(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】改良された応答性を持つ電力分配制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20220318BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20220318BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20220318BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20220318BHJP
H02J 3/14 20060101ALI20220318BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/46
H02J3/14
H02J7/35 K
H02J13/00 A
(21)【出願番号】P 2019508892
(86)(22)【出願日】2017-08-11
(86)【国際出願番号】 GB2017052376
(87)【国際公開番号】W WO2018033710
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-07-22
(32)【優先日】2016-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517049389
【氏名又は名称】オリガミ エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルルーシュ ジェルズィ
(72)【発明者】
【氏名】バーストール オリバー ウィリアム ジョン
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02510735(GB,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0056628(US,A1)
【文献】特表2014-510508(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02863510(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02J 3/00-7/12
7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力グリッドに接続された複数の電力資源を制御する電力配送電制御システムであって、
前記電力グリッドにおける潜在的な将来の変化に応答するための前記電力資源のそれぞれの個別応答能力に基づいて、ストリングを形成する電力源、負荷、及び蓄電装置から選択された電力資源のセットを特定し、前記電力グリッド中の変化に応答する命令を前記ストリングに提供する
よう構成されたサーバ、及び
前記ストリング中の前記電力資源のそれぞれ
について、前記サーバから前記命令を受け取り、それぞれの前記電力資源を制御する
よう動作可能であるルータ
を備え、
前記ストリング中の前記電力資源は、異なる
個別の応答を有するように前記サーバによって選択され
るように構成され、それにより前記ストリング中の前記電力資源のうちのそれぞれは、対応する時間をかけて、要求される電力容量の所定のパーセンテージに到達するよう構成され、前記ストリング中の前記電力資源のうちのそれぞれは、要求される電力容量の所定のパーセンテージより大きい電力容量を維持するよう構成された、対応する持続時間を有し、
前記サーバからの前記命令は、前記ストリング中の前記ルータに
対して、前記潜在的な将来の変化が前記電力グリッドにおいて起こったときには、起こった変化に応答して異なる時刻において
前記電力資源をアクティベート又はディアクティベートさせ
るよう構成され、それにより
前記電力資源の前記ストリングは、前記変化に対して集合的な応答を呈し、前記集合的な応答は、
理想的な包絡線を達成することを目標として、前記サーバによって定義される
電力配送電制御システム。
【請求項2】
前記サーバによって選択された前記ストリング中の前記電力資源は、電力源、負荷、及び蓄電装置のうちの少なくとも2つを備える
請求項1に記載の電力配送電制御システム。
【請求項3】
前記ストリング中の前記電力資源は、発電機及びバッテリーを備える
請求項2に記載の電力配送電制御システム。
【請求項4】
前記ストリング中の前記電力資源は、熱的負荷を備える
請求項2に記載の電力配送電制御システム。
【請求項5】
前記ストリング中の前記電力資源は、バッテリーを含む蓄電装置であり、前記集合的な応答は、前記蓄電装置を前記電力グリッドに放電することを含む
請求項1に記載の電力配送電制御システム。
【請求項6】
前記サーバは
、それぞれの資源に、それぞれの資源において測定された前記電力グリッド中の周波数の変化に応答させる
ための命令を前記ルータに提供するよう構成された請求項1-5のいずれか1項に記載の電力配送電制御システム。
【請求項7】
前記サーバは
、それぞれの資源に、
それぞれの資源において測定された前記電力グリッド中の電圧の変化に応答させる
ための命令を前記ルータに提供するよう構成された請求項1-5のいずれか1項に記載の電力配送電制御システム。
【請求項8】
前記ストリング中の前記電力資源は、前記サーバからのさらなる命令を受けることなく、前記変化に自律的に応答するよう動作可能である
請求項1-
7のいずれか1項に記載の電力配送電制御システム。
【請求項9】
前記ストリング中のそれぞれの資源は、前記変化に応答した後に、そのそれぞれのルータを介して前記サーバにレポートを送る
よう構成された
請求項1-
8のいずれか1項に記載の電力配送電制御システム。
【請求項10】
前記サーバは、前記レポートに基づいて、さらなる命令を電力資源の前記ストリングに送る
よう構成された
請求項
9に記載の電力配送電制御システム。
【請求項11】
前記サーバは、前記ストリング中の電力資源のサブセットに対して、前記ストリングの前記集合的な応答が所定のレベルよりも上であるか、又は1つ以上の所定の基準を満足するという
、前記ストリングから送られたレポート又はレポート群に応答して、その応答を停止させるよう命令する
よう構成された
請求項1-
10のいずれか1項に記載の電力配送電制御システム。
【請求項12】
前記サーバは、前記ストリング中の電力資源のサブセットに対して、前記ストリングの前記集合的な応答が所定のレベルよりも上であるか、又は1つ以上の所定の基準を満足するという
