IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大倉工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-木質ボード及びその製造方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】木質ボード及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/02 20060101AFI20220318BHJP
   B27K 3/34 20060101ALI20220318BHJP
   B27K 3/36 20060101ALI20220318BHJP
   B27K 3/38 20060101ALI20220318BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20220318BHJP
   E04B 1/80 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
B27N3/02 B
B27N3/02 C
B27K3/34 Z
B27K3/36
B27K3/38
E04B1/76 100B
E04B1/80 100P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017109657
(22)【出願日】2017-06-02
(65)【公開番号】P2018202710
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-05-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター「『知』の集積と活用の場による革新的技術創造促進事業(うち知の集積と活用の場による研究開発モデル事業)」、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
(73)【特許権者】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福家 正志
(72)【発明者】
【氏名】村上 知由
(72)【発明者】
【氏名】谷脇 宏
(72)【発明者】
【氏名】笠岡 英司
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-518563(JP,A)
【文献】特開2014-069368(JP,A)
【文献】特開2003-260705(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0113530(US,A1)
【文献】近藤武士ほか,潜熱蓄熱壁体による躯体蓄熱システムに関する研究,日本建築学会計画系論文集,2001年02月,第540号,23-29頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N 3/00-3/28
E04B 1/76-1/80
E04C 2/16-2/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層、芯層、表層がこの順に積層されてなる木質ボードであって、
前記表層が木質材料と、熱硬化性樹脂とからなる層であり、
前記芯層が木質材料と、熱硬化性樹脂と、潜熱蓄熱材と、熱可塑性樹脂とからなる層であり、
前記芯層中において前記潜熱蓄熱材は、前記熱可塑性樹脂に担持され、熱可塑性樹脂と海島構造をなした粒状成形体で存在し、かつ前記粒状成形体のサイズは厚さ及び幅の頻度分布において1~5mmの範囲に80%以上の存在頻度を有し、長さの頻度分布において1~6mmの範囲に80%以上の存在頻度を有することを特徴とする木質ボード。
【請求項2】
前記潜熱蓄熱材は、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族炭化水素及び長鎖脂肪酸から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の木質ボード。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びポリスチレン系樹脂から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の木質ボード。
【請求項4】
前記表層の木質材料は、目開き1.00mmの篩を通過する木質チップを95重量%以上含み、かつ目開き0.50mmの篩を通過する木質チップを50重量%以上含み、前記芯層の木質材料は、目開き2.80mmの篩を通過するが、目開き0.50mmの篩を通過しない木質チップを90重量%以上含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の木質ボード。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか記載の木質ボードの製造方法であって、
前記木質材料と前記熱硬化性樹脂とを混合した表層用材料と、前記木質材料と前記熱硬化性樹脂と、潜熱蓄熱材が熱可塑性樹脂に担持され、熱可塑性樹脂と海島構造をなし、かつ厚さ及び幅の頻度分布において1~5mmの範囲に80%以上の存在頻度を有し、長さの頻度分布において1~6mmの範囲に80%以上の存在頻度を有する粒状成形体とを混合した芯層用材料と、を準備し、前記表層用材料及び前記芯層用材料をフォーミングしてマットを形成した後、前記芯層用材料が100℃を超え前記熱可塑性樹脂の融点未満となる条件で前記マットを熱プレスすることを特徴とする木質ボードの製造方法。
