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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】発酵グアーミールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 10/12 20160101AFI20220318BHJP
【FI】
A23K10/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019546916
(86)(22)【出願日】2018-02-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 KR2018002457
(87)【国際公開番号】W WO2018160000
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2019-09-05
(31)【優先権主張番号】10-2017-0026703
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514199250
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダング コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】キョンギル カング
(72)【発明者】
【氏名】セオング ジュン チョ
(72)【発明者】
【氏名】ジェホオン リュ
(72)【発明者】
【氏名】キョング ホオン チャング
(72)【発明者】
【氏名】セウング ウォン パーク
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-055831(JP,A)
【文献】Saba Imtiaz, Hamid Mukhtar and Ikram-ul-Haq,Production of alkaline protease by Bacillus subtilis using solid state fermentation,African Journal of Microbiology Research,2013年04月16日,Vol. 7, No. 16,pp. 1558 - 1568
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/12
A23L 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵グアーミールの製造方法であって、次の段階:
(1)グアーミールを前処理する段階;
(2)前記前処理されたグアーミールにバチルス菌株を接種する段階;及び
(3)前記グアーミールに接種された菌を固体培養して発酵グアーミールを収得する段階を含み、
該バチルス菌株が、バチルス・アミロリケファシエンスであり、
該段階(1)の前処理する段階が、(1-1)水をグアーミールに添加してその水分含量を調節する段階;(1-2)該水分含量が調節されたグアーミールを熱処理する段階;及び(1-3)該熱処理されたグアーミールを冷却させる段階を含む、前記方法。
【請求項2】
前記段階(1-1)の後のグアーミールの水分含量が、40~45%である、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記段階(1-2)の熱処理が、90℃~95℃で行われる、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記段階(1-3)の冷却が、固体発酵可能な温度まで下げるものである、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記段階(3)の固体培養が、30℃~50℃の温度で15~25時間行うものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記段階(3)の後に、前記発酵グアーミールを乾燥して粉砕する段階(4)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記発酵グアーミールが、前記(1)~(3)の段階が行われていないグアーミール内トリプシンインヒビター(trypsin inhibitor、TI)の含量を基準に、30~50%のトリプシンインヒビターを含むか、または
前記発酵グアーミールが、前記(1)~(3)の段階が行われていないグアーミール内難消化性オリゴ糖の含量を基準に、10~40%の難消化性オリゴ糖を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の方法によって製造された発酵グアーミールの、飼料組成物としての使用
【請求項9】
ガラクトマンナナーゼ(Galactomannanase)、セルクラスト(Celluclast)及びビスコザイム(Viscozyme)からなる群から選択されるいずれか1つの酵素をさらに含む、請求項に記載の使用
【請求項10】
前記酵素が、前記発酵グアーミール重量対比0.1%(w/w)~1.0%(w/w)で含まれるものである、請求項に記載の使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、発酵グアーミール(Guar meal)の製造方法、前記方法によって製造された発酵グアーミール、及びこれを含む飼料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グアー(Guar、Cyamopsis tetragonoloba)はマメ科に属し、ローカストビーンガム(locust bean gum)の代替源として用いられている。
【0003】
グアー種子は14%~18%の殻、34%~42%の胚乳、43%~47%の胚で構成されることが知られている。特に、グアー胚乳は大量のガラクトマンナンガム(グアーガム:guar gum)を含んでおり、これは乳化剤、増粘剤及び食用接着剤などの食品用添加物として用いられると同時に、シェールオイル(shale oil)及びガス生産のためのフラッキング工法(fracking、hydraulic fracturing)に用いられると公知されている。
【0004】
