(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】ポリマーデバイスおよび作製方法
(51)【国際特許分類】
B29C 65/48 20060101AFI20220318BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20220318BHJP
C08F 291/00 20060101ALI20220318BHJP
B29C 33/40 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
B29C65/48
C08F265/06
C08F291/00
B29C33/40
(21)【出願番号】P 2019506372
(86)(22)【出願日】2017-08-03
(86)【国際出願番号】 US2017045259
(87)【国際公開番号】W WO2018027009
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-07
(32)【優先日】2016-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517229752
【氏名又は名称】マイクロオプティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パン ティンルイ
(72)【発明者】
【氏名】コーエン エドワード アーロン
(72)【発明者】
【氏名】バズル ベン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ガオマイ
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-504960(JP,A)
【文献】特表2007-527784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F251/00-283/00
C08F283/02-289/00
C08F291/00-297/08
C08J7/04-7/06
C09J1/00-5/10
C09J9/00-201/10
B29C65/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)
第1表面を有するポリマー層を
有する第1ポリマー物品および第2表面を有するポリマー層を有す
る第2ポリマー物品を準備する工程;
(b
)ラジカル形成開始剤、およ
び重合性モノマー
の成分と
第1表面
を接触させる工程;
(c)
第2ポリマー物品の第2表面を、第1ポリマー物品の第1表面に接触させる工程;ならびに
(d)モノマーのグラフトポリマーを生成するために重合を開始する工程であって
、それによって第1ポリマー物品を第2ポリマー物品にグラフトする工程
を含
み、
前記ポリマー層がヒドロゲルを含む、2つのポリマー物品を一緒にグラフトする方法。
【請求項2】
ポリマー層が生物付着防止特性を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリマー層が、ポリ-PEGアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(グリセロール)、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリ(ヒドロキシ官能性アクリレート)、ポリ(ビニルピロリドン)、ペプチド、またはペプトイドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つのポリマー
層が1つまたは複数のマイクロフィーチャを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのマイクロフィーチャがマイクロチャネルである、請求項
4記載の方法。
【請求項6】
重合性モノマーが重合性
基を有するポリエチレングリコール(「PEG」)
と反応する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
重合性
基を有するポリエチレングリコールがトリエチレングリコールジメタクリレートを含む、請求項
6記載の方法。
【請求項8】
第1
ポリマー物品および/または第2
ポリマー物品が、基体に共有結合したポリマー層を含む、請求項
1記載の方法。
【請求項9】
第1ポリマー物品及び第2ポリマー物品が、ポリマー物品に含まれ、重合性部分を含む表面を含む、固体基体を準備する工程を含む方法によって準備され、固体基体が、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、ポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)、ポリウレタン(「PU」)、ポリカーボネート(「PC」)、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、ポリビニルアルコール(「PVA」)、ポリスチレン(「PS」)、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)、ポリエチレン(「PE」)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(「PES」)、スルホン化ポリエーテルスルホン(「SPES」)、ポリブチレンテレフタレート(「PBT」)、ポリヒドロキシアルカノエート(「PHA」)、シリコーン、パリレン、ポリプロピレン(「PP」)、フルオロポリマー、ポリヒドロキシルエチルメタクリレート(「pHEMA」)、ポリエーテルケトンケトン(「PEKK」)、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、ポリアリールエーテルケトン(「PAEK」)、乳酸・グリコール酸コポリマー(「PLGA」)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)、ポリフッ化ビニリデン(「PVDF」)、およびポリアクリル酸(「PAA」)より選択される物質を含む、請求項
1記載の方法。
【請求項10】
第1ポリマー物品及び第2ポリマー物品が、ポリマー物品に含まれ、重合性部分を含む表面を含む、固体基体を準備する工程を含む方法によって準備され、固体基体を準備する工程が、ポリマー基体をヒドロキシル基で官能化する工程、およびヒドロキシル基を介して(3-アクリロキシプロピル)トリクロロシランをカップリングする工程を含む、請求項
1記載の方法。
【請求項11】
第1ポリマー物品及び第2ポリマー物品が、ポリマー物品に含まれ、重合性部分を含む表面を含む、固体基体を準備する工程を含む方法によって準備され、更に表面ヒドロキシル活性化のために表面を物理的または化学的処理に
官能化する工程を含む、請求項
1記載の方法。
【請求項12】
第1
ポリマー物
品およ
び第2
ポリマー物品を準備する工程が、1つまたは複数のマイクロフィーチャを任意で有するモールドを準備する工程、モールドに
重合性モノマー及びラジカル形成開始剤の成分を
重ねる工程
、任意でモールドと固体基体とを位置合わせする工程
、重合を開始する工程
、およびモールドを取り外す工程を含む、請求項
1記載の方法。
【請求項13】
モールドが、ポリビニルアルコール(「PVA」)でコーティングされたシリコン、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、SU-8エポキシ、パリレン、PTFE、ドライフィルムフォトレジスト、またはガラスを含む、請求項
12記載の方法。
【請求項14】
モールドが複数のマイクロフィーチャパターンを含み、各パターンが複数のマイクロデバイスのうちの1つに対応する、請求項
12記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの物品に関して、
重合性モノマー及びラジカル形成開始剤の成分がモールドとさらに接触し、該モールドがポリマーにマイクロチャネルを与え、それによって最終的なデバイスが密閉型マイクロチャネルを含む、請求項
1記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
無し
【0002】
関連出願の参照
本願は、2016年8月5日に出願の米国仮特許出願第62/371,706号の恩典を主張する。先願の開示は、本願の開示の一部と認識される(かつ参照により本願の開示に組み入れられる)。
【背景技術】
【0003】
背景
L.H. Sperling, "Interpenetrating Polymer Networks", (in Klempner et al., Advances in Chemistry; American Chemical Society: Washington, DC, 1994))(非特許文献1)は並列して合成した2つ以上のポリマーの組み合わせとしての相互侵入ポリマーネットワークを特性決定している。
【0004】
US2003/0218130(特許文献1)(Boschetti et al.)は重合した多糖類系ヒドロゲルを表面に結合させた基体について言及している。
【0005】
US2004/0162545(特許文献2)(Brown et al.)は眼内で眼圧を調節するために房水流の制御について言及している。
【0006】
Kim et al., ("In Situ Photopolymerization of a Polymerizable Poly(ethylene glycol)-Covered Phospholipid Monolayer on a Methacryloyl-Terminated Substrate", 402-751 , Korea Langmuir, 2004, 20 (13), pp 5396-5402 DOI: 10.1021/la049959g Publication Date (Web): May 21 , 2004 2004 American Chemical Society(非特許文献2)はメタクリロイル末端基体上に光重合したPEG/リン脂質単分子層を作成する方法について言及している。
【0007】
US2009/0178934(特許文献3)(Jarvius et al.)はマイクロ流体凹部を規定する熱可塑性部分と、熱可塑性部分上の接合層と、マイクロ流体凹部を封止するために接合層に共有結合的に接合させたシロキサンエラストマー部分とを含むマイクロ流体構造について言及している。
【0008】
US2010/0207301(特許文献4)(Suh et al.)はマイクロチャネルを形成する方法について言及している。この文書は、UV硬化性ポリマーパターンを第1基体上に形成し、次いでUV硬化性ポリマーパターンと第2基体とを静電引力によって一緒に封入すると記載している。次いで、UV光を照射してチャネルが形成される。
【0009】
US2013/0184631(特許文献5)(Pinchuk)は少なくとも1つの器具と少なくとも1つのデバイスとを含む外科用キットについて言及している。この文書は、器具が、眼組織を貫通する外科的通路に用いられる針本体を有すると記載している。この文書は、デバイスが、針本体の最大断面寸法よりも小さい最大断面寸法を有する外面を備えた、房水を迂回させるためのダクトを規定する可撓性チューブを含むとさらに記載している。
【0010】
国際公開WO2014/207619(特許文献6)(Delamarche et al.)は分離可能なチップを備えたマイクロ流体チップのパッケージまたはアセンブリの製作方法について言及している。
【0011】
米国特許第9,044,301(特許文献7)(Pinchuk et al.)は細長い針本体と房水排出デバイスとを含むシステムについて言及している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】US2003/0218130
【文献】US2004/0162545
【文献】US2009/0178934
