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特許7042851連続鋳造用の結晶器およびそれを形成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】連続鋳造用の結晶器およびそれを形成するための方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/057 20060101AFI20220318BHJP
   B22D 11/04 20060101ALI20220318BHJP
   B22D 11/059 20060101ALI20220318BHJP
   B22D 11/055 20060101ALI20220318BHJP
   B22D 11/043 20060101ALI20220318BHJP
【FI】
B22D11/057
B22D11/04 311B
B22D11/04 311D
B22D11/04 311G
B22D11/059 110E
B22D11/059 120B
B22D11/055 A
B22D11/043
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019571121
(86)(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 IB2018051564
(87)【国際公開番号】W WO2018163125
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】102017000027045
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519326851
【氏名又は名称】エエンメ・モウルズ・エッセ・ピ・ア・ア・ソシオ・ウニコ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンジェロ・ナクレリオ
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ・モリ
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-060745(JP,U)
【文献】特開昭59-050950(JP,A)
【文献】特開平06-031401(JP,A)
【文献】国際公開第2014/118744(WO,A1)
【文献】特表2006-523534(JP,A)
【文献】特表2016-525015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状体を備えた連続鋳造用の結晶器(1)であって、
前記筒状体は、長手方向対称軸(A)を有し、第1の開放端部(3)および第2の開放端部(4)を有し、
前記筒状体が、その中に、対称軸に沿って、前記第1の開放端部と前記第2の開放端部との間に、前記対称軸に沿った長手方向の導管の形状を有する鋳造キャビティ(5)を画定し、前記鋳造キャビティが、前記筒状体の環状側壁(7)の内面(6)によって範囲が定められ、
前記筒状体の環状側壁(7)の半径方向厚さに前記対称軸に沿って1つまたは複数の導管(8)が設けられ、前記筒状体が、第1の筒状要素(9)および第2の筒状要素(10)によって形成され、前記第2の筒状要素の中に前記第1の筒状要素が同軸に取り付けられており、前記1つまたは複数の導管を形成するように、前記第1の筒状要素および第2の筒状要素のうちの一方には、その1つの側面(11)に、他方の筒状要素に向かって半径方向に開き、他方の筒状要素の側面(13)によって流体を密封するように閉じられた1つまたは複数の溝(12)が設けられ、
前記第1の筒状要素(9)および前記第2の筒状要素(10)が両方共、一体物であり、それぞれ、金属合金の単一部品に作られ、前記第1の筒状要素(9)および前記第2の筒状要素(10)は、前記筒状体(2)が一体物となるように機械的に結合されて、これにより前記筒状体は塑性変形されており、前記第2の筒状要素(10)の内側側面(13)が、前記第1の筒状要素(9)の外側側面(11)に連続して機械的に固定され、前記第1の筒状要素(9)および前記第2の筒状要素(10)のそれぞれが、前記対称軸に垂直に測定された第1の半径方向厚さ(S1)および第2の半径方向厚さ(S2)を有し、前記第2の半径方向厚さ(S2)の寸法と前記第1の半径方向厚さ(S1)の寸法との間の比が0.75から1.2の範囲であることを特徴とする、結晶器。
【請求項2】
前記第1の筒状要素(9)および前記第2の筒状要素(10)が両方共、98重量%より多い銅を含む1つの同じ銅基金属合金より作られていることを特徴とする、請求項に記載の結晶器。
【請求項3】
前記第1の筒状要素(10)および前記第2の筒状要素(10)が、2つの異なる金属合金より作られ、少なくともその一方が98重量%より多い銅を含む銅基金属合金であることを特徴とする、請求項に記載の結晶器。
