(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】ポリアミド成形材料及びそれからなる成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 77/06 20060101AFI20220318BHJP
C08K 7/04 20060101ALI20220318BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20220318BHJP
C08K 3/00 20180101ALI20220318BHJP
C08K 5/34 20060101ALI20220318BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
C08L77/06
C08K7/04
C08K5/00
C08K3/00
C08K5/34
C08J5/00 CFG
(21)【出願番号】P 2018557080
(86)(22)【出願日】2017-05-04
(86)【国際出願番号】 EP2017060679
(87)【国際公開番号】W WO2017191269
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2019-11-06
(32)【優先日】2016-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520509074
【氏名又は名称】エムス ヒェミー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 孝昌
(72)【発明者】
【氏名】八田 実
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】ランベルツ,ニコライ
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/159834(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/166896(WO,A1)
【文献】特表2015-514849(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052480(WO,A1)
【文献】特開2014-177560(JP,A)
【文献】特表2014-516114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
C08J 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分からなるポリアミド成形材料:
(A)43.0~66.75重量%の、少なくとも1種の部分結晶性ポリアミドあって、少なくとも1種のジアミンと少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸とからなり、ここで、前記少なくとも1種のジアミンは、4~20の炭素原子を有し、直鎖脂肪族ジアミン、分岐鎖脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン及び芳香脂肪族ジアミンからなるジアミンの群より選択され、この際、前記少なくとも1種の部分結晶性ポリアミドが、
-PA 6T/6、PA 6T/610、PA 6T/612、PA 6T/10I、PA 6T/12T、
-50~80モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、及び20~50モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する、PA 6T/6I
、
-60~75重量%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位(6T)、20~35重量%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位(6I)、3~15重量%のヘキサメチレンドデカンアミド単位(612)、及び0~5重量%の単位X(Xは以下の単位:66,68,69,610,又はこれらの単位の混合物から選択される)を有する、半結晶性ポリアミド 6T/6I/612/X、ここで、前記成分の合計は、ポリアミド6T/6I/612/Xの100重量%となる、
-60~75重量%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位(6T)、20~35重量%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位(6I)、5~20重量%の単位X(Xは、以下の単位:66,68,69,610,612,6又はこれらの単位の混合物から選択される)を有する、半結晶性ポリアミド 6T/6I/X、ここで、前記成分の合計は、ポリアミド6T/6I/Xの100重量%となる、
-10~60モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド(6T)、及び、40~90モル%のデカメチレンテレフタルアミド(10T)単位を有するPA 6T/10T、
-50~90モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位(6T)、及び5~45モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位(6I)、及び5~45モル%のデカメチレンテレフタルアミド(10T)単位を有するPA 6T/10T/6I、
-60~85モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位(6T)、及び15~40モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位(6I)を有し、さらに5~15重量%のカプロラクタムを含むPA 6T/6I/6
からなる群より選択されたものである、
(B)2.5~6.0重量%の、成分(A)とは異なる少なくとも1種のポリアミド、
(C)30.0~45.0重量%の、少なくとも1種の繊維状強化剤、
(D)0.35~1.0重量%の、少なくとも1種のアジン染料、
(E)0.2~1.5重量%の、少なくとも1種の熱安定剤、
(F)0.1~4.0重量%の、成分(A)~(E)とは異なる少なくとも1種の添加剤
ここで、成分(A)~(F)は全体で100重量%となる。
【請求項2】
前記部分結晶性ポリアミド(A)が、
DIN EN ISO 11357-3:2013-04に従って測定した際、少なくとも280℃の融点を有する、及び/又は、
温度20℃にて、100mLのm-クレゾール中に0.5gのポリマーを含む溶液で、DIN EN ISO 307:2013-08に従って測定した際、最大で2.60の溶液粘度η
relを有する
ことを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド成形材料。
【請求項3】
前記少なくとも1種の部分結晶性ポリアミド(A)が、以下からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド成形材料:
-57~73モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、及び27~43モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する、PA 6T/6I
;
-10~40モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド(6T)、及び60~90モル%のデカメチレンテレフタルアミド(10T)単位を有するPA 6T/10T;
-50~70モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位(6T)、及び10~30モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位(6I)、及び20~40モル%のデカメチレンテレフタルアミド(10T)単位を有するPA 6T/10T/6I。
【請求項4】
前記少なくとも1種の部分結晶性ポリアミド(A)が、以下からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリアミド成形材料:
-62~72モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、及び28~38モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する、PA 6T/6I
。
【請求項5】
前記成分(B)の少なくとも1種のポリアミドが、
脂肪族又は芳香脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸をベースとする部分結晶性ポリアミド(B1)及び
脂環式又は芳香族ジカルボン酸あるいはジアミンをベースとする非晶質ポリアミド(B2)
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド成形材料。
【請求項6】
前記成分(B)の少なくとも1種のポリアミドが、
以下からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド成形材料:
脂肪族又は芳香脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸をベースとする部分結晶性ポリアミド(B1)であって、PA 46、PA 56、PA 6、PA 66、PA 6/66、PA 69、PA 610、PA 612、PA 614、PA 1010、PA 1012、PA 1014、PA 1212、PA 11、PA 12、PA 6/12、PA MXD6、PA MXD10、及びそれらのコポリマー並びに混合物からなる群より選択されたもの、及び
