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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】ゼロリセット機能付き表示機構
(51)【国際特許分類】
   G04B 27/00 20060101AFI20220318BHJP
   G04F 7/08 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
G04B27/00 E
G04F7/08 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019527157
(86)(22)【出願日】2017-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 EP2017079695
(87)【国際公開番号】W WO2018091696
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-02
(31)【優先権主張番号】16199406.6
(32)【優先日】2016-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519174827
【氏名又は名称】ノゲラー エスアー
【氏名又は名称原語表記】NOGERAH SA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】ジェーン マーク ウィーデレクト
(72)【発明者】
【氏名】ローレント ウィーデレクト
(72)【発明者】
【氏名】マキシミリアン ディ ブラシ
(72)【発明者】
【氏名】ガイ ドゥボワ フェリエール
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第701496(DE,C1)
【文献】特開2000-147168(JP,A)
【文献】特開平9-304552(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第1953612(EP,A2)
【文献】独国特許発明第10200284(DE,C1)
【文献】スイス国特許出願公開第704915(CH,A3)
【文献】スイス国特許発明第699143(CH,B5)
【文献】スイス国特許発明第690630(CH,A5)
【文献】登録実用新案第3192199(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
G04F 7/00 - 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の単位を表示するための表示部材を担持することを意図され、かつ、一緒に回転するように拘束された一番車および少なくとも1つの蝸牛形部分を備えるカム(112、212)を担持するシャフトを備える第1の単位の表示用の表示車を含む時計ムーブメント用の表示機構であって、前記表示機構は、表示されるべき前記第1の単位に応じて回転駆動されるべき時計ムーブメントの駆動車との運動学的接続を一番車が有することを意図された活動第1状態と、表示部材の所定の位置に関連する所定の位置に前記一番車が戻ることを可能とするように運動学的接続が無効にされたゼロリセットの第2状態とを示すことができるよう適合されており、表示機構はさらに、時計ムーブメントのフレーム要素上で回転するように取り付けられるように意図されており、前記カム(112、212)の外周と協働するよう適合されたフィーラスピンドル(116、216)を含む、表示機構において、
前記表示機構は、前記フィーラスピンドル(116、216)に作用するように、かつ、前記フィーラスピンドル(116、216)が、前記カム(112、212)の最小半径領域に関連する第1の位置と、前記カム(112、212)の最大半径領域に関連する第2の位置との間を移動することができるように、前記カム(112、212)の外周に対するフィーラスピンドルの当接を維持するように適合されたばね(117、217)を含み、
第2の状態において、前記一番車を前記所定の位置に戻すように適合された非半径方向成分を有する復元力を前記フィーラスピンドル(116、216)が前記カム(112、212)に加えるように、前記フィーラスピンドル(116、216)および前記カム(112、212)の外周が適合され寸法決めされたことを特徴とする表示機構。
【請求項2】
前記ばね(117、217)は、さらに、前記第2の状態において、前記フィーラスピンドル(116、216)により前記カム(112、212)に前記復元力を加えることに少なくとも部分的に寄与するように適合されている、請求項1に記載の機構。