【請求項4】
前記導管(8)のうちの1つまたは複数が、使用時に冷却液の流れを受け入れるように構成されていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の結晶器。
【請求項5】
複数の前記導管(8)を備え、前記導管の少なくともいくつかが、前記第1の筒状要素とは異なる材料、好ましくは、金属より作られた補強棒(18)によって占められ、前記補強棒(18)が、前記溝(12)内に遊びなく挿入され、これにより前記溝は塑性変形されて、前記補強棒(18)は前記第1の筒状要素(9)と前記第2の筒状要素(10)との間で機械的に動かなくなることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の結晶器。
【請求項6】
第1の開放端部および第2の開放端部を有する筒状体を備えた連続鋳造用の結晶器(1)を製造するための方法であって、前記筒状体が、その中に、前記第1の開放端部と前記第2の開放端部との間に、長手方向の導管の形状を有する鋳造キャビティ(5)を画定し、前記鋳造キャビティが、前記筒状体の環状側壁(7)の内面によって範囲が定められ、前記筒状体の環状側壁(7)の半径方向厚さに1つまたは複数の導管(8)が形成され、前記方法が、
i)- 第1の予め設定された長さを有し、第1の予め設定された半径方向厚さ(S1)を有する第1の側壁(14)によって範囲が定められた、単一部品の一体物である第1の直線の筒状要素(9)を、銅、または銅を多く含む銅合金よりなる第1の金属材料で作るステップと、
ii)- 第2の予め設定された長さを有し、第2の予め設定された半径方向厚さ(S2)を有する第2の側壁(15)によって範囲が定められた、単一部品の一体物である第2の直線の筒状要素(10)を、前記第1の金属材料と同一、または異なる第2の金属材料で作るステップであって、前記第2の筒状要素(10)は、前記第1の筒状要素(9)より幅が広い、ステップと、
iii)- 前記第1の筒状要素(9)の外側側面(11)に、または、前記第2の筒状要素(10)の内側側面に、1つまたは複数の半径方向に開いた溝(12)を作るステップと、
iv)- 前記第1の筒状要素と前記第2の筒状要素との間に予め設定された半径方向の遊び(G)を維持するように、前記第1の筒状要素に対して同軸に、前記第2の筒状要素(10)を前記第1の筒状要素(9)に嵌めるステップと、
v)- 前記第1の筒状要素(9)および前記第2の筒状要素(10)を、環状のダイス(23)を通過させ、前記鋳造キャビティ(5)に与えられる形状が逆に再生されたマンドレル(24)を前記第1の筒状要素(9)に挿入することによって、前記第1の筒状要素(9)および前記第2の筒状要素(10)を一緒に絞り、前記第1の筒状要素および前記第2の筒状要素と共に前記マンドレル(24)を、前記筒状体(2)に与える形状を有する前記第2の筒状要素(10)の前記側壁を形成するように構成された前記ダイス(23)を通過させ、その結果、前記第1の筒状要素(9)および前記第2の筒状要素(10)が前記ダイス(23)を通って一緒に押し出され、前記ダイスと前記マンドレルとの間でプレスされ、塑性変形を受け、したがって、前記半径方向の遊び(G)がなくなり、前記第1の筒状要素(9)と前記第2の筒状要素(10)との間で、それらを一体物にする連続した機械的結合が形成され、その結果、前記筒状体(2)を一体物になるように形成するステップであって、
- 前記第1の予め設定される半径方向厚さ(S1)および前記第2の予め設定される半径方向厚さ(S2)、ならびに前記溝の形状が、前記絞りのステップの間に、前記1つまたは複数の半径方向に開いた溝(12)が、前記筒状体の前記側壁内に1つまたは複数の導管(8)を形成するように、金属材料で満たされていないが、その代わり、半径方向に閉じているように選ばれ、前記第1の予め設定される半径方向厚さ(S1)および前記第2の予め設定される半径方向厚さ(S2)は、前記第2の半径方向厚さ(S2)の寸法と前記第1の半径方向厚さ(S1)の寸法との間の比が0.75から1.2の範囲となるように設定される、ステップと
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項7】
前記第1の筒状要素(9)および前記第2の筒状要素(9、10)が、形成された後で、それぞれの前記側壁(14、15)を削られることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記絞りのステップの前に、補強棒(18)が、前記溝(12)の少なくともいくつかに挿入され、前記補強棒が、前記第1の筒状要素(9)および前記第2の筒状要素(10)とは異なる材料より作られ、前記絞りのステップの間、前記補強棒(18)が、前記第1の筒状要素(9)と前記第2の筒状要素(10)との間で一体物のように動かなくなることを特徴とする、請求項またはに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2017年3月10日に出願され、その開示が参照によって援用されるイタリア国特許出願第102017000027045号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、冷却するための、および/または補強要素を収容するための内部導管を備えた、「インゴット型」とも称される連続鋳造用の結晶器に関する。
