(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】消臭剤作成キット、及び消臭剤製作用品
(51)【国際特許分類】
A61L 9/14 20060101AFI20220318BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20220318BHJP
B05B 11/00 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
A61L9/14
A61L9/01 H
B05B11/00 102Z
(21)【出願番号】P 2019016381
(22)【出願日】2019-01-09
【審査請求日】2021-05-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519031472
【氏名又は名称】三友株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157428
【氏名又は名称】大池 聞平
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】特許業務法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 良一
(72)【発明者】
【氏名】大崎 善規
(72)【発明者】
【氏名】越智 光三
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-196928(JP,A)
【文献】特開2008-194446(JP,A)
【文献】特開2001-299895(JP,A)
【文献】特開2006-141740(JP,A)
【文献】特開2009-165686(JP,A)
【文献】特開2004-057522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
B05B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸が絡み合った状態のボール状の繊維のかたまりであって、消臭剤の濃縮液を
含んだ状態のボール状繊維と、
複数の前記ボール状繊維を密封収納する密封部材と、
開口から入れた前記ボール状繊維の濃縮液が希釈される容器を有し、該容器内の液体を噴霧可能に構成された液体噴霧器具とを備えた、消臭剤作成キット。
【請求項2】
前記消臭剤は、植物由来の成分を主体としている、請求項1に記載の
消臭剤作成キット。
【請求項3】
糸が絡み合った状態のボール状の繊維のかたまりであって、消臭剤の濃縮液を含んだ状態のボール状繊維と、
複数の前記ボール状繊維を密封収納する密封部材とを備えている、消臭剤製作用品。
【請求項4】
請求項3に記載の消臭剤製作用品であって、
前記ボール状繊維には、水で希釈することで、消費者が利用可能な濃度の消臭剤が得られるように濃縮された消臭剤の濃縮液が含まれている、消臭剤製作用品。
【請求項5】
前記ボール状繊維の糸の太さは、0.1デシテックス~10デシテックスである、請求項1に記載の
消臭剤作成キット。
【請求項6】
前記ボール状繊維の直径は、5mm~20mmである、請求項1に記載の
消臭剤作成キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性の消臭剤に関するもので特に天然由来、取り分け植物由来の成分を主な原材料とする消臭剤をより安価に提供するため、消臭成分の濃縮液を含侵させたボール状繊維と空のハンドスプレーをセットにしキット化したものである。
【背景技術】
【0002】
水溶性でかつ一般的にハンドスプレーやガンスプレーと呼ばれる液体噴霧器具に入った消臭剤は、臭いの気になる個所に直接噴霧できまた液体であることから速効性も期待できるため、家庭用消臭剤として普及している。
【0003】
