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特許7042692処理液の処理方法および排ガスの処理方法
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  • 特許-処理液の処理方法および排ガスの処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】処理液の処理方法および排ガスの処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20060101AFI20220318BHJP
   C03B 5/16 20060101ALI20220318BHJP
   C02F 1/70 20060101ALI20220318BHJP
   B01D 53/46 20060101ALI20220318BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20220318BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20220318BHJP
   B01D 53/75 20060101ALI20220318BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20220318BHJP
   B01J 41/07 20170101ALI20220318BHJP
   B01J 39/05 20170101ALI20220318BHJP
   B01J 47/026 20170101ALI20220318BHJP
【FI】
C02F1/42 B ZAB
C03B5/16
C02F1/70 Z
B01D53/46
B01D53/56 200
B01D53/68 120
B01D53/68
B01D53/75
B01D53/78
B01J41/07
B01J39/05
B01J47/026
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018103481
(22)【出願日】2018-05-30
(65)【公開番号】P2019205983
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391021765
【氏名又は名称】新日本電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【弁理士】
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】北島 健史
(72)【発明者】
【氏名】瀬良 繁
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 誠一郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴司
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-180284(JP,A)
【文献】国際公開第2014/064754(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/072612(WO,A1)
【文献】特開昭62-171731(JP,A)
【文献】特開平5-138177(JP,A)
【文献】特開2003-290785(JP,A)
【文献】特開昭62-155987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/42、 1/70
C03B 5/16
B01D 53/34-53/85、
53/92、53/96
B01J 39/00-49/90
F27B 1/00- 3/28
F27D 17/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素、カルシウム及び亜硝酸を含む処理液を陰イオン交換樹脂に流通させることにより、前記処理液から不純物を除去してホウ素溶液を得る除去工程を備えた処理液の処理方法であって、
前記処理液を前記陰イオン交換樹脂に流通させる前に、前記処理液に亜硫酸を含む還元剤を添加する還元工程を更に備えることを特徴とする処理液の処理方法。
【請求項2】
前記亜硫酸が、スルファミン酸であることを特徴とする請求項1に記載の処理液の処理方法。
【請求項3】
前記還元剤は、前記処理液が流通する配管内で添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の処理液の処理方法。
【請求項4】
前記陰イオン交換樹脂が、弱塩基性陰イオン交換樹脂であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の処理液の処理方法。
【請求項5】