【請求項6】
前記熱プレスの条件は、前記芯層用材料が100℃を超え前記熱可塑性樹脂の軟化温度未満であることを特徴とする請求項記載の木質ボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
最近の住宅では、スマートハウスに代表されるように、「省エネ」、「創エネ」、「蓄エネ」をキーワードとして、快適で二酸化炭素を排出させない住宅造りを目指している。一方で、パッシブハウスという考え方があり、高性能な遮熱性能を備えることで、高い省エネルギー性と快適性を実現した住宅造りが注目されている。いずれの住宅においても、住宅の断熱性能と熱環境に対する性能が必要不可欠とされており、その効果を最大限に高めることを目的として蓄熱技術に対する関心が高まっている。他方では、二酸化炭素排出削減のために、「木材利用促進法」の制定に見られるように、できるだけ木材を利用して住宅を建てるという傾向が高まってきている。そのような背景から、木質材との組み合わせを考え、住宅の
床、壁で蓄熱し、省エネで快適な住空間を提供できる蓄熱性を有した建築部材の研究・開発が盛んとなっている。
【0002】
例えば、特許文献1には、潜熱蓄熱材を金属やプラチックの容器に封入した蓄熱ボードが記載され、特許文献2には、木質系材料を集積して加圧成形した密度が0.3~0.5g/cmのボード状の木質成形体に潜熱蓄熱材を含浸させ、木質成形体の木質系材料同士の間に潜熱蓄熱材を有する木質ボードが記載されている。また、文献3には、潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルと木質繊維、および接着剤からなる組成物を、熱圧着成形した蓄熱性繊維ボードが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-160298
【文献】特開2014-140980
【文献】特開2003-260705
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の如く、容器に潜熱蓄熱材を封入した蓄熱ボードは、潜熱蓄熱材が蓄熱ボードから滲み出すことを抑えることができるが、容器とこれを収容した凹部面との間に隙間が生じる為、熱伝導性が良いものとはいえない。
【0005】
このような点を鑑みると、木質ボードの内部に、潜熱蓄熱材を混入させることが考えられるが、特許文献2の如く、木質成形体の木質系材料間に潜熱蓄熱材を含浸させた木質ボードの場合、木質成形体を成型後に潜熱蓄熱材を含浸させる為、密度が一般的に使用されているパーティクルボードよりも低く設計されている。このため、得られた木質ボードは機械特性(曲げ強さ、はく離強さ等)が低く、実用的な強度が不足していると言わざるを得ない。さらに、木質ボードの密度が低い為、得られた木質ボードの表面性が悪いという問題がある。通常、パーティクルボードは、後工程での加工性を高める為、表面性が良いことが求められる。一般的には、パーティクルボードを表層/芯層/表層の3層構成とし、表層に芯層よりも微細な木質チップを用いることで表面性を高めているが、木質成形体を成型後に潜熱蓄熱材を含浸させる木質ボードは、微細な木質チップを用いて表層を形成すると木質成形体の表面からの潜熱蓄熱材の含浸が阻害される為、このような方法を採用することができず、木質ボードの表面性を高めることが難しい。
【0006】
また、特許文献3の如く、潜熱蓄熱材を内包するマイクロカプセルと木質繊維、及び接着剤からなる組成物を熱圧着成形した蓄熱性繊維ボードの場合、潜熱蓄熱材による蓄熱の応答性を担保するためには繊維ボード中にマイクロカプセルを30~90wt%配合しなくてはならないが、粒径が数μm~数十μmのマイクロカプセルを多量に配合すると、マイクロカプセルが木質繊維間の接着を阻害し、パーティクルボード製造用のプレス機の加圧盤の解圧時に製造されたパーティクルボードが破裂する現象、いわゆるパンクが発生する問題がある。さらに、パラフィン系の潜熱蓄熱材を用いた場合、成形時のプレス圧によりマイクロカプセル自身がパンクし、マイクロカプセルに内包されていた潜熱蓄熱材が流出して蓄熱量が減少する問題や、流出した潜熱蓄熱材がプレス機の加圧盤を汚染して連続的な生産に支障を与えるといった問題がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、省エネで快適な住空間を提供できる蓄熱性を有した建築部材として有用な木質ボードを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、木質ボードに配合する潜熱蓄熱性の材料として、熱可塑性樹脂を担持材料とし、潜熱蓄熱材を固定化(ゲル化)した樹脂組成物からなる粒状成形体を用いることにより、木質ボードが実質的に快適な住空間を感じる蓄熱量を有する程度に配合した場合であっても、成形時にパンクが発生することを抑制することができることを見出した。また、木質ボードを表層、芯層、表層の多層とし、潜熱蓄熱性の材料を芯層に配合する構成とすることにより、成形時に潜熱蓄熱性の材料が木質ボード表面から流出して蓄熱量が減少することや、プレス機の加圧盤を汚染することを抑制できるとともに、表層によって木質ボードの表面性や曲げ強さを担保でき、機械特性にも優れる木質ボードとすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
また、本発明者らは、上記樹脂組成物からなる粒状成形体を配合した木質ボードの製造方法において、成形時における木質ボードの内部温度を、潜熱蓄熱材を担持する熱可塑性樹脂の融点未満或いは軟化温度未満となるよう熱プレスすることにより、熱硬化性樹脂の硬化後における粒状成形体の流動性を抑えることができ、機械特性に優れる木質ボードが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明によれば、