【文献】US2010/0207301
【文献】US2013/0184631
【文献】国際公開WO2014/207619
【文献】米国特許第9,044,301
【非特許文献】
【0013】
【文献】L.H. Sperling, "Interpenetrating Polymer Networks", (in Klempner et al., Advances in Chemistry; American Chemical Society: Washington, DC, 1994))
【文献】Kim et al., ("In Situ Photopolymerization of a Polymerizable Poly(ethylene glycol)-Covered Phospholipid Monolayer on a Methacryloyl-Terminated Substrate", 402-751 , Korea Langmuir, 2004, 20 (13), pp 5396-5402 DOI: 10.1021/la049959g Publication Date (Web): May 21 , 2004 2004 American Chemical Society
【発明の概要】
【0014】
概要
1つの局面では、(a)表面を有するポリマー層をそれぞれ有する第1および第2ポリマー物品を準備する工程;(b) (i)溶媒、(ii)ラジカル形成開始剤、および(iii)重合性モノマーより選択される成分と表面を、各成分が少なくとも1つのポリマー層の表面と接触するように接触させる工程;(c)ポリマー層の表面を互いに接触させる工程;ならびに(d)モノマーのグラフトポリマーを生成するために重合を開始する工程であって、グラフトポリマーが両方のポリマー層に相互侵入し、それによって第1ポリマー物品を第2ポリマー物品にグラフトする工程を含む、2つのポリマー物品を一緒にグラフトする方法が、本明細書において提供される。
【0015】
1つの態様では、成分と表面を接触させる工程は、溶媒とラジカル形成開始剤および重合性モノマーのいずれかまたは両方とを含む溶液と各表面を接触させる工程、ならびにラジカル形成開始剤および重合性モノマーをポリマー層に侵入させる工程を含む。別の態様では、方法は、蒸発(例えば、真空または加熱)によって溶媒を除去する工程をさらに含む。別の態様では、表面を接触させる工程は溶媒を少なくとも1つの表面に適用する工程を含み、適用された溶媒は重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤をポリマー層の表面に引き寄せる。別の態様では、ポリマー層はヒドロゲルを含む。別の態様では、ポリマー層は生物付着防止特性を有する。別の態様では、ポリマー層はポリ-PEGアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(グリセロール)、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリ(ヒドロキシ官能性アクリレート)、ポリ(ビニルピロリドン)、ペプチド、またはペプトイドを含む。別の態様では、ポリマー層は同一のまたは異なるポリマーを含む。別の態様では、少なくとも1つのポリマー層の表面は1つまたは複数のマイクロフィーチャを含む。別の態様では、少なくとも1つのマイクロフィーチャはマイクロチャネルである。別の態様では、重合性モノマーは重合性ポリエチレングリコール(「PEG」)(例えば、トリエチレングリコールジメタクリレートなどのアクリレート-PEG-アクリレート)を含む。別の態様では、重合性モノマーはフリーラジカル重合が可能な両性イオンを含む。別の態様では、重合性モノマーはN-(2-メタクリロイルオキシ)エチル-N,N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネート(「SPE」)、N-(3-メタクリロイルイミノ)プロピル-N,N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネート(「SPP」)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスファチジルコリン(「M PC」)、または3-(2'-ビニル-ピリジニオ)プロパンスルホネート(「SPV」))を含む。別の態様では、重合性モノマーはポリ(2-オキサゾリン)(例えば、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン));ポリ(ヒドロキシ官能性アクリレート)(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート);ポリ(グリセロール));ポリ(ビニルピロリドン);ペプチドまたはペプトイド(例えば、ポリ(アミノ酸)またはポリ(ペプトイド))を含む。別の態様では、重合性モノマーは、重合してコポリマーを形成する複数の異なる重合性モノマーを含む。別の態様では、異なる重合性モノマーはヘテロ分散ポリエチレングリコールモノマーを含む。別の態様では、重合性モノマーはアクリルアミド、アクリレート、アリル、ビニルまたはスチレンを含む。別の態様では、ラジカル形成開始剤は光開始剤または熱開始剤である。別の態様では、ラジカル形成開始剤は2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、a-ジアルコキシ-アルキル-フェノン、a-ヒドロキシ-アルキル-フェノン、a-アミノアルキル-フェノン、アシル-ホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、ベンゾアミン、チオキサントン、チオアミンおよびチタノセンより選択される光開始剤である。別の態様では、ラジカル形成開始剤はtert-アミルペルオキシベンゾエート、4-4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1-1'アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2-2'-アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルぺルオキシド、2,2-ビス(tertブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(tert-ブチルぺルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルぺルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、ビス(1-(tert-ブチルぺルオキシ)-1-メチルエチル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルぺルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルぺルオキシイソプロピルカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジクミルぺルオキシド、ラウロイルぺルオキシド、2,4-ペンタンジオンペルオキシド、過酢酸および過硫酸カリウムより選択される熱開始剤である。別の態様では、ポリマー物品はポリマーに結合した固体基体を含む。
【0016】
別の局面では、(a)固体基体に接合したポリマー層をそれぞれ含む第1物品および第2物品を準備する工程;ならびに(b)上に記載の方法によってポリマー層を一緒にグラフトする工程を含む、ポリマーデバイスを作製する方法が、本明細書において提供される。1つの態様では、第1物品および/または第2物品は基体に共有結合したポリマー層を含む。別の態様では、第1物品および/または第2物品は既存のポリマー層にグラフトした第2ポリマー層を含む。別の態様では、第1物品および第2物品は以下の工程を含む方法によってそれぞれ調製される:(i)重合性部分を含む表面を含む固体基体を準備する工程;(ii)第1重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤を含む組成物と基体の表面を接触させる工程;ならびに(iii)モノマーのポリマーを生成するために重合を開始する工程であって、ポリマーが重合性部分を介して基体に共有結合的に接合される工程。別の態様では、ポリマーデバイスは、グラフトされたポリマー層に配置された少なくとも1つのマイクロフィーチャ、例えば、マイクロチャネルを含む。別の態様では、固体基体はポリエチレンテレフタレート(「PET」)、ポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)、ポリウレタン(「PU」)、ポリカーボネート(「PC」)、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、ポリビニルアルコール(「PVA」)、ポリスチレン(「PS」)、ポリエチレン(「PE」)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(「PES」)、スルホン化ポリエーテルスルホン(「SPES」)、ポリブチレンテレフタレート(「PBT」)、ポリヒドロキシアルカノエート(「PHA」)、シリコーン、パリレン、ポリプロピレン(「PP」)、フルオロポリマー、ポリヒドロキシルエチルメタクリレート(「pHEMA」)、ポリエーテルケトンケトン(「PEKK」)、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、ポリアリールエーテルケトン(「PAEK」)、乳酸・グリコール酸コポリマー(「PLGA」)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)、またはポリフッ化ビニリデン(「PVDF」)およびポリアクリル酸(「PAA」)より選択される物質を含む。別の態様では、重合性部分はC=C基(「sp2混成炭素原子」)を含む。別の態様では、C=C基は末端アクリレート基(例えば、アクリロキシプロピルシラン)である。別の態様では、固体基体を準備する工程は、ポリマー基体をヒドロキシル基で官能化する工程、およびヒドロキシル基を介して(3-アクリロキシプロピル)トリクロロシランをカップリングする工程を含む。別の態様では、官能化する工程は、表面ヒドロキシル活性化のために表面を物理的または化学的処理に曝露する工程(例えば、プラズマ(例えば、O2プラズマ、空気プラズマ、窒素プラズマ、H2プラズマ、H2+H2Oプラズマ)、オゾン、過酸化物またはピラニア溶液)への曝露を含む。別の態様では、少なくとも1つの物品を準備する工程は、1つまたは複数のマイクロフィーチャを任意で有するモールドを準備する工程、モールドに組成物を充填する工程、組成物に固体基体を重ねる工程、任意でモールドと固体基体とを位置合わせする工程、および重合を開始する工程を含む。別の態様では、モールドは、ポリビニルアルコール(「PVA」)でコーティングされたシリコン、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、SU-8エポキシ、パリレン、PTFE、ドライフィルムフォトレジスト、またはガラスを含む。別の態様では、モールドは、各パターンが複数のマイクロデバイスのうちの1つに対応する複数のマイクロフィーチャパターンを含む。別の態様では、方法は、複数のマイクロデバイスを生成するためにマイクロフィーチャ付きチップを切り離す(例えば、機械的またはレーザー切断によって)工程をさらに含む。別の態様では、少なくとも1つのマイクロフィーチャはマイクロチャネルであり、マイクロチャネルはポリマーを貫いてそれぞれ開口している入口および出口を有する。別の態様では、マイクロチャネルは約0.5mm~約500mmの間(例えば、約2mm~約5mmの間)の長さを有する。別の態様では、マイクロデバイスは細長い形状を有する。別の態様では、少なくとも1つの物品に関して、組成物はモールドとさらに接触し、該モールドはポリマーにマイクロチャネルを与え、それによって最終的なデバイスは密閉型マイクロチャネルを含む。
