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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】ターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/14 20060101AFI20220318BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20220318BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20220318BHJP
   F02M 26/06 20160101ALI20220318BHJP
【FI】
F02B39/14 Z
F02B39/00 G
F02B37/00 302F
F02M26/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018034313
(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公開番号】P2019148240
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】誠真IP特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大場 啓道
(72)【発明者】
【氏名】平川 一朗
(72)【発明者】
【氏名】小野 嘉久
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/168626(WO,A1)
【文献】特開2012-241558(JP,A)
【文献】実開昭56-070122(JP,U)
【文献】特開平06-159084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00 - 39/16
F02B 37/00
F02M 26/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EGRガスを含む混合気を過給するように構成されたターボチャージャであって、
前記混合気を圧縮するコンプレッサを収容するコンプレッサハウジングと、
前記コンプレッサにロータを介して連結されるタービンを収容するタービンハウジングと、
前記ロータを回転可能に支持する軸受を収容する軸受ハウジングと、
前記コンプレッサハウジング又は前記軸受ハウジングの外周面に形成された第1開口であって、前記コンプレッサの背面側に形成される第1空間に連通する第1開口、及び、
前記タービンハウジングの外周面に形成された第2開口であって、前記タービンハウジングの前記タービンよりも下流側に形成される第2空間に連通する第2開口、
を接続する少なくとも一つの混合気排気流路と、を備え
前記少なくとも一つの混合気排気流路は、前記第1空間における前記混合気と前記第2空間における排ガスとの圧力差により、前記第1空間に流れ込んだ前記混合気を前記第2空間に排出するように構成されるターボチャージャ。
【請求項2】
前記タービンハウジングの外周面には、周方向に間隔を開けて複数のドレン孔が形成されており、
前記第2開口は、前記複数のドレン孔の少なくとも一つからなる請求項1に記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記複数のドレン孔は、鉛直方向において最も下方に位置する最下方ドレン孔と、前記最下方ドレン孔以外のドレン孔である上方側ドレン孔と、を含み、
前記第2開口は、前記上方側ドレン孔の少なくとも一つからなる請求項2に記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記複数のドレン孔は、前記タービンハウジングのガス排出口に対して最も近くに位置する排出口側ドレン孔を含み、
前記第2開口は、前記排出口側ドレン孔からなる請求項2に記載のターボチャージャ。
【請求項5】
前記混合気排気流路の途中に設けられる逆止弁であって、前記第2空間から前記第1空間に向かって排ガスが流れるのを防止する逆止弁をさらに備える請求項1乃至4の何れか1項に記載のターボチャージャ。
【請求項6】
