(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】法律文書レビュープログラム、法律文書レビュー方法、及び法律文書レビューシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/18 20120101AFI20220318BHJP
【FI】
G06Q50/18
(21)【出願番号】P 2019042116
(22)【出願日】2019-03-08
(62)【分割の表示】P 2018240446の分割
【原出願日】2018-12-24
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】P 2017247111
(32)【優先日】2017-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517299951
【氏名又は名称】GVA TECH株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】240000350
【氏名又は名称】弁護士法人GVA法律事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊
【審査官】松田 岳士
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-208547(JP,A)
【文献】特開2011-221797(JP,A)
【文献】特開2006-065421(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0232630(US,A1)
【文献】特開2010-231743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法律文書のレビューを行うためのシステムであって、
法律文書データの入力を受け付けるデータ受付部と、
データ受付部にて受け付けた法律文書データに含まれる文字コンテンツを所定単位ごとに識別する文字コンテンツ識別部と、
文字コンテンツ識別部にて識別された文字コンテンツが当該法律文書データの利用者にとり有利な内容か否かを判定するためのルールである判定ルールを保持する判定ルール保持部と、
文字コンテンツ識別部にて識別した文字コンテンツを判定ルール保持部にて保持する判定ルールを用いて処理する処理部と、
前記処理部の結果を出力する出力部と、
を有し、
前記処理部は、特定の判定ルールにおいて判定対象となるべき文字コンテンツが、当該法律文書コンテンツに含まれていないと判断される場合、当該文字コンテンツが当該法律文書コンテンツに記載されていてしかるべき内容であ
り、当該文字コンテンツの追記を促す旨の注意喚起情報を判定の一態様として生成する生成手段を有する、
法律文書レビューシステム。
【請求項2】
法律文書のレビューを行うためのシステムであって、
法律文書データの入力を受け付けるデータ受付部と、
データ受付部にて受け付けた法律文書データに含まれる文字コンテンツを所定単位ごとに識別する文字コンテンツ識別部と、
文字コンテンツ識別部にて識別された文字コンテンツが当該法律文書データの利用者にとり有利な内容か否かをスコアを用いて判定するためのルールである判定ルールを保持する判定ルール保持部と、
文字コンテンツ識別部にて識別した文字コンテンツを判定ルール保持部にて保持する判定ルールを用いてスコアリングするスコアリング処理部と、
スコアリング処理部のスコアリング結果を出力する出力部と、
を有し、
前記スコアリング処理部は、特定の判定ルールにおいてスコアリング対象となるべき文字コンテンツである必須文字コンテンツが、当該法律文書コンテンツに含まれていないと判断される場合、必須文字コンテンツが当該法律文書コンテンツに記載されていてしかるべき内容であ
り、当該必須文字コンテンツの追記を促す旨の情報である注意喚起情報をスコアリングの一態様として生成する注意喚起情報生成手段を有する、
法律文書レビューシステム。
【請求項3】
文字コンテンツ識別プログラムの実行にて識別された文字コンテンツが法律文書データの利用者にとり有利な内容か否かをスコアを用いて判定するためのルールである判定ルールを保持する判定ルール保持部を有する法律文書レビューシステムを実行するプログラムであって、
法律文書データの入力を受け付けるデータ受付ステップと、
データ受付ステップにて受け付けた法律文書データに含まれる文字コンテンツを所定単位ごとに識別する文字コンテンツ識別ステップと、
文字コンテンツ識別ステップにて識別した文字コンテンツを判定ルール保持部にて保持する判定ルールを用いて判定する処理ステップと、
前記処理ステップにて実行された結果を出力する出力ステップと、
を有し、
前記処理ステップは、特定の判定ルールにおいて判定対象となるべき文字コンテンツが、当該法律文書コンテンツに含まれていないと判断される場合、当該文字コンテンツが当該法律文書コンテンツに記載されていてしかるべき内容であ
り、当該文字コンテンツの追記を促す旨の注意喚起情報を判定の一態様として生成する、
法律文書レビュープログラム。
【請求項4】
法律文書データを閲覧、作成又は編集するために用いられる文書作成プログラムのアドインモジュールであることを特徴とする請求項3に記載の法律文書レビュープログラム。
【請求項5】
文字コンテンツ識別プログラムの実行にて識別された文字コンテンツが法律文書データの利用者にとり有利な内容か否かをスコアを用いて判定するためのルールである判定ルールを保持する判定ルール保持部を用いて行う法律文書レビュー方法であって、
法律文書データの入力を受け付けるデータ受付ステップと、
データ受付ステップにて受け付けた法律文書データに含まれる文字コンテンツを所定単位ごとに識別する文字コンテンツ識別ステップと、
文字コンテンツ識別ステップにて識別した文字コンテンツを判定ルール保持部にて保持する判定ルールを用いて判定する処理ステップと、
前
記処理ステップにて実行された結果を出力する出力ステップと、
を有し、
前記処理ステップは、特定の判定ルールにおいて判定対象となるべき文字コンテンツが、当該法律文書コンテンツに含まれていないと判断される場合、当該文字コンテンツが当該法律文書コンテンツに記載されていてしかるべき内容であ
り、当該文字コンテンツの追記を促す旨の注意喚起情報を判定の一態様として生成する、
