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特許7042741SynP161、桿体光受容器における遺伝子の特異的発現のためのプロモーター
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  • 特許-SynP161、桿体光受容器における遺伝子の特異的発現のためのプロモーター 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】SynP161、桿体光受容器における遺伝子の特異的発現のためのプロモーター
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/85 20060101AFI20220318BHJP
   C12N 5/16 20060101ALI20220318BHJP
   C12N 5/18 20060101ALI20220318BHJP
   C12N 5/22 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
C12N15/85 Z ZNA
C12N5/16
C12N5/18
C12N5/22
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018528618
(86)(22)【出願日】2016-12-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 IB2016057267
(87)【国際公開番号】W WO2017093935
(87)【国際公開日】2017-06-08
【審査請求日】2019-11-27
(31)【優先権主張番号】15197901.0
(32)【優先日】2015-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518089687
【氏名又は名称】フリードリッヒ ミーシェー インスティトゥート フォー バイオメディカル リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ハートル,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】シューベラ,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ロスカ,ボトンド
(72)【発明者】
【氏名】クレブス,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】ユエットナー,ジョゼフィーヌ
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0099791(US,A1)
【文献】特開2015-128440(JP,A)
【文献】特表2011-516091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の核酸配列を含むかもしくはそれからなる、または配列番号1の前記配列と少なくとも90%同一性を有する少なくとも150塩基対の核酸配列を含む、単離された核酸分子であって、前記遺伝子をコードする核酸配列が、前記単離された核酸分子へ動作可能に連結されている場合、前記単離された核酸分子が遺伝子の桿体光受容細胞における発現を作動させるのに有効である、核酸分子。
【請求項2】
前記遺伝子の産物が光感受性分子である、請求項に記載の単離された核酸分子。
【請求項3】
光感受性分子がハロロドプシンまたはチャネルロドプシンである、請求項に記載の単離された核酸分子。
【請求項4】
配列番号2の核酸配列を含む最小プロモーターをさらに含む、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項5】
桿体光受容細胞がヒト桿体光受容細胞である、請求項に記載の単離された核酸分子。
【請求項6】
桿体光受容細胞がげっ歯類桿体光受容細胞である、請求項に記載の単離された核酸分子。
【請求項7】
請求項1に記載の単離された核酸分子を含む発現カセットであって、前記単離された核酸分子が、少なくとも、遺伝子をコードする核酸配列へ動作可能に連結されている、発現カセット。
【請求項8】
請求項に記載の発現カセットを含むベクター。
【請求項9】
ウイルスベクターである、請求項に記載のベクター。
【請求項10】
アデノ随伴ウイルス(AAV)である、請求項に記載のベクター。
【請求項11】
桿体光受容細胞における遺伝子の発現のための、請求項1~のいずれか一項に記載の単離された核酸分子の使用、または請求項に記載の発現カセットの使用、または請求項10のいずれか一項に記載のベクターの使用。
【請求項12】
単離された細胞、細胞株、または細胞集団に、請求項に記載の発現カセットをトランスフェクトすることを含む、桿体光受容細胞において遺伝子を発現させる方法。
【請求項13】
前記単離された細胞が、桿体光受容細胞であるか、または前記細胞株または細胞集団が、桿体光受容細胞を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記単離された細胞が、げっ歯類細胞であるか、または前記細胞株または細胞集団が、げっ歯類細胞を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記単離された細胞が、ヒト細胞であるか、または前記細胞株または細胞集団が、ヒト細胞を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
請求項に記載の発現カセットまたは請求項10のいずれか一項に記載のベクターを含む、単離された細胞。
【請求項17】
前記発現カセットまたはベクターが前記単離された細胞のゲノムへ安定的に組み込まれている、請求項16に記載の単離された細胞。
【請求項18】
請求項1~のいずれか一項に記載の単離された核酸分子を含む、桿体光受容細胞において遺伝子を発現させるためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特異的に桿体光受容細胞において遺伝子の発現をもたらす核酸配列に関する。
【背景技術】
【0002】
発現のために、組換え遺伝子は、通常、異種性遺伝子の転写を可能にする活性発現カセットという状況におけるcDNA構築物として、標的細胞、細胞集団、または組織へトランスフェクトされる。DNA構築物は、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、およびプロモーターを含むシス制御エレメント(本明細書において、全体的に「プロモーター」と呼ばれる)での多くのトランス作用転写因子(TF)の活性を含む過程において細胞転写機構により認識される。
【0003】
遺伝子プロモーターは、これらのレベルの制御の全部に関わり、DNA配列、転写因子結合、およびエピジェネティックな特色の影響を統合することにより遺伝子転写における決定因子として働く。それらは、例えば、プラスミドベクターによりコードされる導入遺伝子発現の強さ、加えて、前記導入遺伝子が発現するのはどの細胞型かを決定する。
【0004】
哺乳類細胞において異種性遺伝子発現を作動させるのに用いられる最も一般的なプロモーターは、ヒトおよびマウスのサイトメガロウイルス(CMV)主要前初期プロモーターである。それらは、強い発現を与え、いくつかの細胞型においてロバストであることが判明している。SV40前初期プロモーターおよびラウス肉腫ウイルス(RSV)ロングターミナルリピート(LTR)プロモーターなどの他のウイルスプロモーターもまた発現カセットにおいて頻繁に用いられる。
【0005】
ウイルスプロモーターの代わりに、細胞プロモーターもまた用いることができる。既知のプロモーターの中には、β-アクチン、伸長因子1-α(EF-1α)、またはユビキチンなどの大量に転写される細胞転写産物をコードするハウスキーピング遺伝子由来のプロモーターがある。ウイルスプロモーターと比較して、真核生物遺伝子発現は、より複雑であり、多くの異なる因子の正確な協調を必要とする。
【0006】
