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特許7042605LIDARシステムにより3Dシーンを取得する方法及びLIDARシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】LIDARシステムにより3Dシーンを取得する方法及びLIDARシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/89 20200101AFI20220318BHJP
   G01S 17/10 20200101ALI20220318BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
G01S17/89
G01S17/10
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017240176
(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公開番号】P2018136309
(43)【公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-11-10
(31)【優先権主張番号】10 2016 124 594.1
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517439867
【氏名又は名称】イェーナ-オプトロニク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン,コルブ
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-059302(JP,A)
【文献】特開2000-056018(JP,A)
【文献】国際公開第2011/138895(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0023612(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LIDARシステムにより3Dシーンを取得する方法であって、LIDARシステムは、送信機及び受信機に加えて、前記送信機と前記3Dシーンとの間に配置されるピボット運動可能なミラー配置を含み、前記送信機はレーザー光源として動作し、受信機は、照射光学系と、表面上に分散される光センサーとを有するマトリクス・センサーとして構成され、3Dシーンの点群のピクセルにおいて空間的に決定される方法で反射される光点は、前記送信機の光パルスと前記ミラー配置のピボット運動とにより生成され、これらの各光点から入力信号が前記光センサーにより取得され、前記光点の前記マトリクス・センサーまでの距離は、光伝搬時間の測定に基づいて決定され、
複数の光センサーを含む光点のずれた焦点の入力信号が、前記照射光学系により表示され、
前記複数の光センサーにより取得される個々の光点の光強度を互いに比較することによって、隣接する光センサーの前記入力信号が互いに比較されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記3Dシーン中の個々の1つの光点の空間的な指定は、前記ミラー配置に関する前記光パルスの放射角度に基づいて決定される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放射角度は、前記ミラー配置の偏向デバイスの位置に基づいて決定される、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
複数の光センサーにより取得される個々の光点の伝搬時間の差は、互いに比較され評価される、ことを特徴とする請求項1ないし3のうちの何れか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記LIDARシステムの時間測定は、前記伝搬時間の差の比較によって補正される、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記光センサーの横方向の分解能とは独立して、前記光センサーの光強度から、最大光強度の中心点が決定される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記光センサーのノイズは、前記光センサーに影響を及ぼす光点の光強度によって軽減される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
