(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】誤差算出装置および誤差算出システム
(51)【国際特許分類】
B61L 25/02 20060101AFI20220318BHJP
B61L 3/02 20060101ALI20220318BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
B61L25/02 G
B61L3/02 A
G01B11/00 H
(21)【出願番号】P 2017229835
(22)【出願日】2017-11-30
【審査請求日】2020-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 勝大
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄介
(72)【発明者】
【氏名】横井 謙太朗
(72)【発明者】
【氏名】戸田 勇人
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-184527(JP,A)
【文献】特開平10-53127(JP,A)
【文献】特開2014-54898(JP,A)
【文献】特開2004-136754(JP,A)
【文献】特開2000-112151(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035597(WO,A1)
【文献】特開平7-225894(JP,A)
【文献】特開平10-6991(JP,A)
【文献】特開平6-35538(JP,A)
【文献】特開2012-11867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00-99/00
B60L 1/00-3/12,7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に設置された撮像装置から撮像画像を取得する取得部と、
前記列車が停止する駅に設置された複数の列と複数の行とが交差するように配列された複数の円であるマーカーを、前記撮像画像から特定する特定部と、
特定された前記マーカー内の所定部位の前記撮像画像における位置と、前記列車が予め定められた目標停止位置に停止した際に予め撮像された撮像画像における前記所定部位の位置である基準位置と、の差分を求め、前記差分に基づいて、前記列車の停止位置と前記目標停止位置との誤差を算出する算出部と、を備え、
前記特定部は、前記撮像画像から複数の円を抽出し、抽出された前記複数の円のうち、前記撮像画像における横方向の座標の差異が第1の閾値以下である前記円は同じ列に含まれると判断し、前記撮像画像における縦方向の座標の差異が第2の閾値以下である前記円は同じ行に含まれると判断し、前記列および前記行に含まれる前記複数の円の数が予め定められた所定の数と一致する場合に、前記列および前記行に含まれる前記複数の円を前記マーカーと特定する、
誤差算出装置。
【請求項2】
列車に設置された撮像装置から撮像画像を取得する取得部と、
前記列車が停止する駅に設置された、矩形状でかつ前記列車の路線ごとに異なる色を有するマーカーを、前記撮像画像から特定する特定部と、
特定された前記マーカー内の所定部位の前記撮像画像における位置と、前記列車が予め定められた目標停止位置に停止した際に予め撮像された撮像画像における前記所定部位の位置である基準位置と、の差分を求め、前記差分に基づいて、前記列車の停止位置と前記目標停止位置との誤差を算出する算出部と、を備え、
前記特定部は、前記撮像画像から特定の色の画像範囲を抽出することによって
、誤差算出装置が搭載された列車が走行する路線の前記マーカーを特定する、
誤差算出装置。
【請求項3】
前記所定部位は、前記マーカーの幅方向の中心であり、
前記算出部は、前記所定部位の前記撮像画像における位置と前記基準位置との差分を、実空間における長さに変換することによって、前記列車の停止位置と前記目標停止位置との誤差を算出する、
請求項1または2に記載の誤差算出装置。
【請求項4】
列車に設置された撮像装置から撮像画像を取得する取得部と、
前記列車が停止する駅にそれぞれ異なる角度で設置された複数のマーカーを、前記撮像画像から特定する特定部と、
特定された前記マーカー内の所定部位の前記撮像画像における位置と、前記列車が予め定められた目標停止位置に停止した際に予め撮像された撮像画像における前記所定部位の位置である基準位置と、の差分を求め、前記差分に基づいて、前記列車の停止位置と前記目標停止位置との誤差を算出する算出部と、
前記所定部位は、複数のマーカーの全体の幅方向の中心であり、
前記算出部は、前記特定部が前記マーカーを1つ以上特定した場合、特定された前記マーカーの中心の位置から、前記所定部位の位置を求める、
誤差算出装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記所定部位の前記撮像画像における位置と前記基準位置との差分を、実空間における長さに変換することによって、前記列車の停止位置と前記目標停止位置との誤差を算出する、
請求項4に記載の誤差算出装置。
【請求項6】
前記列車が停止したことを示す停止信号を、前記列車の制御装置から受信する受信部、をさらに備え、
前記特定部は、前記受信部が前記停止信号を受信した場合に、前記取得部が取得した前記撮像画像から前記マーカーを特定する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の誤差算出装置。
【請求項7】
前記算出部が算出した前記誤差を前記制御装置に送信する送信部、をさらに備えた、
請求項6に記載の誤差算出装置。
【請求項8】
マーカーと、誤差算出装置とを備える誤差算出システムであって、
前記マーカーは、列車が停止する駅に設置された複数の列と複数の行とが交差するように配列された複数の円であり、
前記誤差算出装置は、
前記列車に設置された撮像装置から撮像画像を取得する取得部と、
前記撮像画像から前記マーカーを特定する特定部と、
特定された前記マーカー内の所定部位の前記撮像画像における位置と、前記列車が予め定められた目標停止位置に停止した際に予め撮像された撮像画像における前記所定部位の位置である基準位置と、の差分を求め、前記差分に基づいて、前記列車の停止位置と前記目標停止位置との誤差を算出する算出部と、を備え、
前記特定部は、前記撮像画像から複数の円を抽出し、抽出された前記複数の円のうち、前記撮像画像における横方向の座標の差異が第1の閾値以下である前記円は同じ列に含まれると判断し、前記撮像画像における縦方向の座標の差異が第2の閾値以下である前記円は同じ行に含まれると判断し、前記列および前記行に含まれる前記複数の円の数が予め定められた所定の数と一致する場合に、前記列および前記行に含まれる前記複数の円を前記マーカーと特定する、
