(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】ピペット装置およびピペット装置位置決めシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/10 20060101AFI20220318BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N35/02 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018198819
(22)【出願日】2018-10-23
【審査請求日】2020-11-09
(32)【優先日】2017-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レナト ベルツ
(72)【発明者】
【氏名】アルミン ブッハー
(72)【発明者】
【氏名】レト ヨーホ
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン ミツェリ
(72)【発明者】
【氏名】タマラ メラニー ワグナー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ルドルフ リープル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ケッペン
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-119411(JP,A)
【文献】国際公開第2012/014388(WO,A1)
【文献】特開2014-211437(JP,A)
【文献】特開2017-102020(JP,A)
【文献】特開2004-157020(JP,A)
【文献】特開2001-281113(JP,A)
【文献】特表2003-522318(JP,A)
【文献】実開昭56-138370(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/02,35/10,
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動化されたピペット装置(100)であって、前記ピペット装置(100)は、
ピペットヘッド(10)、および、長手軸(21)を有し、前記ピペットヘッド(10)に搭載されたピペットノズル(20)と、
前記ピペットノズル(20)の周囲で前記長手軸(21)に対して同心状に配置され、前記ピペットノズル(20)を少なくとも部分的に覆う中空のアクチュエータ部材(30)であって、前記アクチュエータ部材(30)および前記ピペットノズル(20)が前記長手軸(21)に沿って互いに対して移動可能であるように、前記ピペットヘッド(10)または前記ピペットノズル(20)に移動可能に結合された、アクチュエータ部材(30)と、
前記アクチュエータ部材(30)の周囲で前記長手軸(21)に対して同心状に配置され、前記アクチュエータ部材(30)を少なくとも部分的に覆う中空の接触部材(40)
であって、前記接触部材(40)および前記アクチュエータ部材(30)が前記長手軸(21)に沿って互いに対して移動可能であるように、前記アクチュエータ部材(30)に移動可能に結合される、接触部材(40)と
を備え
、
前記接触部材(40)は、液体容器(140)
の蓋(130)と接触するための接触リム(41)を備え、前記アクチュエータ部材(30)は、
前記ピペットノズル(20)が前記蓋(130)と接触することなく、前記接触部材(40)が前記
蓋(130)と接触し、前記アクチュエータ部材(30)および前記接触部材(40)が互いに対して移動する際に、前
記蓋(130)を開放するためのアクチュエータリム(31)を含むことで、前記ピペットノズル(20)および前記アクチュエータ部材(30)が互いに対して移動する際に、前記ピペットノズル(20)用の前記蓋(130)を貫通する非接触通路(120)を生成する、ピペット装置(100)。
【請求項2】
前記接触部材(40)および前記アクチュエータ部材(30)に、互いに対する前記長手軸(21)に沿った移動限度を設ける
第1の停止部(42)をさらに備えた、請求項1記載のピペット装置(100)。
【請求項3】
前記接触部材(40)および前記ピペットノズル(20)に
、互いに対
する前記長手軸(21)に沿った移動限度を設ける第2の停止部(43)、および/または、前記アクチュエータ部材(30)および前記ピペットノズル(20)に
、互いに対
する前記長手軸(21)に沿った移動限度を設ける
第3の停止部をさらに備えた、請求項1または2記載のピペット装置(100)。
【請求項4】
前記接触部材(40)を前記アクチュエータ部材(30)に弾性的に結合させるための接触部材弾性要素(50)と、前記アクチュエータ部材(30)を前記ピペットノズル(20)またはピペットヘッド(10)に弾性的に結合させるためのアクチュエータ部材弾性要素(60)とをさらに備え、前記アクチュエータ部材弾性要素(60)は、前記接触部材弾性要素(50)の弾性力より大きい弾性力を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のピペット装置(100)。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の自動化されたピペット装置(100)と、
長尺体(141)を備えた液体容器(140)であって、前記長尺体(141)が、底部(142)と、上側開口(143)と、前記
蓋(130)と前記底部(142)との間の、液体を受容するための内部空間(144)とを含む
、液体容器(140)と、
前記ピペット装置(100)および/または前記液体容器(140)
を移動させるための駆動ユニット(150)と、
前記ピペットノズル(20)を前記液体容器(140)に対して所望の位置(170)に位置させるように、前記駆動ユニット(150)を制御するためのコントローラ(160)とを備えた、ピペット装置位置決めシステム(200)。
【請求項6】
