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▶ オネラ(オフィス ナシオナル デチュドゥ エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル)の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】自己適応型ガスタービン燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/22 20060101AFI20220318BHJP
   F23R 3/14 20060101ALI20220318BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20220318BHJP
   F23L 13/00 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
F23R3/22
F23R3/14
F02C7/00 C
F02C7/00 F
F23L13/00 Z
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019555476
(86)(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 FR2018050907
(87)【国際公開番号】W WO2018189481
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】1753165
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517092787
【氏名又は名称】オネラ(オフィス ナシオナル デチュドゥ エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル)
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ガン,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】パーン,フロラン
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-087536(JP,A)
【文献】特開2012-032022(JP,A)
【文献】特開平04-227411(JP,A)
【文献】特開2000-257861(JP,A)
【文献】米国特許第04606190(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 1/00- 9/58
F23R 3/00- 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変形状を有する自己適応型ガスタービン燃焼器であって、
燃焼室(101)と、
変温度を有する少なくとも1つの空気流を前記燃焼室(101)に供給するように構成された空気供給機構と、
可変開口部を有する少なくとも1つの機構とを備え、
前記少なくとも1つの機構は、
前記空気供給機構から来る空気流が前記燃焼室(101)に入ることを可能にするように構成された吸気通路と、
移動して、前記吸気通路の開放断面積を変化させる可動閉鎖部材と、
感温部材であって、前記感温部材の温度に応じて変化する形状を有し、前記空気供給機構と前記吸気通路との間の空気流内に配置され、前記感温部材の変形により前記可動閉鎖部材が移動するように前記可動閉鎖部材に接続されている感温部材とを備え、
前記吸気通路が、前記吸気通路を通って前記燃焼室に入る空気が、前記燃焼室内の燃料の燃焼に関与する空気となるように、前記燃焼室(101)に対して配置されることで、前記自己適応型ガスタービン燃焼器は、前記自己適応型ガスタービン燃焼器の動作出力設定に応じて、前記燃焼室内の燃焼形態を自動的に調整し
前記可変開口部を有する機構は、前記空気供給機構から来て、前記燃焼室(101)の軸方向上流に配置された空気供給スワラ(103)を通って前記燃焼室(101)に入る燃焼空気の吸気流量を、運転中の前記燃焼室への空気の流れの一般的な方向(E)に対して変化させるように構成され、
前記可動閉鎖部材は、前記空気供給スワラ(103)を横方向に取り囲む開口部(2a)を有するリング(2)を備え、前記空気供給スワラの周りの前記リングの角度位置に応じて、前記吸気通路の前記開放断面積となる、前記空気供給スワラのチャネル(103a)へのアクセスの断面積を変化させるために、前記開口部は、前記空気供給スワラの前記チャネルに対して位置合わせされるか、またはオフセットされる、自己適応型ガスタービン燃焼器。
【請求項2】
前記感温部材は、形状記憶合金からなる部分を含むか、またはバイメタルストリップアッセンブリーを含み、前記バイメタルストリップアッセンブリーは、熱膨張率の値がそれぞれ異なる材料であって、互いに接続されている材料からなる少なくとも第1の部分および第2の部分(2c、2c;7 )から構成され、前記感温部材が受ける温度変化によって引き起こされる材料の前記第1の部分および第2の部分の相対的な寸法変化が前記感温部材の変形をもたらす、請求項1に記載の自己適応型ガスタービン燃焼器。
【請求項3】
前記感温部材は、前記感温部材が初期温度値から第1の温度変化を受けたときに、前記可動閉鎖部材を初期位置から移動させるのに十分なエネルギーを提供するようになっており、次に、前記第1の温度変化に続いて前記第1の温度変化とは反対方向に起こる第2の温度変化を前記感温部材が受けたときに、前記可動閉鎖部材の逆の移動を引き起こすのに十分な追加のエネルギーを提供するようにもなっており、それにより、前記感温部材の温度が再び前記初期温度値と等しくなると前記可動閉鎖部材が再び前記初期位置になる、請求項1または2に記載の自己適応型ガスタービン燃焼器。
