(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-17
(45)【発行日】2022-03-28
(54)【発明の名称】ハンチントンタンパク質のイメージング用プローブ
(51)【国際特許分類】
A61K 51/04 20060101AFI20220318BHJP
C07D 401/04 20060101ALI20220318BHJP
C07D 401/14 20060101ALI20220318BHJP
A61K 101/00 20060101ALN20220318BHJP
A61K 101/02 20060101ALN20220318BHJP
【FI】
A61K51/04 200
C07D401/04
C07D401/14
A61K101:00
A61K101:02
(21)【出願番号】P 2021026146
(22)【出願日】2021-02-22
(62)【分割の表示】P 2020016705の分割
【原出願日】2015-08-28
【審査請求日】2021-03-23
(32)【優先日】2014-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511027183
【氏名又は名称】シーエイチディーアイ ファウンデーション,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドミンゲス,セリア
(72)【発明者】
【氏名】ウィチャック,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】バード,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,クリストファー,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】クルール,トーマス,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】クラーク-フルー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズ,サラ
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第00/076969(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 51/00
C07D 401/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩
【化1】
(式中、
Z
1
、Z
2
、Z
3
及びZ
4
は、CH及びNから独立して選択されるが、ただし、Z
1
、Z
2
、Z
3
及びZ
4
のうちの少なくとも2つはCHであることを条件とし、
R
1
は、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクロアルケニルから選択され、これらのそれぞれは、アルキニル、ヘテロアリール、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されており、
L
1
は、Oであり、
L
2
は、(CH
2
)
m
(mは、1又は2である)であり、
R
2
は、アリール、ヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているアリール、ヘテロアリール、及びヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているヘテロアリールから選択され、
R
5
は、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロ及びオキソ(ヘテロシクロアルキル環上の置換基として)から選択され、
nは、0又は1である)
を含むイメージング剤であって、
式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩が、1種以上のポジトロン放出放射性核種により標識されている、イメージング剤。
【請求項2】
R
1
が、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されているフェニルである、請求項1に記載のイメージング剤。
【請求項3】
R
1
が、シアノ、メチル、及びアミノ、(アルキル)アミノ又は(ジアルキル)アミノにより置換されているメチルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されているフェニルである、請求項2に記載のイメージング剤。
【請求項4】
R
1
が2-シアノフェニルである、請求項3に記載のイメージング剤。
【請求項5】
R
1
が、アルキニル、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されているヘテロアリールである、請求項1に記載のイメージング剤。
【請求項6】
R
1
が、ピリジン-4-イル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリミジン-4-イル、1,2-ジヒドロピリジン-2-オン-3-イル、1H-インダゾール-4-イル及び1H-インダゾール-7-イルから選択され、これらのそれぞれが、アルキニル、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されている、請求項5に記載のイメージング剤。
【請求項7】
R
1
が、ピリジン-4-イル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル及びピリミジン-4-イルから選択され、これらのそれぞれが、アルキニル、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されている、請求項6に記載のイメージング剤。
【請求項8】
R
1
が、5-シアノ-ピリミジン-4-イル、ピリジン-4-イル、5-ブロモ-1,2-ジヒドロピリジン-2-オン-3-イル、3-アセトアミド-ピリジン-4-イル、2-アセトアミド-ピリジン-6-イル、3-シアノ-ピリジン-4-イル、3-シアノ-ピリジン-6-イル、3-ブロモ-ピリジン-4-イル、3-ブロモ-ピリジン-2-イル、3-シアノ-ピリジン-2-イル、3-フルオロ-ピリジン-4-イル、2-シアノ-ピリジン-4-イル、4-シアノ-ピリジン-3-イル及び3-エチニル-ピリジン-4-イルから選択される、請求項6に記載のイメージング剤。
【請求項9】
R
1
が、ピリジン-4-イル、5-シアノ-ピリミジン-4-イル又は3-シアノ-ピリジン-4-イルである、請求項8に記載のイメージング剤。
【請求項10】
R
1
が、低級アルキルにより場合により置換されているヘテロシクロアルケニルである、請求項1に記載のイメージング剤。
【請求項11】
R
1
が、低級アルキルにより場合により置換されている2,3-ジヒドロピリダジン-3-オン-6-イルである、請求項10に記載のイメージング剤。
【請求項12】
mが1である、請求項1に記載のイメージング剤。
【請求項13】
R
2
が、アリール、ヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているアリール、ヘテロアリール、及びヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているヘテロアリールから選択される、請求項12に記載のイメージング剤。
【請求項14】
R
2
が、フェニル、ピリジン-2-イル、ピリミジン-5-イル、ピラジン-2-イル及びピリミジン-5-イルから選択され、これらのそれぞれが、ヒドロキシル又は低級アルコキシにより場合により置換されている、請求項13に記載のイメージング剤。
【請求項15】
Z
1
、Z
2
、Z
3
及びZ
4
が、CHである、請求項1から14のいずれか一項に記載のイメージング剤。
【請求項16】
Z
1
がNであり、Z
2
、Z
3
及びZ
4
がCHである、請求項1から14のいずれか一項に記載のイメージング剤。
【請求項17】
Z
2
がNであり、Z
1
、Z
3
及びZ
4
がCHである、請求項1から14のいずれか一項に記載のイメージング剤。
【請求項18】
Z
2
及びZ
4
がNであり、Z
1
及びZ
3
がCHである、請求項1から14のいずれか一項に記載のイメージング剤。
【請求項19】
式Iの化合物が、
2-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル;
2-[5-(ピリミジン-5-イルメトキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリジン-3-カルボニトリル;
4-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル;
4-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリミジン-5-カルボニトリル;
4-{5-[(5-ヒドロキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル;
4-[5-(ピリミジン-5-イルメトキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリジン-3-カルボニトリル;
5-[(5-メトキシピラジン-2-イル)メトキシ]-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール;
4-[5-(ベンジルオキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリミジン-5-カルボニトリル;
4-{5-[(5-ヒドロキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリミジン-5-カルボニトリル;
6-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}-2-メチル-2,3-ジヒドロピリダジン-3-オン;及び
5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン
から選択される、請求項1に記載のイメージング剤。
【請求項20】
前記化合物が、
11
C、
13
N、
15
O及び
18
Fから選択される、1種以上のポジトロン放出放射性核種を含有する、請求項1から19のいずれか一項に記載のイメージング剤。
【請求項21】
有効量の投与により個体において診断画像を生成するための、請求項1から20のいずれか一項に記載のイメージング剤。
【請求項22】
前記個体の脳におけるハンチントンタンパク質(HTTタンパク質)モノマー若しくは凝集体の存在又は非存在を検出するために前記個体の少なくとも一部の画像を生成し、病理過程の存在又は非存在を検出するための、請求項21に記載のイメージング剤。
【請求項23】
前記HTTタンパク質モノマー又は凝集体が、前記個体の前記脳の大脳基底核に存在している、請求項22に記載のイメージング剤。
【請求項24】
病理過程が神経変性疾患である、請求項22に記載のイメージング剤。
【請求項25】
神経変性疾患が、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、パーキンソン病、プリオン病及び脊髄小脳失調から選択される、請求項24に記載のイメージング剤。
【請求項26】
神経変性疾患がハンチントン病(HD)である、請求項25に記載のイメージング剤。
【請求項27】
前記イメージング剤の前記有効量が、約0.1~約20mCiを含む、請求項21から26のいずれか一項に記載のイメージング剤。
【請求項28】
前記イメージング剤の前記有効量が約10mCiを含む、請求項27に記載のイメージング剤。
【請求項29】
ポジトロン断層法(PET)イメージング、同時コンピューター断層撮影法イメージングとのPET(PET/CT)、同時磁気共鳴イメージングとのPET(PET/MRI)、又はそれらの組合せにより画像を生成するための、請求項21から28のいずれか一項に記載のイメージング剤。
【請求項30】
PETイメージングにより画像を生成するための、請求項29に記載のイメージング剤。
【請求項31】
2-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリル; 2-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル;
2-[5-(ピリミジン-5-イルメトキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリジン-3-カルボニトリル;
4-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル;
4-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリミジン-5-カルボニトリル;
4-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリミジン-5-カルボニトリル;
4-{5-[(5-ヒドロキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル;
4-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリル; 4-[5-(ピリミジン-5-イルメトキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリジン-3-カルボニトリル;
5-[(5-メトキシピラジン-2-イル)メトキシ]-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール;
4-[5-(ベンジルオキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリミジン-5-カルボニトリル;
4-{5-[(5-ヒドロキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリミジン-5-カルボニトリル;
6-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}-2-メチル-2,3-ジヒドロピリダジン-3-オン;
5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン;
6-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)-2-メチル-2,3-ジヒドロピリダジン-3-オン;
5-メトキシ-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン;及び
4-(5-ヒドロキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリルから選択される化合物又は薬学的に許容されるその塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、すべての目的のため、参照により本明細書に組み込まれている、2014年8月29日出願の米国仮特許出願第62/043,644号への優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
ポジトロン断層法(PET)及び単一光子放射型コンピューター断層撮影法などの分子イメージング手法の出現により、前臨床及び臨床現場における、分子及び身体全体にわたる細胞メカニズムの測定が可能になっている。こうした測定は、診断利用度を拡大し、処置応答の評価のため、及び薬物開発を支援するためのその使用が、急速に広がっている。近年の、高分解能分子イメージング技法の導入は、健康管理における画期的なパラダイムシフトをもたらす可能性があり、かつ臨床診療に革命をもたらす主要な技術革新として多数の専門家によって考えられてきた。
【0003】
PETは、対象にポジトロン放出放射性核種トレーサーを投与し、次いで、身体における、ポジトロン放射(対消滅)事象を検出することを含む。放射性核種トレーサーは、通常、その中に、1種以上のタイプのポジトロン放出放射性核種を取り込ませた標的分子からなる。
【0004】