前記液体容器(140)は、前記上側開口(143)を閉塞するエラストマ製の蓋(130)をさらに備え、前記蓋(130)は、前記接触部材(40)と接触されるべき接触面(131’)を備えた外側蓋リム(131)と、前記外側蓋リム(131)に連結された中央部分(132)とを備え、前記中央部分(132)は、前記アクチュエータ部材(30)および前記接触部材(40)が互いに対して移動する際に、前記中央部分(132)が前記アクチュエータ部材(30)によって一時的に開放され得る切断セクション(133)を含むことで、前記ピペットノズル(20)および前記アクチュエータ部材(30)が互いに対して移動する際に、前記ピペットノズル(20)用の前記蓋(130)を貫通する非接触通路(120)を生成する、請求項5記載のピペット装置位置決めシステム(200)。
【請求項7】
前記切断セクション(133)は、前記中央部分(132)を少なくとも3つの隣接セグメントに分割し、各セグメント(134)は、前記外側蓋リム(131)に連結された外側部分(135)と、前記外側部分(135)と比較して低い高さであって、段差部分(137)を介して前記外側部分(135)と連結された内側部分(136)とを含む、請求項6記載のピペット装置位置決めシステム(200)。
【請求項8】
各セグメント(134)は、前記外側部分(135)上に
、前記アクチュエータ部材(30)と当接する当接要素(138)を含む、請求項7記載のピペット装置位置決めシステム(200)。
【請求項9】
前記外側部分(135)または前記外側部分(135)上の当接要素(138)はそれぞれ、前記アクチュエータ部材(30)および前記接触部材(40)が互いに対して移動する際、前記アクチュエータ部材(30)によって接触されるべきアクチュエータ部材接触面(139)を含むことで、前記隣接セグメント(134)がさらに互いから離れて分離され得る、請求項7または8記載のピペット装置位置決めシステム(200)。
【請求項10】
前記接触部材(40)および前記アクチュエータ部材(30)に、互いに対する前記長手軸(21)に沿った移動限度を設ける第1の停止部(42)をさらに備え、
前記第1の停止部(42)は、前記接触部材(40)および前記アクチュエータ部材(30)が、前記ピペットノズル(20)用の前記蓋(130)を貫通する非接触通路(120)を設けるに足りる最小限で、互いに対して移動し得る位置に位置する、請求項5~9のいずれか1項に記載のピペット装置位置決めシステム(200)。
【請求項11】
前記液体容器(140)の前記底部(142)は、前記長尺体(141)の平均断面に対して減少した断面を有するテーパ状または凹状形状を有する、請求項5~10のいずれか1項に記載のピペット装置位置決めシステム(200)。
【請求項12】
前記接触部材(40)および前記ピペットノズル(20)に、互いに対する前記長手軸(21)に沿った移動限度を設ける第2の停止部(43)、および/または、前記アクチュエータ部材(30)および前記ピペットノズル(20)に、互いに対する前記長手軸(21)に沿った移動限度を設ける第3の停止部をさらに備え、
前記第2の停止部(43)、
および/または、
前記第3の停止部は、前記ピペットノズル(20)が、前記液体容器(140)の前記底部(142)からの所定の公差距離範囲内の最下部の位置(170)に位置決めされ得る位置に位置する、請求項5~11のいずれか1項に記載のピペット装置位置決めシステム(200)。
【請求項13】
コントローラ(160)は、前記接触部材(40)が前記液体容器(140)に接触する際に、前記接触部材(40)に対する前記ピペットノズル(20)の相対位置に基づいて、前記ピペットノズル(20)を前記液体容器(140)の前記底部(142)から任意の所望の距離に位置決めするように、前記駆動ユニット(150)を制御するように構成される、請求項5~12のいずれか1項に記載のピペット装置位置決めシステム(200)。
【請求項14】
前記液体容器(140)は、前記接触部材(40)および前記アクチュエータ部材(30)が互いに対して移動する際に、または、前記アクチュエータ部材(30)および前記ピペットノズル(20)が互いに対して移動する際に、破れるように構成されるシール(145)をさらに含む、請求項5~13のいずれか1項に記載のピペット装置位置決めシステム(200)。
【請求項15】
請求項5~14のいずれか1項に記載のピペット装置位置決めシステム(200)を含む、体外診断システム(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動化されたピペット装置、ピペット装置を含むピペット装置位置決めシステム、およびピペット装置位置決めシステムを含む体外診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
体外診断システムでの自動化における典型的なワークフローは、ピペッティング、すなわち、液体容器から、および/または、液体容器へ、サンプルおよび試薬のような液体を吸引、および/または、分注することを含んでおり、自動化されたピペット装置の使用を伴う。
【0003】
自動化されたピペット装置は、通常、ピペットノズルを含んでいる。ピペットノズルは、例えば、キャリーオーバに対する影響を受けやすい場合など、用途に応じて、再使用可能なニードルまたは使い捨ての先端を含み得る。
【0004】
用途によっては、液体容器は、開放されて、または、閉鎖されて、体外診断システムに装填されてもよい。試薬容器は、大抵、外的要因による蒸発、汚染、および干渉を防止することによって、オンボード安定性(onboard stability)を増加させるために、蓋によって閉塞されている。サンプル容器は、用途によっても、開放されて、または、閉鎖して、装填されてもよい。
【0005】
閉鎖状態の液体容器の場合、中に含まれる液のピペッティングは、より複雑になる。特にニードルの代わりに使い捨ての先端が使用される場合に、中に含まれる液体へのピペットノズルのアクセスを可能とするために、蓋は、少なくとも一時的に除去される必要がある。開放状態および閉鎖状態の液体容器は、自動化される場合には、技術的に複雑で、嵩張り、かつ、高価となり得る。
【0006】
