(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】液体供給装置
(51)【国際特許分類】
F04B 43/113 20060101AFI20220318BHJP
【FI】
F04B43/113
(21)【出願番号】P 2018020233
(22)【出願日】2018-02-07
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000145611
【氏名又は名称】株式会社コガネイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村岡 裕之
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02195149(GB,A)
【文献】実開平04-015938(JP,U)
【文献】特開2016-084803(JP,A)
【文献】特開2012-071230(JP,A)
【文献】特開2005-240762(JP,A)
【文献】特開2016-035241(JP,A)
【文献】特開平02-161183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体流入口と液体流出口とに連通するポンプ室が内側に形成され、径方向に弾性変形自在のチューブフラムと、
前記チューブフラムが内部に組み込まれるポンプケースと、
前記チューブフラムと前記ポンプケースとの間に形成される駆動室に正圧空気を供給する正圧空気供給路と、
前記駆動室に負圧空気を供給する負圧空気供給路と、
前記正圧空気供給路を前記駆動室に連通させる状態と、前記負圧空気供給路を前記駆動室に連通させる状態とに流路を切り換える流路切換弁と、
前記ポンプケース
の外側に設けられ
、前記チューブフラムの
径方向内方の吐出端位置および径方向外方の吸入端位置を検出する非接触センサと、
前記ポンプケースに設けられた透過孔と、
前記非接触センサからの信号に基づいて前記流路切換弁の作動を制御する制御部と、
を有し、
前記チューブフラムは、前記ポンプケースに固定される両端部と、前記両端部の間の弾性変形部とを備え、
前記非接触センサは、前記透過孔からレーザ光を前記チューブフラムに照射する発光部および前記チューブフラムからの反射光を受光する受光部を備え、
前記非接触センサのレーザ光は、前記チューブフラムの径方向中心に向けて前記チューブフラムの前記弾性変形部に照射される、液体供給装置。
【請求項2】
請求項
1記載の液体供給装置において、
前記弾性変形部は、それぞれ変形中心となる頂点部が円周方向にほぼ等間隔に設けられた断面円弧状の2つまたは3つの湾曲部と、円周方向に隣り合う前記湾曲部に連なり径方向に屈曲する屈曲部とを有する、液体供給装置。
【請求項3】
請求項2記載の液体供給装置において、
前記弾性変形部が径方向外方へ弾性変形を終了した状態において、前記屈曲部は径方向内方に折り曲げられている、液体供給装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の液体供給装置において、
前記非接触センサは、前記チューブフラムの長手方向中央部における弾性変形
端位置を検出する、液体供給装置。
【請求項5】
請求項
2記載の液体供給装置において、
前記非接触センサは、前記屈曲部の円周方向中央部の径方向変形部における弾性変形
端位置を検出する、液体供給装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の液体供給装置において、
操作信号が印加されている時は負圧空気供給源と前記流路切換弁を連通させ、操作信号が印加されていない時は前記負圧空気供給源と前記流路切換弁の連通を遮断する負圧用開閉弁と、
操作信号が印加されている時は正圧空気供給源と前記流路切換弁を連通させ、操作信号が印加されていない時は前記正圧空気供給源と前記流路切換弁の連通を遮断する正圧用開閉弁を有する、液体供給装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の液体供給装置において、