脂環式又は芳香族ジカルボン酸あるいはジアミンをベースとする非晶質ポリアミド(B2)であって、PA 5I、PA 6I、PA DI(D=2-メチル-1,5-ペンタンジアミン)、PA 5I/5T、PA DI/DT、PA 6T/6I、PA 5I/5T/6I/6T、PA 5I/5T/DI/DT、PA 6I/6T/DI/DT、PA 6I/10I、PA 10I/10T、PA MXDI、PA MXD6/MXDI、PA MACM10、PA MACM12、PA MACM14、及びそれらのコポリマー並びに混合物からなる群より選択されたもの。
【請求項7】
前記少なくとも1種の繊維状強化剤が、ガラス繊維及び炭素繊維からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド成形材料。
【請求項8】
前記繊維が、以下からなる群より選択されることを特徴とする、請求項7に記載のポリアミド成形材料:
長さ0.1~50mmの短繊維、又はエンドレスファイバー(ロービング)、
直径5~40μmの繊維、
円形又は非円形の横断面を有する繊維、ここで非円形横断面を有する繊維は、2より大きいアスペクト比(二次軸に対する横断面の長軸)を有する、及び/又は、横断面の長軸の寸法が、6~40μmの範囲にあるもの、
前述の繊維の組み合わせ。
【請求項9】
前記少なくとも1種のアジン染料が、ニグロシン及びインジュリンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド成形材料。
【請求項10】
前記少なくとも1種のアジン染料が、
ISO 13320:2009による体積平均粒径X50(DV50)が、5~20μmである粉末として含まれることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド成形材料。
【請求項11】
前記少なくとも1種の熱安定剤が、以下からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド成形材料:
a)一価又は二価の銅化合物、
b)芳香族第二級アミン系安定剤、
c)立体障害フェノール系安定剤、
d)ホスファイト及びホスホナイト、
e)金属塩又は金属酸化物、及び
f)前述の安定剤の混合物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の添加剤が、UV-及び光-安定剤、潤滑剤、着色-及びマーキング物質、無機顔料、有機顔料、IR吸収剤、帯電防止剤、抗ブロッキング剤、結晶成長抑制剤、縮合触媒、鎖延長剤、消泡剤、鎖長延長添加剤、伝導添加剤、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、離型剤、分離剤、難燃剤、非ハロゲン系難燃剤、防滴剤、衝撃改質剤、蛍光増白剤、フォトクロミック添加剤及びメタリック顔料からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド成形材料。
【請求項13】
DIN EN ISO 75-1:2013、及びDIN EN ISO 75-2:2013による荷重たわみ温度(HDT(A)、1.80MPa)が、少なくとも250℃であることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド成形材料。
【請求項14】
前記材料が、
PA22、鉱物、粘土鉱物、タルク、ケイ酸マグネシウム、カオリン又はカオリナイトからなる群より選択される核形成剤、及び/又は
粒状充填材(あるいは非繊維状無機充填材)、及び/又は
一般の核形成剤、及び/又は
カーボンブラック
を含まないことを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド成形材料。
【請求項15】
成形品の製造方法であって、請求項1に記載のポリアミド成形材料を、アシスト射出成形によって成形品とする、方法。
【請求項16】
請求項1に記載のポリアミド成形材料から製造できる成形品であって、管又は管セクション、コネクタ、パイプ、継手、吸入口又は排出口、ハウジング又はカバーであって、一体型コネクタ、パイプ、継手、吸入口又は排出口を有するもの(自動車分野における)、あるいはペレットの形態である、成形品。
【請求項17】
DIN EN ISO 4287(2010-07)に従って測定した際、表面の少なくとも一部が、Ra値が、4.2μm未満であり、及び/又はRz値が、25μm未満である粗度を有することを特徴とする、請求項16に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下の成分からなるポリアミド成形材料に関する:
(A)30~77.6重量%の、少なくとも1種の部分結晶性ポリアミドあって、少なくとも1種のジアミンと少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸からなり、ここで、前記少なくとも1種のジアミンは、4~20の炭素原子を有し、直鎖脂肪族ジアミン、分岐鎖脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン及び芳香脂肪族ジアミンからなるジアミンの群より選択されるものである、
(B)2.0~10重量%の、成分(A)とは異なる少なくとも1種のポリアミド、
(C)20~55重量%の、少なくとも1種の繊維強化剤、
(D)0.3~2.0重量%のニグロシン、
(E)0.1~3.0重量%の、少なくとも1種の熱安定剤、
(F)0~10重量%の、成分(A)~(E)とは異なる少なくとも1種の添加剤
ここで、成分(A)~(F)は全体で100重量%となる。
【0002】
さらに、本発明は、このポリアミド成形材料から、押出、押出ブロー成形あるいは射出成形によって、特にガス又はリキッドアシスト射出成形方法によって製造可能な成形品に関する。
【背景技術】
【0003】
アシスト射出成形技術は、射出成形金型内のプラスチック中に、不活性ガス(例えば、窒素、二酸化炭素)又は水などの液体を、高圧で射出することを含む。これは、部品の芯部分を取り除き、中空エリアを残す。これにより、中空のあるいは部分的に中空の部品が成形可能になり、部品の重量を減らすことができ、はるかに良好なパッキング圧力の分布を提供することができ、ひけマークを除去することができる。ガスは、プラスチック部品の表面に適用されることもでき、成形機のパッキング圧力を、均一なガスパッキング圧力に置き換え、ひけマークを除去し、型締力を低減し、しばしばより少ない部品重量とサイクル時間をもたらす。
【0004】
水アシスト射出成形法では、水は、中空部分を抜き出すために使用され、その後、その部品を通って流れ、プラスチックを冷却する。ガス圧入プロセスとは異なり、冷却はツーリング(tooling)によってその部品の外側から、及び水によって内部チャネルから行われる。水の熱伝導率は、ガスより40倍大きく、熱容量は4倍大きいため、部品内側の直接冷却は、この成形法の大きな利点であり、冷却サイクル時間を従来のガスアシストの50%まで減らすことができる。
【0005】
ポリアミド成形品は、エンジニアリング分野で、特に電子部品のために、及び自動車分野の部品のために、広く使用されている。低重量であるが高い機械的強度を有する成形品への要求があるため、これらの物品は一般的に、充填材、特に繊維充填材によって強化され、任意で中空エリアを有する。
【0006】
このようなポリアミド成形品は、一体型コネクタ、パイプ、継手、吸入口あるいは排出口を有するハウジング又はカバーのような物品のためにも使用される。これらは、特に自動車分野で、例えば、吸気システムを含めた充電システムの部品のために、又は自動車冷却材回路のために、使用できる。エンジン又はターボチャージャの周辺で発生し得る、200℃を超える温度での優れた耐熱性及び/又は130℃以上の温度での高い耐加水分解性を示すことは、このような物品にとって重要である。
【0007】
EP0052944は、カーボンブラックとニグロシンを含む脂肪族ポリアミド成形用樹脂に言及している。カーボンブラックは、紫外線を遮断又は吸収する作用を有し、それゆえ耐候性を改善するために使用できる。しかしながら、耐衝撃性及び伸びは、カーボンブラックを含むことによって悪影響を受ける。ニグロシンをカーボンブラックとともに、ポリアミド成形用樹脂との混合物として使用した際、得られる成形用混合物は、カーボンブラックとポリアミドのみを含む樹脂より、良好な耐衝撃性及び大きな伸びを有する成形品を製造することが見い出された。
【0008】
EP1265962は、好ましくは脂肪族ポリアミド、ガラス繊維から、及び、抗核形成添加剤としてのマイカあるいは他の層状鉱物性強化材からなる熱可塑性成形材料を、ガスアシスト射出成形法によって、自動車の冷却材回路のための成形品を製造するために使用することについて記載し、その際には、標準的GAIM法(メルトインフレーション法)又はメルトエクスパルション法、又はインフレーション(inflation)法とエクスパルション(expulsion)法との組み合わせが使用される。
【0009】
US6,265,081は、ガラス繊維強化-脂肪族樹脂(PA6あるいはPA6/66など)によって製造される一体成形品のウェルドライン強度を、ニグロシンの使用によって改善することを提案する。
【0010】
しかしながら、上述した繊維強化ポリアミド成形材料の今なお解決されていない欠点は、これらの材料から形成された成形品表面が完全に平滑ではないことである。これは主に、ポリアミド成形材料の中に存在する繊維が、表面においてポリアミドで完全に覆われておらず、つまり、繊維が成形材料の中に完全に取り込まれていないという事実に起因する。したがって、例えば機械的ストレス下で、あるいは流体(例えば、燃料組成物など)と接触した状態で成形材料を使用すると、繊維が成形材料の表面から放れ、周囲に広がる可能性がある(例えば、燃料組成物中に洗い落とされる可能性がある)。この現象は、ポリアミド成形材料の残存機械的強度に関して有害なだけではなく、望ましくない(特に、繊維強化成形品が、例えば燃料組成物や冷却液などの流体と接触している場合)。
【0011】