前記除去工程では、前記陰イオン交換樹脂の前に、前記処理液を陽イオン交換樹脂に流通させることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の処理液の処理方法。
【請求項6】
ホウ素を含むガラス原料を溶融するガラス溶融炉の排ガスの処理方法であって、
前記排ガスに湿式捕集又は乾式捕集を施すことにより、前記排ガスからホウ素及び亜硝酸を含む捕集物を得る捕集工程と、
前記捕集物にカルシウムを含む中和剤を添加する中和工程と、
前記中和工程を経た前記捕集物を固液分離することにより、処理液を得る固液分離工程と、
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法により、前記処理液を処理してホウ素溶液を得る処理工程とを備えていることを特徴とする排ガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液の処理方法および排ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス溶融炉では、粉状又は粒状のガラス原料を、ガス燃料を燃焼させるバーナーなどによって加熱することにより溶融ガラスを製造する。この溶融ガラスは、所定の成形工程を経て、ガラス板やガラス管などの種々のガラス物品になる。
【0003】
この際、ガラス溶融炉から発生する排ガス中には、ガラス原料中に含まれる成分の一部が気体又は微小固体の状態で含まれる。このため、排ガス中には、ガラス原料としてリサイクルできる成分も多く含まれている。したがって、排ガスからリサイクル原料を回収することができれば、ガラス原料の節約にも寄与し得る。また同時に環境にも配慮することができる。
【0004】
このような方法の一つとして、例えば、特許文献1では、ホウ素を含むガラス原料を溶融するガラス溶融炉の排ガスからホウ素を含むリサイクル原料を回収することが開示されている。詳細には、排ガスに湿式捕集、中和、固液分離などを施し、ホウ素、カルシウム、その他の不純物を含む処理液(抽出液体)を得た後に、その処理液を陰イオン交換樹脂に流通させることにより、処理液から不純物を除去して、リサイクル原料を含むホウ素溶液を得ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-180284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の処理液には、例えば、ガラス原料由来のホウ素が含まれ、処理液を中和するためにカルシウムが添加されている。
【0007】
また、上記の処理液には、例えば、塩素などのハロゲン化物(ハロゲン化物イオンやハロゲン化物塩を含む)などが不純物として含まれる。ハロゲン化物は清澄剤等に由来する。不純物は、処理液を陰イオン交換樹脂に流通させることによって除去される。
【0008】
処理液には、亜硝酸がさらに含まれる。亜硝酸はガラス原料及び/又はガス燃料の窒素成分に由来する。亜硝酸が処理液に含まれていると、陰イオン交換樹脂を劣化させやすく、樹脂寿命が著しく低下する場合がある。これは、亜硝酸の酸化作用によるものと考えられる。
【0009】
本発明は、処理液から不純物を除去するための陰イオン交換樹脂の長寿命化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ホウ素、カルシウム及び亜硝酸を含む処理液を陰イオン交換樹脂に流通させることにより、処理液から不純物を除去してホウ素溶液を得る除去工程を備えた処理液の処理方法であって、処理液を陰イオン交換樹脂に流通させる前に、処理液に亜硫酸を含む還元剤を添加する還元工程を更に備えることを特徴とする。このような構成によれば、処理液に含まれる亜硝酸が還元剤によって還元される。その結果、陰イオン交換樹脂に処理液を流通させる前に、処理液から亜硝酸を減少させることができる。従って、陰イオン交換樹脂の長寿命化を図ることができる。ここで、「ホウ素」という用語には、酸化ホウ素やホウ酸といったホウ素化合物やそれらのイオンも含まれる。また、「カルシウム」という用語には、消石灰といったカルシウム化合物やそれらのイオンも含まれる。「亜硝酸」という用語には、亜硝酸イオンや亜硝酸塩といった亜硝酸化合物を含む。「不純物」、「亜硫酸」という用語には、各用語のイオンも含まれる。「処理液から不純物を除去する」という用語には、不純物を完全に取り除く場合の他、その量を低減する場合も含まれる。「ホウ素溶液」という用語は、ホウ素を主成分として含む溶液という意味である。
【0011】
上記の構成において、亜硫酸が、スルファミン酸であることが好ましい。亜硫酸は、亜硫酸ナトリウムやチオ硫酸ナトリウムなどであってもよいが、処理液に溶解しているカルシウムと反応し、カルシウムが沈殿する場合がある。これに対し、スルファミン酸は、処理液に溶解しているカルシウムと反応しにくく、カルシウムの沈殿を防止することができる。従って、スルファミン酸を用いた場合、沈殿したカルシウムを除去するフィルターなどの除去設備が不要となるため、設備コストを低減することができる。
