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特許7042635SCP工法用センサ、SCP工法用ケーシングパイプ、砂杭形状評価方法およびSCP工法の施工管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】SCP工法用センサ、SCP工法用ケーシングパイプ、砂杭形状評価方法およびSCP工法の施工管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20220318BHJP
【FI】
G01N27/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018017086
(22)【出願日】2018-02-02
(65)【公開番号】P2019132793
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-08-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】江守 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】上野 一彦
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 保弘
(72)【発明者】
【氏名】秋本 哲平
(72)【発明者】
【氏名】グエン タング タン ビン
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-222844(JP,A)
【文献】特開2005-009169(JP,A)
【文献】特開2010-025771(JP,A)
【文献】特開平10-268061(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0016894(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンドコンパクションパイル工法用ケーシングパイプの下部の外周側面に縦方向に並べられた複数の電極前記複数の電極に対し前記ケーシングパイプの円周方向の異なる位置に外周側面の縦方向に並べられた別の複数の電極と、を備え、
前記複数の電極および前記別の複数の電極それぞれ、前記ケーシングパイプにより地盤に造成される砂杭の内部に接するように設けられ、前記ケーシングパイプの外周側面から横方向の前記砂杭側の所定の測定距離における比抵抗値を計測し、
前記計測された比抵抗値に基づいて前記砂杭の形状を評価するためのサンドコンパクションパイル工法用センサ。
【請求項2】
前記測定距離を次式のように設定する請求項1に記載のサンドコンパクションパイル工法用センサ。
c=(D2-D1)/2
ただし、
c:測定距離
D2:砂杭の径(設計値)
D1:ケーシングパイプの下部の径
【請求項3】
地盤に砂杭を造成するサンドコンパクションパイル工法に用いられるケーシングパイプであって、請求項1または2に記載のサンドコンパクションパイル工法用センサを備えるサンドコンパクションパイル工法用ケーシングパイプ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のサンドコンパクションパイル工法用センサを用いて前記ケーシングパイプにより地盤に造成される砂杭の形状を評価する方法であって、
前記ケーシングパイプの下部が前記砂杭の上端面から砂杭上部に貫入した状態で前記比抵抗値を計測し、
前記計測された比抵抗値に基づいて前記測定距離における地質を判断し、
前記判断に基づいて前記砂杭の形状を評価する砂杭形状評価方法。
【請求項5】
前記測定距離を変えて前記比抵抗値を計測し、
前記計測された各比抵抗値に基づいて前記地質を判断する請求項4に記載の砂杭形状評価方法。
【請求項6】
前記ケーシングパイプの円周方向の異なる位置における前記比抵抗値を計測し、
前記計測された各比抵抗値に基づいて前記地質を判断する請求項4または5に記載の砂杭形状評価方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載のサンドコンパクションパイル工法用センサを用いて、前記ケーシングパイプによる砂杭造成時に砂杭の形状を評価することでサンドコンパクションパイル工法の施工を管理する施工管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SCP工法用センサ、このセンサを有するSCP工法用ケーシングパイプ、このセンサを用いた砂杭形状評価方法およびSCP工法の施工管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サンドコンパクションパイル工法(以下、「SCP工法」ともいう。)は、振動を用いて砂または類似の材料をケーシングパイプ(鋼製中空管)により軟弱地盤に圧入することにより、締め固められた大径の砂杭(サンドコンパクションパイル)を軟弱地盤内に造成する地盤改良工法である。SCP工法における品質および出来形の管理基準は、たとえば、港湾工事共通仕様書で規定され、以下の通りである。