代替手段として、ピペットノズル、具体的には、ピペットニードルが、蓋を通して液体容器に液にアクセスすることができるように、蓋が構成されてもよい。例えば、エラストマ製の蓋は、直接ピペットニードルによってか、ピペットニードルを挿入する前に専用の穴あけ具によってかのいずれか一方によって、穴を開けられてもよい。時には、蓋の事前にカットされたセクションが、ピペットノズルの挿入を容易にするためにも使用されるが、蓋は、ピペットノズルの除去の際に、弾性的に自然と再閉塞される。しかしながら、蓋を貫通するピペッティングは、いくつかの不利な点を有する。不利な点の1つは、ピペットノズルの蓋への接触がクロスコンタミネーションを生じさせ得ることである。
【0007】
また、ピペットノズルを損傷させるおそれが増加する。また、例えば、静電容量測定に基づいて、液体容器の液レベルを検出するための多くの技術が、蓋、および/または、蓋の上に存在し得る液跡の存在によって、阻害される。
【0008】
ピペット装置に関連する別の一般的な問題は、垂直方向における一連の機械的および幾何学的公差である。具体的には、ピペットノズルの手動または自動結合を含むピペット装置の組立品における公差、垂直方向にピペット装置を移動させるための駆動機構における公差、液体容器の寸法に関する製造公差、異なる可能性がある液体容器の保持位置における体外診断システム内での液体容器の位置決めが、さらに大きい累積公差となり、液体容器に対して、具体的には、液体容器の底部に対して、ピペットノズルの垂直位置において、比較的大きな非正確性をもたらすことがある。
【0009】
具体的には、液体容器の中の液が消費されて液レベルが減少すると、デッドボリュームを最小化するために、ピペットノズルを液体容器の底部に可能な限り近接させて位置決め可能とすることが望ましい。
【0010】
しかしながら、ピペットノズルの位置決めにおける非正確性により、不適当なピペッティング、ピペットノズルおよび/または液体容器の損傷などをもたらすピペットノズルの液体容器の底部との衝突を防止するために、容器の底部からの安全距離が維持される。結果として、デッドボリューム、すなわち、使用されずに廃棄される、液体容器の底部に残存する液量は、例えば、液の全容積の10%まで、またはそれ以上、特により小さい液体容器では、例えば、20~30mL未満であり、著しく大きい。
【発明の概要】
【0011】
ここに、自動化されたピペット装置が開示される。ピペット装置は、ピペットヘッドと、ピペットヘッドに搭載されたピペットノズルを含み、ピペットノズルは、長手軸を有する。ピペットノズルは、ピペットノズルの周囲で長手方向に対して同心状に配置され、少なくとも部分的にピペットノズルを覆う中空のアクチュエータ部材をさらに含む。アクチュエータ部材は、アクチュエータ部材およびピペットノズルが長手軸に沿って互いに対して移動可能であるように、ピペットヘッドまたはピペットノズルに移動可能に結合される。ピペット装置は、アクチュエータ部材の周囲で長手軸に対して同心状に配置され、アクチュエータ部材を少なくとも部分的に覆う中空の接触部材をさらに含む。接触部材は、接触部材およびアクチュエータ部材が長手軸に沿って互いに対して移動可能であるように、アクチュエータ部材に移動可能に結合される。接触部材は、液体容器と接触するための接触リムを含む。アクチュエータ部材は、接触部材が液体容器と接触し、アクチュエータ部材および接触部材が互いに対して移動する際に、液体容器の蓋を開放するためのアクチュエータリムを含むことで、ピペットノズルおよびアクチュエータ部材が互いに対して移動する際に、蓋を貫通するピペットノズル用の非接触通路を生成する。
【0012】
ここに、このようなピペット装置を含むピペット装置位置決めシステムもまた開示される。ピペット装置位置決めシステムは、底部と、上側開口と、上側開口と底部との間の、液体を受容するための内部空間とを含む、長尺体を含む液体容器をさらに含む。ピペット装置位置決めシステムは、ピペット装置および/または液体容器を互いに対して移動させるための駆動ユニットをさらに含む。ピペット装置位置決めシステムは、ピペットノズルを液体容器に対して所望の位置に位置させるように、駆動ユニットを制御するためのコントローラをさらに含む。
【0013】
ここに、このようなピペット装置位置決めシステムを含む体外診断システムもまた開示される。
【0014】
液体容器を接触部材と接触させることによって、および、接触部材が液体容器と接触する際に、接触部材に対するピペットノズルの位置を規制することによって、ピペットノズルの位置決めにおけるより高い精度が達成され得るので、液体容器の底部からの安全な距離が小さくなり、デッドボリュームを最小化する。アクチュエータ部材によってピペットノズル用の液体容器の蓋を貫通する非接触通路を設けることによって、蓋が閉塞する場合に、キャリーオーバのおそれが最小化され、液レベル検出技術との干渉が排除される。また、再使用可能なニードルおよび使い捨ての先端の両方が、同様に使用されてもよい。さらに、液体容器を閉塞するための蓋の使用にもかかわらず、ピペットノズルを互いに対して移動するまで少なくとも部分的に覆う中空のアクチュエータ部材の使用は、ピペットノズルが移動する際の事故および損傷のおそれを最小化する。
【0015】
別の利点は、これら全ての効果が、単純で、コンパクトで、安価な構造であって、長手軸に沿ってピペット装置を移動させるためのただ1つの駆動装置しか要求され得ないことにある。
【0016】
「体外診断システム」は、体外診断用のサンプル分析専用の自動化された実験室機器である。体外診断システムは、需要に応じて、および/または、所望の実験室ワークフローに応じて、異なる構成を有してもよい。付加的な構成が、複数の機器、および/または、複数のモジュールとともに結合されることによって、得られてもよい。「モジュール」は、作業セル(work cell)であり、典型的には、体外診断システム全体より小さいサイズであり、専用機能を有する。この機能は、分析用であり得るが、分析前あるいは分析後でもあり得て、または、分析前の機能、分析用の機能、あるいは分析後の機能の任意に対する予備的機能であり得る。具体的には、モジュールは、例えば、1または複数の分析前、および/または、分析用、および/または、分析後のステップを行うことによって、サンプル処理ワークフローの専用タスクを実行するための1または複数の他のモジュールと協働するように構成される。このように、体外診断システムは、1つの分析機器、または、このような複数の分析機器のいずれかと各ワークフローとの組合せを含んでもよく、分析前および/または分析後のモジュールが、個別の分析機器に結合されてもよく、または、複数の分析機器によって共有されてもよい。代替手段では、分析前、および/または、分析後の機能は、分析機器中において一体化されたユニットによって行われてもよい。体外診断システムは、サンプル、および/または、試薬、および/または、システム流体のピペッティング、および/または、ポンピング、および/または、混合するための液体操作ユニットのような機能ユニット、および、装填、取り出し、分類、保管、移送、確認、分離、検出するための機能ユニットをも含み得る。
