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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】超低キャリーオーバーのソレノイド弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20220318BHJP
【FI】
F16K31/06 305K
F16K31/06 305L
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019525896
(86)(22)【出願日】2017-11-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 US2017060511
(87)【国際公開番号】W WO2018097963
(87)【国際公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-10-06
(31)【優先権主張番号】62/425,198
(32)【優先日】2016-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598057523
【氏名又は名称】パーカー・ハニフィン・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヨン
(72)【発明者】
【氏名】プレイズ,レオナード
(72)【発明者】
【氏名】パーセル,ドナルド
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-111971(JP,U)
【文献】実開平04-097179(JP,U)
【文献】米国特許第03799203(US,A)
【文献】特開2013-083363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体を通る流体流れのためのポーティングを画定する弁体と、
前記弁体に取り付けられ、閉位置と開位置との間で電磁的に駆動される第1のポペットを有する、第1の弁構成要素と、
前記弁体に取り付けられ、閉位置と開位置との間で電磁的に駆動される第2のポペットを有する、第2の弁構成要素と
前記弁体によって画定される共通の内部チャンバの中まで延在し、第1の弁座表面と、対向する第2の弁座表面と、を含む、中央弁座と、
を備え、
前記第1の弁構成要素及び前記第2の弁構成要素は、前記第1のポペットと前記第2のポペットのうちの一方のポペットを前記開位置で保持し、他方のポペットを前記閉位置で維持するように、独立して動作可能であり、
前記弁体によって画定される前記ポーティングが、
前記弁体によって画定される共通の内部チャンバの中へと開いている第1の側方ポート内で終端する第1の側方流れ通路を有する第1の側方ポーティングと、
前記共通のチャンバの中へと開いている第2の側方ポート内で終端する第2の側方流れ通路を有する第2の側方ポーティングと、
前記共通のチャンバの中へと開いている共通のポート内で終端する共通の流れ通路を有する共通のポーティングと
有し、
前記第1の側方ポーティング、前記第2の側方ポーティング、および前記共通のポーティングが、各々、前記共通のチャンバに流体連通され、
前記第1の弁座表面は、前記第1の側方ポートから前記共通のポーティングまで延在し、対向する前記第2の弁座表面は、前記第2の側方ポートから前記共通のポーティングまで延在し、
前記第1のポペットが前記閉位置にあるとき、前記第1のポペットが、前記中央弁座の前記第1の弁座表面に対して相互作用して、前記第1の側方ポーティングと前記共通のポーティングとの間の流体の流れを阻止するように配置され、
前記第1のポペットが前記開位置にあるとき、前記第1のポペットが、前記第1の側方ポーティングと前記共通のチャンバを通る前記共通のポーティングとの間の流体の流れを可能にするように配置され、
前記第2のポペットが前記閉位置にあるとき、前記第2のポペットが、前記中央弁座の前記第2の弁座表面に対して相互作用して、前記第2の側方ポーティングと前記共通のポーティングとの間の流体の流れを阻止するように配置され、
前記第2のポペットが前記開位置にあるとき、前記第2のポペットが、前記第2の側方ポーティングと前記共通のチャンバを通る前記共通のポーティングとの間の流体の流れを可能にするように配置される、
ソレノイド弁システム。
【請求項2】
前記第1および第2のポペットが、共通の長手方向軸に沿って前記開位置と前記閉位置との間を移動する、
請求項1に記載のソレノイド弁システム。
【請求項3】
個別の前記第1または第2のポペットの一方が前記開位置にある場合、個別の前記第1または第2のポペットのもう一方が前記閉位置にあるときに、それぞれの開いている側方通路および前記共通の通路の交差位置が「L字」形の幾何形状を有する、
請求項2に記載のソレノイド弁システム。
【請求項4】
個別の前記第1または第2のポペットの一方が前記開位置にある場合、個別の前記第1または第2のポペットのもう一方が前記閉位置にあるときに、それぞれの開いている側方通路と、前記共通のチャンバと、前記共通の通路とを通る流れ通路が湾曲した「Π」形の幾何形状を有する、
請求項2から3のいずれか一項に記載のソレノイド弁システム。
【請求項5】
前記第1の側方通路、前記第2の側方通路、および前記共通の通路が、管状の通路である、
請求項2から4のいずれか一項に記載のソレノイド弁システム。
【請求項6】
前記共通のチャンバがT字形の幾何形状を有する、
請求項1から5のいずれか一項に記載のソレノイド弁システム。
【請求項7】
前記共通のチャンバが前記弁体内の中央に位置し、前記第1および第2の側方ポーティングが前記共通のポーティングの両側にある、
請求項1から6のいずれか一項に記載のソレノイド弁システム。
【請求項8】
前記中央弁座が円錐形状を有する、
請求項に記載のソレノイド弁システム。
【請求項9】
記弁座の前記第1および第2の表面が、前記ポペットの長手方向軸を基準として約45°で傾斜する、
請求項に記載のソレノイド弁システム。
【請求項10】
前記弁体が二次弁座をさらに備え、
前記第1および第2のポペットのベースが、前記閉位置時に前記二次弁座と相互作用する、
請求項1~9のいずれか一項に記載のソレノイド弁システム。
【請求項11】
前記二次弁座が段差を付けられ、
前記ポペットベースが前記二次弁座に対応する形で段差を付けられる、
請求項10に記載のソレノイド弁システム。
【請求項12】
前記第1および第2の弁構成要素の各々が:
前記閉位置と前記開位置との間で前記ポペットを駆動する磁気アーマチュアと;
軟磁性フレーム内に収容されるソレノイドコイルと
を備え、
前記ソレノイドコイルが励磁されるとき、磁場が作られ、前記磁場が前記ポペットと共に前記アーマチュアを前記閉位置と前記開位置との間で移動させる
請求項1から11のいずれか一項に記載のソレノイド弁システム。
【請求項13】