グアーガムの生産に伴う副産物としてグアー胚(guar germ)とグアー殻(guar hull)が発生される。グアーミール(guar meal)は、胚と殻が混合された状態を指し、一般的には飼料原料として用いられている。しかし、グアーミールは動物性タンパク質に比べてタンパク質の含量が比較的低く、魚粉、牛乳などの幼い家畜の飼料動物タンパク質に比べて必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル及びUGF(Unknown Growth Factor)の含量が優秀ではなく、トリプシンインヒビター、サポニン、残留グアーガム及びタンニンのような抗栄養因子(anti-nutritional factor、ANF)が含有されているため、飼料として用いる場合に家畜の消化率を低下させることがある。特に、トリプシンインヒビター(trypsin inhibitor、TI)とサポニン(saponin)など抗栄養因子は幼い家畜の消化率を低下させて成長を抑制することができるため、幼い家畜用飼料に添加されないだけでなく、育成豚や畜牛の飼料にも非常に制限的に用いられている。
【0005】
このようなグアーミールの問題点を解決するために、濃縮されたグアータンパク質が開発されたが、製造原価が高いという短所がある。また、複合菌株を用いたグアーミールの発酵方法と、乳酸菌と酵母を用いた嫌気性固体発酵方法が提示されたが(特許文献1及び2)、これらの方法は発酵にかかる時間が長く、乾燥工程が必要であり、嫌気複合菌株及び連続コンベアの使用による品質管理が要求されるなどの様々な問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】中国公開特許第2015-10384290号
【文献】中国公開特許第2010-10228079号
【文献】韓国登録特許第10-1517326
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような背景下で、本発明者らは前記のような問題点を解決するために鋭意努力した結果、グアーミールをバチルス菌株で発酵させた場合、栄養成分及び消化率が向上できることを確認し、本出願を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願の一つの目的は、(1)グアーミールを前処理する段階;(2)前記前処理されたグアーミールにバチルス菌株を接種する段階;及び(3)前記グアーミールに接種された菌を固体培養して発酵グアーミールを収得する段階を含む、発酵グアーミールの製造方法を提供することにある。
【0009】
本出願の他の目的は、前記方法によって製造された、発酵グアーミールを提供することにある。
【0010】
本出願の他の目的は、前記発酵アーミールを含む飼料組成物を提供することにある。
【発明の効果】
【0011】
本出願の発酵グアーミールの製造方法により、栄養成分及び消化率が向上された高品質の植物性タンパク源である発酵グアーミールを製造することができ、これを含有して飼料配合比が減少されて、プロバイオティクスの効果を有するタンパク飼料組成物を提供することができる。また、グアーミール内グアーガムの粘度を減少させ、特にグアーミール内難消化性オリゴ糖及びトリプシンインヒビター(trypsin inhibitor、TI)の含量を著しく減少させて、消化率がさらに向上された高品質の発酵グアーミールを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本出願の発酵グアーミール製造方法の各段階についてのフローチャートである。
図2】本出願の発酵グアーミール製造方法における前処理の段階を具体的に示したフローチャートである。
図3】酵素の種類と酵素濃度に応じるグアーガムの粘度変化を示したグラフである。
図4】菌株の種類に応じたグアーミールタンパク質の加水分解の程度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
これを具体的に説明すると、次の通りである。一方、本出願で開示された各説明と実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用されてもよい。すなわち、本出願で開始された様々な要素のすべての組み合わせが本出願のカテゴリに属する。また、下記記述された具体的な叙述によって、本出願のカテゴリが制限されるとは見られない。
【0014】
前記目的を達成するための一つの様態として、本出願は、(1)グアーミールを前処理する段階;(2)前記前処理されたグアーミールにバチルス菌株を接種する段階;及び(3)前記グアーミールに接種された菌を固体培養して発酵グアーミールを収得する段階を含む、発酵グアーミールの製造方法を提供する。
【0015】
グアー(Guar、Cyamopsis tetragonoloba)は、クラスタマメ(cluster bean)とも呼ばれるマメ科植物であって、最大2~3mまで成長し、窒素固定微生物と共生する。成熟したグアーは家畜飼料として主に用いられ、土壌に栄養成分を供給する緑肥(green manure)としても用いられる。グアーの豆には多くの栄養物質が含有されているが、トリプシンインヒビターのような抗栄養物質が除去されない限り、食用として用いるには容易ではない。
【0016】
グアーガム(Guar gum)は、グアラン(guaran)とも呼ばれ、グアーに含まれているガラクトマンナン(galactomannan)を意味する。ガラクトースとマンノースで構成された多糖類であって、化学及び医薬産業で多様に用いられる物質である。
【0017】
グアーミール(Guar meal)は、グアーガムを生産しながら発生する副産物であり、約25%の胚と75%の殻が混ざった混合物である。タンパク質が豊富で、飼料組成物に用いられてもよいが、抗栄養物質などにより消化率が低いという問題点がある。
【0018】
本出願では、グアーミールを飼料組成物として用いるのに発生する問題点を解決するために、グアーミールをバチルス菌株で発酵させた場合、粗ダンベクの含量が増加して、難消化性オリゴ糖が減少し、トリプシンインヒビターのような抗栄養物質が減少して消化率が増加するため、バチルス菌株で発酵された発酵グアーミールを飼料組成物として用いることを確認した。
【0019】
前記段階(1)のグアーミールを前処理する段階は、(1-1)水をグアーミールに添加して水分含量を調節する段階;(1-2)前記水分含量が調節されたグアーミールを熱処理する段階;及び(1-3)前記熱処理されたグアーミールを冷却させる段階を含んでもよい。
【0020】
