(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】癌を処置する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/575 20060101AFI20220318BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220318BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220318BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
A61K31/575
A61P35/00
A61P1/16
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2019548368
(86)(22)【出願日】2017-09-21
(86)【国際出願番号】 US2017052663
(87)【国際公開番号】W WO2018164715
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2020-09-07
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506306868
【氏名又は名称】インターセプト ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】モシェッタ, アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】アスルメディ, ヘスス マリア バニャレス
(72)【発明者】
【氏名】ピエロラ, ルイス ブハンダ フェルナンデス デ
(72)【発明者】
【氏名】モンティエル, マリア ヘスス ペルゴリア
(72)【発明者】
【氏名】アスパレン, オイアネ エリセ
【審査官】深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/037482(WO,A1)
【文献】特表2016-500111(JP,A)
【文献】国際公開第2017/180577(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/176208(WO,A1)
【文献】特表2010-500285(JP,A)
【文献】Hepatology,2016年,Vol.65,pp.920-928
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胆管癌の処置又は予防を、それを必要とする対象において行うための組成物であって、
1日あたりの投与量が1~100mgのFXRアゴニストを含み、前記FXRアゴニストが化合物
2:
【化11】
又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体
である、組成物。
【請求項2】
前記FXRアゴニストは、化合物2のグリシン抱合体である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
前記FXRアゴニストは、化合物2のタウリン抱合体である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項4】
前記FXRアゴニストは、化合物2のサルコシン抱合体である、請求項
1に記載の組成物。
【請求項5】
胆管癌の処置又は予防を、それを必要とする対象において行うための、
1日あたりの投与量が1~100mgのFXRアゴニストと、薬学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物であって、前記FXRアゴニストが化合物
2:
【化12】
又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体
である、医薬組成物。
【請求項6】
胆管癌の処置又は予防を、それを必要とする対象において行うためのキットであって
、化合物2:
【化13】
又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体を含
み、化合物2又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体が、1~100mgの1日総量で投与される、キット。
【請求項7】
胆管癌の処置又は予防を、それを必要とする対象において行うための医薬品の製造における、
1~100mgのFXRアゴニストの使用であって、前記FXRアゴニストが化合物
2:
【化14】
又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体
である、使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
癌は、主として、一定の正常組織に由来する異常細胞の数の増加、その異常細胞による隣接組織への浸潤又は悪性細胞の所属リンパ節及び遠隔部位へのリンパ性若しくは血行性の拡散(転移)を特徴とする。臨床データ及び分子生物学的な研究は、癌が新生物発生前の軽微な変化から始まり、それが特定条件下で新形成に進行し得る多段階プロセスであることを示す。
【0002】
原発性肝癌は、世界中で最もよく見られる癌の形態の1つである。肝癌には主な2つの種類、即ち、肝細胞癌(HCC)(別名、悪性ヘパトーマ)及び胆管細胞癌(別名、胆管癌(CCA))がある。HCCは、原発性肝癌の最も一般的な形態であり、肝細胞内で発症する。HCCは、ほとんどの場合において男性及び肝硬変に罹患している患者で生じる。HCCは、世界中で最もよく見られる癌の1つであり、癌関連死因では3番目に多い。この疾患は、多くの場合、臨床症状の経過の後期に診断される。その結果、治癒手術の候補となるのは、患者のわずか10~15%にすぎない。HCC患者の大多数について、全身化学治療又は支持治療が処置選択肢の主力である。
【0003】
対照的に、主に肝臓内の細胆管上皮細胞(即ち胆管細胞)で発症するのは、胆管細胞癌又は胆管癌である。この型の癌は、女性に多く見られる。胆管癌(CCA)の発生率は、世界中で増加しており、既に2番目に多い原発性肝癌となっている。CCA患者は、診断が遅く、この腫瘍が治療抵抗性であるため、予後が思わしくない。
【0004】
現在まで、HCC及び/又はCCAなどの癌を効果的に処置できる薬物の数は、限られている。例えば、転移性肝細胞癌又は肝細胞癌の患者は、局所処置に失敗した場合、通常、3~4カ月程度の余命を維持するのみである。転移性肝細胞癌又は肝細胞癌は、局所処置に失敗した場合、主に全身治療を施される。ドキソルビシンの使用、ドキソルビシンと併用したタモキシフェンの高投与量の使用又はEA-PFL(エトポキシド、アドリマイシン、シスプラチン、フルオロウラシル及びロイコボリン)の使用は、効果的な例である。これらの薬物による寛解率は、15~30%のレベルに達し得る。しかしながら、肝細胞癌の患者は、通常、肝硬変の合併症及び他の合併症(白血球減少症、血小板減少症又は肝機能障害など)を発症するため、全身化学治療を受けることができない。さらに、大部分の化学治療剤の有効性は、限定的であり、患者の生存期間を著しく改善することができていない。努力が続けられているが、大部分の癌患者の臨床経過の悪化は、より有効な化学治療の必要性を明らかに示している。
【0005】
胆管癌は、腺癌(腺を形成するか又はかなりの量のムチンを分泌する癌)として分類される比較的まれな新生物である。その年間発生率は、西欧諸国で100,000人あたり1~2症例であるが、胆管癌の率は、ここ数十年にわたり世界中で上昇している。胆管癌は、原発腫瘍と何れかの転移の両方が手術によって完全に除去され得ない限り、不治の急速に死に至る癌であると考えられている。治癒する可能性のある処置は、手術以外にはないが、大多数の人が症状に気づくと疾患の進行期であり、診断時には手術不能である。胆管癌の人々は、一般に、治癒ではなく、化学治療、放射線治療及び他の緩和ケア措置で管理される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、これらのニーズに対処するものである。したがって、本発明の目的は、肝細胞癌及び胆管癌などの癌を処置又は予防する改善型の方法を提供することである。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
癌の処置又は予防を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効量の、化合物1若しくは2:
【化11】
又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体から選択されるFXRアゴニストを投与するステップを含む方法。
(項目2)
前記癌は、肝細胞癌、胆管癌、膵癌、腎臓癌、前立腺癌、食道癌、乳癌、胃癌、腎癌、唾液腺癌、卵巣癌、子宮体癌、膀胱癌及び肺癌から選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記癌は、肝細胞癌である、項目1又は2に記載の方法。
(項目4)
前記肝細胞癌は、初期段階肝細胞癌、非転移性肝細胞癌、原発性肝細胞癌、進行肝細胞癌、局所進行肝細胞癌、転移性肝細胞癌、寛解期の肝細胞癌又は再発肝細胞癌からなる群から選択される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記FXRアゴニストは、化合物1又はその薬学的に許容される塩である、項目1~4の何れか一項に記載の方法。
(項目6)
前記FXRアゴニストは、化合物1のナトリウム塩である、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記FXRアゴニストは、化合物1のN,N-ジエタンアミン塩である、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記FXRアゴニストは、化合物2又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体である、項目1~4の何れか一項に記載の方法。
(項目9)
前記FXRアゴニストは、化合物2のグリシン抱合体である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記FXRアゴニストは、化合物2のタウリン抱合体である、項目8に記載の方法。
(項目11)
前記FXRアゴニストは、化合物2のサルコシン抱合体である、項目8に記載の方法。
(項目12)
癌の処置又は予防を、それを必要とする対象において行うための、化合物1若しくは2:
【化12】
又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体から選択されるFXRアゴニストと、薬学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物。
(項目13)
癌の処置又は予防を、それを必要とする対象において行うためのキットであって、化合物1若しくは化合物2:
【化13】
又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体を含むキット。
(項目14)
癌の処置又は予防を、それを必要とする対象において行うための医薬品の製造における、化合物1若しくは2:
【化14】
又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体から選択されるFXRアゴニストの使用。
(項目15)
前記癌は、胆管癌である、項目1又は2に記載の方法。
(項目16)
前記FXRアゴニストは、化合物1又はその薬学的に許容される塩である、項目15に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】多剤耐性タンパク質2(Mdr2
