここでの容器10aの形状や、移動経路2aは一例であり、容器10の形状や、処理対象物2の移動経路は、どのような形状や移動経路であってもよい。
【0111】
また、例えば、図4(b)に示すように、表面に加熱媒体を有する複数のローラ31aを、移動経路2aを移動する処理対象物2と表面が接するよう配置し、表面に加熱部材を有さず、マイクロ波をほとんど吸収しない複数のローラ31bを、この複数のローラ31aが設けられている領域とは異なる領域において、移動経路2aを移動する処理対象物2と表面が接するよう配置し、移動経路2aのローラ31aが設けられている領域にマイクロ波を照射する第一照射部201を設け、移動経路2aのローラ31bが設けられている領域にマイクロ波を照射する第二照射部202を設け、第一照射部201および第二照射部202からマイクロ波を照射するようにしてもよい。なお、ローラ31aとして、全体が、マイクロ波によって発熱するローラを用いてもよい。例えば、上述したような加熱媒体等を含む材料をローラ31aの材料として用いてもよい。ローラ31aの素材としては、耐熱性樹脂や、セラミックス、ガラス、グラファイト等が利用可能である。ベルト32a表面の加熱媒体としてはカーボン、SiC、炭素繊維複合材料、珪素化モリブデン、珪素化タングステン等の金属珪素化物等の発熱体や、これらの発熱体の粉末等を含有するセラミック材料等が利用可能である。
【0112】
例えば、図4(b)においては、移動経路2aが容器10aの外側に設けられた複数のローラ11により多層状に折り返された経路となっており、容器10aは、この移動経路2aの折り返しの部分以外の部分を覆う形状を有しており、移動経路2aの折り返しの部分近傍に、それぞれ、処理対象物2が出し入れするための複数の入口101aと、出口101bとが設けられている。ローラ11のサイズ等は問わない。
【0113】
複数のローラ31aは、処理対象物2に接することによって搬送を補助して、処理対象物2に処理中にたるみが生じて、処理対象物2が切れたり、加熱が不均一になったりすることを防止する。また、複数のローラ31aは、上述した加熱部材として用いられることとなり、マイクロ波照射によって表面が発熱して、発熱により発生する輻射熱で、ローラ31近傍の処理対象物を加熱するとともに、処理対象物2のローラ31が接触する部分を熱伝導により効率よく加熱することができる。これにより、第一照射部201が行なうマイクロ波照射が第一のマイクロ波照射となる。
【0114】
複数のローラ31bは、処理対象物2に接することによって搬送を補助して、処理対象物2に処理中にたるみが生じて、処理対象物2が切れたり、加熱が不均一になったりすることを防止する。また、複数のローラ31bは、マイクロ波照射によってほとんど発熱せず、ローラ31bを透過したマイクロ波で処理対象物2が直接加熱されることとなるため、第二照射部202により、上述したような第二のマイクロ波照射を行なうことができる。
【0115】
このローラ31aおよびローラ31bは、モータ(図示せず)等と接続されて自転するものであってもよく、自転しないものであっても良い。また、ローラ31aおよびローラ31bの数は、1以上であればよい。
【0116】
なお、ローラ31bを用いる代わりに、ローラ31bを省略して、このローラ31bが省略された部分にマイクロ波を照射することで、第二のマイクロ波照射を行なうようにしても良い。
また、ローラ31aとローラ31bとの配置や配列順番等は、上記以外の配置や配列順番であってもよい。また、ローラ31aとローラ31bとの数は問わない。
【0117】
また、図4(b)に示したような容器10bの代わりに、図4(a)に示したような複数のキャビティを有する容器を用いるようにしてもよい。そして、例えば、キャビティ毎に、第一照射部201または、第二照射部202を取付け、第一照射部201が取付けられたキャビティ内にはローラ31aを配置し、第二照射部202が取付けられたキャビティ内にはローラ31bを配置するようにしてもよい。
【0118】
(実施の形態2)
図5は、本実施の形態におけるマイクロ波処理装置を説明するための、処理対象物の移動方向に平行な断面図(図5(a))、同マイクロ波処理装置の発熱部材の図5(a)の点Aを通る長手方向に垂直な断面模式図(図5(b))、および同マイクロ波処理装置の発熱部材の点Bを通る長手方向に垂直な断面模式図(図5(c))である。本実施の形態のマイクロ波処理装置1aは、マイクロ波照射手段21が異なる位置から出力する複数のマイクロ波の位相を制御することで、第一のマイクロ波照射と、第二のマイクロ波照射とを行なうようにしたものである。
【0119】
マイクロ波処理装置1aは、容器10cと、マイクロ波照射手段21と、発熱部材30と、1または2以上のセンサ40と、制御手段51と、搬送手段60とを備えている。
【0120】
容器10cは、マイクロ波照射手段21が有する後述する2以上の照射部203が取付けられることを除けば、上記実施の形態において図1に示した容器10と同様のものである。また、容器10cとしては、上記実施の形態において説明したような容器が利用可能であり、例えば、複数のキャビティを有する容器等も利用可能である。
【0121】
容器10内には、一本の筒形状の発熱部材30が処理対象物2の移動経路2aに沿って設けられている場合について説明する。ただし、発熱部材30は複数であってもよい。なお、発熱部材30としては、上記実施の形態において説明した発熱部材30と同様のものが利用可能である。
【0122】
マイクロ波照射手段21は、異なる位置からマイクロ波を照射する2以上の照射部203を備えている。マイクロ波照射手段21は、例えば、容器10cの壁面の異なる位置に設けられた開口部102に取付けられて、容器10c内にマイクロ波を照射する2以上の照射部203を備えている。2以上の照射部203のうちの少なくとも一部は、照射するマイクロ波の位相を制御可能な照射部203である。位相を制御可能な照射部203は、例えば、上記実施の形態において説明したマイクロ波発振器2001と、伝送部2002とを備えた照射部203において、さらに、位相を制御可能な移相器(図示せず)を備えたものである。位相を制御可能な照射部203が有するマイクロ波発振器2001としては、半導体型発振器を用いることが好ましい。位相を制御しない照射部203については、上記実施の形態の第一照射部201や第二照射部202と同様の照射部が利用可能である。ただし、照射するマイクロ波の位相を制御可能な照射部203は、位相が制御可能であれば、どのような構成であってもよい。ここでの位相の制御は、位相を特定の位相に設定することも含むと考えてもよい。
