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特許7042754高強度成形アルミナ及び該高強度成形アルミナの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】高強度成形アルミナ及び該高強度成形アルミナの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/023 20220101AFI20220318BHJP
   C01F 7/441 20220101ALI20220318BHJP
   B30B 11/24 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
C01F7/023
C01F7/441
B30B11/24
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018561486
(86)(22)【出願日】2017-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-20
(86)【国際出願番号】 US2017033831
(87)【国際公開番号】W WO2017205286
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-02-25
(31)【優先権主張番号】62/340,048
(32)【優先日】2016-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516380050
【氏名又は名称】サソール(ユーエスエイ)コーポレーシヨン
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バークレイ,デイビッド・エイ
(72)【発明者】
【氏名】チャベズ,マーク・エム
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-037421(JP,A)
【文献】特開2008-100903(JP,A)
【文献】特開2010-001198(JP,A)
【文献】特表2015-500196(JP,A)
【文献】国際公開第2015/110913(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/02
C01F 7/44
B30B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形アルミナの製造方法であって:
i)シャフトの長さに沿ってアルミナ粉末を移動させることができるミキサー付きシャフトを含む凝集装置中に、アルミナ粉末を供給すること、ここで、前記アルミナ粉末は、第1の選択肢として、35Å~190Åの結晶子寸法及び40ミクロン以上の粒度D50値を有しアルミナ粉末を凝集装置中に供給する前にそのようなアルミナ粉末が40ミクロン未満の平均粒度D50値に微粉砕されるアルミナ粉末か、第2の選択肢として、300Å~500Åの結晶子寸法を有するアルミナ粉末か、または第3の選択肢として、35Å~190Åの結晶子寸法及び40ミクロン以上の粒度D50値を有しアルミナ粉末を凝集装置中に供給する前にそのようなアルミナ粉末が40ミクロン未満の平均粒度D50値に微粉砕されるアルミナ粉末と、300Å~500Åの結晶子寸法を有するアルミナ粉末との組み合わせ、を含み、
ii)アルミナ粉末が凝集装置のシャフトの長さに沿って移動するときにアルミナ粉末上に液体結合剤を噴霧して成形アルミナを形成すること、
iii)成形アルミナを焼成すること
を含み、ここで、アルミナ粉末対液体結合剤の比が重量に基づいて1.5:1~15:1である、方法。
【請求項2】
前記アルミナ粉末が、水酸化酸化アルミニウム(AlOOH)、ベーマイト又は擬ベーマイトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
35Å~190Åの結晶子寸法及び40ミクロン以上の粒度D50値を有する前記アルミナ粉末を30ミクロンの平均粒度D50値に微粉砕する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
35Å~190Åの結晶子寸法及び40ミクロン以上の粒度D50値を有する前記アルミナ粉末を10ミクロン以下の平均粒度D50値に微粉砕する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
35Å~190Åの結晶子寸法及び40ミクロン以上の粒度D50値を有するアルミナ粉末を40ミクロン未満の平均粒度D50値に微粉砕して微粉砕アルミナ粉末を形成して、該微粉砕アルミナ粉末を微粉砕する必要のない300Å~500Åの結晶子寸法を有するアルミナ粉末と組み合わせる初期ステップを含む、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記アルミナ粉末がアルミナ製造法の一部としてアルミナ粉末中に導入された酸を含む、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記液体結合剤が水を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記液体結合剤が水及び酸を含む、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記アルミナ粉末対液体結合剤の比が1.8:1~10:1である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
焼成温度が1250℃~1700℃であり、1時間~40時間にわたり焼成を行う、請求項1~のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