(1)表層、芯層、表層がこの順に積層されてなる木質ボードであって、
前記表層が木質材料と、熱硬化性樹脂とからなる層であり、
前記芯層が木質材料と、熱硬化性樹脂と、潜熱蓄熱材と、熱可塑性樹脂とからなる層であり、
前記芯層中において前記潜熱蓄熱材は、前記熱可塑性樹脂に担持され粒状で存在することを特徴とする木質ボードが提供され、
(2)前記潜熱蓄熱材は、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族炭化水素及び長鎖脂肪酸から選ばれる1種以上であることを特徴とする(1)記載の木質ボードが提供され、
(3)前記熱可塑性樹脂は、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂及びポリスチレン系樹脂から選ばれる1種以上であることを特徴とする(1)又は(2)記載の木質ボードが提供され、
(4)前記表層の木質材料は、目開き1.00mmの篩を通過する木質チップを95重量%以上含み、かつ目開き0.50mmの篩を通過する木質チップを50重量%以上含み、前記芯層の木質材料は、目開き2.80mmの篩を通過するが、目開き0.50mmの篩を通過しない木質チップを90重量%以上含むことを特徴とする(1)乃至(3)のいずれか記載の木質ボードが提供され、
(5)前記熱可塑性樹脂に担持された前記潜熱蓄熱材の粒は、厚さ及び幅の頻度分布において1~5mmの範囲に80%以上の存在頻度を有し、長さの頻度分布において1~6mmの範囲に80%以上の存在頻度を有することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれか記載の木質ボードが提供され、
(6)(1)乃至(5)のいずれか記載の木質ボードの製造方法であって、
前記木質材料と前記熱硬化性樹脂とを混合した表層用材料と、前記木質材料と前記熱硬化性樹脂と前記熱可塑性樹脂に担持された前記潜熱蓄熱材の粒とを混合した芯層用材料と、を準備し、前記表層用材料及び前記芯層用材料をフォーミングしてマットを形成した後、前記芯層用材料が100℃を超え前記熱可塑性樹脂の融点未満となる条件で前記マットを熱プレスすることを特徴とする木質ボードの製造方法が提供され、
(7)前記熱プレスは、前記熱可塑性樹脂の軟化温度未満であることを特徴とする(6)記載の木質ボードの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の木質ボードは、木質ボードへ配合する潜熱蓄熱性の材料として、熱可塑性樹脂を担持材料とし、潜熱蓄熱材を固定化した樹脂組成物からなる粒状成形体を用いることにより、木質ボードが実質的に快適な住空間を感じる蓄熱量を有する程度に配合した場合であっても、成形時にパンクが発生することを抑制することができる。また、木質ボードを表層、芯層、表層の多層とし、潜熱蓄熱性の材料を芯層に配合する構成とすることにより、成形時に潜熱蓄熱性の材料が木質ボード表面から流出することや、プレス機の加圧盤を汚染することを抑制できるとともに、表層によって木質ボードの表面性や曲げ強さを担保でき、曲げ強さやはく離強さ等の機械特性に優れる。
【0012】
また、本発明の製造方法により得られた木質ボードは、木質ボード製造時の熱圧プレスにおける木質ボードの内部温度を、潜熱蓄熱材を担持する熱可塑性樹脂の融点未満或いは軟化温度未満とすることにより、熱硬化性樹脂の硬化後における粒状成形体の流動性を抑えることができ、機械特性に優れ、実用的な強度を備える。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る木質ボードの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[木質ボード]
以下、本発明の一実施形態に係る木質ボードについて、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る木質ボードの断面図である。図1に示すように、木質ボードは1、表層2、芯層3、表層2がこの順に積層された多層構成である。
【0015】
表層は、主として木質ボードの平滑な表面性を担う層であり、木質材料、熱硬化性樹脂から構成される。また、表層を設けることにより、木質ボードにおける曲げ強さを表層で補助することもできる。なお、芯層の両外側に設けられる表層は同一の構成材料から成るものであっても、異なっていても良い。
【0016】
表層に用いられる木質材料は、チップ状、粉末状、繊維状またはフレーク状の材料であり、無機物材料に比べ、低密度かつ嵩高であるという性質を有する。木質材料の種類は、従来公知のものを使用することができ、特に制限するものではないが、例えば、スギ、ヒノキ、スプルース、ファー、ラジアータパイン等の針葉樹、シラカバ、アピトン、カメレレ、センゴン、ラウト、アスペン等の広葉樹、イネ科タケ亜科に属するタケ類やササ類等の植物材料が挙げられる。木質材料としては、例えばこれらの樹種の丸太、間伐材等の生材料、工場や住宅建築現場で発生する端材、部材輸送後に廃棄されるパレット材、建築解体時に発生する解体廃材等が使用される。
【0017】
表層に用いられる木質材料としては、チップ状の木質チップが好ましい。木質チップとしては、例えば、目開き4.75mmの篩を通過するものが使用されるが、表層は緻密かつ平滑であることが望ましく、目開き1.00mmの篩を通過する木質チップを95重量%以上含み、かつ目開き0.50mmの篩を通過する木質チップを50重量%以上含むものが好ましい。
