(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】貨幣処理装置、貨幣処理システムおよび貨幣処理方法
(51)【国際特許分類】
G07D 11/24 20190101AFI20220318BHJP
G07D 11/60 20190101ALI20220318BHJP
【FI】
G07D11/24
G07D11/60
(21)【出願番号】P 2019566426
(86)(22)【出願日】2019-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2019000190
(87)【国際公開番号】W WO2019142694
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2018007182
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(72)【発明者】
【氏名】黒田 暁人
(72)【発明者】
【氏名】綿谷 悠介
(72)【発明者】
【氏名】田中 大智
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/049733(WO,A1)
【文献】特開2016-031686(JP,A)
【文献】特開2012-198764(JP,A)
【文献】特開2016-181218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00-13/00
G07F 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣を処理する貨幣処理装置において、
複数の貨幣収容部と、
前記貨幣収容部に対する処理を制御する制御部と、
前記貨幣処理装置における処理を時系列で示す処理履歴を記憶する記憶部と、
表示部と、を備え、
前記制御部は、
精査処理において、前記複数の貨幣収容部のそれぞれに対し、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じたか否かに基づいて、前記貨幣収容部に収容された少なくとも1つの貨幣を計数して在高を確定する計数対象の前記貨幣収容部を設定し、計数対象以外の前記貨幣収容部については、貨幣の計数を行うことなく在高を確定させ、
計数対象の前記貨幣収容部と計数対象以外の前記貨幣収容部とが区別可能な指標情報を、
前記処理履歴中の前記精査処理ごとに前記記憶部に
さらに記憶させ、
前記精査処理の後に前記処理履歴を前記表示部に表示させた際に、前
記処理履歴中の前記精査処理の項目の指定を受け付け
、
指定された前記精査処理に関連する前記指標情報を前記記憶部から抽出して、前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じた前記貨幣収容部を貨幣の計数対象に設定する、
請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記精査処理において、計数対象の前記貨幣収容部に収容された貨幣を計数した結果を確定した在高として設定する、
請求項1または2に記載の貨幣処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記精査処理において、計数対象以外の前記貨幣収容部については、前記精査処理を行う前の在高を確定した在高として設定する、
請求項1ないし3の何れか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、計数対象に設定される前記貨幣収容部の指定を受け付け、指定された前記貨幣収容部と、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じた前記貨幣収容部とを、計数対象の前記貨幣収容部に設定する、
請求項1ないし4の何れか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じた前記貨幣収容部とともに当該貨幣収容部に収容された貨幣の金種と同一の金種の貨幣を収容する前記貨幣収容部を計数対象の前記貨幣収容部に設定する、
請求項1ないし5の何れか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記指標情報の表示において、前記貨幣処理装置における前記複数の貨幣収容部の配置を示す画像を前記表示部に表示させ、さらに、前記精査処理において貨幣の計数が行われた前記貨幣収容部に対応する表示要素と、前記精査処理において貨幣の計数が行われなかった前記貨幣収容部に対応する表示要素とを、前記画像上で区別可能に表示させる、
請求項1ないし
6の何れか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項8】
計数対象の前記貨幣収容部は、第1の計数対象の前記貨幣収容部と第2の計数対象の前記貨幣収容部を含み、
前記第1の計数対象の前記貨幣収容部は、前記貨幣収容部に収容されたすべての貨幣が計数されて在高が確定される前記貨幣収容部であり、
前記第2の計数対象の前記貨幣収容部は、前記貨幣収容部に収容された貨幣の貨幣番号と収納順序を関連付けたリストと、前記貨幣収容部に収容された一部の貨幣の貨幣番号とが照合されることにより在高が確定される前記貨幣収容部である、
請求項1ないし
7の何れか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項9】
貨幣処理装置と、前記貨幣処理装置に通信可能に接続された操作端末とを有する貨幣処理システムであって、
複数の貨幣収容部と、
前記貨幣収容部に対する処理を制御する制御部と、
前記貨幣処理装置における処理を時系列で示す処理履歴を記憶する記憶部と、
表示部と、を備え、
前記制御部は、
精査処理において、前記複数の貨幣収容部のそれぞれに対し、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じたか否かに基づいて、前記貨幣収容部に収容された少なくとも1つの貨幣を計数して在高を確定する計数対象の前記貨幣収容部を設定し、計数対象以外の前記貨幣収容部については、貨幣の計数を行うことなく在高を確定させ、
計数対象の前記貨幣収容部と計数対象以外の前記貨幣収容部とが区別可能な指標情報を、
前記処理履歴中の前記精査処理ごとに前記記憶部に
さらに記憶させ、
前記精査処理の後に前記処理履歴を前記表示部に表示させた際に、前
記処理履歴中の前記精査処理の項目の指定を受け付け
、
指定された前記精査処理に関連する前記指標情報を前記記憶部から抽出して、前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする貨幣処理システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記指標情報の表示において、前記貨幣処理装置における前記複数の貨幣収容部の配置を示す画像を前記表示部に表示させ、さらに、前記精査処理において貨幣の計数が行われた前記貨幣収容部に対応する表示要素と、前記精査処理において貨幣の計数が行われなかった前記貨幣収容部に対応する表示要素とを、前記画像上で区別可能に表示させる、
請求項
9に記載の貨幣処理システム。
【請求項11】
複数の貨幣収容部を備えた貨幣処理装置を用いる貨幣処理方法であって、
前記貨幣処理装置における処理を時系列で示す処理履歴を記憶部に記憶させ、
精査処理において、前記複数の貨幣収容部のそれぞれに対し、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じたか否かに基づいて、前記貨幣収容部に収容された少なくとも1つの貨幣を計数して在高を確定する計数対象の前記貨幣収容部を設定し、計数対象以外の前記貨幣収容部については、貨幣の計数を行うことなく在高を確定させ、
計数対象の前記貨幣収容部と計数対象以外の前記貨幣収容部とが区別可能な指標情報を、
前記処理履歴中の前記精査処理ごとに
前記記憶部に
さらに記憶させ、
前記精査処理の後に前記処理履歴を表示させた際に、前
記処理履歴中の前記精査処理の項目の指定を受け付け
、
指定された前記精査処理に関連する前記指標情報を前記記憶部から抽出して表示させる、
ことを特徴とする貨幣処理方法。
【請求項12】
前記指標情報の表示において、前記貨幣処理装置における前記複数の貨幣収容部の配置を示す画像を表示し、さらに、前記精査処理において貨幣の計数が行われた前記貨幣収容部に対応する表示要素と、前記精査処理において貨幣の計数が行われなかった前記貨幣収容部に対応する表示要素とを、前記画像上で区別可能に表示させる、
請求項
11に記載の貨幣処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨幣の入出金等の処理を行う貨幣処理装置、貨幣処理システムおよび貨幣処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関に設置された種々の貨幣処理装置では、装置の保有在高が在高データとして管理されている。この在高データと実際の在高とが一致することを確認するための精査処理が、たとえば1日の業務終了時等において実行される。
【0003】
以下の特許文献1には、操作者が貨幣収容部から貨幣を取り出して精査を行う場合に、在高が不確定となっている貨幣収納部を表示する貨幣処理装置が開示されている。この貨幣処理装置によれば、操作者は、在高が不確定な貨幣収容部のみを精査の対象とすることができ、精査の効率化を図ることができる。また、在高が不確定となっていない貨幣収容部から、操作者が貨幣を取り出して精査を行うことにより、精査ミスが生じることを未然に防止することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、操作者が貨幣収容部から貨幣を取り出して計数する必要があるため、操作者の負担が大きい。これに対し、貨幣処理装置において自動で貨幣収容部に対する精査を行う構成も考えられるが、精査の際に全ての貨幣収容部に対して一律に貨幣の計数を行うと、精査処理が終了するまでに長時間を要してしまう。
【0006】
かかる課題に鑑み、本発明は、操作者の負担を軽減しながら効率的に貨幣収容部に対する精査を行うことが可能な貨幣処理装置、貨幣処理システムおよび貨幣処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は貨幣処理装置に関する。この態様に係る貨幣処理装置は、複数の貨幣収容部と、前記貨幣収容部に対する処理を制御する制御部と、前記貨幣処理装置における処理を時系列で示す処理履歴を記憶する記憶部と、表示部と、を備える。ここで、前記制御部は、精査処理において、前記複数の貨幣収容部のそれぞれに対し、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じたか否かに基づいて、前記貨幣収容部に収容された少なくとも1つの貨幣を計数して在高を確定する計数対象の前記貨幣収容部を設定し、計数対象以外の前記貨幣収容部については、貨幣の計数を行うことなく在高を確定させる。さらに、前記制御部は、計数対象の前記貨幣収容部と計数対象以外の前記貨幣収容部とが区別可能な指標情報を、前記処理履歴中の前記精査処理ごとに前記記憶部にさらに記憶させ、前記精査処理の後に前記処理履歴を前記表示部に表示させた際に、前記処理履歴中の前記精査処理の項目の指定を受け付け、指定された前記精査処理に関連する前記指標情報を前記記憶部から抽出して、前記表示部に表示させる。
【0008】
本態様に係る貨幣処理装置によれば、制御部によって自動で貨幣収容部に対する精査処理が行われるため、操作者が貨幣を計数して精査を行う場合に比べ、操作者の負担を顕著に軽減できる。また、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じたか否かに基づいて、精査処理において貨幣を計数すべき貨幣収容部が設定されるため、精査を行うべき貨幣収容部に対して適切に、貨幣の精査が行われ得る。さらに、その他の貨幣収容部に対しては、貨幣の計数が行われないため、精査処理に要する時間を短縮できる。したがって、本態様に係る貨幣処理装置によれば、操作者の負担を軽減しながら効率的に貨幣収容部に対する精査を行うことができる。また、操作者は、処理履歴の確認中に、適宜、当該処理履歴に含まれている精査の項目を指定することにより、簡便に、当該精査においてどの貨幣収容部に対して計数が行われたかを確認することができる。これにより、操作者は、処理履歴においてエラーが生じたとされる貨幣収容部等、計数が行われるべき貨幣収容部に対して、精査時に計数が行われたか否かを確認することができる。
【0009】
本態様に係る貨幣処理装置において、前記制御部は、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じた前記貨幣収容部を貨幣の計数対象に設定するよう構成され得る。
【0010】