前記第1および第2の弁構成要素の各々が、前記閉位置または前記開位置のいずれかで前記アーマチュアを双安定的に維持するラッチ機構を有する、
請求項12に記載のソレノイド弁システム。
【請求項14】
前記ラッチ機構が、前記ポペットが前記閉位置にある状態において前記アーマチュアを付勢するばねを有する、
請求項13に記載のソレノイド弁システム。
【請求項15】
前記ラッチ機構が、前記ポペットが前記開位置にある状態において前記アーマチュアを保持する永久磁石(PM)要素をさらに有する、
請求項14に記載のソレノイド弁システム。
【請求項16】
前記ソレノイドコイルが第1の方向の電流で励磁されると、前記ポペットを備える前記アーマチュアを前記ばねの付勢に逆らって前記閉位置から前記開位置まで移動させ、
前記ソレノイドコイルが前記第1の方向の反対の第2の方向の電流で励磁されると、前記ポペットを備える前記アーマチュアを前記PM要素の磁力に逆らって前記開位置から前記閉位置まで移動させる、
請求項15に記載のソレノイド弁システム。
【請求項17】
前記ソレノイドコイルが楕円断面を有する、
請求項12~16に記載のソレノイド弁システム。
【請求項18】
前記第1および第2の弁構成要素の各々が、前記ソレノイドコイルの前記楕円断面の短い方の軸に沿って9mm以下のフットプリントを有する、
請求項17に記載のソレノイド弁システム。
【請求項19】
前記弁体、ならびに前記第1および第2の弁構成要素の外側フレームが、前記第1および第2の弁構成要素のための共通のマニホルドを形成する、
請求項1から18のいずれか一項に記載のソレノイド弁システム。
【請求項20】
前記第1および第2の弁構成要素が、鏡像の対向する対の等しいソレノイド弁構成要素として構成される、
請求項1から19のいずれか一項に記載のソレノイド弁システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2016年11月22日に出願された米国仮特許出願公開第62/425,198号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は概してソレノイドアクチェータ弁に関し、より詳細には、例えば、生命科学、医学、および分析化学の用途などにおける、キャリーオーバーが少ないことと、死容積が最小であることと、内部容積が最小であることと、大きさがコンパクトであることと、ラッチ機能があることとを必要とするような用途で使用されるためのソレノイドアクチュエータ弁に関する。
【背景技術】
【0003】
低キャリーオーバーの弁は多様な用途で使用される。例えば、臨床ラボラトリおよび病院は、血液、尿、他の流体、および組織などの、患者の医学的試料を分析するために多様な診断装置を利用する。このような装置を実現可能な限りコンパクトにすることが望ましいことから、弁の大きさは重要事項であり続けるが、大きさを縮小しても、十分な弁速度および弁効率を維持する必要がある。電磁的に駆動されるアクチュエータを備えるソレノイド弁がこのような用途における流体流れを制御するのに採用され得る。
【0004】
したがって、コストを削減して試料処理能力を向上させながら、器具の大きさおよび複雑さを低減することに対する、臨床のマーケット(market)、分析のマーケット、および作用物質検出のマーケットの顧客の要求が増している。使用者側は、高価な試薬の使用を減らすために流体経路の大きさを縮小することの要求を強めている。このことを達成するためにより小径の管類を使用するシステムは、通常、必要とされる流量を送達するためにはより高いシステム圧力を必要とすることになる。試料をより迅速に処理することの要望と相まってシステムのボリュームを縮小することにより、キャリーオーバーが減る。加えて、使用者は、コンパクトなフットプリントを維持するために互いに隣接して設置されるかまたは近傍に設置される弁を有することを好み、マニホルドの大きさを低減するのを可能にするために弁の幅が小さいことを望み、このことが器具全体の大きさを縮小することに寄与する。
【0005】
1つの一般的な弁システム構成は、隣接する位置に設置される2つの個別のソレノイド弁構成要素を有する、三方弁構成である。各々の個別のソレノイド弁が流れ通路を有することができ、これらの個別の流れ通路の各々が、三方弁システムを通る共通の流れ通路の共通のポートに流体連通される出力ポートを有する。特定の状況下では、各弁構成要素が個別に動作させられ得、つまり、個別のソレノイド弁構成要素のうちの1つが開いているとき、個別のソレノイド弁構成要素のもう一方が閉じている。加えて、しばしば、2つのソレノイド弁構成要素の動作を切り換えることが所望される。このような弁動作の切り換えを実現する場合、次の利用のために、存在するいかなる流体(例えば、試料、試薬溶液など)も流し出す必要がある。言及したコンパクトなフットプリントにおいて高効率を実現するためには、後続の利用の間の時間を最小にすることが重要事項となる。加えて、流体を蓄積させるような大きいデッドスペースが存在し得、それにより無駄な試薬を生じさせ得、またフラッシングすることが困難であるエリアを生じさせ得る。
【0006】
個別の弁構成要素を通る流れを切り換えるための効率の評価基準は、当技術分野では、一般に、「キャリーオーバー性能」と称される。弁の視点からは、流体通路およびシステム全体の大きさがコンパクトであることに共に、高圧力および高流量であることが、コンパクトな大きさの複数の弁構成要素を用いての比較的高い圧力という条件下で作動される低キャリーオーバーの時間(low carryover time)を生じさせる必要があるということにつながる。工業規格によると、キャリーオーバー性能は、第1の流体からの残留流体の量を最小にしながら、第1の流体の流れから第2の流体の流れへと迅速に切り替わる弁の能力として定義されている。キャリーオーバー性能は、弁システムが流体を化学反応へと誘導するという役割を有し、したがってそれにより無駄な流体を最小にして各流体の体積および/または濃度を正確にする必要があるような、臨床および分析の用途における考慮すべき主要な事項である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様は、共通のマニホルドを形成するように一体に設置される2つの個別のソレノイド弁構成要素を有する三方ソレノイド弁システムに関連する。各々の個別のソレノイド弁構成要素がそれぞれの流れ通路を開けるおよび閉じるためにもう一方から独立して動作することができ、ここではこれらの各々の個別の流れ通路が、三方弁システムを通る共通のポートに流体連通される流体ポートを有する。本発明は、高圧力および高流量であることとの組み合わせで、および三方遮断能力を有する形で、キャリーオーバー性能を向上させること(つまり、低キャリーオーバーの時間)を独自の形で実現する、コンパクトな大きさおよびフットプリント(例えば、短軸方向または短い方の軸の方向において9mm以下)を有するソレノイド弁システムを提供する。
【0008】