光パルスを放出する送信機と、前記光パルスの放射角度を取得及び設定する偏向デバイスを有するピボット運動可能なミラー配置と、マトリクス・センサーとして構成され且つ表面上で横向きに分散した複数の光センサーを有する受信機と、照射光学系とを有し、前記照射光学系は、点群のピクセルにより反射される前記光点を、焦点がずれた形式で前記マトリクス・センサーの表面に投影する、ことを特徴とする請求項1ないし7のうちの何れか1項に記載の方法を実現するLIDARシステム。
【請求項9】
焦点がずれる程度は調節可能である、ことを特徴とする請求項8に記載のLIDARシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、LIDARシステムにより3Dシーンを取得する方法に関連し、LIDARシステムは、送信機及び受信機に加えて、送信機と3Dシーンとの間に配置されるピボット運動可能なミラー配置を含み、送信機はレーザー光源として動作し、受信機は、照射光学系と、表面上に分散される光センサーとを有するマトリクス・センサーとして構成され、3Dシーンの雲状点群(a point cloud)のピクセルにおいて空間的に決定される方法で反射される光点又は光線(light points)は、送信機の光パルスとミラー配置のピボット運動とにより生成され、光センサーによりこれらの各光点から入力信号が取得され、光点のマトリクス・センサーまでの距離は、光伝搬時間の測定に基づいて決定される。
【0002】
ピクセルとともに3次元の点群の形式で3Dシーンを記録するために、原理的に、3つの異なる要素がLIDARシステムで必要とされる:
a) 選択されたピクセルまでの距離を決定する要素,
b) 3Dシーン内のピクセルを選択する要素,
c) (レーザー)光源。
【0003】
距離を決定するために2つの異なる方法がしばしば使用されている:ある方法は、変調されたレーザー光源を利用し且つ位相効果を利用するものであり(例えば、光ミキシング・デバイス(photonic mixing device:PMD))、例えば、レーザー・パルスの光伝搬時間の測定(飛行時間:time of flight(TOF))を決定する方法である。
【0004】
例えば、AT505037B1により知られているように、3Dシーン中のピクセルの選択は、スキャニング・デバイスを有するLIDARシステムを利用して実行されることが可能であり、そのシステムでは、可動偏向ミラーを含むミラー・システムを利用することにより、逐一比較スキャニング(point-for-point scanning)が行われる。そのようにする際に、点群の各光点は例えばフォトダイオードである単独のセンサー上で表示され、伝搬時間又はその位相効果が評価される。
【0005】
代替的に、LIDARシステムを利用して、3Dシーンは、上流の光学系によるセンサー・アレイのセンサー表面上で横方向に分散される複数の光センサーにより、センサー・アレイに先鋭に投影されることが可能であり、相応に配置される光センサーに関して表示される光点の分布に基づいて、空間分解が実行され、及び、以後の時間測定機能又は位相評価から、ピクセルの3Dシーンについての距離が、個々の光センサー及びピクセルの各々について決定される。そのようにする際に、選択されたピクセルまでの距離を決定するための要素と、3Dシーン中のピクセルを選択する要素とは合致する。
【0006】
LIDARシステムの設計に依存して、様々なレーザー光源が使用される。そのようなスキャニング・デバイスを有するLIDARシステムは、1パルス個別レーザー・システム(one pulsed individual laser beam)を有するレーザー光源を有し、これにより、パルスは、ミラー・システムの支援により3Dシーン上で移動させられる。3Dシーンのスキャニング(例えば、ラスター化)は、ミラー・システムにより実行される。これに対して、センサー・アレイを有するLIDARセンサーの場合、レーザー光源(例えば、フラッシュLIDAR又は3Dカメラ)が3Dシーンを一度に照射する。3Dシーンのラスター化(The rasterization)はセンサー・アレイを用いて実行される。
【0007】
使用されるミラー・システムに起因して及び偏向や速度が可変であることに起因して、スキャニング・デバイスを有するLIDARシステムは一般に3Dシーンの任意のラスター化を実行することが可能である。各々の距離測定に対してシングル・レーザー・パルスが必要とされるので、使用されるレーザーは、(例えば、数kHzの範囲内にあるような)十分に高いパルス反復レートを有する必要がある。唯1つの送信及び検出チャネルが提供されるので、高い分解能で高精度の複合的な時間測定エレクトロニクスが使用され得る。多数の機械的なミラー・システムを動かすことは、LIDARシステムの速度を制限する。この制限は、LIDARシステムの大きなレンジの条件と対応するミラー・システムの結果的な大きな受信側の光学系とに起因して、相応する多くの部分が必要とされる場合に、特に問題となる。シングル・センサーに基づくLIDARシステムの低い測定反復レートに起因して、素早く動く対象(objects)に対して、対象物自体の動きの結果、3Dシーンの画像中に歪(a distortion)が生じ得る。機械的なミラー・システムは、損耗(wear)の影響も受ける。スキャニング・デバイスに関して小型で素早いミラー・システム(例えば、マイクロミラー又はマイクロミラー・アレイ等)と、視野全体に対する必要な光収集光学系とを利用することは、シングル・センサーでは技術的に不可能であり、なぜなら、そのような光学系の場合、最小限の伝送(minimal transmissions)しか得られないからである。
