IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アメリファブ,インコーポレイテッドの特許一覧

特許7042850カセット型のドロップアウトボックス、燃焼室、ダクトおよび電気アーク炉の上部シェルシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】カセット型のドロップアウトボックス、燃焼室、ダクトおよび電気アーク炉の上部シェルシステム
(51)【国際特許分類】
   F27B 3/24 20060101AFI20220318BHJP
   F27D 9/00 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
F27B3/24
F27D9/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019568652
(86)(22)【出願日】2018-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-13
(86)【国際出願番号】 US2018037197
(87)【国際公開番号】W WO2018231895
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】62/518,838
(32)【優先日】2017-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506352256
【氏名又は名称】アメリファブ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】マニャーセック,リチャード,ジェイ.
【審査官】河野 一夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/150806(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/206595(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00140401(EP,A1)
【文献】米国特許第04091228(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 3/24
F27D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を形成するフレームを有する支持構造体と、
リザーバからの冷却液を供給するための供給ラインと、
前記供給ラインおよび前記リザーバと流体接続された戻りラインと、
前記供給ラインと流体接続された入口と、前記戻りラインと流体接続された出口と、を有する波形巻き配管系を備える複数のパネルと、を備え、
前記フレームが、互いに間隔をあけて配置された複数の支持部材を有し、前記複数の支持部材が各々溝を形成し、
前記複数のパネルが各々、前記フレームとの連結用に着脱自在かつ滑ることが可能な状態で前記溝に受けられる、製鋼炉システムのドロップアウトボックス。
【請求項2】
前記供給ラインを前記入口に連結するための第1の可撓性のホースと、前記戻りラインを前記出口に連結するための第2の可撓性のホースと、をさらに備える、請求項1に記載のドロップアウトボックス。
【請求項3】
前記供給ラインと流体接続され、各々が前記複数のパネルの入口と流体接続された複数のオリフィスを含む供給ヘッダーと、
前記戻りラインと流体接続され、各々が前記複数のパネルの出口と流体接続された複数のオリフィスを含む戻りヘッダーと、をさらに備える、請求項1に記載のドロップアウトボックス。
【請求項4】
前記供給ヘッダーは、前記複数のパネルの頂部に沿って配置されるとともに、前記フレームに連結され、
前記戻りヘッダーは、前記複数のパネルの底部に沿って配置されるとともに、前記フレームに連結されている、請求項3に記載のドロップアウトボックス。
【請求項5】
前記複数のパネル各々の前記入口は前記頂部に位置し、前記複数のパネル各々の前記出口は前記底部に位置する、請求項4に記載のドロップアウトボックス。
【請求項6】
前記供給ヘッダーは、前記複数のパネルの底部に沿って配置されるとともに、前記フレームに連結され、
前記戻りヘッダーは、前記複数のパネルの頂部に沿って配置されるとともに、前記フレームに連結されている、請求項3に記載のドロップアウトボックス。
【請求項7】
前記複数のパネル各々の前記入口は前記底部に位置し、前記複数のパネル各々の前記出口は前記頂部に位置する、請求項6に記載のドロップアウトボックス。
【請求項8】
前記供給ヘッダーは、前記複数のパネルの第1の側部に沿って配置されるとともに、前記フレームに連結され、
前記戻りヘッダーは、前記複数のパネルの第2の側部に沿って配置されるとともに、前記フレームに連結され、前記第1の側部は前記第2の側部とは反対側である、請求項3に記載のドロップアウトボックス。
【請求項9】
前記複数のパネル各々の前記入口は、前記複数のパネルの前記第1の側部に配置され、前記複数のパネル各々の前記出口は、前記第2の部分に配置されている、請求項8に記載のドロップアウトボックス。
【請求項10】
前記複数のパネル各々の入口と流体接続された弁をさらに備え、前記弁は、各パネルへの冷却液の供給を制御するように構成されている、請求項1に記載のドロップアウトボックス。
【請求項11】
前記支持構造体は、控え梁と、前記控え梁の内部空間の側に配置された保護パネルとを有する、請求項1に記載のドロップアウトボックス。
【請求項12】
前記複数のパネルは各々、前記控え梁と前記保護パネルとの間に配置されている、請求項11に記載のドロップアウトボックス。
【請求項13】
前記複数のパネルは、第1の面と第2の面とを有し、前記複数のパネルは、前記第1の面および前記第2の面のいずれかを前記内部空間に向けて配置できるようにリバーシブルである、請求項1に記載のドロップアウトボックス。
【請求項14】
前記複数のパネルは、第1の端と第2の端とを有し、前記複数のパネルは、前記第1の端および前記第2の端のいずれかが前記ドロップアウトボックスの頂部にくるように前記溝の中に配置されている、請求項13に記載のドロップアウトボックス。
【請求項15】
内部空間を形成するフレームを有する支持構造体と、
リザーバからの冷却液を供給するための供給ラインと、
前記供給ラインおよび前記リザーバと流体接続された戻りラインと、
前記供給ラインと流体接続された入口および前記戻りラインと流体接続された出口を有するシャフトと、波形巻き配管系と、を備える少なくとも1枚のパネルと、
前記入口と前記出口との間で前記シャフト内に配置されたプラグであって、前記冷却液の流れを前記波形巻き配管系に通すように構成された前記プラグと、を備え、
前記フレームが、互いに間隔をあけて配置された複数の支持部材を有し、
前記シャフトの第1の端が第1の支持部材に連結され、前記シャフトの第2の端が第2の支持部材に連結され、前記第1の支持部材および前記第2の支持部材が互いに間隔をあけて配置されている、製鋼炉システムのエンクロージャ。
【請求項16】
前記シャフトは枢支軸を形成し、前記枢支軸を中心として、前記少なくとも1枚のパネルが前記第1の支持部材および前記第2の支持部材に枢支的に連結されている、請求項15に記載のエンクロージャ。
【請求項17】
前記少なくとも1枚のパネルは、第1の面および第2の面を有し、前記第1の面および前記第2の面のいずれかが前記内部空間のほうを向くようにして前記第1の支持部材および前記第2の支持部材に連結されている、請求項16に記載のエンクロージャ。
【請求項18】
前記少なくとも1枚のパネルは、第1の時間の間、前記第1の面が前記内部空間のほうを向いて配置されるように前記枢支軸を中心に回転可能であり、前記第1の時間の経過後に、前記少なくとも1枚のパネルは、前記第2の面が前記内部空間のほうを向いて配置されるように回転される、請求項17に記載のエンクロージャ。
【請求項19】
前記波形巻き配管系は、波形巻き配管系の第1の回路と、波形巻き配管系の第2の回路と、を有し、
前記波形巻き配管系の第1の回路は、第1の入口および第1の出口を含み、
前記波形巻き配管系の第2の回路は、第2の入口および第2の出口を含み、
前記第1の入口および前記第2の入口は、前記シャフトの入口および前記供給ラインと流体接続され、前記第1の出口および前記第2の出口は前記シャフトの出口および前記戻りラインと流体接続されている、請求項15に記載のエンクロージャ。
【請求項20】
炉床と、1枚以上の冷却パネルを有する上部シェルと、前記上部シェルの頂端を覆うための着脱自在の炉蓋構造体と、を有する炉と、
