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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】圧延装置
(51)【国際特許分類】
   B21B 31/02 20060101AFI20220318BHJP
   B21B 13/00 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
B21B31/02 Z
B21B13/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018018292
(22)【出願日】2018-02-05
(65)【公開番号】P2019135063
(43)【公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】新保 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】橋本 量
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-076306(JP,U)
【文献】特開平04-046616(JP,A)
【文献】特開昭61-259811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 31/02,13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延ロールの両端部をそれぞれ保持する二つのスタンドと、
前記二つのスタンドの少なくとも一方を移動させる第一油圧シリンダと、
前記二つのスタンドの間隔を調節する第二油圧シリンダと、
前記第一油圧シリンダに連動する第三油圧シリンダと、
前記第三油圧シリンダから前記第二油圧シリンダに油圧を伝達する油圧回路と、
前記第一油圧シリンダの動力が前記第三油圧シリンダを介して前記第二油圧シリンダに伝わる第一状態と、前記第一油圧シリンダの動力が第二油圧シリンダに伝わらない第二状態とを切り替える切替部と、を備える圧延装置。
【請求項2】
前記切替部は、
前記第二状態において前記油圧回路を遮断するバルブと、
前記第二状態において前記第三油圧シリンダからの油圧を前記第三油圧シリンダに戻すバイパス回路と、
前記第一状態において前記バイパス回路を遮断するバルブとを有する、請求項記載の圧延装置。
【請求項3】
前記切替部は、前記第二状態において前記第一油圧シリンダと前記第三油圧シリンダとの連動を解除する解除機構を有する、請求項記載の圧延装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧延装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、軸線方向に並ぶ複数種類の孔型(例えばセンタリング孔型、幅広げ孔型、溝消し孔型及び造形孔型等)を有する孔型ロール、及び当該孔型ロールを用いた圧延方法が開示されている。この圧延方法においては、使用する孔型を変更しながら、同一の孔型ロールを用いた圧延が繰り返される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-45902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同一の圧延装置にて多様な圧延工程を実行する場合、圧延装置の構成が複雑化する傾向がある。例えば特許文献1に例示されるように、使用する孔型を変えながら同一のロールを用いて圧延を繰り返す場合には、ロールに直交する方向に沿ってワークを送る機構に加え、ロールに沿う方向に沿ってワークの位置をずらす機構が求められる。
【0005】
そこで本開示は、簡素な構成で多様な圧延工程に適応可能な圧延装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る圧延装置は、圧延ロールの両端部をそれぞれ保持する二つのスタンドと、二つのスタンドの少なくとも一方を移動させる第一油圧シリンダと、二つのスタンドの間隔を調節する第二油圧シリンダと、を備える。
【0007】
この圧延装置によれば、第一油圧シリンダ及び第二油圧シリンダの組み合わせにより、二つのスタンドの位置と、二つのスタンドの間隔の両方を調節することができる。例えば、第二油圧シリンダにより二つのスタンドの間隔を保ちながら第一油圧シリンダを作動させることによって、二つのスタンドの位置を調節することができる。また、第一油圧シリンダ及び第二油圧シリンダの両方を作動させることによって、所望の位置において二つのスタンドの間隔を調節することができる。従って、簡素な構成で多様な圧延工程に適応可能である。
【0008】