【請求項4】
前記感温部材は、前記感温部材が初期温度値から第1の温度変化を受けたときに、前記可動閉鎖部材を初期位置から移動させるのに十分なエネルギーを提供するようになっており、前記可変開口部を有する機構は少なくとも1つの復帰部材をさらに備え、前記復帰部材は、前記第1の温度変化に続いて前記第1の温度変化とは反対方向に起こる第2の温度変化を前記感温部材が受けたときに、前記可動閉鎖部材の逆の移動を引き起こすのに十分な追加のエネルギーを生成するようになっており、それにより、前記感温部材の温度が再び前記初期温度値と等しくなると前記可動閉鎖部材が再び前記初期位置になる、請求項1または2に記載の自己適応型ガスタービン燃焼器。
【請求項5】
前記感温部材は、前記リング(2)によって支持され、前記空気供給機構から来る空気の流れの中に配置されるブレード(2c)の少なくとも一部を構成し、前記空気供給スワラ(103)の周りで第1の方向、または前記第1の方向とは反対の第2の方向に、空気力学的力によって前記リングを回転させるように、前記空気供給機構から来る空気の少なくとも2つの温度値の間で、互いに逆である傾斜または湾曲方向を前記ブレードに与えるようになっている、請求項3に記載の自己適応型ガスタービン燃焼器。
【請求項6】
前記リング(2)は、前記空気供給機構から来る空気の流れの中に配置され、空気力学的力によって前記リングを休止位置に向かって回転させて前記復帰部材を形成するように、一定の傾斜または曲率を有する少なくとも1つのブレード(2c’)を支持し、前記感温部材は、前記復帰部材の力に抗して前記リングを回転させることによって、前記リングを前記休止位置から離れるように移動させるように構成される、請求項4に記載の自己適応型ガスタービン燃焼器。
【請求項7】
前記可変開口部を有する機構は、前記空気供給機構から来る空気の温度が低下すると前記吸気通路の前記開放断面積を減少させ、前記空気の温度が上昇すると前記吸気通路の前記開放断面積を増加させるように構成される、請求項5または6に記載の自己適応型ガスタービン燃焼器。
【請求項8】
燃焼空気の吸入流量を変化させるように構成された、請求項1から7のいずれか1項に記載の可変開口部を有する第1の機構を備えた自己適応型ガスタービン燃焼器であって、
前記自己適応型ガスタービン燃焼器は、前記空気供給機構から来て前記燃焼室(101)の側壁を通って前記燃焼室に入る希釈空気の吸気流量を、運転中の前記燃焼室内への空気の一般的な流れに対して変化させるように構成される、可変開口部を有する第2の機構をさらに備え、
前記可変開口部を有する第2の機構は、
前記空気供給機構から来る空気流が前記燃焼室(101)に入ることを可能にするように構成された吸気通路と、
移動して、前記吸気通路の開放断面積を変化させる可動閉鎖部材と、
感温部材であって、前記感温部材の温度に応じて変化する形状を有し、前記空気供給機構と前記吸気通路との間の空気流内に配置され、前記感温部材の変形により前記可動閉鎖部材が移動するように前記可動閉鎖部材に接続されている感温部材とを備え、
前記可変開口部を有する第2の機構の前記吸気通路が、前記可変開口部を有する第2の機構の前記吸気通路を通って前記燃焼室に入る空気が、前記燃焼室内で有効なガスの希釈に関与する空気となるように、前記燃焼室(101)に対して配置され、
前記可変開口部を有する第1および第2の機構は、前記可変開口部を有する第1および第2の機構の前記感温部材が配置されている空気流の温度が変化すると、前記可変開口部を有する第1および第2の機構のそれぞれの前記吸気通路の前記開放断面積を反対の変化方向に同時に変化させるようになっている、自己適応型ガスタービン燃焼器。
【請求項9】
前記可変開口部を有する第2の機構において、前記感温部材は、前記感温部材が初期温度値から第1の温度変化を受けたときに、前記可動閉鎖部材を初期位置から移動させるのに十分なエネルギーを提供するようになっており、また、前記感温部材の温度が再び前記初期温度値と等しくなると前記可動閉鎖部材が再び前記初期位置になるように、前記第1の温度変化に続いて前記第1の温度変化とは反対方向に起こる第2の温度変化を前記感温部材が受けたときに、前記可動閉鎖部材の逆の移動を引き起こすのに十分な追加のエネルギーを提供するようになっており、
前記可変開口部を有する第2の機構の前記感温部材が、前記可動閉鎖部材を支持するレバー(7)の一部、または前記可動閉鎖部材を移動させるように構成された可逆的アクチュエータの一部を構成する、請求項8に記載の自己適応型ガスタービン燃焼器。
【請求項10】
前記可変開口部を有する第2の機構において、前記感温部材は、前記可動閉鎖部材を移動させるように構成された可逆的アクチュエータの一部を構成し、前記空気供給機構から来る空気の流れの中に配置されるブレード(7’)の少なくとも一部を形成し、前記感温部材は、前記吸気通路の前記開放断面積を可逆的に変化させるために、第1の方向、または前記第1の方向とは反対の第2の方向に、空気力学的力によって前記可動閉鎖部材を移動させるように、前記空気供給機構から来る空気の少なくとも2つの温度値の間で、互いに逆である傾斜または湾曲方向を前記ブレードに与えるようになっている、請求項9に記載の自己適応型ガスタービン燃焼器。
【請求項11】