以下の性質:
i)1.20g/ml以上、好ましくは1.65g/mlを超えるゆるみ嵩密度、
ii)10m/g未満、好ましくは5m/g未満の表面積、
iii)5ppm未満、好ましくは3ppm未満、そして最も好ましくは2.5ppm未満の個別の金属の不純物、及び、合計で9ppm未満、好ましくは7ppm未満の不純物、並びに
iv)12000psiを超える圧縮強さ
の全てを含む、成形アルミナ。
【請求項12】
以下の性質:
i)1.20g/ml以上、好ましくは1.650g/mlを超えるゆるみ嵩密度と、
ii)5ppm未満、好ましくは3ppm未満そして最も好ましくは2.5ppm未満の個別の金属の不純物、及び、合計で9ppm未満、好ましくは7ppm未満の不純物、
並びに、以下の性質の少なくとも1つ:
iii)10m/g未満、好ましくは5m/g未満の表面積、及び、
iv)12000psiを超える圧縮強さ
とを含む、成形アルミナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度成形アルミナの製造方法並びに少ない不純物、高い強度、制御された多孔度及び高いゆるみ嵩密度(loose bulk density)を有する成形アルミナに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、2016年5月23日に出願された米国特許出願第62/340,048号明細書への優先権を主張し、前記明細書の開示は引用することにより全ての目的のために本明細書に取り込まれる。
【0003】
背景
例えばビーズ、球、球状粒子又は凝集体の形態の高強度成形アルミナは、油田化学担体、触媒支持体及び触媒、耐火物及びポリマーのための充填剤並びに油田使用のためのプロッパント粒子のような多数の用途に用いられる。高い嵩密度を有する成形アルミナは、るつぼ溶融法(crucible melting processes)による合成サファイアの製造に用いられる。
【0004】
成形アルミナ、例えばビーズは、通常、原料アルミナを用いて分散系又はゾルを調製し、分散系又はゾルを噴霧又は滴下してビーズを形成し、ビーズを乾燥して水を除去し、ビーズをさらなる処理のために十分に強くし、続いて高温で焼成して高い強度及び高い嵩密度を有するガンマ又は焼結アルファアルミナを作ることにより製造される。これらの方法は、アルミナ分散系の調製のために必要な多量の水の故に、高価な成形及び乾燥ステップを必要とする。
【0005】
続くアルファアルミナへの転換は高温焼成を必要とするか、又は、アルファ転換温度を下げ且つビーズを低い多孔度、高い密度及びかくして高い強度を有するビーズに焼結させるコストを下げるためにアルファアルミナを播種することを必要とする。
【0006】
そのようなビーズの製造のコストを下げるために可能な方法は、上記の方法に噴霧乾燥ステップを導入することであるが、しかしながらそのような方法への改良はまだ、ドライヤー中に滴を噴霧してドライヤーを出る前にそれらを乾燥する噴霧ドライヤーノズルの能力でビーズのサイズを制限する。
【0007】
強く濃密な(dense)顆粒を製造するために焼成もまだ必要である。
【0008】
アルミナビーズの形成のための別の方法は、アルミナ分散系を粒子の流動床上に噴霧し、水又は溶媒を除去しながらビーズのサイズを確立する(build up)修正乾燥及び凝集法である。
【0009】
押出プラス球形化法は他の既知の方法であり、それは滴下又は噴霧乾燥法ほど多くの液体を用いないが、ダイ又は押出機を通過させることにより成形することができる柔軟性又は可塑性の塊にアルミナを変換する(transform)ために最高で40%~50%の液体を必要とする。アルミナペーストをダイプレート又は押出機を通過させて押出し、円筒形を作り、円筒を片に破断する(breaks)高速タンブリング装置によりそれをビーズに成形し、これらを押出された円筒と同じ直径を有するビーズに丸める。次いで高い強度及び高い嵩密度を得るためにビーズを乾燥し、焼成しなければならない。
【0010】
以上概説したとおり、これらの方法の全てはいくつかの固有の問題を有する。それらはアルミナを分散させてそれを滴又は押出物に成形可能にするために、多量の水を必要とする。次いで強度の低下を防ぐために水を注意深く除去しなければならない。このステップに焼成ステップが続き、それは高い強度及び高い嵩密度を得るためにアルミナを焼結させる。高速で水が除去されるときにビーズは割れるか又は損なわれる(fail)ので、乾燥ステップ及び焼成ステップを合わせることはできない。商業的な生産速度は大きな設備並びに高い固有の資本及び運転コストを必要とする。
【0011】
本出願の発明は、他の成形法より低いコストで且つより少ないプロセスステップを用いて高強度、高密度成形アルミナを与える凝集法を用いて課題を克服する。
【発明の概要】
【0012】
発明
本発明の1つの局面に従い:
i)ミキサー付きシャフトを含む凝集装置中にアルミナ粉末を供給すること、
ii)アルミナ粉末が凝集装置のシャフトの長さに沿って移動するときにその上に液体結合剤を噴霧して成形アルミナを形成すること、
iii)成形アルミナを焼成すること
を含み、前記凝集装置は、シャフトの長さに沿ってアルミナ粉末を移動させる(displace)ことができる、高強度成形アルミナの製造方法を提供する。
【0013】
注目するべきことは、焼結及び高密度化(densification)を増強するために小さいアルファアルミナ粒子をアルミナに播種する必要なく、この方法の生成物のゆるみ嵩密度(LBD)が上昇する、すなわち本発明の方法に播種ステップが必要でないことである。さらに市販の製品を超える強度を有する成形アルミナビーズが1回の成形ステップ及び続く1回の焼成ステップで容易に製造される。ゾルの調製、ゾルへのアルファアルミナ粒子の播種、ビーズの形成のためのゾルの滴下、ビーズを取扱いのために十分に強くするためのビーズの乾燥及び次いで濃密な高密度生成物を作るためのビーズの焼成を必要とする滴下法と比較したときに、これは非常に有利である。
