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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】被覆構造体
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20220318BHJP
【FI】
E04B1/94 D
E04B1/94 U
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017233381
(22)【出願日】2017-12-05
(65)【公開番号】P2019100113
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】田中 康典
(72)【発明者】
【氏名】軽賀 英人
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-072649(JP,A)
【文献】特開平07-276552(JP,A)
【文献】特開平04-281937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造材の下方に固定されたH型またはI型の鉄骨と、熱発泡性シートを有する被覆構造体であって、
前記鉄骨の上フランジエッジ部には、熱発泡性被覆材が付着しており、
前記熱発泡性シートは、前記鉄骨の周囲を覆う様に設けられ、前記上フランジエッジ部において前記熱発泡性被覆材の表面を覆うように設けられ、前記構造材及び/または前記鉄骨の上フランジエッジ部に、固定部材で固定されていることを特徴とする被覆構造体。
【請求項2】
前記固定部材は、50~300mmの間隔で設置されていることを特徴とする請求項1に記載の被覆構造体。
【請求項3】
前記熱発泡性被覆材は、シート状、テープ状、または塗材のいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の被覆構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な被覆構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物、土木構築物等の構造物が火災等によって高温に晒された場合には、柱、梁等を構成する鉄骨の物理的強度が急激に低下するという問題がある。これに対し、鉄骨に耐熱保護性を有する被覆材を被覆し、火災時の鉄骨の温度上昇を遅延させて、鉄骨の物理的強度の低下を抑制する被覆構造が知られている。
【0003】
上記被覆構造としては、例えば、セメント等の無機質バインダーに、無機質繊維状物質、軽量骨材、結晶水含有無機質粉体等を適宜混合した混合組成物を鉄骨表面に厚付けした湿式被覆構造が知られている。また、上記湿式被覆構造に代えて、無機繊維混合マット、ロックウール、耐火ボード、熱発泡性シート等の乾式材料による乾式被覆構造も知られている。乾式被覆構造は、湿式被覆構造に比べて施工性、仕上がり性に優れるため好適である。
【0004】
乾式被覆構造において、鉄骨梁に乾式材料(被覆材)を固定する方法としては、溶接ピン、ビス、タッピンネジ、タッカー等の固定部材によって固定する手法が多く採用されている。例えば、特許文献1には、鉄骨被覆用シートを溶接ピンにより固定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-31797号公報
【0006】
このように乾式被覆構造では、施工時に溶接等による固定化作業が必要となる場合が多い。しかし、これらの固定化作業は、多くの手間がかかるため、作業効率の点からも、固定部材の設置間隔はできるだけ大きく設定したいという要望がある。しかしながら、固定部材の設置間隔を大きくしすぎると所望の耐熱保護性が得られない場合があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、鉄骨構造物を構成するH型またはI型の鉄骨(以下、単に「鉄骨」ともいう)と、その鉄骨を覆う様に設けられた乾式材料による被覆構造体に関し、安定した耐熱保護性を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、鉄骨の上フランジエッジ部を熱発泡性被覆材で被覆し、さらに鉄骨の周囲を覆う様に熱発泡性シートを固定した被覆構造体に想到し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の被覆構造体は、下記の特徴を有するものである。
