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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/64 20180101AFI20220318BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20220318BHJP
   F21S 41/20 20180101ALI20220318BHJP
   F21W 102/135 20180101ALN20220318BHJP
   F21W 102/165 20180101ALN20220318BHJP
   F21W 102/20 20180101ALN20220318BHJP
【FI】
F21S41/64
F21S41/143
F21S41/20
F21W102:135
F21W102:165
F21W102:20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018041522
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019160437
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】八木 隆之
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-053184(JP,A)
【文献】特開2013-168434(JP,A)
【文献】特開2017-174737(JP,A)
【文献】国際公開第2014/002630(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/64
F21S 41/143
F21S 41/20
F21W 102/135
F21W 102/165
F21W 102/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射した光を用いて明暗画像を形成する二次元画像形成装置と、
前記明暗画像を前方へ投影する投影光学系と、を備え、
前記二次元画像形成装置は、投影する前記明暗画像の一部の結像性能を低下させる結像性能低下部を有し、
前記結像性能低下部は、前記明暗画像のうちの車両前方の水平線よりも上方へ投影される第1領域を形成する光の光路に配置されている高散乱部と、前記明暗画像のうちの前記第1領域を囲う第2領域を形成する光の光路に配置されている、前記高散乱部よりも散乱度が低い低散乱部と、を有することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記二次元画像形成装置は、光源から出射した光を前記投影光学系に向けて選択的に透過させるように構成されており、
前記結像性能低下部は、前記投影光学系の焦点からずれた位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記二次元画像形成装置は、光源から出射した光を前記投影光学系に向けて選択的に透過させるように構成されており、
前記結像性能低下部は、前記二次元画像形成装置から前記投影光学系への光路の途中に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記二次元画像形成装置は、光源から出射した光を前記投影光学系に向けて選択的に反射させる反射領域を有し、
前記結像性能低下部は、前記反射領域から前記投影光学系への光路の途中に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記二次元画像形成装置は、光源から出射した光を前記投影光学系に向けて選択的に反射させる反射領域を有し、