-/-)ノックアウトマウスにおける肝腫瘍の数に対する化合物1-Na及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。*対照群に対してp<0.01。
【
図1B】Mdr2
-/-マウスにおける腫瘍(>直径5mm)のパーセント減少に対する化合物1-Na及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。
【
図2A】Mdr2
-/-ノックアウトマウスにおける肝腫瘍の数に対するOCA(化合物2)及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。
【
図2B】Mdr2
-/-マウスにおける腫瘍(>直径5mm)のパーセント減少に対するOCA及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。
【
図3A】ファルネソイドX受容体(FXR
-/-)マウスにおける肝腫瘍の数に対する化合物1-Na及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。
【
図3B】FXR
-/-マウスにおける腫瘍(>直径5mm)のパーセント減少に対する化合物1-Na及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。
【
図4】FXR
-/-マウスにおける肝腫瘍の数のパーセント減少に対する化合物1-Na及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。
【
図5A】Mdr2
-/-マウスにおける肝臓/体重の重量比のパーセント減少に対する化合物1-Na及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。*対照群に対してp<0.01。
【
図5B】FXR
-/-マウスにおける肝臓/体重の重量比のパーセント減少に対する化合物1-Na及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。
【
図6A】Mdr2
-/-マウス及びFXR
-/-マウスにおけるアラニントランスアミナーゼ(ALT)レベルに対する化合物1-Na及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。*対照群に対してp<0.01。
【
図6B】Mdr2
-/-マウス及びFXR
-/-マウスにおけるアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)レベルに対する化合物1-Na及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。*対照群に対してp<0.01。
【
図7A】Mdr2
-/-マウス及びFXR
-/-マウスにおける線維芽細胞増殖因子15(Fgf15)の回腸遺伝子発現に対する化合物1-Na及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。*対照群に対してp<0.01。
【
図7B】Mdr2
-/-マウス及びFXR
-/-マウスにおける低分子ヘテロ二量体パートナー(Shp)の回腸遺伝子発現に対する化合物1-Na及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。*対照群に対してp<0.01。
【
図8】Mdr2
-/-マウス及びFXR
-/-マウスにおけるコレステロール7αヒドロキシラーゼ(cyp7a1)の発現低下に対する化合物1-Na及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。*対照群に対してp<0.01。
【
図9A】Mdr2
-/-マウス及びFXR
-/-マウスにおける低分子ヘテロ二量体パートナー(Shp)の肝臓遺伝子発現に対する化合物1-Na及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。*対照群に対してp<0.01。
【
図9B】Mdr2
-/-マウス及びFXR
-/-マウスにおける胆汁酸塩排出ポンプ(Bsep)の肝臓遺伝子発現に対する化合物1-Na及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。*対照群に対してp<0.01。
【
図10A】Mdr2
-/-マウスにおける総血清胆汁酸量に対する化合物1-Na及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。*対照群に対してp<0.01。
【
図10B】FXR
-/-マウスにおける総血清胆汁酸量に対する化合物1-Na3及び対照飼料の影響を示す棒グラフである。
【
図11A】ヒト周辺組織と比較した際のCCA腫瘍の全組織におけるFXR mRNAマイクロアレイ発現を示す。
【
図11B】腫瘍分化度によりグループ化したCCA腫瘍の全組織におけるFXR mRNAマイクロアレイ発現を示す。
【
図11C】正常ヒト肝臓組織及びヒト肝臓周辺組織と比較した際のCCA腫瘍におけるFXR mRNA発現(qPCR)を示す。
【
図11D】対応するヒト肝臓周辺組織と比較した際のCCA腫瘍におけるFXR mRNA発現(qPCR)を示す。
【
図12A】ヒト周辺組織と比較した際のCCA腫瘍の全組織におけるTGR mRNAマイクロアレイ発現を示す。
【
図12B】臨床病理学的パラメータ、即ち解剖学的部位及び神経周囲の浸潤による、CCA腫瘍の全組織におけるTGR5 mRNAマイクロアレイ発現を示す。
【
図12C】ヒト肝臓周辺組織と比較した際のCCA腫瘍におけるTGR5 mRNA発現(qPCR)を示す。
【
図12D】対応するヒト肝臓周辺組織と比較した際のCCA腫瘍におけるTGR5 mRNA発現(qPCR)を示す。
【
図13A】正常ヒト胆管細胞及びCCA細胞株におけるFXR mRNA発現(qPCR)を示す。
【
図13B】正常ヒト胆管細胞及びCCA細胞株におけるTGR5 mRNA発現(qPCR)を示す。
【
図14A】無処置の対照マウス、OCAで処置したマウス及び化合物4で処置したマウスの代表的なMRI画像及び肝臓の画像を示す。
【
図14B】MRIで定量化した腫瘍容積倍率変化を示す棒グラフである。
【
図14C】肝臓同所性CCA腫瘍における増殖マーカー(即ちKi67及びPCNA)、胆汁性マーカー(即ちCK19)及び上皮性マーカー(即ちZO-1)のmRNA発現レベルを示す。
【
図14D】無処置の又はOCA若しくは化合物4で処置したマウスの肝臓同所性CCA腫瘍における増殖マーカー(即ちKi67及びPCNA)の代表的な免疫組織化学画像を示す。
【
図15A】フローサイトメトリーにより、CFSE細胞増殖染料染色を使用して実施した、無処置の対照細胞と比較した際の、OCAでの処置後の増殖マーカーのmRNA発現レベル及び10又は25μMのOCAで48時間処置したCCA細胞(即ちEGI1)の増殖を示す。
【
図15B】CCA細胞(即ちEGI1)における遊走アッセイ及び創傷治癒アッセイの代表的な顕微鏡画像、対応する定量化及び24時間時点でのtranswell遊走チャンバーの代表的な顕微鏡画像を示す。
【
図15C】CCA細胞(即ちEGI1)においてミトコンドリアのストレス試験キットを使用したSeahorseによる酸素消費速度(OCR)及びOCR測定後に計算した代謝パラメータの棒グラフを示す。
【
図15D】無処置の又は10若しくは25μMのOCAで処置したCCA細胞(即ちEGI1)における、アネキシンV及びヨウ化プロピジウム染色による、フローサイトメトリーに基づくアポトーシスアッセイ並びに代表的なヒストグラム及び対応するプールデータの定量化を示す。
【
図16A】無処置の対照細胞と比較した際の、化合物4で処置した後の増殖マーカーのmRNA発現レベル及び10又は25μMの化合物3で48時間処置したCCA細胞(即ちEGI1)の増殖を示す。
【
図16B】CCA細胞(即ちEGI1)における遊走アッセイ、創傷治癒アッセイの代表的な顕微鏡画像及び対応する定量化並びに無処置の及び化合物4で処置した細胞における24時間時点でのtranswell遊走チャンバーの代表的な顕微鏡画像及び対応する定量化を示す。
【
図16C】無処置の又は化合物4(25μM)で処置したCCA細胞(即ちEGI1)においてミトコンドリアのストレス試験キットを使用したSeahorseによる酸素消費速度(OCR)及びOCR測定後に計算した代謝パラメータの棒グラフを示す。
【
図17】肝臓同所性CCA腫瘍における増殖マーカー(即ちCdc25a、サイクリンD1及びサイクリンD3)のmRNA発現レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願は、癌の処置又は予防を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効量のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストを投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、FXRアゴニストは、化合物1若しくは化合物2:
【化1】
又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体である。
【0009】
一実施形態では、癌は、肝細胞癌、膵癌、腎臓癌、前立腺癌、食道癌、乳癌、胃癌、腎癌、唾液腺癌、卵巣癌、子宮体癌、膀胱癌及び肺癌からなる群から選択される。一実施形態では、癌は、肝細胞癌である。一実施形態では、癌は、膵癌である。一実施形態では、癌は、腎臓癌である。一実施形態では、癌は、前立腺癌である。一実施形態では、癌は、食道癌である。一実施形態では、癌は、乳癌である。一実施形態では、癌は、胃癌である。一実施形態では、癌は、腎癌である。一実施形態では、癌は、唾液腺癌である。一実施形態では、癌は、卵巣癌である。一実施形態では、癌は、子宮体癌である。一実施形態では、癌は、肺癌である。
【0010】
一実施形態では、FXRアゴニストは、化合物1又はその薬学的に許容される塩である。別の実施形態では、FXRアゴニストは、化合物1のナトリウム塩(即ち化合物1-Na)である。さらに別の実施形態では、FXRアゴニストは、化合物1のN,N-ジエタンアミン塩(即ち化合物1-DEA)である。
【0011】
別の実施形態では、FXRアゴニストは、化合物2又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体である。一実施形態では、FXRアゴニストは、化合物2のグリシン抱合体である。一実施形態では、FXRアゴニストは、化合物2のタウリン抱合体である。一実施形態では、FXRアゴニストは、化合物2のサルコシン抱合体である。
【0012】
本発明は、癌の処置又は予防を、それを必要とする対象において行うための医薬品の製造における、化合物1若しくはその薬学的に許容される塩又は化合物2若しくはその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体の使用にさらに関する。
【0013】
本発明は、癌の処置又は予防を、それを必要とする対象において行うことにおける使用のための、化合物1又はその薬学的に許容される塩及び化合物2又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体にさらに関する。
【0014】
本発明は、癌の処置又は予防を、それを必要とする対象において行うための、化合物1又はその薬学的に許容される塩及び化合物2又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体と、薬学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物にも関する。
【0015】
本発明は、癌の処置又は予防を、それを必要とする対象において行うためのキットであって、化合物1又はその薬学的に許容される塩及び化合物2又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体を含むキットにさらに関する。