前記流路切換弁は、操作信号が印加されている時は前記正圧空気供給路と前記駆動室を連通させ、操作信号が印加されていない時は前記負圧空気供給路と前記駆動室を連通させる、液体供給装置。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の液体供給装置において、
前記流路切換弁は、正圧供給用の操作信号が印加されている時は正圧空気供給源と前記駆動室を連通させ、負圧供給用の操作信号が印加されている時は負圧空気供給源と前記駆動室を連通させ、操作信号が印加されていない時は前記正圧空気供給源および前記負圧空気供給源と前記駆動室との連通を遮断する、液体供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液等の液体を被塗布物に供給する液体供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路装置や液晶パネル等の技術分野においては、フォトレジスト液等の液体を被塗布物に供給するために液体供給装置が使用されている。液体供給装置は、液体容器に収容された液体をノズル等の塗布具に供給することにより、被塗布物に液体が供給される。特許文献1には、可撓性チューブつまりチューブフラムを備えた薬液供給装置が記載されている。また、特許文献2には、一次側ポンプとこの一次側ポンプに直列に接続される二次側ポンプとを備えた薬液供給装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された薬液供給装置は、可撓性チューブが組み込まれるハウジングを有している。この薬液供給装置においては、可撓性チューブとハウジングとの間に形成された加圧室に、ポンプから液体を給排することにより、可撓性チューブの内側の膨張収縮室を膨張収縮させてポンプ動作が行われる。
【0004】
特許文献2に記載された薬液供給装置においては、一次側ポンプは径方向に弾性変形自在にポンプケースに組み込まれた一次側チューブを有し、一次側チューブは薬液タンク内の薬液が薬液注入手段により注入されると膨張する。一方、二次側ポンプは径方向に弾性変形自在にケース内に組み込まれた二次側チューブを有し、一次側チューブに注入された薬液は、一次側チューブを圧縮性流体により収縮することにより二次側チューブに注入される。ピストン等の二次側チューブ駆動手段から供給される液体つまり非圧縮性媒体により、二次側チューブは収縮駆動され、二次側チューブに注入された薬液は、被塗布物に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-83337号公報
【文献】特開2012-71230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される薬液供給装置においては、可撓性チューブに供給された薬液等の液体を径方向に膨張収縮させるために、液体を加圧室に供給したり、加圧室内から液体を排出したりするために、ポンプが用いられている。膨張収縮室つまりポンプ室が最も収縮した状態のときには、加圧室が最も膨張した状態であり、加圧室に液体を供給するためのポンプは、加圧室が最も膨張したときの容積に対応する吐出容量としなければならず、ポンプを含めた薬液供給装置の大型化が避けられない。
【0007】
特許文献2に記載される薬液供給装置は、一次側ポンプと二次側ポンプとを有し、一次側ポンプの一次側チューブを収縮する薬液注入手段が一次側ポンプに設けられ、二次側ポンプの二次側チューブを収縮するために、液体を吐出する駆動ポンプが設けられている。このため、薬液供給装置は一次側と二次側の2台のポンプに加え、液体を二次側ポンプに供給するための駆動ポンプを有しており、薬液供給装置の大型化が避けられない。
【0008】