【0003】
本発明はさらに、内部導管を備えた、連続鋳造用の前記結晶器を形成するための迅速で安価な方法に関する。
【背景技術】
【0004】
鋼(および/または他の金属合金)用の連続鋳造プラントにおいて、結晶器または「インゴット型」として知られる装置が使用されることは知られており、この装置は、角柱形または円形の断面、一般には、丸い縁を有する方形または矩形の断面を有する筒状要素よりなり、溶融状態の金属合金(または他の溶融金属材料)が注ぎ込まれる第1の端部を有し、まだ白熱しているが実質的には固体または半固体状態になった金属合金/金属材料が流れ出る、第1の端部の反対側の第2の端部を有する。
【0005】
知られている結晶器は、銅、または銅の含有量が多い銅合金より作られた単一部品の筒状体よりなり、次いで、水または他の冷却液が内部に流されるジャケットの内側に取り付けられて、実際の「インゴット型」を形成する。結晶器内を流れる溶融金属は、徐々に冷えて、連続して通って少なくとも半固体状態になる。
【0006】
これらの「一体物」結晶器は、動作時における冷却の一様性および有効性、ならびに結晶器の剛性に結びついた使用中の様々な問題を有し得る。これらの問題を緩和または除去するために、一体物の筒状体の側壁の厚みの中に、例えば、水が循環する長手方向の冷却導管が形成された冷却結晶器が提供される。前記冷却導管は、例えば、適切な工具によって、筒状体の長さ全体にわたって一端から他端まで施された長手方向のチャネルよりなる。かなり長い場合には、前記動作は複雑で、使い物にならない物を製造してしまう場合がある。
【0007】
結晶器の構築においてさらに複雑なことは、通常、直線状に長手方向に延びておらず、大きな曲率半径で曲がっており、したがって、典型的なバナナ状の長手方向の形状を示しているという事実である。実質的に、結晶器を構成する筒状体の対称軸は、真っ直ぐではなく、湾曲している。
【0008】
さらに、液体金属と接触する内側側面は、溶融金属が通る断面が徐々に狭くなるような、したがって、凝固ステップの間の収縮を補うような形状にしなければならない。すなわち、わずかにテーパ状にしなければならない。ここで、および下記で、「テーパ」は、内側側面がそれ自体、平行ではなく、第1の端部から第2の端部に行くにつれて長手方向軸に向かって収束するという事実を意味する。
【0009】
したがって、上記の欠点を克服するための様々な解決策が知られている。国際公開第2014/118744号によれば、結晶器は、その外面に長手方向の溝を有し、これらの溝は、最終的には除去される低融点合金で溝を埋めた後に、電解析出によって形成された単純な金属層によって外側に向かって閉じられている。したがって、これは、長くて費用のかかるプロセスであり、この場合、外側の電解層の接着が重要となる。
【0010】
国際公開第2014/207729号によれば、結晶器の半径方向外側要素は、半径方向内側要素を複合材で結合し、次いで、重合されることによって形成される。この解決策は、素早く製造することができるが、コストがかかり、結晶器の外側部分が非金属材料よりなるという欠点を有する。
【0011】
最後に、国際公開第2016/178153号によれば、半径方向外側要素を半径方向内側の筒状要素(その外側側面に長手方向の溝が設けられている)に組み付けるために、前記半径方向外側要素は、2つの半割れ殻を機械的に結合することによって生成される。実際には、外側筒状要素は一体物ではないが、長手方向に2つの半円要素に分割され、それらは、横断ボルトによって接続され、一体物の内側筒状要素をバイスのように締め付ける。しかしながら、この解決策もまた、コストがかかり複雑で、さらに、冷却液が漏れ出る危険性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第2014/118744号
【文献】国際公開第2014/207729号
【文献】国際公開第2016/178153号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、望ましくない変形を避けることができ、簡単で比較的安価な構造の連続鋳造用の結晶器を提供することであり、特に、本発明の1つの目的は、同時に、素早く、比較的安価に製造でき、また、高い冷却効率と高い信頼性を保証する、内部導管を有する結晶器を提供することである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、素早く、簡単に、比較的安価に、公知技術の欠点のない連続鋳造用の結晶器を製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明によれば、添付の特許請求の範囲で規定するように、連続鋳造用の結晶器、およびそれを製造するための方法が提供される。
