(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】即効性消毒剤組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/02 20060101AFI20220318BHJP
A01N 33/12 20060101ALI20220318BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20220318BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
A01N25/02
A01N33/12 101
A01P1/00
A01P3/00
(21)【出願番号】P 2016561288
(86)(22)【出願日】2015-04-08
(86)【国際出願番号】 US2015024874
(87)【国際公開番号】W WO2015157388
(87)【国際公開日】2015-10-15
【審査請求日】2018-04-06
【審判番号】
【審判請求日】2020-05-01
(32)【優先日】2014-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520061734
【氏名又は名称】アークサーダ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【氏名又は名称】菊田 尚子
(72)【発明者】
【氏名】クレッペル,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】バーグマン,ジェームズ
【合議体】
【審判長】大熊 幸治
【審判官】吉岡 沙織
【審判官】関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-161940(JP,A)
【文献】特開2008-56595(JP,A)
【文献】米国特許第6239092(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0101677(US,A1)
【文献】米国特許第6339056(US,B1)
【文献】特表2005-513074(JP,A)
【文献】BTC 885/888 SERIES,Stepan Product Bulletin,2012年,[online], <https://www.stepan.com/uploadedFiles/Literature_and_Downloads/Product_Bulletins/Surfactants/BTC%C2%AE/BTC88SERIES.pdf>, [Retrieved on 2019.05.23]
【文献】BARDAC(TM)205M BARDAC(TM) 208M Quaternary Ammonium Compounds EPA Registered,LONZA,2007年11月29日,[online], <http://bio.lonza.com/uploads/tx_mwaxmarketingmaterial/Lonza_ProductDataSheets_Bardac_208M_PDS.pdf>, [Retrieved on 2019.05.23]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
A61L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体消毒剤組成物であって、
a)
(i)ジメチルジアルキルアンモニウム化合物(ここで、ジメチルジアルキルアンモニウム化合物のアルキル基は、それぞれオクチル基である)、及び
(ii)アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物(ここで、アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物のアルキル基は、12~18個の炭素原子を含有する)
の混合物である消毒成分であって、成分(i)と成分(ii)の重量比が4:1~1:2である前記成分;
b)
非イオン性界面活性剤、又は陽イオン性界面活性剤
;
c) 溶媒;
並びに、
d) 封鎖剤;
e) pH調整剤;
f) 腐食防止剤;
h) 助剤;
i) 防腐剤;
j) 香料;及び
k) 着色剤
から選択される1以上の任意の成分
のみからなり、
該消毒成分が、非イオン性界面活性剤、又は陽イオン性界面活性剤と一緒になって、2012年のAOAC使用時希釈試験(UDT)の方法論964.02及び955.12をそれぞれ緑膿菌及び黄色ブドウ球菌に対して使用することによって測定した5分以下の接触死滅時間を提供し、且つ
非イオン性界面活性剤が、2~8モルがアルコキシル化されているアルコキシル化アルコール界面活性剤であり、陽イオン性界面活性剤が、アルキルトリメチルアンモニウム塩である、前記組成物。
【請求項2】
ジメチルジアルキルアンモニウム化合物が、ジメチルジオクチルアンモニウムクロリドである、請求項1に記載の液体消毒剤組成物。
【請求項3】
封鎖剤がEDTAであり、pH調整剤がクエン酸ナトリウムである、請求項1に記載の液体消毒剤組成物。