例示の実施形態では、キャリーオーバー性能を向上させることを達成するために、流体通路内のデッドスペースを最小にするようなより小さい内部チャンバ容積が、従来の構成と比較して、設計される。フットプリントを狭くすることを達成するために、弁システムが、楕円形状のソレノイドを有するように構成され得、ここではラッチ機構が改善され、それにより各々の個別のソレノイド弁構成要素の開位置と閉位置との間で双安定の動作を実現する。さらに遮断機能を実現するために、電磁的に駆動される2つのポペットが使用され得、各々の1つのポペットが各々の個別のソレノイド弁構成要素のためのものである。
【0009】
本発明の構成は、従来の構成と比較して内部容積を小さくすることを達成し、ここでは管状の流れ通路が、残留流体を溜めるようなデッドスペースを構成し得るようなポケットまたはキャビティを最小で有する。三方弁システムの場合、2つの側方ポートおよび共通のポートを有する3つのポートが、概して、個別のソレノイド弁構成要素を連結する弁体の中央部分内の共通のチャンバのところで交わることができる。2つの側方ポートがエラストマーポペットシールを有することができ、エラストマーポペットシールが共通のチャンバのエリアにおいて三方弁システムの中心の近くにある。本明細書で使用される場合の「共通の」チャンバは、2つの側方ポートおよび共通のポートの、座下容積(under seat volume)の交差位置エリアを有することができる。共通のチャンバが、概略「T字」の幾何学的形状を有するように構成され得る。弁体の側方ポート通路で形成される弁座が、約45°の表面傾斜(surface inclination)を有する円錐形状を有するように構成され得、ポペットが、共通のチャンバのところのポートの交差位置に実現可能な限り近づくように配置される密閉要素として機能することができる。
【0010】
このような構成を用いる場合、開いているソレノイド弁構成要素の一方において、開いている流れ通路の交差位置が、別のポペットシールによりもう一方のソレノイド弁構成要素が閉じられている場合にほぼ「L字」形として構成され得る。このような構成は死容積および共通のチャンバ内の残留流体を劇的に減らし、また、共通のポートが、異なる流体および流れ方向を切り換える場合の必要時に、非常に容易に洗浄され得る。例示の流れ切り換えには、第1の側方ポート→共通のポート、から第2の側方ポート→共通のポート;または共通のポート→第1の側方ポート、から共通のポート→第2の側方ポート(および、これらの逆)が含まれてよい。個別のソレノイド弁のうちの一方が遮断されるような、基本的には三方弁システム構造の半分である、二方弁動作の場合、弁システムの内部の流れ通路が湾曲チューブ「Π」の形状として構成され得、それによりデッドエリアを減らすことができ、それにより共通のチャンバの全体をきれいにフラッシングすることができるようになる。
【0011】
例示の実施形態では、三方弁システムが、ラッチ機構を有する鏡像の対向する対の等しいソレノイドを有し、これらの対の等しいソレノイドが独立して動作させられ得る。各々の個別のソレノイド弁構成要素が、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,482,360号で説明される、本出願人の特許をとった楕円コイル形状を有することができ、また、永久磁石リング(PM(permanent magnetic)リング)を利用するラッチ機構を有することができる。PMリングがコイルフレームの中に埋設され得、コイルフレームが軟磁性材料で作られ、したがってコイルの磁束ループの一部分として構成される。PMリングの磁極軸がコイルフレーム内の磁束と平行になるように指定され得、PMリングがアーマチュアの近くに位置するように設計される。弁が、例えば、通常は閉じられている三方弁、または二方弁などの、異なる組み合わせの機能を有するように、特別な弁ドライバを介して動作させられ得る。その理由は、各ソレノイドが独立して操作され得るからである。
【0012】
各々の個別のソレノイド弁構成要素のためのラッチ特徴部が双安定の動作を実現することができ、双安定の動作により、アーマチュアポペットが、継続的な電力供給を必要とすることなく開位置または閉位置を維持することができる。双安定の動作の1つの例では、電力の入力なしで、ソレノイド弁構成要素が、付勢ばね力に依存することにより閉位置で保持され得、および/またはPMリングの磁力に依存することにより開位置で維持され得る。アーマチュアポペットの位置を切り換えることが、コイルを励磁して異なる電流流れ方向を適用することにより、実行され得る。電力の供給なしで用途のタスクを実行することを目的としてソレノイドが双安定的な位置(bistable position)を維持することができることから、弁の消費電力が劇的に減る。
【0013】
したがって、本発明の態様は改善されるソレノイド弁システムであって、このソレノイド弁システムが、弁体を通る流体流れのためのポーティング(porting)を画定する弁体と、反対側において弁体に取り付けられる第1および第2のソレノイド弁構成要素とを有する。この弁システムの例示の実施形態では、各弁構成要素が、閉位置と開位置との間で移動するポペットを備える、電磁的に駆動されるアーマチュアを有する。弁体によって画定されるポーティングが、第1の側方ポーティングと、第2の側方ポーティングと、弁体によって画定される共通の内部チャンバに流体連通される共通のポーティングとを有する。それぞれのポペットが閉位置にあるとき、それぞれの側方ポーティングと共通のポーティングとの間の流体の流れが阻止され、それぞれのポペットが開位置にあるとき、ポペットがそれぞれの側方ポーティングと共通のチャンバを通る共通のポーティングとの間の流体の流れを可能にする。このような構成が、高圧力および高流量でコンパクトなフットプリントを維持しながらcarryover performance timeを低下させる。
【0014】
弁体が中央弁座を有することができ、ポペットが閉位置にあるときにこの中央弁座と相互作用する。中央弁座が円錐形状であってよい。第1および第2の弁構成要素の各々が、第1の位置または第2の位置のいずれかでアーマチュアを双安定的に維持するラッチ機構をさらに有することができる。ラッチ機構が、ポペットが閉位置にある状態においてアーマチュアを付勢するばねと、ポペットが開位置にある状態においてアーマチュアを保持する永久磁石(PM:permanent magnetic)要素とを有することができ、ここではソレノイドコイルに対する電力の供給がない。
【0015】
本発明のこれらのおよび別の特徴が、以下の説明および添付図面を参照することにより明らかとなる。本記述および図面では、本発明の特定の実施形態が、本発明の原理を採用することができる手法のうちの一部の手法を示すものとして詳細に開示されるが、本発明がこれに対応するようにその範囲を限定されるわけではないことを理解されたい。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲の精神および表現の範囲内にあるすべての変更形態、修正形態、および均等物を含む。一実施形態に関連して説明および/または例示される特徴は、1つまたは複数の他の実施形態と同じ手法または同様の手法で使用され得、および/あるいは他の実施形態の特徴との組み合わせでまたはその代わりとして使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態による例示の低プロフィールの小型ソレノイド弁システムを示す等角図である。