【0018】
表層に用いられる熱硬化性樹脂としては、イソシアネート系樹脂、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂、ユリアメラミン系樹脂等が挙げられ、これらを単独或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。木質材料との接着性の観点から、好ましくはイソシアネート系樹脂が使用される。イソシアネート系樹脂としては、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(PMDI)、エマルションタイプのPMDI等が挙げられ、これらを単独或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。熱硬化性樹脂は、木質材料100重量部に対して、例えば5重量部以上35重量部以下添加され、好ましくは10重量部以上25重量部以下添加され、より好ましくは15重量部以上25重量部以下添加される。
【0019】
芯層は、主として木質ボード全体の強度と潜熱蓄熱性を担う層であり、木質材料、熱硬化性樹脂、潜熱蓄熱材と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物からなる粒状成形体から構成され、芯層中において潜熱蓄熱材が熱可塑性樹脂に担持され粒状で存在する。本発明においては、このような構成とすることにより、木質ボードが実質的に快適な住空間を感じる蓄熱量を有する程度に樹脂組成物を配合した場合であっても、成形時にパンクが発生することを抑制することができる。また潜熱蓄熱性の材料を芯層に配合する構成であり、このような構成とすることにより、成形時等に潜熱蓄熱性の材料が木質ボード表面から流出して蓄熱量が減少することやプレス機の加圧盤を汚染して木質ボードの連続生産に支障を与えることを抑制することができる。
【0020】
芯層に用いられる木質材料は、上述した木質材料を使用することができる。芯層に用いられる木質材料としては、表層と同様のものを使用することができるが、表層に比べて木質チップが粗大であっても所望の機械特性が得られやすいことから、例えば、目開き2.80mmの篩を通過するが、目開き0.50mmの篩を通過しないものを90重量%以上含む木質チップが好ましい。また木質チップが上記範囲であれば、後述する粒状成形体が木質チップの隙間に収まりやすく、木質チップ同士の交差点が多くなる為、熱硬化性樹脂により木質チップ同士が強固に接着され、得られる木質ボードのはく離強さが大きくなる。
【0021】
芯層に用いられる熱硬化性樹脂としては、上述した熱硬化性樹脂を使用することができる。木質材料や後述する粒状成形体との接着性の観点から、好ましくはイソシアネート系樹脂が使用される。また木質ボードの加工性及び強度の観点から、木質材料100重量部に対して、例えば、5重量部以上15重量部以下添加され、好ましくは5重量部以上10重量部以下添加される。
【0022】
芯層に用いられる粒状成形体は、潜熱蓄熱材と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物から構成され、木質ボードに潜熱蓄熱性を付与するものである。このような樹脂組成物からなる粒状成形体は、潜熱蓄熱材が熱可塑性樹脂により担持されてなる為、凝固と融解による相転移を繰り返すヒートサイクル下においても担持材料からの潜熱蓄熱材の滲みだしや相分離が抑制され、延いては木質ボードからの潜熱蓄熱材の染み出しにより潜熱蓄熱性能が低下する問題や木質ボードの連続生産における製造ラインの汚染問題を抑制することができる。
【0023】
潜熱蓄熱材は、日射光により付与される日射熱、室内の冷暖房による熱などで固体-液体に相転移する潜熱蓄熱性の化合物である。潜熱蓄熱材としては、例えば、パラフィン系炭化水素;ナフテン系炭化水素;ベンゼン、p-キシレン等の芳香族炭化水素;オクタン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸等又はこれらの混合物で構成される長鎖脂肪酸;パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等のエステル化合物;ステアリンアルコール等のアルコール類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル化合物等の化合物が挙げられ、これらを単独或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
木質ボードを住宅建材に使用することを考慮すると、潜熱蓄熱材の相転移温度(融点)は、-20℃~60℃の範囲であることが好ましく、-15℃~40℃の範囲であることがより好ましい。相転移温度が-15℃~40℃の範囲である潜熱蓄熱材としては、炭素数が12以上20以下のn-パラフィンであり、例えば、n-ドデカン、n-トリデカン、n-テトラデカン、n-ペンタデカン、n-ヘキサデカン、n-ヘプタデカン、n-オクタデカン、n-ノナデカン及びn-エイコサンが挙げられ、これらを単独或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。木質ボードを室内の壁や床用に用いる場合、潜熱蓄熱材は融点が5℃以上40℃以下の範囲にあることが望ましく、上述したn-パラフィンの中でも、炭素数が14以上20以下のn-パラフィンがより好ましく、炭素数が16以上18以下のn-パラフィンが特に好ましい。
【0026】