【0017】
別の局面では、(a)基体に接合したポリマー層をそれぞれ含む第1物品および第2物品を準備する工程であって、該ポリマー層が部分的に硬化している、工程;(b)第1物品のポリマーを第2物品のポリマーと接触させる工程;ならびに(c)ネットワークポリマー中の共通鎖への第1および第2物品中のモノマーの重合を介して物品を共有結合的に接合するために重合を開始する工程であって、第1物品が第2物品に接合される工程を含む、ポリマーデバイスを作製する方法が、本明細書において提供される。1つの態様では、第1物品および第2物品は以下の工程を含む方法によって提供される:(i)重合性部分を含む表面を含む固体基体を準備する工程;(ii)重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤を含む組成物と基体の表面を接触させる工程;ならびに(iii)重合を開始するのに十分かつモノマーの部分的に硬化したポリマーを生成するのに十分な時間にわたりモノマーのポリマーを生成するための重合を開始する工程であって、ポリマーが重合性部分を介して基体に共有結合的に接合される工程。別の態様では、物品の少なくとも1つは、ポリマーの表面に1つまたは複数のマイクロフィーチャを含む。別の態様では、第1物品および/または第2物品は基体に共有結合したポリマー層を含む。別の態様では、第1物品および/または第2物品は基体にグラフトしたポリマー層を含む。
【0018】
別の局面では、(a)固体基体に接合したポリマー層を含む第1物品を準備する工程であって、ポリマー層が、ポリマー層の表面に拡散した、重合性モノマーと任意でラジカル形成開始剤とを含む、工程;(b)固体基体に接合したポリマー層を含む第2物品を準備する工程であって、該ポリマー層が部分的に硬化している、工程;ならびに(c)ネットワークポリマー中の共通鎖への第1および第2物品中の重合性モノマーの重合を介して物品を共有結合的に接合するために、第1物品のポリマーを第2物品のポリマーと接触させて重合を開始する工程であって、第1物品が第2物品に接合される工程を含む、ポリマーデバイスを作製する方法が、本明細書において提供される。1つの態様では、第1および第2物品のうちの少なくとも一方は、ポリマーの表面に1つまたは複数のマイクロフィーチャを含む。別の態様では、第1物品および第2物品を準備する工程は、 (a) (i)重合性部分を含む表面を含む固体基体を準備する工程;(ii)重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤を含む組成物と基体の表面を接触させる工程;(iii)重合を開始するのに十分かつモノマーの部分的に硬化したポリマーを生成するのに十分な時間にわたりモノマーのポリマーを生成するための重合を開始する工程であって、ポリマーが重合性部分を介して基体に共有結合的に接合される工程を含む方法によって調製される第1物品を準備する工程と、(b) (i)重合性部分を含む表面を含む固体基体を準備する工程;(ii)第1重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤を含む組成物と基体の表面を接触させる工程;(iii)モノマーのポリマーを生成するために重合を開始する工程であって、ポリマーが重合性部分を介して基体に共有結合的に接合される工程;ならびに(iv)ポリマーの表面を第2重合性モノマーおよび、少なくとも1つの物品上のラジカル形成開始剤と接触させる工程であって、モノマーおよび開始剤がポリマーに拡散する工程を含む方法によって調製される第2物品を準備する工程とを含む。別の態様では、第1物品および/または第2物品は基体に共有結合したポリマー層を含む。別の態様では、第1物品および/または第2物品は既存のポリマー層にグラフトした第2ポリマー層を含む。
【0019】
別の局面では、 (a)表面を有する第1ポリマー層を準備する工程;(b)表面をラジカル形成開始剤と接触させる工程;(c)表面を重合性モノマーと接触させる工程;および(d)第1ポリマー層にグラフトされた第2ポリマー層を生成する重合を開始する工程を含む、第1ポリマー層に第2ポリマー層をグラフトする方法が本明細書において提供される。1つの態様では、ラジカル形成開始剤および重合性モノマーは表面に同時適用される。別の態様では、方法は、重合を開始する前に化学物質を表面に適用する工程をさらに含み、該化学物質が第2ポリマー層内に固定される。別の態様では、ラジカル形成開始剤を、重合性モノマーと接触させる工程の前に表面に拡散させる。別の態様では、化学物質が重合性モノマーと共に適用され、該化学物質が第2ポリマー層内に固定される。別の態様では、方法は、表面から未重合物質を除去する工程をさらに含む。
【0020】
別の局面では、第1層および第2層を含むマイクロ流体デバイスが本明細書において提供され、第1層および第2層はポリマー層が結合した基体をそれぞれ含み、ポリマー層は互いに接合しており、デバイスは、グラフトされたポリマー層を貫通しておりかつグラフトされたポリマー層のポートを介して開口している1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを含む。1つの態様では、層は、第1および第2層のポリマーに相互侵入したポリマーネットワークを介して接合される。別の態様では、層は共有結合的に接合される。別の態様では、マイクロチャネルは、柱状物、堰状物、リザーバ、セグメントバリヤ、および壁より選択される1つまたは複数のフィーチャを含む。別の態様では、デバイスは複数の交差または非交差マイクロチャネルを含む。別の態様では、デバイスは約1mm~約10mmの長寸法と約0.1mm~約1mmの短寸法とを有するマイクロシャントの形態であり、1つまたは複数のマイクロチャネルはマイクロシャントを縦断しかつ長寸法の両端に位置したポートにおいて開口している。別の態様では、マイクロチャネルは1e13~2.3e14Pa*s/mA3の総抵抗(例えば、2.5e13~4.5e13の抵抗)を有する。別の態様では、デバイスは複数のマイクロ流体チャネルを含み、該チャネルがデバイスの同じ側に入口を有しデバイスの同じ側に出口を有する。別の態様では、ポリマー層は、チャネルが水で満たされるとマイクロチャネル内に溶出可能な化学実体または薬物を含む。
【0021】
別の局面では、生体組込み材料製の固体基体の間に挟まれた非生物付着性ポリマーを含むマイクロシャントであって、ポリマーが、100平方ミクロン~10,000平方ミクロンの断面積を有しかつポリマーから開口している入口および出口を有する1つまたは複数のマイクロチャネルを含み、マイクロシャントが、約0.5mm~約500mmの長さと約0.5mm~約10mmの幅とを有する細長い形状を有する、マイクロシャントが本明細書において提供される。1つの態様では、1つまたは複数のマイクロチャネルは複数のマイクロチャネルである。別の態様では、マイクロシャントは基体間にアパーチャを含む。別の態様では、マイクロシャントは管状ではない。
【0022】
別の局面では、以下の工程を含む方法が本明細書において提供される:(a)流体を含有する身体部分に、本明細書に記載のデバイスまたはマイクロシャントを、マイクロチャネルの入口が該身体部分の空洞内に位置しかつ出口が身体部分の外側に位置するように挿入する工程;および(b)マイクロ流体チャネルを介して身体部分から液体を排出する工程。1つの態様では、デバイスまたはシャントは眼内空間、頭蓋内空間、皮下空間、腹腔内空間、膀胱内空間、腹膜腔、右心房、胸膜腔、大槽、帽状腱膜下空間、副鼻腔、中耳、または腎臓内空間に挿入される。別の態様では、デバイスまたはシャントは、入口が体の内側に位置しかつ出口が体の外側に位置するように挿入される。
【0023】
別の局面では、以下の工程を含む緑内障を治療する方法が本明細書において提供される:(a)シャントの入口が眼内空間に位置しかつシャントの出口が眼の外側に位置するようにシャントを眼内に挿入する工程であって、該シャントは生体適合性材料製の硬質層と内部ポリマー層とを有する積層構造を含み、該内部ポリマー層は、生物付着防止特性を有するヒドロゲルと、該ポリマー層を貫いて該入口および該出口と連通している少なくとも1つのチャネルとを含む工程;ならびに(b)眼の内側から眼の外側へ液体を排出する工程。
[本発明1001]
(a)表面を有するポリマー層をそれぞれ有する第1および第2ポリマー物品を準備する工程;
(b) (i)溶媒、(ii)ラジカル形成開始剤、および(iii)重合性モノマーより選択される成分と表面を、各成分が少なくとも1つのポリマー層の表面と接触するように接触させる工程;
(c)ポリマー層の表面を互いに接触させる工程;ならびに
(d)モノマーのグラフトポリマーを生成するために重合を開始する工程であって、グラフトポリマーが両方のポリマー層に相互侵入し、それによって第1ポリマー物品を第2ポリマー物品にグラフトする工程
を含む、2つのポリマー物品を一緒にグラフトする方法。
[本発明1002]
成分と表面を接触させる工程が、溶媒とラジカル形成開始剤および重合性モノマーのいずれかまたは両方とを含む溶液と各表面を接触させる工程、ならびにラジカル形成開始剤および重合性モノマーをポリマー層に侵入させる工程を含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
加熱することまたは真空を印加することに由来する蒸発によって溶媒を除去する工程をさらに含む、本発明1002の方法。
[本発明1004]
表面を接触させる工程が溶媒を少なくとも1つの表面に適用する工程を含み、適用された溶媒が重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤をポリマー層の表面に引き寄せる、本発明1001の方法。
[本発明1005]
ポリマー層がヒドロゲルを含む、本発明1001の方法。
[本発明1006]
ポリマー層が生物付着防止特性を有する、本発明1001の方法。
[本発明1007]
ポリマー層が、ポリ-PEGアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ(グリセロール)、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリ(ヒドロキシ官能性アクリレート)、ポリ(ビニルピロリドン)、ペプチド、またはペプトイドを含む、本発明1001の方法。
[本発明1008]
ポリマー層が同一のまたは異なるポリマーを含む、本発明1001の方法。
[本発明1009]
少なくとも1つのポリマー層の表面が1つまたは複数のマイクロフィーチャを含む、本発明1001の方法。
[本発明1010]
少なくとも1つのマイクロフィーチャがマイクロチャネルである、本発明1009の方法。
[本発明1011]
重合性モノマーが重合性ポリエチレングリコール(「PEG」)を含む、本発明1001の方法。
[本発明1012]
重合性ポリエチレングリコールがトリエチレングリコールジメタクリレートを含む、本発明1011の方法。
[本発明1013]
重合性モノマーが、フリーラジカル重合が可能な両性イオンを含む、本発明1001の方法。
[本発明1014]
重合性モノマーが、N-(2-メタクリロイルオキシ)エチル-N,N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネート(「SPE」)、N-(3-メタクリロイルイミノ)プロピル-N,N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネート(「SPP」)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスファチジルコリン(「MPC」)、または3-(2'-ビニル-ピリジニオ)プロパンスルホネート(「SPV」))を含む、本発明1001の方法。
[本発明1015]
