IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゲオルク マルティン ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】介在層のフィルム/箔の接合
(51)【国際特許分類】
   F16B 43/00 20060101AFI20220318BHJP
   B32B 7/04 20190101ALI20220318BHJP
【FI】
F16B43/00 Z
B32B7/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018545470
(86)(22)【出願日】2016-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-16
(86)【国際出願番号】 EP2016066284
(87)【国際公開番号】W WO2017153007
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2019-04-01
(31)【優先権主張番号】102016203691.2
(32)【優先日】2016-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516309855
【氏名又は名称】ゲオルク マルティン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Georg Martin GmbH
【住所又は居所原語表記】Martinstrasse 55, 63128 Dietzenbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】特許業務法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルティン,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーゲレ,ダニエル
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】独国実用新案第202014003326(DE,U1)
【文献】実開昭54-161363(JP,U)
【文献】特開2016-029310(JP,A)
【文献】特表2004-510105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 43/00
B32B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部接合しかつ積層したシムであって、同一又は異なる材料のシートを複数有し、前記シートは互いに溶着によって接合しておりかつ夫々剥離可能であり、
積層した数枚の前記シートが、それらの外縁部位の一端部の一箇所又は数箇所にて、互いに溶着によって接合していて、
前記シートが前記外縁部位の一端部の端面で、互いに接合していることを特徴とするシム。
【請求項2】
前記シートが、少なくとも一つの溶着列によって、少なくとも前記外縁部位の一端部の前記端面にて、互いに接合していることを特徴とする請求項1に記載のシム。
【請求項3】
前記シートが、複数の溶着列によって、少なくとも前記外縁部位の一端部の前記端面にて、互いに接合していることを特徴とする請求項1に記載のシム。
【請求項4】
前記シートが、さらに前記外縁部位の一部、全部、及び/又は周辺にて、接着剤で互いに接合していることを特徴とする請求項1~の何れかに記載のシム。
【請求項5】
前記シートが、金属箔、高分子シート、織物、若しくは繊維複合体材料、特にガラス繊維、炭素繊維、若しくはアラミド繊維、又は前記のこれら材料の何れかの混合物からなる繊維複合体材料を有していることを特徴とする請求項1~の何れかに記載のシム。
【請求項6】
請求項1~の何れかに記載された端部接合しかつ積層したシムを製造する方法であって、先ず、夫々のシートを、最終製品の形状に、裁断し又は打ち抜き、丁度に又は階段状に互いに積層し、各層を位置決めしてから、一つ又は複数の所期の前記外縁部位の一端部の前記端面を互いに溶着することを特徴とする方法。
【請求項7】
放射源、とりわけレーザー照射源を用いて、前記外縁部位の一端部の前記端面で、互いに溶着することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項8】
請求項又はに記載の方法によって得られた請求項1~の何れかに記載のシムの使用であって、自動車、航空機、電気工学、又は測定技術における構造物、特に発電機又は変圧器における構造物での使用。
【請求項9】
電気絶縁での使用であることを特徴とする請求項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慨して、機械構造の調整要素となるシム(許容誤差補償層状シート)に関するものである。