前記炉との間で流体が出入りできる状態で配置され、前記炉からの煙霧および高温のガスを排気チャンバまで移動させるように構成された排気システムと、
前記排気チャンバの下に配置され、前記煙霧および高温のガスからのデブリおよび他の微粒子を受けるためのエンクロージャを形成するドロップアウトボックスと、を備える製鋼炉システムであって、
前記ドロップアウトボックスは、
前記エンクロージャの内部空間を形成するフレーム構造体と、
リザーバからの冷却液を供給するための供給ラインと、
前記供給ラインおよび前記リザーバと流体接続された戻りラインと、
前記フレーム構造体に着脱自在に連結されるとともに、波形巻き配管系を備える複数のパネルと、を備え、
前記波形巻き配管系は、前記供給ラインと流体接続された入口と、前記戻りラインと流体接続された出口と、を有し、
前記フレームが、互いに間隔をあけて配置された複数の支持部材を有し、前記複数の支持部材が各々、前記複数のパネルの各々が前記溝で着脱自在に配置されるように前記複数のパネルのうちの1枚を受けるための溝を形成し、
前記複数のパネルは、第1の端と、第2の端と、第1の面と、第2の面と、を有し、前記複数のパネルは各々、前記第1の面および前記第2の面のいずれかを前記エンクロージャの前記内部空間に向けた状態で前記パネルを前記フレームに連結できるようにリバーシブルであり、
前記複数のパネルは各々、前記第1の端および前記第2の端のいずれかが前記排気チャンバに近い側に配置されるように前記溝の中に配置可能である、製鋼炉システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年6月13日に出願された米国仮出願第62/518,838号の優先権の利益を主張するものであり、その開示内容全体を本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、炉に関し、特に、複数の水冷式パネルを有する電気アーク炉に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、電気アーク炉(EAF)や燃焼室用の水冷式上部シェル、EAF、発電所、塩基性精錬炉などの炉、オーブンおよび処理プラント用のドロップアウトボックスやダクトを設計したり製造したりするには、いくつか方法がある。炉内では熱が発生するため、たとえば、発熱を制御するための冷却手段を設ける必要がある。また、従来のダクトまたはエンクロージャが、すべての供給配管系と戻り配管系を有するプレートまたは管を機器の外壁に取り付けた状態で製造されるモノリシック構造体として設計された機器を含む場合もある。この設計では、想定外の破損が発生した場合に、装置全体を取り外さなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ほぼすべての場合に、この機器は、製造施設の建物内の立ち入りが困難な場所に設置されるか、完全に一体型になったプラント処理機器である。これらの装置の内部空間にある水冷式の要素の作動側の耐用寿命には限りがある上、そこには機器の内側からしか届かない。内部空間にある水冷式の要素の耐用寿命に限りがあるため、機器の破損部分を修理したり交換したりするには、予定されたダウンタイムまたは予定外のダウンタイムが必要となるか、装置全体をプロセスや建物から取り外して交換する必要がある。機器を取り外したり交換したりすることには、労力、設備、材料の観点からコストがかかる可能性がある。
【0005】
このような機器の設計に付随するもうひとつの重要なコストとして、取り外しと再設置に数日、ときに数週間にわたってプラントを止めなければならない可能性があげられる。その結果、貴重な生産時間が大幅に失われる。昨今の処理プラントやその他の製造施設では、それは不可避のプロセスであり、「計画的」であろうと「計画外」であろうと、ダウンタイムがほとんどないか皆無の状態で可能な限り最高の水準で機器のアップタイムが維持される。ダウンタイムが発生すると、最終損益で相当な利益の損失が生じる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様では、水冷式の要素の交換のたびに交換される従来の支持構造体に代わる常置された支持構造体が本明細書で開示される。最初の設置後に必要な交換は水冷式の内部要素のみであるため、常置された支持構造体を用いることで、交換にかかるコストを節約することができる。
【0007】
別の態様では、本開示は、水冷式の要素であって、リバーシブルにすることができるため、耐用寿命を延ばし、場合によっては2倍にすることができる水冷式の要素を提供する。
【0008】
さらに、水冷式の要素は、常置された支持構造体に簡単に挿入できるように「カセット」設計で提供することができる。
【0009】
本開示のさらに別の態様では、小さな「カセット」設計の水冷式の要素は、支持構造体内の位置における稼働上の需要に対応するために異なる材料で製造することができる。
【0010】
事実、本開示の実施態様は、システム全体の耐用寿命を延ばし、保守を減らすことで、生産性と性能レベルを向上させ、より高い利益をもたらすことができる。さらに、本明細書に記載のカセットパネルは、複数の管/チューブまたはプレート設計、スチール、合金、鋳造、押出材などの任意の材料、加圧水、スプレー冷却などの任意のスタイルを含む、望ましい任意のスタイルで製造することができる。
【0011】
本開示の一実施態様において、製鋼炉システムのドロップアウトボックスは、内部空間を形成するフレームを有する支持構造体と、リザーバからの冷却液を供給するための供給ラインと、供給ラインおよびリザーバと流体接続された戻りラインと、供給ラインと流体接続された入口と、戻りラインと流体接続された出口と、を有する波形巻き配管系を備える複数のパネルと、を含み、フレームが、互いに間隔をあけて配置された複数の支持部材を有し、複数の支持部材が各々溝を形成し、複数のパネルが各々、フレームとの連結用に着脱自在かつ滑ることが可能な状態で溝に受けられる。
【0012】
本実施態様の一例では、第1の可撓性のホースが供給ラインを入口に連結し、戻りラインを出口に連結するための第2の可撓性のホース。第2の例では、供給ヘッダーが、供給ラインと流体接続され、各々が複数のパネルの入口と流体接続された複数のオリフィスを含み、戻りヘッダーが、戻りラインと流体接続され、各々が複数のパネルの出口と流体接続された複数のオリフィスを含んでいる。第3の例では、供給ヘッダーは、複数のパネルの頂部に沿って配置されるとともに、フレームに連結され、戻りヘッダーは、複数のパネルの底部に沿って配置されるとともに、フレームに連結されている。
【0013】
第4の例では、複数のパネル各々の入口は頂部に位置し、複数のパネル各々の出口は底部に位置する。第5の例では、供給ヘッダーは、複数のパネルの底部に沿って配置されるとともに、フレームに連結され、戻りヘッダーは、複数のパネルの頂部に沿って配置されるとともに、フレームに連結されている。第6の例では、複数のパネル各々の入口は底部に位置し、複数のパネル各々の出口は頂部に位置する。
【0014】
第7の例では、供給ヘッダーは、複数のパネルの第1の側部に沿って配置されるとともに、フレームに連結され、戻りヘッダーは、複数のパネルの第2の側部に沿って配置されるとともに、フレームに連結され、第1の側部は第2の側部とは反対側である。第8の例では、複数のパネル各々の入口は、複数のパネルの第1の側部に配置され、複数のパネル各々の出口は、第2の部分に配置されている。第9の例では、複数のパネル各々の入口に弁が流体接続され、弁は、各パネルへの冷却液の供給を制御するように構成されている
【0015】
本実施態様の別の例では、支持構造体は、控え梁と、控え梁の内部空間の側に配置された保護パネルとを有する。ここで、複数のパネルは各々、控え梁と保護パネルとの間に配置されている。さらに別の例では、複数のパネルは、第1の面と第2の面とを有し、複数のパネルは、第1の面および第2の面のいずれかを内部空間に向けて配置できるようにリバーシブルである。さらに別の例では、複数のパネルは、第1の端と第2の端とを有し、複数のパネルは、第1の端および第2の端のいずれかがドロップアウトボックスの頂部にくるように溝の中に配置されている。
【0016】
本開示の別の実施態様において、製鋼炉システムのエンクロージャは、内部空間を形成するフレームを有する支持構造体と、リザーバからの冷却液を供給するための供給ラインと、供給ラインおよびリザーバと流体接続された戻りラインと、供給ラインと流体接続された入口および戻りラインと流体接続された出口を有するシャフトと、波形巻き配管系と、を備える少なくとも1枚のパネルと、入口と出口との間でシャフト内に配置されたプラグであって、冷却液の流れを波形巻き配管系に通すように構成されたプラグと、を含み、フレームが、互いに間隔をあけて配置された複数の支持部材を有し、シャフトの第1の端が第1の支持部材に連結され、シャフトの第2の端が第2の支持部材に連結され、第1の支持部材および第2の支持部材が互いに間隔をあけて配置されている。