本発明の目的は、液体供給装置を小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体供給装置は、液体流入口と液体流出口とに連通するポンプ室が内側に形成され、径方向に弾性変形自在のチューブフラムと、前記チューブフラムが内部に組み込まれるポンプケースと、前記チューブフラムと前記ポンプケースとの間に形成される駆動室に正圧空気を供給する正圧空気供給路と、前記駆動室に負圧空気を供給する負圧空気供給路と、前記正圧空気供給路を前記駆動室に連通させる状態と、前記負圧空気供給路を前記駆動室に連通させる状態とに流路を切り換える流路切換弁と、前記ポンプケースの外側に設けられ、前記チューブフラムの径方向内方の吐出端位置および径方向外方の吸入端位置を検出する非接触センサと、前記ポンプケースに設けられた透過孔と、前記非接触センサからの信号に基づいて前記流路切換弁の作動を制御する制御部と、を有し、前記チューブフラムは、前記ポンプケースに固定される両端部と、前記両端部の間の弾性変形部とを備え、前記非接触センサは、前記透過孔からレーザ光を前記チューブフラムに照射する発光部および前記チューブフラムからの反射光を受光する受光部を備え、前記非接触センサのレーザ光は、前記チューブフラムの径方向中心に向けて前記チューブフラムの前記弾性変形部に照射される。
【発明の効果】
【0010】
チューブフラムの径方向の弾性変形量を非接触センサにより検出するので、チューブフラムが径方向内方に所定量弾性変形した状態(チューブフラムが吐出端位置となった状態)と、チューブフラムが径方向外方に所定量弾性変形した状態(チューブフラムが吸入端位置となった状態)とを非接触センサにより直接検出することができる。これにより、それぞれの状態を高精度で検出することができる。
【0011】
また、正圧空気と負圧空気とを駆動室に供給することにより、チューブフラムを径方向に弾性変形させてポンプ室を膨張収縮させるので、液体を駆動室に供給するためのポンプを用いることなく、チューブフラムを弾性変形させることができるので、液体供給装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施の形態である液体供給装置を示す正面図である。
【
図4】チューブフラムを駆動するポンプ駆動部の空気圧回路である。
【
図5】
図3におけるB-B線断面図であり、(A)はチューブフラムが径方向外方に弾性変形した状態を示し、(B)はチューブフラムが径方向内方に弾性変形した状態を示す。
【
図6】変形例であるチューブフラムにおける
図5と同様の部分の断面図であり、(A)はチューブフラムが径方向外方に弾性変形した状態を示し、(B)はチューブフラムが径方向内方に弾性変形した状態を示す。
【
図7】他の変形例であるチューブフラムにおける
図4と同様の部分の断面図であり、(A)はチューブフラムが径方向外方に弾性変形した状態を示し、(B)はチューブフラムが径方向内方に弾性変形した状態を示す。
【
図9】液体供給装置による液体供給動作を示すタイムチャートである。
【
図10】ポンプ駆動部の変形例を示す空気圧回路である。
【
図11】
図10に示されたポンプ駆動部の制御部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1および
図2に示されるように、液体供給装置10は、円筒形状のポンプケース11を有し、ポンプケース11は長方形の台板12の上に固定される。ハンドル13が台板12の
図2における左右に取り付けられている。駆動制御ケース14がポンプケース11の上に取り付けられており、駆動制御ケース14はポンプケース11の長手方向に沿っている。
【0015】
図3に示されるように、フッ素樹脂製の可撓性のチューブつまりチューブフラム15がポンプケース11の内部に組み込まれている。ポンプ室16がチューブフラム15の内側に形成される。入口側の固定リング17がチューブフラム15の一端部に固定され、固定リング17はチューブフラム15の一端部が嵌合する嵌合部17aと、ポンプケース11の一方の端面に突き当てられるフランジ部17bとを有している。チューブフラム15の一端部は嵌合部17aとポンプケース11との間で挟み付けられる。
【0016】
出口側の固定リング18がチューブフラム15の他端部に固定され、固定リング18はチューブフラム15の他端部が嵌合する嵌合部18aと、ポンプケース11の他方の端面に突き当てられるフランジ部18bとを有している。チューブフラム15の他端部は嵌合部18aとポンプケース11との間で挟み付けられる。それぞれの固定リング17、18はフッ素樹脂製であり、チューブフラム15の両端部の間の部分が径方向に弾性変形自在の弾性変形部19である。
【0017】