【0016】
本発明は、化合物1及び化合物2が、癌の予測となる動物モデルにおける癌の処置において有効であったという発見に少なくとも部分的に基づいている。下記の実施例に記載のように、本発明者らは、自然発症型肝臓癌形成のマウスモデルにおいて本発明の化合物が腫瘍増殖を抑制したことを発見した。
【0017】
定義
便宜上、本明細書、実施例及び添付の特許請求の範囲において使用される特定の用語がここに集められている。
【0018】
「癌」という用語は、本明細書で使用する場合、対象における癌性組織の存在を特徴とする疾患の何れかを指す。
【0019】
本明細書で使用する場合、「癌性組織」は、悪性新生細胞を含んで細胞の異常増殖及び/又は過剰増殖細胞を発現する組織を指す。癌性組織は、発生組織又は発生器官から生じる原発性悪性腫瘍であり得るか、又は原発腫瘍の源ではなかった体組織において増殖する転移性悪性腫瘍であり得る。
【0020】
本明細書で使用する場合、「腫瘍」という用語は、固形腫瘍又は造血系起源の癌を含み得る。幾つかの実施形態では、腫瘍は、周辺組織に浸潤する能力、体の他の部分に転移する能力及び/又は血管新生活性を特徴とし得る。例示的な腫瘍は、肝細胞癌、胃癌、腎癌、前立腺癌、副腎癌、膵癌、乳癌、膀胱癌、唾液腺癌、卵巣癌、子宮体癌及び肺癌から生じる。
【0021】
本明細書で使用する場合、「浸潤性の」という用語は、細胞、細胞の集団又は悪性腫瘍がある部位から隣接部位に拡散するプロセスを指す。
【0022】
「転移性の」という用語は、本明細書で使用する場合、細胞、細胞の集団又は悪性腫瘍がある部位から当初の部位に隣接していない部位に拡散するプロセスを指す。
【0023】
本明細書で使用する場合、「肝細胞癌」、「HCC」及び「悪性ヘパトーマ」は、互換的に使用され、肝臓組織から生じる原発腫瘍及び続発性(転移した)腫瘍を指す。「治療抵抗性肝細胞癌」という用語は、本明細書で使用する場合、抗新生物処置に対して有利に応答できない肝細胞癌を指す。したがって、「処置に対して抵抗性の肝細胞癌」は、本明細書で使用する場合、処置に対して有利に応答できないか若しくは耐性を示す肝細胞癌、又は代わりに処置に対して有利に応答した後に再発若しくは再発生する肝細胞癌を指す。
【0024】
本明細書で使用する場合、「胆管癌」、即ち「CCA」若しくは「胆管細胞癌」又は胆管癌は、胆汁を肝臓から小腸に排出する胆管において生じる、変異した上皮細胞(又は上皮性分化の特徴を示す細胞)から構成される癌の形態である。CCAの割合は、肝臓が胆汁うっ滞性の状態において上昇する。胆汁酸が肝内に蓄積しても、発癌を直接的に誘発しないが、胆管細胞増殖及び炎症を促進することにより、及びFXRに依存する化学防護を低減することにより、発癌補助作用を助長することがある。
【0025】
本明細書で使用する場合、「化合物1」という用語は、
【化2】
を指し、これは、6α-エチル-3α,7α,23-トリヒドロキシ-24-ノル-5β-コラン-23-水素スルフェートとしても知られている。6α-エチル-3α,7α,23-トリヒドロキシ-24-ノル-5β-コラン-23-スルフェートナトリウム」としても知られている「化合物1-Na」又は「1-Na」は、互換的に使用され、化合物1のナトリウム塩を指す。本明細書で使用する場合、6α-エチル-3α,7α,23-トリヒドロキシ-24-ノル-5β-コラン-23-スルフェートN,N-ジエチルエタンアミン」としても知られている「化合物1-DEA」又は「1-DEA」は、互換的に使用され、化合物1のN,N-ジエチルエタンアミン塩を指す。化合物1-Na及び化合物1-DEAの構造を以下に示す。
【化3】
【0026】
「化合物2」は、本明細書で使用する場合、
【化4】
を指し、これは、オベチコール酸(OCA)、6-ECDCA、6-α-エチルケノデオキシコール酸又は6α-エチル-3α,7α-ジヒドロキシ-5β-コラン-24-酸としても知られている。
【0027】
本明細書で使用する場合、「化合物3」は、
【化5】
を指し、これは、3α,7α,11β-トリヒドロキシ-6α-エチル-5β-コラン-24-酸としても知られている。
【0028】
本明細書で使用する場合、「化合物4」は、
【化6】
を指し、これは、6α-エチル-23(S)-メチル-3α,7α,12α-トリヒドロキシ-5β-コラン-24-酸としても知られている。米国特許第8,114,862号明細書に記載されている化合物4は、TGR5モジュレーターである。実施形態の1つでは、TGR5モジュレーターは、アゴニストである。
【0029】
「TGR5モジュレーター」という用語は、TGR5受容体と相互作用する任意の化合物を意味する。相互作用は、TGR5受容体のアンタゴニスト、アゴニスト、部分的アゴニスト又は逆アゴニストとして作用する化合物に限定されない。
【0030】
一般に、「アゴニスト」という用語は、別の分子又は受容体部位の活性を増強する化合物を意味する。アゴニストは、古典的な定義では、オルソステリックアゴニストでも、アロステリックアゴニストでも、逆アゴニストでも、コアゴニストでも、受容体に結合する性質を有し、その受容体の状態を変化させ、生物学的作用をもたらす。したがって、アゴニズムとは、生物学的作用を生じさせるアゴニスト又はリガンドの性質と定義される。より特定すると、TGR5アゴニストは、TGR5に結合する受容体リガンド又は化合物であり、受容体を発現する細胞において環状アデノシン一リン酸(cAMP)の濃度を少なくとも20%増加させる。
【0031】
「本発明の化合物」という表現は、本明細書で使用する場合、化合物1、1-Na、1-DEA、2及び3又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体を包含する。
【0032】
「処置すること」という用語は、本明細書で使用する場合、処置における奏効又は癌の寛解の任意の徴候を指す。処置することには、例えば、癌の1つ又は複数の症状の重症度を低減又は緩和することを含めることができるか、又は疾患、欠損、障害若しくは不都合な病態などの症状を患者が体験する頻度を低減することを含めることができる。「処置すること」は、細胞、組織又は体液、例えば血液などの体の一部の病態を減少させるか又は排除することも指し得る。
【0033】
本明細書で使用する場合、「予防すること」という用語は、個体若しくは集団又は細胞、組織若しくは体液(例えば、血液)などの体の一部における癌の部分的又は完全な予防を指す。「予防」という用語は、個体又は個体の細胞、組織若しくは体液の、処置される集団の全体における疾患又は病態の完全な予防のための要件を確立していない。「処置又は予防する」という用語は、癌のあるレベルの処置又は寛解をもたらす方法を指すために本明細書で使用され、癌の予防を含むが、これに完全に限定されない、その目的に向けられた様々な結果を企図する。
【0034】
「治療有効量」という用語は、本明細書で使用する場合、腫瘍を縮小させ、且つ/若しくは腫瘍の増殖速度を低下させるか(腫瘍増殖を抑制するなど)、又は癌における他の望ましくない細胞増殖を予防若しくは遅延させるのに十分な量を含む有効量を指す。幾つかの実施形態では、有効量は、癌の発症を遅延させるのに十分な量である。幾つかの実施形態では、有効量は、再発を予防するか又は遅延させるのに十分な量である。有効量は、1回又は複数回の投与で投与することができる。HCC又はCRCの場合、有効量の薬物又は組成物は、(i)腫瘍細胞の数を減少させ得;(ii)腫瘍サイズを縮小させ得;(iii)末梢器官への癌細胞浸潤をある程度阻害し得、遅延させ得、緩徐化し得、好ましくは停止させ得;(iv)腫瘍転移を阻害し得(即ちある程度緩徐化し得、好ましくは停止させ得);(v)腫瘍増殖を阻害し得;(vi)腫瘍の発生及び/又は再発を予防し得るか又は遅延させ得;且つ/又は(vii)癌に関連する症状の1つ又は複数をある程度軽減し得る。
【0035】
「レジメン」という用語は、本明細書で使用する場合、癌を処置するための本発明の化合物の投与及び/又は投与時間決定のためのプロトコルを指す。レジメンには、当技術分野で公知のとおり、積極的投与の期間と休止の期間とを含めることができる。積極的投与期間は、定義された時間経過における本発明の化合物の投与を含み、例えば組成物の投薬の回数及び時間を含む。幾つかのレジメンでは、化合物が積極的に投与されない1回又は複数回の休止期間を含めることができ、場合により、このような化合物の有効性が最小限であり得る期間が含まれる。
【0036】
本明細書で使用する場合、「併用治療」とは、本発明の化合物が別の治療剤と併用して投与され得ることを指す。「~と併用して」は、1つの処置様式を別の処置様式に加えて投与すること、例えば同じ対象に対して、本明細書に記載の本発明の化合物を別の治療剤の投与に加えて投与することなどを指す。このため、「~と併用して」は、対象に1つの処置様式を第2の処置様式の送達前、送達中又は送達後に投与することを指す。
【0037】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される」とは、生物学的に又は他の点で不都合でない材料を指し、例えば、その材料は、患者に投与される医薬組成物中に組み入れることができ、重大で望ましくない生物学的影響をもたらさず、それが含有されている組成物の他の構成成分の何れとも害を及ぼすような相互作用をしない。薬学的に許容される担体又は添加剤は、毒性試験及び製造試験の必要な基準を満たしており、且つ/又は米国食品医薬品局(U.S.Food and Drug Administration)が作成したInactive Ingredient Guideに含まれる。
【0038】
「約」という用語は、量及び時間の長さなど、測定可能な値に言及する場合に本明細書で使用され、開示されている方法を実施するために、又は開示されている化合物を作製し、使用するために、且つ特許請求される方法においてそのような変動が適切であるように、特定した値から±20%又は±10%、幾つかの実施形態では±5%、幾つかの実施形態では±1%及び幾つかの実施形態では±0.1%の変動を包含するものとする。
【0039】
癌を処置する方法
本発明は、本発明の化合物が、ヒトの癌の予測となるマウスモデルにおける癌の処置に有効であるという発見に少なくとも部分的に基づいている。したがって、本願は、癌の処置又は予防を、それを必要とする対象において行う方法であって、治療有効量の、化合物1、1-Na、1-DEA、2及び3:
【化7】
又はその薬学的に許容される塩若しくはアミノ酸抱合体からなる群から選択されるFXRアゴニストを投与するステップを含む方法に関する。一実施形態では、FXRアゴニストは、化合物1である。一実施形態では、FXRアゴニストは、化合物1-Naである。別の実施形態では、FXRアゴニストは、化合物1-DEAである。一実施形態では、FXRアゴニストは、化合物2である。一実施形態では、FXRアゴニストは、化合物3である。
【0040】
本明細書に記載の方法において、例示的な癌は、肝細胞癌、胆管癌、膵癌、前立腺癌、食道癌、乳癌、胃癌、腎癌、唾液腺癌、卵巣癌、子宮体癌、膀胱癌及び肺癌からなる群から選択される。癌の適切な処置レジメンは、腫瘍が由来する細胞の型、悪性腫瘍のステージ及び重症度並びに腫瘍の一因となっている遺伝的異常に依存する。
【0041】
癌病期分類システムは、癌の進行程度を示す。一般に、病期分類システムは、癌の広がり具合を表し、予後及び処置が類似している患者を同一の病期分類群に入れる。一般に、浸潤性になった又は転移した腫瘍では予後が思わしくない。病期分類システムの一種において、症例は、ローマ数字のI~IVで表される4つのステージに分類される。ステージIでは、癌は、限局的であることが多く、通常、治癒可能である。ステージII及びIIIAの癌は、通常、より進行しており、周辺組織に浸潤し、リンパ節に広がっている場合がある。ステージIVの癌は、リンパ節の外の部位に広がった転移性癌を含む。
【0042】