【0014】
成形アルミナは凝集体、ビーズ又は球状粒子の形態の場合がある。
【0015】
「凝集装置」により、上にミキサー付き中心シャフトを含むチャンバー(chamber)を意味する。ミキサーは好ましくはシャフトの長さに沿って置かれるピン又はパドル(paddle)の形態にある。アルミナ粉末は好ましくはシャフトの回転及び回転軸に沿ってアルミナ粉末又は成形アルミナを動かすピン又はパドルの作用により、シャフトの長さに沿って移動する。アルミナ粉末が凝集装置のシャフトの長さに沿って移動するときにミキサーが最初にアルミナ粉末を破壊し、次いでアルミナ粉末を再凝集させることができるように、シャフトは継続的に回転する。凝集装置は好ましくは高せん断凝集装置である。そのような高せん断凝集装置の例にはピンミキサー、Turbulizer(登録商標)ミキサー(連続高せん断パドルミキサー)又はLoedigeにより製造されるミキサーが含まれる。
【0016】
アルミナ粉末は水酸化酸化アルミニウム(AlOOH)、ベーマイト又は擬ベーマイト、好ましくはベーマイトを含む場合がある。
【0017】
第1の選択肢として、アルミナ粉末は35Å~190Åの結晶子寸法及び40ミクロン以上の粒度D50値を有する場合がある。本明細書で用いられる場合、結晶子寸法は、結晶子寸法の決定のためのシェラー(Scherer)式を用いてX線回折により測定され
る021面上の寸法測定値を指す。D50値により「メジアン」を意味し、全ての粒子の50%が記載される寸法より小さく、且つ50%が記載される寸法より大きいことを意味する。粒度D50値はMalvern Mastersizer 2000粒度分析器を用いるレーザー散乱により決定される。適したアルミナの例はSasolのCatapal(登録商標) B、Catapal(登録商標) C1、Catapal(登録商標)
D及び35Å~190Åの結晶子寸法を有する超高純度アルミナ(Ultra High Purity Alumina)である。
【0018】
アルミナ粉末が35Å~190Åの結晶子寸法及び40ミクロン以上の粒度D50値を有する場合、前記方法は凝集装置中にアルミナ粉末を供給する前にアルミナ粉末を40ミクロン未満の平均粒度D50値、好ましくは30ミクロンの平均粒度D50値そしてより好ましくは10ミクロン以下の平均粒度D50値まで微粉砕する初期ステップをさらに含む。
【0019】
あるいはまた第2の選択肢として、アルミナ粉末は300Å~500Å、好ましくは325Å~450Åの結晶子寸法を有する場合がある。本発明の方法への原料としてそのようなアルミナが選ばれる場合、微粉砕ステップは必要でない。そのようなアルミナの例はSasolのCatapal(登録商標) 200アルミナ、Pural(登録商標) 200アルミナ及び300Å~500Åの結晶子寸法を有する超高純度アルミナである。
【0020】
本発明は、i)35Å~190Åの結晶子寸法及び40ミクロン以上の粒度D50値を有するアルミナ粉末を40ミクロン未満の平均粒度D50値、好ましくは30ミクロンの平均粒度D50値そしてより好ましくは10ミクロン以下の平均粒度D50値まで微粉砕すること及びii)微粉砕する必要のない300Å~50Å、好ましくは325Å~450Åの結晶子寸法を有する適したアルミナ粉末を選ぶことの組み合わせを含む第3の選択肢を提供する。
【0021】
アルミナ粉末は、アルミナ製造方法の結果として、すなわちその場でアルミナ粉末中に導入される酸を含む場合がある。例えばSasolのDispal(登録商標)アルミナ製品ライン又はCatapal(登録商標) 200のような大結晶子アルミナは乾燥粉末中に導入された酸を有する。アルミナ粉末が酸を含有する場合、本発明の方法のために用いられる液体結合剤は水のみを含む場合がある。必要なら、例えば第3の選択肢を選ぶ場合、酸を水に加える場合がある。水に酸を加える場合、最高で4%の酸を水に加える場合がある。
【0022】
アルミナ粉末が酸を含まない場合、液体結合剤は水と酸の両方を含む場合がある。
【0023】
酸は、好ましくは一価の酸である。これらの一価の酸には硝酸、ギ酸、酢酸又はそれらの混合物が含まれる場合がある。1個又は複数個の酸部位を有するカルボン酸が用いられる場合もある。乳酸及び酒石酸のような酸はこれらの型の酸の例である。
【0024】
なんとか成形アルミナ、例えばビーズを形成するためにアルミナ粉末に適用される遊離の(free)液体結合剤の量は、適用される液体結合剤の重量で割られたアルミナ粉末の重量により定義される。これはアルミナ粉末対液体結合剤比である。アルミナ粉末対液体結合剤比は重量に基づいて1.5:1から最大15:1までの場合がある。好ましくは、アルミナ粉末対液体結合剤比は1.8:1~10:1である。
【0025】
焼成温度は選ばれるアルミナの結晶子寸法に依存してさまざまな場合があり、1250℃~1700℃、好ましくは1250℃~1600℃、より好ましくは1250℃~1500℃未満の場合がある。焼成は1時間~40時間行われる場合がある。少なくとも6時
間の焼成時間が好ましい。
【0026】
方法はバッチプロセス又は連続プロセスのいずれかの場合がある。
【0027】
本発明の第2の局面に従い、本発明の方法に従って製造される成形アルミナを提供し、成形アルミナは以下の性質:
i)1.20g/ml以上、好ましくは1.65g/mlを超えるゆるみ嵩密度
ii)10m/g未満、好ましくは5m/g未満の表面積
iii)5ppm未満、好ましくは3ppm未満そして最も好ましくは2.5ppm未満の個別の金属の不純物、及び、合計で9ppm未満、好ましくは7ppm未満の不純物;並びに
iv)12000psiを超える圧縮強さ(crush strength)
の1つ、2つ以上又は全て、好ましくは2つ以上そして最も好ましくは全てを含む。
【0028】