【0017】
「自動化されたピペット装置」は、ピペッティング、すなわち、液体を吸引および/または分注するための体外診断システムの機能ユニットであり、この目的のために、少なくとも1つのピペットヘッド、および、ピペットヘッドに搭載された少なくとも1つのピペットノズルを含む。ある実施形態によれば、ピペットヘッドは、1つ、2つ、または3つの進行方向に移動し得る。例えば、ピペットヘッドは、水平面内において、例えば、ガイドレールに沿って、回転(rotate)または位置を変える(translate)ことができ、水平面に直交する垂直進行方向において位置を変えてもよい。ピペットヘッドは、ピペットノズルを通して液体を吸引、および/または、分注するために、正および/または負圧をそれぞれ発生させるためのポンプ機構を含んでもよく、または、流体伝導(fluidic conduct)を介して結合されてもよい。ピペットヘッドは、体外診断システムと通信するための電子機器、ピペットヘッド、および/または、ピペットノズルを移動させるための駆動ユニット、1または複数のセンサ、例えば、ピペットノズルの詰まり、または、ピペットノズル中の空気の存在を検出するための圧力センサ、ピペットノズルまたは液体容器中の液温を測定するための温度センサ、液体容器中の液レベルを検出するための液レベルセンサのような、他の要素を含んでもよい。
【0018】
「ピペットノズル」という用語は、ここでは、ピペットヘッドに搭載され、液体容器中の液と接触するために適合され、所定の容積範囲において液体のアリコートを吸引し、または、含むように形作られるピペット装置の流体用導管の中空の端子部分を意味するために使用される。具体的には、ピペットノズルは、再使用可能で洗浄可能なニードル、例えば、中空の鋼性ニードル、または、ピペットの先端、例えば、定期的に、例えば、異なる液体をピペッティングする前に交換するために適合される使い捨てのピペットの先端であり得る。ピペットノズルは、ピペットノズルがピペットヘッドに搭載される際の垂直方向(重力方向)に略平行な長手軸を有する。
【0019】
「搭載される」という用語は、ここでは、固定的に、または、移動可能に取り付けられ、または、結合され、液体容器に対するピペット装置の相対位置に関係なく、互いに対して可能であれば固定された相対配置であることを意味するために使用される。
【0020】
「移動可能に結合される」という用語は、ここでは、固定的に、または、移動可能に取り付けられ、または、結合され、液体容器に対するピペット装置の相対位置に依存して、互いに対して可変な相対配置であることを意味するために使用される。
【0021】
「アクチュエータ部材」は、硬質な長尺構造および中空の内部空間を有する器具であり、ピペットノズルが通り抜け得るために、ピペットノズルよりも若干大きなチャンネルとして形作られる。具体的には、アクチュエータ部材は、ピペットノズルの周囲で長手軸に対して同心状に配置され、ピペットノズルを少なくとも部分的に覆う、すなわち、ピペットノズルの長手セグメントを少なくとも覆う。具体的には、アクチュエータ部材は、または、ピペット装置が体外診断システム内で方々に移動する場合に、生じ得る損傷、または、他の部分との接触を防止するように、少なくともピペットノズルの先端の蓋または保護具の機能を有してもよい。アクチュエータ部材およびピペットノズルが長手軸に沿って互いに移動可能であるように、アクチュエータ部材は、ピペットヘッドまたはピペットノズルと移動可能に結合される。これにより、少なくともピペットノズルの先端は、液体容器中の液体に出入りする、または、アクチュエータ部材が取り残されている間に液体容器中に液体を分注するために、アクチュエータ部材から張り出される。しかしながら、アクチュエータ部材の別の重要な機能は、液体容器が蓋によって閉塞されている場合に、ピペットノズルおよびアクチュエータ部材が互いに対して移動する際に、ピペットノズル用の蓋を貫通する非接触通路を設けるような、蓋の開放具(cap opener)の機能であってもよい。これにより、キャリーオーバのおそれ、および/または、ピペットノズルを損傷するおそれが、最小化され、結果として、蓋のセンサとの干渉が、排除される。
【0022】
「接触部材」は、硬質の長尺構造および中空の内部空間を有する別の器具であり、アクチュエータ部材が通り抜け得るために、アクチュエータ部材より若干大きいチャンネルとして形作られる。具体的には、接触部材は、アクチュエータ部材の周囲で長手軸に対して同心状に配置され、アクチュエータ部材を少なくとも部分的に覆う、すなわち、アクチュエータ部材の長手セグメントを少なくとも覆う。接触部材およびアクチュエータ部材が長手軸に沿って互いに対して移動可能であるように、接触部材は、アクチュエータ部材に移動可能に結合される。これにより、接触部材が取り残されている間に、少なくともアクチュエータ部材の先端は、液体容器の蓋を開放するために、接触部材から張り出される。具体的には、接触部材の機能は、液体容器と接触することであり、例えば、アクチュエータ部材およびピペットノズルが液体容器に対して移動され得る間に、液体容器を下方で強固に保持することによって、液体容器に対する相対的な定位置に留まることである。
【0023】