このように、貨幣の計数対象を、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じた貨幣収容部に絞ることにより、精査処理をより効率的に進めることができる。
【0011】
本態様に係る貨幣処理装置において、前記制御部は、前記精査処理において、計数対象の前記貨幣収容部に収容された貨幣を計数した結果を確定した在高として設定するよう構成され得る。また、前記制御部は、前記精査処理において、計数対象以外の前記貨幣収容部については、前記精査処理を行う前の在高を確定した在高として設定するよう構成され得る。
【0012】
また、本態様に係る貨幣処理装置において、前記制御部は、計数対象に設定される前記貨幣収容部の指定を受け付け、指定された前記貨幣収容部と、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じた前記貨幣収容部とを、計数対象の前記貨幣収容部に設定するよう構成され得る。
【0013】
この構成によれば、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じた貨幣収容部の他に、操作者が、計数を行うべき貨幣収容部を指定できるため、精査処理の効率化を図りつつ、装置の利便性を高めることができる。たとえば、操作者は、当該貨幣処理装置による処理以外の事象により在高が不確定となり得る貨幣収容部が想定され得る場合に、その貨幣収容部を精査の対象に含めることができ、より適切に、各貨幣収容部における在高の適否を確認することができる。
【0014】
また、本態様に係る貨幣処理装置において、前記制御部は、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じた前記貨幣収容部とともに当該貨幣収容部に収容された貨幣の金種と同一の金種の貨幣を収容する前記貨幣収容部を計数対象の前記貨幣収容部に設定するよう構成され得る。
【0015】
この構成によれば、精査処理において、在高が不確定となり得る貨幣収容部とともに、当該貨幣収容部と同一金種の貨幣収容部について貨幣の計数が行われるため、各金種の在高をより適切に精査することができる。
【0023】
この構成によれば、操作者は、精査処理の後に、貨幣の計数を行った貨幣収容部を把握でき、各貨幣収容部に対する精査の内容を確認することができる。また、操作者は、エラーが生じた貨幣収容部等、計数対象とすべき貨幣収容部に対して計数がなされたか否かを確認することができる。
【0024】
本態様に係る貨幣処理装置において、前記制御部は、前記指標情報の表示において、前記貨幣処理装置における前記複数の貨幣収容部の配置を示す画像を前記表示部に表示させ、さらに、前記精査処理において貨幣の計数が行われた前記貨幣収容部に対応する表示要素と、前記精査処理において貨幣の計数が行われなかった前記貨幣収容部に対応する表示要素とを、前記画像上で区別可能に表示させるよう構成され得る。
【0028】
本態様に係る貨幣処理装置において、計数対象の前記貨幣収容部は、第1の計数対象の前記貨幣収容部と第2の計数対象の前記貨幣収容部を含み得る。ここで、前記第1の計数対象の前記貨幣収容部は、前記貨幣収容部に収容されたすべての貨幣が計数されて在高が確定される前記貨幣収容部であり、前記第2の計数対象の前記貨幣収容部は、前記貨幣収容部に収容された貨幣の貨幣番号と収納順序を関連付けたリストと、前記貨幣収容部に収容された一部の貨幣の貨幣番号とが照合されることにより在高が確定される前記貨幣収容部である。
【0029】
この構成によれば、第2の計数対象の貨幣収容部については、リストと貨幣番号とが照合されることにより在高が確定されるため、第2の計数対象の貨幣収容部に対する在高の確定処理をより迅速に行うことができる。
【0030】
本発明の第2の態様は、貨幣処理装置と、前記貨幣処理装置に通信可能に接続された操作端末とを有する貨幣処理システムに関する。この態様に係る貨幣処理システムは、複数の貨幣収容部と、前記貨幣収容部に対する処理を制御する制御部と、前記貨幣処理装置における処理を時系列で示す処理履歴を記憶する記憶部と、表示部と、を備える。ここで、前記制御部は、精査処理において、前記複数の貨幣収容部のそれぞれに対し、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じたか否かに基づいて、前記貨幣収容部に収容された少なくとも1つの貨幣を計数して在高を確定する計数対象の前記貨幣収容部を設定し、計数対象以外の前記貨幣収容部については、貨幣の計数を行うことなく在高を確定させる。さらに、前記制御部は、計数対象の前記貨幣収容部と計数対象以外の前記貨幣収容部とが区別可能な指標情報を、前記処理履歴中の前記精査処理ごとに前記記憶部にさらに記憶させ、前記精査処理の後に前記処理履歴を前記表示部に表示させた際に、前記処理履歴中の前記精査処理の項目の指定を受け付け、指定された前記精査処理に関連する前記指標情報を前記記憶部から抽出して、前記表示部に表示させる。
【0031】
本態様に係る貨幣処理システムによれば、上記第1の態様と同様の効果が奏され得る。
【0032】
本発明の第3の態様は、複数の貨幣収容部を備えた貨幣処理装置を用いる貨幣処理方法に関する。この態様に係る貨幣処理方法は、前記貨幣処理装置における処理を時系列で示す処理履歴を記憶部に記憶させ、精査処理において、前記複数の貨幣収容部のそれぞれに対し、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じたか否かに基づいて、前記貨幣収容部に収容された少なくとも1つの貨幣を計数して在高を確定する計数対象の前記貨幣収容部を設定し、計数対象以外の前記貨幣収容部については、貨幣の計数を行うことなく在高を確定させる。さらに、計数対象の前記貨幣収容部と計数対象以外の前記貨幣収容部とが区別可能な指標情報を、前記処理履歴中の前記精査処理ごとに前記記憶部にさらに記憶させ、前記精査処理の後に前記処理履歴を表示させた際に、前記処理履歴中の前記精査処理の項目の指定を受け付け、指定された前記精査処理に関連する前記指標情報を前記記憶部から抽出して表示させる。
【0033】
本態様に係る貨幣処理方法によれば、上記第1の態様と同様の効果が奏され得る。
【発明の効果】
【0034】
以上のとおり、本発明によれば、操作者の負担を軽減しながら効率的に貨幣収容部に対する精査を行うことが可能な貨幣処理装置、貨幣処理システムおよび貨幣処理方法を提供することができる。
【0035】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、実施形態に係る貨幣入出金機の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る紙幣入出金ユニットの構成を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る硬貨入出金ユニットの構成を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る貨幣入出金機の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る貨幣入出金機の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6(a)~(d)は、実施形態に係る、紙幣入出金ユニットにおける通常精査処理時の紙幣の流れを模式的に示す図である。
【
図7】
図7(a)~(f)は、実施形態に係る、硬貨入出金ユニットにおける通常精査処理時の硬貨の流れを模式的に示す図である。
【
図8】
図8(a)は、実施形態に係る、精査処理を示すフローチャートである。
図8(b)は、実施形態に係る通常精査処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態に係る、クイック精査処理を示すフローチャートである。
【
図10】
図10(a)、(b)は、実施形態に係る、クイック精査処理において計数対象の貨幣処理部を表示する画面を示す図である。
【
図11】
図11(a)、(b)は、実施形態に係る、クイック精査処理において計数対象の貨幣処理部を表示する画面を示す図である。
【
図12】
図12(a)、(b)は、それぞれ、実施形態に係る、クイック精査処理が完了した際に表示される画面を示す図である。
【
図13】
図13(a)は、実施形態に係る電子ジャーナルの表示画面を示す図である。
図13(b)は、
図13(a)の画面においてクイック精査処理の項目が選択された場合に表示される画面を示す図である。
【
図14】
図14(a)、(b)は、変更例1に係る、クイック精査処理において貨幣を計数すべき貨幣収容部の指定を受け付けるための画面を示す図である。
【
図15】
図15(a)、(b)は、変更例1に係る、クイック精査処理において貨幣を計数すべき貨幣収容部の指定を受け付けるための画面の他の構成例を示す図である。
【
図16】
図16(a)は、変更例1に係る、クイック精査処理のフローチャートの一部を示す図である。
図16(b)は、変更例2に係る、クイック精査処理のフローチャートの一部を示す図である。
【
図17】
図17は、変更例3に係る、クイック精査処理を示すフローチャートである。
【
図18】
図18(a)は、変更例4に係る、クイック精査処理が完了した際に表示される画面を示す図である。
図18(b)は、変更例5に係る、クイック精査処理のフローチャートの一部を示す図である。
【
図19】
図19(a)、(b)は、変更例6に係る、クイック精査処理において精査対象の貨幣処理部を表示する画面を示す図である。
【
図20】
図20(a)、(b)は、他の変更例に係る精査処理を示すフローチャートである。
図20(c)は、
図20(b)の処理において用いられる紙幣番号リストの構成を示す図である。
【0037】
ただし、図面はもっぱら説明のためのものであって、この発明の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態では、貨幣を計数する機能と、貨幣を入金および出金する機能とを備えた貨幣入出金機が、貨幣処理装置の一例として示されている。貨幣入出金機と上位端末とによって、貨幣処理システムが構成される。なお、各図には、適宜、貨幣入出金機の上下、左右および前後を示す矢印が付されている。
【0039】
【0040】
貨幣入出金機1は、銀行等の金融機関における窓口カウンタの内側で窓口業務を行う2人のテラー(窓口係)の間に設置される。貨幣入出金機1は、各テラーによって操作される上位端末2に通信ケーブル3を介して接続されている。
【0041】
貨幣入出金機1は、外郭を構成する外装体10内に、紙幣入出金ユニット11と硬貨入出金ユニット12とを備える。紙幣入出金ユニット11は、外装体10内の下側に設けられ、紙幣の入金処理、出金処理等を行う。硬貨入出金ユニット12は、外装体10内の上側に設けられ、硬貨の入金処理、出金処理等を行う。
【0042】
図1に示すように、外装体10は、左右方向の横幅よりも前後方向の奥行が長く、上下方向の高さが左右方向の横幅よりも高いほぼ直方体形状を有する。外装体10は、本体10aと、本体10aの前上部に設けられた外装カバー10bと、本体10aの前面に設けられた扉10cとを備える。たとえば、外装カバー10bは樹脂材料で形成され、本体10aおよび扉10cは金属材料で形成される。
【0043】
外装カバー10bは、上方に回動可能に本体10aに支持されている。外装カバー10bが上方に回動されることにより、硬貨入出金ユニット12を引き出して、硬貨入出金ユニット12に設置された硬貨スタッカ202(
図3参照)等にアクセスすることが可能となる。
【0044】
外装カバー10bには、上面に硬貨入金口13が形成され、前面に紙幣出金口14が形成され、上面から前面にかけて湾曲する湾曲面に紙幣入金口15が形成されている。これら硬貨入金口13、紙幣出金口14および紙幣入金口15は、それぞれ、シャッター13a、14a、15aにより開閉される。
【0045】
また、外装カバー10bの下部の左右方向の両端には、それぞれ、硬貨出金ボックス16a、16bが設置され、さらに、硬貨出金ボックス16a、16bの間にリジェクトボックス17が配置されている。硬貨出金ボックス16a、16bは、前方へ引き出して取り外すことができる。2つの硬貨出金ボックス16a、16bは、互いに同じ形状(左右対称)で、且つ、同等の容量を有している。リジェクトボックス17は、前方へ引き出すことができる。リジェクトボックス17は、リジェクト紙幣を収容するためのものである。
【0046】
外装カバー10bの後部には、操作表示部18が設けられている。操作表示部18は、前方斜め上方を向くように外装カバー10bに固定されている。操作表示部18は、ディスプレイとタッチセンサとからなるタッチパネルで構成される。操作表示部18は、ディスプレイに各種の画像(画面)を表示するとともに、ディスプレイに対するユーザのタッチ操作をタッチセンサにより検出する。
【0047】