前記段階(1-1)は、水をグアーミールに添加して水分含量を調節する加水段階であって、本出願の目的上、グアーミールに菌を接種して発酵させるのに必要な前処理段階に該当する。グアーミールに水を添加する方法としては、当業界に公知の方法が制限なく用いられてもよい。
【0021】
具体的には、前記段階(1-1)の水分含量が調節されたグアーミールは、水分含量が30~60%(w/w)、具体的には、35~50%(w/w)、より具体的には、40~45%(w/w)であってもよいが、これに制限されるものではない。前記水分含量の範囲を有するグアーミールは低水分による発酵速度の遅延を防止して、グアーミールの移送及び発酵後の乾燥工程に多くの費用がかかるという問題点を改善するだけでなく、熱効率面で有利である。
【0022】
水分含量が極めて低い場合、グアーミールの発酵が十分に起こらなくて汚染菌による品質低下の問題が発生することがあり、水分含量が高すぎる場合、例えば、水分含量が50%以上である場合は、品質には問題がないが工程の設計が難しく、固体発酵の進行における作業性及び製造原価の競争力が著しく低下されることがある。
【0023】
前記段階(1-2)は、水分含量が調節されたグアーミールを熱処理する加熱段階であって、熱処理の目的は、原料グアーミール中の雑菌を死滅させると同時にグアーミール細胞壁を破壊してタンパク質を変性させることによって、目的とする微生物が活発に生育できる環境を提供することにある。熱処理は、当業界に公知された様々な方法を用いて行われてもよい。
【0024】
熱処理の温度が低かったり、処理時間が短い場合には、雑菌の殺菌効果が低下され、その以後の発酵工程が円滑に進まないという問題点があり、熱処理の温度が高かったり、処理時間が長くなる場合には、グアーミール内タンパク質の変性による消化率が減少され、最終製品の品質が低下するという問題点が発生することがある。
【0025】
このような熱処理過程を介して、グアーミールに存在する汚染菌がほとんど死滅され、その後の工程である発酵が円滑に進行される化学的環境が造成される効果があるだけでなく、消化率を阻害するトリプシンインヒビター(TI)のような抗栄養因子が減少する効果も期待できる。熱処理の温度が低かったり、処理時間が短い場合、前記TIのような抗栄養因子の減少が起こらず、グアーミール原料内の微生物、例えば、異種バチルス菌株、カビ及び病原菌が死滅されないという問題点が発生することがある。
【0026】
具体的には、前記段階(1-2)の熱処理はグアーミールを85℃~95℃で処理するものであってもよく、より具体的には、90℃~95℃で処理するものであってもよいが、これに制限されない。
【0027】
具体的には、前記段階(1-2)の熱処理は、グアーミールを85℃~100℃で20分~35分間処理するものであってもよく、具体的には、90℃~95℃で25分~30分間処理するものであってもよい。熱力学的に加圧をしなくて、100℃以下の温度で処理できる。
【0028】
前記段階(1-3)は、熱処理されたグアーミールを冷却し、バチルス菌株を接種する段階であって、加熱段階で高まったグアーミールの温度を下げて発酵菌としてバチルス菌株を接種して発酵を誘導するのに必要な過程である。
【0029】
前記冷却は、熱処理が終了した後、自然的に進行されてもよいが、冷却速度を高めて過熱を防止して、均一に冷却するためにコンベア(conveyor)式放冷機を用いた移送過程を経て、簡単に行ってもよい。
【0030】
具体的には、前記段階(1-3)の冷却は、20℃~60℃の温度で行ってもよく、より具体的には、30℃~50℃の温度で行ってもよいが、これに制限されるものではない。
【0031】
前記段階(1-3)のバチルス菌株は、バチルス・サブチリスまたはバチルス・アミロリケファシエンスであってもよく、より具体的には、1種のバチルス・サブチリス(ATCC21770)、4種のバチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens K2G(特許文献3)、ATCC 23842、ATCC 23843、ATCC 23845)であってもよい。バチルス菌株の培養方法は、当業界に公知された方法が制限なく用いられてもよく、具体的には、液状培養であってもよい。
【0032】
前記バチルス菌株はグアーミール重量の5~20重量%で接種されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0033】
本出願において、前記段階(3)は、前記グアーミールに接種された菌を固体培養して発酵グアーミールを収得する段階であって、本出願の発酵グアーミールの製造方法の培養及び発酵段階に該当する。
【0034】
前記培養は、固体培養で行うものであってもよく、例えば、充填層発酵槽(packed-bed fermentor)などを用いて発酵させるものであってもよい。
【0035】
本出願において、用語、「固体培養」は、微生物や動植物の細胞などを寒天やゼラチンなどの固形培地上で培養することを意味し、その方法としては当業界に公知された方法が制限なく用いられてもよい。
【0036】
充填層発酵槽には、回分式通気培養装置、密閉式培養装置、連続式通気培養装置など様々な形式があり、グアーミールの固体発酵に有用なものであれば、その形式に制限されず、本出願の方法に用いられてもよく、生産規模に応じて適切な装置を選択して用いてもよい。
【0037】
一般的な発酵工程は、酵母、乳酸菌またはカビを用いる場合、48時間~72時間の固体発酵の工程を伴い、これは菌株ごとに代謝、酵素活性のような生物学的活性が異なるためである。しかし、バチルス菌株を用いる場合、24時間以内に発酵工程が終了されてもよく、具体的には約16時間行ってもよい。
【0038】
具体的には、前記段階(3)は、固体培養は、30℃~50℃の温度で15~25時間行うものであってもよく、より具体的には、37℃~45℃の温度で14時間~16時間行うものであってもよい。
【0039】
前記段階(3)を介して製造された発酵グアーミールの内には相当数の生菌が存在してプロバイオティクスの効果を示すことができ、前記生菌数は、具体的には、10~10CFU/gであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0040】
本出願において、用語、「プロバイオティクス」は、体内に入って健康に良い効果を与える生きている菌をいう。
【0041】
本出願の方法は、前記段階(3)の後に、前記発酵グアーミールを乾燥して粉砕する段階(4)をさらに含んでもよい。
【0042】