【0008】
センサー・アレイ及び所謂フラッシュ・レーザー光源を有するLIDARシステムは例えば以下の文献により知られている:
"Performance modeling of miniaturized flash-imaging lidars for future Mars exploration missions", Alexandre Pollini, Jacques Haesler, Valentin Mitev, Joao Pereira do Carmo, Paper 66403, International Conference on Space Optics 2014。
【0009】
スキャニング・デバイスを有するLIDARシステムとは異なり、センサー・アレイを有するLIDARシステムは如何なる可動部分も有しておらず、なぜなら、3Dシーンのスキャニング及びラスター化の双方が、センサー・アレイの光センサーについての空間的な分解評価によって実行されるからである。可能な画像リフレッシュ・レートは、スキャニングLIDARシステムのものより極めて高くなることが可能であり、及び、一般に、レーザー光源の出力によって制限され、且つ、3Dシーンにより取得されるオブジェクトの距離による距離測定の非曖昧性を保証するために制限される。この種のLIDARシステムは、3Dシーン全体を一度に照射する必要があり、従って、スキャニングLIDARシステムにおけるものより桁違いに大きなパルス・エネルギーを必要とする。従って、必要なパルス・エネルギーは、レーザー光源に対する一般的な制限を表現し、その理由は、光パルスの光エネルギーが蓄えられる必要があり且つ使用される光学要素は高いパルス・ピーク出力に耐性を有する必要があるからである。更に、空間分解能は、センサー・アレイ内のピクセル数によって制限される。これらのLIDARシステムの時間分解能は、典型的には、スキャニングLIDARシステムのものより貧弱であり、なぜなら、個々の時間測定エレクトロニクスが各々の光センサーに対して必要とされるからである。
【発明の概要】
【0010】
本発明の課題は、LIDARシステムにより3Dシーンを取得する方法を提案することである。本発明の課題は、3Dシーンを取得するLIDARシステムを提案することでもある。特に、本方法及びLIDARシステムによる3Dシーンの簡易な又は改善された取得を提案することが意図されている。特に、LIDARシステムの分解能及び/又は動作速度が改善される。
【0011】
課題は請求項1ないし9の対象事項により達成される。請求項1及び9に従属する請求項は、請求項1及び9の対象事項の有利な実施形態を反映する。
【0012】
提案される方法は、LIDARシステムにより3Dシーンを取得するために使用される。特に、地上アプリケーション及び航空宇宙産業における3Dシーンが、本方法により取得されることが可能である。これらは、車両、歩行者及び障害物のような車両用途の分野における地上対象物、船舶、建物、物体、動物、植物であってもよいし;航空の分野においてこれらは、何らかの飛行物体に加えて、地球外天体(例えば、惑星、月、小惑星など)、或いは、宇宙船(例えば、宇宙ステーション、宇宙探査機、衛星など)であってもよい。
【0013】
提案方法のために提供されるLIDARシステムは、送信機受信機に加えて、送信機と3Dシーンとの間に配置されるピボット運動可能なミラー配置を含み、ミラー配置は、例えば、巨視的なミラー、小型化されたミラー、ミラーのアレイ、好ましくはマイクロミラー、或いは、MEMS法により製造されるミラー・デバイスを備えていても良い(MEMSは、マイクロエレクトロメカニカル、マイクロエレクトロメカニカル又はマイクロエレクトロニック、及び、マイクロエレクトロメカニカル・システム、並びに、関連するマイクロメカトロニクス等に関連する)。ミラー・デバイスは、例えば、ソリッド・ボディ・ジョイント(a solid body joint)により制御可能であるように構成されることが可能である。このように構成されるミラー配置は、3Dシーンのスキャニング・デバイスに対応し、このため、例えば3Dシーンのスキャニング及びラスター化の双方のために、方位角及び仰角の方向にピボット運動することが可能である。対応する傾斜角が取得され、レーザー光源により照射される3Dシーンの個々の所定のピクセルを決定する。パルス化又は変調される方法で動作させられることが可能なレーザー光源は、送信機として機能する。