誤差算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、誤差算出装置および誤差算出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ATO(Automatic Train Operation)のように列車を自動運転制御する技術や、TASC(Train Automatic Stop-position Controller)のように列車が定められた目標停止位置に停止することを支援する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6045483号公報
【文献】特許第5634951号公報
【文献】特許第6081549号公報
【文献】特許第6091294号公報
【文献】特許第5484280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術においては、列車が駅に停車した際の実際の停止位置と、予め定められた目標停止位置との誤差を高精度に把握することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の誤差算出装置は、取得部と、特定部と、算出部とを備える。取得部は、列車に設置された撮像装置から撮像画像を取得する。特定部は、列車が停止する駅に設置された複数の列と複数の行とが交差するように配列された複数の円であるマーカーを、撮像画像から特定する。算出部は、特定されたマーカー内の所定部位の撮像画像における位置と、列車が予め定められた目標停止位置に停止した際に予め撮像された撮像画像における所定部位の位置である基準位置と、の差分を求め、差分に基づいて、列車の停止位置と目標停止位置との誤差を算出する。また、特定部は、撮像画像から複数の円を抽出し、抽出された複数の円のうち、撮像画像における横方向の座標の差異が第1の閾値以下である円は同じ列に含まれると判断し、撮像画像における縦方向の座標の差異が第2の閾値以下である円は同じ行に含まれると判断し、列および行に含まれる複数の円の数が予め定められた所定の数と一致する場合に、列および行に含まれる複数の円をマーカーと特定する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態にかかる誤差算出システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態にかかる誤差算出装置が備える機能の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態にかかるマーカーが撮像された撮像画像の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態にかかる誤差算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1の実施形態にかかるマーカー特定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2の実施形態にかかるマーカーを特定する手法の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態にかかるマーカー特定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、変形例1にかかるマーカーの設置位置の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、変形例2にかかるマーカーの設置位置の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、変形例3にかかるマーカーの設置位置の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、変形例4にかかるマーカーの設置位置の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、第3の実施形態にかかる誤差算出システムの全体構成の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、第3の実施形態にかかるマーカーの一例を示す側面図である。
【
図14】
図14は、第3の実施形態にかかるマーカーが撮像された撮像画像の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、第3の実施形態にかかる誤差算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1の実施形態)
一般に、列車が停車する駅においては、列車の目標停止位置が予め定められている。しかしながら、実際には列車が目標停止位置の手前で停止したり、目標停止位置を通過してから停止したりすることで、列車が停車駅で停止した位置(停止位置)と目標停止位置とに誤差が生じる場合がある。本実施形態の誤差算出システムでは、列車の停止位置と目標停止位置との誤差を高精度に算出する。
【0008】
図1は、本実施形態にかかる誤差算出システムSの全体構成の一例を示す図である。本実施形態の誤差算出システムSは、マーカー2と、誤差算出装置10と、カメラ3a,3bと、制御装置11と、を備える。
【0009】
マーカー2は、予め定められた目標停止位置と、列車1が駅に停車した際の実際の停止位置との誤差の算出に用いられる目印である。
図1に示すように、本実施形態のマーカー2は、複数の列と複数の行とが交差するように配列された複数の円である。マーカー2の幅方向の中心は、本実施形態におけるマーカー2内の所定部位の一例である。所定部位は、これに限定されるものではない。
【0010】
また、本実施形態においては、マーカー2は、駅のホーム4の床に、列車1の前後方向と平行になるように設置される。マーカー2は、ホーム4の床に塗料等で記載されても良いし、マーカー2が表示された板やシート等がホーム4の床に貼附されても良い。マーカー2の表面には、公知の技術によって、光の反射を抑制する加工が施されても良い。
【0011】
カメラ3a,3bは、列車1に設置された撮像装置である。以下、カメラ3aとカメラ3bとを特に区別しない場合は、カメラ3という。より詳細には、カメラ3は、駅のホーム4に設置されたマーカー2を撮像可能な撮像角度で列車1に設置される。本実施形態では、カメラ3は、列車1の車両の上部に、ホーム4を向いて斜め下向きの撮像角度で設置される。また、カメラ3は、列車1の車両から突出して、下向きの撮像角度で設置されても良い。カメラ3は、例えばCCTV(Closed-Circuit Television)カメラであるが、これに限定されるものではない。また、カメラ3は、動画を撮像するものでも良いし、静止画を撮像するものでも良い。
【0012】
また、
図1の例では、カメラ3a,3bは、列車1の左右にそれぞれ設置されているが、これは、ホーム4が列車1の左右のいずれの方向に位置してもマーカー2を撮像可能にするためである。全ての駅において、ホーム4と列車1との位置関係が同じである場合は、カメラ3a,3bは、いずれか1台でも良い。