別の病期分類システムは、カテゴリー、即ち腫瘍、リンパ節及び転移の略語であるTNM病期分類である。このシステムでは、悪性腫瘍は、各カテゴリーの重症度に従って表される。例えば、Tは、原発腫瘍の程度を0~4で分類し、0は、浸潤性活性のない悪性腫瘍を表し、4は、原発部位からの広がりによって他の器官に浸潤した悪性腫瘍を表す。Nは、リンパ節転移の程度を分類し、0は、リンパ節転移のない悪性腫瘍を表し、4は、広範囲のリンパ節転移のある悪性腫瘍を表す。Mは、転移の程度を0と1とに分類し、0は、転移のない悪性腫瘍を表し、1は、転移した悪性腫瘍を表す。
【0043】
これらの病期分類システム若しくはこれらの病期分類システムの変形又は他の好適な病期分類システムを、腫瘍を表すために使用することができる。癌のステージ及び特徴によっては、癌の処置に利用可能な選択肢はわずかである。処置には、手術、ソラフェニブでの処置及び標的治療が含まれる。一般に、手術は、初期ステージの限局的な癌の処置の第一選択である。さらなる全身的処置は、浸潤性及び転移性の腫瘍を処置するために使用することができる。
【0044】
本発明の一態様によれば、肝細胞癌(又は悪性ヘパトーマ)を処置する方法が提供される。具体的には、方法は、肝細胞癌を有し、その処置を必要とする対象を治療有効量の本発明の化合物で処置するステップを含む。即ち、本発明は、肝細胞癌を有すると同定又は診断された肝細胞癌患者を処置するための医薬品を製造するための本発明の化合物の使用を対象とする。別の実施形態では、処置方法は、患者を、肝細胞癌を有すると診断又は同定するステップを任意選択により含む。同定された患者は、次に、治療有効量の本発明の化合物で処置されるか又はそれを投与される。肝細胞癌は、超音波、CTスキャン、MRI、α-フェトプロテイン検査、デス-γカルボキシプロトロンビンスクリーニング及び生検を含む、当技術分野において公知の任意の従来の診断法で診断することができる。
【0045】
本発明は、治療抵抗性肝細胞癌を有すると同定された患者を治療有効量の本発明の化合物で処置するステップを含む、治療抵抗性肝細胞癌を処置する方法も提供する。特定の実施形態では、患者は、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、アントラサイクリン類(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン)、白金製剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン)、5-FU及びカペシタビンからなる群から選択される1種又は複数の薬物を含む処置に対して治療抵抗性である肝細胞癌を有する。本発明は、治療抵抗性肝細胞癌、例えばソラフェニブ、レゴラフェニブ、アントラサイクリン類(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン)、白金製剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン)、5-FU及びカペシタビンから選択される1種又は複数の薬物に治療抵抗性の肝細胞癌を処置するための医薬品を製造するための本発明の化合物の使用も対象とする。
【0046】
治療抵抗性肝細胞癌を検出するために、初期処置を受けている患者は、耐性、非応答性又は肝細胞癌の再発の徴候を慎重にモニターされ得る。これは、例えば、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ピコプラチン、5-FU、テガフール及びカペシタビンからなる群から選択される1種又は複数の薬物を含み得る初期処置に対する患者の癌の応答をモニターすることによって実現することができる。初期処置に対する応答、応答の欠如又は癌の再発生は、当技術分野で実施される任意の好適な方法によって判定することができる。例えば、これは、腫瘍サイズ及び腫瘍数の評価によって実現することができる。腫瘍サイズの増大又は代わりに腫瘍数の増加は、腫瘍が化学治療に応答していないか又は再発生が生じたことを示す。判定は、Therasse et al,J.Natl.Cancer Inst.92:205-216(2000)に詳述されている「RECIST」基準に従って行うことができる。
【0047】
本発明のさらに別の態様によれば、肝細胞癌(又は肝細胞癌)の発症を予防するか若しくは遅延させるか又は肝細胞癌の再発を予防するか若しくは遅延させる方法が提供され、方法は、予防又は遅延を必要とする患者を予防有効量の本発明の化合物で処置するステップを含む。
【0048】
B型肝炎又はC型肝炎に感染しているか又は肝硬変を有する対象は、肝細胞癌を発症するリスクが高いことが知られている。加えて、急性及び慢性の肝性ポルフィリン症(急性間欠性ポルフィリン症、晩発性皮膚ポルフィリン症、遺伝性コプロポルフィリン症、多様性ポルフィリン症)並びに高チロシン血症I型を有する人々も肝細胞癌を発症するリスクが高い。これらの人々は、全て予防有効量の本発明の化合物を使用して肝細胞癌の発症を予防するか又は遅延させる本発明の方法に対する候補となり得る。加えて、肝細胞癌の家族歴のある患者を、肝細胞癌の発症を予防するか又は遅延させる本発明の方法の適用のために同定することもできる。肝細胞癌の再発を予防するか又は遅延させるために、処置を受けて寛解期にあるか又は安定状態若しくは進行のない状態にある肝細胞癌患者を予防有効量の本発明の化合物で処置して、肝細胞癌の再発又は再発生を効果的に予防するか又は遅延させることができる。
【0049】
本開示の一態様によれば、胆管癌(CCA)を処置する方法が提供される。具合的には、方法は、胆管癌を有し、その処置を必要とする対象を治療有効量の本発明の化合物で処置するステップを含む。即ち、本発明は、胆管癌を有すると同定又は診断された胆管癌患者を処置するための医薬品を製造するための本発明の化合物の使用を対象とする。別の実施形態では、処置方法は、患者を、胆管癌を有すると診断又は同定するステップを任意選択により含む。同定された患者は、次に、治療有効量の本発明の化合物で処置されるか又はそれを投与される。胆管癌は、超音波、CTスキャン、MRI、癌胎児性抗原(CEA)及び糖鎖抗原19-9(CA19-9)スクリーニング並びに生検を含む、当技術分野において公知の任意の従来の診断法で診断することができる。
【0050】
本発明のさらに別の態様によれば、胆管癌の発症を予防するか若しくは遅延させるか又は胆管癌の再発を予防するか若しくは遅延させる方法が提供され、方法は、予防又は遅延を必要とする患者を予防有効量の本発明の化合物で処置するステップを含む。
【0051】
胆管癌の再発を予防するか又は遅延させるために、処置を受けて寛解期にあるか又は安定状態若しくは進行のない状態にある胆管癌患者を予防有効量の本発明の化合物で処置して、胆管癌の再発又は再発生を効果的に予防するか又は遅延させることができる。
【0052】
本発明の別の態様によれば、CCA細胞の増殖及び遊走をFXRアゴニストで阻害する方法が提供される。
【0053】
本発明の別の態様によれば、CCA細胞の増殖及び遊走を治療有効量の本発明の化合物で阻害する方法が提供される。本発明の別の態様によれば、CCAの進行を阻害する方法が提供され、方法は、その阻害を必要とする患者を治療有効量の本発明の化合物で処置するステップを含む。
【0054】
一実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を投与することによって膵癌を処置する方法である。別の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を投与することによって前立腺癌を処置する方法である。別の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を投与することによって腎臓癌を処置する方法である。別の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を投与することによって前立腺癌を処置する方法である。さらに別の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を投与することによって食道癌を処置する方法である。さらに別の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を投与することによって乳癌を処置する方法である。一実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を投与することによって胃癌を処置する方法である。別の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を投与することによって腎癌を処置する方法である。さらに別の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を投与することによって唾液腺癌を処置する方法である。さらに別の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を投与することによって卵巣癌を処置する方法である。一実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を投与することによって子宮体癌を処置する方法である。別の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を投与することによって膀胱癌を処置する方法である。さらに別の実施形態は、治療有効量の本発明の化合物を投与することによって肺癌を処置する方法である。
【0055】
本発明の化合物が、本明細書に記載されている癌の処置に有用である場合、このような化合物を第2の薬剤と併用投与することができる。本明細書で提供される癌を処置する方法において有用な第2の薬剤には、任意の既知のクラスの抗癌剤、例えば放射線治療、手術、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン類、カンポテシン類、ビンカアルカロイド類、タキサン類又は白金類及び当技術分野で公知の他の抗新生物剤を含めることができる。このような抗癌剤及び抗新生物剤の分類は、当技術分野において公知であり、その明白な通常の意味に従って使用される。
【0056】
例示的な抗癌剤としては、以下に限定されるものではないが、アブラキサン;アビラテロン;ace-11;アクラルビシン;アシビシン;アコダゾール塩酸塩;アクロニン;アクチノマイシン;アシルフルベン;アデシペノール;アドゼレシン;アドリアマイシン;アルデスロイキン;all-trans-レチノイン酸(ATRA);アルトレタミン;アンバムスチン;アンボマイシン;酢酸アメタントロン;アミドックス;アミホスチン;アミノグルテチミド;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;アナストロゾール;アンドログラホリド;アンタレリクス;アントラマイシン;グリシン酸アフィジコリン;アプリン酸;ara-CDP-DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;ARRY-162;ARRY-300;ARRY-142266;AS703026;アスパラギナーゼ;アスペルリン;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アバスチン;アキシナスタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロシン;アザシチジン;AZD8330;アゼテパ;アゾトマイシン;バラノール;バチマスタット;BAY 11-7082;BAY 43-9006;BAY 