圧延装置は、第一油圧シリンダに連動する第三油圧シリンダと、第三油圧シリンダから第二油圧シリンダに油圧を伝達する油圧回路と、第一油圧シリンダの動力が第三油圧シリンダを介して第二油圧シリンダに伝わる第一状態と、第一油圧シリンダの動力が第二油圧シリンダに伝わらない第二状態とを切り替える切替部と、を更に備えていてもよい。この場合、第一油圧シリンダによるスタンドの移動と、第二油圧シリンダによる二つのスタンドの幅調節とに一つの油圧源を共用することができる。従って、より簡素な構成にて多様な圧延工程に適応可能である。
【0009】
切替部は、第二状態において油圧回路を遮断するバルブと、第二状態において第三油圧シリンダからの油圧を第三油圧シリンダに戻すバイパス回路と、第一状態においてバイパス回路を遮断するバルブとを有していてもよい。この場合、バルブの開閉によって第一状態及び第二状態を容易に切り替えることができる。
【0010】
切替部は、第二状態において第一油圧シリンダと第三油圧シリンダとの連動を解除する解除機構を有していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、簡素な構成で多様な圧延工程に適応可能な圧延装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】圧延装置の正面図である。
図2図1中のII-II線に沿う側面図である。
図3】位置・幅調節部の構成を示す模式図である。
図4】位置の調節動作を示す模式図である。
図5】幅の調節動作を示す模式図である。
図6】位置・幅調節部の変形例を示す模式図である。
図7】位置の調節動作を示す模式図である。
図8】幅の調節動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1及び図2に示す圧延装置1は、例えばスラブを圧延によって型鋼(例えばH型鋼)に成形する装置である。以下、成形前のスラブ、成形後の型鋼、及びこれらの中間状態の成形体をいずれも「ワーク」という。圧延装置1は、互いに平行な圧延ロール10,20と、二つのスタンド30と、トルク伝達部50,60と、位置・幅調節部100とを備える。
【0015】
圧延ロール10,20は、上下に並ぶように配置されており、圧延ロール10がワークの上に接し、圧延ロール20がワークの下に接する。以下における「左右」は、圧延ロール10,20の一端側(例えば図1の左側)を「左」とし、圧延ロール10,20の他端側を「右」とした方向を意味する。圧延ロール10は、左右方向に延びたロール本体11と、ロール本体11の左端から更に左に延びたロールネック12と、ロール本体11の右端から更に右に延びたロールネック13とを有する。圧延ロール20は、左右方向に延びたロール本体21と、ロール本体21の左端から更に左に延びたロールネック22と、ロール本体21の右端から更に右に延びたロールネック23とを有する。
【0016】
二つのスタンド30は、圧延ロール10,20の両端部をそれぞれ回転自在に保持する。例えば、左側のスタンド30は圧延ロール10,20の左側のロールネック12,22を回転自在に保持し、右側のスタンド30は圧延ロール10,20の右側のロールネック13,23を回転自在に保持する。
【0017】
左側のスタンド30は、ハウジング31と、上側軸受部33と、下側軸受部34と、圧下装置32とを有する。ハウジング31は、ロールネック12,22を包囲する。上側軸受部33は、ハウジング31内において圧延ロール10のロールネック12を回転自在に保持する。下側軸受部34は、ハウジング31内において圧延ロール20のロールネック22を回転自在に保持する。圧下装置32は、例えば油圧シリンダであり上側軸受部33に下向きの力を加える。圧下装置32は、ハウジング31の上に取り付けられており、ハウジング31内に突出した圧下ロッド35を有する。圧下ロッド35の下端部は上側軸受部33の上部に接続されている。
【0018】
右側のスタンド30も左側のスタンド30と同様に構成されている。右側のスタンド30の上側軸受部33は、圧延ロール10のロールネック13を回転自在に保持する。右側のスタンド30の下側軸受部34は、圧延ロール20のロールネック23を回転自在に保持する。以下、必要に応じて、左側のスタンド30をスタンド30Aとし、右側のスタンド30をスタンド30Bとしてこれらを区別する。
【0019】
トルク伝達部50は、圧延ロール10の軸線方向(圧延ロール10の中心軸線に沿う方向)における当該圧延ロール10の移動を許容しつつ、当該圧延ロール10にトルクを伝達する。例えばトルク伝達部50は、スピンドル51とジョイント52とを有する。スピンドル51は、例えば電動モータ等の動力源に接続されており、動力源から圧延ロール10のロールネック13の近傍までトルクを伝達する。ジョイント52は、例えばユニバーサルジョイントであり、スピンドル51により伝達されたトルクを圧延ロール10に伝える。ジョイント52は、軸線方向における圧延ロール10の移動を許容するようにロールネック13に接続されている。軸線方向における圧延ロール10の移動を許容する接続構造の具体例としては、軸線方向に沿ってスライド可能なカップリング構造が挙げられる。ジョイント52は、例えばボルト締結等、非破壊で取り外し可能な固定方法によってロールネック13に接続されている。