【0123】
本実施の形態のマイクロ波処理装置1aは、2以上の照射部203が照射するマイクロ波の位相を制御して、2以上の照射部203が照射するマイクロ波が発熱部材30において強めあう第一のマイクロ波照射と、2以上の照射部203が照射するマイクロ波が処理対象物2において強めあう第二のマイクロ波照射とを行なうものである。例えば、マイクロ波処理装置1aは、後述する制御手段51等によって、個々の照射部203が照射するマイクロ波の位相を制御することで、第一のマイクロ波照射と、第二のマイクロ波照射とを行なう。マイクロ波が強めあう、ということは、例えば、マイクロ波の強度が強めあうことである。例えば、マイクロ波が強めあう、ということは、マイクロ波の電界強度が強めあうことであってもよく、磁界強度が強めあうことであっても良く、その両方であってもよい。例えば、マイクロ波処理装置1aは、制御手段51等を用いて、2以上の照射部が照射するマイクロ波の位相を制御して、それぞれから照射されるマイクロ波の位相が所望の位置で干渉により強めあうようにする。例えば、マイクロ波処理装置1aは、制御手段51等を用いて、2以上の照射部が照射するマイクロ波の位相を制御して、それぞれから照射されるマイクロ波の位相が所望の位置で同位相となるようにすることで、マイクロ波を強めあうようにする。マイクロ波を所望の位置で強めあうようにすることは、マイクロ波を所望の位置で集中させることと考えてもよい。また、マイクロ波処理装置1aは、所望の位置で干渉により強めあわないにすることで、マイクロ波を強めないようにする。また、マイクロ波処理装置1aは、所望の位置で同位相とならない、例えば、逆移相となるようにすることで、マイクロ波を強めないようにする。複数の位置から照射されるマイクロ波が所望の位置において強めあうようにするためには、照射部203が照射するマイクロ波がいずれも同じ周波数とした場合、例えば、所望の位置と、マイクロ波を照射するそれぞれの位置との距離を、マイクロ波の波長で除算し、その余りをマイクロ波の波長で除算して2πを乗算した値だけ基準となる位相に対して進めるように設定してもよい。ただし、どのように、所望の箇所で同位相となるようマイクロ波の位相を制御するかは問わない。なお、マイクロ波の位相を制御してマイクロ波の強度を所望の位置で高める処理等については、例えば、特開2017-212237号公報等により公知であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0124】
2以上の照射部203が照射するマイクロ波の位相を制御して行なわれる第一のマイクロ波照射は、例えば、処理対象物2の所望の位置においてマイクロ波が強めあわず、発熱部材30の、この所望の位置の周囲の1以上の部分において、マイクロ波が強めあうように位相を制御したマイクロ波を、容器10c内の複数の位置から照射することである。処理対象物2の所望の位置の周囲の1以上の部分とは、処理対象物2の伸びる方向または処理対象物2の移動方向に対して垂直方向に位置する1以上の部分である。処理対象物2の所望の位置は、例えば、処理対象物2の移動経路2a上の所望の位置である。かかることは以下においても同様である。また、ここでの第一のマイクロ波照射は、例えば、処理対象物2の所望の位置におけるマイクロ波の強度よりも、発熱部材30の、この所望の位置の周囲の1以上の部分におけるマイクロ波の強度が高くなるよう、位相を制御したマイクロ波を、容器10c内の複数の位置から照射することであってもよい。所望の位置の周囲の1以上の部分とは、例えば、発熱部材30の、処理対象物2の移動経路2a上の所望の位置において、移動経路2aの進行方向に垂直に交わる仮想面と交わる部分の1以上の部分である。また、ここでの第一のマイクロ波照射は、例えば、処理対象物2の所望の位置においてマイクロ波が強めあうよう、容器10c内の複数の位置から位相を制御したマイクロ波を照射し、発熱部材30の、この所望の位置の周囲の1以上の部分においてマイクロ波が強めあうよう、容器10c内の、上記の複数の位置とは異なる複数の位置から位相を制御したマイクロ波を照射するとともに、発熱部材30において強めあうよう位相を制御して出力されるマイクロ波の出力を、処理対象物2において強めあうよう位相を制御して出力されるマイクロ波の出力よりも高くすることであってもよい。
【0125】
また、2以上の照射部203が照射するマイクロ波の位相を制御して行なわれる第二のマイクロ波照射は、例えば、処理対象物2の所望の位置においてマイクロ波が強めあい、発熱部材30の、この所望の位置の周囲において、マイクロ波が強め合わないように位相を制御したマイクロ波を、容器10c内の複数の位置から照射することである。また、ここでの第一のマイクロ波照射は、例えば、処理対象物2の所望の位置におけるマイクロ波の強度が、発熱部材30の、この所望の位置の周囲の1以上の部分におけるマイクロ波の強度よりも高くなるよう、位相を制御したマイクロ波を、容器10c内の複数の位置から照射することであってもよい。また、ここでの第二のマイクロ波照射は、例えば、処理対象物2の所望の位置においてマイクロ波が強めあうよう、容器10c内の複数の位置から位相を制御したマイクロ波を照射し、発熱部材30の、この所望の位置の周囲の1以上の部分においてマイクロ波が強めあうよう、容器10c内の、上記の複数の位置とは異なる複数の位置から位相を制御したマイクロ波を照射するとともに、発熱部材30において強めあうよう位相を制御して出力されるマイクロ波の出力よりも、処理対象物2において強めあうよう位相を制御して出力されるマイクロ波の出力を高くすることであってもよい。
【0126】
なお、ここでの第一のマイクロ波照射を行なってマイクロ波を強め合わせる位置と強め合わせる箇所数や、第二のマイクロ波照射を行なってマイクロ波を強め合わせる位置と、強め合わせる箇所数等は問わない。これらの位置や箇所数は、処理対象物2等に応じて行なわれる実験結果やシミュレーション結果等に応じて適宜設定するようにしてもよい。
【0127】
また、第一のマイクロ波照射を行なう2以上の照射部203と、第二のマイクロ波照射を行なう2以上の照射部203とは、同じ照射部203であってもよく、異なる照射部203であってもよく、一部だけが同じである照射部203であってもよい。第一のマイクロ波照射を行なう2以上の照射部203が照射するマイクロ波と、第二のマイクロ波照射を行なう2以上の照射部203が照射するマイクロ波とは、同じ周波数であってもよく、異なる周波数であってもよい。