前記可変開口部を有する第2の機構において、前記感温部材は、前記感温部材が初期温度値から第1の温度変化を受けたときに、前記可動閉鎖部材を初期位置から移動させるのに十分なエネルギーを提供するようになっており、前記可変開口部を有する機構は少なくとも1つの復帰部材をさらに備え、前記復帰部材は、前記感温部材の温度が再び前記初期温度値と等しくなると前記可動閉鎖部材が再び前記初期位置になるように、前記第1の温度変化に続いて前記第1の温度変化とは反対方向に起こる第2の温度変化を前記感温部材が受けたときに、前記可動閉鎖部材の逆の移動を引き起こすのに十分な追加のエネルギーを生成するようになっており、
前記可変開口部を有する第2の機構の前記可動閉鎖部材を支持するレバー(7)は、前記空気供給機構から来る空気の流れの中に配置され、空気力学的力によって前記レバーを休止位置に向かって回転させて前記復帰部材を形成するように、一定の傾斜または曲率を有する少なくとも1つのブレード(9)をさらに支持し、前記可変開口部を有する第2の機構の前記感温部材は、前記復帰部材の力に抗して前記レバーを回転させることによって前記レバー(7)を前記休止位置から離れるように移動させるように構成される、請求項8に記載の自己適応型ガスタービン燃焼器。
【請求項12】
前記可変開口部を有する第2の機構は、前記空気供給機構から来る空気の温度が低下すると前記吸気通路の前記開放断面積を増大または生成し、前記空気の温度が上昇すると前記吸気通路の前記開放断面積を低減または排除するように構成される、請求項9から11のいずれか1項に記載の自己適応型ガスタービン燃焼器。
【請求項13】
空気圧縮機(200)と、請求項1から12のいずれか1項に記載の自己適応型ガスタービン燃焼器(100)と、タービン(300)とを備えたターボ機械であって、前記ターボ機械は、前記空気圧縮機が前記自己適応型ガスタービン燃焼器の前記空気供給機構のための空気源を構成し、前記自己適応型ガスタービン燃焼器からのガスが前記タービンを作動させ、前記タービンが前記空気圧縮機を駆動するように構成される、ターボ機械。
【請求項14】
商用旅客機のターボジェットエンジンの一部を形成する、請求項13に記載のターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変形状を有する自己適応型ガスタービン燃焼器、及びこのような燃焼器を組み込んだターボ機械に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械の燃焼室内での燃料の燃焼には、一酸化炭素、燃焼残留物、及び窒素酸化物を排出する特性があり、これらの特性は、ターボ機械の出力設定に応じて変化することが知られている。主に、出力設定が低下すると、一酸化炭素および燃焼残留物の排出は急激に増加し、出力設定が増加すると、窒素酸化物の排出は増加する。ターボ機械が航空機ターボジェットである場合、低出力設定が着陸時および地上滑走時に使用される一方、高出力設定は、離陸時、および、次いで巡航時に使用され、ターボジェットエンジンの飛行中の再点火時にも対応する。出力設定にかかわらず、これらの排出を低減するためには、可変形状を有するガスタービン燃焼器を使用することが考えられる。このような可変形状を有する燃焼器は、上流側で燃焼室に通じる少なくとも第1の燃焼空気入口と、下流側で同じ燃焼室に通じる少なくとも第2の燃焼空気入口とを有する。したがって、燃焼室内への燃焼空気の取り込みが上流で増加し、同時に、出力設定が増加して当該燃焼空気の取り込みが下流で減少すると、燃料が不十分な燃焼が生じる。反対に、燃焼室への燃焼空気の取り込みが上流で減少し、同時に、出力設定が低下して当該燃焼空気の取り込みが下流で増加すると、燃料がより多い燃焼が生じる。例えば、フランス特許第2,779,807号は、ターボ機械内の空気圧に基づいて燃焼室内への燃焼空気の可変吸気量を自動的に制御するために、1以上のバルブまたは他の閉鎖手段を使用することを提案している。しかしながら、フランス特許第2,779,807号に記載されている可変形状の実施は複雑で、サイズおよび質量の点で不利であり、ターボ機械に存在する、温度、圧力、振動、および空気流速条件と適合させることが困難である。
【0003】
さらに、フランス特許第2,452,599号は、タービンの構成部材、特にその固定翼及び可動翼を冷却するために、燃焼室のバイパス空気流量を自動的に調整することを提案している。この自動調整は、ターボ機械の圧縮機から来る空気の圧力または温度などのパラメータに応じて行われる。例えば、バルブは圧縮機からの空気の通過のために開放されている断面積を変化させるために、バイメタルストリップによって支持される。このようにして行われる調整は、圧縮機から来る冷却空気の温度に応じて変化する。しかしながら、フランス特許第2,452,599号に記載されている概念および装置は、出力設定に応じて燃焼を最適化するために可変形状を有する燃焼器に対応していない。
【発明の概要】
【0004】
この状況に基づいて、本発明の1つの目的は、一酸化炭素および窒素酸化物の排出特性、ならびにターボ機械のエネルギー効率が、ターボ機械の異なる出力設定に対して最適化されるように、ターボ機械の燃焼器内の燃焼形態の自動調整を改善することである。
【0005】
副次的な目的は、簡単で、燃焼室の近くに存在する熱条件及び振動状態において堅牢で、安価な自動調整を得ることである。
【0006】
この目的のために、本発明の第1の態様は、ガスタービン燃焼器であって、
燃焼室と、
特に、圧縮機から出る空気を供給するための空気供給機構であって、可変温度を有する少なくとも1つの空気流を前記燃焼室に供給するように構成された空気供給機構と、
可変開口部を有する少なくとも1つの機構とを備え、
前記少なくとも1つの機構は、
前記空気供給機構から来る空気流が前記燃焼室に入ることを可能にするように構成された吸気通路と、
移動して、前記吸気通路の開放断面積を変化させる可動閉鎖部材と、