前記少なくとも一つの混合気排気流路は、前記コンプレッサハウジング、前記タービンハウジング、及び前記軸受ハウジングの外部に設けられた配管により形成される請求項1乃至5の何れか1項に記載のターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、EGRガスを含む混合気を過給するように構成されたターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャには、ケーシングに放風孔が形成されたものがある(特許文献1)。特許文献1には、羽根車(コンプレッサ)により過給された高圧空気の一部が、羽根車の背面とケーシングとで囲まれた空間に流れ込む過給機において、羽根車に作用するスラストのバランスをとるために、ケーシングに穿設した放風孔から上述した空間に流れ込んだ高圧気体を大気中に放出することが開示されている。
【0003】
また、ターボチャージャを備えるエンジンには、NOx(窒素酸化物)を低減させるために、エンジンで燃焼後の排ガスの一部を再度吸気させる排ガス再循環(EGR)方式を用いたものがある(特許文献2)。特許文献2に開示されているように、EGRには、タービンよりも上流側の排ガスをコンプレッサよりも下流側に還流させる高圧EGRと、タービンよりも下流側の排ガスをコンプレッサよりも上流側に還流させる低圧EGRと、がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-254128号公報
【文献】特開2015-165124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したケーシングに放風孔を有するターボチャージャを、EGR方式を用いるエンジンに設けると、コンプレッサよりも上流側に還流された排ガス(EGRガス)が、放風孔から大気中に放出されてしまう。EGRガスにはNOx(窒素酸化物)などの大気汚染物質が含まれるので、ターボチャージャの外部の環境悪化の原因となる虞がある。
【0006】
また、EGRガスが大気中に放出されないように、上述した放風孔を閉止した場合には、コンプレッサの背面に流れ込んだ圧縮後の気体と、コンプレッサの正面側を流れる気体と、の間の圧力差により、コンプレッサが正面側に向かって押圧されるので、コンプレッサのロータを支持する軸受に対する運転時における負荷(スラスト荷重)が増大する虞がある。該軸受に対する運転時における負荷の増大は、軸受の損傷やターボチャージャの効率低下を招く虞がある。
【0007】
上述した事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態の目的は、既存設備を大幅に変更することなく、ロータを支持する軸受に対する運転時における負荷の低減が可能であり、且つ、EGRガスを含む混合気によるターボチャージャの外部の環境悪化を防止可能なターボチャージャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の少なくとも一実施形態にかかるターボチャージャは、
EGRガスを含む混合気を過給するように構成されたターボチャージャであって、
前記混合気を圧縮するコンプレッサを収容するコンプレッサハウジングと、
前記コンプレッサにロータを介して連結されるタービンを収容するタービンハウジングと、
前記ロータを回転可能に支持する軸受を収容する軸受ハウジングと、
前記コンプレッサハウジング又は前記軸受ハウジングの外周面に形成された第1開口であって、前記コンプレッサの背面側に形成される第1空間に連通する第1開口、及び、
前記タービンハウジングの外周面に形成された第2開口であって、前記タービンハウジングの前記タービンよりも下流側に形成される第2空間に連通する第2開口、
を接続する少なくとも一つの混合気排気流路と、を備える。
【0009】
上記(1)の構成によれば、ターボチャージャの運転時において、コンプレッサの背面側に形成される第1空間には、コンプレッサに圧縮されて高圧になった混合気が流れ込むのに対して、タービンハウジングのタービンよりも下流側に形成される第2空間には、タービンに対して仕事をして低圧になった排ガスが流れる。このため、第1空間における混合気と第2空間における排ガスとの間の圧力差から、第1空間における混合気は、第1空間に連通される第1開口と第2空間に連通される第2開口とを接続する少なくとも一つの混合気排気流路を通り、第2空間に流れ込む。混合気排気流路により、第1空間における混合気を逃がすことができるので、ロータを支持する軸受のうち、スラスト軸受に対する運転時における負荷の低減が可能である。