【0020】
トルク伝達部60は、圧延ロール20の軸線方向(圧延ロール20の中心軸線に沿う方向)における当該圧延ロール20の移動を許容しつつ、当該圧延ロール20にトルクを伝達する。例えばトルク伝達部60は、スピンドル51及びジョイント52と同様のスピンドル61及びジョイント62を有する。スピンドル61は、例えば電動モータ等の動力源に接続されており、動力源から圧延ロール20のロールネック23の近傍までトルクを伝達する。ジョイント62は、スピンドル61により伝達されたトルクを圧延ロール20に伝える。
【0021】
位置・幅調節部100は、二つのスタンド30同士の位置及び間隔を調節する。図3に示すように、位置・幅調節部100は、第一油圧シリンダ120と、第二油圧シリンダ130と、第三油圧シリンダ140と、連結部材150と、油圧ポンプ160と、油圧回路161,162と、切替部170と、複数のガイドロッドユニット180とを有する。
【0022】
第一油圧シリンダ120は、二つのスタンド30の少なくとも一方を移動させる。第一油圧シリンダ120は、左右方向において二つのスタンド30の外側に配置されており、近位にあるスタンド30を移動させる。一例として、第一油圧シリンダ120は、左側のスタンド30Aよりも左方に配置されており、スタンド30Aを移動させる。第一油圧シリンダ120は、シリンダチューブ121と、ピストン122と、ピストンロッド123とを有する。
【0023】
シリンダチューブ121は、左右方向に沿った状態で支柱110等に固定されている。ピストン122は、左右方向に沿って可動な状態でシリンダチューブ121内に配置されており、シリンダチューブ121内を左側の空間121a及び右側の空間121bに仕切っている。ピストンロッド123は、ピストン122の中心部から左右方向に突出している。ピストンロッド123の右端部はシリンダチューブ121外に突出してスタンド30Aのハウジング31に接続されている。ピストンロッド123の左端部もシリンダチューブ121外に突出している。
【0024】
第二油圧シリンダ130は、二つのスタンド30の間隔を調節する。第二油圧シリンダ130は、二つのスタンド30のいずれに設けられていてもよい。例えば第二油圧シリンダ130は、第一油圧シリンダ120に対して近位にあるスタンド30(例えば左側のスタンド30A)に設けられている。第二油圧シリンダ130は、シリンダチューブ131と、ピストン132と、ピストンロッド133とを有する。
【0025】
シリンダチューブ131は、左右方向に沿った状態でスタンド30Aのハウジング31の上部に固定されている。ピストン132は、左右方向に沿って可動な状態でシリンダチューブ131内に配置されており、シリンダチューブ131内を左側の空間131a及び右側の空間131bに仕切っている。ピストンロッド133は、ピストン132の中心部から左右方向に突出している。ピストンロッド133の右端部はシリンダチューブ131外に突出してスタンド30Bのハウジング31の上部に接続されている。
【0026】
第三油圧シリンダ140は、第一油圧シリンダ120に連動するように配置されている。例えば第三油圧シリンダ140は第一油圧シリンダ120と平行に配置されている。第三油圧シリンダ140は、シリンダチューブ141と、ピストン142と、ピストンロッド143とを有する。
【0027】
シリンダチューブ141は、第一油圧シリンダ120のシリンダチューブ121と平行に配置され、支柱110等に固定されている。ピストン142は、左右方向に沿って可動な状態でシリンダチューブ141内に配置されており、シリンダチューブ141内を左側の空間141a及び右側の空間141bに仕切っている。ピストンロッド143は、ピストン142の中心部から左右方向に突出しており、ピストンロッド143の右端部及び左端部はシリンダチューブ141外に突出している。ピストンロッド143の左端部は、連結部材150によりピストンロッド123の左端部に連結されている。これにより、第三油圧シリンダ140のピストンロッド143及びピストン142は、第一油圧シリンダ120のピストンロッド123及びピストン122に連動する。
【0028】
油圧ポンプ160は、作動油の圧送により第一油圧シリンダ120に動力を発生させる。油圧回路161は、油圧ポンプ160を介して第一油圧シリンダ120の空間121aと空間121bとを接続する。油圧回路161は、管路161a,161bを含む。管路161aは空間121aと油圧ポンプ160とを接続する。管路161bは空間121bと油圧ポンプ160とを接続する。