ポジトロン放出放射性核種により標識されている多数の新規分子プローブ、及び関連PETイメージングアッセイが、様々な細胞外分子及び細胞内分子、並びにがん、心臓疾患及び神経障害などの疾患に関連する過程を標的とする、検出する、可視化する及び定量するために開発中にある。例えば、アルツハイマー病(AD)を有する患者における、アミロイドβ(Aβ)プラークをイメージングするため、アリールベンゾチアゾール、スチルベン、イミダゾピリジン、ピリジルベンゾチアゾール、ピリジルベンゾオキサゾール及びピリジルベンゾフランを含めた、いくつかのタイプの薬剤が合成されて評価されている(Swahnら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、20巻(2010年)、1976~1980頁)。さらに、スチリルベンゾイミダゾール(SBIM)誘導体は、ADを有する患者において、超リン酸化タウタンパク質からなる、神経原線維変化(NFT)をイメージングするための薬剤として開発されてきた。組換えタウ及びアミロイドβ1-42(Aβ1-42)凝集体を使用する結合実験において、4-[(E)-2-(6-ヨード-1H-ベンゾイミダゾール-2-イル)エテニル]-N,N-ジメチルアニリン(SBIM-3)が、Aβ1-42凝集体よりもタウ凝集体に対して高い親和力を示した(Kd値の比は2.73であった)。インビトロでのオートラジオグラフィー及び蛍光染色では、[125I]SBIM-3(又はSBIM-3)は、AD脳組織の領域においてNFTと結合した。正常マウスを使用した生体分布実験では、[125I]SBIM誘導体はすべて、脳への初期取り込みが高いこと(注射後、2分間で3.20~4.11%ID/g)、及び脳からのクリアランスが迅速であること(注射後、60分間で0.12~0.33%ID/g)を示した(Matsumuraら、Bioorganic & Medicinal Chemistry、21巻(2013年)3356~3362頁)。
【0005】
ハンチントン病(HD)は、運動障害、認知障害及び精神医学的障害、並びに線条体及び皮質に始まり、他の皮質下脳の領域にまで広がる、神経変性及び脳萎縮を特徴とする、遺伝性進行性神経変性障害である。ハンチントン病は、拡大したCAG反復領域(repeat tract)により、コードされたタンパク質においてポリグルタミンの長い伸長(ポリQ)がもたらされる、変異によって引き起こされる神経変性疾患のファミリーに属する。このファミリーはまた、歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)及び脊髄小脳失調(SCA)も含む。それらのポリQ繰り返しとは別に、関与するタンパク質は無関係であり、それらのタンパク質はすべて、中枢神経系及び末梢組織において幅広く発現されるが、それらは、神経変性の特徴的なパターンをもたらしている。HDでは、線条体のγ-アミノ酪酸放出性有棘投射ニューロンの神経変性が優勢となるが、多くの他の脳領域におけるニューロンの喪失もやはり報告されている。非罹患集団では、HDタンパク質ハンチントン(HTTタンパク質)をコードするIT15遺伝子におけるCAGの繰り返し数は、6~35と様々であり、36以上の繰り返しにより、HDアレルが定義される。CAG伸長の長さは、疾患発症の年齢と反比例して相関しており、幼年期の発症の症例は、60を超える繰り返しとなる伸長によって特徴づけられる。HDは、世界中で、100,000症例あたり5~10症例の有病率を有しており、これにより、最も一般的な遺伝性神経変性障害となっている。HTTタンパク質は、そのアミノ末端において、多形グルタミン/プロリンリッチドメインを含有する、348-kDaのマルチドメインタンパク質である。より長いポリQドメインは、タンパク質において立体構造的な変化を誘発するようであり、これにより、タンパク質に、大部分の場合、核封入体として現れる細胞内凝集体の形成が引き起こされる。しかし、凝集体はまた、核外でも形成することができる。HTTタンパク質は、核、細胞体、樹状突起及びニューロンの神経終末に存在しており、ゴルジ装置、小胞体及びミトコンドリアを含めた、いくつかの細胞小器官にも関連している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
いくつかの臨床試験は、臨床診断されたHDの症状の緩和又は軽減、及びその進行を遅延させるための手段を検討している。他の医療状態と一致して、処置は、疾患の早期兆候時又はその前に開始するのが理想的となり得る。HD前の臨床試験に設計に対して、少なくとも2種の主要な難題が存在している。それらは、臨床試験にわたり測定可能な変化を示す最も可能性の高い参加者の選択、及びインターベンションに対して感受性を示し、かつHD前の自然経過にわたる変動を実証することが可能な、結果の尺度の開発である。予防的臨床試験に対する、これらの、及び他の難題を解決するため、かなり早期の疾患の指標が必要とされている。
【0007】
HDの病因におけるHTTタンパク質の凝集形態の蓄積の中心的な役割を鑑みると、PETを使用して、生存対象における分子イメージングのための、こうした異常体に、高い選択性及び特異性で結合する分子プローブが必要とされている。本明細書に記載されている化合物は、この必要性及び他の必要性に応えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩
【0009】
【化1】
(式中、
Z
1、Z
2、Z
3及びZ
4は、CH及びNから独立して選択されるが、ただし、Z
1、Z
2、Z
3及びZ
4のうちの少なくとも2つはCHであることを条件とし、
R
1は、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクロアルケニルから選択され、これらのそれぞれは、アルキニル、ヘテロアリール、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されており、
L
1は、O及びNR
4から選択され、
R
4は、水素及び低級アルキルから選択され、
L
2は、(CH
2)
m(mは、0、1又は2である)であり、
R
2は、水素、アリール、ヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているアリール、ヘテロアリール、及びヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているヘテロアリールから選択され、
R
5は、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロ及びオキソ(ヘテロシクロアルキル環上の置換基として)から選択され、
nは、0又は1である)
を含むイメージング剤であって、
式Iの化合物又は薬学的に許容されるその(there of)塩が、1種以上のポジトロン放出放射性核種により標識されている、イメージング剤が提供される。
【0010】
同様に、有効量の本明細書に記載されているイメージング剤を個体に投与するステップ、及び前記個体の少なくとも一部の画像を生成するステップを含む、個体において診断画像を生成する方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用する場合、以下の語、句及び記号は一般に、それらが使用されている文脈が別に示している程度を除いて、以下で説明されている意味を有することが意図されている。以下の略語及び用語が、全体を通して、指示されている意味を有する。
【0012】
2つの文字又は記号の間にはないダッシュ記号(「─」)は、置換基の結合点を示すために使用される。例えば、-CONH2は、炭素原子を介して結合している。
【0013】
本明細書で使用する場合、用語「基」、「ラジカル」又は「断片」とは、分子の結合断片又は他の断片に結合することが可能な分子の官能基又は断片を指す。
【0014】
値の範囲が示されている場合(例えば、C1~6アルキル)、その範囲内、及びすべての介在する範囲内の各値が含まれる。例えば、「C1~6アルキル」には、C1、C2、C3、C4、C5、C6、C1~6、C2~6、C3~6、C4~6、C5~6、C1~5、C2~5、C3~5、C4~5、C1~4、C2~4、C3~4、C1~3、C2~3及びC1~2アルキルが含まれる。
【0015】
部位が、場合により置換されているとして定義されている場合、その部位は、それ自体として、又は別の部位の一部として置換されていてもよい。例えば、Rxが、「C1~6アルキル又はOC1~6アルキルであり、ここで、C1~6アルキルがハロゲンにより場合により置換されている(subsituted)」として、定義されている場合、C1~6アルキル基が単独、及びOC1~6アルキル基の一部を構成するC1~6アルキルのどちらも、ハロゲンにより置換されていてもよい。
【0016】
用語「アルキル」は、示されている炭素原子数、通常、1~20個の炭素原子、例えば、1~6個の炭素原子などの1~8個の炭素原子を有する、直鎖及び分枝鎖を包含する。例えば、C1~C6アルキルは、1~6個の炭素原子の直鎖及び分岐鎖アルキルの両方を包含する。アルキル基に例には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、2-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、3-メチルペンチルなどが含まれる。指定の炭素数を有するアルキル残基が命名される場合、その炭素数を有するすべての幾何異性体が包含されることが意図されている。すなわち、例えば「ブチル」は、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル及びtert-ブチルを含むことが意図されている。「プロピル」は、n-プロピル及びイソプロピルを含む。「低級アルキル」は、1~6個の炭素を有するアルキル基を指す。
【0017】
「アルコキシ」とは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、2-ペンチルオキシ、イソペントキシ、ネオペントキシ、ヘキソキシ、2-ヘキソキシ、3-ヘキソキシ、3-メチルペントキシなどの酸素架橋を介して結合されている、示されている炭素原子数のアルキル基が意図される。アルコキシ基は、通常、酸素架橋を介して結合されている1~6個の炭素原子を有するであろう。「低級アルコキシ」は、1~6個の炭素を有するアルコキシ基を指す。「シクロアルコキシ」とは、同様に、酸素架橋を介して結合されているシクロアルキル基が意図される。
【0018】
「アルキニル」とは、示されている炭素原子数(例えば、2~8個又は2~6個の炭素原子)、及び対応するアルキルの隣接炭素原子から2分子の水素を除去することにより誘導される少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する、不飽和な分岐又は直鎖アルキル基を指す。アルキニル基には、以下に限定されないが、エチニル、プロピニル(例えば、プロパ-1-イン-1-イル、プロパ-2-イン-1-イル)及びブチニル(例えば、ブタ-1-イン-1-イル、ブタ-1-イン-3-イル、ブタ-3-イン-1-イル)が含まれる。「低級アルキニル」は、2~6個の炭素を有するアルキニル基を指す。
【0019】
「アリール」は、示されている炭素原子数、例えば、6~12個又は6~10個の炭素原子を有する、芳香族炭素環を示す。アリール基は、単環式又は多環式(例えば、二環式、三環式)であってもよい。一部の場合、多環式アリール基の両方の環が、芳香族(例えば、ナフチル)である。他の例では、多環式アリール基は、芳香族環に縮合している、非芳香族環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル)を含むことができるが、ただし、この多環式アリール基は、芳香族環中の原子を介して親構造に結合している条件とする。すなわち、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-5-イル基(この場合、この部位は、芳香族炭素原子を介してその親構造に結合している)はアリール基と見なされる一方、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル(この場合、この部位は、非芳香族炭素原子を介してその親構造に結合している)はアリール基とは見なされない。同様に、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-8-イル基(この場合、この部位は、芳香族炭素原子を介してその親構造に結合している)はアリール基と見なされる一方、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-1-イル基(この場合、この部位は、非芳香族窒素原子を介してその親構造に結合している)はアリール基とは見なされない。しかし、用語「アリール」は、結合点にかかわらず、「ヘテロアリール」を包含するか、又は「ヘテロアリール」と一致する(例えば、キノリン-5-イルとキノリン-2-イルはどちらもヘテロアリール基である)。一部の場合、アリールは、フェニル又はナフチルである。ある種の場合、アリールはフェニルである。
【0020】
置換ベンゼンから形成され、かつ環原子において自由原子価を有する二価ラジカルは、置換フェニレンラジカルと命名される。その名称が、自由原子価を有する炭素原子から1個の水素原子を取り除くことによって「-イル(-yl)」で終わる、一価の多環式炭化水素ラジカルから誘導される二価ラジカルは、対応する一価ラジカルの名称に「イデン(-idene)を」付け加えることにより命名され、例えば、2つの結合点を有するナフチル基は、ナフチリデンと呼ばれる。
【0021】
「シクロアルキル」は、示されている炭素原子数、例えば、3~10個又は3~8個又は3~6個の環炭素原子を有する、完全に飽和な非芳香族炭素環式環を示す。シクロアルキル基は、単環式又は多環式(例えば、二環式、三環式)であってもよい。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル、並びに架橋環及びかご形の環の基(例えば、ノルボルナン、ビシクロ[2.2.2]オクタン)が含まれ得る。さらに、多環式シクロアルキル基の1つの環は、芳香族であってもよいが、ただし、多環式シクロアルキル基は、非芳香族炭素を介して親構造に結合している条件とする。例えば、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル基(この場合、この部位は、非芳香族炭素原子を介してその親構造に結合している)はシクロアルキル基である一方、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-5-イル(この場合、この部位は、芳香族炭素原子を介してその親構造に結合している)はシクロアルキル基とは見なされない。
【0022】
「シクロアルケニル」は、示されている炭素原子数(例えば、3~10個、又は3~8個、又は3~6個の環炭素原子)、及び対応するシクロアルキルの隣接炭素原子から水素分子を1つ取り除くことによって誘導される少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する、非芳香族炭素環式環を示す。シクロアルケニル基は、単環式又は多環式(例えば、二環式、三環式)であってもよい。シクロアルケニル基の例には、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル及びシクロヘキセニル、並びに架橋環及びかご形の環の基(例えば、ビシクロ[2.2.2]オクテン)が含まれる。さらに、多環式シクロアルケニル基の1つの環は、芳香族であってもよいが、ただし、多環式アルケニル基は、非芳香族炭素原子を介して親構造に結合している条件とする。例えば、インデン-1-イル(この場合、この部位は、非芳香族炭素原子を介してその親構造に結合している)は、シクロアルケニル基と見なされる一方、インデン-4-イル(この場合、この部位は、芳香族炭素原子を介してその親構造に結合している)はシクロアルケニル基とは見なされない。
【0023】
用語「ハロ」には、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードが含まれ、用語「ハロゲン」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれる。
【0024】
「ハロアルキル」には、少なくとも1個のハロゲン原子により置換されている、示されている炭素原子数(例えば、1~6個の炭素原子)を有する直鎖及び分岐炭素鎖が含まれる。ハロアルキル基が1個以上のハロゲン原子を含有する場合、このハロゲンは、同一であってもよく(例えば、ジクロロメチル)、又は異なっていてもよい(例えば、クロロフルオロメチル)。ハロアルキル基の例には、以下に限定されないが、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロフルオロメチル、2-フルオロエチル、2,2-ジフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,2-ジフルオロエチル、2-クロロエチル、2,2-ジクロロエチル、2,2,2-トリクロロエチル、1,2-ジクロロエチル、ペンタクロロエチル及びペンタフルオロエチルが含まれる。
【0025】