【0010】
また、第2空間に流れ込んだEGRガスを含む混合気は、タービンよりも下流側を流れる排ガスとともにタービンハウジングのガス排出口から排出され、ガス排出口よりも排ガスの流れ方向の下流側に設けられた排ガスを処理するための排ガス処理装置により、排ガスと同様に処理される。よって、第1空間から排出される混合気によるターボチャージャの外部の環境悪化を防止可能である。
【0011】
また、上記の構成にかかるターボチャージャは、ポンプなどの送風装置や混合気を処理するための処理装置を新たに設置する必要がなく、第1開口及び第2開口を形成し、第1開口及び第2開口に接続される少なくとも一つの混合気排気流路を設ければよいので、既存設備を大幅に変更することがない。また、ターボチャージャ以外の他の既存設備や既存配管を変更する必要がない。よって、上述したターボチャージャは、既存設備からの変更が容易であり、既存設備を有効活用することができる。特に第1開口や第2開口が既に形成されている場合には、さらに既存設備からの変更が容易である。
【0012】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記タービンハウジングの外周面には、周方向に間隔を開けて複数のドレン孔が形成されており、
前記第2開口は、前記複数のドレン孔の少なくとも一つからなる。
【0013】
一般的に、タービンハウジングは、排ガスを外部に排出する煙突の位置や向きに応じて取付け角度を変更可能に構成されている。タービンハウジングの取付け角度を変更してもタービンハウジングの内部からドレンを適切に排出できるように、タービンハウジングの外周面には、周方向に間隔を開けて複数のドレン孔が形成されている。上記(2)の構成によれば、第2開口は、複数のドレン孔の少なくとも一つからなるので、複数のドレン孔が設けられた既存のタービンハウジングを活用することができる。また、混合気排気流路を構成する部品のうちの少なくとも一部の部品と、ドレンを排出するためにドレン孔に接続される接続部品と、の間で部品の共通化が可能である。
【0014】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記複数のドレン孔は、鉛直方向において最も下方に位置する最下方ドレン孔と、前記最下方ドレン孔以外のドレン孔である上方側ドレン孔と、を含み、
前記第2開口は、前記上方側ドレン孔の少なくとも一つからなる。
【0015】
上記(3)の構成によれば、第2開口を、鉛直方向において最も下方に位置する最下方ドレン孔以外のドレン孔にすることで、ドレンが第2開口を通って混合気排気流路に侵入することを抑制することができる。
【0016】
(4)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、
前記複数のドレン孔は、前記タービンハウジングのガス排出口に対して最も近くに位置する排出口側ドレン孔を含み、
前記第2開口は、前記排出口側ドレン孔からなる。
【0017】
上記(4)の構成によれば、第2開口を、タービンハウジングのガス排出口に対して最も近くに位置する排出口側ドレン孔とすることで、他のドレン孔を第2開口とするよりも、第2開口をタービンから離れた位置にすることができる。このため、第2開口から第2空間に混合気が流れ込むことで生じる、第2空間を流れる排ガスの流れの乱れの影響がタービンに伝播することを防止することができる。
【0018】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)~(4)の構成において、
前記混合気排気流路の途中に設けられる逆止弁であって、前記第2空間から前記第1空間に向かって排ガスが流れるのを防止する逆止弁をさらに備える。
【0019】
上記(5)の構成によれば、仮に第2空間における排ガスの圧力が第1空間における混合気の圧力よりも高くなった場合でも、逆止弁により第2空間から第1空間に向かって排ガスが流れるのを防止することができる。ここで、タービンハウジングの内部を流れる排ガスには、硫黄酸化物(SOx)などの腐食成分が含まれている。よって、上述した逆止弁を備えるターボチャージャは、排ガスに含まれる腐食成分により、コンプレッサなどの第1空間に面する部材が腐食や損傷することを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、既存設備を大幅に変更することなく、ロータを支持する軸受に対する運転時における負荷の低減が可能であり、且つ、EGRガスを含む混合気によるターボチャージャの外部の環境悪化を防止可能なターボチャージャが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態にかかるターボチャージャを備える舶用のディーゼル機関の構成を概略的に示す概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態にかかるターボチャージャを概略的に示す概略断面図である。