重合性モノマーが、ポリ(2-オキサゾリン)(例えば、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン));ポリ(ヒドロキシ官能性アクリレート)(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート);ポリ(グリセロール));ポリ(ビニルピロリドン);ペプチドまたはペプトイド(例えば、ポリ(アミノ酸)またはポリ(ペプトイド))を含む、本発明1001の方法。
[本発明1016]
ポリ(2-オキサゾリン)がポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)を含む、本発明1015の方法。
[本発明1017]
重合性モノマーが、重合してコポリマーを形成する複数の異なる重合性モノマーを含む、本発明1001の方法。
[本発明1018]
異なる重合性モノマーがヘテロ分散ポリエチレングリコールモノマーを含む、本発明1017の方法。
[本発明1019]
重合性モノマーがアクリルアミド、アクリレート、アリル、ビニルまたはスチレンを含む、本発明1001の方法。
[本発明1020]
ラジカル形成開始剤が光開始剤または熱開始剤である、本発明1001の方法。
[本発明1021]
ラジカル形成開始剤が、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α-ジアルコキシ-アルキル-フェノン、α-ヒドロキシ-アルキル-フェノン、α-アミノアルキル-フェノン、アシル-ホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、ベンゾアミン、チオキサントン、チオアミンおよびチタノセンより選択される光開始剤である、本発明1001の方法。
[本発明1022]
ラジカル形成開始剤が、tert-アミルペルオキシベンゾエート、4-4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1-1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2-2'-アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルぺルオキシド、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(tert-ブチルぺルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルぺルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、ビス(1-(tert-ブチルぺルオキシ)-1-メチルエチル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルぺルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルぺルオキシイソプロピルカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジクミルぺルオキシド、ラウロイルぺルオキシド、2,4-ペンタンジオンペルオキシド、過酢酸および過硫酸カリウムより選択される熱開始剤である、本発明1001の方法。
[本発明1023]
ポリマー物品が、ポリマーに結合した固体基体を含む、本発明1001の方法。
[本発明1024]
(a)固体基体に接合しているポリマー層をそれぞれ含む第1物品および第2物品を準備する工程;ならびに
(b)本発明1001の方法によってポリマー層を一緒にグラフトする工程
を含む、ポリマーデバイスを作製する方法。
[本発明1025]
第1物品および/または第2物品が、基体に共有結合したポリマー層を含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
第1物品および/または第2物品が、既存のポリマー層にグラフトした第2ポリマー層を含む、本発明1024の方法。
[本発明1027]
第1物品および第2物品が、
(i)重合性部分を含む表面を含む固体基体を準備する工程;
(ii)第1重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤を含む組成物と基体の表面を接触させる工程;ならびに
(iii)モノマーのポリマーを生成するために重合を開始する工程であって、ポリマーが重合性部分を介して基体に共有結合的に接合される工程
を含む方法によってそれぞれ調製される、本発明1024の方法。
[本発明1028]
ポリマーデバイスが、グラフトされたポリマー層に配置された少なくとも1つのマイクロフィーチャを含む、本発明1024の方法。
[本発明1029]
固体基体が、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、ポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)、ポリウレタン(「PU」)、ポリカーボネート(「PC」)、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、ポリビニルアルコール(「PVA」)、ポリスチレン(「PS」)、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)、ポリエチレン(「PE」)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(「PES」)、スルホン化ポリエーテルスルホン(「SPES」)、ポリブチレンテレフタレート(「PBT」)、ポリヒドロキシアルカノエート(「PHA」)、シリコーン、パリレン、ポリプロピレン(「PP」)、フルオロポリマー、ポリヒドロキシルエチルメタクリレート(「pHEMA」)、ポリエーテルケトンケトン(「PEKK」)、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、ポリアリールエーテルケトン(「PAEK」)、乳酸・グリコール酸コポリマー(「PLGA」)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)、ポリフッ化ビニリデン(「PVDF」)、およびポリアクリル酸(「PAA」)より選択される物質を含む、本発明1024の方法。
[本発明1030]
重合性部分がC=C基(「sp2混成炭素原子」)を含む、本発明1024の方法。
[本発明1031]
C=C基が末端アクリレート基である、本発明1030の方法。
[本発明1032]
固体基体を準備する工程が、ポリマー基体をヒドロキシル基で官能化する工程、およびヒドロキシル基を介して(3-アクリロキシプロピル)トリクロロシランをカップリングする工程を含む、本発明1024の方法。
[本発明1033]
官能化する工程が、表面ヒドロキシル活性化のために表面を物理的または化学的処理に曝露する工程を含む、本発明1024の方法。
[本発明1034]
少なくとも1つの物品を準備する工程が、1つまたは複数のマイクロフィーチャを任意で有するモールドを準備する工程、モールドに組成物を充填する工程、組成物に固体基体を重ねる工程、任意でモールドと固体基体とを位置合わせする工程、および重合を開始する工程を含む、本発明1024の方法。
[本発明1035]
モールドが、ポリビニルアルコール(「PVA」)でコーティングされたシリコン、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、SU-8エポキシ、パリレン、PTFE、ドライフィルムフォトレジスト、またはガラスを含む、本発明1024の方法。
[本発明1036]
モールドが複数のマイクロフィーチャパターンを含み、各パターンが複数のマイクロデバイスのうちの1つに対応する、本発明1024の方法。
[本発明1037]
複数のマイクロデバイスを生成するためにマイクロフィーチャ付きチップを切り離す工程をさらに含む、本発明1024の方法。
[本発明1038]
少なくとも1つのマイクロフィーチャがマイクロチャネルであり、該マイクロチャネルが、ポリマーを貫いてそれぞれ開口している入口および出口を有する、本発明1024の方法。
[本発明1039]
マイクロチャネルが約0.5mm~約500mmの長さを有する、本発明1038の方法。
[本発明1040]
マイクロチャネルが約2mm~約5mmの長さを有する、本発明1039の方法。
[本発明1041]
マイクロデバイスが細長い形状を有する、本発明1024の方法。
[本発明1042]
少なくとも1つの物品に関して、組成物がモールドとさらに接触し、該モールドがポリマーにマイクロチャネルを与え、それによって最終的なデバイスが密閉型マイクロチャネルを含む、本発明1024の方法。
[本発明1043]
(a)基体に接合したポリマー層をそれぞれ含む第1物品および第2物品を準備する工程であって、該ポリマー層が部分的に硬化している、工程;ならびに
(b)第1物品のポリマーを第2物品のポリマーと接触させる工程;ならびに
(c)ネットワークポリマー中の共通鎖への第1および第2物品中のモノマーの重合を介して物品を共有結合的に接合するために重合を開始する工程であって、第1物品が第2物品に接合される工程
を含む、ポリマーデバイスを作製する方法。
[本発明1044]
第1物品および第2物品が、
(i)重合性部分を含む表面を含む固体基体を準備する工程;
(ii)重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤を含む組成物と基体の表面を接触させる工程;ならびに
(iii)重合を開始するのに十分かつモノマーの部分的に硬化したポリマーを生成するのに十分な時間にわたりモノマーのポリマーを生成するための重合を開始する工程であって、ポリマーが重合性部分を介して基体に共有結合的に接合される工程
を含む方法により準備される、本発明1043の方法。
[本発明1045]
少なくとも1つの物品が、ポリマーの表面に1つまたは複数のマイクロフィーチャを含む、本発明1044の方法。
[本発明1046]
第1物品および/または第2物品が、基体に共有結合したポリマー層を含む、本発明1043の方法。
[本発明1047]
第1物品および/または第2物品が、基体にグラフトしたポリマー層を含む、本発明1043の方法。
[本発明1048]
(a)固体基体に接合したポリマー層を含む第1物品を準備する工程であって、ポリマー層が、ポリマー層の表面に拡散した、重合性モノマーと任意でラジカル形成開始剤とを含む、工程;
(b)固体基体に接合したポリマー層を含む第2物品を準備する工程であって、該ポリマー層が部分的に硬化している、工程;ならびに
(c)ネットワークポリマー中の共通鎖への第1および第2物品中の重合性モノマーの重合を介して物品を共有結合的に接合するために、第1物品のポリマーを第2物品のポリマーと接触させて重合を開始する工程であって、第1物品が第2物品に接合される、工程
を含む、ポリマーデバイスを作製する方法。
[本発明1049]
第1および第2物品のうちの少なくとも一方が、ポリマーの表面に1つまたは複数のマイクロフィーチャを含む、本発明1048の方法。
[本発明1050]
第1物品および第2物品を準備する工程が、
(a) (i)重合性部分を含む表面を含む固体基体を準備する工程;
(ii)重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤を含む組成物と基体の表面を接触させる工程;
(iii)重合を開始するのに十分かつモノマーの部分的に硬化したポリマーを生成するのに十分な時間にわたりモノマーのポリマーを生成するための重合を開始する工程であって、ポリマーが重合性部分を介して基体に共有結合的に接合される工程
を含む方法によって調製される第1物品を準備する工程と、
(b) (i)重合性部分を含む表面を含む固体基体を準備する工程;
(ii)第1重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤を含む組成物と基体の表面を接触させる工程;
(iii)モノマーのポリマーを生成するために重合を開始する工程であって、ポリマーが重合性部分を介して基体に共有結合的に接合される工程;ならびに