1.構造材の下方に固定されたH型またはI型の鉄骨と、熱発泡性シートを有する被覆構造体であって、
前記鉄骨の上フランジエッジ部には、熱発泡性被覆材が付着しており、
前記熱発泡性シートは、前記鉄骨の周囲を覆う様に設けられ、前記上フランジエッジ部において前記熱発泡性被覆材の表面を覆うように設けられ、前記構造材及び/または前記鉄骨の上フランジエッジ部に、固定部材で固定されていることを特徴とする被覆構造体。
2.前記固定部材は、50~300mmの間隔で設置されていることを特徴とする1.に記載の被覆構造体。
3.前記熱発泡性被覆材は、シート状、テープ状、または塗材のいずれかであることを特徴とする1.または2.に記載の被覆構造体。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、構造材の下方に固定されたH型またはI型の鉄骨が、火災等によって高温に晒された場合に、安定した耐熱保護性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明被覆構造体の一例を示す(I)断面図、(II)斜視図である。
図2】本発明被覆構造体の一例を示す(I)断面図、(II)斜視図である。
図3】本発明で用いる鉄骨の一例を示す断面図である。
図4】本発明被覆構造体の一例を示す側面図である。
図5】本発明被覆構造体の一例を示す側面図である。
図6】本発明被覆構造体の一例を示す側面図である。
図7】本発明で用いる鉄骨の一例を示す断面図である。
図8】本発明被覆構造体の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0013】
本発明の被覆構造体の一例を図1に示す。
【0014】
図1は、本発明被覆構造体の一例を示す(I)断面図、(II)斜視図である。図1では、構造材1の下方に設けられたH型鉄骨2と、熱発泡性シート3とを有し、H型鉄骨2の上フランジ2aのエッジ部2dには、熱発泡性被覆材4が付着しており、構造材1に接した面を除くH型鉄骨2の周囲を、空気層5を介して熱発泡性シート3が覆う様に設けられ、熱発泡性シート3の両端部が構造材1に固定部材6によって固定されている。上フランジ2aのエッジ部2dにおいて、熱発泡性シート3は、熱発泡性被覆材4の表面を覆うように設けられる。また、熱発泡性シート3と熱発泡性被覆材4は、空気層を介して設けられても、接するように設けられてもよく、さらには接着剤等で接着することもできる。
【0015】
図2は、本発明被覆構造体の一例を示す(I)断面図、(II)斜視図である。図2では、構造材1の下方に設けられたH型鉄骨2と、熱発泡性シート3とを有し、H型鉄骨2の上フランジ2aのエッジ部2dには、熱発泡性被覆材4が付着しており、構造材1に接した面を除くH型鉄骨2の周囲を、空気層5を介して熱発泡性シート3が覆う様に設けられ、熱発泡性シート3の両端部がH型鉄骨2の上フランジ2aのエッジ部2dに固定部材6によって固定されている。上フランジ2aのエッジ部2dにおいて、熱発泡性シート3は、熱発泡性被覆材4の表面を覆うように設けられ、熱発泡性被覆材4と共に固定部材6で固定される。この際、熱発泡性シート3と熱発泡性被覆材4は、固定部材6によって固定される固定部以外の領域は、空気層を介して設けられても、接するように設けられてもよく、さらには接着剤等で接着することもできる。
【0016】
図1図2に示す本発明構造被覆体が、火災等によって高温に晒された場合、H型鉄骨2の周囲を覆う様に設けられた熱発泡性シート3は、発泡し炭化断熱層を形成する。この炭化断熱層を形成する過程において、熱発泡性シート3は固定部材の間で撓み、構造材1と熱発泡性シート3との隙間が生じるおそれがある。そのような場合であっても、本発明では、H型鉄骨2の上フランジエッジ部2dに付着した熱発泡性被覆材4が発泡して、構造材1と熱発泡性シート3との隙間を充填するように炭化断熱層を形成することができ、鉄骨の上フランジのエッジ部の耐熱保護性を高め、安定した耐熱保護性を得ることができる。さらに、上記効果によって、固定部材の間隔を大きく設定することが可能となり、固定化作業を効率的に行うことができる。
【0017】