発酵過程でグアーミール中の水分は一部蒸発するが、発酵終了の直後には残存水分含量が非常に高い。しかし、発酵グアーミール製品の最終的な水分含量を調節するために、乾燥工程がさらに必要になる。
【0043】
また、本出願に係るバチルス・アミロリケファシエンス菌株を用いた固体発酵時の発酵グアーミールの状態が非常に良好であるが、部分的に弱く凝った塊を形成するため、乾燥した後に発酵グアーミールの粒子サイズを均一に粉砕される必要がある。
【0044】
乾燥及び粉砕は、当業界に公知された様々な方法で行ってもよいが、過度に高温で乾燥した場合には、発酵グアーミール中の生菌がほとんど死滅されるため、注意する必要がある。それで、生菌が死滅しない低温で乾燥しなければならず、低温低湿度の熱風で乾燥してもよいが、これに制限されるものではない。粉砕過程は発酵グアーミールを用いるとする目的に応じて様々な大きさに粉砕してもよく、粉砕方法として、例えば、ハンマーミル(hammer mill)を用いてもよい。
【0045】
本出願の他の一つの様態として、本出願は前記発酵グアーミールの製造方法によって製造された発酵グアーミールを提供する。
【0046】
具体的には、前記発酵グアーミールはバチルス菌株を含んでもよく、より具体的には、前記バチルス菌株は、 バチルス・アミロリケファシエンスであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0047】
前述した本出願の方法に従って、バチルス・アミロリケファシエンス菌株を用いてグアーミールを発酵することにより、グアーミールに含有されたTIを始めとして、各種抗栄養因子が減少され、タンパク質の加水分解及び低分子化により消化吸収率が向上され、粗ダンベクの含量が増加された発酵グアーミールを収得することができ、これは飼料としての絶対的な価値が改善されたもので、動物性タンパク質を代替しうる高品質のタンパク質飼料の材料として利用価値が非常に高い。
【0048】
また、グアーミールは4%~6%のオリゴ糖を含有しており、前記オリゴ糖の中で難消化性オリゴ糖、すなわちガラクトオリゴ糖(galacto-oligosaccharides、以下GOSと呼ぶ)であるラフィノース(raffinose)とスタキオース(stachyose)が2%~3%を占めている。前記難消化性オリゴ糖は、腸内有害微生物の栄養源として用いられたり、下痢を引き起こすことがあって問題となるが、本出願の方法によって発酵されたグアーミールには難消化性オリゴ糖の含量がかなり減少して飼料組成物として用いられる場合、優れた消化吸収率を示すことができることを確認した。
【0049】
具体的には、本出願の方法により製造された発酵グアーミールは、前記(1)~(3)段階が行われていないグアーミール内トリプシンインヒビター(trypsin inhibitor、TI)の含量を基準に、30~50%水準のトリプシンインヒビターを含んでもよい。また、本出願の方法により製造された発酵グアーミールは、前記(1)~(3)の段階が行われていないグアーミール内難消化性オリゴ糖の含量を基準に、10~40%水準の難消化性オリゴ糖を含んでもよい。
【0050】
また、本出願の発酵グアーミールは嗜好性に問題がなく、飼料要求率も大豆粕と似ているため、大豆粕を代替できるタンパク源として広く活用されうる。
【0051】
本出願のもう一つの様態として、本出願は前記発酵グアーミールの製造方法によって製造された発酵グアーミールを含む飼料組成物を提供する。
【0052】
本出願の用語、「飼料組成物」とは、個体の生命を維持して、前記個体を飼育するのに必要な有機または無機栄養素を供給する物質を意味する。前記飼料組成物は、飼料を摂取する個体が必要とするエネルギー、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を含んでもよく、特にこれに制限されないが、穀物類、根果類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、油脂類、でんぷん類、粕類、穀物副産物類などの植物性飼料またはタンパク質類、無機物類、油脂類、鉱物性類、単細胞タンパク質、動物性プランクトン類、魚粉などの動物性飼料であってもよい。本出願で前記飼料組成物は、飼料に添加される物質(すなわち、飼料添加物)、飼料原料または個体に給与される飼料自体をすべて含む概念である。
【0053】
前記個体は、飼育対象を意味するもので、本出願の飼料を摂取することができる生命体であれば制限なく含まれてもよい。そこで、本出願の飼料組成物は、哺乳類、家禽類、魚類及び甲殻類を含む多数の動物の食事、すなわち、飼料に適用できる。商業的に重要な豚、牛、ヤギなどの哺乳類、ゾウ、ラクダなどの動物園の動物、犬、猫などの家畜に用いてもよい。商業的に重要な家禽類には、鶏、アヒル、ガチョウなどが含まれ、マスやエビなどの商業的に飼育される魚類及び甲殻類を含んでもよい。
【0054】
本出願に係る飼料組成物内の発酵グアーミールの含量は、適用家畜の種類及び年齢、適用形態、目的とする効果などに応じて適切に調節可能であり、例えば、1~99重量%、具体的には10~90重量%、より具体的には、20~80重量%で用いてもよいが、これに制限されるものではない。
【0055】
本出願の飼料組成物は、投与のために発酵グアーミールに加えて、クエン酸、フマル酸、アジピン酸、乳酸などの有機酸;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、重合リン酸塩などのリン酸塩;ポリフェノール、カテチン、トコフェロール、ビタミンC、緑茶抽出物、キトサン、タンニン酸などの天然抗酸化剤のうち1種以上を混合して用いてもよく、必要に応じて抗インフルエンザ剤、緩衝液、静菌剤など他の通常の添加剤を添加してもよい。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤または潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化してもよい。
【0056】
また、本出願の飼料組成物は、補助成分としてアミノ酸、無機塩類、ビタミン、抗酸化剤、抗真菌剤、抗菌剤などの各種助剤及び粉砕または破砕された小麦、大麦、トウモロコシなどの植物性タンパク質飼料、血粉、肉粉、魚粉方などの動物性タンパク質飼料、動物性脂肪及び植物性脂肪のような主成分以外にも栄養補助剤、成長促進剤、消化吸収促進剤、疾病予防剤と一緒に用いてもよい。
【0057】