(iv)ポリマーの表面を第2重合性モノマーおよび、少なくとも1つの物品上のラジカル形成開始剤と接触させる工程であって、モノマーおよび開始剤がポリマーに拡散する工程
を含む方法によって調製される第2物品を準備する工程と
を含む、本発明1048の方法。
[本発明1051]
第1物品および/または第2物品が、基体に共有結合したポリマー層を含む、本発明1048の方法。
[本発明1052]
第1物品および/または第2物品が、既存のポリマー層にグラフトした第2ポリマー層を含む、本発明1048の方法。
[本発明1053]
(a)表面を有する第1ポリマー層を準備する工程;
(b)表面をラジカル形成開始剤と接触させる工程;
(c)表面を重合性モノマーと接触させる工程;および
(d)第1ポリマー層にグラフトされた第2ポリマー層を生成する重合を開始する工程
を含む、第1ポリマー層に第2ポリマー層をグラフトする方法。
[本発明1054]
ラジカル形成開始剤および重合性モノマーが表面に同時適用される、本発明1053の方法。
[本発明1055]
重合を開始する前に化学物質を表面に適用する工程をさらに含み、該化学物質が第2ポリマー層内に固定される、本発明1054の方法。
[本発明1056]
ラジカル形成開始剤を、重合性モノマーと接触させる工程の前に表面に拡散させる、本発明1053の方法。
[本発明1057]
化学物質が重合性モノマーと共に適用され、該化学物質が第2ポリマー層内に固定される、本発明1055の方法。
[本発明1058]
表面から未重合物質を除去する工程をさらに含む、本発明1053の方法。
[本発明1059]
ポリマー層が結合した基体をそれぞれ含む第1層および第2層を含むマイクロ流体デバイスであって、ポリマー層は互いに接合しており、デバイスは、グラフトされたポリマー層を貫通しておりかつグラフトされたポリマー層のポートを介して開口している1つまたは複数のマイクロ流体チャネルを含む、マイクロ流体デバイス。
[本発明1060]
層が、第1および第2層のポリマーに相互侵入したポリマーネットワークを介して接合している、本発明1059のデバイス。
[本発明1061]
層が共有結合的に接合している、本発明1059のデバイス。
[本発明1062]
マイクロチャネルが、柱状物、堰状物、リザーバ、セグメントバリヤ、および壁より選択される1つまたは複数のフィーチャを含む、本発明1059のデバイス。
[本発明1063]
複数の交差または非交差マイクロチャネルを含む、本発明1059のデバイス。
[本発明1064]
約1mm~約10mmの長寸法と約0.1mm~約1mmの短寸法とを有するマイクロシャントの形態を有し、1つまたは複数のマイクロチャネルがマイクロシャントを縦断しかつ長寸法の両端に位置したポートにおいて開口している、本発明1059のデバイス。
[本発明1065]
マイクロチャネルが1e13~2.3e14Pa*s/m^3の総抵抗を有する、本発明1059のデバイス。
[本発明1066]
マイクロチャネルが2.5e13~4.5e13の総抵抗を有する、本発明1059のデバイス。
[本発明1067]
複数のマイクロ流体チャネルを含み、該チャネルがデバイスの同じ側に入口を有しデバイスの同じ側に出口を有する、本発明1059のデバイス。
[本発明1068]
ポリマー層が、チャネルが水で満たされるとマイクロチャネル内に溶出可能である化学実体または薬物を含む、本発明1059のデバイス。
[本発明1069]
生体組込み材料製の固体基体の間に挟まれた非生物付着性ポリマーを含むマイクロシャントであって、該ポリマーが、100平方ミクロン~10,000平方ミクロンの断面積を有しかつ該ポリマーから開口している入口および出口を有する1つまたは複数のマイクロチャネルを含み、該マイクロシャントが、約0.5mm~約500mmの長さと約0.5mm~約10mmの幅とを有する細長い形状を有する、マイクロシャント。
[本発明1070]
1つまたは複数のマイクロチャネルが複数のマイクロチャネルである、本発明1069のマイクロシャント。
[本発明1071]
基体間にアパーチャを含む、本発明1069のマイクロシャント。
[本発明1072]
管状ではない、本発明1069のマイクロシャント。
[本発明1073]
(a)流体を含有する身体部分に、本発明1059のデバイスまたは本発明1069のマイクロシャントを、マイクロチャネルの入口が該身体部分の空洞内に位置しかつ出口が該身体部分の外側に位置するように挿入する工程;および
(b)マイクロ流体チャネルを介して身体部分から液体を排出する工程
を含む、方法。
[本発明1074]
デバイスまたはシャントが、眼内空間、頭蓋内空間、皮下空間、腹腔内空間、膀胱内空間、腹膜腔、右心房、胸膜腔、大槽、帽状腱膜下空間、副鼻腔、中耳、または腎臓内空間に挿入される、本発明1073の方法。
[本発明1075]
デバイスまたはシャントが、入口が身体の内側に位置しかつ出口が身体の外側に位置するように挿入される、本発明1073の方法。
[本発明1076]
(a)シャントの入口が眼内空間に位置しかつシャントの出口が眼の外側に位置するようにシャントを眼内に挿入する工程であって、該シャントは生体適合性材料製の硬質層と内部ポリマー層とを有する積層構造を含み、該内部ポリマー層は、生物付着防止特性を有するヒドロゲルと、該ポリマー層を貫いて該入口および該出口と連通している少なくとも1つのチャネルとを含む工程;および
(b)眼の内側から眼の外側へ液体を排出する工程
を含む、緑内障を治療する方法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示のマイクロ流体デバイスの製造における工程を示す。
【
図2】シランで固体PET基体を官能化する方法を示す。
【
図3】官能化されたシランでPET表面を官能化する方法を示す。
【
図4】ポリビニルアルコールでコーティングされたシリコンモールドを作製する方法を示す。
【
図6】光開始剤である2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンがトリエチレングリコールジメタクリレートと中間体を形成する重合の開始を示す。
【
図7】PET表面に結合したアクリルシランとPEGジメタクリレートが重合するカップリング反応を示す。
【
図8】重合反応によってPET表面に共有結合した本明細書に記載の架橋ポリマーを示す。
【
図9】基体で裏打ちされたポリマー物品を2つ作製し、相互侵入ネットワークポリマーで2つの物品を接合する方法を示す。
【
図10】基体で裏打ちされかつ部分的に硬化したポリマー物品を2つ作製し、硬化によって2つの物品を接合する方法を示す。
【
図11】UV光重合の前に基体に光開始剤を相互侵入させる、基体の表面に重合性モノマーをグラフトする方法を示す。
【
図12】基体に光開始剤およびモノマーを相互侵入させ、拡散したモノマーおよび光開始剤を表面に引き寄せるために溶媒を用いる、ポリマー物品のポリマー層の表面に重合性モノマーをグラフトする方法を示す。
【
図13】部分的に硬化したポリマー物品の表面に2つ目の重合性モノマーをグラフトする方法を示す。
【
図14】単一のポリマーデバイス上に8つのマイクロデバイスを作製するためのモールドのパターンを示す。図面は、マスターピースから切り離した後の得られたデバイスも示す。
【
図15】水の排出デバイスの分解図を示す。デバイスは、PETの層でそれぞれ裏打ちされた2つのPEGポリマー層を含む。PEG層の一方は、この場合はマイクロチャネルであるマイクロフィーチャを含む。PEG層を互いに接合するとチャネルが密閉される。
【
図16】
図16Aおよび16Bは、本開示のマイクロシャントの2つの形態を示す。両方ともチップ形状であり、チップの両端で開口した2つのマイクロチャネルを有する。さらに、各デバイスは、生体組込みを促すためにデバイスを貫通したアパーチャを含む。
【
図17】ブラウン緑内障インプラントによる房水動態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
詳細な説明
I.序論
本開示は、マイクロフィーチャ付きポリマー物品(デバイス)およびそれらを作製しかつ用いる方法を提供する。
【0026】
本開示の特定のポリマーデバイスは、水の排出デバイスとして機能するように構成されたマイクロ流体デバイスである。そのようなデバイスは、ポリマー層が2つの固体基体層の間に挟まれたサンドイッチ構成を有し得る。ポリマー層は、サンドイッチの両端に配置された1つまたは複数の入口および1つまたは複数の出口を有する。入口および出口は、ポリマー層に配置されたマイクロ流体チャネルを介して互いに連通する。ポリマー層は様々な方法を介して基体層に結合され得る。ポリマー層自体は、例えばグラフトまたは部分的に硬化したポリマー層の硬化を含む様々な方法によって互いに接合した2つの初期ポリマー層から形成され得る。特定の態様では、基体層は生体組込み材料を含み、ポリマー層は生物付着防止特性を有する。そのようなデバイスは、身体部分に挿入され、液体をある場所から別の場所まで輸送するマイクロシャントとして用いられ得る。1つの態様では、身体部分は眼であり、デバイスは眼の内側から眼の外側まで液体を排出する。
【0027】
本開示は、第1ポリマーを第2ポリマーに接合する方法も提供する。1つの態様では、第1ポリマー物品を第2ポリマー物品に接合する方法は、相互侵入ポリマーネットワークでグラフトすることを伴う。通常は、重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤を一方または両方のポリマーの表面に侵入させる。次いで、重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤を表面に引き寄せるために溶媒を用い得る。ポリマーの表面が互いに接触すると、重合が開始される。例えば、ラジカル形成開始剤は光開始剤であり得る。重合は光に対する曝露によって開始され得る。重合性モノマーの重合により、両方のポリマー物品に相互侵入する架橋ポリマーネットワークが生成され、それによって、ポリマー物品を一緒に接合する。一方または両方のポリマー物品の表面がマイクロチャネルなどのマイクロフィーチャを含む場合、この方法は、ポリマー層間に間隙を伴うことなくかつマイクロフィーチャの形状を変形させることなく閉鎖されたマイクロフィーチャを封止する固い接合を生成する。
【0028】
2つのポリマー物品を一緒に接合する別の方法は、2つの部分的に硬化したポリマー物品を作成する工程、2つの物品の表面を接触させる工程および硬化プロセスを完了する工程を伴う。これは、互いに直接接合したポリマー層を生成する。
【0029】
本開示の方法は、任意の目的または最終的なデバイスのためにポリマー物品を一緒に接合するため、例えば、グラフトするために、有用である。本開示のデバイスは、2つのポリマー層を一緒に接合する以外の方法によっても作製され得る。例えば、層として成形されていてもされていなくてもよくかつ自体が基体に結合されていてもされていなくてもよいポリマー物品が、本明細書において開示の方法によって一緒に接合され得る。同様に、チャネルなどのマイクロフィーチャは3Dレーザエッチングなどの別の方法によってポリマーに導入され得る。
【0030】
本開示の方法および物品を例を挙げてさらに詳細に説明する。
【0031】
II.ポリマー物品を作成する方法
本開示の特定のポリマー物品は、外側基体層と内側ポリマー層とを含むサンドイッチとして構成される。基体層はポリマー層に結合され、マイクロチャネルなどのマイクロフィーチャを含むポリマー層は互いに結合されている。本開示は、基体をポリマーに結合しかつポリマーを互いに結合するための複数の異なる方法を提供する。これらの方法は単一の物品の製作において組み合わされ得る。
【0032】
基体をポリマーに結合する方法は、(1)重合性部分を介してポリマーを基体の表面に共有結合する工程および(2)拡散グラフトする工程を非限定的に含む。ポリマー層を互いに結合する方法は、(1)グラフトする工程および(2)部分的に硬化した層を硬化させる工程を非限定的に含む。
【0033】
A.ポリマー