このハンドスプレーまたはガンスプレーと呼ばれる液体噴霧器具に入れられ市販されている水溶性の消臭剤は、その組成から大別して人工香料や人工的に作られた消臭成分を主体とした化学合成の消臭剤と天然由来、取り分け植物より抽出した成分を主体とした植物由来の消臭剤またはそれらの成分を混合した消臭剤とに大別できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天然由来、取り分け植物由来の成分を主体とする消臭剤は、消費者の安全で安心な製品を使いたいという意識の高まりから化学合成の成分を主体とする消臭剤よりも一般的に好まれる傾向にある。しかしながら、植物由来の成分を主体とする消臭剤は化学合成の成分を主体とする消臭剤よりかなり高価であるという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は、植物由来の消臭成分の濃縮液を含侵させたボール状繊維とハンドスプレーとをキットにすることにより、その製造原価を低減させ、さらに繰り返しハンドスプレーを使用できることからハンドスプレー代を節約し、最終的に植物由来の成分を主体とする消臭剤の単位量当たりの価格を一般的な化学合成の成分を主体とする消臭剤の価格と同等程度に低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、第1に植物由来の消臭成分の濃縮液を含侵させた、消臭剤製作用のボール状繊維であることを特徴とする。
【0007】
第2に前記の消臭剤製作用のボール状繊維と、前記ボール状繊維を開口から入れることの可能なハンドスプレーと呼ばれる液体噴霧器具とを備えた消臭剤作成キットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、製造原価を低減させ、さらに繰り返しハンドスプレーを使用できることからハンドスプレー代を節約し、よって植物由来の成分を主体とする消臭剤を安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【
図1】フタつきの瓶に収納されたボール状繊維の説明図である。
【
図2】ハンドスプレーのボトル部分にボール状繊維を規定量入れた説明図である。
【
図3】
図2のボトルに水を入れ、トリガー部分を装着した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は
図4の通り、植物由来の消臭成分の濃縮液を含侵させたボール状繊維と空状態のハンドスプレーとで構成される消臭剤作成キットであることを特徴とするが、さらに植物由来の消臭成分の濃縮液を含侵させたボール状繊維は、複数個を収納できる大きさの密封性のガラス瓶等に収納されている。
【0010】
ここで言うボール状繊維とは、材質がポリエステルやレーヨン、アクリルなどの合成繊維または綿や紙、シルクなどの天然繊維で、0.1デシテックスから10デシテックスの太さの糸が不規則に絡み合いボール状になった繊維のかたまりであり、消臭成分の濃縮液を含侵しやすいように繊維と繊維の間に無数の細かな空隙を持つ。このボール状繊維の大きさはハンドスプレーのボトルの口部から入れやすいように直径が5ミリメートルから20ミリメートル程度が望ましい。
【0011】
繊維以外に消臭成分の濃縮液を含侵させるための素材としては、吸液性の高いウレタンやアクリルなどの発泡素材または細かな空隙を有する大谷石や珪藻土、あるいは打錠されたケイ酸カルシウムなどが考えられる。但し、これらの素材は比較的高価であることや大谷石や珪藻土、ケイ酸カルシウムなどは細かな破片が欠け落ちてスプレーの管を詰まらせる可能性があるため、安価で空隙があり柔軟で緻密な繊維素材が適している。
【0012】
また、ボール状以外の形状でも特に問題はないが、一般消費者が購買する製品としての美観的な側面からボール状が望ましい。さらに、すべてのボール状繊維は、同じ量の消臭成分の濃縮液を含侵しやすいように、同じ大きさでかつ同じ重さでかつ同じ素材でかつ同じ糸の太さが望ましい。
【0013】
また、ここで使用されているハンドスプレーやガンスプレーと呼ばれる液体噴霧器具は、ボトルと呼ばれる容量が100ccから500cc程度でポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート、あるいは塩化ビニールからなる容器部分と取っ手を装着したポリプロピレンやABS樹脂などからなるトリガーと呼ばれる液体を容器から吸い上げ噴霧する部分とに分別でき、ボトル上部にねじ式で装着されたトリガーを外して消臭剤などの液体をボトルに充填し、液体を噴霧する場合は、ボトル上部にトリガーを装着し、トリガーの取っ手をてことして引くことによりポンプが働き容器内の液体が噴霧されるものである。
[キットの使用方法]
【0014】
まず、ボール状繊維に含侵された植物由来の消臭成分の濃縮液は水に浸漬することにより速やかに溶出され、その後、水に希釈されることにより利用可能な消臭剤となる。利用可能な消臭剤を作るための消臭成分の濃縮液の単位量あたりの希釈水の最適量は規定される。