導入遺伝子発現のための内因性制御エレメントの使用に関する態様の1つは、安定なmRNAの生成であり、しかも、発現が、それに応じてトランス作用転写因子が供給される宿主細胞の天然環境において起こり得ることである。真核生物遺伝子の発現は、シスおよびトランス作用性制御エレメントの複雑な機構により調節されるため、たいていの細胞プロモーターは、詳細な機能の特徴づけが欠けている。真核生物プロモーターの部分は、通常、それの転写される配列のすぐ上流に位置し、転写開始の点としての役割を果たす。コアプロモーターは、転写機構により認識されるのに十分である転写開始部位(TSS)を直接囲む。近位プロモーターは、コアプロモーターの上流の領域を含み、TSS、および転写制御に必要とされる他の配列特色を含有する。転写因子は、プロモーターおよびエンハンサー配列における制御モチーフと結合し、それにより、ヌクレオソーム構造、および最後に転写の開始を可能にするそれの位置を変化させるクロマチンおよびヒストン修飾酵素を活性化することにより配列特異的に作用する。機能性プロモーターの同定は、主に、関連した上流または下流のエンハンサーエレメントの存在に依存する。
【0007】
導入遺伝子発現のための内因性制御エレメントの使用に関する別の重大な態様は、いくつかのプロモーターが細胞特異的様式で作用することができ、特定の型の細胞における、またはプロモーターに依存して、特別のサブセットの細胞における導入遺伝子の発現をもたらすことである。
【0008】
したがって、本発明の1つの目標は、哺乳類細胞において、高い発現レベルを以て、かつ細胞型特異的様式で、組換え遺伝子を発現させるのに適した新しい配列を得ることである。
【0009】
そのような配列は、神経変性障害、視力回復、創薬、腫瘍治療、および障害の診断の研究のための系を開発するための網膜細胞特異的プロモーターについての当技術分野における必要性に対処する。
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、エピジェネティックス、バイオインフォマティクス、および神経科学を組み合わせて、眼にある場合、桿体光受容器でのみ遺伝子発現を作動させるプロモーターを見出している。
【0011】
本発明の配列の核酸配列は以下である:
ATTCCGGTCACACGGCCAAGATTATTCCACCTGCGCTTTGAGCAATAGGGAGAGGGCTCTGGTGCCTCTTCCTGGAATTTGATTAATTCGCTTGAGTCAGTCACAGAATTTGAGGAAGCATTGATATTTGAAGATGTGTTCTTCTAAAGGATACAAATGAATATATGCATAGTGAGAGTTTAGGAGATAGG(配列番号1)
【0012】
したがって、本発明は、配列番号1の核酸配列、または配列番号1の前記核酸配列と少なくとも70%同一性を有する少なくとも150bpの核酸配列を含み、またはそれからなる単離された核酸分子を提供し、前記単離された核酸分子は、前記遺伝子をコードする前記核酸配列へ動作可能に連結された遺伝子の桿体光受容器における発現を特異的にもたらす。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも80%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも85%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも90%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも95%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも96%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも97%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも98%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも99%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも100%同一性を有する。
【0013】
本発明の単離された核酸分子は、最小プロモーター、例として、SV40最小プロモーター、例えば、SV40最小プロモーターまたは実施例に用いられたものを追加として含むことができる。
【0014】
上記のような本発明の単離された核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む単離された核酸分子もまた提供される。本発明はまた、上記のような本発明の単離された核酸分子を含む発現カセットであって、前記プロモーターが、少なくとも、桿体光受容器において特異的に発現させる遺伝子をコードする核酸配列へ動作可能に連結されている、発現カセットを提供する。
【0015】
本発明はさらに、本発明の発現カセットを含むベクターを提供する。いくつかの実施形態において、前記ベクターはウイルスベクターである。
【0016】
本発明はまた、桿体光受容器における遺伝子の発現のための、本発明の核酸の使用、本発明の発現カセットの使用、または本発明のベクターの使用を包含する。
【0017】
本発明はさらに、単離された細胞、細胞株、または細胞集団(例えば、組織)に本発明の発現カセットをトランスフェクトするステップを含む、桿体光受容器において遺伝子を発現させる方法であって、前記細胞が桿体光受容器を含む場合、発現させる遺伝子が、単離された細胞、細胞株、または細胞集団により発現される、方法を提供する。いくつかの実施形態において、単離された細胞、細胞株、または細胞集団もしくは組織はヒトである。
【0018】
本発明はまた、本発明の発現カセットを含む単離された細胞を提供する。いくつかの実施形態において、発現カセットまたはベクターは、前記細胞のゲノムへ安定的に組み込まれる。
【0019】
本発明のプロモーターへ動作可能に連結することができる典型的な遺伝子は、ハロロドプシンまたはチャネルロドプシンをコードする遺伝子である。
【0020】
加えて、本発明はまた、本発明の単離された核酸分子を含む、桿体光受容器において遺伝子を発現させるためのキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】光受容器層における側面投影および上面図として、成体C57BL/6マウスの眼におけるAAV-synP161-ChR2-EGFPの網膜下注射から3週間後の配列番号1を有するプロモーターからのEGFP発現のレーザー走査型共焦点顕微鏡画像の図である。桿体光受容細胞における誘導された発現が観察された。緑色=配列番号1により作動したEGFP、赤色=mCAR、白色=Hoechst。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者らは、エピジェネティックス、バイオインフォマティクス、および神経科学を組み合わせて、眼にある場合、桿体光受容器においてのみ遺伝子発現を作動させるプロモーターを見出している。
【0023】
本発明の配列の核酸配列は以下である:
ATTCCGGTCACACGGCCAAGATTATTCCACCTGCGCTTTGAGCAATAGGGAGAGGGCTCTGGTGCCTCTTCCTGGAATTTGATTAATTCGCTTGAGTCAGTCACAGAATTTGAGGAAGCATTGATATTTGAAGATGTGTTCTTCTAAAGGATACAAATGAATATATGCATAGTGAGAGTTTAGGAGATAGG(配列番号1)
【0024】
したがって、本発明は、配列番号1の核酸配列、または配列番号1の前記核酸配列と少なくとも70%同一性を有する少なくとも150bpの核酸配列を含み、またはそれからなる単離された核酸分子を提供し、前記単離された核酸分子は、前記遺伝子をコードする前記核酸配列へ動作可能に連結された遺伝子の桿体光受容器における発現を特異的にもたらす。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも80%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも85%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも90%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも95%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも96%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも97%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも98%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも99%同一性を有する。いくつかの実施形態において、核酸配列は、少なくとも150bpであり、配列番号1の前記核酸配列と少なくとも100%同一性を有する。
【0025】