外装カバー10bの上面における硬貨入金口13の両側の領域には、4つの占有キー19が設けられている。4つの占有キー19は、それぞれ、左側および右側のテラーが貨幣入出金機1の紙幣に係る取引処理の占有を指示するために操作される占有キー19a、19bと、それぞれ、左側および右側のテラーが貨幣入出金機1の硬貨に係る取引処理の占有を指示するために操作される占有キー19c、19dとからなっている。
【0048】
図2は、紙幣入出金ユニット11の構成を模式的に示す図である。
【0049】
紙幣入出金ユニット11は、入金部110と、出金部120と、リジェクト部130と、搬送部140と、識別部150と、紙幣揃え部160と、2つの紙幣カセット170と、紙幣カセット170用の2つの一時保留部171と、3つの紙幣スタッカ180と、紙幣スタッカ180用の3つの一時保留部181と、を備える。
【0050】
入金部110、出金部120およびリジェクト部130は、外装体10内の上部の正面近傍に設けられる。入金部110は紙幣入金口15に繋がり、紙幣入金口15を通じて入金部110にバラ状態の紙幣が投入される。出金部120は紙幣出金口14に繋がり、紙幣出金口14を通じて出金部120からバラ状態の紙幣が取り出される。リジェクト部130は、上述のリジェクトボックス17を備え、リジェクトボックス17にリジェクト紙幣を収容する。
【0051】
入金部110は、入金繰出機構111を備える。入金繰出機構111は、入金部110に投入された紙幣を一枚ずつ搬送部140へ繰り出す。出金部120は、主に、紙幣スタッカ180から繰り出された紙幣を受け取る。リジェクト部130は、主に、識別部150により属性(真偽、金種等)が識別できず、正常な紙幣と見做されない紙幣を受け取る。
【0052】
搬送部140は、ベルト機構、ローラー機構等により構成され、メイン搬送路141と、入金搬送路142と、出金搬送路143と、リジェクト搬送路144と、2つのカセット搬送路145と、3つのスタッカ搬送路146とを含む。メイン搬送路141は、外装体10内を前後方向に延びるようにループ状に形成され、
図2において、時計回り方向と反時計回り方向に紙幣を搬送することが可能である。
【0053】
入金搬送路142は、入金部110とメイン搬送路141との間に設けられる。出金搬送路143は、出金部120とメイン搬送路141との間に設けられる。リジェクト搬送路144は、リジェクト部130とメイン搬送路141との間に設けられる。カセット搬送路145は、紙幣カセット170および一時保留部171とメイン搬送路141との間に設けられる。スタッカ搬送路146は、紙幣スタッカ180および一時保留部181とメイン搬送路141との間に設けられる。
【0054】
識別部150は、メイン搬送路141の上側のループの後部に設けられる。識別部150は、搬送部140を流れる紙幣の属性を識別し、識別結果を後述する制御部に出力する。識別される属性には、紙幣の真偽、金種、紙幣番号、紙幣の表裏の向きなどが含まれる。また、識別部150は紙幣の形状や厚みを識別し、正常な形状の紙幣が重なることなく搬送されていることを識別する。識別部150は、これらの識別結果を後述する制御部に出力する。
【0055】
制御部は、識別結果を用いて、少なくとも1枚の紙幣を計数し、計数結果を作成する。計数結果は、少なくとも1枚の紙幣の合計枚数、合計金額、または紙幣番号の少なくとも1つを含む。さらに、計数結果は、紙幣の属性と枚数を関連付けた情報であってもよい。また、計数結果は、紙幣の属性と紙幣を識別した順序を関連付けた情報であってもよい。たとえば、計数結果は、紙幣番号を識別した順序と関連付けた情報を含んでもよい。また、識別部150が紙幣を計数し、計数結果を作成し、その計数結果を制御部に出力するようにしてもよい。
【0056】
紙幣揃え部160は、搬送部140を流れる紙幣の表裏の向きを揃えるために設けられる。紙幣揃え部160は、識別部150の前方、すなわち、識別部150よりも出金時の紙幣の流れの下流側に配置される。紙幣揃え部160は、メイン搬送路141の一部を構成する反転部161および非反転部162を含む。
【0057】
反転部161は、スイッチバック方式により紙幣を表裏反転させる反転機構を含む。反転部161を通過した紙幣は、紙幣の短手方向、すなわち天地方向に沿って表裏反転し、表裏および天地の向きが入れ替わる。非反転部162は、反転部161とほぼ同じ経路長を有し、紙幣を現状の向きのまま通過させる。たとえば、識別部150での識別の結果、表向きと識別された紙幣が非反転部162を通過し、裏向きと識別された紙幣が反転部161を通過することにより、紙幣の向きが表向きに揃えられる。
【0058】
2つの紙幣カセット170と3つの紙幣スタッカ180は、外装体10内において、搬送部140の下方に、前後に並ぶように設けられる。2つの紙幣カセット170が3つの紙幣スタッカ180の前方に設けられる。紙幣カセット170および紙幣スタッカ180は、前方に引き出し可能な支持ユニット190に支持され、扉10cを開放することにより、外装体10内に対して出し入れすることができる。
【0059】
紙幣カセット170は、主に、紙幣スタッカ180から回収された紙幣や紙幣スタッカ180へ補充される紙幣を収納するために利用される。また、紙幣カセット170は、紙幣スタッカ180内の紙幣の自動精査を行う自動精査処理の際、紙幣を一時的に収納するために利用される。一方の紙幣カセット170を、2千円券、旧券、損券等の収納に利用することもできる。紙幣カセット170内には、紙幣が上下に積まれるように収納される。収納された紙幣を昇降させるために、紙幣カセット170内に昇降ステージ170aが設けられる。
【0060】
これら紙幣カセット170の向かって右側には、さらに、硬貨回収用の硬貨カセット213が配置される。この硬貨カセット213も、上述の支持ユニット190に支持され、前方に引き出し可能である。硬貨回収の際に、硬貨入出金ユニット12から硬貨カセット213に硬貨が投入される。この他、硬貨カセット213は、損貨や硬貨スタッカ202をオーバーフローした硬貨の収容にも用いられる。また、設定によっては、リジェクト硬貨の収容先として硬貨カセット213が用いられ得る。
【0061】
なお、支持ユニット190を前方に引き出した状態において、操作者(テラー以外の操作者を含む)は、紙幣カセット170および紙幣スタッカ180内の紙幣に触れることができるが、硬貨カセット213内の硬貨には触れることはできない。操作者は、支持ユニット190を前方に引き出した後、さらに硬貨カセット213を支持ユニット190から取り外すことによって、硬貨カセット213内の硬貨に触れることができる。
【0062】
紙幣カセット170用の一時保留部171は、対応する紙幣カセット170の上方に配置される。一時保留部171は、紙幣カセット170に収納される紙幣を一時的に保留(収納)する。一時保留部171の出入口側には繰出機構(図示せず)が設けられ、紙幣カセット170内の紙幣を、一時保留部171を通じてカセット搬送路145に繰り出すことができる。
【0063】
紙幣スタッカ180は、入金された紙幣を金種別に収納するために利用される。たとえば、3つの紙幣スタッカ180のそれぞれに対し、一万円、千円および5千円の金種が割り当てられ得る。紙幣スタッカ180内には、紙幣が上下に積まれるように収納される。収納された紙幣を昇降するため、紙幣スタッカ180内に昇降ステージ180aが設けられる。
【0064】
紙幣スタッカ180用の一時保留部181は、対応する紙幣スタッカ180の上方に配置される。一時保留部181は、紙幣スタッカ180に収納される紙幣を一時的に保留(収納)する。一時保留部181の出入口側には繰出機構(図示せず)が設けられ、紙幣スタッカ180内の紙幣を、一時保留部181を通じてスタッカ搬送路146に繰り出すことができる。
【0065】
紙幣の入金処理の際には、紙幣入金口15を通じて入金部110に投入された紙幣が、搬送部140により搬送されるとともに識別部150で識別され、正常と識別された紙幣が、金種毎に、対応する一時保留部181に一時的に保留される。正常でないと識別された紙幣は、出金部120に戻される。そして、確定操作がなされると一時保留部181内の紙幣が対応する紙幣スタッカ180内に収納される。
【0066】
また、紙幣の出金処理の際には、出金操作により指定された金額の紙幣が、紙幣スタッカ180内から繰り出されて搬送部140により搬送され、識別部150で識別され、出金すべき金額の紙幣であると識別された紙幣が、出金部120に払い出される。その途中で、紙幣揃え部160により表裏の向きが揃えられて出金部120に払い出される。出金部120の紙幣は、紙幣出金口14を通じて取り出される。なお、出金すべき金額の紙幣ではないと識別された紙幣は、リジェクト部130または紙幣カセット170に収納される。
【0067】
図3は、貨幣入出金機1に搭載された硬貨入出金ユニット12を上方から見た構成を模式的に示す図である。
【0068】
硬貨入出金ユニット12は、硬貨受け入れ部201と、6つの硬貨スタッカ202と、一括保留部203と、を備える。
【0069】
硬貨受け入れ部201は、硬貨入金口13の下方に配置され、硬貨入金口13に投入された硬貨を受け入れる。硬貨入金口13に投入された硬貨は、硬貨受け入れ部201に落下する。6つの硬貨スタッカ202は、それぞれ、金種ごとに硬貨を収納する。たとえば、6つの硬貨スタッカ202は、硬貨入出金ユニット12の前側から順番に、1円硬貨、5円硬貨、10円硬貨、50円硬貨、100円硬貨、500円硬貨を収納する。一括保留部203は、入出金処理や精査処理、硬貨スタッカ202に収納された硬貨を回収する処理等において、硬貨を一時的に収納するためのものである。
【0070】
さらに、硬貨入出金ユニット12は、硬貨受け入れ部201に対応づけられた硬貨繰出機構204と、6つの硬貨スタッカ202にそれぞれ対応づけられた硬貨繰出機構205と、一括保留部203に対応づけられた硬貨繰出機構206と、搬送部207と、識別部208と、を備えている。
【0071】
硬貨繰出機構204は、硬貨受け入れ部201に受け入れられた硬貨を、1枚ずつ搬送部207に繰り出す。6つの硬貨繰出機構205は、それぞれ、対応する硬貨スタッカ202に収納されている硬貨を、1枚ずつ搬送部207に繰り出す。硬貨繰出機構206は、一括保留部203に収納されている硬貨を、1枚ずつ搬送部207に繰り出す。
【0072】
搬送部207は、時計回りの方向に循環移動を行う循環ベルト207aを備えている。この循環ベルト207aには、複数の突起部分(図示せず)が等間隔で設けられている。循環ベルト207aに設けられた各突起部分に硬貨が引っかかることにより、循環ベルト207aの循環移動に伴って、硬貨が1枚ずつ搬送される。こうして、上記各繰出機構により繰り出された硬貨が、循環ベルト207aの循環経路に沿って搬送される。
【0073】
識別部208は、硬貨の搬送経路上に設けられ、搬送部207によって1枚ずつ搬送される硬貨の金種および真偽等を識別する。識別部208における硬貨の識別情報は、後述する制御部31に送信される。また、識別部208は硬貨の形状や厚みを識別し、正常な形状の硬貨が重なることなく搬送されていることを識別する。識別部208は、これらの識別結果を後述する制御部31に出力する。制御部31は、識別結果を用いて、少なくとも1枚の硬貨を計数し、計数結果を作成する。計数結果は、少なくとも1枚の硬貨の合計枚数または合計金額の少なくとも1つを含む。さらに、計数結果は、硬貨の金種と枚数を関連付けた情報であってもよい。また、識別部208が硬貨を計数し、計数結果を作成し、その計数結果を制御部31に出力するようにしてもよい。
【0074】
さらに、硬貨入出金ユニット12は、一括保留部203に対応づけられた分岐機構209と、6つの硬貨スタッカ202にそれぞれ対応づけられた分岐機構210と、硬貨入金口13に対応づけられた分岐機構211と、硬貨出金ボックス16aに対応付けられた分岐機構212と、を備えている。
【0075】
分岐機構209は、搬送部207によって搬送される硬貨を選択的に搬送部207から分岐させて一括保留部203に送る。6つの分岐機構210は、それぞれ、搬送部207によって搬送される硬貨を選択的に搬送部207から分岐させて、対応する硬貨スタッカ202に送る。分岐機構211は、搬送部207により搬送される硬貨を選択的に搬送部207から分岐させて、硬貨を硬貨入金口13(硬貨受け入れ部201)に移送する移送部(図示せず)に送る。分岐機構212は、搬送部207により搬送される硬貨を選択的に搬送部207から分岐させて、硬貨を硬貨出金ボックス16aと硬貨カセット213に振り分ける振分機構(図示せず)に送る。分岐機構212で分岐されなかった硬貨は、全て、搬送部207によって硬貨出金ボックス16bに送られる。
【0076】
貨幣入出金機1の左右両側にいるテラーは、貨幣入出金機1を使用して入金処理、出金処理の他、貨幣入出金機1に投入された紙幣および硬貨を計数する計数処理や、貨幣入出金機1に収容されている貨幣を計数して在高を確認する精査処理などの処理を行うことができる。
【0077】