869766;ベンダムスチン;ベンゾクロリンス;ベンゾデパ;ベンゾイルスタウロスポリン;β-アレチン;βクラマイシンB;ベツリン酸;b-FGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビスナフィド;ジメシル酸ビスナフィド;ビストラテンA;ビサントレン塩酸塩;ブレオマイシン;ブレオマイシン硫酸塩;ブスルファン;ビセレシン;ブレフレート;ボルテゾミブ;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニンスルホキシミン;ブリオスタチン;カクチノマイシン;カルステロン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトテシン誘導体;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;カルビシン塩酸塩;カルゼレシン;カスタノスペルミン;セクロピンB;セデフィンゴール;セレコキシブ;セトロレリクス;クロリンス;クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;クロラムブシル;クロロフシン;シロレマイシン;シスプラチン;CI-1040;cis-ポルフィリン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイシンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クラムベシジン816;クリスナトール;メシル酸クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペンタアントラキノン類;シクロプラタム(cycloplatam);シペマイシン;シクロホスファミド;シタラビン;シタラビンオクホスフェート;細胞溶解因子;サイトスタチン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;ダウノルビシン;ダウノルビシン塩酸塩;デカルバジン;ダクリキシマブ;ダサチニブ;デシタビン;デヒドロジデムニンB;デスロレリン;デキサメタゾン;デキシホスファミド(dexifosfamide);デキスラゾキサン;デクスベラパミル;デキソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ジデムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ5アザシチジン;ジヒドロタキソール;9-ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドコサノール;ドラセトロン;ドセタキセル;ドキソルビシン;ドキソルビシン塩酸塩;ドキシフルリジン;ドロロキシフェン;ドロロキシフェンクエン酸塩;プロピオン酸ドロモスタノロン;ドロナビノール;デュアゾマイシン;デュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エダトレキサート;エフロルニチン塩酸塩;エフロルニチン;エレメネ;エミテフル;エルサミトルシン;エンロプラチン;エンプロマート;エピプロピジン;エピルビシン;エピルビシン塩酸塩;エプリステリド;エルブロゾール;エリブリン;エソルビシン塩酸塩;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;エキセメスタン;ファドロゾール;ファドロゾール塩酸塩;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フロクスウリジン;フルダラビンリン酸エステル;フルダラビン;フルオロダウノルビシン塩酸塩;ホルフェニメックス;ホルメスタン;フルオロウラシル;フロキソウリジン(floxouridine);フルロシタビン;ホスキドン;ホストリエシンナトリウム;ホストリエシン;ホテムスチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリクス;ゼラチナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;ゲルダナマイシン;ゴシポール;GDC-0973;GSK1120212/トラメチニブ;ハーセプチン;ヒドロキシウレア;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメチレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イブルチニブ;イダルビシン;イダルビシン塩酸塩;イホスファミド;カンホスファミド;イルモホシン;イプロプラチン;イドキシフェン;イドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イミダゾアクリドン類;イマチニブ(例えば、グリベック);イミキモド;イニパリブ(BSI 201);ヨーベングアン;ヨードドキソルビシン;イポメアノール;イリノテカン;イリノテカン塩酸塩;イルソグラジン;イソベンガゾール(isobengazole);イソホモハリコンドリンB;イタセトロン;イイモホシン(iimofosine);インターロイキンIL-2(組換えインターロイキンII;又はrlL.sub.2を含む);インターフェロンアルファ-2a;インターフェロンアルファ-2b;インターフェロンアルファ-n1;インターフェロンアルファ-n3;インターフェロンベータ-1a;インターフェロンガンマ-1b;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリンNトリアセテート;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸化レンチナン;レプトルスタチン;レトロゾール;リュープロレリン;レバミソール;レナリドミド;レンバチニブ;リアロゾール;リッソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロバスタチン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウムテキサフィリン;リソフィリン(lysofylline);ランレオチド酢酸塩;ラパチニブ;レトロゾール;ロイコボリン;酢酸ロイプロリド;リアロゾール塩酸塩;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;ロソキサントロン塩酸塩;ポマリドミド;LY294002;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマスタット;マソプロコール;マスピン;マトリライシン阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MIF阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;ミトグアゾン;ミトラクトール;ミトナフィド;ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;モピダモール;ミカペルオキシドB;ミリアポロン;メイタンシン;メクロレタミン塩酸塩;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン;メツレデパ;ミチンドミド;ミトカルシン;ミトクロミン;ミトギリン;ミトマルシン;マイトマイシン;ミトスペル;ミトタン;ミトキサントロン塩酸塩;ミコフェノール酸;ナファレリン;ナグレスチプ(nagrestip);ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン酸;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素モジュレーター;ニトロキシド抗酸化剤;ニトルリン(nitrullyn);ノコダゾール;ノガラマイシン;オブリメルセン(ゲナセンス);オクトレオチド;オキセノン;オラパリブ(リムパーザ);オリゴヌクレオチド類;オナプリストン;オンダンセトロン;オラシン;経口サイトカイン誘導剤;オルマプラチン;オキシスラン;オキサロプラチン;オサテロン;オキサリプラチン;オキサウノマイシン;パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン;パラバクチン;PARP(ポリADPリボースポリメラーゼ)阻害剤;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリ硫酸ナトリウム;ペントスタチン;ペントロゾール(pentrozole);ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアルコール;フェナジノマイシン;フェニルアセテート;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;ピロカルピン塩酸塩;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロスタグランジンJ2;ピラゾロアクリジン;パクリタキセル;PD035901;PD184352;PD318026;PD98059;ペリオマイシン;ペンタムスチン;ペプロマイシン硫酸塩;PKC412;ピポブロマン;ピポスルファン;ピロキサントロン塩酸塩;プリカマイシン;プロメスタン;ポドフィロトキシン;ポリフェノールE;ポルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;プロカルバジン;プロカルバジン塩酸塩;ピューロマイシン;ピューロマイシン塩酸塩;ピラゾフリン;ラルチトレキセド;ラモセトロン;脱メチル化レテリプチン;リゾキシン;リツキシマブ;RIIレチンアミド;ログレチミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメクス;ルビギノンB1;ルボキシル;リボプリン;ロミデプシン;ルカパリブ;サフィンゴール;サフィンゴール塩酸塩;サイントピン;サルコフィトールA;サルグラモスチム;セムスチン;シゾフィラン;ソブゾキサン;ナトリウムボロカプテート;フェニル酢酸ナトリウム;ソルベロール(solverol);ソネルミン;ソラフェニブ;スニチニブ;スパルホス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノペンチン;スポンギスタチン1;スポンギスタチン2;スポンギスタチン3;スポンギスタチン4;スポンギスタチン5;スポンギスタチン6;スポンギスタチン7;スポンギスタチン8;及びスポンギスタチン9;スクアラミン;スチピアミド;ストロメライシン阻害剤;スルフィノシン;スラジスタ;スラミン;スワインソニン;SB239063;セルメチニブ/AZD6244;シムトラゼン;SP600125;スパルホセートナトリウム;スパルソマイシン;スピロゲルマニウム塩酸塩;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タラゾパリブ(BMN 673);タウロムスチン;タザロテン;テコガランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テモポルフィン;テモゾロミド;テニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チオコラリン;トロンボポエチン;サイマルファシン;サイモポエチン受容体アゴニスト;サイモトリナン;チラパザミン;チタノセン二塩化物;トプセンチン;トレミフェン;トレチノイン;トリアセチルウリジン;トリシリビン;トリメトレキサート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステリド;チルホスチン類;タリソマイシン;TAK-733;タキソテール;テガフール;テロキサントロン塩酸塩;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トレミフェンクエン酸塩;トラスツズマブ;トレストロンアセテート;リン酸トリシリビン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;ツブロゾール塩酸塩;腫瘍壊死因子関連アポトーシス誘発リガンド(TRAIL);UBC阻害剤;ウベニメクス;U0126;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;バリオリンB;ベラレソール;ベリパリブ(ABT-888);ベラミン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサルチン(vinxaltine);ビタキシン;ビンブ