【0017】
本実施形態の一例では、シャフトは枢支軸を形成し、枢支軸を中心として、少なくとも1枚のパネルが第1の支持部材および第2の支持部材に枢支的に連結されている。第2の例では、少なくとも1枚のパネルは、第1の面および第2の面を有し、第1の面および第2の面のいずれかが内部空間のほうを向くようにして第1の支持部材および第2の支持部材に連結されている。第3の例では、少なくとも1枚のパネルは、第1の時間の間、第1の面が内部空間のほうを向いて配置されるように枢支軸を中心に回転可能であり、第1の時間の経過後に、少なくとも1枚のパネルは、第2の面が内部空間のほうを向いて配置されるように回転される。第4の例では、波形巻き配管系は、波形巻き配管系の第1の回路と、波形巻き配管系の第2の回路と、を有し、波形巻き配管系の第1の回路は、第1の入口および第1の出口を含み、波形巻き配管系の第2の回路は、第2の入口および第2の出口を含み、第1の入口および第2の入口は、シャフトの入口および供給ラインと流体接続され、第1の出口および第2の出口はシャフトの出口および戻りラインと流体接続されている。
【0018】
本開示のさらに別の実施態様では、製鋼炉システムは、炉床と、1枚以上の冷却パネルを有する上部シェルと、上部シェルの頂端を覆うための着脱自在の炉蓋構造体と、を有する炉と、炉との間で流体が出入りできる状態で配置され、炉からの煙霧および高温のガスを排気チャンバまで移動させるように構成された排気システムと、排気チャンバの下に配置され、煙霧および高温のガスからのデブリおよび他の微粒子を受けるためのエンクロージャを形成するドロップアウトボックスと、を含み、ドロップアウトボックスは、エンクロージャの内部空間を形成するフレーム構造体と、リザーバからの冷却液を供給するための供給ラインと、供給ラインおよびリザーバと流体接続された戻りラインと、フレーム構造体に着脱自在に連結されるとともに、波形巻き配管系を備える複数のパネルと、を備え、波形巻き配管系は、供給ラインと流体接続された入口と、戻りラインと流体接続された出口と、を有し、フレームが、互いに間隔をあけて配置された複数の支持部材を有し、複数の支持部材が各々、複数のパネルの各々が溝で着脱自在に配置されるように複数のパネルのうちの1枚を受けるための溝を形成し、複数のパネルは、第1の端と、第2の端と、第1の面と、第2の面と、を有し、複数のパネルは各々、第1の面および第2の面のいずれかをエンクロージャの内部空間に向けた状態でパネルをフレームに連結できるようにリバーシブルであり、複数のパネルは各々、第1の端および第2の端のいずれかが排気チャンバに近い側に配置されるように溝の中に配置可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
添付の図面と併せて本開示の実施形態の以下の説明を参照することにより、本開示の上述した態様およびそれらを取得する方法が一層明確になり、本開示自体がよりよく理解されるであろう。
図1図1は、ドロップボックスシステムを備えたツインシェル方式の電気アーク炉の概略図である。
図2図2は、大型パネル液冷式構造体を含む、図1に示すドロップアウトボックスの正面概略図である。
図3図3は、複数の液冷式モジュラールパネルを備えた独立構造体の概略図である。
図4図4は、モジュラーパネル構造体の低温側から液冷式の要素を装着する過程の上面概略図である。
図5図5は、一対の丸いヘッダー管の間に設置されたモジュラーパネルの第1の概略図である。
図6図6は、一対の丸いヘッダー管の間に設置されたモジュラーパネルの第2の概略図である。
図7A図7Aは、エンクロージャの独立した構造体で組み立てられたモジュラーパネルの第1の実施形態の部分斜視図である。
図7B図7Bは、図7Aに示すモジュラーパネルの上面図である。
図8A図8Aは、エンクロージャの独立した構造体で組み立てられたモジュラーパネルの第2の実施形態の部分斜視図である。
図8B図8Bは、図8Aに示す第2の実施形態の第2の部分斜視図である。
図9A図9Aは、エンクロージャの独立した構造体で組み立てられたモジュラーパネルの第3の実施形態の部分斜視図である。
図9B図9Bは、図9Aに示すモジュラーパネルの上面図である。
図10A図10Aは、エンクロージャの独立した構造体で組み立てられたモジュラーパネルの第4の実施形態の部分斜視図である。
図10B図10Bは、図10Aに示す第4の実施形態の第2の部分斜視図である。
図11図11は、図10Aに示す第4の実施形態のモジュラーパネルの概略図である。
図12図12は、製鋼炉の概略断面図である。
図13A図13Aは、複数のモジュラーパネルを有する電気アーク炉のドロップアウトボックスの概略図である。
図13B図13Bは、モジュラーパネルが実質的に垂直に配置された図13Aに示すドロップアウトボックスの概略図である。
図13C図13Cは、モジュラーパネルが実質的に水平に配置された図13Aに示すドロップアウトボックスの概略図である。
【0020】
複数の図を通して、対応する部分を示すために対応する参照符号を用いる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書に記載される本開示の実施形態は、網羅的であることや、本開示を以下の詳細な説明に開示する厳密な形態に限定することを意図するものではない。むしろ、実施形態は、当業者が本開示の原理と実施方法を認識し、理解するように選択され、説明されるものである。
【0022】
本開示は、電気アーク炉に関するが、様々な機器および産業に適用可能である。また、本開示は、機器の設計、製造、稼働、保守および寿命を改善する方法に関する。さらに、本開示は、プロセス機器をオンラインで利用しやすくする。
【0023】
EAF上部シェルの例を、本開示の図1に示す。図中、EAFを、第1の炉システム102と第2の炉システム104を有する2基並置型のツインシェル炉100として示してある。また、図示は省略するが、1つ以上の電極を含む単一の電気系統または電力系統を2つの炉システムで共有してもよい。第1の炉システム102は、上部炉蓋構造体106と、フレームおよび液冷式パネルによって形成される上部シェル108と、第1の炉床110とを含む形で示されている。第1の構台システム136を使用して、第1の炉システム102に到達し、保守および修理を行うことができる。同様に、第2の炉システム104は、第2の炉蓋構造体114と、第2の上部シェル116と、第2の炉床118とを含み得る。第2の構台システム138を使用して、第2の炉システム104に到達し、保守および修理を行うことができる。業界で一般に知られているように、第1の出銑アセンブリ112を第1の炉システム102に付随させ、第2の出銑アセンブリ120を第2の炉システム104に付随させることができる。
【0024】
図1に示す実施形態では、従来の第1および第2のEAF上部シェル108、116は、一般に、プレート、大径の管、上部シェルの頂部にある環の内径側に吊り下げられた水冷式パネルを支持するプレートと管との組み合わせから製造される構造体と呼ばれる場合がある。パネルの外部空間の低温面で上部シェルのそれぞれのブラケットに取り付けられる頂部のプレートフランジ、相互接続フランジ、Tバー、ピンまたはブラケット(図示せず)を使用して、水冷式の側壁パネルを吊り下げることができる。この設計の欠点の1つとして、予定外の破損やダウンタイムが発生した場合に、側壁パネルを取り外して交換するのが難しいことがある。多くの場合、これらの側壁パネルの修理には、上部シェルの内部空間からパネルに到達するための人員が必要であり、その結果、大幅なダウンタイムと生産性の損失が生じることになる。
【0025】
図1に戻ると、煙霧および高温のガスを、それぞれの炉システム、排気システムから出すことができる。図示のように、煙霧を、第1のエルボ排気管122に通して第1の炉システム102から出し、中央の排気チャンバ126に送ることができる。同様に、第2の炉システム104から出る煙霧や高温のガスも、第2のエルボ排気管124に通して同じように中央の排気チャンバ126に送ることができる。炉システムから出る煙霧を、それぞれのエルボに高速で流すことができるが、煙霧が排気チャンバ126に達すると、チャンバ126の直径が各エルボの直径よりも大きいため、ガス流に含まれる煤塵や他の重いデブリなどの微粒子がガス流から「落下」し、図1に示すようなドロップボックスシステム128に溜まる。ドロップアウトボックスシステム128には、実用車、トラクターまたは自走式の運搬用機械がその中に入って煤塵粒子などの微粒子を除去できるようにするための扉132を1枚または一対含むことができる。本技術分野で知られているように、煙霧やその他のガスは、通路134を通ってチャンバ126およびドロップアウトボックスシステム128から出て、バックハウスに向かうことができる。
