(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 15/00 20060101AFI20220318BHJP
【FI】
F04C15/00 E
F04C15/00 L
(21)【出願番号】P 2018097090
(22)【出願日】2018-05-21
【審査請求日】2021-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100129148
【氏名又は名称】山本 淳也
(72)【発明者】
【氏名】北山 直嗣
(72)【発明者】
【氏名】松任 卓志
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-009676(JP,A)
【文献】中国実用新案第207363874(CN,U)
【文献】特開2013-167243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ部と、前記ポンプ部を駆動するモータ部と、前記モータ部を制御する制御部と、
を備える電動ポンプにおいて、
前記ポンプ部は、ポンプハウジングを備えており、
前記モータ部は、モータハウジングを備えており、
前記ポンプハウジングと前記モータハウジングとは、金属により一体に構成され
ており、
前記制御部は、制御基板と、前記制御基板を収容するケースとを備えており、
前記ケースは、樹脂製のケース本体と、前記ケース本体に固定される樹脂製のケースカバーとを備えており、
前記ケースカバーは、前記ケースカバーにインサート成形されてなるヒートシンクを備えることを特徴とする電動ポンプ。
【請求項2】
ポンプ部と、前記ポンプ部を駆動するモータ部と、前記モータ部を制御する制御部と、
を備える電動ポンプにおいて、
前記ポンプ部は、ポンプハウジングを備えており、
前記モータ部は、モータハウジングを備えており、
前記ポンプハウジングと前記モータハウジングとは、金属により一体に構成されており、
前記制御部は、制御基板と、前記制御基板を収容するケースとを備えており、
前記ケースは、樹脂製のケース本体と、前記ケース本体に固定される樹脂製のケースカバーとを備え
ており、
前記ケースは、前記ケース本体と前記ケースカバーとを溶着する溶着部を備えることを特徴とする電動ポンプ。
【請求項3】
前記ケースは、前記ケース本体と前記ケースカバーとを溶着する溶着部を備える請求項
1に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記ポンプ部は、オイルポンプである請求項1から
3のいずれか一項に記載の電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばオイルポンプとして使用される電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動ポンプとして、特許文献1には、ポンプ部と、ポンプ部を駆動するモータ部と、モータ部を制御する制御部とを備えたものが開示されている。
【0003】
ポンプ部は、インナロータとアウタロータとを収容する金属製のポンプハウジングを備える。ポンプハウジングは、メインハウジングと、当該メインハウジングに固定されるサブハウジングとを含む。モータ部は、モータロータとステータとを収容する樹脂製のモータハウジングを備える。制御部は、制御基板(ドライバ)を収容するドライバ室を備える。ドライバ室は、モータハウジングと一体的に構成されたドライバケースと、当該ドライバケースに固定されるカバーとを含む。
【0004】
ポンプハウジングのメインハウジングは、モータ部に向かって突出する円柱状の膨出部を備える。モータハウジングは、円筒内面状の嵌合面を備える。ポンプハウジングとモータハウジングは、膨出部を嵌合面に嵌合させることによって連結されている(同文献の段落0022,0025及び
図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電動ポンプにおいて、ポンプハウジングとモータハウジングは、異なる材料(金属と樹脂)によって個別の部材として構成されている。特に、モータハウジングは熱伝導性が低い樹脂製であるため、小型の電動ポンプにおいてモータ部で大きな電流を流す場合に、十分な放熱性を確保できなかった。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたものであり、放熱性を高めることが可能な電動ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためのものであり、ポンプ部と、前記ポンプ部を駆動するモータ部と、前記モータ部を制御する制御部と、を備える電動ポンプにおいて、前記ポンプ部は、ポンプハウジングを備えており、前記モータ部は、モータハウジングを備えており、前記ポンプハウジングと前記モータハウジングとは、金属により一体に構成されてなることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、ポンプハウジングとモータハウジングとを金属によって一体に構成することで、モータ部で発生した熱をモータハウジングからポンプハウジングへと伝導させることができる。これにより、電動ポンプの放熱性を可及的に高めることができる。