ここで、精査処理について説明する。貨幣入出金機1が保有するすべての貨幣の在高である装置の在高が管理されている。装置の在高は、入金処理、出金処理、補充処理および回収処理に伴い更新される。また、それぞれの貨幣収容部が保有する貨幣の在高である貨幣収容部の在高も管理されている。貨幣収容部の在高は、入金処理、出金処理、補充処理および回収処理に伴い、貨幣収容部毎に更新される。在高は、取引ログの一部として記憶されてもよい。また、在高は、貨幣入出金機1の外部に設けた記憶装置に記憶されてもよい。
【0078】
正常な処理が行われている限り、貨幣入出金機1のすべての貨幣収容部の在高の合計は、装置の在高に等しい。しかし、後述の、在高が不確定となる事象が生じた場合は、貨幣収容部の在高が不確定となる。このような場合に精査処理が実行される。精査処理は、貨幣収容部に収容されているすべての貨幣を計数して在高を確定する処理であってもよい。また、精査処理は、貨幣収容部に収容されている一部の貨幣を計数して在高を確定する処理であってもよい。また、精査処理は、貨幣収容部に収容されている貨幣を計数せずに、精査処理を行う前の貨幣収容部在高を確定した在高とする処理であってもよい。精査処理を行うことにより、すべての貨幣収容部の在高が確定される。
【0079】
また、精査処理は、精査処理を行う前の在高と精査処理の計数結果とを比較した結果を出力する処理を含んでもよい。特に、精査処理は、精査処理を行う前の装置の在高と、精査処理により確定された貨幣収容部の在高の合計とを比較した結果を出力する処理を含んでもよい。精査処理を行う前の装置の在高と、精査処理により確定された貨幣収容部の在高の合計が異なる場合に、両者を比較した結果を出力する処理が有用となる。このような現象は、たとえば、貨幣収容部から人手により貨幣が取り出された場合や、精査処理においてリジェクト貨幣が生じた場合に発生する。出力された結果を参照することにより、このような現象に対処することができる。具体的には、人手により取り出された貨幣を貨幣収容部に戻したり、リジェクト貨幣を再計数して貨幣収容部に戻してもよい。また、精査処理により確定された貨幣収容部の在高の合計を、装置の在高として確定してもよい。
【0080】
本実施形態では、精査処理として、クイック精査処理と通常精査処理を行うことができる。
【0081】
ここで、クイック精査処理は、貨幣収容部(紙幣スタッカ180、紙幣カセット170、硬貨スタッカ202および硬貨カセット213)に収容されている貨幣の在高が不確定となり得る事象に基づいて、貨幣収容部に対する貨幣の計数を行うか否かを決定する処理を含む。特に、クイック精査処理は、貨幣収容部に収容されている貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じていない場合には、貨幣収容部に対する貨幣の計数を行うことなく貨幣収容部の在高を確定させる処理を含んでもよい。
【0082】
たとえば、貨幣収容部のうち、収容されている貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じている貨幣収容部は、精査処理において貨幣の計数を行う計数対象の貨幣収容部とされる。貨幣収容部のうち、収容されている貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じていない貨幣収容部は、精査処理において貨幣の計数を行わない計数対象以外の貨幣収容部とされる。計数対象の貨幣収容部については、精査処理を行う前の在高が、計数した結果に書き換えられて、確定した在高とされる。計数対象以外の貨幣収容部については、精査処理を行う直前の在高がそのまま確定した在高とされる。それぞれの貨幣収容部の確定した在高は、貨幣入出金機1全体の在高に反映される。
【0083】
また、通常精査処理とは、貨幣の在高が不確定となり得る事象の有無に拘わらず貨幣収容部(紙幣スタッカ180、紙幣カセット170、硬貨スタッカ202および硬貨カセット213)に対する貨幣の計数を行う精査処理のことである。クイック精査処理と通常精査処理の流れについては、
図8(a)~
図9を参照して追って詳述する。
【0084】
図4および
図5は、貨幣入出金機1の構成を示すブロック図である。
図4には、紙幣入出金ユニット11に関する主要な構成が示されており、
図5には、硬貨入出金ユニット12に関する主要な構成が示されている。
【0085】
図4および
図5に示すように、貨幣入出金機1は、上述の紙幣入出金ユニット11、硬貨入出金ユニット12、操作表示部18および占有キー19の他に、制御部31、記憶部32、通信部33および音声出力部34を備えている。
【0086】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路を備え、記憶部32に記憶された動作プログラムに従って各部を制御する。制御部31は、少なくとも、貨幣収容部に対する処理を制御する。具体的には、制御部31は、貨幣収容部の精査処理を行う。また、制御部31は、入金処理や出金処理を実行し、それに伴い、入金繰出機構111、搬送部140、識別部150、一時保留部171および貨幣収容部を制御してもよい。また、制御部31は、記憶部32、通信部33、音声出力部34、操作表示部18、占有キー19を含む、貨幣入出金機1のデバイスを制御してもよい。
【0087】
記憶部32は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)やハードディスク等の記憶媒体を備え、制御部31の動作プログラムを記憶し、また、制御部31の制御処理の際にワーク領域として利用される。通信部33は、上位端末2との間で通信を行う。音声出力部34は、スピーカを備え、制御部31からの制御に従って、所定の音声を出力する。
【0088】
さて、上記構成を備えた貨幣入出金機1では、入金や出金等の取引処理が行われることに応じて取引ログが記憶部32に記憶され、貨幣入出金機1内の保有在高(装置の在高)が管理される。また、取引ログは、それぞれの貨幣収容部の在高を含んでもよい。入金処理により収容された貨幣の枚数や出金処理により払い出された貨幣の枚数に基づいて、装置の在高および貨幣収容部の在高が更新される。在高は、取引ログと区別して管理されてもよい。
【0089】
金融機関では、記憶部32に記憶されている在高情報と、実際に貨幣入出金機1に保有されている貨幣の在高とが一致することを確認するための精査処理が、業務終了時等の所定のタイミングで行われる。上記のように、本実施形態では、この精査処理として、クイック精査処理と通常精査処理の2種類の精査処理が選択的に行われる。
【0090】
図6(a)~(d)は、紙幣入出金ユニット11における通常精査処理時の紙幣の流れを模式的に示す図である。
図6(a)~(d)において、点線は正常な紙幣の流れを示し、破線はリジェクト紙幣の流れを示している。
【0091】
まず、
図6(a)に示すように、3つの紙幣スタッカ180のうち1つから紙幣が繰り出され、繰り出された紙幣が紙幣カセット170に送られる。
図6(a)では、左端の紙幣スタッカ180の紙幣が、左側の紙幣カセット170に送られる。こうして、1つの紙幣スタッカ180に収容されている全ての紙幣が所定の紙幣カセット170に送られる。なお、紙幣スタッカ180から紙幣カセット170に紙幣が送られる過程では、識別部150による紙幣の識別および計数は行われない。
【0092】
次に、
図6(b)に示すように、紙幣カセット170から1枚ずつ紙幣が繰り出されて識別部150に送られる。ここでは、識別部150による紙幣の識別および計数が行われる。紙幣は、識別部150による識別結果に応じて、対応する紙幣スタッカ180またはリジェクト部130に送られる。すなわち、正常な紙幣は、対応する紙幣スタッカ180に送られ、識別不能なリジェクト紙幣は、リジェクト部130に送られる。こうして、1つの紙幣スタッカ180に対する紙幣の計数が完了する。なお、紙幣スタッカ180から紙幣カセット170に紙幣が送られる過程でも、識別部150による紙幣の識別および計数を行い、識別不能なリジェクト紙幣をリジェクト部130に送るようにしてもよい。
【0093】
残り2つの紙幣スタッカ180に対しても、
図6(a)、(b)と同様の処理が行われる。これにより、残り2つの紙幣スタッカ180に対する紙幣の計数が実行される。こうして、全ての紙幣スタッカ180に対する紙幣の計数が完了すると、次に、上記処理によりリジェクトボックス17に送られたリジェクト紙幣を、対応する紙幣スタッカ180に戻す操作が行われる。操作者は、リジェクトボックス17からリジェクト紙幣を抜き取って、入金部110に投入する。
【0094】
これにより、
図6(c)に示すように、入金部110から1枚ずつ紙幣が繰り出されて識別部150に送られる。その後、紙幣は、識別部150による識別結果に応じて、対応する紙幣スタッカ180の一時保留部181またはリジェクト部130に送られる。再度、リジェクト部130にリジェクト紙幣が送られた場合、操作者は、適宜、リジェクト紙幣を対応する金種の正常な紙幣に取り替えて、入金部110に投入する。
【0095】
こうして、全ての紙幣が、対応する紙幣スタッカ180の一時保留部181に収容されると、操作者は、操作表示部18に対して、確定操作を行う。これにより、
図6(d)に示すように、一時保留部181に収容された紙幣が、対応する紙幣スタッカ180に収容される。これにより、紙幣入出金ユニット11に対する通常精査処理が完了する。
【0096】
なお、右側の紙幣カセット170に旧券や損券等の紙幣が収容されている場合は、
図6(c)、(d)の処理の前に、
図6(a)、(b)と同様の処理が右側の紙幣カセット170に対して実行される。
【0097】
図7(a)~(f)は、硬貨入出金ユニット12における通常精査処理時の硬貨の流れを模式的に示す図である。
図7(a)~(f)において、点線は正常な硬貨の流れを示し、破線はリジェクト硬貨の流れを示している。ここでは、右側の硬貨出金ボックス16aにリジェクト硬貨が搬出される。
【0098】
まず、
図7(a)に示すように、6つの硬貨スタッカ202のうち1つから硬貨が繰り出され、繰り出された硬貨が一括保留部203に送られる。
図7(a)では、左端の硬貨スタッカ202の硬貨が、一括保留部203に送られる。こうして、1つの硬貨スタッカ202に収容されている全ての硬貨が一括保留部203に送られる。なお、硬貨スタッカ202から一括保留部203に硬貨が送られる過程では、識別部208による硬貨の識別および計数は行われない。
【0099】
次に、
図7(b)に示すように、一括保留部203から1枚ずつ硬貨が繰り出されて識別部208に送られる。ここでは、識別部208による硬貨の識別および計数が行われる。硬貨は、識別部208による識別結果に応じて、対応する硬貨スタッカ202または硬貨出金ボックス16aに送られる。すなわち、正常な硬貨は、対応する硬貨スタッカ202に送られ、識別不能なリジェクト硬貨は、硬貨出金ボックス16aに送られる。こうして、1つの硬貨スタッカ202に対する硬貨の計数が完了する。
【0100】
残り5つの硬貨スタッカ202に対しても、
図7(a)、(b)と同様の処理が行われる。これにより、残り5つの硬貨スタッカ202に対する硬貨の計数が実行される。こうして、全ての硬貨スタッカ202に対する硬貨の計数が完了すると、次に、硬貨カセット213に対する硬貨の計数が行われる。ここでは、硬貨カセット213から硬貨が抜き取られて、抜き取られた硬貨が、硬貨入金口13を介して硬貨受け入れ部201に投入される。
【0101】
これにより、
図7(c)に示すように、硬貨受け入れ部201から硬貨が繰り出され、繰り出された硬貨が一括保留部203に送られる。その後、
図7(d)に示すように、一括保留部203から1枚ずつ硬貨が繰り出されて識別部208に送られる。これにより、識別部208による硬貨の識別および計数が行われる。硬貨は、識別部208による識別結果に応じて、硬貨カセット213または硬貨出金ボックス16aに送られる。すなわち、正常な硬貨は、硬貨カセット213に送られ、識別不能なリジェクト硬貨は、硬貨出金ボックス16aに送られる。こうして、硬貨カセット213に対する硬貨の計数が完了する。
【0102】
次いで、上記処理により硬貨出金ボックス16aに送られたリジェクト硬貨を、対応する硬貨スタッカ202または硬貨カセット213に戻す操作が行われる。ここでは、硬貨出金ボックス16aからリジェクト硬貨が抜き取られて、硬貨受け入れ部201に投入される。これにより、
図7(e)に示すように、投入された全ての硬貨が一括保留部203に送られる。
【0103】
その後、
図7(f)に示すように、一括保留部203から1枚ずつ硬貨が繰り出されて識別部208に送られる。このとき、識別部208による硬貨の識別および計数が行われる。硬貨は、識別部208による識別結果に応じて、対応する硬貨スタッカ202または硬貨カセット213に送られる。リジェクト硬貨があれば、硬貨出金ボックス16aに送られて、操作者により同様の操作が繰り返される。こうして、硬貨入出金ユニット12に対する通常精査処理が完了する。
【0104】