本発明の構造材1としては、鉄骨が設置可能な公知のものであればよく、建物の床や天井等が挙げられ、好ましくは耐熱性を有するもの、例えば、ALC板、PC板、デッキプレート、デッキプレートコンクリート等が挙げられる。
【0018】
図3に、本発明で用いるH型鉄骨の断面図を示す。本発明のH型鉄骨2は、上記構造材1を支える梁として機能するものであり、上記構造材1と直接または接続部材等を介してボルト、溶接等の固定手段により固定されるものである。本発明のH型鉄骨2としては、図3のように断面がH字型であり、上フランジ2aと下フランジ2bを板状のウェブ2cにより連結して形成された態様のものが使用される。H型鉄骨は、フランジ幅が広く、フランジ内外面が平行なものである。また、本発明において、上フランジのエッジ部2dとは、上フランジの両端部付近のことをいう。なお、本発明では、構造材1に接する方を上フランジ、その反対側を下フランジという。
【0019】
本発明の熱発泡性シート3は、火災等により周囲温度が上昇してシート温度が所定の発泡温度(好ましくは180℃以上、より好ましくは200~400℃)に達すると発泡し、その温度領域において炭化断熱層を形成するものである。熱発泡性シート3としては、構成成分として樹脂成分、難燃剤、発泡剤、炭化剤、及び充填剤を含有するものが好適である。このうち、樹脂成分としては、例えばアクリル樹脂、アクリルスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、難燃剤としては、例えばポリリン酸アンモニウム等、発泡剤としては、例えばメラミン、ジシアンジアミド、アゾジカーボンアミド等、炭化剤としては、例えばペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等、充填剤としては、例えば二酸化チタン、炭酸カルシウム、無機繊維等が挙げられる。
【0020】
各成分の配合比率は、固形分換算で、樹脂成分100重量部に対して、難燃剤200~600重量部、発泡剤40~150重量部、炭化剤40~150重量部、及び充填剤50~160重量部であることが好ましい。
熱発泡性シート3の厚みは、適用部位等により適宜設定すれば良いが、好ましくは0.2~10mm程度、より好ましく0.3~6mm程度である。
【0021】
また、熱発泡性シート3には、上記構成成分に加え、必要に応じ、各種添加剤を含むこともできる。添加剤としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく、例えば、顔料、繊維、湿潤剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、希釈溶媒等が挙げられる。
【0022】
さらに、本発明の熱発泡性シート3は、上記構成成分を含むシートのみから構成されていてもよいが、裏面(鉄骨側)に繊維質シートが積層されていてもよい。このような繊維質シートとしては、例えば、有機繊維及び/または無機繊維等を含む公知のシートを使用することができる。
【0023】
本発明の熱発泡性被覆材4は、火災等により周囲温度が上昇して温度が所定の発泡温度(好ましくは180℃以上、より好ましくは200~400℃)に達すると発泡し、その温度領域において炭化断熱層を形成するものである。熱発泡性被覆材4の構成成分としては、樹脂成分、難燃剤、発泡剤、炭化剤、充填剤、及び必要に応じ各種添加剤等を含有するものが好適であり、これらの各成分は、上記熱発泡性シート3と同様のものを使用できる。またその態様としては、鉄骨の上フランジエッジ部に付着可能なものであればよく、シート状、テープ状等の乾式被覆材、または塗材等の湿式被覆材いずれの態様のものも使用できるが、本発明では、施工性、仕上がり性に優れる乾式被覆材が好適である。
【0024】
シート状の熱発泡性被覆材4としては、上記構成成分を含むシートであればよく、例えば、上記熱発泡性シート3と同様のものも使用でき、その厚みは、適宜設定すれば良いが、好ましくは0.2~10mm(より好ましく0.3~6mm)程度である。シート状の熱発泡性被覆材4は、鉄骨の上フランジエッジ部に接着剤を介して付着されることが好ましい。接着剤としては、特に限定されないが、アクリル樹脂等の合成樹脂を結合剤とする有機系接着剤が好適である。
【0025】
