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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】光伝搬装置、表示装置および照明装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/35 20060101AFI20220318BHJP
   F21V 23/04 20060101ALI20220318BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20220318BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
G02B6/35
F21V23/04
F21V7/00 590
F21V8/00 200
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018522468
(86)(22)【出願日】2017-06-05
(86)【国際出願番号】 JP2017020757
(87)【国際公開番号】W WO2017213069
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2016113354
(32)【優先日】2016-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】アダマンド並木精密宝石株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100126413
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(72)【発明者】
【氏名】山内 研也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】石川 正紀
(72)【発明者】
【氏名】神原 大輔
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-090968(JP,A)
【文献】特開昭63-073218(JP,A)
【文献】特開2007-192902(JP,A)
【文献】特開2013-080638(JP,A)
【文献】国際公開第2015/006302(WO,A1)
【文献】特開2011-158688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/35,26/08
F21V 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を入射する入力ポートと、
光を外部に出射する複数個の出力ポートを含む出力側ポートと、
駆動電圧に対応した傾斜角度に制御されるチルトミラーを有し、前記チルトミラーの傾斜角度に従って前記入力ポートと出力側ポートのいずれかのポートとを光学的に結合するMEMS光スイッチと、
出力する光の光量に関する設定を受け付ける設定受付部と、
前記光量に関する設定に基づいて、1巡周期毎の前記出力側ポートの各ポートの割当期間を示す切換スケジュールを設定する光量制御部と、
前記切換スケジュールに基づいて、前記駆動電圧を出力する駆動制御部とを備え、
前記出力側ポートは、光を外部に出力しないオフポートを含み、
前記設定受付部は、光の減衰量に関する設定を受け付け、
前記光量制御部は、設定された減衰量が大きいほど、前記オフポートに割り当てる期間を長く設定することを特徴とする光伝搬装置。
【請求項2】
前記設定受付部は、前記出力ポート毎の光量に関する設定を受け付け、
前記光量制御部は、設定された光量が大きい出力ポートほど、割当期間の割合を大きく設定することを特徴とする請求項1に記載の光伝搬装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、
前記チルトミラーを第1傾斜角度から第2傾斜角度に変化させる場合、前記第1傾斜角度に対応した第1信号から前記第2傾斜角度に対応した第2信号に切り替える際に、前記第1信号よりも大きく、前記第2信号よりも小さい中間電圧を中間電圧印加時間分出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の光伝搬装置。
【請求項4】
前記中間電圧は、過渡応答時において前記チルトミラーの最大振幅時に前記第2傾斜角度となる駆動電圧であり、
前記中間電圧印加時間は、前記チルトミラーが最大振幅に達するまでの時間であることを特徴とする請求項3に記載の光伝搬装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の光伝搬装置と、