前記結像性能低下部は、前記投影光学系の焦点からずれた位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源から出射した光を、複数の反射素子をマトリックス状に配置した反射方向変換装置で反射し、レンズを通過させて所望の配光パターンを形成する車両用照明装置が考案されている(特許文献1参照)。この車両用照明装置は、多数並んだ反射素子の一部を制御し、光源から出射した光の一部をレンズに向かわない方向へ反射させることで、複数の形状の配光パターンを形成できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-104288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の車両用照明装置において、一部の反射素子の動作不良により、本来はレンズへ向かわない方向へ反射させるべき光がレンズへ向かうように反射され、車両前方へ照射される場合がある。このような場合、前方の車両や歩行者に対してグレアを与えるおそれがある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、グレアの影響を低減できる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用灯具は、光源から出射した光を用いて明暗画像を形成する二次元画像形成装置と、明暗画像を前方へ投影する投影光学系と、を備える。二次元画像形成装置は、投影する明暗画像の一部の結像性能を低下させる結像性能低下部を有する。
【0007】
この態様によると、明暗画像の一部が鮮明に結像されないため、仮に投影された明暗画像の明部により他者にグレアを与える状況になっても、他者に与えるグレアの影響を低減できる。
【0008】
二次元画像形成装置は、光源から出射した光を投影光学系に向けて選択的に透過させるように構成されており、結像性能低下部は、投影光学系の焦点からずれた位置に設けられていてもよい。これにより、結像性能低下部の配置を工夫するだけで、明暗画像の一部の結像性能を低下させることができる。
【0009】
二次元画像形成装置は、光源から出射した光を投影光学系に向けて選択的に透過させるように構成されており、結像性能低下部は、二次元画像形成装置から投影光学系への光路の途中に設けられた散乱要素であってもよい。これにより、結像性能低下部の配置を変えずに、明暗画像の一部の結像性能を低下させることができる。
【0010】
二次元画像形成装置は、光源から出射した光を投影光学系に向けて選択的に反射させる反射領域を有してもよい。結像性能低下部は、反射領域から投影光学系への光路の途中に設けられた散乱要素であってもよい。これにより、結像性能低下部の配置を変えずに、明暗画像の一部の結像性能を低下させることができる。
【0011】
二次元画像形成装置は、光源から出射した光を投影光学系に向けて選択的に反射させる反射領域を有してもよい。結像性能低下部は、投影光学系の焦点からずれた位置に設けられていてもよい。これにより、結像性能低下部の配置を工夫するだけで、明暗画像の一部の結像性能を低下させることができる。
【0012】
結像性能低下部は、明暗画像のうち車両前方の水平線よりも上方へ投影される領域を形成する光の光路に配置されていてもよい。これにより、車両前方の水平線よりも上方に存在する他者に与えるグレアの影響を低減できる。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、グレアの影響を低減できる車両用灯具を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)は、第1の実施の形態に係る車両用灯具を模式的に示した側面図、図1(b)は、第1の実施の形態に係る二次元画像形成装置の配置を模試的に示した側面図、図1(c)は、第1の実施の形態に係る二次元画像形成装置の正面図である。
図2図2(a)は、第1の実施の形態に係る車両用灯具により形成されるハイビーム用配光パターンを示す模式図、図2(b)は、ハイビーム用配光パターンの一部に非照射部が形成されている部分ハイビーム用配光パターンを示す模式図、図2(c)は、ロービーム用配光パターンを示す模式図である。
図3図3(a)は、図2(a)に示すハイビーム用配光パターンを形成する際の二次元画像形成装置の各液晶素子の透過状態を示す図、図3(b)は、図2(b)に示す部分ハイビーム用配光パターンを形成する際の二次元画像形成装置の各液晶素子の透過状態を示す図、図3(c)は、図2(c)に示すロービーム用配光パターンを形成する際の二次元画像形成装置の各液晶素子の透過状態を示す図である。
図4図4(a)は、ロービーム用配光パターンを形成する二次元画像形成装置の一部の液晶素子が動作不良の場合の各液晶素子の透過状態を示す図、図4(b)は、図4(a)に示す二次元画像形成装置により形成されたロービーム用配光パターンを模式的に示した図、図4(c)は、二次元画像形成装置が投影する明暗画像の一部の結像性能を低下させた状態を模式的に示した図である。