【0013】
制御装置11は、列車1の運転を制御する装置であり、列車1に搭載される。制御装置11は、例えば、ATO等の自動列車運転装置とする。また、制御装置11は、列車1の運転に関する各種の情報を有する。制御装置11と誤差算出装置10とはネットワーク等を介して互いに通信可能に接続されている。制御装置11は、例えば、列車1の次の停車駅を示す情報を誤差算出装置10に送信する。また、制御装置11は、列車1が駅に停車した場合に、列車1が停止したことを示す停止信号を誤差算出装置10に送信する。
【0014】
また、制御装置11は、後述する誤差算出装置10から送信された列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を保存する。制御装置11は、機械学習等の手法を用いて分析することにより、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差がより小さくなるように、自動運転制御の制御パラメータの値を調整する。
【0015】
誤差算出装置10は、列車1に搭載され、カメラ3が撮像した撮像画像内のマーカー2の画像の位置に基づいて、列車1の停止位置と、目標停止位置との誤差を算出する。誤差算出装置10の機能の詳細は後述する。
【0016】
本実施形態の制御装置11および誤差算出装置10は、CPU(Central Processing Unit)等の制御装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置と、ネットワーク等に接続可能な通信インタフェース等を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。具体的には、制御装置11および誤差算出装置10は、PC(Personal Computer)やサーバーである。
【0017】
次に、本実施形態の誤差算出装置10の機能について詳細を説明する。
図2は、本実施形態にかかる誤差算出装置10が備える機能の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態の誤差算出装置10は、受信部101と、取得部102と、特定部103と、算出部104と、送信部105と、記憶部150とを備える。
【0018】
本実施形態の記憶部150は、ホーム位置情報と、マーカー長と、基準位置のX座標と、算出可能な誤差の最大値と、を記憶する。記憶部150は、例えばHDD等の記憶装置である。
【0019】
ホーム位置情報は、列車1の停車駅と、当該停車駅におけるホーム4が列車1の左右のいずれの方向に位置するか、とを対応付けた情報である。
【0020】
マーカー長は、実空間におけるマーカー2の幅方向(横方向、左右方向)の長さである。より詳細には、本実施形態のマーカー長は、マーカー2の複数の円のうち、一番左端の円の中心と、一番右端の円の中心との間の距離である。
【0021】
基準位置のX座標は、列車1が目標停止位置に停止した際に予め撮像された撮像画像におけるマーカー2の幅方向の中心(所定部位)の座標である。本実施形態では、基準位置のX座標が撮像画像の幅方向の中心となるように、マーカー2とカメラ3との位置関係が予め設定されているものとする。基準位置のX座標はこれに限定されるものではない。
【0022】
また、算出可能な誤差の最大値は、本実施形態の誤差算出装置10が撮像画像から算出可能な列車1の停止位置と目標停止位置との誤差の最大値である。本実施形態においては、マーカー2の全体がカメラ3の撮像範囲に含まれない場合は、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を撮像画像から求めることができない。このため、マーカー2の全体がカメラ3の撮像範囲に含まれる誤差の上限を、算出可能な誤差の最大値とする。本実施形態では、算出可能な誤差の最大値を“Xcm”とする。
【0023】
受信部101は、制御装置11から列車1の運行に関する情報を取得する。より詳細には、受信部101は、列車1の次の停車駅を示す情報を、制御装置11から受信する。また、受信部101は、列車1が停止したことを示す停止信号を、制御装置11から受信する。
【0024】
取得部102は、カメラ3から撮像画像を取得する。より詳細には、取得部102は、受信部101が制御装置11から受信した次の停車駅を示す情報に基づいて、次の停車駅のホーム4の方向を、記憶部150のホーム位置情報から検索する。そして、取得部102は、次の停車駅のホーム4側のカメラ3の撮像画像を取得する。取得部102は、例えば、一定時間ごとにカメラ3から撮像画像を繰り返し取得するものとする。
【0025】
特定部103は、受信部101が停止信号を受信した場合に、取得部102が取得した撮像画像からマーカー2を特定する。
【0026】
より詳細には、特定部103は、撮像画像90から、マーカー2を構成する複数の円を抽出する。複数の円を抽出する手法として、公知のハフ変換(Hough transform)等の画像処理の手法を採用しても良い。
図3は、本実施形態にかかるマーカー2が撮像された撮像画像90の一例を示す図である。本実施形態のマーカー2を構成する12個の円21a~21lは、縦に4列、横に3行の格子状に配列される。また、撮像画像90の縦方向(上下方向)の位置はY座標、横方向(幅方向、左右方向)の位置はX座標で示される。以下、円21a~21lを特に区別しない場合は、円21という。
【0027】
また、特定部103が複数の円21を抽出する際に、マーカー2とは無関係の円形状の汚れや模様等が抽出される場合がある。例えば、
図3では、円Pはマーカー2とは無関係の円形状の模様である。特定部103は、抽出された複数の円21を列ごとおよび行ごとにグループ化し、各列または各行のいずれにも含まれない円Pを除外する。より詳細には、特定部103は、撮像画像90におけるX座標の差異が第1の閾値以下である円21は同じ列に含まれると判断し、Y座標の差異が第2の閾値以下である円21は同じ行に含まれると判断する。特定部103は、円Pを除外した上で、各列および各行に含まれる円21の数が、マーカー2の円21の数“12”と一致する場合に、各列および各行に含まれる円21をマーカー2として特定する。特定部103は、マーカー2として特定した円21のX座標を、算出部104に送出する。
【0028】
第1の閾値と第2の閾値は、予め定められる。本実施形態では、第1の閾値と第2の閾値は同じ値とするが、異なる値であっても良い。同じ列に含まれる円21のX座標およびまたは同じ行に含まれる円21のY座標は略同じ値となるが、撮像条件等によって差異が生じる場合がある。このような差異を許容するために、特定部103は、第1の閾値と第2の閾値とを用いる。また、マーカー2の円21の数は、本実施形態における予め定められた所定の数の一例である。
【0029】
また、特定部103は、円Pを除外した上で、抽出した円21の個数が、マーカー2の円21の数と一致しない場合は、撮像画像90にマーカー2が含まれないと判断する。