【0014】
受信機は、例えば、センサー表面のような表面上に水平に(laterally)分散される複数の光センサーを有するセンサー・アレイであるマトリクス・センサーとして設定され、その表面上で、個々のピクセルにより反射される光パルスが、ビーム経路に組み込まれる照射光学系により表示される。ミラー配置のピボット運動の結果として、個々のピクセルへの接近、及び、これらのピクセルに当たるレーザー光パルスの光パルス反射により、3Dシーンの点群が生成され、各ピクセルに関し、ピクセルにより反射される光点は空間的に決定(又は分解)される方法で(a spatially resolved manner)生成される。入力信号は、選択的に空間的に決定されるような方法で、光センサーにより、各光点から取得され、点群の光点のマトリクス・センサーまでの距離は、光伝搬時間測定に基づいて決定される。本発明は、光パルスの鮮明な画像によらず、むしろ、照射光学系を用いて、複数の光センサーを含む、光パルスのデフォーカスされた入力信号(a defocused input signal)をそれぞれ表示する。隣接する光センサーの入力信号は互いに比較される。デフォーカスされた光点の結果として、複数の隣接する光センサーは変動する強度とともにこの光点を取得し、それにより、個々の光センサーにより取得される光点の強度及び/又は伝搬時間を互いに比較するために適切なアルゴリズムを利用することで、光センサーのノイズや、伝搬時間測定に対する許容度などに関する問題は、軽減されることが可能である。代替的又は追加的に、平均化、中心点の設定又は同様な処理により、マトリクス・センサーの表面上にある光センサー数により予め決定される空間分解能より小さな、光点の入射強度についての空間分解能(サブピクセル分解能)を達成することが可能である。代替的又は追加的に、LIDARシステムの動作時間にわたって設定する(複数の)光センサーの割合を互いに評価することにより、例えば、送信機、マトリクス・センサー及び/又はレーザー光源の劣化が識別されることが可能である。
【0015】
提案される方法により、LIDARシステムは、メンテナンスを必要とすることなく長期間にわたって外部から操作されることが可能であり、従って、近付くことができない地球外用途に特に適している。特に、提案される方法により、LIDARシステムは、継続的に、自律的な校正及び自律的な適合化を行うように設計されることが可能である。
【0016】
本発明の有利な実施形態によれば、3Dシーン中の個々の光点の空間的な割り振り(a spatial allocation)は、ミラー配置における光パルスの放射角度に基づいて決定されることが可能である。例えば、放射角度は、ミラー配置の偏向デバイスの位置に基づいて決定されることが可能である。この目的のため、受信機との信号接続における整合ビーム角取得デバイス(a commensurate beam angle acquisition device)を有するミラー配置を有し、それにより、送信機及び受信機は、レーザー光源の出力信号とマトリクス・センサーの入力信号との時間的及び空間的な割り振りに関して互いに同期させられる。送信機及び受信機の制御及び同期は、送信機において、受信機において又は上位の制御デバイスにおいて提供されることが可能である。
【0017】
提案される方法の有利な実施形態によれば、複数の光センサーにより取得される個々の光点の伝搬時間差が、互いに比較され評価される。光センサー毎の個々の伝搬時間を評価することにより、例えば、進行中のゆらぎ及び伝搬時間の逸脱が互いに重み付けされることが可能である。全体的なLIDARシステム又は個々の光センサーの時間測定は、例えば、伝搬時間差の比較により補正されることが可能である。所定の範囲を超えて逸脱している時間測定デバイスは、例えば、適切に調節可能な補正項又は係数を、関連する測定アルゴリズムに加え、及び例えば継続的にそれらを更新することにより校正されることが可能である。
【0018】
複数の光センサーにより取得される個々の光点の記録される光強度は、代替的又は追加的に、互いに比較されることが可能である。例えば、最高光強度の中心点が、光センサーの水平分解能(the lateral resolution)とは独立して、光センサーの光強度から決定されることが可能である。個々の光センサーの感度は、例えば、取得される入力信号を相関付けることにより校正され及び適合させられることが可能である。特に有利な方法では、光センサーの光強度を用いることにより、ノイズの抑制がもたらされる。異なるセンサーにおいて異なって生じる統計的なノイズは、本願により、特に有利な方法で排除されることが可能である。個々の光センサーで生じるノイズの評価は、個々の光センサーで異なって生じる光強度の関数として考察されることが可能である。