・品質管理基準:砂(材質:外観、種類、品質及び粒度、シルト以下の細粒分含有率)
・出来形管理基準:サンドコンパクションパイル(位置、天端高・先端深度、砂の投入量、盛上り量)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-268061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
SCP工法による軟弱粘性土における地盤改良の目的として、締め固めた砂杭と軟弱粘性土からなる複合地盤を形成し、上載荷重に対する支持力の増強、ドレーン効果を含めた地盤全体の剛性の増加、すべり抵抗の増加、沈下の低減を図ること等が挙げられる。しかし、従来の管理方法で施工中の管理は砂面計と深度計を用いて投入砂の体積変化率を確認するもので、砂杭の形状を調査する方法がない。このため、次のような問題がある。
【0005】
砂杭SCは、地盤内で造成が完了すると、図11(a)のように、設計値通りであれば、鉛直方向に軸対象の円柱状に形成されるが、これは地盤内の土質が一様な場合と考えられ、土質が変化している地盤内では、図11(b)のように、砂杭SCが硬い地盤側から軟らかい地盤側に傾いて形成されてしまい、偏心してしまう可能性がある。このような偏心した砂杭の形状は、砂面計と深度計とによる体積率変化の確認だけでは、図11(a)のような軸対象の砂杭(設計値)が造成されていると表示されるため、見逃される可能性がある。
【0006】
特許文献1は、センサ部材に対して多数の電極部材を配置して構成し、電極部材のうちの2つの間で地盤の比抵抗の測定に用いる他に、任意の電気的な測定等に対応させ得るようにした地盤比抵抗測定センサを開示するが、SCP工法による砂杭の形状を評価可能なものではない。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、SCP工法による施工中に砂杭の形状をリアルタイムで確認し評価可能なSCP工法用センサ、このセンサを有するSCP工法用ケーシングパイプ、このセンサを用いた砂杭形状評価方法およびSCP工法の施工管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためのサンドコンパクションパイル工法用センサは、サンドコンパクションパイル工法用ケーシングパイプの下部の外周側面に縦方向に並べられた複数の電極前記複数の電極に対し前記ケーシングパイプの円周方向の異なる位置に外周側面の縦方向に並べられた別の複数の電極と、を備え、前記複数の電極および前記別の複数の電極それぞれ、前記ケーシングパイプにより地盤に造成される砂杭の内部に接するように設けられ、前記ケーシングパイプの外周側面から横方向の前記砂杭側の所定の測定距離における比抵抗値を計測し、前記計測された比抵抗値に基づいて前記砂杭の形状を評価するためのものである。
【0009】
このSCP工法用センサによれば、SCP工法においてケーシングパイプの下部の外周側面の縦方向に並んだ複数の電極がケーシングパイプにより地盤に造成される砂杭(または造成中の砂杭の一部)の内部に接することで、ケーシングパイプの外周側面から横方向の砂杭側の所定の測定距離における比抵抗値を砂杭の造成途中や造成直後に計測することができる。比抵抗値は砂と地盤(たとえば粘性土)とで相違するので、計測された比抵抗値に基づいて測定距離における地質を判断でき、砂杭の外周位置を推定でき、ケーシングパイプの径および造成される砂杭の径(設計値)から砂杭の出来形の過不足を確認し砂杭の形状を評価することができる。このように計測された比抵抗値に基づいて砂杭形状を評価できるので、SCP工法による施工途中に砂杭形状をリアルタイムに評価することができる。このため、砂杭の全数について砂杭形状を評価でき、また、砂杭形状の評価結果に応じて砂の再投入や締め固めを行うことで造成中に手直しが可能である。
【0010】
上記SCP工法用センサにおいて、前記複数の電極に対し別の複数の電極を前記ケーシングパイプの円周方向の異なる位置に外周側面の縦方向に並べるように構成することにより、ケーシングパイプの円周方向の異なる位置における比抵抗値を計測でき、砂杭形状を精度よく評価することができる。