【0030】
図2に戻り、算出部104は、特定部103から撮像画像90から特定したマーカー2の幅方向の中心(マーカー2内の所定部位の撮像画像90における位置)と、基準位置との差分を算出する。具体的には、算出部104は、マーカー2の幅方向の中心のX座標から、記憶部150に保存された基準位置のX座標を減算して、差分を求める。当該差分は、例えば、撮像画像90におけるピクセル数で算出される。そして、算出部104は、当該差分に基づいて、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を算出する。
【0031】
また、算出部104は、記憶部150に記憶されたマーカー長を、撮像画像90におけるマーカー2の幅方向の長さのピクセル数で除算することによって撮像画像90の1ピクセルあたりの実空間における長さを算出する。以下、撮像画像90の1ピクセルあたりの実空間における長さを変換パラメータという。
【0032】
算出部104は、算出した差分を、実空間における長さに変換することによって、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を算出する。より詳細には、算出部104は、算出した差分のピクセル数に変換パラメータを乗算することによって、算出した差分を実空間における長さに変換する。なお、撮像画像90上の差分を変換する手法は、これに限定されるものではない。
【0033】
送信部105は、算出部104が算出した列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を制御装置11に送信する。また、送信部105は、特定部103が撮像画像90にマーカー2が含まれないと判断した場合は、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差が算出可能な誤差の最大値“Xcm”よりも大きいことを、誤差の算出結果として制御装置11に送信する。
【0034】
次に、以上のように構成された誤差算出装置10で実行される誤差算出処理について説明する。
図4は、本実施形態にかかる誤差算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0035】
受信部101は、列車1の次の停車駅を示す情報を、制御装置11から受信する(S1)。そして、取得部102は、次の停車駅におけるホーム4の方向を、記憶部150のホーム位置情報から検索する(S2)。
【0036】
取得部102は、列車1に設置されたカメラ3のうち、次の停車駅のホーム4側のカメラ3から撮像画像90を取得する(S3)。
【0037】
受信部101は、制御装置11から停止信号を受信したか否かを判断する(S4)。受信部101は、停止信号を受信した場合に、停止信号を受信したことを特定部103に通知する。特定部103は、受信部101が停止信号を受信した場合に(S4“Yes”)、マーカー特定処理を開始する(S5)。S5のマーカー特定処理の詳細については、
図5で後述する。
【0038】
また、受信部101が停止信号を受信していない場合は(S4“No”)、S3およびS4の処理が繰り返される。
【0039】
S5のマーカー特定処理で、特定部103が撮像画像90からマーカー2を特定した場合(S6“Yes”)、算出部104は、特定部103から、
図3に示す撮像画像90における円21a~21lのX座標を取得する。算出部104は、マーカー2の左から1列目の円21a,21e,21iのX座標の平均値“x1”を、マーカー2の最小X座標として算出する。また、算出部104は、マーカー2の左から4列目の円21d,21h,21lのX座標の平均値“x2”を、マーカー2の最大X座標として算出する。算出部104は、マーカー2の最小X座標“x1”と最大X座標と“x2”との中間地点のX座標を算出することによって、マーカー2の幅方向の中心のX座標“x3”を求める。
【0040】
また、
図3に示す例では、基準位置のX座標は“x4”である。算出部104は、X座標“x4”からX座標“x3”を減算することによって、撮像画像90におけるマーカー2の幅方向の中心と、基準位置との差分D1を算出する(S7)。列車1が目標停止位置で停止した場合には、差分D1は“0”となる。また、
図3に示す撮像画像90では、列車1が目標停止位置を通過してから停止した場合は差分D1は正の数になり、列車1が目標停止位置の手前で停止した場合は差分D1は負の数になる。
【0041】
そして、算出部104は、撮像画像90におけるマーカー2の最大X座標からマーカー2の最小X座標を減算して、撮像画像90におけるマーカー2の幅方向の長さを求める。算出部104は、記憶部150に記憶されたマーカー長と、撮像画像90におけるマーカー2の幅方向の長さから変換パラメータを算出する。算出部104は、算出した差分D1に変換パラメータを乗算して実空間における長さに変換して、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を算出する(S8)。
【0042】
送信部105は、算出部104が算出した列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を、制御装置11に送信する(S9)。
【0043】
また、S5のマーカー特定処理で、特定部103が撮像画像90からマーカー2を特定しなかった場合(S6“No”)、送信部105は、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差が算出可能な誤差の最大値“Xcm”よりも大きいことを、制御装置11に送信する(S10)。
【0044】
次に、S5のマーカー特定処理の詳細について説明する。
図5は、本実施形態にかかるマーカー特定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0045】
特定部103は、公知の画像処理の手法によって、撮像画像90から円21を抽出する(S101)。また、この際、円21以外の円Pが抽出される場合がある。
【0046】
特定部103は、抽出した円21および円Pを、列ごとにグループ化する(S102)。グループ化の際、特定部103は、X座標の差異が第1の閾値以下である円21は同じ列に含まれると判断する。
図3に示すマーカー2の例では、特定部103は、円21a,21e,21iが1列目、円21b,21f,21jが2列目、円21c,21g,21kが3列目、円21d,21h,21lが4列目に含まれると判断する。
【0047】
そして、特定部103は、いずれの列にも含まれない円Pの有無を判断する(S103)。円PのX座標は、いずれの列に含まれる円21のX座標と比較しても、互いのX座標の差異が第1の閾値以下にならないため、4つの列のいずれにも含まれない。
【0048】
抽出した円21および円Pの中に、いずれの列にも含まれない円Pがある場合(S103“Yes”)、特定部103は、抽出した円21および円Pから、いずれの列にも含まれない円Pを除外し(S104)、S105の処理に進む。