、前記ストリングから送られたレポート又はレポート群に応答して、前記ストリングから撤退するよう命令する
よう構成された請求項1-
11のいずれか1項に記載の電力配送電制御システム。
【請求項13】
複数の電力資源を有する電力配送電システムの運用の方法であって、
前記電力資源のそれぞれを制御するローカルコントローラ、及び前記ローカルコントローラと通信するサーバを提供すること、
電力グリッドにおける潜在的な将来の変化に応答するための前記電力資源のそれぞれの個別応答能力に基づいて、複数の電力資源から、ストリングを形成する
ための電力資源のセットを前記サーバ
によって選択すること、及び
前記
電力グリッド中の
前記潜在的な将来の変化に対する応答のための命令を含むメッセージを、前記ストリング中のそれぞれのコントローラに前記サーバから送ること
を含む方法であって、
前記ストリング中の前記電力資源は、異なる
個別の応答を有するように前記サーバによって選択され、それにより
前記ストリング中の前記電力資源のうちのそれぞれは、対応する時間をかけて、要求される電力容量の所定のパーセンテージに到達し、前記ストリング中の前記電力資源のうちのそれぞれは、その電力容量の所定のパーセンテージより大きい電力容量を維持する、対応する持続時間を有し、
前記サーバからの前記命令は、前記ストリング中の
前記ローカルコントローラに
対して、前記潜在的な将来の変化が前記電力グリッドにおいて起こったときには、起こった変化に応答して異なる時刻において
前記電力資源をアクティベート又はディアクティベートさせ、それにより
前記電力資源の前記ストリングは、前記変化に対して集合的な応答を呈し、前記集合的な応答は、
理想的な包絡線を達成することを目標として、前記サーバによって定義される
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大まかには電力制御システムの分野に関し、より具体的には、電力グリッドに接続された発電源、負荷又は蓄電装置のような電力資源を能動的に管理するシステム、方法、及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、大規模電力グリッドシステムに関する。そのようなグリッドシステムの例は、グレートブリテン島(GB)のNational Gridであり、所定の好ましい周波数である50Hzにおいて動作する多数の発電機及び負荷をイングランド、スコットランド、及びウェールズにわたって接続する高電圧同期化交流(AC)送電ネットワークを備える。発電所及び発電機のような電力源による電力の供給、及び消費世帯及び大きな公的建物のような負荷による電力の需要は、均衡の状態に維持される。もし例えば供給の突然の減少によって引き起こされた、需要に対する電力の供給に突然の不足が生じるなら、動作周波数は、低下し得る。逆に、もし供給が突然に需要を超えるなら、周波数は上昇し得る。電力グリッドが適切に動作することを確保するために、周波数を好ましい周波数の小さい許容範囲内(例えば50Hz +/- 0.1Hz)に維持することが必要である。通常は、グリッドは、自然に均衡をとるように記述し得る。すなわち、もしある発電機がスピードダウンしてグリッド周波数の低下に寄与するなら、他の発電機はそれらのスピードを上昇させ、その低下を補償するよう構成されている。システムの慣性的な自己伝搬の性質は、安全制御及び自己調整の形で機能する。
【0003】
より一般的に言えば、グリッド運用周波数を許容可能で安全な範囲内に維持することは、グリッド中の電力の供給及び需要の間の均衡を制御すること、及びその均衡からの偏移に応答することを含む。応答性は、秒オーダーであるか、又は秒以下のレベルであることが必要となる。電力グリッドシステムのこの運用スキームは、「周波数応答」と呼ばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
突然の周波数低下又は周波数又は電圧の単なる小さな変動のような、起こり得る変化を予期して、又はシステムにおける実際の変化の場合において、グリッド運用条件を許容可能な範囲内に維持するために、それらの応答性、電力容量及び利用可能性を最大化及び/又は最適化する、配電システム又は電力グリッド、つまりシステム中の電力資源群のセットを運用する方法を提供することが望ましい。
【0005】
電池管理の分野において、WO 2015/116408 A2(Steffesら)は、複数のエネルギー貯蔵装置による電力消費の管理方法を議論している。それらの充電レベル又は残りの貯蔵容量に基づいて、エネルギー貯蔵装置は、個々の消費率において、電気エネルギーを個々に消費することを制御することによって、それらの個別の率の集合が、目標率であるようにしている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、電力グリッドに接続された複数の電力資源を制御する電力配送電制御システムが提供される。このシステムは、ストリングを形成する電力源、負荷、及び蓄電装置から選択された電力資源のセットを特定し、前記電力グリッド中の変化に応答する命令を前記ストリングに提供するサーバ、及び前記ストリング中の前記電力資源のそれぞれのための、前記サーバから命令を受け取り、前記それぞれの電力資源を制御するルータを備える。前記ストリング中の前記電力資源は、異なる応答時間及び/又は応答プロファイルを有するように前記サーバによって選択され、資源の前記ストリングは、前記変化に対して集合的な応答を呈し、前記集合的な応答は、前記サーバによって定義され、及び/又は、集合的な応答は、サーバによってリクエストされた複数のサービスを実現する(これには、電力グリッド中のローカルな変化又は他のローカルに測定された変化に依存して決まるサービス又はサービス(群)が含まれ得る)。
【0007】
ある局面において、前記ストリング中の前記電力資源は、電力源、負荷、及び蓄電装置のうちの少なくとも2つを備えるように前記サーバによって選択される。ある局面において、前記ストリング中の前記電力資源は、発電機(ディーゼル発電機のような)及びバッテリーを備え得る。他の局面において、前記電力資源は、熱的負荷を備え得る。
【0008】
他の局面において、前記ストリング中の前記電力資源は、バッテリーのような蓄電装置であり、前記集合的な応答は、前記蓄電装置を前記電力グリッドに放電することを含む。
【0009】