入口側の継手部材21がポンプケース11の一方の端面に取り付けられ、固定リング17のフランジ部17bは継手部材21とポンプケース11との間で挟み付けられる。出口側の継手部材22がポンプケース11の他方の端面に取り付けられ、固定リング18のフランジ部18bは継手部材22とポンプケース11との間で挟み付けられる。継手部材21はポンプ室16に連通する液体流入口23を有し、継手部材22はポンプ室16に連通する液体流出口24を有している。
【0018】
図1に示されるように、流入流路25aが入口側の継手部材21に接続され、流出流路25bが出口側の継手部材22に接続される。流入流路25aは液体Lが収容される液体容器26に取り付けられ、塗布具27が流出流路25bの先端に取り付けられている。逆止弁28aが流入流路25aに設けられている。逆止弁28aは液体容器26内の液体が液体流入口23への流れるのを許容し、逆方向の流れを阻止する。逆止弁28bが流出流路25bに設けられている。逆止弁28bは液体流出口24から塗布具27への液体の流れを許容し、逆方向の流れを阻止する。流入流路25aと流出流路25bは、それぞれ配管やホース等により形成される。
【0019】
チューブフラム15の弾性変形部19が径方向内方に弾性変形すると、ポンプ室16は収縮する。これにより、ポンプ室16内の液体は液体流出口24から流出流路25bを介して塗布具27に供給される。一方、弾性変形部19が径方向外方に弾性変形すると、ポンプ室16は膨張する。これにより、液体容器26内の液体Lは流入流路25aに案内されて液体流入口23からポンプ室16内に供給される。
【0020】
図3に示されるように、駆動室30がチューブフラム15とポンプケース11の間に形成され、駆動室30に圧縮空気つまり正圧空気を供給すると、チューブフラム15は径方向内方に弾性変形し、ポンプ室16は収縮する。一方、駆動室30に負圧空気を供給して駆動室30を負圧にすると、チューブフラム15は径方向外方に弾性変形し、ポンプ室16は膨張する。
【0021】
給排ポート31がポンプケース11に形成され、給排ポート31は給排流路32により流路切換弁33に接続される。
図2に示されるように、正圧配管継手34と負圧配管継手35が駆動制御ケース14に取り付けられる。正圧配管継手34は、
図3に示されるように、正圧空気供給路36により流路切換弁33に接続され、負圧配管継手35は負圧空気供給路37により流路切換弁33に接続される。
図3においては、正圧空気供給路36と負圧空気供給路37の一部が示されている。給排流路32、正圧空気供給路36および負圧空気供給路37は、それぞれ配管やホース等により形成される。
【0022】
図4は、チューブフラム15を駆動するポンプ駆動部の空気圧回路である。正圧配管継手34に接続される流路により、正圧空気供給路36は正圧空気供給源Pに接続される。負圧配管継手35に接続される流路により、負圧空気供給路37は負圧空気供給源Vに接続される。正圧用の開閉弁41が正圧空気供給路36に設けられ、負圧用の開閉弁42が負圧空気供給路37に設けられている。それぞれの開閉弁41、42は2ポート電磁弁であり、
図3に示されるように、駆動制御ケース14内に設けられている。開閉弁41は開閉弁42に対して駆動制御ケース14の幅方向に隣り合っている。
【0023】
それぞれの開閉弁41、42は常閉型である。正圧用の開閉弁41はコイルに電磁弁操作信号が印加されていないと、正圧空気供給路36を遮断し、電磁弁操作信号が印加されると、正圧空気供給源Pと正圧空気供給路36とを連通させる。負圧用の開閉弁42はコイルに電磁弁操作信号が印加されていないと、負圧空気供給路37を遮断し、電磁弁操作信号が印加されると、負圧空気供給源Vと負圧空気供給路37とを連通させる。流路切換弁33は、3ポート電磁弁であり、コイルに電磁弁操作信号が印加されると、給排流路32が負圧空気供給路37に連通された状態から、給排流路32を正圧空気供給路36に接続する状態に切り換える。流路切換弁33としては、給排流路32を正圧空気供給路36および負圧空気供給路37から遮断する位置と、給排流路32を正圧空気供給路36に連通させる位置と、給排流路32を負圧空気供給路37に連通させる位置とに作動する電磁弁を使用しても良い。
【0024】