【0026】
図1に示す従来の燃焼室およびドロップアウトボックス128は、ボルトでひとまとまりに固定することで必要な形状に構成された、水冷式の壁および炉蓋パネル130を含む。図2では、各パネル130に主給水ライン200および戻りライン202がそれぞれ溶接され、パネル130間で互いに連結されている。パネルが破損したら、交換のためにパネルとヘッダシステムを完全に分解する必要がある。同様に、すべての供給配管系と戻り配管系を有するプレートまたは管が機器の外壁に取り付けられた状態で製造されるモノリシック構造体として設計することも可能である。この図示の設計では、想定外の破損が発生した場合に、装置全体を取り外さなければならない。さらに、破損したパネルの分解または修理するには、燃焼室またはドロップアウトボックスの内側または内部空間からパネルに到達することになる。したがって、この修理または交換作業のためにシステム全体が停止され、それにより大幅なダウンタイムと生産性の損失が生じることになる。
【0027】
本開示では、燃焼室、ドロップアウトボックスまたは他のタイプのエンクロージャ用のモジュール型またはカセット型で水冷式の壁および炉蓋パネルの使用に重点をおいているが、その原理および教示内容をEAFにも適用することができる。したがって、これらの原理および教示内容を適用できるように、以下、EAFについて説明する。
【0028】
電気アーク炉(EAF)では、炉床または製錬領域よりも上の部分を炉内の高温から保護しなければならない。EAF容器の壁、カバーすなわち炉蓋および配管設備は、特に、鋼鉄の装入によって生じる大きな熱応力、化学応力、機械応力を受ける危険性がある。そのような応力によって、炉の耐用寿命が大幅に制限される。EAFは一般に、耐火性ライニングパネルと水冷式パネルによって炉容器内の高温から守られる溶接鋼構造体として設計および製造されている。水冷式炉蓋パネルおよび水冷式側壁パネルは、炉の溶融/製錬領域よりも上の炉容器部分に配置されている。
【0029】
また、炉のオフガス用ダクトもその周りを囲む複数の管で構成されており、これらの管によって、配管設備が炉の稼働中に生じる高温で腐食性のガスから守られている。既存の水冷式パネルとダクトはいずれも、さまざまな等級および種類のプレートや管で製造されている。水冷式パネルを使用すれば、耐火コストが削減され、製鋼業者は各炉の製鋼回数を増やすことができ、炉の側でも出力レベルおよび化学エネルギーの入力レベルを高めて稼働できるようになる。このようなパネルは、複数の管を蛇行させて組み込み、炉床よりも上の電気アーク炉内壁に吊り下げることで、内部空間と炉壁との間に冷却面を形成するように設計されている。
【0030】
炉の通常運転時にパネルを熱劣化およびアーク劣化から保護するには、スラグ層を水冷式パネルの高温側にとどめておくことが重要である。スラグカップ、スラグバー、スラグピン、さらには管の高温側の表面にスプラインを有する特別に設計された押出管を使用して、飛び散ったスラグをパネルの高温側の表面に保持することができる。スラグは管の表面で固化し、溶融した鉄材料と冷却管との間、よって炉壁との間に断熱バリアを形成する。
【0031】
図12を参照すると、炉の一実施形態がEAFタイプの炉180として示されている。一例としてEAFを開示するが、本開示の原理および教示内容を、塩基性精錬炉(BOF)などにも容易に適用できることを理解されたい。図12において、EAF180には、炉殻112と、複数の電極114と、排気システム116と、作業用構台118と、ロッカーチルト機構120と、チルトシリンダー122と、オフガス室とを含むことができる。炉殻112を、ロッカーチルト120または他のチルト機構上に移動可能に配置してもよい。さらに、チルトシリンダー122によってロッカーチルト120に動力を与えてもよい。また、ロッカーチルト120を、作業用構台118上にも固定してもよい。
【0032】
炉殻112には、皿形炉床124と、ほぼ円筒形の側壁126と、樋128と、樋扉130と、ほぼ円筒形の円形炉蓋132と、を含むことができる。樋128および樋扉130は、円筒形の側壁126の片側に配置されている。開放位置では、樋128によって、送入空気134を炉床124に入れ、製錬で生じたガス136を部分的に燃焼可能なようにすることができる。炉床124は適切な耐火材で作製されている。炉床124の一端には、下端に出銑手段138を有する掛堰がある。溶融動作時、耐火性プラグまたは摺動可能なゲートで出銑手段138を閉じる。その後、炉殻112を傾け、出銑手段138のプラグを抜いて開放し、必要に応じて溶湯を取鍋、タンディッシュなどの装置に出湯する。
【0033】
炉殻112の内壁126には、波形巻き配管系150からなる水冷式パネル140を取り付けることができる。これらのパネルは事実上、炉180の内部空間の壁として機能する。冷水と戻り水を供給するマニホールドとパネル140との間で、流体が出入りできるようになっている。一般に、マニホールドは、図示の排気ダクト144と同様の方法で周囲に配置される。
【0034】
熱交換器システム110は、EAF炉110の運転効率を高めるとともに、耐用寿命をのばす。例示的な一実施形態では、パネル140を、波形巻き配管系がほぼ水平の向きになるように組み立ててもよい。配管系150を連結具に接続してもよいし、配管系150をその基部で壁に取り付けられるようにしてもよい。あるいは、波形巻き配管系150がほぼ垂直の向きになるように、パネル140を取り付けることもできる。炉180の側壁126部分の上縁部で、パネル140の上端によって円形の縁の形状が決まってもよい。
【0035】
熱交換器システム110を炉180の炉蓋132に取り付けることができ、この場合、水冷式パネル140は、その湾曲具合が炉蓋32のドーム形の輪郭にほぼ合うようになっている。また、熱交換器システム110を、炉180の側壁126の内側、炉蓋132、排気システム116の入口ならびに排気システム116全体に設けるようにしてもよい。熱交換器システム110は、それ自体で炉を保護することができ、煤塵を回収してガスを大気に放出する場であるバグハウスまたは他の濾過および空気処理施設に高温の廃ガス136が送られると、そのガスを冷却する。
【0036】
運転時、高温の廃ガス136、煤塵、煙霧は、炉殻112の通気口146を通って炉床124から除去される。通気口146は、排気システムと通じていてもよい。
【0037】
パネル140には、複数の管150を軸方向に配置することができる。U字形エルボによって、ある長さごとに区分されて隣接する配管系または管150を互いに接続し、連続配管システムを形成することができる。隣接する管150の間には、スペーサとしても機能する連結具などがあってもよく、それらの連結具によってパネル140が構造的に完全な状態となり、パネル140の湾曲具合が決まる。
【0038】
熱交換システムまたは熱交換器110には、入口(図示せず)および出口(図示せず)を有する波形巻き配管系150からなる少なくとも1枚のパネルと、少なくとも1枚のパネルの入口との間で流体が出入りできる入力マニホールドと、少なくとも1枚のパネルの出口との間で流体が出入りできる出力マニホールドと、配管系150を流れる冷却用流体と、を含むことができる。熱交換器システム110は、高温の煙霧ガス136や冶金炉180およびその支持部品から排出されてくる煤塵を冷却する。配管系は、ある長さごとに区分して並べたチューブを接続したチューブの集合であり、接続されたチューブ同士が連結具で固定され、中に少なくとも1枚のパネル150が形成されている。
【0039】
配管系150を製造するのに望ましい組成の一例に、アルミニウム青銅合金があることが判明している。アルミニウム青銅合金は、熱伝導率、高温のガス流によるエッチングに対する耐性(弾性率)が予想よりも高く、酸化に対する耐性も良好であることがわかっている。したがって、熱交換器の耐用寿命が長くなる。熱交換器やこれに付随する部品の製造にアルミニウム青銅を用いると、それらの腐食や浸食が低減される。アルミニウム青銅は、熱伝導率がP22(Fe約96%、C0.1%、Mn0.45%、Cr2.65%、Mo0.93%)よりも41%高く、炭素鋼(A106B)よりも30.4%高い。アルミニウム青銅およびその合金を使用して製造された熱交換器は、耐火材料や他の金属合金で作られた炉よりも効率が高く、耐用寿命が長い。
【0040】