本発明の第3の局面に従い、以下の性質:
i)1.20g/ml以上、好ましくは1.650g/mlを超えるゆるみ嵩密度
ii)10m/g未満、好ましくは5m/g未満の表面積
iii)5ppm未満、好ましくは3ppm未満そして最も好ましくは2.5ppm未満の個別の金属の不純物及び合計で9ppm未満、好ましくは7ppm未満の不純物;並びに
iv)12000psiを超える圧縮強さ
の1つ、2つ以上又は全て、好ましくは2つ以上そして最も好ましくは全てを含む成形アルミナを提供する。
【0029】
成形アルミナは、好ましくは凝集体、ビーズ、球状粒子又はそれらの混合物の形態にある。
【0030】
ここで以下の図及び制限ではない実験に言及して本発明を記述する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】高せん断凝集法工程の線図。
図2】連続流高せん断凝集を示す線図。
図3】成形アルミナ、すなわちビーズの強度への粉末微粉砕の効果を示すグラフ。
図4】成形アルミナ、すなわちビーズの圧縮強さへの供給粉末粒度の効果を示すグラフ。
図5】ゆるみ嵩密度への初期粉末粒度の効果を示すグラフ。
図6】焼成された成形アルミナ、すなわちビーズの強度へのベーマイト結晶子寸法の効果を示すグラフ。
図7】成形アルミナ、すなわちビーズの強度への焼成温度、結晶子寸法及び粉末微粉砕の組み合わせ効果を示すグラフ。
図8】焼成温度に伴う表面積及び多孔度における変化を示すグラフ。
図9】種々のベーマイト結晶子寸法及び種々の粉末粒度を用いて種々の焼成温度で製造される成形アルミナ、すなわちビーズに関するゆるみ嵩密度の比較を示すグラフ。
図10】は種々の結晶子寸法において異なる粉末粒度(微粉砕されるか又は微粉砕されない)を用いて製造される成形アルミナ、すなわちビーズに関するゆるみ嵩密度の比較を示すグラフ。
図11】は本発明に従う成形アルミナ、すなわちビーズの強度の市販のプロッパントの強度との比較を示すグラフ。
図12】実施例4の焼成温度を用い、ブレンドされた微粉砕アルミナ及びCatapal(登録商標) 200を用いて製造されるビーズの圧縮強さを示すグラフ。
図13】実施例4の焼成温度を用い、ブレンドされた微粉砕アルミナ及びCatapal(登録商標) 200を用いて製造されるビーズのゆるみ嵩密度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
好ましい態様の詳細な記載
本発明は、中心シャフトを有する凝集装置中にアルミナ粉末を供給し、アルミナ粉末が凝集装置のシャフトの長さに沿って移動するときにその上に液体結合剤を噴霧し、成形アルミナを形成することによる高強度成形アルミナの製造方法を記載する。アルミナは凝集体、ビーズ、球状粒子又はそれらの組み合わせの形態にあることができる。成形アルミナは次いで焼成される。
【0033】
本発明の方法(8)の1つの例が図1に含まれる。ベーマイトアルミナ粉末をアルミナ粉末供給器(10)から、この例ではピンミキサーである凝集装置(14)の入口(12)に供給する。ピンミキサー(14)はチャンバー(16)及び上にミキサー(20)を有する中心シャフト(18)を含む。ミキサーは好ましくはシャフト(18)の長さに沿って置かれるピン又はパドル(特定的に示されてはいない)の形態にある。アルミナ粉末がピンミキサー(14)のシャフト(18)の長さに沿って移動するときにミキサー(20)が最初にアルミナ粉末を破壊し、次いでアルミナ粉末を再凝集させることができるように、シャフト(18)は継続的に回転する。
【0034】
アルミナ粉末は水酸化酸化アルミニウム、ベーマイト又は擬ベーマイトを含むが、好ましくはベーマイトである。第1の選択肢として、アルミナ粉末は35Å~190Åの結晶子寸法及び40ミクロン以上の粒度D50値を有する場合がある。そのような場合、アルミナ粉末はアルミナ粉末中に酸を含む場合があるか、又は含まない場合がある。そのようなアルミナ粉末はピンミキサー中に供給される前に40ミクロン未満、好ましくは30ミクロンそしてより好ましくは10ミクロン以下の平均粒度D50値まで微粉砕されることになっている。
【0035】
第2の選択肢として、アルミナ粉末は300Å~500Å、好ましくは325Å~450Åの結晶子寸法を有する場合がある。そのようなアルミナは40ミクロンの平均粒度D50値を有し、アルミナ粉末中にその場の酸(in situ acid)を含む場合がある。
【0036】
本発明は、i)35Å~190Åの結晶子寸法及び40ミクロン以上の粒度D50値を有するアルミナ粉末を40ミクロン未満の平均粒度D50値、好ましくは30ミクロンの平均粒度D50値そしてより好ましくは10ミクロン以下の平均粒度D50値まで微粉砕すること及びii)微粉砕する必要のない300Å~500Å、好ましくは325Å~450Åの結晶子寸法を有する適したアルミナ粉末を選ぶことの組み合わせを含む第3の選択肢を提供する。要するに、第3の選択肢は第1及び第2の選択肢の組み合わせである。
【0037】
ピンミキサー(14)に粉末が入った直後に液体結合剤をアルミナ粉末上に噴霧する。液体結合剤は、本発明の方法のためにどのアルミナ粉末が選ばれるかに依存して水又は水と酸の組み合わせの場合がある。酸は、好ましくは一価の酸である。これらの一価の酸には硝酸、ギ酸、酢酸又はそれらの混合物が含まれる場合がある。1個又は複数個の酸部位を有するカルボン酸が用いられる場合もある。乳酸及び酒石酸のような酸はこれらの型の酸の例である。
【0038】
液体結合剤中の酸はアルミナ粉末のいくらかを部分的に分散させるように作用する。アルミナに作用する水と酸の組み合わせはアルミナのための結合剤を生み出す。酸を含有す
るアルミナの場合、酸機能がすでに粉末供給材料中で与えられているので、液体結合剤として水のみが用いられる場合がある。しかしながら、本発明は必要なら追加の酸を加えることを排除しない。加えられる酸は液体結合剤の5重量%、好ましくは4重量%以下の場合がある。