【0012】
上記の構成において、還元剤は、処理液が流通する配管内で添加することが好ましい。このようにすれば、還元剤が配管内を流通する処理液の流れによって自動的に撹拌される。従って、撹拌羽根などの撹拌設備が不要となるため、設備コストを低減することができる。
【0013】
上記の構成において、陰イオン交換樹脂が、弱塩基性陰イオン交換樹脂であることが好ましい。このようにすれば、陰イオン交換樹脂にホウ素が吸着するのを防止することができるため、ホウ素の回収効率を上げることができる。
【0014】
上記の構成において、除去工程では、陰イオン交換樹脂の前に、処理液を陽イオン交換樹脂に流通させることが好ましい。処理液に含まれるカルシウムが多すぎると、陰イオン交換樹脂のイオン交換性能が低下する場合がある。従って、陰イオン交換樹脂の前に、処理液を陽イオン交換樹脂に流通させることにより、処理液中のカルシウムを陽イオン交換樹脂に吸着させ、処理液中のカルシウムを除去(低減を含む)することが好ましい。
【0015】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、ホウ素を含むガラス原料を溶融するガラス溶融炉の排ガスの処理方法であって、排ガスに湿式捕集又は乾式捕集を施すことにより、排ガスからホウ素及び亜硝酸を含む捕集物を得る捕集工程と、捕集物にカルシウムを含む中和剤を添加する中和工程と、中和工程を経た捕集物を固液分離することにより、処理液を得る固液分離工程と、上記の構成を適宜備えた方法により、処理液を処理してホウ素溶液を得る処理工程とを備えていることを特徴とする。このような構成によれば、排ガスから高濃度のホウ素を回収可能なホウ素溶液を効率よく得ることができると共に、既に述べた理由から、陰イオン交換樹脂の長寿命化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のような本発明によれば、処理液から不純物を除去する陰イオン交換樹脂の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る排ガスの処理方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、排ガスの処理方法の実施形態を添付図面に基づいて説明する。なお、以下の排ガスの処理方法の実施形態の中で、処理液の処理方法の実施形態についても説明する。もちろん、処理液の処理方法は、排ガスの処理方法に組み込まれる場合に限定されるものではなく、処理液を処理する方法として単独で実施することもできる。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る排ガスの処理方法は、溶融工程、捕集工程、中和工程、固液分離工程(抽出工程)、回収工程、除去工程、還元工程を含む。このうち、本実施形態に係る処理液の処理方法は、除去工程と還元工程に相当する部分である。
【0020】
(溶融工程)
溶融工程では、ガラス溶融炉1で、目的のガラス組成となるように調製されたホウ素を含むガラス原料aをバーナーで加熱し、ホウ珪酸ガラスとなる溶融ガラスを製造する。溶融ガラスからは、ガラス板、ガラスリボンをロール状に巻き取ったガラスロール、ガラス管などのガラス物品が製造される。
【0021】
バーナーのガス燃料としては、例えば、硫黄分の少ないLPGやLNGを用いることが好ましい。また、ガラス原料aも、硫黄分の少ないものを用いることが好ましい。更に、後述する処理液中の亜硝酸を低減する観点からは、酸素燃焼を用いることが好ましい。あるいは、バーナーに代えて又はこれと併用して、ガラス原料aを溶融ガラス中に浸漬された電極で通電加熱してもよい。
【0022】
ガラス溶融炉1から発生する排ガスb中には、ガラス原料aやバーナーのガス燃料に由来する微小固体や気化物質が含まれる。このため、排ガスbは、リサイクル原料であるホウ素(ホウ素化合物を含む)以外にも、ガラス原料a及び/又はガラス燃料に由来する、亜硝酸、ハロゲン化物などの不純物を含んでいる。
【0023】
(捕集工程)
捕集工程では、ガラス溶融炉1から発生する排ガスbを捕集装置2へと導入し、排ガスbからホウ素、亜硝酸及び不純物を含む捕集液cを得る。
【0024】
捕集装置2では、排ガスbを例えば60~70℃まで冷却し、排ガスb中に気化した状態で含まれるホウ素を析出させる。
【0025】
捕集装置2は、本実施形態では、スプレー塔3と湿式電気集塵機4とを備えた湿式の捕集装置である。なお、湿式電気集塵機4は、スプレー塔3の補助的な役割を果たすものであるため省略してもよい。捕集装置2は、排ガスbからホウ素を湿式捕集できるものであれば、その種類は特に限定されない。
【0026】