【請求項4】
液体消毒剤組成物に希釈することができる液体消毒剤濃縮物であって、前記組成物が、a)
(i)ジメチルジアルキルアンモニウム化合物(ここで、ジメチルジアルキルアンモニウム化合物のアルキル基は、それぞれオクチル基である)、及び
(ii)アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物(ここで、アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物のアルキル基は、12~18個の炭素原子を含有する)
の混合物である消毒成分であって、成分(i)と成分(ii)の重量比が4:1~1:2である前記成分;
b)
非イオン性界面活性剤、又は陽イオン性界面活性剤
;
c) 溶媒;
並びに、
d) 封鎖剤;
e) pH調整剤;
f) 腐食防止剤;
h) 助剤;
i) 防腐剤;
j) 香料;及び
k) 着色剤
から選択される1以上の任意の成分
のみからなり、
該消毒成分が、非イオン性界面活性剤、又は陽イオン性界面活性剤と一緒になって、2012年のAOAC使用時希釈試験(UDT)の方法論964.02及び955.12をそれぞれ緑膿菌及び黄色ブドウ球菌に対して使用することによって測定した5分以下の接触死滅時間を提供し、且つ
非イオン性界面活性剤が、2~8モルがアルコキシル化されているアルコキシル化アルコール界面活性剤であり、陽イオン性界面活性剤が、アルキルトリメチルアンモニウム塩である、前記液体消毒剤濃縮物。
【請求項5】
ジメチルジアルキルアンモニウム化合物が、ジメチルジオクチルアンモニウムクロリドである、請求項
4に記載の液体消毒剤濃縮物。
【請求項6】
液体消毒剤組成物に希釈することができる液体消毒剤濃縮物であって、
a) 40~60重量%の、
(i)ジメチルジアルキルアンモニウム化合物(ここで、ジメチルジアルキルアンモニウム化合物のアルキル基は、それぞれオクチル基である)、及び
(ii)アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物(ここで、アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物のアルキル基は、12~18個の炭素原子を含有する)
の混合物である消毒成分であって、成分(i)と成分(ii)の重量比が4:1~1:2である前記成分;
b) 1~20重量%の、2~8モルがアルコキシル化されているアルコキシル化アルコール界面活性剤である非イオン性界面活性剤、及びアルキル基が8~18個の炭素原子を有するアルキルトリメチルアンモニウム塩である陽イオン性界面活性剤からなる群から選択される界面活性剤
;
c) 溶媒;
並びに、
d) 封鎖剤;
e) pH調整剤;
f) 腐食防止剤;
h) 助剤;
i) 防腐剤;
j) 香料;及び
k) 着色剤
から選択される1以上の任意の成分
のみからなり、
該消毒成分が、非イオン性界面活性剤、又は陽イオン性界面活性剤と一緒になって、2012年のAOAC使用時希釈試験(UDT)の方法論964.02及び955.12をそれぞれ緑膿菌及び黄色ブドウ球菌に対して使用することによって測定した5分以下の接触死滅時間を提供する、前記濃縮物。
【請求項7】
封鎖剤がEDTAであり、2~8重量%の量で存在する、請求項
6に記載の液体消毒剤濃縮物。
【請求項8】
請求項
6に記載の液体消毒剤濃縮物及び水を含む消毒用組成物であって、液体消毒剤濃縮物1部当たり、水64部~水1024部である、前記消毒用組成物。
【請求項9】
消毒成分a)が、800ppm~1600ppmの範囲で存在する、請求項1に記載の液体消毒用組成物。
【請求項10】
表面を消毒する方法であって、請求項1に記載の液体消毒剤組成物を表面上に適用するステップ、
適用した液体消毒剤組成物をしばらくの間表面に接触させたままにするステップ、及び
適用した液体消毒剤組成物を表面から取り除くステップを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同様の組成物よりも短縮した有効接触時間を必要とする消毒用組成物に関する。また、表面を消毒用組成物で消毒する方法であって、より短縮した接触時間が表面を消毒するために必要である、前記方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA)の下における現行のアメリカ合衆国環境保護庁(US Environmental Protection Agency)のガイドラインでは、全ての抗微生物製品について、製品ラベルに記載される生物に対する有効性を説明することが義務付けられている。有効性を測定する方法は、生物及び用途に特有である。このような試験の1つは、2012年のAOAC使用時希釈試験(Use Dilution Test (UDT))である。使用時希釈試験では、病院水準の消毒剤として販売される製品において、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa (Pa))(試験方法964.02)、サルモネラ菌(Salmonella enterica (Se))(試験方法955.14)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus (Sa))(試験方法955.15)(各試験方法は、参照により本明細書に組み込まれる)に対する性能が必要である。一般に、これらの製品は、濃縮物として販売され、末端使用者により使用前に希釈される。