さらに、上述したポリアミド成形材料は、エンジン付近又は熱い冷却媒体と接触した過酷な環境に耐えるために要求される耐熱性及び耐加水分解性を提供できず、且つ、提案された抗核形成剤としての層状鉱物は、アシスト射出成形法を使用すると、著しい空洞形成を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
それゆえ、本発明の課題は、優れた耐熱性、良好な耐加水分解性(特に、冷却媒体と接触した際に)及び優れた機械的特性及び熱的特性を有する、特に高い引張強さと高い荷重たわみ温度を有し、且つ、ガスあるいはリキッド(例えば、水)アシスト射出成形において優れた加工性を有するポリアミド成形材料を提供することであった。これらの材料から製造された成形品は、平滑な表面、特に物品が中空の場合、平滑な内表面を示すはずである。さらに、ガスあるいはリキッドアシスト射出成形法によって製造された物品は、そのような物品の性能を向上させるか、あるいは肉厚の減少を可能とする、著しく減少した空洞形成を示す。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、請求項1に記載のポリアミド成形材料、請求項16に記載の成形品の製造方法、及び請求項17の特徴を有する成形品によって解決される。従属請求項は、好ましい実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、以下の成分からなるポリアミド成形材料を提供する:
(A)30~79.7重量%の、好ましくは30~77.6重量%の、少なくとも1種の部分結晶性ポリアミドであって、少なくとも1種のジアミンと少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸からなり、ここで、前記少なくとも1種のジアミンは、4~20の炭素原子を有し、直鎖脂肪族ジアミン、分岐鎖脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン及び芳香脂肪族ジアミンからなるジアミンの群より選択されるものである、
(B)0~10重量%の、好ましくは2.0~10重量%の、成分(A)とは異なる少なくとも1種のポリアミド、
(C)20~55重量%の、少なくとも1種の繊維強化剤、
(D)0.2~2.0重量%の、好ましくは0.3~2.0重量%の、少なくとも1種のアジン染料、特に少なくとも1種のニグロシン、
(E)0.1~3.0重量%の、少なくとも1種の熱安定剤、
(F)0~10重量%の、成分(A)~(E)とは異なる少なくとも1種の添加剤
ここで、成分(A)~(F)は全体で100重量%となる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記ポリアミド成形材料は、以下の核形成剤(成分(F)に属する):PA22、鉱物、粘土鉱物、タルク、特にケイ酸マグネシウム、カオリン又はカオリナイト、を含まない。
【0016】
粒状充填材(あるいは非繊維状無機充填材)という用語は、シリケート、ウォラストナイト、ゼオライト、セリサイト(sericite)、カオリン、マイカ、粘土鉱物、パイロフィライト(pyrophyllite)、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミノシリケート、酸化アルミニウム、酸化シリコン、金属カルボキシレート、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、及び、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、又は炭化ケイ素を指す。これらの粒状充填材は、成分(F)の一部でもある。
【0017】
さらに好ましい実施形態によれば、本発明に係るポリアミド成形材料は、核形成剤及び粒状充填材を全く含まない。
【0018】
本発明において、「核形成剤」という用語は、結晶化を促進し、より多くの結晶化サイトに起因するポリアミド化合物の球晶サイズを減じる化合物を指す。核形成剤は、「Becker/Braun, Kunststoff-Handbuch 3/4 Polyamide 1998, p.181」及び「Kohan, Nylon Plastics Handbook 1995, p.444-446」に記載され、定義されている。本発明の目的のために、上述のテキストブックの定義が採用され、参照により包含される。
【0019】
さらに好ましい実施形態によれば、前記ポリアミド成形材料は、粒状充填材を含まない。本発明の解釈における、粒状充填材は、非繊維状の固体と表現されてもよく、通常は微粉化形態であり、単一の粒子は、10:1以下の長さ-直径比を有する。粒状充填材は、「S.T. Peters, Handbook of Composites, Sec. Ed. 1998, Chapter 11」に記載され、定義されている。本発明の目的のために、上述のテキストブックの定義が採用され、参照により包含される。
【0020】
アジン染料は、市販されている製品であり、例えば、「H. Bernetz, Azine Dyes, Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry (DOI 10.1002/14356007. a03_213.pub3)」に記載されている。好ましいアジン染料は、例えばニグロシン及びインジュリン(induline)であり、ニグロシンが特に好ましい。本発明の目的のために、アジン染料に関しては、上述のテキストブックが参照される。
【0021】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明に係るポリアミド成形材料が、本発明の組成物を使用することにより高い耐熱性及び/又は耐加水分解性を有する中空部品あるいは部分的中空部品を製造可能にすること、それらは、向上した内表面品質を示し、且つ部品の壁に空洞形成が存在しないか、減少することを証明した。向上した内表面とは、アシスト射出成形法の間に、注入された気体又は液体(例えば、水)の直接接触によって形成される内表面がより滑らかで粗さが減少し、ガラス繊維の剥離が有意に減少するか防止されるように、取り込まれている繊維が、ポリアミドマトリクスによって覆われていることを意味する。
【0022】
表面粗さ(しばしば粗さと省略される)は、表面の質感(テクスチャー)の尺度である。それは、そのあるべき姿と実際の表面の垂直偏差によって定量化される。これらの偏差が大きいと、表面は粗く、それらが小さいと、表面は平滑である。平均粗さを特性化する最も一般的なパラメータは、Ra及びRzの値である。Raは粗さ曲線(ライン)の算術平均であり、テクニカルサーフェスの粗さ又は仕上げを表す。Raを決定するために、規定の測定区域の表面がスキャンされ、粗面の高さと深さのそれぞれの差が記録される。粗さ曲線の定積分を計算した後、その結果を、測定区域の長さで割る。粗さ値Raは、25μm(目立つ溝(傷)を有する非常に粗い表面の場合)から0.1μm(目に見える凸凹のない表面の場合)にわたる。平均粗度深さRzは、5つの基準長さにおいて、最も高い山から最も低い谷の垂直距離(Rzi)を測定し、その後これらの距離を平均することによって計算される。Rzは、5つの最も高い山と5つの最も深い谷のみを平均するため、極端な値は、最終値に非常に大きな影響を与える。粗度の測定は、Mahrsurf XR1 Surface Measuring Stationを使用することによって、DIN EN ISO 4287(2010-07)に準じたサンプルで実施された。
【0023】
好ましい実施形態では、前記成形材料は、
・良好な耐熱性、及び/又は
・LLC(長寿命冷却液)と水の混合物(1:1)に対する良好な耐加水分解性、すなわち、140℃にてグリコール/水の混合物(1:1)で504/1008時間貯蔵後、-40℃での引張強さ及び/又は衝撃強さ(アイゾッド)が、少なくとも80MPa及び/又は少なくとも90J/m;好ましくは、破断点伸びが、この貯蔵後に少なくとも1.5%、及び/又は
・DIN EN ISO 75-1:2013-04及び75-2:2013-04による荷重たわみ温度(HDT(A)、1.80MPa)が、少なくとも250℃、好ましくは少なくとも260℃、より好ましくは少なくとも270℃
を有する。
【0024】
以下の好ましい実施形態において、本発明に係るポリアミド成形材料の必須構成成分を、より詳細に説明する。
【0025】
ポリアミド(A)
好ましい実施形態では、前記成形材料は、部分結晶性ポリアミド(A)を、30.0~73.6重量%、好ましくは32.5~72.5重量%、より好ましくは41.5~68.4重量%、より好ましくは43.0~66.75重量%の量で含む。
【0026】
部分結晶性ポリアミド(A)は、加熱速度20K/分で、DIN EN ISO 11357-3(2013-04)に従って測定した際、好ましくは、少なくとも280℃、好ましくは285~335℃、より好ましくは290~330℃、最も好ましくは295~325℃の融点を有する。
【0027】
好ましい半芳香族半結晶性ポリアミドは、以下のものから調製される;
a)ジカルボン酸の総量に対して、30~100モル%、特に50~100モル%のテレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸、及び0~70モル%、特に0~50モル%の、少なくとも1種の炭素原子数6~12の脂肪族ジカルボン酸、及び/又は0~70モル%、特に0~50モル%の少なくとも1種の炭素原子数8~20の脂環式ジカルボン酸、及び/又は0~50モル%のイソフタル酸、
b)ジアミンの総量に対して、80~100モル%の、少なくとも1種の炭素原子数4~20(好ましくは炭素原子数6~12)の直鎖状又は分岐鎖状脂肪族ジアミン、及び0~20モル%の少なくとも1種の脂環式ジアミンであって、好ましくは6~20の炭素原子を有するもの、例えば、PACM(4,4’-ビス(アミノジシクロ-ヘキシル)メタン)、MACM(3,3’-ジメチル-4,4’-ビス(アミノジシクロヘキシル)メタン)、BAC(1,3-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン)及び/又はIPDA(3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン)、及び/又は0~20モル%の少なくとも1種の芳香脂肪族ジアミン、例えば、MXDA(メタ-キシリレンジアミン)、及びPXDA(パラ-キシリレンジアミン)、及び任意で