【0016】
具体的には、結晶器は、図示の例では、直線状ではなく、わずかに湾曲する(ここで、および下記で、「わずかな」湾曲は、約10メートル程度の曲率半径を意味する)長手方向対称軸を有する筒状体を備え、筒状体は、第1および第2の筒状要素から形成され、これらは、予め設定された半径方向の遊びを有して、見られるように、第2の筒状要素の中に第1の筒状要素が同軸に取り付けられており、第1の筒状要素に、その外側側面に形成されて、外側に向かって半径方向に開いた1つまたは複数の溝を前もって設けるか、または、第2の筒状要素に、その内側側面に形成されて、内側に向かって半径方向に開いた1つまたは複数の溝を前もって設けるか、どちらかを設け、第1および第2の筒状要素は両方共一体物であり、それぞれ、金属合金の単一部品に作られ、筒状体が一体物となるように、塑性変形させることによって一緒になるように機械的に結合され、第2の筒状要素の内側側面は、第1または第2の筒状要素の1つまたは複数の溝が、流体を密封するように閉じられて、筒状体の1つまたは複数の内部導管を形成するように、第1の筒状要素の外側側面に連続して機械的に固定される。
【0017】
このように形成された内部導管は、使用時に冷却液(水)の流れを受け入れるように構成され、かつ/または、いくつか、またはすべては、その中に、第1および第2の筒状要素を作る金属材料とは異なる材料より作られた補強棒を受け入れるように構成され、1つまたは複数の溝に挿入され、次いで、塑性変形させることによって機械的に結合させている間、第1の筒状要素と第2の筒状要素との間で動かなくなる。
【0018】
機械的結合は、絞りによって、すなわち、適切な形状のマンドレルを第1の筒状要素内に挿入し、次いで、第1および第2の筒状要素の両方を適切な形状の固定された環状ダイスを通るように押す/引くことによって形成される。
【0019】
本発明のさらなる特徴および利点は、単なる例として提供され、添付の図面を参照した非限定的な実施形態の以下の説明から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明によって製造される結晶器の長手方向の概略断面図である。
図2図1の結晶器の平面II-IIでの概略断面図である。
図3図1および図2の結晶器を構成する要素の長手方向図で、単なる例としてその可能な異なる構成の1つを示している。
図4図1および図2の結晶器を構成する要素の正面図で、単なる例としてその可能な異なる構成の1つを示している。
図5図1および図2の結晶器の製造のための中間製品を構成するブランクの組立ステップを、部分的な長手方向の断面および部分的な外面で示す概略図である。
図6】本発明による製造方法の最終ステップの図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1から図6を参照すると、符号1は全体として、溶融金属材料の連続鋳造を実行するように構成された結晶器を示し、溶融金属は、公知であり、図示されていないが、鋼などである。
【0022】
結晶器1は、非限定的な例では、わずかに湾曲して示された長手方向対称軸Aを有し、共に開いている第1の端部3および第2の端部4を有する筒状体2を備え、筒状体は、その中に、対称軸Aに沿って、第1の端部3と第2の端部4との間に、対称軸Aに沿った長手方向の導管の形態を有する鋳造キャビティ5を画定し、鋳造キャビティ5は、筒状体2の環状側壁7の内面6によって範囲が定められ、筒状体2の環状側壁7の半径方向厚さSに対称軸Aに垂直に1つまたは複数の導管8が形成され、本発明の1つの態様によれば、これらの導管は、理解されるように、使用時、公知の方法であるので、ここでは、簡潔にするために図示されていない方法で、冷却液、例えば水、の流れ、および/または補強棒18を受け入れるように構成されている。
【0023】
筒状体2は、円形または角柱形の断面を有することができ、矩形または方形が好ましく、しばしば、丸い縁を有しており、図示の例では、方形の断面を有している。
【0024】
筒状体2は、下記でよりよく理解されるように、第1の筒状要素9および第2の筒状要素10から形成され、第2の筒状要素の中に第1の筒状要素が同軸に取り付けられており(図3図6)、さらに、図示の非限定的な例では、第1の筒状要素9(図3および図4)には、その外側側面11に、外側に向かって半径方向に開いた1つまたは複数の溝12が設けられている。筒状要素9および10が筒状体2を形成するように結合された状態では、溝12は、見られるように、第2の筒状要素10の内側側面13によって外側に対して流体を密封するように閉じられて、1つまたは複数の導管8を形成する。
【0025】