【0029】
油圧回路162は、第三油圧シリンダ140から第二油圧シリンダ130に油圧を伝達する。油圧回路162は、管路162a,162bを含む。管路162a,162bは、第一油圧シリンダ120がスタンド30Aを遠位側に移動させる方向に動作する際に、第二油圧シリンダ130がスタンド30Bをスタンド30A側に近付けるように配管されている。例えば、管路162aは、第三油圧シリンダ140の空間141aと第二油圧シリンダ130の空間131aとを接続する。管路162bは、第三油圧シリンダ140の空間141bと第二油圧シリンダ130の空間131bとを接続する。
【0030】
切替部170は、第一油圧シリンダ120の動力が第三油圧シリンダ140を介して第二油圧シリンダ130に伝わる第一状態と、第一油圧シリンダ120の動力が第二油圧シリンダ130に伝わらない第二状態とを切り替える。例えば切替部170は、バルブ172,173と、バイパス回路171と、バルブ174とを有する。バルブ172,173は、第一状態において油圧回路162を開通させ、第二状態において油圧回路162を遮断する。例えば、バルブ172,173は、管路162a,162bにそれぞれ設けられており、管路162a,162b内の流路を開閉する。なお、切替部170は、バルブ172,173の少なくとも一方を有していればよい。
【0031】
複数(例えば4本)のガイドロッドユニット180は、ハウジング31の四隅にそれぞれ配置されている(図2参照)。各ガイドロッドユニット180は、二つのスタンド30の間で左右方向に延び、左右のハウジング31同士をつないでいる。複数のガイドロッドユニット180は、ハウジング31同士の間隔を変更可能としつつ、ハウジング31同士を平行に保つ。各ガイドロッドユニット180はロック機構(不図示)を内蔵しており、当該ロック機構によって、ハウジング31同士の間隔を変更可能にする状態(以下、「フリー状態」という。)と、ハウジング31同士の間隔を変更不可能にする状態(以下、「ロック状態」という。)とを切り替えることが可能である。
【0032】
バイパス回路171は、第二状態において第三油圧シリンダ140からの油圧を第三油圧シリンダ140に戻す。バイパス回路171は管路171aを含む。管路171aは、バルブ172,173と第三油圧シリンダ140との間において、管路162a,162b同士を接続する。
【0033】
バルブ174は、第一状態においてバイパス回路171を遮断し、第二状態においてバイパス回路171を開通させる。例えばバルブ174は管路171aに設けられており、管路171a内の流路を開閉する。
【0034】
位置・幅調節部100によれば、二つのスタンド30の間隔を固定した状態にて、二つのスタンド30を同じ方向に移動させる動作(以下、「位置変更モードの動作」という。)と、二つのスタンド30の間隔を変更する動作(以下、「幅変更モードの動作」という。)の両方を実行可能である。
【0035】
図4に示すように、位置変更モードの動作においては、切替部170を第二状態(バルブ172,173を閉じ、バルブ174を開いた状態)とし、ガイドロッドユニット180をロック状態として、油圧ポンプ160により第一油圧シリンダ120のピストン122を移動させる。これにより、ピストンロッド123に接続されたスタンド30Aが移動する。ピストン122の移動に連動して、第三油圧シリンダ140のピストン142も移動するが、ピストン142から押し出された作動油は第二油圧シリンダ130を経ずにバイパス回路171を経て第三油圧シリンダ140に還流する。このため、第二油圧シリンダ130は作動せずに二つのスタンド30の間隔を一定に保つ。従って、スタンド30Bもスタンド30Aと共に移動する。
【0036】
図5に示すように、幅変更モードの動作においては、切替部170を第一状態(バルブ172,173を開き、バルブ174を閉じた状態)とし、ガイドロッドユニット180をフリー状態として、油圧ポンプ160により第一油圧シリンダ120のピストン122を移動させる。これにより、ピストンロッド123に接続されたスタンド30Aが移動する。ピストン122の移動に連動して、第三油圧シリンダ140のピストン142も移動する。ピストン142から押し出された作動油は油圧回路162により第二油圧シリンダ130に送られてピストン132を移動させる。これにより、二つのスタンド30の間隔が変更される。間隔変更後の二つのスタンド30の位置は、再度位置変更モードの動作を実行することによって適宜調節可能である。
【0037】