c)それぞれ炭素原子数6~12の、アミノカルボン酸及び/又はラクタム
【0028】
好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1種の半芳香族ポリアミド(A)は、少なくとも30モル%、特に少なくとも50モル%のテレフタル酸と少なくとも80モル%の脂肪族ジアミン、好ましくは直鎖状の炭素原子数4~20(好ましくは炭素原子数6~12)の脂肪族ジアミンをベースとして、及び任意で、他の脂肪族、脂環式及び芳香族ジカルボン酸、並びにラクタム及び/又はアミノカルボン酸から形成される。イソフタル酸及びナフタレンジカルボン酸は、他の芳香族ジカルボン酸として、テレフタル酸に加えて使用することができる。使用できるテレフタル酸以外の、適切な脂肪族及び脂環式ジカルボン酸は、6~36の炭素原子を有し、ジカルボン酸の総量に対して、最大で70モル%の量で、特に最大で50モル%使用される。
【0029】
さらに、成分(A)の半芳香族ポリアミドの前記芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、及びその混合物からなる群より選択されることが好ましい。
【0030】
別の好ましい実施形態によれば、テレフタル酸に加えて使用できる、成分(A)の半芳香族ポリアミドの前記脂肪族ジカルボン酸は、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸及び二量体脂肪酸(C36)からなる群より選択される。前記ジカルボン酸の中で、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、あるいはそのようなジカルボン酸の混合物、特にアジピン酸及びイソフタル酸、及び特にアジピン酸単独が好ましい。
【0031】
別の好ましい実施形態によれば、成分(A)の半芳香族ポリアミドの前記脂肪族ジアミンは、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、メチル-1,8-オクタンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、又はそのようなジアミンの混合物からなる群より選択され、ここで、1,6-ヘキサンジアミン、1,10-デカンジアミン、1,12-ドデカンジアミン、そのようなジアミンの混合物が好ましく、1,6-ヘキサンジアミン及び1,10-デカンジアミンが特に好ましい。前記ジアミンに加えて、脂環式及び/又は芳香脂肪族ジアミンを、ジアミンの総量に対して0~20モル%の濃度で使用できる。
【0032】
特に好ましくは、高融点ポリアミドが、以下の成分から形成される:
(Aa)ジカルボン酸:
存在するジカルボン酸の総量に対して、50~100モル%の芳香族テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸、0~50モル%の脂肪族ジカルボン酸(好ましくは炭素原子数6~12のもの)、及び/又は脂環式ジカルボン酸(好ましくは炭素原子数8~20のもの)、及び/又はイソフタル酸;
(Ab)ジアミン:
存在するジアミンの総量に対して、80~100モル%の少なくとも1種の直鎖状あるいは分岐鎖状脂肪族ジアミンであって、炭素原子数4~20のもの、好ましくは炭素原子数6~12のもの、0~20モル%の脂環式ジアミン(好ましくは炭素原子数6~20のもの)、最も好ましくは、PACM、MACM及びIPDA、及び/又は、芳香脂肪族ジアミン(MXDA及びPXDAなど)、
ここで、高融点ポリアミド中のジカルボン酸のモル%は100%であり、ジアミンのモル%は100%となる、及び任意で
(Ac)アミノカルボン酸及び/又はラクタム、好ましくは6~12の炭素原子を有するラクタム及び/又は好ましくは6~12の炭素原子を有するアミノカルボン酸が挙げられる。
【0033】
成分(Aa)及び(Ab)が等モル量で主に使用される一方、(Ac)の濃度は、(Aa)~(Ac)の合計に対して、最大で20重量%、好ましくは最大で15重量%、特に最大で12重量%である。最も好ましい実施形態では、成分(A)はいかなるアミノカルボン酸及び/又はラクタムも含まない。
【0034】
等モル量で主に使用される成分(Aa)及び(Ab)に加えて、ジカルボン酸(Aa)又はジアミン(Ab)は、分子量を調節するために、あるいはポリアミドの製造におけるモノマーの損失を補って、一成分(Aa)又は(Ab)の濃度がその全体として優勢になるように、使用されてもよい。
【0035】
適切な脂環式ジカルボン酸は、シス-及び/又はトランス-シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、及び/又はシス-及び/又はトランス-シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸(CHDA)である。
【0036】
上記の義務的に使用される脂肪族ジアミンを、他のジアミンによって、ジアミン総量に対して20モル%を超えない少量で、好ましくは15モル%以下、特に10モル%以下で置き換えることができる。例えば、脂環式ジアミンとして、シクロヘキサンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(BAC)、イソホロンジアミン(IPDA)、ノルボルナンジメチルアミン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM)、2,2'-(4,4'-ジアミノジシクロヘキシル)プロパン(PACP)及び3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン(MACM)が使用できる。芳香脂肪族ジアミンとして、m-キシリレンジアミン(MXDA)及びp-キシリレンジアミン(PXDA)が挙げられる。最も好ましい実施形態では、成分(A)はいかなる脂環式ジアミン又はいかなる芳香脂肪族ジアミンも含まない。
【0037】
上記のジカルボン酸及びジアミンに加えて、ラクタム及び/又はアミノカルボン酸も、ポリアミド形成成分(成分(Ac))として使用できる。適切な化合物は、例えば、カプロラクタム(CL)、α,ω-アミノカプロン酸、α,ω-アミノノナン酸、α,ω-アミノウンデカン酸(AUA)、ラウリルラクタム(LL)及びα,ω-アミノドデカン酸(ADA)である。成分(Aa)及び(Ab)とともに使用される前記アミノカルボン酸及び/又はラクタムの濃度は、成分(Aa)~(Ac)の合計に対して、最大で20重量%、好ましくは最大で15重量%、特に好ましくは最大で12重量%である。特に好ましいのは、炭素原子数4,6,7,8,11又は12のラクタムあるいはα,ω-アミノ酸である。これらは、ラクタムが、ピロリジン-2-オン(炭素原子数4)、ε-カプロラクタム(炭素原子数6)、エナントラクタム(炭素原子数7)、カプリルラクタム(炭素原子数8)、ラウリルラクタム(炭素原子数12)であり、 α,ω-アミノ酸が、1,4-アミノブタン酸、1,6-アミノヘキサン酸、1,7-アミノヘプタン酸、1,8-アミノオクタン酸、1,11-アミノウンデカン酸、及び1,12-アミノドデカン酸である。
【0038】
特に好ましい実施形態では、成分Aはラクタム又はアミノカルボン酸を含まず、さらに、脂環式ジアミン又は芳香脂肪族ジアミンを含まない。
【0039】
分子量、相対粘度あるいは流動性あるいはMVR(メルトボリュームフローレート)を制御するための調節剤を、モノカルボン酸又はモノアミンの形態で、バッチ及び/又は予備縮合物(後縮合の前)に添加してもよい。調節剤として適切な脂肪族、脂環式又は芳香族モノカルボン酸あるいはモノアミンは、中でも、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、2-エチルヘキサン酸、シクロヘキサン酸、安息香酸、3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン酸、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸、3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパン酸、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルチオ)酢酸、3,3-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン酸、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-オクチルアミン、n-ドデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、3-(シクロヘキシルアミノ)プロピルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、2-フェニルエチルアミン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-アミン、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-アミン、4-アミノ-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールである。特に好ましいものは、酢酸、安息香酸及びステアリン酸である。単官能性調節剤の濃度は、調節剤がモノカルボン酸である場合は、全てのジアミンの総量に対して、0.5~5モル%、好ましくは1.0~2.5モル%であり、調節剤がモノアミンである場合は、全てのジカルボン酸の総量に対して、0.5~5モル%、好ましくは1.0~2.5モル%である。