例示的に示された実施形態では、複数の直線の溝12は、これもまた直線の筒状要素9の対称軸Bに平行であるが、外側側面11に形成され、溝12は、任意の形状(半円形、角柱形など)の断面を有することができ、また、互いに平行でなく、かつ/または直線でなく、例えば、螺旋状に延びることができ、筒状要素9は、外側側面11と、筒状要素9と10が結合した状態で筒状体2の内面6を画定する内側側面との間に範囲が定められた環状側壁14によって画定される。
【0026】
同様に、筒状要素10もまた直線で、内側側面13と、筒状要素9と10が結合した状態で筒状体2の環状側壁7の外面を画定する外側側面16との間に範囲が定められた環状側壁15によって画定される。
【0027】
図示されていない可能な変形形態によれば、簡潔にするために、溝12は、内側側面13に形成され、内側に向かって半径方向に開かれ、したがって筒状要素9に面することができる。
【0028】
本発明によれば、第1および第2の筒状要素9、10は、それぞれ、例えば、鋳造後に機械加工することによって金属合金の単一部品に作られるという意味で、両方共金属の一体物であり、さらに、筒状体2が、同軸に配置された筒状要素9、10が重ねられて結合することによって形成されるだけでなく、筒状要素10の内側側面13が、筒状要素9の外側側面11に連続して機械的に固定されるので、それ自体一体物となるように、2つの筒状要素9、10は、塑性変形させることによって、一緒になるように機械的に結合される。
【0029】
本発明の非二次的な態様によれば、一体物になるように機械的に結合するという前記のタイプを可能にするために、第1および第2の筒状要素9、10の側壁14、15は、それぞれS1およびS2で示された第1および第2の予め設定された半径方向厚さを有し、筒状体2の対称軸Aに垂直に厚さS1およびS2を測定すると、これらの寸法は、予め設定された比S2/S1を有し、これは、0.75から1.2の範囲が好ましい。
【0030】
第1および第2の筒状要素9、10は両方共、重量で98%より多い銅を含む銅基金属合金で作られる。
【0031】
可能な変形形態によれば、第1および第2の筒状要素9、10は2つの異なる金属合金より作られ、そのうちの少なくとも1つは、重量で98%より多い銅を含む銅基金属合金である。
【0032】
好ましい実施形態の例では、筒状体2は、図示の非限定的な例では、直線で対称軸Aに沿って長手方向に延びる複数の導管8を備え、導管8は、筒状要素9または筒状要素10のどちらかに同じように形成される、2つの筒状要素9、10を結合することによって半径方向に閉じた溝12によって画定される。
【0033】
さらに、本発明の可能な変形形態によれば、導管8の少なくともいくつか(またはすべて)は、第1の筒状要素9とは異なる材料、好ましくは、金属より作られた補強棒18によって占められる。
【0034】
前記補強棒18はまた、形成された溝12内のどこにも遊びなく挿入され、続いて、塑性変形させることによって第1の筒状要素9と第2の筒状要素10との間で機械的に動かなくなるので、一体物となるように、筒状体2の一体部分を形成する。
【0035】
したがって、本発明による導管8は、公知の方法で、簡潔にするために図示されていないが、使用時に冷却液、例えば、水の供給部に接続されている場合、冷却導管として働くことができる、または、もっぱら、棒18を収容するように、または、さらに、両方の機能を果たすように働くことができる。
【0036】
本発明によれば、結晶器1のような連続鋳造用の結晶器を製造するために、種々のステップよりなる製造方法にしたがってそれぞれの一体物の筒状体2を形成しなければならない。
【0037】
第1のステップにおいて、第1の筒状要素9は、銅、または銅を多く含む銅合金よりなる第1の金属材料で作られ、それを(例えば、鍛造、または任意の他の機械加工法によって)直線で単一部品の一体物に形成する。筒状要素9は、第1の予め設定された長さを有し、第1の予め設定された半径方向厚さS1を有する第1の側壁14によって範囲が定められるように作られる。
【0038】
第1のステップの前、または第1のステップの間にも実行することができる第2のステップにおいて、第2の筒状要素10は、第1の金属材料と同一、または異なる第2の金属材料で作られ、それを(例えば、鍛造、または任意の他の機械加工法によって)直線状で単一部品の一体物に形成する。筒状要素10は、第2の予め設定された長さを有し、第2の予め設定された半径方向厚さS2を有する第2の側壁15によって範囲が定められるように作られ、さらに、第2の筒状要素10は、第1の筒状要素9より幅が広くなるように作られる。
【0039】
第3のステップにおいて、溝12が設けられていない筒状要素9、10に向かって半径方向に開いた1つまたは複数の溝12が、図示の例においては、第1の筒状要素9の外側側面11に、または、図示されていない変形形態によれば、第2の筒状要素の内側側面13に、筒状要素9、10のうちの一方のみに機械加工によって作られる。