図2図1の例示の低プロフィールの小型ソレノイド弁システムを示す側断面図である。
図3】弁システムを通るポーティング構成を示している、図2の例示の低プロフィールの小型ソレノイド弁システムの一部分を示す拡大図である。
図4図1~2の例示の低プロフィールの小型ソレノイド弁システムを示す一部切り取りの等角図である。
図5図4の低プロフィールの小型ソレノイド弁システムの寸法プロフィールを示す上面図である。
図6図1~5の低プロフィールの小型ソレノイド弁システムで使用される例示のソレノイドコイル組立体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、全体を通して同様の要素を示すのに同様の参照符号が使用される図面を参照して本発明の実施形態を説明する。これらの図が必ずしも正確な縮尺ではないことを理解されたい。
【0018】
図1は、本発明の実施形態による例示の低プロフィールの小型ソレノイド弁システム10の等角図を描いている図面である。弁システム10が第1のソレノイド弁構成要素12および第2のソレノイド弁構成要素14を有することができる。個別のソレノイド弁構成要素12および14が共通の弁体16に設置され得、単一のマニホルドとしてのシステムを構成する。弁システム10が、弁動作に適する手法で弁システムを設備に設置するための任意適切な固定要素18を有することができる。この設置が、任意特定の用途に適するように、流体源およびドレン通路に迅速に接続するのを可能にする。個別のソレノイド弁構成要素12および14の各々が、それぞれの第1および第2の弁構成要素のソレノイドを励磁するためのそれぞれのリードワイヤリング(lead wiring)20および22をさらに有することができる。
【0019】
概して、本発明の態様は改善されるソレノイド弁システムであり、このソレノイド弁システムが、弁体を通る流体流れのためのポーティングを画定する弁体と;弁体に取り付けられる第1の弁構成要素であって、第1の弁構成要素が、閉位置と開位置との間で電磁的に駆動される第1のポペットを有する、第1の弁構成要素と;弁体に取り付けられる第2の弁構成要素であって、第2の弁構成要素が、閉位置と開位置との間で電磁的に駆動される第2のポペットを有する、第2の弁構成要素とを有する。例示の実施形態では、弁体によって画定されるポーティングが、第1の側方ポーティングと、第2の側方ポーティングと、共通のポーティングと有し、これらの各々が弁体によって画定される共通の内部チャンバに流体連通される。第1のポペットが閉位置にあるとき、第1のポペットが、第1の側方ポーティングと共通のポーティングとの間の流体の流れを阻止するように配置され、第1のポペットが開位置にあるとき、第1のポペットが、第1の側方ポーティングと共通のチャンバを通る共通のポーティングとの間の流体の流れを可能にするように配置される。第2のポペットが閉位置にあるとき、第2のポペットが、第2の側方ポーティングと共通のポーティングとの間の流体の流れを阻止するように配置され、第2のポペットが開位置にあるとき、第2のポペットが、第2の側方ポーティングと共通のチャンバを通る共通のポーティングとの間の流体の流れを可能にするように配置される。
【0020】
第1および第2の弁構成要素の各々が、閉位置と開位置との間でポペットを駆動する磁気アーマチュアと、軟磁性フレーム内に収容されるソレノイドコイルとを有することができる。ソレノイドコイルが励磁されるとき、磁場が作られ、この磁場がポペットと共にアーマチュアを閉位置と開位置との間で移動させる。第1および第2の弁構成要素の各々が、第1の位置または第2の位置のいずれかでアーマチュアを双安定的に維持するラッチ機構をさらに有することができる。ラッチ機構が、ポペットが閉位置にある状態においてアーマチュアを付勢するばねと、ポペットが開位置にある状態においてアーマチュアを保持する永久磁石(PM:permanent magnetic)要素とを有することができる。したがって、コイル電力がオフにされた状態の閉位置では、ばね力がPMリングによりアーマチュアに作用する力に打ち勝つことができ、ポペットを閉じた状態にしてアーマチュアを押す。コイル電力がオフにされた状態の開位置では、PMリングによりアーマチュアに作用する力がばね力に打ち勝つことができ、それによりポペットの開いた状態でアーマチュアを保持する。
【0021】
図2は、図1の例示の低プロフィールの小型ソレノイド弁システム10の側断面図を描いている図面である。第1のソレノイド弁構成要素12が、上で言及したように共通のマニホルドの一部分を形成する外側フレーム24a内に収容され得る。任意適切な固定要素26a(例えば、ボルト、またはねじ、など)が外側フレーム24aを共通の弁体16に固着するのに使用され得、それにより第1のソレノイド弁構成要素12を共通の弁体16に設置する。
【0022】
第1のソレノイド弁構成要素12が、外側フレーム24a内に収容された状態で、軟磁性フレーム30aによって支持されるソレノイドコイル28aを有することができる。軟磁性フレーム30aが、ソレノイド弁に関連して使用されるための当技術分野で既知の任意適切な強磁性材料で作られてよい。コイル28aが、第1のソレノイド弁構成要素12のフットプリントを最小にするために楕円断面を有するように構成され得る。楕円断面を用いる場合、楕円断面の短軸方向または短い方の軸の方向に沿って9mm以下である弁のフットプリントが容易に達成され得、それにより一般的な用途で利用される必須の高圧力および高流量に最も適するようなコンパクトな大きさを実現する。図5を簡単に参照すると、このような9mmの短軸方向または短い方の軸の方向を定義している上面図が示されている。
【0023】
図2との組み合わせで図6を簡単に参照すると、例示のソレノイドコイル28aが分離されて示されている。ソレノイドコイル28aが、銅コイル33aを巻くためのフレームを提供するプラスチックボビン32aを有することができる。リードワイヤ20がボビンを通って延在して銅ワイヤ33aへの接続を実現し、銅ワイヤ33aがさらにリードワイヤリング20を介して電源(図示せず)に接続される。図6も短軸または短い方の軸を特定しており、これが上で言及したように9mm以下の寸法を有することができる。
【0024】
第1のソレノイド弁構成要素12が、永久磁石(PM)要素36aを収容する内側軟磁性フレーム要素34aをさらに有することができる。PM要素がリング構造として構成され得、したがってPMリング36aと称されてもよい。後でさらに詳説するように、PMリング36aが、第1の弁構成要素12の双安定の動作を可能にするラッチ機構の一部として動作し、それにより、開位置または閉位置のいずれかでソレノイド弁構成要素を保持することを目的として一定の電力供給を維持することの必要性を排除する。