【0040】
前記調節剤は、個々に使用されても組み合わせで使用されてもよい。アミノ基又は酸基、例えば無水物、イソシアネート、酸ハロゲン化物又は酸エステルと反応できる他の単官能性化合物を、調節剤として使用してもよい。調節剤の通常の量は、ポリマー1kgあたり、10~200mmolの間である。
【0041】
半芳香族コポリアミド(A)は、実質的に知られた方法で調製することができる。適切な方法は、他所に記載されており、及び、下記の特許文献で説明されている可能な方法のいずれかである。以下の文献の開示内容は、成分(A)のコポリアミドを調製するための方法に関して、本願の開示内容に明示的に包含される:DE-A-19513940、EP-A-0976774、EP-A-0129195、EP-A-0129196、EP-A-0299444、US4,831,106、US4,607,073、DE-A-1495393、及びUS3,454,536。
【0042】
本発明によるポリアミド(A)の具体的な代表例は、以下の通りである:PA 4T/4I、PA 4T/6I、PA 5T/5I、PA 6T/6、PA 6T/6I、PA 6T/6I/6、PA 6T/6I/66、PA 6T/6I/610、PA 6T/6I/612、PA 6T/66、6T/610、6T/612、PA 6T/10T、PA 6T/10I、PA 9T、PA 9MT(M=メチルオクタンジアミン)、PA 10T、PA 12T、PA 10T/10I、PA 10T/106、PA 10T/12、PA 10T/11、PA 6T/9T、PA 6T/12T、PA 6T/10T/6I、PA 6T/6I/6、PA 6T/6I/12、及びそれらの混合物;
特に好ましくは、成分(A)の半芳香族ポリアミドは、以下の群から選択される:PA 6T/6I、PA 6T/6I/66、PA 6T/6I/610、PA 6T/6I/612、又はPA 6T/6I/X(ここで、Xは66、610又は612、又はそれらの組み合わせ及びそれらの混合物からなる群より選択される脂肪族単位であってもよい)。ポリアミドPA 6T/6I/Xに関して、脂肪族ポリアミド単位Xの含有率が、5~20モル%の範囲、及びポリアミド6I単位の含有率が20~35モル%の範囲にあるものが、特に好ましい。
【0043】
それゆえ、本発明によれば、高融点ポリアミド(A)として、以下の半芳香族コポリアミドが特に好ましい:
・50~80モル%、好ましくは57~73モル%、より好ましくは62~72モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、及び20~50モル%、好ましくは27~43モル%、より好ましくは28~38モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有する、半結晶性ポリアミド 6T/6I;
・50~65モル%、好ましくは52~62モル%、より好ましくは53~58モル%、特に好ましくは54~57モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位、及び35~50モル%、好ましくは38~48モル%、より好ましくは42~47モル%、特に好ましくは43~46モル%のヘキサメチレンアジパミド単位を有する、半結晶性ポリアミド 6T/66;
・60~75重量%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位(6T)、20~35重量%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位(6I)、3~15重量%のヘキサメチレンドデカンアミド単位(612)、及び0~5重量%の単位X(Xは以下の単位:66,68,69,610,6,又はこれらの単位の混合物から選択される)を有する、半結晶性ポリアミド 6T/6I/612/X、ここで、前記成分の合計は、ポリアミド6T/6I/612/Xの100重量%となる;
・60~75重量%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位(6T)、20~35重量%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位(6I)、5~20重量%の単位X(Xは、以下の単位:66,68,69,610,612,6,又はこれらの単位の混合物から選択される)を有する、半結晶性ポリアミド 6T/6I/X、ここで、前記成分の合計は、ポリアミド6T/6I/Xの100重量%となる;
・少なくとも50モル%、好ましくは少なくとも70モル%のテレフタル酸、及び、最大で50モル%、好ましくは最大で30モル%のイソフタル酸及び以下の群から選択される少なくとも2種のジアミンの混合物から調製される半結晶性ポリアミド:ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルオクタンジアミン、及びデカンジアミン;
特に、少なくとも70モル%のテレフタル酸と最大で30モル%のイソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとデカンジアミンとの混合物から調製される半結晶性ポリアミドが好ましい;
・少なくとも50モル%のテレフタル酸、及び、最大で50モル%のドデカン二酸、及び以下の群から選択される少なくとも2種のジアミンの混合物から調製される半結晶性ポリアミド:ヘキサメチレンジアミン、ノナンジアミン、メチルオクタンジアミン及びデカンジアミン;
・10~60モル%、好ましくは10~40モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド(6T)、及び、40~90モル%、好ましくは60~90モル%のデカメチレンテレフタルアミド(10T)単位を有する半結晶性ポリアミド 6T/10T;
・50~90モル%、好ましくは50~70モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位(6T)、及び5~45モル%、好ましくは10~30モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位(6I)、及び5~45モル%、好ましくは20~40モル%のデカメチレンテレフタルアミド(10T)単位を有する半結晶性ポリアミド 6T/10T/6I;
・60~85モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位(6T)、及び15~40モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位(6I)を有し、さらに5~15重量%のカプロラクタムを含む半結晶性ポリアミド 6T/6I/6。
【0044】
半芳香族・半結晶性ポリアミド(A)は、最大で2.60、好ましくは最大で2.3、特に最大で2.0の溶液粘度ηrelを有する(温度20℃にて、100mLのm-クレゾール中に0.5gのポリマーを含む溶液で、DIN EN ISO 307:2013-08に従って測定)。1.4~2.3の範囲の、さらに好ましくは1.45~2.00の範囲の、さらに好ましくは1.50~1.90の範囲の、特に1.55~1.85の溶液粘度ηrelを有するポリアミド(A)が好ましい。
【0045】
本発明によるポリアミド(A)は、予備縮合及び後縮合の工程順序により、従来の重縮合装置で調製することができる。上記の鎖長調節剤は、好ましくは重縮合のために使用され、粘度を調節する。さらに、粘度は、過剰のジアミン又は二酸の使用を通じて定められてもよい。
【0046】
特に、部分結晶性ポリアミド 6T/6I(70:30)は、唯一のジアミンとしてのヘキサメチレンジアミンと、テレフタル酸及びイソフタル酸(モル比70:30)から作られる。この部分結晶性ポリアミドの融点は325℃である。
【0047】
部分結晶性ポリアミド 10T/6Tは、デカンジアミン、ヘキサメチレンジアミン及びテレフタル酸から作られ、ここで、デカンジアミンとヘキサメチレンジアミンのモル比は、95~40:5~60、特に90~75:10~25の範囲である。
【0048】
部分結晶性ポリアミド 10T/6T/10I/6Iは、デカンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸及びイソフタル酸から作られ、ここで、デカンジアミンの量は7.5~20モル%であり、ヘキサメチレンジアミンの量は30~42.5モル%であり、テレフタル酸の量は36~49.15モル%であり、イソフタル酸の量は0.85~14モル%である(4種のモノマーの量は合計で100モル%となり、ジアミンの量は合計50モル%となり、ジカルボン酸の量は合計で50モル%となる)。
【0049】
部分結晶性ポリアミド 6T/6I/612は、60~75重量%の6T単位(1,6-ヘキサンジアミンとテレフタル酸から構成される)、20~35重量%の6I単位(1,6-ヘキサンジアミンとイソフタル酸から構成される)、及び3~15重量%の612単位(1,6-ヘキサンジアミンとドデカン二酸から構成される)から、作られる。
【0050】
「ポリアミド」という用語は、ホモポリアミドとコポリアミドの両方を含む包括的な用語であることに注意を払うべきである。略されたポリアミドの命名法は、ISO 16396-1(2015-04)に従う。ジアミン 2-メチル-1,5-ペンタンジアミンは、MPMDと略される。ジアミン 2-メチル-1,8-オクタンジアミンは、MODと略される。
【0051】
成分(B)-第二のポリアミド
本発明の成形材料は、成分(B)として、0~10重量%、好ましくは1.0~10重量%、より好ましくは2.0~10重量%、より好ましくは2.0~7.0重量%、より好ましくは2.0~6.0重量%、特に2.5~6.0重量%の、成分(A)とは異なるポリアミドを含む。
【0052】
ポリアミド(B)は、好ましくは、脂肪族又は芳香脂肪族ジアミンと脂肪族ジカルボン酸をベースとする部分結晶性ポリアミド(B1)、及び、脂環式又は芳香族ジカルボン酸を、あるいは脂環式又は芳香族ジアミンをベースとする非晶質ポリアミド(B2)からなる群より選択される。