【0049】
また、抽出した円21および円Pの中に、いずれの列にも含まれない円Pがない場合(S103“No”)、特定部103は、S104の除外の処理を行わずに、S105の処理に進む。
【0050】
次に、特定部103は、抽出した円21を、行ごとにグループ化する(S105)。グループ化の際、特定部103は、Y座標の差異が第2の閾値以下である円21は同じ行に含まれると判断する。
図3に示すマーカー2の例では、特定部103は、円21a~21dが1行目、円21e~21hが2行目、円21i~21lが3行目に含まれると判断する。
【0051】
そして、特定部103は、いずれの行にも含まれない円21の有無を判断する(S106)。抽出した円21の中に、いずれの行にも含まれない円21がある場合(S106“Yes”)、特定部103は、いずれの行にも含まれない円21を除外して(S107)、S108の処理に進む。このように、特定部103は、列と行の両方を用いて円Pを除外する処理を行うので、より高精度に円Pを除外することができる。
【0052】
抽出した円21の中に、いずれの行にも含まれない円21がない場合(S106“No”)、特定部103は、S107の除外の処理を行わずに、S108の処理に進む。
【0053】
次に、特定部103は、撮像画像90から抽出した円21および円Pのうち、円Pを除外した後に残った円21の個数が、“12”であるか否かを判断する(S108)。残った円21の個数が、“12”である場合(S108“Yes”)、特定部103は、残った円21は、マーカー2であると特定する(S109)。
【0054】
円Pを除外した後に残った円21の個数が、“12”ではない場合(S108“No”)、特定部103は、撮像画像90内にマーカー2は含まれないと判断する(S110)。ここで、当フローチャートの処理は終了し、
図4のフローチャートの処理に戻る。
【0055】
このように、本実施形態の誤差算出装置10は、撮像画像90からマーカー2を特定し、特定されたマーカー2内の所定部位の撮像画像90における位置と、撮像画像90上の基準位置と、の差分D1に基づいて、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を算出する。このため、本実施形態の誤差算出装置10によれば、列車1が駅に停車した際の実際の停止位置と、予め定められた目標停止位置との誤差を高精度に把握することができる。
【0056】
さらに、本実施形態の誤差算出装置10は、所定部位の撮像画像90における位置と基準位置との差分D1を、実空間における長さに変換することによって、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を算出する。このため、本実施形態の誤差算出装置10によれば、列車1の停止位置と、目標停止位置との誤差を、原寸大の数値で高精度に把握することができる。
【0057】
さらに、本実施形態の誤差算出装置10は、撮像画像90から複数の円21を抽出し、抽出された円21の撮像画像90におけるX座標の差異とY座標の差異から、各円21が含まれる行と列とを判断し、各列および各行に含まれる複数の円21の数が、予め定められた所定の数と一致する場合に、各列および各行に含まれる複数の円21をマーカー2と特定する。このため、本実施形態の誤差算出装置10によれば、駅のホーム4の汚れや模様等による影響を低減して、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を、高精度に把握することができる。
【0058】
また、本実施形態の誤差算出装置10は、制御装置11から停止信号を受信した場合に、撮像画像90からマーカー2を特定するため、列車1が停止した場合にのみ、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を算出する処理を行う。このため、本実施形態の誤差算出装置10によれば、処理負荷を低減することができる。
【0059】
また、本実施形態の誤差算出装置10は、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を制御装置11に送信することで、制御装置11の自動運転制御に対するフィードバックをする。このため、本実施形態の誤差算出装置10によれば、制御装置11による自動運転制御の精度の向上に寄与することができる。
【0060】
なお、本実施形態では、カメラ3が列車1の先頭車両に設置されているが、マーカー2を撮像可能な位置に設置されれば良く、設置位置はこれに限定されるものではない。また、マーカー2の設置位置は、列車1の目標停止位置付近に限定されるものではなく、停止した列車1の車長の範囲内であれば、ホーム4の後方や、中央付近に設置されても良い。
【0061】
また、本実施形態の誤差算出装置10の取得部102は、列車1が停止しているか否かに関わらずカメラ3から撮像画像90を取得しているが、撮像画像90を取得するタイミングはこれに限定されるものではない。例えば、取得部102は、受信部101が停止信号を受信した場合に、カメラ3から撮像画像90を取得する構成を採用しても良い。
【0062】
また、本実施形態の誤差算出装置10は、撮像画像90にマーカー2が含まれないと判断した場合、誤差が算出可能な誤差の最大値“Xcm”よりも大きいことを制御装置11に送信していたが、送信内容はこれに限定されるものではない。例えば、誤差算出装置10は、単にマーカー2が特定されなかったことを送信しても良い。
【0063】
また、特定部103は、全ての円21のX座標ではなく、円21の最小X座標と最大X座標のみを算出部104に送出しても良い。
【0064】
また、本実施形態の誤差算出装置10は、制御装置11から停止信号を受信する構成を採用していたが、列車1の停止を判断する手法はこれに限定されるものではない。例えば、誤差算出装置10は、列車1の車輪の回転と連動する不図示のタコジェネレータの出力値から列車1の速度を検出することによって、列車1が停止したことを判断しても良い。
【0065】
また、本実施形態の誤差算出装置10の記憶部150が記憶する各情報は、制御装置11や、他の外部システム等から送信される構成を採用しても良い。
【0066】
また、本実施形態では、制御装置11が列車1の運転を制御するとしたが、制御装置11は、TASCのように、運転の一部を支援する装置であっても良い。また、列車1は運転士によって手動で運転される構成を採用しても良い。また、当該構成を採用する場合、列車1の次の停車駅を示す情報は、運転士によって手動で入力されても良いし、他の外部システムから誤差算出装置10に送信されるものとしても良い。
【0067】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、マーカー2は、複数の列と複数の行とが交差するように配列された複数の円であった。本実施形態では、マーカー2を列車1の路線ごとに異なる色をした矩形状とすることで、同一駅に目標停止位置の異なる複数の路線が乗り入れしている場合でも、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を高精度に算出する。