【0011】
上記目的を達成するためのサンドコンパクションパイル工法用ケーシングパイプは、地盤に砂杭を造成するサンドコンパクションパイル工法に用いられるケーシングパイプであって、上述のサンドコンパクションパイル工法用センサを備える。このケーシングパイプによれば、SCP工法により砂杭を造成し、かつ、この砂杭造成時に砂杭形状を評価することができる。
【0012】
なお、上記SCP工法用ケーシングパイプにおいて、計測誤差の低減を図るために前記ケーシングパイプの外周側面を下端から所定の高さまで電気絶縁材料で被覆することが好ましい。また、電気絶縁被覆膜に凹部を設け、この凹部内に電極を配置することで、電極保護を図るようにしてもよい。
【0013】
上記目的を達成するための砂杭形状評価方法は、上述のサンドコンパクションパイル工法用センサを用いて前記ケーシングパイプにより地盤に造成される砂杭の形状を評価する方法であって、前記ケーシングパイプの下部が前記砂杭の上端面から砂杭上部に貫入した状態で前記比抵抗値を計測し、前記計測された比抵抗値に基づいて前記測定距離における地質を判断し、前記判断に基づいて前記砂杭の形状を評価する。
【0014】
この砂杭形状評価方法によれば、比抵抗値は砂と地盤のたとえば粘性土とで相違することから、上述のセンサにより計測された比抵抗値に基づいて所定の測定距離における地質(砂杭の砂か地盤地質か)を判断できる。これにより、砂杭の外周位置を推定し、ケーシングパイプの径および造成される砂杭の径(設計値)から砂杭の出来形の過不足を確認し砂杭の形状を評価することができる。このため、SCP工法による施工途中に砂杭形状をリアルタイムに評価することができる。
【0015】
上記砂杭形状評価方法において前記測定距離を変えて前記比抵抗値を計測し、前記計測された各比抵抗値に基づいて前記地質を判断することができる。異なる測定距離で比抵抗値を計測することで、砂杭形状を精度よく評価することができる。
【0016】
前記ケーシングパイプの円周方向の異なる位置における前記比抵抗値を計測し、前記計測された各比抵抗値に基づいて前記地質を判断することが好ましい。これにより、砂杭形状を精度よく評価することができる。
【0017】
上記目的を達成するためのサンドコンパクションパイル工法の施工管理方法は、上述のセンサを用いて、前記ケーシングパイプによる砂杭造成時に砂杭の形状を評価することでサンドコンパクションパイル工法の施工を管理する。
【0018】
この施工管理方法によれば、SCP工法の施工途中に砂杭形状を評価する工程を組み入れることで、SCP工法において施工途中に砂杭形状をリアルタイムに評価でき、また、砂杭の全数について砂杭形状を評価でき、さらに、砂杭形状の評価結果に応じて砂の再投入や締め固めを行うことができる。このため、地盤に造成される砂杭の形状品質に関する施工管理を確実に行うことができ、高品質な砂杭を造成できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、SCP工法による施工中に砂杭形状をリアルタイムで確認し評価可能なSCP工法用センサ、このセンサを有するSCP工法用ケーシングパイプ、このセンサを用いた砂杭形状評価方法およびSCP工法の施工管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態による比抵抗値を計測するためのセンサを備えるSCP工法用ケーシングパイプの要部縦断面図(a)およびB-B線方向から見た底面図(b)である。
図2図1とは別の電極配置としたSCP工法用センサを示す要部側面図である。
図3】複数の電極を等間隔に配置したウェンナー配置による電極配置例を示す概略図である。
図4】複数の電極を電位電極の間隔が大きくなるように配置した別の電極配置例を示す概略図である。
図5】本実施形態による計測した比抵抗値に基づいて砂杭の形状を評価するまでの工程(S01~S04)を説明するためのフローチャートである。
図6】砂または粘性土からなる供試体の比抵抗値を測定する実験装置の模式図である。
図7】本実施形態による比抵抗値の計測システムを概略的に示すブロック図である。
図8】本実施形態による砂杭の造成工程(a)~(g)を示す概略図である。
図9図8の砂杭造成工程と砂杭形状の評価工程とを含む施工管理工程S21~S28を説明するためのフローチャートである。
図10】本実施形態において電気絶縁材料による被覆膜を有するSCP工法用ケーシングパイプの要部縦断面図(a)および電極近傍の一部縦断面図(b)である。