図5図5(a)は、第2の実施の形態に係る車両用灯具を模式的に示した側面図、図5(b)は、第2の実施の形態に係る二次元画像形成装置の構成を模試的に示した側面図である。
図6図6(a)は、第3の実施の形態に係る車両用灯具を模式的に示した側面図、図6(b)は、第3の実施の形態に係る二次元画像形成装置の配置を模試的に示した側面図、図6(c)は、第3の実施の形態に係る二次元画像形成装置の正面図である。
図7図7(a)は、第4の実施の形態に係る車両用灯具を模式的に示した側面図、図7(b)は、第4の実施の形態に係る二次元画像形成装置の構成を模試的に示した側面図である。
図8】第5の実施の形態に係る二次元画像形成装置の構成を模試的に示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1(a)は、第1の実施の形態に係る車両用灯具を模式的に示した側面図、図1(b)は、第1の実施の形態に係る二次元画像形成装置の配置を模試的に示した側面図、図1(c)は、第1の実施の形態に係る二次元画像形成装置の正面図である。
【0018】
車両用灯具10は、光源12と、光源12から出射した光を用いて明暗画像を形成する二次元画像形成装置14と、明暗画像を前方へ投影する投影光学系の一つである投影レンズ16と、を備える。
【0019】
光源12は、車両用灯具に適した様々なデバイスを利用可能である。例えば、電球、放電灯、LED、LD、ネオン管等のデバイスが挙げられる。また、用途や要求される性能に応じて複数のデバイスを組み合わせてもよい。また、デバイスによっては、一部の素子を点消灯させたり、PWM制御したりすることによって明るさを制御してもよい。
【0020】
二次元画像形成装置14は、光源12から出射した光を投影レンズ16に向けて選択的に透過させるように構成されており、また、光を透過させる割合を制御できるデバイスである。例えば、マトリックス状に素子が配置された液晶パネル等が好適である。また、第1の実施の形態に係る二次元画像形成装置14は、2つに分かれた液晶パネル14a,14bを有し、一方の液晶パネル14aは、下端が投影レンズ16の焦点F近傍となるように配置されており、他方の液晶パネル14bは、焦点Fより後方にずれた位置に配置されている。また、2つの液晶パネル14a,14bは、投影レンズ16側から見た正面視において、各素子が重ならないように配置されている。投影レンズ16は、二次元画像形成装置14を通過してきた光を所定の配光パターンとして車両前方に投影する。例えば、図1(a)に示す車両用灯具10は、ハイビーム用配光パターンを形成するように構成されている。
【0021】
また、マトリックス状に配置された素子の一部を光が透過しない状態にすることで、配光パターンの一部に非照射部(暗部)を形成することもできる。これにより、非照射部に存在する他者(車両の乗員や歩行者)に対してグレアを与えずに、車両前方の広範囲にわたって良好な視界が得られる。
【0022】
図2(a)は、第1の実施の形態に係る車両用灯具10により形成されるハイビーム用配光パターンを示す模式図、図2(b)は、ハイビーム用配光パターンの一部に非照射部が形成されている部分ハイビーム用配光パターンを示す模式図、図2(c)は、ロービーム用配光パターンを示す模式図である。図3(a)は、図2(a)に示すハイビーム用配光パターンを形成する際の二次元画像形成装置の各液晶素子の透過状態を示す図、図3(b)は、図2(b)に示す部分ハイビーム用配光パターンを形成する際の二次元画像形成装置の各液晶素子の透過状態を示す図、図3(c)は、図2(c)に示すロービーム用配光パターンを形成する際の二次元画像形成装置の各液晶素子の透過状態を示す図である。なお、図3(a)~図3(c)に示す液晶素子15aは、光源12の光を透過する状態のものであり、液晶素子15bは、光源12の光を透過しない状態である。
【0023】
図3(a)~図3(c)に示す二次元画像形成装置14の明部は、液晶素子が光源12の光を透過する状態により形成され、二次元画像形成装置14の暗部は、液晶素子が光源12の光を透過しない状態により形成される。また、図3(a)~図3(c)に示す二次元画像形成装置14により形成された明暗画像は、投影レンズ16で反転され、図2(a)~図2(c)に示す各配光パターンとして車両前方に投影される。
【0024】
上述のように、二次元画像形成装置14が透過式の場合、少なくとも一部の液晶素子が理想的には前方へ光を透過しない状態であっても、液晶素子における僅かな漏光や液晶素子の動作不良(遮光不良)により、光が透過してしまう場合がある。