【請求項3】
前記フィーラスピンドル(116、216)と共に回転するように拘束され、前記第2の状態において、前記フィーラスピンドル(116、216)による前記カム(112、212)への復元力の付与に寄与するような特性を有する付加力を受けるように適合された巻上げ車(118)を含む、請求項2に記載の機構。
【請求項4】
前記巻上げ車(118)への運動学的接続を有し、前記第1の状態で、前記第1の単位の倍数に対応する第2の単位の第2の表示車(140)の一部を形成する二番車と協働することができるように適合されており、その第2の位置からその第1の位置への前記フィーラスピンドル(116、216)の通過に応答して少なくとも1ステップ分だけそれを駆動するよう適合された駆動爪(136、236)を備える駆動車(130、230)を含む、請求項3に記載の機構。
【請求項5】
前記駆動車(130、230)によって前記付加力を前記巻上げ車(118)に加えるために使用者によって作動させることができる分離レバー(50)を含む、請求項4に記載の機構。
【請求項6】
前記二番車と協働して、それを角度的にするよう適合された安全爪(142)を含み、前記分離レバー(50)は、使用者の動作に応じて前記安全爪(142)の一時的に無効にするよう適合される、請求項5に記載の機構。
【請求項7】
前記二番車と一緒に回転するように拘束された少なくとも1つの蝸牛形部分を備える第2のカム(212)を含み、この蝸牛形部分は、追加ばねの作用を受ける追加フィーラス
ピンドル(216)と協働し、前記第1の状態において、前記第2のカム(212)の最小半径領域に関連する第1の位置と、前記第2のカム(212)の最大半径領域に関連する第2の位置との間での枢動を生じさせ、前記追加フィーラスピンドル(216)は、前記第2の状態において、前記二番車を対応する所定の位置に戻すように適合された非半径方向成分を有する復元力を前記第2のカム(212)に及ぼす、請求項4~6のいずれか一項に記載の機構。
【請求項8】
前記追加フィーラスピンドル(216)は、前記第1の状態において、前記第2の単位の倍数に対応する第3の単位の第3の表示車(180)の一部を形成する三番車と協働することができるように適合されており、その第2の位置からその第1の位置への前記追加フィーラスピンドル(216)の通過に応答して少なくとも1ステップ分だけそれを駆動するよう適合された駆動爪(236)を備える追加駆動車(230)との運動学的接続を有する追加巻上げ車に固定される、請求項7に記載の機構。
【請求項9】
前記駆動車(130)によって前記付加力を前記巻上げ車(118)に加えるために使用者によって作動させることができる分離レバー(50)を含み、前記分離レバー(50)は前記巻上げ車(118)に追加力を加えるように適合され、前記第2の状態において、前記追加力が前記追加フィーラスピンドル(216)により前記第2のカム(212)に前記復元力を加えることに寄与する特性を有する、請求項7または8に記載の機構。
【請求項10】
クロノメータ時間を表示できるよう適合されており、前記第1の表示車(110、140)はそれぞれクロノメータ時間の秒および分の表示を可能とするよう意図されており、前記第2の表示車(140、180)はそれぞれクロノメータ時間の分および時の表示を可能とするよう意図されている、請求項4~7のいずれか一項に記載の機構。
【請求項11】
クロノメータ時間を表示できるよう適合されており、前記第1、第2および第3の表示車(110、140、180)はそれぞれクロノメータ時間の秒、分および時の表示を可能とするよう意図されている、請求項8または9に記載の機構。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の機構を含む時計ムーブメント。
【請求項13】
請求項12に記載の時計ムーブメントを含む時計。
【請求項14】
表示されることを意図されたクロノメータ時間単位のそれぞれの同軸表示と関連されたクロノグラフ機構を有する、請求項13に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は時計製造の分野に関する。より詳細には、本発明は、好ましくは瞬時運針システムに関連するゼロリセット機能を有する表示機構、ならびに、この種の機構およびこの種のシステムを備えたクロノグラフ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