【0025】
第1のソレノイド弁構成要素12が、第1の端部40aと、第1の端部40aの反対側にある第2の端部41とを有する磁気アーマチュア38aをさらに有することができる。第1の端部40aが付勢ばね42aに取り付けられ得るかまたは他の形で付勢ばね42aに機械的に繋がれ得る。反対側にある第2の端部41aが弾性リング構造として構成されるポペット46aを有することができる。一般に、ばね42aは、共通の弁体16によって形成される中央弁座48に接触させてポペット46aを付勢することにより弁構成要素を閉位置へと付勢する。
【0026】
図4を簡単に参照する。図4図1~2の例示の低プロフィールミニチュアのソレノイド弁システムの一部切り取りの等角図であり、ここでは第1のソレノイド弁構成要素の一部分が露出している。したがって、図1~2と同様の構成要素を図4において示すのに同様の参照符号が使用される。フレーム24b(24bは第2のソレノイド弁構成要素14に関連するものとして使用される)が、内部構成要素に結合されるシェルとして構成され得る。反対側にあるブラケット25aおよび25bが弁システムを他の設備に設置するのに使用され得る。
【0027】
図2の断面図を再び参照すると、第2のソレノイド弁構成要素14が第1のソレノイド弁構成要素12と同様に構成され得る。例示の実施形態では、第1および第2の弁構成要素が、鏡像の対向する対の等しいソレノイド弁構成要素として構成される。したがって、第2のソレノイド弁構成要素14は、上で言及したように共通のマニホルドの一部分を形成する外側フレームまたはシェル24b内に収容され得る。任意適切な固定要素26b(例えば、ボルト、またはねじ、など)が外側フレーム24bを共通の弁体16に固着するのに使用され得、それにより第2のソレノイド弁構成要素14を弁体16に設置する。したがって、外側フレームまたはシェル24aおよび24b、ならびに共通の弁体16が、個別のソレノイド弁構成要素の両方を組み合わせの弁システムの中に設置するための共通のマニホルドを形成する。第1の弁構成要素のためのブラケット25aと同様に、第2の弁構成要素に対して設置用ブラケット25bが提供され得る。
【0028】
第2のソレノイド弁構成要素14が、外側フレーム24b内に収容された状態で、軟磁性フレーム30bによって支持されるソレノイドコイル28bを有することができる。第1のソレノイド弁構成要素と同様に、軟磁性フレーム30bが、ソレノイド弁に関連して使用されるための当技術分野で既知の任意適切な強磁性材料で作られてよい。コイル28bがやはり、第1のソレノイド弁構成要素14のフットプリントを最小にするために楕円断面を有するように構成され得、それによりやはり楕円断面の短軸または短い方の軸に沿って9mm以下の弁のフットプリントを容易に達成することができる。第2のソレノイドコイル28bが同様に、銅コイル33bを巻くためのフレームを提供するプラスチックボビン32bを有することができる。リードワイヤ22がボビンを通って延在して銅ワイヤ33bへの接続を実現し、銅ワイヤ33bがさらにリードワイヤリング22を介して電源(図示せず)に接続される。
【0029】
第2のソレノイド弁構成要素14が、永久磁石(PM)要素またはPMリング36bを収容する内側軟磁性フレーム要素34bをさらに有することができる。第1のソレノイド弁構成要素の場合と同様に、後でさらに詳説するように、PMリング36bがやはり、第2の弁構成要素14の双安定の動作を可能にするラッチ機構の一部のとして動作し、それにより、開位置または閉位置のいずれかでソレノイド弁構成要素を保持することを目的として一定の電力供給を維持することの必要性を排除する。
【0030】
第2のソレノイド弁構成要素14が、第1の端部40bと、第1の端部40bの反対側にある第2の端部41bとを有する磁気アーマチュア38bをさらに有することができる。第1の端部40bが付勢ばね42bに取り付けられ得るかまたは他の形で付勢ばね42bに機械的に繋がれ得る。反対側にある第2の端部41bが弾性リング構造として構成されるポペット46bを有することができる。一般に、ばね42bは、共通の弁体16の中央弁座48に接触させてポペット46bを付勢することにより弁構成要素を閉位置へと付勢する。
【0031】
ソレノイド弁構成要素12および14の各々が以下のように動作する。ポペット46a/46bを備えるアーマチュア38a/38bの各々が、共通の長手方向軸に沿って閉位置と開位置との間を移動可能である。このような共通の長手方向軸を用いることにより、フットプリントを小さくすることが達成される。
【0032】
閉位置では、付勢ばね42a/42bが、共通の弁体16の中央弁座48の対向する表面に接触させてポペット46a/46bを付勢するように動作する。アーマチュアを開位置まで移動させることを目的としてソレノイド弁構成要素を作動させるために、コイル28a/28bが、リードワイヤリング20および22を介して上記コイルに電流を提供するという形で、励磁され得る。ソレノイド弁構成要素が互いに個別につまり互いに独立して動作せられ得る。つまり、もう一方のソレノイド弁構成要素を閉じた状態で保持しながら、ソレノイド弁構成要素のうちの一方のソレノイド弁構成要素を励磁してその弁構成要素を開ける。
【0033】
コイル28a/28bが励磁されるとき、磁束線が種々の軟磁性フレーム構成要素を通って磁気アーマチュア38a/38bの中までループを形成する。これがばね42a/42bの付勢に逆らうようにアーマチュアを移動させる磁力を発生させ、それによりポペット46a/46bを弁座48から離して移動させ、それによりソレノイド弁構成要素を開ける。上で言及したように、各ソレノイド弁構成要素が、閉位置と開位置との間での双安定的な切り換えを引き起こすラッチ機構に従って、動作する。ばね42a/42bが、ポペットを弁座に接触させた状態で、それぞれのアーマチュアを閉位置まで付勢し、コイルが、励磁されて、アーマチュアを開位置まで移動させる。
【0034】
開位置にくると、それぞれのPMリング36a/36bが、継続的な電力供給を必要とすることなく、磁力により、アーマチュアを開位置で保持する。PMリングが軟磁性フレーム構成要素の中に埋設され得、したがってコイルの磁束ループの一部として構成される。PMリングの磁極軸がコイルフレーム内の磁束と平行になるように指定され得、リングがアーマチュアの近くにくるように設計される。PMリング36a/36bの磁力に逆らってアーマチュアを移動させて閉位置まで戻す場合、それぞれのコイル28a/28bが逆方向電流で励磁され得る。アーマチュア38a/38bが閉位置に戻ると、電力供給がオフにされ得、継続的な電力供給を必要とすることなく、アーマチュアが、閉位置において、ポペットを弁座に接触させる状態で、ばね42a/42bにより再び付勢されることになる。
【0035】