本出願の飼料組成物を飼料添加物として用いる場合、前記飼料組成物をそのまま添加したり、他の成分と一緒に用いてもよく、通常の方法に従って適切に用いてもよい。飼料組成物の投与形態は、非毒性の製薬上許容可能な担体と組み合わせて、すぐに放出または徐放性剤形で製造してもよい。これらの食用担体は、トウモロコシ澱粉、ラクトース、スクロース、プロピレングリコールであってもよい。固体型担体の場合には、錠剤、散剤、トロキ剤などの投与形態であってもよく、液状型担体の場合には、シロップ剤、液体懸濁液剤、エマルジョン剤、溶液剤などの投与形態であってもよい。また、投与剤は保存剤、潤滑剤、溶液促進剤、安定化剤を含有してもよく、他の炎症疾患改善剤及びウイルス予防上有用な物質を含有してもよい。
【0058】
本出願による飼料組成物は、家畜飼料に乾燥重量基準で1kg当り約10~500g、具体的には、10~100gの量で混合されてもよく、完全に混合した後にマッシュに供給したり、追加の加工工程を介してペレット化、膨張化、押出工程を経てもよいが、これに制限されるものではない。
【0059】
また、前記飼料組成物は、ガラクトマンナナーゼ(Galactomannanase)、セルクラスト(Celluclast)及びビスコザイム(Viscozyme)からなる群から選択される少なくともいずれか1つの酵素をさらに含んでもよい。
【0060】
具体的には、前記酵素は、本出願の発酵グアーミール内グアーガムの含量を考慮すると、前記発酵グアーミール重量対比0.1%(w/w)~1.0%(w/w)で含まれてもよく、より具体的には、0.1%~0.5%(w/w)、さらに具体的には、0.2%(w/w)で添加されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0061】
前記酵素は、グアーミール内グアーガムの粘度を減少させうる酵素であって、前記酵素が飼料組成物に加えて含まれる場合、グアーミール内に存在する1%~3%のグアーガムが分解され、消化率が向上されうる。
【実施例
【0062】
以下、本出願の実施例を介してより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本出願を例示的に説明するためのもので、本出願の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
実施例1-1:グアーミールの熱処理温度に係るグアーミールの栄養成分の変化
本発明の発酵グアーミールの製造方法は、水分含量が調節されたグアーミールを熱処理する段階を含む。熱処理の温度に係る発酵グアーミールの細菌数及びトリプシンインヒビター(trypsin inhibitor、TI)を測定した。
【0064】
より具体的には、グアーミール100gを用意して、グアーミールの水分含量が42%(w/w)になるように水分を供給した。続いてグアーミールを70℃、80℃、90℃及び95℃でそれぞれ30分間熱処理した。
【0065】
それぞれ異なる温度で熱処理した後、グアーミールの細菌数及びトリプシンインヒビター(TI)を測定し、熱処理していないグアーミールを対照群とし、相対比(%)を計算して下記の表1に示した。
【表1】
【0066】
前記表1を参照すると、熱処理の温度が高いほどグアーミールの細菌数及びTIの含量は減少した。特に、90℃で熱処理した場合には、グアーミールの細菌数は5.0×10CFU/g、TIの含量は1.5mg/gであり、95℃で熱処理した場合には、グアーミールの細菌数は7.0×10CFU/g、TIの含量は0.9mg/gであった。
【0067】
つまり、熱処理が行われていないグアーミールは、細菌数は4.0×10CFU/g、TIの含量は2.7mg/gを示し、70℃の温度で熱処理した場合のグアーミールの細菌数は3.5×10CFU/g、TIの含量は2.1mg/gであって、相対比が79%に達したので、比較的に温度が低い条件では細菌数とTIの含量が高くて飼料としての活用度が低いことがわかる。
【0068】
一方、グアーミールの熱処理の温度が高いほど細菌数とTIの含量が減少し、特に、グアーミールの熱処理の温度が80~95℃の場合に優れた効果が示され、90~95℃である場合よりも優れた効果が示されることを確認した。前記条件の熱処理に係る結果は、発酵グアーミールを大量生産するのにあたって、非常に効率的、かつ、経済的な効果を期待することができる。
【0069】
実施例1-2:グアーミールの発酵温度及び水分含量に係るグアーミールの栄養成分の変化
水分含量及び発酵温度に係る発酵グアーミールの栄養成分を測定した。
【0070】
より具体的には、グアーミール100gを用意して、グアーミールの水分含量がそれぞれ40%、45%、50%(w/w)になるように水分を供給した。続いてグアーミールを90℃で、それぞれ30分間熱処理した後、40℃に冷却した。
【0071】
それぞれ異なる水分含量を有するグアーミールに、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens K2G)培養液をグアーミール重量の10重量%接種して、水分含量がそれぞれ40%、45%、50%(w/w)になるようにして、よく混ぜた後、35℃、40℃、45℃及び50℃でそれぞれ16時間恒温恒湿が維持される条件で発酵させた。本発明に係る水分含量の調節段階、熱処理段階、及び発酵段階が行われていないグアーミール原料群は、対照群として用いた。
【0072】
水分含量及び発酵温度に係るグアーミールのタンパク含量を測定し、グアーミール原料群を基準にタンパク含量の増加率と相対比率を計算して、下記表2に示した。
【表2】
【0073】
前記表2を参照すると、発酵温度40℃、水分含量50%の条件で、対照群に比べて最も高い63.5%のタンパク含量と110%の増加率を示した。つまり、グアーミールは、35~50℃で、または40~45℃で発酵される場合に高いタンパク含量を有し得ることを確認した。また、グアーミールは、40~50%の水分含量、または45~50%の水分含量を有するように処理された後に発酵される場合に高いタンパク含量を有し得ることを確認した。
【0074】
実施例1-3:菌株による発酵グアーミールの栄養成分の変化