また、配管系150を押出成形してもよく、押出成形は、配管系が腐食や浸食、圧力、熱応力に抗する一助となり得ることも判明している。必要があれば、配管系が取り付けられている壁の湾曲具合に合わせて配管系を湾曲または屈曲させることも可能である。さらに一般には、配管系の個々のセクション同士を角度のついた連結具で固定して、得られるパネルの湾曲具合が壁の湾曲具合に合うようにされている。
【0041】
図3を参照すると、本開示の一実施形態が示されている。ここでは、水冷式または液冷式の独立した複数のモジュラーパネル308を含むドロップアウトボックスシステム300または他のエンクロージャの一部を示す。本実施形態では、システム300には、図示のようなフレームを形成する独立した支持構造体302を含むことができる。この独立した支持構造体302を、製造施設の耐用寿命期間を通して交換の必要がなく、適所にとどまるように製造することができる。支持構造体302を、1つ以上の控え梁などの部材によって形成してもよい。控え梁は、炉やボイラーなどの壁の隣接する領域が外側に押し出されないように、支索によって壁の外部空間に保持される梁であってもよい。
【0042】
システム300には、ヘッダーを設けることができる。ヘッダーは、通常の摩耗および亀裂の発生時に必要に応じて水冷式の要素またはパネル308だけ向きを変えたり交換したりできるような形で、常置された支持構造体302上の所定の位置にある。この構造体は、特定の用途と機器の場所での需要に応じて、水冷式の設計であっても管/プレート/I型梁からなる非水冷式の設計であっても構わない。この構造体によって、水冷式の要素またはパネル308用の流路を、構造体ならびに、水冷式の要素を構造体に取り付けるための案内路、溝またはブラケットの低温側(すなわち、外部空間)に設置して、給水ヘッダー304および戻りヘッダー306にそれぞれ必要な基礎設備を組み込むことができる。その結果、構造体302およびこれに付随する基礎設備を、実質的に固定したまま維持することができる。事実、これにより、水冷式の要素またはパネル308が通常の動作条件で破損した場合、それらを簡単に交換可能なようにすることができる。
【0043】
機器の水冷式作動要素またはパネル308は、熱伝導率、水圧降下、プロセス操業時にパネルが曝露される高温で汚れたガスに対する耐性を最適なものとする多種多様な素材と組み合わせて、複数の管、プレートまたはプレート/チャネルから製造することが可能である。この実施形態には、支持構造体302の低温側すなわち外部空間からの単純な設置および取り外し機能を持たせて水冷式の要素を設計できるという2つの特徴がある。これは、水冷式パネルをドロップアウトボックスシステムまたは構造体の内部空間から取り外して修理しなければなければならない従来の設計とは異なり、都合がよい。さらに、最小限のコストと労力で要素の耐用期間を2倍にできるように、パネル308をリバーシブルに設計することもできる。
【0044】
言い換えれば、取り扱い、反転または水冷式の支持構造体からの取り外しが容易になるように、水冷式の要素またはパネル308を設計してその大きさを決定することができ、結果として、設置した設備全体を取り外すことなく、摩耗しにくい領域や処理領域に材料を適用することが可能である。たとえば、水冷式パネル308が底部で摩耗しはじめている場合、単に支持構造体302からパネル308を取り外し、180°回転させて、摩耗した底部が一番上にくるようにすることができる。さらに、パネル308の内側を向いていた部分がパネル308の外側を向いて高温のガスなどにさらされなくなるように、パネル308の裏表をひっくり返すこともできる。従来の水冷式パネルは、個々のパネルが外れないように、フランジ、溶接、ボルトまたは留め具などの手段で支持構造体に取り付けられていた。このため、裏返すのではなく、支持構造体を含む構造体全体を分解して交換する必要があった。一方、本開示によれば、個々のパネル308を単純かつ迅速な方法で他のパネル308とは独立して組み立てたり取り外したりすることが可能である。
【0045】
各パネルの大きさは様々であるが、一例では、約8フィート(約244cm)×20フィート(約610cm)であり、1平方フィート(約930平方センチメートル)あたり40ポンド(約18kg)を超える重さにすることができる。しかしながら、個々のパネルの大きさと重量は異なる場合があり、周囲の支持構造体の大きさや形状とともに、パネルの用途と使用法に左右されやすい。水冷式の要素またはパネル308を製造する材料は、処理機器の特定領域の動作要件に適合するように調整することが可能である。これらの材料には、スチール管、AmeriSpline(登録商標)スチール管、AmeriAntiSlag(登録商標)スチール管、銅管、銅スプライン管、青銅合金管(たとえば、AmeriBronze(登録商標)、AmeriHVPなど)、ニッケル合金もしくはニッケル被覆スチール管または管もしくはチューブの製造、鋳造、押出用に開発される可能性のある新たな合金もしくは他の合金があげられる。また、スチール、青銅、銅および他の合金プレート材料を取り入れてもよく、水冷式の要素またはパネル308のベースとなる材料としてもよい。
【0046】
本実施形態では、「カセット」スタイルのパネル308のモジュール設計を使用することができ、上述した業界では新しい操業と保守の選択肢を作業員に提供することができる。前述のように、これらのパネルは、両面を動作目的で使用できるようにすることが可能な業界初の水冷式の要素である可能性がある。これは、製造に用いる材料の寿命に関係なく、水冷式の要素の耐用寿命が長くなり、場合によっては耐用寿命が2倍になることを意味する。カセットパネルの設計であれば、いずれも保守作業員がカセットパネルを交換したり裏返したりするために操業中の装置に入る必要をなくすことができる。これにより、機器が冷えるのを待つ必要がなくなり、高温で一酸化炭素の多いオフガスに曝露される機会が減る。さらに、パネルはいずれもリバーシブルに設計することが可能である。すなわち、最初の高温側に摩耗の兆候が認められたら、パネルを反転させて従来の設計の2倍長く使用することができる。
【0047】
図3では、各パネル308に、水または他の冷却液が流れる供給ラインまたは回路310と戻りラインまたは回路312とを含むことができる。供給回路310を、流体供給部またはリザーバ(図示せず)にさらに連結される供給ヘッダー304と流体接続することができる。各々のパネル308には、供給ヘッダー304と流体接続された供給回路310を含むことができる。供給ヘッダー304は、各供給回路と流体接続された複数の出口を有する管で形成することができる。水または液体は、供給回路310を介して各パネル308に流入し、戻り回路312を介してそこから出ることができる。この戻り回路312を、ドロップアウトボックスシステム300の少なくとも一部を形成する複数のパネル308の各々と流体接続される戻りヘッダー306に、流体接続することができる。戻りヘッダー306に入る流体は、供給源またはリザーバに再循環されてもよく、別のリザーバまで流れてもよい。
【0048】
図示を省略するが、留め具などを使用して、供給回路310および戻り回路312をそれぞれのパネルおよびヘッダーに連結することができる。あるいは、可撓性のホースによって、ヘッダーを各回路に流体接続してもよい。図3において、供給回路および戻り回路は、それぞれのパネル308の中央部分の近くに図示されている。後述するように、供給ラインおよび戻りラインが各パネルに連結される位置は変わり得る。
【0049】
燃焼室またはドロップアウトボックスなどのエンクロージャシステム400の例を図4に示す。システム400には、正方形のヘッダーまたは控え梁402および複数の中間控え梁404によって形成される支持構造体を含むことができる。図4には図示していないが、控え梁402および中間控え梁404は、溝またはチャネルを形成することが可能であり、この溝またはチャネルを通して個々の水冷式パネル406を組み立てることができる。ここでは、パネル406は、パネル406の第1の側面がエンクロージャ400の内部空間または外部空間から溝に挿入されるような角度で、控え梁の溝の中に滑り込むことができる。第1の端部が挿入されると、支持構造体に形成された別の溝にパネル406の反対側の端を配置できるように十分な空間ができる。これは、他の構造体がゆえにパネル406の上の領域に到達しにくい場合に必要になる場合がある。パネル406の上に障害となる構造体が存在しない場合、カセットまたは炉フィルターと同様に、パネル406を上から溝に挿入することもできる。
【0050】
図4の実施形態では、エンクロージャシステム400を複数の水冷式パネル406で囲んでもよいことがさらに示されている。ここでも、上述したように、この設計には、パネル406の1つが破損した場合、破損のない部分が内側を向くように破損したパネル406の向きを溝の中で変えるか、破損したパネル406を裏返し、あるいは、非常に短い停止時間で交換パネルを取り付けることができるという利点がある。さらに、保守作業員は破損したパネルにエンクロージャの外側から到達できるため、パネルを冷却する必要があって時間を無駄にすることもない。