前記出力ポートに対応した発光窓と、
を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の光伝搬装置と、
前記出力ポートに接続された光拡散ファイバと、
を備えたことを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入射光を複数に分岐して出射する光伝搬技術による光伝搬装置、表示装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、レーザ光源等の光源310から発せられる光を1本の光ファイバ320に入射し、複数個(340a~340n)の光ファイバや出力ポートに分岐する光分岐素子330として、従来から光スプリッタが広く用いられている。光スプリッタは、入射光をあらかじめ定められた分岐比にしたがって分岐する。例えば、入射光を均一に分岐する光スプリッタであれば、分岐先の光ファイバ等(340a~340n)から等しい光量の光が同時に出射される。
【0003】
近年では、特許文献1に記載されているように、分岐先を切り替え可能な光スイッチも用いられるようになっている。光スイッチは、入射光を複数の分岐先のいずれかに切り替える光素子であり、例えば、分岐先の光ファイバ等(340a~340n)について、別途設けられた制御部の制御により出射光を任意のタイミングで順次切り替えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5087087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光分岐素子330として光スプリッタを用いた場合には、あらかじめ定められた分岐比にしたがった光量の光が同時に得られる。また、光分岐素子330として光スイッチを用いた場合には、入射された光量のほぼすべてが画一的に切換選択された光ファイバ等から出射されることになる。
【0006】
このように、光分岐素子330を用いて光を分岐する場合、分岐先の光量を変化させることは考慮されていなかった。分岐先の光量を柔軟に変化させることができれば、光分岐素子330の適用対象が多様化し、光分岐素子330の利用価値を高めることができる。
【0007】
そこで、本発明は、入射光を複数に分岐して出射する際に、分岐先の光量を柔軟に変化可能な光伝搬装置、表示装置および照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、
(1)光を入射する入力ポートと、
光を外部に出射する複数個の出力ポートを含む出力側ポートと、
駆動電圧に対応した傾斜角度に制御されるチルトミラーを有し、前記チルトミラーの傾斜角度に従って前記入力ポートと出力側ポートのいずれかのポートとを光学的に結合するMEMS光スイッチと、
出力する光の光量に関する設定を受け付ける設定受付部と、
前記光量に関する設定に基づいて、1巡周期毎の前記出力側ポートの各ポートの割当期間を示す切換スケジュールを設定する光量制御部と、
前記切換スケジュールに基づいて、前記駆動電圧を出力する駆動制御部とを備え、
前記出力側ポートは、光を外部に出力しないオフポートを含み、
前記設定受付部は、光の減衰量に関する設定を受け付け、
前記光量制御部は、設定された減衰量が大きいほど、前記オフポートに割り当てる期間を長く設定することを特徴とする光伝搬装置、
(2)前記設定受付部は、前記出力ポート毎の光量に関する設定を受け付け、
前記光量制御部は、設定された光量が大きい出力ポートほど、割当期間の割合を大きく設定することを特徴とする前記(1)に記載の光伝搬装置、
(3)前記駆動制御部は、
前記チルトミラーを第1傾斜角度から第2傾斜角度に変化させる場合、前記第1傾斜角度に対応した第1信号から前記第2傾斜角度に対応した第2信号に切り替える際に、前記第1信号よりも大きく、前記第2信号よりも小さい中間電圧を中間電圧印加時間分出力することを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の光伝搬装置、
(4)前記中間電圧は、過渡応答時において前記チルトミラーの最大振幅時に前記第2傾斜角度となる駆動電圧であり、
前記中間電圧印加時間は、前記チルトミラーが最大振幅に達するまでの時間であることを特徴とする前記(3)に記載の光伝搬装置、
(5)前記(1)~(4)のいずれかに記載の光伝搬装置と、
前記出力ポートに対応した発光窓と、
を備えたことを特徴とする表示装置、
(6)前記(1)~(4)のいずれかに記載の光伝搬装置と、