クロノグラフの分野では、クロノグラフ秒車は、連結機構が連結された場合に、連結機構を介してムーブメントの秒車によって駆動されることができるように適合される。クロノグラフ秒車は、クロノグラフの秒針を担持する。分針が関係する場合、これはクロノグラフ秒車によって担持される爪によって駆動され、このことは、分針が秒針と同じ方向に回転するために中間歯車をさらに必要とする。分積算車と時積算車との間の関係についても同様である。いくつかの機構では、時積算車を、分積算車を介さずに、香箱受から直接駆動することができる。分積算車および時積算車は、それらがそれぞれの駆動システムによって作用されていない場合に、それらの位置を維持するためにさらにジャンパによって位置決めされている。
【0003】
また、カムが取り付けられ、クロノグラフ秒車と共に回転するように拘束されている瞬時運針積算計も知られている。レバーがこのカムに当接して保持されており、レバーが硬化するたびに分積算計を1ステップ駆動することを可能にする爪に接続されている。また、ジャンパも針の位置を合わせる。
【0004】
欧州特許出願公開第2241944号は、この種の構成の一例を示している。
【0005】
これと並行して、積算計はそれぞれハート形のカムに関連付けられており、針を所定の位置に戻すため積算計をゼロにリセットした際にハンマーがカムと協働することができる。
【0006】
針をゼロにリセットするには、ハンマーの動作を調整し、様々な積算車を切り離すか、積算計を動かす爪がある場合はそれを切り離す必要がある。これらの動作の適切な連携の調整、および、様々な車の位置決めジャンパを用いたハート形の位置の調整は、高品質の結果が得られるべきである場合に、この動作を繊細なものにする。
【0007】
本発明の目的は、ハンマーの作動のための種々な要素の同期のための複雑な調整を回避することを可能にする新規なクロノグラフ構造を提案することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許出願公開第2241944号
【発明の概要】
【0009】
上記の目的を達成するために、本出願人は特に、本特許出願の第1の態様を形成するゼロリセット機能を有する表示機構を開発した。この表示機構は、特定の構成の瞬時運針システムと有利に関連付けられる。
【0010】
本発明はまた、この種の表示機構を採用したクロノグラフ機能を有する時計ムーブメント、および、この種の時計ムーブメントを含む時計に関する。
【0011】
したがって、本発明は、第1の単位を表示するための表示部材を担持することを意図され、かつ、一緒に回転するように拘束された一番車および少なくとも1つの蝸牛形部分を備えるカムを担持するシャフトを備える第1の単位の表示用の表示車を含む時計ムーブメント用の表示機構であって、表示機構は、表示されるべき第1の単位に応じて回転駆動されるべき時計ムーブメントの駆動車との運動学的接続を一番車が有することを意図された活動第1状態と、表示部材の所定の位置に関連する所定の位置に一番車が戻ることを可能とするように運動学的接続が無効にされたゼロリセットの第2状態とを示すことができるよう適合されており、表示機構はさらにカムの外周と協働するよう適合されたフィーラスピンドルを含む、表示機構に関する。表示機構は、第2の状態において、一番車を所定の位置に戻すように適合された非半径方向成分を有する復元力をフィーラスピンドルがカムに加えるように、フィーラスピンドルおよびカムの外周が適応され寸法決めされたことを特徴とする。
【0012】
好ましい実施形態によれば、フィーラスピンドルは時計ムーブメントのフレーム要素上で回転するように取り付けられるように意図されており、表示機構は、フィーラスピンドルに作用するように、かつ、フィーラスピンドルが、カムの最小半径領域に関連する第1の位置と、カムの最大半径領域に関連する第2の位置との間を移動することができるように、カムの外周に対するフィーラスピンドルの当接を維持する傾向があるように、かつ、第2の状態において、フィーラスピンドルによりカムに復元力を加えることに少なくとも部分的に寄与するように適合されたばねを含むことができる。
【0013】
機構はさらに、フィーラスピンドルと共に回転するように拘束され、第2の状態において、フィーラスピンドルによるカムへの復元力の付与に寄与するような特性を有する付加力を受けるように適合された巻上げ車を含むことができる。
【0014】
さらに、この機構は、好ましくは、巻上げ車への運動学的接続を有し、第1の状態で、第1の単位の倍数に対応する第2の単位の第2の表示車の一部を形成する二番車と協働することができるように適合されており、その第2の位置からその第1の位置へのフィーラスピンドルの通過に応答して少なくとも1ステップ分だけそれを駆動するよう適合された駆動爪を備える駆動車を含むことができる。
【0015】