ラスチン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンロイロシン;ビノレルビン酒石酸塩;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ウォルトマンニン;XL518;ザノテロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;ジノスタチンスチマラマー;ジノスタチン;及びゾルビシン塩酸塩が挙げられる。
【0057】
他の例示的な抗癌剤としては、エルブロゾール(例えば、R-55104);ドラスタチン10(例えば、DLS-10及びNSC-376128);イセチオン酸ミボブリン(例えば、CI-980);NSC-639829;ジスコデルモリド(例えば、NVP-XX-A-296);ABT-751(Abbott;例えば、E-7010);アルトルヒルチン(Altorhyrtin)A;アルトルヒルチン(Altorhyrtin)C;セマドチン塩酸塩(例えば、LU-103793及びNSC-D-669356);CEP9722;エポチロンA;エポチロンB;エポチロンC;エポチロンD;エポチロンE;エポチロンF;エポチロンB N-オキシド;エポチロンA N-オキシド;16-アザ-エポチロンB;21-アミノエポチロンB;21-ヒドロキシエポチロンD;26-フルオロエポチロン;アウリスタチンPE(例えば、NSC-654663);ソブリドチン(例えば、TZT-1027);LS-4559-P(Pharmacia;例えば、LS-4577);LS-4578(Pharmacia;例えば、LS-477-P);LS-4477(Pharmacia);LS-4559(Pharmacia);RPR-112378(Aventis);DZ-3358(第一三共株式会社);FR-182877(藤沢薬品工業株式会社;例えば、WS-9265B);GS-164(武田薬品工業株式会社);GS-198(武田薬品工業株式会社);KAR-2(Hungarian Academy of Sciences);BSF-223651(BASF;例えば、ILX-651及びLU-223651);SAH-49960(Lilly/Novartis);SDZ-268970(Lilly/Novartis);AM-97(Armad/協和発酵キリン株式会社);AM-132(Armad);AM-138(Armad/協和発酵キリン株式会社);IDN-5005(Indena);クリプトフィシン52(例えば、LY-355703);AC-7739(味の素製薬株式会社;例えば、AVE-8063A及びCS-39.HCl);AC-7700(味の素製薬株式会社;例えば、AVE-8062;AVE-8062A;CS-39-L-Ser.HCl;及びRPR-258062A);ビチレブアミド(Vitilevuamide);ツブリシンA;カナデンソール;CA-170(Curis,Inc.);センタウレイジン(例えば、NSC-106969);T-138067(Tularik;例えば、T-67;TL-138067及びTI-138067);COBRA-1(Parker Hughes Institute;例えば、DDE-261及びWHI-261);H10(Kansas State University);H16(Kansas State University);オンコシジンA1(例えば、BTO-956及びDIME);DDE-313(Parker Hughes Institute);フィジアノリドB;ラウリマリド;SPA-2(Parker Hughes Institute);SPA-1(Parker Hughes Institute;例えば、SPIKET-P);3-IAABU(Cytoskeleton/Mt.Sinai School of Medicine;例えば、MF-569);ナルコシン(例えば、NSC-5366);ナスカピン(Nascapine);D-24851(Asta Medica);A-105972(Abbott);ヘミアステルリン;3-BAABU(Cytoskeleton/Mt.Sinai School of Medicine;例えば、MF-191);TMPN(Arizona State University);バナドセンアセチルアセトネート;T-138026(Tularik);モンサトロール(Monsatrol);イナノシン(lnanocine)(例えば、NSC-698666);3-IAABE(Cytoskeleton/Mt.Sinai School of Medicine);A-204197(Abbott);T-607(Tularik;例えば、T-900607);RPR-115781(Aventis);エロイテロビン類(例えば、デスメチルエロイテロビン;デスアエチルエロイテロビン(Desaetyleleutherobin);イソエロイテロビンA;及びZ-エロイテロビン);カリベオシド;カリベオリン;ハリコンドリンB;D-64131(Asta Medica);D-68144(Asta Medica);ジアゾナミドA;A-293620(Abbott);NPI-2350(Nereus);タッカロノリドA;TUB-245(Aventis);A-259754(Abbott);ジオゾスタチン(Diozostatin);(-)-フェニルアヒスチン(例えば、NSCL-96F037);D-62638(Asta Medica);D-62636(Asta Medica);ミオセベリンB;D-43411(Zentaris;例えば、D-81862);A-289099(Abbott);A-318315(Abbott);HTI-286(例えば、SPA-110;トリフルオロ酢酸塩)(Wyeth);D-82317(Zentaris);D-82318(Zentaris);SC-12983(NCI);レスベラスタチンリン酸ナトリウム;BPR-OY-007(National Health Research Institutes);及びSSR-250411(Sanofi));ゴセレリン;ロイプロリド;トリプトリド;ホモハリングトニン;トポテカン;イトラコナゾール;デオキシアデノシン;セルトラリン;ピタバスタチン;クロファミジン;5-ノニルオキシトリプタミン;ベムラフェニブ;ダブラフェニブ;ゲフィチニブ(イレッサ);エルロチニブ(タルセバ);セツキシマブ(アービタックス);ラパチニブ(タイケルブ);パニツムマブ(ベクティビックス);バンデタニブ(カプレルサ);アファチニブ/BIBW2992;CI-1033/カネルチニブ;ネラチニブ/HKI-272;CP-724714;TAK-285;AST-1306;ARRY334543;ARRY-380;AG-1478;ダコミチニブ/PF299804;OSI-420/デスメチルエルロチニブ;AZD8931;AEE726;ペリチニブ/EKB-569;CUDC-101;WZ8040;WZ4002;WZ3146;AG-490;XL647;PD153035;5-アザチオプリン;5-アザ-2’-デオキシシチジン;17-N-アリルアミノ-17-デメトキシゲルダナマイシン(17-AAG);20-エピ-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5エチニルウラシル;並びにBMS-599626が挙げられる。
【0058】
一実施形態は、本発明の化合物をカペシタビン及び/又はPLX4032(Plexxikon)と併用して投与することにより、肝細胞癌(任意選択により治療抵抗性)の患者を処置する方法である。
【0059】
別の実施形態は、本発明の化合物をカペシタビン、ゼローダ及び/又はCPT-11を併用して投与することにより、肝細胞癌(任意選択により治療抵抗性)を処置する方法である。
【0060】
別の実施形態は、本発明の化合物をカペシタビン、ゼローダ及び/又はCPT-11と併用して投与することにより、肝細胞癌(任意選択により治療抵抗性)を処置する方法である。
【0061】
別の実施形態は、本発明の化合物をカペシタビン及びイリノテカンと併用して投与することにより、肝細胞癌(任意選択により治療抵抗性)の患者又は切除不能な若しくは転移性の肝細胞癌の患者を処置する方法である。
【0062】
別の実施形態は、本発明の化合物をインターフェロンアルファ又はカペシタビンと併用して投与することにより、切除不能な又は転移性の肝細胞癌の患者を処置する方法である。
【0063】
別の実施形態は、本発明の化合物をゲムシタビンと併用して投与することにより、膵癌の患者を処置する方法である。
【0064】
実施形態の1つは、本発明の化合物を別の1種の薬剤又は複数の薬剤若しくはそれらの組合せと併用して投与することにより、CCAの患者を処置する方法である。
【0065】
実施形態の1つは、本発明の化合物をゲムシタビン、シスプラチン又はそれらの組合せと併用することにより、CCAの患者を処置する方法である。
【0066】
医薬組成物
「医薬組成物」とは、本発明の化合物を対象への投与に好適な形態で含有する製剤である。一実施形態では、医薬組成物は、バルク又は単位剤形である。投与を容易にし、投与量を均一にするために、組成物を投薬単位形に製剤化することが有利であり得る。投薬単位形の仕様は、活性試薬に特有の特徴及び実現されるべき特定の治療効果によって決定され、それらに直接依存する。
【0067】
候補の製剤としては、経口、舌下、バッカル、非経口(例えば、皮下、筋肉内又は静脈内)、経直腸、局所(経皮を含む)、鼻腔内及び吸入の各投与に好適なものが挙げられる。特定の患者に対する最適な投与手段は、処置される疾患の性質及び重症度又は使用される治療の性質及び活性化合物の性質に依存することになるが、可能な場合、経口投与を癌の予防及び処置に使用し得る。経口投与に好適な製剤は、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、トローチ剤など、各々が所定量の活性化合物を含有する別個の単位として、散剤若しくは顆粒剤として、水性若しくは非水性液中の溶液剤若しくは懸濁剤として又は水中油若しくは油中水の乳剤として提供され得る。
【0068】
舌下又はバッカル投与に好適な製剤としては、本発明の化合物と、通常、糖及びアラビアゴム又はトラガントなどの香味基剤とを含むトローチ剤並びに活性化合物をゼラチン及びグリセリン又はスクロースアラビアゴムなどの不活性基剤中に含むパステル剤が挙げられる。
【0069】
非経口投与に好適な製剤は、通常、所定濃度の活性化合物を含有する滅菌水溶液を含み、この溶液は、対象とするレシピエントの血液と等張とすることができる。非経口投与に好適な別の製剤には、生理学的に好適な共溶媒並びに/又は界面活性剤及びシクロデキストリンなどの錯化剤を含有する製剤が含まれる。水中油乳剤も非経口製剤に好適な製剤である。このような溶液は、静脈内に投与することができるが、皮下注射又は筋肉内注射によって投与することもできる。
【0070】
経直腸投与に好適な製剤は、本発明の化合物を、坐剤基剤を形成する1種又は複数の固体担体、例えばカカオ脂などの中に含む単位用量の坐剤として提供され得る。
【0071】
局所適用又は鼻腔内適用に好適な製剤としては、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアゾール剤及び油剤が挙げられる。このような製剤に好適な担体としては、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール及びこれらの組合せが挙げられる。
【0072】
本発明の製剤は、任意の好適な方法によって(通常、本発明の化合物を液体若しくは微粉化固体担体又はその両方と必要な割合で均一及び緊密に混合し、次いで必要に応じて、得られた混合物を所望の形状に成形することによって)調製することができる。
【0073】