グアーミール100gを用意して、グアーミールの水分含量が40~45%(w/w)になるように水分を供給した。続いてグアーミールを80~95℃で30分間熱処理した後、40℃に冷却させた。前記グアーミール重量の10重量%のバチルス・サブチリス1種(Bacillus subtilis ATCC21770)とバチルス・アミロリケファシエンス4種の(Bacillus amyloliquefaciens K2G、ATCC 23842、ATCC 23843、ATCC 23845)培養液を前記冷却されたグアーミールにそれぞれ接種し、最終の発酵水分を45~50%(w/w)にして、よく混ぜた後、37℃~45℃で14時間~16時間恒温恒湿が維持される条件で発酵させた。本発明に係る水分含量の調節段階、熱処理段階、及び発酵段階が行われていないグアーミール原料群は、対照群として用いた。
【0075】
発酵されたグアーミールのタンパク含量、生菌数及びpHを測定し、グアーミール原料群を基準にタンパク含量の増加率と相対比率を計算して、下記表3に示した。
【表3】
【0076】
前記表3を参照すると、バチルス種が接種されて発酵されたグアーミールは62%以上の粗タンパク質を含有しており、これはバチルス種が接種されない対照群のグアーミールに比べて粗タンパク質が5%以上増加したことを確認した。したがって、前記発酵グアーミールが飼料に添加される場合、飼料配合比を減少させうる。また、前記発酵グアーミール内に存在する生菌数は10~10CFU/gの水準に達するため、前記発酵グアーミールが飼料に添加される場合、プロバイオティクス効果を期待することができる。
【0077】
実施例2:グアーミール内グアーガムの分解及び粘度の変化
グアーミール内には1%~3%のグアーガムが存在し、グアーガムの粘度は、消化器官内で消化物の流れを遅くして消化率を阻害すると知られている。したがって、グアーミール内グアーガムの粘度を減少させうる酵素が本出願の発酵グアーミールに添加されてもよい。
【0078】
酵素の種類と酵素の濃度に係るグアーガム(guar gum、galactomannan)の分解または粘度の減少効果を確認した。より具体的には、グアーガムを滅菌水に溶解して1%のグアーガム希釈液を準備した。グアーガム希釈液のそれぞれに酵素、ガラクトマンナナーゼ(Galactomannanase:以下GMと呼ぶ)、セルクラスト(Celluclast: 以下CEと呼ぶ)及びビスコザイム(Viscozyme:以下VIと呼ぶ)を濃度別に添加し、グアーガムの分解によるグアーガム溶液の粘度変化を測定した(図3)。
【0079】
その結果、GM、CE及びVIすべてグアーガムの粘度を減少させて、特にGM及びVIのグアーガムの粘度の減少効果に優れていたことを確認した。したがって、本出願の製造方法で製造された発酵グアーミールを含む飼料組成物に前記酵素がさらに含まれる場合、飼料の消化率と吸収率を改善させうる飼料組成物を提供することができる。
【0080】
実施例3:バチルス発酵によるグアーミール内糖類含量の変化
グアーミールは4%~6%のオリゴ糖を含有しており、これらのオリゴ糖の中で難消化性オリゴ糖、すなわちガラクトオリゴ糖(galacto-oligosaccharides、以下GOSと呼ぶ)であるラフィノース(raffinose)とスタキオース(stachyose)が2%~3%である。前記難消化性オリゴ糖は、腸内有害微生物の栄養源として用いられたり、下痢を引き起こすこともあるため、グアーミール内その含量を減少させることが必要である。
【0081】
グアーミール100gを用意して、グアーミールの水分含量が40~45%(w/w)になるように水分を供給した。続いてグアーミールを80~95℃で30分間熱処理した後、40℃に冷却させた。前記グアーミール重量の10%のバチルス・サブチリス1種(Bacillus subtilis ATCC 21770)とバチルス・アミロリケファシエンス4種(Bacillus amyloliquefaciens K2G、ATCC 23842、ATCC 23843、ATCC 23845)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)の培養液、及びサッカロミセスとラクトバチルス・アシドフィルス混合培養液を前記グアーミールにそれぞれ接種した。菌株が接種されたグアーミールをよく混ぜた後、これらを37℃~45℃で14時間~16時間恒温恒湿が維持される条件で発酵させた。ただし、サッカロミセス・セレビシエ、ラクトバチルス・アシドフィルスの培養液、及びサッカロミセスとラクトバチルス・アシドフィルス混合培養液が接種されたグアーミールは嫌気発酵させた。
【0082】
同一の時間発酵されたそれぞれの発酵グアーミールから水抽出し、0.22μmフィルタでろ過した後、Carbo PA-1(カラム温度30℃)を用いて難消化性オリゴ糖の含量を測定した。本発明に係る水分含量の調節段階、熱処理段階、発酵段階が行われていないグアーミール原料群が対照群として用いられた。発酵されたグアーミールの難消化性オリゴ糖の含量とグアーミール原料群を基準に相対比を計算して、下記表4に示した。
【表4】
【0083】
前記表4を参照すると、対照群に比べてバチルス種が接種された発酵グアーミール内難消化性オリゴ糖の含量は、平均的に80%以上減少したことと示された。特に、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)K2Gで発酵された発酵グアーミールでの難消化性オリゴ糖の含量が最も低かった。一方、サッカロミセス・セレビシエ培養液、ラクトバチルス・アシドフィルス培養液及びこれらの複合培養液で嫌気発酵させたグアーミールは、平均20~30%水準でGOSが削除された。したがって、本出願の発酵グアーミールは難消化性オリゴ糖の含量が少ないため、飼料として用いられる場合に家畜の消化率を向上させうることを確認した。
【0084】
実施例4:バチルス発酵によるTIの含量及びインビトロ消化率(digestibility)の変化
本出願に従って製造された発酵グアーミール内トリプシンインヒビター(Trypsin inhibitor、以下TI表記)の含量とインビトロ消化率を測定した。
【0085】
より具体的には、グアーミール100gを用意して、グアーミールの水分含量が40~45%(w/w)になるように水分を供給した。続いてグアーミールを90℃で30分間熱処理した後、40℃に冷却させた。前記グアーミール重量の10%のバチルス・サブチリス1種(Bacillus subtilis ATCC 21770)とバチルス・アミロリケファシエンス4種(Bacillus amyloliquefaciens K2G、ATCC 23842、ATCC 23843、ATCC 23845)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)の培養液、及びサッカロミセスとラクトバチルス・アシドフィルス混合培養液を前記グアーミールにそれぞれ接種した。菌株が接種されたグアーミールをよく混ぜた後、これらを37℃~45℃で16時間恒温恒湿が維持される条件で発酵させた。ただし、サッカロミセス・セレビシエ、ラクトバチルス・アシドフィルスの培養液、及びサッカロミセスとラクトバチルス・アシドフィルス混合培養液が接種されたグアーミールは嫌気発酵させた。本発明に係る水分含量の調節段階、熱処理段階、発酵段階が行われていないグアーミール原料群が対照群として用いられた。