【0040】
第4のステップにおいて、第2の筒状要素10を、第1の筒状要素9と第2の筒状要素10との間に予め設定された半径方向の遊びGを維持するように、第1の筒状要素9に対して、したがって軸Bに対して同軸に、第1の筒状要素9に嵌める(図5)。
【0041】
すべての前のステップの後に続いて順序通りに実施しなければならない第5のステップにおいて、第1および第2の筒状要素9、10は、それらを、環状のダイス23を通過させ(図5)、鋳造キャビティ5に与えられる形状が逆に再生されたマンドレル24を第1の筒状要素9内に挿入することによって、一緒に絞られる。次いで、第1および第2の筒状要素9、10はどちらも、第2の筒状要素10の側壁15を、筒状体2に与える形状に形成するように構成されたダイス23全体にわたってマンドレル24によって押され、または、マンドレル24は筒状要素9、10と共に、公知であり、簡潔にするために図示されていない適切な工具を使ってダイス23から引き抜かれる。
【0042】
この絞りのステップは、第1および第2の筒状要素9、10がダイス23を通って一緒に押し出され、ダイス23とマンドレル24との間でプレスされ、半径方向の遊びGをなくす塑性変形を受け、次いで、それらの間に連続した機械的結合を形成してそれらを一体物にするように実施され、その結果、初めは互いに独立し自立している2つの筒状要素9、10から一体物の筒状体2を生成する。
【0043】
第1および第2の予め設定される半径方向厚さS1およびS2、ならびに溝12の形状は、導管8が冷却のために使用される場合、絞りのステップの間、半径方向に開いた1つまたは複数の溝12が、変形のステップ時に金属材料で満たされずに半径方向に閉じており、その結果、生成された筒状体2の側壁7に1つまたは複数の中空の導管8を形成するように、選ばれなくてはならない。棒18が溝12の中に配置される場合、第1および第2の予め設定される半径方向厚さS1およびS2、ならびに溝12の形状は、変形中の金属材料が溝12の中に棒18を動かないようにして、筒状要素9、10の両方と一体物になるように選ばれる。
【0044】
絞りのステップがうまくいって、前記ステップの間に導管8が形成されることを確実にするために、対称軸に垂直に測定された、第2および第1の予め設定される半径方向厚さS2とS1の寸法の比は、適切に計算されなければならず、それは、0.75から1.2の範囲が好ましい。
【0045】
絞りのステップが完了すると、必要ならば、絞り加工中に変形したそれぞれの末端部分9および21の両方を工具25によって切り取ることを含む最後のステップが実施されて(図6)、一体物の筒状体2が形成される。
【0046】
第1および第2の筒状要素9、10は、形成された後で、絞りのステップの前に適切に削られて、所定の寸法にして、それらが正しく結合することを保証する。第2の予め設定された厚さS2の第1の端部19における減少分と予め設定された長さの比は、0.1から0.2の範囲である。
【0047】
絞りのパラメータは、単一の一体物を形成するように正しく固定し、溝12の形状を保つことを保証するようなものである。
【0048】
最後に、結晶器1、したがって、筒状体2は、図1および図2にうまく示されているように、一般的には弓形、すなわち、バナナ状の長手方向の形状であり、その結果、前述の場合には、長手方向軸Aは湾曲していることに留意すべきである。これは、マンドレル24およびダイス23を適切な形状にすることによって得られる。同時に、絞りのステップの間、側壁14、15がぴったりと結合することによって前記側壁7が形成されている間に、わずかにテーパ状のマンドレル24は、側壁7の内面6にわずかなテーパを与える。
【0049】
このように、大きな熱勾配がある中での結晶器の安定性および信頼性はまた、冷却液を循環することができる導管8があること、および、(冷却液を使用することが必要でない場合、)筒状体2の内部導管8のいくつかまたはすべてに補強棒18を挿入することができることの両方によって同様に保証される。補強棒18は、鋼または別の合金、あるいはまた、炭素繊維、ケブラなどの複合材料で作ることができる。
【0050】
両方の場合、筒状体2の内部導管8は、多くの種々の用途に合うように正確かつ簡単に形成される。
【0051】
したがって、本発明の目的は完全に達成される。
【符号の説明】
【0052】
1 結晶器
2 筒状体
3 第1の端部
4 第2の端部
5 鋳造キャビティ
6 内面
7 環状側壁
8 導管
9 第1の筒状要素
10 第2の筒状要素
11 外側側面
12 溝
13 内側側面
14 側壁
15 側壁
16 外側側面
18 補強棒
19 第1の端部
21 末端部分
23 ダイス
24 マンドレル
25 工具
A 対称軸
B 対称軸
G 半径方向の遊び
S 半径方向厚さ
S1 第1の半径方向厚さ
S2 第2の半径方向厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6