前記ルータは、前記ストリング中の他の電力資源のルータとピアツーピアベースで通信し得る。前記ストリング中の他の電力資源の前記ルータのそれぞれに結合されることによって、これらルータ間のピアツーピアの通信を促進するルータサーバが設けられ得る。サーバは、ストリング中の電力資源のルータと通信し、ストリングの他の資源が何であるかをそれぞれのルータに示すことによって、資源のルータが互いに通信を開始できるようにする。前記ストリングの第1ルータは、対応する第1資源の応答を前記ストリングの第2ルータに報告し得て、前記第2ルータに対応する第2資源の応答は、前記第1ルータから受け取られた前記第1資源の前記応答に基づいて決定される。
【0010】
好ましくは、前記サーバは、前記ルータに命令を提供することによって、前記それぞれの資源に、それぞれの資源において測定された前記電力グリッド中の周波数及び/又は電圧の変化に応答するようにさせる。前記ストリング中の前記電力資源は、少なくとも所定の持続期間にわたって、少なくとも所定のレベルの集合的な応答を提供するよう、前記サーバによって選択される(異なるイベントに対する予期された資源の応答についてのデータベースに記憶される情報に基づいて)。前記サーバは、前記変化に応答して異なる時刻でアクティベートする又はディアクティベートする命令を前記ストリング中の前記ルータに送り得る。前記ストリング中の前記電力資源は、前記サーバからのさらなる命令を受けることなく、前記変化に自律的に応答し得る。前記ストリング中のそれぞれの資源は、前記変化に応答した後に、そのそれぞれのルータを介して前記サーバにレポートを好ましくは送る。サーバは、前記レポートに基づいて、さらなる命令を電力資源の前記ストリングに送り得る。
【0011】
前記サーバは、前記ストリング中の電力資源のサブセットに対して、前記ストリングの前記集合的な応答が所定のレベルよりも上であるか、又は1つ以上の所定の基準を満足するというレポート又はレポート群に応答して、その応答を停止させるよう命令し得る。
【0012】
前記サーバは、前記ストリング中の電力資源のサブセットに対して、前記ストリングの前記集合的な応答が所定のレベルよりも上であるか、又は1つ以上の所定の基準を満足するというレポート又はレポート群に応答して、前記ストリングから撤退するよう命令し得る。
【0013】
本発明の他の局面によれば、複数の電力資源を有する電力配送電システムの運用の方法が提供される。この方法は、前記電力資源のそれぞれを制御するローカルコントローラ、及び前記ローカルコントローラと通信するサーバを提供すること、ストリングを形成する電力資源のセットを前記サーバにおいて特定すること、及びパワーグリッド中の変化に対する応答のための命令を含むメッセージを、前記ストリング中のそれぞれのコントローラに前記サーバから送ることを含む。前記ストリング中の前記電力資源は、異なる応答時間及び/又は応答プロファイルを有するように前記サーバによって選択され、資源の前記ストリングは、前記変化に対して集合的な応答を呈し、前記集合的な応答は、前記サーバによって定義される。
【0014】
ある局面において、小さな変動であるか又はある大きさの突然の周波数変化であるかに関わらず、グリッド中の任意の周波数変化に応答して、十分に大きい供給を電力源(例えば発電機)から展開することが可能であることが有利である。
【0015】
他の局面において、例えばシステムからの電力源の予期しない損失又は需要の増加に起因する、起こり得る大きな周波数低下、又は、例えば大きな電力負荷がオフにされ、需要の突然の低下を招くことに起因して、大きな周波数上昇に対して準備をして、任意の時刻において又は特定の時刻において、十分に大きい電力(電力源又は負荷)の容量及び利用可能性を維持することは価値のあることである。
【0016】
他の局面において、資源又は資源のストリング(サブセット)は、例えば10ミリ秒(ms)の何十倍のスケールのなるべく短い応答時間を有するのが有利である。
【0017】
ある例示的場合においては、電力グリッドシステム中の電力資源(電力源、負荷又は蓄電装置のような)のセットが、関連する状況が起こったときに、なるべく大きい電力容量を単に供給することは理想的ではないかもしれない。電力グリッドシステム中の資源の前記セットの(商用)運用においては望まれる複数の条件及び誘因が存在し得る。これら条件は、オーバーライド、補助、オプションのような、経済的、運用効率的、又は安全的考慮に基づく、変化する優先度に関し得る。例えば、電力源の提供及び報酬は、メガワット(MW)の切りの良い単位で測定され得る。切りの良い整数のメガワットを超える電力のMWの端数を提供することは、無駄であり、過剰供給であると考えられ得る。換言すれば、所定の目的及び誘因を考慮して、電力資源の運用においては高いレベルの融通性を維持することが一般には有利である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、電力グリッドに接続された電力配送電制御システムの実施形態を示す。
【
図2】
図2は、電力配送電制御システムの異なる要素の間の関係を示す状態図である。
【
図3】
図3は、電力配送電制御システムの電力応答の異なる例を示す。
【
図4A】
図4Aは、電力配送電制御システムの電力応答の異なる例を示す。
【
図4B】
図4Bは、電力配送電制御システムの電力応答の異なる例を示す。
【
図5】
図5は、電力配送電制御システムを運用する方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
グレートブリテンNational Gridのような大規模電気グリッドシステム中には電力資源が何十万と存在し得る。商用事業者(例えばソーラーファーム又は冷蔵プラント又は熱電併給システムを持つ建物所有者)は、これら資源のサブセットを所有及び制御し得て、以下を含むさまざまなサービスを提供するよう契約し得る。すなわち(i)周波数低下のような機会が起こったときに応答性電力資源を展開すること、及び(ii)グリッドにおける起こり得る突然のニーズを予想して、応答性のある電力資源の利用可能性を提供し、これらのサービスのそれぞれについて適切に報酬を受けることである。
【0020】
例示的エネルギー流通システム(energy distribution system)は、