【0010】
前記制御部は、制御基板と、前記制御基板を収容するケースとを備えており、前記ケースは、樹脂製のケース本体と、前記ケース本体に固定される樹脂製のケースカバーとを備え得る。制御部のケースを樹脂製とすることで、モータ部で発生した熱が制御部に伝導することを防止できる。また、ケースカバーを樹脂製とすることで、当該ケースカバーの外面側にカプラ等を形成する場合等において、設計の自由度を高めることができる。
【0011】
前記ケースカバーは、前記ケースカバーにインサート成形されてなるヒートシンクを備えてもよい。これにより、制御基板から生じる熱をヒートシンクによって放出できる。また、ヒートシンクをケースカバーにインサート成形することで、電動ポンプに対する制御部の組付性が向上する。
【0012】
前記ケースは、前記ケース本体と前記ケースカバーとを溶着する溶着部を備えてもよい。これにより、固定部材を使用することなくケースカバーをケース本体に対して強固に固定できる。
【0013】
本発明に係る電動ポンプでは、前記ポンプ部をオイルポンプとして使用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電動ポンプの放熱性を向上させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第一実施形態における電動ポンプの断面図である。
【
図2】電動ポンプにおける制御部の分解斜視図である。
【
図3】第二実施形態における電動ポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1及び
図2は、本発明に係る電動ポンプの第一実施形態を示す。本実施形態では、電動ポンプとして自動車のエンジンオイル潤滑用やトランスミッションへの油圧供給に使用されるオイルポンプを例示するが、本発明の用途はこれに限定されるものではない。
【0017】
図1に示すように、電動ポンプ1は、ポンプ部2と、ポンプ部2を駆動する回転軸3を有するモータ部4と、モータ部4を制御する制御部5と、を備える。
【0018】
ポンプ部2は、トロコイドポンプにより構成されるが、これに限らずベーンポンプその他のポンプにより構成され得る。ポンプ部2は、インナロータ6と、アウタロータ7と、インナロータ6及びアウタロータ7を収容するポンプハウジング8と、ポンプハウジング8に固定されるポンプカバー9とを備える。
【0019】
インナロータ6は、回転軸3が挿通される貫通孔10を有する。インナロータ6の貫通孔10と回転軸3は、スプライン嵌合等の手段により連結されている。インナロータ6及びアウタロータ7は、ポンプハウジング8とポンプカバー9とによって形成されるロータ室11に収容されている。
【0020】
ポンプハウジング8は、アルミニウム合金等の金属により所定形状に構成される。ポンプハウジング8は、ロータ室11の一部を構成する凹部12と、回転軸3を挿通するための孔(以下「挿通孔」という)13と、ポンプカバー9をポンプハウジング8に固定するためのねじ孔14とを有する。その他、ポンプハウジング8は、作動油(オイル)を循環させるための吸引ポート及び吐出ポート(図示せず)を備える。
【0021】
凹部12は、インナロータ6及びアウタロータ7を収容可能な大きさ及び深さを有する。挿通孔13は、回転軸3を挿通可能な円形の孔として構成される。ねじ孔14は、ポンプハウジング8の一部を軸方向(回転軸3に平行な方向)に貫通している。
【0022】
ポンプカバー9は、アルミニウム合金等の金属によりプレート状に構成される。ポンプカバー9は、回転軸3の一部を収容する凹部15と、シール部材16を収容する溝部17と、複数の貫通孔18とを備える。
【0023】
凹部15は、回転軸3の外径よりも若干大きな内径を有する円形の内周面を有する。凹部15は、回転軸3の一部を収容することで、当該回転軸3が傾斜しないように規制する。この構成に限らず、凹部15には回転軸3を支持する軸受が設けられてもよい。
【0024】
