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  • 特許-真空バルブ 図1
  • 特許-真空バルブ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】真空バルブ
(51)【国際特許分類】
   H01H 33/662 20060101AFI20220318BHJP
【FI】
H01H33/662 E
H01H33/662 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017241703
(22)【出願日】2017-12-18
(65)【公開番号】P2019110011
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅利 直紀
(72)【発明者】
【氏名】坂口 亙
(72)【発明者】
【氏名】塩入 哲
(72)【発明者】
【氏名】堅山 智博
(72)【発明者】
【氏名】山本 敦史
(72)【発明者】
【氏名】山崎 顕一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 遥
(72)【発明者】
【氏名】近藤 淳一
(72)【発明者】
【氏名】水出 隆
(72)【発明者】
【氏名】樽井 将邦
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-048842(JP,A)
【文献】国際公開第00/021107(WO,A1)
【文献】特開2007-188661(JP,A)
【文献】特開2010-015919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/60-33/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の絶縁材料から構成され両端に開口部を有する筒状の真空絶縁容器と、
前記真空絶縁容器内に収容され、離接可能な一対の電極と、
前記真空絶縁容器の両端の前記開口部をそれぞれ閉塞する封着板と、
前記真空絶縁容器の内壁面に形成され、当該真空絶縁容器とは異なる絶縁材料からなるガス不透過性層と、
を具備し、
前記ガス不透過性層が、ガラス又はダイヤモンドライクカーボンの溶射膜又はスパッタ膜からなる
ことを特徴とする真空バルブ。
【請求項2】
前記樹脂が、エポキシ樹脂又はFRPである
ことを特徴とする請求項に記載の真空バルブ。
【請求項3】
前記真空絶縁容器の外周面に設けられ、接地電位とされる導体層を具備した
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の真空バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、真空バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筒状の真空絶縁容器内に接離自在の一対の接点を収納した真空バルブが用いられている。このような真空バルブでは、真空が持つ優れた絶縁耐力やアーク消弧性などにより外形形状の小型化が図られている。真空絶縁容器には、絶縁特性や機械的特性の優れたアルミナ磁器などのセラミックスが用いられている。また、真空バルブの絶縁性能向上のために、セラミックス製の真空絶縁容器の外側をエポキシ樹脂で注型し、絶縁性能を向上させることが行われている。
【0003】
近年、真空バルブの高電圧化が進むことによって、真空バルブの大型化している。このような真空バルブの大型化に伴い、エポキシ樹脂で注型するための金型も大型化する必要がある。このような金型の大型化により、注型時のエポキシ内にボイドや剥離等の欠陥が発生し、歩留りの低下につながってしまう。このため、エポキシ樹脂中に空気が残留し難い構造として、エポキシ樹脂中の欠陥の発生を抑制し、部分放電の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-243581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したとおり、真空バルブの製造工程においては、接点等を配設したセラミック製の真空絶縁容器を、金型にとりつけ、エポキシ樹脂を金型に注いで製造するが、エポキシ樹脂内にボイドが発生したり、真空バルブの真空絶縁容器外面とエポキシ樹脂との界面の剥離のような欠陥が発生してしまうことがあり、このような欠陥の発生は、真空バルブの大型化により顕著になっている。
【0006】
そして、エポキシ樹脂の注型の際にこのような欠陥が発生すると、この欠陥に起因した部分放電が発生する等の問題が起きる。また、このよう欠陥を発生させずに真空バルブを注型するために様々な施策がされているが、製造コスト高の要因となり、また、欠陥発生の抑制効果を十分なものにすることは難しい。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、真空絶縁容器における、エポキシ樹脂の注型の際に発生する欠陥に起因する部分放電の発生を抑制することのできる真空バルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の真空バルブは、樹脂製の絶縁材料から構成され両端に開口部を有する筒状の真空絶縁容器と、前記真空絶縁容器内に収容され、離接可能な一対の電極と、前記真空絶縁容器の両端の前記開口部をそれぞれ閉塞する封着板と、前記真空絶縁容器の内壁面に形成され、当該真空絶縁容器とは異なる絶縁材料からなるガス不透過性層と、を具備し、前記ガス不透過性層が、ガラス又はダイヤモンドライクカーボンの溶射膜又はスパッタ膜からなる
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る真空バルブの縦断面構成を模式的に示す図。
図2】第2実施形態に係る真空バルブの縦断面構成を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態の真空バルブを、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る真空バルブ100の縦断面構成を模式的に示す図である。図1に示すように、真空バルブ100は、両端に開口部を有する筒状の真空絶縁容器101を具備している。真空絶縁容器101の内面には、真空絶縁容器101の構成材料とは異なる材料からなるガス不透過性層101aが形成されている。