【0039】
ミキサー(20)、すなわちピンミキサー(14)中の回転するピン又はパドルの高せん断作用下で、液体結合剤はアルミナ粉末中に分散される。液体結合剤がアルミナ粉末中に混ざるとき、アルミナ粉末は部分的に分散され、それは接着性且つ柔軟性になる。ミキサー(20)からのエネルギーは最初にアルミナ粉末を破壊し、次いで凝集を介してそれを成形してビーズ又は球形を含む成形アルミナにする。チャンバー内の回転作用によりビーズは平滑化され且つ丸められる。ビーズ、凝集体、球状粒子又はそれらの混合物の形態の湿った成形アルミナが形成され、ミキサーを出る。スクリーニングによりビーズをサイズで区分し(sized)、より狭い粒度分布(particle distribution)を有する生成物を得ることができる。これらのビーズをさらなる乾燥なしで1250℃~1700℃、好ましくは1250℃~1600℃、最も好ましくは1250℃~1500℃未満の焼成温度で1~40時間、好ましくは少なくとも6時間焼成することができる。先行技術により必要とされる乾燥ステップは、本発明の方法が適用されるならもはや必要でない。
【0040】
図2図1のピンミキサー(14)の詳細図を示す。ピンミキサー(14)のミキサー(20)又は回転部品は液体結合剤と混合されたアルミナ粉末中に高エネルギーを与え、それは2つの作用を成し遂げる;a)液体結合剤をアルミナ粉末上に均一に分散させ、そしてb)チャンバー内の酸性結合剤(水とアルミナのその場の酸又は水と酸又は両方)及び高せん断の組み合わせ作用はアルミナ粉末を小核に破壊する。これらの核は次いで混合作用により一緒にされ、次いで凝集して凝集体、ビーズ、球状粒子又はそれらの混合物の形態のより大きな成形アルミナを形成し、それはさらに凝集してもっと大きなビーズを形成する。ビーズのサイズは、アルミナ粉末対液体結合剤の比、ミキサー中の凝集の時間を制御する粉末の供給速度及びローターの回転速度により制御される。アルミナ粉末対液体結合剤の比は重量に基づいて1.5:1から15:1のような高くまでの場合がある。好ましくは、比は1.8:1~10:1である。
【0041】
図1及び2に示されるピンミキサー(14)は連続凝集装置を示す。しかしながら例えばバッチ方法で運転される高せん断凝集装置で方法を行うことができる。
【実施例
【0042】
下記の実施例において、
液体結合剤中の酸としてギ酸又は硝酸を用いる。
【0043】
10:1~13:1のアルミナ粉末対液体結合剤比を用いる。
【0044】
適した粉末供給速度及び凝集装置におけるローター速度を用い、直径が100ミクロン~2mmの寸法範囲内のビーズの形態の成形アルミナを製造することができる。
【0045】
平行板の間のMecmesin MultiTest 2.5i試験台上で個々のビーズを圧縮試験することにより、ビーズの強度を測定した。少なくとも25個のビーズを試験し、結果を平均した。各1個のビーズの圧縮に必要な力を測定し、試験されているビーズの直径も測定した。各ビーズの圧縮強さをビーズの断面積により割られる圧縮力として算出した。ビーズの試料に関して強度及び直径の値を平均した。結果はpsiにおける結果であり、ビーズの平均直径に対してプロットされる。
【0046】
実施例に用いられ且つ図中に示される種々の粉末の性質を表Iにまとめる。微粉砕Catapal Bアルミナは、基準アルミナ(base alumina)から作られる2つの粒度のいずれかを指す。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例1
021面上の47Åの結晶子寸法及び40ミクロンの粒度D50値を有するアルミナ粉末、Catapal(登録商標) Bアルミナを用いた。ジェットミル微粉砕(jet milling)によりアルミナを30ミクロンの平均粒度D50値に微粉砕した。4%以下の濃度に希釈されたギ酸及び水が液体結合剤を構成した。アルミナ粉末及び液体結合剤にピンミキサーを通過させ、製造されるビーズを続いてスクリーニングしてサイズで区分し、1450℃で10時間焼成し、それらをアルファアルミナ凝集体/ビーズに転換した。
【0049】
実施例2
出発Catapal(登録商標) Bアルミナ粉末粒度を、本発明に従いアルミナ粉末を10ミクロンの平均粒度D50値にジェットミル微粉砕することにより微粉砕する以外は、実施例1と同じ方法を用いた。
【0050】
実施例3
400Åの結晶子寸法を有するCatapal(登録商標) 200アルミナを用いる以外は実施例1と同じ方法に従った。Catapal(登録商標) 200は400Åの結晶子寸法を有するのでそれは微粉砕されなかった。Catapal(登録商標) 200アルミナはその中に導入されたギ酸を有し、従ってこのその場のギ酸は粉末供給材料の一部として与えられた。液体結合剤は水のみであった。粉末粒度D50値は40ミクロンであった。
【0051】
実施例4
微粉砕Catapal Bを25%の比でCatapal(登録商標) 200と配合した。微粉砕Catapal Bは4ミクロンの粒度を有した。ビーズは酸で処理されなかった。液体結合剤は水及び1%ギ酸のブレンドであった。図13は配合された材料の嵩密度を含み、図12は圧縮強さを含む。
【0052】
比較例1
021面上の47Åの結晶子寸法及び40ミクロンの粒度D50値を有するアルミナ粉末、微粉砕されないCatapal(登録商標) Bアルミナを用いた。4%以下の濃度に希釈されたギ酸及び水が液体結合剤を構成した。アルミナ粉末及び液体結合剤にピンミキサーを通過させ、製造されるビーズを続いてスクリーニングしてサイズで区分し、1450℃で10時間焼成し、それらをアルファアルミナ凝集体/ビーズに転換した。
【0053】
比較例2
ビーズを1600℃で10時間焼成する以外は比較例1と同じ方法を用いた。
【0054】
比較例3