【0015】
図1のように密封性のあるガラス瓶等に入ったボール状繊維には、すべて同じ分量の消臭成分の濃縮液が含侵されている。これは、すべてのボール状繊維は同じ大きさでかつ同じ重さでかつ同じ素材でかつ同じ糸の太さであることにより容易になしえることができ、これによりすべてのボール状繊維1個当りを希釈水の量は同じになる。すなわち、消臭剤を作る際にスプレーボトルの容量に合わせてボール状繊維をいくつ投入すべきかを容易に計算できる。
【0016】
例えば、
図1に収納された個々のボール状繊維には等しく規定量の消臭成分の濃縮液が含侵されているので、ボール状繊維1個に対して100ccの希釈水をもって利用可能な消臭剤を得ることができるとするならば、
図2のボトルの最大容量が300ccとすると、3個のボール状繊維を投入すればよいことになる。
【0017】
さらに、
図3のように水道水または飲料水を注入し、ボール状繊維から含侵された消臭成分が溶出してくるのを数分から数十分放置し利用可能な消臭剤が完成する。
【0018】
ボール状繊維に含侵される薬剤は、濃縮した植物由来の芳香剤もしくは濃縮した植物由来の抗菌剤であってもよい。
[発明による主たる効果]
【0019】
このようにして得られたボトル内の消臭剤を消費した後は、使用済みのボール状繊維をボトルから取り出し、ボトルを水道水で洗浄し、新たなボール状繊維と水を同じ要領で投入することにより容易に繰り返し植物由来成分の消臭剤作ることができる。これにより、従来の市販消臭剤のように消臭剤を消費すればハンドスプレーごと買い替えなくてはならないものと違い、少なくとも瓶等に収納されたボール状繊維をすべて消費するまでは、繰り返しハンドスプレーを使用することができるため、ハンドスプレーの代金を節約することができる。また、消臭成分の濃縮液を含侵させたボール状繊維の入った密封瓶等のみを別売にすれば、さらにハンドスプレーの代金は節約できる。
【0020】
製造段階では、全ての製造原価に占める割合の大きいものとして、ハンドスプレーに消臭剤を充填する費用が挙げられるが、本発明では充填する工程は必要なく、これについても節約できる。
【0021】
さらには、一般の水溶性消臭剤の重量の大半が希釈水の重量であるが、本発明はキットであるため消費者自らが水道水または飲料水を使って希釈するため、輸送段階では希釈水は存在しない。よって製品の総重量が大幅に軽減され、その結果運送費用の軽減もなされる。
【0022】
[0019]、[0020]、[0021]、を考慮した場合、十分、植物由来の成分を主体とする消臭剤の単位量当たりの価格を一般的な化学合成の成分を主体とする消臭剤の価格と同等程度に低減させることができる。すなわち、キット内にボール状繊維が12個セットされていた場合、
図3のように1回の消臭剤製作に3個使用するならば、このキットは都合4回分の消臭剤が製作できることになり、このキット1セットの代金は、一般的な化学合成の成分を主体とする消臭剤4個の合計代金程度になりうる。
[発明による副次的な効果]
【0023】
市販されている水溶性消臭剤の多くは石油を由来とするプラスチック製のハンドスプレーに入った状態で販売されているが、それら消臭剤を使い切り、さらにその消臭剤を買い求めたい場合は、まだ前回に買い求めたハンドスプレーが機能するにもかかわらず、新たにハンドスプレーとともに消臭剤を購入する必要があり、前回のハンドスプレーは廃棄せざるを得ない。一方、本発明の場合、消臭剤がなくなってもハンドスプレーを捨てることなく、同じ要領で消臭剤を何度も作ることができ環境保護的観点から優れている。一般の消臭剤の中には、スプレー部分のないプラスチックフィルムなどの軟包材に入った詰め替え用が販売されているが、本発明のボール状繊維はそれらの詰め替え用と比較して数十分から数百分の1の体積と重さであり、それを運送する燃料等を考慮した場合、この場合においても比較的環境負荷が少ない。
【0024】
さらにキット品ではなく、消臭成分の濃縮液を含侵させたボール状繊維の入った密封瓶のみを購買した場合、消費者はお仕着せのスプレーボトルを使わなくても好みのスプレーボトルを使うことができる。例えば、ガラス製の園芸用の霧吹きを使えば、石油由来のプラスチック製のスプレーボトルと比べ環境負荷が少ない。また、100cc程度の小型のプッシュボトルにも対応できるため、持ち運びにも便利である。
【符号の説明】
【0025】
1 ボール状繊維
2 フタつき瓶
3 ボトル部分
4 トリガー部分
5 水道水又は飲料水