【0051】
図5および図6を参照すると、設置位置にある個々のカセット型水冷式パネル500の2つの実施形態が示されている。カセットパネル500は、一対の丸いヘッダーまたは管506の間に設置することができる。別の設計では、ヘッダーは長方形または正方形のヘッダーであってもよい。管506には、たとえば、供給ヘッダーと戻りヘッダーとを含むことができる。ヘッダー506の保護用の熱シールドを提供するために、パネル500の内部空間504すなわち高温側に保護パネル508を配置してもよい。また、ヘッダー506そのものをパネルの外部空間502すなわち低温側に配置してもよい。ピンとくさびによる取り付けシステムを使用して、保護シールド508をヘッダー506に連結することができる。ここでは、ヘッダー506に設けられた一対の開口(図示せず)を通してピン510を挿入し、くさび512をピンに通して押し込むことで、外れるのを防ぐことができる。溶接などさらに処理をして、取り付けた部分を強化してもよい。
【0052】
図6では、保護パネル508をヘッダー506に連結するのに同様の取り付け機構を使用することができる。ここでは、片側に、戻りヘッダー506と水冷式パネル500との間に流体接続される戻りライン600が示されており、反対側では、供給ヘッダー506と水冷式パネル500との間に供給ライン602が流体接続されている。戻りライン600は、戻り継手608を介して戻りヘッダー506に連結することができ、供給ライン602は、供給継手606を介して供給ヘッダー506に連結することができる。
【0053】
図6を参照すると、給水ヘッダーおよび戻りヘッダーは、常置された支持構造体と一体化された部品であってもよい。それぞれの水冷式要素またはパネル500の取水口および排水口の接続を介して、構造体の対応する部分に供給し、水を戻すことができる。これは、それぞれの要素を分離するための遮断弁と、要素をすみやかに裏返して取り除くことができるようにするためのステンレス鋼のホースおよび手早く分離できる継手を用いて実現することができる。図6では、供給ヘッダー506と供給ライン602との間の流体の出入りを可能にしたり遮断したりするために、供給ライン602と流体接続された遮断弁または他の弁機構604が示されている。
【0054】
ここで、図7図11を参照すると、カセットパネルアセンブリのいくつかの実施形態が示されており、以下、これらについて説明する。ここでは、個々のカセットパネルアセンブリを、いくつかの異なる実施形態に設計することができる。いくつかの実施形態を図示するが、いずれも例にすぎず、本開示の原理および教示内容に包含される他のアセンブリも考えられる。
【0055】
第1の実施形態では、たとえば、カセット型の水冷式パネルを複数含むエンクロージャ700が示されており、各パネルは、その外部空間(すなわち、非作動側)から支持構造体の側壁の中と構造体の支持用控え梁の間に滑り込ませることができる。言い換えれば、カセットパネルは、頂部から支持構造体の中に滑り込ませ、サイドトラック設計の控え梁の中にも滑り込ませることができるように設計されている。控え梁/滑り路の高温面を、保護シールドまたは水冷式パネルによって、高温の炉のオフガスによる破損から保護することができる。本実施形態では、カセットパネルは、カセットパネル本体を含む複数の管に水を分配するパネルの本体に配置された供給および戻りラインのカップリングを有することになる。給水と戻りの配管系および継手によって、パネルの入口と出口を構造体のそれぞれのヘッダーに接続することができる。
【0056】
この第1の実施形態を、図7Aおよび図7Bに部分的に示す。ここでは、構造体アセンブリの一例を示すとともに、カセットパネルアセンブリをどのようにして所定の位置に滑り込ませるのかを示す。カセットパネルアセンブリ700は、カセットパネル本体を含む複数の管に水を分配するパネル700の本体に配置された供給および戻りラインのカップリング(図示せず)を有してもよい。給水と戻りの配管系および継手(図示せず)によって、パネルの入口/出口(図示せず)を構造体のそれぞれのヘッダーに接続することができる。
【0057】
図7Aおよび図7Bでは、支持構造体は、第1のI型梁706および第1のL型梁710によって形成されてもよい。この一対の梁は、第1の控え梁を形成することができる。図7Bに示すように、第1のI型梁706と第1のL型梁710との間に溝が作られ、第1パネル702の設置時には、この溝に第1のパネル702を滑り込ませることができるようになっている。第1の梁706に第1の保護パネル714を連結し、エンクロージャ700の内部空間718に熱シールドを提供することができる。
【0058】
第2の水冷式パネル704も同様に、第2のI型梁708および第2のL型梁712によって形成される溝の中に入れて組み立てることができる。これも図7Bに示されている。第2の保護パネル716を第2のI型梁708に連結し、エンクロージャ700の内部空間718に熱シールドを提供し、第2のI型梁708および第2のL型梁712を高温のガスなどから保護することができる。
【0059】
図7Aおよび図7Bに示すように、保護パネルは、I型梁の形状と幅に対応するように比較的細くてもよい。保護パネルには、保護するように設計されたそれぞれの控え梁に似た設計を含めることができる。
【0060】
図示を省略するが、パネル702、704には、各々、供給ラインおよび戻りラインに連結するための入口と出口を含むことができる。場合によっては、入口/出口と供給ヘッダー/戻りヘッダーとの間に可撓性のホースを連結してもよい。他の構成も同様に可能である。
【0061】
図8Aおよび図8Bに、エンクロージャシステム800の第2の実施形態を示す。この実施形態では、カセットパネルアセンブリを頂部から構造体の中に滑り込ませ、サイドトラック設計の控え梁の中にも滑り込ませることができる。滑り路の高温面(すなわち、システム800の内部空間818に面する部分)は、熱シールド814、816または水冷式パネルによって、高温の炉のオフガスによる破損から保護されている。この実施形態では、カセットパネルは、カセットパネル本体を含む複数の管に水を分配するパネル700の頂部に配置された供給および戻りラインのカップリング(図示せず)を有してもよい。給水と戻りの配管系および継手(図示せず)によって、パネルの入口および出口を構造体のそれぞれのヘッダーに接続することができる。
【0062】
本実施形態では、第1の水冷式パネルアセンブリ802および第2の水冷式パネルアセンブリ804を有するエンクロージャ800の一部が示されている。上述したように、各パネルは、波形巻き配管系により形成することができ、この場合、第1の端が供給ヘッダーと流体接続された入口を形成し、第2の端は、戻りヘッダーと流体接続された出口を形成することができる。ここでは、第1の供給ヘッダー806を第1のパネル802の入口(図示せず)に流体接続することができ、第2の供給ヘッダー808を第2のパネル804の出口(図示せず)に流体接続することができる。なお、頂部の管を供給ヘッダーとして説明しているが、他の実施形態では、これが戻りヘッダーであってもよい。また、本開示の範囲内で、可撓性のホースによってヘッダーをパネルの入口または出口に流体接続できることも考えられる。
【0063】
支持構造体は、第1のI型梁810および第2のI型梁812を含むことができる。I型梁810、812には各々、ヘッダー806、808を連結できるように溝またはチャネルを形成することができる。さらに、各ヘッダーには、設計された溝内に合わせるためのフランジ820を含んでもよい。これを図8Bに示す。
【0064】
図7Aおよび図7Bと同様に、図8Aおよび図8Bの実施形態も、支持構造体を保護するための熱シールドを形成する保護部材またはパネルを含み得る。ここでは、第1のI型梁810に第1の保護部材814を連結することができ、第2のI型梁812には第2の保護部材816を連結することができる。
【0065】
図9Aおよび図9Bに示す第3の実施形態では、カセットパネルアセンブリを頂部から構造体の中に滑り込ませるか、炉の低温側(すなわち、外部空間)からサイドトラック設計の控え梁にパネルを設置することができる。滑り路の高温面すなわち支持構造体の一部は、熱シールドまたは水冷式パネルによって、高温の炉のオフガスによる破損から保護されている。この実施形態では、カセットパネルは、(図8Aおよび図8Bの実施形態のように頂部ではなく)両側に供給および戻り型のヘッダーを有することができる。カセットパネルの本体を含む複数の管を、これらのサイドヘッダーに溶接してもよい。また、供給と戻りのカップリング(図示せず)を、供給ヘッダーおよび戻りヘッダーの両側に配置することができる。カセットパネルの給水と戻りの配管系および継手(図示せず)によって、パネルの入口および出口を構造体のそれぞれのヘッダーに接続することができる。