【0025】
図4(a)は、ロービーム用配光パターンを形成する二次元画像形成装置14の一部の液晶素子が動作不良の場合の各液晶素子の透過状態を示す図、図4(b)は、図4(a)に示す二次元画像形成装置14により形成されたロービーム用配光パターンを模式的に示した図、図4(c)は、二次元画像形成装置14が投影する明暗画像の一部の結像性能を低下させた状態を模式的に示した図である。
【0026】
図4(a)に示すように、二次元画像形成装置14の液晶パネル14bは、配光パターンのうち主として水平線より上方の領域RHを照射する光の透過状態を制御している。しかしながら、図4(a)に示す液晶素子15cのように、本来は光を透過させない状態であるにもかかわらず、動作不良で光を透過させる状態となると、図4(b)に示す領域RHの一部の領域R1が照射される。そのため、領域R1に前走車や歩行者が存在すると、その前走車の乗員や歩行者に対してグレアを与えることになる。
【0027】
そこで、第1の実施の形態に係る車両用灯具10が備える二次元画像形成装置14は、投影する明暗画像の一部の結像性能を低下させる結像性能低下部を有する。具体的には、結像性能低下部は、投影レンズ16の焦点Fから後方にずれた位置に設けられている液晶パネル14bである。なお、液晶パネル14bを投影レンズ16の焦点Fから前方にずれた位置に設けてもよい。このように、液晶パネル14bを焦点Fからずらすことで、液晶パネル14bにより形成された明暗画像の一部(液晶素子15cを透過した光)が、車両前方に投影された際に鮮明に結像されない(図4(c)の領域R1’参照)。
【0028】
そのため、車両用灯具10は、領域R1’を含む水平線より上方の領域RHにおける明暗像の輪郭をぼかすことができ、自車両の運転手に違和感を与えない部分ハイビーム用配光パターンを形成できる。また、仮に一部の液晶素子の動作不良によって、投影された明暗画像の明部により他者にグレアを与える状況になっても、他者に与えるグレアの影響を低減できる。
【0029】
また、液晶パネル14bは、明暗画像のうち車両前方の水平線よりも上方へ投影される領域を形成する光の光路に配置されている。これにより、車両前方の水平線よりも上方に存在する他者に与えるグレアの影響を低減できる。
【0030】
このように、第1の実施の形態に係る車両用灯具10は、液晶パネル14bの配置を工夫するだけで、明暗画像の一部の結像性能を低下させることができる。ここで、結像性能とは、MTF特性、解像力、コントラスト、残存収差などで表現することができる。
【0031】
(第2の実施の形態)
図5(a)は、第2の実施の形態に係る車両用灯具を模式的に示した側面図、図5(b)は、第2の実施の形態に係る二次元画像形成装置の構成を模試的に示した側面図である。なお、第1の実施の形態と同様の説明については適宜省略する。
【0032】
第2の実施の形態に係る車両用灯具20は、第1の実施の形態に係る車両用灯具10と比較して、二次元画像形成装置18の構成が異なる。具体的には、二次元画像形成装置18は、二次元画像形成装置14と同様に、光源12から出射した光を投影レンズ16に向けて選択的に透過させるように構成された液晶パネル18aを有している。液晶パネル18aの下半分、つまり、配光パターンのうち主として水平線より上方の領域RH(図4(b))を照射する光の透過状態を制御する液晶パネル部分18bは、結像性能低下部の一部を構成しており、その表面には散乱要素18cが設けられている。これにより、液晶パネル18aの配置を変えずに、明暗画像の一部の結像性能を低下させることができる。
【0033】
なお、散乱要素18cは、二次元画像形成装置18から投影レンズ16への光路の途中に設けられていればよく、液晶パネル18aの光源12側の表面や、液晶パネル18aの前方の離間した所定位置に設けてもよい。また、散乱要素は,例えば、マイクロレンズ、マイクロプリズム等である。
【0034】
このような構成の車両用灯具20は、図4(a)に示す液晶素子15cのように、本来は光を透過させない状態であるにもかかわらず、動作不良で光を透過させる状態の液晶素子がある場合、第1の実施の形態に係る車両用灯具10と同様に、領域R1’(図4(c)参照)に前走車や歩行者が存在しても、その前走車の乗員や歩行者に対するグレアの影響を低減できる。
【0035】
(第3の実施の形態)