【0068】
本実施形態の誤差算出システムSの全体構成は、第1の実施形態と同様である。また、制御装置11および誤差算出装置10のハードウェア構成は、第1の実施形態と同様である。
【0069】
本実施形態の誤差算出装置10は、第1の実施形態と同様に、受信部101と、取得部102と、特定部103と、算出部104と、送信部105と、記憶部150とを備える。受信部101と、取得部102と、送信部105とは、第1の実施形態と同様の機能を備える。
【0070】
本実施形態の記憶部150は、ホーム位置情報と、マーカー長と、基準位置のX座標と、算出可能な誤差の最大値と、抽出対象の色とを記憶する。ホーム位置情報と、基準位置のX座標と、算出可能な誤差の最大値とは、第1の実施形態と同様である。
【0071】
本実施形態のマーカー長は、矩形状のマーカー2の左端から右端までの長さである。
【0072】
抽出対象の色は、誤差算出装置10が搭載された列車1が走行する路線において、停止位置の誤差の算出に用いられるマーカー2の色である。抽出対象の色は、本実施形態における特定の色の一例である。
【0073】
本実施形態の特定部103は、第1の実施形態の機能を備えた上で、撮像画像から抽出対象の色の画像範囲を抽出することによって、自装置(誤差算出装置10)が搭載された列車1が走行する路線のマーカー2を特定する。
【0074】
図6は、本実施形態にかかるマーカー2を特定する手法の一例を示す図である。
図6に示すように、撮像画像2090には、マーカー2a~2cが表されている。マーカー2a~2cは、矩形状で、かつ列車1の路線ごとに異なる色を有している。マーカー2a~2cの色は特に限定しないが、ホーム4上に存在する可能性が高い黒色、灰色、黄色(点字ブロックの色)等は使用されないものとしても良い。
【0075】
図6の例では、記憶部150に記憶された抽出対象の色と一致する色は、マーカー2bの色であるとする。特定部103は、画像処理の手法を用いて撮像画像2090から抽出対象の色の画像範囲を抽出することによって、マーカー2bを特定する。
【0076】
より詳細には、特定部103は、撮像画像2090から抽出対象の色と一致する画像範囲を抽出する。特定部103は、画像範囲の抽出に使用する色の識別の手法として、RGB色空間を用いても良いし、HSV色空間を用いても良い。そして、特定部103は、抽出対象の色以外の画像範囲を黒色に変換した画像91を生成する。本実施形態では、より高精度にマーカー2bの画像範囲を特定するために、特定部103は、さらに公知の2値化やノイズ除去等の画像処理を行う。そして、特定部103は、画像処理後の画像93から、矩形状のマーカー2bを特定する。
【0077】
特定部103は、特定したマーカー2bの最小X座標と最大X座標とを算出部104に送出する。
【0078】
本実施形態の算出部104は、第1の実施形態と同様の機能を備えた上で、特定部103から取得したマーカー2bの最小X座標“x1”と最大X座標“x2”とから、マーカー2bの幅方向の中心のX座標“x3”を求める。そして、算出部104は、記憶部150に記憶された基準位置のX座標“x4”と、X座標“x3”との差分D1を実空間における長さに変換することによって、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を算出する。
【0079】
次に、以上のように構成された本実施形態の誤差算出装置10で実行される処理について説明する。本実施形態の誤差算出処理の流れは、
図4で説明した第1の実施形態の処理の流れと同様であるが、マーカー特定処理の流れは、第1の実施形態と異なる。
【0080】
図7は、本実施形態にかかるマーカー特定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0081】
特定部103は、公知の画像処理の手法によって、撮像画像2090から、記憶部150に記憶された抽出対象の色の画像範囲を抽出する(S201)。
【0082】
S201の画像処理後の画像91に対して、特定部103は抽出精度を高めるための画像処理を行う。例えば、
図6に示す画像91では、抽出対象の色ではないマーカー2cの一部が混入している。特定部103は、画像91に対して、特定閾値による2値化や大津の2値化(判別分析法)等の公知技術を用いて、2値化処理を行う(S202)。そして、特定部103は、2値化処理後の画像92に対して、公知の膨張処理や収縮処理等の技術を用いて、ノイズ除去を行う(S203)。
【0083】
特定部103は、ノイズ除去の画像処理後の画像93における矩形形状の有無を判断する(S204)。より詳細には、特定部103は、画像93から、白画素(白色の画素)が横に連続して第3の閾値以上存在する画像範囲を検出する。画像93に白画素が横に連続してそれぞれ一定数以上存在する画像範囲が存在する場合、特定部103は、画像処理後の画像93に矩形があると判断する(S204“Yes”)。この場合、特定部103は、画像処理後の画像93から検出した矩形を、マーカー2bと特定する(S205)。第3の閾値は、予め定められているものとする。
【0084】
また、画像処理後の画像93に白画素が横に連続して第3の閾値以上存在する画像範囲が存在しない場合、特定部103は、画像処理後の画像93に矩形がないと判断する(S204“No”)。この場合、特定部103は、撮像画像2090内にマーカー2bが含まれないと判断する(S206)。ここで、当フローチャートの処理は終了し、誤差算出処理に戻る。
【0085】
このように、本実施形態の誤差算出装置10は、撮像画像2090から特定の色の画像範囲を抽出することによって、自装置が搭載された列車1が走行する路線の矩形状のマーカー2bを特定する。このため、本実施形態の誤差算出装置10によれば、同一駅に目標停止位置の異なる複数の路線が乗り入れしている場合でも、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を高精度に算出することができる。
【0086】
また、本実施形態では、マーカー2が矩形状であるため、誤差算出装置10は、画像処理後の画像93からマーカー2bを容易に特定することができる。
【0087】
なお、本実施形態では、誤差算出装置10の特定部103は、白画素が横に連続する長さを条件として矩形を検出していたが、白画素が縦に連続する長さをさらに条件として追加しても良い。また、マーカー2として、他の形状を採用しても良い。
【0088】
また、本実施形態では、誤差算出装置10の記憶部150は、自装置が搭載された列車1の路線の抽出対象の色のみを記憶するのではなく、各路線と、各路線の列車1の停止位置の誤差の算出に用いられるマーカー2の色とを対応付けて記憶する構成を採用しても良い。また、抽出対象の色は、制御装置11に保存されて、制御装置11から誤差算出装置10に送信される構成を採用しても良い。