前記出力ポートに接続された光拡散ファイバと、
を備えたことを特徴とする照明装置
を提供する。

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、入射光を複数に分岐して出射する際に、分岐先の光量を柔軟に変化可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る光伝搬装置の構成を示すブロック図である。
図2】切換スケジュールの例を示す図である。
図3】切換スケジュールの異なる例を示す図である。
図4】切換スケジュールの異なる例を示す図である。
図5】複数周期で切換スケジュールを変化させる例を示す図である。
図6】チルトミラーの変化角度を示す模式図である。
図7】一般的な駆動電圧の印加例を示す図である。
図8】本実施形態における駆動電圧の印加例を示す図である。
図9】本発明の適用例を示す図である。
図10】光源からの入射光を複数本に分岐する光素子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る光伝搬装置100の構成を示すブロック図である。光伝搬装置100は、入射光を複数に分岐して出射する装置であり、光分岐素子としてMEMS光スイッチ120を用いている。MEMS光スイッチ120は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を適用した光スイッチであり、メカニカル光スイッチに比べ小型、高速で、耐久性に優れている。
【0012】
図1に示すように、光伝搬装置100は、MEMS光スイッチ120に加え、入力ポート110、複数個の出力ポート130、オフポート132、制御部140を備えている。
【0013】
入力ポート110は、光の入射口であり、光ファイバ220等を介して、光源210からの光を入力する。光源210は、例えば、可視光レーザ光源を用いることができる。ただし、LED光源、ランプ等であってもよい。また、赤外光等の不可視光を出射するものであってもよい。
【0014】
MEMS光スイッチ120は、チルトミラー121と駆動電極122を備えている。チルトミラー121は、入力ポート110から入力した光がその反射面に導かれる位置に配置されている。駆動電極122は、入力される駆動電圧にしたがって、チルトミラー121の傾斜角度を調整する。これにより、反射光の方向を変化させることができる。本実施形態では、1軸を例に説明するが、2軸であってもよい。
【0015】
複数個の出力ポート130およびオフポート132は、入力ポート110に入力した光がチルトミラー121の反射により照射される位置に配置されている。出力ポート130、オフポート132をまとめて出力側ポート134と称する。
【0016】
チルトミラー121の傾斜角度と出力側ポート134の各ポート(出力ボート130、オフポート132)位置とはあらかじめ光伝搬装置100内において対応付けられており、チルトミラー121の傾斜角度を変化させることにより、出力側ポート134のいずれかのポートに入力ポート110に入力した光を照射させることができる。照射先となった出力側ポート134が入力ポート110と光学的に結合されることになる。
【0017】
出力ポート130は、光の出射口であり、入力ポート110に入力した光が照射されると、光ファイバ230等を介して、その光を外部に出力する。一方、オフポート132は、入力ポート110に入力した光が照射されても外部にその光を出力しない。オフポート132は、隣接する出力ポート130の間に配置してもよいし、複数個設けてもよい。オフポート132は、単に光を遮蔽する壁で構成してもよい。
【0018】
制御部140は、設定受付部141、光量制御部142、駆動制御部143を備えている。設定受付部141は、スイッチや操作キー等により構成することができ、光の減衰量、出力ポート毎の光量などの、出力ポート130から出力する光の光量に関する設定をユーザから受け付ける。
【0019】
光量制御部142は、演算装置、メモリ等により構成することができ、設定受付部141が受け付けた光量に関する設定にしたがって、MEMS光スイッチ120のチルトミラー121の照射先の切換スケジュールを設定する。光量制御部142は、設定された減衰量が大きいほど、オフポート130に割り当てる期間を長く設定するとともに、設定された光量が大きい出力ポートほど、割当期間の割合を大きく設定する。切換スケジュールは、1巡周期毎の前記各出力側ポートの割当期間を示す。
【0020】
駆動制御部143は、電圧出力装置等により構成することができ、切換スケジュールにしたがって、駆動電圧を駆動電極122に出力する。