【0012】
真空絶縁容器101を構成する材料としては、絶縁性の材料であり、かつ、ある程度機械的強度の高い材料を用いることが好ましく、具体的には、例えば、エポキシ樹脂、FRPなどの樹脂を好適に使用することができる。樹脂製の真空絶縁容器101を用いた場合、真空絶縁容器101の側壁部分の厚さは、例えば、数センチから数十センチ程度とすることが好ましい。
【0013】
また、ガス不透過性層101aを構成する材料としては、絶縁性の材料であって、ガスを放出せず、かつガスを透過し難い材料を用いることが好ましい。このような材料を用いることによって、例えば、エポキシ樹脂やFRPなどの樹脂からなる真空絶縁容器101の内面からガスが放出されたとしても、このガスが真空絶縁容器101の内部に入り込むことを防止して、真空絶縁容器101の内部の真空度を維持することができる。
【0014】
このように、絶縁性の材料であって、ガスを放出せず、かつガスを透過し難い材料としては、具体的には、例えば、セラミック、ガラス、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)などを好適に使用することができる。
【0015】
また、ガス不透過性層101aの厚さは、例えば、ナノメートル乃至マイクロメートルの単位程度とすることが好ましい。なお、図1では、構成を明確にするため、ガス不透過性層101aの厚さは、実際の厚さより厚く誇張して示してある。
【0016】
ガス不透過性層101aとしては、例えば、溶射によって形成した溶射膜、或いは、スパッタによって形成したスパッタ膜等を好適に使用することができる。このガス不透過性層101aの表面抵抗は、例えば1010~1012Ω程度とすることによって、帯電防止を図ることが可能で、沿面の絶縁性能も向上させることが可能となる。
【0017】
真空絶縁容器101の内部には、固定側電極102と、可動側電極103とからなる一対の電極が離接可能に配設されている。固定側電極102には、固定側通電軸104が接続されている。また、可動側電極103には、可動側通電軸105が接続されている。
【0018】
固定側電極102と可動側電極103の周囲には、これらを囲むようにアークシールド106が配設されている。また、真空絶縁容器101の頂部と底部には、真空絶縁容器101の開口部を覆う蓋体として、それぞれ円板状に形成された封着板107,108が配設されている。
【0019】
固定側通電軸104は、封着板107を貫通して真空絶縁容器101の外部まで延在している。また、可動側通電軸105は、封着板108を貫通して真空絶縁容器101の外部まで延在しており、可動側通電軸105と封着板108との間には、これらの間を気密に封止するとともに、可動側通電軸105をその軸方向に沿って移動可能とするベローズ109が配設されている。
【0020】
封着板107,108と、真空絶縁容器101との間には、封着金具110,111が配設されており、封着板107,108は、封着金具110,111を介して真空絶縁容器101と接続されている。真空絶縁容器101の内壁と同様に、封着金具110,111の内側面にも、ガス不透過性層101aが形成されている。この封着金具110,111の内側面に形成されたガス不透過性層101aは、この部分の気密封止を確実に行うため、他の部分よりその厚さを厚くしてもよい。
【0021】
上記の第1実施形態に係る真空バルブ100を製造する場合、例えば、次のような方法によって、製造することができる。先ず、真空絶縁容器101を軸方向の中間部分等で2分割した形状の樹脂製の2つの筒体を準備し、これらの2つの筒体の内壁にガス不透過性層101aを形成し、夫々の筒体に、固定側電極102と固定側通電軸104を配設した封着板107、可動側電極103と可動側通電軸105及びベローズ109を配設した封着板108を固着し、さらにアークシールド106を配設して、2つの筒体を接合する方法等によって製造することができる。
【0022】
したがって、セラミック製の真空絶縁容器の周囲に、エポキシ樹脂を注型して製造していた従来の真空バルブのようにエポキシ樹脂を注型する金型を必要とすることなく、真空バルブ100を製造することができる。また、エポキシ樹脂を注型する工程において、エポキシ樹脂中にボイドが含まれることもなく、セラミック製の真空絶縁容器とエポキシ樹脂との界面の剥離も発生することが無い。
【0023】
このため、製造コストの低減を図ることができるとともに、エポキシ樹脂の注型の際に発生する欠陥に起因した部分放電の発生も防止することができる。
【0024】
次に、図2を参照して第2実施形態に係る真空バルブ200の構成について説明する。図2は、第2実施形態に係る真空バルブ200の縦断面構成を模式的に示す図である。なお、図2において、図1に示した第1実施形態に係る真空バルブ100と対応する部分には同一の符号を付して重複した説明は省略する。
【0025】
図2に示すように、第2実施形態に係る真空バルブ200では、真空絶縁容器101の外周面に、導電性材料からなる導体層(接地層)201が設けられている。そして、この導体層201は、接地電位とされている。なお、導体層201は、例えば導電性の塗料塗布すること等によって形成することができる。このように、真空絶縁容器101の外周部に、接地電位とされる導体層201が設けられた構成の真空バルブ200に対しても、適用することができ、この場合も、第1実施形態に係る真空バルブ100と同様な作用、効果を奏することができる。
【0026】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
100,200……真空バルブ、101……真空絶縁容器、101a……ガス不透過性層、102……固定側電極、103……可動側電極、104……固定側通電軸、105……可動側通電軸、106……アークシールド、107,108……封着板、109……ベローズ、110,111……封着金具、201……導体層。
図1
図2