さらに、この機構は、駆動車によって付加力を巻上げ車に加えるために使用者によって作動させることができる分離レバーを含むことができる。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、この機構は、二番車と一緒に回転するように拘束された少なくとも1つの蝸牛形部分を備える第2のカムを含み、この蝸牛形部分は、追加ばねの作用を受ける追加フィーラスピンドルと協働し、第1の状態において、第2のカムの最小半径領域に関連する第1の位置と、第2のカムの最大半径領域に関連する第2の位置との間での枢動を生じさせ、追加フィーラスピンドルは、第2の状態において、二番車を対応する所定の位置に戻すように適合された非半径方向成分を有する復元力を第2のカムに及ぼす。
【0017】
さらに、この場合、追加フィーラスピンドルは、第1の状態において、第2の単位の倍数に対応する第3の単位の第3の表示車の一部を形成する三番車と協働することができるように適合されており、その第2の位置からその第1の位置への追加フィーラスピンドルの通過に応答して少なくとも1ステップ分だけそれを駆動するよう適合された駆動爪を備える追加駆動車との運動学的接続を有する追加巻上げ車に固定することもできる。
【0018】
この表示機構は、従動車にエネルギーを供給するように意図された駆動車、すなわち一番車を備え、駆動車は少なくとも1つの蝸牛形部分を備えるカムに固定されるものとして説明することができる瞬時運針システムと有利に関連付けることができる。駆動システムは
-回転軸を中心に枢動するように取り付けられ、第1のばねによってカムの外周に当接して保持され、カムの最小半径領域上に位置する第1の位置と、カムの最大半径領域上に位置する第2の位置との間を移動するよう適合されたフィーラスピンドル、
-フィーラスピンドルによって回転駆動される巻上げ車、および
-巻上げ車に運動学的に接続され、少なくともフィーラスピンドルがその第2の位置からその第1の位置へ通過する間に従動車を1ステップ分だけ駆動するように適合された駆動爪を備える駆動車 をさらに備える。
【0019】
好ましい実施形態において、本発明はまた、クロノグラフ秒車が駆動車を形成し、分積算車が従動車を形成する、上述のような第1の駆動システムを備える、クロノメータ時間を表示するための機構に関する。
【0020】
好ましい実施形態において、本発明はまた、分積算車が第2の駆動システムの駆動車を形成し、第2の駆動システムの従動車が時積算車を形成する、上述のような第2の駆動システムを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】クロノグラフ秒車を用いて分積算車を駆動して測定時間の表示を可能にするために使用される本発明による表示機構の第1の位置を示す。
図2】クロノグラフ秒車を用いて分積算車を駆動して測定時間の表示を可能にするために使用される本発明による表示機構の第2の位置を示す。
図3】クロノグラフ機構の分積算車によって時積算車を駆動するために使用される本発明による表示機構の第1の位置を示す。
図4】クロノグラフ機構の分積算車によって時積算車を駆動するために使用される本発明による表示機構の第2の位置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の他の詳細は、添付の図面を参照しながら行われる以下の説明を読むことでより明確になるであろう。
【0023】
図1には、本発明による表示機構に関連した、駆動車によって駆動される車のための瞬時運針システムが示されている。後述する実施例では、この駆動システムは、一方では、クロノグラフ秒車110(図1および図2)を用いて分積算車140を駆動し、また、分積算車140(図3および図4)を用いて時積算車180を駆動するためにクロノグラフに使用される。
【0024】
本明細書では、駆動システムの同一の要素には、それぞれに十および一の桁に同じ数字を付し、分積算車を駆動するのに関与する要素に対して百の桁に1を、時積算車の駆動に関与する要素に対して百の桁に2を付す。
【0025】
したがって、図1では、駆動車は、図示しない継手によって第1の動作状態で二番車に連結されるよう適合されたクロノグラフ秒車110である。クロノグラフが停止している位相の間、クロノグラフ秒車110は、従来型のものであってもよい図示しないブレーキによって位置決めされる。
【0026】
クロノグラフ秒車110は、その様々な役割が後で明らかになるであろう蝸牛形カム112と共に回転するように拘束されている。提案された例では、カム112は「単一の」蝸牛形状であるが、Nを蝸牛形部分の数として、360°/Nで分布した複数の蝸牛形部分を有することも考えられる。各蝸牛形部分は、それぞれの端部に最小半径領域および最大半径領域を画定する。カムの回転方向において、最小半径領域から最大半径領域への遷移は漸進的であり、最大半径領域から最小半径領域への遷移は急激であり、わずか数分の1度にわたり動作し、段部114を画定する。