【0066】
図9Aおよび図9Bを具体的に参照すると、ドロップアウトボックスシステムまたは燃焼室などのエンクロージャ900の一部が示されている。エンクロージャ900は、第1の水冷式パネル902および第2の水冷式パネル904を含むことができる。各パネルは、供給ヘッダーに流体接続される入口と戻りヘッダーに流体接続される出口とを有する波形巻き配管系によって形成することができる。供給ヘッダーおよび戻りヘッダーは、第1の側面支持体910または第2の側面支持体912に形成されてもよい。このようにして、それぞれのパネルの波形巻き配管系を、そこから流体を受けたり戻したりするために側面支持体と流体接続することができる。
【0067】
側面支持体は、支持構造体全体の一部であってもよい。支持構造体は、第1のI型梁906および第2のI型梁908を含むことができる。保持クリップを使用して、控え梁(たとえば、I型梁)をそれぞれのパネルに連結することができる。たとえば、プレート914を、パネル902、904とI型梁906、908の両方に仮付け溶接し、確実な連結を達成することができる。図9Bに示すように、プレート914をL形の構造にして、構造の一部がパネルに連結され、L形構造の他の部分がI型梁に連結されるようにしてもよい。
【0068】
内部空間920で第1のI型梁906に第1の保護部材またはパネル916を連結し、熱シールドを形成して控え梁を保護することができる。同様に、内部空間920で第2のI型梁908に第2の保護部材またはパネル918を連結し、第2の熱シールドを形成することができる。
【0069】
仮付け溶接したプレート914を取り外すことにより、パネル902、904をエンクロージャの外部空間から容易に分解することができる。これにより、破損したパネルを一層安全かつ時間のかからない方法で修理または交換することができる。
【0070】
側面支持体を通って給水および戻りの経路を設定できるが、I型梁と保護部材との間に形成された正方形の溝を通る形で供給ラインおよび戻りラインを設けることも可能である。いずれにしても、この実施形態では、供給ラインおよび戻りラインを、パネルの頂部または底からではなく、それぞれのパネルの側面から設けることができる。
【0071】
図10A図10Bおよび図11に示す第4の実施形態では、カセットパネルの本体に組み込まれた水冷式シャフトの周りを回転するようにカセットパネルアセンブリを設計することができる。この設計では、カセットパネルを構造体のトラックに滑り込ませるか、構造体の外側から所定の位置に配置することができる。滑り路(すなわち、控え路)の高温面すなわち内部空間は、水冷式の部材またはパネル(たとえば、熱シールド)によって高温の炉のオフガスによって破損しないように保護されている。この実施形態では、カセットパネル本体は、シャフトの表面、シャフト内またはシャフトに沿って配置された給水および戻りの接続を有することができる。シャフトは、パネル本体に水を分配し、パネル本体からの水を集める(図11参照)。カセットパネルの給水と戻りの配管系および継手によって、パネルの入口と出口を構造体のそれぞれのヘッダーに接続することができる。この設計では、パネルの内部空間に面している側が破損または摩耗したら、これが外側を向くか外部空間にくるように、単にパネルを180°回転させればよい。
【0072】
図10Aおよび図10Bに、ドロップアウトボックスシステムなどのエンクロージャ1000の一部を示す。ここには、複数のパネルのうちの第1のパネル1002および第2のパネル1004がエンクロージャ1000の側壁を形成した状態を示してある。複数のパネルは各々、1つ以上の滑り路、支持路、中間支持路などを含む支持構造体に連結することができる。支持構造体は、少なくとも第1のI型梁1010、第2のI型梁1012、第3のI型梁1014によって形成することができる。第1および第2のI型梁は、図示のように、支持構造体の角を形成する。第1の保護部材1006を、第1のI型梁1010に対する熱シールドとして機能させ、第2の保護部材1008を、第2のI型梁1012に対する熱シールドとして機能させることができる。また、それぞれのI型梁を、炉からの高温の煙霧やガスから保護するための熱シールドと連結することもできる。
【0073】
図10Bに示すように、複数のパネルの各パネルは、支持構造体に対して枢支軸を中心に回転することができる。ここでは、第2のI型梁1012が整列される垂直面に対して、第2のパネル1004、第3のパネル1016、第4のパネル1018が回転するように示されている。これは、エンクロージャの内部空間に面しているパネルの片側が、高温のガス、煙、デブリに連続的に曝露されるようなときに望ましい場合がある。この面は、時間の経過とともに摩耗または破損する可能性がある。パネルを交換するのではなく、パネルをその枢支軸1112を中心に回転させて、摩耗した側が内側ではなく外側に向くようにすることができる。結果、パネルの摩耗や破損のない面が内側に向くことになる。これにより、パネルを長期間使用できるようになり、システムの生産性が向上する。さらに、エンクロージャの外部空間からパネルを回転させることができるため、エンクロージャを冷却する必要なく、そのようなメンテナンスと修理を実行することができる。これにより、作業員が煙霧やガスに曝露される機会も減り、作業環境がより安全になる。
【0074】
このタイプのパネルの例を図11に示す。ここでは、パネル1100に、このパネルを通ってのびる細長いシャフト1102を含むことができる。シャフト1102は、パネル1100の中央または中心を貫通してのびていてもよく、中央よりもパネルの上または底に近い位置に配置されてもよい。図11では、シャフト1102は、パネル1100のほぼ中央にある。
【0075】
シャフト1102は、パネル1100の枢支軸1112を形成する。言い換えると、パネル1100は、シャフト1102を中心に回転することができる。図示を省略するが、シャフト1102は、両端にある軸受の間に旋回可能に配置されてもよい。軸受は、たとえば、控え梁または支持構造内に配置されてもよい。
【0076】
シャフト1102の上方に第1の回路1104を配置し、シャフトの下方に第2の回路1106を配置することができる。シャフト1102には、一対の控え梁または支持構造体に連結するための第1の継手1108および第2の継手1110を含むことができる。さらに、シャフト1102は、その中に配置されたプラグまたはストップ1112を除いて中空であってもよい。図11では、ストップ1112は、シャフト1102の供給側に近い位置に配置される。ストップ1112の位置は変更可能であるが、図11に示すように、第1および第2の回路の入口の近くに配置される。
【0077】
供給ラインAで水または他の液体をシャフト1102に供給することができる。水がシャフト1102に入ると、ストップ1112がゆえに第1の回路1104と第2の回路1106に送り込まれる。その後、経路Bを介して、第1の回路および第2回路の波形巻き配管系を流れることができる。水または液体は、それぞれの回路から出て、出口CおよびDでシャフトに戻ることができる。図11に示すように、水または液体は、その後シャフト1102を出て、戻りラインEに流れることができる。
【0078】
シャフト1102が支持構造体に回転可能に連結されている状態で、パネル1100を、望むように回転させることができる。各パネルに弁を設け、それぞれの回路への給水を遮断することができる。また、図示の実施形態では、回路に流体接続された供給ラインまたは戻りラインはなく、水の流れはシャフト1102だけを通っている。しかしながら、他の実施形態では、水または他の冷却用流体を、頂部、底部、側面または中央を含む他の場所で(たとえば、可撓性のホースを介して)パネルに供給してもよい。
【0079】
水または他の冷却液をパネルに供給できるように可撓性のホースがパネルの前面に結合されている場合、ホースを有する面(すなわち、供給および戻り用)は低温側またはドロップアウトボックスもしくは燃焼室エンクロージャの側面に配置される。これにより、エンクロージャの中にいなくても、ホース、供給口、戻り口に直接到達することができる。パネルの背面が破損した場合、前面がエンクロージャの内部空間または高温側になるようにパネルをひっくり返せば、可撓性のホースはそこから外れる。さらに、前面の入口および出口には、そこからの漏れを防ぐために、溶接によってパッチがほどこされてもよい。パネルの背面で、設置された配管系と継手に新たな入口と新たな出口を機械加工して、供給ラインと戻りラインをパネルに接続することができるようにするが、このとき反対側の面に接続する。