【0089】
(変形例1)
上述の第1の実施形態および第2の実施形態では、マーカー2は、駅のホーム4の床に設置されていたが、マーカー2の設置位置はこれに限定されるものではない。
【0090】
図8は、本変形例にかかるマーカー2の設置位置の一例を示す図である。
図8に示すように、本変形例のマーカー2は、ホーム4の柱41に、線路側(列車1側)を向いて設置される。マーカー2は、柱41に塗料等で記載されても良いし、マーカー2が表示された板やシート等が柱41に貼附されても良い。また、マーカー2は、ホーム4の壁に、線路側を向いて設置されても良い。本変形例では、第1の実施形態と第2の実施形態のいずれのマーカー2を採用しても良い。
【0091】
また、本変形例では、カメラ3は、ホーム4の柱41または壁等に設置されたマーカー2と向き合うように、列車1の車両の上部に横向きの撮像角度で設置される。
【0092】
本変形例のようにマーカー2を設置することで、マーカー2が列車1の乗客等に踏まれたり、雨等によってマーカー2が劣化することを低減することができる。
【0093】
(変形例2)
また、ホームドアが設置された駅においては、マーカー2をホームドアの線路側に設置しても良い。
図9は、本変形例にかかるマーカー2の設置位置の一例を示す図である。本変形例のマーカー2は、ホーム4の端に設置されたホームドア42の線路側の側面に、列車1に面して設置される。本変形例では、第1の実施形態と第2の実施形態のいずれのマーカー2を採用しても良い。
【0094】
また、本変形例では、カメラ3は、ホームドア42に設置されたマーカー2と向き合うように、列車1の車両の下部に横向きの撮像角度で設置される。
【0095】
本変形例のようにマーカー2を設置することで、マーカー2とカメラ3との間が乗客や障害物等によって遮蔽されることを低減することができ、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を、より高精度に把握することができる。
【0096】
(変形例3)
また、マーカー2の設置位置は、ホーム4の上に限定されるものではなく、ホーム4の下でも良い。
図10は、本変形例にかかるマーカー2の設置位置の一例を示す図である。本変形例のマーカー2は、ホーム4の床下の側面に、列車1に面して設置される。本変形例では、第1の実施形態と第2の実施形態のいずれのマーカー2を採用しても良い。
【0097】
また、本変形例では、カメラ3は、ホーム4の床下の側面に設置されたマーカー2と向き合うように、変形例2のカメラ3の設置位置よりもさらに下方に、横向きの撮像角度で設置される。
【0098】
本変形例のようにマーカー2を設置することで、乗客の通行や天候等によるマーカー2の劣化を低減すると共に、マーカー2とカメラ3との間が乗客や障害物等によって遮蔽されることを低減することができる。さらに、本変形例のマーカー2の設置位置は管理者等以外が接触することが困難であるため、マーカー2に対するいたずら等を防止することができる。
【0099】
(変形例4)
また、マーカー2は、ホーム4ではなく、線路上に設置されても良い。
図11は、本変形例にかかるマーカー2の設置位置の一例を示す図である。本変形例のマーカー2は、線路のレール6a,6bの間等に設置される。本変形例では、第1の実施形態と第2の実施形態のいずれのマーカー2を採用しても良い。
【0100】
また、本変形例の列車1には、1台のカメラ3cが設置される。カメラ3cは列車1の底部に、マーカー2と向き合うように下向きの撮像角度で設置される。
【0101】
本変形例のようにマーカー2を設置することで、マーカー2とカメラ3との間が乗客や障害物等によって遮蔽されることを低減することができる。また、本変形例のマーカー2の設置位置は管理者等以外が接触することが困難であるため、マーカー2に対するいたずら等を防止することができる。
【0102】
(第3の実施形態)
第1の実施形態では、駅のホーム4には1つのマーカー2が設置されていた。本実施形態では、複数のマーカーが、それぞれ異なる角度で設置される。
【0103】
図12は、本実施形態にかかる誤差算出システムSの全体構成の一例を示す図である。本実施形態の誤差算出システムSは、複数のマーカー2n,2mと、誤差算出装置7010と、カメラ3と、制御装置11と、を備える。
【0104】
制御装置11は、第1の実施形態と同様の機能を備える。また、本実施形態のカメラ3は、マーカー2n,2mを撮像可能なように、列車1の車両の下部に、横向きの撮像角度で設置される。カメラ3は、第1の実施形態と同様の機能を備える。
【0105】
マーカー2n,2mは、駅のホーム4にそれぞれ異なる角度で設置される。以下、マーカー2n,2mを特に区別しない場合には、単にマーカー2という。より詳細には、マーカー2は、カメラ3に対して、それぞれ異なる角度で撮像されるように設置される。例えば、マーカー2は、ホーム4の床にそれぞれ異なる角度で斜めに設置されたプレート7a,7bに表示される。当該設置方法は一例であり、これに限定されるものではない。なお、マーカー2の数は複数であれば良く、2台に限定されるものではない。
【0106】
図13は、本実施形態にかかるマーカー2の一例を示す側面図である。このようにマーカー2nとマーカー2mとが異なる角度で設置されることにより、いずれか一方が光の反射等によって撮像画像から特定が困難な場合でも、もう一方が撮像画像から特定できる可能性が高くなる。マーカー2の設置角度は、
図13に示す例に限定されるものではない。
【0107】
図14は、本実施形態にかかるマーカー2が撮像された撮像画像7090の一例を示す図である。本実施形態のマーカー2nは、2本の直線が交差した形状である。また、マーカー2mは、楕円形状である。マーカー2の形状は、これに限定されるものではない。
【0108】
本実施形態の誤差算出装置7010は、第1の実施形態と同様に、受信部101と、取得部102と、特定部103と、算出部104と、送信部105と、記憶部150とを備える。受信部101と、取得部102と、送信部105とは、第1の実施形態と同様の機能を備える。
【0109】
本実施形態の記憶部150は、ホーム位置情報と、マーカー長と、基準位置のX座標と、算出可能な誤差の最大値と、オフセット用パラメータとを記憶する。ホーム位置情報と、算出可能な誤差の最大値とは、第1の実施形態と同様である。
【0110】
本実施形態のマーカー長は、マーカー2nの幅方向の中心と、マーカー2mの幅方向の中心との間の幅方向の長さである。マーカー2nの幅方向の中心は、2本の直線が交差する位置である。また、マーカー2mの幅方向の中心は、楕円形状の中心である。
【0111】
本実施形態の基準位置のX座標は、第1の実施形態と同様に、列車1が目標停止位置に停止した際に予め撮像された撮像画像におけるマーカー2の幅方向の中心の座標である。本実施形態の基準位置は、列車1が目標停止位置に停止した場合に撮像された撮像画像7090において、複数のマーカー2全体の幅方向の中心となる位置である。本実施形態におけるマーカー2全体の幅方向の中心は、撮像画像7090におけるマーカー2nの幅方向の中心と、マーカー2mの幅方向の中心との中間とする。マーカー2全体の幅方向の中心は、本実施形態における所定部位の一例である。