【0021】
次に、本実施形態における光伝搬装置100の動作について説明する。ここでは、出力ポート130は、出力ポート1~出力ポート4の4個が備えられているものとする。
【0022】
光量制御部142が設定する、切換スケジュールは、出力側ポート134のそれぞれについての1巡周期における照射タイミングを規定するものである。例えば、図2に示すような切換スケジュールを例に説明する。
【0023】
本図の例では、チルトミラー121の反射光を、出力ポート1に照射させる期間をW1、出力ポート2に照射させる期間をW2、出力ポート3に照射させる期間をW3、出力ポート4に照射させる期間をW4として、W1、W2、W3、W4を同じ期間長で連続させたものを1巡周期として、複数周期繰り返す設定となっている。オフポート132への照射は行なわない。
【0024】
なお、各周期は、その時間を点滅周期とした場合に、人間の目にちらつきを感じさせない時間とする。具体的には、33msec(30Hz)程度より短いことが好ましく、例えば、16msec(62.5Hz)程度とすることができる。
【0025】
この場合、各出力ポートでは、ちらつきが感じられない周期で点滅を繰り返すため、人間の目には点灯状態が連続しているように感じられる。具体的には、各出力ポートの点灯期間長が等しいため、入力ポート110に入力した光の光量を100%とすると、各出力ポートからは、それぞれ25%の光量の光が同時に出力されているように認識される。なお、損失分は考慮しないものとする。
【0026】
また、図3(a)に示すように、1巡周期内にオフポート132に照射させる期間WOを設定し、W1、W2、W3、W4、WOを同じ期間長で連続させると、各出力ポートからは、それぞれ20%の光量の光が同時に出力されているように認識される。
【0027】
さらに、図3(b)に示すように、WOを長く設定し、例えば、1巡周期の40%の期間とし、W1、W2、W3、W4を同じ期間長とすると、各出力ポートからは、それぞれ15%の光量の光が同時に出力されているように認識される。
【0028】
すなわち、1巡周期におけるオフポート132に照射させる期間WOを調整し、残りの期間を各出力ポートで均等に割り当てることにより、各出力ポートの光量を一律に変化させることができるようになる。
【0029】
この場合、各出力ポートの光量は等しくなるため、光量均一モードと称することができる。光量均一モードでは、期間WOの設定は、光量の減衰量を設定することになる。
【0030】
例えば、設定受付部141に「減衰量0」「減衰量中」「減衰量大」のスイッチを用意しておき、光量制御部142が、「減衰量0」が選択された場合は、図2に示したような切換スケジュールを設定し、「減衰量中」が選択された場合は、図3(a)に示したような切換スケジュールを設定し、「減衰量大」が選択された場合は、図3(b)に示したような切換スケジュールを設定するような運用が可能となる。この場合、光量制御部142は、複雑な制御を行なう必要がないため、例えば、論理回路で実現することができ、簡易に構成することができる。もちろん、WOの期間は任意に設定することも可能であり、減衰量は柔軟に設定することができる。
【0031】
各出力ポートに割り当てる期間は均等でなくてもよい。例えば、図4に示すように、出力ポート1に割り当てるW1の期間を1巡周期の50%とし、出力ポート2に割り当てるW2の期間を25%とし、オフポートに割り当てるWOの期間を25%とすると、出力ポート1からは、50%の光量の光が出力され、出力ポート2からは25%の光量の光が出力されているように認識される。このとき、出力ポート3および出力ポート4からは光は出力されない。
【0032】
すなわち、1巡周期における出力側ポート134の各ポートに割り当てる期間を調整することで、光量を出力ポート毎に変化させることができるようになる。この場合、各出力ポートの光量割合を任意に変化させることができるため、光量割合変化モードと称することができる。このとき、WOの期間を0%に設定してもよい。
【0033】
例えば、設定受付部141に各出力ポートの光量割合を指定するキーと、減衰量を指定するキーとを用意しておき、光量制御部142が、減衰量の指定に基づいて、オフポートに割り当てるWOの期間を設定し、残りの期間については、光量割合の指定に基づいて各出力ポートに期間を割り当てた切換スケジュールを設定するような運用が可能となる。期間を割り当てる出力ポートを1つだけに設定した場合には、その出力ポートのみを光らせて、光量を任意に変化させることができるようになる。
【0034】