例えば、錠剤は、粉末又は顆粒の活性成分と、1種又は複数の任意選択の成分、例えば結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤又は界面活性分散剤などとを含む均質混合物を圧縮することにより、又は粉末化活性成分と不活性液体希釈剤との均質混合物を鋳型成形することにより調製することができる。吸入による投与に好適な製剤には、様々な種類の定量加圧エアゾール、噴霧器又は吸入器を用いて生成することができる微粒子粉剤又はミスト剤が含まれる。
【0074】
経口による肺内投与では、粉末又は液滴の粒径は、気管支樹内への送達を確実にするために、通常、約0.5~10μm又は1~5μmの範囲である。鼻腔投与では、鼻腔内での滞留を確実にするために、約10~500μmの範囲の粒径を使用することができる。
【0075】
定量吸入器は、典型的には、本発明の化合物を液化噴射剤に入れた懸濁製剤又は溶液製剤を含有する加圧エアゾールディスペンサーである。使用時、これらのデバイスは、計量された体積、通常、約10~150μmを送達するようになされたバルブを通して製剤を吐出して、活性成分を含有する微粒子スプレーを生成する。好適な噴射剤としては、一定のクロロフルオロカーボン化合物、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン及びこれらの混合物が挙げられる。製剤は、1種又は複数の共溶媒、例えばオレイン酸又はトリオレイン酸ソルビタンなどのエタノール界面活性剤、抗酸化剤及び好適な香味剤をさらに含有し得る。
【0076】
噴霧器は、圧縮ガス(通常、空気又は酸素)を狭いベンチュリオリフィスに通して加速することにより又は超音波撹拌により、活性成分の溶液又は懸濁液を治療用エアゾールミストに変換する市販のデバイスである。噴霧器中での使用に好適な製剤は、液体担体に入れた活性成分からなり、製剤の約40%w/wまでを含み、約20%w/w未満を含み得る。担体は、通常、水又は希釈水性アルコール溶液であり、好ましくは例えば塩化ナトリウムを添加して体液と等張にされている。任意選択の添加物としては、製剤が滅菌に調製されていない場合には防腐剤(例えばヒドロキシ-安息香酸メチル)、抗酸化剤、香味剤、揮発性油、緩衝剤及び界面活性剤が挙げられる。
【0077】
通気法による投与に好適な製剤としては、吸入器を用いて又は鼻から吸い込む方法で鼻腔内に取り込まれて送達され得る微粉砕粉末が挙げられる。吸入器中において、粉末は、通常、ゼラチン又はプラスチックで作製されたカプセル又はカートリッジ内に含有されており、カプセル又はカートリッジは、その場で孔を開けられるか又は開封され、吸入すると又は手動操作のポンプを用いると、引き込まれてデバイスを通過する空気によって粉末が送達される。吸入器中に使用される粉末は、専ら活性成分のみ又は活性成分と、ラクトースなどの好適な粉末希釈剤と、任意選択の界面活性剤とを含む粉末ブレンドの何れかからなる。活性成分は、通常、製剤の約0.1~100%w/wを構成する。
【0078】
さらなる実施形態では、本発明は、活性成分として本発明の化合物を少なくとも1種の医薬担体又は希釈剤と合わせて及び/又はそれらと混合して含む医薬組成物を提供する。
【0079】
担体は、薬学的に許容され、組成物中の他の成分と適合性がなければならず、即ち組成物中の他の成分に悪影響を及ぼしてはならない。担体は、固体又は液体であり得、好ましくは単位用量製剤、例えば約0.05~95重量%の活性成分を含有することができる錠剤として製剤化される。所望の場合、他の生理学的に活性な成分も本発明の医薬組成物中に組み入れ得る。
【0080】
上記で具体的に述べた成分に加えて、本発明の製剤は、対象の製剤のタイプに配慮した上で、薬学分野の当業者に公知の他の薬剤を含み得る。例えば、経口投与に好適な製剤は香味剤を含み得、鼻腔内投与に好適な製剤は、香料を含み得る。
【0081】
一実施形態では、医薬組成物は、本発明の化合物を約0.1~1500mg、0.2~1200mg、0.3~1000mg、0.4~800mg、0.5~600mg、0.6~500mg、0.7~400mg、0.8~300mg、1~200mg、1~100mg、1~50mg、1~30mg、4~26mg、5~25mg又は5~10mgの1日総量で含む剤形で投与される。
【0082】
本発明の化合物は、肝細胞癌を処置する他の薬物(抗癌性の化学治療薬、ホルモン類、生物学的応答調節物質及び他の血管新生阻害剤など)と併用して又は免疫治療若しくは遺伝子治療と併用して使用することができる。
【実施例】
【0083】
実施例1.化合物1の合成
化合物1は、当技術分野において公知の方法(例えば、米国特許第7,932,244号明細書に記載の方法)によって調製することができる。例えば、化合物1は、スキーム1に示され、国際公開第2014/066819号パンフレットに開示されているプロセスによって調製することができる。
【化8】
【0084】
ステップ1は、化合物2をエステル化して、化合物4を得るステップである。ステップ2は、化合物4から化合物5を形成する反応である。ステップ3は、化合物5のC3位のヒドロキシ基を保護して、化合物6を得るステップである。ステップ4は、化合物6の酸化的開裂により化合物7を得るステップである。ステップ5は、化合物7を還元して化合物8を得るステップである。ステップ6は、化合物8をスルホン化して、化合物1のナトリウム塩(1-Na)を得るステップである。化合物1のナトリウム塩は、当技術分野において公知の手順に従い、その遊離酸形態(即ち化合物1)又は他の塩形態(例えば、化合物1-DEA又は化合物1のN,N-ジエタンアミン塩)に変換することができる。
【0085】
実施例2.化合物2の合成
化合物2は、従来の方法(例えば、米国特許出願公開第2009/0062526号明細書、米国特許第7,138,390号明細書及び国際公開第2006/122977号パンフレットに記載の方法)により、例えば以下のスキーム2に示される生成物化合物1(オベチコール酸又はOCA)に続く6ステップの合成によって調製することができる。
【化9】
【0086】
上記プロセスは、6ステップの合成である。ステップ1は、酸性触媒及び熱の存在下でメタノールを使用して、7-ケトリトコール酸(KLCA)のC-24カルボン酸をエステル化し、メチルエステル化合物7を生成するステップである。ステップ2は、強塩基を使用し、次いでクロロシランで処理することによって化合物aから化合物8を生成するシリルエノールエーテル形成である。ステップ3は、化合物8のシリルエノールエーテルとアセトアルデヒドとをアルドール縮合反応させて化合物10を生成するステップである。ステップ4は、化合物10のC-24メチルエステルを鹸化して化合物11を生成するステップである。ステップ5は、化合物11の6-エチリデン部分を水素化して化合物12を生成するステップである。ステップ6は、化合物12の7-ケト基を7α-ヒドロキシ基に選択的に還元して化合物1を生成するステップである。
【0087】
実施例3.Mdr2-/-マウス及びFXR-/-マウスにおける肝臓癌形成
多剤耐性タンパク質2(Abcb4)は、ATP結合カセット(ABC)トランスポーターのスーパーファミリーのメンバーである。多剤耐性タンパク質2遺伝子ノックアウトマウス(Mdr2-/-)は、自然発症型肝臓癌形成のインビボモデルになる(Katzenellengoben,et al.Mol.Cancer Res.2007,5,11,1159-1170)。多剤耐性タンパク質2遺伝子によってコードされるAbc4タンパク質を欠損しているマウスは、慢性の胆管周囲性炎症及び胆汁うっ滞性肝疾患を発症し、その結果、肝細胞癌を発症する。
【0088】
ファルネソイドX受容体タンパク質(FXR)は、胆汁酸ホメオスタシスを調節する胆汁酸センサーとして機能する核内受容体である。この受容体は、肝臓及び他の器官において高度に発現する。FXRノックアウト(FXR-/-)マウスは、15カ月齢後に肝細胞腺腫及び肝細胞癌を発症する(Yang,et al.Cancer Res.,2007,67,863)。
【0089】
Mdr2-/-マウス及びFXR-/-マウスにおける肝細胞癌の発症に対するOCA、化合物1-Na及び対照飼料の影響を評価した。OCAは、FXRアゴニストであり、化合物1-Naは、FXR/TGR5デュアルアゴニストである。化合物1-NaのFXRに対する効力は、OCAより約10倍強力である。
【0090】
試験設計
Mdr2-/-マウス及びFXR-/-マウスを無作為に3つの実験群に分けた。マウスに、特定の齧歯類用飼料、即ちOCA、化合物1-Na又は対照飼料を添加した飼料を15カ月間与えた。全てのマウスを、温度調節した部屋(23℃)において、12時間の明/暗周期で、病原体が存在しない条件のもとで飼育し、自由飲水させた。バーリ大学の倫理委員会(Ethical Committee of the University of Bari)がこの実験構成を承認し、この実験構成は、国際的に認められた動物飼育のためのガイドラインに従ってイタリア保健省(Italian Ministry of Health)にも認可された。16カ月後、マウスを処分し、血清、肝臓及び腸を採取した。肝腫瘍の総数を計数し、各腫瘍の直径を測定した。
【0091】
処置群
群1:対照飼料
マウス(n=4)に対照飼料を15カ月間与えた。
群2:OCA
マウス(n=8)に、OCAを10mg/kgの用量で添加した対照飼料を15カ月間与えた。
群3:化合物1-Na
マウス(n=15)に、化合物1-Naを10mg/kgの用量で添加した対照飼料を15カ月間与えた。
【0092】
結果
Mdr2-/-マウスにおいて胆汁酸塩によって引き起こされる肝臓炎症及び毒性により、肝細胞異形成が発症する。16カ月齢までにほぼ100%のMdr2-/-対照マウスが肝臓腫瘍を発症した。16カ月齢のFXR-/-マウスは、自然発症型肝細胞癌を発症した。
【0093】
腫瘍の減少及びサイズ
図1A及び2Aは、Mdr2
-/-マウスにおける腫瘍数の減少に対する化合物1-Na、OCA及び対照の影響を示す。化合物1-Naは、この試験において、対照と比較して肝細胞癌の発症を明らかに予防した。統計的有意性は、化合物1-Na群についてほぼ観察された(p=0.055)が、この試験に使用した対照動物の数が少ない(n=2)ために達成されなかった。Mdr2
-/-対照マウス及びOCAで処置したマウスには、明らかに特定可能な肝臓腫瘍が認められたが、化合物1-Na群に認められたのは、微小腫瘍であった。
図1B及び2Bは、直径5mmを超える腫瘍のパーセント減少に対する化合物1-Na、OCA及び対照の影響を示す。OCA群及び対照群で認められた腫瘍のほぼ80%は、Mdr2
-/-マウスにおいて直径が5mmを超えた。反対に、化合物1-Na、OCA及び対照で処置されたFXR
-/-マウスには、幾つかの大型の肝臓腫瘍が認められ、これは、肝細胞癌の発症の予防がほとんどFXRに依存していることを示す(
図3A、3B及び4)。
【0094】
肝重量/体重(LW/BW)
図5A及び5Bは、肝重量及び体重のパーセント比に対する化合物1-Na及び対照の影響を説明する。以前に生成したデータと一致し、化合物1-Naで処置したMdr2
-/-マウスは、対照及びOCAで処置したMdr2
-/-マウスと比較してLW/BW比が有意に減少した。FXR
-/-群では、LW/BW比の差は、観察されなかった。
【0095】
生化学的パラメータ
Mdr2
-/-マウス及びFXR
-/-マウスにおける肝損傷を評価するために、肝臓酵素であるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルに対する化合物1-Na及び対照の影響を分析した。
図6A及び6Bに示されるように、化合物1-Naでの処置により、Mdr2
-/-マウスにおいてALT及びASTのレベルは、有意に減少した。しかし、FXR
-/-処置したマウスでは、ALT及びASTのレベルの差は、観察されなかった。
【0096】
回腸のFXR標的遺伝子発現
肝細胞癌の予防におけるFXRの関与を実証するために、回腸のFXR標的遺伝子発現に対する化合物1-Na及び対照の影響を評価した。予想どおり、OCAと化合物1-Naの両方が、Mdr2
-/-群においてのみ、線維芽細胞増殖因子15(Fgf15)及び低分子ヘテロ二量体パートナー(Shp)の遺伝子発現を刺激した(