したがって、コイル電力がオフにされた状態の閉位置では、ばね力がPMリングによりアーマチュアに作用する力に打ち勝つことができ、ポペットを閉じた状態にしてアーマチュアを押す。コイル電力がオフにされた状態の開位置では、PMリングによりアーマチュアに作用する力がばね力に打ち勝つことができ、それによりポペットの開いた状態でアーマチュアを保持する。ソレノイドコイルが第1の方向の電流で励磁されると、ポペットを備えるアーマチュアをばねの付勢に逆らって閉位置から開位置まで移動させ、ソレノイドが第1の方向の反対の第2の方向の電流で励磁されると、ポペットを備えるアーマチュアをPMリングの磁力に逆らって開位置から閉位置まで移動させる。このようにして、双安定のラッチ機構が、このような機構を有さない弁システムよりも電力を節約する。また、個別のソレノイド弁構成要素が、例えば通常は閉じられている三方弁または二方弁、片側の動作、あるいは他の組み合わせなどの、異なる組み合わせの機能を有するように、特別な弁ドライバを介して動作させられ得る。その理由は、各ソレノイド弁構成要素が独立して操作され得るからである。
【0036】
本発明の態様は、上述したように共通のマニホルドに設置される2つの個別のソレノイド弁構成要素を有する三方ソレノイド弁システムのための改善されるポーティングに関連する。各々の個別のソレノイド弁構成要素がそれぞれの流れ通路を開けるおよび閉じるために動作することができ、ここではこれらの各々の個別の流れ通路が、三方弁システムを通る共通のポートに流体連通される流体ポートを有する。本発明は、このようなポーティングを用いることにより、高圧力および高流量であることとの組み合わせで、および三方遮断能力を有する形で、キャリーオーバー性能を向上させること(つまり、低キャリーオーバーの時間)を独自の形で実現する、コンパクトな大きさおよびフットプリント(例えば、短軸または短い方の軸に沿って9mm以下)を有するソレノイド弁システムを提供する。
【0037】
例示の実施形態では、低キャリーオーバー性能を達成するために、管状の流体通路内のデッドスペースを最小にするようなより小さい内部チャンバ容積が、従来の構成と比較して、設計される。例示の構成として図2を参照すると、弁体16が第1の側方フローポーティング(flow porting)50および第2の側方フローポーティング52を画定することができる。ポペット46aを備えるそれぞれのアーマチュア38aが閉位置にあるかまたは開位置にあるかに応じて、第1の側方フローポーティング52が閉じられるかまたは開けられる。同様に、ポペット46bを備えるそれぞれのアーマチュア38bが閉位置にあるかまたは開位置にあるかに応じて、第2の側方フローポーティング52が閉じられるかまたは開けられる。弁体16が共通のポーティング54をさらに画定することができる。種々の流れ通路が管状の流れ通路として構成され得、それにより流量制限を最小にする。弁構成が開位置にあるとき、第1および第2の側方ポーティングが共通の内部チャンバ56を介して共通のポーティングに流体連通され得る。この場合、共通のチャンバが弁体内の中央に位置し、第1および第2の側方ポーティングが共通のポーティングの両側にある。したがって、本明細書で使用される「共通のチャンバ」という用語は、第1および第2の側方ポーティングおよび共通のポーティングの、座下容積の交差位置エリアを有することができる。上で言及したように、アーマチュアが共通の長手方向軸に沿って移動し、ここではポペットが共通のポーティングの両側から共通のチャンバの中まで延在する。
【0038】
説明される構成はフットプリントを最小にすることを実現し、ここでは、ポペットが、共通のチャンバのこのエリアにおいて、共通のポーティングの両側で、弁体内で中央で近接する。このようにして、共通の内部チャンバの容積が最小になる。これにより、流体を溜めるようなデッドスペースを減らし、また、従来の構成と比較して、流体の使用を最小にして弁体および共通のポーティングを容易にフラッシングすることができるようにする。さらにこれにより、従来の構成と比較してキャリーオーバー性能が向上する(つまり、キャリーオーバーの時間(carryover time)が減る)。
【0039】
図3は、図2の例示の低プロフィールミニチュアのソレノイド弁システムの一部分の拡大図を描いている図面であり、弁システムを通るポーティング構成を示している。したがって、図3では、図2に示される同様の構成要素に対して同様の参照符号が使用される。概して、弁体が、共通のチャンバ56の中まで延在する中央弁座48を有する。第1のポペット46aの閉位置では、第1のポペット46aが、第1の側方ポーティング50と共通のポーティング54との間の流体の流れを阻止するように中央弁座48と相互作用する。第2のポペット46bの閉位置では、第2のポペット46bが、第2の側方ポーティング52と共通のポーティング54との間の流体の流れを阻止するように中央弁座48と相互作用する。
【0040】
例示の実施形態では、弁体16によって画定される第1の側方ポーティング50が、共通のチャンバ56の中へと開いている第1の側方ポート60内で終端する第1の側方流れ通路58を有することができる。ポペット46aを備えるそれぞれのアーマチュア38aが閉位置にあるかまたは開位置にあるかに応じて、第1の側方ポート60が共通のポーティングに対して閉じられるかまたは開けられる。同様に、弁体16によって画定される第2の側方ポーティング52が、共通のチャンバ56の中へと開いている第2の側方ポート64内で終端する第2の側方流れ通路62を有することができる。ポペット46bを備えるそれぞれのアーマチュア38bが閉位置にあるかまたは開位置にあるかに応じて、第2の側方ポート64が共通のポーティングに対して閉じられるかまたは開けられる。弁体16によって画定される共通のポーティング54が、共通のチャンバ56の中へと開いている共通のポート68内で終端する共通の流れ通路66を有することができる。ここでは、側方ポート60および64、ならびに共通のポート68が、すべて、共通の内部チャンバ56に対して開いている。
【0041】
動作の1つの例では、第1のソレノイド弁構成が開いているとき、つまり、ポペット46aを備える第1のアーマチュア38aが開位置にあるとき、流れが第1の側方ポート60と共通のポート68との間で共通の内部チャンバ56を通って進むことができる。同様に、第2のソレノイド弁構成要素が開いているとき、つまり、ポペット46bを備える第2のアーマチュア38bが開位置にあるとき、流れが第2の側方ポート64と共通のポート68との間で共通の内部チャンバ56を通って進むことができる。逆に、第1のソレノイド弁構成が閉じているとき、つまり、ポペット46aを備える第1のアーマチュア38aが閉位置にあるとき、流れが第1の側方ポート60と共通のポート68との間を進むのをポペットおよび弁座によって阻止される。同様に、第2のソレノイド弁構成が閉じているとき、つまり、ポペット46bを備える第2のアーマチュア38bが閉位置にあるとき、流れが第2の側方ポート64と共通のポート68との間を進むのをポペットおよび弁座によって阻止される。流れの方向は、任意特定の用途に適するように、任意の方向に進むことができる。共通の通路およびポートは入口であってよく、ここでは第1および第2の側方通路およびポートが出口であってよい。逆も同様である。また、第1の弁構成要素および第2の弁構成要素は、ポペットのうちの一方のポペットを開位置で保持してポペットのうちのもう一方のポペットを閉位置で保持するように、独立して動作可能である。