【0128】
1または2以上のセンサ40は、例えば、上記実施の形態のセンサと同様のものである。各センサ40は、例えば、容器10c内の、第一のマイクロ波照射が行なわれる場所の近傍や、第二のマイクロ波照射が行なわれる場所の近傍に設置される。
【0129】
搬送手段60については、上記実施の形態と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0130】
制御手段51は、マイクロ波照射手段21が複数の位置から照射するマイクロ波の位相をそれぞれ制御する。複数の位置から照射するマイクロ波の位相を制御する、ということは、基準になる1以上のマイクロ波の位相は制御せず、他のマイクロ波の位相を制御することも含む概念と考えてもよい。制御手段51は、上記のように、処理対象物2の移動経路2a上の1または2以上の所望の位置において第一のマイクロ波照射が行なわれ、処理対象物2の移動経路2a上の、第一のマイクロ波照射が行なわれる位置を除いた1または2以上の所望の位置において第二のマイクロ波照射が行なわれるよう、マイクロ波照射手段21が照射するマイクロ波の位相を制御する。例えば、このような第一のマイクロ波照射と、第二のマイクロ波照射とが行なわれるよう複数の照射部203がそれぞれ照射するマイクロ波の位相を制御する。また、制御手段51は、マイクロ波照射手段21が複数の位置から照射するマイクロ波の出力を個別に制御してもよい。例えば、制御手段51は、各照射部203が照射するマイクロ波の出力を個別に制御してもよい。例えば、制御手段51は、所望の位置に第一のマイクロ波照射を行なう照射部203の出力を、この所望の位置近傍に配置されたセンサ40が出力する温度の情報等に応じてフィードバック制御する。また、例えば、制御手段51は、所望の位置に第二のマイクロ波照射を行なう照射部203の出力を、この所望の位置近傍に配置されたセンサ40が出力する温度の情報等に応じてフィードバック制御する。ただし、フィードバック制御以外の制御を行なっても良い。
【0131】
なお、1または2以上の所望の位置においてマイクロ波が強めあうよう、各照射部203の位相を一旦設定した後、変更が不要である場合や、各照射部203の位相の設定を手動で行なう場合等においては、制御手段51により照射部203が照射する位相を制御しないにしてもよく、位相を制御するための制御手段は設けないようにしてよい。
【0132】
次に、本実施の形態のマイクロ波処理装置1aの動作について具体例を挙げて説明する。ここでは、マイクロ波処理装置1aを用いて、処理対象物2であるPAN系前駆体繊維の耐炎化処理を行なう場合を例に挙げて説明する。なお、ここでは説明を簡略化するために、図5(a)に示したマイクロ波処理装置1aを用いて説明を行なう。
【0133】
ここでは、処理対象物2が搬送手段60によって移動経路2aに沿って移動しているものとし、図5に示す処理対象物2の移動経路2a上の地点Aに対して、第一のマイクロ波照射が行なわれ、地点Bに対して、第二のマイクロ波照射が行なわれているとする。具体的には、制御手段51は複数の照射部203を制御して、複数の照射部203に、処理対象物2の移動経路2a上の地点Aにおいてマイクロ波が強めあわず、地点Aの周囲の発熱部材30の1以上の部分において、マイクロ波が強めあうように位相を制御したマイクロ波を照射させる。ここでは、例えば、複数の照射部203のうちの、入口101a側に取付けられた半数から、地点Aにおいて強め合うようマイクロ波が照射させていたとする。つまり、複数の照射部203のうちの、入口101a側に取付けられた半数によって、第一のマイクロ波照射が行なわれていたとする。また、制御手段51は複数の照射部203を制御して、複数の照射部203に、処理対象物2の移動経路2a上の地点Aにおいてマイクロ波が強めあい、地点Aの周囲の発熱部材30の1以上の部分において、マイクロ波が強めあわないように位相を制御したマイクロ波を照射させる。ここでは、例えば、複数の照射部203のうちの、出口101b側に取付けられた半数から、地点Bにおいて強め合うようマイクロ波が照射させていたとする。つまり、複数の照射部203のうちの、出口101b側に取付けられた半数によって、第二のマイクロ波照射が行なわれていたとする。なお、第一のマイクロ波照射と、第二のマイクロ波照射は、上記の地点Aおよび地点B以外の部分においても行なわれているようにしてもよい。
【0134】
第一のマイクロ波照射を行なっていることにより、地点Aにおいては、図5(b)に示すように、発熱部材30の複数の地点(ここでは、一例として四点)において、マイクロ波が強めあう箇所35が発生する。そして、この箇所35で強めあうマイクロ波によって、発熱部材30が発熱し、発熱部材30の輻射熱によって、処理対象物2が外側から加熱される。なお、地点Aにおいて、処理対象物2も、複数の照射部203から照射される複数のマイクロ波が完全に打ち消し合って「0」とならない限りは、マイクロ波によって直接加熱される。ただし、複数のマイクロ波が強めあう箇所ではないため、発熱量は小さい。
【0135】
また、第二のマイクロ波照射を行なっていることにより、地点Bにおいては、図5(c)に示すように、処理対象物2においてマイクロ波が強めあう箇所35が発生する。そして、この箇所35で強めあうマイクロ波によって、処理対象物2が直接加熱される。なお、地点Bの周りの発熱部材30においても、複数の照射部203から照射される複数のマイクロ波が完全に打ち消し合って「0」とならない限りは、マイクロ波によって発熱し、この発熱によって、処理対象物2は外側からも加熱される。ただし、複数のマイクロ波が強めあう箇所ではないため、発熱量は小さい。
【0136】
地点A近傍に配置されたセンサ40が取得する温度によって、制御手段51が、第一のマイクロ波照射を地点Aに対して行なう複数の照射部203の出力をフィードバック制御することで、地点Aの周囲の発熱部材30において強めあうマイクロ波の出力を増減して、地点Aにおいて、処理対象物2に対して所望の温度による加熱を行なうことができる。また、地点B近傍に配置されたセンサ40が取得する温度によって、制御手段51が、第一のマイクロ波照射を地点Bに対して行なう複数の照射部203の出力をフィードバック制御することで、処理対象物2の地点Bにおいて強めあうマイクロ波の出力を増減して、地点Bにおいて、処理対象物2に対して所望の温度による加熱を行なうことができる。
【0137】