図7A及び7B)。
【0097】
肝臓のFXR標的遺伝子発現
コレステロール7α-ヒドロキシラーゼ(cyp7a1)は、コレステロールを胆汁酸に変換する古典的生合成経路における律速酵素である。化合物1-NaとOCAの両方が、Mdr2
-/-マウスにおいてのみ、Cyp7a1遺伝子発現を阻害した(
図8)。胆汁酸塩排出ポンプ(Bsep)は、ATP加水分解のエネルギーを使用して胆汁酸塩を能動輸送する膜タンパク質である。
図9A及び9Bに示されるように、化合物1-Naの投与は、Mdr2
-/-マウスにおいて肝臓のBsep活性化を誘導した。OCAは、肝臓のBsep誘導を促進しなかったが、これは、腸及び肝臓でFXRを効率的に活性化する化合物1-Naとは対照的に、OCAがMdr2
-/-マウスにおいて肝臓活性を有しにくいことを示唆している。
【0098】
総血清胆汁酸
化合物1-Naは、Mdr2
-/-マウスにおいて血清胆汁酸レベルを有意に減少させた(
図10A)。この所見のFXR依存性を、FXR
-/-マウスにおいて減少が発生しないことを観察することによって確認した(
図10B)。
【0099】
実施例4.胆管癌進行におけるFXR又はTGR5の活性化の異なる影響
方法
FXR及びTGR5発現を、CCAヒト生検試料及び対照において、2つの手法(mRNAマイクロアレイ及びqPCR)及び2つの異なる患者のコホート(Copenhagen及びSan Sebastian)を使用して、且つ異なるヒトCCA細胞株において、正常ヒト胆管細胞(NHC)(qPCRによる)と比較して判定した。免疫不全のマウスにおける同所性モデルのヒトCCAの増殖を、特定のFXRアゴニスト又はTGR5アゴニスト(それぞれOCA又は化合物4;固形飼料中0,03%を2カ月間;Intercept Pharmaceuticals)を連続投与しながら磁気共鳴画像法(MRI)によって評価した。FXR又はTGR5の活性化の異なる影響もCCA細胞及びNHC細胞の増殖、遊走及びミトコンドリアのエネルギー代謝についてインビトロで評価した。
【0100】
結果
CopenhagenコホートとSan Sebastianコホート(それぞれmRNAマイクロアレイ及びqPCRによる)との両方において、ヒトCCA組織試料では、正常な肝臓周辺組織及び正常な肝内胆管と比較してFXRが下方制御され、TGR5が上方制御される。増殖、遊走及びミトコンドリアのエネルギー代謝を制御することにより、FXRの活性化は、CCA進行を阻害するが、TGR5の活性化は、CCA進行を促進し得る。FXR及びTGR5の活性の制御は、CCAの治療戦略として可能性がある。インビトロでも、異なるヒトCCA細胞株において、NHCと比較してFXRが下方制御され、TGR5が上方制御されることが認められた。
【0101】
図11A~11Dに示すように、FXR発現は、CCA腫瘍において減少し、腫瘍分化度に相関する:
図11Aは、ヒト周辺組織(n=60)と比較した際のCCA腫瘍の全組織(n=104)におけるFXR mRNAマイクロアレイ発現(Copenhagenコホート)(マン・ホイットニー検定)を表し;
図11Bは、腫瘍分化度:高分化型(n=10)、中分化型(n=34)又は低分化型(n=9)によりグループ化したCCA腫瘍の全組織におけるFXR mRNAマイクロアレイ発現(Copenhagenコホート)(マン・ホイットニー検定)を表し;
図11Cは、正常ヒト肝臓組織(n=20)及びヒト肝臓周辺組織(n=7)と比較した際のCCA腫瘍(n=5)におけるFXR mRNA発現(qPCR)(San Sebastianコホート)(マン・ホイットニー検定)を表し;及び
図11Dは、対応するヒト肝臓周辺組織(n=4)と比較した際のCCA腫瘍におけるFXR mRNA発現(qPCR)(San Sebastianコホート)(対応のあるt検定)を表す。
【0102】
図12A~12Dに示すように、TGR5発現は、CCA腫瘍において増加し、肺門周囲CCAの方が肝内CCAより高く、神経周囲の浸潤に相関する(
図12A)。
図12Bは、ヒト周辺組織(n=60)と比較した際のCCA腫瘍の全組織(n=104)におけるTGR5 mRNAマイクロアレイ発現(Copenhagenコホート)(マン・ホイットニー検定)を表す。
図12Cは、臨床病理学的パラメータ、即ち解剖学的部位[肺門周囲(n=36)又は肝内(n=68)]及び神経周囲の浸潤[陰性(n=50)又は陽性(n=42)]による、CCA腫瘍の全組織におけるTGR5 mRNAマイクロアレイ発現(Copenhagenコホート)(マン・ホイットニー検定)を示す。
図12Cは、ヒト肝臓周辺組織(n=27)と比較した際のCCA腫瘍(n=15)におけるTGR5 mRNA発現(qPCR)(San Sebastianコホート)(マン・ホイットニー検定)を表す。対応するヒト肝臓周辺組織(n=11)と比較した際のCCA腫瘍におけるTGR5 mRNA発現(qPCR)(San Sebastianコホート)(ウィルコクソンのマッチドペア符号順位検定)が
図12Dに示されている。
【0103】
図13A及び13Bに示すように、CCA細胞株において、正常ヒト胆管細胞と比較した際に、FXR発現は、減少し、TGR5発現は、増加する:
図13Aは、正常ヒト胆管細胞(n=6)及びCCA細胞株(それぞれn=5及び6)におけるFXR mRNA発現(qPCR)(マン・ホイットニー検定又は対応のないt検定)を示し、
図13Bは、正常ヒト胆管細胞(n=6)及びCCA細胞株(それぞれn=5及び4)におけるTGR5 mRNA発現(qPCR)(対応のないt検定又はマン・ホイットニー検定)を示す。
【0104】
同所性CCAマウスモデルにFXRアゴニストであるOCAを連続投与すると、無処置の動物と比較して腫瘍増殖が阻害された。この影響は、処置した動物の腫瘍内でのPCNA及びKi67の発現の減少と関連するものであった。
図14A~14Dに示すように、FXRアゴニストであるオベチコール酸(OCA)は、インビボで腫瘍増殖を阻害した。これは、増殖マーカー、胆汁性マーカー及び上皮性マーカーの発現の減少と関連するものであった。EGI1細胞を雄CD1ヌードマウスに皮下注射した。腫瘍が増殖すると、腫瘍を雄CD1ヌードマウスの肝臓に同所性移植した。2週間後、MRI分析を実施し、飼料に入れて処置投与を開始した。1カ月時点及び2カ月時点でMRIにより腫瘍増殖をモニターした。
図14Aは、無処置の対照マウス、OCAで処置したマウス及び化合物4で処置したマウスの代表的なMRI画像及び肝臓の画像を示す。
図14Bの棒グラフは、MRIで定量化した腫瘍容積倍率変化(対照n=8、OCA n=6及び化合物4 n=9(マン・ホイットニー検定、片側)を示す。
図14Cは、肝臓同所性CCA腫瘍における増殖マーカー(即ちKi67及びPCNA)、胆汁性マーカー(即ちCK19)及び上皮性マーカー(即ちZO-1)のmRNA発現レベルを表す。n=5~8(マン・ホイットニー又は対応のないt検定、片側)。無処置の又はOCA若しくは化合物4で処置したマウスの肝臓同所性CCA腫瘍における増殖マーカー(即ちKi67及びPCNA)の代表的な免疫組織化学画像が
図14Dに示されている。対照的に、TGR5アゴニストである化合物4で連続的に処置した動物では、CCA腫瘍増殖に対する影響は、観察されなかった。
【0105】
図17は、肝臓ゼノグラフ(xenograph)腫瘍の増殖マーカーの発現におけるOCA及び化合物4の影響を示す。肝臓同所性CCA腫瘍における増殖マーカー(即ちCdc25a、サイクリンD1及びサイクリンD3)のmRNA発現レベル。n=5~8(マン・ホイットニー又は対応のないt検定、片側)。
【0106】
インビトロでOCAを用いてFXRを活性化すると、CCA細胞の増殖及び遊走が阻害された。これらの現象は、対照と比較した際のミトコンドリアのエネルギー代謝の低下(即ち基礎呼吸、最大呼吸及びATP産生関連呼吸の低下)に関連するものであった。他方で、FXR活性化は、CCA細胞の生存に影響しなかった。
図15A~15Dに示すように、FXRアゴニストであるOCAは、CCA細胞増殖を用量依存的に阻害し、CCA細胞遊走を阻害する(これらは、CCA細胞中のミトコンドリアの代謝の低下に関連する)が、アポトーシスを誘導しない。
図15Aは、フローサイトメトリーにより、CFSE細胞増殖染料染色を使用して実施した、無処置の対照細胞(n=4)と比較した際の、10又は25μMのOCAで48時間処置したCCA細胞(即ちEGI1)(n=5)の増殖を示す(対応のないt検定)。このアッセイは、少なくとも3回の別個の試験で実施した。無処置の対照細胞と比較した際の、OCA(25μM)で3~6~12時間処置したCCA細胞(即ちEGI1)における増殖マーカー(即ちKi67、PCNA、サイクリンD1及びサイクリンD3)のmRNA発現。n=5~6、無処置の対照に対する、対応のないt検定。
図15Bは、CCA細胞(即ちEGI1)における遊走アッセイの結果を示す。指示した時点及び条件での創傷治癒アッセイ(即ち無処置の対照又はOCAで処置)の代表的な顕微鏡画像及び対応する定量化(各条件につきn=6)(対応のないt検定)。アッセイは、2回の別個の試験で実施した。無処置の細胞及びOCAで処置した細胞における24時間時点でのtranswell遊走チャンバーの代表的な顕微鏡画像。このアッセイは、1回実施した。
図15Cは、前処理を3時間して、無処置の又はOCA(25μM)で処置したCCA細胞(即ちEGI1)におけるミトコンドリアのストレス試験キットを使用したSeahorseによる酸素消費速度(OCR)を示す。OCR測定後に計算した代謝パラメータの棒グラフ。各群につきn=11~12(対応のないt検定)。このアッセイは、少なくとも3回の別個の試験で実施した。
図15Dは、無処置の又は10若しくは25μMのOCAで処置したCCA細胞(即ちEGI1)における、アネキシンV及びヨウ化プロピジウム染色による、フローサイトメトリーに基づくアポトーシスアッセイを表す。2回の別個の試験からの代表的なヒストグラム及び対応するプールデータの定量化、総数n=6~7(対応のないt検定)。このアッセイは、3回の別個の試験で実施した。
【0107】
対照的に、化合物4でTGR5を活性化すると、CCA細胞の増殖及び遊走が刺激された。これらの現象は、対照と比較した際のミトコンドリアのエネルギー代謝の増加(即ち基礎呼吸、プロトンリーク及びATP産生関連呼吸の増加)に関連するものであった。
図16A~16Cに示すように、TGR5アゴニストである化合物4は、CCA細胞の増殖、遊走及びミトコンドリアの代謝をわずかに刺激する。
図16Aは、フローサイトメトリーにより、CFSE細胞増殖染料染色を使用して分析した、無処置の対照細胞と比較した際の、10又は25μMの化合物4で48時間処置したCCA細胞(即ちEGI1)の増殖を示す。n=5~6(対応のないt検定)。このアッセイは、3回の別個の試験で実施した。無処置の対照細胞と比較した際の、化合物4(25μM)で3~6~12時間処置したCCA細胞(即ちEGI1)における増殖マーカー(即ちKi67、PCNA、サイクリンD1及びサイクリンD3)のmRNA発現。n=6(無処置の対照に対する対応のないt検定又はマン・ホイットニー検定)。
図16Bは、CCA細胞(即ちEGI1)における遊走アッセイを表す。指示した時点及び条件での創傷治癒アッセイ(即ち無処置の対照又は化合物4で処置)の代表的な顕微鏡画像及び対応する定量化。2回の別個の実験(総数n=9及び6)からのプールデータ(対応のないt検定)。このアッセイは、少なくとも3回の別個の試験で実施した。無処置の又は化合物4で処置した細胞における24時間時点でのtranswell遊走チャンバーの代表的な顕微鏡画像及び対応する定量化(n=4及び2)。このアッセイは、3回の別個の試験で実施した。
図16Cは、前処理を3時間して、無処置の又は化合物4(25μM)で処置したCCA細胞(即ちEGI1)における、ミトコンドリアのストレス試験キットを使用したSeahorseによる酸素消費速度(OCR)を示す。OCR測定後に計算した代謝パラメータの棒グラフ。各群につきn=11~12(対応のないt検定)。このアッセイは、少なくとも3回の別個の試験で実施した。