図1に示され、この図は、複数の電力資源又はサイト10、11、12を示し、それぞれは、エネルギールータ13、14、15をそれぞれ有する。電力資源は、電力源、負荷、及び貯蔵器であり得る。例えば、資源10は、ソーラーファームのような電力源であり得て、資源11は、熱的負荷(加熱、空調、冷蔵負荷)のような応答性負荷であり得て、資源12は、貯蔵サイト又は電池であり得る。システムは、階層的な構成であり得る。すなわち電力資源10、11、12は、それらの電気的接続に関して、システムエネルギーの「エンドポイント(end point)」に配置され得て、それらのそれぞれのルータ13、14、15は、互いにIP接続20によって接続され得て、より高いレベルにある中央サーバ25に接続され得る。資源は、サーバ25の制御下にあり得る。エネルギールータは、資源及びサーバ間の通信、及び資源同士の間のピアツーピア通信を可能にする単なる簡単なルータ装置ではない。エネルギールータは、後述されるように、それらの対応する資源をローカルレベルでモニタリング及び制御する責務も負う。
【0021】
例示的エネルギールータは、プロセッサ、低電圧DC電源アダプタのような電力を受け取る手段、データ接続(公衆IPネットワーク及び/又はローカルエリアネットワーク(LAN)へのものを含む)を提供する通信手段、及びそのサイトによって供給されている、消費されている、又は吸収されている電流及び電圧及び/又は線間周波数の現在のレベルを測定するための、複数の測定入力を持つ計測回路のような測定手段17、18、19を備える。例示的エネルギールータは、パワーオーバーイーサネット(PoE)コントローラのような電力を外部装置に供給する物、デュアルイーサネット物理レイヤ集積回路、トランシーバ、イーサネットポート(群)、USBホストポート、RS 485スタンダードポート(群)、ケーブル、及びローカル制御パラメータ及び優先パラメータ(例えばピーク及びオフピーク電力価格)を記憶するためのランダムアクセスメモリ及びフラッシュメモリも好ましくは有する。
【0022】
ルータは、公共IPネットワークの目的でそれに割り当てられたIPアドレスを有し得る。このIPアドレスは、サーバへと通信され、又はサーバによって提供され得る。ルータは、イーサネットポートを介して、対応するサイトのためのLANに接続され得る。このLAN上で、プロセッサは、当該サイトによる電力の消費、発生、又は吸収を制御するためのローカルコマンドを送り得る。
【0023】
図1に示されるように、それぞれの電力資源つまりサイト10、11、12は、対応する測定手段17、18、19を有する。これにより周波数及び/又は電流、入力/出力電力、電圧及び/又は他の関連するパラメータのレベルが当該サイトでローカルに測定されることが可能になる。
【0024】
図1に示される例では、電力資源10、11、12及びそれらの対応するルータ13、14、15は、グループを形成する。このグループは、電力資源の応答性ストリング16であり得る。
図1には示されていないさらなる電力資源がこのストリングに接続22を介して含まれ得る。
【0025】
クラスタ30のような、さらなるグループ、つまり資源の応答性ストリングは、システム中のサーバ25に、公共IPネットワークであり得るネットワーク26を介して接続され得る。さらにサーバ28、29がシステム中に存在し得て、それぞれは、対応するクラスタ(群)つまり資源31、32のストリング(群)に対応する。サーバ25、28、及び29は、管理ユーザインタフェース41の管理下で、制御プラットフォーム40を共に形成し得る。サーバは、セキュアな内部IPネットワーク42を介してデータベースクラスタ43に接続する。
【0026】
クライアントインタフェース60は、ウェブサーバ64(オプションとしてゲートウェイサーバ65と共に)へのアクセスのために提供され得る。クライアントインタフェース60は、公共IPネットワーク26によってウェブサーバ64に接続された複数のクライアントユーザインタフェース61、62、63を含み得る。
【0027】
例示的配電システムにおいて、グリッド50は、資源10、11、12及びそのグループ及びクラスタ30、31、32に電力を供給する。グリッド50は、なんらかの接続、変電所、又は開閉所の形をとるピンチポイント51を有し得て、これは、具体的な定格仕様又は制約を有する。そのような情報は、データベースクラスタ43に記憶され得る。
【0028】
中央サーバ(サーバ25のような)の機能及び責務は、それらが責任を負う電力資源のそれぞれの利用可能性をモニタリングすることを含み得る。中央サーバは、それらの電力容量、送電能力(delivery capabilities)、エネルギー要件、当該容量、能力、及び要件がどの程度、融通性をもつかを示すパラメータ(例えば応答時間、デッドタイム)、地理的位置及び電力システム中での他の資源に対する位相幾何学的位置のような、これら資源の特性についての情報を記憶し得る。代替として、データベースクラスタ43は、この情報を記憶する責務を負い得て、サーバ25は、その情報をそれから取り出し得て、又はデータベースクラスタ43及びサーバ25の両方が電力資源についての当該情報の一部又は全てを記憶し得る。
【0029】
サーバ25は、高レベルの目的を記憶すること、システムが接続されている電力グリッド50の状態についての情報及び電力要件及びシステムに対するリクエストをモニタリングすること又は受け取ること、及び上述のようにそれがアクセスできる情報(資源特性及び利用可能性、高レベルの目標)に基づいて、どのように応答すべきかについての命令をシステム中の電力資源に送ることに対する責務も負い得る。具体的には、サーバ25は、その制御下にある資源のサブセットに、応答性ストリング16を形成するよう指示し得て、ここで応答性ストリング16の資源10、11、12は、応答性を持ったやり方でサーバレベルの目的を達成すべく互いに通信及び交渉するよう動作可能である。
【0030】
このような構成の局面は、本願と同出願人による「Power Distribution Control System」と題された以前の英国特許出願第1414724.3号及び「Power Distribution Control System」と題されたPCT特許出願第PCT/GB2014/0525423号に記載されている。
【0031】
あるシナリオでは、グリッド50中の周波数低下を考慮して、サーバ25は、その制御下にあるサブセットである資源10、11、12に応答性ストリング16を形成し、周波数低下に応答し、グリッド50に追加の電力容量を適切に提供するように指示するよう動作可能であり得る。
【0032】
しかし、応答時間がなるべく短くなければならないという、オーバーライドする要件が存在するときは、階層構成において、資源のシステム中の中央サーバが、グリッドステータスのリアルタイムのモニタリングに基づいて、資源に命令を送る(例えば資源の応答性ストリングを形成するために)ことは可能ではないかもしれない。例えば、GB National Gridに有用なやり方で電力容量を提供する資源の実効的なシステムにおいて、50Hzからの突然の周波数低下の場合には、資源は、2秒以内にその応答を応答又は始動してしまうか、又は10秒以内にそのフルの容量に達してしまうかしなければならない。