「ヘテロアリール」には、N、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子(例えば、1、2、3又は4個のヘテロ原子)から構成され、残りの環原子が炭素である、示されている原子数(例えば、5~12又は5~10員のヘテロアリール)を含有する芳香族環を示す。ヘテロアリール基は、隣接S及びO原子を含有しない。一部の実施形態では、ヘテロアリール基中のS及びO原子の総数は、2個以下である。一部の実施形態では、ヘテロアリール基中のS及びO原子の総数は、1個以下である。特に示さない限り、ヘテロアリール基は、価数が許容する場合、炭素原子又は窒素原子によって親構造に結合されていてもよい。例えば、「ピリジル」には、2-ピリジル、3-ピリジル及び4-ピリジル基が含まれ、「ピロリル」には、1-ピロリル、2-ピロリル及び3-ピロリル基が含まれる。窒素がヘテロアリール環中に存在する場合、隣接原子及び基の性質が許容する場合には、酸化状態(すなわち、N+-O-)で存在してもよい。さらに、硫黄がヘテロアリール環中に存在する場合、隣接原子及び基の性質が許容する場合には、酸化状態(すなわち、S+-O-又はSO2)で存在してもよい。ヘテロアリール基は、単環式又は多環式(例えば、二環式、三環式)であってもよい。
【0026】
一部の例では、ヘテロアリール基は単環式である。例には、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール(例えば、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、1,3,4-トリアゾール)、テトラゾール、フラン、イソオキサゾール、オキサゾール、オキサジアゾール(例えば、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール)、チオフェン、イソチアゾール、チアゾール、チアジアゾール(例えば、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール)、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン(例えば、1,2,4-トリアジン、1,3,5-トリアジン)及びテトラジンが含まれる。
【0027】
一部の場合、多環式ヘテロアリール基の両方の環が、芳香族性である。例には、インドール、イソインドール、インダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾフラン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾチアゾール、ベンゾイソチアゾール、ベンゾチアジアゾール、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン、1H-ピラゾロ[3,4-b]ピリジン、3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン、3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン、1H-ピロロ[3,2-b]ピリジン、1H-ピラゾロ[4,3-b]ピリジン、1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン、1H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-b]ピリジン、1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン、1H-ピラゾロ[3,4-c]ピリジン、3H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン、3H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-c]ピリジン、1H-ピロロ[3,2-c]ピリジン、1H-ピラゾロ[4,3-c]ピリジン、1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン、1H-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-c]ピリジン、フロ[2,3-b]ピリジン、オキサゾロ[5,4-b]ピリジン、イソオキサゾロ[5,4-b]ピリジン、[1,2,3]オキサジアゾロ[5,4-b]ピリジン、フロ[3,2-b]ピリジン、オキサゾロ[4,5-b]ピリジン、イソオキサゾロ[4,5-b]ピリジン、[1,2,3]オキサジアゾロ[4,5-b]ピリジン、フロ[2,3-c]ピリジン、オキサゾロ[5,4-c]ピリジン、イソオキサゾロ[5,4-c]ピリジン、[1,2,3]オキサジアゾロ[5,4-c]ピリジン、フロ[3,2-c]ピリジン、オキサゾロ[4,5-c]ピリジン、イソオキサゾロ[4,5-c]ピリジン、[1,2,3]オキサジアゾロ[4,5-c]ピリジン、チエノ[2,3-b]ピリジン、チアゾロ[5,4-b]ピリジン、イソチアゾロ[5,4-b]ピリジン、[1,2,3]チアジアゾロ[5,4-b]ピリジン、チエノ[3,2-b]ピリジン、チアゾロ[4,5-b]ピリジン、イソチアゾロ[4,5-b]ピリジン、[1,2,3]チアジアゾロ[4,5-b]ピリジン、チエノ[2,3-c]ピリジン、チアゾロ[5,4-c]ピリジン、イソチアゾロ[5,4-c]ピリジン、[1,2,3]チアジアゾロ[5,4-c]ピリジン、チエノ[3,2-c]ピリジン、チアゾロ[4,5-c]ピリジン、イソチアゾロ[4,5-c]ピリジン、[1,2,3]チアジアゾロ[4,5-c]ピリジン、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、フタラジン、ナフチリジン(例えば、1,8-ナフチリジン、1,7-ナフチリジン、1,6-ナフチリジン、1,5-ナフチリジン、2,7-ナフチリジン、2,6-ナフチリジン)、イミダゾ[1,2-a]ピリジン、1H-ピラゾロ[3,4-d]チアゾール、1H-ピラゾロ[4,3-d]チアゾール及びイミダゾ[2,1-b]チアゾールが含まれる。
【0028】
他の例では、多環式ヘテロアリール基は、ヘテロアリール環に縮合している、非芳香族環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル)を含むことができるが、ただし、この多環式ヘテロアリール基は、芳香族環中の原子を介して親構造に結合している条件とする。例えば、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[d]チアゾール-2-イル基(この場合、この部位は、芳香族炭素原子を介してその親構造に結合している)はヘテロアリール基と見なされる一方、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[d]チアゾール-5-イル(この場合、この部位は、非芳香族炭素原子を介してその親構造に結合している)はヘテロアリール基とは見なされない。
【0029】
「ヘテロシクロアルキル」には、N、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子(例えば、1、2、3又は4個のヘテロ原子)から構成され、残りの環原子が炭素である、示されている原子数(例えば、3~10員又は3~7員のヘテロシクロアルキル)を有する、完全に飽和している非芳香族環を示す。ヘテロシクロアルキル基は、単環式又は多環式(例えば、二環式、三環式)であってもよい。
【0030】
単環式ヘテロシクロアルキル基の例には、オキシラニル、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル及びチオモルホリニルが含まれる。
【0031】
窒素がヘテロシクロアルキル環中に存在する場合、隣接原子及び基の性質が許容する場合には、酸化状態(すなわち、N+-O-)で存在してもよい。例には、ピペリジニルN-オキシド及びモルホリニル-N-オキシドが含まれる。さらに、硫黄がヘテロシクロアルキル環中に存在する場合、隣接原子及び基の性質が許容する場合には、酸化状態(すなわち、S+-O-又は-SO2-)で存在してもよい。例には、チオモルホリンS-オキシド及びチオモルホリンS,S-ジオキシドが含まれる。
【0032】
さらに、多環式ヘテロシクロアルキル基の1つの環は、芳香族(例えば、アリール又はヘテロアリール)であってもよいが、ただし、多環式ヘテロシクロアルキル基は、非芳香族炭素原子又は窒素原子を介して親構造に結合している条件とする。例えば、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-1-イル基(この場合、この部位は、非芳香族窒素原子を介してその親構造に結合している)はヘテロシクロアルキル基と見なされる一方、1,2,3,4-テトラヒドロキノリン-8-イル基(この場合、この部位は、芳香族炭素原子を介してその親構造に結合している)はヘテロシクロアルキル基とは見なされない。
【0033】
「ヘテロシクロアルケニル」には、N、O及びSから選択される1個以上のヘテロ原子(例えば、1、2、3又は4個のヘテロ原子)、残りの環原子が炭素であり、かつ対応するヘテロシクロアルキルの隣接炭素原子、隣接窒素原子又は隣接する炭素原子と窒素原子とから水素分子を1つ取り除くことにより誘導される少なくとも1つの二重結合から構成される、示されている原子数(例えば、3~10員又は3~7員のヘテロシクロアルキル)を有する、非芳香族環を示す。ヘテロシクロアルケニル基は、単環式又は多環式(例えば、二環式、三環式)であってもよい。窒素がヘテロシクロアルケニル環中に存在する場合、隣接原子及び基の性質が許容する場合には、酸化状態(すなわち、N+-O-)で存在してもよい。さらに、硫黄がヘテロシクロアルケニル環中に存在する場合、隣接原子及び基の性質が許容する場合には、酸化状態(すなわち、S+-O-又は-SO2-)で存在してもよい。ヘテロシクロアルケニル基の例には、ジヒドロフラニル(例えば、2,3-ジヒドロフラニル、2,5-ジヒドロフラニル)、ジヒドロチオフェニル(例えば、2,3-ジヒドロチオフェニル、2,5-ジヒドロチオフェニル)、ジヒドロピロリル(例えば、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル、2,5-ジヒドロ-1H-ピロリル)、ジヒドロイミダゾリル(例えば、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル)、ピラニル、ジヒドロピラニル(例えば、3,4-ジヒドロ-2H-ピラニル、3,6-ジヒドロ-2H-ピラニル)、テトラヒドロピリジニル(例えば、1,2,3,4-テトラヒドロピリジニル、1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル)及びジヒドロピリジン(例えば、1,2-ジヒドロピリジン、1,4-ジヒドロピリジン)が含まれる。さらに、多環式ヘテロシクロアルケニル基の1つの環は、芳香族(例えば、アリール又はヘテロアリール)であってもよいが、ただし、多環式ヘテロシクロアルケニル基は、非芳香族炭素原子又は窒素原子を介して親構造に結合している条件とする。例えば、1,2-ジヒドロキノリン-1-イル基(この場合、この部位は、非芳香族窒素原子を介してその親構造に結合している)はヘテロシクロアルケニル基と見なされる一方、1,2-ジヒドロキノリン-8-イル基(この場合、この部位は、芳香族炭素原子を介してその親構造に結合している)はヘテロシクロアルケニル基とは見なされない。
【0034】
「任意選択の」又は「場合により」とは、その後に記載される事象又は状況が発生してもよく、又は発生しなくてもよいこと、及びその記載には、その事象又は状況が発生する場合、及びそれが発生しない場合が含まれることが意図される。例えば、「場合により置換されているアルキル」は、本明細書で定義されている「アルキル」と「置換アルキル」の両方を包含する。1つ以上の置換基を含有する任意の基に関すると、こうした基は、立体的に現実的ではない、合成化学的には実現不可能である、及び/又は本来不安定である、任意の置換又は置換パターンを導入することが意図されているわけではないことが当業者により理解されるであろう。
【0035】
用語「置換されている」とは、本明細書で使用する場合、指定されている原子又は基上の1個以上の水素のいずれもが、示されている群から選択されるもの(selection)により置きかえられているが、ただし、指定された原子が、通常の価数を超えない条件とすることを意味する。置換基がオキソ(すなわち、=O)である場合、原子上の2個の水素が置きかえられている。置換基及び/又は可変基の組合せは、こうした組合せが、安定な化合物又は有用な合成中間体をもたらす場合しか許容されない。安定な化合物又は安定な構造とは、反応混合物からの単離に、及び少なくとも実際に利用される薬剤としてその後の製剤化に耐える(survive)ほど十分に安定な化合物を意味することが意図される。別段の指定がない限り、置換基はコア構造に命名される。例えば、(シクロアルキル)アルキルが、可能な置換基として列挙されている場合、この置換基のコア構造への結合点は、アルキル部分にあることを理解すべきである。
【0036】
用語「置換されている」アルキル(非限定的に、C1~C4アルキルを含む)、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル及びヘテロアリールは、特に明確に定義しない限り、それぞれ、アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル及びヘテロアリールを指し、この場合(herein)、1個以上(最大5個、例えば最大3個など)の水素原子は、
-Ra、-ORb、-O(C1~C2アルキル)O-(例えば、メチレンジオキシ-)、-SRb、グアニジン(-NHC(=NH)NH2)、グアニジン(1つ以上のグアニジン水素が、C1~C4アルキル基、-NRbRc、ハロ、シアノ、オキソ(ヘテロシクロアルキルの場合の置換基として)により置きかえられている)、ニトロ、-CORb、-CO2Rb、-CONRbRc、-OCORb、-OCO2Ra、-OCONRbRc、-NRcCORb、-NRcCO2Ra、-NRcCONRbRc、-SORa、-SO2Ra、-SO2NRbRc、及び-NRcSO2Raから独立して選択される置換基により置きかえられており、
Raは、C1~C6アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル及びヘテロアリールから選択され、
Rbは、H、C1~C6アルキル、アリール及びヘテロアリールから選択され、
Rcは、水素及びC1~C4アルキルから選択されるか、又は
Rb及びRc、並びにそれらが結合している窒素は、ヘテロシクロアルキル基を形成し、ここで、C1~C6アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル及びヘテロアリールはそれぞれ、C1~C4アルキル、C3~C6シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1~C4アルキル-、ヘテロアリール-C1~C4アルキル-、C1~C4ハロアルキル-、-OC1~C4アルキル、-OC1~C4アルキルフェニル、-C1~C4アルキル-OH、-C1~C4アルキル-O-C1~C4アルキル、-OC1~C4ハロアルキル、ハロ、-OH、-NH2、-C1~C4アルキル-NH2、-N(C1~C4アルキル)(C1~C4アルキル)、-N(C1~C4アルキル)(C1~C4アルキルヘテロアリール)、-NH(C1~C4アルキル)、-N(C1~C4アルキル)(C1~C4アルキルフェニル)、-N(C1~C4アルキル)(C1~C4アルキルヘテロアリール)、-NH(C1~C4アルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(ヘテロアリールの場合、置換基として)、-CO2H、-C(O)OC1~C4アルキル、-CON(C1~C4アルキル)(C1~C4アルキル)、-CONH(C1~C4アルキル)、-CONH2、-NHC(O)(C1~C4アルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C1~C4アルキル)C(O)(C1~C4アルキル)、-N(C1~C4アルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C1~C4アルキル、-C(O)C1~C4フェニル、-C(O)C1~C4ハロアルキル、-OC(O)C1~C4アルキル、-SO2(C1~C4アルキル)、-SO2(フェニル)、-SO2(C1~C4ハロアルキル)、-SO2NH2、-SO2NH(C1~C4アルキル)、-SO2NH(フェニル)、-NHSO2(C1~C4アルキル)、-NHSO2(フェニル)、及び-NHSO2(C1~C4ハロアルキル)から独立して選択される1つ、2つ又は3つの置換基などの1つ以上の置換基により場合により置換されている。
【0037】
用語「置換アミノ」とは、基-NHRd又は-NRdRdを指し、Rdはそれぞれ、場合により置換されているアルキル、場合により置換されているシクロアルキル、場合により置換されているアシル、場合により置換されているアリール、場合により置換されているヘテロアリール、場合により置換されているヘテロシクロアルキル、アルコキシカルボニル、スルフィニル及びスルホニルから独立して選択され、ここで、置換アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル及びヘテロアリールは、それぞれ、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクロアルキル及びヘテロアリールを指し、ここで、1個以上(最大、5個、例えば最大3個など)の水素原子は、