本発明の単離された核酸分子は、最小プロモーター、例として、SV40最小プロモーター、例えば、SV40最小プロモーターまたは実施例に用いられたものを追加として含むことができる。
【0026】
上記のような本発明の単離された核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む単離された核酸分子もまた提供される。本発明はまた、上記のような本発明の単離された核酸分子を含む発現カセットであって、前記プロモーターが、少なくとも、桿体光受容器において特異的に発現させる遺伝子をコードする核酸配列へ動作可能に連結されている、発現カセットを提供する。
【0027】
本発明はさらに、本発明の発現カセットを含むベクターを提供する。いくつかの実施形態において、前記ベクターはウイルスベクターである。
【0028】
本発明はまた、桿体光受容器における遺伝子の発現のための、本発明の核酸の使用、本発明の発現カセットの使用、または本発明のベクターの使用を包含する。
【0029】
本発明はさらに、単離された細胞、細胞株、または細胞集団(例えば、組織)に本発明の発現カセットをトランスフェクトするステップを含む、桿体光受容器において遺伝子を発現させる方法であって、前記細胞が桿体光受容器を含む場合、発現させる遺伝子が、単離された細胞、細胞株、または細胞集団により発現される、方法を提供する。いくつかの実施形態において、単離された細胞、細胞株、または細胞集団もしくは組織はヒトである。
【0030】
本発明はまた、本発明の発現カセットを含む単離された細胞を提供する。いくつかの実施形態において、発現カセットまたはベクターは、前記細胞のゲノムへ安定的に組み込まれる。
【0031】
本発明のプロモーターへ動作可能に連結することができる典型的な遺伝子は、ハロロドプシンまたはチャネルロドプシンをコードする遺伝子である。
【0032】
加えて、本発明はまた、本発明の単離された核酸分子を含む、桿体光受容器において遺伝子を発現させるためのキットを提供する。
【0033】
本明細書に用いられる場合、用語「プロモーター」は、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、およびプロモーターを含む任意のシス制御エレメントを指す。プロモーターは、転写されることを必要とされる遺伝子の上流に(5’領域の方に)一般的には位置するDNAの領域である。プロモーターは、それが調節する遺伝子の適切な活性化または抑制を可能にする。本発明の関連において、プロモーターは、それらへ動作可能に連結された遺伝子の桿体光受容器における特異的発現をもたらす。「ある特定の型の細胞においてのみの発現」とも呼ばれる「特異的発現」は、目的の遺伝子を発現する細胞の少なくとも75%より多くが、特定化されたその型、すなわち、本事例においては桿体光受容器であることを意味する。
【0034】
発現カセットは典型的には、発現カセットの宿主細胞への侵入、および宿主細胞における発現カセットの維持を促進するベクターへ導入される。そのようなベクターは一般的に用いられており、当業者周知である。多数のそのようなベクターは、例えば、Invitrogen、Stratagene、Clontechなどから市販されており、Ausubel、Guthrie、Strathem、またはBergerなどの多数のガイドに記載されている(全て上記参照)。そのようなベクターは典型的には、多重クローニング部位、および複製起点、選択マーカー遺伝子(例えば、LEU2、URA3、TRP 1、HIS3、GFP)、セントロメア配列などの追加のエレメントと共に、プロモーター、ポリアデニル化シグナルなどを含む。
【0035】
ウイルスベクター、例えば、AAV、PRV、またはレンチウイルスは、本発明のプロモーターを用いて遺伝子を桿体光受容器に標的化して、送達するのに適している。
【0036】
網膜細胞のアウトプットは、多電極アレイもしくはパッチクランプなどの電気的方法を用いて、または蛍光の検出などの視覚的方法を用いて、測定することができる。
【0037】
本発明の核酸配列を用いる方法は、本発明のプロモーター下で1つまたは複数の導入遺伝子を発現する桿体光受容器と試験化合物を接触させるステップ、および前記試験化合物の存在下で得られた桿体光受容器の少なくとも1つのアウトプットを、前記試験化合物の非存在下で得られた同じアウトプットと比較するステップを含む、桿体光受容器に関わる、神経学的障害または網膜の障害の処置のための治療剤を同定するために用いることができる。
【0038】
さらに、本発明のプロモーターを用いる方法はまた、本発明のプロモーターの調節下で1つまたは複数の導入遺伝子を発現する桿体光受容器と作用物質を接触させるステップ、および前記作用物質との接触後に得られた少なくとも1つのアウトプットを、前記作用物質との前記接触前に得られた同じアウトプットと比較するステップを含む、視力回復のインビトロ試験に用いることができる。
【0039】
チャネルロドプシンは、光開閉型イオンチャネルとして機能するオプシンタンパク質のサブファミリーである。それらは、単細胞緑藻において感覚光受容器として働き、走光性、すなわち、光に応答した運動を調節する。他の生物体の細胞において発現している場合、それらは、細胞内酸性度、カルシウム流入、電気興奮性、および他の細胞過程を調節するための光の使用を可能にする。以下の少なくとも3つの「天然」チャネルロドプシンが現在公知である:チャネルロドプシン-1(ChR1)、チャネルロドプシン-2(ChR2)、およびボルボックス(Volvox)チャネルロドプシン(VChR1)。さらに、これらのタンパク質のいくつかの改変/改善バージョンもまた存在する。全ての公知のチャネルロドプシンは非特異的陽イオンチャネルであり、H+、Na+、K+、およびCa2+イオンを伝導する。
【0040】
ハロロドプシンは、塩素イオンに特異的な光駆動性イオンポンプであり、好塩菌として公知の系統的に古代の「細菌」(古細菌)に見出される。それは、レチニリデンタンパク質ファミリーの7回膜貫通型タンパク質であり、光駆動性プロトンポンプバクテリオロドプシンと相同であり、脊椎動物ロドプシン(網膜において光を感知する色素)と三次構造において類似している(しかし、一次配列構造においては類似していない)。ハロロドプシンはまた、チャネルロドプシン(光駆動性イオンチャネル)と配列類似性を共有する。ハロロドプシンは、必須の光異性化可能ビタミンA誘導体オールトランスレチナールを含有する。ハロロドプシンは、結晶構造がわかっている数少ない膜タンパク質の1つである。ハロロドプシンアイソフォームは、H.サリナラム(H.salinarum)およびN.パラオニス(N.pharaonis)を含む好塩菌の複数の種に見出すことができる。大いに進行している研究は、これらの違いを探究中であり、それらを用いて、光周期およびポンプ性質を別個に解析している。バクテリオロドプシンに次いで、ハロロドプシンは、研究される最良のI型(微生物の)オプシンである。ハロロドプシンレチナール複合体のピーク吸光度は約570nmである。最近、ハロロドプシンは、オプトジェネティクスにおけるツールとなっている。青色光活性化イオンチャネルのチャネルロドプシン-2が、青色光の短いパルスで興奮性細胞(例えば、ニューロン、筋肉細胞、膵臓細胞、および免疫細胞など)を活性化する能力を開くように、ハロロドプシンは、黄色光の短いパルスで興奮性細胞を静める能力を開く。このように、ハロロドプシンおよびチャネルロドプシンは一緒に、神経活動の多色光学的な活性化、鎮静、および脱同期化を可能にし、強力な神経工学のツールボックスを生み出す。
【0041】
いくつかの実施形態において、プロモーターは、網膜を標的化するベクターの部分であり、前記ベクターは、生きている桿体光受容器において検出可能である少なくとも1つのレポーター遺伝子を発現する。
【0042】
本発明のための適切なウイルスベクターは、当技術分野において周知である。例として、AAV、PRV、またはレンチウイルスは、遺伝子を桿体光受容器に標的化して、送達するのに適している。
【0043】
単離された網膜を用いて作業する場合、網膜細胞にとって最適なウイルス送達は、神経節細胞側を下向きに載せることにより達成することができ、その結果、網膜の光受容器側が露出され、したがって、よりうまくトランスフェクトすることができる。別の技術は、送達中のウイルスが内膜を貫通することができるように、例えば、カミソリの刃で、網膜の内境界膜をスライスすることである。さらなる方法は、寒天中に網膜を包埋し、前記網膜をスライスし、そのスライスの側から送達ウイルスを適用することである。
【0044】