法律文書レビュー方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法律文書レビュープログラム、法律文書レビュー方法、及び法律文書レビューシステムなどに関する。
【背景技術】
【0002】
契約書や利用規約をはじめとする複数当事者間の法律関係を規定する法律文書は、法律関係の種別はもちろん、当事者間のパワーバランスや契約締結の目的など様々な要素に基づいてその内容が定められる。いっぽう、法律文書は、法律はもちろんのこと、政省令や各種ガイドライン、商慣習など様々なルールの存在を背景に規定されており、それらの専門的な知識を十分に理解したうえでないと、自身にとって内容が有利か不利かを判断することは極めて困難である。
【0003】
そこで、以上のように、高度な専門性を有する法的文書の内容が自身にとって有利かどうかの判断(レビュー)は弁護士をはじめとする専門家による判断のもとで行われることが通常であり、そのような専門家に依頼をしてあらゆる法律文書のレビューを行うことは、時間や金銭的なコストの観点から非常に困難が伴っていた。さらにそれらのレビューは、法律専門家の人的素養や専門性などにも依存することから、均質的なレビュー結果を安定的に得ることも困難だった。
【0004】
そこでそのような課題を解決することを目的として、これまで様々な取り組みが試みられてきた。具体的には、以下で掲げたように、法律文書を電子化したうえでコンピュータにて読み取り、その内容を条項別にスコアリングしその結果を出力することでユーザーに対し、自身にとって契約書が有するリスクの把握を容易にさせる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国公開特許公報2016/0232630号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ただ、同文献に記載されている先行技術は、数値化されたスコアリングを表示出力する技術であって、そのように数値化されたに過ぎないスコアリング結果を出力されただけでは、法律文書の理解力に乏しい利用者にとってはそれが自身にとってどの程度有利あるいは不利なのかを直感的に把握することが難しく、好ましいレビュー結果を提供できているとは言い難かった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような課題を解決すべく、本発明は、電子化された法律文書である法律文書データの入力を受け付けるデータ受付部と、データ受付部にて受け付けた法律文書データに含まれる文字コンテンツを所定単位ごとに識別する文字コンテンツ識別部と、文字コンテンツ識別部にて識別された文字コンテンツが当該法律文書データの利用者にとり有利な内容か否かをスコアを用いて判定するためのルールである判定ルールを保持する判定ルール保持部と、文字コンテンツ識別部にて識別した文字コンテンツを判定ルール保持部にて保持する判定ルールを用いてスコアリングするスコアリング処理部と、スコアリング処理部のスコアリング結果を出力する出力部と、
を有し、出力部は、スコアリング結果が利用者にとり有利か否かを色、大きさ、形状のうち少なくとも一の要素を用いて表示出力するUI出力手段を有する法律文書レビューシステムなどを提案する。
【発明の効果】
【0008】
主に以上のような構成をとる本発明によって、法律文書の内容が自身にとって有利か不利かを視覚的に容易に把握することができ、利用者に対して法律文書作成にかかるリスクの大小及び規定ごとのリスクの内容を把握しやすくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明の実施形態の機能ブロックの一例を示す図
【
図3】本実施形態の法律文書レビューシステムにて法律文書データとして業務委託契約書データの入力を受け付けた場合の文字コンテンツ識別の一例を示す図
【
図4】本実施形態の法律文書レビューシステムにおいて保持される判定ルールの一例を示す図表
【
図5】本実施形態の法律文書レビューシステムの出力部にて全体スコアリング結果をも表示出力する構成の一例について示す図
【
図6】修正案提示コメントの表示出力の一例を示す図
【
図7】本発明の実施形態を構成する各装置の機能的な各構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず
図1を示す。
図1は本発明の概要を示す図であり、本発明の法律文書レビューシステムを用いて業務委託契約書データのリスク把握(レビュー)を求めるユーザーの管理する端末であるユーザー端末の表示画面の一例を示す図である。同図に示されているように、本発明において「業務委託契約書」0100とのタイトルの法律文書(契約書)のデータの入力を受け付けると、当該契約書データに含まれる文字コンテンツを条項単位で識別し、例えば「第1条第2項」0101に対応する「乙は、本業務を善良な管理者の注意により遂行するものとする。」との文字コンテンツが、本法律文書データの利用者にとり有利か否かを、保持する判定ルールに基づいてスコアを用いて判定(スコアリング)し、当該スコアリングの結果を「○」という形状とともに該当する文字コンテンツと関連付けて0302にて特定される領域に表示出力している。
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面と共に説明する。なお、本発明は以下で説明に用いる実施形態に何ら限定されるものではなく、技術常識にしたがって特許請求の範囲の各請求項に記載の技術的思想を有し、その要旨を逸脱しない範囲内において、様々な態様で実施し得る。
【0012】
<<実施形態>>
<概要>
図2は、本実施形態の法律文書レビューシステムの機能ブロックの一例を示す図である。同図において示されているように、本実施形態の「法律文書レビューシステム」0200は、「データ受付部」0201と、「文字コンテンツ識別部」0202と、「判定ルール保持部」0203と、「スコアリング処理部」0204と、「出力部」0205と、からなり、出力部は、「UI出力手段」0206をさらに有する。
【0013】