【0002】
詳細には、本発明、シート(スペーサー板)が溶着によって互いに接合したシム、特に第一実施態様では側面に特徴があるシムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
本発明におけるシムは、許容誤差の偏差を補償するために、機械中に据え置く製品である。シムとは、機械要素が搭載されたときに遊びを調整する機能を簡素化するためのもので、機械要素の許容誤差の発生を補償するのに据え置かれる製品である。このような許容誤差が補償されなかったら、例えば、一層摩耗してしまうであろう。シムを使用すれば、機械(後)処理、例えばフランジボルトの切断仕上げやスペーサー板の事後研磨を、省くことができる。このような理由で、シムは、多くの工業分野、特に航空分野や大型機械分野に(例えば、エンジン下敷きや転がり軸受ゲージリングとして)、用いられる。
【0004】
工業的には、利点が異なる3つ又は4つのタイプのもので、達成できるようになってきている。シムは、用いられる製品や原料の種類でも、それに加え可能な用途でも、異なる。最も従来型のシムは、単層からなり互いに組み合わせできる単体シムであって、別な単体シムを足すことによって許容誤差補償を行うことができるというものである。また、シムをさらに足すというよりむしろ、金属板や金属箔の介在を無くすことによって(例えば、過剰な金属板を剥ぐことによって)、必要な許容誤差補償を行うシムにするという構想も、在る。
【0005】
最も普通の方法は、通常単一層からなる単体シムを使用するというものである。端部接合シム又は積層シムに関するこのようなシムの利点は、製造工程が金属板、即ち半製品の切取り部分を金属加工して仕上げるものであるから、主に費用のかからない製造に用いられる。特殊な場合、単体シムは、大抵は研磨によって小さくて低厚の許容誤差となるように、任意の所望厚み、例えば1.00mm/1.03mm/1.06mmなどに、作製される。一緒に販売すれば、多品種のキットとして、使用できる。しかし、百分の1mm乃至百分の数mm厚さの精密なシートにすることも必要となる。
【0006】
従来の端部接合シムにおいては、夫々のシートが、例えば冊子の背表紙や日めくりのような扉面で、必要に応じて周縁接合端部でも、接着剤接着によって互いに接合している。単体シムに比べ、数枚のシートが互いに束ねられ又は接合され、それによって束になっているというものである。そのため、個別の場合に適合するように、単体シムを作製する必要がなく、そのシムの厚さは、個々に異なる箇所に応じて、調整することができる。このように、数枚のシートは、一つ又は複数の箇所で、特定の接着剤によって、一端にて、互いに接着している。その後、不要なシートを剥ぎ取って必要なぴったりの厚さに調節するのである。端部接合シムは、異種材料で異なる厚さの金属板や金属箔と共に束になっているものもある。このような方法は、接着剤接合の所為で製造工程がより複雑となるが、端部接合シムは、使用の際、簡便にシートを現場で剥ぎ取って必要な許容誤差に調整できるという利点がある。
【0007】
端部接合シムとは対照的に、積層シムは、特定の接着剤により全面で糊付けされている。この積層シムは、多層で全面積層され、いわゆる「サンドイッチ」構造となっている。このような結合は、シムの残存部分を破損することなく又はその作用に不利な悪影響を与えることなく、単層又は多層が取り外せるようになっている。積層した剥離金属シートは、高精密なシムである。このシムは、端部接合シムや単体シムとは対照的に、一見、顧客の設計図通りにする単体シムの如く、必要な隙間に適用してすぐに一体化できるように誂えたものである。積層シムは、単体の形状のシムや従来のシムとは対照的に、百分の数mm(0.2mm~0.010mm)の厚さを有する多数が夫々接合したシートから成っているが、硬質シートと組み合わせて、接合されていてもよいものである。組立作業者又は維持作業者は、手作業で又は工具を用いて、シート層を剥離して、調整した厚さにすることができる。
【0008】
ポリエチレンテレフタラート(PET)でしばしば形成されるいわゆる非金属剥離性シムは、0.025mm~0.50mmの厚みを有する数枚の積層プラスチックシートからなっている。このプラスチックシートは、剥離されても、再利用することができる。
【0009】
プラスチックシムは、例えば自動車、航空機のみならず電気工学、測定技術における構造物だけでなく、発電機や変圧器における構造物のような、腐食や電気絶縁が重要な軽量構造物に、特に適している。プラスチックでできた積層シートは、絶縁機能に加え、許容誤差補償にも適用できるからである。しかし、積層プラスチックシムは、金属タイプに比べ、機械強度が低い。
【0010】