トランスフェクトされた細胞のアウトプットは、周知の方法を用いて、例えば、多電極アレイもしくはパッチクランプなどの電気的方法を用いて、または蛍光の検出などの視覚的方法を用いて、測定することができる。ある場合には、内境界膜の顕微手術により内境界膜が除去される。他の場合には、記録は、内境界膜に実施されたスライスを通して達成される。
【0045】
網膜細胞の任意の供給源を、本発明に用いることができる。本発明のいくつかの実施形態において、網膜細胞は、ヒト網膜由来であり、またはその中にある。他の実施形態において、網膜は、動物由来、例えば、ウシまたはげっ歯類起源である。ヒト網膜は、前記網膜が通常、角膜の切開後、廃棄される角膜バンクから容易に入手することができる。成人ヒト網膜は、大きい表面積(約1100mm2)を有し、したがって、いくつかの実験的小区域へ簡単に分けることができる。さらに、網膜はまた、網膜が脳の他の部位と同一であるシナプスを有するため、シナプス連絡の精巧なモデルとして用いることができる。
【0046】
本明細書で用いられる場合、用語「動物」は、全ての動物を含むように本明細書で用いられる。本発明のいくつかの実施形態において、非ヒト動物は脊椎動物である。動物の例は、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ネコ、イヌなどである。用語「動物」はまた、胚期および胎生期を含む全ての発生段階における個々の動物を含む。「遺伝子改変動物」は、標的化組換え、マイクロインジェクション、または組換えウイルスの感染によるなどの細胞下レベルでの計画的な遺伝子操作により、直接的または間接的に変化した、または受け入れられた遺伝的情報を有する1つまたは複数の細胞を含有する任意の動物である。用語「遺伝子改変動物」は、古典的な交雑または体外受精を包含することを意図されず、むしろ、1つまたは複数の細胞が組換えDNA分子により変更され、またはそれを受け入れている、動物を包含することを意図される。この組換えDNA分子は、限定された遺伝子座に特異的に標的化され得、染色体内にランダムに組み込まれ得、またはそれは、染色体外複製DNAであり得る。用語「生殖細胞系列遺伝子改変動物」は、遺伝子変化または遺伝子情報が生殖系列細胞へ導入され、それにより、遺伝子情報をそれの子孫へ伝達する能力が与えられる遺伝子改変動物を指す。そのような子孫が、実際、その変化または遺伝子情報の一部または全部を有する場合には、それらは、同様に、遺伝子改変動物である。
【0047】
その変化または遺伝子情報は、レシピエントが属する動物の種にとって外来、もしくは特定の個々のレシピエントにとってのみ外来であり得、またはレシピエントによりすでに保有された遺伝子情報であり得る。その最後の場合、変化した、または導入された遺伝子は、天然遺伝子とは異なって発現し得、または全く発現し得ない。
【0048】
標的遺伝子を変化させるために用いられる遺伝子は、幅広い種類の技術により入手され得、その技術には、ゲノム源からの単離、単離されたmRNA鋳型からのcDNAの調製、直接的合成、またはそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0049】
導入遺伝子導入のための標的細胞の型は、ES細胞である。ES細胞は、インビトロで培養された着床前胚から獲得され得、胚と融合され得る(Evans et al. (1981), Nature 292:154-156; Bradley et al. (1984), Nature 309:255-258; Gossler et al. (1986), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:9065-9069; Robertson et al. (1986), Nature 322:445-448; Wood et al. (1993), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:4582- 4584)。導入遺伝子は、エレクトロポレーションを用いるDNAトランスフェクションなどの標準技術により、またはレトロウイルス媒介性形質導入により、ES細胞へ効率的に導入することができる。結果として生じた形質転換型ES細胞は、その後、凝集により桑実胚と組み合わせることができ、または非ヒト動物由来の胚盤胞へ注入することができる。その後、導入されたES細胞は、胚をコロニー形成し、生じたキメラ動物の生殖細胞系列に寄与する(Jaenisch (1988), Science 240:1468-1474)。遺伝子標的化された遺伝子改変マウスの生成における遺伝子標的化されたES細胞の使用は、1987年に記載され(Thomas et al. (1987), Cell 51:503-512)、他の所で概説されている(Frohman et al. (1989), Cell 56:145-147; Capecchi (1989), Trends in Genet. 5:70-76; Baribault et al. (1989), Mol. Biol. Med. 6:481-492; Wagner (1990), EMBO J. 9:3025-3032; Bradley et al. (1992), Bio/Technology 10:534-539)。
【0050】
染色体アレルへ特定の変化を挿入するための標的化相同組換えを用いることにより、任意の遺伝子領域を不活性化し、または望まれる任意の変異へ変化させる技術が利用できる。本明細書で用いられる場合、「標的化遺伝子」は、人間の介入により非ヒト動物の生殖細胞系列へ導入されるDNA配列であり、その人間の介入には、本明細書に記載された方法が挙げられるが、それらに限定されない。本発明の標的化遺伝子には、同族の内因性アレルを特異的に変化させるように設計されるDNA配列が挙げられる。
【0051】
本発明において、「単離された」とは、それの本来の環境(例えば、それが天然に存在する場合には、天然の環境)から取り出された材料を指し、したがって、それの天然状態から「人の手により」変化している。例えば、単離されたポリヌクレオチドは、ベクターもしくは物体の組成物の部分であり得、または細胞内に含有され得、それでもなお「単離された」ということができ、そのベクター、物体の組成物、または特定の細胞はそのポリヌクレオチドの本来の環境ではないためである。用語「単離された」は、ゲノムまたはcDNAライブラリー、細胞全体の全部もしくはmRNA調製物、ゲノムDNA調製物(電気泳動により分離され、ブロットへ移されたものを含む)、剪断された細胞全体のゲノムDNA調製物、または当技術分野が本発明のポリヌクレオチド/配列の際立った特色を実証していない他の組成物を指さない。さらに、単離されたDNA分子のさらなる例には、異種性宿主細胞において維持された組換えDNA分子、または溶液中の(部分的に、または実質的に)精製されたDNA分子が挙げられる。単離されたRNA分子には、本発明のDNA分子のインビボまたはインビトロRNA転写産物が挙げられる。しかしながら、ライブラリー(例えば、ゲノムまたはcDNAライブラリー)の他のメンバーから単離されていないライブラリーのメンバーであるクローン内に(例えば、ライブラリーのそのクローンおよび他のメンバーを含有する均一な溶液の形で)、あるいは細胞または細胞可溶化物から取り出された染色体(例えば、核型においてのような、「染色体スプレッド」)内に、あるいはランダムに剪断されたゲノムDNAの調製物または1つもしくは複数の制限酵素で切断されたゲノムDNAの調製物内に含有される核酸は、この発明においては、「単離されて」いない。本明細書でさらに論じられているように、本発明による単離された核酸分子は、天然で、組換え的に、または合成的に産生され得る。
【0052】
「ポリヌクレオチド」は、一本鎖DNAおよび二本鎖DNA、一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖RNAおよび二本鎖RNA、ならびに一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖、またはより典型的には二本鎖、または一本鎖領域と二本鎖領域の混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子で構成され得る。加えて、ポリヌクレオチドは、RNA、またはDNA、またはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域で構成され得る。ポリヌクレオチドはまた、1つもしくは複数の改変型塩基、または安定性のためにもしくは他の理由のために改変されたDNAもしくはRNAバックボーンを含有し得る。「改変型」塩基には、例えば、トリチル化塩基およびイノシンなどの普通ではない塩基が挙げられる。様々な改変がDNAおよびRNAになされ得る;したがって、「ポリヌクレオチド」は、化学的に、酵素的に、または代謝的に改変された形を包含する。