【0033】
したがって、そのようなシステムは、グリッドステータスをモニタリングし、イベントによってトリガされ、秒以下のスケール内(例えば200ms)の応答の必要を特定する手段を好ましくは備える。これは、もし中央サーバが、判断を行う唯一の手段であり、資源に命令を送る(例えば周波数低下に応答して資源のストリングを構築する)必要を有するなら、特に現在利用可能な光ファイバ上でのデータ転送の最大速度(200msを超える遅延につながる)のような物理的制約のために、可能ではないであろう。
【0034】
よってサーバは、周波数(又は電圧)低下の現象に応答する代わりに、その管理下の資源のサブセットに、将来にグリッド50で起こる潜在的な周波数(又は電圧)低下に応答する用意ができている応答性ストリングを形成するように命令するよう動作可能であることが望ましい。
【0035】
図2は、配電制御システムの実施形態における異なる要素間の関係を示す概略状態図である。サーバ25は、応答性ストリングA70及び応答性ストリングB71のような応答性ストリングを形成し、それらからレポートを受け取るよう動作可能である。応答性ストリングAは、3つの電力資源、つまりエンドポイントを含む。すなわち、電力源81、電力源82、及び電力源/蓄電装置83である。応答性ストリングBは、3つの電力資源、つまりエンドポイントを含む。すなわち、電力負荷84、電力負荷85、及び電力負荷/蓄電装置86である。これらは、グリッド50に全て接続されている。グリッドにおけるイベント又は変化は、システム中の電力資源によって感知され、グリッドは、当該資源から電力応答を受け取る。この図において、1個のサーバ、2個のストリング、及び6個の電力資源だけが描かれているが、サーバ、ストリング、及び資源の任意の個数が含まれ得ることが理解されよう。
【0036】
この実施形態では、エンドポイント81-86それら自身、すなわちシステム中の電力源つまり発電機のような資源は、十分なインテリジェンス及び自律を付与され、その結果、意思決定は、中央サーバ25から階層システム中のより低いレベルへ委任され得る。サーバ25が資源についての情報を記憶し、又はそれに対する高いレベルのアクセスを有するとしても、即時の意思決定がローカルでなされることが必要である。そのような構成の実施形態は、エンドポイントが、任意の応答性アクションの前に、高レベルの達成すべき目的又は考慮すべき誘因についての受け取られた知識を有することを可能にする。サーバは、例えばストリングを形成する時に、資源に対して予めの命令も提供し得て、それにより資源は、特定された及び/又は異なる時刻において、グリッド中の変化に応答してアクティベート又はディアクティベートする。
【0037】
そのような構成の下で、もしあるエンドポイント又は複数のエンドポイント群81-86が電力グリッド50中の周波数低下を感知するなら、エンドポイント群は、電力容量を提供(例えば発電機をオンにしたり、負荷をディアクティベートしたり、蓄電装置を放電させたり)することによって、それに応じて応答する意思決定をし得る。エンドポイントによってなされた決定は、完全に自律的かつ互いに独立であり得て、又は代替として、それらは、ピアツーピアの通信又はエンドポイント間の交渉に基づき得る。いずれの場合も、この意思決定は、この時点では、システム中の中央サーバ25の監視又は承認を必要としない。エンドポイント群は、特定のやり方で、互いと交渉及び/又は協調し得る。ある例では、応答性ストリング70の第1エンドポイント81は、その応答を、その対応するルータを介して、同じストリング中の第2エンドポイント82のルータにレポートし、第2エンドポイント82の応答は、第1エンドポイント81から受け取られた当該レポートに依存して条件付きである。この条件は、第1エンドポイントがその電力応答中のある点に達してから初めて、第2エンドポイントは、その応答を開始するというものであり得る。この種の協調的戦略を実現するために、サーバは、ストリングを形成する時点において、具体的な命令を含む予めの条件付きコマンドを資源に送り得る。
【0038】
図2に示されるように、複数のエンドポイントつまり資源81-86は、より早い時刻において、サーバ25によって既に応答性ストリング70、71にグループ化されていてもよい。エンドポイントが、グリッド周波数の変化に対する応答を実行した後に、サーバは、応答が行われたことを通知され得る。グリッドの周波数は、例えばそれぞれのエンドポイントと関連付けられた測定手段17、18、19によって、ローカルに測定され得ることに注意されたい。
【0039】
資源には、その時間的な特性について異なるタイプがある。例えば、異なる電力源、負荷、及び蓄電装置は、異なる応答時間、又は異なる動作持続時間を有し得る。少なくとも以下の議論では、電力資源の応答時間(ソース、負荷又は蓄電装置のいずれであっても)とは、資源が、アクティベート又はディアクティベートしろという命令を受け取った後に、必要とされるフルの電力容量(例えば1MW)のうちの、あるレベル又はパーセンテージ(例えば50%、95%又は100%)に到達するのにかかる時間を意味する。資源の持続時間とは、資源が、フルの容量のうちの所定のレベル又はパーセンテージより大きいその電力容量を維持し得る時間の長さを意味し、その後、その電力容量が急激に低下したり、徐々に減衰したりするかには関わらない。別に、全体としてのシステムの応答時間は、イベントを検出し、それが有効なイベントであるかをチェックし、可能な内部システム伝搬の遅延を許し、かつシステムの資源及び他の部分にコマンドを送るのにシステムが要する時間として記述され得る。
【0040】
例えば、熱電併給(Combined Heat and Power、CHP)タイプの資源は、一般には、応答が非常に速い。周波数が50Hzより上に動く場合には、高速応答CHP負荷は、非常に速くスイッチがオフにされ得る。周波数が50Hzより下に落ちる場合には、それらは、素速くスイッチがオンにされ得る。同様に、電池は、それに従って充電又は放電され得て、ソースは、非常に速くアクティベート又はディアクティベートされ得る。一方で、他のタイプの電力資源は、応答がより遅いことがある。例えば、ディーゼル発電機は、応答するのに通常、何十秒かかかる。一般に、機械ベースの資源は、アクティベート又はディアクティベートするのにより多くの時間がふつうかかる。