-Ra、-ORb、-O(C1~C2アルキル)O-(例えば、メチレンジオキシ-)、-SRb、グアニジン、グアニジン(1個以上のグアニジン水素は、低級アルキル基、-NRbRc、ハロ、シアノ、ニトロ、-CORb、-CO2Rb、-CONRbRc、-OCORb、-OCO2Ra、-OCONRbRc、-NRcCORb、-NRcCO2Ra、-NRcCONRbRc、-CO2Rb、-CONRbRc、-NRcCORb、-SORa、-SO2Ra、-SO2NRbRc、及び-NRcSO2Raにより置きかえられている)
から独立して選択される置換基により置きかえられており、
Raは、場合により置換されているC1~C6アルキル、場合により置換されているアリール及び場合により置換されているヘテロアリールから選択され、
Rbは、H、場合により置換されているC1~C6アルキル、場合により置換されているアリール及び場合により置換されているヘテロアリールから選択され、
Rcは、水素及び場合により置換されているC1~C4アルキルから選択され、
場合により置換されている基はそれぞれ、無置換であるか、又はC1~C4アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール-C1~C4アルキル-、ヘテロアリール-C1~C4アルキル-、C1~C4ハロアルキル-、-OC1~C4アルキル、-OC1~C4アルキルフェニル、-C1~C4アルキル-OH、-OC1~C4ハロアルキル、ハロ、-OH、-NH2、-C1~C4アルキル-NH2、-N(C1~C4アルキル)(C1~C4アルキル)、-NH(C1~C4アルキル)、-N(C1~C4アルキル)(C1~C4アルキルフェニル)、-N(C1~C4アルキル)(C1~C4アルキルヘテロアリール)、-NH(C1~C4アルキルフェニル)、シアノ、ニトロ、オキソ(ヘテロアリールの場合、置換基として)、-CO2H、-C(O)OC1~C4アルキル、-CON(C1~C4アルキル)(C1~C4アルキル)、-CONH(C1~C4アルキル)、-CONH2、-NHC(O)(C1~C4アルキル)、-NHC(O)(フェニル)、-N(C1~C4アルキル)C(O)(C1~C4アルキル)、-N(C1~C4アルキル)C(O)(フェニル)、-C(O)C1~C4アルキル、-C(O)C1~C4フェニル、-C(O)C1~C4ハロアルキル、-OC(O)C1~C4アルキル、-SO2(C1~C4アルキル)、-SO2(フェニル)、-SO2(C1~C4ハロアルキル)、-SO2NH2、-SO2NH(C1~C4アルキル)、-SO2NH(フェニル)、-NHSO2(C1~C4アルキル)、-NHSO2(フェニル)、及び-NHSO2(C1~C4ハロアルキル)から独立して選択される1つ、2つ又は3つの置換基などの1つ以上の置換基により独立して置換されている。
【0038】
用語「置換アミノ」はまた、基-NReRfも指し、Re及びRfは、それらが結合している窒素と一緒になって、場合により置換されている窒素を含有している、5~7員の非芳香族複素環を形成し、この複素環は、窒素、酸素及び硫黄から選択される1個又は2個のさらなるヘテロ原子を場合により含有する。
【0039】
「アミノカルボニル」は、式-(C=O)(場合により置換されているアミノ)の基を包含し、置換アミノは、本明細書に記載されている通りである。
【0040】
本明細書に記載されている化合物には、以下に限定されないが、それらの光学異性体、ラセミ体、及びそれらの他の混合物が含まれる。そうした状況では、単一鏡像異性体又はジアステレオ異性体、すなわち光学活性体が、不斉合成によって、又はラセミ体の分割によって得ることができる。ラセミ体の分割は、例えば、分割剤の存在下で結晶化、又は例えば、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムを使用するクロマトグラフィーなどの従来の方法により行うことができる。用語「異性体」とは、同じ分子式を有する異なる化合物を指す。用語「立体異性体」とは、原子が空間に配列されている点しか異ならない、異性体を指す。用語「鏡像異性体」とは、互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体を指す。一対の鏡像異性体の1:1混合物は、「ラセミ」混合物である。記号「(±)」とは、適宜、ラセミ混合物を呼ぶ場合に使用することができる。用語「ジアステレオ異性体」とは、少なくとも2個の不斉原子を有しているが、互いに鏡像ではない、立体異性体を指す。絶対立体化学は、カーン-インゴルド-プレログR-Sシステムに従って指定される。化合物が、純粋な鏡像異性体である場合、各キラル炭素における立体化学は、R又はSのどちらかによって指定することができる。その絶対配置が未知である、分割された化合物は、それらが、ナトリウムD線の波長における平面偏光を回転させる方向に応じて、(+)又は(-)(右旋性又は左旋性)と表すことができる。
【0041】
本明細書に記載されている化合物が、様々な互変異性体で存在する場合、用語「化合物」には、その化合物のすべての互変異性体が含まれる。こうした化合物は、多形及び包接化合物を含めた結晶形態も含む。同様に、用語「塩」には、その化合物のすべての互変異性体及び結晶形態が含まれる。用語「互変異性体」とは、互変異性によって相互変換する、構造的に個別の異性体を指す。互変異性は、異性化の一形態であり、プロトトロピー性又はプロトンがシフトする互変異性を含み、この互変異性は、酸-塩基化学の一部と見なされる。プロトトロピー性互変異性又はプロトンがシフトする互変異性は、結合次数の変化を伴うプロトンの移動、多くの場合、単結合と隣接二重結合との相互変換を含む。互変異性が可能な場合(例えば、溶液中)、互変異性体の化学平衡に到達することができる。互変異性の一例は、ケト-エノール互変異性である。ケト-エノール互変異性の具体例は、ペンタン-2,4-ジオンと4-ヒドロキシペンタ-3-エン-2-オン互変異性体との相互変換である。互変異性の別の例は、フェノール-ケト互変異性である。フェノール-ケト互変異性の具体例は、ピリジン-4-オールとピリジン-4(1H)-オン互変異性体との相互変換である。
【0042】
本明細書において列挙されている化合物の薬学的に許容される形態には、薬学的に許容される塩及びそれらの混合物が含まれる。一部の実施形態では、本明細書に記載されている化合物は、薬学的に許容される塩の形態にある。
【0043】
「薬学的に許容される塩」には、以下に限定されないが、塩化水素酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、スルフィン酸塩、硝酸塩などの無機酸との塩及び同様の塩、並びにリンゴ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、ハロアルカン酸塩(トリフルオロ酢酸塩など)及びアルカン酸塩(酢酸塩、HOOC-(CH2)n-COOH(式中、nは1~4である)など)、及び同様の塩などの有機酸との塩が含まれる。同様に、薬学的に許容される陽イオンには、以下に限定されないが、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウム及びアンモニウムが含まれる。さらに、本明細書に記載されている化合物が、酸付加塩として得られる場合、遊離塩基は、この酸塩の溶液を塩基性にすることによって得ることができる。逆に、生成物が遊離塩基である場合、付加塩、特に薬学的に許容される付加塩は、塩基性化合物から酸付加塩を調製する慣用的な手順に従い、適切な有機溶媒中にこの遊離塩基を溶解し、この溶液を酸で処理することによって生成することができる。当業者は、非毒性の薬学的に許容される付加塩を調製するために使用することができる様々な合成法を認識していよう。
【0044】
用語「投与する」とは、例えば、本明細書に記載されているポジトロン放出体標識化合物などの診断剤と組み合わせて本明細書で使用する場合、標的組織内又はその表面に直接、投与すること、又は、患者に診断剤を全身的に投与し、これにより、この診断剤が標的とする組織に関連する組織又は病理をイメージングするよう使用されることを意味する。組成物を「投与する」は、注射、注入によって、又は他の公知技法と組み合わせたいずれかの方法により行うことができる。
【0045】
用語「キュリー」(Ci)は、放射活性の測定単位である。1Ciとは、3.7×1010壊変/秒の速度で減衰する任意の放射活性物質のそうした量を指す。用語「ミリキュリー」(mCi)とは、10-3キュリーを指す。放射活性の国際単位系(SI)であるベクレルは、1壊変/秒に等しいことが理解される。したがって、1ベクレル=2.7×10-11キュリーである。
【0046】
用語「診断用イメージング」とは、本明細書で使用する場合、診断目的のために、ヒト又は動物の身体の内部構造の画像を生成するために、電磁線照射を使用することを指す。
【0047】
化合物の「有効量」という用語は、本明細書で使用する場合、個体の標的臓器の所望の画像を取得することを可能にするのに十分な量などの、所望の効果を実現するために算出された所定の量である。一部の場合、この標的臓器は脳である。
【0048】
用語「ハンチントンタンパク質」又は「HTTタンパク質」とは、本明細書で使用する場合、16.3位にある染色体4の短(p)腕に位置しているヒトハンチントン遺伝子(HTT遺伝子)によりコードされるタンパク質を指す。より正確には、HTTタンパク質をコードするIT15遺伝子は、染色体4上の塩基対3,076,407から塩基対3,245,686に位置している。
【0049】
用語「HTTタンパク質凝集体」とは、本明細書で使用する場合、ミスフォールディングされたHTTタンパク質分子を含む、不溶性繊維性アミロイドを指す。
【0050】
用語「β-アミロイド凝集体」とは、本明細書で使用する場合、ミスフォールディングされたβ-アミロイドタンパク質分子を含む、不溶性繊維性アミロイドを指す。
【0051】
用語「イメージング剤」とは、本明細書で使用する場合、1つ以上のポジトロン放出性同位体又は放射性核種により標識されている、本明細書に記載されている化合物を指す。ポジトロン放出体標識化合物は、特定の用途に適した技法を用いて検出を可能にする程度に、検出可能な同位体で富んでいることしか必要としない。
【0052】
用語「病理過程」とは、本明細書で使用する場合、タンパク質、ペプチド、RNA、及び内因性生物過程に関連する他の物質の産生異常及び/又は機能異常に関連し得る、こうした生物過程の改変を指す。
【0053】
用語「PETイメージング」とは、本明細書で使用する場合、ヒト又は動物の身体の内部構造の画像を生成するために、ポジトロン放出体標識化合物を使用することを指す。
【0054】
用語「医薬組成物」とは、本明細書に記載されている少なくとも1つのイメージング剤を含む組成物であって、これにより、この組成物は、哺乳動物(例えば、非限定的にヒト)における具体的な有効な結果を得るための検討に利用しやすい、組成物を指す。当業者であれば、組成物が、専門家の必要性に基づいて、所望の有効な結果を有するかどうかを決定するための適切な技法を理解し、認識しているであろう。
【0055】
用語「ポジトロン放出放射性核種」とは、本明細書で使用する場合、放射性核種の核内部のプロトンが、ポジトロン及び電子ニュートリノ(νe)を放出しながら、ニュートロンに変換される、β+減衰と称される、放射活性減衰の特定のタイプを示す放射活性同位体を指す。ポジトロン放出放射性核種の一部の例には、15O、13N、11C、18F、76Br及び124Iが含まれる。これらの放射性核種は、それぞれ、約2、10、20、110分間、16時間、及び4.2日間の半減期を有する。
【0056】
用語「断層撮影法」とは、本明細書で使用する場合、区分毎のイメージング法を指す。画像は、一連の二次元の切片として個別又は一緒に、コンピューターにより生成された三次元表示として、見ることができる。
【0057】
式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩
【0058】
【化2】
(式中、
Z
1、Z
2、Z
3及びZ
4は、CH及びNから独立して選択されるが、ただし、Z
1、Z
2、Z
3及びZ
4のうちの少なくとも2つはCHであることを条件とし、
R
1は、アリール、ヘテロアリール及びヘテロシクロアルケニルから選択され、これらのそれぞれは、アルキニル、ヘテロアリール、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されており、
L
1は、O及びNR
4から選択され、
R
4は、水素及び低級アルキルから選択され、
L
2は、(CH
2)
m(mは、0、1又は2である)であり、
R
2は、水素、アリール、ヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているアリール、ヘテロアリール、及びヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているヘテロアリールから選択され、
R
5は、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロ及びオキソ(ヘテロシクロアルキル環上の置換基として)から選択され、
nは、0又は1である)
を含むイメージング剤であって、
式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩が、1種以上のポジトロン放出放射性核種により標識されている、イメージング剤が提供される。
【0059】
同様に、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩
【0060】
【化3】
(式中、
Z
1、Z
2、Z
3及びZ
4は、CH及びNから独立して選択されるが、ただし、Z
1、Z
2、Z
3及びZ
4のうちの少なくとも2つはCHであることを条件とし、
R
1は、アリール及びヘテロアリールから選択され、これらのそれぞれは、アルキニル、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されており、
L
1は、O及びNR
4から選択され、
R
4は、水素及び低級アルキルから選択され、
L
2は、(CH
2)
m(mは、0、1又は2である)であり、
R
2は、水素、ヘテロアリール、及びヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているヘテロアリールから選択され、
R
5は、低級アルキル、低級アルコキシ及びハロから選択され、
nは、0又は1である)
を含むイメージング剤であって、
式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩が、1種以上のポジトロン放出放射性核種により標識されている、イメージング剤が提供される。
【0061】
一部の実施形態では、R1は、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される、1つ又は2つの基により場合により置換されているフェニルである。
【0062】
一部の実施形態では、R1は、シアノ、メチル、及びアミノ、(アルキル)アミノ若しくは(ジアルキル)アミノにより置換されているメチルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されているフェニルである。
【0063】
一部の実施形態では、R1は2-シアノフェニルである。
【0064】
一部の実施形態では、R1は、アルキニル、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されているヘテロアリールである。
【0065】
一部の実施形態では、R1は、ピリジン-4-イル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリミジン-4-イル、1,2-ジヒドロピリジン-2-オン-3-イル、1H-インダゾール-4-イル及び1H-インダゾール-7-イルから選択され、これらのそれぞれは、アルキニル、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されている。
【0066】
一部の実施形態では、R1は、ピリジン-4-イル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル及びピリミジン-4-イルから選択され、これらのそれぞれは、アルキニル、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されている。
【0067】
一部の実施形態では、R1は、5-シアノ-ピリミジン-4-イル、ピリジン-4-イル、5-ブロモ-1,2-ジヒドロピリジン-2-オン-3-イル、3-アセトアミド-ピリジン-4-イル、2-アセトアミド-ピリジン-6-イル、3-シアノ-ピリジン-4-イル、3-シアノ-ピリジン-6-イル、3-ブロモ-ピリジン-4-イル、3-ブロモ-ピリジン-2-イル、3-シアノ-ピリジン-2-イル、3-フルオロ-ピリジン-4-イル、2-シアノ-ピリジン-4-イル、4-シアノ-ピリジン-3-イル及び3-エチニル-ピリジン-4-イルから選択される。