【0053】
表現「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、そのポリペプチドについてのコード配列だけを含むポリヌクレオチド、加えて、追加のコード配列および/または非コード配列を含むポリヌクレオチドも包含する。
【0054】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」は、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト液、10%デキストラン硫酸、および20μg/ml変性剪断化サケ精子DNAを含む溶液中、42℃での終夜のインキュベーション、続いて、約50℃で、0.1×SSC中、フィルターを洗浄することを指す。ハイブリダイゼーションおよびシグナル検出のストリンジェント性の変化は、主に、ホルムアミド濃度(ホルムアミドのより低いパーセンテージが結果として、ストリンジェント性の低下を生じる)、塩条件、または温度の操作を通して達成される。例えば、中程度に高いストリンジェント性の条件は、6×SSPE(20×SSPE=3M NaCl;0.2M NaH2PO4;0.02M EDTA、pH7.4)、0.5%SDS、30%ホルムアミド、100μg/mlサケ精子ブロッキングDNAを含む溶液中、37℃での終夜のインキュベーション、続いて、50℃、1×SSPE、0.1%SDSでの洗浄を含む。加えて、さらにより低いストリンジェント性を達成するために、ストリンジェントなハイブリダイゼーション後に実施される洗浄は、より高い塩濃度(例えば、5×SSC)で行うことができる。上記の条件におけるバリエーションは、ハイブリダイゼーション実験においてバックグラウンドを抑制するために用いられる代わりのブロッキング試薬の包含および/または置換を通して達成され得る。典型的なブロッキング試薬には、デンハルト試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA、および市販の専売製剤が挙げられる。特定のブロッキング試薬の包含は、適合性に関する問題のために、上記のハイブリダイゼーション条件の改変を必要とする場合がある。
【0055】
ポリペプチドに言及する場合の用語「断片」、「誘導体」、および「類似体」は、そのようなポリペプチドと実質的に同じ生物学的機能かまたは活性のいずれかを保持するポリペプチドを意味する。類似体には、プロタンパク質部分の切断により活性化されて、活性成熟ポリペプチドを生成することができる、プロタンパク質が挙げられる。
【0056】
用語「遺伝子」は、ポリペプチド鎖を産生することに関与するDNAのセグメントを意味する;それは、コード領域に先行する領域およびその後に続く領域、「リーダーおよびトレーラー」、加えて、個々のコードセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)を含む。
【0057】
ポリペプチドは、ペプチド結合によりお互いに連結したアミノ酸、または改変型ペプチド結合によりお互いに連結したアミノ酸、すなわち、ペプチドアイソスターで構成され得、20個の遺伝子コード化アミノ酸以外のアミノ酸を含有する場合がある。ポリペプチドは、翻訳後プロセシングなどの自然の過程によるか、または当技術分野において周知の化学修飾技術によるかのいずれかにより修飾され得る。そのような修飾は、基礎的なテキスト、より詳細なモノグラフ、加えて、膨大な研究論文に十分、記載されている。修飾は、ポリペプチドにおいてどこでも起こり得、その場所には、ペプチドバックボーン、アミノ酸側鎖、およびアミノまたはカルボキシル末端が挙げられる。同じ型の修飾が、所定のポリペプチドにおいて、いくつかの部位で、同じまたは様々な程度で存在し得ることは理解されているだろう。または、所定のポリペプチドは、多くの型の修飾を含有し得る。ポリペプチドは、例えば、ユビキチン化の結果として、分枝型であり得、それらは、分枝有りまたは分枝なしの環状であり得る。環状ポリペプチド、分枝型ポリペプチド、および分枝型環状ポリペプチドは、翻訳後の自然過程に起因し得、または合成方法によって作製され得る。修飾には、アセチル化、アシル化、ビオチン化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合性付着、ヘム部分の共有結合性付着、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合性付着、脂質または脂質誘導体の共有結合性付着、ホスファチジルイノシトールの共有結合性付着、架橋、環状化、既知の保護/ブロッキング基による誘導体化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合性架橋の形成、システインの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、抗体分子または他の細胞リガンドへの連結、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質プロセシング(例えば、切断)、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化およびユビキチン化などのアミノ酸のタンパク質へのトランスファーRNA媒介性付加が挙げられるが、それらに限定されない。(例えば、PROTEINS-STRUCTURE AND MOLECULAR PROPERTIES, 2nd Ed., T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York (1993);POSTTRANSLATIONAL COVALENT MODIFICATION OF PROTEINS, B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York, pgs. I-12 (1983);Seifter et al. , Meth Enzymol 182:626-646 (1990);Rattan et al., Ann NY Acad Sci 663:48-62 (1992)参照)
【0058】
「生物学的活性を有する」ポリペプチド断片は、用量依存性の有無に関わらず、特定の生物学的アッセイにおいて測定した場合、成熟形態などの元のポリペプチドの活性と類似しているが必ずしも同一でなくてもよい活性を示すポリペプチドを指す。用量依存性が存在する場合、それは、ポリペプチドのそれと同一である必要はなく、むしろ、最初のポリペプチドと比較した時、所定の活性において用量依存性と実質的に類似する(すなわち、候補ポリペプチドは、最初のポリペプチドに対して、より高い活性、または約25分の1まで、いくつかの実施形態においては、約10分の1までの活性、もしくは約3分の1までの活性を示すだろう)。
【0059】
種同族体は、本明細書に提供された配列から適切なプローブまたはプライマーを作製し、適切な核酸供給源を所望の同族体についてスクリーニングすることにより単離および同定され得る。
【0060】
「バリアント」は、最初のポリヌクレオチドまたはポリペプチドとは異なるが、それの必須の性質を保持するポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。一般的に、バリアントは、最初のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと全体的に密接に類似し、多くの領域において、同一である。
【0061】