【0041】
例として、1MWの電力を提供するためには、電力資源のシステムは、必要な電力容量を3分間、提供するよう動作し得るが、チャージ(charge)するのに10秒を必要とする、いくつかの資源、及びチャージ(charge)するのに10ミリ秒しかかからないが、30秒しか持続しない他の資源を含む。典型的には、周波数応答性は、秒未満のタイムスケールを実現し、分オーダーの期間、持続することが必要である。したがって、異なる長所及び短所の資源を選択的に結合する能力を有するためには、例えば、それらを、要求された電力プロファイルを提供するための遅延はなしで、なるべく最短の時間で、必要な持続時間(すなわち所定の最小持続時間より大きい)を持って、内部で通信し及び/又は自律的に応答するよう動作可能である、資源の応答性ストリングに組み立てることが有利である。換言すれば、資源を操作するこの能力を持つシステムは、その操作が一般化されるか、又は個別のケースごとになされるかに関わらず、最適化された応答性と共に、より大きな融通性を享受する。上述のように、短い応答時間及びリアルタイム制御の要件は、ある実施形態では、不可避な時間遅延に起因して、中央サーバが非関与であることを必然的に伴う。その結果、資源の特性の知識に基づいて、資源の応答性ストリングは、潜在的な展開に先立って用意するためにサーバによって形成され得る。資源は、高レベルの目的及び目指すべき誘因が既に知らされている状態であってもよい。
【0042】
電力資源は、
図2において、ソース/蓄電装置資源83を応答性ストリングAに結ぶ実線と、それを応答性ストリングBに結ぶ破線とで示されるように、同時に2つの応答性ストリングに所属し得ることに注意されたい。サーバ又はストリング自体は、それらのルータを介して、必要なときにはこの資源が利用される最適化されたやり方を自分たちの間で交渉し得る。もちろんあるストリングに属する電力資源は、あるストリングから他のストリングへとサーバ25によって再割り当てがなされ得る。
【0043】
図3は、複数の電力資源を持つ応答性ストリングがどのように動作するかの例を示す時間図である。この応答性ストリングは、
図2の応答性ストリングA70に対応し得る。3つの曲線101、102、103は、電力資源81、82、83のそれぞれによってグリッド50に供給される電力出力をメガワット(MW)でそれぞれ示す。これら資源は、発電機のような電力源、又はバッテリーのような蓄電装置であり得る。
【0044】
この例では、周波数低下は、グリッド50中で時刻TFDに起こる。このような周波数低下に応答して、サーバ25は、包絡線111に従って追加の電力をグリッドに理想的には配送電したい。例えばサーバ25は、そのようなイベントの発生と同時にそのような応答を配送電するよう予め構成していてもよい。理想化された包絡線111は、配送電される電力について、立ち上がりエッジ、定常状態、及び立ち下がりエッジ(不図示)で示される。立ち上がりエッジは、急峻で、多くの利用可能な電力資源では達成が困難であり得る。立ち下がりエッジは、より緩やかであり得る。理想化された包絡線は、電圧又は周波数のような他の点でも定義され得る。この例では、サーバは、特定の周波数低下に応答して、可能であるならストリング70からは3MWの電力が必要であると判断している。特定の応答は、測定された特定のイベントに依存し得る。
【0045】
図示されたシナリオにおいて、第1電力資源81は、非常に短い応答時間を有する。それは、要求された電力を配送電できるかもしれないし、できないかもしれない。図示では、そうできそうになさそうである。その容量は、3MW未満である。その応答は、
図3で曲線101によって示される。第2電力資源82は、同様の性質であり、その応答曲線102は、非常に似ている。第3電力資源83は、利用可能である。曲線103によって示されるように、グリッドに電力を供給するのにより長い期間、持続することができる。
【0046】
サーバ25は、これら3つの電力資源をストリングに割り当てている(オプションとしては、他の電力資源と共に)。それは、2つのやり方のうちの1つで行っている。第1実施形態では、それは、資源のそれぞれについて定義された開始時刻(TFD, T1, T2)を有する。代替の実施形態では、後述されるように資源は、これらの開始時刻をそれぞれの応答に基づいてそれらの間で決定する。これら選択肢の組合せは、サーバ25によって定義された開始時刻を有する資源(例えば資源81)と、ストリング中のイベントに応答し、ストリング中の他の資源のパフォーマンスに応答する他の資源(例えば資源82及び83)とで可能である。
【0047】
図示されるように、資源81は、グリッドに応答し、余分の電力をグリッドに出力する第1資源である。第2電力資源82は、遅延の後に時刻T1において応答し、曲線102で示されるように、やはり3MW未満である容量を供給する。全ての資源の結合された電力出力は、曲線110で示されるように、3MWを超える。しかし第1及び第2電力資源81,82は両方とも相対的に短い持続期間を有する。第3電力資源は、時刻T2において起動する(activates)。この遅延は、より長い内在的応答時間によるものかもしれず、又は意識的なデッドタイムかもしれない。曲線103で示されるように、より長い期間、グリッドに電力を提供することができる。これは、曲線110で示されるように、応答性ストリング70によって、必要な期間、合計の電力提供が要求された3MWを上回るように維持する。
【0048】
図3を参照して記載されたこの構成は、資源が応答性負荷であり、周波数及び/又は電圧の上昇があり、かつ応答性負荷が周波数及び/又は電圧の上昇に応答する例にも、必要に応じて変更すれば適用される。
【0049】
前述のように、グリッド中の周波数低下又は変動のようなイベントにどのように応答するかを決定することには、複数の目的及び考慮事項が存在し得る。システムつまり資源のストリングは、複数の異なるサービス又は電力応答を提供し得る。選ばれ実行される戦略は、もし資源のシステムのサービスプロバイダ/事業者の観点でより高い優先度である目的が存在するなら、完全な及び/又は最速の電力応答を提供するものである必要はない。
【0050】
したがって意思決定のアルゴリズムは、サーバ25及びルータ13、14及び15に含まれ、これらは資源のシステムが提供し得る異なるサービスに関連する異なる潜在的な戦略を考慮に入れる。
【0051】