図6(a)は、第3の実施の形態に係る車両用灯具を模式的に示した側面図、図6(b)は、第3の実施の形態に係る二次元画像形成装置の配置を模試的に示した側面図、図6(c)は、第3の実施の形態に係る二次元画像形成装置の正面図である。車両用灯具30は、光源12と、光源12から出射した光を集光するために反射するリフレクタ32と、リフレクタ32で反射された光を用いて明暗画像を形成する二次元画像形成装置34と、明暗画像を前方へ投影する投影レンズ16と、を備える。
【0036】
なお、第3の実施の形態に係る二次元画像形成装置34は、第1の実施の形態や第2の実施の形態に係る二次元画像形成装置14が透過式であるのに対して、反射式である点が主な相違点であるが、車両用灯具30の作用効果は、車両用灯具10や車両用灯具20とほぼ同じであり、以下では主に構成の相違点について説明する。
【0037】
二次元画像形成装置34は、光源12から出射した光を投影レンズ16に向けて選択的に反射させる反射領域を有しており、また、光を反射する方向を制御できるデバイスである。例えば、マトリックス状に液晶素子が配置された反射型液晶パネルや、マトリックス状に微小ミラーを配置したMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等が好適である。なお、二次元画像形成装置34は、液晶や微小ミラーを外部環境から保護するための透明カバーを反射面に設けている場合がある。
【0038】
また、第3の実施の形態に係る二次元画像形成装置34は、2つに分かれたMEMSパネル34a,34bを有し、一方のMEMSパネル34aは、下端が投影レンズ16の焦点F近傍となるように配置されており、他方のMEMSパネル34bは、焦点Fより後方にずれた位置に配置されている。また、2つのMEMSパネル34a,34bは、投影レンズ16側から見た正面視において、各素子が重ならないように配置されている。投影レンズ16は、二次元画像形成装置34で反射された光を所定の配光パターンとして車両前方に投影する。例えば、図6(a)に示す車両用灯具30は、ハイビーム用配光パターンを形成するように構成されている。
【0039】
また、マトリックス状に配置された微小ミラー素子の一部を光が反射しない状態にすることで、配光パターンの一部に非照射部(暗部)を形成することもできる。これにより、非照射部に存在する他者(車両の乗員や歩行者)に対してグレアを与えずに、車両前方の広範囲にわたって良好な視界が得られる。
【0040】
第3の実施の形態に係る車両用灯具30は、第1の実施の形態に係る車両用灯具10と同様に、少なくとも一部の微小ミラー素子が理想的には投影レンズ16へ向かって光を反射しないはずの制御状態であっても、微小ミラー素子の動作不良により、光が投影レンズ16へ向かう反射位置のまま微小ミラー素子が動かない場合がある。このような場合、図4(b)に示すように、領域RHの一部の領域R1が照射される。そのため、領域R1に前走車や歩行者が存在すると、その前走車の乗員や歩行者に対してグレアを与えることになる。
【0041】
そこで、第3の実施の形態に係る二次元画像形成装置34は、投影する明暗画像の一部の結像性能を低下させる結像性能低下部を有する。具体的には、結像性能低下部は、投影レンズ16の焦点Fから後方にずれた位置に設けられているMEMSパネル34bである。なお、MEMSパネル34bを投影レンズ16の焦点Fから前方にずれた位置に設けてもよい。このように、MEMSパネル34bを焦点Fからずらすことで、MEMSパネル34bにより形成された明暗画像の一部(微小ミラー素子35cで反射された光)が、車両前方に投影された際に鮮明に結像されない(図4(c)の領域R1’参照)。そのため、仮に一部の微小ミラー素子の動作不良によって、投影された明暗画像の明部により他者にグレアを与える状況になっても、他者に与えるグレアの影響を低減できる。
【0042】
このように、第3の実施の形態に係る車両用灯具30は、MEMSパネル34bの配置を工夫するだけで、明暗画像の一部の結像性能を低下させることができる。
【0043】
(第4の実施の形態)
図7(a)は、第4の実施の形態に係る車両用灯具を模式的に示した側面図、図7(b)は、第4の実施の形態に係る二次元画像形成装置の構成を模試的に示した側面図である。なお、第3の実施の形態と同様の説明については適宜省略する。
【0044】