以上のように、通常精査処理では、紙幣入出金ユニット11の全ての貨幣収容部(紙幣スタッカ180、紙幣カセット170)に対して紙幣の計数が行われ、また、硬貨入出金ユニット12の全ての貨幣収容部(硬貨スタッカ202、硬貨カセット213)に対して硬貨の計数が行われる。すなわち、通常精査処理は、より精緻に貨幣の精査を行う場合の精査処理である。
【0105】
これに対し、クイック精査処理では、貨幣収容部のうち、貨幣の在高が不確定となり得る所定の事象が生じていない貨幣収容部に対しては貨幣の計数が行われることなく在高がそのまま確定され、貨幣の在高が不確定となり得る所定の事象が生じている貨幣収容部に対してのみ貨幣の計数が行われる。すなわち、クイック精査処理は、より簡易かつ効率的に貨幣の精査を行う場合の精査処理である。クイック精査処理では、
図6(a)~(d)および
図7(a)~(f)の処理が、貨幣の在高が不確定となり得る所定の事象が生じている貨幣収容部に対してのみ実行される。
【0106】
ここで、「在高が不確定」とは、各貨幣収容部に収容されている実際の在高が、取引ログにより管理されている在高と一致すると確定できない場合のことをいう。したがって、貨幣の在高が不確定となり得る所定の事象としては、たとえば、貨幣収容部から貨幣が不適切に抜き取られた可能性がある事象や、取引ログの在高情報が適正に更新されなかった可能性がある事象等が挙げられ得る。本実施形態では、貨幣の在高が不確定となり得る所定の事象として、たとえば、以下の事象が挙げられ得る。ただし、貨幣の在高が不確定となり得る事象は、必ずしも以下に限られるものではない。
【0107】
<紙幣スタッカ180の在高>
(1)紙幣入出金ユニット11が異常状態になったこと。
(2)扉10cが開けられ支持ユニット190が引き出されたこと。
(3)出金時にリジェクト紙幣が発生したこと。
(4)リジェクトボックス17が抜き取られたこと。
(5)電源オフ時に扉10cが開けられたこと。
【0108】
<紙幣カセット170の在高>
(6)紙幣入出金ユニット11が異常状態になったこと。
(7)扉10cが開けられ支持ユニット190が引き出されたこと。
(8)紙幣カセット170が抜き取られたこと。
(9)リジェクトボックス17が抜き取られたこと。
【0109】
<硬貨スタッカ202の在高>
(10)硬貨入出金ユニット12が異常状態になったこと。
(11)外装カバー10bが開けられ硬貨入出金ユニット12が引出されたこと。
(12)電源オフ時に外装カバー10bが開けられたこと。
【0110】
<硬貨カセット213の在高>
(13)硬貨入出金ユニット12が異常状態になったこと。
(14)硬貨カセット213が抜き取られたこと。
(15)電源オフ時に外装カバー10bが開けられたこと。
【0111】
なお、上記において「異常状態」とは、紙幣または硬貨の繰出しが不良である状態や、紙幣スタッカ180および硬貨スタッカ202に対する紙幣および硬貨の集積に異常が生じた状態、紙幣入出金ユニット11および硬貨入出金ユニット12における通信が遮断された状態等が挙げられ得る。
【0112】
これらの事象は、
図4および
図5に示した記憶部32にログ情報として記憶され、クイック精査処理において参照される。制御部31は、クイック精査処理において、前回の精査処理の後に、貨幣入出金機1に上記事象が生じているか否かによって、該当する貨幣収容部の在高が確定されるか不確定であるかを判定し、判定結果に応じて当該貨幣収容部に対して計数を行うか否かを決定する。
【0113】
たとえば、クイック精査処理の実行時に、上記(1)~(5)のいずれの事象も生じていない場合、制御部31は、3つの紙幣スタッカ180の在高が何れも確定していると判定して、これら紙幣スタッカ180に対する紙幣の計数を行わない。具体的には、3つの紙幣スタッカ180のそれぞれに実際に収容されている紙幣の在高は、取引ログで管理されているそれぞれの在高と一致するものとして処理される。また、上記(6)~(9)のいずれの事象も生じていない場合、制御部31は、2つの紙幣カセット170の在高が何れも確定していると判定して、これら紙幣カセット170に対する紙幣の計数を行わない。具体的には、2つの紙幣カセット170のそれぞれに実際に収容されている紙幣の在高は、取引ログで管理されているそれぞれの在高と一致するものとして処理される。
【0114】
また、クイック精査処理の実行時に、上記(10)~(12)のいずれの事象も生じていない場合、制御部31は、6つの硬貨スタッカ202の在高が確定したと判定して、これら6つの硬貨スタッカ202に対する硬貨の計数を行わない。具体的には、6つの硬貨スタッカ202のそれぞれに実際に収容されている硬貨の在高は、取引ログで管理されているそれぞれの在高と一致するものとして処理される。さらに、クイック精査処理の実行時に、上記(13)~(15)のいずれの事象も生じていない場合、制御部31は、硬貨カセット213の在高が確定したと判定して、硬貨カセット213に対する硬貨の計数を行わない。具体的には、硬貨カセット213に実際に収容されている硬貨の在高は、取引ログで管理されている在高と一致するものとして処理される。
【0115】
なお、上記(1)~(5)の事象は、3つの紙幣スタッカ180の全体に対して在高が不確定であるか否かを判定するためものであるが、紙幣スタッカ180ごとに在高が不確定であるか否かを判定するための事象が設定されてもよい。たとえば、上記(2)の事象に代えて、「支持ユニット190が引出されて、何れかの紙幣スタッカ180の蓋が開けられたこと」を事象として含めておき、蓋が開けられた紙幣スタッカ180のみを在高が不確定であると判定し、その他の紙幣スタッカ180は在高が確定していると判定するようにしてもよい。同様に、上記(11)の事象についても、「硬貨入出金ユニット12が引出されて、何れかの硬貨スタッカ202の蓋が開けられたたこと」との事象に置き換えて、硬貨スタッカ202ごとに、在高不確定の有無を判定してもよい。
【0116】
本実施形態では、精査処理において、上述の通常精査処理とクイック精査処理の何れかが選択的に実行される。たとえば、通常精査処理とクイック精査処理の何れを実行するかが、操作者によって選択されてもよいし、予め通常精査処理とクイック精査処理の何れを実行するかを設定しておいてもよい。あるいは、日や曜日によって、通常精査処理とクイック精査処理が自動的に切り替えられてもよい。本実施形態では、操作者からの選択指示に応じて、クイック精査処理と通常精査処理の何れか一方が実行されることが想定されている。
【0117】
以下、貨幣入出金機1における精査処理について、
図8(a)~
図9を参照して説明する。
【0118】
図8(a)は、精査処理を示すフローチャートである。
【0119】
制御部31は、操作表示部18に表示された受付画面により、精査処理の指示を受け付けたか否かを判定する(S101)。ここで、操作者は、精査処理の指示とともに、通常精査処理とクイック精査処理の何れを実行するかの指示を入力し、さらに、紙幣入出金ユニット11と硬貨入出金ユニット12の何れについて精査処理を行うかの指示を入力する。
【0120】
精査処理の指示を受け付けると(S101:YES)、制御部31は、さらに、精査処理として通常精査処理とクイック精査処理の何れが選択されたかを判定する(S102)。クイック精査処理が選択された場合(S102:YES)、制御部31は、前回の精査処理の後に記憶されたログ情報を記憶部32から取得して(S103)、クイック精査処理を実行する(S104)。他方、通常精査処理が選択された場合(S102:NO)、制御部31は、通常精査処理を実行する(S105)。
【0121】
図8(b)は、通常精査処理(S105)を示すフローチャートである。
【0122】
制御部31は、まず、操作者により、紙幣入出金ユニット11と硬貨入出金ユニット12の何れが精査処理の対象として選択されたかを判定する(S201)。紙幣入出金ユニット11のみが精査処理の対象とされた場合、制御部31は、全ての紙幣スタッカ180および全ての紙幣カセット170を紙幣計数の対象に設定して(S203)、紙幣の計数を実行する(S204)。また、硬貨入出金ユニット12のみが精査処理の対象とされた場合、制御部31は、全ての硬貨スタッカ202および硬貨カセット213を硬貨計数の対象に設定して(S202)、硬貨の計数を実行する(S204)。紙幣入出金ユニット11と硬貨入出金ユニット12の両方が精査処理の対象とされた場合、制御部31は、紙幣スタッカ180、紙幣カセット170、硬貨スタッカ202および硬貨カセット213の全てを計数対象に設定して(S202、S203)、紙幣および硬貨の計数を実行する(S204)。
【0123】
図9は、クイック精査処理(S104)を示すフローチャートである。
【0124】
制御部31は、操作者により、紙幣入出金ユニット11と硬貨入出金ユニット12の何れが精査処理の対象として選択されたかを判定する(S301)。紙幣入出金ユニット11のみが選択された場合、制御部31は、ステップS308~S313の処理を行った後、ステップS314において、紙幣の計数処理を実行する。硬貨入出金ユニット12のみが選択された場合、制御部31は、ステップS302~S307の処理を行った後、ステップS314において、硬貨の計数処理を実行する。紙幣入出金ユニット11と硬貨入出金ユニット12の両方が選択された場合、制御部31は、ステップS302~S307の処理とステップS308~S313の処理の両方を行った後、ステップS314において、紙幣および硬貨の計数処理を実行する。
【0125】
ステップS302において、制御部31は、
図3に示した6つの硬貨スタッカ202の金額が確定しているか否かを判定する。具体的には、制御部31は、前回の精査処理の後に、上述の事象(10)~(12)の何れも生じていない場合に、硬貨スタッカ202の金額が不確定になっていないと判定する。この判定は、
図8(a)のステップS103で取得したログ情報に基づいて行われる。
【0126】
硬貨スタッカ202の金額が確定している場合(S302:YES)、制御部31は、全ての硬貨スタッカ202を計数の対象外に設定し(S303)、処理をステップS305に進める。他方、硬貨スタッカ202の金額が確定していない場合(S302:NO)、すなわち、前回の精査処理の後に、上述の事象(10)~(12)の何れかが生じ、在高が不確定になった場合、制御部31は、全ての硬貨スタッカ202を計数の対象に設定し(S304)、処理をステップS305に進める。
【0127】
ステップS305において、制御部31は、
図3に示した硬貨カセット213の金額が確定しているか否かを判定する。具体的には、制御部31は、前回の精査処理の後に、上述の事象(13)~(15)の何れも生じていない場合に、硬貨カセット213の金額が不確定になっていないと判定する。この判定は、
図8(a)のステップS103で取得したログ情報に基づいて行われる。
【0128】
硬貨カセット213の金額が確定している場合(S305:YES)、制御部31は、硬貨カセット213を計数の対象外に設定し(S306)、処理をステップS314に進める。他方、硬貨カセット213の金額が確定していない場合(S305:NO)、すなわち、前回の精査処理の後に、上述の事象(13)~(15)の何れかが生じ、在高が不確定になった場合、制御部31は、硬貨カセット213を計数の対象に設定し(S307)、処理をステップS314に進める。
【0129】
ステップS308において、制御部31は、
図2に示した3つの紙幣スタッカ180の金額が確定しているか否かを判定する。具体的には、制御部31は、前回の精査処理の後に、上述の事象(1)~(5)の何れも生じていない場合に、紙幣スタッカ180の金額が不確定になっていないと判定する。この判定は、
図8(a)のステップS103で取得したログ情報に基づいて行われる。
【0130】
紙幣スタッカ180の金額が確定している場合(S308:YES)、制御部31は、3つの紙幣スタッカ180の全てを計数の対象外に設定し(S309)、処理をステップS311に進める。他方、紙幣スタッカ180の金額が確定していない場合(S308:NO)、すなわち、前回の精査処理の後に、上述の事象(1)~(5)の何れかが生じ、在高が不確定になった場合、制御部31は、3つの紙幣スタッカ180を計数の対象に設定し(S310)、処理をステップS311に進める。
【0131】
ステップS311において、制御部31は、
図2に示した2つの紙幣カセット170の金額が確定しているか否かを判定する。具体的には、制御部31は、前回の精査処理の後に、上述の事象(6)~(9)の何れも生じていない場合に、紙幣カセット170の金額が不確定になっていないと判定する。この判定は、
図8(a)のステップS103で取得したログ情報に基づいて行われる。
【0132】
紙幣カセット170の金額が確定している場合(S311:YES)、制御部31は、紙幣カセット170を計数の対象外に設定し(S312)、処理をステップS314に進める。他方、紙幣カセット170の金額が確定していない場合(S311:NO)、すなわち、前回の精査処理の後に、上述の事象(6)~(9)の何れかが生じ、在高が不確定になった場合、制御部31は、紙幣カセット170を計数の対象に設定し(S313)、処理をステップS314に進める。