図3】本発明の一実施形態における第1開口、第2開口及び混合気排気流路を説明するための図であって、ターボチャージャの構成を概略的に示す概略構成図である。
図4】本発明の一実施形態における混合気排気流路を説明するための図であって、ターボチャージャの外観を概略的に示す概略外観図である。
図5図4におけるB-B線の矢視に相当する図であって、ガス排出口が鉛直上方に向かって開口したタービンハウジングの概略断面図である。
図6図4におけるB-B線の矢視に相当する図であって、ガス排出口が斜め上方に向かって開口したタービンハウジングの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態にかかるターボチャージャを備える舶用のディーゼル機関の構成を概略的に示す概略構成図である。図1に示されるように、ターボチャージャ3は、ディーゼルエンジン(以下、エンジン10とする)と、エンジン10から排出された排ガスE(排気)の一部を後述するコンプレッサ7の上流側に還流させるEGRシステム11と、エンジン10から排出された排ガスEから有害物質を除去する排ガス処理装置12と、を備える舶用のディーゼル機関1(舶用内燃機関)に設けられている。図1に示される実施形態では、エンジン10は、ディーゼル機関1が搭載された船舶を推進させる不図示の推進器を駆動させる主機関(舶用主機)である。
【0024】
ターボチャージャ3は、図1に示されるように、エンジン10の吸気流路13に設けられるコンプレッサ7と、エンジン10の排気流路14に設けられるタービン8と、を備えている。コンプレッサ7及びタービン8は、ロータ9を介して互いに機械的に連結されており、一体的に回転可能に構成されている。エンジン10から排出された排ガスEによりタービン8が回転し、タービン8に連動して回転するコンプレッサ7により、エンジン10に供給される燃焼用気体A(新気I、又は後述する混合気)が圧縮(過給)される。
【0025】
図1に示される実施形態では、吸気流路13のコンプレッサ7よりも上流側に、燃焼用気体Aから塵や埃などを取り除くエアクリーナ15が設けられている。また、図1に示される実施形態では、吸気流路13のコンプレッサ7よりも下流側には、コンプレッサ7により圧縮されて昇温した燃焼用気体Aを冷却するエアクーラ16が設けられている。
【0026】
上述した排ガス処理装置12は、図1に示されるように、排気流路14のタービン8よりも下流側に設けられる。幾つかの実施形態では、排ガス処理装置12は、排ガスに洗浄液を噴射することで、排ガス中の粒子状物質(PM)やSOx(硫黄酸化物)などの有害物質を除去するスクラバである。また、排気流路14は、排ガス処理装置12よりも上流側において分岐しており、エンジン10から排出された排ガスの一部は、図示しない煙突から大気へと放出される。
【0027】
EGRシステム11は、図1に示されるように、排気流路14の排ガス処理装置12よりも下流側に接続されるとともに吸気流路13のコンプレッサ7よりも上流側、且つエアクリーナ15よりも下流側に接続されたEGR流路17を有している。EGRシステム11によって、エンジン10から排出された排ガスの一部は、EGR流路17を介してコンプレッサ7の入口側の吸気流路13に戻される。図1に示される実施形態では、EGR流路17に、EGRクーラ18及びEGRバルブ19が設けられている。なお、他の実施形態では、EGRクーラ18の代わりにEGR流路17を流れる排ガスの圧力損失を補うEGRブロアが設けられている。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態にかかるターボチャージャを概略的に示す概略断面図である。図2に示されるように、ターボチャージャ3は、軸線方向(図2中左右方向)に沿って延在するロータ9(回転軸)と、ロータ9の軸線方向の一端に設けられる上述したコンプレッサ7と、ロータ9の軸線方向の他端に設けられる上述したタービン8(タービン動翼)と、ロータ9を回転可能に支持する軸受30と、ロータ9をスラスト方向に支持するスラスト軸受37と、を備えている。