【0027】
第1のフィーラスピンドル116は、回転軸を中心に枢動するように取り付けられ、第1のばね117によってカムの外周に押し付けられて保持される。この例では、第1のばねは渦巻きばねであるが、これは本発明を限定するものではない。第1のフィーラスピンドル116は、カム112の最小半径部分上に位置する第1の位置とカム112の最大半径部分上に位置する第2の位置との間を移動するよう適合される。
【0028】
特に関心のある特徴によれば、蝸牛形カム112およびフィーラスピンドル116は、カム112の方向でフィーラスピンドル116に加えられる圧力が非半径方向成分を有するように適合されかつ寸法決めされており、この非半径方向成分は、フィーラスピンドル116が段部114またはカムの段部のうちの1つに当接するまで、カム112をムーブメントによる通常の駆動とは反対方向に回転させるように適合された復元力として機能する。
【0029】
フィーラスピンドル116は、その回転シャフト上に、フィーラスピンドル116と共に回転するように拘束された巻上げ車118を担持する。また、巻上げ車118は、フィーラスピンドル116に固定された一組の歯によって回転駆動される、他のシャフト上で枢動するように装着することもできる。
【0030】
記載の例では、巻上げ車118は、フィーラスピンドル116の第1の側で、回転軸と同軸のシャフト122上に配置されて固定された第1のピニオン120を備える。また、第2のピニオン124が、第1のピニオン120に対してフィーラスピンドル116の反対側で、シャフト122上に配置されて固定されている。ピン126を第2のピニオン124の歯の組の中でフィーラスピンドル116に固定して、巻上げ車118をフィーラスピンドルと共に回転するように拘束することができる。ピン126が定位置にない場合には、フィーラスピンドル116に対する巻上げ車118の割り出しを容易に調整することができる。ピンおよび第2のピニオンは、巻上げ車118、より具体的にはフィーラスピンドル116に対する第1のピニオン120の位置を割り出すための手段を形成する。
【0031】
本発明による駆動システムは、巻上げ車118に運動学的に接続された駆動車130をさらに備える。この例によれば、駆動車130は、巻上げ車118の第1のピニオン120と係合する一組の歯134を備えたプレート132を備える。また、駆動車130は、従動車(本例では分積算車140)と協働し従動車を駆動するように適合された駆動爪136も備える。従動車の一組の歯は、駆動爪130によって伝達されるトルクの移送を最適化するために設けられる。後者は、弾性部材139によって当接部138に対して押圧されて、プレート132上で回転移動可能に取り付けられる。したがって、駆動爪136は、ムーブメントの底部から見た図に対して反時計回り方向、すなわちダイヤル側で時計回り方向に従動車を駆動することができ、その場合、駆動爪136は当接部138に対して支承される。他方、爪136は、駆動車が反時計回り方向に回転するとき、すなわち巻上げ段階の間、従動車の歯の組を乗り越えるように弾性部材139に抗して移動可能である。
【0032】
したがって、図1に示されるその第2の位置から図2に示されるその第1の位置へ通過すると、フィーラスピンドル116の突然の降下が巻上げ車118ひいては駆動車130を回転させることは明らかである。駆動爪136は駆動車130の回転軸の周りの回転を完了し、その間に駆動爪136は好ましくは1ステップだけ従動車を駆動する。当業者は、フィーラスピンドル116が降下するたびに従動車によってもたらされるステップ数を決定するために、駆動爪の貫通および移動を適合させることができる。
【0033】
例として示した実施形態において、カムはクロノグラフ秒車110に固定され、分積算車140はカム112が1回転するごとに、すなわち1分ごとに1ステップずつ駆動される。
【0034】
加えて、フィーラスピンドルは、フィーラスピンドルの移動中に巻上げ車118の回転シャフトの通過を可能にするノッチ116aを含むことが図からさらに分かる。
【0035】
分積算車140の角度位置は、その歯の組と直接協働する安全爪142によって固定されている。
【0036】
図に示されているクロノグラフは、分積算車140を介して時積算車150を駆動するための第2の駆動システムを含むことが有利である(図3および図4)。第2の駆動システムの動作は第1の駆動システムの動作と同様であり、類似の要素はより簡単に説明される。
【0037】
したがって、第2の駆動システムに関しては、駆動車は分積算車140であり、これも第1の駆動装置の従動車でもある。