なお、以下で詳しく説明する法律文書レビューシステムは、一又は複数の装置により構成されうるものであって、その機能ブロックは、いずれもハードウェア又はソフトウェアとして実現され得る。コンピュータを用いるものを例にすれば、CPUやメインメモリ、GPU、画像メモリ、バス、二次記憶装置(ハードディスクや不揮発性メモリ)、カメラ、操作ボタンやタッチパネル、タッチパネルをタッチするための電子ペンなどの各種入力デバイス、マイク、ディスプレイその他各種出力デバイス、その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部、またその外部周辺装置用のインターフェース、通信用インターフェース、それらのハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他のアプリケーションプログラムなどが挙げられる。
【0014】
そしてメインメモリ上に展開したプログラムに従ったCPUの演算処理によって、入力デバイスやその他インターフェースなどから入力されメモリやハードウェア上に保持されているデータなどが加工、蓄積されたり、前記各ハードウェアやソフトウェアを制御するための命令が生成されたりする。ここで、上記プログラムは、モジュール化された複数のプログラムとして実現されてもよいし、2以上のプログラムを組み合わせて一のプログラムとして実現されても良い。そして、法律文書データを閲覧、作成又は編集するために用いられるWord(登録商標)をはじめとする文書作成プログラムのアドインモジュールであってももちろんよい。
【0015】
「データ受付部」0201は、電子化された法律文書である「法律文書データ」0210の入力を受け付けるように構成されている。ここでいう法律文書とは、契約書のほか、利用規約や覚書その他名称を問わず、複数当事者の法律関係を定めることを目的とするあらゆる文書が該当しうる。これらを電子化してコンピュータ処理できる形式で用いることとなる。
【0016】
入力受付の具体的な態様としては、電子メールの受信による場合のほか、webページへのドラッグその他の方法によるアップロードなど適宜の方法でよく、一の法律文書データのみでなく、複数の法律文書データの入力をまとめて受け付けてもよい。利用者からの入力を受け付ける場合のほか、予め指定された所定範囲のデータ領域をクローリングして法律文書データを抽出し、当該抽出された法律文書データを入力結果として受け付ける構成も考えられる。当該構成を採用することにより、利用者がいちいち入力作業を行うことなく本発明を利用することができ、大量の法律文書データのリスク把握を効率よく行うことが可能になる。
【0017】
また、ここでいう「法律文書データの入力を受け付ける」とは、法律文書データに含まれる全ての文字データの入力を受け付ける構成に限らず、例えば、法律文書データに含まれる一部の文字データのみの入力を受け付ける構成を採用してもよい。例えば、利用者による任意の選択に応じて特定された範囲のみの入力を受け付けてもよいし、特定の法的論点(具体的には知的財産権の取扱に関する法的論点や、損害賠償に関する法的論点、秘密保持の範囲に関する法的論点など)を含む文字データのみの入力を設けるような構成も考えられる。当該構成を採用すれば、利用者の需要に応じた範囲でのみ後記スコアリングを行いその結果を出力することができ、利用者に対し迅速にフィードックを提供することが可能になる。
【0018】
なお、複数の法律文書データの入力をまとめて受け付ける場合には、それらの法律文書データを文字コンテンツ識別部にて識別する順番を決定するための識別順決定ルールを用いて識別順を決定する識別順決定部を設けてもよい。具体的には、法律文書データのデータサイズや条項の数、法律文書データのタイトル、法律文書データの締結予定日、法律文書データの有効期間開始日その他法律文書データを優先してスコアリングする必要性を判断するに足りる情報を用いて識別順を決定することが考えられる。
【0019】
ちなみに、データ受付部には、法律文書データの入力を受け付けるに際し、当該法律文書データを匿名化するための処理を行う「匿名化処理手段」を備えてもよい。法律文書データは、その内容のみならず、締結当事者が誰であるか(当事者)や、いつ締結されたか(締結日)その他の各事項につき、対外的に秘密保持の要請が強いデータであることが通常である。そこでデータ受付部にて法律文書の入力を受け付けるに際して、速やかに当該法律文書データに含まれる契約当事者等の固有名詞を抽出し、匿名化処理することが望ましい。具体的には、データ受付部にて法律文書データの入力を受け付ける際に、固有名詞抽出方法であるHidden Markov Model(HMM)や、Conditional Random Field(CRF)その他の技術的手段を用いて、当該法律文書データに含まれる当事者名称や特定の商品名、サービス名、プロジェクト名その他の固有名詞を匿名化することが望ましい。ちなみに、後記
図3を用いて説明する業務委託契約書データの一例において、契約当事者である「甲」と「乙」の固有名詞がいずれも「●●●」と表示されている場合を例に掲げているのは、ここで説明した匿名化処理が行われた場合を想定した表示の一例であるためである。当該構成を採用することにより、例えば本発明の法律文書レビューシステムがクラウドコンピューティングをはじめとして外部端末との通信により実現する場合であって、万一利用者から入力を受け付けた法律文書データが外部に漏えいしたとしても、当該漏えいしたデータと利用者との関連性の把握を困難にし、漏えいに伴う種々のリスクを一定程度低減することができる。
【0020】
「文字コンテンツ識別部」0202は、データ受付部にて受け付けた法律文書データに含まれる文字コンテンツを所定単位ごとに識別するように構成されている。具体的には、文字コンテンツを「第一条」「第二条第三項」などのように、法律文書データを構成する情報のうち法律関係を規定するテーマごとに複数階層に規定されている情報ごとに細分化し、当該細分化された情報ごとに後記スコアリング処理部にて処理しやすいように構成することが好ましい。具体的な識別の態様は、文字コンテンツの内容又は体裁からあらかじめ定められている識別ルールに基づいて識別する場合を採用するほか、識別結果を示す識別情報を受信し、当該識別情報を用いて識別処理を行う場合であってもよい。
【0021】
ここで、文字コンテンツ識別部における文字コンテンツ識別の一例について図面を用いて説明する。