【0003】
病院濃度(hospital-strength)の消毒における使用時希釈試験を通過するためには、本出願の出願日の時点での現在の要求は、陽性の試験管の発生が60個の試験管から1個以下であることが求められる。さらに、試験組成物について、3つの独立した別個のバッチが必要である。各生物は同様に試験される。現在の基準では、殺生物製品が10分の接触時間を満たさなければならないことが要求される。しかしながら、現在、10分未満の接触時間を必要とし得る新しい基準が、採用に向けて検討されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、当該技術分野では、10分未満の接触時間で、UDTを通過し得る、quatベースの消毒用組成物及び希釈可能な濃縮物の必要性がある。本発明は、前記必要性に対する解決法を提供する。発明者らは、5分の接触時間を満たす、あるいは、それを上回る、quatベースの消毒用組成物を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの態様では、本発明は、2012年の使用時希釈試験により測定した場合に、接触死滅時間が5分以下である消毒剤組成物まで希釈可能な消毒剤濃縮物を提供する。濃縮物は、a) (i)ジメチルジアルキルアンモニウム化合物(ここで、化合物の各アルキル基は、8~10個の炭素原子を含有する)、及び(ii)アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物(ここで、アルキル基は、12~18個の炭素原子を含有する)の混合物を含む消毒成分を含有する。成分(i)と成分(ii)の重量比は4:1~1:2である。また、濃縮物組成物中には界面活性剤(本明細書では、成分bという)も存在する。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、又は陽イオン性界面活性剤であり得る。濃縮物中の別の成分は溶媒である(成分c)。任意の成分は、封鎖剤(sequestering agent)(成分d)及び任意のpH調整剤(成分e)を含む。
【0006】
本発明のさらなる実施形態では、消毒剤濃縮物は、水で希釈して、消毒剤として使用される消毒剤組成物を形成する。
【0007】
本発明の別の実施形態では、界面活性剤は、2~8モルがアルコキシル化されているアルコキシル化アルコール界面活性剤である非イオン性界面活性剤である。本発明のさらなる実施形態では、界面活性剤は、アルキルトリメチルアンモニウム塩(ここで、アルキル基は、少なくとも8個、一般には10~18個の炭素原子を有する)である、陽イオン性界面活性剤である。
【0008】
消毒剤濃縮物及び消毒剤組成物のさらなる実施形態では、ジメチルジアルキルアンモニウム化合物の各アルキル基は、8~10個の炭素原子を含有し、アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物のアルキル基は、12~18個の炭素原子を含有する。
【0009】
本発明の追加の実施形態では、ジメチルジアルキルアンモニウム化合物のアルキル基は、それぞれオクチル基である。
【0010】
本発明の消毒剤濃縮物及び組成物のさらなる実施形態では、ジメチルジアルキルアンモニウム化合物は、ジメチルジオクチルアンモニウムクロリドを含む。
【0011】
本発明の消毒剤濃縮物及び組成物のさらに別の実施形態では、ジメチルジアルキルアンモニウム化合物とアルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物の重量比は、2:1~1:1、より具体的には約1.5:1である。
【0012】
本発明の別の実施形態では、表面を消毒する方法が提供される。本方法は、本発明の実施形態のいずれか1つに記載の消毒剤組成物を表面上に適用(塗布)するステップ、消毒剤組成物をしばらくの間表面に接触させたままにするステップ、及び組成物を表面から取り除くステップを含む。
【0013】
これらの態様及び別の態様は、本発明の詳細な説明を参照することにより明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0014】
驚くべきことに、本発明において、本明細書に記載される消毒剤濃縮物は、水で希釈することにより、接触時間が10分未満である使用時希釈試験を通過し得る消毒用組成物を形成することができることを見出した。
【0015】
本明細書で使用する場合、「消毒剤濃縮物」という用語は、使用する前に水で希釈することができる組成物を意味する。消毒剤濃縮物では、消毒成分の量は、典型的な使用量よりも多いであろう。
【0016】
本明細書で使用する場合、「消毒剤組成物」又は「消毒用組成物」という用語は、消毒成分を、基材を消毒するために使用するのに適した量で含有する組成物を意味することを意図する。