【0038】
分積算車140は、第2の蝸牛形カム212と共に回転するように拘束されている。提案された例では、カム212は「単一の」蝸牛形状であり、ただ1つの段部を含む。
【0039】
スピンドル216が、この例では第1の回転軸とは異なる第2の回転第2の回転軸を中心にして枢動するように取り付けられ、第2のばね217、この例では渦巻きばねによって第2のカム212の外周に押し付けられる。。第2のフィーラスピンドル216は、カムの最小半径部分上に位置する第1の位置と、カムの最大半径部分上に位置する第2の位置との間で移動することができる。
【0040】
第2の蝸牛形カム212および第2のフィーラスピンドル216は、第2のフィーラスピンドル216によって第2のカム212の方向に及ぼされる圧力が、第2のフィーラスピンドル216が第2のカムの段部214に当接するまで、移動によってカム212をその通常の駆動方向と反対方向に回転させるように適合された復元力として作用する非半径方向の成分を有するように寸法決めおよび配置される。
【0041】
第2のフィーラスピンドル216は、その回転シャフト上に、第2のフィーラスピンドル216と一緒に回転するように拘束された第2の巻上げ車(フィーラスピンドル216の下にあり見えない)を担持する。戻し車219は、巻上げ車と連続的に係合し、第2のばね217によって張力の加わった状態に保たれる。
【0042】
本発明による第2の駆動システムは、第2の巻上げ車に運動学的に接続された第2の駆動車230をさらに備える。第2の駆動車230は、図中では本質的に隠れているが、図1および図2に見られる第1の駆動車と同様である。したがって、第2の駆動車は、第2の従動車と協働してそれを駆動するように適合された格納式の第2の駆動爪236を含む。ゆえに、第2の従動車はクロノグラフの時積算車180である。
【0043】
したがって、図3に示すその第2の位置から図4に示すその第1の位置へ移動すると、第2のフィーラスピンドル216の突然の降下が第2の巻上げ車、ひいては第2の駆動車230を回転させることは明らかである。。第2の駆動爪236は、第2の駆動車230の回転軸の周りの回転を完了し、その間に分積算車140に固定されたカム212が1回転するたびに秒クロノグラフ車180を1ステップ駆動する。
【0044】
非常に有益な方法では、クロノグラフの様々なカム112、212および車110、140、180は同軸に配置され、クロノメータによる時間情報、すなわち、この例では秒、分、および時の同軸表示を可能にする。
【0045】
また、時積算車180の角度位置も、第1の安全爪142と同じシャフト上に配置された第2の安全爪242によって固定される。2つの安全爪142、242は、第1の爪の長穴148と第2の爪242の見ることができない長穴とに合わせられたピン246aによって隙間をあけて相互連結されており、それらの安全爪はそれぞれの車で別々に作動できる。
【0046】
本発明による駆動システムは、本出願において図示され説明されているように、クロノグラフにおいて使用される場合に特に有利である。実際、以下に説明されるように、本発明による表示機構の使用において、各駆動システムのフィーラスピンドルはまた、積算車を所定の位置、すなわち、図1および図2の例では、クロノグラフ秒車110を、図3および図4の例では、分積算車140をそのゼロ位置に移動させるために使用することができる。
【0047】
上述のように、カム112および212の輪郭は、カムの方向を向いているそれぞれのフィーラスピンドル116、216が、フィーラスピンドルが蝸牛形の段部114、214に当接するまでカムを回転駆動することができるようになっている。
【0048】
一方では本発明のカムの形状と、他方では上記で引用した欧州特許出願公開第2241944号に示されているカムの形状との比較は、本発明によるカムの外周の傾斜が通常の斜面よりも急勾配であることを示す。
【0049】
クロノグラフ秒車110のゼロリセットに関し、ばね117の作用は、機構の第2の動作状態において、クロノグラフ秒車110が切り離されてムーブメントによって伝達される駆動トルクを受けない場合に、効率的である。実際、クロノグラフが正しく機能するためには、ばね117によって加えられる力は、無論、ムーブメントを駆動する力よりも小さい。切り離しは従来通りとすることができ、本願に記載する必要はない。
【0050】
したがって、ゼロリセット動作において、クロノグラフ秒車110が切り離されると、第2の動作状態において、カム112は、それをゼロ位置に戻すフィーラスピンドル116の作用のみを受ける。
【0051】