熱可塑性樹脂は、潜熱蓄熱材を担持するものであり、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数4~18の少なくとも1種のα-オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、マレイン酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物のモノマーとグラフト化した不飽和カルボン酸グラフト変性ポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル;ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、等のポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂;熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらを単独或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂は潜熱蓄熱材と海島構造をなし、潜熱蓄熱材を効果的に担持することができる。
【0027】
樹脂組成物は、潜熱蓄熱材の凝固と融解による相転移を繰り返すヒートサイクル下における担持材料からの潜熱蓄熱材の滲みだしや相分離を効果的に抑制する為、熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、エチレン-エチレン/共役ジエン-エチレンブロック共重合体(CEBC)等のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー;スチレン-エチレン/プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン-イソプレン共重合体(SIR)、スチレン-エチレン共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SIBS)等のポリスチレン系熱可塑性エラストマー;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリアミド系熱可塑性エラストマー;ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー;塩化ビニル系熱可塑性エラストマー;アクリル系熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらを単独或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、これらはパラフィン系炭化水素等の低分子量化合物の漏洩の抑制に優れる。
【0028】
樹脂組成物は、潜熱蓄熱材を30重量%以上80重量%以下、熱可塑性樹脂を40重量%以上70重量%以下の割合で含むことが好ましい。潜熱蓄熱材が30重量%未満の場合、潜熱蓄熱性の材料として使用するに十分な蓄熱性を確保できない恐れがあり、80重量%を超える場合、樹脂組成物から潜熱蓄熱材が漏れ出す恐れがある。また、熱可塑性エラストマーを含む場合、潜熱蓄熱材を30重量%以上80重量%以下、熱可塑性樹脂を10重量%以上60重量%以下、熱可塑性エラストマーを5重量%以上50重量%以下で含むことが好ましく、潜熱蓄熱材を40重量%以上70重量%以下、熱可塑性樹脂を15重量%以上50重量%以下、熱可塑性エラストマーを10重量%以上40重量%以下含むことがより好ましい。このような配合量とすることにより、潜熱蓄熱材及び熱可塑性エラストマーのリッチ相である島相と、熱可塑性樹脂のリッチ相である海相とを有する海島構造を成す。
【0029】
樹脂組成物には、上述した潜熱蓄熱材、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーの他に、これらの樹脂の特性を阻害しない範囲で、他の樹脂成分を配合することができる。また必要に応じて、公知の充填剤、顔料、核剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、老化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、分散剤、金属石鹸、界面活性剤、ワックス等の滑剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、飽和もしくは不飽和カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、またはこれらの金属塩等のゲル化剤等の添加剤を添加することができる。
【0030】
粒状成形体は、ペレット等の粒状の成形体であり、そのサイズは、特に制限するものではないが、例えば、厚さ、幅及び長さが0.1~10mmである。粒状成形体のサイズは、厚さ及び幅の頻度分布において1~5mmに80%以上の存在頻度を有し、長さの頻度分布において1~6mmに80%以上の存在頻度を有することが好ましく、厚さ及び幅の頻度分布において1~5mmに90%以上の存在頻度を有し、長さの頻度分布において1~6mmに90%以上の存在頻度を有することがより好ましい。また粒状成形体のサイズは、厚さ及び幅の頻度分布においてピークが1~5mmであり、長さの頻度分布においてピークが1~6mmであることが好ましく、厚さ及び幅の頻度分布においてピークが2.5~4.5mmであり、長さの頻度分布においてピークが3.5~5.5mmであることがより好ましい。粒状成形体のサイズがこのような範囲であれば、粒状成形体が木質チップの隙間に収まりやすくなり、得られる木質ボードのはく離強さが大きくなる。粒状成形体のサイズ測定は、例えば、公知の画像解析式粒度分布測定装置等を用いて測定すれば良い。