基本的に、ステンレス鋼、非合金鋼、真鍮、及び/又はアルミニウムのみならずポリエチレンテレフタラートや必要に応じ複合材料でできた精密な金属性バンドや精密な金属箔は、シム作製の原材料となる。単体シムは、一般的に、物性のお陰で許容誤差補償に適している様々な種類の半製品から、作製できる(ウィキペディア、ドイツ語;キーワード「Zwischenlagen(ライナー)」;2016年2月18日検索)。
【0011】
特許文献1には、接着層が挿入された何れか二層に挟まれているシート(シム)を多数有している剥離可能調整要素が、開示されている。平坦な材料シート(フィルム/シート)は、金属又は必要に応じてプラスチックで形成されている。
【0012】
特許文献2には、同種の接着手段によって互いに接合しており、かなりの層内接着力に特徴がある熱硬化性スペーサー板積層許容誤差補償介在層が、開示されている。
【0013】
特許文献3によれば、金属製基板がレーザー溶着でシム又は環状スペーサーに接合している、シリンダーヘッドガスケットのような金属封止材が、知られている。この溶着は、端部の周り全体に直接施されている。
【0014】
特許文献4には、共に溶着されたシート製のバッグに夫々の電池が挿入されている、夫々の電池の積層体が、開示されている。
【0015】
特許文献5は、剥離によって厚みを調整可能な、許容誤差補償介在層、それの製造方法、及びシムの作製のためのそれの使用に関するものである。この目的のために、製品の構成は、平坦な材料シート(フィルム)の層と接着材料の層とを交互に形成するというものである。夫々の平坦な材料シートは、固有の引裂き抵抗を有しており、接着材料の夫々の層は、積層中で互いに隣り合う二つの平坦な材料シートに、平坦な材料シートの引裂き抵抗よりも弱い結合力によって繋がっており、それぞれの平坦な材料シートは引裂かれることなく積層から引き離し可能であるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】欧州特許出願公開第667 233A号明細書
【文献】米国特許第4,526,641A号明細書
【文献】独国特許出願公開第69108628T2号明細書
【文献】独国特許出願公開第10 2012 018 036A1号明細書
【文献】独国特許出願公開第602 08 922T2号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
引用したこれら従来技術文献は、それぞれのシートの大部分が、金属シート、高分子シート、織物、又は複合材料の何れで形成されているかにかかわらず、また構成組織に寄与している領域の一部、全体及び/又は端部で互いに接合しているかにかかわらず、構成組織に寄与している領域全体で同じ厚みを有している点で、共通している。しかし、実際問題として、例えば二つの湾曲した構成間でシムとして用いられた場合に、シート間での結合には不利な点があるということが、分かった。このような不利な点は、湾曲した範囲が特定域を超えてしまったときに、層間での応力発生により接着した積層の引裂きをもたらす結果、前記領域全体中で積層した平坦なシムが離層することから、惹き起こされたものである。このような不利な点は、半身同士の鋳型中で、シムの硬化を行うことによって、回避することができる。さらに、単一のスペーサー板が剥離してしまったら工具を使用する必要があるので、前記の領域全体での接合に、不利がある。冊子の背表紙でも不利がある。シムが要求通り横力を吸収しなければならず、接合部位を損なうので高緊密性を有しなければならず、転がり軸受中で不意な残渣を生じる接着剤の脱落の危険性を首尾よく回避し、高温でも臨界ガスの生成がなく、シム用のシート複合体を高温で使用できるように作製しなければならず、「冊子」状のシムから層を剥ぎ取ったら見苦しい玉のようになってくっついた粘着剤を形成してしまう接着剤残渣が付いたままになりナイフで取り除かねばならないという、必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第一の実施態様によれば、本発明の前記目的は、同一又は異なる材料のシートを複数有するもので、シートが互いに溶着によって接合しておりかつ夫々剥離可能であり、積層した数枚の前記シートが、それらの外縁部位の一端部の一箇所又は数箇所にて、互いに溶着によって接合していて、前記シートが前記外縁部位の一端部の端面で、互いに接合しかつ積層したシムによって、達成される。
【0019】