【0080】
さらに、場合によっては、パネルの片面の一部のみが破損または摩耗する。たとえば、パネルの背面の底部が摩耗しているのに対し、パネルの残りの部分は良好な動作状態にあると判断される場合がある。この例では、パネルを180°回転させ、背面をエンクロージャの内部空間に向けたまま、背面の底部が上になるようにすることができる。その際、特に前面の入口と出口が(頂部、底部または側面ではなく)パネルの本体にある場合、供給および戻り用の可撓性ホースには、それぞれの入口と出口へのパネルと再接続するのに十分な長さが必要である。換言すると、パネルの向きに関係なく、供給ホースが入口に接続され、戻りホースが出口に接続されるように、入口を常に入口、出口を常に出口とすることができる。
【0081】
しかしながら、いくつかの実施形態では、パネルが第1の向きのときにパネルの第1の開口部が入口で、異なる向きのときに第1の開口部が出口となってもよい。したがって、パネルは、支持構造体に対する位置または向きに基づいて、入口および出口の位置に関してある程度の柔軟性がある。
【0082】
これらの水冷式の要素またはパネルは、チャンバ内の腐食性ガス、高い一酸化炭素濃度、高温(たとえば、2,500+°F(約1,370+℃))の影響を受けずに安全である構造体の外側または頂部(すなわち、低温側)から容易に取り外しまたは反転できる大きさであると望ましい場合がある。
【0083】
図7から図9に示す上述した実施形態では、水冷式の要素またはパネルを、構造体の可能な場所にはどこにでも設計されるパネル案内路に滑り込ませることができる。場合によっては、水冷式の要素またはパネルには、独立した構造体に取り付けるためのブラケットが必要な場合がある。ただし、水冷式の要素はリバーシブルにすることが可能であるため、低温側でブラケットが必要な場合、これを簡単に取り外して、反対側の水冷式の要素に移して使用し続けることができる。
【0084】
本開示では、水冷式の要素を、小さくて扱いやすい大きさに形成することができる。その結果、チャンバの高温面の内部構造がゆえ、予定されたまたは予定外でコストのかかるダウンタイム修理のためにシステムを停止することなく、必要に応じて局所的な破損に対してパネルの反転または修理を実施できる可能性が生まれることになる。
【0085】
さらに、水冷式の要素は各々、クイック切断機能を持つステンレス鋼の可撓性ホースおよび配管系を介して独立構造体のそれぞれのヘッダーに接続される専用の給水ラインと戻りラインを有してもよい。その結果、これにより、必要に応じて水冷式の要素を簡単かつ迅速に取り外し、反転および/または交換することができるようになる。
【0086】
独立構造体の設計に応じて、独立構造体の控え梁の高温側または内部空間の側に、水冷式の保護要素の配置が必要になる場合がある。必要に応じて、水冷式の保護部材または熱シールドを控え梁に取り付け、控え梁の両側にある水冷式の要素に接触させることができる。控え梁の水冷式要素保護パネルの一例を、本開示の図7図10に示す。
【0087】
水冷式の要素の供給および/または戻りラインは各々、水漏れの場合に水冷式の要素を水流から切り離すことができるように、弁64を含むことができる。水冷式の要素の戻りラインは、パネル内に存在する水の温度を測定し、水温の変化を測定するために、圧力逃がし弁と熱電対/RTDを含むように設計されている。パネル内の温度が上昇した場合、予定されたシャットダウンまたは予定外のシャットダウンが発生する前に、水流を停止したり、パネルを取り外して交換したりすることが可能である。この新たなパネル設計では、一般的な水冷式ダクト、燃焼室、ドロップアウトボックスなどの壁部分全体ではなく、小さなパネルへの水漏れからの切り離しができるが、これは従来のモノリシック設計または大型パネルの構造体には不可能である。結果として、炉の作業員は、処理システムへの水漏れという潜在的には大きな、場合によっては壊滅的な影響に対して、小さな問題だけを扱うことができる。
【0088】
本開示において、本明細書で説明した実施形態は、運用コストならびに予定されたダウンタイムおよび予定外のダウンタイムの両方を実質的に低減し得る重要な技術を改善する。この理由の1つは、本明細書で説明し、図示した実施形態が、より永久的な構造体である支持構造体の耐用寿命を延ばす可能性があるためである。また、支持構造体は、「カセット型の」水冷式の要素を機器の低温側に簡単に挿入したり取り外したりするための必要な支持溝とブラケットを使用して設計されている。実際、これによって、高温で、一酸化炭素濃度が潜在的に高く、粉塵ガスのある限られた空間で作業をする場合に発生する可能性のある怪我から、作業員または保守人員が守られる。
【0089】
加えて、水冷式の要素は、両側を動作に使用できるようにリバーシブルにすることができる。これにより、カセットパネルの耐用寿命が延び、場合によっては2倍になる。さらに、水冷式の要素は、取り扱いに適した大きさであると望ましく、装置の特定の領域および用途での耐用寿命を最大にするために、水冷式の要素にはどのような製造材料にも適応する機能が求められる。本開示の実施形態は、特に水冷式の要素の修理および交換作業中に、プロセスを改善し、設備の動作の安全性ならびに人員の安全性を高めることができる。
【0090】
水冷式または液冷式のパネルは、ドロップアウトボックスで使用されるものとして図示し、説明されているが、高温のガス、煙霧および微粒子が存在する、燃焼室、ダクト、電気アーク炉の上部シェル、排気システムまたは他のエンクロージャで、これらのパネルを使用することも可能である。パネルの大きさおよび形状は、場所に合わせてカスタマイズできる。パネルは、それぞれのパネルを上から溝に挿入する垂直配置用に設計されているが、横から溝に挿入するように水平配置にしてもよい。あるいは、特に地面から高い位置で作業する場合、パネルを下から溝に挿入できる場合もある。何らかの機構またはラッチを使用して、パネルを所定の位置に保持すればよい。
【0091】
図13Aから図13Cを参照すると、本開示の異なる実施形態が示されている。ここでは、ドロップアウトボックス1300または他のエンクロージャを示す。ドロップアウトボックス1300は、高さが40フィート(約1220cm)以上であってもよく、本明細書に記載したような種類の支持構造体および水冷式パネル1304を含むことができる。ドロップアウトボックス1300には、図1の扉132と同様の入口1302を含むことができる。この例では、ドロップアウトボックス1300には、1つ以上の階またはフロア1306を設けることができる。図13には、たとえば、中二階1306を示してある。場合によっては、中二階1306の上にあるパネル1304に達するのが困難な可能性がある。はしごが役立つ場合もあるとはいえ、非常に高い位置にしか届かない場合もある。足場または他のリフトがエンクロージャ内に収まらない場合もある。
【0092】
したがって、エンクロージャ1300内の上の階に達するには、複数のパネル1304のうちの1枚を使用して、中二階1306または他の階で床面を形成すればよい。図13Bおよび図13Cにおいて、パネル1308は、上昇位置(図13B)と下降位置(図13C)との間でシリンダーまたはアクチュエータ1308によって制御可能に作動されてもよい。下降位置では、パネル1310を実質的に水平にして、ラッチシステム1312によって所定の位置に保持することができる。ラッチシステム1312は、機械式、油圧式、電気式、電気機械式、空気圧式または他の任意の種類のアクチュエータ1308で制御すればよい。同じことが、フロアパネル1310にも当てはまる。図13Cの下降位置では、はしごまたは他の装置をパネル1310の上に配置して、中二階1300の上方に位置する水冷式パネルに達することができる。このシステムでは、フロアパネルの動きを制御するための他の種類のシステムも可能であり、上述したアクチュエータは、そのような一例にすぎない。ラッチシステム1312の制御についても同じことが当てはまる。このシステムでは、フロアパネルを下降位置で連結および保持するための既知の任意のシステムを使用することができる。
【0093】
以上、本開示の原理を組み込んだ例示的な実施形態を開示したが、本開示は、ここに開示した実施形態に限定されるものではない。代わりに、本開示は、その一般原則を使用して、本開示のあらゆる変形、使用または適応を網羅することを意図している。さらに、本出願は、本開示が関係し、添付の特許請求の範囲内に含まれる、当該技術分野における既知の慣行または慣例の範囲内にある本開示から外れた内容も包含することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図13C