例えば、上記実施の形態において説明したように、処理対象物2の発熱のピークとなる位置やその近傍において、上記の地点Aと同様に、周囲の発熱部材30においてマイクロ波が強めあい、処理対象物2において強めあわないように位相を制御して第二のマイクロ波照射を行なうことで、処理対象物2が発熱のピークに達した場合の急激な加熱を避けて、処理対象物2を適切に処理することが可能となる。また、他の位置においては、例えば、処理対象物2においてマイクロ波が強めあうようマイクロ波を照射することで、処理対象物2を主としてマイクロ波による直接加熱によって効率良く加熱することができ、処理速度を向上させることができる。また、他の位置においては、例えば、処理対象物2においてマイクロ波が強めあうようにしたり、発熱部材30においてマイクロ波が強めあうようにしたりすることで、移動する処理対象物2に対し、第一のマイクロ波照射と、第二のマイクロ波照射とを適切に切替えて行なって、処理対象物2に対して均等な加熱や、所望の加熱を行なうことができる。
【0138】
なお、この具体例における複数の照射部203の配置は一例であり、複数の照射部203の配置や数等は問わない。
また、容器10内の処理対象物2の移動経路2aに対する、地点Aのような発熱部材30においてマイクロ波が強めあうような地点や、地点Bのような処理対象物2においてマイクロ波が強めあうような地点や、地点Cのような発熱部材30と処理対象物2との両方でマイクロ波が強めあうような地点のそれぞれの設定数や、それぞれの配置は問わない。マイクロ波処理装置1aにおいては、例えば、移動経路2aに対して、発熱部材30においてマイクロ波が強めあうような地点と、処理対象物2においてマイクロ波が強めあうような地点とが、それぞれ少なくとも1以上、移動経路2aに対して設定されればよい。
【0139】
以上、本実施の形態の形態によれば、マイクロ波照射手段21が異なる位置から照射する複数のマイクロ波の位相を制御して、2以上のマイクロ波が発熱部材30において強めあう第一のマイクロ波照射と、2以上のマイクロ波が処理対象物2において強めあう第二のマイクロ波照射とを行なうようにしたことにより、マイクロ波を用いて処理対象物2を適切に処理することができる。例えば、マイクロ波によって発熱させた発熱部材による処理対象物の外側からの加熱と、マイクロ波によって処理対象物を直接加熱との組み合わせや比率を制御して、適切な加熱を行なうことができる。
【0140】
なお、上記においては、センサ40が取得する温度の情報等に応じて、照射するマイクロ波の出力をフィードバック制御するようにしたが、1以上のセンサ40が取得する温度の情報に応じて、マイクロ波照射手段21が照射するマイクロ波の位相を制御して、第一のマイクロ波照射や第二のマイクロ波照射によってマイクロ波が強めあう位置を、処理対象物2の移動経路2aに沿って移動させることで、処理対象物2に対する加熱を制御してもよい。例えば、上記において、地点Bのセンサ40が取得した温度が高い場合に、地点Bの位置を、出口側に移動させることで、第二のマイクロ波照射による加熱を行なうタイミングを遅らせるようにしてもよい。
【0141】
また、上記において、処理対象物2の移動経路2a上の同じ位置において、発熱部材30において強めあうようマイクロ波を照射する第一のマイクロ波照射と、処理対象物2において強めあうようマイクロ波を照射する第二のマイクロ波照射とを、同時に行なうようにしてもよい。また、この場合、第一のマイクロ波照射のマイクロ波の出力と、第二のマイクロ波照射のマイクロ波の出力とを異なる出力しても良い。
【0142】
また、上記実施の形態においては、処理対象物2を容器10内において移動させる場合を例に挙げて説明したが、処理対象物2を、容器10内において移動させないようにするとともに、容器10c内に照射される複数のマイクロ波の位相を制御することで、発熱部材30における第一のマイクロ波照射によってマイクロ波が強めあう位置と、処理対象物2における第二のマイクロ波照射によってマイクロ波が強めあう位置とを経時的に移動させることで、発熱部材30が加熱される位置と、処理対象物2が直接加熱される位置とを、経時的に変更するようにしてもよい。このようにすることで、例えば、処理対象物2に対して適切な加熱を行なうことができる。
【0143】
なお、上記実施の形態において、マイクロ波照射手段21が複数の照射部203から照射するマイクロ波の位相を制御した場合に、照射部203が照射するマイクロ波の強度が発熱部材30において強くなる第一のマイクロ波照射位置と、照射部203が照射するマイクロ波の強度が処理対象物2において強くなる第二のマイクロ波照射位置とが、処理対象物2の移動経路2aに沿って設けられるように、容器10cを設計することが好ましい。
【0144】
また、上記実施の形態において、マイクロ波照射手段21が複数の照射部203から照射するマイクロ波の位相を制御しないようにしてもよい。例えば、マイクロ波照射手段21がマイクロ波を照射する1以上の照射部203を備えている場合において、各照射部203が照射するマイクロ波の位相を制御する代りに、容器10cの設計によって、照射部203が照射するマイクロ波の強度が発熱部材30において強くなる第一のマイクロ波照射位置と、照射部203が照射するマイクロ波の強度が処理対象物2において強くなる第二のマイクロ波照射位置とが、処理対象物2の移動経路2aに沿って設けられるようにしてもよい。
【0145】
(実施の形態3)
図6は、本実施の形態におけるマイクロ波処理装置を説明するための、処理対象物の移動方向に平行な断面図(図6(a))、図6(a)の点Aを通る長手方向に垂直な断面模式図(図6(b))、点Bを通る長手方向に垂直な断面模式図(図6(c))、および点Cを通る長手方向に垂直な断面模式図(図6(d))である。本実施の形態のマイクロ波処理装置1bは、マイクロ波照射手段22が異なる周波数のマイクロ波を照射することで、第一のマイクロ波照射と、第二のマイクロ波照射とを行なうようにしたものである。
【0146】
マイクロ波処理装置1bは、容器10dと、マイクロ波照射手段22と、発熱部材30と、1または2以上のセンサ40と、制御手段52と、搬送手段60とを備えている。
【0147】
容器10dは、マイクロ波照射手段22が有する照射部が取付けられることを除けば、上記実施の形態において図1に示した容器10と同様のものである。また、容器10dとしては、上記実施の形態において説明したような容器が利用可能であり、例えば、複数のキャビティを有する容器等も利用可能である。