実際問題として、任意の特定の核酸分子またはポリペプチドが、本発明のヌクレオチド配列と少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるかどうかは、便利には、公知のコンピュータープログラムを用いて決定することができる。グローバル配列アラインメントとも呼ばれる、クエリ配列(本発明の配列)と対象配列との間の最適の全体的なマッチを決定するための好ましい方法は、Brutlagら(Comp. App. Blosci. (1990) 6:237-245)のアルゴリズムに基づいたFASTDBコンピュータープログラムを用いて決定することができる。配列アラインメントにおいて、クエリ配列および対象配列はどちらもDNA配列である。RNA配列は、UをTに変換することにより比較することができる。前記グローバル配列アラインメントの結果は、パーセント同一性においてである。パーセント同一性を計算するためのDNA配列のFASTDBアラインメントに用いられる好ましいパラメーターは以下である:行列=ユニタリー、kタプル(k-tuple)=4、ミスマッチペナルティ=1、結合ペナルティ=30、ランダム化グループ長=0、カットオフスコア=l、ギャップペナルティ=5、ギャップサイズペナルティ=0.05、ウィンドウサイズ=500または対象ヌクレオチド配列の長さの、どちらか短い方。対象配列が、内部欠失のためではなく、5’または3’欠失のために、クエリ配列より短い場合には、その結果に手作業での補正がなされなければならない。これは、FASTDBプログラムが、パーセント同一性を計算する時、対象配列の5’および3’切り詰めを考慮しないためである。クエリ配列に対して5’または3’末端で切り詰められた対象配列について、パーセント同一性は、クエリ配列の全塩基に占めるパーセントとして、マッチング/アラインメントされていない、対象配列の5’および3’であるクエリ配列の塩基の数を計算することにより補正される。ヌクレオチドがマッチング/アラインメントされているかどうかは、FASTDB配列アラインメントの結果により決定される。その後、このパーセンテージは、上記の、特定化されたパラメーターを用いる上記のFASTDBプログラムにより計算されたパーセント同一性から引き算され、最終のパーセント同一性スコアに達する。この補正されたスコアが、本発明のために用いられるものである。クエリ配列とマッチング/アラインメントされていない、FASTDBアラインメントによりディスプレイされているような対象配列の5’および3’塩基の外側の塩基のみが、パーセント同一性スコアを手作業で調整することのために計算される。例えば、90塩基の対象配列は、100塩基のクエリ配列とアラインメントされて、パーセント同一性が決定される。欠失は対象配列の5’末端に存在し、したがって、FASTDBアラインメントは、5’末端における最初の10塩基のマッチング/アラインメントを示さない。その10個の損なわれた塩基はその配列の10%(マッチングされていない5’および3’末端における塩基の数/クエリ配列における塩基の総数)に相当し、それゆえに、10%が、FASTDBプログラムによって計算されたパーセント同一性スコアから引き算される。残りの90塩基が完全にマッチしていたならば、最終のパーセント同一性は90%である。別の例において、90塩基の対象配列が、100塩基のクエリ配列と比較される。今回、欠失は内部欠失であるので、クエリとマッチング/アラインメントされていない対象配列の5’または3’における塩基はない。この場合、FASTDBによって計算されたパーセント同一性は、手作業で補正されない。もう一度言えば、クエリ配列とマッチング/アラインメントされていない対象配列の5’および3’の塩基だけが手作業で補正される。
【0062】
本発明のクエリアミノ酸配列と少なくとも、例えば95%「同一の」アミノ酸配列を有するポリペプチドにより、対象ポリペプチドのアミノ酸配列は、対象ポリペプチドが、クエリアミノ酸配列の各100アミノ酸につき最高5個までのアミノ酸変化を含み得ることを除いて、クエリ配列と同一であることが意図される。言い換えれば、クエリアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、対象配列におけるアミノ酸残基の最高5%までが、挿入され、欠失し、または別のアミノ酸と置換され得る。参照配列のこれらの変化は、参照アミノ酸配列のアミノもしくはカルボキシ末端位置において、またはそれらの末端位置の間のどこにでも、参照配列における残基の間に個々にか、または参照配列内の1つもしくは複数の連続した群としてかのいずれかで散在して、存在し得る。
【0063】
実際問題として、任意の特定のポリペプチドが、例えば、配列に示されたアミノ酸配列、または寄託されたDNAクローンによりコードされたアミノ酸配列と、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるかどうかは、便利には、公知のコンピュータープログラムを用いて決定することができる。グローバル配列アラインメントとも呼ばれる、クエリ配列(本発明の配列)と対象配列との間の最適の全体的なマッチを決定するための好ましい方法は、Brutlagら(Comp. App. Blosci. (1990) 6:237-245)のアルゴリズムに基づいたFASTDBコンピュータープログラムを用いて決定することができる。配列アラインメントにおいて、クエリ配列および対象配列は両方ともヌクレオチド配列かまたは両方ともアミノ酸配列のいずれかである。前記グローバル配列アラインメントの結果は、パーセント同一性においてである。FASTDBアミノ酸アラインメントに用いられる好ましいパラメーターは以下である:行列=PAM 0、kタプル=2、ミスマッチペナルティ=1、結合ペナルティ=20、ランダム化グループ長=0、カットオフスコア=l、ウィンドウサイズ=配列長、ギャップペナルティ=5、ギャップサイズペナルティ=0.05、ウィンドウサイズ=500または対象アミノ酸配列の長さの、どちらか短い方。対象配列が、内部欠失のためではなく、NまたはC末端欠失のために、クエリ配列より短い場合には、その結果に手作業での補正がなされなければならない。これは、FASTDBプログラムが、グローバルパーセント同一性を計算する時、対象配列のNおよびC末端切り詰めを考慮しないためである。クエリ配列に対してNまたはC末端で切り詰められた対象配列について、パーセント同一性は、クエリ配列の全塩基に占めるパーセントとして、対応する対象残基とマッチング/アラインメントされていない、対象配列のNおよびC末端であるクエリ配列の塩基の数を計算することにより補正される。残基がマッチング/アラインメントされているかどうかは、FASTDB配列アラインメントの結果により決定される。その後、このパーセンテージは、上記の、特定化されたパラメーターを用いるFASTDBプログラムにより計算されたパーセント同一性から引き算され、最終のパーセント同一性スコアに達する。この最終パーセント同一性スコアが、本発明のために用いられるものである。クエリ配列とマッチング/アラインメントされていない、対象配列よりNおよびC末端側にある残基のみが、パーセント同一性スコアを手作業で調整することのために考慮される。それは、対象配列の最も遠いNおよびC末端残基の外側のクエリ残基位置だけである。クエリ配列とマッチング/アラインメントされていない、FASTDBアラインメントにおいてディスプレイされているような対象配列のNおよびC末端の外側の残基位置だけが手作業で補正される。他の手作業での補正は、本発明のために行われることはない。
【0064】
天然に存在するタンパク質バリアントは、「アレルバリアント」と呼ばれ、生物体の染色体上の所定の座を占める遺伝子のいくつかの代替型の1つを指す(Genes 11, Lewin, B., ed., John Wiley & Sons, New York (1985))。これらのアレルバリアントは、ポリヌクレオチドレベルおよび/またはポリペプチドレベルのいずれかにおいて異なり得る。あるいは、天然に存在しないバリアントは、変異誘発技術により、または直接的合成により作製され得る。
【0065】
「標識」は、直接的に、またはシグナル発生系の1つもしくは複数の追加のメンバーとの相互作用を通して、検出可能なシグナルを提供する能力がある作用物質を指す。直接的に検出可能であり、かつ本発明に用いられ得る標識には、蛍光標識が挙げられる。具体的なフルオロフォアには、フルオレセイン、ローダミン、BODIPY、シアニン色素などが挙げられる。
【0066】
「蛍光標識」は、別の波長の光により活性化された時、ある特定の波長の光を放射する能力を有する任意の標識を指す。
【0067】
「蛍光」は、蛍光シグナルの任意の検出可能な特性を指し、それには、強度、スペクトル、波長、細胞内分布などが挙げられる。
【0068】
蛍光を「検出すること」は、定性的または定量的方法を用いて細胞の蛍光を評価することを指す。本発明の実施形態の一部において、蛍光は、定性的様式で検出される。言い換えれば、組換え融合タンパク質が発現しているかどうかを示す、蛍光マーカーが存在するかどうかである。他の例として、蛍光は、例えば、蛍光強度、スペクトル、または細胞内分布を測定する定量的手段を用いて決定することができ、異なる条件下で得られる値の統計的比較を可能にする。レベルはまた、複数の試料の人による視覚的分析および比較、例えば、試料が蛍光顕微鏡または他の光学的検出器(例えば、画像分析システムなど)を用いて検出されるなどの定量的方法を用いて決定することができる。蛍光における「変化」または「変調」は、別の条件と比較した、特定の条件下での、蛍光の強度、細胞内分布、スペクトル、波長、または他の側面における任意の検出可能な差を指す。例えば、「変化」または「変調」は、定量的に検出され、その差は、統計的に有意な差である。蛍光における任意の「変化」または「変調」は、蛍光顕微鏡、CCD、または任意の他の蛍光検出器などの標準計測手段を用いて検出され得、統合システムなどの自動システムを用いて検出され得、または人の観測者により変化の主観的検出を反映し得る。