より具体的には、接触部材は、接触部材の最下部の先端において、長手軸に対して同心状に配置され、ピペットノズルの長手軸の方向において、ピペットノズルの長手軸の中心に整列して、ピペット装置、および/または、液体容器を互いに対して移動させる際に、液体容器の上側表面、具体的には、液体容器の上側開口の上側かつ外側リム、または、液体容器を閉塞する蓋の上側かつ外側リムと少なくとも部分的に接触し、可能であれば合致するように形作られた接触リムを含む。一実施形態によれば、接触リムの形状は、液体容器または液体容器の蓋の円形の上側形状と合致するようしてなる。また、アクチュエータ部材は、アクチュエータ部材の最下部の先端において、長手軸に対して同心状に配置され、接触部材が液体容器と接触し、アクチュエータ部材および接触部材が互いに対して移動する際に、液体容器の蓋の上側かつ中央の表面と少なくとも部分的に接触し、圧力を印加するように形作られたアクチュエータリムを含むことで、ピペットノズルおよびアクチュエータ部材が互いに対して移動する際に、液体容器の内側であって長手軸に対して半径方向の外側に向けて蓋の中央部分を押圧することで、ピペットノズル用の蓋を貫通する非接触通路を設ける。一実施形態によれば、アクチュエータリムの形状は、蓋の中央部分の円形の上側形状と合致するようにしている。
【0024】
「互いに対して移動可能」という用語は、要素または部材の任意の対に関して、対の複数の部材または複数の要素のいずれかが、他方に向けて、または他方から離れるように移動し、または、複数の要素または複数の部材の両方が、互いの方に、または、互いから離れるように移動する可能性を包含する。具体的には、移動可能な複数の部材または複数の要素は、ピペット装置、ピペットヘッド、ピペットノズル、アクチュエータ部材、接触部材、液体容器を含んでもよい。
【0025】
一実施形態によれば、ピペット装置は、接触部材およびアクチュエータ部材に、互いに対する長手軸に沿った移動限度を設ける、接触部材/アクチュエータ部材停止部を含む。
【0026】
一実施形態によれば、ピペット装置は、接触部材およびピペットノズルに互いに対し、および/または、アクチュエータ部材およびピペットノズルに互いに対し、長手軸に沿った移動限度を設ける、接触部材/ピペットノズル停止部、または、ピペットノズル/アクチュエータ部材停止部を含む。
【0027】
停止部は、例えば、接触部材、アクチュエータ部材、ピペットノズルのうちの任意の1または複数の所定の位置に位置する幾何学的な停止部であり得る。
【0028】
一実施形態によれば、ピペット装置は、接触部材をアクチュエータ部材に弾性的に結合させるための接触部材弾性要素と、アクチュエータ部材をピペットノズルまたはピペットヘッドに弾性的に結合させるためのアクチュエータ部材弾性要素とを含み、アクチュエータ部材弾性要素は、接触部材弾性要素の弾性力より大きい弾性力を有する。
【0029】
接触部材弾性要素およびアクチュエータ部材弾性要素は、例えば、異なる圧縮ばねであってもよい。
【0030】
このように、接触部材およびアクチュエータ部材の互いに対する移動、および、アクチュエータ部材およびピペットノズルの互いに対する移動は、液体容器に対するピペット装置の一回の相対移動によって、例えば、接触部材が液体容器の上側と接触するまで、ピペットノズルの長手方向に沿って、長手軸と中心で整列される直立する液体容器に向けて、ピペット装置を移動させることによって、その後に、アクチュエータ部材が接触部材/アクチュエータ部材停止部に達するまで、接触部材弾性要素の弾性力に抗して、ピペット装置をさらに移動させることによって、その後に、ピペットノズルが接触部材/ピペットノズル停止部、または、ピペットノズル/アクチュエータ部材停止部に達するまで、アクチュエータ部材弾性要素の弾性力に抗して、ピペット装置をさらに移動させることによって、得られてもよい。
【0031】
同様に、ピペット装置を反対方向に移動させることによって、ピペットノズルは、ピペット装置とともに接触部材を液体容器からさらに移動させる前の接触部材に対して、アクチュエータ部材が元の相対位置に戻る前のアクチュエータ部材に対する元の相対位置に戻り得る。
【0032】
液体容器をピペット装置の方に、または、ピペット装置および液体容器を同時に互いの方に移動させることによっても、同様のことは、達成され得る。
【0033】
接触部材およびアクチュエータ部材を互いに対して移動させ、ならびに、アクチュエータ部材およびピペットノズルを互いに対して移動させる代替方法は、例えば、一連のネジ式のスピンドル状機構(screwing spindle-like mechanism)によって、または、接触部材およびアクチュエータ部材、または、アクチュエータ部材およびピペットノズルを個別に動力化することによって、実行され得る。
【0034】
「ピペット装置位置決めシステム」は、液体容器に対するピペット装置、ゆえに、液体容器または液体容器中に含まれる液に対するピペットノズルを位置決めするための体外診断システムの機能ユニットである。
【0035】
具体的には、ピペット装置位置決めシステムは、ピペット装置、液体容器、ピペット装置および/または液体容器を互いに対して移動させるための駆動ユニット、ピペットノズルを液体容器に対して所望の位置に位置決めするように駆動ユニットを制御する「コントローラ」を含む。
【0036】
「駆動ユニット」は、少なくとも1つの進行方向、可能であれば、2つまたは3つの進行方向に、ピペット装置および/または液体容器を互いに対して移動する、例えば、位置を変える(translate)、および/または、回転させる(rotate)ように構成される動力化された駆動機構である。例えば、駆動ユニットは、液体容器の区画の上の空間を含み、1または複数の液体容器の位置を含む3次元空間において所定の移動範囲を有し、ピペットヘッドが搭載されるロボット装置、例えば、ロボットアームとして構成されてもよい。
【0037】
駆動ユニットは、このような3次元空間内における、その移動精度を高めるように、体外診断システムの固定の基準点に対して、較正されてもよい。具体的には、較正された駆動ユニットは、このような3次元空間内における任意の具体的な座標に、具体的には、特定の液体容器に対して整列して移動するように、教示され得る。
【0038】