【0148】
容器10d内には、一本の筒形状の発熱部材30が処理対象物2の移動経路2aに沿って設けられている場合について説明する。ただし、発熱部材30は複数であってもよい。なお、発熱部材30としては、上記実施の形態において説明した発熱部材30と同様のものが利用可能である。
【0149】
マイクロ波照射手段22は、異なる周波数のマイクロ波を照射可能であり、異なる周波数のマイクロ波を照射することで、上述したような第一のマイクロ波照射と、第二のマイクロ波照射とを行なう。例えば、マイクロ波照射手段22は、発熱部材30の発熱が、処理対象物2の発熱よりも大きくなる周波数のマイクロ波を照射する第一のマイクロ波照射と、処理対象物2の発熱が、発熱部材30の発熱よりも大きくなる周波数のマイクロ波を照射する第二のマイクロ波照射と、を行なう。例えば、マイクロ波照射手段22は、発熱部材30で吸収されたマイクロ波が、発熱部材30を透過したマイクロ波よりも大きくなる周波数のマイクロ波を照射する第一のマイクロ波照射と、発熱部材30で吸収されたマイクロ波が、発熱部材30を透過したマイクロ波よりも小さくなる周波数のマイクロ波を照射する第二のマイクロ波照射と、を行なう。マイクロ波照射手段22がこのような第一のマイクロ波照射において照射するマイクロ波の周波数を、以下、第一の周波数と称す。また、マイクロ波照射手段22がこのような第二のマイクロ波照射において照射するマイクロ波の周波数を、以下、第二の周波数と称す。
【0150】
例えば、発熱部材30を透過するマイクロ波は、照射するマイクロ波の周波数に依存している。例えば、複素誘電率がε'=100、ε"=10であるような発熱部材30を用いた場合、発熱部材30内に侵入したマイクロ波の電力が半分となるような電力半減深度は、915MHzなら36.3mm、2.45GHzなら13.6mmとなる。そのため発熱部材30の厚さを適切な厚さに設定すれば、例えば、2.45GHzのマイクロ波を照射した場合、マイクロ波の半分以上、好ましくは大部分は発熱部材30に吸収され、炭素繊維の前駆体繊維等の処理対象物2にまではマイクロ波が届かなくなる一方、915MHzのマイクロ波を照射した場合、照射したマイクロ波の半分以上、好ましくは大部分を、発熱部材30を透過させて、炭素繊維の前駆体繊維にマイクロ波を照射することが可能となる。なお、ここでの発熱部材30の厚さは、発熱部材30の加熱媒体301の厚さと考えてもよい。
【0151】
例えば、電気抵抗率が2.8×10-8Ωmであるようなアルミニウム等を発熱部材30(例えば、発熱部材30の加熱媒体301)として用いた場合、発熱部材30内に侵入したマイクロ波の電界強度が1/eとなるような表皮深さは、周波数が915MHzならば2.2μm、2.45GHzなら1.3μmである。そのため発熱部材30の厚さ(例えば、発熱部材30の加熱媒体301の厚さ)を、例えば、百nm単位程度でコントロールすれば、第一の周波数を2.45GHzとした第一のマイクロ波照射ではマイクロ波の大部分が発熱部材30に吸収され、炭素繊維の前駆体等の処理対象物2までマイクロ波が届かないようにできる一方、第二の周波数を915MHzとした第二のマイクロ波照射では発熱部材30で大部分のマイクロ波を吸収させないようにして、処理対象物2にマイクロ波を照射して、処理対象物2を加熱することが可能となる。なお、上記の複素誘電率の虚部ε"は、比誘電損失とも呼ばれる場合がある。
【0152】
マイクロ波照射手段22は、例えば、処理対象部2が移動している場合において、第一のマイクロ波照射と、第二のマイクロ波照射と、を、処理対象物2の移動経路2aの異なる位置に対して行なうようにしても良い。また、マイクロ波照射手段22は、第一のマイクロ波照射と、第二のマイクロ波照射とを、処理対象物2の移動経路2aの同じ位置に対して同時に行なうようにしても良い。また、マイクロ波照射手段22は、第一のマイクロ波照射と、第二のマイクロ波照射とを、処理対象物2の移動経路2aの同じ位置に対して切替えて行なうようにしてもよい。また、マイクロ波照射手段22は、照射する各周波数のマイクロ波の出力を変更してもよい。
【0153】
マイクロ波照射手段22は、例えば、照射するマイクロ波の周波数を変更可能な1以上の照射部(図示せず)を有しており、出力する周波数を変更することで、第一のマイクロ波照射と、第二のマイクロ波照射とを切替えて行なっても良い。また、マイクロ波照射手段22は、第一のマイクロ波照射を行なうための第一の周波数のマイクロ波を照射する1以上の照射部(以下、第一周波数照射部204と称す)と、第二のマイクロ波照射を行なうための、第一の周波数とは異なる第二の周波数のマイクロ波を照射する1以上の照射部(以下、第二周波数照射部205と称す)と、をそれぞれ有するようにし、これらが照射する異なる周波数のマイクロ波を照射することで、第一のマイクロ波照射と、第二のマイクロ波照射とを行なっても良い。以下、本実施の形態においては、1以上の第一周波数照射部204を用いて第一のマイクロ波照射を行ない、1以上の第二周波数照射部205を用いて第二のマイクロ波照射を行なう場合を例に挙げて説明する。
【0154】
第一周波数照射部204および第二周波数照射部205は、例えば、容器10dの壁面の異なる位置に設けられた開口部102に取付けられて、容器10d内にマイクロ波を照射する。第一周波数照射部204および第二周波数照射部205は、処理対象物2の移動経路の異なる位置にマイクロ波を照射するよう配置されていてもよく、同じ位置にマイクロ波を照射するように配置されていてもよい。
【0155】
図6においては、第一周波数照射部204の一つが、照射する第一の周波数のマイクロ波が地点Aを含む領域に照射されるよう容器10dに取付けられており、第二周波数照射部205の一つが、照射する第一の周波数のマイクロ波が地点Bを含む領域に照射されるよう容器10dに取付けられており、第一周波数照射部204の一つと第二周波数照射部205の一つとが、地点Cを含む領域に、それぞれ、第一の周波数のマイクロ波と第二の周波数のマイクロ波とを照射するよう取付けられている例について説明している。例えば、第一周波数照射部204が、地点Aと地点Cの情報に、また、第二周波数照射部205が地点Bの上方と下方とにそれぞれ配置されている例について示している。ただし、第一周波数照射部204および第二周波数照射部205を配置する位置や、それぞれの配置される数等は問わない。
【0156】