【0017】
使用時希釈試験により測定した場合に、接触死滅時間が5分以下である消毒剤組成物まで希釈可能である消毒剤濃縮物は、消毒成分、界面活性剤、溶媒、並びに場合により封鎖剤及びpH調整剤を含有する。消毒成分は、第四級アンモニウム化合物の化合物である。
【0018】
典型的に、「quat」としても知られる、第四級アンモニウム化合物は、少なくとも1つの第四級アンモニウムカチオンを適切なアニオンと共に含む。一般に、quatは、一般式(1)を有し得る。
【0019】
【0020】
基R1、R2、R3 及びR4は、広範囲に変更することができ、抗微生物の性質を有する第四級アンモニウム化合物の例は、当業者に公知であろう。典型的に、R1、R2、R3及びR4の内の2つは、1~4個の炭素原子を有することを意味する、低級アルキルであり、例えば、メチル、エチル、プロピル又はブチル基である。さらに、R1、R2、R3及びR4の内の2つは、6~24個の炭素原子の長鎖アルキル基、又はベンジル基である。A?は、無機又は有機の酸の、一価のアニオン又は多価アニオンの一当量である。適切なアニオンA?は、原則として、全ての無機又は有機のアニオンであり、特に、ハロゲン化物イオン、例えば塩化物イオン又は臭化物イオン、炭酸イオン、重炭酸イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン又はそれらの混合物である。
【0021】
特定のquatの混合物は、特定の比率、及び特定の種類の界面活性剤の存在下で使用される場合に、より短縮した接触死滅時間をもたらすことが発見された。この第四級アンモニウム化合物の混合物は、各アルキル基が8~10個の炭素原子を有するジメチルジアルキルアンモニウム化合物である、第1の第四級アンモニウム化合物(成分(i))を含む。第2の第四級アンモニウム化合物(成分(ii))は、アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物(ここで、アルキル基は、10~18個の炭素原子を含有する)である。ベンジルアンモニウム化合物のアルキル基は、C12アルキル、C14アルキル及びC16アルキル等のアルキル基であり得る。成分(ii)はまた、アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物のブレンドであってもよい。本明細書に記載する、化合物の混合物が、第四級アンモニウム化合物として使用される場合に、緑膿菌(Pa)、サルモネラ菌(Se)及び黄色ブドウ球菌(Sa)を効果的に死滅させるために、短縮した接触時間が必要であることが発見された。
【0022】
成分(i)として使用することができるジメチルジアルキルアンモニウム化合物の例としては、ジメチルジオクチルアンモニウム化合物、例えばジメチルジオクチルアンモニウムクロリド、ジメチルジデシルアンモニウム化合物、例えばジメチルジデシルアンモニウムクロリド等が挙げられる。ジメチルジアルキルアンモニウム化合物の混合物もまた、使用することができ、他のアニオン、例えば上記のアニオンもまた、使用することができる。市販のジメチルジアルキルアンモニウム化合物としては、例えばAllendale、NJにオフィスを有する、Lonza America, Inc.から入手できるBARDAC(商標)LF-80、BARDAC(商標)22等が挙げられる。他の同様の市販のquatもまた使用することができる。
【0023】
成分(ii)として使用することができるアルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物の例としては、C12アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、C14アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、及びC16アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドが挙げられる。加えて、これらのアルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物の混合物を使用することができる。市販のアルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物としては、例えばAllendale、NJにオフィスを有する、Lonza America, Inc.から入手できるBARQUAT(登録商標)50-65、BARQUAT(登録商標)50-65B等が挙げられる。これらの市販のアルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物は、C12、C14及びC16のアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドのブレンドである。一般に、アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物は、ブレンドの場合、C16アルキル成分よりも高濃度のC12アルキル及びC14アルキルの成分を含有することが好ましい。他のアニオン(上記のものを含む)もまた使用することができることに着目されたい。