【0042】
本発明の構成は、従来の構成と比較して、共通のチャンバ56内の内部容積を小さくすることを達成し、したがって、管状の流れ通路が、残留流体を溜めるようなデッドスペースとして働き得るようなポケットおよびキャビティを最小で有する。三方弁システムの場合、2つの側方ポート60および64と、共通のポート68とを含めた、3つのポートが、概して、個別のソレノイド弁構成要素を連結する共通の弁体16の中心の、共通のチャンバ56のエリアにおいて、交わっていてよい。2つのポペットシール46aおよび46bが、同様に、共通のチャンバ56のエリアの、三方弁システムの中心の近くにある。この例示の構成を用いる場合、共通のチャンバ56が図2および3に示されるように概略「T字」形の幾何形状を有するように構成され得る。
【0043】
対応する形で、個別の第1または第2のポペットの一方が開位置にある状態にある開いているソレノイド弁構成要素のうちの1つのソレノイド弁構成要素において、個別の第1または第2のポペットのもう一方のポペットが閉位置にあるとき、それぞれの開いている側方流れ通路および共通の通路の交差位置がほぼ「L字」形の幾何形状をとして構成される。このような構成は死容積を劇的に減らし、共通のチャンバ内の残留流体が最小となり、異なる流体および/または異なる流れ方向を切り換える場合の必要時に、非常に容易に流し出され得る。例示の流れ切り換えには、第1の側方ポート→共通のポート、から第2の側方ポート→共通のポート;または共通のポート→第1の側方ポート、から共通のポート→第2の側方ポート(および、これらの逆)が含まれてよい。基本的には個別のソレノイド弁構成要素のうちの一方が開いておりまた個別のソレノイド弁構成要素のうちのもう一方が閉じている、二方弁動作の場合、個別の第1または第2のポペットの一方が開位置にある場合、それぞれの第1または第2のポペットのもう一方が閉位置にあるときに、それぞれの開いている側方通路と、共通のチャンバと、共通の通路とを通る流れ通路が、湾曲した「Π」形の幾何形状を有する。この形状がやはりデッドスペースを減らし、それにより共通のチャンバの全体をきれいにフラッシングする能力を向上させ、それにより従来の構成と比較してキャリーオーバー性能をさらに向上させる(つまり、キャリーオーバーの時間が減る)。
【0044】
例示の実施形態では、例えば図3に示されるように、ポペット46aがばね42aによって押されて中央弁座48と相互作用し、具体的には第1の弁座表面70と相互作用するとき、第1のソレノイド弁構成要素が閉じられる。対応する形で、ポペット46bがばね42bによって押されて中央弁座48と相互作用して、具体的には反対側の第2の弁座表面72と相互作用するとき、第2のソレノイド弁構成要素が閉じられる。第1の弁座表面70が第1の側方ポート60から共通のポート68まで延在することができ、反対側の第2の弁座表面72が第2の側方ポート64から共通のポート68まで延在することができる。このようにして、反対側の弁座表面70および72が円錐形状を形成することができ、ここでは第1の弁座表面70および第2の弁座表面72が円錐形状の頂点を基準として反対側にある表面である。弁座表面がアーマチュアの移動の長手方向軸を基準として約45°の角度(図3に示される角度を参照されたい)で傾斜していてよい。この構成がさらに、ポペットを共通のチャンバのところのポーティングの交差位置に実現可能な限り近づけることを可能にする。
【0045】
図3にやはり示されるように、弁体16が反対側にある二次弁座74および76を有することができる。二次弁座が、ポペットベース49aおよび49bの外部表面に適合するように構成され得る。図3に示される例示の実施形態では、二次弁座が、ポペットベースの対応する形で段差を付けられた表面を受けるように段差を付けられ得る。二次弁座およびポペットベースの交差位置がポペットの閉位置時の密閉効果を向上させる。
【0046】
したがって、本発明の態様は、コンパクトなフットプリントおよび向上したキャリーオーバー性能を有する改善されるソレノイド弁システムである。例示の実施形態では、ソレノイド弁システムが、弁体を通る流体流れのためのポーティングを画定する弁体と、弁体に取り付けられる第1の弁構成要素であって、第1の弁構成要素が、閉位置と開位置との間で電磁的に駆動される第1のポペットを有する、第1の弁構成要素と、弁体に取り付けられる第2の弁構成要素であって、第2の弁構成要素が閉位置と開位置との間で電磁的に駆動される第2のポペットを有する、第2の弁構成要素とを有することができる。弁体によって画定されるポーティングが、第1の側方ポーティングと、第2の側方ポーティングと、共通のポーティングと有し、これらの各々が弁体によって画定される共通の内部チャンバに流体連通される。第1のポペットが閉位置にあるとき、第1のポペットが、第1の側方ポーティングと共通のポーティングとの間の流体の流れを阻止するように配置され、第1のポペットが開位置にあるとき、第1のポペットが、第1の側方ポーティングと共通のチャンバを通る共通のポーティングとの間の流体の流れを可能にするように配置される。第2のポペットが閉位置にあるとき、第2のポペットが、第2の側方ポーティングと共通のポーティングとの間の流体の流れを阻止するように配置され、第2のポペットが開位置にあるとき、第2のポペットが、第2の側方ポーティングと共通のチャンバを通る共通のポーティングとの間の流体の流れを可能にするように配置される。ソレノイド弁システムが、個別に、または組み合わせで以下の特徴のうちの1つまたは複数の特徴を有することができる。
【0047】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、第1および第2のポペットが共通の長手方向軸に沿って開位置と閉位置との間を移動する。
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、第1の側方ポーティングが、共通のチャンバの中へと開いている第1の側方ポート内で終端する第1の側方流れ通路を有し;第2の側方ポーティングが、共通のチャンバの中へと開いている第2の側方ポート内で終端する第2の側方流れ通路を有し;共通のポーティングが、共通のチャンバの中へと開いている共通のポート内で終端する共通の流れ通路を有する。
【0048】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、個別の第1または第2のポペットの一方が開位置にある場合、個別の第1または第2のポペットのもう一方が閉位置にあるときに、それぞれの開いている側方通路および共通の通路の交差位置が「L字」形の幾何形状を有する。