本開示の方法およびデバイスで用いられるポリマーは用途に適した任意のポリマー材料であり得る。特定の態様では、ポリマーはヒドロゲルである。ヒドロゲルは、水が全体にある程度分散した水不溶性のネットワークポリマーである。そのようなネットワークは、相互侵入ポリマーネットワークを形成し得るモノマーによる侵入に好適である。ヒドロゲルは、非限定的にはポリPEGアクリレートまたはポリアクリルアミドであり得る。
【0034】
本開示のデバイスは、一緒に接合された、基体で裏打ちされた2つのポリマー層を含み得る。2つの物品のいずれかにあるポリマーは同一のポリマーまたは異なるポリマーであり得る。ポリマーはホモポリマーまたはコポリマーであり得る。
【0035】
「重合性モノマー」とは、重合性部分を有するモノマーを指す。ポリマーは重合性モノマーを重合することによって形成され得る。「重合性部分」とは、重合反応を起こすことができる化学的部分を指す。重合性部分はC=C基(「sp2混成炭素原子」)を含み得る。重合性部分の例は、アクリレートなど(例えば、メタクリレート、アクリルアミドなど)の、末端エチレン基を備えた化合物を含む。重合性モノマーの例はPEGアクリレートを含む。複数の重合性部分を有する重合性モノマーは架橋ポリマーを形成し得る。したがって、ジメタクリレートモノマーが本明細書に記載のポリマーでは有用である。
【0036】
重合性モノマーはPEG-アクリレート、アクリルアミド、アクリレート、アリル、ビニルまたはスチレンを非限定的に含む。1つの態様では、重合性モノマーは、アクリレート-PEG-アクリレートなどの重合性ポリエチレングリコール(「PEG」)を含み得る。トリエチレングリコールジメタクリレートなどの、例えば3、4、5、6、7、8または9個のエチレン基を有するPEGモノマーが有用である。重合性モノマーはフリーラジカル重合が可能な両性イオンを含み得る。重合性モノマーはN-(2-メタクリロイルオキシ)エチル-N,N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネート(「SPE」)、N-(3-メタクリロイルイミノ)プロピル-N,N-ジメチルアンモニオプロパンスルホネート(「SPP」)、2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスファチジルコリン(「MPC」)、および3-(2'-ビニル-ピリジニオ)プロパンスルホネート(「SPV」))より選択される。
【0037】
いくつかの態様では、重合性モノマーはヘテロ分散ポリエチレングリコールモノマーを含む。例えば、モノマーはトリエチレングリコールジメタクリレートと、より高分子量のPEG(PEGMA、Mn=500)とを、例えば5:1~20:1、例えば約9:1の比で含み得る。比を調節することによって、当業者であればポリマーの物理的特性(例えば、デュロメータ、膨潤比、柔軟性、モジュラスなど)を調整し得る。この二液型ポリマー溶液はより大きな生物付着防止特性を付与し得る。別の態様では、重合性モノマーはPEG-メタクリレートなどのヘテロ二官能性モノマーをさらに含み得る。
【0038】
重合はラジカル形成開始剤を典型的には必要とする。ラジカル形成開始剤は、例えば、光開始剤または熱開始剤であり得る。光開始剤は、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α-ジアルコキシ-アルキル-フェノン、α-ヒドロキシ-アルキル-フェノン、α-アミノアルキル-フェノン、アシル-ホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、ベンゾアミン、チオキサントン、チオアミンおよびチタノセンを含む。熱開始剤は、例えば、tert-アミルペルオキシベンゾエート、4-4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1-1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2-2'-アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルぺルオキシド、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(tert-ブチルぺルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルぺルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、ビス(1-(tert-ブチルぺルオキシ)-1-メチルエチル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルぺルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルぺルオキシイソプロピルカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジクミルぺルオキシド、ラウロイルぺルオキシド、2,4-ペンタンジオンペルオキシド、過酢酸、過硫酸カリウムを含む。
【0039】
したがって、重合性モノマーとラジカル形成開始剤とを含む溶液は、官能化された基体と接触されかつ重合に供されると、基体表面に共有結合的にカップリングされたポリマーを生成する。
【0040】
B.基体
サンドイッチの外層、つまり裏打ち、を形成する基体を準備する。基体は固体でありかつ典型的には硬質である。例えば、固体基体は、ポリエチレンテレフタレート(「PET」)、ポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)、ポリウレタン(「PU」)、ポリカーボネート(「PC」)、ポリ塩化ビニル(「PVC」)、ポリビニルアルコール(「PVA」)、ポリスチレン(「PS」)、ポリエチレン(「PE」)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(「PES」)、スルホン化ポリエーテルスルホン(「SPES」)、ポリブチレンテレフタレート(「PBT」)、ポリヒドロキシアルカノエート(「PHA」)、シリコーン、パリレン、ポリプロピレン(「PP」)、フルオロポリマー、ポリヒドロキシルエチルメタクリレート(「pHEMA」)、ポリエーテルケトンケトン(「PEKK」)、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、ポリアリールエーテルケトン(「PAEK」)、乳酸・グリコール酸コポリマー(「PLGA」)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)、またはポリフッ化ビニリデン(「PVDF」)およびポリアクリル酸(「PAA」)より選択される物質を含み得る。
【0041】
C.モールド
重合はモールド上で進行し得る。ポリマーが成型される第1および第2モールドを準備し得る。モールドは、成型後にポリマーを取り出し得る固体材料を含み得る。そのような材料は、例えば、シリコン、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)、SU-8エポキシ、パリレン、PTFE、ドライフィルムフォトレジスト、またはガラスを含む。モールドは、ポリマーの取り出しを補助するために滑剤でコーティングされ得る。例えば、滑剤はポリビニルアルコール(「PVA」)であり得る。モールドの一方または両方は、ポリマーに与えられる1つまたは複数のマイクロフィーチャをその表面上に有し得る。「マイクロフィーチャ」とは、1つのアスペクトで1000ミクロン以下の寸法を有するフィーチャを指す。マイクロフィーチャは、例えば、マイクロチャネルまたは区画であり得る。したがって、マイクロ流体チャネルとは直径などのアスペクトが1000ミクロン以下の流体チャネルを指す。マイクロチャネルは1つまたは複数のフィーチャ、例えば、柱状物、堰状物、リザーバ、セグメントバリヤおよび壁を含み得る。モールド上のマイクロフィーチャは与えられるべきフィーチャの裏返しであり得る。そのため、例えば、表面に材料を加えること(例えば、高くなった隆起部)または周囲の谷部(その間に隆起部を規定する溝)をエッチングすることにより、モールド上に隆起部を含めることによって、ポリマーにチャネルを与えることができる。いくつかの態様では、モールドは、それぞれが複数のマイクロデバイスのうちの1つに対応した複数のマイクロフィーチャパターンを含む。
【0042】
別の態様では、フィーチャはマクロフィーチャ、すなわち1000μm以下の寸法は有さないフィーチャである。
【0043】
ポリマー物品を生成する方法は、重合性モノマーを含む溶液とラジカル形成開始剤とをモールドに充填する工程、重合性部分をその表面に含む固体基体を組成物に重ねる工程、任意でモールドと固体基体とを位置合わせする工程、および重合を開始する工程を含み得る。
【0044】
重合が完了した後、この場合ではポリマー層および固体基体の裏打ちの両方を含むポリマー物品をモールドから取り出し得る。次いで、本明細書に記載の方法を用いて、例えば、相互侵入ポリマーネットワークでグラフトすることを介して、2つの物品が一緒に接合され得る。
【0045】
モールドは、直径が2インチ~16インチ、例えば、約4インチのシリコンウェハを含んでもよい。あるいは、モールドは、直径が1インチ~12インチおよび幅が2インチ~16インチ、例えば、4インチ×4インチのガラス基体上のPDMSのパターン層からなってもよい。
【0046】
III.基体へのポリマーの結合
A.重合性部分を有する表面を伴う基体へのポリマーの共有結合
1.完全に硬化したポリマー物品
本開示の特定のポリマー物品は、重合反応を介して基体層に結合したポリマー層を含む。この目的のためには、重合性部分を含む表面を有する基体を準備する。
【0047】
固体基体の表面は重合性部分を元から含んでいなくてもよい。この場合、そのような部分を組み込むために表面を官能化し得る。例えば、ポリマー基体をヒドロキシル基で官能化しかつヒドロキシル基を介して重合性部分と分子をカップリングし得る。官能化は、表面ヒドロキシル活性化のために表面を物理的または化学的処理に曝露する工程を含み得る(例えば、O2プラズマ、空気プラズマ、窒素プラズマ、H2プラズマ、H2+H2Oプラズマへの曝露)、オゾン、過酸化物またはピラニア溶液。
【0048】
1つの態様では、末端C=Cを有するシラン(例えば、アクリロキシアルキルシラン)がヒドロキシル基を介して表面にカップリングされる。このようにして、重合性アクリレート基が基体表面に提供される。重合性部分で表面を官能化するために有用な1つの化合物は3-アクリロキシプロピルトリクロロシランである。
【0049】
この方法では、モールドの表面は重合性モノマーとラジカル形成開始剤とを含む溶液で被覆される。重合性部分を含む表面が重合性溶液と接触するようにモールドが基体で被覆される。次いで、重合が開始されて、重合性モノマーが互いに、かつ基体表面の重合性モノマーにカップリングされる。得られたポリマー物品は次いでモールドから取り出される。
【0050】
2.部分的に硬化したポリマー物品
一緒に接合するためのポリマー物品を製造するための別の方法は、部分的に硬化したポリマーを伴う物品を形成する工程、物品を接触させる工程、次いで、両ピース内のモノマーが互いに重合するように重合を完了させ、それによって2つのピースが一緒に接合する工程を伴う。そのような方法は、第1物品および第2物品を準備する工程を含み得、第1物品および第2物品がそれぞれ、以下の工程を含む方法によって調製される:(i)重合性部分を含む表面を含む固体基体を準備する工程;(ii)重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤を含む組成物と基体の表面を接触させる工程;ならびに(iii)重合を開始するのに十分かつモノマーの部分的に硬化したポリマーを生成するのに十分な時間にわたりモノマーのポリマーを生成するための重合を開始する工程であって、ポリマーが重合性部分を介して基体に共有結合的に接合される工程;ここで、少なくとも1つの物品はポリマーの表面に1つまたは複数のマイクロフィーチャを含む。
【0051】