【0024】
消毒剤濃縮物では、成分(i)と成分(ii)の重量比は、4:1~1:2である。より典型的には、成分(i)と成分(ii)の重量比は、約2:1~約1:1の範囲である。本発明で使用することができる重量比の特定の例は、1.5:1の成分(i)と成分(ii)である。
【0025】
消毒剤濃縮物では、消毒成分(i)及び成分(ii)は、消毒剤濃縮物の約40重量%~約60重量%を構成するであろう。
【0026】
消毒成分に加えて、消毒剤濃縮物は、界面活性剤を含有する。典型的に、界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、又は陽イオン性界面活性剤であり得る。界面活性剤は、消毒剤濃縮物の約1重量%~約20重量%の量で存在する。典型的に、界面活性剤は、濃縮物の2重量%~15重量%であり得る。
【0027】
特に好適な非イオン性界面活性剤は、アルコキシル化アルコール界面活性剤である。界面活性剤の選択が、組成物が5分の死滅時間を達成することを可能にする本発明の特徴になることが発見された。界面活性剤の選択により、組成物の殺生物作用を妨げるように、又は組成物の殺生物作用を促進(改善)するように作用させることができることが発見された。特に好適な界面活性剤は、一般に約2~約8モルがアルコキシル化されているアルコキシル化アルコール界面活性剤である。典型的に、3~6モルのアルコキシル化であり得る。1つの特定の例は、約4.5モルのアルコキシル化である。アルコキシル化度を有することに加えて、アルコキシレートであるアルコールは、C6~C12アルキルアルコールであり得る。一つの実施形態では、アルキルアルコールは、C8~C10アルキルアルコールである。アルコキシル化は、エトキシル化であり得る。一般に、HLB(親水性-親油性バランス)が8~14、より一般に10~12の範囲、例えば約11であることが望ましい。本発明において使用することができる市販の界面活性剤は、NOVEL(登録商標)810-4.5 Ethoxylate、又はAlfonic(登録商標)810-4.5であり、両方ともSasol North Americaから入手することができる。
【0028】
特定の陽イオン性界面活性剤は、第四級アンモニウム化合物、例えばアルキルトリメチルアンモニウム塩である。塩のアニオンは、無機アニオン又は有機アニオンであり得る。典型的なアニオンとしては、ハロゲン化物イオン、例えば塩化物イオン又は臭化物イオン、炭酸イオン、重炭酸イオン、カルボン酸イオン、スルホン酸イオン、リン酸イオン、又はそれらの混合物が挙げられる。アルキル基は、少なくとも8個の炭素原子を含有し、一般に10~18個の炭素原子を含有し得る。一つの特定の陽イオン性界面活性剤は、N-ココN,N,Nトリメチルアンモニウムクロリドである。この界面活性剤は、Barquat(商標)CT-35として市販されており、これは、アルキル基のアルキル鎖長、一般にC12が70%、C14が25%、且つC16が5%、の混合物を有する。他の市販の界面活性剤としては、Carsoquat(商標)CT-429及びCarsoquat(商標)CT-425が挙げられる。
【0029】
また、消毒剤濃縮物中には、溶媒が存在する。一般に、溶媒は、極性溶媒、例えば水、又は水溶性溶媒、例えばアルコール及び/又はグリコールエーテルであり得る。典型的な溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。溶媒は、他の成分が作用範囲内に留まるような量で、濃縮物が、使用するために希釈される場合に、使用時希釈試験の下で5分の死滅時間を保持するような量で加えられる。
【0030】
さらに、本発明の濃縮物は、任意の封鎖剤を含有し得る。封鎖剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、EDTA四ナトリウムからなる群から選択される酢酸誘導体が挙げられる。NTA及びEDTAの金属イオンを取り除く能力により、溶液における、硬度(カルシウム)の沈殿防止が促進される。封鎖剤はまた、組成物中の消毒成分の効力に有害な影響を与え得る他の金属イオンを捕捉するために役立ち得る。さらに、封鎖剤はまた、使用中に、汚れの除去を促進し、且つ/又は、消毒用組成物中への汚れの再堆積防止を促進し得る。封鎖剤は、濃縮物中に存在する場合、一般に、最大約20重量%の量で存在し、典型的に、約2~約8重量%の量で存在する。
【0031】
本発明の消毒剤濃縮物はまた、pH調整剤を含有し得る。好適なpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、及び他の同様の化合物が挙げられる。本発明では、濃縮物及び使用する消毒剤組成物は、約6~約13の範囲のpHを有し得る。一般に、消毒剤組成物は、pHが約6~約8の範囲である場合に、中性の消毒用組成物であると考えられる。消毒剤組成物は、pHが8より大きい値から約12の範囲である場合に、アルカリ性の消毒剤組成物であると考えられる。
【0032】