021面上の47Åの結晶子寸法及び40ミクロンの粒度D50値を有するアルミナ粉末、微粉砕されないCatapal(登録商標) Bアルミナを用いた。液体結合剤は2.5%以下の濃度に希釈された硝酸及び水であった。アルミナ粉末及び液体結合剤にピンミキサーを通過させ、製造されるビーズを続いてスクリーニングしてサイズで区分し、1600℃で10時間焼成し、それらをアルファアルミナ凝集体/ビーズに転換した。
【0055】
比較例4
出発アルミナが微粉砕されないDiapal(登録商標) 15N4アルミナ(186Å)である以外は実施例1と同じ方法を用いた。この製品はその製造の間にアルミナ中に導入された硝酸を有する。この実施例では、アルミナ粉末中に酸が存在するので、液体結合剤として水のみを用いた。粉末粒度D50値は40ミクロンであった。
【0056】
比較例5
Catapal(登録商標) Bアルミナを77Åの結晶子寸法を有するCatapal(登録商標) Dアルミナに置き換える以外は、実施例1と同じ方法に従った。粉末粒度D50値は40ミクロンであった。
【0057】
図3は、実施例及び比較例のいくつかからのビーズの圧縮強さを示す。各比較例及び実施例からのビーズを種々の寸法にスクリーニングし、次いで圧縮強さに関して試験した。平均強度を平均ビーズ直径の関数としてプロットした。全ての実施例のデータにより、ビーズ直径の増加とともに低下する圧縮強さ(psi)の典型的な単調曲線が示される。それぞれ比較例1及び3に従ってギ酸及び硝酸を用い、1450℃及び1600℃で焼成された微粉砕されないCatapal(登録商標) Bアルミナビーズに関する近似曲線(trend line)を参照のために含める。
【0058】
図3において、微粉砕されないCatapal(登録商標) Bアルミナの1450℃
における焼成(比較例1)は、微粉砕されないCatapal(登録商標) Bアルミナの1600℃における焼成(比較例2及び3)より低い強度を与えることが容易にわかる。比較例2と比較例3の間のさらなる比較は、ギ酸及び硝酸が同じ焼成温度において類似の強度のビーズを与えることを示す。
【0059】
Catapal(登録商標) Bを30ミクロンの平均粒度D50値に微粉砕すると(実施例1)、焼成温度は同じに保たれたが、図3に示される通り微粉砕されない粉末のビーズ(比較例1)と比較して強度が向上した。Catapal(登録商標) B粉末の10ミクロンの平均粒度D50値への微粉砕(実施例2)は、1600℃で焼成されるものとほとんど同じまでビーズの強度をさらに向上させた。同じ結合剤及び焼成条件下で、微粉砕されないアルミナと比較して微粉砕アルミナの場合の強度は2倍を超えた。
【0060】
Dispal(登録商標) 15N4アルミナを用い、結合剤として水を用いる比較例4に関するデータは、1450℃の同じ焼成温度において微粉砕されないCatapal(登録商標) Bアルミナ(比較例1)に類似の強度を示す。これは、Catapal(登録商標) B(47Å)に比較して出発アルミナ結晶子寸法(Diapal 15N4,186Å)の増加が、この場合に強度の利点を与えないことを示している。
【0061】
図3から、本発明の成形アルミナが1450℃の温度で焼成されたときでさえ高い強度を有することが明らかである。
【0062】
本発明の利点を示すために、図4はy-軸(psiにおけるy軸)上のビーズの平均圧縮強さとともに出発アルミナ粉末の粒度(ミクロンにおけるx-軸)をプロットする。図4は、出発アルミナ粉末平均粒度D50値に対してプロットされる同じ平均直径を有するビーズに関する平均圧縮強さを示す。全てのデータに関し、10時間の滞留時間を以て焼成温度は1450℃で一定であった。
【0063】
グラフは明らかに、粉末寸法が減少するとともに強度が有意に向上することを示している。強度の向上は凝集したビーズのサイズに依存せず、ピンミキサー中に供給されるアルミナ粉末の粒度D50値又は直径に依存する。全ての寸法のビーズの強度は、供給される粉末の直径における減少に比例して向上する。
【0064】
図4は、出発アルミナ粉末を30ミクロン及び次いで10ミクロンの粒度D50値に微粉砕することが、全ての試料に関してビーズの圧縮強さを向上させることを明白に示している。図4において、2つの異なるアルミナ粉末供給材料に関するデータも示されている。Catapal(登録商標) B粉末は47Å(021面)の結晶子寸法を有し、Catapal(登録商標) D粉末は77Åの結晶子寸法を有する。しかしながら、出発粉末をより小さい初期寸法に微粉砕することは、両方の粉末に類似の効果を有する。
【0065】
図5は、凝集装置中に供給する前にアルミナ粉末を微粉砕するプロセスにより、ビーズのゆるみ嵩密度(下記で“LBD”)が上昇することを示している。凝集ステップに用いられるより小さい粒度のアルミナ粉末は、より大きい初期粒度を有する粉末より濃密であるビーズを焼成後に与える。これは、粉末が微粉砕されないときより粉砕されるときの凝集体のより高いゆるみ嵩密度に言い換えられる。
【0066】
粒度D50値40ミクロンのアルミナ粉末を用い、ピンミキサーの運転変数(粉末対液体比、供給速度及びローター速度)を操作することによりLBDを上昇させる試みを行い、いくつかの成功を得た。しかしながら、粉末を微粉砕することは、微粉砕されない粉末を用いて達成され得る上昇を超えるLBDにおける上昇をすぐに与えた。効果は、Catapal(登録商標) B粉末(47Å)及びCatapal(登録商標) D粉末(7
7Å)により示される通り、異なる結晶子寸法を有する粉末に関して類似であった。
【0067】
本発明の重要な利点は、焼結及び高密度化を強化するために小さいアルファアルミナ粒子をアルミナに播種する必要なく、LBDが上昇することである。播種は実施が困難な追加のステップである。それは種粒子の均一な分布を保証するために種と粉末の強力な混合を必要とする。種は播種効果を得るために正しいサイズ及び質に作られ、次いでバルク粉末(bulk powder)中に混合されねばならない。播種は周知の方法であるが、効果的に実施するのは困難である。