【0029】
ターボチャージャ3は、図2に示されるように、コンプレッサ7を収納するコンプレッサハウジング4と、タービン8を収納するタービンハウジング6と、軸受30を収納する軸受ハウジング5と、をさらに備えている。軸受ハウジング5は、図2に示されるように、ロータ9の軸線方向においてコンプレッサハウジング4とタービンハウジング6との間に配置されて、コンプレッサハウジング4やタービンハウジング6にボルトによる螺合などにより固定されている。
【0030】
コンプレッサ7は、図2に示されるように、ハブ73と、ハブ73の外周から径方向(軸線方向に直交する方向)外側に向かって突出するように設けられる複数枚の翼74と、を含んでいる。図2に示されるように、ハブ73は、軸線方向において、吸気入口42の近傍側から離れた側に向かうにつれて、徐々に外形寸法が大きくなるような円錐状に形成されている。図2に示されるように、ハブ73の軸線方向において吸気入口42の近傍側であり、翼74が設けられた側を正面71とし、ハブ73の軸線方向において吸気入口42から離れた側を背面72とする。
【0031】
コンプレッサハウジング4は、図2に示されるように、コンプレッサ7の外周側、且つ軸線方向において吸気入口42から離れた側に、ロータ9の軸線CAに対して直交する方向に沿って延在するディフューザ43が形成されている。そして、コンプレッサハウジング4は、ディフューザ43の外周側に渦巻状のコンプレッサ流路44が形成されている。また、コンプレッサハウジング4は、コンプレッサ7を覆うようにシュラウド部45が形成されている。シュラウド部45は、軸線方向においてディフューザ43よりも吸気入口42側に、且つディフューザ43に連続するように形成されている。
【0032】
タービンハウジング6は、図2に示されるように、タービン8に排ガスを導くように構成された入口側ハウジング6Aと、タービン8を通過した排ガスを排出するための出口側ハウジング6Bと、を含んでいる。エンジン10から排出された高温の排ガスが、タービンハウジング6に形成された排気入口64から導入され、タービン8に送られることで、タービン8は、軸線CAを回転中心として回転駆動する。タービン8を回転駆動させた排ガスは、タービンハウジング6に形成された排気出口66(ガス排出口)から排出される。
【0033】
コンプレッサ7は、ロータ9を介してタービン8に接続されているので、タービン8の回転に同期して軸線CAを回転中心として回転駆動される。燃焼用気体Aは、コンプレッサ7が回転駆動されることで、コンプレッサハウジング4の吸気入口42から吸い込まれる。吸い込まれた燃焼用気体Aは、コンプレッサハウジング4の内部を軸線方向に沿って流れる。吸気入口42からコンプレッサハウジング4に導入される燃焼用気体Aは、エアクリーナ15を通った後にコンプレッサハウジング4に送られる新気Iと、EGR流路17を通った後にコンプレッサハウジング4に送られる排ガスE(EGRガス)と、を含む混合気である。なお、EGRバルブ19がEGR流路17を閉止している閉止状態においては、コンプレッサハウジング4に導入される燃焼用気体Aは、EGRガスを含まない新気Iからなる。
【0034】
コンプレッサハウジング4に導入された混合気は、回転駆動されるコンプレッサ7の複数枚の翼74の間を流れて主に動圧が上昇された後に、径方向外側に位置するディフューザ43に流入して動圧の一部が静圧に変換されて圧力が高められた状態で、コンプレッサ流路44及び吸気出口46を通ってエンジン10の燃焼室の内部に送り込まれる。この際、コンプレッサ7により圧力が高められた混合気の一部は、コンプレッサ7の外周端と、軸受ハウジングの外周端に面する部分と、の間に形成される隙間を通り、コンプレッサ7の背面72側に形成された第1空間31に流れ込む。
【0035】
図2に示されるように、第1空間31は、コンプレッサ7の背面72に面する内部空間であって、コンプレッサ7に圧縮された混合気が流入される内部空間である。図2に示される実施形態では、第1空間31は、コンプレッサ7の背面72と、軸受ハウジング5とで囲まれる空間である。より具体的には、第1空間31は、コンプレッサ7の背面72と、軸受ハウジング5の背面72に面する部分と、により少なくとも一部が画定される空間である。他の実施形態では、第1空間31は、コンプレッサ7の背面72と、コンプレッサハウジング4とで囲まれる空間である。より具体的には、第1空間31は、コンプレッサ7の背面72と、コンプレッサハウジング4の背面72に面する部分と、により少なくとも一部が画定される空間である。なお、第1空間31は、コンプレッサハウジング4や軸受ハウジング5に収納される部材により一部が画定されていてもよい。