本発明の消毒剤濃縮物は、場合により、さらに腐食防止剤、錯化剤、助剤、防腐剤、香料、着色剤等を含有し得る。典型的な腐食防止剤としては、例えば、有機リン化合物及び、有機リン化合物とポリマー成分とのブレンドが挙げられる。典型的な助剤としては、例えば、ポリエチレングリコール又は他の同様の化合物が挙げられる。着色剤及び香料は、それらが組成物の機能を妨げない条件下で添加することができ、組成物を識別するために役立ち得る。一般に、任意のさらなる成分は、組成物の約20重量%未満を構成し得る。
【0033】
本発明の組成物は、一般に、上記の濃縮物として提供される。消毒剤濃縮物を使用する前に、組成物を、水で希釈して、消毒用組成物を調製しなければならず、消毒用組成物は、その後使用することができる。濃縮物中の消毒成分の正確な濃度に依存して、濃縮物は、消毒剤濃縮物1部当たり、およそ、水64部~水1024部の比で、水で希釈され得る。一般に、希釈は、消毒剤濃縮物1部当たり、水128部~水512部であり得る。特定の例は、消毒剤濃縮物1部当たり、水256部であり、これは、消毒剤濃縮物1オンス当たり、水2ガロンのことである。繰り返しになるが、消毒成分(a)の量は、一概には言えない。典型的に、使用するための消毒用組成物中の消毒成分(成分(i)及び成分(ii))の所望量は、約800ppm~約1600ppmの範囲である。消毒用組成物中の消毒成分の量は、最終使用に依存して、より多くなり得る。典型的に、消毒成分は、最終消毒用組成物中、約1000ppm~約1300ppmの範囲になり得る。
【0034】
本発明の消毒用組成物は、通常の適用技術を使用して、被処理基材に適用され得る。通常の技術としては、基材上への消毒用組成物の、噴霧、注入、噴射、及び/又はワイピングが挙げられる。組成物は即時使用可能な消毒用組成物として末端使用者に提供され、適用手段を有する容器において末端使用者に提供される。例えば、組成物は、エアロゾルとしての加圧容器、噴射容器としてのトリガーもしくはポンプ噴霧器を有する容器、又は使用者が消毒用組成物を基材上に注入することができる取り外し可能なキャップを有する通常の容器中に提供することができる。
【0035】
本発明は、以下の実施例により、さらに詳細に説明される。特に明記しない限り、全ての部及びパーセンテージは重量部及び重量%であり、全ての温度はセルシウス度である。
【実施例】
【0036】
実施例1
以下の表1に記載される成分を、特定の量で、以下に概説する方法により混合することによって、消毒剤濃縮物組成物を調製した。
【0037】
【0038】
粒状のクエン酸ナトリウムと、水道水と、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムの39%溶液とを混合して、溶液を形成することによって、表1の成分を混合した。Lonza America, Inc.、Allendale、NJから入手できる、市販のジオクチルジメチルアンモニウムクロリドBardac(商標)LF-80(エタノール及び水の50-50混合物における、80重量%のジオクチルジメチルアンモニウムクロリドの溶液)を溶液に加え、Lonza America, Inc.、Allendale、NJから入手できる、市販のアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドBarquat(登録商標)50-65B(50%のアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドのブレンド水溶液)もまた加えた。アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドのブレンドは、約67%のC12アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、25%のC14アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、約7%のC16アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、及び約2%未満のC18アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドを含有する。さらに、約4.5モルがエトキシル化されたC8-10エトキシル化アルコールである、市販の界面活性剤、NOVEL(登録商標)810-4.5 Ethoxylateを混合物に加えた。成分が十分に混合することを確実にするために、混合物をしばらくの間撹拌した。得られた組成物は、約12.4のpHを有していた。この組成物は、消毒剤濃縮物を形成した。
【0039】
消毒剤濃縮物1部を脱イオン水256部に加え、これを、250ppmの硬度を有するように合成的に調整し、消毒用組成物を形成した。
【0040】
得られた消毒用組成物について、2012年のAOAC使用時希釈試験(UDT)の方法論964.02及び955.12をそれぞれ使用して、5分の接触時間で、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌に対する有効性を試験した(当該試験方法は、参照により組み込まれる)。
【0041】