テープ状の熱発泡性被覆材4(以下、単に「熱発泡性テープ」ともいう。)としては、上記構成成分を含む熱発泡層の裏面に粘着層が積層されたものが使用でき、例えば、上記熱発泡性シート3(熱発泡層)の裏面に粘着層が積層されたもの等が使用できる。熱発泡層の厚みは、適宜設定すれば良いが、好ましくは0.2~10mm(より好ましく0.3~6mm)程度である。粘着層としては、特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂等の合成樹脂を結合剤とする有機系接着剤が好適である。さらに、熱発泡性テープは、粘着層を保護する離型紙が積層されたものが好ましく、このような態様であれば施工時に離型紙を剥離して使用することができる。離型紙としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0026】
本発明の固定部材6は、特に限定されないが、例えば、ワッシャー(ビス)、タッカー、溶接ピン、ボルト、タッピングねじ等の止め具が使用できる。また、これらの材質としては、金属製等の不燃性のものが好ましい。
【0027】
本発明の被覆構造体は、例えば、以下の方法によって形成することができる。
(1)構造材1の下方に固定されたH型鉄骨2の上フランジ2aのエッジ部2d長手方向(L)に、熱発泡性被覆材4を付着する工程
(2)次いでH型鉄骨2の周囲を熱発泡性シート3が覆う様に被覆し、熱発泡性シート3の端部を構造材1及び/または前記鉄骨の上フランジエッジ2dに固定部材6で固定する工程
【0028】
上記(1)において、熱発泡性被覆材4は、H型鉄骨2の上フランジ2aのエッジ部2d長手方向(L)において、少なくとも熱発泡性シート3が固定部材6によって固定される固定部以外の領域に付着されていればよいが、エッジ部2d長手方向(L)全体を被覆するように付着されていることが好ましい。これにより、火災等によって高温に晒された場合、熱発泡性シート3が撓んだとしても熱発泡性被覆材4が発泡して、構造材1と熱発泡性シート3との隙間を充填するように炭化断熱層を形成することができ、鉄骨の上フランジのエッジ部の耐熱保護性を高め、安定した耐熱保護性を得ることができる。
【0029】
熱発泡性被覆材4を付着する方法としては、熱発泡性被覆材4が塗材の場合には、例えば、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用して塗装すればよい。熱発泡性被覆材4がシート状の場合には、接着剤を介して貼着すればよく、テープ状の場合には、離型紙を剥離して貼着すればよい。
【0030】
上記(2)において、熱発泡性シート3の端部を構造材1及び/または前記鉄骨の上フランジエッジ2dに固定部材6で固定する場合、固定部材6の間隔Xは、熱発泡性シート3を保持できれば特に限定されず、また固定部材6の種類によって適宜設定すればよいが、好ましくは50~300mm(より好ましくは80~200mm)の間隔で設置する。固定部材6の間隔Xが50mm以上であれば、作業効率の点で有利であり、300mm以下であれば、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0031】
また、H型鉄骨2の長手方向(L)に複数の熱発泡性シート3を設ける場合は、図4に示すように、該熱発泡性シート3同士は重なり部を有するように被覆(図4(I))しても、突き合わせて被覆(図4(II))してもよい。また、熱発泡性シート3同士重なり部Aを有するように被覆する場合、重なり部Aの熱発泡性シート3同士は固定されていることが好ましく、例えば、重なり部Aの内側の熱発泡性シート31表面と外側の熱発泡性シート32裏面を接着剤等で固定(図5(I))、及び/または内側の熱発泡性シート31の表面に外側の熱発泡性シート32の端部を上記熱発泡性テープ等で貼着して固定(図5(II))することが好ましい。また、熱発泡性シート3同士を突き合わせて被覆する場合、突き合わせ部Bには、上記熱発泡性テープを貼着することが好ましい(図6)。さらに、本発明の被覆構造では、上記のようにH型鉄骨2の下フランジ2bを覆う熱発泡性シート3が接着剤を介して固定されてもよい。
【0032】
本発明の被覆構造体は、熱発泡性シート3を2枚以上積層して使用することができる。熱発泡性シート3を2枚以上積層する場合は、予め接着剤等で積層した熱発泡性シートを用いることもできるが、上記工程(2)を繰り返し行えばよい。
【0033】