第4の実施の形態に係る車両用灯具40は、第3の実施の形態に係る車両用灯具30と比較して、二次元画像形成装置36の構成が異なる。具体的には、二次元画像形成装置36は、二次元画像形成装置34と同様に、光源12から出射した光を投影光学系に向けて選択的に反射させるように構成されたMEMSパネル36aを有している。MEMSパネル36aの下半分、つまり、配光パターンのうち主として水平線より上方の領域RH(図4(b))を照射する光の反射状態を制御するMEMSパネル部分36bは、結像性能低下部の一部を構成しており、その表面には散乱要素36cが設けられている。これにより、MEMSパネル36aの配置を変えずに、明暗画像の一部の結像性能を低下させることができる。
【0045】
なお、散乱要素36cは、二次元画像形成装置36から投影レンズ16への光路の途中に設けられていればよく、MEMSパネル36aの前方の離間した所定位置に設けてもよい。このような構成の車両用灯具40は、図6(c)に示す微小ミラー素子35cのように、本来は光を投影レンズ16に向けて反射させない制御状態であるにもかかわらず、動作不良で光を投影レンズ16に向けて反射させる反射位置のまま動かない微小ミラー素子がある場合、第3の実施の形態に係る車両用灯具30と同様に、領域R1’(図4(c)参照)に前走車や歩行者が存在しても、その前走車の乗員や歩行者に対するグレアの影響を低減できる
【0046】
(第5の実施の形態)
第2の実施の形態に係る二次元画像形成装置18や第4の実施の形態に係る二次元画像形成装置36の表面に設けられた散乱要素は、二次元画像形成装置の下半分の全体にわたって、散乱の程度が均一である。一方、第5の実施の形態に係る二次元画像形成装置は、表面に設けられた散乱要素の散乱の程度が場所によって異なる。図8は、第5の実施の形態に係る二次元画像形成装置の構成を模試的に示した正面図である。
【0047】
図8に示す二次元画像形成装置42は、透過型の液晶パネル18aの下半分の表面に散乱要素44が設けられている。散乱要素44は、水平線より上方の領域RH(図4(b))を照射する光の透過状態を制御する液晶パネル部分18bの上部中央領域に、散乱度(散乱要素の有無による光の広がりの違い)が相対的に高い高散乱部44aが設けられており、高散乱部44aの周囲には散乱度が相対的に低い低散乱部44bが設けられている。これにより、ハイビーム用配光パターンのうち光度が特に高い中央部の結像性をより低下させることが可能となり、中央部に存在する他者に与えるグレアの影響をより低減できる。
【0048】
なお、上述のように二次元画像形成装置を備えた各車両用灯具は、特にフォグランプやロービーム用ヘッドランプに好適である。また、上述の各車両用灯具は、例えば、MEMSミラーアレイを用いたADB(Adaptive Driving Beam)をロービーム用ランプやフォグランプとして利用する際に好適な構成である。
【0049】
また、上述の各実施の形態に係る車両用灯具は、前走車や歩行者等の交通利用者を検出するためのセンサを備えている。これにより、車両用灯具は、ADB制御により適切な配光パターンを形成することで、交通利用者になるべくグレアを与えずに車両前方の良好な視界を確保できる。
【0050】
以上、本発明を上述の各実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の各実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて各実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を各実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0051】
10 車両用灯具、 12 光源、 14 二次元画像形成装置、 14a,14b 液晶パネル、 15a,15b,15c 液晶素子、 16 投影レンズ、 18 二次元画像形成装置、 18a 液晶パネル、 18b 液晶パネル部分、 18c 散乱要素、 20,30 車両用灯具、 32 リフレクタ、 34 二次元画像形成装置、 34a,34b MEMSパネル、 35c 微小ミラー素子、 36 二次元画像形成装置、 36a MEMSパネル、 36b 液晶パネル部分、 36c 散乱要素、 40 車両用灯具、 42 二次元画像形成装置、 44 散乱要素、 44a 高散乱部、 44b 低散乱部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8