【0069】
「緑色蛍光タンパク質」(GFP)は、青色光に曝された時、緑色の蛍光を発する、クラゲのエクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)/エクオレア・エクオレア(Aequorea aequorea)/エクオレア・ホルスカレア(Aequorea forskalea)から最初に単離された、238アミノ酸(26.9kDa)で構成されるタンパク質である。A.ビクトリア(A. victoria)由来のGFPは、395nmの波長での主要な励起ピークおよび475nmでの微量ピークを有する。それの発光ピークは509nmであり、それは、可視スペクトルの低い方の緑色部分にある。ウミシイタケ(レニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis))由来のGFPは、498nmにおける単一の主要な励起ピークを有する。広範な利用の可能性および研究者の進化していく要望のため、GFPの多くの異なる変異体が操作されている。最初の主要な改善は、Roger TsienによりNatureにおいて1995年に報告された単一の点変異(S65T)であった。この変異は、GFPのスペクトル特性を劇的に改善し、結果として、蛍光の増加、光安定性の増加、およびピーク放射を509nmに保持したままでの主要励起ピークの488nmへのシフトを生じた。このスキャフォールドへの37℃フォールディング効率(F64L)点変異体の添加は、増強型GFP(EGFP)を生じた。EGFPは、9.13×10-212/分子の光学的断面積としても公知であり、55,000L/(mol・cm)としても引用される、消衰係数(εと表示される)を有する。十分にフォールディングしていないペプチドと融合した場合でさえもGFPが迅速にフォールディングし、成熟するのを可能にする一連の変異である、Superfolder GFPは2006年に報告された。
【0070】
「黄色蛍光タンパク質」(YFP)は、エクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)由来の緑色蛍光タンパク質の遺伝子変異体である。それの励起ピークは514nmであり、それの発光ピークは527nmである。
【0071】
本明細書に用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかに他に指示しない限り、複数の表示を含む。
【0072】
「ウイルス」は、宿主細胞の外側では成長または繁殖することができない超顕微鏡的感染性物質である。各ウイルス粒子またはビリオンは、キャプシドと呼ばれる保護タンパク質被膜内の遺伝子材料、DNA、またはRNAからなる。キャプシドの形は、単純ならせんおよび正二十面体の(多面体の、または球形に近い)形から、尾またはエンベロープを有するより複雑な構造まで様々である。ウイルスは、細胞生物に感染し、感染した宿主の型に応じて、動物型、植物型、および細菌型へ分類される。
【0073】
本明細書に用いられる場合、用語「経シナプス性ウイルス」は、1つのニューロンから別の接続しているニューロンへシナプスを通って移動することができるウイルスを指す。そのような経シナプス性ウイルスの例は、ラブドウイルス、例えば、狂犬病ウイルス、およびアルファヘルペスウイルス、例えば、仮性狂犬病ウイルスまたは単純ヘルペスウイルスである。本明細書に用いられる場合、用語「経シナプス性ウイルス」はまた、1つのニューロンから別の接続しているニューロンへシナプスを通って移動する能力を単独で有するウイルスのサブユニット、およびそのようなサブユニットを組み込み、かつ1つのニューロンから別の接続しているニューロンへシナプスを通って移動する能力を示す改変型ウイルスなどの生物学的ベクターを包含する。
【0074】
経シナプス性移動は、順行性または逆行性のいずれかであり得る。逆行性移動中、ウイルスは、シナプス後ニューロンからシナプス前ニューロンへ動く。したがって、順行性移動中、ウイルスは、シナプス前ニューロンからシナプス後ニューロンへ動く。
【0075】
同族体は、共通の祖先を共有するタンパク質を指す。類似体は、共通の祖先を共有しないが、それらをクラスに含めることにさせるいくつかの(構造的よりむしろ)機能的な類似性を有する(例えば、トリプシン様セリンプロテイナーゼとサブチリシンは明らかに関係していない - 活性部位の外側のそれらの構造は完全に異なるが、それらは、事実上幾何的に同一の活性部位を有し、したがって、類似体への収束進化の例とみなされる)。同族体の2つのサブクラス - オーソログおよびパラログがある。オーソログは、異なる種における同じ遺伝子である(例えば、チトクロム‘c’)。同じ生物体における2つの遺伝子は、オーソログであり得ない。パラログは遺伝子複製の結果である(例えば、ヘモグロビンβおよびδ)。2つの遺伝子/タンパク質が同族であり、かつ同じ生物体内にある場合には、それらはパラログである。
【0076】
本明細書に用いられる場合、用語「障害」は、不快、疾患、病気、臨床状態、または病理学的状態を指す。
【0077】
本明細書に用いられる場合、用語「薬学的に許容される担体」は、活性成分の生物学的活性の有効性に干渉せず、化学的に不活性であり、それが投与される患者に対して毒性ではない担体媒体を指す。
【0078】
本明細書に用いられる場合、用語「薬学的に許容される誘導体」は、対象に対して相対的に無毒である、例えば、本発明のスクリーニングの方法を用いて同定される、作用物質の任意の同族体、類似体、または断片を指す。
【0079】
用語「治療剤」は、障害または障害の合併症の防止または処置において援助する、任意の分子、化合物、または処置剤を指す。
【0080】
適合性薬学的担体中に製剤化されたそのような作用物質を含む組成物は、処置のために調製され、包装され、ラベルを貼られ得る。
【0081】
複合体が水溶性である場合には、それは、適切なバッファー、例えば、リン酸緩衝食塩水または他の生理学的適合性の溶液中に製剤化され得る。
【0082】
あるいは、生じた複合体が水性溶媒において溶解性が低い場合には、それは、Tweenまたはポリエチレングリコールなどの非イオン性表面活性剤と共に製剤化され得る。したがって、化合物およびそれらの生理学的に許容される溶媒は、(口かまたは鼻のいずれかを通しての)吸入もしくは吸送による投与、または経口、頬、非経口、直腸の投与のために製剤化され得、あるいは腫瘍の場合、固形腫瘍へ直接的に注入され得る。
【0083】
経口投与について、薬学的調製物は、液体の形、例えば、溶液、シロップ、もしくは懸濁液であり得、または使用前に水もしくは他の適切な媒体との再構成のための薬物製品として提供され得る。そのような液体調製物は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素付加された食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴム);非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、または分留型植物油);および保存剤(例えば、ヒドロキシ安息香酸メチルもしくはp-ヒドロキシ安息香酸プロピルまたはソルビン酸)などの薬学的に許容される添加物と共に通常の手段により調製され得る。医薬組成物は、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース);増量剤(例えば、ラクトース、結晶セルロース、またはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、またはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される賦形剤と共に、通常の手段により調製される、例えば、錠剤またはカプセルの形をとり得る。錠剤は、当技術分野において周知の方法によりコーティングされ得る。
【0084】
経口投与のための調製物は、活性化合物の徐放性を与えるように適切に製剤化され得る。
【0085】
化合物は、注入、例えば、ボーラス注入または持続点滴により非経口投与のために製剤化され得る。注入のための製剤は、添加される保存剤と共に、単位剤形内、例えば、アンプル内、または複数用量容器内において提供され得る。
【0086】