図11】砂杭が設計値通りに地盤内に形成された場合の軸対象の形状を概略的に示す縦断面図(a)および偏心して造成された場合の形状を概略的に示す縦断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。図1は本実施形態による比抵抗値を計測するためのセンサを備えるSCP工法用ケーシングパイプの要部縦断面図(a)およびB-B線方向から見た底面図(b)である。
【0022】
図1(a)(b)のように、SCP工法用ケーシングパイプ10は、鋼製中空管から構成され、SCP工法用により地盤に砂杭SCを造成するもので、その外周側面10bには下端11側から縦方向上側に複数の電極21,22,23,24が直列に配置されている。複数の電極21~24からケーシングパイプ10の外周側面10bから横方向の砂杭SC側の所定の測定距離cにおける比抵抗値を計測するためのSCP工法用センサ20が構成される。なお、複数の電極21~24のうち電極21,24が電流電極で、電極22,23が電位電極である。
【0023】
センサ20は、複数の電極21~24がケーシングパイプ10の下部に配置されているので、ケーシングパイプ10が砂杭SCの上端面SSから砂杭SCの内部に貫入したとき、砂杭内部に接することで、測定距離cにおける比抵抗値を計測することができる。
【0024】
図1(a)のように、電極21,22の間隔と電極23,24の間隔とが等しく(=a)、電極22,23の間隔cは間隔aよりも大きい。電極21~24による測定距離が電極22,23の間隔cに等しい。測定距離cは、ケーシングパイプ10の下部の径D1、砂杭SCの径D2(設計値)から、次式により設定されることが好ましい。
c=(D2-D1)/2 (6)
【0025】
次に、図2により電極配置の別の例について説明する。図2は、図1とは別の電極配置としたSCP工法用センサを示す要部側面図である。図2の電極配置例は、ケーシングパイプ10の外周側面10bにその下端11から図1よりも多い複数の電極31~38を縦方向に直列に配置したものである。複数の電極31~38の両端の電極31,38を電流電極とし、その間の電極32~37を電位電極として種々組み合わせることで比抵抗値の計測距離を様々に変えることができる。たとえば、電極31,32,37,38の組み合わせにより図2の測定距離c1での計測、電極31,33,36,38の組み合わせにより測定距離c2での計測、電極31,34,35,38の組み合わせにより、測定距離c3での計測がそれぞれ可能である。ここで、測定距離c1,c2,c3は、この順で長くなり(c1>c2>c3)、たとえば、測定距離c2を上記式(6)に設定することが好ましい。
【0026】
図2のように、両端の電極を電流電極31,38とし、電位電極32~37の中から2つの電位電極の組み合わせを変更することで、様々な測定距離における比抵抗値が計測可能である。
【0027】
なお、図1図2では、複数の電極21~24または31~38をケーシングパイプ10の円周方向の円周位置25の1箇所に縦方向に配置したが、複数の電極21~24または31~38に対し別の同様の電極を追加し、図1(b)のように、ケーシングパイプ10の円周方向の異なる円周位置26に外周側面10bに縦方向に並べるように構成してもよい。円周方向の異なる円周位置26は、元の円周位置25に対し90度異なることが好ましい。
【0028】
次に、図1図2のような電極配置による砂杭近傍の比抵抗の測定原理について図3図4を参照して説明する。図3は、複数の電極を等間隔に配置したウェンナー配置による電極配置例を示す概略図である。図4は、複数の電極を電位電極の間隔が大きくなるように配置した別の電極配置例を示す概略図である。
【0029】
地盤に電極を配置して地盤の比抵抗を測定するための電極配置は、ポール・ポール法(二極法)、ポール・ダイポール法(三極法)、ダイポール・ダイポール法(四極法)、ウェンナー法、シャランベルジャー法などが知られているが、本実施形態では、これらのうち、電極の配置としてウェンナー法を採用した。次の理由からである。
(1)電極配置係数が小さいため、電位差が大きく測定しやすい。
(2)感度分布が大きく、電極系中央部で順感度の大きい領域を示す。
つまり、測定が容易で、対象としている測定位置での感度が良好であるためである。
【0030】
図3の例は、電極C1,P1,P2,C2を等間隔aで並べ、両端の電流電極C1,C2と内側の電位電極P1,P2とによりウェンナー配置としたものである。ウェンナー配置では見かけの探査距離が電位電極の間隔と一致する。すなわち、図3のように、電位電極P1,P2の間隔aと、水平位置H1までの距離a(見かけの測定距離a)が一致し、このような特徴を利用して砂杭近傍における比抵抗を測定することができる。
【0031】
図3において、電流電極C1,C2に電流Iを流し、電位電極P1,P2で電位差Vを測定した場合、比抵抗値ρRは、次の式(1)から求める。