【0036】
また、図2に示されるように、タービンハウジング6の内部に形成される排ガスを流すための内部空間であって、排気入口64と排気出口66との間に設けられる内部空間は、タービン8よりも排ガスの流れ方向の上流側に位置する内部空間である排気入口側空間65と、タービン8よりも排ガスの流れ方向の下流側に位置する内部空間である第2空間32(排気出口側空間)と、を含んでいる。第2空間32を流れる排ガスは、タービン8を回転させるためにエネルギを消費したので、排気入口側空間65を流れる排気よりも低圧である。
【0037】
図3は、本発明の一実施形態における第1開口、第2開口及び混合気排気流路を説明するための図であって、ターボチャージャの構成を概略的に示す概略構成図である。図3に示されるように、軸受ハウジング5の外周面51に形成された第1開口52は、上述したコンプレッサ7の背面72側に形成される第1空間31に連通する。また、出口側ハウジング6B(タービンハウジング6)の外周面61に形成された第2開口62は、上述したタービンハウジング6のタービン8よりも下流側に形成される第2空間32に連通する。
【0038】
図3に示される実施形態では、第1開口52は、第1開口52と第1空間31とを接続する接続流路54を介して、第1空間31に連通している。また、第2開口62は、第2開口62と第2空間32とが、接続流路を介さずに直接連通している。なお、他の実施形態では、第1開口52と第1空間31とが接続流路を介さずに直接連通していてもよいし、第2開口62と第2空間32とが接続流路を間に介して連通していてもよい。また、他の実施形態では、第1開口52は、コンプレッサハウジング4の外周面41に形成されていてもよい。
【0039】
図3に示されるように、ターボチャージャ3は、第1開口52と第2開口62とを接続する少なくとも一つの混合気排気流路33をさらに備えている。図3に示される実施形態では、少なくとも一つの混合気排気流路33は、筒状の配管35により形成されている。配管35は、U字状に湾曲した形状を有しており、一端がボルト締結などにより軸受ハウジング5の外周面51に取付けられ、他端がボルト締結などによりタービンハウジング6の外周面61に取付けられる。そして、配管35は、配管35の一端の開口が第1開口52に連通し、他端の開口が第2開口62に連通している。また、配管35は、図3に示されるように、軸受ハウジング5及びタービンハウジング6の外部に設けられる外部配管である。
【0040】
上述したように、幾つかの実施形態にかかるターボチャージャ3は、上述したコンプレッサハウジング4と、上述した軸受ハウジング5と、上述したタービンハウジング6と、上述した第1空間31に連通する第1開口52、及び第2空間32に連通する第2開口62、を接続する少なくとも一つの混合気排気流路33と、を備えている。
【0041】
上記の構成によれば、ターボチャージャ3の運転時において、コンプレッサ7の背面72側に形成される第1空間31には、コンプレッサ7に圧縮されて高圧になった混合気が流れ込むのに対して、タービンハウジング6のタービン8よりも下流側に形成される第2空間32には、タービン8に対して仕事をして低圧になった排ガスが流れる。このため、第1空間31における混合気と第2空間32における排ガスとの間の圧力差から、第1空間31における混合気は、第1空間31に連通される第1開口52と第2空間32に連通される第2開口62とを接続する少なくとも一つの混合気排気流路33を通り、第2空間32に流れ込む。混合気排気流路33により、第1空間31における混合気を逃がすことができるので、ロータ9を支持する軸受のうち、スラスト軸受37に対する運転時における負荷の低減が可能である。
【0042】
また、第2空間32に流れ込んだEGRガスを含む混合気は、タービン8よりも下流側を流れる排ガスとともにタービンハウジング6の排気出口66から排出され、排気出口66よりも排ガスの流れ方向の下流側に設けられた排ガスを洗浄するための排ガス処理装置12により、排ガスと同様に処理される。よって、第1空間31から排出される混合気によるターボチャージャ3の外部の環境悪化を防止可能である。