クロノグラフ機構は、ゼロリセットコントローラ52によって動かされるよう適合された分離レバー50を有利に備える。分離レバー50は、駆動車130と協働するよう適合された第1の機能領域54を備える。第1の機能領域54は、可撓性アーム56の端部に有利に配置されており、この端部は、駆動車130に到達するために複数のレベルを含むことができる。分離レバー50によって駆動車130に加えられる追加力は、カム112に抗して追加トルクをフィーラスピンドル116に加えることを有利に可能にし、それによってクロノグラフ秒車110のゼロリセットを加速し、促進する。
【0052】
したがって、ユーザによってゼロリセット制御に加えられる追加力がクロノグラフ秒車110をゼロリセットするのに十分なトルクを有することを可能にするので、ばね117は比較的弱いものとすることができる。したがって、カム112上のフィーラスピンドル116の摩擦は、クロノグラフが作動している場合の動きを比較的ほとんど妨げない。
【0053】
秒積算計をゼロにリセットすると同時に、分積算車140もゼロにリセットされなければならない。そのばね217の作用を受ける第2のフィーラスピンドル216は、第2のカム212と協働し、分積算車140をゼロにリセットするよう適合されている。しかしながら、第2のフィーラスピンドル216の効率的な動作を可能にするために、分積算車140を位置決めする安全爪142を切り離し、さらに駆動車130を切り離すことが必要である。
【0054】
分離レバー50はこれらの機能を実行するように形作られている。まず、第1の機能領域54は、駆動車130と協働することによって、分積算車140の歯から駆動爪136を引き出すように適合される。また、分離レバー50は、安全爪142と協働して分積算車140の歯からそれを引き出すように適合された剛性の第2の機能領域58を備える。後者は、次に、第2のフィーラスピンドル216の作用によって自由にゼロリセットされる。
【0055】
また、第2のフィーラスピンドル216の作用も、ゼロリセットコントローラ52の作動によって強化される。この目的のために、分離レバー50は、第2の駆動車230と協働するよう適合された第3の機能領域60を備える。第3の機能領域60は追加可撓性アーム62の端部に有利に配置され、前記端部は第2の駆動車230に達するために複数のレベルを含むことができる。分離レバー50によって第2の駆動車230に加えられる追加力は、第2のカム212に対して追加トルクを第2のフィーラスピンドル216に付与することを有利に可能にし、したがって分積算車140のゼロリセットを加速および促進する。
【0056】
したがって、ユーザによってゼロリセットコントローラに加えられる追加力が分積算車140をゼロリセットするのに十分なトルクを有することを可能にするので、ばね217は比較的弱いものとすることができる。したがって、カム212上のフィーラスピンドル216の摩擦は、クロノグラフの作動中の動きをほとんど妨げない。
【0057】
秒クロノグラフ車110および分積算車140のゼロリセットと同時に、時積算車150もゼロリセットされなければならない。上記の説明から明らかなように、時積算車150は、それをゼロにリセットすることができるカムに固定されていない。
【0058】
時積算車180は、ここでは渦巻きばねの形態をとる戻しばね182と関連付けられ、時積算車を、当接部により画定することのできるその初期位置に戻すよう適合される。時積算車180は、360°の最大回転をもたらすよう適合されていることに留意されたい。実際、それは、第2の駆動車230の反対側に到着した際に、第2の駆動爪236により生じる進行を防止する切頭歯184を含む。
【0059】
ゼロリセットのために、分離レバー50の第2の機能領域58は、ピン246と2つの長円形の穴によって互いに接続されている2つの安全爪142および242の同時かつ同期した動作を可能にする。したがって、分離レバー50が時積算車180を第2の安全爪242から解放すると、戻しばね182はそれをその初期ゼロ位置に戻す。
【0060】
したがって、本出願は、フィーラスピンドルが、従動車を駆動するための駆動車の従動車への接続と、積算計のカムと協働による積算計のゼロリセットへ関与との両方を可能にする、クロノグラフ機構に特に適した独自の瞬時運針駆動システムを提案する。これにより、従来のハンマーやハート形カムの使用を回避できる。
【0061】
当業者は、非限定的な例として与えられた本説明から生じる変形を想到することが可能であり、保護の範囲は特許請求の範囲によって限定される。上述の教示に基づいて、当業者は、フィーラスピンドルの形状ならびに巻上げ車および駆動車の配置を適合させることによって、様々な積算計が同軸ではないクロノグラフを提案することができることに特に留意されたい。分離レバーの形状は対応する方法で適合されるであろう。
図1
図2
図3
図4