具体的には、駆動ユニットは、ピペットヘッドまたはピペットノズルをさらに移動させることを停止させるために、停止位置、具体的には、接触部材/ピペットノズル停止部またはピペットノズル/アクチュエータ部材停止部に達した時を検出するための力センサを含んでもよい。具体的には、アクチュエータ部材およびピペットノズルの互いに対する移動を可能にするために、駆動ユニットは、アクチュエータ部材弾性要素の力に勝り得て、ピペットノズル/アクチュエータ部材停止部に達した結果として、アクチュエータ部材弾性部材の弾性力よりも大きな力が検出されると直ぐに、任意の移動を停止させ得る。力センサの代替手段として、ピペットヘッドは、アクチュエータ部材およびピペットノズルの互いに対する移動を可能とするために、アクチュエータ部材弾性部材の弾性力よりも大きい弾性力を有するピペットヘッド弾性要素を含んでもよく、ピペットノズル/アクチュエータ停止部に達すると直ぐにピペットノズルのさらなる移動をならすこと(amortization)によって弾性的に停止させ得る。これにより、ピペットノズルは、液体容器に対して所望の位置に再現可能に位置決され得る。
【0039】
「コントローラ」という用語は、任意の物理的または仮想的な処理装置、具体的には、操作計画に従って、特に、ピペット装置を位置決めするように、具体的には、ピペットノズルを液体容器に対して所定の位置に位置決めするように、駆動ユニットを制御することに関連する操作を行うための命令によって与えられたコンピュータで読み取り可能なプログラムを実行するプログラム可能な論理コンピュータを包含する。また、コントローラは、ワークフローおよびワークフローのステップが体外診断システムによって行われるように、体外診断システムを制御するように構成され得てもよい。具体的には、ピペット装置を使用してピペッティング操作を計画するための分析オーダの実行に関連する着信する分析オーダ(incoming analysis order)および/または受領した分析オーダ(received analysis order)、および、予定された複数の処理操作を計算に入れるために、コントローラは、スケジューラおよび/またはデータマネージャと通信および/または協働してもよい。
【0040】
液体容器に対する「所望の位置」は、液体がピペッティングされ得る液体容器の底部からのピペットノズルまたはピペットノズルの先端の任意の距離を指す。具体的には、液体容器中の液体が吸引されて液体容器中の液体の残量が少なくなればなるほど、所望の位置は、底部から近くに変更してもよい。
【0041】
一実施形態によれば、コントローラは、接触部材が液体容器に接触する際に、接触部材に対するピペットノズルの相対位置に基づいて、ピペットノズルを液体容器の底部から任意の所望の距離に位置決めするように、駆動ユニットを制御するように構成される。
【0042】
「液体容器」は、閉塞した底部と、少なくとも1つの上側開口と、上側開口と液体を受容するための底部との間に内部空間とを有する本体を含む任意の容器であってもよい。上側開口は、蓋によって、開放され、または、閉塞されてもよい。容器は、ガラスまたは高分子材料のような任意の材料からなってもよく、例えば、マルチウェルプレートのウェルをも含む任意の形状およびサイズを有してもよい。液体容器の実施例は、サンプル容器、例えば、サンプル管、生体サンプルを収集して移送するように構成される1次サンプル管、または、1次管からのアリコートを受容するように構成された2次管である。液体容器の他の実施例は、試薬を体外診断分析器に供給するように構成される試薬容器であり、例えば、試薬バイアルまたは瓶、例えば、個々の容器、または場合によっては、試薬パック、例えば、複数の試薬容器を含む試薬カセットに分類分けされたもののいずれか一方である。液体容器の他の実施例は、サンプルと1または複数の試薬との間で起こるべき反応のために、および最終的には行われるべき検出のために、サンプルおよび試薬のアリコートを受容するように構成される反応容器である。特に、液体は、例えば、品質制御、較正器など向けのようなサンプルまたは試薬以外の液体であってもよい。
【0043】
一実施形態によれば、液体容器の底部は、長尺体の平均断面に対して減少した断面を有するテーパ状または凹状形状を有する。この底部の形状によって、底部からの安全な距離より下に残存する液量を減少させることにより、デッドボリュームをさらに減少させ得る。
【0044】
一実施形態によれば、液体容器は、上側開口を閉塞するエラストマ製の蓋をさらに含み、蓋は、接触部材と接触されるべき接触面を備えた外側蓋リムと、外側蓋リムに連結された中央部分とを含み、中央部分は、アクチュエータ部材および接触部材が互いに対して移動する際に、中央部分がアクチュエータ部材によって一時的に開放され得る切断セクションを含むことで、ピペットノズルおよびアクチュエータ部材が互いに対して移動する際に、ピペットノズル用の蓋を貫通する非接触通路を生成する。
【0045】
一実施形態によれば、切断セクションは、中央部分を少なくとも3つの隣接セグメントに分割し、各セグメントは、外側蓋リムに連結された外側部分と、外側部分と比較して低い高さであって、段差部分を介して外側部分と連結された内側部分とを含む。一実施形態によれば、各セグメントは、外側部分上に当接要素を含む。
【0046】
一実施形態によれば、外側部分または外側部分上の当接要素はそれぞれ、アクチュエータ部材および接触部材が互いに対して移動する際、アクチュエータ部材によって接触されるべきアクチュエータ部材接触面を含むことで、隣接セグメントがさらに互いから離れて分離され得る。さらに、アクチュエータ部材の当接要素のみへの接触を制限し、アクチュエータ部材の切断セクションとの直接接触を防止することによって、アクチュエータ部材を汚染するおそれが減少される。
【0047】
一実施形態によれば、接触部材/アクチュエータ部材停止部は、接触部材およびアクチュエータ部材が、ピペットノズル用の蓋を貫通する非接触通路を設けるに足りる最小限で、互いに対して移動し得る位置に位置する。
【0048】
一実施形態によれば、接触部材/ピペットノズル停止部、または、ピペットノズル/アクチュエータ部材停止部は、ピペットノズルが、液体容器の底部からの所定の公差距離範囲内の最下部の位置に位置決めされ得る位置に位置する。具体的には、コントローラは、最下部の位置に達した際に、例えば、力センサと通信することによって、駆動ユニットを停止させるように構成されてもよい。
【0049】
一実施形態によれば、
液体容器は、接触部材およびアクチュエータ部材が互いに対して移動する際に、または、アクチュエータ部材およびピペットノズルが互いに対して移動する際に、破れるように構成されるシールをさらに含む。シールは、最初に開放されるまで内部に含まれる液体を気密封止するために、蓋より下の液体容器の内部空間内に位置してもよい。シールは、例えば、アルミニウム層および不活性層を含む箔として具現化されてもよい。