図3は本実施形態の法律文書レビューシステムにて法律文書データとして業務委託契約書データの入力を受け付けた場合の文字コンテンツ識別の一例を示す図である。同図では、業務委託契約書のデータのうち、「業務委託契約書」と記載された「タイトル部分」0300、「●●●(以下「甲」という。)と●●●(以下「乙」という。)とは、以下のとおり、コンテンツ制作契約(以下「本契約」という。)を締結する。」と記載された「前文部分」0301、「第1条(委託業務)」と記載された「第1条部分」0302、及び第2条が記載されているが、これは入力を受け付けた業務委託契約書データの一部のみを示した図であり、記載内容もあくまで契約書データの一例であって、本発明の技術内容とは直接関係ない内容である。
【0022】
同図に示されている文字コンテンツのうち、文字コンテンツ識別部においては、任意に設定された所定単位ごとに文字コンテンツを識別するように構成されており、例えば「タイトル部分」0300、「前文」0301、「第1条」0302といったように、識別する構成も考えられれば、「タイトル部分」0300、「前文」0301、「第1条第1項」0302a、「第1条第2項」0302b、のように、一の条文をさらに項ごとに細分化して識別する構成を採用することも可能である。場合によっては、「第1条第1項第1号」「第1条第1項第2号」のように、各条文に項の下層構成として「号」あるいはその他の層が構成されている場合には、当該層ごとに文字コンテンツを識別する構成を採用してもよい。このように、法律文書の作成者によりあらかじめ定められた階層に応じて文字コンテンツを識別する構成を採用することで、より法律文書の個別具体的な内容に対応した判定を行うことができるようになる。
【0023】
「判定ルール保持部」0203は、文字コンテンツ識別部にて識別された文字コンテンツが当該法律文書データの利用者にとり有利な内容か否かをスコアを用いて判定するためのルールである「判定ルール」0220を保持するように構成される。ここでいう「判定ルール」は、当該法律文書データの法的性質(売買契約、ライセンス契約、製造委託契約、システム開発契約、コンテンツ制作業務委託契約、秘密保持契約、人材紹介契約、システム保守契約、販売店契約、販売取次契約、代理店契約、賃貸借契約、広告代理契約、コンサルティング契約、労働者派遣契約、職業紹介契約・業務委託契約・原稿作成委託契約・動画制作委託契約・映像制作委託契約・SaaS利用規約・サイト制作契約・アプリ開発契約・ソフトウェア制作委託契約・アプリ開発委託契約・ウェブサイト制作委託契約・ゲーム運営委託契約・顧問契約・アドバイザリー契約・広告運用契約・広告配信委託契約・賃貸借契約・投資契約などが一例だがその他の契約類型を排除するものではない)に応じて定められている。
【0024】
なお、判定ルール保持部にて保持される判定ルールは法律文書データの法的性質に応じて備えられるが、必ずしも一の法的性質に応じて一の判定ルールのみが用いられるとは限らない。法律文書は通常、法的性質に応じた各種規定と、およそどの法律文書にも共通して設けられる規定(いわゆる一般条項)とがある。一般条項の一例としては準拠法や裁判管轄、反社会的勢力の排除条項、存続条項あるいは誠実義務条項といったものが含まれうる。これら一般条項の判定については、法律文書データの法的性質にかかわらず共通でスコアリング処理に用いるための「一般条項判定ルール」を用いることが考えられ、その場合には、一の法律文書データにつき、法的性質に応じた判定ルールと、一般条項判定ルールとを用いることが考えられる。当該構成を採用すれば、法的性質に応じた判定ルールの内容を圧縮することができ、結果として効率的な判定処理を実現しうる。
【0025】
ちなみに、判定ルールは、法的性質に対応して設けられるだけでなく、当該法律文書データにおける当事者の立場ごとに設けられる構成も考えられる。ここでいう「立場」の意義につき具体的な例に即していえば、業務委託契約を法律文書データとした場合、業務を委託する利用者(委託者)のための判定ルールと業務を受託する利用者(受託者)のための判定ルールを個別に設けてもよい。
【0026】
判定ルールの構成の一例としては、例えば、後記スコアリング処理部におけるスコアリング処理に用いるためのテーブルとすることが考えられる。具体的には、文字コンテンツ識別部にて識別された個々の文字コンテンツについて、その意味内容が利用者にとり有利な内容か否かを判定するためのテーブルを設けることが考えられる。また、個々の文字コンテンツの意味内容に関する判定を行うための判定ルールに加え、当該判定を踏まえて、それらの全ての文字コンテンツにより構成される法律文書データ全体の内容が利用者にとり有利な内容か否かを判定する判定ルールとしての「法律文書データ判定ルール」が設けられてもよい。個別の文字コンテンツのみならず、法律文書データ全体の内容のスコアリングが可能となるような構成を採用すれば、利用者は当該スコアリング結果を踏まえ、当該法律文書につき相手方に対してとるべき姿勢をより簡易に把握することが可能になる。
【0027】
「有利な内容か否かをスコアを用いて判定する」とは、有利不利の判定結果を利用者が一意に把握可能な指標に基づいて判定するという意味であり、当該効果が実現できる何らかの指標であれば当該指標をスコアとして用いればよく、点数や評価(ランクA、ランクBなど)その他特定の指標をスコアとして限定して用いる必要はない。
【0028】
判定ルールの内容については、当該法律文書データないし文字コンテンツの法的性質や形式等に応じて適宜好適に構成されればよい。具体的には、識別された文字コンテンツの当該法律文書コンテンツにおける重要度や、タイトル、当該法律文書において必須となるべき単語の有無、文字コンテンツとしての表現の強弱、文字コンテンツに含まれる数値の大小ないし多寡、文字コンテンツに含まれる期間の長短その他の要素を判定のための項目として定め、当該項目を満たしているか否かで利用者にとり有利な内容か否かを自然言語処理その他の技術を用いて解析し判定(スコアリング)する処理を行うためのテーブルとする構成が考えられる。当該構成を採用することにより、様々な表現で作成される文字コンテンツを多角的に評価し、判定処理を行うことが可能になる。
【0029】
また、あらかじめ法律文書データの法的性質ごとに、当該法的性質に対応して想定される法的論点を判定のための項目として設け、当該項目ごとに、利用者にとり有利な内容から不利な内容と評価可能な複数の文字データを例文文字データとして予め判定ルールの内容として構成しそれぞれスコアと紐づけておくことも考えられる。あらかじめ例文を判定ルールの内容として構成しておくことで、後記スコアリング処理部において、いちいち個々の文字コンテンツの意味内容を解釈するための処理を要することなく、自然言語処理等を行った文字データを例文文字データと比較処理をすることでスコアリング処理を行うことが可能になる。