排ガスbに含まれるホウ素(微小固体や気化物質)は、スプレー塔3内に噴霧された洗浄水と接触することによって冷却されて析出し、捕集液cとして捕集される。スプレー塔3を通過した排ガスdに残留するホウ素も、湿式電気集塵機4の洗浄水と接触することにより、捕集液cとして捕集される。これら捕集液cが捕集物となる。捕集装置2でホウ素を捕集するのに伴い、排ガスbに含まれる亜硝酸や不純物も捕集液cとして捕集される。ここで、スプレー塔3及び湿式電気集塵機4の洗浄水には、ホウ素を含む洗浄水が用いられるので、捕集液cのホウ素濃度は飽和又はそれに近い状態となる。このため、捕集液cに含まれるホウ素の一部は未溶解となる。
【0027】
湿式電気集塵機4を通過して清浄化された排ガスeは、煙突5から大気中(系外)に放出される。
【0028】
(中和工程)
中和工程では、スプレー塔3及び湿式電気集塵機4で捕集した捕集液cを中和槽6に導入する。
【0029】
中和槽6では、捕集液cに消石灰等のカルシウムを含むアルカリ性の中和剤fを添加し、酸性を示す捕集液cを中和する。具体的には、捕集液cの水素イオン濃度(pH)が、好ましくは7.5~12.0、より好ましくは8.0~10.0の弱アルカリ性になるように中和する。これにより、後工程における配管等の酸による腐食を防止すると共に、捕集液c中のホウ素の溶解度を下げてその回収効率を高めることができる。
【0030】
(固液分離工程)
固液分離工程では、中和槽6で中和された捕集液gを、固液分離装置7に導入する。
【0031】
固液分離装置7では、捕集液gが固液分離され、ろ液hとケーキiとに分けられる。従って、ろ液hが、本実施形態に係る処理液の処理方法における処理液である。
【0032】
捕集液gに含まれるカルシウムや亜硝酸、不純物は、捕集液gに溶解している場合が多く、そのほとんどがろ液hとして回収される。一方、捕集液gのホウ素は、前述の通り、その一部が未溶解で含まれる。また、捕集液gのカルシウムも、その一部が未溶解で含まれる。このため、捕集液gに含まれるホウ素及びカルシウムのうち、一部はろ液hとして回収され、残りはケーキiとして回収される。従って、ろ液hには、ホウ素やカルシウム、亜硝酸、不純物(ハロゲン化物)が含まれる。なお、これらの各物質は、イオンや塩などの化合物の状態で含まれていてもよい。
【0033】
固液分離装置7としては、例えば、フィルタープレス、遠心分離、減圧ろ過などが挙げられるが、その種類は特に限定されない。
【0034】
(回収工程)
回収工程では、回収手段としての乾燥機8にケーキiを導入し、ケーキiからリサイクル原料jを回収する。
【0035】
乾燥機8では、ケーキi中に含まれる水分を乾燥除去し、乾燥した粉末状のリサイクル原料jが得られる。得られたリサイクル原料jは、ガラス原料aと共にガラス溶融炉1に供給される。
【0036】
ここで、乾燥対象となるケーキiには、ホウ素が含まれるため、乾燥により水分を除去すれば、不純物の少ないホウ素を回収することができる。また、カルシウムは、例えば、酸化カルシウムとしてガラス原料に使用できるため、ホウ素と一緒に回収されても問題はない。もちろん、カルシウムが回収されないように、ケーキi(又はリサイクル原料j)に対して、カルシウムの除去処理を行ってもよい。
【0037】
乾燥機8としては、例えば、減圧乾燥機、ロータリードライヤー、バンド乾燥機、スプレードライヤーなどが挙げられるが、その種類は特に限定されない。
【0038】
(除去工程)
除去工程では、処理液である、ろ液hをイオン交換樹脂塔9に導入し、ろ液hから不純物を除去してホウ素溶液kを得る。
【0039】
イオン交換樹脂塔9は、上流側(固液分離装置7側)に配置された陽イオン交換樹脂10と、下流側に配置された陰イオン交換樹脂11とを備えている。例えば、陽イオン交換樹脂10は強酸性陽イオン交換樹脂であり、陰イオン交換樹脂11は弱塩基性陰イオン交換樹脂である。弱塩基性陰イオン交換樹脂を用いると、ろ液h中のホウ素の吸着を抑えることができる。
【0040】
陽イオン交換樹脂10では、ろ液hに含まれるカルシウムが除去(低減を含む)され、陰イオン交換樹脂11では、ろ液hに含まれる不純物(例えば、ハロゲン化物)が除去(低減を含む)される。これにより、ろ液hからカルシウム及び不純物を除去して、ホウ素溶液kを得ることができる。得られたホウ素溶液kは、上述の捕集装置2(スプレー塔3及び/又は湿式電気集塵機4)に洗浄水として供給される。このようにすれば、洗浄水のホウ素濃度が飽和又はそれに近い状態となるので、捕集液c中でホウ素が溶解しにくくなる。その結果、ホウ素が未溶解物として残存しやすくなり、固液分離によってケーキiとして回収しやすくなる。
【0041】
固液分離装置7と陽イオン交換樹脂10の間、および、陽イオン交換樹脂10と陰イオン交換樹脂11の間は、それぞれ配管で接続されている。
【0042】
なお、ホウ素溶液kは、カルシウムを含んでいてもよい。また、陽イオン交換樹脂10は省略してもよい。ただし、カルシウムが多すぎると、陰イオン交換樹脂11のイオン交換性能が低下する場合があるため、陰イオン交換樹脂11の上流側に陽イオン交換樹脂10を配置することが好ましい。
【0043】
(還元工程)
ここで、ろ液hは、亜硝酸を含む。亜硝酸は陰イオン交換樹脂11を劣化させて樹脂寿命を低下させる原因となる。そこで、本実施形態に係る排ガスの処理方法は、除去工程の前に、ろ液hに亜硫酸を含む還元剤mを添加する還元工程を含む。亜硫酸は、イオンの状態で含まれていてもよい。