【0050】
他のさらなる対象、特徴および利点は、本原理をさらに詳細に説明するために供される以下の例示的な実施形態およびこれに伴う図面の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図2】
図1の自動化されたピペット装置を使用する方法である。
【
図3】ピペット装置位置決めシステムを示している。
【
図4】液体容器に対するピペットノズルの位置決めを示している。
【
図5】液体容器を閉塞するための蓋の実施形態を示している。
【
図6】
図1のピペット装置により開放される際の
図5と同じ蓋を下から示している。
【
図7】液体容器を開放するための
図1のピペット装置の使用と関連する実施形態を示している。
【
図9】
図3のピペット装置位置決めシステムを使用する別の方法を示している。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図1および
図2は、自動化されたピペット装置100およびこれを使用する方法を示している。自動化されたピペット装置100は、ピペットヘッド10と、ピペットヘッド10に搭載されたピペットノズル20を含んでいる。ピペットノズル20は、ピペット装置100が体外診断システムに搭載される際に、垂直方向(重力方向)に平行な長手軸21を有している。ピペット装置100は、ピペットノズル20の周囲で長手軸21に対して同心状に配置され、ピペットノズル20を部分的に覆う、中空のアクチュエータ部材30をさらに含んでいる。アクチュエータ部材30は、アクチュエータ部材30およびピペットノズル20が長手軸21に沿って互いに対して移動可能であるように、ピペットノズル20に移動可能に結合されている。
【0053】
ピペット装置100は、アクチュエータ部材30の周囲で長手軸21に対して同心状に配置され、アクチュエータ部材30を部分的に覆う、中空の接触部材40をさらに含んでいる。接触部材40は、接触部材40およびアクチュエータ部材30が長手軸21に沿って互いに対して移動可能であるように、アクチュエータ部材30に移動可能に結合されている。
【0054】
接触部材40は、液体容器140と接触するための接触リム41を含んでいる。アクチュエータ部材30は、コンタクト部材40が液体容器140と接触し、アクチュエータ部材30および接触部材40が互いに対して移動する際に、液体容器140の蓋130を開放するためのアクチュエータリム31を含むことで、ピペットノズル20およびアクチュエータ部材30が互いに対して移動する際に、ピペットノズル20用の蓋130を貫通する非接触通路120を生成する。
【0055】
ピペット装置100はさらに、接触部材40およびアクチュエータ部材30の互いに対する長手軸21に沿った移動限度を設けるための、接触部材/アクチュエータ部材停止部42を備えている。
【0056】
接触部材/アクチュエータ部材停止部42は、接触部材40およびアクチュエータ部材30が、ピペットノズル20用の蓋130を貫通する非接触通路120を設けるのに充分な最小限で、互いに対して移動することができる位置に位置付けられている。
【0057】
ピペット装置100は、接触部材40およびピペットノズル20の互いに対して、および、アクチュエータ部材30およびピペットノズル20の互いに対して、長手軸21に沿った移動限度を設けるための、接触部材/ピペットノズル停止部43をさらに備えている。
【0058】
ピペット装置100は、接触部材40をアクチュエータ部材30に弾性的に結合させるための、この場合、圧縮ばねである、接触部材弾性要素50と、アクチュエータ部材30をピペットノズル20に弾性的に結合させるための、別の圧縮ばねである、アクチュエータ部材弾性要素60とをさらに含んでいる。アクチュエータ部材弾性要素60は、接触部材弾性要素50の弾性力よりも大きい弾性力を有している。
【0059】
図2において見られ得るように、接触部材40およびアクチュエータ部材30の互いに対する移動、および、アクチュエータ部材30およびピペットノズル20の互いに対する移動は、液体容器140に対するピペット装置100の一回の相対移動によって、例えば、ピペットノズル20の長手方向に沿って、長手軸21と同心状に整列された直立する液体容器140に向けて、接触部材40が液体容器140の上側とその接触リム41で接触するまで(
図2-Aの位置1)ピペット装置100を移動させることによって、その後に、接触部材弾性要素50の弾性力に抗して、アクチュエータ部材30が接触部材/アクチュエータ部材停止部42に達するまで(
図2-Bの位置2)ピペット装置100をさらに移動させることによって、その後に、アクチュエータ部材弾性要素60の弾性力に抗して、ピペットノズル20が接触部材/ピペットノズル停止部43に達するまで(
図2-Cの位置3)ピペット装置100をさらに移動させることによって、得られ得る。
【0060】
同様に、ピペット装置100を反対方向に移動させることによって、ピペットノズル20は、ピペット装置100とともに接触部材40を液体容器140から遠ざけるように移動させる前の接触部材40に対して、アクチュエータ部材30が
図2-Aの元の相対位置1に戻る前のアクチュエータ部材30に対する
図2-Bの元の相対位置2に
図2-Cの位置3から戻り得る。
【0061】
図3は、
図1のピペット装置100を含むピペット装置位置決めシステム200を模式的に示している。ピペット装置位置決めシステム200は、液体容器140、液体容器140に対してピペット装置100を移動させるための駆動ユニット150、および、ピペットノズル20を液体容器140に対して所望の位置170に位置決めするように駆動ユニット150を制御するためのコントローラ160をさらに含んでいる。
【0062】
液体容器140は、
図4においてより示される実施例のように、底部142と、上側開口143と、底部142と上側開口143との間において液体(図示せず)を受容するための内部空間144とを含む、長尺体141を含んでいる。液体容器140の底部142は、長尺体141の平均断面に対して、減少した断面を有するテーパ形状を有している。具体的には、