流路切換弁33は、コイルに電磁弁操作信号が印加されないときには、給排流路32と負圧空気供給路37とを連通させる。電源が万一遮断されて、それぞれ電磁弁からなる流路切換弁33、開閉弁41、42に対する電磁弁操作信号の印加がされなくなっても、常閉式の開閉弁41、42が設けられているので、チューブフラム15を保護するとともに、不要な薬液の吐出を防ぐことができる。例えば、給排流路32が負圧空気供給路37と連通しているときに、電源が遮断して電磁弁操作信号が印加されなくなった場合には流路切換弁33が切り換わることなく、開閉弁41と開閉弁42が閉じた状態となる。すると、駆動室30への負圧空気も正圧空気も供給されない状態となるので、チューブフラム15は、膨張・収縮もせず電磁弁操作信号が印加されていたときの形状を維持する。その結果、チューブフラム15を保護するとともに、不要な薬液の吐出を防ぐことができる。
【0025】
また、給排流路32が正圧空気供給路36と連通しているときに、電源が遮断されて操作信号が印加されなくなった場合には、流路切換弁33が給排流路32と負圧空気供給路37を連通する状態に切り換わり、開閉弁41と開閉弁42が閉じた状態となる。すると、駆動室30の圧力は、負圧空気供給路37に残っている負圧の影響で僅かに低下し、負圧空気も正圧空気も供給されない状態となる。その結果、チューブフラム15は、電磁弁操作信号が印加されていた時から、僅かに膨張してその形状を維持する。そのため、液体供給装置からの不要な薬液の吐出を防ぐとともに、チューブフラム15を保護することができる。
【0026】
図5は
図3におけるB-B線断面図である。チューブフラム15の弾性変形部19の横断面形状は円形ではなく、異形断面形状であり、断面がU字形状に折り曲げられた断面円弧状の3つの湾曲部43を有し、断面三つ葉形状である。それぞれの湾曲部43は円周方向に等間隔であり、湾曲部43の円周方向の中央部は、湾曲部43が弾性変形するときの変形中心となる頂点部44である。円周方向に隣り合う湾曲部43は径方向に屈曲する屈曲部45により連なっており、屈曲部45の円周方向中央部は、弾性変形部19が弾性変形するときに、径方向に最も大きく変形し弾性変形量が最大の径方向変形部46である。
【0027】
駆動室30に負圧空気を供給すると、
図5(A)に示されるように、チューブフラム15の弾性変形部19が径方向外方に弾性変形し、ポンプ室16は膨張する。このときには、屈曲部45の径方向変形部46は径方向外方に変形し、湾曲部43は広がった状態になる。
図5(A)はチューブフラム15が径方向外方への所定量の弾性変形を終了した状態、つまりチューブフラム15が吸入端位置となった状態を示す。
【0028】
一方、駆動室30に正圧空気を供給すると、
図5(B)に示されるように、チューブフラム15の弾性変形部19が径方向内方に弾性変形し、ポンプ室16は収縮する。これにより、屈曲部45の径方向変形部46が径方向内方に変形し、湾曲部43は頂点部44を中心に潰れるように弾性変形する。
図5(B)はチューブフラム15が径方向内方へ所定量の弾性変形を終了した状態、つまりチューブフラム15が吐出端位置となった状態を示す。
吸入端位置および吐出端位置のチューブフラムの弾性変形量は、液体供給装置に必要な吐出量を基準として、チューブフラム15に過度な負荷がかからない範囲に設定される。
【0029】
図6は変形例であるチューブフラム15における
図5と同様の部分の断面図である。チューブフラム15の弾性変形部19は、断面が半円形に折り曲げられた断面円弧状の2つの湾曲部43を有している。湾曲部43は円周方向に180度ずれており、相互に対向している。このように、弾性変形部19は、横断面形状がほぼ長円形である。湾曲部43の円周方向の中央部は、湾曲部43が弾性変形するときの変形中心となる頂点部44である。2つの湾曲部43の間は径方向に屈曲する屈曲部45により連なっており、屈曲部45の円周方向中心部は、弾性変形部19が弾性変形するときに、径方向に最も大きく変形する径方向変形部46である。屈曲部45は径方向変形部46に向けて径方向内方に折り曲げられている。
図6(A)はチューブフラム15の弾性変形部19が径方向外方に弾性変形を終了した吸入端位置の状態を示し、
図6(B)はチューブフラム15が内方に弾性変形を終了した吐出端位置の状態を示す。
【0030】