溝部17は、凹部15を囲むように環状に構成される。溝部17にはシール部材16としてOリングが収容されている。
【0025】
貫通孔18は、ポンプカバー9をポンプハウジング8に固定するボルト等の固定部材19を挿通するためのものである。貫通孔18とポンプハウジング8のねじ孔14とを一致させ、貫通孔18を通じて固定部材19をねじ孔14に螺合することで、ポンプカバー9がポンプハウジング8に固定されている。
【0026】
モータ部4は、回転軸3の他に、当該回転軸3と一体に構成されるモータロータ20と、ステータ21と、モータロータ20及びステータ21を収容するモータハウジング22と、を備える。
【0027】
回転軸3は段付き軸として構成される。回転軸3の一方の端部(以下「第一端部」という)3aは、ポンプ部2に係るポンプカバー9の凹部15に収容されている。回転軸3の他方の端部(以下「第二端部」という)3bは、制御部5の一部に支持されている。
【0028】
モータロータ20は、回転軸3の第一端部3aと第二端部3bとの間に設けられたロータコア23と、ロータコア23の外周に取り付けられた永久磁石24とを備える。
【0029】
ステータ21は、モータハウジング22の内面に固定されている。ステータ21は、ステータコア25と、ステータコア25に装着された絶縁用のボビン26と、ボビン26に巻回されたコイル27とを備える。
【0030】
モータハウジング22は、アルミニウム合金等の金属により構成される。モータハウジング22は、ポンプハウジング8と同じ金属により、当該ポンプハウジング8と一体に成形される。すなわち、ポンプハウジング8及びモータハウジング22は、例えばダイカスト等の鋳造により一体化された成形品(ダイカスト成形品)である。
【0031】
上記の構成により、ポンプハウジング8とモータハウジング22との間の部分(以下「中間部」という)28には、当該ポンプハウジング8とモータハウジング22との継ぎ目がなく、相互に接触する面も存在しない。この中間部28には、ポンプ部2における作動油のモータ部4への侵入を防止するシール部材29(オイルシール)が設けられている。このシール部材29は、回転軸3の中途部における外周面に接触している。
【0032】
中間部28には、シール部材29の収容部30が形成されている。収容部30は、シール部材29に接触する支持面31を有する。支持面31は、ポンプハウジング8の挿通孔13と軸方向において隣り合うように形成されている。支持面31は、正面視円形状に構成される。支持面31の直径は、ポンプハウジング8の挿通孔13の直径よりも大きい。
【0033】
モータハウジング22には、回転軸3を支持する軸受32が設けられる。軸受32は玉軸受により構成されるが、これに限定されず、ニードル軸受その他の各種軸受を採用できる。軸受32は、モータハウジング22に取り付けられる外輪33と、回転軸3に取り付けられる内輪34と、外輪33と内輪34との間に配置される転動体としての玉35とを有する。
【0034】
モータハウジング22は、軸受32の外輪33に接触する支持面36を有する。支持面36は、中間部28の収容部30に形成される支持面31と軸方向において隣り合うように形成されている。支持面36は、正面視円形状に構成される。支持面36の直径は、中間部28の支持面31の直径よりも大きい。
【0035】
制御部5は、モータハウジング22の端部に連結されている。制御部5は、モータ部4を制御する制御基板37と、当該制御基板37を収容するケース38とを備える。
【0036】
制御基板37は、インバータ回路及び各種電子部品からなる電力制御回路等を実装する。制御基板37は、バスバー39を介してモータ部4のステータ21(コイル27)に接続されている。
【0037】
ケース38は、モータハウジング22に連結されるケース本体40と、ケース本体40に固定されるケースカバー41とを含む。ケース本体40及びケースカバー41は樹脂製(例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン(PA66等)等にガラス繊維を配合したもの)であり、例えば射出成形によって所定形状に構成される。
【0038】
ケース本体40は、回転軸3の第二端部3bを支持する支持部42と、モータハウジング22に嵌合する突出部43とを有する。
【0039】
支持部42は、ケース本体40に一体成形される筒状部44と、筒状部44に配される軸受45とを備える。筒状部44は円筒状に構成されると共に、ケース本体40から軸方向に突出する。筒状部44の内側には、軸受45を支持するリング体46が配置されている。リング体46は、金属製(例えば、冷間圧延鋼板、ステンレス鋼、炭素鋼)であり、インサート成形によって筒状部44に固定されている。