【0043】
また、上記の構成にかかるターボチャージャ3は、ポンプなどの送風装置や混合気を処理するための処理装置を新たに設置する必要がなく、第1開口52及び第2開口62を形成し、第1開口52及び第2開口62に接続される少なくとも一つの混合気排気流路33を設ければよいので、既存設備を大幅に変更することがない。また、ターボチャージャ3以外の他の既存設備や既存配管を変更する必要がない。よって、上述したターボチャージャ3は、既存設備からの変更が容易であり、既存設備を有効活用することができる。特に第1開口52や第2開口62が既に形成されている場合には、さらに既存設備からの変更が容易である。
【0044】
図4は、本発明の一実施形態における混合気排気流路を説明するための図であって、ターボチャージャの外観を概略的に示す概略外観図である。図5は、図4におけるB-B線の矢視に相当する図であって、ガス排出口が鉛直上方に向かって開口したタービンハウジングの概略断面図である。図6は、図4におけるB-B線の矢視に相当する図であって、ガス排出口が斜め上方に向かって開口したタービンハウジングの概略断面図である。幾つかの実施形態では、図4に示されるように、上述した配管35は、一端が軸受ハウジング5の外周面51に取付けられる配管35Aと、一端がタービンハウジング6の外周面61に取付けられる配管35Bと、配管35Aの他端と配管35Bの他端とを接続する配管35Cと、を含んでいる。図4に示される実施形態では、配管35A~35Cの各々は、両端がフランジ状に形成されており、該フランジ状の部分においてボルト締結されることで、軸受ハウジング5などの他の部材に固定されるようになっている。図5、6に示される実施形態では、出口側ハウジング6Bは、軸線に対して直交方向に沿った断面において、U字状に形成されている。
【0045】
幾つかの実施形態では、図5、6に示されるように、上述したタービンハウジング6の外周面61には、周方向に間隔を開けて複数のドレン孔63が形成されている。上述した第2開口62は、複数のドレン孔63の少なくとも一つからなる。ドレン孔63は、タービンハウジング6の内部から外部にドレンを排出するための孔であって、タービンハウジング6の製造時に形成される孔である。図5、6に示されるように、複数のドレン孔63のうちの一つには、ドレン配管36が接続される。ドレンは、ドレン配管36を介してタービンハウジング6の外部に排出される。また、複数のドレン孔63のうちの少なくとも一つは、第2開口62として配管35Bが接続される。また、複数のドレン孔63のうちの、残りのドレン孔は閉止される。
【0046】
一般的に、タービンハウジング6は、図5、6に示されるように、排ガスを外部に排出する煙突の位置や向きに応じて取付け角度を変更可能に構成されている。換言すると、タービンハウジング6は、排気出口66が煙突の位置や向きに適した位置になるように、軸受ハウジング5に対する取付け角度を変更可能に構成されている。図5、6に示されるように、タービンハウジング6の取付け角度を変更してもタービンハウジング6の内部からドレンを適切に排出できるように、タービンハウジング6の外周面51には、周方向に間隔を開けて複数のドレン孔63が形成されている。上記の構成によれば、第2開口62は、複数のドレン孔63の少なくとも一つからなるので、複数のドレン孔63が設けられた既存のタービンハウジングを活用することができる。また、混合気排気流路33を構成する部品のうちの少なくとも一部の部品(配管35B)と、ドレンを排出するためにドレン孔に接続される接続部品(ドレン配管36)と、の間で部品の共通化が可能である。
【0047】
幾つかの実施形態では、図5、6に示されるように、上述した複数のドレン孔63は、鉛直方向において最も下方に位置する最下方ドレン孔63Aと、最下方ドレン孔63A以外のドレン孔63である上方側ドレン孔63Bと、を含んでいる。上述した第2開口62は、上方側ドレン孔63Bの少なくとも一つからなる。最下方ドレン孔63Aには、ドレン配管36が接続される。また、複数の上方側ドレン孔63Bのうちの少なくとも一つは、第2開口62として配管35Bが接続される。この場合には、第2開口62を、鉛直方向において最も下方に位置する最下方ドレン孔63A以外のドレン孔63(上方側ドレン孔63B)にすることで、ドレンが第2開口62を通って混合気排気流路33に侵入することを抑制することができる。