【0068】
さらに、35Å~190Åの第1の選択肢より実質的に大きい結晶子寸法を有する、すなわち300Å~500Åの範囲内の第2の選択肢に従うベーマイトアルミナを用いることにより、異常に高い温度でビーズを焼成する必要なく非常に高い圧縮強さを達成することができる。
【0069】
図6は、比較例1及び実施例3に従って類似の条件下で、しかし供給材料として異なる結晶子寸法のベーマイト粉末を用いて形成され、製造されるビーズの圧縮強さを示す。1450℃の焼成温度において、異なる結晶子寸法の粉末から作られるビーズは類似の圧縮強さを示した。温度を少し上昇させると、非常に大きいCatapal(登録商標) 200アルミナ(400Åの結晶子寸法を有する)は、Catapal(登録商標) Bアルミナ(47Åの結晶子寸法を有する)と比較して大きな圧縮強さにおける向上を示す。Catapal(登録商標) Bアルミナ(47Å)より大きい結晶子寸法を有するベーマイトを用いることは、小さい結晶子寸法のベーマイトより経済的且つ達成が容易な温度でずっと向上した圧縮強さを与える。
【0070】
図7において、ビーズの強度への焼成温度、アルミナ粉末粒度及びアルミナ結晶子寸法の組み合わせ効果についての追加の結果を示す。1250℃の温度で開始し、焼成温度が1600℃に上昇するとともにビーズ強度は単調に向上する。微粉砕されないCatapal(登録商標) Bアルミナは1600℃で焼成されると非常に強いビーズを与える。1600℃で焼成される微粉砕されないCatapal(登録商標) Bアルミナと同等の強度を有するビーズを、この小さい結晶子寸法のベーマイトを用いるよりほとんど200℃低い温度で製造することができる。
【0071】
本発明の方法をより経済的にするために、以下を用いる場合がある:i)35Å~190Åの範囲内の比較的小さい結晶子寸法のアルミナの1つをより小さい粒度D50値に微粉砕するか、あるいはii)300Å~500Åの結晶子寸法を有するアルミナ粉末であるCatapal(登録商標) 200のような大きい結晶子寸法のアルミナを用いるか、あるいはiii)i)及びii)の組み合わせ。これらの選択肢は、微粉砕されない小さい結晶子寸法のベーマイト(35Å~190Åの結晶子寸法を有する)から作られるビーズと比較して最高で2倍の強度を有するアルミナビーズを与える。1450℃の温度を用いるとこの強度を達成することができる。容易に入手可能な市販の装置を用いて得られ得る範囲内で焼成温度を変えることにより、強度を所望のレベルに変えることができる。
【0072】
図7が示す通り、1525℃を超える焼成温度を用い、Catapal(登録商標) 200アルミナから非常に高い圧縮強さを有するビーズが製造される。これは、真に最高の強度の油田プロッパントと同等の強度を有するビーズの製造のために有利である。
【0073】
粉末粒度及び最終的な焼成温度の種々の組み合わせを選ぶことにより高強度を達成できることは、ゆるみ嵩密度、多孔度又は吸着容量、孔径及び表面積のようなビーズの他の性質の調整のために有利である。これらの例を図8~10に従って示す。
【0074】
広範囲の焼成条件にわたって強度を保持することができるので、ビーズの物理的性質をそれぞれの用途のために必要通りに変えることができる。例えば図8において、大きい結晶子寸法(400ÅのCatapal(登録商標) 200)のベーマイト及び10ミクロンの粒度D50値に微粉砕されたもっと小さい結晶子寸法の微粉砕Catapal(登録商標) D(77Å)から作られるビーズの表面積及び多孔度を、焼成温度の関数として示す。焼成温度を変えることにより、広範囲の表面積又は細孔容積を達成することができる。強度は一般的に温度の上昇とともに向上し、逆により低い焼成温度で低下するであろうが、本発明のビーズはすでに比較的低い温度で高強度を有しており、従ってビーズ強度を危うくせずに他の固有の特性を変えることができる。
【0075】
アルミナを微粉砕するか又は適した結晶子寸法を選ぶか又は両方により、焼成温度を用いてビーズの所望の固有の特性を調整することができる。このプロセスの間、ビーズの強度は保持されるであろう。
【0076】
触媒及び化学担体のためにこれは重要であり、その適用のために十分に強いビーズを用いて多孔度及び吸着容量を達成することができる。
【0077】
ゆるみ嵩密度(LBD)は、合成サファイア工業におけるるつぼ充填物(crucible fill)のために重要である。個々のるつぼにおける充填重量を最大にするために、高い嵩密度が望ましい。これは、1回のるつぼサイクルからの製造を最大にし、コストを下げる。
【0078】
図9は、供給アルミナ粉末の粒度D50値及び結晶子寸法を変えることにより製造されるアルミナビーズのLBDを示す。結晶子寸法の増加又はより小さい粒度D50値の粉末への微粉砕は、より小さい結晶子寸法のアルミナ又は微粉砕されない粉末より高いLBDを有するビーズを与える。微粉砕されない粉末に関し、グラフは種々の焼成温度の場合に結晶子寸法が増加するとともにLBDが上昇することを示している。アルミナ粉末が微粉砕される場合、LBDにおけるより大きな上昇も見られる。微粉砕Catapal(登録商標) B(微粉砕前の粒度D50値40ミクロン及び微粉砕後10ミクロン)又は微粉砕Catapal(登録商標) Dアルミナ(微粉砕前の粒度D50値40ミクロン及び微粉砕後10ミクロン)を用い、1450℃の温度においてLBDは2.0g/mlに達する。非常に大きい結晶子寸法のアルミナ、Catapal(登録商標) 200(400Åの結晶子寸法)は、1550℃で焼成される場合に微粉砕なしで高いLBDを示す。必要に応じて粉末微粉砕と組み合わされる結晶子寸法の適切な選択は、高いLBDを有し、従って高い充填重量を生むビーズを与えることができる。
【0079】