感温部材であって、前記感温部材の温度に応じて変化する形状を有し、前記空気供給機構と前記吸気通路との間の空気流内に配置され、前記感温部材の変形により前記閉鎖部材が移動するように前記閉鎖部材に接続されている感温部材とを備えた、ガスタービン燃焼器を提供する。
【0007】
本発明によれば、前記吸気通路は、前記吸気通路を通って前記燃焼室に入る空気が、燃料の燃焼に関与する空気、または前記燃焼室内で有効なガスの希釈に関与する空気となるように、前記燃焼室に対して配置される。このようにして、前記タービン燃焼器は可変形状を有するが、さらに、前記タービン燃焼器の動作出力設定に応じて、前記燃焼室内の燃焼形態を自動的に調整するように自己適応する。
【0008】
特に、前記燃焼室の底部に位置する燃料の多い火炎ゾーンと、その後ろに続く希釈ゾーンとを有する、低運転出力設定のための第1の燃焼形態と、少ない燃料で燃焼し、希釈ゾーンがない、高運転出力設定のための別の燃焼形態との間で、このようにして交替させることができる。
【0009】
本発明に関連し、前記燃焼室への流量が前記燃焼室の上流に存在する空気の温度に応じて自動的に調整される空気は、燃料の燃焼に関与する空気、前記燃焼室内のガスの希釈に関与する空気、またはその両方である。換言すれば、本発明によって流量が調整されるこの空気は、前記タービン燃焼器内で発生する燃焼の形態、つまり幾何学的形状を変更することを可能にする。
【0010】
感温部材であって、この感温部材の温度に応じて変化する形状を有し、前記閉鎖部材を移動させるために前記閉鎖部材に機械的に接続される感温部材の使用により、簡単で、前記燃焼室の近くに存在する熱条件および振動条件下において堅牢で、安価な調整装置を構成する。
【0011】
前記感温部材の異なる実施形態において、前記感温部材は、形状記憶合金からなる部分、またはバイメタルストリップアッセンブリーを含んでもよい。
【0012】
前記感温部材の第1の実施形態において、前記形状記憶合金がマルテンサイトと呼ばれる「低温」相と、オーステナイトと呼ばれる「高温」相を有し、マルテンサイト変態温度と呼ばれる転移温度で1つの相から他の相へと可逆的に変化する。このような合金からなる部分は、2つの相の間で異なる幾何学的形状を有してもよく、その結果、その部分は、その温度がマルテンサイト変態温度の値を通過するように上昇または低下すると、その幾何学的形状を可逆的に変化させる。このような形状記憶合金の組成は、当業者に周知であり、また、詳細に分類される。例として、チタン-ニッケル合金および銅-アルミニウム合金のファミリーを挙げることができ、これらの合金の主成分によって指定される。
【0013】
前記感温部材の第2の実施形態において、前記バイメタルストリップアッセンブリーは、熱膨張率の値がそれぞれ異なる材料であって、互いに接続された材料からなる少なくとも2つの部分から構成される。これにより、前記感温部材が受ける温度変化によって引き起こされる前記2つの材料部分の相対的な寸法変化が、前記感温部材の変形をもたらす。非常に高い温度に適したいくつかの実施形態において、前記バイメタルストリップアッセンブリーの2つの部分を冷間圧延によって互いに結合することができる。
【0014】
前記可変開口部を有する機構の第1の実施形態において、前記感温部材が、それ自体が前記閉鎖部材を可逆的に作動させるようになっていてもよい。換言すれば、前記感温部材は、まず、初期温度値から第1の温度変化を受けたときに、前記閉鎖部材を任意の初期位置から移動させるのに十分なエネルギーを提供するようになっている。しかし、前記感温部材は、前記第1の温度変化に続いて反対方向に起こる第2の温度変化を前記感温部材が受けたときに、前記閉鎖部材の逆の移動を引き起こすのに十分な追加のエネルギーを提供するようにもなっており、それにより、前記感温部材の温度が再びその初期値に等しくなると前記閉鎖部材が再びその初期位置になる。
【0015】
前記可変開口部を有する機構の第2の実施形態において、前記感温部材が、それ自体が前記閉鎖部材を一方向のみに作動させるようになっていてもよい。この場合、前記感温部材は、復帰部材と組み合わされなければならず、それにより、前記復帰部材は、前記感温部材によって制限されるように、前記閉鎖部材を反対方向に移動させる。換言すれば、前記感温部材は、さらに、初期温度値から第1の温度変化を受けたときに、前記閉鎖部材を初期位置から移動させるのに十分なエネルギーを提供するようになることができる。しかし、前記閉鎖部材は、第2の温度変化を前記感温部材が受けたときに、前記閉鎖部材の逆の移動のための追加のエネルギーを提供するため、それにより、前記感温部材の温度が再びその初期値に等しくなると前記閉鎖部材が再びその初期位置になる。
【0016】
本発明の第1のタイプの実施形態は、前記燃焼室内に流入する燃焼空気をその上流部分で調整することに関する。この第1のタイプの実施形態では、前記可変開口部を有する機構は、前記空気供給機構から来て空気供給スワラを通って前記燃焼室に入る燃焼空気の吸気流量を変化させるために、前記燃焼室の噴射機構の前記空気供給スワラ上に配置してもよい。このスワラは、運転中の前記燃焼室への空気の流れの一般的な方向に対して、前記燃焼室の軸方向上流に配置される。そして、前記閉鎖部材は、前記空気供給スワラを横方向に取り囲む開口部を有するリングを備えてもよく、前記空気供給スワラの周りの前記リングの角度位置に応じて、前記空気供給スワラのチャネルへのアクセスの断面積を変化させるために、前記開口部が、前記空気供給スワラの前記チャネルに対して位置合わせされるか、またはオフセットされる。このようにして前記空気供給スワラのチャネルへのアクセスのために生成される可変断面積は、前記吸気通路の開放断面積となる。