【0048】
幾つかの実施形態では、図5、6に示されるように、上述した複数のドレン孔63は、タービンハウジング6の排気出口66(ガス排出口)に対して最も近くに位置する排出口側ドレン孔63Cを含んでいる。上述した第2開口62は、排出口側ドレン孔63Cからなる。排出口側ドレン孔63Cは、第2開口62として配管35Bが接続される。この場合には、第2開口62を、タービンハウジング6の排気出口66に対して最も近くに位置する排出口側ドレン孔63Cとすることで、他のドレン孔63を第2開口62とするよりも、第2開口62をタービン8から離れた位置にすることができる。このため、第2開口62から第2空間32に混合気が流れ込むことで生じる、第2空間32を流れる排ガスの流れの乱れの影響がタービン8に伝播することを防止することができる。
【0049】
幾つかの実施形態では、図3に示されるように、上述したターボチャージャ3は、混合気排気流路33の途中に設けられる逆止弁34であって、第2空間32から第1空間31に向かって排ガスが流れるのを防止する逆止弁34をさらに備えている。この場合には、仮に第2空間32における排ガスの圧力が第1空間31における混合気の圧力よりも高くなった場合でも、逆止弁34により第2空間32から第1空間31に向かって排ガスが流れるのを防止することができる。ここで、タービンハウジング6の内部を流れる排ガスには、硫黄酸化物(SOx)などの腐食成分が含まれている。よって、上述した逆止弁34を備えるターボチャージャ3は、排ガスに含まれる腐食成分により、コンプレッサ7などの第1空間31に面する部材が腐食や損傷することを防止することができる。なお、コンプレッサハウジング4の吸気入口42から導入されるEGRガスを含む混合気は、排ガス処理装置12により硫黄酸化物(SOx)などの腐食成分が除去されている。また、第2空間32における排ガスの圧力が第1空間31における混合気の圧力よりも高くなる場合としては、例えば、エンジン10の低負荷運転時において、エンジン10に燃焼用気体Aを送り込むために、吸気流路13のターボチャージャ3よりも下流側において不図示の補助ブロワを起動している場合や、サージングにより燃焼用気体Aが逆流してコンプレッサ7(第1空間31)側の圧力が低下した場合が挙げられる。
【0050】
幾つかの実施形態では、図3に示されるように、上述した軸受ハウジング5の外周面51には、少なくとも一つの放風孔53が形成されている。上述した第1開口52は、放風孔53からなる。放風孔53は、第1空間31に流れ込んだ高圧気体を大気中に放出するための孔である。既存の軸受ハウジングの中には、放風孔53が既設されているものがある。図3に示されるように、放風孔53に配管35が接続される。この場合には、第1開口52は、放風孔53からなるので、放風孔53が既設されている既存の軸受ハウジングを活用することができる。
【0051】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0052】
例えば、上述した幾つかの実施形態では、ターボチャージャ3は、舶用のディーゼル機関1(舶用内燃機関)に設けられていたが、舶用以外の内燃機関に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 ディーゼル機関
10 エンジン
11 EGRシステム
12 排ガス処理装置
13 吸気流路
14 排気流路
15 エアクリーナ
16 エアクーラ
17 EGR流路
3 ターボチャージャ
30 軸受
31 第1空間
32 第2空間
33 混合気排気流路
34 逆止弁
35 配管
35A コンプレッサ側配管
35B タービン側配管
35C 接続配管
36 ドレン配管
37 スラスト軸受
4 コンプレッサハウジング
41 外周面
42 吸気入口
43 ディフューザ
44 コンプレッサ流路
45 シュラウド部
46 吸気出口
5 軸受ハウジング
51 外周面
52 第1開口
53 放風孔
54 接続流路
6 タービンハウジング
6A 入口側ハウジング
6B 出口側ハウジング
61 外周面
62 第2開口
63 ドレン孔
63A 最下方ドレン孔
63B 上方側ドレン孔
63C 排出口側ドレン孔
64 排気入口
65 排気入口側空間
66 排気出口
7 コンプレッサ
71 正面
72 背面
73 ハブ
74 翼
8 タービン
9 ロータ
A 燃焼用気体
E 排ガス
I 新気
図1
図2
図3
図4
図5
図6