【0053】
ポリアミド(B1)は、好ましくは、以下からなる群より選択される:PA 46、PA 56、PA 6、PA 66、PA 6/66、PA 69、PA 610、PA 612、PA 614、PA 1010、PA 1012、PA 1014、PA 1212、PA 11、PA 12、PA 6/12、PA MXD6、PA MXD10、及びそれらのコポリマー及び混合物。特に、ポリアミド(B1)は、PA 6、PA 66又はPA 6/12、及びそれらのコポリマー及び混合物である。成分(B1)のポリアミドは、溶融エンタルピーが少なくとも20J/g、好ましくは20~70J/gの範囲にあることを特徴とする(DIN EN ISO 11357-3(2013)に従って、20K/分の加熱速度で測定)。
【0054】
ポリアミド(B2)は、好ましくは、以下からなる群より選択される:PA 5I、PA 6I、PA DI(D=2-メチル-1,5-ペンタンジアミン)、PA 5I/5T、PA DI/DT、PA 6T/6I、PA 5I/5T/6I/6T、PA 5I/5T/DI/DT、PA 6I/6T/DI/DT、PA 6I/10I、PA 10I/10T、PA MXDI、MXD6/MXDI、PA MACM10、PA MACM12、PA MACM14、及びそれらのコポリマー及び混合物。特に、PA 5I/5T、PA DI/DT又はPA 6T/6Iが、ポリアミド(B2)として好ましく使用される。ポリアミド(B)が、イソフタル酸及びテレフタル酸に由来する場合、イソフタル酸:テレフタル酸のモル比は、51~100:49~0(モル%)であることが好ましく、最も好ましくは60~80:40~20(モル%)であり、ここで比I/(I+T)=100モル%とは、検討されるポリアミド(B2)においてイソフタル酸が独占的に使用されていることを意味する。ポリアミド(B2)は、溶融エンタルピーが8J/gより小さいこと、好ましくは5J/gより小さいことを特徴とする(DIN EN ISO 11357-3(2013)に従って、20K/分の加熱速度で測定)。
【0055】
ポリアミド(B)は、好ましくは、最大で2.7の、好ましくは最大で2.3の、特に最大で2.0の溶液粘度ηrelを有する(温度20℃にて、100mLのm-クレゾール中に0.5gのポリマーを含む溶液で、DIN EN ISO 307:2013-08に従って測定)。1.5~2.3の範囲の、特に1.6~2.0の範囲の溶液粘度ηrelを有するポリアミド(B)が好ましい。
【0056】
成分(C)-繊維
繊維強化剤(成分C)は、好ましくは、20~50重量%の量で、より好ましくは30~45重量%の量で含まれる。
【0057】
提案されるポリアミド成形材料の別の好ましい実施形態によれば、成分(C)の強化剤は、繊維であり、特にガラス繊維及び/又は炭素繊維、好ましくは2~50mmの範囲の長さを有する短繊維及び/又はエンドレスファイバー(ロービング)であって、それぞれ5~40ミクロンの直径を有するものが好ましく使用され、特に、円形及び/又は非円形の横断面を有する繊維が使用され、後者の場合、横断面のアスペクト比(二次軸に対する横断面の長軸)は特に>2である。
【0058】
非円形の横断面と、2より大きい、好ましくは3~8の、特に3~5の横断面のアスペクト比とを有するガラス繊維が好ましく使用される。これらは、いわゆる扁平ガラス繊維であり、卵形、楕円形、くびれを有する楕円形(いわゆる「繭(あるいはピーナッツ)」繊維)、長方形、あるいはほぼ長方形の断面を有する。
【0059】
非円形の断面を有する、本発明による扁平ガラス繊維は、好ましく、短ガラス繊維(チョップドストランド;カットガラス、0.1~50mm、好ましくは0.2~20mm、より好ましくは2~12mmの長さを有する)として使用される。
【0060】
使用される扁平ガラス繊維の別の好ましい特性は、主(長)横断面軸の長さが、好ましくは6~40ミクロンの範囲に、特に15~30ミクロンの範囲にあり、二次横断面軸の長さが、3~20ミクロンの範囲に、特に4~10ミクロンの範囲にあることである。円形と非円形の横断面を有するガラス繊維の混合物も、本発明の成形材料を強化するために使用することができ、この際、好ましくは上述の扁平ガラス繊維の量が優勢、すなわち繊維総重量の50重量%よりも多くなる。
【0061】
特に好ましいのは、横断面のアスペクト比が3~5であるいわゆる扁平ガラス繊維である。特に、本発明ではEガラス繊維が使用される。しかしながら、A,C,D,M,S及びRガラス繊維などの他の全ての種類のガラス繊維、又はそれらの任意の混合物、又はそれらとEガラス繊維との混合物を使用してもよい。
【0062】
円形横断面を有するエンドレスファイバー(ロービング)で強化された成形材料の場合、より高い靱性が生じ、もし15~19ミクロンの直径を有する従来のエンドレスガラス繊維の代わりに、10~14ミクロンの直径を有するもの、特に10~12ミクロンの直径を有するものを使用すると、よりいっそう金属様の特性が生じる。
【0063】
本発明によるポリアミド成形材料は、長繊維強化棒状ペレットを調製するために既知の方法によって、特に引抜成形法によって製造することができ、この際、エンドレス繊維ストランド(ロービング)は、ポリマー溶融物で完全に浸され、その後冷却され、細かく切断される。
【0064】
このようにして得られた長繊維強化棒状ペレットは、好ましくは、3~25mm、特に4~12mmの長さを有するペレットであり、射出成形やプレス成形などの従来の加工方法を使用して成形品内にさらに加工されることができる。
【0065】
引抜成形法で使用されるエンドレス炭素繊維は、5~10ミクロン、好ましくは6~8ミクロンの直径を有する。マトリクス結合及び繊維のハンドリングを改善するために、繊維は化学的に異なる層で被覆されてもよい(ガラス繊維及び炭素繊維のために従来技術で既知であるのと同様に)。
【0066】
ガラス繊維自体は、繊維の断面積の形状及び長さに関係無く、Eガラス繊維、Aガラス繊維、Cガラス繊維、Dガラス繊維、Mガラス繊維、Sガラス繊維、及び/又はRガラス繊維からなる群より選択されてもよい。Eガラス繊維が好ましい。
【0067】
成分(D)-アジン染料
本発明の成形材料は、成分(D)として、0.2~2.0重量%、好ましくは0.3~2.0重量%、好ましくは0.3~1.5重量%、好ましくは0.3~1.0重量%、特に0.35~1.0重量%のアジン染料、特にニグロシンを含む。
【0068】
ニグロシンは、通常、インジュリンに関連し、様々な形態(水溶性、オレオソルブル[oleo-soluble]、スピリットソルブル[spirit-soluble])を取る、一群の青、黒又は灰色のフェナジン染料(アジン染料)であり、ウール染色及びウールプリンティングにおいて、絹の黒色染色において、及び皮革の、靴墨の、ワニスの、プラスチックの、焼付ラッカーの、インクの、及びその他同様のものの着色において、及び、顕微鏡用染料として使用される。
【0069】
ニグロシン染料の合成は、例えば、アニリン、アニリン塩酸塩及びニトロベンゼンを、金属鉄又は銅、及び塩化鉄(FeCl3)等の金属塩の存在下で、160~180℃の反応温度で加熱することによって、酸化し、脱水縮合することによって達成できる(その名前は、ラテン語のniger=黒に由来している)。ニグロシンは、反応条件、添加した原料、添加比率などに依存して、様々な異なる化合物の混合物として製造され、例えば、ニグロシンは、様々なトリフェナジンオキサジン及びフェナジンアジン化合物の混合物であると仮定される。
【0070】
成分(D)は、遊離塩基の形態で、あるいは塩(例えば、塩酸塩)の形態で使用することができる。
【0071】
本発明のニグロシン(成分(D))として、カラーインデックスにおいて、C.I.アシッドブラック2、C.I.ソルベントブラック5、C.I.ソルベントブラック5:1、C.I.ソルベントブラック5:2、及びC.I.ソルベントブラック7と表記される黒色アジン系混合物が、適切に使用できる(この明細書において、カラーインデックス名(C.I.一般名称)は、カラーインデックスの第3版に従って記載される)。
【0072】
市販のニグロシン染料の例として、スピリットブラック(Spirit Black)SB、スピリットブラックSSBB、スピリットブラックAB(全て、C.I.ソルベントブラック5に分類される);ニグロシンベースSA、ニグロシンベースSAP、ニグロシンベースSAP-L、ニグロシンベースEE、ニグロシンベースEE-L、ニグロシンベースEX、ニグロシンベースEX-BP(全て、C.I.ソルベントブラック7に分類される)及び同様のものが挙げられる(全て、Orient Chemical Industries, Ltd.によって製造されている)。
【0073】
好ましくは、C.I.ソルベントブラック7(CAS No 8005-02-5)が使用される。
【0074】
成分(D)としてのニグロシンの、ISO 13320:2009による体積平均粒径Dv50(又はX50)は、好ましくは5~20ミクロンの範囲であり、さらに好ましくは5~15ミクロンの範囲である。上記ニグロシンを本発明で使用する際、アシスト射出成形法が容易に行われ、内表面の粗さの少ない中空部品が製造される。
【0075】
特に、ニグロシンは、マスターバッチあるいは濃縮物(好ましくは、ポリアミド(B)を、より好ましくはポリアミド(B1)をベースとするもの)として、本発明の成形材料中に導入することができ、その際、ニグロシンの含有率は好ましくは20~40重量%の範囲である。これらのマスターバッチのベースとしては、脂肪族ポリアミドPA6、PA66、PA6/12又はそれらの混合物が好ましい。
【0076】
ニグロシン中の鉄の濃度は、例えば1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、さらに好ましくは0.4重量%未満である。これは、樹脂のための着色剤としての、ニグロシンの分散性又は相溶性を改善し、それゆえ、その樹脂から作られたアシスト射出成形品の品質を向上させる。
【0077】