【0017】
有利には、前記可変開口部を有する機構は、前記空気供給機構から来る空気の温度が低下すると前記吸気通路の前記開放断面積を減少させ、この空気の温度が上昇すると前記吸気通路の前記開放断面積を増加させるように構成されてもよい。空気供給温度が低下した場合は、前記タービン燃焼器を備えるターボ機械のより低い出力設定に合わせて下げた運転モードに対応し、空気温度が上昇した場合は、より高い出力設定に合わせて上げた運転モードに対応する。
【0018】
本発明のこの第1のタイプの実施形態は、上述した感温部材の第1または第2の実施形態と組み合わせることができ、また、やはり上述した可変開口部を有する機構の第1または第2の実施形態とも組み合わせることができ、それらのすべての組み合わせが本発明に含まれる。
【0019】
特に、前記感温部材は、前記リングによって支持され、前記空気供給機構から来る空気の流れの中に配置されるブレードの少なくとも一部を構成してもよい。そして、前記感温部材は、前記空気供給スワラの周りで一方向または反対方向に空気力学的力によって前記リングを回転させるように、前記空気供給機構から来る空気の少なくとも2つの温度値の間で、互いに逆である傾斜または湾曲方向を前記ブレードに与えるようになることができる。
【0020】
あるいは、前記リングは、前記空気供給機構から来る空気の流れの中に配置され、空気力学的力によって前記リングを休止位置に向かって回転させて前記復帰部材を形成するように、一定の傾斜または曲率を有する少なくとも1つのブレードを支持してもよい。そして、前記感温部材は、前記復帰部材の力に抗して前記リングを回転させることによって、前記リングを前記休止位置から離れるように移動させるように構成することができる。
【0021】
本発明の第2のタイプの実施形態は、前記燃焼室の下流部分に取り込まれる希釈空気を調整することに関する。この第2のタイプの実施形態では、前記可変開口部を有する機構は、前記空気供給機構から来て、前記燃焼室の側壁を通って前記燃焼室に入る希釈空気の吸気流量を、運転中の前記燃焼室内への空気の一般的な流れに対して変化させるように構成することができる。
【0022】
有利には、前記可変開口部を有する機構は、前記空気供給機構から来る空気の温度が低下すると前記吸気通路の前記開放断面積を増加または生成させ、この空気の温度が上昇すると前記吸気通路のこの開放断面積を減少または削除させるように構成することができる。前記空気供給温度が低下した(または上昇した)場合は、再び、より低い(またはより高い)出力に下げた運転モードに対応する。
【0023】
本発明のこの第2のタイプの実施形態は、上述した感温部材の第1または第2の実施形態、また、やはり上述した可変開口部を有する機構の第1または第2の実施形態と組み合わせることもでき、これらのすべての組み合わせも本発明に含まれる。
【0024】
特に、前記感温部材は、前記閉鎖部材を支持するレバー(7)の一部、または前記閉鎖部材を移動させるように構成された可逆的アクチュエータの一部を構成することができる。後者の場合、前記感温部材は、前記空気供給機構から来る空気の流れの中に配置されるブレードの少なくとも一部を構成することができる。そして、前記感温部材は、前記吸気通路の前記開放断面積を可逆的に変化させるために、一方向または反対方向に空気力学的力によって前記閉鎖部材を移動させるように、前記空気供給機構から来る空気の少なくとも2つの温度値の間で、互いに逆である傾斜または湾曲方向を前記ブレードに与えるようになっている。
【0025】
あるいは、前記閉鎖部材を支持するレバーは、前記空気供給機構から来る空気の流れの中に配置され、空気力学的力によって前記レバーを休止位置に向かって回転させて前記復帰部材を形成するように、一定の傾斜または曲率を有する少なくとも1つのブレード(9)をさらに支持してもよい。そして、前記感温部材は、前記復帰部材の力に抗して前記レバーを回転させることによって前記レバーを前記休止位置から離れるように移動させるように構成することができる。
【0026】
場合によっては、本発明に係るタービン燃焼器は、本発明の第1のタイプの実施形態に係る可変開口部を有する第1の機構と、本発明の第2のタイプの実施形態に係る可変開口部を有する第2の機構との両方を備えることによって、燃焼空気および希釈空気の調整を組み合わせてもよい。
そして、前記可変開口部を有する第1および第2の機構は、前記可変開口部を有する2つの機構の前記感温部材が配置されている空気流の温度が変化すると、前記可変開口部を有する第1の機構の前記吸気通路と前記可変開口部を有する第2の機構の前記吸気通路の前記開放断面積を反対の変化方向に同時に変化させるようになっている。好ましくは、前記可変開口部を有する2つの機構が同時に変化する間、前記燃焼室に入る空気の全質量流量が実質的に一定のままであるように、前記2つの吸気通路の開放断面積が同時に変化する。加えて、前記可変開口部を有する2つの機構が同時に変化する間、有利にも、前記燃焼室に導入される空気のこの全流量に有効な全圧力損失が一定になることもできる。
【0027】
さらに、前記可変開口部を有する機構では、前記燃焼室の上流部分および下流部分に配置された同じタイプの感温部材を使用することによって、これらの機構によって制御される空気流量の変化を自動的に同期させることが確保される。
【0028】
本発明の第2の態様は、空気圧縮機と、本発明の第1の態様に係るタービン燃焼器と、タービンとを備えるターボ機械を提供する。このようなターボ機械は、前記圧縮機が前記タービン燃焼器の前記空気供給機構のための空気源を構成し、前記タービン燃焼器からのガスがタービンを作動させ、前記タービンが前記圧縮機を駆動するように構成される。