ρR=G(V/I) (1)
ここで、Gは、電極配置係数(ウェンナー配置ではG=2πa)で、電極配置により変化する。
【0032】
また、各種条件のため図3のような電極の等間隔配置ができない場合、次の式(2)により電極配置係数Gを求めることで比抵抗の測定が可能となる。
G=2π{(1/C1P1)-(1/C1P2)-(1/C2P1)+(1/C2P2)}-1 (2)
ここで、C1P1:電極C1と電極P1との間隔
C1P2:電極C1と電極P2との間隔
C2P1:電極C2と電極P1との間隔
C2P2:電極C2と電極P2との間隔
【0033】
図4のように、電流電極C1,C2と電位電極P1,P2とを配置し、電位電極P1,P2の間隔3a(=3×a)が、見かけの測定距離(水平位置H2までの距離)となり、その電極配置係数Gは、式(2)から次の式(3)により求めることができ、その比抵抗値ρRは、式(1)から次の式(4)により得ることができる。
G=2π{(1/a)-(1/4a)-(1/4a)+(1/a)}-1=(4/3)πa (3)
ρR=G(V/I)=(4/3)πa(V/I) (4)
【0034】
なお、図1の電極配置は、図4のような電位電極の間隔を大きくした配置であるが、これは、SCP工法用ケーシングパイプは下端から所定の高さ範囲で拡幅されている場合があり、この高さ範囲内で十分な測定距離を確保するためである。図3の電極配置で十分な測定距離を確保できれば、図3の等間隔配置でもよい。図2の電極配置は、図3図4からわかるように、電位電極P1,P2の間隔を変えて見かけの測定距離を変更したものである。
【0035】
次に、本実施形態による計測した比抵抗値に基づいて砂杭の形状を評価する工程(S01~S04)について図5図6を参照して説明する。図5は、本実施形態による計測した比抵抗値に基づいて砂杭の形状を評価する工程(S01~S04)を説明するためのフローチャートである。図6は、砂または粘性土からなる供試体の比抵抗値を測定する実験装置の模式図である。
【0036】
図5を参照して説明すると、砂杭を粘性土からなる軟弱地盤に造成するとし、まず、計測対象の砂杭および砂杭を造成する原地盤の粘性土の各比抵抗値(の範囲)を調査し確認する(S01)。たとえば、砂の比抵抗値の範囲は80~200Ω・m、粘土の比抵抗値の範囲は10~50Ω・mである。
【0037】
なお、実験により、計測対象の砂杭に使用する砂の比抵抗値を測定し、また、原地盤から採取した粘性土の比抵抗値を測定することで、各比抵抗値を確認するようにしてもよい。すなわち、図6に示す実験装置の容器内に、計測対象の砂杭に使用する砂を飽和状態で投入し、供試体に両側の電極から一定の電流を流し,その時の電位差を内部の一対の電極で測定し、次の式(5)により用いた砂の比抵抗値を求める。粘性土についても同様にして比抵抗値を測定できる。
ρR=(SA/ΔL)・(ΔV/I) (5)
ここで、ρR:土の比抵抗、SA:供試体の断面積、ΔL:電位差測定区間長さ、ΔV:測定電位差、I:電流値、である。
【0038】
次に、図1のセンサ20を用いて、評価対象である造成中の砂杭に関し測定距離cにおける比抵抗値を計測する(S02)。ここで、測定距離cは、図1のように、(D2-D1)/2(式(6))である。ただし、D1:ケーシングパイプ10の下部の径、D2:砂杭SCの径(設計値)である。
【0039】
次に、計測した比抵抗値に基づいて測定距離cにおける地質が、砂杭の砂、原地盤の粘性土のいずれであるかを判断する(S03)。ここで、各々の比抵抗値は、砂杭>粘性土であると考えられる。
【0040】
次に、測定距離cにおける地質が砂杭と判断されれば、造成中の砂杭は設計値以上の断面を有しており、出来形を満足すると判断し、また、原地盤の粘性土と判断されれば、出来形不足と判断する(S04)。出来形不足の場合には、砂の再投入および打ち戻し工程の追加を実施する。このようにして、計測した比抵抗値に基づいて砂杭の形状を評価することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態による砂杭形状の評価方法によれば、一定の測定距離における比抵抗値を計測し、この計測した比抵抗値に基づいて地質を判断し、軟弱粘性土地盤に造成された砂杭の形状(出来形の過不足)をリアルタイムに評価できる。
【0042】
なお、追加の別の複数の電極を図1(b)のようにケーシングパイプ10の円周方向の異なる(たとえば90度)円周位置26に外周側面10bに縦方向に並べて比抵抗値を測定することで、砂杭の形状をさらに精度よく判断できる。
【0043】