【0068】
一部の実施形態では、R1は、ピリジン-4-イル又は3-シアノ-ピリジン-4-イルである。
【0069】
一部の実施形態では、R1は、低級アルキルにより場合により置換されているヘテロシクロアルケニルである。
【0070】
一部の実施形態では、R1は、低級アルキルにより場合により置換されている2,3-ジヒドロピリダジン-6-イルである。
【0071】
一部の実施形態では、L1はOである。
【0072】
一部の実施形態では、mは1である。
【0073】
一部の実施形態では、R2は、水素、アリール、ヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているアリール、ヘテロアリール、及びヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているヘテロアリールから選択される。
【0074】
一部の実施形態では、R2は、水素、ヘテロアリール、及びヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているヘテロアリールから選択される。
【0075】
一部の実施形態では、R2は、水素、フェニル、ピリジン-2-イル、ピリミジン-5-イル、ピラジン-2-イル及びピリミジン-5-イルから選択され、水素以外のこれらのそれぞれは、ヒドロキシル又は低級アルコキシにより場合により置換されている。
【0076】
一部の実施形態では、R2は、水素、ピリジン-2-イル、ピリミジン-5-イル、ピラジン-2-イル及びピリミジン-5-イルから選択され、水素以外のこれらのそれぞれは、ヒドロキシル又は低級アルコキシにより場合により置換されている。
【0077】
一部の実施形態では、Z1、Z2、Z3及びZ4は、CHである。
【0078】
一部の実施形態では、Z1はNであり、Z2、Z3及びZ4は、CHである。
【0079】
一部の実施形態では、Z2はNであり、Z1、Z3及びZ4は、CHである。
【0080】
一部の実施形態では、Z2及びZ4はNであり、Z1及びZ3はCHである。
【0081】
同様に、
2-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリル; 2-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル;
2-[5-(ピリミジン-5-イルメトキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリジン-3-カルボニトリル;
4-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル;
4-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリミジン-5-カルボニトリル;
4-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリミジン-5-カルボニトリル;
4-{5-[(5-ヒドロキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル;
4-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリル;及び
4-[5-(ピリミジン-5-イルメトキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリジン-3-カルボニトリル;
から選択される、式Iの化合物
又は薬学的に許容されるその塩を含むイメージング剤であって、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩が、1種以上のポジトロン放出放射性核種により標識されている、イメージング剤も提供される。
【0082】
同様に、
2-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリル; 2-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル;
2-[5-(ピリミジン-5-イルメトキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリジン-3-カルボニトリル;
4-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル;
4-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリミジン-5-カルボニトリル;
4-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリミジン-5-カルボニトリル;
4-{5-[(5-ヒドロキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル;
4-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリル; 4-[5-(ピリミジン-5-イルメトキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリジン-3-カルボニトリル;
5-[(5-メトキシピラジン-2-イル)メトキシ]-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール;
4-[5-(ベンジルオキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリミジン-5-カルボニトリル;
4-{5-[(5-ヒドロキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリミジン-5-カルボニトリル;
6-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}-2-メチル-2,3-ジヒドロピリダジン-3-オン;及び
5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン、
から選択される式Iの化合物
又は薬学的に許容されるその塩を含むイメージング剤であって、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩が、1種以上のポジトロン放出放射性核種により標識されている、イメージング剤も提供される。
【0083】
式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩は、1種以上のポジトロン放出放射性核種により標識されている。本明細書に記載されている化合物に取り込まれ得る、適切なポジトロン放出放射性核種は、以下に限定されないが、11C、13N、15O、18F、52Fe、62Cu、64Cu、68Ga、74As、82Rb、89Zr、122I及び124Iである。一部の実施形態では、1種以上のポジトロン放出放射性核種は、11C、13N、15O、18F、76Br及び124Iから選択される。一部の実施形態では、1種以上のポジトロン放出放射性核種は、11C、13N、15O及び18Fから選択される。
【0084】
非金属放射性核種は、最新技術から周知の反応によって、本明細書に記載されている化合物に共有結合することができる。放射性核種が、金属のポジトロン放出体である場合、標識化はキレート剤の使用を必要とすることがあることが理解される。こうしたキレート剤は、最新技術から周知である。
【0085】
PETイメージング剤は、ポジトロン放出体11C又は18Fにより標識することができる。11Cを導入するための方法は、以下に限定されないが、[11C]ヨードメタン又は[11C]メチルトリフレートによるアルキル化を含むことができる。炭素11は、約20分間の半減期を有しており、したがって、11Cは、現場にあるサイクロトロンで発生させる必要があり、一般に、[11C]二酸化炭素として生成される。[11C]二酸化炭素は、放射合成に適した化学種に変換され(一般に、[11C]ヨードメタンなど)、放射性医薬品の合成が終了し、適切な放射化学純度及び比活性が決定された後、PETイメージング検討において現場で使用される。18Fを導入する典型的な方法は、以下に限定されないが、ハロゲン化物イオン、トシレート又は他の脱離基を[18F]フッ化テトラブチルアンモニウム又は[18F]フッ化カリウムであるkryptofix-222による置きかえを含むことができる。フッ素-18は、約110分間の半減期を有しており、したがって、[18F]放射性医薬品の合成は、必ずしも、サイクロトロンのある場所やPETイメージング検討センターに近い場所で行わなければならない必要性はない。これらのポジトロン放出体を導入する一般的な方法は、文献(Millerら、Angewandte Chemie International Edition、47巻(2008年)、8998~9033頁)に記載されている。
【0086】
有効量の本明細書に記載されているイメージング剤を個体に投与するステップ、及び該個体の少なくとも一部の画像を生成するステップを含む、個体において診断画像を生成する方法が提供される。
【0087】
同様に、有効量の本明細書に記載されているイメージング剤を生物試料に接触させるステップ、及び該生物試料に関連するポジトロン放出体標識化合物の画像を生成するステップを含む、生物試料における診断画像を生成する方法も提供される。この方法では、上記の接触するステップと生成するステップの両方がインビトロで行われてもよく、代替として接触するステップはインビボで、及び生成するステップはインビトロで行われる。
【0088】
同様に、個体における、ハンチントンタンパク質(HTTタンパク質)に関連する神経変性病理過程の存在又は非存在を検出する方法であって、有効量の本明細書に記載されているポジトロン放出体標識化合物を投与するステップ、該個体の脳におけるHTTタンパク質凝集体の存在又は非存在を検出するための画像を生成するステップ、及び病理過程の存在又は非存在を検出するステップを含む、方法も提供される。一部の実施形態では、HTTタンパク質凝集体は、個体の脳の大脳基底核に存在している。一部の実施形態では、病理過程は、ハンチントン病(HD)である。一部の実施形態では、有効量のイメージング剤は、約0.1~約20mCiを含む。一部の実施形態では、有効量のイメージング剤は、約10mCiを含む。一部の実施形態では、画像を生成するステップは、ポジトロン断層法(PET)イメージング、同時コンピューター断層撮影法イメージングとのPET(PET/CT)、同時磁気共鳴イメージングとのPET(PET/MRI)、又はそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、画像を生成するステップは、PETイメージング法を含む。
【0089】
同様に、患者において、標的である凝集体のレベルの変化を定量することによる、該患者における疾患進行をモニタリングするためのイメージング剤を使用する、診断方法も提供される。
【0090】
同様に、個体における、ハンチントンタンパク質(HTTタンパク質)に関連する神経変性病理過程の存在又は非存在を検出する方法であって、有効量の本明細書に記載されているポジトロン放出体標識化合物を投与するステップ、該個体におけるHTTタンパク質凝集体の存在又は非存在を検出するための画像を生成するステップ、及び病理過程の存在又は非存在を検出するステップを含む、方法も提供される。一部の実施形態では、HTTタンパク質モノマー又は凝集体(aggegate)は、前記個体の脳、肝臓、心臓又は筋肉に存在している。一部の実施形態では、HTTタンパク質凝集体は、個体の脳の大脳基底核、皮質、海馬又は脳幹に存在している。一部の実施形態では、病理過程は、ハンチントン病(HD)である。一部の実施形態では、有効量のイメージング剤は、約0.1~約20mCiを含む。一部の実施形態では、有効量のイメージング剤は、約10mCiを含む。一部の実施形態では、画像を生成するステップは、ポジトロン断層法(PET)イメージング、同時コンピューター断層撮影法イメージングとのPET(PET/CT)、同時磁気共鳴イメージングとのPET(PET/MRI)、又はそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、画像を生成するステップは、PETイメージング法を含む。
【0091】
同様に、個体における、β-アミロイドタンパク質に関連する神経変性病理過程の存在又は非存在を検出する方法であって、有効量の本明細書に記載されているポジトロン放出体標識化合物を投与するステップ、該個体におけるβ-アミロイドタンパク質凝集体の存在又は非存在を検出するための画像を生成するステップ、及び病理過程の存在又は非存在を検出するステップを含む、方法も提供される。一部の実施形態では、β-アミロイドタンパク質モノマー又は凝集体(aggegate)は、前記個体の脳、肝臓、心臓又は前記個体の筋肉に存在している。一部の実施形態では、β-アミロイドタンパク質凝集体は、個体の脳の大脳基底核、皮質、海馬又は脳幹に存在している。一部の実施形態では、病理過程はアルツハイマー病(AD)である。一部の実施形態では、有効量のイメージング剤は、約0.1~約20mCiを含む。一部の実施形態では、有効量のイメージング剤は、約10mCiを含む。一部の実施形態では、画像を生成するステップは、ポジトロン断層法(PET)イメージング、同時コンピューター断層撮影法イメージングとのPET(PET/CT)、同時磁気共鳴イメージングとのPET(PET/MRI)、又はそれらの組合せを含む。一部の実施形態では、画像を生成するステップは、PETイメージング法を含む。
【0092】
本明細書において、HTTタンパク質凝集体又はβ-アミロイドタンパク質凝集体に対して効果的なイメージング剤として機能する、適切なHTTタンパク質凝集体又はβ-アミロイドタンパク質凝集体の結合速度を有する化合物が提供される。HTTタンパク質凝集体のための効果的なイメージング剤として機能するための本発明の化合物の要件は、以下である:1)HTTタンパク質凝集体に対する親和性が高い、2)それによる構造に対する親和性は低いこと、3)以下の式(式中、A及びBは、HTTタンパク質凝集体及びイメージング剤を指し、kassnは解離速度定数である)において定義される、解離速度定数kdissとして都合よく表すことができる、HTTタンパク質凝集体からの解離速度が遅いことである。
d[AB]/dt=kassn[A][B]-kdiss[AB]
【0093】
HDにより最も冒され、こうしてHTTタンパク質異常を含有する可能性が最も高い脳の部分は、大脳基底核としてまとめて知られている脳の基底部における神経細胞のグループである。この大脳基底核は、筋肉により推進される身体の運動、又は「運動活動」を組織化する。大脳基底核の主な構成成分は、尾状核及び被殻(線条体として一緒に公知である)及び淡蒼球(外部及び内部領域)である。黒質及び視床下核には、多くの場合、同様に、大脳基底核の一部として含まれる。
【0094】
大脳基底核という用語は、運動制御、並びに運動学習、遂行機能及び挙動、並びに感情などの他の役割を主に担う皮質核のグループを指す。大脳基底核のネットワークの攪乱により、いくつかの運動障害に対する基礎が形成される。大脳基底核の正常な機能には、いかなる所与の瞬間においても、運動促進又は運動阻害の正確な程度を決定するために、各核内部におけるニューロンの興奮を精密に調節することが必要とされる。これは、中型有棘ニューロンの興奮がいくつかのシナプス前及びシナプス後機構、並びに介在ニューロンの活性によって制御される、線条体の複合組織によって媒介され、いくつかの反復性又は内部大脳基底核回路によって確保される。大脳基底核の運動回路は、線条体及び視床下核という2つの入力点、ならび淡蒼球内節という1つの出力点を有しており、この淡蒼球内節は、運動視床を介して皮質につながっている。
【0095】
個体の脳の一部をイメージングする方法であって、本明細書に記載されているポジトロン放出体標識化合物を該個体に、例えば、個体の脈管系に投与し、ここから上記標識化合物が血液脳関門を通過し、次に、この化合物が分布している個体の脳の少なくとも一部の画像を生成するステップを含む方法が提供される。
【0096】
同様に、有効量の本明細書に記載されているポジトロン放出体標識化合物又は薬学的に許容されるその塩を、1種以上の薬学的に許容されるアジュバント、賦形剤又は希釈剤と一緒に含む、医薬組成物も提供される。
【0097】
イメージング剤又はその医薬組成物は、任意の適切な経路により、処置を必要としている患者に投与することができる。投与経路は、例えば、非経口投与(例えばドリップパッチ剤による、皮下、筋肉内、静脈内を含む)を含むことができる。さらに適切な投与経路には、(以下に限定されないが)経口、直腸、経鼻、局所(口内及び舌下を含む)、注入、膣、皮内、腹腔内、頭蓋内、くも膜下及び硬膜外投与、あるいは例えば、ネブライザー若しくは吸入器による、又はインプラントによる経口又は鼻腔吸入による投与が含まれ得る。