【0029】
このようなターボ機械は、商用旅客機のターボジェットエンジンの一部を形成するのに特に適している。この場合、上述の出力設定は、異なる飛行段階、すなわち、高出力設定のための離陸及び巡航、低出力設定のための着陸及び地上滑走、ならびに飛行中の再点火に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、いくつかの非限定的な例示的な実施形態の以下の説明から明らかになるのであろう。
図1】本発明を適用することができるターボ機械の断面図である。
図2a】本発明によって使用される可変開口部を有する機構の第1の実施形態と組み合わされた燃焼空気供給スワラの斜視図である。
図2b】2つの異なる開口値の場合の、図2aの前記供給スワラおよび前記可変開口部を有する機構の断面図である。
図2c】前記感温部材の別の実施形態の場合の、図2aの一部の詳細図である。
図2d】本発明によって使用される可変開口部を有する機構の第2の実施形態の場合の、図2aに対応する図である。
図3a】希釈空気入口の、本発明の他の例示的な実施形態を示す斜視図または断面図である。
図3b】希釈空気入口の、本発明の他の例示的な実施形態を示す斜視図または断面図である。
図3c】希釈空気入口の、本発明の他の例示的な実施形態を示す斜視図または断面図である。
図3d】希釈空気入口の、本発明の他の例示的な実施形態を示す斜視図または断面図である。
図4】前記燃焼空気供給スワラおよび前記希釈空気入口の両方における、本発明に係るタービン燃焼器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
明確にするために、これらの図に表される要素の寸法は、それらの実際の寸法またはそれらの実際の寸法の比率、あるいは、これらの形状が本発明に依存しない場合の正確な形状に対応しない。さらに、記載された装置のいくつかの要素は、本発明の実施に直接関与しない場合、単に記号的にまたは原則的に表されるか、または全く表されない。これは、本発明に直接関連する部分をより明確に示すために、空気供給スワラの中心に配置されているが図示されていない燃料噴射システムの特定の場合である。さらに、異なる図面に示す同一の参照符号は、同一の要素または同一の機能を有する要素を示す。
【0032】
本発明は、図1に示すようなターボ機械に適用することができる。このようなターボ機械は、タービン燃焼器100と、圧縮機200と、タービン300とを含む。
【0033】
タービン燃焼器100自体は、燃焼室101と、空気供給機構と、可変開口部を有する少なくとも2つの機構とを備える。
【0034】
燃焼室101は、異なるデザインを有してもよく、例えば、一連のリング1a、1b、1cおよび1dによって形成された側壁を有する室であってもよい。燃焼室101の他のデザインにおいて、その側壁が多孔質であってもよいし、複数の穿孔を有していてもよい。
【0035】
空気供給機構は、圧縮機200から来る空気を燃焼室101の空気入口に案内するための少なくとも1つの外部パイプ102を含む。図1において符号Eで示される矢印は、圧縮機200から燃焼室100を通ってタービン300に至るターボ機械内の空気流の一般的な方向を示す。Lの参照符号は空気流線を示す。ターボ機械を装備した航空機の高度、およびターボ機械の動作モード(例えば、航空機の離陸のための高出力設定、または航空機を地上滑走させるための低出力設定、またはターボ機械の低温再始動のための低出力設定)に応じて、圧縮機200を出る空気の温度は、約-40℃から約630℃までの間で変化することがある。
【0036】
可変開口部を有する機構は、供給機構と燃焼室101の特定の空気入口との間の空気流の経路に配置される。特に、当業者の専門用語では一次空気流と呼ばれる燃焼空気流を調整するために、可変開口部を有する機構1を燃焼室101の上流壁を通って軸方向に配置することができる。組み合わせて、可変開口部を有する1つまたは複数の機構3を、燃焼室101の側壁のセグメント1a~1dのいくつかを横切るように配置してもよく、これらの機構のそれぞれは、希釈空気流を調整することを意図している。可変開口部を有するこれらの機構1および3のすべては、ターボ機械の運転中に、その運転モードに応じて、高出力または低出力の送達に対応して調整される。特に、この出力が増加すると、可変開口部を有する機構1は一次空気流を増加させるように調整され、機構3は燃焼火炎の希釈を低減または排除するように同時に調整される。対照的に、タービンエンジンによって供給される出力が減少すると、可変開口部を有する機構1は、一次空気流を減少させるように調整され、可変開口部を有する機構3は火炎の希釈を増加させるように同時に調整される。燃焼器の形状変化の間、燃焼室101に入る空気の総質量流量および流れの圧力損失が実質的に一定のままであるように可変開口部を有する機構1および3の調整が行われることが好ましい。
【0037】
本発明によれば、可変開口部を有する機構1および/または3のうちの少なくとも1つは、可変開口部を有するこの(これらの)機構の上流のパイプ102内の空気の温度に応じて自動的かつ自律的に調整される。
【0038】