図5に示すように、複数周期の各周期毎に、各出力ポートの光量を変化させるようにしてもよい。図5に示す例では、最初のN1周期では、出力ポート1の光量を50%とし、出力ポート2の光量を10%とし、出力ポート3の光量を10%とし、出力ポート4の光量を0%としている。そして、次のN2周期では、出力ポート1の光量を0%とし、出力ポート2の光量を50%とし、出力ポート3の光量を10%とし、出力ポート4の光量を10%とし、N1周期、N2周期、N3周期、N4周期の各周期毎に各出力ポートの光量が異なるように設定している。N1、N2、N3、N4・・・は、同じ周期数としてもよいし、異ならせてもよい。
【0035】
このように、複数周期の各周期毎に各出力ポートの光量を変化させることで、例えば、最も明るい出力ポートを順次移動させたり、消灯している出力ポートを順次移動させたりすることができ、一層変化に富んだ光量変化を実現することができる。尚、図5に示すように、N1周期、N2周期、N3周期、N4周期・・・の各周期毎に各出力ポートの光量が異なるように設定しても良いが、各周期における各出力ポートの光量が同じになるように設定しても良い。
【0036】
次に、駆動制御部143が出力する駆動電圧Va(t)について説明する。ここでは、図6に示すように、駆動電圧Va(t)を変化させて、チルトミラー121をある角度からθだけ変化させる場合を例にする。なお、上述のように、各出力側ポート134とチルトミラー121の傾斜角度とは光伝搬装置100内で対応付けられている。
【0037】
チルトミラー121の角度は駆動電極122に印加する駆動電圧Va(t)に応じるため、チルトミラー121の変化前の角度に対応する駆動電圧Va(t)をV0とし、θだけ変化したときの角度に対応する駆動電圧Va(t)をV1とする。
【0038】
例えば、図7に示すように、駆動電圧Va(t)をV0から直接V1に変化させると、過渡応答において、チルトミラー121が振動し、角度θに収束して安定するまでに時間を要する。これは、チルトミラー121が、機械的共振周波数を持っており、その周波数で共振するためである。
【0039】
このため、本実施形態では、図8に示すように、駆動電圧Va(t)をV0からV1に変化させる前に、中間電圧であるV2を時間t2だけ経由するようにしている。即ち、駆動制御部143は、チルトミラー121を第1傾斜角度から第2傾斜角度に変化させる場合、第1傾斜角度に対応した第1信号である駆動電圧V0から、第2傾斜角度に対応した第2信号である駆動電圧V1に切り替える際に、第1信号よりも大きく第2信号よりも小さい中間電圧V2を中間電圧印加時間分(時間t2)出力する。中間電圧V2が第1信号よりも大きく第2信号よりも小さいとは、中間電圧V2が第1信号超および第2信号未満の範囲内の任意の電圧値であることを指し、必ずしも第1信号と第2信号の中間の電圧値に限定されない。
【0040】
ここで、V2とt2とは、駆動電圧Va(t)をV0からV2に変化させた場合に、過渡応答として、時間t2後に、角度θの最大振幅となる関係を有しているものとする。すなわち、駆動電圧Va(t)としてV2を印加して最大振幅の角度θとなった瞬間に、駆動電圧Va(t)をV1に変化させる。これにより、チルトミラー121の振動を防ぐことができ、素早く角度θで安定させることができる。なお、実装上のV2、t2については、理論的、実験的等に定めるようにする。
【0041】
以上、本実施形態の光伝搬装置100について説明したが、本発明は、種々の装置に適用することができる。例えば、図9(a)に示すように、出力ポート130の出光側に、出力ポート130に対応した発光窓162を形成することで、表示装置160として利用することもできる。発光窓162は、図9(b)に示すように、横方向、縦方向の両方に配置するようにしてもよい。このようにすることで、文字や記号を表示可能な表示装置160として機能する。
【0042】
また、通常の光ファイバ230に代えて、図9(c)に示すように、側面からの発光が可能な光拡散ファイバ232を出力ポート130に接続することで、照明装置170として利用することもできる。
【符号の説明】
【0043】
100 光伝搬装置
110 入力ポート
120 MEMS光スイッチ
121 チルトミラー
122 駆動電極
130 出力ポート
132 オフポート
134 出力側ポート
140 制御部
141 設定受付部
142 光量制御部
143 駆動制御部
160 表示装置
162 発光窓
232 光拡散ファイバ
170 照明装置
210 光源
220 光ファイバ
230 光ファイバ
310 光源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10