【0044】
還元剤mは、ろ液hに含まれる亜硝酸を還元する。その結果、陰イオン交換樹脂11にろ液hを流通させる前に、ろ液hから亜硝酸を除去(低減を含む)することができる。従って、陰イオン交換樹脂11の長寿命化を図ることができる。具体的には、例えば、陰イオン交換樹脂11の寿命が1年から3年に延びる。
【0045】
還元剤mに含まれる亜硫酸としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、スルファミン酸(アミド硫酸ともいう)などが挙げられるが、本実施形態ではスルファミン酸が用いられる。スルファミン酸は、ろ液hに溶解しているカルシウムと反応しにくく、カルシウムの沈殿を防止することができる。従って、スルファミン酸を用いた場合、沈殿したカルシウムを除去するフィルターなどの除去設備が不要となり、設備コストを低減することができる。
【0046】
亜硝酸塩(MNO)とスルファミン酸(HNSO)の反応は、下記の反応式で表される。反応により発生した窒素ガスは、イオン交換樹脂塔9から大気中(系外)に放出される。また、硫酸水素イオン(MHSO)は、陰イオン交換樹脂11によって除去(低減を含む)される。
MNO+HNSO→MHSO+N+H
ただし、Mは一価の陽イオン
【0047】
スルファミン酸の添加量は、亜硝酸塩の濃度によって適宜調整される。亜硝酸塩の濃度が1000ppm程度であれば、スルファミン酸の添加量は、100ppm~1000ppmとすることができる。スルファミン酸を過剰添加して反応速度を高めるために、スルファミン酸の添加量を1000ppm超としてもよく、5000ppm以上とすることが好ましい。過剰添加による反応速度の向上が飽和するので、スルファミン酸の添加量を15000ppm以下とすることが好ましい。
【0048】
本実施形態では、固液分離装置7から陽イオン交換樹脂10へ至る配管内で、還元剤mが添加される。これにより、還元剤mが配管内を流通する、ろ液hの流れによって自動的に撹拌される。その結果、撹拌設備を別途設なくてもよいため、設備コストを低減することができる。
【0049】
ここで、亜硝酸塩とスルファミン酸の反応は、酸性環境下で生じやすい。陽イオン交換樹脂10でカルシウムを除去した後、ハロゲン化物(例えば塩素)が残るため、ろ液hのpHが下がって酸性になる。従って、亜硝酸塩とスルファミン酸の反応は、主に陽イオン交換樹脂10の下流側、すなわち、陽イオン交換樹脂10と陰イオン交換樹脂11との間で生じると考えられる。ただし、亜硝酸塩とスルファミン酸の反応は、陽イオン交換樹脂10の上流側でもゆっくりと進むと考えられる。
【0050】
なお、還元剤mの添加位置や添加方法は、陰イオン交換樹脂11の上流側であれば、特に限定されない。例えば、陽イオン交換樹脂10から陰イオン交換樹脂11へ至る配管内で、還元剤mを添加してもよい。また、陰イオン交換樹脂11の上流側に、ろ液hと還元剤mを一時的に貯留するタンクを設け、タンク内に撹拌羽根などの撹拌設備を設けてもよい。
【0051】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0052】
上記の実施形態では、除去工程で得られたホウ素溶液を、捕集手段に供給する場合を説明したが、ホウ素溶液を固液分離で得られたケーキと混合してもよい(例えば、特許文献1の図1及び図2の構成)。この場合、リサイクル原料を得るために、ホウ素溶液とケーキの混合物の水分をそのままスプレードライヤー等で乾燥除去してもよいし、その混合物を再び固液分離して得られたケーキの水分を減圧乾燥機等で乾燥除去してもよい。
【0053】
上記の実施形態では、固液分離装置で捕集液を一回だけ固液分離する場合を説明したが、固液分離を複数回行ってもよい。この場合、例えば、各回の固液分離で得られたろ液をそれぞれイオン交換樹脂塔に供給し、各イオン交換樹脂塔で得られたホウ素溶液を各回の固液分離で得られたケーキと混合するようにしてもよい(例えば、特許文献1の図2の構成)。
【0054】
上記の実施形態では、捕集手段として、排ガスからホウ素を湿式捕集する場合を説明したが、排ガスからホウ素を乾式捕集してもよい。乾式の捕集手段としては、例えば、冷却塔とバグフィルターとを備えたものが挙げられる。乾式捕集する場合、捕集物は捕集粉となるため、例えば、固液分離する前に液体成分(例えば、純水や、除去工程で得られたホウ素溶液)と混合することが好ましい(例えば、特許文献1の図3の構成)。
【符号の説明】
【0055】
1 ガラス溶融炉
2 捕集装置
3 スプレー塔
4 湿式電気集塵機
5 煙突
6 中和槽
7 固液分離装置
8 乾燥機
9 イオン交換樹脂塔
10 陽イオン交換樹脂
11 陰イオン交換樹脂
a ガラス原料
b 排ガス
c 捕集液(捕集物)
e 排ガス
f 中和剤
g 捕集液(捕集物)
h ろ液
i ケーキ
j リサイクル原料
k ホウ素溶液
m 還元剤
図1