前述の誘因に基づく例示的状況において、グリッド中の周波数低下及び発電機のようなさらなる電力源のアクティベーションの必要に応答して、資源のストリングは、3.0MWから4.0MWの、例えば3.8MWの合計電力出力を提供して応答する。この例示的シナリオは、
図4Aに示され、ここでは4つの電力源及び/又は蓄電装置が、それぞれ時刻T
FD, T
3, T
4及びT
5で順次アクティベートし(曲線201、202、203及び204でそれぞれ表される)、曲線210で示されるようにT
6において合計3.8MWが提供される。
【0052】
ある所定の基準に関しては、誘因(これらには限定されないが金銭的報酬スキーム又は効率の考慮事項のような)が存在し得る。例えば、1つ以上の所定の電力出力スレッショルドを超えるべきではないことが望ましいかもしれない。例えば、提供される電力の量(グリッド中の変化に応答して)は、特定の量子化値(quantum)(メガワットの整数値のような)よりも大きいが、なるべくその量子化値に近いようにすることが望ましいかもしれない。この場合、3.0MWのスレッショルドを超えて0.8MWを提供することは、無駄の多い過剰提供と考えられる。追加の0.8MWは、予備として(利用可能な電力として、又は応答性負荷の場合は利用可能な応答性負荷として)保持するのが好ましいだろう。
【0053】
現在の構成では、4つの資源を含むストリングに対して責任がある中央サーバは、ストリングの資源のうちのサブセット、この場合は曲線204に対応する資源に対して、離脱(drop out)するよう(現在の応答性ストリングから去るか、又はディアクティベートされるかのいずれかで)命令するように動作可能であり、ストリングの合計電力出力は低減されるが、3.0MWより上に維持される。時刻T6で実行されるこの命令の結果は、
図4Bに示される。
【0054】
資源が離脱するようにしむける判断は、この特定の資源の離脱は、ストリングの電力出力が0.8MW未満の量だけ低下する(又は応答性負荷の場合は電力消費が低下する)ことにつながるであろうという知識に基づき得る。ほぼ0.8MWの「節約された」不使用の電力容量は、システムの「可用性」つまり予備の一部として考えられ得て、その結果、それはシステムの将来の応答性を使い切る代わりに増大させ得る。
【0055】
応答性ストリングの資源(上の例では4つの資源)は、好ましくは、それぞれのサーバの監視下で、グリッド中の周波数低下の前に、既に応答性ストリングとして構成されている。周波数低下が起こる時、ストリングは、短い応答時間でそれに応答することができ、即時の応答性が非常に優先度の高い特性であるという事実を鑑みて、3.8MWの電力を提供する。その後、システムをモニタリングするサーバは、接続に起因する時間遅延に関連付けられはするが、既知の誘因スキームと合わない過供給を検出し(この検出は、資源のストリングからサーバに送られる1つ以上のレポートに基づき得る)、その結果、介入し、合計電力供給が3.0MWをわずかに上回る程度にまで低減させる、オーバーライドする命令を発行する。
【0056】
他の例示的シナリオでは、資源のセットは、2MWの電力を提供する能力を初期的には有するが、その後、発電機の故障又は運用コストの考慮のような、なんらかの予期できない理由に起因して1.5MWしか提供できない。サーバは、この容量の変化に応答し得て、いくつかの資源に対しては離脱することによって、最大効率のために1MWしか供給しないように命令する。より大きい量子化値を配送電するのに足りないよりは、所望の包絡線に従った応答性の量子化値(例えば1MW)を配送電するのに成功している方が好ましいかもしれない。
【0057】
上述され、
図3、4A及び4Bで示された電力の量子化値に基づいて電力配送電制御システムを運用するスキーム又は方法は、「粒状応答性」と呼ばれ得る。発電機のような電力源及びバッテリーのような蓄電装置が、余分の電力出力を提供することによって、グリッド中の周波数低下に応答する上の例と同様に、粒状応答性は、周波数の上昇があり、電力負荷が応答してスイッチをオン又はオフされるシナリオにも必要に応じて変更することで等しく適用され得て、負荷容量の増分の量子化値を提供できる。これは有利には、使用されない負荷容量を節約し、システムの応答性を増大させる。
【0058】
ここで開示されている電力配送電制御システム及びそのようなシステムを運用する方法は、高速応答を運用可能性と組み合わせることによって、ほぼ即時の応答の重要性又は必要性により、そうでなければ可能ではないさらなる意思決定のための余分の時間を効果的に提供する。
【0059】
サーバによって提供される制御の局面は、ローカル資源又はルータに、周波数の低下又は上昇の場合に何をすべきかを伝えることであり得る。他の局面は、ストリング中で利用可能である資源のリストから資源を外す、つまり将来の時点で資源の応答性をディアクティベートすることを決定することであり得る。制御のこれらの局面は、記憶されたリスト又は多数の資源のデータベースを処理する必要のような、サーバの関与に関連する遅延のせいで時間がかかるが、それらは、グリッド中のイベントの前に行われ得るので、資源は、イベントに迅速に応答するために準備ができている。
【0060】
図5は、ここで開示されている電力配送電制御システムを運用する例示的方法300を示すフロー図である。ステップ310において、サーバは、電力グリッドに接続された電力システム中の複数の電力資源から、電力資源のサブセットを選択することによって、(応答性の)ストリングを形成する。これは、グリッド中の周波数低下又は変動又は他のイベントの準備のための、電力資源についての既知の知識に基づき得る。サーバは、ルータを介して命令をストリングの資源に送り、ストリングの形成を実現する。これら命令は、それぞれのルータに対して、ストリングの他の資源は何であるかを示し、ルータは、互いに通信を開始できる。
【0061】
ステップ320において、ストリング中のそれぞれの資源は、グリッド中の変化を知る。この変化は、周波数又は電圧の突然の低下又は上昇であり得る。システム全体が電力グリッドに接続されているので、他のストリング及びクラスタ資源及び高レベルサーバ(群)は、同時にグリッド中の同じ変化について知り得る。
【0062】
ステップ330において、ストリング中の資源は、グリッド中の変化に応答して、必要に応じて電力入力又は負荷を提供するように応答する。この応答は、電力源、負荷及び蓄電装置を含み得る、その電力資源のうちのいくつかのアクティベーション(activation)又はディアクティベーション(deactivation)を伴い得る。これら資源は、互いに独立して、又はそれぞれのルータを介して資源の間での通信及び交渉を介して、中央サーバの介在なしで、応答について判断し、応答を実行する自律性を有する。