基体の裏打ち、モールド、重合性部分およびラジカル形成開始剤の使用は、完全に硬化したポリマーの生成において上に記載したものと同様であり得る。
【0052】
B.拡散接合によるポリマー物品へのポリマーの結合
別の態様では、基体に既に接合している第1ポリマー層に第2ポリマー層が結合される。概して、これは、既に基体上で重合されかつ基体に接合している第1重合性モノマーと同一のまたは異なってもよい第2重合性モノマーを、ポリマーに拡散させ、例えば硬化した状態まで重合させ、それによって表面をコーティングする層を形成することを伴う。
【0053】
図11は、ポリマー物品の既存の層に第2ポリマー層を加える例示的な方法を示す。ポリマー物品(1)を準備する。この場合は光開始剤であるラジカル形成開始剤を表面に適用しかつ表面に拡散させる(2)。重合性モノマー(「グラフト化学物質」)が表面に適用される(3)。次いで、この場合はUV光への曝露による、重合が開始される(4)。これは、第1ポリマー層への第2ポリマー層のグラフトをもたらす。未重合のモノマーは洗浄によって除去される(5)。
【0054】
図12は、ポリマー物品の既存の層に第2ポリマー層を加える別の例示的な方法を示す。この方法では、ラジカル形成開始剤および重合性モノマーの両方を既存のポリマー層の表面に拡散させる(2)。次いで表面を洗浄し、溶媒を表面に適用して重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤を物品の表面に引き寄せる(3)。重合を、例えばUV光への曝露によって、開始する(4)。これは、表面への第2ポリマー層のグラフトをもたらす。未重合のモノマーは洗浄によって除去される(5)。
【0055】
IV.ポリマー物品を一緒に接合
本開示は、ポリマー物品を一緒に接合する方法も提供する。これらの方法は、本明細書において開示のデバイスの製造のために用いられ得る。方法は、別の目的のための別のポリマー物品、例えば、基体の裏打ちに結合していないポリマー層を含むポリマー物品を一緒に接合するためにも、用いられ得る。
【0056】
A.相互侵入ポリマーネットワークによるポリマーのグラフト
ポリマー物品を一緒にグラフトする方法は、異なるポリマー物品のポリマーに相互侵入し、それによって物品を一緒に接合するポリマーネットワークを生成する。
【0057】
1つの態様では、2つのポリマー物品を一緒にグラフトする方法は以下の工程を含む:(a)表面を有するポリマー層をそれぞれ有する第1および第2ポリマー物品を準備する工程;(b) (i)溶媒、(ii)ラジカル形成開始剤、および(iii)重合性モノマーより選択される成分と表面を、各成分が少なくとも1つのポリマー層の表面と接触するように接触させる工程;(c)ポリマー層の表面を互いに接触させる工程;ならびに(d)モノマーのグラフトポリマーを生成するために重合を開始する工程であって、グラフトポリマーが両方のポリマー層に相互侵入し、第1ポリマー物品を第2ポリマー物品にグラフトする工程。
【0058】
ラジカル形成開始剤および重合性モノマーは溶媒を含む溶液内に準備される。溶液を両方のポリマーの表面に適用して、ポリマー表面に侵入させる。次いで該溶媒は、例えば、蒸発によるかまたは加熱によって除去され得る。物品を一緒に接合するために、溶媒が、ラジカル形成開始剤およびモノマーを表面に引き寄せるためにポリマー物品の表面に適用される。これで、物品の表面が接触すると各物品中の成分が他の物品中の成分と反応できるようになる。
【0059】
重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤を両方の物品の表面に適用する必要はない。例えば、重合性モノマーを一方の物品の表面に適用し得、ラジカル形成開始剤を他方の物品の表面に適用し得る。あるいは、重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤を一方の物品の表面にのみ適用し得る。別の代替例では、ラジカル形成開始剤を一方の物品の表面に適用し得、重合性モノマーまたはラジカル形成開始剤のいずれかを他方の物品の表面に適用し得る。
【0060】
反応性成分をポリマー物品の表面に引き寄せるために溶媒を用い得るが、最初の溶媒が完全に除去される前にもポリマー物品を接触させ得る。
【0061】
重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤の選択は、ポリマー物品の形成に用いられるものと同一または異なり得る。物品のポリマーネットワークは、ラジカル形成開始剤における重合性モノマーによる侵入を可能にするのに十分に低い密度を有するのがよい。例えば、この点ではヒドロゲルが有用であり得る。
【0062】
B.チャネルの内側への新たなポリマー層のグラフト
別の態様では、チャネルの壁は、チャネル壁が構成される材料とは特性が異なる材料でコーティングされ得る。これはチャネルの化学的特性を変更し得る。グラフトは、例えば、拡散架橋法によって実施され得る。例えば、方法は、内面の生物付着防止特性を向上するためにマイクロ流体チャネルの内腔に高分子量のPEGを適用する工程を含み得る。
【0063】
溶媒、ラジカル開始剤、および重合性モノマー(例えば、高分子量PEG)を含有する溶液をチャネルに流し、内腔へ拡散させ、重合を開始することによってチャネル内部に薄膜を加え得る。内腔をモノマー溶液で濡らし、内腔にグラフトすることによって単分子層を形成し得る。
【0064】
C.部分的に硬化したポリマーを接合する方法
部分的に硬化したポリマー物品は、部分的に硬化したポリマーの表面を一緒に配置し、重合を再び開始することによって一緒に接合され得る。両方のポリマー物品上の未重合部分が互いに反応する。このようにして、両方の物品のポリマーが単一の物品へと一緒に接合される。
【0065】
D.組み合わせ方法
ポリマー層を一緒に接合するための上に記載の方法は組み合わされ得る。例えば、第1物品は完全に硬化したポリマーを含み得る一方で、第2物品は部分的に硬化したポリマーを含み得る。重合性モノマーおよびラジカル形成開始剤は、完全に硬化したポリマーの表面に適用され得る。次いで物品の表面を接触させ得、重合が開始され得る。この場合、部分的に硬化したポリマーが完全に硬化したポリマーとポリマーネットワークを介して接合するように、部分的に硬化したポリマー中の未反応の重合性部分が、完全に硬化したポリマーに適用された重合性部分と反応する。
【0066】
V.マスターウエハから個々のデバイスを切り離す
いくつかの態様では、モールドおよびそれから生成される最初の物品は、複数のマイクロフィーチャ付きデバイス毎のパターンを有する。そのような態様を、例えば、
図14に示す。ポリマー物品を成型しそれらを一緒に接合した後、ウエハ状のピースを個々のデバイスへと切り離す。ソーイングなどの機械的手段によるかまたはレーザー切断によってウエハを切り離し得る。
【0067】
VI.デバイス
A.マイクロフィーチャ付きデバイス
本開示は、ポリマー層がマイクロチャネルなどのマイクロフィーチャを1つまたは複数含むポリマーデバイスを提供する。マイクロチャネルは、ポリマー層の長さを延長しかつ層の端部で入口および出口に開口し得る。いくつかの態様では、デバイスは、その幅に沿ってポリマー層の片側または両側に結合された固体の裏打ちを含む。いくつかの態様では、ポリマー層は一緒に接合された2つポリマー層を含む。そのような態様では、マイクロフィーチャは表面に、または接合前の一方もしくは両方の層のうちの一方に設け得る。接合は、例えば、両方のポリマー層に相互侵入する相互侵入ポリマーネットワークを介して達成され得る。あるいは、接合は、部分的に硬化した2つのポリマー層を接触させて完全に硬化させることによって達成され得る。これら方法の両方を本明細書に記載している。
【0068】
本開示のデバイスは、医療デバイスとしての使用向けに、すなわちヒトまたは動物の身体へ移植可能に構成され得る。そのような場合、デバイスは生体適合性材料を含み得る。特定の態様では、ポリマー層はヒドロゲルを含む。
【0069】
特定の態様では、ポリマー層は化学物質または医薬製剤を含有する。そのような化合物は、例えば上に記載の拡散接合によって、重合段階でポリマーに組み込まれ得る。ポリマーが、マイクロチャネルなどのヒドロゲルの表面と接触した水がゲルの内外に拡散し得るヒドロゲルである場合、化学物質または医薬製剤もポリマーからチャネルへと拡散し得る。
【0070】
B.マイクロシャント
本開示において提供される特定の物品は医療デバイスとして構成される。特に、特定のデバイスは、液体がマイクロフィーチャデバイス内の1つまたは複数のマイクロチャネルを介して輸送されるマイクロシャントとして構成される。そのようなデバイスでは、マイクロチャネルの表面またはマイクロフィーチャが形成されたポリマー層全体が、生物付着防止特性を有するポリマーを含み得る。生物付着防止ポリマーは、湿潤表面上の微生物、植物、藻類、タンパク質、および/または生体分子の表面蓄積を防ぐ。PEG、両性イオン性ポリマー(同じ鎖上に正および負の電荷を含有する、例えば、グリシン、ベタイン、スルホベタインメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシ官能性アクリレート)、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリ(グリセロール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ペプチドおよびペプトイドを含むいくつかの周知のポリマーがこの特性を呈する。
【0071】
デバイスが永続的または一時的なインプラントとして機能することを意図しているのであれば、デバイスは、生体組込み材料製、すなわち組織などの生体物質と接合するかまたは融合することができる材料製の裏打ち材層を含み得る。PET、熱可塑性ポリウレタン(「TPU」)、およびポリウレタンがそのような材料の例である。材料の生体組込み特性は、表面をナノスケールで粗くしかつ細胞にとってより好ましい表面の化学的性質を作り出すためにプラズマが用いられる局所的プラズマエッチングプロセスによって向上し得る。このために、プラズマガスのアレイを用い得る。この効果は、細孔のアレイを特別に配したPDMSまたはシリコーン膜を用いてプラズマを物理的にマスキングすることによって局所化し得る。そのようなデバイスは固定部位にて組織に接合し、かつ入口/出口を閉塞し得る端部付近の細胞接着を防止する。
【0072】
したがって、一緒に共有結合的に接合している第1層および第2層とデバイス内部の1つまたは複数のマイクロ流体チャネルとを含むマイクロ流体デバイスが、本明細書において提供され、ここで、第1層および第2層が、基体と基体に接合しているポリマーとをそれぞれ含み、2つの層が、例えば第1および第2層中のポリマーに相互侵入するポリマーネットワークを介して、接合されている。マイクロチャネルは、例えば、柱状物、堰状物、およびリザーバより選択される1つまたは複数のフィーチャを含み得る。いくつかの態様では、デバイスは複数の交差するマイクロチャネルを含む。別の態様では、複数のチャネルは交差しない。
【0073】
より具体的には、デバイスは、マイクロチャネルがポリマー内の入口と出口で開口し、入口および出口の少なくとも一方が1つまたは複数の端部に配置され、マイクロチャネルが、ポリマーに配置されたチャネル入口およびチャネル出口を含む、マイクロシャントとして構成され得、マイクロシャントは約1mm~約10mmの長さおよび約0.1mm~約1mmの幅を有する。いくつかの態様では、デバイスは複数のマイクロ流体チャネルを含み、該チャネルが、デバイスの同じ側に入口を有しデバイスの同じ側に出口を有する。
【0074】
いくつかの態様では、マイクロシャントは、生体組込み材料製の固体基体の間に挟まれた非生物付着性ポリマーを含み、ポリマーは、100平方ミクロン~10,000平方ミクロン、例えば1300~1600平方ミクロンの断面積を有しかつポリマーから開口している入口および出口を有する1つまたは複数のマイクロチャネルを含み、マイクロシャントは、約0.5mm~約500mm(例えば、約2mm~約5mm)の長さおよび約0.5mm~約10mmの幅(例えば、約3~5mmの長さおよび約1~2mmの幅)を有する細長い形状を有する。マイクロシャントは複数のマイクロチャネルを含み得る。