なお、第一周波数照射部204および第二周波数照射部205は、上記実施の形態において説明したように、例えば、マイクロ波発振器2001と、伝送部2002とを備えている。ただし、第一周波数照射部204および第二周波数照射部205は、マイクロ波発振器2001が発振するマイクロ波の周波数が異なる。照射部203が有するマイクロ波発振器2001としては、半導体型発振器を用いることが好ましい。なお、第一周波数照射部204および第二周波数照射部205は、上記以外の構造を有していてもよい。
【0157】
1または2以上のセンサ40は、例えば、上記実施の形態のセンサと同様のものである。ここでは、3つのセンサ40が、それぞれ、容器10dの、地点A、地点B、及び地点Cにの近傍となる位置、例えば、容器10dの、地点A、地点B、及び地点Cの上方の近傍に配置されている場合を例として示している。
【0158】
搬送手段60については、上記実施の形態と同様であるため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0159】
制御手段52は、マイクロ波照射手段22が有する第一周波数照射部204および第二周波数照射部205が照射するマイクロ波の出力を制御する。例えば、制御手段52は、上記の三つのセンサ40が取得する処理対象物2の温度の情報に応じて、地点A、地点B、及び地点Cにそれぞれマイクロ波を照射する第一周波数照射部204および第二周波数照射部205の出力をフィードバック制御する。ただし、制御はフィードバック制御でなくてもよい。なお、マイクロ波照射手段22が、照射するマイクロ波の位相を制御可能な複数の照射部(図示せず)を有する場合、制御手段52は、マイクロ波照射手段22が有する各照射部が、照射するマイクロ波の周波数をそれぞれ制御してもよい。
【0160】
次に、本実施の形態のマイクロ波処理装置1bの動作について具体例を挙げて説明する。ここでは、マイクロ波処理装置1bを用いて、処理対象物2であるPAN系前駆体繊維の耐炎化処理を行なう場合を例に挙げて説明する。なお、ここでは説明を簡略化するために、図6に示したマイクロ波処理装置1bを用いて説明を行なう。なお、ここでの第一周波数照射部204が照射するマイクロ波は、発熱部材30で吸収されたマイクロ波が、発熱部材30を透過したマイクロ波よりも大きくなる第一の周波数のマイクロ波であり、第二周波数照射部205が照射するマイクロ波は、発熱部材30で吸収されたマイクロ波が、発熱部材30を透過したマイクロ波よりも小さくなる第二の周波数のマイクロ波であるとする。また、ここでの発熱部材20は、照射される第一の周波数のマイクロ波の半分以上、好ましくは大部分を吸収し、照射される第二の周波数のマイクロ波の半分以上、好ましくは大部分を吸収せずに透過させる厚さを有するものであるとする。
【0161】
例えば、搬送手段60により、処理対象物2が搬送されている状態において、第一周波数照射部204から、常時、第一の周波数のマイクロ波16を照射し、第二周波数照射部205から、常時、第二の周波数のマイクロ波17を照射する。なお、ここでは、第一周波数照射部204が照射するマイクロ波16の出力および第二周波数照射部205が照射するマイクロ波17の出力は、それぞれの近傍に配置されるセンサ40が取得する温度の情報に応じて、フィードバック制御されるものとする。
【0162】
地点Aにおいては、第一周波数照射部204から、第一の周波数のマイクロ波16が照射されて、第一のマイクロ波照射が行なわれることとなるため、発熱部材30でマイクロ波が吸収されやすく、マイクロ波16が処理対象物2に照射されにくいため、図6(b)に示すように、発熱部材30の発熱が、処理対象物2の発熱よりも高くなる。これにより、処理対象物2は、発熱部材30からの輻射熱によって外側から加熱される。なお、発熱部材30よりも発熱は小さいが、処理対象物2も、照射されるマイクロ波16の一部によって直接加熱される。
【0163】
地点Bにおいては、第二周波数照射部205から、第二の周波数のマイクロ波17が照射されて、第二のマイクロ波照射が行なわれることとなるため、発熱部材30において、マイクロ波が吸収されにくく、透過したマイクロ波17が処理対象物2に照射されて、図6(c)に示すように、処理対象物2の発熱が、発熱部材30の発熱よりも高くなる。これにより、処理対象物2は、照射されるマイクロ波17によって直接加熱される。なお、発熱部材30も照射されるマイクロ波17の一部により加熱されるため、発熱部材30からの輻射熱によって外側から加熱される。
【0164】
地点Cにおいては、第一周波数照射部204から、第一の周波数のマイクロ波16が照射されて、第一のマイクロ波照射が行なわれるとともに、第二周波数照射部205から、第二の周波数のマイクロ波17が照射されて、第二のマイクロ波照射が行なわれることとなる。第一の周波数のマイクロ波16によって、発熱部材30の発熱が、処理対象物2の発熱よりも高くなる。一方、第二の周波数のマイクロ波17によって、第二の周波数のマイクロ波17による処理対象物2の発熱が、発熱部材30の発熱よりも高くなる。これにより、処理対象物2は、図6(d)に示すように、第一の周波数のマイクロ波16の照射に応じて発熱部材30からの輻射熱によって外側から加熱されるとともに、第二の周波数のマイクロ波17の照射に応じて直接加熱される。
【0165】
各地点A~Cに照射されるマイクロ波16および17の出力は、例えば、それぞれの地点の近傍に設けられたセンサ40が取得する処理対象物2の温度の情報に応じて、制御手段52がそれぞれの地点にマイクロ波を照射する第一周波数照射部204および第二周波数照射部205の出力を制御することによって、フィードバック制御される。
【0166】
なお、地点Cに対して、異なる周波数のマイクロ波16および17を照射する第一周波数照射部204および第二周波数照射部205の出力を個別に変更することで、地点Cにおける発熱部材30の発熱量と、処理対象物2の発熱量との比率を制御することができる。例えば、第一周波数照射部204が出力する第一の周波数のマイクロ波16の出力だけを高くすることで、発熱部材30の発熱量を処理対象物2の発熱量に対して高くすることができ、第二周波数照射部205が出力する第二の周波数のマイクロ波17の出力だけを高くすることで、処理対象物2の発熱量を発熱部材30の発熱量に対して高くすることができる。
【0167】