【0086】
前記の方法で発酵された発酵グアーミールと対照群内TIの含量は、AOAC Ba 12-75(American Oil Chemists' Society)に従って測定され、インビトロ消化率は、Biosen et al(1997)2 step法で測定された。測定されたTIの含量(mg/g)は下記表5に示し、インビトロ消化率は下記表6に示した。
【表5】
【0087】
前記表5を参考すると、本出願に係るバチルス種で発酵されたグアーミールは平均1.0mg/gのTI含量を示し、これはグアーミール原料に比べて平均60%が減少したものである。一方、サッカロミセス・セレビシエ培養液、ラクトバチルス・アシドフィルス培養液及びこれらの複合培養液で嫌気発酵されたグアーミールは、バチルス種の培養液で発酵されたグアーミールに比べて、発酵によるTIの含量の低減効果が大きくなかった。したがって、バチルス種の培養液でグアーミールを発酵させる段階を含む本発明の発酵グアーミールの製造方法は、グアーミール内TIの含量を低減させうるため、本発明の発酵グアーミールを飼料として用いる場合、家畜内タンパク消化率を改善させうることを確認した。
【表6】
【0088】
前記表6を参照すると、バチルス種の培養液で発酵されたグアーミールのインビトロ消化率は、ラクトバチルス・アシドフィルスの培養液で発酵されたグアーミール、サッカロミセスとラクトバチルス・アシドフィルス混合培養液で発酵されたグアーミール及び対照群グアーミールのインビトロ消化率よりも高かった。これは、バチルス種の培養液でグアーミールを発酵する段階で、グアーミールタンパクが低分子化されるからであると推定される。しかし、サッカロミセス・セレビシエとラクトバチルス・アシドフィルスはバチルス種とは異なり、グアーミールタンパクを低分子化させることができないように見える。したがって、本発明の発酵グアーミールの製造方法で製造された、発酵グアーミールを飼料として用いる場合、家畜内タンパク消化率を改善させうると見える。
【0089】
実施例5:バチルス発酵に係るグアーミールタンパク質の加水分解の変化
グアーミールは大豆粕のタンパク質含量と同様またはより高いタンパク質を含有しているが、多くの抗栄養因子と高分子量の低消化率タンパク質を含むため、消化吸収率が低くて幼い家畜に用いるのに難しいという欠点がある。低消化率タンパク質は加水分解されたペプチドの形態に変換したり、消化が容易な低分子量のタンパク質に分解して、タンパク質の消化率を改善させうる。
【0090】
したがって、本出願に係る方法で製造された発酵グアーミールの消化率の改善程度を確認するために、発酵グアーミールタンパク質の加水分解の程度または分子量を測定した。
【0091】
より具体的には、グアーミール100gを用意して、グアーミールの水分含量が40~45%(w/w)になるように水分を供給した。続いてグアーミールを90℃で30分間熱処理した後、40℃に冷却させた。前記グアーミール重量の10%のバチルス・アミロリケファシエンス K2G(Bacillus amyloliquefaciens K2G)K2G、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)の培養液、及びサッカロミセスとラクトバチルス・アシドフィルス混合培養液を前記グアーミールにそれぞれ接種した。菌株が接種されたグアーミールをよく混ぜた後、これらを37℃~45℃で16時間恒温恒湿が維持される条件で発酵させた。ただし、サッカロミセス・セレビシエ、ラクトバチルス・アシドフィルス培養液及びサッカロミセスとラクトバチルス・アシドフィルス混合培養液が接種されたグアーミールは嫌気発酵させた。
【0092】
収得されたそれぞれの発酵グアーミール乾燥試料0.1gに8M ウレア溶液5.0mLを入れて混合した後、25℃で13000rpmで5分間遠心分離して上澄み液を分離した。分離された上澄み液を染色緩衝液で染色及び変性させた後、10μlをSDS-PAGEを行い、分子量に応じたタンパク質の移動相を確認した。
【0093】
図4は、菌株の種類に応じたグアーミールタンパク質の加水分解の程度を示したグラフである。左からライン1は、本発明に係る水分含量の調節段階、熱処理段階、及び発酵段階が行われていないグアーミール原料群の抽出上澄み液であり、ライン2はサッカロミセス・セレビシエで発酵されたグアーミールの抽出上澄み液を処理したものであり、ライン3は、ラクトバチルス・アシドフィルスで発酵されたグアーミールの抽出上澄み液を処理したものであり、ライン4はバチルス・アミロリケファシエンスK2Gで発酵されたグアーミールの抽出上澄み液を処理したものである。
【0094】
結果的に、バチルス・アミロリケファシエンスK2Gを用いて製造された発酵グアーミールは、グアーミール原料群または他の菌株を用いて製造された発酵グアーミールに比べて明らかに分子量のサイズが小さくなったことを確認できた。したがって、バチルス種が高分子量のグアーミールタンパク質を小さいサイズのペプチドの形態に加水分解し、これにより、本出願の発酵グアーミールは幼い家畜用タンパク質供給源としても用いられることができる。
【0095】
実施例6:グアーミールと大豆粕混合バチルス発酵による栄養成分の変化
グアーミール(Guar meal、GM)と大豆粕(Soybean meal、SBM)の割合がそれぞれ1:9、5:5、9:1になるように混合した混合物を用意した後、混合物の水分含量が40~45%(w/w)になるように水分を供給した。前記混合物をよく混ぜた後、これを90~95℃で25~30分間熱処理して、熱処理後には冷却させた。前記冷却されたグアーミール/大豆粕混合物に5重量%~20重量%のバチルス・アミロリケファシエンス2種(Bacillus amyloliquefaciens K2G、ATCC 23843)の培養液をそれぞれ接種し、よく混ぜた後、37℃~45℃で14時間~16時間恒温恒湿が維持される条件で発酵させた。発酵されたグアーミール/大豆粕混合物の栄養成分は、下記表7に示した。
【表7】
【0096】