【0040】
軸受45は、ニードル軸受により構成されるが、他の各種軸受によって構成してもよい。軸受45は、転動体としての針状ころ47と、リング体46の内側に配されるシェル形の外輪48とを備える。また、軸受45と回転軸3のモータロータ20との間には、スラストワッシャ49が設けられている。
【0041】
突出部43は、モータハウジング22の端部から当該モータハウジング22の内側に嵌合している。突出部43の外面には、シール部材50を収容する溝部51が形成されている。溝部51には、シール部材50としてOリングが装着されている。
【0042】
ケースカバー41は、ボルト等の固定部材52を介してケース本体40に固定されている。ケースカバー41は、その外面側に形成されるカプラ53と、当該ケースカバー41に固定されるヒートシンク54とを備える。
【0043】
カプラ53は、電源接続用及び電気信号用の複数の接続端子55と、接続端子55を覆う筒状のカバー部56とを備える。接続端子55及びカバー部56は、ケースカバー41の外面から軸方向外方に突出している。
【0044】
ヒートシンク54はアルミニウム合金等の金属により構成される。ヒートシンク54は、インサート成形によりケースカバー41と一体化されている。ヒートシンク54は、板状の基部57と、当該基部57から突出する複数のフィン58とを備える。基部57は、ケースカバー41に固定されると共に、放熱シート59を介して制御基板37に接触している。放熱シート59は、例えばシリコーンゴム等の熱伝導性の良い材料により構成される。フィン58は、ケースカバー41の外側に突出(露出)している。
【0045】
以上説明した本実施形態に係る電動ポンプ1によれば、ポンプハウジング8とモータハウジング22とを金属(例えばアルミニウム合金)によって一体成形していることから、モータ部4において発生した熱をモータハウジング22からポンプハウジング8に伝導させることで、その放熱性を高めることができる。さらに、電動ポンプ1は、ポンプ部2を流通する作動油によるポンプハウジング8の冷却効果により、その放熱性を一層高めることができる。
【0046】
また、ポンプハウジング8とモータハウジング22とを金属によって一体に構成することで、両者を締結部材によって連結し、或いはシール部材によってシールする必要がなくなり、電動ポンプ1の小型化及び軽量化をも実現できる。
【0047】
また、制御部5のケース38を樹脂製とすることで、モータ部4で発生した熱が制御部5に伝導することを防止できる。さらにケースカバー41を樹脂製とすることで、当該ケースカバー41の外面側にカプラ53を形成する場合等における設計の自由度を高めることができる。
【0048】
図3は電動ポンプの第二実施形態を示す。本実施形態では、制御部5におけるケース38の構成が第一実施形態と異なる。第一実施形態に係る制御部5のケース38は、固定部材52によってケースカバー41をケース本体40に固定する構成であったが、本実施形態に係るケース38は、制御部5をモータ部4に組み付けた後に、ケースカバー41をケース本体40に対して溶着することにより構成される。
【0049】
これにより、ケース本体40とケースカバー41との間には両者を一体に連結する溶着部60が形成される。本実施形態では、第一実施形態における固定部材52を用いることなくケースカバー41をケース本体40に固定できるため、電動ポンプ1の製造効率を向上させると共に、当該電動ポンプ1の軽量化及び小型化を実現できる。本実施形態におけるその他の構成は、第一実施形態と同じである。本実施形態において第一実施形態と共通する構成要素には共通符号を付している。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0051】
上記の実施形態では、ヒートシンク54をケースカバー41にインサート成形した例を示したが、本発明はこの構成に限定されず、ケースカバー41とは別に構成されるヒートシンク54を、電動ポンプ1の組付け作業時にケースカバー41に対して装着してもよい。
【0052】
上記の第二実施形態では、制御部5のケースカバー41をケース本体40に溶着した例を示したが、本発明はこれに限らず、ケースカバー41を接着剤によってケース本体40に固定してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 電動ポンプ
2 ポンプ部
4 モータ部
5 制御部
8 ポンプハウジング
22 モータハウジング
37 制御基板
38 ケース
40 ケース本体
41 ケースカバー
54 ヒートシンク
60 溶着部