例えば、上記実施の形態において説明したように、移動経路2aにおける処理対象物2の発熱のピークとなる位置やその近傍において、上記の地点Aと同様に、発熱部材30の発熱が処理対象物2よりも高くなる第一の周波数のマイクロ波照射を行なうことで、処理対象物2が発熱のピークに達した場合の急激な加熱を避けて、処理対象物2を適切に処理することが可能となる。また、移動経路2aのこれ以外の他の位置に対しては、例えば、適宜、第一の周波数のマイクロ波を照射したり、第二の周波数のマイクロ波を照射したり、第一の周波数のマイクロ波と第二の周波数のマイクロ波との両方を照射したりすることによって、移動する処理対象物2に対し、第一のマイクロ波照射と、第二のマイクロ波照射とを適切に組み合わせて行なうことができ、処理対象物2に対して所望の加熱を行なうことができる。
【0168】
なお、この具体例における第一周波数照射部204と第二周波数照射部205との配置等は一例であり、第一周波数照射部204および第二周波数照射部205の配置や数等は問わない。マイクロ波処理装置1bは、第一周波数照射部204および第二周波数照射部205のそれぞれを少なくとも1以上有していればよい。例えば、複数の第一周波数照射部204および第二周波数照射部205を容器10に対して取付けるようにしてもよい。
【0169】
また、上記具体例において、地点Cと同様に、第一周波数照射部204と第二周波数照射部205とを、複数の地点のそれぞれに対してマイクロ波を照射する照射部として設けるようにして、この複数の地点のうちの一以上の地点に対して、異なる周波数のマイクロ波を照射するようにしてもよい。また、この場合において、一の地点に対して、第一周波数照射部204と第二周波数照射部205とのうちの一方だけからマイクロ波を照射することで、いずれか一方の周波数のマイクロ波だけを照射できるようにしてもよく、一の地点に対してマイクロ波を照射する照射部を、第一周波数照射部204と第二周波数照射部205とで切替えることで、一の地点に対して照射するマイクロ波の周波数を変更できるようにしてもよい。
【0170】
また、上記具体例において、第一周波数照射部204および第二周波数照射部205を設ける代わりに、周波数を変更可能な複数の照射部(図示せず)を、例えば、移動経路2aに沿って設けるようにし、それぞれから、それぞれの位置に適した周波数のマイクロ波を照射するようにしてもよい。例えば、図6のような地点A~Cの上方に、周波数を変更可能な複数の照射部を配置し、地点Aおよび地点Cの上方の照射部から、第一の周波数のマイクロ波を照射し、地点Bの上方の照射部から第二の周波数のマイクロ波を照射するようにしてもよい。このように、第一の周波数のマイクロ波を照射する一の照射部と、第二の周波数のマイクロ波を照射する一の照射部とを、一の照射部により実現してもよい。
【0171】
また、この場合、それぞれの照射部から照射されるマイクロ波の周波数を、適宜変更するようにしてもよい。例えば、地点Bの上方の照射部から照射されるマイクロ波の周波数を、処理対象物2の材質や太さ、移動速度等に応じて、地点Bの上方の照射部から照射されるマイクロ波の周波数を第二の周波数から第一の周波数に変更するようにし、地点Cの上方の照射部から照射されるマイクロ波の周波数を、第一の周波数から第二の周波数に変更するようにしてもよい。また、センサ40が取得する温度の情報等に応じて、各照射部が照射するマイクロ波の周波数を変更してもよい。
【0172】
また、1以上のそれぞれの地点に対してマイクロ波を照射する照射部(図示せず)を複数設けるとともに、各照射部を、照射するマイクロ波の周波数を変更可能な照射部とし、それぞれの地点にマイクロ波を照射する複数の照射部のマイクロ波の周波数を異なる周波数とすることで、各地点に対して、異なる周波数のマイクロ波を照射できるようにしてもよい。また、この場合、一の地点に対してマイクロ波を照射する複数の照射部のマイクロ波を同じ周波数のマイクロ波としたり、一の照射部だけがマイクロ波を照射するようにしたりすることで、異なる周波数のマイクロ波を照射する必要がない地点に対しては、一の周波数のマイクロ波だけを照射できるようにしてもよい。
【0173】
以上、本実施の形態においては、容器内に異なる周波数のマイクロ波を照射して第一のマイクロ波照射と、第二のマイクロ波照射とを行なうようにしたので、マイクロ波を用いて処理対象物を適切に処理することができる。例えば、マイクロ波によって発熱させた発熱部材による処理対象物の外側からの加熱と、マイクロ波によって処理対象物を発熱させることによる処理対象物の直接加熱とを組み合わせや比率を制御して、適切な加熱を行なうことができる。
【0174】
なお、上記実施の形態3において、マイクロ波照射手段22は、発熱部材30に対するマイクロ波の損失が、処理対象物2に対する損失よりも大きくなる周波数のマイクロ波を照射する第一のマイクロ波照射と、発熱部材30に対する損失が、処理対象物2に対する損失よりも小さくなる周波数のマイクロ波を照射する第二のマイクロ波照射とを、上記の第一のマイクロ波照射と第二のマイクロ波照射との代わりに行なうようにしてもよい。ここでのマイクロ波の損失は、マイクロ波による発熱部材30や、処理対象物2の発熱と考えても良い。マイクロ波の損失は、例えば、比誘電損失等で表すことができる。比誘電損失とは、複素誘電率の虚部ε"である。通常、比誘電損失が大きくなると、マイクロ波照射による発熱が大きくなり、比誘電損失が小さくなると、マイクロ波照射による発熱が小さくなる。このような第一のマイクロ波照射において照射するマイクロ波の周波数を、上述した第一の周波数と考えるようにしてもよい。また、このような第二のマイクロ波照射において照射するマイクロ波の周波数を、上述した第二の周波数と考えるようにしてもよい。なお、ここでの発熱部材30の比誘電損失は、発熱部材30の加熱媒体301の比誘電損失と考えてもよい。
【0175】
なお、上記において、容器10dが複数のキャビティを有するようにし、キャビティ毎に、例えば、第一周波数照射部204または第二周波数照射部205のいずれか一方を1または2以上取付けるようにして、各キャビティ内に異なる周波数のマイクロ波を照射するようにしてもよい。このような構成により、処理対象物2に対して各キャビティ内で異なる周波数のマイクロ波を照射することができ、照射する異なる周波数のマイクロ波の出力等が制御しやすくなる。
【0176】
また、上記実施の形態においては、処理対象物を容器内において移動させる場合を例に挙げて説明したが、処理対象物2を容器10d内に移動させないようにするとともに、容器10d内に照射されるマイクロ波の周波数を経時的に変更することで、発熱部材30を加熱するための第一のマイクロ波照射と、処理対象物2を加熱するための第二のマイクロ波照射とを時間単位で切替えて行なうようにして、処理対象物2に対する発熱部材30からの加熱と、処理対象物2に対するマイクロ波による直接加熱とを、時間単位で切替えて行なうようにしても良い。