【0019】
提案されるLIDARシステムは、提案される方法を実現するために使用され、かつ、光パルスを放出する少なくとも1つの送信機と、偏向デバイスを有するピボット運動可能なミラー配置とを含み、ミラー配置は光パルスの放射角度を設定及び取得する。また、送信機により放出され且つ3Dシーンの点群中のピクセルで反射された光点を受信する受信機も提供される。受信機は、例えば平面上である表面に配置される複数の光センサーを有するマトリクス・センサーと、デフォーカスされた方法でマトリクス・センサーに光点を投影する照射光学系とを含む。照射光学系は、デフォーカスの程度の調節が可能であるように、調節可能に提供されることが可能である。
【0020】
言い換えれば、従来技術によるスキャニングLIDARシステムから進歩して、ミラー配置の形式で、小型化されたスキャニング・デバイスが提供される。ミラー配置の小さな寸法に起因して、特にミラー配置では、偏向させるためにより小さな慣性力しか必要とされず、それにより、ミラー配置は速やかにピボット運動させられることが可能である。更に、単独のセンサーではなくマトリクス・センサーが受信機として提供される。受信機は、組み込まれた時間測定機能を含む。かくて、伝搬時間及び空間解像度に対する改善された解像度は、以下のように提案される:
ミラー配置の偏向(又は振れ角)の決定は、(x-y,仰角-方位角のような)空間解像度の増加を許容する。提案されるミラー配置の場合、小さな慣性に起因して、偏向(即ち、実際の値)は、設定角度サイズ(即ち、ターゲット値)に実質的に等しくされることが可能である。更にミラー配置の偏向は測定されることも可能であり、即ち、実際の値は、例えば、光学的な偏向判定又は容量性の偏向判定を行うことにより、決定されることが可能である。
【0021】
シングル・センサーによる鮮明な画像ではなく、単一光子画像センサーのようなマトリクス・センサーの照射光学系のデフォーカシングは、例えば、デフォーカシングの結果として、3Dシーンの点群中のピクセルで反射される光点は、複数の光センサー及び画像センサーに当たる、という利点を有する。ミラー配置は、所定のパターンで3Dシーンを覆うように案内されることが可能であり、例えば、データ取得デバイスや制御デバイス等により制御されることが可能である。例えば、数kHzないしMHzの範囲内にある反復レートのレーザー・パルスは、レーザー光源により生成される。ミラー配置の位置は、内部データ処理システムにより記録及び保存される。
【0022】
例えば、デフォーカシングに由来する周辺の光センサーを含むマトリクス・センサーの個々の光センサーの入力信号の読み取り及び処理は、空間的に決定される形式でミラー配置の位置に対応する光センサーに限定されることが可能である。光センサーのこれら又は全ての取得される入力信号は、内部データ処理デバイスにおいて読み取られ、記録され及び保存される。対応する光センサーで取得され且つ個々の光センサーで記録される光パルスの時間値は、1つの時間ヒストグラムに組み込むことが可能である。ピクセルとマトリクス・センサーとの間の正確な距離は、最大のヒストグラムから決定されることが可能である。ピクセルの正確な空間位置は、ミラー配置の偏向に基づいて、或いは、照射光センサーの信号強度中心点のサブピクセル精度判定により決定されることが可能である。空間解像度の更なる改善及び/又は妥当性評価(plausibility assessments)を実行するために、2つのオプションが互いに併合されることが可能である。
【0023】
マトリクス・センサーの個々の光センサーの限られた時間測定を利用する距離分解能についての存在し得る既存の制約は、必要に応じて、複数の光センサーの入力信号を組み合わせて統計的に評価することにより対処されることが可能である。干渉する周囲光の結果として光センサーにおける光信号の不正確な取得は、除外されることが可能であり、なぜなら、ミラー配置の調節された変更に応じて影響を受ける及び従って3Dシーンの点群のピクセルにより後方散乱される光点により影響を受ける光センサーによるもののみが評価されるからである。更に、光点に帰属し得る対応する光センサーにおけるデフォーカスされた入力信号の統計的な評価により、エラーの契機となる影響及びノイズは削減されることが可能である。デフォーカシングの程度に依存して、LIDARシステムは、より高い精度及びより小さなノイズを、より大きなデフォーカシングとともに提供し、或いは、より高い感度を低減されたデフォーカシングとともに提供するように構成されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明は図1ないし3に示されるデザイン例を参照しながら詳細に説明される。
図1】LIDARシステムのシステム表現例を示す図。
図2図1のマトリクス・センサーの表面を示す図。