図7は他の変形例であるチューブフラム15における
図4と同様の部分の断面図である。チューブフラム15の弾性変形部19は、断面が半円形に折り曲げられた断面円弧状の2つの湾曲部43を有している。このように、弾性変形部19は、横断面形状がほぼ長円形である。湾曲部43は円周方向に180度ずれており、相互に対向している。湾曲部43の円周方向の中央部は、湾曲部43が弾性変形するときの変形中心となる頂点部44である。2つの湾曲部43の間は径方向に屈曲する屈曲部45により連なっており、屈曲部45の円周方向中心部は、弾性変形部19が弾性変形するときに、径方向に最も大きく変形する径方向変形部46である。屈曲部45は弾性変形部19が径方向外方に弾性変形したときには、ほぼフラットとなっている。
図7(A)はチューブフラム15の弾性変形部19が径方向外方に弾性変形を終了した吸入端位置の状態を示し、
図7(B)はチューブフラム15が内方に弾性変形を終了した吐出端位置の状態を示す。
【0031】
チューブフラム15の横断面形状としては、
図5~
図7に示されるように、湾曲部43が3つの三つ葉形状のタイプと、湾曲部43が2つの長円形のタイプのいずれも適用することができる。径方向に最も大きく弾性変形する径方向変形部46は、
図5に示される三つ葉形状のタイプが、他のタイプよりも弾性変形時に円周方向にずれることが少ない。
【0032】
図3に示されるように、透過孔51がポンプケース11の長手方向中央部に設けられている。ポンプケース11に取り付けられた台座52にセンサボックス53が取り付けられ、レーザ光を径方向変形部46に向けて照射する非接触センサとしての光センサ54がセンサボックス53の内部に設けられている。光センサ54は、レーザ光を径方向変形部46に向けて照射する発光部と、径方向変形部46からの反射光を受光する受光部とを有し、径方向変形部46の径方向の弾性変形量に応じた信号を出力する。
【0033】
チューブフラム15の長手方向中央部における径方向変形部46の径方向の弾性変形量は、他の部位の径方向の弾性変形量よりも大きいので、非接触センサにより径方向変形部46の変形量を検出すると、検出精度を高めることができる。ただし、レーザ光を照射する位置としては、チューブフラム15の長手方向中央部の径方向変形部46に限られることなく、他の部位の変形量を検出するようにしても良い。
【0034】
図8はポンプ駆動制御部を示すブロック図である。制御部としてのコントローラ55は、
図3に示されたコントロールボックス56内に設けられている。コントローラ55には、外部の電源57から電力が供給され、液体供給装置10の作動を指令する指令信号58が送られる。コントローラ55は、光センサ54からの信号に基づいて、チューブフラム15が径方向内方限の位置まで弾性変形した状態、つまり吐出端位置となっているか、径方向外方限の位置まで弾性変形した状態、つまり吸入端位置となっているかを判定する。その判定結果に基づいて、正圧用の開閉弁41、負圧用の開閉弁42および流路切換弁33のコイルに電磁弁操作信号を出力する。
【0035】
電源57に接続されるケーブルや指令信号を送信するケーブルは、
図3に示されるケーブルコネクタ59に接続される。ケーブルコネクタ59とコントロールボックス56の間には図示省略したケーブルが接続される。コントローラ55は、制御プログラム等が格納されるメモリと、それぞれの電磁弁への操作信号を演算するマイクロプロセッサ等を備えている。
【0036】
図9は液体供給装置10による液体供給動作を示すタイムチャートである。電源57が液体供給装置10にオンされると、開閉弁41、42はオンされる。これにより、正圧空気供給路36に正圧空気が供給され、負圧空気供給路37に負圧空気が供給される。光センサ54からの信号に基づいて、チューブフラム15が吸入端位置となっていることが検出されると、流路切換弁33は正圧空気供給路36を給排流路32に連通させる位置、つまり正圧供給位置に切り換えられる。これにより、チューブフラム15は径方向内方に弾性変形し、ポンプ室16が収縮して液体吐出方向のポンプ動作が行われる。このポンプ動作により、ポンプ室16内の液体Lは、塗布具27から吐出される。
【0037】