【0098】
イメージング剤又はその医薬組成物は、血液を含めたある組織に置かれる、マイクロスフィア、リポソーム、他のマイクロ粒子送達系、又は徐放性製剤により投与されてもよい。持続放出担体の適切な例には、共用物品(shared article)の形態、例えば座剤又はマイクロカプセルの半透過性ポリマーマトリックスが含まれる。上記の技法及びプロトコル、並びに本明細書に従って使用することができる他の技法及びプロトコルの例は、その全体の開示が参照により組み込まれている、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Gennaro, A. R.、Lippincott Williams & Wilkins;第20版(2000年12月15日) ISBN 0-912734-04-3及びPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems; Ansel, N. C.ら、第7版、ISBN 0-683305-72-7に見出すことができる。
【0099】
同様に、個体の診断方法において使用するためのイメージング剤を製造するための、本明細書に記載されているポジトロン放出体標識化合物の使用も提供される。
【0100】
陽子放出体断層撮影法(PET)を含む、診断画像を生成する方法が提供される。PETは、個体へのポジトロン放出放射性核種トレーサーの投与を含む。一旦、トレーサーが対象とする標的と結合するのに十分な時間を有すると、この個体は、シンチレーション検出器の輪を含むスキャン装置内に置かれる。放出されたポジトロンが電子と相互作用をするまで、個体の組織を短い(同位体依存性)距離、移動する。この相互作用は、電子とポジトロンの両方を対消滅させて、ほぼ反対の方向に動く一対の光子を生成させる。この光子がスキャン装置のシンチレーターに到達すると、光子が検出される。対を形成して到達しない光子は、無視される。
【0101】
同様に、同時コンピューター断層撮影法イメージングを伴うPET(PET/CT)、又は同時磁気共鳴イメージングを伴うPET(PET/MRI)を含めた、診断画像を生成する方法も提供される。コンピューター断層撮影は、脳の構造を示すためにX線を使用する一方、磁気共鳴イメージング法は、磁場及び電波を使用する。
【0102】
開示されているイメージング剤及び方法の他の使用は、とりわけ、本開示を鑑みると、当業者には明らかになろう。
【0103】
理解される通り、本明細書に記載されている方法の工程は、任意の特定の時間数又は任意の特定の順序で行う必要はない。本開示の追加の目的、利点及び新規特徴は、その以下の実施例を精査すると当業者に明らかになり、これらの実施形態は、例示を意図するものであって、限定を意図するものではない。
【実施例】
【0104】
概略の実験詳細
市販の試薬及び溶媒(HPLCグレード)をさらに精製することなく使用した。1H NMRスペクトルは、重水素化溶媒中、Bruker DRX500MHz分光計又はBruker DPX250MHz分光計で記録した。ケミカルシフト(δ)は、百万分率である。SCXクロマトグラフィーは、メタノール中の試料をBiotage Isolute Flash SCX-2にロードし、メタノール、次にメタノール中の5%アンモニアにより溶出することによって実施した。
【0105】
分析用HPLC-MS(METCR1278)は、逆相Atlantis dC18カラム(3μm、2.1×50mm)、5~100%B(A=水/0.1%ギ酸、B=アセトニトリル/0.1%ギ酸)の3分間にわたるグラジエント、注入量3μL、流速=1.0mL/分を使用して、Shimadzu LCMS-2010EVシステムで行った。UVスペクトルは、SPD-M20A光ダイオードアレイ検出器を使用し、215nmで記録した。質量スペクトルは、LCMS2010EVを使用し、試料速度2スキャン/秒で、m/z150~850の範囲にわたって得た。データは、Shimadzu LCMS-Solutions及びPsiPortソフトウェアを使用して積分し、報告した。
【0106】
あるいは、逆相Water Atlantis dC18カラム(3μm、2.1×100mm)、5~100%B(A=水/0.1%ギ酸、B=アセトニトリル/0.1%ギ酸)の7分間にわたるグラジエント、注入量3μL、流速=0.6mL/分を使用した、Shimadzu LCMS-2010EVシステムに基づく(METCR1416)分析用HPLC-MS。UVスペクトルは、SPD-M20A光ダイオードアレイ検出器を使用し、215nmで記録した。質量スペクトルは、LCMS2010EVを使用し、試料速度2スキャン/秒で、m/z150~850の範囲にわたって得た。データは、Shimadzu LCMS-Solutions及びPsiPortソフトウェアを使用して積分し、報告した。
【0107】
あるいは、(MET-uHPLC-AB-101)分析用HPLC-MSは、Phenomenex Kinetex-XB C-18カラム(1.7μM、2.1mm×100mm、カラム温度40℃、5.3分間にわたる5~100%B(A=水/0.1%ギ酸、B=アセトニトリル/0.1%ギ酸)のグラジエント、次に、100%Bを0.5分間、流速=0.6mL/分を使用する、Waters PDA及びELS検出器を備えた、Waters Acquity UPLCシステムで行った。UVスペクトルは、Waters Acquity光ダイオードアレイを使用して215nmで記録した。質量スペクトルは、Waters SQDを使用し、試料速度5スキャン/秒で、m/z150~850の範囲にわたって得た。データは、Waters MassLynx及びOpenLynxソフトウェアを使用して積分して報告した。
【0108】
試料化合物はすべて、特に明記しない限り、LC純度が>95%を示す。
【0109】
方法1
【0110】
【0111】
工程1、方法1:5-(クロロメチル)ピリミジン塩酸塩
ピリミジン-5-イルメタノール(48mg、0.43mmol)のジクロロメタン(3mL)溶液に、0℃で二塩化チオニル(0.26mL、3.6mmol)を滴下して加えた。この混合物を加熱して、2時間、還流し、次にこの混合物を濃縮した。ジクロロメタン(5mL)を加え、この混合物を濃縮(×3)すると、表題化合物が黄色油状物として得られ、これを次の工程に直接、使用した。Tr(METCR1278)=0.90分、(ES+)(M+H)+129/131。
【0112】
工程2、方法1:4-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリル
5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール塩酸塩(500mg、2.69mmol)、4-クロロピリジン-3-カルボニトリル(448mg、3.23mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(1.4mL、8.08mmol)をn-ブタノール(6mL)に懸濁させた。この反応物をマイクロ波中、140℃で1時間、加熱した。この反応混合物を酢酸エチル(50mL)と水(30mL)との間に分配し、水相(aqueous)を酢酸エチル(2×30mL)により抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(15mL)により洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより脱水し、ろ過して濃縮した。FCC(シリカ、ヘプタン中20~100%酢酸エチル)により精製すると、表題化合物230mg(34%収率)がオフホワイトの固体として得られた。Tr(METCR1278)=1.28分、(ES+)(M+H)+252。
【0113】
工程3、方法1:4-(5-ヒドロキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリル
4-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリル(230mg、0.92mmol)をジクロロメタン(15mL)に溶解し、窒素雰囲気中で撹拌した。この反応混合物を0℃まで冷却し、ジクロロメタン中の1M三臭化ホウ素(4.58mL、4.58mmol)をゆっくりと加えた。この反応混合物を室温まで温め、48時間、撹拌した。この反応混合物を0℃まで冷却し、メタノール(20mL)をゆっくりと加えた。この溶媒を真空で除去すると、表題化合物313mg(定量的収率)がベージュ色固体として得られた。Tr(METCR1278)=1.36分、(ES+)(M+H)+238、90%。
【0114】
工程4、方法1:4-[5-(ピリミジン-5-イルメトキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリジン-3-カルボニトリル
4-(5-ヒドロキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリル(90%、313mg、1.19mmol)、5-(クロロメチル)ピリミジン塩酸塩(粗製物、1.42mmol)及びヨウ化カリウム(217mg、1.31mmol)を無水N,N-ジメチルホルムアミド(3mL)に溶解し、室温で5分間、撹拌した。水素化ナトリウム(鉱物油中60%、142mg、3.56mmol)を加え、この反応混合物を室温で24時間、撹拌した。水(0.1mL)を加え、溶媒を真空で除去した。残留物を酢酸エチル(50mL)と水(50mL)との間に分配し、水相を酢酸エチル(2×50mL)により抽出した。合わせた有機抽出物を水(20mL)、ブライン(20mL)により洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより脱水し、ろ過して濃縮した。分取HPLC(アセトニトリル-水-0.2%水酸化アンモニウム)により精製すると、表題化合物19.5mg(5%収率)がオフホワイトの固体として得られた。
【0115】
[実施例1]
方法1:4-[5-(ピリミジン-5-イルメトキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリジン-3-カルボニトリル
δH NMR (500 MHz, DMSO) 9.19 (s, 1H), 8.93 (s, 2H), 8.51 (s, 1H), 8.29 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.16 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.05 (dd, J = 8.4, 2.3 Hz, 1H), 6.77 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 5.23 (s, 2H), 5.03 (s, 2H), 4.97 (s, 2H). Tr(MET-uHPLC-AB-101) = 1.4分, (ES+) (M+H)+330.
【0116】
上記の方法1を使用して、以下の実施例を調製した。
【0117】
【0118】
方法2
【0119】
【0120】
工程1、方法2:メチル5-(メトキシメトキシ)ピリジン-2-カルボキシレート
水素化ナトリウム(鉱物油中60%、144mg、3.59mmol)を無水N,N-ジメチルホルムアミド(5mL)に懸濁させて、0℃まで冷却した。この懸濁液にN,N-ジメチルホルムアミド(5mL)に溶解したメチル5-ヒドロキシピリジン-2-カルボキシレート(500mg、3.27mmol)をゆっくりと加えた。この反応混合物を窒素下で撹拌し、30分間かけて室温まで温めた。この反応物を0℃まで冷却し、クロロ(メトキシ)メタン(0.26mL、3.43mmol)を15分間かけて滴下して加えた。この反応物を室温まで温め、16時間、撹拌した。水(20mL)を加え、溶媒を真空で除去した。この混合物を酢酸エチルと水(1:1、100mL)との間に分配し、酢酸エチル(3×60mL)により抽出した。合わせた有機抽出物を水(3×80mL)、ブライン(50mL)により洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより脱水し、ろ過して真空で濃縮すると、表題化合物0.6g(89%収率)がオレンジ色油状物として得られ、これを静置すると固化した。Tr(METCR1278)=1.33分、(ES+)(M+H)+198。
【0121】
工程2、方法2:[5-(メトキシメトキシ)ピリジン-2-イル]メタノール
窒素雰囲気中、メチル5-(メトキシメトキシ)ピリジン-2-カルボキシレート(0.39g、1.9mmol)を無水テトラヒドロフラン(15mL)に溶解し、0℃に冷却した。テトラヒドロフラン(0.87mL、2.09mmol)中の2.4M水素化アルミニウムリチウムを5分間かけて滴下して加え、この反応物を0℃で1.5時間、撹拌した。この反応物を0℃まで冷却し、激しく撹拌しながら、10分間かけて、飽和水性ロッシェル塩(1mL)を滴下して加えた。この反応混合物を1時間、室温まで温めた。得られたエマルションをガラスファイバー製ろ紙によりろ過した。このろ紙を飽和水性炭酸水素ナトリウム(10mL)、次いで酢酸エチル(3×10mL)により洗浄した。相を分離し、水相を酢酸エチル(3×10mL)により抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(10mL)により洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより脱水し、ろ過して濃縮すると、表題化合物276mg(86%収率)がオレンジ色油状物として得られた。Tr(METCR1278)=1.09分、(ES+)(M+H)+170。
【0122】
工程3、方法2:[5-(メトキシメトキシ)ピリジン-2-イル]メチルメタンスルホネート
窒素雰囲気中、[5-(メトキシメトキシ)ピリジン-2-イル]メタノール(276mg、1.63mmol)をジクロロメタン(5mL)に溶解し、0℃に冷却して撹拌した。トリエチルアミン(250μL、1.79mmol)を加え、次いで塩化メタンスルホニル(133μL、1.71mmol)を滴下して加えた。この反応物を0℃で45分間、撹拌し、室温まで温めた。水(5mL)を加え、相を分離した。この水層をジクロロメタン(3×15mL)により抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(10mL)により洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより脱水し、ろ過して濃縮すると、表題化合物275mg(59%収率)が暗赤色油状物として得られた。Tr(METCR1278)=1.35分、(ES+)(M+H)+248。
【0123】
工程4、方法2:4-(5-{[5-(メトキシメトキシ)ピリジン-2-イル]メトキシ}-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリル
4-(5-ヒドロキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリル(330mg、1.66mmol、方法1により調製)、[5-(メトキシメトキシ)ピリジン-2-イル]メチルメタンスルホネート(532mg、1.66mmol)及びヨウ化カリウム(62mg、0.37mmol)を無水N,N-ジメチルホルムアミド(4mL)に溶解した。水素化ナトリウム(鉱物油中60%、27mg、0.16mmol)を加え、この混合物を室温で44時間、撹拌した。この反応混合物をメタノール(2mL)によりクエンチし、酢酸エチル(100mL)、飽和水性炭酸水素ナトリウム(50mL)及びブライン(50mL)の間に分配した。水層を分離後、酢酸エチル(3×100mL)により抽出した。有機抽出物を合わせて、ブライン(30mL)により洗浄し、硫酸ナトリウムにより脱水して濃縮した。残留物を酢酸エチル:ヘプタン(1:1)により粉末にすると、表題化合物269mg(39%収率)が褐色固体として得られた。δH NMR (500 MHz, DMSO) 8.49 (s, 1H), 8.33 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 8.27 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 2.7 Hz, 1H), 7.48 (s, 1H), 7.32 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.09 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 6.98 (dd, J = 8.4, 2.3 Hz, 1H), 6.74 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 5.26 (s, 2H), 5.12 (s, 2H), 4.96 (d, J = 22.4 Hz, 4H), 3.38 (s, 3H).