次に、本実施形態による比抵抗値の計測システムについて図7を参照して説明する。図7は、本実施形態による比抵抗値の計測システムを概略的に示すブロック図である。
【0044】
図7のように、計測システム50は、図1のケーシングパイプ10の下端11側の外周側面10bに配置された複数の電極21~24と配線Lを通して電気接続をする接続部51と、接続部51と有線で電気接続をする計測側接続部52と、電極21~24と追加の電極とを切り替える電極切替装置53と、電位電極22,23により測定された電位差に基づいて比抵抗を測定する比抵抗測定装置54と、電流電極21,24に定電流を供給する電源装置55と、を備える。複数の電極21~24と接続部51とがケーシングパイプ10側に設置され、計測側接続部52と電極切替装置53と比抵抗測定装置54と電源装置55とが、たとえば、作業船の操作室に設置されることで、計測システム50により、水底で造成中の砂杭内部の比抵抗値を計測することができる。
【0045】
なお、複数の電極21~24と接続部51とを電気接続する配線Lは、たとえば、ケーシングパイプ10の側面に設けられる空気圧送用配管内を通すようにできる。また、図2のような電極配置とした場合、電極切替装置53は、電位電極32~37の中から2つの電位電極の組み合わせを変更するように切り替える。また、図7の接続部51と計測側接続部52を省略し、配線Lを作業船の操作室まで延長し、電極切替装置53と電源装置55とに直接接続するようにしてもよい。また、図7の接続部51と計測側接続部52とを無線通信で接続するようにしてもよい。
【0046】
次に、本実施形態による砂杭の造成時における砂杭形状の評価に基づくSCP工法の施工管理方法について図8図9を参照して説明する。図8は、本実施形態による砂杭の造成工程(a)~(g)を示す概略図である。図9は、図9の砂杭造成工程と砂杭形状の評価工程とを含む施工管理工程S21~S28を説明するためのフローチャートである。
【0047】
図8のように、本実施形態は、表層の軟弱粘性土層G1とその下層の支持層G2とを有する水底地盤GG内にSCP工法によりケーシングパイプ10を用いて砂杭SCを造成するものである。作業船SPは、砂杭の貫入・造成のためのSCP施工機械15を搭載し、SCP施工機械15は、ケーシングパイプ10やその付属部を駆動し、バイブロハンマ16でケーシングパイプ10を振動させながら表層G1から地中に貫入させ、その砂供給口10aから供給される砂を地盤中に圧入し、締め固められた砂杭を地盤内に略鉛直方向に造成する。本実施形態のSCP工法の施工管理方法は、SCP工法の施工途中・直後に砂杭形状を評価する工程を組み入れたものである。
【0048】
まず、図8(a)のように、作業船SPを用いてSCP施工機械15によりケーシングパイプ10を砂杭の造成位置に設定する(S21)。
【0049】
次に、図8(b)のように、SCP施工機械15によりケーシングパイプ10を表層の軟弱粘性土層G1に打ち込み貫入させる(S22)。
【0050】
次に、図8(c)のように、ケーシングパイプ10の先端が支持層G2に達したら、砂供給口10aから砂SDを投入しケーシングパイプ内に供給する(S23)。
【0051】
次に、図8(d)のように、SCP施工機械15によりケーシングパイプ10を引き抜く(S24)。
【0052】
次に、図8(e)のように、SCP施工機械15によりケーシングパイプ10を打ち戻しバイブロハンマ16で上下に振動を与えながら砂SDを締め固めることで、下側に締め固められた大径の砂杭の一部SC1をつくる(S25)。必要に応じて、砂投入工程S23,ケーシングパイプ10の引き抜き工程S24、打ち戻し(締め固め)工程S25を繰り返す。
【0053】
次に、工程S25の打ち戻しによる締め固めを中断し、図1のようにケーシングパイプ10の下端11を大径の砂杭の一部SC1の上端面SSから貫入させ、複数の電極21~24からなるセンサ20により図7の計測システム50を用いて砂杭の一部SC1における比抵抗値を計測し(S26)、図5のようにして砂杭形状を評価し、その評価の結果、砂杭形状が目標値を満足せず出来形不足の場合(S27)、打ち戻し(締め固め)工程S25(または砂投入工程S23)に戻り、砂杭形状が目標値を満足するまで、工程S25~S27(または工程S23~S27)を繰り返す。
【0054】
次に、砂杭造成を次の深度まで行う場合(S28)、工程S23に戻り、同様の工程を経て、図9(f)のように大径の砂杭の一部SC2(図9(e)の砂杭の一部SC1よりも高さが高い)をつくり、比抵抗値の計測工程(S26)を経て砂杭形状が目標値を満足することを確認する。
【0055】