組成物は、油性または水性媒体中の懸濁液、溶液、または乳濁液のような形をとり得、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの製剤用物質(formulatory agent)を含有し得る。あるいは、活性成分は、使用前の、適切な媒体、例えば、滅菌発熱物質除去蒸留水での構成のための粉末の形をとり得る。
【0087】
化合物は、クリームまたはローションなどの局所的適用として製剤化され得る。
【0088】
前に記載された製剤に加えて、化合物はまた、デポー調製物として製剤化され得る。そのような長時間作用性製剤は、埋め込み(例えば、眼内、皮下、または筋肉内)により、または眼内注入により投与され得る。
【0089】
したがって、例えば、化合物は、適切なポリマーもしくは疎水性材料と共に(例えば、許容される油中の乳濁液として)、またはイオン交換樹脂と共に、あるいは難溶性誘導体、例えば、難溶性塩として、製剤化され得る。リポソームおよび乳濁液は、親水性薬物のための送達媒体または担体の周知の例である。
【0090】
組成物は、必要に応じて、活性成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有し得るパックまたはディスペンサー装置において提供され得る。パックは、例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチックホイルを含み得る。パックまたはディスペンサー装置は、投与についての使用説明書を添付され得る。
【0091】
本発明はまた、本発明の治療レジメンを行うためのキットも提供する。そのようなキットは、1つまたは複数の容器において、治療的または予防的有効量の組成物を、薬学的に許容される形で含む。
【0092】
キットのバイアルにおける組成物は、例えば、滅菌食塩水、デキストロース溶液、または緩衝溶液、または他の薬学的に許容される滅菌流体と組み合わせて、薬学的に許容される溶液の形をとり得る。あるいは、複合体は、凍結乾燥され、または乾燥され得る;この場合、キットは、任意で、容器において、複合体を再構成して、注射用溶液を形成するための、好ましくは滅菌した、薬学的に許容される溶液(例えば、食塩水、デキストロース溶液など)をさらに含む。
【0093】
別の実施形態において、キットはさらに、複合体を注射するための、好ましくは無菌の形に包装された、針もしくはシリンジ、および/または包装されたアルコールパッドを含む。臨床医または患者による組成物の投与についての使用説明書が、任意で含まれる。
【0094】
桿体光受容器、桿体細胞、または桿体は、視覚性光受容器の他の型、錐体細胞よりあまり強くない光において機能し得る、眼の網膜における光受容細胞である。桿体は、網膜の外縁に集中しており、周辺視野に用いられる。平均して、ヒト網膜においておよそ9千万個の桿体細胞がある。錐体細胞より感受性が高い桿体細胞が、暗視をほとんど完全に担っている。しかしながら、それらは、ヒト錐体細胞が有する3つの型よりむしろ、たった1つの型の光感受性色素を有するため、桿体は、色覚において、たとえあったとしても、わずかしか役割を果たしていない。
【0095】
他に規定がない限り、本明細書に用いられた全ての技術的および科学的用語は、当業者により一般的に理解されているのと同じ意味をもつ。本明細書に記載されたものと類似した、または等価の方法および材料は、本発明の実施または試験に用いることができるが、適切な方法および材料が下に記載されている。矛盾する場合、定義を含む本明細書が支配する。加えて、材料、方法、および実施例は、例証となるのみであり、限定することを意図されない。

本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.配列番号1の核酸配列を含むかもしくはそれからなる、または配列番号1の前記配列と少なくとも80%同一性を有する少なくとも150bpの核酸配列からなる、単離された核酸分子であって、遺伝子をコードする核酸配列が、前記単離された核酸分子へ動作可能に連結されている場合、前記単離された核酸分子が前記遺伝子の桿体光受容器における特異的発現をもたらす、単離された核酸分子。
2.最小プロモーター、例えば、配列番号2の最小プロモーターをさらに含む、上記1に記載の単離された核酸分子。
3.上記1または2に記載の単離された核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含む単離された核酸分子。
4.特定の細胞における遺伝子発現を促進するエレメントとして上記1または2に記載の単離された核酸を含む発現カセットであって、前記単離された核酸が、少なくとも、桿体光受容器において特異的に発現させる遺伝子をコードする核酸配列へ動作可能に連結されている、発現カセット。
5.上記4に記載の発現カセットを含むベクター。
6.ウイルスベクターである、上記5に記載のベクター。
7.桿体光受容器における遺伝子の発現のための、上記1もしくは2に記載の核酸の使用、または上記4に記載の発現カセットの使用、または上記5に記載のベクターの使用。
8.単離された細胞、細胞株、または細胞集団に、上記4に記載の発現カセットをトランスフェクトするステップを含む、桿体光受容器において遺伝子を発現させる方法であって、前記細胞が桿体光受容器であるかまたは前記細胞が桿体光受容器を含む場合、発現させる前記遺伝子が、前記単離された細胞、細胞株、または細胞集団により特異的に発現される、方法。
9.上記4に記載の発現カセットまたは上記5に記載のベクターを含む、単離された細胞。
10.前記発現カセットまたはベクターが前記細胞のゲノムへ安定的に組み込まれている、上記9に記載の細胞。
11.前記遺伝子の産物が光感受性分子、例えば、ハロロドプシンまたはチャネルロドプシンである、上記1もしくは2に記載の単離された核酸分子、上記4に記載の発現カセット、上記5に記載のベクター、上記7に記載の使用、上記8に記載の方法、または上記9に記載の細胞。
12.上記1または2に記載の単離された核酸分子を含む、桿体光受容器において遺伝子を発現させるためのキット。
【実施例
【0096】
遺伝子構築物
全ゲノム高分解能DNAメチル化マップを、目的の細胞型(桿体)において作成して、候補制御領域を同定した。候補エンハンサーを、細胞型特異的DNA低メチル化の存在に基づいて選択した。そのように選択されたエレメントを、錐体および桿体において、インビボハイスループットレポーターアッセイを用いて発現についてスクリーニングした。その後、桿体特異的配列エレメントを合成し、最小プロモーター配列:ATCCTCACATGGTCCTGCTGGAGTTAGTAGAGGGTATATAATGGAAGCTCGACTTCCAGCTATCACATCCACTGTGTTGTTGTGAACTGGAATCCACTATAGGCCA(配列番号2)の前にクローニングした。ChR2-eGFPコード配列が、このプロモーターおよび最適化コザック配列(GCCACC)の直後に挿入され、その後に、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後制御エレメント(WPRE)およびSV40ポリアデニル化部位が続いた。網膜ニューロンを、3.43E+11~1.75E+12 GC/mLの範囲の力価を有するAAV血清型2/8を用いて、標的化した。
【0097】
ウイルストランスフェクションおよび組織調製
AAV投与について、麻酔下の動物の眼を、鋭い30ゲージ針によりレンズの近くの強膜で穿刺した。2マイクロリットルのAAV粒子懸濁液を、Hamiltonシリンジにより網膜下に注射した。3週間後、単離された網膜を、PBS中4%PFAにおいて30分間、固定し、続いて、PBS中、4℃で洗浄ステップを行った。網膜全体を、室温で1時間、PBS中10%正常ロバ血清(NDS)、1%BSA、0.5%Triton X-100で処理した。PBS中3%NDS、1%BSA、0.5%Triton X-100におけるモノクローナルのラット抗GFP抗体(Molecular Probes Inc.;1:500)およびポリクローナルのウサギ抗マウス錐体アレスチン抗体(Millipore:1:200)での処理を、室温で5日間、行った。二次ロバ抗ラットAlexa Fluor-488抗体(Molecular Probes Inc.;1:200)、抗ウサギAlexa Fluor-633およびHoechstでの処理を2時間、行った。切片を洗浄し、スライドグラス上にProLong Gold褐色防止用試薬(Molecular Probes Inc.)と共に載せ、Zeiss LSM 700 Axio Imager Z2レーザー走査型共焦点顕微鏡(Carl Zeiss Inc.)を用いて撮影した。
図1
【配列表】
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