本発明は、最初に、可変開口部を有する機構1について、図2aを参照して説明する。空気供給機構は、供給スワラ103を備える。この供給スワラは、燃焼室101の上流壁(燃焼室の底壁とも呼ばれる)を通って導かれる燃焼空気用のチャネル103aを有する。リング103内で隣接する2つのチャネル103aは、バケットとも呼ばれる中間仕切り103bによって分離されている。チャネル103aの外周開口部は、軸A-Aの周りに分配される。これらは、圧縮機200から吸気室101への空気の流入を可能にする吸気通路を形成する。開口部を有するリング2が、2つの回転制限ストッパの間で軸A-Aの周りを回転することができるように、チャネル103aの外周開口部の前に、スワラ103の周りに配置される。リング2において、開口部2aは、供給スワラ103のチャネル103aの外周開口部において、シャッタセグメント2bと交互になっている。次に、圧縮機200から来る空気のためのスワラ103のチャネル103aへの最大アクセスの断面積に対応するリング2の位置において、リング2の開口部2aはスワラ103のチャネル103aの開口部と一致する。最大アクセスの断面積を生じるリング2のこのような位置は、図2bの左半分に示されている。リング2がこの位置から徐々に回転されると、シャッタセグメント2bは、部分的に、スワラ103のチャネル103aの外周開口部の前方の位置に来て、圧縮機200からの空気のためのチャネル103aへのアクセスの断面積を減少させる。アクセスの断面積を減少させるリング2のこの他の位置は、図2bの右半分に示されている。従って、燃焼室101に流入する一次空気流は、リング2を軸A-Aの周りに回転させることによって調整される。したがって、リング2は、本明細書の概要部分で言及した閉鎖部材を形成する。図2bのリング2についてOおよびFで示される回転方向はそれぞれ、スワラ103のチャネル103Aへのアクセスの断面積の漸進的な増加および漸進的な低下に対応し、したがって、一次空気流のための燃焼室101への吸気通路の開口の断面積の増加および低下にそれぞれ対応する。
【0039】
図2aにさらに示す本発明の第1の実施形態によれば、リング2は、例えば、開口部2aおよびシャッタセグメント2bの上流に、ブレード2cを備えている。これらのブレード2cは、圧縮機200からの空気の流れがスワラ103のチャネル103aに部分的に入る前、または燃焼室101の周りを流れる前に、この空気の流れの中に配置される。ブレード2cは、少なくとも一部が形状記憶合金で構成されており、各ブレードは可変方向の曲率を有する。例えば、スワラ103の上流の空気が形状記憶合金のマルテンサイト変態温度よりも高い温度を有する場合、ブレード2cの曲率(図2aに実線で示すブレード形)が、圧縮機200からの空気の流れが図2bに示す回転方向Oにリング2を押して、スワラ103のチャネル103aへのアクセスの断面積を増大させるような曲率になる。反対に、空気の温度がマルテンサイト変態温度未満である場合、ブレード2cの湾曲方向は逆になり(図2aにおいて破線で示すブレード形)、その結果、圧縮機200からの空気の流れが図2bに示す回転方向Fにリング2を押して、スワラ103のチャネルへのアクセスの断面積を減少させる。この第1の実施形態では、形状記憶合金のブレード2cが、本明細書の概要部分で言及した感温部材を構成する。ブレード2cは、スワラ103のチャネル103aへのアクセスの断面積を自動的かつ可逆的に調整することを可能にし、圧縮機200からの空気の温度がマルテンサイト変態温度を下回ったときにはF方向にリング2を回転させ、圧縮機200からの空気の温度がマルテンサイト変態温度を超えて上昇したときにはO方向にリング2を回転させる。
【0040】
図2cは、リング2の各ブレード2cがその可逆的湾曲部分にバイメタルストリップアッセンブリーを有する別の実施形態を示す。このようなアセンブリーは、例えば、冷間圧延によって互いに積層された2つのセグメント2c及び2cから成り、その結果、各々がブレードの可逆的湾曲部分の厚さの一部を形成する。より低い温度において凹状であるセグメント、例えば、図2cに実線で示すブレード形のセグメント2cは、他のセグメントの材料(検討中の例では2c)の熱膨張率よりも大きい熱膨張率を有する材料からなる。セグメント2cおよびセグメント2cの材料およびそれらの厚さを、当業者の能力の範囲内で、最適に選択することで、高温で反転する各ブレード2cの曲率(図2cに破線で示すブレード形)を得ることができる。
【0041】
図2dに示す本発明の第2の実施形態では、リング2のブレード(ここでは2c’で示す)は、リング2を回転方向Oに押すために、圧縮機からの空気流において一定の曲率を有し、リング2および空気供給機構は、形状記憶合金のケーブル4によって1対1に接続されるアーム2dおよびアーム104をそれぞれ備える。ケーブル4は、マルテンサイト変態温度よりも高い温度での有効長さが、マルテンサイト変態温度よりも低い温度での有効長さが大きくなるような有効長さを有するように設計することができる。従って、圧縮機200からの空気の温度がマルテンサイト変態温度の直ぐ上まで増加すると、リング2は自由に回転する。ブレード2c’は、リング2を回転方向Oに回転させる。逆に、温度がマルテンサイト変態温度よりも低い温度まで低下すると、これによりケーブル4が短くなり、リング2を方向Fに回転させる。換言すれば、ブレード2c’は、ブレード2c’上の空気流Eによって生成される空気力学的力によって、リング2を、燃焼室101内への一次空気流の吸気通路の最大開放断面積に対応する位置に戻す復帰部材を構成する。
【0042】
図3a及び図3bを参照して説明する本発明の第3の実施形態は、燃焼室101の側壁の下流側部分に設けられた、これらの可変開口部を有する機構3の1つに関する。既に述べたように、このような機構は、ターボ機械の現在の出力設定に応じて、燃焼室101に流入する希釈空気流を適合させることを意図している。燃焼室101の側壁にはオリフィス5が設けられており、閉止部材としてのバルブ6がレバー7を介して基部8に支持されている。基部8は、燃焼室101の側壁と一体の断熱材料で作られることが好ましい。レバー7は、圧縮機200から来る空気流E内に配置されている。ターボ機械の高出力設定に対応して、圧縮機200から来る空気の温度が高いときに、オリフィス5の上にバルブ6を被せるように設計され、低出力設定に対応して、圧縮機200から来る空気の温度が低いときに、オリフィス5から離れるようにバルブ6を移動させるように設計されている。したがって、希釈空気の流れは、低出力設定では燃焼室101に入り、高出力設定では抑制される。