さらに、本発明の被覆構造体は、必要に応じて、上記熱発泡性シート3の上に保護層を有することもできる。保護層としては、例えば、上塗材、シート(またはフィルム)材料等が使用できる、これらは透明層であっても着色層(模様層)であってもよい。具体的に、上塗材は、公知のコーティング材を塗付することによって形成することができ、例えばアクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリルシリコン樹脂系、フッ素樹脂系等のコーティング材を用いることができる。上塗材の塗付は、公知の塗付方法によれば良く、例えば、スプレー、ローラー、刷毛等の塗装器具を使用することができる。また、シート(またはフィルム)材料としては、例えば、公知の各種樹脂シートを貼着することができる。
【0034】
本発明は、上述のH型鉄骨同様にI型鉄骨にも適用可能である。
【0035】
図7は、本発明で用いるI型鉄骨の断面図を示す。本発明のI型鉄骨21としては、断面がI字型であり、上フランジ21aと下フランジ21bを板状のウェブ21cにより連結して形成された態様のものが使用される。I型鉄骨21は、通常、フランジ内側に勾配がつけられている。
【0036】
図7では、構造材1に設けられたI型鉄骨21と、I型鉄骨21との上フランジ21aのエッジ部21dには、熱発泡性被覆材4が付着されており、構造材1に接した面を除くH型鉄骨21の周囲を、空気層5を介して熱発泡性シート3が覆う様に設けられ、熱発泡性シート3の両端部が構造材1に固定部材6によって固定されている。
【0037】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0038】
(熱発泡性シート)
熱可塑性樹脂(アクリル樹脂)100重量部、メラミン90重量部、ジペンタエリスリトール90重量部、ポリリン酸アンモニウム320重量部、酸化チタン100重量部を主成分とする混合物を温度120℃に設定した加圧ニーダーで混練して熱発泡性シート用混練物を調製後、ガラス繊維シートに混練物を積層し圧延ローラーによってシート状に加工し、膜厚1.5mmの熱発泡性シート(450mm×1200mm)を作製した。
【0039】
熱発泡性テープ
上記熱発泡性シートと同様にして、膜厚1mmの熱発泡性シート(20mm×1200mm)を作製した。次いで、一方の面にアクリル系粘着剤塗付し、離型紙で保護し熱発泡性テープを作製した。
【0040】
(試験例1)
図2に示すように構造材(床板:ALC板)にH型鉄骨(H400×200×8×13mm、長さ1200mm)を設置した。H型鉄骨の上フランジのエッジ部長手方向(L)に、熱発泡性テープ4を付着した。次いで、図2に準じて、作製した熱発泡性シート3のガラス繊維シート側がH型鉄骨側となるように熱発泡性シート3の一方の端部を固定部材(溶接スタッドピン:固定間隔X=120mm)で溶接して固定し、さらに、H型鉄骨の周囲を熱発泡性シート3が覆う様に巻きつけ(熱発泡性シート同士の継ぎ目部分の重なり幅20mm)、熱発泡性シートのもう一方の端部も同様にして固定部材で固定したものを試験体とした。
作製した試験体につき、ISO834の標準加熱曲線に準じて1時間加熱試験を行った。その結果、ほぼ均一な炭化断熱層が形成され、さらにH型鉄骨の上フランジ部において構造材と熱発泡性シートとの隙間なく炭化断熱層を形成され、良好な耐火性能を示した。
【0041】
(試験例2)
試験例1において、熱発泡性シートを突き合わせて被覆し、図6に示すようにその突き合わせ部に熱発泡性テープを貼着した以外は、試験例1と同様にして試験体を作成した。
作製した試験体につき、ISO834の標準加熱曲線に準じて1時間加熱試験を行った。その結果、ほぼ均一な炭化断熱層が形成され、さらにH型鉄骨の上フランジ部において構造材と熱発泡性シートとの隙間なく炭化断熱層を形成され、良好な耐火性能を示した。
【符号の説明】
【0042】
1.構造材(床材)
2.H型鉄骨
2a.上フランジ
2b.下フランジ
2c.ウェブ
2d.エッジ部
21.I型鉄骨
21a.上フランジ
21b.下フランジ
21c.ウェブ
21d.エッジ部
3.熱発泡性シート
4.熱発泡性被覆材
4’熱発泡性テープ
5.空気層
6.固定部材
A.重なり部
B.突き合わせ部
X.固定部材の間隔
L.長手方向


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8