図4は、ピペット装置位置決めシステム200によって、ピペットノズル20が、液体容器140の底部142からの所定の公差距離範囲内において、最下部の位置170に位置決めされ得る方法を示している。この方法では、特に、底部142のテーパ形状と組合せて、非常に小さいデッドボリュームが得られ得る。しかしながら、コントローラ160は、接触部材40が液体容器140に接触する際に、接触部材40に対するピペットノズル20の相対位置に基づいて、ピペットノズル20を液体容器140の底部142から任意の望ましい距離に位置決めするように、駆動ユニット150を制御して構成されていてもよい。この実施例では、上側開口143は、蓋130によって、閉塞されている。
【0063】
蓋130の構造は、本実施形態による
図5および
図6に関連して、さらに詳細に説明される。蓋130は、エラストマ製の材料からなり、ストッパのように機能する。蓋130は、接触部材40によって、具体的には、接触部材リム131によって、接触されるべき接触面131’を含む外側蓋リム131を含んでいる。蓋130は、蓋リム131に連結された中央部分132をさらに含んでおり、中央部分132は、アクチュエータ部材30によって、具体的には、アクチュエータ部材リム31(
図6)によって、アクチュエータ部材30および接触部材40が互いに対して移動する際に、中央部分132が一時的に開放され得る切断セクション133を含むことで、ピペットノズル20およびアクチュエータ部材30が互いに対して移動する際に、ピペットノズル20用の蓋130を貫通する非接触通路120を設ける。具体的には、切断セクション133は、中央部分132を4つの隣接セグメント134に分割し、各セグメント134は、蓋リム131に連結された外側部分135と、外側部分135と比較して高さが低く、段差部分137を介して外側部分135と連結された内側部分136とを含んでいる。また、各セグメント134は、外側部分135上に当接要素138を含んでおり、当接要素138はそれぞれ、アクチュエータ部材30および接触部材40が互いに対して移動する際、アクチュエータ部材リム31によって接触されるべきアクチュエータ部材接触面139を含んでいることで、隣接セグメント134がさらに互いに分離され得る(
図6)。隣接セグメント134は、アクチュエータ部材30が接触部材40に対して元の相対位置に戻る際に、
図5の元の位置に弾性的に戻るように構成されていることで、外部環境からの蒸発、汚染、および干渉を最小化している。
【0064】
図7および
図8は、液体容器140を開放するための
図1のピペット装置100の使用に関連する実施形態を示している。具体的には、液体容器140は、アクチュエータ部材30およびピペットノズル20が互いに対して移動する際(
図7)、または、接触部材40およびアクチュエータ部材30が互いに対して移動する際(
図8)に、破れるように構成されているシール145をさらに含んでいる。シール145は、最初に開放されるまで内部に含まれる液を気密封止するために、蓋130よりも下の液体容器140の内部空間144内に位置してもよい。具体的には、ピペットノズル20およびアクチュエータ部材30が互いに対して移動する際(
図7)に、ピペットノズル20が、シール145を破るために使用されてもよいし、アクチュエータ部材30および接触部材40が互いに対して移動する際(
図8)に、蓋130のセグメント136がシール145を破き得る位置に、シール145が配置されてもよい。
【0065】
図9は、
図3のピペット装置位置決めシステム200を使用する別の方法を示している。具体的には、ピペットノズル20が液体容器140から引き抜かれる前に、蓋130が再び密閉される場合、これは、アクチュエータ部材30に対してピペットノズル20を移動させる前に、
図2の移動と反対方向に接触部材40に対してアクチュエータ部材30を移動させることによって達成され得るが、ピペットノズル20は、蓋130と接触し得る。これにより、液体容器140に入る際に、ピペットノズル20が蓋130と接触することが防止されると同時に、液体容器140から引き抜かれる際に、蓋130と接触することができる。この方法の効果は、蓋130の外側が汚染されないと同時に、液体容器140から液を吸引した後に生じ得るピペットノズル20の外側への液跡の付着が、ピペットノズル20と内側から接触するセグメント136によって拭き取られ得ることであり、液体容器140を操作する際の相互汚染のおそれ、および、感染のおそれを最小化するために重要である。
【0066】
図10は、
図3のピペット装置位置決めシステム200を含む体外診断システム300を模式的に示している。
【0067】
前述の説明において、本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が明らかにされた。しかしながら、具体的な詳細は、本教示を実施するために採用される必要がないことは、当業者には明らかであろう。他の実施例では、周知材料または方法が、本開示を不明瞭にしないために、詳細に記載された。
【0068】
具体的には、開示された実施形態の修正および変更は、上記記載に照合して、勿論可能である。したがって、添付された請求の範囲の範囲内において、本発明は、上記実施例において具体的に発明されたものとは別の方法で実施され得ることが、理解されるべきである。
【0069】
「一実施形態」、「ある実施形態」、「一実施例」、または、「ある実施例」に対する前述の説明全体にわたる参照は、その実施形態または実施例に関連して記載された具体的な特徴、構造または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味するものではない。そのため、「一実施形態」、「ある実施形態」、「一実施例」、または、「ある実施例」という語句は、必ずしも同じ実施形態または実施例に全て言及するものではない。
【0070】
具体的には、様々な利点の中で具体化されるように、本開示のピペット装置位置決めシステムは、液体容器の蓋を貫通するピペットノズル用の非接触通路を設けるのに適しているが、液体容器を閉塞する蓋がなくても、すなわち、開放した液体容器であっても、同様に操作し得る。
【0071】
さらに、具体的な特徴、構造、または特性は、1または複数の実施形態または実施例において、任意の適切な組合せ(combination)および/または部分的組合せ(sub-combination)で、組合せられてもよい。