ニグロシン中のアニリンの濃度は、例えば1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、さらに好ましくは0.4重量%以下である。
【0078】
成分(E)-熱安定剤
本発明による熱可塑性成形材料は、成分(E)として、0.1~3.0重量%、好ましくは0.2~2.0重量%、特に好ましくは0.2~1.5重量%、特に好ましくは0.3~1.0重量%の、少なくとも1種の熱安定剤又は温度安定剤を含み、これは好ましくは、一価又は二価の銅化合物、芳香族第二級アミン系安定剤、立体障害フェノール系安定剤、ホスファイト(ホスフィットとも称される:phosphite)、ホスホナイト(ホスホニットとも称される:phosphonite)、金属塩又は金属酸化物(特に金属が銅のもの)、及び上記安定剤の混合物からなる群より選択される。
【0079】
好ましい実施形態において、前記熱安定剤(成分(E))は、以下からなる群より選択される:
・一価及び二価の銅化合物、例えば、一価もしくは二価の銅と無機酸もしくは有機酸あるいは一価もしくは二価のフェノールとの塩、一価もしくは二価の銅酸化物、又はアンモニア、アミン、アミド、ラクタム、シアン化物もしくはホスフィンと銅塩からなる錯化合物、好ましくは、ハロゲン化水素酸(halohydric acid)の、あるいはシアン化水素酸(cyanohydric acid)のCu(I)もしくはCu(II)の塩、又は脂肪族カルボン酸の銅塩。一価の銅化合物である、CuCl,CuBr,CuI,CuCN及びCu2O、及び二価の銅化合物CuCl2,CuSO4,CuO,酢酸銅(II)又はステアリン酸銅(II)が特に好ましい。前記銅化合物は、それ自体として、あるいは濃縮物の形態で使用できる。濃縮物は、銅塩を高濃度で含む、ポリマー(好ましくは成分(A)又は(B)と同じ化学的性質のもの)を意味するとして理解される。銅化合物は、他の金属ハロゲン化物、特にNaI、KI、NaBr、KBrのようなハロゲン化アルカリとの組み合わせで有利に使用され、ハロゲン化銅に対する金属ハロゲン化物のモル比は、0.5~20、好ましくは1~10、特に好ましくは3~7である;
・芳香族第二級アミン系安定剤;
・立体障害フェノール系安定剤;及び、
・金属塩又は金属酸化物、特に、遷移金属に由来するもの、好ましくは、鉄塩又は鉄酸化物、及び
・ホスファイト及びホスホナイト;及び、
・前述の安定剤の混合物
【0080】
本発明において使用できる芳香族第二級アミン系安定剤の特に好ましい例は、フェニレンジアミンのアセトン付加物(Naugard A)、フェニレンジアミンのリノレン付加物、Naugard 445、N,N'-ジナフチル-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-N'-シクロヘキシル-p-フェニレンジアミンあるいはそれらの二つ以上の混合物である。
【0081】
本発明において使用できる立体障害フェノール系安定剤の好ましい例は、N,N'-ヘキサメチレンビス-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド、ビス(3,3-ビス(4'-ヒドロキシ-3'-tert-ブチルフェニル)ブタン酸)グリコールエステル、2,1'-チオエチルビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、あるいはこれらの安定剤の二つ以上の混合物である。
【0082】
好ましいホスファイトとホスホナイトは、トリフェニル ホスファイト、ジフェニルアルキル ホスファイト、フェニルジアルキル ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリル ホスファイト、トリオクタデシル ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトール ジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト、ビス(2,4,6-トリス(tert-ブチルフェニル))ペンタエリスリトール ジホスファイト、トリステアリル ソルビトール トリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4'-ビフェニレン ジホスホナイト、6-イソオクチルオキシ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12H-ジベンズ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、6-フルオロ-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-12-メチルジベンズ[d,g]-1,3,2-ジオキサホスホシン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)メチル ホスファイト、及び、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチル ホスファイトである。特に好ましくは、トリス[2-tert-ブチル-4-チオ-(2'-メチル-4'-ヒドロキシ-5'-tert-ブチル)フェニル-5-メチル]フェニル ホスファイト及びトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(バーゼル、Clariant社の市販品、Hostanox(登録商標)PAR 24)である。
【0083】
熱安定剤の特に好ましい実施形態は、有機熱安定剤(特に、Hostanox PAR 24及びIrganox1010)、ビスフェノールA-系エポキシド(特に、Epikote1001)、及びCuI(ヨウ化銅)とKI(ヨウ化カリウム)をベースとする銅安定剤の組み合わせである。CuIとKIを独占的にベースとする熱安定剤が、特に好ましい。
【0084】
有機熱安定剤及び/又は銅あるいは銅化合物の添加の他に、他の遷移金属化合物の使用、特に、周期表のVB、VIIB、VIIBもしくはVIIIB族の金属塩あるいは金属酸化物の使用は排除されることが好ましい。さらに、周期表のVB、VIIB、VIIBもしくはVIIIB族の遷移金属(鉄又はスチール粉末など)は、本発明の成形材料に添加されないことが好ましい。
【0085】
成分(F)-(添加剤、成分A~Eとは異なるもの)
前記成形材料は、0~10重量%の少なくとも1種の添加剤(成分A~Eのいずれとも異なるもの)を含むことがさらに好ましく、これは、UV-及び光-安定剤、潤滑剤、着色-及びマーキング物質、無機顔料、有機顔料、IR吸収剤、帯電防止剤、抗ブロッキング剤、結晶成長抑制剤、縮合触媒、鎖延長剤、消泡剤、鎖長延長添加剤、伝導添加剤、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、離型剤、分離剤、難燃剤、非ハロゲン系難燃剤、防滴剤、衝撃改質剤、蛍光増白剤、フォトクロミック添加剤、メタリック顔料、核形成剤、例えばPA22、鉱物、粘土鉱物、タルク、特にケイ酸マグネシウム、カオリン又はカオリナイト及び粒状充填材、例えば、シリケート、ウォラストナイト、ゼオライト、セリサイト、カオリン、マイカ、粘土鉱物、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、タルク、アルミノシリケート、酸化アルミニウム、酸化シリコン、金属カルボキシレート、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、及び、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、及び水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、又は炭化ケイ素からなる群より選択される。
【0086】
前記少なくとも1種の添加剤は、好ましくは、0~7.0重量%、より好ましくは0.1~4.0重量%の量で含まれる。
【0087】
特に好ましいものは、カーボンブラックを含まないポリアミド成形材料である。
【0088】
さらに好ましいのは、以下の成分からなるポリアミド成形材料である:
(A)36.5~72.5重量%の部分結晶性ポリアミドPA 6T/6Iであって、62~72モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位と、28~38モル%のヘキサメチレンイソフタルアミド単位を有するもの、
(B)2.0~7.0重量%の、成分(A)とは異なる少なくとも1種のポリアミド、
(C)25.0~50.0重量%の、少なくとも1種の繊維強化剤、
(D)0.3~1.0重量%の、少なくとも1種のアジン染料、特に少なくとも1種のニグロシン、
(E)0.2~1.5重量%の、少なくとも1種の熱安定剤、好ましくは、一価もしくは二価の銅化合物とハロゲン化アルカリとの組み合わせをベースとするもの
(F)0~4.0重量%の、成分(A)~(E)とは異なる少なくとも1種の添加剤
ここで、成分(A)~(F)は全体で100重量%となる。
【0089】
さらに、本発明は、成形品を製造する方法、及び上記成形材料から製造できる成形品を提供する。このような成形品は、押出、押出ブロー成形又は射出成形によって、好ましくはアシスト射出成形法、特にガス又はリキッドアシスト射出成形法によって製造され、好ましくは部分的に中空であるか、中空である。本発明はまた、本発明のポリアミド成形材料から製造できる又は製造される成形品に関する。好ましくは、これらの成形品は、上述した本発明に係る方法によって製造される。
【0090】
特に、本発明の成形品として、管あるいは管セクション、コネクタ、継手、吸入口又は排出口、ハウジングあるいはカバー(一体型コネクタ、パイプ、継手、吸入口又は排出口を有するもの)、又はペレットが挙げられる。これらは、特に自動車分野において、例えば、吸気システム、充電システムのパーツのために、あるいは自動車用の冷却材回路のために使用することができる。
【0091】