【0030】
ここで
図4を示す。
図4は本実施形態の法律文書レビューシステムにおいて保持される判定ルールの一例を示す図表である。同図では、法律文書データが業務委託契約に関するデータである場合にID「AX0306」が割り当てられた法的論点である「受託者の注意義務」に関する判定ルールの一例が示されており、「スコア」「例文文字データ」「表示コンテンツ」から構成されている。法律文書データの文字データに受託者の注意義務に関する規定が含まれていた場合には当該法的論点IDに紐づけられた判定ルールが適用されることとなり、文字データの内容と例文文字データとを比較処理することが考えられる。そして仮に当該比較処理の結果、「善良」「管理者」などのキーワードが抽出でき、「別途」「指示」「推定する」などのキーワードが抽出されない場合には、当該判定ルールに従い当該キーワードの重複状況に応じて、スコア「AA」「A」「C」「F」には対応せず、「受託者は、善良な管理者としての注意義務を負う。」という内容の例文文字データと紐づくスコア「B(中立的)」であると判定(スコアリング)するような内容のルールとすることが考えられる。なお、スコアが特定されると、当該スコアと紐づいた表示コンテンツがUI出力手段により表示されるよう、判定ルールにおいてもスコアと表示コンテンツとを紐づけられる。同図においては、スコアAAと判定される場合には「◎(色は青、大きさは文字データ4文字相当)」、スコアBと判定される場合には「○(色は緑、大きさは文字データ4文字相当)」、スコアCと判定される場合には「△(色は黄色、大きさは文字データ6文字相当)」、スコアFと判定される場合には「!(色は赤色、大きさは文字データ8文字相当)」というルールをそれぞれ定めて、当該ルールに応じた表示コンテンツを出力する旨定めておくことが可能である。スコアリングの対象となる文字コンテンツと例文文字コンテンツとの類似判断をどのような基準に基づいて行うかは、自然言語処理のアプローチ、利用者の過去の利用実績、その他適宜好適な方法を選択してよく設計事項である。
【0031】
なお、判定ルールは法律文書コンテンツに規定される全ての文字コンテンツのスコアリングを行うことを目的に生成されるものではない。法律文書コンテンツは、関与する当事者のスタンスにより、法的評価に馴染んだ定型的な規定以外に様々な規定が盛り込まれることが少なくなく、それらの全てについてスコアリングすることを想定したルールとしては用いない。
【0032】
ここで、法的評価に馴染まない文字コンテンツの取扱については、判定ルールにおいて「有利な内容か否かを判定しない」「有利な内容か否かの判定が不可」といった判断を行う旨をルールの内容として構成することも可能である。
【0033】
また、法的観点からのみでは有利な内容か否かの判断ができない場合に「相手との相対的な関係性も踏まえて判断すべき」「経営判断が必要」などのように、法的観点とは別の観点から有利か否かを判断する旨をルールの内容として構成してもよい。具体的に言えば、売買契約において、取引対象の販売価格の金額が妥当かどうか、という事項は、必ずしも機械的に判定できるものではなく、時勢や当事者間の需給バランス、関係性などの諸要素を踏まえて決まるため、そのような要素を加味したうえで最終的には利用者が決断すべきである旨判定するようなルールとすることが考えられる。当該構成を採用することで、判定ルールが硬直的に運用され、却って多様な立場に立ちうる利用者にとり真に好適な有利不利の判断材料を提供できなくなる事態を回避することができる。
【0034】
判定ルールは外部サーバにて保持され、当該外部サーバと通信することにより利用することが可能であるほか、当該外部サーバと情報を送受信により適宜修正することが可能であるほか、後記スコアリング処理部におけるスコアリング処理の結果に応じた修正レコメンドを受信して当該レコメンドに応じた修正を行う修正レコメンド部を設け、修正レコメンド部を実行することにより適宜のタイミングで修正を行う構成を採用してもよい。具体的にいうと、複数回のスコアリング処理を通じて特定の文字コンテンツないし当該文字コンテンツに紐づいて判定に用いられる判定ルールの内容を更新処理する構成が考えられる。ここでいう更新処理については機械学習を用いることが考えられ、この場合判定ルールは学習済みモデルとして構成されることになる。すなわち、法律文書データにおける文字コンテンツに基づいて、当該文字コンテンツの内容が利用者にとり有利な内容か否かの判断を定量化したスコアとして出力するように機械処理させるための学習モデルとして位置付けることができる。当該構成を採用することにより、スコアリングを重ねていくにつれ判定ルールを洗練させ、利用者にとり最新かつわかりやすいスコアリング結果を提供できるような判定ルールを生成することができる。
【0035】
「スコアリング処理部」0204は、文字コンテンツ識別部にて識別した文字コンテンツを判定ルール保持部にて保持する判定ルールを用いてスコアリングするように構成される。具体的には、識別された文字コンテンツが利用者にとり有利か否かを、金銭的、物理的、法律上の権利義務のメリットや負担の大きさ、その他判定ルールが採用する要素に基づいてスコアリングするように構成される。スコアリングは判定ルールの判定結果に応じて識別された文字コンテンツごとに付与されるよう判定ルールにて定めることが考えられるが、判定ルールとは別途、判定ルールを用いた判定結果ごとにスコアリングを行うためのスコアリングルールを保持しておき、スコアリングルールを用いてスコアリングする構成を採用してもよい。また、識別された文字コンテンツごとではなく、複数の文字コンテンツをまとめてスコアリングする複数文字コンテンツスコアリング手段を設けてもよい。当該構成を採用することにより、複数の判定要素を総合的に踏まえてより実質的なスコアリングを行うことが可能になる。
【0036】