【0177】
なお、上記実施の形態3においては、マイクロ波照射手段22が、異なる二つの周波数のマイクロ波を照射する場合について説明したが、マイクロ波照射手段22が、三以上の異なる周波数のマイクロ波を照射できるようにしてもよい。例えば、マイクロ波照射手段22が、照射するマイクロ波の周波数が異なる三以上の照射部をそれぞれ一以上有していても良い。また、マイクロ波照射手段22が、照射するマイクロ波の周波数を変更可能な三以上の照射部を有するようにし、この照射部のうちの三以上が、異なる周波数のマイクロ波を照射するようそれぞれが照射するマイクロ波の周波数を制御するようにしてもよい。また、上記実施の形態において、複数の照射部の共用可能な部分については、共用できるようにしてもよい。
【0178】
また、上記実施の形態2において、上記実施の形態3において説明したように、第一のマイクロ波照射を行なう2以上の照射部203が、第一の周波数のマイクロ波を照射するようにし、第二のマイクロ波照射を行なう2以上の照射部203が、第二の周波数のマイクロ波を照射するようにしてもよい。
【0179】
また、上記各実施の形態においては、マイクロ波処理装置を、PAN系等の前駆体繊維を処理対象物として、この処理対象物に対して耐炎化処理を行なう場合を例に挙げて説明したが、このマイクロ波処理装置は、前駆体繊維以外の処理対象物に対する処理や、耐炎化処理以外の処理にも利用可能なものであり、このような場合においても上記実施の形態と同様の効果を奏する。例えば、処理対象物の材質等は問わない。例えば、処理対象物は、綿糸、ウール糸、カシミア糸、ポリマー糸、または金属糸等であってもよい。ポリマー糸は、例えば、ナイロン糸、フロロカーボン糸、またはポリエチレン糸等である。例えば、上記のマイクロ波処理装置を、綿糸、ウール糸、カシミア糸等の乾燥等に用いるようにしてもよい。また、例えば、上記各実施の形態のマイクロ波処理装置を、ポリマー糸や金属糸等の加熱や、焼成、焼結等の処理等に用いるようにしてもよい。また、上記各実施の形態のマイクロ波処理装置を、耐炎化処理を行なった前駆体繊維の炭化処理、すなわち耐炎化処理を行なった前駆体繊維を用いて炭素繊維を製造する処理に用いてもよい。また、上記各実施の形態のマイクロ波処理装置において、前駆体繊維に対して上述したような耐炎化処理を行なった後、さらに同じ容器内において、炭化処理を行なって炭素繊維を製造してもよい。また、処理対象物2は、繊維状のものに限られるものではなく、例えば、棒状や鎖状、シート状、フィルム状、チューブ状等の他の形状のものであってもよい。また、処理対象物2は、発熱部材内等に配置可能なものや、発熱部材内を移動可能なものであれば、必ずしも所定の方向に向かって連続的に伸びる、あるいは連続的につながった形状を有していなくても良く、例えば、容器内の入口側から出口側に向かって移動するマイクロ波透過性の高い材料で構成されたベルト(図示せず)上に配置された連続していない固体状の物体であってもよく、容器内の入口側から出口側に向かって伸びるマイクロ波透過性の高いガラス等の材料で構成された筒や樋に配置されて移動する液体または粉体等の流体や、ゲル等であってもよい。なお、マイクロ波装置内のマイクロ波照射手段が照射するマイクロ波の数やマイクロ波の照射位置、マイクロ波の出力の強さ、マイクロ波の周波数等は、処理対象物や、処理対象物に対して行なう処理等に応じて適宜設定する。
【0180】
なお、マイクロ波処理装置内において、耐炎化処理を行なった前駆体繊維を用いて炭素繊維を製造する場合、上述したガス供給手段70が、例えば、炭素繊維の製造に必要な窒素等のガスを供給することが好ましい。
【0181】
また、上記の実施の形態においては、マイクロ波処理装置の後ろに、処理を行なった処理対象物を巻き取る巻き取り部65を設けた例について説明したが、耐炎化処理を行なった処理対象物を、巻き取ったりせずに、他の処理装置(図示せず)内に供給するようにしてもよい。例えば、上記のマイクロ波処理装置で耐炎化処理を行なった前駆体繊維を、そのまま耐炎化処理を行なった前駆体繊維に対して炭化処理を行なう装置(図示せず)に搬送手段60を用いて送り込むようにしてもよい。
【0182】
なお、上記の各実施の形態において説明した炭素繊維の前駆体繊維の耐炎化処理は、炭素繊維の製造方法の一工程と考えてもよい。すなわち、この耐炎化処理を含む炭素繊維の製造方法は、マイクロ波を吸収して発熱する発熱部材を内部に備えた容器内に、マイクロ波を照射して、発熱部材に沿って配置された炭素繊維の前駆体繊維を加熱する工程を含む炭素繊維の製造方法であって、上記の加熱する工程において、発熱部材を加熱する第一のマイクロ波照射と、前駆体繊維を加熱する第二のマイクロ波照射とを行なうようにした炭素繊維の製造方法である。
【0183】
なお、この炭素繊維の製造方法においては、第二のマイクロ波の照射を行なっている場合において、前駆体繊維が発熱ピークとなる温度に達する場合に、第二のマイクロ波照射をやめて、第一のマイクロ波照射を行なうようにすることが好ましい。ここでの発熱ピークとなる温度となる場合、とは、例えば、発熱ピークとなる温度に達する時点を含む期間であり、好ましくは発熱ピークとなる温度に達する時点とその前後の期間である。
【0184】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0185】
以上のように、本発明にかかるマイクロ波処理装置等は、マイクロ波を照射して処理対象物に対して所望の処理を行なう装置等として適しており、特に、加熱処理を行なう装置等として有用である。
【符号の説明】
【0186】
1、1a、1b マイクロ波処理装置
2 処理対象物
2a 移動経路
10、10a~10d 容器
20、21、22 マイクロ波照射手段
30、30a~30c 発熱部材
31、31a、31b ローラ
32、32a、32b ベルト
40 40a~40f センサ
50、51、52 制御手段
60 搬送手段
70 ガス供給手段
201、201a~201c 第一照射部
202、202a~202c 第二照射部
203 照射部
204 第一周波数照射部
205 第二周波数照射部
301 加熱媒体
302 支持体
303 非透過部
701 供給部
2001 マイクロ波発振器
2002 伝送部
図1
図2
図3
図4
図5
図6