特に好ましい実施形態によれば、成形品の表面は非常に平滑(スムース)である。すなわち、前記表面の少なくとも一部は、DIN EN ISO 4287(2010-07)に従って粗さを測定した際、Ra値が、4.2μm未満、好ましくは4μm未満、特に好ましくは4.0μm未満であり、及び/又はRz値が、25μm未満、好ましくは20μm未満、特に好ましくは18μm未満である。前記成形品の前記表面の一部は、特に、中空物品の内表面、例えば、アシスト射出成形法によって製造された物品の内表面を含む。
【0092】
意外にも、本発明に係る物品が以下の特性を有することが実証できた。
・200℃を超える温度における良好な耐熱性
・130℃以上の温度における高い耐加水分解性(グリコール/水の混合物(1:1)中で、140℃にて504時間/1008時間貯蔵した後、ISO 527により測定した引張強さ及び/又はISO 180/Aにより測定した-40℃での衝撃強さ(アイゾッド)が、少なくとも80MPa及び/又は少なくとも90J/m;好ましくは、ISO527により測定した破断点伸びが、この貯蔵後において、少なくとも1.5%)
・優れた表面特性(すなわち、非常に平滑な表面を有する;粗さRaは4μm未満、及びRzは20μm未満)
・空隙が少ない(壁面に空隙がないか、ごくわずかの非常に小さい空隙がある)
・改善されたウェルドライン強度、及び
・金属への、特にアルミニウムへの良好な接着
【0093】
さらに、本発明の成形材料は、非常に良好な加工性及び高い流動性を示し(特にアシスト射出成型方法に関して)、より薄い壁(低減された厚み)及び/又はより高いアスペクト比(より長いパーツ)を有する成形品の製造を可能にする。改善された内表面品質に起因して、本発明に係る中空成形品は、その使用の間、そのような物品内を流れる媒体(液体)に対する摩擦が小さく、内表面からのガラス繊維の剥離が生じないか低減される。
【0094】
前記ポリアミド成形材料を製造するために、成分(A)~(F)を、典型的なコンパウンド機、例えば、一軸-あるいは二軸スクリュー押出機、あるいはスクリュー混練機で配合した。乾燥成分(A)、(B)、(D)、(E)及び(F)は、好ましくは重量計測秤を経て供給口に計量投入される。成分(C)は、重量計測秤を経て、供給口内に、あるいはサイドフィーダーを経て溶融した成分(A)中へ計量投入されてもよい。成分(C)及び必要に応じて(D)は、供給口内に別々に、あるいはサイドフィーダーを経て溶融した成分(A)中に計量投入されてもよい。成分(A)、(B)、(D)及び(F)は、ドライブレンドの形態で、供給口内に計量投入されてもよい。(D)は、好ましくはポリアミド(B)をベースとする、より好ましくはポリアミド(B1)をベースとする濃縮物(マスターバッチ)の形態で使用されてもよい。
【0095】
配合は、第一シリンダーについては好ましくは70~100℃の、成分(A)の性質に応じて残りのシリンダーについては300~370℃の設定シリンダー温度で行われる。真空が適用されてもよく、脱気がノズル前の大気に対して行われてもよい。溶融物は、ストランド形状で押し出され、10~90℃の水浴で冷却され、その後ペレット化される。ペレットは、窒素下あるいは真空中で80~120℃にて12~24時間、含水率が0.1重量%未満になるまで乾燥される。
【0096】
[実施例]
本発明は、以下の実施例によってより詳細に説明される。
【0097】
以下の測定仕様を、ポリアミドの分析及びポリアミド成形材料の試験のために使用した。他に記載が無い限り、試験片は、成形したままの状態で乾燥して分析した。
【0098】
相対粘度(RVあるいはη
rel
、両方の用語は互換的に使用される):
ISO 307:2013-08
ペレット
100mLのm-クレゾール中に0.5g
温度 20℃
相対粘度の計算は、RV=t/t0 による
【0099】
融点、溶融エンタルピー(融解熱):
ISO 11357-3:2013-04
ペレット
示差走査熱量測定(DSC)は、20K/分の加熱速度で行われた。融点に関して、温度はピーク最大値で特定された。
【0100】
HDT(熱たわみ温度):
ISO 75-1:2013-04、ISO 75-2:2013-04
ISO試験棒、規格:ISO/CD 3167、タイプB1、80×10×4mm(フラットワイズ)
HDT A 負荷 1.80MPa
【0101】
引張係数、引張強さ、破断点伸び:
ISO 527
ISO引張棒、規格:ISO/CD 3167、タイプA1、170×20/10×4mm
試験速度 引張係数については1mm/分、引張強さ及び破断点伸びについては5mm/分
温度 23℃
【0102】
シャルピー衝撃強さ:
ISO 179/eU
ISO試験棒、規格:ISO/CD 3167、タイプB1、80×10×4mm、温度23℃
【0103】
ノッチ付きシャルピー衝撃強さ:
ISO 179/eA
ISO試験棒、規格:ISO/CD 3167、タイプB1、80×10×4mm、温度23℃
【0104】
アイゾッド衝撃強さ
ISO 180(方法180/A)
ISO試験棒、規格:ISO/CD 3167、タイプB1、80×10×4mm、温度-40℃
【0105】
耐加水分解性
試験前に、試験片を、少なくとも8時間、(+23±5)℃の温度で貯蔵し、この期間の間にひずみは無くなる。未老化の試験片に対する試験を、成形されたままの試験片に対して乾燥状態で行った(破壊応力 ISO 527-1、破壊ひずみ ISO 527-1、及びシャルピー衝撃強さ(+23℃で) ISO 179-1/ 1eU)
【0106】
他の試験片は、140℃(試験温度)のオートクレーブ内で504時間/1008時間(試験時間)、グリコール(LLC)と水との混合物(1:1)中で保存した。グリコールとして、VW TL 774JによるVW冷却液G13を使用した。試験時間の後、試験片を、試験媒体中で(+23±5)℃まで冷却した。その後、試験片を試験媒体から取り除き、水ですすぎ、綿布で拭いて乾かした。クリーニング後、試験片をデシケーター中で保管した。オートクレーブ中での保管後7日(最大で)以内に、特性、すなわち、破壊応力(ISO 527-1)、破壊ひずみ(ISO 527-1)、及びシャルピー衝撃強さ(+23℃ ISO 179-1/ 1eU)を測定した。
【0107】
表面粗さ
粗さ測定は、DIN EN ISO 4287(2010-07)に従ったアシスト射出成形法によって、Mahrsurf XR1 Surface Measuring Stationを使用して製造したサンプルに対して行った。射出方向に沿って内表面の粗度特性を測定する前に、中空試験サンプル(チューブ)を、チューブの長手方向に半分にカットした。平均粗面深度Rzは、5つの基準長さ内において、最も高い山と最も低い谷との垂直距離(Rzi)を測定し、次にこれらの距離を平均することによって計算した。
【0108】
成形材料の製造
表2及び3の組成を有する成形材料を、東芝機械株式会社の二軸スクリュー押出機 Modell TEM-37BSを用いて製造した。成分A,B及びD~Fを供給ゾーンに計量投入した。ガラス繊維(C)を、ダイの上流にあるサイドフィーダー3バレルユニットによって、ポリマー溶融物中に計量投入した。バレル温度は、実施例1~8及び比較例CE4~CE8のために340℃までの上昇プロファイルとして、及び、比較試験CE1~CE3のために300℃までの上昇プロファイとして設定した。回転速度120~200rpmで、10kg/hのスループットが達成された。脱気は、ノズル前で大気中に行った。配合された材料は、直径3mmのダイからストランドとして放出され、水冷後にペレット化された。ペレット化し、真空中(30mbar)100℃にて24時間乾燥して含水率を0.1重量%未満にした後、ペレットの特性を測定し、試験サンプルを製造した。
【0109】
試験片の製造
引張試験とHDT試験のための試験片を、Arburg社の射出成形機 Modell Allrounder 420 C 1000-250で製造した。ポリアミド6T/6Iコンパウンド又はポリアミド6T/66コンパウンドのために、310℃から340℃への上昇シリンダー温度を使用した。成形温度は130~150℃とした。ポリアミド66コンパウンド又はポリアミド6コンパウンドのために、260℃から290℃への上昇シリンダー温度を使用した。成形温度は70~90℃とした。
【0110】
試験体は乾燥状態で使用し、それらはこの目的のために、射出成形後、少なくとも48時間、乾燥環境下(すなわち、シリカゲル上)で室温にて保管された。
【0111】
中空試験片(25×3×200mmチューブ)を、ガス又は水アシスト射出成形機 Maximator WD/300/1.5/2/Uで製造した。ポリアミド6T/6Iコンパウンド又はポリアミド6T/66コンパウンドのために、310℃から340℃への上昇シリンダー温度を使用した。溶融樹脂温度は330℃、成形型温度は95℃~130℃とした。
ガスアシスト:圧力30barで速度50cm3/s
水アシスト:圧力350barで速度100ml/s
【0112】
ポリアミド成形材料の製造のために、以下の物質を使用した(表1参照):
【表1】
【0113】
表2及び3は、実施例及び比較例の分析結果を示す。
【表2】
【0114】
【0115】
【0116】
本発明の効果は、さらに添付の図面で実証される。
図1は、実施例8(表2)の組成物から形成された成形品の表面の顕微鏡写真を示す。
【0117】
この図から分かるように、表面にガラス繊維は実質的に全く存在しない。その表面はポリアミドマトリクス材で完全に覆われている。それゆえ、高い表面平滑性が認識できる。
【0118】
これに対して、
図2は、比較例4(表3)から製造された参照サンプルの表面の顕微鏡写真を示す。
【0119】
そこから分かるように、ポリアミドマトリクス内に完全に組み込まれていない、多数の分離したガラス繊維がその表面に存在している。これらのむき出しのガラス繊維は、多かれ少なかれ、表面平滑性が減少する原因となり、さらに、これらのむき出しのガラス繊維は、摩耗あるいは抜き出し(ガラス繊維剥離)を受ける。
【0120】
本発明の実施例と比較して、比較例9及び10は、熱たわみ温度、耐加水分解性、及び内表面の品質に関して、明確に劣っている。