ここで、対応する法的性質の観点からは利用者にとり必須ないし規定しておくことが望ましい単語ないし文字コンテンツが当該法律文書コンテンツに含まれていない場合のスコアリング処理の方法の一例について説明する。法律文書データは多くの文字データから構成されており、本発明はこれらの多くの文字データの記載の確認漏れなどが起こらないようにすることを効果の一つとして掲げる。ただ、記載されている文字データの確認を行うだけでは、利用者にとり真に有用な法律文書のレビューができているとは言い難い。すなわち、本来記載されていてしかるべき内容が法律文書内に記載されていない場合にも、その事実自体利用者にとり不利である場合が少なくない。そこで、特定の判定ルールにおいてスコアリング対象となるべき文字コンテンツである必須文字コンテンツが、当該法律文書コンテンツに含まれていないと判断される場合、スコアリング処理部にて必須文字コンテンツが記載されていない旨の情報である注意喚起情報をスコアリングの一態様として生成する「注意喚起情報生成手段」を採用する構成が考えられる。具体的には、注意喚起情報として「本契約書には知的財産権の取扱に関する条項が必須ですが、本法律文書コンテンツには、該当する条項の記載がなく、有利不利の判定ができません。条項の追記を検討ください。」のようなコメントを生成することが考えられる。また、単に判定すべき文字コンテンツが法律文書データ内に含まれていないためスコアリングが出来ない旨の情報や、具体的な文字コンテツを文例として掲げ追記を促す情報を注意喚起情報として生成し、スコアリング処理を行うことが考えられる。
【0037】
なお、判定ルールにおいてスコアリング対象となっていない文字コンテンツについては有利か否かを判定する観点からのスコアリングを行わない。なお、判定ルールにおいて法的観点ではなく、ビジネスを遂行するうえで評価が必要になる文字コンテンツが含まれる場合には、スコアリングを行わない代わりに、ビジネス上の判断が必要になることを示す情報であるビジネス条項情報をスコアリングの一態様として生成する「ビジネス条項情報生成手段」を用いることが考えられる。このような構成を採用することにより、法的観点からの有利不利を提示するにとどまらず、ビジネス上の立場に応じたより実質的な情報提供が可能になる。
【0038】
また、ここで行うスコアリングは、「有利か否か」という観点から行われるが、どの程度有利か否かを具体的に評価判定してもよい。より具体的には、おおむね5段階程度で有利か否かのスコアリングを行うことが考えられる。スコアリングが大まかすぎると全ての利用者にとっての有利不利の判定ができるとは言い難く、スコアリングを詳細に行い細分化しすぎると利用者にとって自身の有利不利を却って把握しづらくなるためである。
【0039】
ただしスコアリングは、全ての文字コンテンツに対して必ずしも複数段階で評価判定することを必要とするものではない。
図4を用いて説明した例にあるように、最大5段階で評価することを前提とした場合に、スコアA(受託者やや有利)に対応した文字データを設けないことも可能である。これは、有利か否かの判断を行う判断基準は、当該判断の基礎となる法的論点に対応する利用者の選択の幅に応じて広狭があり得るからである。したがって、スコアリングにおける評価判定の段階は、法的論点に応じて複数パターン設けられていることが望ましい。
【0040】
さらに、利用者が法律文書データの当事者のうちどちらの立場に立っているかの選択を受け付け、当該選択に応じてその後のスコアリングを行う「当事者立場判断手段」を設けることも考えられる。この場合は、当事者立場判断手段にて選択された立場に応じた判定ルールを用いてスコアリングを行う。売買契約であれば売主と買主、業務委託契約であれば委託者と受託者、ライセンス契約であればライセンサーとライセンシー、秘密保持契約であれば開示者と被開示者といったように、法律関係ごとに当事者の立ち位置(立場)が決まっており、利用者の立場を予め指定することにより、スコアリングを行う際にも当該立場を踏まえた判断を行うことができるため、後記出力部における出力内容が、抽象的なものにとどまらず、当事者の立場に応じたより具体的なものとすることができる。
【0041】
「出力部」0205は、スコアリング処理部の「スコアリング結果」0230を出力するように構成される。具体的には、スコアリング結果を当該スコアリングがなされた文字コンテンツと紐づけて表示出力する態様が考えられるが、スコアリングのみならず、当該スコアリングとコメントを紐づけて表示出力するように構成してもよい。この場合、スコアリングとコメントとの紐づけを予め判定ルールの一部として構成してもよいし、コメントの入力を受け付けたうえで受け付けたコメントをスコアリングと紐づけて出力する構成を採用してもよい。
【0042】
ちなみに、スコアリング結果は一の法律文書データに対し複数の態様により出力されてもよい。具体的に言えば、法律文書データを構成する文字コンテンツごとにスコアリング結果を出力する構成のほか、法律文書データを構成する各文字コンテンツのスコアリング結果を一覧視できるように出力する構成、さらには個々のスコアリング結果と全体のスコアリング結果の両方を出力する構成があってよい。スコアリング結果を一覧視できるようにする構成としては、表示出力画面の冒頭で「この契約書には、あなたにとって不利な内容を含む規定が9件含まれています」「この契約書には、あなたにとって重要な4件の規定が抜け落ちています」といったスコアリング結果を表示するとともに、各文字コンテンツに関するスコアリング結果を個別に表示出力する構成が考えられる。当該構成を採用すれば、利用者に対し、まず法律文書データ全体の有利不利をひとまず認識させることができるとともに、自身が検討対応を迫られる事項の分量やその検討に要するコストの把握を容易にさせることができる。
【0043】
ここで
図5を示す。
図5は本実施形態の法律文書レビューシステムの出力部にて全体スコアリング結果をも表示出力する構成の一例について示す図である。同図に示されているように、「業務委託契約書」0500とのタイトルからなる法律文書データのスコアリング結果として、個別の文字コンテンツに対するスコアリング結果(例えば第1条第2項0502に対応する0503にて特定される領域に表示される「○『スコア:B』『コメント:民法の規定に則った注意義務の水準であり、あなたに特に有利不利とは言い難い、一般的な規定です。』という内容の表示)0503に先立ち、当該法律文書データの冒頭領域0501に、先ほど説明した「この契約書には、あなたにとって不利な内容を含む規定が9件含まれています」「この契約書には、あなたにとって重要な4件の規定が抜け落ちています」といった、個々のスコリング結果をまとめた全体スコアリング結果に関する表示を出力することが考えられる。
【0044】