図10は、微粉砕により粉末粒度D50値を減少させるもっと劇的な効果を示す。LBDの結果を47Å~77Åの結晶子寸法アルミナの小さい範囲に及んでプロットする。アルミナ結晶子寸法の増加は前記範囲に及んでLBDにおける穏やかな上昇を与える。しかしながら、ビーズの形成前の粉末の微粉砕は、結晶子寸法範囲の低末端及び高末端の両方から作られるビーズのLBDにおける大きな上昇を示す。Catapal(登録商標) B(47Å)及びCatapal(登録商標) D(77Å)の両方を10ミクロンの粒度D50値に微粉砕すると、Catapal(登録商標) B(47Å)はCatapal(登録商標) D(77Å)とほとんど同じLBDを生ずる。これらの結果は全て同じ焼成温度を用いて与えられる。
【0080】
比較例6
アルミナのデータと油田破砕操作(fracturing operation)のために用いられる市販のプロッパントとの比較を図11に示す。プロッパントの強度の範囲をグラフ上で斜線部分により示し、それは引用することにより記載事項が全ての目的のた
めに本明細書の内容となるHarris,J.T.,Finite Element Modeling of Particle Failure in Stressed Particles Bes,M.S.Thesis,Engineering,Mechanics,Pennsylvania State University(2008)により記載されている市販の焼結ボーキサイト及びシリカ-アルミナプロッパントビーズに関する強度値の範囲を表す。40ミクロンの平均粉末直径の粒度D50値を有し、1450℃で焼成されるCatapal(登録商標) Bアルミナから製造されるビーズは、いずれの直径においても代表的なプロッパントの型より有意に低い平均圧縮強さを有する。これはグラフの最下部における曲線により示される。1600℃に焼成温度を上昇させると、グラフ上の上部の曲線により示される通り、市販のプロッパントの範囲内である強度が得られる。
【0081】
同じ粉末を10ミクロンの粒度D50値に微粉砕すると、圧縮強さは有意に向上し、いまや最高の強度の市販のプロッパントと同等である。そしてこの強度の達成のために1450℃への焼成が十分である。より大きな結晶子寸法のCatapal(登録商標) Dアルミナを微粉砕すると、類似の結果が見られる。ベーマイト粉末の出発直径を修正することにより、1つの原材料を用いて種々のプロッパントの型に匹敵する強度を得ることができる。これは、油田用途のための化学送達ビーズ(chemical delivery beads)を製造するときに有利である。化学送達ビーズの強度は、油田における破砕応力下で化学送達ビーズが崩壊(degrade)しないように、油田破砕操作に用いられるプロッパントの強度に匹敵しなければならない。
【0082】
図11に、ベーマイト粉末の結晶子寸法の増加の効果も示されている。47Åの結晶子寸法を有する通常のCatapal(登録商標) Bアルミナはいずれの直径においても代表的なプロッパントの型より有意に低い平均圧縮強さを有する。400Åの結晶子寸法を有するCatapal(登録商標) 200の使用は、通常のCatapal(登録商標) Bアルミナの強度を超えるビーズを与え、焼成して、図表中に示される最強の市販のプロッパント以上の強度を達成することができる。比較のために、典型的な高強度の市販のプロッパント、Carboprop(登録商標) 20/40を示す。Catapal(登録商標) 200アルミナから製造されるビーズはこの製品に等しい強度を有する。
【0083】
本発明の方法の使用により、種々の結晶子寸法及び粒度D50値を有する種々の供給材料を用いることができる。さらに、供給材料を微粉砕するか、より大きな結晶子寸法を有する供給材料を用いるか、又は両方により、方法は焼成の様々な条件、例えば商業的な設備に関する費用対効果の限界内に留まる焼成条件に備える。焼成温度が市販のプロッパントの場合に通常用いられる焼成温度まで上昇する場合、これらのビーズの強度はほとんどの市販のプロッパントの値を超える。やはり注目するのが非常に重要なことは、本発明の方法のためにさらなる播種ステップ及び乾燥ステップが必要でないことであり、それはやはり技術的及び商業的利点である。利点には連続プロセスが適用され得ること及び特別な状況において結合剤として単純な水が用いられ得ることも含まれる。
【0084】
アルミナ生成物:
アルミナの純度はサファイア製造に関する決定的な問題である。表IIはa)出発アルミナ粉末、b)高純度ベーマイトのジェットミル微粉砕及び高せん断凝集装置における成形により製造される非焼成ビーズ及びc)焼成後のビーズに関する金属不純物分析を示す。本発明の方法を介して生成物の汚染が起こらないか又は非常に少ないことがわかる。この可能な汚染の低いレベルは、ビーズの成形方法を合成サファイア製造方法のための高い嵩密度のるつぼ充填物の製造に適したものとしている。
【0085】
単一の成形ステップはアルミナ中に金属不純物を導入しない。容易に得られる高い嵩密度と組み合わされて、生成物はるつぼ溶融法による合成サファイアの製造に有用である。
【0086】
【表2】
【0087】
供給ステップ及び処理ステップの両方における変数を制御することにより、ビーズの多孔度を制御することができる。最終的な細孔容積は、粒度に基づく供給材料選択、凝集条件及び焼成温度により調整される。これらの種々の組み合わせを単独で又は共同して用いて、ビーズの所望の最終的な多孔度を達成することができる。
【0088】
成形ビーズのいくつかの典型的な性質を表IIIに示す。
【0089】
【表3】
【0090】
本発明で記載されるビーズを油田用途のための化学担体、触媒担体、流動性無粉塵性粒子を必要とする種々のサファイア結晶形成法又はサファイア製造におけるるつぼ充填物のための供給材料及びおらそく油田用途のためのプロッパントとして用いることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13