図3】複数の光センサーに影響を及ぼす入力信号を評価するための図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、送信機3及び受信機4によって、3Dシーン2を取得するLIDARシステム1の概略的な表現を示す。
【0026】
送信機3はレーザー光源5を含む。レーザー光源5は、パルス化された又は変調された光パルス7を放出し、光パルス7は、例えばマイクロミラー配置又はマイクロミラー・アレイ配置のようなミラー配置6に方向付けられる。ミラー配置6は、2次元の偏向で制御され、即ち、y方向及びx方向、或いは、仰角及び方位角の方向に制御される。その目的のために、放射角αを設定するために所定の偏向角をそれぞれが指定する2つの偏向デバイス8,9が提供される。光パルス7の偏向角及び出力時間は、データ処理デバイス10に送信され、保存される。
【0027】
受信機4は、照射光学系11と、複数の光センサー14を有するマトリクス・センサー12とを含み、複数の光センサーは表面13上で事実上水平に分散している。各々の光センサー14は、感度及び時間測定デバイス15を有し、その入力信号は、取得デバイス16により取得され、データ処理デバイス10へ送信される。
【0028】
光パルス7は、ミラー配置6の偏向に応じて、ある時間シーケンスの中で3Dシーン2のピクセル19へ方向付けられ、その場所で、反射される光点17から成る点群18を生成する。光点17は、時間的なオフセット形式で受信機4の照射光学系11に影響を及ぼす。照射光学系11は、点群18のピクセル19における反射によって個々の光パルス7から生成される光点17を、焦点がぼけた形式で表面13に放出し、それにより、複数の隣接する光センサー14が光点17の入力信号を受信するようになる。各々の光点17に関し、対応する入力信号は、データ処理デバイス10に保存され、関連する光パルスと時間同期方式で比較される。点群のうちの対応するピクセルから表面13等までの距離は、光パルス7の伝搬時間(タイム・オブ・フライ(time of fly:TOF))及び関連する光点17から決定され、それにより、3Dシーン2の3次元形状が、決定された光点17により算出されることが可能になる。
【0029】
好ましい形態では、光センサー14が評価されるだけであり、光センサー14は、ミラー配置6の対応する放射角についての対応する光パルス7と相関付ける。個々の光センサー14の時間測定デバイスの統計的なばらつき(Statistical dispersion)は、光点17の入力信号の統計的な評価により取り除かれる。光センサー14の入力信号の信号強度の統計的な評価を分析することにより、マトリクス・センサー12の細分ピクセル分解能(A subpixel resolution)が更に達成されることが可能である。偏向デバイス8,9は、選択的に検査されることが可能であり、また、必要に応じて、対応する個数の光点17の撮像位置の取得により関連付けられることが可能である。光点17の入力信号の信号強度の統計的な評価により、個々の光センサー14のノイズは識別され及び必要に応じて補正されることが可能であり、或いは、ノイズは除去されることが可能であり、或いは、入力信号に関するノイズの影響は少なくとも削減されることが可能である。
【0030】
図2は、図1のLIDARシステム1のマトリクス・センサー12の表面を、概略的な表現で及び簡明化のため少ない個数の光センサー14で示している。表面13上に描かれている円20は、照射光学系11(図1)による焦点がずれた光点17を表現し、それにより、入力信号は(複数の)光センサー14aにおいてそれぞれ取得される。(複数の)光センサー14aの入力信号の到着時間を、互いに、光点17の原因となっているレーザー光源の光パルスの開始時間と比較することにより、様々な伝搬時間の中で平均が取得され、個々の光センサー14aの時間測定の時間的な分散(又はばらつき)の誤差が平均化されることが可能であり、かくて、3Dシーンと受信機との間の距離測定が改善されることを可能にする。
【0031】
図3は、時間tに対する入力信号数nのダイアグラム21として、図2の個々の光センサー14aの時間的なばらつきを示す。曲線22は入力信号の時間分散を表現し、破線23は入力信号の伝搬時間の平均値t(m)を表現する。
【符号の説明】
【0032】
1 LIDARシステム
2 3Dシーン
3 送信機
4 受信機
5 レーザー光源
6 ミラー配置
7 入力パルス
8 偏向デバイス
9 偏向デバイス
10 データ処理デバイス
11 照射光学系
12 マトリクス・センサー
13 表面
14 光センサー
14a 光センサー
15 感度及び時間測定デバイス
16 取得デバイス
17 光点
18 点群
19 ピクセル
20 円
21 ダイアグラム
22 曲線
23 ライン
n 数
t 時間
t(m) 平均値
α 放射角度
図1
図2
図3