「溶着」は、本発明では接着剤をむしろ用いることなく、溶着剤含有又は非含有で加熱及び/又は加圧した複合材の剥離不能な接合を、意味する(欧州規格EN 14610、及びドイツ工業規格DIN 1910-100同様、本発明の意味の範囲も準拠)。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、溶着に必要なエネルギーは外部から供給される。保護ガス、溶着粉末又は溶着糊のような溶着補助が、溶着を容易にするか、可能にする。また、本発明においては、溶着は、材料を溶融するのに、シートの積層上への熱供給によって行われ、又は熱とさらに負荷(圧力)の供給によって行われる。このように、シートは、溶着接合によって、シムの端部の領域で互いに接合している。しかし、冊子の背表紙での接合とは対照的に、剥離性の接着剤は付されておらず、シートは互いに溶融によって接合している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明においては、溶着接合はレーザー溶着によって形成されると、その接合は、高速溶着で、狭くて細い溶着形状にして、低温掃引にて、行うことができることから、特に好ましい。通常、さらなる材料を用いることなく、レーザー溶着やレーザー光溶着が施されることは、知られている。レーザー照射は、光学系手段によって集束される。そのレーザー光の典型的な径は、10分の数mmの範囲内である。使用されるレーザーは、典型的な数キロワットのレーザー出力で処理すると、レーザー光は、非常に高いエネルギー濃度を発生する。その結果、本発明では、溶着により、シートの積層の外縁の少なくとも一箇所で、極めて薄い溶着によって、数枚のシートを一挙に接合することが可能となる。一列又は数列の溶着線は、少なくとも一箇所の端部に現れるものであってもよく、また、複数の溶着線は端と周辺部位との少なくとも一箇所に現れるものであってもよい。このように、夫々のシートの安定した接合が達成でき、シートは簡便に剥離することができる。
【0022】
本発明での夫々のシートの溶着接合に加えて、前記箇所の一部、全部、及び/又は周辺にて、同一又は異なる材質からなっていてもよく及び/又は異なる厚みを有していてもよいシートをさらに接着接合することも勿論可能である。
【0023】
何れのシートも、溶着できる限り、シムのシートの材料として、用いることができる。このことは、材料が溶着されるのに適しているという共通の効果(溶着傾向)と、溶着に適した構造(溶着安全性)と、製造に適した効率性(溶着可能性)とによって、夫々の部材が互いに溶着でき、所望の品質を有する構成要素を形成することができるということを、意味している。それに応じ、金属箔、高分子シート、織物、繊維複合材料、とりわけガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、アラミド繊維、又は前記それら材料の何れかの混合物が、本発明に特に好ましい。
【0024】
本発明の別な実施態様は、前記明示したような端部接合又は積層シムを製造する方法に関するものである。本発明のこの方法は、端部接合又は積層シムが、同一又は異なる種類のシートの複数を、まず溶着によって互いに接合することを、含んでいることを特徴とするというものである。
【0025】
従来技術の方法に比較し、このような本発明のシムを調製する第一工程を行う間、夫々のシートを積層した後、少なくとも一方面又は一端部でシートを互いに溶着する。その結果、本発明によれば、「溝」部位も隣のシートの「突起」部位に接合した、直方体形状または立方体形状のシムのみならず、階段様に積層したシートでも、互いに溶着できる。
【0026】
放射源、とりわけ前記箇所及び/又は前記端部を溶着するためのレーザー照射源を用いた本発明の方法が、特に好ましい。
【0027】
本発明の別な実施態様は、前記シム、例えば、自動車、航空機、電気工学、又は測定技術における構造物、特に発電機又は変圧器における構造物でのシムの使用に関するものである。
【0028】
前記明示のシムを電気絶縁に使用することも可能である。
【0029】
本発明のシムは、時間及び費用を効率的に利用でき、公知のシムに取って代わるものである。
【0030】
本発明の好ましい実施態様によれば、放射源で周辺にて、緩く又は圧搾して積層したシートを処理することが、できる。
【0031】
このように、シムは、互いにシートの部分的な箇所でのみ接合されたものであり、外周でのみ、即ちシートの前面でのみ接合されている。シムの階段形状の実施態様では、「段」は、随時、溶着されていてもよいが、常にそのようになされているわけではない。
【0032】
本発明における接合の特性は、二曲面を少し離れた状態にせざるを得ない用途の場合に、その曲面を可撓性領域構造にすることができる。異なる種類の材料でも、剛性や高圧強度を取り入れ、また層数を減らしてコストに対する利点をもたらすように、接触腐蝕の回避、潤滑層の導入、薄層内装シートとの一体化のような用途に対する好都合な特徴の広範な多様性を示しつつ、互いに接合させることができる。本発明のシムによれば、特にシート間にその箇所に対応する結合材が無くても、非常に上手く曲面に合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
それ故、従来から知られている最終製品の形状にして、互いにぴったり積層するように、夫々のシートを裁断又は打ち抜くことが、特に好ましい。引き続いて、層を位置合わせしてから、所期の前面/周辺端部が接合処置される。接合は、少ない接合使用域で十分な弾性を有して機械強度をもたらしており、操作や移送での衝撃に抵抗できる。