なおここでいうコメントとは、スコアリングに至った判断過程を示す内容からなるコメントである「法的評価コメント」である場合のほか、当該スコアリングを踏まえて具体的な修正案を提示する「修正案提示コメント」である場合も考えられる。いずれのコメントについても、予め判定ルールにおける判定結果と紐づいて保持されていることが考えられ、法的評価コメントについては、単に「この規定は、・・・という観点からあなたにとって不利な規定です」という評価を伝える内容である場合のほか、「・・・という内容になっていますが、~~~の観点からの検討が漏れていないか確認ください」といったように再検討を促すような内容とすることが考えられる。先に
図5を用いて説明した「コメント:民法の規定に則った注意義務の水準であり、あなたに特に有利不利とは言い難い、一般的な規定です。」という内容も法的評価コメントの一例であるし、他にもたとえば、「別途委託者から特別な注意義務を課されていないか確認ください」のように、スコアリングに影響を与えうる考慮要素につき利用者に確認を促すコメントも法的評価コメントの一例であり、いずれにせよ具体的な構成は設計事項である。
【0045】
なお、修正案提示コメントについては、利用者の置かれた立場に応じて複数種類の修正案から構成されることが好ましい。ここでいう「利用者の置かれた立場」とは、取引関係における力関係や会社規模その他によって決まり得るため、例えば「自社が有利な立場の場合の修正案」「対等な立場にある場合の修正案」「相手が有利な立場の場合の修正案」などの複数種類の修正案をコメントとして表示出力することが考えられる。このようなコメントをスコアリング結果と紐づけて出力することにより、利用者に対し、自身の有利不利を判断できるのみならず、不利であるとすればどう修正すれば立場を好転できるのかについての把握も容易にさせることができる。
【0046】
ここで
図6を示す。
図6は修正案提示コメントの表示出力の一例を示す図である。同図でも
図5と同様業務委託契約書のうち受託者の注意義務に関する規定に対するスコアリング結果が表示出力されているが、当該スコアリングの対象となっている文字コンテンツの内容が「乙は、本業務を善良な管理者の注意により遂行するものとする。なお、納品されたコンテンツに瑕疵が含まれていた場合には、当該義務に違反したものと推定する。」0601となっている点で
図5で示されている内容とは異なっている。同図の文字コンテンツ0601に対するスコアリング0602としては「△(さらに三角印の内部に!マークが記載されている)」との表示コンテンツに加え、「善管注意義務違反に該当する事項を推定する規定が含まれています。そのため受託者の責任を広く問うことができるため、受託者のリスクが大きい規定といえます。」という内容の法的評価コメントが表示出力されるとともに、自社有利な場合、対等な立場の場合、相手方有利な場合の3パターンに応じた修正案を修正案コメントとして表示している。3パターンの修正案コメントはそれぞれ判定ルールにおいて保持されている例文文字コンテンツのうち、当該文字コンテンツに対するスコアとの相対的に位置づけられるコンテンツを用いて表示出力されている。当該構成を採用することにより、判定ルールを有効に活用し、利用者の状況に応じた幅のある選択肢を提供することが可能になる。
【0047】
「UI出力手段」0206は、出力部にて、スコアリング結果が利用者にとり有利か否かを色、大きさ、形状のうち少なくとも一の要素を用いた表示コンテンツとともに表示出力するように構成されている。色については、当該スコアリング結果ごとにRGBやLabなどの表色系を用いて表現されることがあり、「red」「blue」「green」など特定の色を表す名称として表現されても良い。色情報は一の色のみから構成されてもよいし、複数の色のみから構成されてもよい。スコアリングの変化に伴い色の明度等がグラデーションをもって変化するように出力する構成も考えられ、そのような構成を採用すると、スコアリングの高低がより一層視認性をもって把握することが可能になる。
【0048】
大きさについては、スコアリングの高低に応じて所定の表示コンテンツを表示させることが考えられる。具体的には、自身にとって有利なスコアリングである場合には表示を小さく、不利なスコアリングであれば表示を大きくすることが考えられる。
図4を用いた説明で例示した、判定ルールにおける表示コンテンツの欄に記載されているように、利用者(受託者)に有利なスコアであれば通常の大きさで表示を行い、利用者に不利になるにつれて表示の大きさを大きくしていき、利用者に対する意識づけを強調するような構成が考えられる。当該構成を採用することにより、利用者にとり、文字コンテンツの有利不利の判断を直感的に把握させることが可能になる。
【0049】
形状については、円形や四角形、矩形、球形その他幾何学図形形状である場合のほか、キャラクターをはじめとするピクトグラムを用いる場合や、「〇」「×」「△」などのような記号状形状を用いる場合が考えられる。
【0050】
なおUI出力手段において出力される表示コンテンツは、ここまで説明した構成の表示コンテンツを組み合わせて生成されてもよい。すなわち、スコアリング結果に応じて色と大きさを組み合わせたり、色と形状とを組み合わせたりして表示コンテンツを生成することが可能である。具体的に言えば、特定の文字コンテンツが特に不利な内容であるとのスコアリングを出力する場合や、当該法律文書データにおいて本来重要性の高いと判定される文字コンテンツが記載されていないなどの注意喚起情報を出力する場合など、スコアリング結果が利用者に対し特に注意を喚起すべき内容である場合に、複数要素の表示コンテンツを組み合わせて出力することが考えられる。例えば、赤い色で「×」形状の記号を表示させたり、黄色い色で「!」形状の記号を表示させたりする構成が考えられる。当該構成を採用することにより、様々なスコアリング結果に対する表示コンテンツを柔軟に出力することができるため、広範なスコアリング結果の視認可能性を向上させることができる。
【0051】
<具体的な構成>
ここで
図7を示す。同図は本実施形態の法律文書レビューシステムの機能的な各構成をまとめて一のハードウェアとして実現した際の構成の一例を示す概略図である。各装置はいずれも、それぞれ各種演算処理を実行するための「CPU」0701と、「記憶装置(記憶媒体)」0702と、「メインメモリ」0703と、「入力インターフェース」0704、「出力インターフェース」0705、「ネットワークインターフェース」0706と、を備え、入出力インターフェースを介して、例えば「タッチパネル」0707や「ディスプレイ」0708などの外部周辺装置と情報の送受信を行う。また、ネットワークインターフェースを介して「外部サーバ」070901や「ユーザ端末」070902などの外部装置と情報の送受信を行う。このネットワークインターフェースの具体的な態様は有線、無線を問わず、また、通信方法も直接、間接を問わない。よって特定の外部装置ないし同装置の利用者と紐づけられた第三者の管理するサーバとの間で情報の送受信を行ういわゆるクラウドコンピューティングの形式を採用することも可能である。