【0124】
工程5、方法2:4-{5-[(5-ヒドロキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル
4-(5-{[5-(メトキシメトキシ)ピリジン-2-イル]メトキシ}-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリル(269mg、0.69mmol)のテトラヒドロフラン(40mL)中溶液に、3M塩酸(4.6mL)を加え、この混合物を60℃で8時間、撹拌した。この混合物を室温で一晩、撹拌した。揮発物を真空で除去し、残った残留物を水により希釈した。pHが約8になるまで、固体の炭酸水素ナトリウムを小分けにして加えた。固体をろ過により採集し、水(2×10mL)により洗浄して真空下で乾燥した。FCC(シリカ、ヘプタン中0~60%テトラヒドロフラン)により精製すると、表題化合物101mg(42%収率)が白色固体として得られた。
【0125】
[実施例4]
方法2:4-{5-[(5-ヒドロキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル
δH NMR (500 MHz, DMSO) 10.01 (s, 1H), 8.49 (s, 1H), 8.27 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 8.11 (d, J = 2.5 Hz, 1H), 7.34 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.32 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.18 (dd, J = 8.4, 2.9 Hz, 1H), 7.08 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.97 (dd, J = 8.4, 2.4 Hz, 1H), 6.75 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 5.05 (s, 2H), 4.98 (s, 2H), 4.94 (s, 2H). Tr(MET-uHPLC-AB-101) = 1.28分, (ES+) (M+H)+345.
【0126】
上記の方法2を使用して、以下の実施例を調製した。
【0127】
【0128】
方法3
【0129】
【0130】
工程1、方法3:メチル5-メトキシピラジン-2-カルボキシレート
メチル5-クロロピラジン-2-カルボキシレート(2.00g、11.6mmol)に、窒素下、ナトリウムメトキシドの0.5Mメタノール(27.8mL、13.9mmol)溶液を加えた。この混合物を90℃で15分間、還流した。次に、この混合物を水(80mL)に溶解し、酢酸エチル(2×100mL)により抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムにより脱水し、ろ過して濃縮すると、表題化合物1.68g(79%収率)が白色粉末として得られた。δH NMR (500 MHz, クロロホルム) 8.88 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 8.28 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 4.05 (s, 3H), 4.00 (s, 3H). Tr(METCR1278) = 1.23分, (ES+) (M+H)+ 169.
【0131】
工程2、方法3:(5-メトキシピラジン-2-イル)メタノール
窒素下、メチル5-メトキシピラジン-2-カルボキシレート(200mg、1.19mmol)の撹拌した無水テトラヒドロフラン(8mL)溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(270mg、7.14mmol)を加えた。この混合物を65℃で15分間、還流し、この後、メタノール(1.59mL、39.2mmol)をゆっくりと加えた。この反応物を65℃で1.5時間、還流した。この混合物を水(0.5mL)によりクエンチし、次に、さらなる水(15mL)により希釈し、酢酸エチル(2×25mL)、次にジクロロメタン中の20%2-プロパノール(25mL)により抽出した。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムにより脱水し、ろ過して濃縮すると、表題化合物115mg(69%収率)が白色結晶性固体として得られた。δH NMR (500 MHz, DMSO) 8.28 - 8.16 (m, 2H), 5.41 (t, J = 5.8 Hz, 1H), 4.54 (d, J = 5.6 Hz, 2H), 3.90 (s, 3H). Tr(METCR1278) = 0.74分, (ES+) (M+H)+ 141.
【0132】
工程3、方法3:(5-メトキシピラジン-2-イル)メチルメタンスルホネート
窒素下、(5-メトキシピラジン-2-イル)メタノール(73mg、0.52mmol)の撹拌したジクロロメタン(1mL)溶液に、トリエチルアミン(0.08mL、0.73mmol)、次いで塩化メタンスルホニル(0.042mL、0.55mmol)を加えた。この混合物を室温で1時間、撹拌した。次に、この混合物をジクロロメタン(10mL)と水(10mL)との間に分配した。有機抽出物を硫酸ナトリウムにより脱水し、ろ過して濃縮すると、表題化合物59mg(52%収率)が黄色油状物として得られた。Tr(METCR1278)=1.25分、(ES+)(M+H)+219。
【0133】
工程4、方法3:5-[(5-メトキシピラジン-2-イル)メトキシ]-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール
2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-5-オール(87%、289mg、1.18mmol、方法1により調製)、(5-メトキシピラジン-2-イル)メチルメタンスルホネート(310mg、1.42mmol)及びヨウ化カリウム(197mg、1.18mmol)を無水N,N-ジメチルホルムアミド(5mL)に溶解し、室温で5分間、撹拌した。水素化ナトリウム(鉱物油中60%、142mg、3.55mmol)を加え、この反応混合物を窒素雰囲気下、室温で40時間、撹拌した。溶媒を真空で除去し、分取HPLC(アセトニトリル-水-0.2%水酸化アンモニウム)により精製すると、表題化合物30.1mg(8%収率)がベージュ色固体として得られた。
【0134】
[実施例1]
方法3:5-[(5-メトキシピラジン-2-イル)メトキシ]-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール
δH NMR (500 MHz, DMSO) 8.38 (d, J = 1.1 Hz, 1H), 8.34 (d, J = 1.3 Hz, 1H), 8.17 (d, J = 6.3 Hz, 2H), 7.32 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.10 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.01 (dd, J = 8.4, 2.3 Hz, 1H), 6.57 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 5.17 (s, 2H), 4.62 (s, 2H), 4.58 (s, 2H), 3.92 (s, 3H). Tr(MET-uHPLC-AB-101) = 1.77分, (ES+) (M+H)+ 335.
【0135】
上記の方法3を使用して、以下の実施例を調製した。
【0136】
【0137】
方法4
【0138】
【0139】
工程1、方法4:6-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)-2-メチル-2,3-ジヒドロピリダジン-3-オン
5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール塩酸塩(170mg、0.92mmol)、6-ブロモ-2-メチル-2,3-ジヒドロピリダジン-3-オン(182mg、0.96mmol)及び炭酸二セシウム(895.06mg、2.75mmol)を無水トルエン(3mL)に懸濁させて、窒素流下、5分間、音波照射した。酢酸パラジウム(II)(20.56mg、0.09mmol)及び4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン(53mg、0.09mmol)を加え、この反応物を16時間、100℃に加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、セライトによりろ過した。このセライトをジクロロメタン中の10%メタノールにより洗浄し、このろ液を真空で濃縮し、FCC(シリカ、ヘプタン中20~100%酢酸エチル、ジクロロメタン中0~10%メタノール)、SCX及びHPLC(アセトニトリル/水+0.2%ギ酸)により精製すると、表題化合物、34mg(14%収率)がベージュ色固体として得られた。δH NMR (500 MHz, DMSO) 7.30 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 6.96 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.92 - 6.84 (m, 2H), 4.63 (s, 2H), 4.59 (s, 2H), 3.76 (s, 3H), 3.53 (s, 3H). Tr(MET-uHPLC-AB-101) = 2.56分, (ES+) (M+H)+258.
【0140】
工程2、方法4:6-(5-ヒドロキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)-2-メチル-2,3-ジヒドロピリダジン-3-オン
6-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)-2-メチル-2,3-ジヒドロピリダジン-3-オン(96mg、0.37mmol)を無水ジクロロメタン(5mL)に溶解し、ジクロロメタン中の1M三臭化ホウ素(0.6mL)を加え、この反応物を室温で16時間、撹拌した。ジクロロメタン中の1M三臭化ホウ素(0.2mL)を加え、この反応物を室温で2時間、撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム溶液(15mL)を加え、この反応混合物を20分間、激しく撹拌した。この反応混合物をろ過し、沈殿物をメタノール(5mL)及びトルエン(2×10mL)から共蒸溜すると、表題化合物84mg(90%収率)がベージュ色固体として得られた。δH NMR (500 MHz, DMSO) 7.29 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 7.14 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.88 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 6.75 (s, 1H), 6.69 (dd, J = 8.2, 2.1 Hz, 1H), 4.58 (s, 2H), 4.55 (s, 2H), 3.52 (s, 3H). Tr(METCR1673) = 0.94分, (ES+) (M+H)+244.
【0141】
工程3、方法4:6-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}-2-メチル-2,3-ジヒドロピリダジン-3-オン
(5-メトキシピリジン-2-イル)メタノール(54mg、0.37mmol)を無水ジクロロメタン(3mL)に溶解し、二塩化チオニル(0.25ml、3.35mmol)を加え、この反応物を窒素雰囲気中、2時間、50℃に加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、ジクロロメタン(3×10mL)から真空で濃縮すると、褐色油状物が得られ、これを次の工程において粗製物で使用した。6-(5-ヒドロキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)-2-メチル-2,3-ジヒドロピリダジン-3-オン(97%、84mg、0.33mmol)、ヨウ化カリウム(61mg、0.37mmol)及び2-(クロロメチル)-5-メトキシピリジン(58mg、0.37mmol)を無水N,N-ジメチルホルムアミド(5mL)に溶解し、水素化ナトリウム(60%、40.19mg、1mmol)を加え、この反応物を窒素雰囲気中、室温で1時間、撹拌した。水素化ナトリウム(60%、40mg、1mmol)を加え、この反応物を3時間、70℃に加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、水(1mL)を添加することによりクエンチし、溶媒を真空で除去し、16時間、静置した。この残留物を酢酸エチル(50mL)と水(50mL)との間に分配し、相を分離して、水層を酢酸エチル(2×50mL)によりさらに抽出し、合わせた有機物をブライン(10mL)により洗浄し、無水硫酸マグネシウムにより脱水し、ろ過して、このろ液を真空で溶媒蒸発させた。FCC(シリカ、ヘプタン中20~100%酢酸エチル、ジクロロメタン中10%メタノール)により精製すると、表題化合物32mg(26%収率)がベージュ色固体として得られた。
【0142】
[実施例1]
方法4:6-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}-2-メチル-2,3-ジヒドロピリダジン-3-オン
δH NMR (500 MHz, DMSO) 8.28 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.47 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.42 (dd, J = 8.6, 2.9 Hz, 1H), 7.30 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 7.27 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.05 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.95 (dd, J = 8.4, 2.3 Hz, 1H), 6.89 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 5.11 (s, 2H), 4.62 (s, 2H), 4.59 (s, 2H), 3.83 (s, 3H), 3.53 (s, 3H). Tr(MET-uHPLC-AB-101) = 2.56分, (ES+) (M+H)+365.
【0143】
上記の方法4を使用して、以下の実施例を調製した。
【0144】
【0145】
方法5
【0146】
【0147】
工程1、方法5:5-メトキシ-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン
5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン(100mg、0.61mmol)、4-ヨードピリジン(126mg、0.61mmol)、(9,9-ジメチル-9H-キサンテン-4,5-ジイル)ビス(ジフェニルホスファン)(53mg、0.09mmol)及び炭酸二セシウム(300mg、0.92mmol)を乾燥ジオキサン(1mL)に懸濁させ、この混合物を脱気した。(1E,4E)-1,5-ジフェニルペンタ-1,4-ジエン-3-オン-パラジウム(3:2)(28mg、0.03mmol)を加え、この混合物をマイクロ波中、140℃で90分間、加熱した。この混合物を酢酸エチル(10mL)及び水(5mL)により希釈し、ろ過すると、表題化合物28mg(20%収率)が褐色粉末として得られた。δH NMR (500 MHz, DMSO) 8.58 - 8.47 (m, 2H), 7.91 - 7.82 (m, 2H), 7.74 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.23 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.11 (dd, J = 8.5, 2.3 Hz, 1H), 4.98 (s, 2H), 3.89 (s, 3H). Tr(MET-uHPLC-AB-101) = 1.27分, (ES+) (M+H)+241.