この方法によれば、試験の終わりに、生育を示す管が2つ未満であることが望ましい。消毒用組成物では、陽性の試験管が1つしかなく、したがって、5分の接触時間でのUDTを通過する。
【0042】
実施例2
以下の表2に記載される成分を、特定の量で、以下に概説する方法により混合することによって、中性の消毒剤組成物を調製した。
【0043】
【0044】
エチレンジアミン四酢酸と、水道水と、エチレンジアミン四酢酸ナトリウムの39%溶液とを混合して、溶液を形成することによって、表1の成分を混合した。Lonza America, Inc.、Allendale、NJから入手できる、市販のジオクチルジメチルアンモニウムクロリドBardac(商標)LF-80(エタノール及び水の50-50混合物における、80重量%のジオクチルジメチルアンモニウムクロリドの溶液)を溶液に加え、Lonza America, Inc.、Allendale、NJから入手できる、市販のアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドBarquat(登録商標)50-65B(50%のアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドのブレンド水溶液)もまた加えた。アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドのブレンドは、約67%のC12アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、25%のC14アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、約7%のC16アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、及び約2%未満のC18アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロリドを含有する。さらに、市販の陽イオン性界面活性剤、Barquat(商標)CT35を混合物に加えた。成分が十分に混合することを確実にするために、混合物をしばらくの間撹拌した。得られた組成物は、約7のpHを有していた。この組成物は、消毒剤濃縮物を形成した。
【0045】
消毒剤濃縮物1部を脱イオン水256部に加え、これを250ppmの硬度を有するように合成的に調整し、消毒用組成物を形成した。
【0046】
得られた消毒用組成物について、2012年のAOAC使用時希釈試験(UDT)の方法論964.02及び955.12を使用して、5分の接触時間で、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌に対する有効性を試験した。
【0047】
この方法によれば、試験の終わりに、生育を示す管が2つ未満であることが望ましい。消毒用組成物では、陽性の試験管が一つだけであり、したがって、5分の接触時間でのUDTを通過する。
【0048】
本発明はその特定の実施形態を参照することにより上に記載されたが、本明細書に記載された本発明の概念から逸脱することなく多くの変更、修正及び変形をすることができる。したがって、添付される特許請求の範囲の精神及び幅広い範囲に含まれる、全てのこのような変更、修正及び変形を包含することが意図される。
本願は、以下の態様を含む。
[項1]
2012年の使用時希釈試験により測定した場合に、接触死滅時間が5分以下である消毒剤組成物であって、
a)
(i)ジメチルジアルキルアンモニウム化合物、及び
(ii)アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物
の混合物を含む消毒成分であって、成分(i)と成分(ii)の重量比が4:1~1:2である前記成分;
b) 非イオン性界面活性剤、又は陽イオン性界面活性剤;
c) 溶媒;
d) 場合により封鎖剤;並びに
e) 場合によりpH調整剤
を含む、前記組成物。
[項2]
非イオン性界面活性剤が、2~8モルがアルコキシル化されているアルコキシル化アルコール界面活性剤を含み、陽イオン性界面活性剤が、アルキルトリメチルアンモニウム塩を含む、項1に記載の消毒剤組成物。
[項3]
ジメチルジアルキルアンモニウム化合物の各アルキル基が、8~10個の炭素原子を含有し、アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物のアルキル基が、12~18個の炭素原子を含有する、項2に記載の消毒剤組成物。
[項4]
ジメチルジアルキルアンモニウム化合物のアルキル基が、それぞれオクチル基である、項2に記載の消毒剤組成物。
[項5]
ジメチルジアルキルアンモニウム化合物が、ジメチルジオクチルアンモニウムクロリドを含む、項4に記載の消毒剤組成物。
[項6]
ジメチルジアルキルアンモニウム化合物とアルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物の重量比が、約2:1~約1:1である、項3に記載の消毒剤組成物。
[項7]
ジメチルジアルキルアンモニウム化合物とアルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物の重量比が、約1.5:1である、項6に記載の消毒剤組成物。