その結果、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens K2G、ATCC 23843)2種すべて、原料グアーミールの粗タンパク質含量に比べて5.4%~6.5%の粗ンパクの含量が増加し、生菌数はバチルス2種すべて10ログ水準であって、代謝に係る生育及び生長が可能であることを確認した。また、抗栄養因子であるTIとGOSはそれぞれ原料の抗栄養因子含量に比べてすべて減少した。pHの場合もすべて増加したが、これはバチルスのタンパク質分解酵素の活性による代謝過程の中で生成されるアンモニアによるものである。
【0097】
したがって、本出願に係る発酵グアーミール/大豆粕混合物は、バチルス発酵に非常に適しており、発酵を介して粗タンパク質の含量が増加し、抗栄養因子であるTIとGOSが減少されるため、消化率を大幅に改善させうる。
【0098】
実施例7:発酵グアーミールの肉鶏飼養試験を介した効果の評価
発酵グアーミールの効果を評価するために肉鶏の飼養試験を行った。飼養試験を行なうために4日間適応期間を与えて、総21日(3週)の間に大豆粕と大豆粕の3%、5%、7%を発酵グアーミールに代替した飼料を給餌して肉鶏の体重と給餌率を確認した。肉鶏は80羽であって、4処理×4繰り返し×5羽で試験設計した。
【0099】
より具体的には、グアーミール100gを用意して、グアーミールの水分含量が40~45%(w/w)になるように水分を供給した。続いてグアーミールを90℃で30分間熱処理した後、40℃に冷却させた。前記グアーミール重量の10%のバチルス・アミロリケファシエンスK2G(Bacillus amyloliquefaciens K2G)の培養液を、前記グアーミールにそれぞれ接種した。菌株が接種されたグアーミールをよく混ぜた後、これらを37℃~45℃で14時間~16時間恒温恒湿が維持される条件で発酵させた後、乾燥して、大豆粕代替率別の発酵グアーミールを混合した試験飼料を給餌した。発酵グアーミールの給餌による肉鶏飼養試験の結果は、下記表8に示した。
【表8】
【0100】
その結果、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens K2G)を用いて製造された発酵グアーミールを5%代替した場合、肉鶏の体重と飼料摂取量(feed intake、FI)が大豆粕のみを給餌した場合より高いことが確認できた。つまり、これは発酵グアーミールの嗜好性に問題がないだけでなく、グアーミール原料の固有の臭いである強い草の臭いが低減されたこと示し、飼料要求率(feed conversion ratio、FCR)も大豆粕と同様であった。したがって、今後大豆粕を代替するタンパク源として、本出願に従って製造された発酵グアーミールが広く活用されてもよい。
【0101】
以上の説明から、本出願が属する技術分野の当業者は、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施されうることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、制限的なものではないものと理解しなければならない。本出願の範囲は、前記詳細な説明より、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
次の段階を含む発酵グアーミールの製造方法:
(1)グアーミールを前処理する段階;
(2)前記前処理されたグアーミールにバチルス菌株を接種する段階;及び
(3)前記グアーミールに接種された菌を固体培養して発酵グアーミールを収得する段階。
(構成2)
前記段階(1)の前処理する段階が、
(1-1)水をグアーミールに添加して水分含量を調節する段階;
(1-2)前記水分含量が調節されたグアーミールを熱処理する段階;及び
(1-3)前記熱処理されたグアーミールを冷却させる段階を含む、構成1に記載の方法。
(構成3)
前記段階(1-1)の後のグアーミールの水分含量が、40~45%である、構成2に記載の方法。
(構成4)
前記段階(1-2)の熱処理が、90℃~95℃で行われる、構成2に記載の方法。
(構成5)
前記段階(1-3)の冷却が、固体発酵可能な温度まで下げるものである、構成2に記載の方法。
(構成6)
前記段階(3)の固体培養が、30℃~50℃の温度で15~25時間行うものである、構成1に記載の方法。
(構成7)
前記段階(3)の後に、前記発酵グアーミールを乾燥して粉砕する段階(4)をさらに含む、構成1に記載の方法。
(構成8)
前記バチルス菌株が、バチルス・サブチリスまたはバチルス・アミロリケファシエンスである、構成1に記載の方法。
(構成9)
前記発酵グアーミールが、前記(1)~(3)の段階が行われていないグアーミール内トリプシンインヒビター(trypsin inhibitor、TI)の含量を基準に、30~50%水準のトリプシンインヒビターを含むか、または
前記発酵グアーミールが、前記(1)~(3)の段階が行われていないグアーミール内難消化性オリゴ糖の含量を基準に、10~40%水準の難消化性オリゴ糖を含む、構成1に記載の方法。
(構成10)
構成1~9のいずれか一項に記載の方法によって製造された、発酵グアーミール。
(構成11)
バチルス菌株を含む、構成10に記載の発酵グアーミール。
(構成12)
バチルス菌株が、バチルス・サブチリスまたはバチルス・アミロリケファシエンスである、構成11に記載の発酵グアーミール。
(構成13)
前記発酵グアーミールが、構成1に記載の(1)~(3)の段階が行われていないグアーミール内トリプシンインヒビター(trypsin inhibitor、TI)の含量を基準に、30~50%水準のトリプシンインヒビターを含むか、または
前記発酵グアーミールが、構成1に記載の(1)~(3)の段階が行われていないグアーミール内難消化性オリゴ糖の含量を基準に、10~40%水準の難消化性オリゴ糖を含むものである、構成10に記載の発酵グアーミール。
(構成14)
構成1~9のいずれか一項に記載の方法によって製造された発酵グアーミールを含む飼料組成物。
(構成15)
ガラクトマンナナーゼ(Galactomannanase)、セルクラスト(Celluclast)及びビスコザイム(Viscozyme)からなる群から選択される少なくともいずれか1つの酵素をさらに含む、構成14に記載の飼料組成物。
(構成16)
前記酵素が、前記発酵グアーミール重量対比0.1%(w/w)~1.0%(w/w)で含まれるものである、構成15に記載の飼料組成物。
図1
図2
図3
図4