【0148】
工程2、方法5:5-ヒドロキシ-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン
1,2-ジクロロエタン(10mL)中の5-メトキシ-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン(37mg、0.15mmol)に、ジクロロメタン中の1M三臭化ホウ素(1.54mL、1.54mmol)を加え、この混合物を一晩、加熱して還流した。ジクロロメタン中の1M三臭化ホウ素(1.54mL、1.54mmol)を加え、この混合物を2日間、加熱して還流し、室温で2日間、静置した。この混合物を1:1の氷:飽和(saturate)炭酸水素ナトリウムの混合物(50mL)に注ぎ入れ、1時間、撹拌した。この混合物をろ過し、水(5mL)及びジクロロメタンにより洗浄し、次に、真空オーブン中で乾燥すると、表題化合物19mg(55%収率)が黄褐色粉末として得られた。δH NMR (250 MHz, DMSO, 353 K) 8.72 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 8.30 (d, J = 7.4 Hz, 2H), 7.73 (d, J = 8.3 Hz, 1H), 7.01 (dd, J = 11.3, 3.0 Hz, 2H), 5.05 (s, 2H). Tr(METCR0990) = 0.85分, (ES+) (M+H)+227.
【0149】
工程3、方法5:5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン
(5-メトキシピリジン-2-イル)メタノール(95%、18mg、0.13mmol)を無水ジクロロメタン(3mL)に溶解し、二塩化チオニル(61μl、0.84mmol)を加え、この反応物を窒素雰囲気下で2時間、50℃に加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、真空で濃縮すると、褐色油状物が得られ、これを次の工程に、粗製物で使用した。5-ヒドロキシ-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン(19mg、0.08mmol)及び2-(クロロメチル)-5-メトキシピリジン(20mg、0.13mmol)を無水N,N-ジメチルホルムアミド(2mL)に溶解し、水素化ナトリウム(60%、40.19mg、1mmol)を加え、この反応物を窒素雰囲気下、室温で一晩、撹拌した。水(5mL)を添加することによりこの反応混合物をクエンチし、ろ過して水(3mL)、ヘプタン(5mL)及びメタノール(2mL)により洗浄し、真空オーブン中で乾燥すると、表題化合物7mg(24%収率)が褐色粉末として得られた。
【0150】
[実施例1]
方法5:5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン
δH NMR (500 MHz, DMSO) 8.56 - 8.48 (m, 2H), 8.31 (d, J = 2.9 Hz, 1H), 7.90 - 7.85 (m, 2H), 7.74 (d, J = 8.5 Hz, 1H), 7.52 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.44 (dd, J = 8.6, 2.9 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 7.19 (dd, J = 8.5, 2.1 Hz, 1H), 5.24 (s, 2H), 4.97 (s, 2H), 3.84 (s, 3H). Tr(MET-uHPLC-AB-101)= 1.59分, (ES+) (M+H)+ 348.
【0151】
上記の方法5を使用して、以下の実施例を調製した。
【0152】
【0153】
生物学実施例
Q46放射性リガンド結合アッセイ
放射性リガンド結合アッセイ(RBA)の場合、GST-Q46タンパク質を以前の出版物(Scherzingerら、Cell、90巻、549~558頁、1997年8月8日)に基づいて生成した。実験に関しては、33μMのGST-Q46を、アッセイ用緩衝液(150mM NaCl、50mM Tris、pH8.0)中の150μg/mLトロンビン及び2mM CaCl2と共に、37℃で16時間、インキュベートした。卓上遠心分離器で、13,000rmpで5分間、凝集体したQ46を遠心分離することによってペレットにし、同体積のアッセイ用緩衝液中に再溶解した。試験化合物は、33μMから1nMまでの11種の濃度のDMSO中で滴定することにより調製した。RBAに関しては、Q46タンパク質凝集体及び試験化合物を、96-ウェルプレート中、140μL/ウェル(pp、丸底)で、アッセイ用緩衝液に、室温で20分間、予備インキュベートした。次に、リガンドを10μL/ウェルで加え、37℃で60分間、インキュベートした。最終アッセイ濃度は、1μM~30pMの試験化合物、5μMのQ46タンパク質(当量モノマー濃度)及び10nMのリガンド[3H3]MK-3328(Harrisionら、ACS Med. Chem. Lett.、2巻(2011年)、498~502頁)とした。試料をGF/Bフィルタープレートに移送し、フィルターメイトハーベスタを使用し200μLPBSにより2回、洗浄した。フィルタープレートを37℃で1時間、乾燥した後、このプレートの裏側を箔で密封し、30μL/ウェルのシンチレーション用流体(Packard MicroScint 40)を加え、暗室中で15分間、インキュベートし、TopCountリーダーで計数した。分析に関すると、独立したアッセイプレートからの複製データを、ビヒクルの対照ウェル(0%阻害)及び3μMの非標識化MK-3328(100%阻害)を使用して0%阻害及び100%阻害に正規化した。IC50値は、上記の正規化した複製データを使用し、全体的適合において、4つの変数(上部、下部、傾き、IC50)を用いるS次阻害モデルで決定した。
【0154】
【0155】
本明細書において説明されている例示的な実施例に対する様々な修正、追加、置きかえ及び改変は、上記の記載から当業者に明白になろう。こうした修正もまた、特許請求の範囲内に収まるものと意図される。
(付記)
(付記1)
式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩
【化9】
(式中、
Z
1
、Z
2
、Z
3
及びZ
4
は、CH及びNから独立して選択されるが、ただし、Z
1
、Z
2
、Z
3
及びZ
4
のうちの少なくとも2つはCHであることを条件とし、
R
1
は、アリール及びヘテロアリール及びヘテロシクロアルケニルから選択され、これらのそれぞれは、アルキニル、ヘテロアリール、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されており、
L
1
は、O及びNR
4
から選択され、
R
4
は、水素及び低級アルキルから選択され、
L
2
は、(CH
2
)
m
(mは、0、1又は2である)であり、
R
2
は、水素、アリール、ヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているアリール、ヘテロアリール、及びヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているヘテロアリールから選択され、
R
5
は、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロ及びオキソ(ヘテロシクロアルキル環上の置換基として)から選択され、
nは、0又は1である)
を含むイメージング剤であって、
式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩が、1種以上のポジトロン放出放射性核種により標識されている、イメージング剤。
(付記2)
R
1
が、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されているフェニルである、付記1に記載のイメージング剤。
(付記3)
R
1
が、シアノ、メチル、及びアミノ、(アルキル)アミノ又は(ジアルキル)アミノにより置換されているメチルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されているフェニルである、付記2に記載のイメージング剤。
(付記4)
R
1
が2-シアノフェニルである、付記3に記載のイメージング剤。
(付記5)
R
1
が、アルキニル、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されているヘテロアリールである、付記1に記載のイメージング剤。
(付記6)
R
1
が、ピリジン-4-イル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリミジン-4-イル、1,2-ジヒドロピリジン-2-オン-3-イル、1H-インダゾール-4-イル及び1H-インダゾール-7-イルから選択され、これらのそれぞれが、アルキニル、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されている、付記5に記載のイメージング剤。
(付記7)
R
1
が、ピリジン-4-イル、ピリジン-2-イル、ピリジン-3-イル及びピリミジン-4-イルから選択され、これらのそれぞれが、アルキニル、シアノ、場合により置換されているアミノ、ハロ、低級アルキル、及び場合により置換されているアミノにより置換されている低級アルキルから独立して選択される1つ又は2つの基により場合により置換されている、付記6に記載のイメージング剤。
(付記8)
R
1
が、5-シアノ-ピリミジン-4-イル、ピリジン-4-イル、5-ブロモ-1,2-ジヒドロピリジン-2-オン-3-イル、3-アセトアミド-ピリジン-4-イル、2-アセトアミド-ピリジン-6-イル、3-シアノ-ピリジン-4-イル、3-シアノ-ピリジン-6-イル、3-ブロモ-ピリジン-4-イル、3-ブロモ-ピリジン-2-イル、3-シアノ-ピリジン-2-イル、3-フルオロ-ピリジン-4-イル、2-シアノ-ピリジン-4-イル、4-シアノ-ピリジン-3-イル及び3-エチニル-ピリジン-4-イルから選択される、付記6に記載のイメージング剤。
(付記9)
R
1
が、ピリジン-4-イル、5-シアノ-ピリミジン-4-イル又は3-シアノ-ピリジン-4-イルである、付記8に記載のイメージング剤
(付記10)
R
1
が、低級アルキルにより場合により置換されているヘテロシクロアルケニルである、付記1に記載のイメージング剤。
(付記11)
R
1
が、低級アルキルにより場合により置換されている2,3-ジヒドロピリダジン-6-イルである、付記10に記載のイメージング剤。
(付記12)
L
1
がOである、付記1から11のいずれか一つに記載のイメージング剤。
(付記13)
mが1である、付記12に記載のイメージング剤。
(付記14)
R
2
が、水素、アリール、ヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているアリール、ヘテロアリール、及びヒドロキシル又は低級アルコキシにより置換されているヘテロアリールから選択される、付記12又は13に記載のイメージング剤。
(付記15)
R
2
が、水素、フェニル、ピリジン-2-イル、ピリミジン-5-イル、ピラジン-2-イル及びピリミジン-5-イルから選択され、水素以外のこれらのそれぞれが、ヒドロキシル又は低級アルコキシにより場合により置換されている、付記14に記載のイメージング剤。
(付記16)
Z
1
、Z
2
、Z
3
及びZ
4
が、CHである、付記1から15のいずれか一つに記載のイメージング剤。
(付記17)
Z
1
がNであり、Z
2
、Z
3
及びZ
4
がCHである、付記1から15のいずれか一つに記載のイメージング剤。
(付記18)
Z
2
がNであり、Z
1
、Z
3
及びZ
4
がCHである、付記1から15のいずれか一つに記載のイメージング剤。
(付記19)
Z
2
及びZ
4
がNであり、Z
1
及びZ
3
がCHである、付記1から15のいずれか一つに記載のイメージング剤。
(付記20)
式Iの化合物が、
2-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリル; 2-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル;
2-[5-(ピリミジン-5-イルメトキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリジン-3-カルボニトリル;
4-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル;
4-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリミジン-5-カルボニトリル;
4-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリミジン-5-カルボニトリル;
4-{5-[(5-ヒドロキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリジン-3-カルボニトリル;
4-(5-メトキシ-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル)ピリジン-3-カルボニトリル; 4-[5-(ピリミジン-5-イルメトキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリジン-3-カルボニトリル;
5-[(5-メトキシピラジン-2-イル)メトキシ]-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール;
4-[5-(ベンジルオキシ)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル]ピリミジン-5-カルボニトリル;
4-{5-[(5-ヒドロキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}ピリミジン-5-カルボニトリル;
6-{5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-2-イル}-2-メチル-2,3-ジヒドロピリダジン-3-オン;及び
5-[(5-メトキシピリジン-2-イル)メトキシ]-2-(ピリジン-4-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イソインドール-1-オン
から選択される、付記1に記載のイメージング剤。
(付記21)
前記化合物が、
11
C、
13
N、
15
O及び
18
Fから選択される、1種以上のポジトロン放出放射性核種を含有する、付記1から20のいずれか一つに記載のイメージング剤。
(付記22)
有効量の付記1から21のいずれか一つに記載のイメージング剤を個体に投与するステップ、及び前記個体の少なくとも一部の画像を生成するステップを含む、個体において診断画像を生成する方法。
(付記23)
前記個体の少なくとも一部の画像を生成するステップが、前記個体の脳におけるハンチントンタンパク質(HTTタンパク質)モノマー若しくは凝集体の存在又は非存在を検出するための画像を生成するステップ、及び病理過程の存在又は非存在を検出するステップを含む、付記22に記載の方法。
(付記24)
前記HTTタンパク質モノマー又は凝集体が、前記個体の前記脳の大脳基底核に存在している、付記23に記載の方法。
(付記25)
病理過程が神経変性疾患である。付記23に記載の方法。
(付記26)
神経変性疾患が、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、パーキンソン病、プリオン病及び脊髄小脳失調から選択される、付記25に記載の方法。
(付記27)
神経変性疾患がハンチントン病(HD)である、付記26に記載の方法。
(付記28)
前記イメージング剤の前記有効量が、約0.1~約20mCiを含む、付記22から27のいずれか一つに記載の方法。
(付記29)
前記イメージング剤の前記有効量が約10mCiを含む、付記28に記載の方法。
(付記30)
前記画像を生成するステップが、ポジトロン断層法(PET)イメージング、同時コンピューター断層撮影法イメージングとのPET(PET/CT)、同時磁気共鳴イメージングとのPET(PET/MRI)、又はそれらの組合せを含む、付記22から29のいずれか一つに記載の方法。
(付記31)
前記画像を生成するステップが、PETイメージングを含む、付記30に記載の方法。