[項8]
ジメチルジアルキルアンモニウム化合物が、ジメチルジオクチルアンモニウムクロリドを含む、項7に記載の消毒剤組成物。
[項9]
アルコキシル化アルコール界面活性剤が、4~6モルがアルコキシル化されている、項2に記載の消毒剤組成物。
[項10]
ジメチルジアルキルアンモニウム化合物がジメチルジオクチルアンモニウムクロリドを含み、アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物のアルキル基が12~18個の炭素原子を含有し;ジメチルジアルキルアンモニウム化合物とアルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物の重量比が約1.5:1であり、アルコキシル化アルコール界面活性剤が4~6モルがアルコキシル化されている、項2に記載の消毒剤組成物。
[項11]
封鎖剤がEDTAを含み、pH調整剤がクエン酸ナトリウムを含む、項1に記載の消毒剤組成物。
[項12]
2012年の使用時希釈試験により測定した場合に、接触死滅時間が5分以下である消毒剤組成物に希釈することができる消毒剤濃縮物であって、前記組成物が、
a)
(i)ジメチルジアルキルアンモニウム化合物(ここで、化合物の各アルキル基は、8~10個の炭素原子を含有する)、及び
(ii)アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物(ここで、アルキル基は、12~18個の炭素原子を含有する)
の混合物を含む消毒成分であって、成分(i)と成分(ii)の重量比が4:1~1:2である前記成分;
b) 非イオン性界面活性剤、又は陽イオン性界面活性剤;
c) 溶媒;
d) 場合により封鎖剤;並びに
e) 場合によりpH調整剤
を含む、前記消毒剤濃縮物。
[項13]
非イオン性界面活性剤が、2~8モルがアルコキシル化されているアルコキシル化アルコール界面活性剤を含み、陽イオン性界面活性剤が、アルキルトリメチルアンモニウム塩を含む、項12に記載の消毒剤濃縮物。
[項14]
ジメチルジアルキルアンモニウム化合物の各アルキル基が、8~10個の炭素原子を含有し、アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物のアルキル基が、12~18個の炭素原子を含有する、項13に記載の消毒剤濃縮物。
[項15]
ジメチルジアルキルアンモニウム化合物のアルキル基が、それぞれオクチル基である、項13に記載の消毒剤濃縮物。
[項16]
ジメチルジアルキルアンモニウム化合物が、ジメチルジオクチルアンモニウムクロリドを含む、項15に記載の消毒剤濃縮物。
[項17]
ジメチルジアルキルアンモニウム化合物とアルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物の重量比が、約2:1~約1:1である、項14に記載の消毒剤濃縮物。
[項18]
ジメチルジアルキルアンモニウム化合物とアルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物の重量比が、約1.5:1である、項17に記載の消毒剤濃縮物。
[項19]
ジメチルジアルキルアンモニウム化合物が、ジメチルジオクチルアンモニウムクロリドを含む、項18に記載の消毒剤濃縮物。
[項20]
アルコキシル化アルコール界面活性剤が、4~6モルがアルコキシル化されている、項13に記載の消毒剤濃縮物。
[項21]
2012年の使用時希釈試験により測定した場合に、接触死滅時間が5分以下である消毒剤組成物に希釈することができる消毒剤濃縮物であって、
a) 40~60重量%の、
(i)ジメチルジアルキルアンモニウム化合物、及び
(ii)アルキルジメチルベンジルアンモニウム化合物
の混合物を含む消毒成分であって、成分(i)と成分(ii)の重量比が4:1~約1:2である前記成分;
b) 1~20重量%の、2~8モルがアルコキシル化されているアルコキシル化アルコール界面活性剤を含む非イオン性界面活性剤、及びアルキル基が8~18個の炭素原子を有するアルキルトリメチルアンモニウム塩を含む陽イオン性界面活性剤からなる群から選択される界面活性剤;
c) 溶媒;
d) 場合により封鎖剤;並びに
e) 場合によりpH調整剤
から本質的になる、前記濃縮物。
[項22]
アルコキシル化アルコールが、4~6モルがアルコキシル化されている、項21に記載の消毒剤濃縮物。
[項23]
封鎖剤がEDTAであり、約2~約8重量%の量で存在する、項21に記載の消毒剤濃縮物。
[項24]
項21の消毒剤濃縮物及び水を含む消毒用組成物であって、消毒剤濃縮物1部当たり、水64部~水1024部である、前記消毒用組成物。
[項25]
消毒剤濃縮物1部当たり、水128部~水512部である、項22に記載の消毒用組成物。
[項26]
消毒成分a)が、約800ppm~約1600ppmの範囲で存在する、項1に記載の消毒用組成物。
[項27]
表面を消毒する方法であって、項1に記載の消毒剤組成物を表面上に適用するステップ、消毒剤組成物をしばらくの間表面に接触させたままにするステップ、及び組成物を表面から取り除くステップを含む、前記方法。