【0031】
粒状成形体の製造方法としては、従来公知の方法を採用することができ、特に制限するものではないが、例えば、上述した各成分を溶融・混練させた樹脂組成物をストランド状に引き取り、ストランドカットすることにより製造することができる。
【0032】
粒状成形体は、熱硬化性樹脂との接着性を向上させる為、必要に応じて表面処理を施しても良い。表面処理としては、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、プライマー等のコーティング処理等が挙げられる。
【0033】
粒状成形体は、木質材料100重量部に対して、例えば、20重量部以上150重量部以下添加することが好ましい。粒状成形体が20重量部未満の場合、潜熱蓄熱性の材料として使用するに十分な蓄熱量を確保できない恐れがあり、150重量部を超える場合、木質ボードとして成形できない恐れがある。粒状成形体の添加量は、木質材料100重量部に対して、30重量部以上120重量部以下であることがより好ましく、40重量部以上90重量部以下であることが特に好ましい。
【0034】
木質ボードの厚みは、使用される用途等に応じて適宜設計すれば良く、特に制限するものではないが、例えば、3mm~50mmであることが好ましく、5mm~35mmであることがより好ましい。
【0035】
木質ボードの密度は、使用される用途等に応じて適宜設計すれば良く、特に制限するものではないが、例えば、0.40kg/m以上1.00kg/m以下である。
【0036】
木質ボードの曲げ強さは、使用される用途等に応じて適宜設計すれば良く、特に制限するものではないが、壁面等の構造部材やフロアボードとして使用することを考慮すると、8.0N/mm以上であることが好ましく、13.0N/mm以上であることがより好ましく、18.0N/mm以上であることが特に好ましい。
【0037】
木質ボードのはく離強さは、使用される用途等に応じて適宜設計すれば良く、特に制限するものではないが、壁面等の構造部材やフロアボードとして使用することを考慮すると、0.3N/mm以上である。はく離強さは、0.6N/mm以上であることが好ましく、0.8N/mm以上であることがより好ましく、1.0N/mm以上であることが特に好ましい。はく離強さが1.0N/mm以上であれば、実の加工適正に優れる。
【0038】
木質ボードの表層:芯層:表層の重量割合は、特に制限するものではないが、例えば、10:80:10~40:20:40であることが好ましい。この場合、木質ボードの潜熱蓄熱性(蓄熱量)を確保するためには、芯層の重量割合が大きい方が好ましい為、芯層の重量割合は30重量%以上がより好ましく、50重量%以上が特に好ましい。
【0039】
木質ボードは、上述したように、木質材料と熱硬化性樹脂とからなる表層と、木質材料と熱硬化性樹脂と粒状成形体とからなる芯層とを有する構成であれば良く、目的に応じて他の層を配置しても良い。なお、上記粒状成形体は、芯層以外の層に配合されていても良く、表層以外の層に含まれる構成とすることが好ましいが、フォーミングの工程などを考慮すると厳密に表層に上記粒状形成体が含まれない構成とすることは難しく、表層にもその特性を阻害しない範囲であれば上記粒状成形体が含まれていても良い。表層に上記粒状成形体が含まれる場合、木質材料100重量部に対して10重量部未満、好ましくは5重量部未満、より好ましくは3重量部未満であれば、表層に与える影響が小さく、また表層からの潜熱蓄熱材の流出もほとんど見られない。
【0040】
木質ボードには、上述した木質材料、熱硬化性樹脂の他に、その特性を阻害しない範囲で、他の樹脂成分を配合することができる。また必要に応じて公知の粘着付与剤、アルデヒドキャッチャー剤、硬化促進剤、離型剤、剥離剤、乳化剤、乳化安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、シランカップリング剤、ポバール、金属触媒、ワックス等の滑剤、合成ゴムラテックス、アクリル系エマルション等の添加剤を添加することができる。
【0041】
[木質ボードの製造方法]
次に、木質ボードの製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、先ず、表層用の木質材料、熱硬化性樹脂を混合した表層用材料、芯層用の木質材料、熱硬化性樹脂、潜熱蓄熱材と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物からなる粒状成形体を混合した芯層用材料を準備する。表層用材料は、例えば、所定量に計量した木質材料をブレンダー機に投入し、これに所定の熱硬化性樹脂及び必要に応じて添加剤等を噴霧して混ぜ合わせることで得られる。また芯層用材料についても表層用材料と同様、所定量に計量した木質材料、樹脂組成物からなる粒状成形体を公知のブレンダー機に投入し、これに所定量の熱硬化性樹脂及び必要に応じて添加剤等を噴霧して混ぜ合わせることで得られる。表層用材料及び芯層用材料の混合には、公知のリボンブレンダー、高速ミキサー、タンブラー等の混合設備を利用することができる。なお、木質ボードの含水率を調整するため、ここで所定量の水を加えても良い。
【0042】
次いで、準備した表層用材料及び芯層用材料を、表層(第1層)となる第1層用材料、芯層となる第2層用材料、表層(第3層)となる第3層用材料として順次堆積(散布)してフォーミングし、板状のマットを成形する。フォーミングは、通常の木質ボード製造ラインを使用することができ、例えば、成形台やスチールベルト等を用いて、その上に各層用の材料を供給して堆積すれば良いが、成形台やスチールベルト等への堆積前や堆積後に各層用の材料を、目的とする形状に予備圧縮しておけば得られる木質ボードの品質を安定させることができる。