【0075】
本開示のデバイスはチップ構成を有し得る。すなわち、それらは厚さが実質的に長さおよび/または幅よりも小さい概して平たい構成を有してもよい。例えば、長さと厚さの比は少なくとも5:1、少なくとも10:1、または少なくとも20:1であり得る。デバイスの幅は典型的には厚さ以上である。典型的には、デバイスの頂部および底部はそれぞれ実質的に平面状でありかつ実質的に互いに平行になるであろう。例えば、チップは実質的に直方体形状を有し得る。
【0076】
特定の態様では、チップは、チップの幅に至る、すなわち基体層およびポリマー層を介してチップを通るアパーチャを含む。したがって、本開示のマイクロシャントは管状ではない形状を有してもよい。
【0077】
VII.使用の方法
本開示のマイクロシャントは、圧力がより高い領域から圧力がより低い領域まで液体流体を輸送するための医療デバイスとして有用である。したがって、本開示は、以下の工程を含む方法を提供する:(a)液体を含有する身体部分に、本開示のシャントを、マイクロチャネルの入口が該身体部分の空洞内に位置しかつ出口が身体部分の外側に位置するように挿入する工程;および(b)マイクロ流体チャネルを介して身体部分から液体を排出する工程。例えば、シャントは眼内空間、頭蓋内空間、皮下空間、腹腔内空間、膀胱内空間、腹膜腔、右心房、胸膜腔、大槽、帽状腱膜下空間、副鼻腔、中耳、または腎臓内空間に挿入され得る。シャントは、入口が身体の内側に位置しかつ出口が身体の外側に位置するように挿入され得る。あるいは、シャントの入口および出口の両方を身体の内側に位置させ得る。
【0078】
したがって、本開示は緑内障を治療するための方法を提供する。方法は、眼内空間に本開示のマイクロシャントを挿入する工程、およびマイクロシャントの1つまたは複数のマイクロチャネルを介して眼内空間から身体の外側まで眼液を排出する工程を含む。マイクロシャントは虹彩の端に挿入され得る。眼を切開するために角膜切開刀を用い得る。マイクロシャントは開口を通じてゆっくりと押し込まれるであろう。マイクロシャントが生体組込み材料製の裏打ちを含む場合、シャントは長期間にわたり留置され得る。緑内障は眼の内側の圧力の上昇を特徴とし、かつ眼の外側の環境は大気圧であるため、液体はより高い圧力からより低い圧力、すなわち眼の内側から眼の外側の方向に流れるであろう。
【0079】
マイクロシャントのマイクロチャネルは、身体部分内側の圧力がシャント入口からシャント出口への液体の十分な流れをもたらすように、液体の流れに対する抵抗を有し得る。例えば、水の排出デバイスでは、複数のマイクロチャネルは1e13~2.3e14Pa*s/m^3(例えば、3.75e13Pa*s/m^3)の流体抵抗を有し得る。そのような抵抗を達成するための寸法は、本明細書において提供されるアルゴリズムに基づいて達成され得る。
【実施例】
【0080】
本開示のポリマーデバイスを作製する基本的方法を
図1に示す。2つのシラン化されたPET基体を準備する。これらはそれぞれモールドと対になっている。この実施例では、モールドのうちの1つは、PVAでコーティングされたパターニングされたシリコンモールドである。もう一方のモールドは、パターニングされていないPDMS製モールドである。ポリマーが成型されPET基体に接合される。成型後、デバイスはレーザー加工によって個別のピースにカットされる。デバイスは品質保証検査プランに進む。次いでそれらは殺菌され包装される。
【0081】
図2は、シラン化された基体の製作の概要を示す。PET基体を準備する。30Wで60分間プラズマに曝露することによってPET基体上にヒドロキシル基を発生させる。表面が反応性のPETを、窒素雰囲気下ポリプロピレンバッグにおいてトルエン中のシランと17時間接触させる。官能化された基体をアルコールで洗浄し、120°で2時間真空オーブン中で乾燥させると、シラン化されたPET基体は使用できる状態になる。
図3は、反応性のPET表面への(3-アクリロキシプロピル)トリクロロシランのカップリングの化学反応(chemistry)を示す。
【0082】
図4は、PVAでコーティングされたシリコンモールドの製作を示す。複数のマイクロフィーチャパターンを有するシリコンモールドが準備され、マイクロフィーチャはエッチングによって表面に準備される。ポリビニルアルコールの溶液が基体のパターン表面に準備される。基体を80℃で15分間真空オーブン中で乾燥させる。こうしてモールドは使用できる状態になる。
【0083】
図5は、PDMSモールドの製作を示す。PDMS基材と硬化剤とを混合して溶液を準備する。スピンコーターを2500RPMで60秒間回転させることによって溶液を表面に散布する。得られたポリマーを120℃で10分間真空オーブン中で乾燥させる。モールドはCO
2レーザー加工によって成形されかつアルコール洗浄される。こうしてPDMSモールドは使用できる状態になる。
【0084】
図6は光重合の開始を示す。2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンは光に暴露されるとフェノンラジカルを生成する。フェノンラジカルはトリエチレングリコールジメタクリレートのアクリレート基とカップリングする。
【0085】
図7は、表面接合アクリロイルシロキサンへのトリエチレングリコールジメタクリレートの重合を示す。
【0086】
図8は、得られた、PET基体に接合しているPEGの架橋ポリマーを示す。
【0087】
図9は、本開示のマイクロデバイスの製作を示す。パターニングされたモールドを準備し、PVAなどの付着防止コーティングで被覆する。ポリマー物品は、重合性モノマーの溶液と重合性部分を有する基体とでモールドを被覆し、重合を開始することによって生成される。ポリマー物品をモールドから取り出し、光開始剤および重合性モノマーをポリマーの表面に適用し内部へ拡散させる。同様の方法を用いて、パターニングされていないポリマー物品を生成する。両方の物品のポリマー層を接触させ、この場合はUV光への曝露によって重合を開始させる。重合性モノマーの重合は、両方のポリマー物品に及ぶポリマーネットワークを生成し、それらを一緒に接合する。
【0088】
図10は、部分硬化接合によるマイクロ流体デバイスを製作する方法を示す。モールドを準備する。モールドを重合性モノマーおよび基体で被覆する。重合を開始する。しかしながら重合は硬化が完了する前に停止され、部分的に硬化したポリマー物品が2つ生じる。これら2つの物品のうちの部分的に硬化したポリマーを接触させ、重合を再開する。これで両方のピース中の重合性モノマーが互いに重合する。これは2つのピースを一緒に接合する。
【0089】
図14は、8つのマイクロ流体デバイスを作製するためのテンプレートを示す。単一のピース上での製作後、例えばレーザー切断またはソーイングによって個々のダイをマスターから切断する。
【0090】
図15は、例示的な水の排出デバイスの分解図を示す。デバイスはPETの外側基体層を含む。内層はPEGポリマーを含む。層は本明細書に記載の方法によって一緒に接合される。
【0091】
図16Aおよび16Bは本開示の例示的な排出デバイスを示す。デバイスはオープンスペースとして示されたアパーチャを含む。オープンスペースはデバイスにリング状の構成をもたらす。オープンスペースは生体組込みを促進する。排出デバイスは横方向の圧縮が可能で、デバイスがその非圧縮状態の幅よりも狭い開口を通過するかまたはそれに入ることが可能である。したがって、これによって摩擦嵌合が達成され得る。
【0092】
眼内シャントの設計は、FDAによって推奨されるAlder's Physiology of the Eye 9th Editionからの房水動態モデルを実践し得る。
図17はこのモデルのフローチャートを示す。チャネル抵抗の決定では、流出に影響するパラメータを規定しなければならない。Alder's 10th Editionに記載の用い得るパラメータは次のものを含む:平均ヒト上強膜静脈圧(PE) = 9mmHg、水の平均流入量 = 2.5μl/分、および緑内障におけるブドウ膜強膜流出量(U) = 0.3μl/分。線維柱帯流出率は、高いIOPでの増加した線維柱帯抵抗の原因であるブルベイカー修飾(Brubaker-Modification)を用いて算出される。健常者から重度緑内障患者までの個々の線維柱帯流出率は量R0に集約され得る。
【0093】
図18は、様々なレベルの線維柱帯流出率を有する緑内障患者についての眼圧値の暗領域を示す。R0範囲は、平均的な流入量でIOPが22mmHg以上になる5.35からAlder'sの推奨最大R0である15までである。各図は、Model 8C BGIを加えた場合の同じ患者のIOP値の緑色領域を示す。参考のために、健常者を表す青線を加えている(R0=3)。2.5μl/分の流入量で圧力が10mmHgになる抵抗を設定する。これらの条件では、流量が1.5μl/分まで低下したとしても低眼圧症は考えられない。
【0094】
略語:
Fin - 総流入量
Fout - 総流出量
FSまたはS - 能動分泌からの流入量
FF - 濾過からの流入量
FTrab - 線維柱帯流出量
FUまたはU - ブドウ膜強膜流出量
FBGI - BGI流出量
PBlood - 平均動脈圧
PE - 上強膜静脈圧
IOP - 眼圧
Cin- 流入率
CBGI - BGI流出率
CTrab - 線維柱帯流出率
Ro - ブルベイカー抵抗
Q - ブルベイカー閉塞係数
【0095】
IOP動的平衡方程式
定常状態では流入量が流出量に等しいと仮定する:Fin=Fout
【0096】
代入した流入量と流出量の成分:(FF+FS)-(FTrab+FU+FBGI)=0
【0097】
詳細なコンポーネント:
ろ過からの流入量:FF=(PBlood-IOP)
分泌からの流入量:FS=S
ぶどう膜強膜流出量:FU=U=0.3μl/分(Alder's Physiology of the Eye, 10th Editionからの緑内障患者の平均)
ブルベイカー修飾による線維柱帯流出量:FTrab=(IOP-PE)Ro+RoQ(IOP-PE)(Alder's 9th and 10th EditionからQ=0.008、PE=9mmHg)。IOPが低い場合、流出量は未修飾の流量に近い:FTrab≒(IOP-PE)*CTrab
BGI流出量: FBGI=IOP*CBGI
【0098】
完全なブルベイカー修飾方程式:(PBlood-IOP)*Cin+S-(IOP-PE)Ro+RoQ(IOP-PE)-U-IOP*CBGI=0
【0099】
チャネル決定のための簡略化した方程式:Fin=(IOP-PE)Ro+RoQ(IOP-PE)+U+IOP*CBGI
【0100】
仮定:
定常状態 - 流入量は流出量と等しい
平均流入量は2.5μl/分(Alder's 10th Editionより)
U=0.3μl/分(Alder's 10th Editionから)
PE=9mmHg(Alder's 10th Editionから)
Roは5.35~15(平均流入量で22mmHgを超えるIOPをもたらす抵抗);
Q=0.008(Alder's 9th Editionから)
【0101】
本明細書で言及したすべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願が参照により組み入れられることが具体的かつ個別に示されたのと同程度に参照により本明細書に組み入れられる。
【0102】
本発明の特定の態様を示しかつ記載してきたが、そのような態様が単なる例示として提供されていることは当業者には明らかであろう。当業者であれば、発明から逸脱することなく多くの変形、変更、および置き換えを思い付くであろう。本明細書に記載の発明の態様に対する様々な代替物が発明を実施する際に採用されてもよいことを理解されたい。添付の特許請求の範囲が発明の範囲を規定することならびにこれら請求項の範囲内の方法および構造物やそれらの均等物が特許請求の範囲に包含されることが意図されている。