【0133】
ステップS314において、制御部31は、ステップS304、S307、S310、S313で計数対象に設定された貨幣収容部に対する計数を実行する。計数対象外に設定された貨幣収容部には、取引ログで管理されている、精査処理を実行する直前の在高がそのまま確定された在高とされる。ステップS304、S307、S310、S313の何れにおいても計数対象の貨幣収容部が設定されなかった場合、制御部31は、ステップS314をスキップする。この場合、全ての貨幣収容部に対し、取引ログで管理されている、精査処理を実行する直前の在高が確定された在高とされる。
【0134】
なお、
図9の処理においては、ステップS308において判定される事象(上記(1)~(5)の事象)が、上記のとおり、3つの紙幣スタッカ180の全体に対して在高が不確定であるか否かを判定するものであるため、ステップS308の判定がYESであると、全ての紙幣スタッカ180が計数対象に設定される。これに対し、ステップS308において判定される事象が3つの紙幣スタッカ180に個別に適用され得るものである場合は、ステップS308の判定結果に応じて、紙幣スタッカ180ごとに、計数対象または計数対象外に設定される。同様に、ステップS302において判定される事象が6つの硬貨スタッカ202に個別に適用され得るものである場合は、硬貨スタッカ202ごとに計数対象または計数対象外に設定される。
【0135】
図8(a)に戻り、上記のようにして、クイック精査処理(S104)または通常精査処理(S105)を実行した後、制御部31は、精査後処理を実行する(S106)。
【0136】
具体的には、制御部31は、ステップS106において、精査処理で確定した各貨幣収容部の在高の合計と、取引ログで管理されている、精査処理を実行する直前の装置の在高とを比較し、両在高が一致するか否かを判定する。ここで、両在高が一致しない場合、制御部31は、さらに両在高の差額を算出し、両在高が一致しないこと、および両在高の差額を報知するための処理を実行する。
【0137】
また、ステップS106の精査後処理では、上述のリジェクト戻しの処理が行われる。すなわち、リジェクトボックス17または硬貨出金ボックス16aにリジェクト紙幣またはリジェクト硬貨が収容されている場合、操作者は、リジェクト紙幣またはリジェクト硬貨を抜き取って貨幣入出金機1に投入し、リジェクト紙幣またはリジェクト硬貨の計数を行わせる。こうして、全ての貨幣について精査が完了すると、精査処理が終了する。
【0138】
精査処理に関する情報(指標情報)は、ログ情報として記憶部32に記憶される。この情報には、精査処理の結果とともに、どの貨幣収容部に対して計数が行われたかを示す情報が含まれる。
【0139】
次に、クイック精査処理において表示される画面について説明する。以下に説明する画面は、制御部31による制御の下で作成された指標情報が、操作表示部18に出力されて表示される。
【0140】
図10(a)、(b)は、クイック精査処理において計数対象の貨幣処理部を表示する画面を示す図である。ここでは、上記
図9の処理により、3つの紙幣スタッカ180のみが計数対象に設定されている。
図10(a)は、貨幣収容部に対する計数処理(
図9のステップS314)が実行される前の状態を示し、
図10(b)は、計数処理が開始された後の状態を示している。
【0141】
図10(a)に示すように、クイック精査処理における画面は、紙幣入出金ユニット11を示す画像D10と、硬貨入出金ユニット12を示す画像D20とを含んでいる。画像D10には、3つの紙幣スタッカ180に対応する3つの表示要素D11a~D11cと、2つの紙幣カセット170に対応する2つの表示要素D12a、D12bが含まれている。また、画像D20には、6つの硬貨スタッカ202に対応する6つの表示要素D21a~D21fと、硬貨カセット213に対応する表示要素D22が含まれている。
【0142】
これらの表示要素のうち、
図9のステップS302~S313の処理により計数対象となった貨幣収容部に対応する表示要素が、その他の表示要素と区別可能に表示される。たとえば、計数対象となった貨幣収容部に対応する表示要素は、所定の色が付されることにより、その他の表示要素から区別される。その他の形態によって、計数対象となった貨幣収容部に対応する表示要素がその他の貨幣収容部に対応する表示要素から区別されてもよい。ここでは、3つの紙幣スタッカ180のみが計数対象に設定されているため、表示要素D11a~D11cに所定の色が付されている。
【0143】
なお、在高が不確定となり得る事象が貨幣収容部ごとに個別に判定される場合は、在高が不確定となった貨幣収容部ごとに色が付されることになる。たとえば、最も手前と手前から2番目の紙幣カセット170のみが在高が不確定となった場合、表示要素D12a、D12bのみに色が付される。
【0144】
その後、計数処理が進むと、
図10(b)に示すように、計数対象となった貨幣収容部に対応する表示要素の表示形態が、計数済み、計数中、および計数待ちに応じた表示形態に変化する。たとえば、計数済み、計数中、および計数待ちに応じて、表示形態の色が変えられる。その他の形態によって、計数済み、計数中、および計数待ちであることが表示されてもよい。
図10(b)の例では、最も奥の紙幣スタッカ180に対する計数が完了し、奥から2番目の紙幣スタッカ180に対する計数が進行中であり、最も前側の紙幣スタッカ180は計数待ちの状態にある。
【0145】
図11(a)、(b)は、クイック精査処理において計数対象の貨幣処理部を表示する他の画面の例を示す図である。ここでは、
図9の処理により、6つの硬貨スタッカ202のみが計数対象に設定されている。
図11(a)は、貨幣収容部に対する計数処理(
図9のステップS314)が実行される前の状態を示し、
図11(b)は、計数処理が開始された後の状態を示している。
【0146】
ここでは、6つの硬貨スタッカ202のみが計数対象に設定されているため、
図11(a)に示すように、6つの硬貨スタッカ202に対応する表示要素D21a~D21fに所定の色が付されている。その後、計数が進むと、
図11(b)に示すように、計数対象となった貨幣収容部に対応する表示要素の表示形態が、計数済み、計数中、および計数待ちに応じた表示形態に変化する。ここでは、前側2つの硬貨スタッカ202に対する計数が完了し、前から3番目の硬貨スタッカ202に対する計数が進行中である。その他3つの硬貨スタッカ202は、計数待ちの状態にある。
【0147】
なお、上述のように、クイック精査処理において、硬貨スタッカ202に対する計数処理により生じたリジェクト硬貨が硬貨カセット213に搬送されるように、貨幣入出金機1を設定することも可能である。この設定がなされた場合、計数対象とされた硬貨スタッカ202から生じたリジェクト硬貨が硬貨カセット213に搬送されると、
図9の処理とは別に、硬貨カセット213が計数対象として追加される。
【0148】
この場合、
図11(b)に示すように、硬貨の計数が開始された後、リジェクト硬貨が生じたタイミングで、硬貨カセット213に対応する表示要素D22に、計数対象であることを示す色が付される。このような設定がなされていない場合は、硬貨カセット213に対応する表示要素D22に、計数対象であることを示す色は付されない。
【0149】
図12(a)、(b)は、それぞれ、クイック精査処理が完了した際に表示される画面を示す図である。
【0150】
クイック精査処理が完了すると、まず、
図12(a)の画面D30が表示され、この画面D30に含まれているボタンB31がタッチされると、
図12(b)の画面が表示される。
【0151】
図12(a)に示すように、画面D30は、精査結果の概要を示すための領域R31と、ボタンB31、B32が配置される領域R32とに区分されている。領域R31には、金種(貨幣収容部)ごとに、精査処理により計数が行われたか否かが示される。また、計数が行われた金種(貨幣収容部)に対しては、計数に基づく在高とログ情報に基づく在高とが一致したか否かを示す表記(ここでは、そのことを示す文字)が含まれる。
【0152】
ここで、在高が不一致であった金種(貨幣収容部)に対する表記(文字)は、他の金種(貨幣収容部)に対する表記(文字)と区別可能な状態で表示される。たとえば、在高が不一致であった金種(貨幣収容部)に対する表記(文字)が、赤色で表示される。さらに、計数が行われた金種(貨幣収容部)に対する表記(文字)と、計数が行われなかった金種(貨幣収容部)に対する表記(文字)とが互いに区別可能に表示されてもよい。たとえば、計数が行われた金種(貨幣収容部)に対する表記(文字)が緑色で表示され、計数が行われなかった金種(貨幣収容部)に対する表記(文字)が青色で表示されてもよい。
【0153】
ボタンB31は、クイック精査処理の結果をさらに詳細に表示させるためのボタンである。ボタンB32は、クイック精査処理の結果の表示を終了させるためのボタンである。操作者がボタンB31にタッチすると、
図12(a)の画面D30に代えて
図12(b)の画面D40が表示される。
【0154】
図12(b)に示すように、画面D40は、精査結果の詳細を示すための領域R41と、ボタンB41、B42が配置される領域R42とに区分されている。領域R41には、金種(貨幣収容部)ごとに、計数に基づく在高とログ情報に基づく在高との差額が示される。ここでは、千円の金種(貨幣収容部)に対して10000円の差額が生じている。計数に基づく在高がログ情報に基づく在高よりも少ない場合に、差額がマイナスで表記される。
【0155】
さらに、計数が行われた金種(貨幣収容部)の欄は、そのことが識別可能に表示される。
図12(b)の例では、計数が行われた金種(貨幣収容部)の欄に、そのことを示すマークM41が付記されている。マークM41以外の方法により、計数が行われた金種(貨幣収容部)の欄が識別可能に表示されてもよい。この他、領域R41には、差額の総合計の金額が表示される。ここでは、差額の総合計が10000円であることが示されている。
【0156】
ボタンB41は、画面を
図12(a)の画面D30に戻すためのボタンである。ボタンB42は、クイック精査処理の結果の表示を終了させるためのボタンである。操作者がボタンB41にタッチすると、
図12(b)の画面D40に代えて
図12(a)の画面D30が表示される。
【0157】
なお、クイック精査処理の結果は、クイック精査完了時のみならず、その後の所望のタイミングで適宜表示させることができる。たとえば、電子ジャーナルの表示時にクイック精査処理の結果を表示させることもできる。
【0158】
図13(a)は、電子ジャーナルの画面D50を示す図である。
【0159】
電子ジャーナルの画面D50には、処理履歴を時間軸順に示すリストL51が含まれる。処理履歴として表示する内容は、操作者が操作表示部18から入力した情報であってもよく、ログ情報であってもよく、取引ログに基づく情報であってもよく、また貨幣の入金、出金や精査など、貨幣の動きに関する情報のみとすることであってもよい。操作者は、送りボタンB51、B52にタッチすることで、リストL51を時間軸方向に遷移させることができる。
図13(a)に示すように、リストL51には、クイック精査処理に関する項目(イベント)E51が含まれ得る。この項目E51には、クイック精査処理が実行された日時とともに、どの貨幣収容部に対して計数を行ったかをブロック単位で示す表記が含まれる。ここでは、紙幣のブロックに対して計数が行われたことが表記されている。
【0160】
操作者は、項目E51にタッチすることにより、クイック精査処理の詳細な結果を表示させることができる。たとえば、操作者が項目E51にタッチすると、
図13(b)の画面が表示される。この画面には、
図10(a)と同様の画像D10、D20と、ボタンB53、B54が含まれている。
【0161】
画像D10の表示要素D11a~D11c、D12a、D12bおよび画像D20の表示要素D21a~D21f、D22のうち、当該クイック精査処理において計数が行われた貨幣収容部に対応する表示要素が、他の表示要素と区別可能に表示される。たとえば、当該クイック精査処理において計数が行われた貨幣収容部に対応する表示要素に所定の色が付される。ここでは、3つの表示要素D11a~D11cに色が付され、これにより、紙幣入出金ユニット11に設けられた3つの紙幣スタッカ180に対して計数が行われ、その他の貨幣収容部に対しては計数が行われなかったことが示されている。
【0162】
操作者は、ボタンB53にタッチすることにより、さらに、
図12(b)に示した画面を表示させることができる。これにより、操作者は、当該クイック精査処理における詳細な精査結果を確認できる。また、操作者は、ボタンB54にタッチすることにより、画面を
図13(a)の画面D50に戻すことができる。こうして、操作者は、電子ジャーナルを確認しながら、クイック精査処理の内容を確認することができる。たとえば、操作者は、
図13(b)に示した画面と
図13(a)に示した電子ジャーナルの画面D50とを参照することにより、電子ジャーナルにおいてエラーが検出された貨幣収容部に対し、クイック精査処理において貨幣の計数が適切に行われたか否かを確認することができる。