以上の工程を経て砂杭SCを、図8(g)のように、表層の軟弱粘性土層G1内に造成する。本実施形態では、図8(e)~(g)の砂杭の一部(SC1,SC2)を造成した段階および砂杭SCが完成した段階で比抵抗値の計測による砂杭形状の評価を実行し目標値を満足することを確認するので、地盤に造成される砂杭形状の品質に関する施工管理を確実に行うことができ、高品質な砂杭を造成できる。また、砂杭形状の評価結果に基づいて砂杭造成の諸施工条件(たとえば、砂投入量や砂杭造成長)を施工途中で見直して適宜変更できるので、適切な施工管理が可能となる。
【0056】
以上のように、本実施形態によるSCP工法の施工管理方法によれば、次の効果を奏する。
(1)従来までは砂杭造成時における砂杭形状の評価ができなかったのに対し、砂杭造成時にリアルタイムで砂杭形状の評価・確認が可能である。
(2)砂杭造成時に砂杭形状評価を行っているので全数調査が可能である。
(3)砂杭をたとえば約1m造成する度に砂杭形状評価・確認を行うことができるので、設計値を満たしていない箇所を早期に発見することができ、締固め等を行うことで即座に補修を行うことができ、高品質の砂杭を造成することが可能になる。従来まで困難であった砂杭造成後の手直しは不要となる。
【0057】
次に、本実施形態によるSCP工法用ケーシングパイプに設けられる電極の電気絶縁を図るための構成について図10を参照して説明する。図10は、電気絶縁材料による被覆膜を有するSCP工法用ケーシングパイプの要部縦断面図(a)および電極近傍の一部縦断面図(b)である。
【0058】
砂杭の比抵抗値計測のための電極は指向性がなく、ケーシングパイプ等の金属部材(鋼管)の影響を受ける懸念がある。そこで、図10(a)のケーシングパイプ10Aは、計測誤差の低減を図るために電気絶縁性材料で被覆した被覆膜60(ハッチングで示す)を外周側面10bに有する。被覆膜60の被覆範囲は計測に影響のある範囲が好ましく、たとえば、電流電極21,24の間隔と同程度である。
【0059】
また、電極21~24は、ケーシングパイプ貫入時や砂杭締固め時に大きな力を受けると考えられることから、図10(b)のように被覆膜60に凹部61を設け、電極21の一部が被覆膜60内に埋め込まれるように電極21を配置する。他の電極22~24も同様の構造とする。
【0060】
被覆膜60の被覆厚さは、図10(b)のように電極の埋め込みが可能な範囲でできる限り薄い構造とする。たとえば、ケーシングパイプ10Aの下端11から1m程度の範囲でケーシングパイプ10Aの外周面10aの全体を覆うように被覆厚さ10mmの被覆とする。
【0061】
以上のように本発明を実施するための形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。たとえば、図8(e)~(g)、図9では、砂杭の一部SC1,SC2および砂杭SCについて比抵抗値の計測による砂杭形状の評価を実行し目標値を満足することを確認するが、さらに多段階に多くの深度で、たとえば高さ1m毎に行ってもよい。また、図9では、図2の電極配置により比抵抗値の計測を行ってもよいことはもちろんである。
【0062】
また、図2では、測定距離c1~c3で比抵抗値を計測できるようにしたが、複数の電極の数や組み合わせを調整して、2つの異なる測定距離を計測するようにしてもよい。また、複数の電極の数を増やし、4以上の異なる測定距離で計測できるようにSCP工法用センサを構成することで、詳細な砂杭の径の調査が可能であり、さらに精度よく砂杭形状を評価できる。また、PC等の画面に砂杭の所定高さにおける横断面形状を表示するように構成してもよい。
【0063】
また、図8は、砂杭を水底に造成する例を示すが、本発明はこれに限定されず、陸上の飽和地盤に砂杭を造成する場合にも適用できることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、SCP工法による地盤での砂杭造成途中および直後に砂杭形状をリアルタイムで確認し評価できるので、高品質の砂杭造成が可能となる。
【符号の説明】
【0065】
10,10A SCP工法用ケーシングパイプ、ケーシングパイプ
10a 砂供給口
10b 外周側面
20 SCP工法用センサ、センサ
21~24 電極
21,24 電流電極
22,23 電位電極
31~48 電極
31,48 電流電極
50 計測システム
60 被覆膜
61 凹部
c 電極22,23の間隔、測定距離
c1,c2,c3 測定距離
C1,C2 電流電極
P1,P2 電位電極
GG 水底地盤
G1 軟弱粘性土層、表層
G2 支持層
L 配線
SC 砂杭
SC1,SC2 砂杭の一部
SS 上端面、表面
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11