吐出方向のポンプ動作によりチューブフラム15が吐出端位置となっていることが、光センサ54からの信号に基づいて検出されると、流路切換弁33は負圧空気供給路37を給排流路32に連通させる位置、つまり負圧供給位置に切り換えられる。これにより、チューブフラム15は径方向外方に弾性変形し、ポンプ室16が膨張して吸入方向のポンプ動作が行われ、液体容器26内の液体Lがポンプ室16内に供給される。
【0038】
吐出端位置または吸入端位置に到達したときに、開閉弁41と開閉弁42のうち流路切換弁33を介して駆動室30と連通している方をオフにすることで、吐出・吸入動作を停止させ、一定時間経過後に吐出・吸入動作を再開させることができる。また、2台の液体供給装置10を並列に配置して、それぞれの液体流出口24に流出流路25bを並列接続し、交互に吐出動作を行うと、連続的に液体を塗布具27に供給することができる。
【0039】
図10はポンプ駆動部の変形例を示す空気圧回路であり、
図11は
図10に示されたポンプ駆動部の制御部を示すブロック図である。
【0040】
図10に示されるポンプ駆動部は、流路切換弁33aを有しており、流路切換弁33aは3位置方向制御弁であり、中立位置と、正圧空気を供給する第1の位置と、負圧空気を供給する第2の位置とに作動する。第1のコイル61に正圧供給用の電磁弁操作信号が印加されると、流路切換弁33aは給排流路32を正圧空気供給路36に連通させる第1の位置に作動する。第2のコイル62に負圧供給用の電磁弁操作信号が印加させると、流路切換弁33aは給排流路32を負圧空気供給路37に連通させる第2の位置に作動する。さらに、両方のコイル61、62に電磁弁操作信号が印加されない時には、流路切換弁33aは給排流路32を正圧空気供給路36および負圧空気供給路37に対して遮断する中立位置に作動する。
【0041】
図10に示されるように、正圧空気供給路36と負圧空気供給路37には開閉弁が設けられておらず、
図11に示されるように、コントローラ55から流路切換弁33aに印加される操作信号により、ポンプ動作が行われる。
【0042】
上述した液体供給装置10においては、チューブフラム15つまりチューブフラム15の弾性変形部19を径方向に弾性変形させてポンプ室16を膨張収縮させるために、正圧空気と負圧空気とを駆動室30に供給するようにしている。したがって、チューブフラム15を弾性変形させるために、液体を駆動室30に供給するポンプを用いることが不要となり、液体供給装置10はポンプケース11とこれに取り付けられる駆動制御ケース14とにより形成することができ、液体供給装置10を小型化することができる。
【0043】
液体供給装置10においては、駆動室30にポンプを用いて液体を供給することなく、圧縮空気を駆動室30に供給してポンプ室16を収縮させ、負圧空気を駆動室30に供給して駆動室30内の空気を外部に排出するようにしている。空気は圧縮性を有しており、一定の圧力の圧縮空気を駆動室30に供給するようにしても、チューブフラム15が吐出端位置となっているか否かを判定することができない。負圧空気を駆動室30に供給してチューブフラム15が吸入端位置となっているか否かを判定することもできない。これに対し、チューブフラム15が吐出端位置となっているか否か、および吸入端位置となっているか否かを、非接触センサである光センサ54により検出するので、それぞれの位置を高精度で検出することができる。
【0044】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上述した液体供給装置10においては、ポンプ室16の吐出動作と吸入動作とを連続的に行うようにしているが、吸入動作後に直ちに吐出動作を行うことなく、一定時間が経過した後に吐出動作をすることもできる。
【符号の説明】
【0045】
10 液体供給装置
11 ポンプケース
14 駆動制御ケース
15 チューブフラム
16 ポンプ室
19 弾性変形部
23 液体流入口
24 液体流出口
25a 流入流路
25b 流出流路
26 液体容器
27 塗布具
30 駆動室
31 給排ポート
32 給排流路
33 流路切換弁
36 正圧空気供給路
37 負圧空気供給路
41、42 開閉弁
43 湾曲部
44 頂点部
45 屈曲部
46 径方向変形部
53 センサボックス
54 光センサ