【0063】
ステップ330の後、ストリング中のそれぞれの資源は、その応答をサーバにレポートする(ステップ340)。サーバは、それから、ストリングのストリング応答又はストリング中のある資源を変更する命令を発行し得る(ステップ350)。ストリング中の資源は、それらの応答をその新しい命令に従って実行するように次に進む(この方法は、ステップ330に戻る)。
【0064】
点Pにおいて応答が完了し、又はより重大なサーバの介入が必要となるまで、ストリングは、このループ(ステップ330、340及び350)を繰り返す。もし応答が完了し、新しいストリングの形成が要求されないなら(Qでno)、プロセスは、ステップ320に戻り、応答が必要とされる新しい変化を待つ。もし新しいストリングの形成が必要とされると判断されるなら(Qでyes)、プロセスは、ステップ310に戻る。この必要は、運用上の理由又は他のスケジューリングの理由に基づき得る。サーバはそれから、資源の新しいストリングを形成し得て、新しい構成が現在のものに取って代わる。資源は、ストリングに追加され、又はストリングから除去され得る。この方法は、ステップ310から再び継続する。
【0065】
P及びQは、2つのネストにされたループ中の出口ポイントに過ぎず、同じ結果を達成するために、異なるやり方で再構成され得る。
【0066】
上述のように、サーバ25は、1つ以上のルータ13、14、15に命令を送って、ルータにサーバの命令に従って動作するようにさせ得る。これは、サーバからの通信が途絶えた場合(又はルータ間の通信が途絶えた場合)でさえもあてはまる。ルータがリアルタイムでなされたアクションを確認できることは必須ではないが、結局は、全てのルータが配送電されたサービスの量を確認することが期待される(例えば料金請求の目的で)。全ての資源にわたって配送電されたサービスの量は、最終的な個々の配送電の失敗についての緊急対応(contingency)も含み得て、制御システムの他の部分によって定義され得る。ルータの側のこの自律性は、それらがグリッド中のイベントにすぐに対応することを可能にする。
【0067】
代替として、サーバ25は、1つ以上のルータ13、14、15に命令を送るが、サービスデリバリ(service delivery)のリアルタイムの確認を予期する。サーバは、配送電されたサービスの正しい量が届けられたことを検証するために、この確認を利用し得て、もしサービスデリバリを完了させるために新しい資源が起動されなければならないなら、修正アクションを行う。これは、特定の資源(群)からの確認信号が来なかった場合には、短期間のアンダーデリバリ(underdelivery)を発生し得る。そのような短期間の(典型的には数秒)アンダーデリバリと親和性のあるサービスがいくつか存在する。代替として、もし個々の失敗についての緊急対応が含まれ、提供されたレベルよりより失敗がより少ないなら、オーバーデリバリ(overdelivery)が存在し得る。2,3秒のオーバーデリバリは、資源がそれらの配送電を止めることができ、かつ応答性がある(すなわち新たに応答するのに利用可能である)位置に即時に戻れるとすれば、ささいなものであると考えられ得る。
【0068】
第3の可能なシナリオでは、サーバは、多くのエネルギールータ13、14、15等に命令し、ルータ群がそれらの間でピアツーピアベースで協調することを予期する。もしネットワークトポロジーがそれを許すなら、ルータは、それらの間で直接に通信し得る。もしネットワークトポロジーが直接のピアツーピア接触を許さないなら(ルータが異なるファイアウォールの後ろに配置されている場合には典型的である)、ルータは、高速なピアツーピアの情報交換を可能にするネットワークレイヤを作るルータの立場でサーバを利用し得る(例えば
図1を参照すればクラスタ又はストリング32中のルータは、サーバ28を利用し得る)。そのようなネットワークレイヤを作ることは、ルータのそれぞれがルータとルーティングサーバ28との間でポイントツーポイント接続を有し(例えばVPN)、ルーティングサーバ28は、それから、クラスタ32内の異なるルータの間でのトラフィックをルーティングすることを意味する。このルーティングサーバ28は、サービスの配送電(delivery)を最初に要求したサーバ(サーバ25)と同じである必要はない。ルーティングサーバ28は、そのストリング内の全てのルータのビジビリティを有し、それらの間でデータパケットをルーティングできるネットワークポイントであり得る。ルーティングサーバは、それがサーブするルータに物理的により近い(サーバ25より)ために、及び/又はそれらルータの間のルーティングのタスク専用であるために、より低いレイテンシを有し得る。ルーティングサーバは、サーバ25と通信する必要がない(しかし好ましくはサーバ25とも通信する)。いずれにしても、ストリングは、短い時間スケールで集合的なエンティティとしてサーバのリクエストに応答でき、それぞれのルータは、サーバ25にその応答の結果を報告として返すことができる(それらの個別の応答をサーバ25に直接に又はルーティングサーバ28を通して報告する、又はそれらの集合的な応答をサーバ25にルーティングサーバ28を通して報告する)。
【0069】
これには限定されないが、冷蔵負荷(refrigeration loads)(及びそれらの圧縮機)のような資源は、いわゆるデッドタイムを有し得ることに注意されたい。そのような資源は、オン又はオフするのに無視できないような期間がかかり得る。資源のセットが、それらのデッドタイムのいくつかが重なって、そのセットが完全には応答性がない状態になる、又はその結果、ある時刻において応答性が少なくなるように動作されるのは望ましくない。中央サーバは、そのような緊急事態をモニタし、個々の資源の運用を制御することによって、資源のセットが全体としては、グリッド中の起こり得る又は実際の変化及び電力要求に対して応答性を維持するようにし得る。そのような構成の局面は、「Refrigeration Load with Improved Responsiveness」と題された、以前の英国特許出願第1515911.4に記述されている。
【0070】
実施形態及び例の上記記載は、例示としてのみ与えられている。本発明のそれぞれの局面及び実施形態は、組み合せられ得る。さまざまな局面及び実施形態は、他の局面及び実施形態に従って改変され得る。本発明の範囲は、実施形態の詳細によって限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義される。