【0163】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
【0164】
制御部31によって自動で貨幣収容部(紙幣スタッカ180、紙幣カセット170、硬貨スタッカ202、硬貨カセット213)に対するクイック精査処理が行われるため、操作者が貨幣を計数して精査を行う場合に比べ、操作者の負担を顕著に軽減できる。また、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じたか否かに基づいて、クイック精査処理において貨幣を計数すべき貨幣収容部が設定されるため、精査を行うべき貨幣収容部に対して適切に、貨幣の精査が行われ得る。さらに、その他の貨幣収容部に対しては、貨幣の計数が行われないため、クイック精査処理に要する時間を短縮できる。したがって、本実施形態に係る貨幣入出金機1によれば、操作者の負担を軽減しながら効率的に貨幣収容部に対する精査を行うことができる。
【0165】
また、本実施形態では、貨幣の計数対象が、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じた貨幣収容部のみに絞られるため、精査処理をより効率的に進めることができる。
【0166】
また、
図10(a)、(b)および
図11(a)、(b)に示したとおり、クイック精査処理の実行中に、貨幣の計数対象に設定された貨幣収容部が操作表示部18に表示されるため、操作者は、計数対象とされた貨幣収容部を、クイック精査処理の実行中に知ることができ、精査処理が完了するまでに要する時間を概ね把握することができる。また、操作者は、この表示を参照することにより、エラーが生じた貨幣収容部等、計数対象とすべき貨幣収容部に対して計数がなされるか否かを確認することができる。
【0167】
また、
図10(b)および
図11(b)に示したとおり、貨幣の計数が完了した貨幣収容部と、貨幣を計数中の貨幣収容部と、貨幣の計数待ちの貨幣収容部とが区別可能となるように、貨幣の計数対象に設定された貨幣収容部が表示されるため、操作者は、計数対象とされた貨幣収容部に対する計数処理の進行状況を知ることができる。したがって、操作者は、貨幣収容部に対する精査が適切に進められていること、および、精査処理完了までの大まかな残時間を把握することができる。
【0168】
また、
図11(b)に示したとおり、計数処理において新たに計数対象となった貨幣収容部(ここでは、硬貨カセット213)がクイック精査処理の途中で表示されるため、操作者は、より適切に、クイック精査処理の状況を把握でき、適宜、必要な作業を行うことができる。
【0169】
また、
図12(a)、(b)および
図13(a)、(b)に示したとおり、クイック精査処理の後に、貨幣の計数を行った貨幣収容部が表示されるため、操作者は、クイック精査処理の後に、貨幣の計数を行った貨幣収容部を把握でき、各貨幣収容部に対する精査処理の内容を確認することができる。また、操作者は、これらの表示を参照することにより、エラーが生じた貨幣収容部等、計数対象とすべき貨幣収容部に対して適切に計数がなされたかを確認することができる。
【0170】
なお、操作者は、
図12(a)、(b)および
図13(a)、(b)以外の方法によっても、クイック精査処理の後に、適宜、記憶部32から情報を読み出して、クイック精査処理においてどの貨幣収容部に対して計数が行われたかを確認することができる。また、メンテナンス等の場面においても、記憶部32から情報を読み出して、精査処理においてどの貨幣収容部に対して計数が行われたかを確認することができる。
【0171】
また、
図13(a)、(b)に示したように、操作者は、処理履歴(電子ジャーナル)の確認中に、適宜、当該処理履歴に含まれているクイック精査処理の項目E51を指定することにより、簡便に、当該クイック精査処理においてどの貨幣収容部に対して計数が行われたかを確認することができる。したがって、操作者は、処理履歴(電子ジャーナル)を参照しながら、エラーが生じた貨幣収容部等、計数が行われるべき貨幣収容部について、適切に計数が行われたか否かを確認することができる。
【0172】
<変更例1>
上記実施形態では、クイック精査処理において、在高が不確定となり得る事象が生じた貨幣収容部のみが計数対象に設定されたが、本変更例1では、クイック精査処理において、在高が不確定となり得る事象が生じた貨幣収容部とともに、操作者により指定された貨幣収容部が、貨幣の計数対象に設定される。
【0173】
図14(a)、(b)は、クイック精査処理において貨幣を計数すべき貨幣収容部の指定を受け付けるための画面を示す図である。
【0174】
図14(a)に示すように、この画面には、
図10(a)と同様の画像D10、D20と、ボタンB61が含まれている。
【0175】
図10(a)と同様、画像D10の表示要素D11a~D11c、D12a、D12bおよび画像D20の表示要素D21a~D21f、D22のうち、当該クイック精査処理において、在高が不確定であるため計数対象に設定された貨幣収容部に対応する表示要素が、他の表示要素と区別可能に表示される。ここでは、3つの表示要素D11a~D11cに所定の色が付され、これにより、紙幣入出金ユニット11に設けられた3つの紙幣スタッカ180が計数対象に設定されていることが示されている。
【0176】
操作者は、色が付された表示要素D11a~D11c以外の表示要素D12a、D12b、D21a~D21f、D22にタッチすることにより、他の貨幣収容部を計数対象に含めることができる。たとえば、
図14(b)では、操作者により表示要素D21c~D21fがタッチされ、これら表示要素D21c~D21fに対応する4つの硬貨スタッカ202が追加の計数対象として選択されている。これらの表示要素D21c~D21fは、表示要素D11a~D11cと同じ色が付されて、他の表示要素と区別可能となっている。
【0177】
なお、操作者は、選択した表示要素に再度タッチすることにより選択を解除することができる。たとえば、選択した表示要素D21cに対応する硬貨スタッカ202を計数対象から外す場合、操作者は、再度、表示要素D21cにタッチする。これにより、表示要素D21に付された色が消え、表示要素D21cに対応する硬貨スタッカ202が計数対象から外される。
【0178】
ただし、在高が不確定であるために計数対象に設定された貨幣収容部は、操作者による操作により計数対象から外されることはない。すなわち、
図14(a)、(b)の状態において、3つの紙幣スタッカ180に対応する表示要素D11a~D11cが操作者によりタッチされたとしても、表示要素D11a~D11cに付された色が消失することはなく、これらの表示要素D11a~D11cに対応する紙幣スタッカ180が、計数対象から外されることがない。
【0179】
したがって、これらの貨幣収容部に対応する表示要素D11a~D11cは、操作者によって選択された貨幣収容部に対応する表示要素D21c~D21fと異なる態様で表示することとしてもよい。たとえば、
図15(a)、(b)に示すように、在高が不確定であるために計数対象に設定された貨幣収容部に対応する表示要素D11a~D11cの枠が他の表示要素よりも太く表示されてもよい。この他、これらの表示要素D11a~D11cとその他の表示要素とで塗りつぶしの色が変えられてもよい。
【0180】
こうして計数対象の貨幣収容部が指定された後、ボタンB61がタッチされると、在高が不確定であるために計数対象に設定された貨幣収容部と、操作者により指定された貨幣収容部とに対して、計数処理が実行される。たとえば、
図14(b)の状態でボタンB61がタッチされると、表示要素D11a~D11cに対応する3つの紙幣スタッカ180と、表示要素D21c~D21fに対応する4つの硬貨スタッカ202とに対して、貨幣の計数処理が行われる。
【0181】
図16(a)は、本変更例に係る、クイック精査処理のフローチャートの一部を示す図である。
【0182】
図16(a)に示すように、本変更例では、
図9のフローチャートのステップS306とS314の間に、ステップS321~S323が追加されている。その他のステップは、
図9のフローチャートと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0183】
ステップS306の後、制御部31は、
図14(a)に示した画面(追加受付画面)を操作表示部18に表示させ、操作者による貨幣収容部の指定を受け付ける(S321)。この画面において、操作者により計数対象に含める貨幣収容部が指定され、その後、ボタンB61がタッチされると(S322:YES)、制御部31は、操作者により指定された貨幣収容部を計数対象に追加する(S323)。この場合、ステップS314では、
図9のステップS304、S307、S310、S313に基づいて設定された貨幣収容部と、ステップS323で追加された貨幣収容部とに対して計数が行われる。
【0184】
図14(a)に示した画面(追加受付画面)において計数対象に含める貨幣収容部が指定されなかった場合、制御部31は、ステップS323をスキップする。この場合、ステップS314では、
図9のステップS304、S307、S310、S313に基づいて設定された貨幣収容部のみに対して計数が行われる。
【0185】
本変更例によれば、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じた貨幣収容部の他に、操作者が、計数を行うべき貨幣収容部を指定できるため、精査処理の効率化を図りつつ、貨幣入出金機1の利便性を高めることができる。たとえば、操作者は、当該貨幣入出金機1による処理以外の事象により在高が不確定となり得る貨幣収容部が想定され得る場合に、その貨幣収容部を精査の対象に含めることができ、より適切に、各貨幣収容部における在高の適否を確認することができる。
【0186】
なお、変更例1は、以下の変更例2、3にも適宜、適用可能である。
【0187】
<変更例2>
上記実施形態では、クイック精査処理において、在高が不確定となり得る事象が生じた貨幣収容部のみが計数対象に設定されたが、本変更例2では、在高が不確定となり得る事象が生じた貨幣収容部とともに、当該貨幣収容部と同一の金種の貨幣を収容する前記貨幣収容部が貨幣の計数対象に設定される。たとえば、所定金種の紙幣の枚数が、当該金種に対応する紙幣スタッカ180の容量を超えた場合、余剰の紙幣が2つの紙幣カセット170の何れかに収容される場合がある。この場合、紙幣の枚数が容量を超えた紙幣スタッカ180が在高不確定のために計数対象に設定されると、余剰の紙幣を収容する紙幣カセット170がさらに計数対象に含められる。
【0188】
図16(b)は、本変更例に係る、クイック精査処理のフローチャートの一部を示す図である。
【0189】
図16(b)に示すように、本変更例では、
図9のフローチャートのステップS306とS314の間に、ステップS331が追加されている。その他のステップは、
図9のフローチャートと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0190】
ステップS306の後、制御部31は、計数対象の貨幣収容部と同一金種を収容する他の貨幣収容部を計数対象に設定する(S331)。これにより、ステップS314では、
図9のステップS304、S307、S310、S313に基づいて設定された貨幣収容部と、ステップS331で設定された同一金種の貨幣収容部とに対して計数が行われる。
【0191】
この構成によれば、クイック精査処理において、在高が不確定となり得る貨幣収容部とともに、当該貨幣収容部と同一金種の貨幣収容部について貨幣の計数が行われるため、各金種の在高をより適切に精査することができる。
【0192】
<変更例3>
上記実施形態では、2つの紙幣カセット170のグループと3つの紙幣スタッカ180のグループについて、それぞれ、在高不確定となり得る事象が生じたかが判定されたが、本変更例3では、紙幣入出金ユニット11全体に対して、在高不確定となり得る事象が生じたかが判定される。この場合、在高不確定となり得る事象として、たとえば、以下の事象が挙げられ得る。
【0193】
<紙幣入出金ユニット11の在高>
(21)紙幣入出金ユニット11が異常状態になったこと。
(22)扉10cが開けられ支持ユニット190が引き出されたこと。
(23)紙幣カセット170が抜き取られたこと。
(24)リジェクトボックス17が抜き取られたこと。
(25)電源オフ時に扉10cが開けられたこと。
【0194】
前回の精査処理の後に、これら(21)~(25)の事象の何れかが生じた場合、クイック精査処理において、紙幣入出金ユニット11の設置された2つの紙幣カセット170と3つの紙幣スタッカ180が、紙幣の計数対象に設定される。
【0195】
図17は、本変更例に係る、クイック精査処理を示すフローチャートである。
【0196】
図17に示すように、本変更例では、
図9のフローチャートのステップS308~S313が、ステップS341~S343に置き換えられている。その他のステップは、