【0043】
そして、得られた板状のマットを上下方向から熱プレスし、熱圧成形することにより所定厚みの木質ボードを得ることができる。熱プレスの条件は、特に制限するものではないが、例えば、プレス温度は100~270℃であり、プレス圧は2~10N/mmであり、プレス時間は5~35sec/mmである。熱プレスは、公知のプレス機を使用しても良く、上述した成形台やスチールベルト等を加熱して熱圧成形しても良い。
【0044】
本発明においては、熱プレスの条件を芯層用材料(第2層用材料)が、100℃を超え、粒状成形体に含まれる熱可塑性樹脂の融点未満とすることが好ましい。芯層用材料が粒状成形体に含まれる熱可塑性樹脂の融点以上である場合、粒状成形体が流動性を示して熱硬化性樹脂の固着が阻害され、1)熱硬化性樹脂と木質材料及び粒状成形体との接着強度が木質ボード内部の蒸気圧に耐えられず、プレス機の加圧盤の解圧時に木質ボードがパンクする、2)或いは得られる木質ボードの機械特性(特にはく離強さ)が低くなるといった恐れがある。また芯層材料が100℃未満である場合、マットに含まれる水分が蒸発せず、熱硬化性樹脂が硬化不十分となる恐れがある。
【0045】
熱可塑性樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)測定により求めることができる。昇温時の吸熱ピークが複数存在する場合、本発明では全ての温度を融点と呼び、熱プレスは最も高温側の融点未満とすることが望ましい。熱可塑性樹脂の融点は、熱可塑性樹脂単体で測定しても、潜熱蓄熱材と熱可塑性樹脂とをブレンドした樹脂組成物或いは粒状成形体から測定しても良く、昇温時の吸熱ピークが複数存在する場合、熱プレスは最も高温側の融点未満とすることが望ましい。また熱可塑性樹脂の融点は、2回目の昇温時の吸熱ピークとすれば良い。
【0046】
また、本発明においては、熱プレスの条件を芯層用材料が、粒状成形体に含まれる熱可塑性樹脂の軟化温度未満とすることがより好ましい。芯層用材料が粒状成形体に含まれる熱可塑性樹脂の軟化点未満であれば、粒状成形体が流動性を示すことを抑制でき、機械特性(特にはく離強さ)に優れる木質ボードを得ることができる。なお、ここでいう軟化温度とは、JIS K7196に準拠し、厚さ3mmのシートに、昇温速度5℃/minで1.8mmφの平面圧子により2kgf/cm2の圧力をかけて測定した軟化温度である。
【0047】
熱可塑性樹脂の軟化温度は、熱機械分析装置(TMA)により求めることができるが、TMA曲線が2段階以上の変化を示す場合、本発明では全ての温度を軟化温度と呼び、熱プレスは最も高温側の軟化温度未満とすることが望ましい。また熱可塑性樹脂の軟化温度は、熱可塑性樹脂単体で測定しても、潜熱蓄熱材と熱可塑性樹脂とをブレンドした樹脂組成物或いは粒状形成体から測定しても良いく、TMA曲線が2段階以上の変化を示す場合、熱プレスは最も高温側の軟化温度未満とすることが望ましい。
【0048】
熱プレスにおける芯層用材料の温度を粒状成形体に含まれる熱可塑性樹脂の融点未満或いは軟化温度未満とする方法としては、例えば、熱プレス時の芯層用材料の温度を熱電対等の公知の温度測定機で測定し、プレス機等の加圧盤の加熱温度やプレス時間を調整すれば良い。
【0049】
なお、ここで熱プレスにおける芯層用材料の温度を粒状成形体に含まれる熱可塑性樹脂の融点未満或いは軟化温度未満とするとは、マットに含まれる芯層用材料が、いずれの位置においても上記温度未満であることが望ましいが、マットの平面視における中心部、かつマットの厚さ方向における中心部が最も蒸気圧が高くパンクしやすい為、マットの中心部を上記温度未満とすることを言う。また、通常の熱プレスにおいては、プレス機の加圧盤の解圧直前の芯層用材料温度が熱プレスにおける芯層用材料の最高温度となると考えられる為、プレス機の加圧盤の解圧直前の温度が上記温度未満となるようにすれば良い。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的態様は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の木質ボードは、人が実質的に快適な住空間を感じる蓄熱性を有しつつも、実用的な強度を備えるものであり、住宅の屋根下地材、壁面等の構造部材、フロアボード等、蓄熱性を有した建築部材として好適に使用することができる。
【実施例
【0051】
以下、本発明の木質ボードについて、実施例に基づき説明する。なお、各木質ボードにおいて行った測定・評価方法は以下の通りである。
【0052】
(1)はく離強さ
JIS A 5908(2003)の6.8に準拠して算出した。
(2)成形性
板状のマットを熱プレスした後のプレス機の加圧盤解圧時におけるパンク発生状況を確認した。評価基準は以下の通りである。
〇:3サンプル作製し、3サンプルともパンクが発生しなかった
△:3サンプル作製し、1又は2サンプルにパンクが発生した
×:3サンプル作製し、3サンプルともパンクが発生した
(3)蓄熱性
住宅を模した実験棟のフロアに得られた木質ボードを配置し、冬季期間(1月)中の3週間における木質ボードの表面温度を測定した。評価基準は以下の通りである。
○:表面温度が19℃以下となる時間が1日あたり2時間半未満
△:表面温度が19℃以下となる時間が1日あたり2時間半を超え4時間半未満
×:表面温度が19℃以下となる時間が1日あたり4時間半を超える
尚、国際標準化機構(ISO7730)においては、住宅における快適条件として床表面温度が19℃~26℃とされており、表面温度が19℃以下となる時間が少ないほど快適な住空間を維持できていると言える。