【0112】
オフセット用パラメータは、撮像画像7090上のマーカー2nの幅方向の中心または撮像画像7090上のマーカー2mの幅方向の中心を、マーカー2全体の幅方向の中心に補正するためのパラメータである。より詳細には、オフセット用パラメータは、マーカー2nの幅方向の中心またはマーカー2mの幅方向の中心から、マーカー2全体の幅方向の中心との間の撮像画像7090上の距離の推定値である。撮像画像7090上の距離は、例えばピクセル数で表される。
【0113】
本実施形態の特定部103は、第1の実施形態の機能を備えた上で、撮像画像7090から、公知のテンプレートマッチング等の技術を用いてマーカー2を特定する。より詳細には、特定部103は、マーカー2nまたはマーカー2mの少なくともいずれか一方を特定した場合、撮像画像7090からマーカー2を特定したと判断する。特定部103は、特定したマーカー2nまたはマーカー2mの幅方向の中心のX座標を、算出部104に送出する。
【0114】
本実施形態の算出部104は、第1の実施形態の機能を備えた上で、特定部103がマーカー2を特定した場合、特定された1つまたは2つのマーカー2の幅方向の中心の位置から、マーカー2全体の幅方向の中心のX座標を求める。
【0115】
また、算出部104は、撮像画像7090上におけるマーカー2の幅方向の長さと、記憶部150に保存されたマーカー長とを比較して、撮像画像7090上の長さを実空間における長さに変換するための変換パラメータを求める。そして、算出部104は、記憶部150に記憶された基準位置のX座標“x4”と、マーカー2全体の幅方向の中心のX座標“x73”との差分D7を実空間における長さに変換することによって、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を算出する。
【0116】
次に、以上のように構成された本実施形態の誤差算出装置7010で実行される誤差算出処理について説明する。
図15は、本実施形態にかかる誤差算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0117】
S1の次の停車駅を示す情報の受信から、S4の停止信号の受信の処理までは、第1の実施形態の処理と同様である。
【0118】
本実施形態の特定部103は、受信部101が停止信号を受信した場合に(S4“Yes”)、公知の手法で撮像画像7090からマーカー2を特定する(S71)。
【0119】
本実施形態の特定部103は、撮像画像7090からマーカー2nまたはマーカー2mの少なくとも一方を特定した場合、撮像画像7090からマーカー2を特定したと判断する(S6“Yes”)。
【0120】
特定部103が特定したマーカー2の数が“2”である場合(S72“Yes”)、換言すれば、特定部103がマーカー2n,2mの両方を特定した場合、算出部104は、特定されたマーカー2nの幅方向の中心のX座標“x71”と、特定されたマーカー2mの幅方向の中心のX座標“x72”との幅方向の中心のX座標“x73”を求める(S73)。
【0121】
また、特定部103が撮像画像7090から特定したマーカー2の数が“1”である場合(S72“No”)、算出部104は、マーカー2nまたはマーカー2mの幅方向の中心のX座標から、記憶部150に保存されたオフセット用パラメータを加算または減算することによってマーカー2全体の幅方向の中心のX座標“x73”を求める(S74)。
【0122】
そして、算出部104は、S73またはS74の処理で求めたマーカー2全体の幅方向の中心のX座標“x73”と、基準位置のX座標“x4”との差分D7を算出する(S75)。
【0123】
S8の変換の処理と、S9の送信の処理とは、第1の実施形態と同様である。また、特定部103が撮像画像7090からマーカー2を特定しない場合(S6“No”)のS10の送信の処理も、第1の実施形態と同様である。
【0124】
このように、本実施形態の誤差算出装置7010は、異なる角度で設置された複数のマーカー2のうちの1つ以上を撮像画像7090から特定した場合、特定したマーカー2の中心の位置から、所定部位の位置を求める。このため、本実施形態の誤差算出装置7010によれば、照明条件等によってマーカー2が撮像画像7090から特定され難い場合でも、いずれか1つのマーカー2を撮像画像7090から特定することができれば、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を算出することができる。このため、本実施形態の誤差算出装置7010によれば、照明条件等の影響を低減して、列車1の停止位置と目標停止位置との誤差を、高精度に把握することができる。
【0125】
なお、本実施形態のマーカー2n,2mの形状は一例であり、第1の実施形態または第2の実施形態のマーカー2を本実施形態に適用しても良い。また、第1の実施形態のマーカー2と、第2の実施形態のマーカー2とを組み合わせて本実施形態に適用しても良い。
【0126】
以上説明したとおり、第1から第3の実施形態によれば、列車1の停止位置と、目標停止位置との誤差を高精度に把握することができる。
【0127】
本実施形態の誤差算出装置10で実行される誤差算出プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0128】
また、本実施形態の誤差算出装置10で実行される誤差算出プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態の誤差算出装置10で実行される誤差算出プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、本実施形態の誤差算出プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0129】
本実施形態の誤差算出装置10で実行される誤差算出プログラムは、上述した各部(受信部、取得部、特定部、算出部、送信部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体から誤差算出プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、受信部、取得部、特定部、算出部、送信部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0131】
1 列車
2,2a~2c,2n,2m マーカー
3,3a,3b カメラ
4 ホーム
10,7010 誤差算出装置
11 制御装置
21,21a~21l 円
90,2090,7090 撮像画像
91,92,93 画像
101 受信部
102 取得部
103 特定部
104 算出部
105 送信部
150 記憶部
D1,D7 差分
S 誤差算出システム