なお、切替部170は上述した構成に限定されない。切替部170は、上記第一状態と上記第二状態とを切り替えられる限り、どのように構成されていてもよい。例えば、図6に示す切替部170Aは、上述したバルブ172,173,174及びバイパス回路171に代えて、解除機構175を有する。解除機構175は、連結部材150に設けられており、第二状態において第一油圧シリンダ120と第二油圧シリンダ130との連動を解除する。例えば解除機構175は、ボルトの取り外し、又はクランプ機構の解除等によって、連結部材150とピストンロッド123との接続、及び連結部材150とピストンロッド143との接続の少なくとも一方を解除し得るように構成されている。この構成によっても、上記位置変更モードの動作及び幅変更モードの動作の両方を実行可能である。
【0038】
図7に示すように、位置変更モードの動作においては、切替部170Aを第二状態(連結部材150とピストンロッド123との接続又は連結部材150とピストンロッド143との接続が解除された状態)とし、ガイドロッドユニット180をロック状態として、油圧ポンプ160により第一油圧シリンダ120のピストン122を移動させる。これにより、ピストンロッド123に接続されたスタンド30Aが移動する。ピストン142は移動しないので、第一油圧シリンダ120の動力は第二油圧シリンダ130に伝わらない。このため、第二油圧シリンダ130は作動せずに二つのスタンド30の間隔を一定に保つ。従って、スタンド30Bもスタンド30Aと共に移動する。
【0039】
図8に示すように、幅変更モードの動作においては、切替部170Aを第一状態(連結部材150とピストンロッド123及びピストンロッド143とを接続した状態)とし、ガイドロッドユニット180をフリー状態として、油圧ポンプ160により第一油圧シリンダ120のピストン122を移動させる。これにより、ピストンロッド123に接続されたスタンド30Aが移動する。ピストン122の移動に連動して、第三油圧シリンダ140のピストン142も移動する。ピストン142から押し出された作動油は油圧回路162により第二油圧シリンダ130に送られてピストン132を移動させる。これにより、二つのスタンド30の間隔が変更される。
【0040】
以上に説明したように、圧延装置1は、圧延ロール10,20の両端部をそれぞれ保持する二つのスタンド30と、二つのスタンド30の少なくとも一方を移動させる第一油圧シリンダ120と、二つのスタンド30の間隔を調節する第二油圧シリンダ130と、を備える。
【0041】
この圧延装置1によれば、第一油圧シリンダ120及び第二油圧シリンダ130の組み合わせにより、二つのスタンド30の位置と、二つのスタンド30の間隔の両方を調節することができる。例えば、第二油圧シリンダ130により二つのスタンド30の間隔を保ちながら第一油圧シリンダ120を作動させることによって、二つのスタンド30の位置を調節することができる。また、第一油圧シリンダ120及び第二油圧シリンダ130の両方を作動させることによって、所望の位置において二つのスタンド30の間隔を調節することができる。従って、簡素な構成で多様な圧延工程に適応可能である。例えば、圧延ロール10,20の軸線方向におけるワークの位置をずらすことなく、圧延ロール10,20の使用部位(ワークに接する部位)を変更することができる。また、幅の調節によって、互いに長さの異なる多様な圧延ロール10,20を用いることができる。
【0042】
圧延装置1は、第一油圧シリンダ120に連動する第三油圧シリンダ140と、第三油圧シリンダ140から第二油圧シリンダ130に油圧を伝達する油圧回路162と、第一油圧シリンダ120の動力が第三油圧シリンダ140を介して第二油圧シリンダ130に伝わる第一状態と、第一油圧シリンダ120の動力が第二油圧シリンダ130に伝わらない第二状態とを切り替える切替部170と、を更に備えていてもよい。この場合、第一油圧シリンダ120によるスタンド30の移動と、第二油圧シリンダ130による二つのスタンド30の幅調節とに一つの油圧源を共用することができる。従って、より簡素な構成にて多様な圧延工程に適応可能である。
【0043】
切替部170は、第二状態において油圧回路を遮断するバルブ172,173と、第二状態において第三油圧シリンダ140からの油圧を第三油圧シリンダ140に戻すバイパス回路171と、第一状態においてバイパス回路を遮断するバルブ174とを有していてもよい。この場合、バルブ172,173,174の開閉によって第一状態及び第二状態を容易に切り替えることができる。
【0044】
切替部170は、第二状態において第一油圧シリンダ120と第三油圧シリンダ140との連動を解除する解除機構175を有していてもよい。
【0045】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…圧延装置、10,20…圧延ロール、30,30A,30B…スタンド、120…第一油圧シリンダ、130…第二油圧シリンダ、140…第三油圧シリンダ、170…切替部、171…バイパス回路、172,173,174…バルブ、175…解除機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8