【0049】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、個別の第1または第2のポペットの一方が開位置にある場合、個別の第1または第2のポペットのもう一方が閉位置にあるときに、それぞれの開いている側方通路と、共通のチャンバと、共通の通路とを通る流れ通路が湾曲した「Π」形の幾何形状を有する。
【0050】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、第1の側方通路、第2の側方通路、および共通の通路が、管状の通路である。
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、共通のチャンバがT字形の幾何形状を有する。
【0051】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、共通のチャンバが弁体内の中央に位置し、第1および第2の側方ポーティングが共通のポーティングの両側にある。
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、弁体が、共通のチャンバの中まで延在する中央弁座を有する。第1のポペットの閉位置では、第1のポペットが、第1の側方ポーティングと共通のポーティングとの間の流体の流れを阻止するように中央弁座と相互作用し;第2のポペットの閉位置では、第2のポペットが、第2の側方ポーティングと共通のポーティングとの間の流体の流れを阻止するように中央弁座と相互作用する。
【0052】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、中央弁座が円錐形状を有する。
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、第1のポペットの閉位置において、第1のポペットが弁座の第1の表面と相互作用し;第2のポペットの閉位置において、第2のポペットが弁座の第2の表面と相互作用し;弁座の第1および第2の表面が、円錐形状の頂点を基準として反対側にある表面である。
【0053】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、弁座の第1および第2の表面が、ポペットの長手方向軸を基準として約45°で傾斜する。
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、弁座の第1の表面が第1の側方ポーティングから共通のポーティングまで延在し、弁座の第2の表面が第2の側方ポーティングから共通のポーティングまで延在する。
【0054】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、弁体が二次弁座をさらに備え、第1および第2のポペットのベースが閉位置時に二次弁座と相互作用する。
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、二次弁座が段差を付けられ、ポペットベースが二次弁座に対応する形で段差を付けられる。
【0055】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、第1および第2の弁構成要素の各々が、閉位置と開位置との間でポペットを駆動する磁気アーマチュアと;軟磁性フレーム内に収容されるソレノイドコイルとを備え、ソレノイドコイルが励磁されるとき、磁場が作られ、この磁場がポペットと共にアーマチュアを閉位置と開位置との間で移動させる。
【0056】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、第1および第2の弁構成要素の各々が、閉位置または開位置のいずれかでアーマチュアを双安定的に維持するラッチ機構を有する。
【0057】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、ラッチ機構が、ポペットが閉位置にある状態においてアーマチュアを付勢するばねを有する。
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、ラッチ機構が、ポペットが開位置にある状態においてアーマチュアを保持する永久磁石(PM)要素をさらに有する。
【0058】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、ソレノイドが第1の方向の電流で励磁されると、ポペットを備えるアーマチュアをばねの付勢に逆らって閉位置から開位置まで移動させ、ソレノイドが第1の方向の反対の第2の方向の電流で励磁されると、ポペットを備えるアーマチュアをPM要素の磁力に逆らって開位置から閉位置まで移動させる。
【0059】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、ソレノイドコイルが楕円断面を有する。
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、第1および第2の弁構成要素の各々が、コイルの楕円断面の短い方の軸に沿って9mm以下のフットプリントを有する。
【0060】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、弁体、ならびに第1および第2の弁構成要素の外側フレームが、第1および第2の弁構成要素のための共通のマニホルドを形成する。
【0061】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、第1の弁構成要素および第2の弁構成要素が、ポペットのうちの一方のポペットを開位置で維持してポペットのうちのもう一方のポペットを閉位置で維持するように、独立して動作可能である。
【0062】
ソレノイド弁システムの例示の実施形態では、第1および第2の弁構成要素が、鏡像の対向する対の等しいソレノイド弁構成要素として構成される。
特定の実施形態に関連させて本発明を示して説明してきたが、本明細書および添付図面を読んで理解することにより当業者であれば等価の代替形態および修正形態を思い付くことが明らかであろう。上述の要素(構成要素、組立体、デバイス、組成など)によって実行される種々の機能に特に関連して、これらの要素を説明するのに使用される用語(「手段」に言及することを含む)は、本明細書で示される本発明の例示の実施形態において機能を実行する開示される構造に対して構造的に等価ではなくても、特に明記しない限り、説明される要素の明記される機能を実行する任意の要素(つまり、機能的に等価である)に対応することを意図される。また、示される複数の実施形態のうちの1つまたは複数の実施形態のみに関連させて上記で本発明の特定の特徴を説明してきたが、任意の所与の用途または特定の用途において所望される可能性があるかまたは有利である可能性があることであるが、このような特徴は他の実施形態の1つまたは複数の他の特徴と組み合され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6