【0043】
図3aに示す実施形態では、レバー7の少なくとも1つのセグメントが形状記憶合金の一部によって構成されているため、レバー7は、バルブ6がオリフィス5から離れるようにマルテンサイト変態相で曲がり、バルブ6がオリフィス5の上に被さるようにオーステナイト相で真っ直ぐになる。言うまでもなく、レバー7および基部8のための他の幾何学的構成を、同等の方法で使用することができる。
【0044】
図3aの実施形態に代わる実施形態であって、図3bに示す実施例では、レバー7を構成する形状記憶合金の部分が図2cを参照して説明したようなバイメタルストリップアッセンブリーに置き換えられている。このバイメタルストリップアッセンブリーのセグメントを、7および7で示す。セグメント7の熱膨張率よりも高い熱膨張率を有するセグメント7は、より低い温度で凹状であるレバー7の面、またはこの面の少なくとも一部を構成する。レバー7の2つのセグメント7および7の厚さ、ならびにそれらのそれぞれの材料は、当業者の能力の範囲内の方法で選択され、その結果、バイメタルストリップアッセンブリーの動作は、圧縮機200から来る空気の温度が高温であるときには、バルブ6をオリフィス5の上に可逆的に被せ、この空気の温度が低下すると、バルブ6をオリフィス5から離れるように移動させる。
【0045】
図3cに示す本発明の第3の実施形態では、基部8’は、燃焼室101の外側面に平行な平面内でレバー7が回転できるように構成されている。したがって、レバー7によって支持されたバルブ6は、オリフィス5に対してオフセットされた位置(実線で示されている)であって、オリフィス5が開放される位置と、バルブ6がオリフィス5を覆う位置(破線で示されている)との間で、燃焼室101の外側面上を摺動する。レバー7は、圧縮機200から来る空気流E内に配置された、固定形状の湾曲フィン9をしっかりと支持している。このようにして、レバー7は、フィン9上の空気流Eによって生成される空気力学的力によって、オリフィス5の開放位置に戻される。したがって、空気流E内のフィン9は、可変開口部を有する機構をオリフィス5の開放位置に戻すための復帰部材を形成する。この開放位置は、本明細書の概要部分で述べた休止位置に対応する。アクチュエータ10は、燃焼室101の壁に固定することもできる別の基部11と、基部11において取付け端部12’がしっかりと保持されている別のレバー12と、スラストフィンガ13とを含む。スラストフィンガ13は、取付け端部12’とは反対のレバー12の遠位端12’’に取り付けられている。レバー12は、マルテンサイト相において、レバー12が引っ込んだ形状(図3cにおいて実線で示されている)を有し、それにより、フィン9がバルブ6をオリフィス5から離れた位置に押すことができるように設計された形状記憶合金の部分を有してもよい。同時に、レバー12は、そのオーステナイト相への移行中に、バルブ6がオリフィス5上に来てオリフィス5を閉じるまで、フィンガ13によってレバー7を押すように設計されている。
【0046】
図3cの実施形態に代わる実施形態では、アクチュエータ10のレバー12を構成する形状記憶合金の部分を、図2cを参照して説明したようなバイメタルストリップアッセンブリーに置き換えてもよい。そのような実施形態は、既に提供された説明から当業者には明らかであるため、それをさらに説明する必要はない。
【0047】
さらに別の代替実施形態を図3dに示す。図3cの実施形態と比較すると、アクチュエータ10はなくなり、可逆的な傾斜および/または曲率を有するブレード7’がレバー7によって支持されている。ブレード7’は、図2aの実施形態のブレード2cについて説明したような形状記憶合金の一部を有してもよく、または図2cの実施形態のブレード2c’について説明したようなバイメタルストリップアッセンブリーを有してもよい。この他の実施形態も、これらの先行する図面を参照して既に提供された説明から、当業者には明らかであろう。ブレード7’の傾斜および/または曲率の反転は、流れEの空気の温度が低下すると、オリフィス5を開放するか、またはその開放断面積を増加させ、逆に、流れEの空気の温度が上昇すると、この開放断面積を減少させるか、またはそれを削除する。本発明のすべての実施形態の場合と同様に、そのような動作は自律的である。
【0048】
図2a~図2cまたは図3dに対応する本発明の実施形態は、感温部材(形状記憶合金の一部またはバイメタルストリップアッセンブリーを有する)の実装にかかわらず、それらが単純であるため、特に、必要とする部品の数が少ないため、好ましい。図4はこれらの実施形態の2つの組み合わせを示し、1つは、図2a~図2cによるものであり、もう1つは図3dによるものである。このような組み合わせは、実現が特に簡単であり、高い信頼性で使用することができる。加えて、可変開口部を有する各機構は、可変開口部1を有する機構を介した燃焼空気として、または可変開口部3を有する機構を介した希釈空気として、燃焼室101に入る空気の総質量流量が、可変開口部1および3を有する機構の開放断面積が反対方向に変化する一方で、実質的に一定である総断面積を維持するため、移行中に実質的に一定のままであるように、有利にサイズ決定される。

図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図3c
図3d
図4