【0052】
記憶装置には以下で説明するような各種プログラムが格納されており、CPUはこれら各種プログラムをメインメモリのワーク領域内に読み出して展開、実行する。なお、これらの構成は、「システムバス」0799などのデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う(以上の構成の基本的な構成は、以下で説明する他の装置のいずれについても同様である。
【0053】
(判定ルール保持部の具体的な構成)
判定ルール保持部は、具体的にはコンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、特にコンピュータの記憶領域に文字コンテンツ識別部にて識別された文字コンテンツが当該法律文書データの利用者にとり有利な内容か否かをスコアを用いて判定するためのルールを格納することにより構成されている。具体的には、CPUが記憶装置から「判定ルール保持プログラム」0750をメインメモリに読み出して実行し、「判定ルール」0798を所定のアドレスに格納する。判定ルールは、内部あるいは外部の端末から書込まれあるいは作成され、変更される。
【0054】
(データ受付部の具体的な構成)
コンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、CPUが記憶装置から「データ受付プログラム」0760をメインメモリに読み出して実行し、ネットワークを介し電子化された法律文書である法律文書データの入力を受け付けてメインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0055】
(文字コンテンツ識別部の具体的な構成)
コンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、CPUが記憶装置から「文字コンテンツ識別プログラム」0770をメインメモリに読み出して実行し、データ受付プログラムの実行により受け付けた法律文書データに含まれる文字コンテンツを所定単位ごとに識別し、メインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0056】
(スコアリング処理部の具体的な構成)
コンピュータプログラムとコンピュータハードウェアにより構成され、CPUが記憶装置から「スコアリング処理プログラム」0780をメインメモリに読み出して実行し、文字コンテンツ識別プログラムの実行により識別した文字コンテンツを判定ルール保持部にて保持する判定ルールを用いてスコアリングし、その結果をメインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0057】
なお、スコアリング処理部においては、特定の判定ルールにおいてスコアリング対象となるべき文字コンテンツである必須文字コンテンツが、当該法律文書コンテンツに含まれていないと判断される場合、必須文字コンテンツが記載されていない旨の情報である注意喚起情報をスコアリングの一態様として生成する注意喚起情報生成サブプログラムを実行可能にする構成も考えられる。当該構成をとる場合には、CPUが記憶装置から「スコアリング処理プログラム」0780をメインメモリに読み出して実行し、文字コンテンツ識別プログラムの実行により識別した文字コンテンツを判定ルール保持部にて保持する判定ルールを用いてスコアリングするに際し、「注意喚起情報生成サブプログラム」をメインメモリに読み出して実行し、必須文字コンテンツが含まれていないと判断される場合に必須文字コンテンツが記載されていない旨の情報である注意喚起情報をスコアリングの一態様として生成する処理を行い、他のスコアリング結果とともにメインメモリの所定のアドレスに格納する。
【0058】
(出力部の具体的な構成)
コンピュータプログラムとディスプレイをはじめとするコンピュータハードウェアにより構成され、CPUが記憶装置から「出力プログラム」0790をメインメモリに読み出して実行し、スコアリング処理プログラムの実行により得られたスコアリング結果を出力する。なおここで、「UI出力サブプログラム」079010をメインメモリにともに読みだして実行し、スコアリング結果が利用者にとり有利か否かを色、大きさ、形状のうち少なくとも一の要素を用いて前記識別された文字コンテンツと関連付けて表示出力する処理を行う。
【0059】
<処理の流れ>
図8は、本実施形態の法律文書レビューシステムにおける処理の流れの一例を示す図である。同図の処理の流れは以下のステップからなる。最初にステップS0801では、電子化された法律文書である法律文書データの入力を受け付ける処理を行う(データ受付ステップ)。次にステップS0802では、データ受付ステップにて受け付けた法律文書データに含まれる文字コンテンツを所定単位ごとに識別する処理を行う(文字コンテンツ識別ステップ)。ステップS0803として、文字コンテンツ識別ステップにて識別した文字コンテンツを判定ルール保持部にて保持する判定ルールを用いてスコアリングする処理を行う(スコアリング処理ステップ)。その後ステップS0804では、スコアリング処理ステップにより得られたスコアリング結果を出力する処理を行う(ステップステップ)。なおここでS0814として、スコアリング結果が利用者にとり有利か否かを色、大きさ、形状のうち少なくとも一の要素を用いて前記識別された文字コンテンツと関連付けて表示出力する(UI出力サブステップ)。
【0060】
<効果>
以上の構成を採用する法律文書レビューシステムを利用することにより、法律文書が自身にとり有利か不利かを一覧視することができ、利用者に対して法律文書作成にかかるリスクの大小及び規定ごとのリスクの内容を把握しやすくすることが可能になる。
【符号の説明】
【0061】
0200・・・法律文書レビューシステム、0201・・・データ受付部、0202・・・文字コンテンツ識別部、0203・・・判定ルール保持部、0204・・・スコアリング処理部、0205…出力部、0206・・・UI出力手段