【0053】
各実施例、比較例で使用した原料は以下の通りである。
(木質材料)
表層用の木質材料:目開き1.00mmの篩を通過する木質チップを95重量%以上含み、かつ目開き0.50mmの篩を通過する木質チップを50重量%以上含む木質材料
芯層用の木質材料:目開き2.80mmの篩を通過し、目開き0.50mmの篩を通過しない木質チップを90重量%以上含む木質材料
(熱硬化性樹脂)
イソシアネート系接着剤:4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)
(潜熱蓄熱性の材料)
マイクロカプセル:n-パラフィンを内包したマイクロカプセル[粒径:3μm]
粒状成形体A:n-パラフィンとポリプロピレン系樹脂とをブレンドした樹脂組成物からなるペレット[DSC測定における最も高温側の融点:144℃ 厚さ及び幅:1~5mmの範囲に80%以上の存在頻度を有し、ピークが2.4mm 長さ:1~6mmの範囲に80%以上の存在頻度を有し、ピークが3.3mm]
粒状成形体B:n-パラフィンとポリプロピレン系樹脂とをブレンドした樹脂組成物からなるペレット[DSC測定における最も高温側の融点:144℃ 厚さ及び幅:1~5mmの範囲に80%以上の存在頻度を有し、ピークが3.2mm 長さ:1~6mmの範囲に80%以上の存在頻度を有し、ピークが4.3mm]
【0054】
[実施例1乃至5]
表1に示す組成比にて、表層用の木質材料と熱硬化性樹脂とを混合した表層用材料、芯層用の木質材料と熱硬化性樹脂と粒状成形体とを混合した芯層用材料を準備し、次いで表層/芯層/表層(重量比20:60:20)となるようフォーミングして板状のマットを形成した後、表1に示す製造条件にて熱プレスを行い、設定密度770g/cm、長さ360mm、幅360mm、厚さ12.5mmの木質ボードを得た。得られた木質ボードのはく離強さ、成形性、蓄熱性を表1に併せて示す。
【0055】
[比較例1]
表1に示す組成比にて、表層用の木質材料と熱硬化性樹脂とマイクロカプセルとを混合した表層用材料を準備し、次いで単層にフォーミングして板状のマットを形成した後、表1に示す製造条件にて熱プレスを行い、設定密度810g/cm、長さ360mm、幅360mm、厚さ7mmの木質ボードを得た。得られた木質ボードのはく離強さ、成形性、蓄熱性を表1に併せて示す。
【0056】
[比較例2]
表1に示す組成比にて、表層用の木質材料と熱硬化性樹脂とを混合した表層用材料、芯層用の木質材料と熱硬化性樹脂とマイクロカプセルとを混合した芯層用材料を準備し、次いで表層/芯層/表層(重量比20:60:20)となるようフォーミングして板状のマットを形成した後、表1に示す製造条件にて熱プレスを行い、設定密度770g/cm、長さ360mm、幅360mm、厚さ12.5mmの木質ボードを得た。得られた木質ボードのはく離強さ、成形性、蓄熱性を表1に併せて示す。
【0057】
[比較例3]
表1に示す組成比にて、表層用の木質材料と熱硬化性樹脂とを混合した表層用材料、芯層用の木質材料と熱硬化性樹脂とマイクロカプセルとを混合した芯層用材料を準備し、次いで表層/芯層/表層(重量比20:60:20)となるようフォーミングして板状のマットを形成した後、表1に示す製造条件にて熱プレスを行ったが、プレス機の加圧盤の解圧時に木質ボードがパンクした。
【0058】
[比較例4]
表1に示す組成比にて、表層用の木質材料と熱硬化性樹脂とを混合した表層用材料、芯層用の木質材料と熱硬化性樹脂とを混合した芯層用材料を準備し、次いで表層/芯層/表層(重量比20:60:20)となるようフォーミングして板状のマットを形成した後、表1に示す製造条件にて熱プレスを行い、設定密度770g/cm、長さ360mm、幅360mm、厚さ12.5mmの木質ボードを得た。得られた木質ボードのはく離強さ、成形性、蓄熱性を表1に併せて示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示すように、表層、芯層、表層の3層構成とし、潜熱蓄熱材と熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物からなる粒状成形体を芯層に配合した実施例1乃至5の木質ボードは、いずれも人が快適な住空間を感じる蓄熱量を有するとともに、機械特性に優れる結果を示した。また芯層用材料が粒状成形体に含まれる熱可塑性樹脂の融点未満となるよう熱プレスされた実施例1乃至4の木質ボードは、芯層用材料が粒状成形体に含まれる熱可塑性樹脂の融点を超えて熱プレスされた実施例5の木質ボードに比べ、はく離強さに優れる結果を示した。なお、いずれの実施例においても、潜熱蓄熱材が木質ボード表面から流出することや、プレス機の加圧盤を汚染していることは見られなかった。
【0061】
一方、表1に示すように、単層構成とし、潜熱蓄熱材としてマイクロカプセルを配合した比較例1の木質ボードは、成形時のプレス圧によりマイクロカプセルが破裂し、マイクロカプセルに内包されていたn-パラフィンが流出して蓄熱量が減少するとともに、n-パラフィンが加圧盤を汚染する結果を示した。また、表層、芯層、表層の3層構成とし、潜熱蓄熱材としてマイクロカプセルを芯層に配合した比較例2及び3の木質ボードは、マイクロカプセルの配合量を60重量部とすると、プレス機の加圧盤の解圧時に木質ボードがパンクし、マイクロカプセルの配合量を20重量部とすると、パンクの発生は抑えられるものの蓄熱性が不足する結果を示した。なお、潜熱蓄熱材を含まずに実施例3と同様に作製した比較例4の木質ボードは、蓄熱性が見られなかった。
【符号の説明】
【0062】
1:木質ボード
2:表層
3:芯層

図1