図9のフローチャートと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0197】
操作者により紙幣入出金ユニット11に対するクイック精査処理が指定された場合(S301:紙幣)、制御部31は、紙幣入出金ユニット11の在高が確定しているか否かを判定する(S341)。具体的には、制御部31は、前回の精査処理の後に、上述の事象(21)~(25)の何れも生じていない場合に、紙幣入出金ユニット11の金額が確定していると判定する。この判定は、
図8(a)のステップS103で取得したログ情報に基づいて行われる。
【0198】
紙幣入出金ユニット11の金額が確定している場合(S341:YES)、制御部31は、全ての紙幣スタッカ180および全ての紙幣カセット170を計数の対象外に設定し(S342)、処理をステップS314に進める。他方、紙幣入出金ユニット11の金額が確定していない場合(S341:NO)、すなわち、前回の精査処理の後に、上述の事象(21)~(25)の何れかが生じた場合、制御部31は、全ての紙幣スタッカ180および全ての紙幣カセット170を計数の対象に設定し(S343)、処理をステップS314に進める。
【0199】
このように、本変更例では、クイック精査処理において、紙幣入出金ユニット11全体が計数の対象または対象外に設定される。よって、
図10(a)の画面では、紙幣入出金ユニット11が計数対象に設定されると、表示要素D11a~D11cおよび表示要素D12a、D12bの全てに所定の色が付されることになる。
【0200】
なお、紙幣入出金ユニット11の在高が確定されているか否かを判定するための事象は、上記(21)~(25)に挙げた事象に限られるものではない。また、本変更例3では、紙幣入出金ユニット11全体に対して、在高が確定しているか否かが判定されたが、硬貨入出金ユニット12全体に対して、在高が確定しているか否かが判定されてもよい。
【0201】
<その他の変更例>
上記実施形態では、
図10(b)、
図11(b)に示したように、計数対象の貨幣収容部に対する計数処理の進行状況が画像D10、D20により示されたが、
図18(a)のように、クイック精査処理における計数動作の進行状況が、文字により示されてもよい。
図18(a)の画面D70では、領域R71において、各金種(貨幣収容部)に対する計数処理の進行状況が文字により示され、領域R72に、計数対象の貨幣収容部が画像D71、D72により示されている。
図10(a)と同様、画像D71、D72には、計数対象の貨幣収容部に対応する表示要素に所定の色が付されている。なお、領域R72が省略され、文字のみで、クイック精査処理における計数動作の進行状況が示されてもよい。
【0202】
また、
図18(b)に示すように、クイック精査処理において、計数を行った貨幣収容部を特定する情報が、制御部31から上位端末2に送信されてもよい(S351)。
図18(b)のフローチャートでは、
図9のフローチャートのステップS314の後に、ステップS351が追加されている。その他のステップは、
図9のフローチャートと同様である。この構成によれば、操作者は、計数が行われた貨幣収容部を上位端末において確認することができる。
【0203】
また、クイック精査処理において、計数処理が終了した貨幣収容部のうち、在高不一致が生じた貨幣収容部の表示要素を、在高が一致した貨幣収容部の表示要素と異なる色で表示するようにしてもよい。これによって操作者は、計数動作の途中において、計数済みの貨幣収容部に在高不一致が生じたか否かを確認することができる。
また、
図19(a)に示すように、クイック精査処理において、計数対象とされた貨幣収容部の表示要素に対し、ログにより管理されている貨幣の枚数を示す情報が付記されてもよい。ここでは、表示要素D11a~D11cに対応する紙幣スタッカ180についてログにより管理されている貨幣の枚数が、表示要素D11a~D11cに括弧書きで付記されている。これにより、操作者は、クイック精査に要する時間をより正確に予測することができる。
【0204】
なお、この変更例では、
図19(b)に示すように、計数処理が終了した貨幣収容部の表示要素に、計数に基づく貨幣の枚数がさらに表示されてもよい。ここでは、表示要素D11cに対応する紙幣スタッカ180の計数が終了し、その計数結果が890枚であったことが、表示要素D11cに付記されている。表示要素D11bに対応する紙幣スタッカ180は、
図10(b)と同様、計数中の状態にある。操作者は、
図19(b)の表示を参照することにより、計数動作の途中において、計数済みの貨幣収容部に在高不一致が生じたか否かを確認することができる。
【0205】
また、クイック精査処理において、計数対象とされた貨幣収容部の表示要素に対し、ログにより管理されている貨幣の枚数を基に計算される各貨幣収容部に対する精査計数時間が表示されてもよい。これにより、操作者は、クイック精査に要する時間をより正確に予測することができる。
【0206】
なお、この変更例では、計数中の収容部については残り計数時間が計数中収容部の表示要素中に表示されてもよい。
【0207】
さらに、上記実施形態では、記憶部32に、ログ情報として精査処理の結果とともに、どの貨幣収容部に対して計数が行われたかを示す情報が含まれることとしたが、この情報として計数を行った貨幣収容部ごとに実際にかかった計数時間を記憶させることとしてもよい。これにより、たとえば点検の際に、保守員が各貨幣収容部の繰出効率を容易に把握することができる。
【0208】
また、上記実施形態では、操作表示部18が操作部と表示部とが一体化された構成であったが、操作部と表示部とが別体であってもよく、あるいは、操作表示部18が本体10aとは別に設けられ、無線または有線により本体10a側と接続された構成であってもよい。この場合、
図4および
図5に示した制御部31、記憶部32および通信部33が、操作表示部18側に設けられてもよい。この場合の操作表示部18として上位端末2を用いることとしてもよい。
【0209】
また、上記実施形態では、紙幣入出金ユニット11および硬貨入出金ユニット12を備える貨幣入出金機1が、本発明の貨幣処理装置の一例として示されたが、紙幣入出金ユニット11のみを備える紙幣入出金機または硬貨入出金ユニット12のみを備える硬貨入出金機に本発明が適用されてもよい。
【0210】
また、貨幣処理システムは、上記実施形態に示した構成に限らず、貨幣処理装置と、当該貨幣処理装置に通信可能に接続された操作端末とから構成される他のシステム形態であってもよい。この場合、精査処理を行う制御部は、貨幣処理装置側と操作端末の何れにあってもよく、また、貨幣処理装置側と操作端末の双方にそれぞれ配置された制御部が精査処理の制御を分担する形態であってもよい。
【0211】
また、特に、貨幣が紙幣である場合に、計数対象の貨幣収容部として、第1の計数対象の貨幣収容部と第2の計数対象の貨幣収容部が設定されてもよい。第1の計数対象の貨幣収容部は、貨幣収容部に収容されたすべての貨幣が計数されて在高が確定される貨幣収容部である。第2の計数対象の貨幣収容部は、貨幣収容部に収容された貨幣の貨幣番号と収納順序を関連付けた紙幣番号リストと、貨幣収容部に収容された一部の貨幣の貨幣番号とが照合されることにより在高が確定される貨幣収容部である。制御部31は、精査処理において、複数の貨幣収容部のそれぞれに対し、貨幣の在高が不確定となり得る事象が生じたか否かに基づいて、第1の計数対象の前記貨幣収容部または第2の計数対象の貨幣収容部を設定する。
【0212】
記憶部32は、紙幣スタッカ180に収納している紙幣の紙幣番号と収納順序を関連付けた紙幣番号リストを記憶している。紙幣の紙幣番号と、紙幣の収納枚数に対応する通り番号とを関連付けて記憶してもよい。紙幣番号リストは、入金処理や出金処理により、紙幣スタッカ180への紙幣の収納や紙幣スタッカ180からの紙幣の繰り出しに伴い更新される。
【0213】
第2の計数対象の貨幣収容部としての紙幣スタッカ180に対する精査処理を説明する。紙幣の流れは、前述した通常精査処理と同じである。紙幣スタッカ180から紙幣が繰り出され計数される。紙幣は、計数されることにより、少なくとも紙幣の紙幣番号が読み取られる。読み取られた紙幣番号が、紙幣番号リストと照合される。連続して繰り出されたN枚(Nは1以上の自然数)の紙幣の紙幣番号が、紙幣番号リストに順序通りに存在する場合、紙幣スタッカ180に残っている紙幣の紙幣番号と収納順序は、記憶している紙幣番号リストと合致すると判定される。この場合、紙幣スタッカ180に残っている紙幣の在高は、紙幣番号リストに基づいて確定される。紙幣スタッカ180から繰り出された紙幣を紙幣スタッカ180に戻し、確定された在高を更新してもよい。Nの値は適宜変更できる。紙幣スタッカ180が、内部での紙幣の収容順序の入れ替わりが発生する可能性が少ない収容部である場合は、N=1であってもよい。
【0214】
制御部31は、精査処理において、複数の貨幣収容部のそれぞれに対し、貨幣の在高が不確定となり得る事象の種類に基づいて、第1の計数対象の前記貨幣収容部と第2の計数対象の貨幣収容部のいずれかを設定してもよい。たとえば、以下の事象のうち、(3)の場合に、第2の計数対象の貨幣収容部を設定し、それ以外の場合に、第1の計数対象の貨幣収容部を設定してもよい。
【0215】
(1)紙幣入出金ユニット11が異常状態になったこと。
(2)扉10cが開けられ支持ユニット190が引き出されたこと。
(3)出金時にリジェクト紙幣が発生したこと。
(4)リジェクトボックス17が抜き取られたこと。
(5)電源オフ時に扉10cが開けられたこと。
【0216】
また、制御部31は、精査処理において、複数の貨幣収容部のそれぞれに対し、貨幣の在高が不確定となり得る事象に基づいて、第1の計数対象の前記貨幣収容部と第2の計数対象の貨幣収容部のいずれかを必ず設定するようにしてもよい。
【0217】
この変更例では、たとえば、
図9のステップS310が、
図20(a)の処理に置き換えられる。
【0218】
すなわち、制御部31は、
図9のステップS308において、紙幣スタッカ180の金額が確定していないと判定すると(S308:NO)、当該紙幣スタッカ180がショート精査条件を充足するか否かを判定する(S351)。ここで、ショート精査条件は、たとえば、上記(1)~(5)の事象のうち(3)の事象のみが当該紙幣スタッカ180に対して生じたことに設定される。ステップS351の判定がYESの場合、制御部31は、当該紙幣スタッカ180を、上述の第2の計数対象に設定する。他方、ステップS351の判定がNOの場合、制御部31は、当該紙幣スタッカ180を、上述の第1の計数対象に設定する。制御部31は、3つの紙幣スタッカ180に対して、それぞれ、ステップS351~S353の処理を実行し、各紙幣スタッカ180を、第1の計数対象または第2の計数対象に設定する。
【0219】
この場合、制御部31は、
図9のステップS314において、第2の計数対象に設定された紙幣スタッカ180に対し、
図20(b)の処理を実行する。すなわち、制御部31は、第2の計数対象に設定された紙幣スタッカ180から、順番に紙幣を繰り出して計数を実行する(S361)。
【0220】
各紙幣の計数に並行して、制御部31は、各紙幣から読み取られた紙幣番号と、記憶部32に格納されている当該紙幣スタッカ180の紙幣番号リスト(
図20(c)参照)を対照する(S362)。連続するN枚の紙幣の紙幣番号が、紙幣番号リストの順序どおりに存在する場合(S362:YES)、制御部31は、紙幣の繰出しおよび計数を中止し、当該紙幣スタッカ180の在高を、紙幣番号リストに基づき確定させる(S363)。他方、連続するN枚の紙幣の紙幣番号が、紙幣番号リストの順序どおりに存在しない場合(S362:NO)、制御部31は、紙幣の繰出しおよび計数を継続し、当該紙幣スタッカ180の全ての紙幣を計数して、当該紙幣スタッカ180の在高を確定させる(S364)。
【0221】
この処理によれば、在高が不確定の紙幣スタッカ180に対して、より迅速に、在高を確定させることができる。また、連続するN枚の紙幣の紙幣番号が、紙幣番号リストの順序どおりに存在しない場合は、全て紙幣が計数されて在高が確定されるため、適切に精査を行い得る。
【0222】
なお、ここでは、紙幣スタッカ180に対して
図20(a)、(b)の処理が実行されたが、紙幣カセット170に対して同様の処理が実行されてもよい。また、硬貨を収容する収容部に硬貨が順番に収納される場合は、この収容部に対して、同様の処理が実行されてもよい。これらの場合、ステップS351の条件は、各収容部の在高が不確定となる事象に応じて設定されればよい。
【0223】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0224】
1 貨幣入出金機(貨幣処理装置)
2 上位端末
18 操作表示部
31 制御部
32 記憶部
170 紙幣カセット(貨幣収容部)
180 紙幣スタッカ(貨幣収容部)
202 硬貨スタッカ(貨幣収容部)
213 硬貨カセット(貨幣収容部)